JP3799024B2 - 改良土及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、土の強度の改良とその軽量化に係るものであって、変形と密度特性の制御された改良土に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土とは、主として岩石の風化作用によってできた比較的粒径の小さい粒の集合体であり、土質工学でいう「土」は、地盤を構成するあらゆる材料を含んでいるため、岩塊から粘土に至るまで、その粒子の大きさも広範囲であり、また、構成する材料も純枠な鉱物から産業廃棄物までいろいろな種類のものを含んでいる。たとえば、有機物含有量の高い河川、湖沼、運河、海域などに堆積したへドロや、セメント等の固化材の添加によって改質された浚渫埋立土も含まれる。したがって、その挙動はきわめて複雑で変化に富んでいる。
【0003】
通常、盛士や道路の施工等を行なう際、大量の土質材料の締固め特性や路盤としての適否を試験することは容易ではない。そのため、粒度試験やコンシステンシー試験のような簡単な試験の結果から土の分類名を調べて、その土の工学的性質がおおよそ判定可能となるように、多くの資料に基づいて土を分類し、分類名が付与されている。
【0004】
土は、土粒子と間隙からなり、間隙には水や空気が存在している。土は、含水比の低下とともに、液体、塑性体、半固体および固体としての性状を示し、この状態の境界を示す含水比をコンシステンシー限界と呼び、それぞれの境界は、液性限界、塑性限界、収縮限界と定義されている。塑性限界以下の含水状態では、土は高いせん断強度を示すが非弾性的である。収縮限界以下の含水状態では、含水量が減少しても体積は減少しないという性状を示す。
【0005】
たとえば以上のような知見も含めて、これまでに得られている土に関しての知識や経験を踏まえて、環境保全、盛土・構造物基礎などの本構造、あるいは仮設構造のためなど、種々の目的で土の強度の改良が試みられている。たとえば、各種の処理対象土からなる地盤の改良工事においては、その表層部にセメント系固化材を添加混合して改良層を造成する浅層改良等が知られている。
【0006】
だが、このような改良土についての実際の適用については、土としての強度を保つこととともに、より軽量化することが重要な要件になっている。この軽量化は、土圧の低減と、埋設構造物に対する上載荷重の低減等を目的としている。軽量土には、盛土重量を軽減することによって、すべり破壊の抑制、沈下や個別流動の低減、構造物に対する土圧軽減などの効果が期待されるからである。その用途としては、代表的には次のようなものが考慮されている。
【0007】
(a)軟弱地盤上の盛土での沈下低減、側方流動の抑制
(b)嵩上げ等の堤防盛土における沈下低減、すべり抑制
(c)山岳地の盛土における荷重および土圧の軽減
(d)両壁面を有する盛土における土圧軽減
(e)構造物取付部における段差防止や土圧軽減
(f)地下構造物への鉛直土圧の軽減および不同沈下対策
このような用途が期待される軽量改良土として有望なものには、次のようなものがある。
▲1▼土に多量の水を含む泥水とセメントを加えて練ることにより流動化させ、まだ固まっていないコンクリートのように生コンのミキサー車などから流し込んで施工する流動化処理工法。
▲2▼土に超軽量の発泡ビーズと少量の固化材を混合して軽量化して混合処理土を得る発泡ビーズ混合軽量土工法。
▲3▼土に水とセメント等の固化材を混合して流動化させたものに、気泡を混合して軽量化を図った気泡混合土工法。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来では、処理対象土の軽量化を図りつつ、その変形係数や破壊ひずみなどの特性を用途に応じて自在に制御することは容易ではなかった。特に、一軸圧縮強さを有しない汚泥等をセメント系固化材で固化処理した固化処理土(流動土化処理土)については、本来的に、圧縮強度は大きいが破壊歪みが小さく(すなわち変形係数が大きく)、通常の土とは特性が大きく異なるので、破砕、ときほぐしを行わなければ変形特性を改善できないという制約がある。そして、前記のとおりの発泡ビーズ混合軽量土や気泡混合土は軽量化が期待される一方で、均一混合のための負担や材料コスト負担が大きい。
【0009】
すなわち、この力学的特性についての問題点は、作用応力によって降伏、破壊が生じると特性が変化し、元の強度に回復することがないこと、特に、降伏、破壊が生じた場合の圧縮せん断ひずみ量が著しく大きくなることである。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の実際上の問題点を解消するためになされたものであって、一軸圧縮強さを有しない処理対象土であっても、これを軽量化された改良土として利用することを可能とし、しかもその変形係数や破壊ひずみなどの特性が制御された改良土を提供することを課題としている。
【0011】
さらに、この出願の発明は、変形係数や破壊ひずみなどの特性が制御された前記改良土を製造するにあたり、その改良土の密度ρを所望の値に設定できるようにすることを課題としている。
【0012】
さらに、この出願の発明は、変形係数や破壊ひずみなどの特性が制御された前記改良土を特定の用途に適用することにより、その他の用途からは予測しえないような特段の効果を得ることを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された改良土の製造方法は、初期含水比が105%から150%の範囲にある一軸圧縮強さを有しない土をセメント系固化剤で固化処理して得られた土に比べて式1によって規定される湿潤密度が小さくなるように、式1の右辺を構成する初期含水比以外の各パラメータを設定して前記一軸圧縮強さを有しない土に故紙と高分子系改良剤と2価又は3価の水溶性金属塩からなる助剤を添加した後にセメント系固化剤を添加して固化処理することにより、一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土よりも軽量で、一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土以上の一軸圧縮強さを有し、その変形係数が一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土の変形係数よりも小さく、その破壊ひずみが一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土の破壊ひずみよりも大きく、地下水位の変動又は気象条件による乾湿繰返しを受ける場所に適用される改良土を製造することを特徴とする。
但し、前記改良土の湿潤密度がρ、 初期含水比がW0 、飽和度がSr 、水の密度がρW 、土粒子の密度がρs 、前記セメント系固化材の密度がρc 、前記故紙の密度がρD 、前記高分子系改良剤の密度がρP 、前記助剤の密度がρL 、前記セメント系固化材の添加量がα、前記故紙の添加量がβ、前記高分子系改良剤の添加量がγ、前記助剤の添加量がδ、前記故紙による体積増加率がkである。
【0017】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0018】
この出願の発明が対象とする一軸圧縮強さのない土の一例としては、たとえば含水比の高い未改良士を対象として考えることができる。かかる含水比の高い未改良土としては、ヘドロや汚泥があげられる。ヘドロと汚泥の用語の定義には、現在必ずしも定まったものはみられない。へドロとは水域にたまった泥状のものを指し、汚泥とは人間活動が主体となって発生した、あるいは汚染された泥状のものを指すと考えられている。
【0019】
へドロは、風化作用によって発生した微粒子が河川・湖沼・海域などの水域に拡散されて広大な面積に堆積し、未圧密の状態で存在しているものであり、無機の鉱物粒子のみでなく、有機物を多量に含むものが多い。
へドロの性質のうち第一の特徴は、含水比が非常に高いことである。水域に堆積したヘドロの含水比は、一般に200〜250%と高く、上層部では400〜500%に及ぶことがある。
【0020】
ヘドロは、一般的に脱水処理されて埋め立て処分されることが多いが長期間放置すると微生物の嫌気性分解により強烈な悪臭を発生するとともに、泥濘化するので物性改良のためにセメント系固化材を添加・混合して固化処理することが望ましい。
【0021】
建設汚泥は、建設工事に伴って発生する掘削汚泥や微細な泥状土などであり、そのままでは盛土などに直接流用できない。このため、現状ではごく一部再利用されるものを除き、大部分は,産業廃棄物である「汚泥」として中間処理施設で脱水処理を行い、或いは直接最終処分場に持ちこまれている。しかし、処分場の不足・遠隔化は深刻な問題であり、建設汚泥の有効利用が望まれている。
建設汚泥は高含水比状態を呈し、本来地盤を形づくっていた土が建設工事の過程で泥状となった場合が多く、有害物質などを含有する例は極めて希であり、固化処理することによって盛土材料として容易にリサイクルが可能である。
【0022】
この出願の発明の場合には、まずこの未改良土に繊維質物質と高分子系改良剤が添加される。次いで固化処理が行なわれる。具体的にはセメント系固化材を加える。ここで、固化材とは、改良材のうち、セメント、石灰及びそれらを主材とするもので、土を化学的に固化するものをいう。これにより、軽量化され、しかも、応力−ひずみ線図において特徴のある特性の制御が行なわれ、団粒化した改良土が得られる。
【0023】
高分子系改良剤としては、従来より土壌改良剤として知られているポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、それらの組合わせによるコポリマーや、それらのポリアルキレングリコールや無水マレイン酸、エポキシ化合物等とのコポリマー等の各種のものが考慮されるが、なかでも水溶性のポリマーが好適なものとして拳げられる。たとえば、主成分をポリアクリル系ポリマーとする合成水溶性ポリマー粉末(PH7〜8、水分10±2%、嵩比重0.6〜0.7、真比重1.4〜l.5)などが例示される。これらの高分子系改良剤については、この出願の発明では、対象土1m3 に対して1kg以上の割合で添加するのが望ましい。
助剤としては、2価又は3価の水溶性金属塩が好ましく、当該水溶性金属塩としては、例えば塩基系ポリ無機塩、硫酸バンド、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、塩化カルシウム、塩化第1鉄、塩化第2鉄などがある。
多量の有機物を含んでいたり、液性限界を越える高含水比泥土の場合、繊維質物質である故紙及び高分子系改良剤を添加・混合しても、流動性を消失させることができない。そこで、このような場合は、古紙と高分子系改良剤を添加した後、2価又は3価の水溶性金属塩を加え、流動性を消失させることができる。
【0024】
また、繊維質物質としては、天然、または合成の各種のものでよく、例えば新聞紙の古紙、農業用排ビニール、ポリエチレン、ポリエステルの再生品、コットン、わら、もみがら、おがくず、材木チップなどが使用できる。これらの繊維質物質については、その形状は、細片状、小片状、糸状、布状等の各種の形状であってよく、たとえば古紙においては、1cm四方以下で、厚さ0.1mm以下のものとして添加することができる。添加量については、高分子系改良剤の添加量との相乗効果が大きなものとなるように、対象土の種類、性質に応じて適宜に実験的に定めることができる。たとえばその添加量は対象土1m3 に対し、古紙の場合は望ましくは30kg以上、さらには50kg〜100kgとすることが目安として考慮される。
【0025】
また、セメント系固化材の使用も、この添加量の選定においては考慮されることが望ましい。
【0026】
高分子系改良剤を少量添加しただけでも強度特性は改善されるが、実際の工事を行う場合において有意な改善を見るには、繊維質物質を添加することが必要となる。また、セメント配合量の少ないものは破壊後の残留強度の保持が可能であり、ねばり強さが特徴的である。セメント配合量が多くなると、一軸圧縮強度は増大するものの、破壊ひずみが小さくなり繊維質物質と高分子系改良剤を混合することの効果が小さくなる。
【0027】
このように、破壊しにくく残留強度の保持が可能となるねばり強さの発現は、低強度の安定処理土に顕著に現れる。なお、ここで安定処理土とは、セメント系や石灰系などの固化材により建設汚泥等の性状を化学的に改良した土をいう。
【0028】
これらの高分子系改良剤や繊維質物質が添加される一軸圧縮強さを有しない土は、たとえば具体的には、自然含水比(Wn)が100%以上、さらには250%以上で、泥水の密度(ρ)が1.3g/cm3 以下の、泥水式推進工法余剰泥水等がある。
【0029】
この出願の発明においては提供される改良土は、その組成においては、基本的に、以下のものを含有している。
【0030】
<1>一軸圧縮強さを有しない土
<2>高分子系改良剤
<3>繊維質物質
<4>固化材、特にセメント系固化材
この組成においては、前記<2><3>の配合によって、これを含まないセメント系固化材添加だけの場合に比べて、湿潤密度が小さくなって軽量化が図られる。そして、この軽量化の進展にもかかわらず、それ以上の一軸圧縮強さを有するものとする。この一軸圧縮強さは、自然含水比(Wn)が200%以上で泥水密度(ρ)が1.2g/cm3 未満の一軸圧縮強さを持たない土を対象とする場合には、セメント系固化材だけのものに比べてより顕著に大きなものとなる。
【0031】
また、前記<2><3>の配合によって、<4>セメント系固化材のみの場合に比べて変形係数は小さく、破壊ひずみは大きなものとなる。
【0032】
たとえば、
自然含水比(Wn):105%と150%
土粒子密度(ρs):2.623g/cm3
の泥水に、セメント系固化材のみを配合した調製土と、
Wn=105%の場合 故紙:50kg/m3
Wn=150%の場合 故紙:65kg/m3
高分子系改良剤:1.2kg/m3
(前記ポリアクリル系ポリマー水溶性粉末)
助剤(前記塩基系ポリ無機塩):8.6kg/m3
とセメント系固化材とを配合した改良土とを比較すると、表1、表2のとおりの特性差が明らかになる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
この表1及び表2の結果から、この出願の発明の改良土の場合には、より軽量で、しかも一軸圧縮強度が大きく、土の特性は、破壊しにくく残留強度の保持が可能となり、ねばり強い土構造物を構築する上で非常に有益であることがわかる。
【0036】
次に、本発明の改良土である繊維質固化処理土と、従来の改良土である固化処理土の特性の差異について、以上説明した例とは別に行った他の試験結果に基づいて説明する。
ここで、繊維質固化処理土とは、へドロや汚泥に繊維質物質と高分子系改良剤と固化材を添加した安定処理土であり、固化処理土とは、ヘドロや汚泥に固化材を添加した安定処理土である。
【0037】
先ず最初に、本発明の改良土である繊維質固化処理土の供試体作製フローと、繊維質固化処理土の現場施工手順を説明する。
繊維質固化処理土の供試体作製は、図1(a)に示すように、試料の含水比を調整し(含水比105%、150%)、故紙破砕物・高分子系改良剤と助剤として水溶性金属塩を混合・撹絆する。高分子系改良剤としては例えばポリアクリル系ポリマー水溶性粉末などが利用でき、助剤としては例えば塩素系ポリ無機塩などが利用できる。次いで、一般軟弱土用セメント系固化材を用いて固化材添加混合を行い、初期養生を行う。次いで、容器に入れて密封し、20±3℃で3日間静置して、φ5×10(JGS0811)の供試体を作製し、密封して20±3℃で所定の期間静置して養生を行った。
【0038】
本発明の改良土である繊維質固化処理土の現場施工手順は、図1(b)に示すように、汚泥の発生の後、故紙破砕物・高分子系改良剤・助剤を混合・攪拌する。次いで、一般軟弱土用セメント系固化材にて固化材添加混合を行い、運搬後、仮置きし、これを締固め、養生を行う。
【0039】
一方、従来の改良土である固化処理土の供試体作製は、図2(a)に示すように、試料の含水比を調整(含水比105%、150%)し、一般軟弱土用セメント系固化材にて固化材添加混合を行い、容器に入れて密封して20±3℃で3日間静置し、初期養生を行った。次いで、ときほぐし9.5mm程度に解砕し、締固めず密閉して20±3℃で7日間静置して仮置きし、φ5×10の供試体を作製した後(JGS0811)、密封して20±3℃で所定の期間静置し養生を行った。
【0040】
従来の改良土である固化処理土の現場施工手順は、図2(b)に示すように、汚泥の発生の後、一般軟弱土用セメント系固化材にて固化材添加混合を行い、初期養生を行った。次いで、掘削(ときほぐし)、運搬の後、仮置きし、締固め、養生を行う。
【0041】
以上のようにして作製された繊維質固化処理土の供試体と固化処理土の供試体について同一の条件下で以下に示すような試験を行なった。以下、試験で得られた結果を比較しつつ、本発明の特徴について説明する。
【0042】
[試験及びその結果1]
一軸圧縮試験を行い、応力−ひずみ曲線を求めた。その代表例を図3に示す。同図に示すように、繊維質固化処理土は固化処理土に比べて土の一軸圧縮試験の応力−ひずみ曲線から得られる破壊ひずみεfが大きい。ここで、破壊ひずみとは、材料が破壊したと認められるときのひずみの大きさをいい、一般に応力ひずみ曲線の最大応力を示した時点のひずみをいう。即ち、図3中に矢印で示す最大応力での圧縮ひずみεの差(イ)からわかるように、同じ含水比の汚泥に同量の固化材を添加した場合、これだけの破壊ひずみの差 (イ)が生じる。
この応力−ひずみ曲線から得られた破壊ひずみεfとそのときの一軸圧縮強さquを比較したグラフを図4、図5に示す。図4、図5より、繊維質固化処理土は、同じ強度において数倍の破壊ひずみεfを持つことが分かる。また破壊ひずみεfとセメント添加量を比較したグラフを示す図6及び図7より、同じセメント添加量において数倍の破壊ひずみεfを持つことが分かる。このことは繊維質固化処理土が破壊に至るまでに、大きな変形に耐え得ることを示している。 このように、繊維質固化処理土は、固化処理土に比べて、土の一軸圧縮試験の応力−ひずみ曲線から得られる破壊ひずみεfが大きい。
【0043】
[試験及びその結果2]
応力ひずみ曲線から得られた変形係数E50とそのときの一軸圧縮強さquを比較し、その結果を図8、図9に示した。
ここで、一軸圧縮試験で求められる応力−ひずみ曲線において圧縮強度の半分に相当する点と原点とを結ぶ直線の勾配を、変形係数E50という。
図8、図9に示すように、繊維質固化処理土は、同じ強度においてより小さな変形係数E50であることが分かる。特に強度が強い場合に固化処理土の変形係数が急激に高くなるのに比ベ、繊維質固化処理土の変形係数の伸びは緩やかである。
このように、繊維質固化処理土は、固化処理土と比べて、土の一軸圧縮試験の応力−ひずみ曲線から得られる変形係数E50が小さい。
【0044】
[試験及びその結果3]
一軸圧縮試験を行い、応力−ひずみ曲線を求めた。その代表例を図10に示す。同図中に最大圧縮応力の差を矢印と符号 (ロ)で示すように、同じ含水比の汚泥に同量の固化材を添加した場合、これだけの強度の差が生じる。
この応力ひずみ曲線から得られた一軸圧縮強さquを固化材添加量と比較した結果を図11、図12に示した。
図11、図12に示すように、繊維質固化処理土は、同じ固化材を添加した固化処理土と比べ2〜3倍の一軸圧縮強さquを持つことが分かる。所定の要求強度に対してセメント系固化材添加量を大幅に削減できることになる。例えば、第二種処理土の基準であるコーン指数800kN/m2 はqc=5quとすると一軸圧縮強さで160kN/m2 となる。含水比W=105%の場合繊維質固化処理土は固化材添加量40kg/m3 以下で所定の強度発現が可能であるが、固化処理土では固化材添加量80kg/m3 も必要である。
このように、繊維質固化処理土は、固化処理土と比べて、土の一軸圧縮試験の応力−ひずみ曲線から得られる一軸圧縮強さquが大きい。
【0045】
[試験及びその結果4]
残留強度について比較した。ここで、残留強度とは、一軸圧縮試験で求められる応力−ひずみ曲線において最大応力を示した後に残る一軸圧縮強さをいう。
繊維質固化処理土と固化処理土の応力−ひずみ曲線の特徴を図13に示す。同図に示すように、固化処理土は最大応力後に急激な応力低下を示すのに対し、繊維質固化処理土は、緩やかな応力の低下を示す。このことは固化処理土が破壊後に強度を持たないのに対し、繊維質固化処理土は破壊後にも強度を持ち、ねばり強い性質を持つことを意味する。
このように、繊維質固化処理土は、固化処理土と比べて、土の一軸圧縮試験の応力ひずみ曲線から得られる残留強度の保持が可能である。
【0046】
[試験及びその結果5]
湿潤密度と固化材添加量との相関を調べた。ここで、土の湿潤密度ρとは、質量を体積で除したものである。
土の湿潤密度は、その土の含水比と密接な関係となる。繊維質固化処理土は、高含水比汚泥を改良するので湿潤密度が低くなる。改良する汚泥の含水比が高いほど湿潤密度が低くなる。含水比W=105%,150%の汚泥で室内試験を実施し、図14に示すような結果となった。
繊維質固化処理土の湿潤密度ρは、一般的な土の湿潤密度と比べ軽量である。なお、我が国における土の密度とおおよその範囲を下表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
繊維質固化処理土の湿潤密度ρは一般的な土の湿潤密度と比べ軽量である。事前に土粒子の密度、汚泥の含水比が設計の段階で把握されれば繊維質物質の添加量が決まり、目標強度が設定されると固化材の添加量が決まる。本願発明者の新たに提案する下式1により改良後の湿潤密度を施工前に算出することが可能となる。
【0049】
【数3】
【0050】
【表4】
【0051】
本願発明者の新たに提案する上式1による計算値を実線に示し、本試験のデータと重ねてみると図15に示すようになる。新しく提案した式1による計算値は、実験値とほぼ一致している。従って、本式1を用いれば、初期含水比を調整することにより、要求される密度の繊維質固化処理土に改良することが可能である。
【0052】
[試験及びその結果6]
一軸圧縮強さの発現速度を試験した。その結果を図16と表5に示した。
図16は、養生期間7日と28日の強度を示しているが、固化処理土に比べ繊維質固化処理土の直線の角度が大きいことがわかる。このことは、最終的な強度としてのσ28の強度に対して、σ7 の時点でより大きい強度が出ており、強度の発現が早いことを示している。
このように、繊維質固化処理土は、固化処理土と比べて、土の一軸圧縮試験の応力ひずみ曲線から得られる一軸圧縮強さの強度発現が早い。
【0053】
【表5】
【0054】
[試験及びその結果7]
耐久性を調べた。試験は、下表6に示す条件で供試体に乾湿繰返しを与え、それによる供試体の状況を下表7の項目で観察した。また、1サイクル終了毎の供試体の状況観察としては、下表7に示す健全度ランクにより観察・評価した。
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
試験結果を、図17に示す。また、健全度ランクと乾湿繰返しとの相関を図18に示す。
固化処理土は、1サイクル目(1サイクル目の乾燥)からクラックが発生し、含水比105%を改質した方は、図17の(ハ)に示すように、2サイクル終了時に9分の7の供試体が崩壊した。クラックの発生は最初の乾燥で発生し、間隙比が大きく、間隙の多くを水分が占めていることから、間隙中の水分の乾燥(脱水)から発生する収縮クラックによるものと判断される。
【0058】
繊維質固化処理土は、乾湿繰返しを受けてもすべての供試体でクラックの発生すら認められなかった。繊維質固化処理土は繊維質物質が乾燥収縮による引張り力に抵抗してクラック発生を防いでいると考えられる。繊維質固化処理土は、乾湿繰返しを受けても、乾燥による収縮クラックの発達・吸水による膨張崩壊を防ぐことができることから、地下水位の変動・気象条件による乾湿繰返しを受ける場所においても使用可能であることがわかる。
このように、繊維質固化処理土は、固化処理土と比べて、改良土の耐久性が高い。
【0059】
従って、本発明の改良土である繊維質固化処理土は、環境条件の変化による乾湿繰り返しを受ける場所に適用しても十分な強度で十分な耐久性を示すことができる。環境条件の変化としては、例えば、地下水位の変動や気象条件の変化等が挙げられる。このような環境条件が変動しうる適用対象としては、水位が変動する河川の堤防の盛り土等がある。
従来は、強度と耐久性の点で固化処理土をかかる用途に適用することは全く考えられなかったが、本発明の改良土である繊維質固化処理土によれば係る用途が初めて可能となり、従来考えられなかった顕著な効果を得ることが出来る。
【0060】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明に係る改良土によれば、一軸圧縮強さを有しない土に繊維質物質と高分子系改良剤を添加して固化処理することにより、処理対象土の変形係数や破壊ひずみなどの特性を用途に応じて自在に制御することができ、しかも軽量化が図られるという効果が得られる。
【0061】
さらに、この発明の改良土は、従来の固化処理土と比べて極めて耐久性が高いので、環境条件の変動による乾湿繰返しを受ける場所に用いてもクラックが発生しにくく、例えば地下水位の変動や気象条件による乾湿繰返しを受ける場所にも使用可能であり、従来予想し得ないような特段の効果を発揮することとができる。
【0062】
さらに、この発明の改良土の製造方法によれば、事前に土粒子の密度、汚泥の含水比から繊維質物質の添加量を決め、目標強度から固化材の添加量が決めれば、前記式1により改良後の湿潤密度を施工前に算出することが可能となり、初期含水比を調整することにより要求される密度の繊維質固化処理土に改良することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】繊維質固化処理土の供試体作製手順(a)及び現場施工手順(b)を表した流れ図である。
【図2】固化処理土の供試体作製手順(a)及び現場施工手順(b)を表した流れ図である。
【図3】繊維質固化処理土及び固化処理土の圧縮応力と圧縮ひずみの相関を表すグラフの代表例である。
【図4】含水比105%の破壊ひずみと一軸圧縮強さの相関を表すグラフである。
【図5】含水比150%の破壊ひずみと一軸圧縮強さの相関を表すグラフである。
【図6】含水比105%の破壊ひずみとセメント添加量の相関を表すグラフである。
【図7】含水比150%の破壊ひずみとセメント添加量の相関を表すグラフである。
【図8】含水比105%において、応力ひずみ曲線から得られた変形係数E50とそのときの一軸圧縮強さquを比較したグラフである。
【図9】含水比150%において、応力ひずみ曲線から得られた変形係数E50とそのときの一軸圧縮強さquを比較したグラフである。
【図10】繊維質固化処理土及び固化処理土の圧縮応力と圧縮ひずみの相関を表すグラフの代表例である。
【図11】含水比105%において、一軸圧縮強さquを固化材添加量と比較したグラフである。
【図12】含水比150%において、一軸圧縮強さquを固化材添加量と比較したグラフである。
【図13】繊維質固化処理土及び固化処理土の圧縮応力と圧縮ひずみの相関を表すグラフの代表例である。
【図14】湿潤密度と固化材添加量との相関を表すグラフである。
【図15】湿潤密度と固化材添加量との相関において、新しく提案した上式1による計算値と、試験のデータとを重ねて比較したグラフである。
【図16】一軸圧縮強さqu7と一軸圧縮強さqu28 との相関を表すグラフである。
【図17】一軸圧縮強さと乾湿履歴の相関を表すグラフである。
【図18】健全度ランクと乾湿繰返しとの相関を表すグラフである。
Claims (1)
- 初期含水比が105%から150%の範囲にある一軸圧縮強さを有しない土をセメント系固化剤で固化処理して得られた土に比べて式1によって規定される湿潤密度が小さくなるように、式1の右辺を構成する初期含水比以外の各パラメータを設定して前記一軸圧縮強さを有しない土に故紙と高分子系改良剤と2価又は3価の水溶性金属塩からなる助剤を添加した後にセメント系固化剤を添加して固化処理することにより、
一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土よりも軽量で、一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土以上の一軸圧縮強さを有し、その変形係数が一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土の変形係数よりも小さく、その破壊ひずみが一軸圧縮強さを有しない土を固化処理して得られた土の破壊ひずみよりも大きく、地下水位の変動又は気象条件による乾湿繰返しを受ける場所に適用される改良土を製造することを特徴とする改良土の製造方法。
前記改良土の湿潤密度がρ、
初期含水比がW0 、
飽和度がSr 、
水の密度がρW 、
土粒子の密度がρs 、
前記セメント系固化材の密度がρc 、
前記故紙の密度がρD 、
前記高分子系改良剤の密度がρP 、
前記助剤の密度がρL 、
前記セメント系固化材の添加量がα、
前記故紙の添加量がβ、
前記高分子系改良剤の添加量がγ、
前記助剤の添加量がδ、
前記故紙による体積増加率がk。
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