JP7468816B1 - 高強度めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

1180MPa以上のTSを有し、かつ、めっき処理後に延性が低下することなく優れた成形性と耐水素曲げ脆化特性を有し、かつ耐LME性に優れた高強度めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。所定の成分組成を有し、板厚1/4位置において、面積率で、フェライトが1%以上30%以下、フレッシュマルテンサイト量が1%未満であり、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの和が35%以上90%以下であり、残留オーステナイト量が6%以上である鋼組織とを有し、アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値が1.1以上であり、鋼中拡散性水素量が0.3質量ppm以下であり、かつ、良好なめっき処理後延性と、良好な耐LME性を有し、耐水素曲げ脆化特性と成形性に優れた、高強度めっき鋼板。

Description

本発明は、自動車、電気等の産業分野で使用される部材として好適な、成形性に優れた高強度めっき鋼板および製造方法に関する。特に、1180MPa以上のTS(引張強さ)を有し、かつ、優れた成形性を有する高強度めっき鋼板を得ようとするものである。当該高強度めっき鋼板は、めっき処理後に延性が低下せず、耐水素曲げ脆化特性を有し、耐LME(Liquid Metal Embrittlement)性にも優れるものである。ここで云う成形性とは延性と曲げ性を示す。
近年、地球環境の保全の見地から、自動車の燃費向上が重要な課題となっている。このため、車体材料の高強度化により薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しようとする動きが活発となってきている。その一方、鋼板の高強度化が成形性の低下を招く。さらに水素を含む還元性雰囲気下での焼鈍に伴い、鋼板中に水素が侵入し、この鋼板に内在する水素が曲げ性などの成形性を低下させる。この水素割れへの感受性は鋼板の高強度化に伴ってより敏感になる。そのため、高強度と高成形性、さらには耐水素曲げ脆化特性を併せ持つ材料の開発が望まれている。
さらに最近になって、高強度亜鉛めっき鋼板をスポット溶接する際に、めっき層の亜鉛が鋼板表層の結晶粒界に拡散侵入して、液体金属脆化(LME:Liquid Metal Embrittlement)が起き、粒界割れ(LME割れ)が発生することが確認されている。LME割れは、亜鉛めっき層を有しない高強度冷延鋼板においても、溶接相手が亜鉛めっき鋼板であれば発生し得るため、いずれの高強度鋼板においても問題視されつつある。そのため、高強度鋼板の骨格部品への適用に際しては、耐LME性に優れた高強度鋼板が要望されている。
高強度かつ延性に優れた鋼板として、残留オーステナイトの加工誘起変態を利用した高強度鋼板が提案されている。このような鋼板は、残留オーステナイトを有した組織を呈し、鋼板の成形時には残留オーステナイトによって成形が容易である。その一方で、成形後には残留オーステナイトがマルテンサイト化するため高強度を備えたものになる。しかしながら、残留オーステナイトを有する鋼板においては、めっき処理時に残留オーステナイトが分解してしまい延性が低下してしまうことがある。これは、めっき浴後の合金化処理時に特に顕著となる。
例えば、特許文献1では、引張強さが1000MPa以上で、全伸び(EL)が30%以上の残留オーステナイトの加工誘起変態を利用した非常に高い延性を有する高強度鋼板が提案されている。このような鋼板は、C、Si、Mnを基本成分とする鋼板をオーステナイト化した後に、ベイナイト変態温度域に焼入れて等温保持する、いわゆるオーステンパー処理を行うことにより製造される。このオーステンパー処理によるオーステナイトへのCの濃化により残留オーステナイトが生成されるが、多量の残留オーステナイトを得るためには0.3%を超える多量のC添加が必要となる。しかし、鋼中のC濃度が高くなるとスポット溶接性が低下し、とくに0.3%を超えるようなC濃度ではその低下が顕著であり、自動車用鋼板としては実用化が困難となっている。
特許文献2では、0.50質量%以上12.00質量%以下のMnを含有する鋼を用いて、熱延板にフェライトとオーステナイトの二相域で長時間熱処理を施すことを開示している。この結果、未変態オーステナイト中へのMn濃化を促進させたアスペクト比の大きな残留オーステナイトを形成させ均一伸びを向上させている。しかしながら、伸び、曲げ性、及び、耐LME性の両立については検討されていない。
また、特許文献3には、焼鈍後の鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を、50℃以上300℃以下の温度域内で1800秒以上43200以下保持することによって、鋼中水素量を低減させる方法が開示されている。しかし、鋼中水素量の低減による耐水素曲げ脆化特性の向上については検討されていない。
さらに特許文献4では、冷間圧延の最終パスの圧下率および続く焼鈍時の露点を制御して、鋼板表層に軟質層を形成させ、さらに、粒界性格を制御することを開示している。この結果、延性、伸びフランジ性、曲げ性、および、耐LME性を総合的に満足させる高強度鋼板が得られている。しかしながら、めっき処理後の延性と耐LME性の両立については検討されていない。鋼板成分を適切に制御すればめっき処理後の延性を低下させうる可能性のある表層軟質層を形成させずに、耐LME性をさらに向上させつつ、めっき処理後延性と両立できる余地がある。
特開昭61-157625号公報 特許第6123966号公報 特願2021-512457号公報 特許第6901050号公報
本発明は、上記の様な現状に鑑みなされたものであり、その目的は、1180MPa以上のTSを有し、かつ、めっき処理後に延性が低下せずに優れた成形性と鋼中に内在する水素量の少ない耐水素曲げ脆化特性を有し、さらに耐LME性に優れた高強度めっき鋼板およびその製造方法を提供することにある。ここで云う成形性とは、延性と曲げ性を示す。また、ここで云うめっき処理とは、めっき層の形成処理のみの場合と、当該めっき層の形成後に更に当該めっき層の合金化処理を行う場合の両方を含む。また、ここで云う耐水素曲げ脆化特性とは曲げ性への水素の影響の受けやすさの指標を意味する。一方で、成形性における曲げ性とは、材料そのものの曲げ性を意味しており、これらは異なる特性である。
本発明者らは、上記した課題を解決するべく、鋼板の成分組成および製造方法の観点から鋭意研究を重ねたところ、以下のことを見出した。
すなわち、0.10質量%以上8.00質量%以下のMnを含有し、その他の合金元素の成分組成を適正に調整して、熱間圧延後、必要に応じて、Ac変態点以下の温度域で1800s超保持し、必要に応じて、酸洗処理を施し、冷間圧延する。その後、Ac変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却する。続いて、α/γ界面移動を伴うベイナイト変態の生じる温度範囲内の再加熱温度であるBs-150°以上Bs+150℃以下の範囲まで再加熱する。その後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却する。これにより、続く焼鈍工程において、アスペクト比が大きく、かつMnとCが著しく濃化した微細な安定性の高い残留オーステナイトの核となるCが濃化したフィルム状オーステナイトが生成せしめることが重要であることを見出した。
また、前記冷却後、Ac変態点-150℃からAc変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持する。その後、安定度の高いオーステナイトのマルテンサイト変態開始温度(Ms’)以下の冷却停止温度まで冷却し、Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱する。その後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却する。その後、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持することで、水素を効率よく脱離させ耐水素曲げ脆化特性が向上することを見出した。この結果、得られた鋼板は、以下の鋼組織を有する。すなわち、面積率で、フェライトが1%以上30%以下、フレッシュマルテンサイトが1%未満であり、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの和が35%以上90%以下であり、残留オーステナイトが6%以上である。さらに、アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値が1.1以上であり、かつ、Mnγ eq.が5.0以上であり、δLMEが1.0以下であり、鋼中拡散性水素量が0.3wt.ppm以下であることを特徴とする。本発明により、優れた成形性と耐水素曲げ脆化特性と耐LME性を有する高強度めっき鋼板の製造が可能となることがわかった。ここで、Mnγ eq.とδLMEは次式(1)、(2)で算出される。
Mnγ eq.={ln([C]γ-0.2)+ln([Mn]γ-2.6)+4.30}×λγ/Dγ ・・・(1)
δLME=1/2×log{(1+[C])/(0.35-[C])}+{exp([Si]/3.23)-1}+{exp([Mn]/22)-1} ・・・(2)
ここで、[C]γ、[Mn]γは夫々、全残留オーステナイト中の平均C量、平均Mn量(質量%)、
λγは全残留オーステナイトの平均アスペクト比、
Dγは全残留オーステナイトの平均円相当径(μm)、
[C]、[Si]、[Mn]は鋼板全体に含まれるC量、Si量、Mn量(質量%)である。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.030%以上0.300%以下、Si:0.01%以上2.50%以下、Mn:0.10%以上8.00%以下、P:0.100%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、N:0.0100%以下、および、O:0.0100%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、板厚1/4位置において、面積率で、フェライトが1%以上30%以下、フレッシュマルテンサイト量が1%未満であり、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの和が35%以上90%以下であり、残留オーステナイト量が6%以上である鋼組織と、を有し、アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値が1.1以上であり、鋼中拡散性水素量が0.3質量ppm以下であり、かつ、(1)式から求められるMnγ eq.が5.0以上であり、(2)式から求められるδLMEが1.0以下である、高強度めっき鋼板。
Mnγ eq.={ln([C]γ-0.2)+ln([Mn]γ-2.6)+4.30}×λγ/Dγ ・・・(1)
δLME=1/2×log{(1+[C])/(0.35-[C])}+{exp([Si]/3.23)-1}+{exp([Mn]/22)-1} ・・・(2)
ここで、[C]γ、[Mn]γは夫々、全残留オーステナイト中の平均C量、平均Mn量(質量%)、λγは全残留オーステナイトの平均アスペクト比、Dγは全残留オーステナイトの平均円相当径(μm)、[C]、[Si]、[Mn]は鋼板全体に含まれるC量、Si量、Mn量(質量%)である。
[2]前記成分組成が、さらに、質量%で、Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Co:1.000%以下、Ni:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、Bi:0.200%以下、のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、[1]に記載の高強度めっき鋼板。
[3]全ての残留オーステナイト中のC量をT組織におけるC量で除した値が1.0未満である、[1]又は[2]に記載の高強度めっき鋼板。
[4]前記高強度めっき鋼板が亜鉛めっき層を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の高強度めっき鋼板。
[5]前記溶融亜鉛めっき層が、合金化亜鉛めっき層である、[4]に記載の高強度めっき鋼板。
[6][1]~[3]のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、前記成分組成を有する鋼スラブを、加熱し、仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下で熱間圧延し、300℃以上750℃以下で巻き取り、50%以下の圧延率で冷間圧延を施し、その後、Ac変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、(3)式から求まるBs温度において、Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却し、その後、Ac変態点-150℃からAc変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持後、(4)式から求まるMs’以下の冷却停止温度まで冷却し、Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却し、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持する、高強度めっき鋼板の製造方法。
Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
[C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
Ms’=Ms×15/Mnγ eq. ・・・(4)
ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度であり、Mnγ eq.<15のとき、Mnγ eq.=15とする。
[7]前記めっき処理が亜鉛めっき処理である、[6]に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
[8]前記亜鉛めっき処理に続いて、450℃以上600℃以下で合金化処理を施す、[7]に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
[9]前記巻き取り後、冷間圧延前に、Ac変態点以下の温度域で1800s超保持する、[6]~[8]のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、1180MPa以上のTS(引張強さ)を有し、めっき処理後に延性が低下せず、優れた延性と曲げ性を有し、かつ、耐水素曲げ脆化特性と耐LME性に優れた高強度めっき鋼板が得られる。本発明の製造方法によって得られた高強度めっき鋼板を、例えば、自動車構造部材に適用することにより車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は極めて大きい。
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
本発明において鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.030%以上0.300%以下
Cは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、マルテンサイト、フェライトおよび残留オーステナイトの分率に影響する重要な元素である。Cの含有量が0.030%未満では、マルテンサイトの分率が減少し、所望のTSを実現することが困難になる。一方、Cの含有量が0.300%を超えると、マルテンサイトが脆化し、所望のELを実現することが困難になる。したがって、Cの含有量は、0.030%以上0.300%以下とする。好ましい下限は0.050%以上、より好ましくは0.070%以上とする。好ましい上限は、0.280%以下とし、より好ましくは0.250%以下とする。
Si:0.01%以上2.50%以下
Siは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、連続焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、マルテンサイトの硬さ、および、残留オーステナイトの分率に影響する元素である。Siの含有量が0.01%未満では、残留オーステナイトの分率が減少し、所望のELを実現することが困難になる。一方、Siの含有量が2.50%を超えると、スポット溶接時にオーステナイト粒界にZnが侵入しやすくなり、液体金属脆性が顕著になり、対LME性が劣化する。したがって、Siの含有量は、0.01%以上2.50%以下とする。好ましい下限は0.05%以上、より好ましくは0.10%以上とする。好ましい上限は2.00%以下、より好ましくは1.80%以下とする。
Mn:0.10%以上8.00%以下
Mnは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、マルテンサイトの分率に影響する重要な元素である。Mnは、残留オーステナイトを安定化させる元素で、良好な延性の確保に有効であり、さらに、固溶強化により鋼の強度を上昇させる元素である。このような作用は、鋼のMn量が0.10%以上で認められる。一方、Mnの含有量が8.00%を超えると、残留オーステナイトの安定性が過剰となり、加工時にTRIP効果が発現せず、所望の延性が得られない。したがって、Mnの含有量は、0.10%以上8.00%以下とする。好ましい下限は、1.00%以上、より好ましくは2.50%以上である。好ましい上限は、6.00%以下、より好ましくは、4.20%以下である。
P:0.100%以下
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させるため、鋼板の変形能を低下させることから、ELが低下する。そのため、Pの含有量は0.100%以下にする必要がある。なお、Pの含有量の下限は特に規定しないが、Pは固溶強化元素であり、鋼板の強度を上昇させることができることから、0.001%以上とすることが好ましい。したがって、Pの含有量は、0.100%以下とする。好ましい下限は0.001%以上とする。好ましい上限は0.070%以下とする。
S:0.0200%以下
Sは、硫化物として存在し、鋼板の変形能を低下させることから、ELが低下する。そのため、Sの含有量は0.0200%以下にする必要がある。なお、Sの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、Sの含有量は0.0200%以下とする。好ましい下限は0.0001%以上とする。好ましい上限は0.0050%以下とする。
N:0.0100%以下
Nは、窒化物として存在し、鋼板の変形能を低下させることから、ELが低下する。そのため、Nの含有量は0.0100%以下にする必要がある。なお、Nの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Nの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、Nの含有量は0.0100%以下とする。好ましい下限は0.0001%以上とする。好ましい上限は0.0050%以下とする。
Al:0.100%以下
Alは、A変態点を上昇し、ミクロ組織中に多量のフェライトを含んでしまうため、所望のTSを実現することが困難になる。そのため、Alの含有量は0.100%以下にする必要がある。なお、Alの含有量の下限は特に規定しないが、連続焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、0.001%以上とすることが好ましい。したがって、Alの含有量は0.100%以下とする。好ましい下限は0.001%以上とする。好ましい上限は0.050%以下とする。
O:0.0100%以下
Oは、酸化物として存在し、鋼板の変形能を低下させることから、ELが低下する。そのため、Oの含有量は0.0100%以下にする必要がある。なお、Oの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、Oの含有量は0.0100%以下とする。好ましい下限は0.0001%以上とする。好ましい上限は0.0050%以下とする。
鋼板は、上記の成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。ここで不可避的不純物として、Zn、PbおよびAsが挙げられる。これら不純物は合計で0.100%以下含有されることは許容される。
本発明の高強度めっき鋼板は、上記の成分組成に加えて、さらに、質量%で、
Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Co:1.000%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、およびBi:0.200%以下から選ばれる少なくとも1種の元素を単独で、あるいは組み合わせて含有しても良い。
Ti、NbおよびVは、それぞれ0.200%以下であれば粗大な析出物や介在物が多量に生成せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.200%以下にすることが好ましい。なお、Ti、NbおよびVの含有量の下限は特に規定しない。しかし、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成して鋼板の強度を上昇させることから、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Ti、NbおよびVを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.200%以下とする。Ti、NbおよびVを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。Ti、NbおよびVを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.100%以下とする。
TaおよびWは、それぞれ0.10%以下であれば粗大な析出物や介在物が多量に生成せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、TaおよびWの含有量はそれぞれ0.10%以下にすることが好ましい。なお、TaおよびWの含有量の下限は特に規定しない。しかし、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させることから、TaおよびWの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、TaおよびWを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.10%以下とする。Ta及びWを含有する場合の下限は、より好ましくは0.01%以上とする。Ta及びWを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.08%以下とする。
Bは、0.0100%以下であれば鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れを生成せず、鋼板の変形能を低下させないことから、ELが低下しない。そのため、Bの含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、Bの含有量の下限は特に規定しないが、焼鈍中にオーステナイト粒界に偏析し、焼入れ性を向上させる元素であることから、0.0003%以上とすることがより好ましい。したがって、Bを含有する場合には、その含有量は0.0100%以下とする。Bを含有する場合の下限は、より好ましくは0.0003%以上とする。Bを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.0080%以下とする。
Cr、MoおよびNiは、それぞれ1.00%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Cr、MoおよびNiの含有量はそれぞれ1.00%以下にすることが好ましい。なお、Cr、MoおよびNiの含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、それぞれ0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、Cr、MoおよびNiを含有する場合には、その含有量はそれぞれ1.00%以下とする。Cr、MoおよびNiを含有する場合の下限は、より好ましくは0.01%以上とする。Cr、MoおよびNiを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.80%以下とする。
Coは、1.000%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Coの含有量は1.000%以下にすることが好ましい。なお、Coの含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Coの含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Coを含有する場合には、その含有量は1.000%以下とする。Coを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。Coを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.800%以下とする。
Cuは、1.00%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Cuの含有量は1.00%以下にすることが好ましい。なお、Cuの含有量の下限は特に規定しないが、焼入れ性を向上させる元素であることから、Cuの含有量は0.01%以上とすることよりが好ましい。したがって、Cuを含有する場合には、その含有量は1.00%以下とする。Cuを含有する場合の下限は、より好ましくは、0.01%以上とする。Cuを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.80%以下とする。
Snは、0.200%以下であれば鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れを生成せず、鋼板の変形能を低下させないことから、ELが低下しない。そのため、Snの含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Snの含有量の下限は特に規定しないが、Snは焼入れ性を向上させる元素であることから、0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Snを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。Snを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。Snを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.100%以下とする。
Sbは、0.200%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Sbの含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Sbの含有量の下限は特に規定しないが、表層軟化厚みを制御し、強度調整を可能にする元素であることから、Sbの含有量は0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Sbを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。Sbを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。Sbを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.100%以下とする。
Ca、MgおよびREMは、それぞれ0.0100%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Ca、MgおよびREMの含有量は0.0100%以下にすることが好ましい。なお、Ca、MgおよびREMの含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の変形能を向上する元素であることから、それぞれ0.0005%以上とすることがより好ましい。したがって、Ca、MgおよびREMを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.0100%以下とする。Ca、MgおよびREMを含有する場合の下限は、より好ましくは0.0005%以上とする。Ca、MgおよびREMを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.0050%以下とする。
ZrおよびTeは、それぞれ0.100%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、ZrおよびTeの含有量は0.100%以下にすることが好ましい。なお、ZrおよびTeの含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、それぞれ0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、ZrおよびTeを含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.100%以下とする。ZrおよびTeを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。ZrおよびTeを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.080%以下とする。
Hfは、0.10%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Hfの含有量は0.10%以下にすることが好ましい。なお、Hfの含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、0.01%以上とすることがより好ましい。したがって、Hfを含有する場合には、その含有量は0.10%以下とする。Hfを含有する場合の下限は、より好ましくは0.01%以上とする。Hfを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.08%以下とする。
Biは、0.200%以下であれば粗大な析出物や介在物が増加せず、鋼板の極限変形能を低下させないことから、曲げ性が低下しない。そのため、Biの含有量は0.200%以下にすることが好ましい。なお、Biの含有量の下限は特に規定しないが、偏析を軽減する元素であることから、0.001%以上とすることがより好ましい。したがって、Biを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とする。Biを含有する場合の下限は、より好ましくは0.001%以上とする。Biを含有する場合の上限は、さらに好ましくは0.100%以下とする。
なお、上記したTi、Nb、V、Ta、W、B、Cr、Mo、Ni、Co、Cu、Sn、Sb、Ca、Mg、REM、Zr、Te、HfおよびBiについて、各含有量が好ましい下限値未満の場合には本発明の効果を害することがないため、不可避的不純物として含むものとする。
次に、本発明の高強度めっき鋼板の鋼組織について説明する。
フェライトの面積率:1%以上30%以下
十分な延性を確保するため、フェライトの面積率を1%以上にする必要がある。また、1180MPa以上のTS確保のため、軟質なフェライトの面積率を30%以下にする必要がある。なお、ここで云うフェライトとは、ポリゴナルフェライトやグラニュラーフェライトやアシキュラーフェライトを指し、比較的軟質で延性に富むフェライトのことである。好ましい下限は、3%以上である。好ましい上限は25%以下である。
フレッシュマルテンサイトの面積率:1%未満
フレッシュマルテンサイトの面積率が1%以上となるとフレッシュマルテンサイト内部の格子欠陥に水素がトラップされやすくなり、耐水素曲げ脆化特性を劣化させる。そのため、フレッシュマルテンサイトの面積率が1%未満であることが必要である。下限値は特に規定しないが、フレッシュマルテンサイトは強度向上に有効であるため、好ましくは0.1%以上である。
ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの面積率の和:35%以上90%以下
ベイナイトと焼戻しマルテンサイトは、曲げ性を高めるのに有効な組織である。ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの面積率の和が35%未満では、良好な曲げ性が得られない。このため、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの面積率の和は35%以上である必要がある。一方、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの面積率の和が90%を超えると、延性を担う所望の残留オーステナイトが得られないため、良好な延性が得られない。したがって、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの面積率の和は90%以下である必要がある。好ましい下限は45%以上である。また、好ましい上限は85%以下である。
なお、フェライト、フレッシュマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトおよびベイナイトの面積率を得るには、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を研磨後、3vol.%ナイタールで腐食する。次に、板厚1/4位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて2000倍の倍率で10視野観察する。得られた組織画像を用いて、Media Cybernetics社のImage-Proを用いて各組織(フェライト、フレッシュマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、ベイナイト)の面積率を10視野分算出し、それらの値を平均して求めることが出来る。また、上記の組織画像において、フェライトは灰色の組織(下地組織)、フレッシュマルテンサイトは白色の組織、焼戻しマルテンサイトは白色のマルテンサイトの内部に灰色の内部構造、ベイナイトは直線的な粒界を多く有する暗灰色を有する組織を呈している。
残留オーステナイトの面積率:6%以上
十分な延性を確保するため、残留オーステナイトの面積率を6%以上にする必要がある。好ましくは8%以上である。より好ましくは10%以上である。
なお、残留オーステナイトの面積率は、鋼板を板厚1/4位置から0.1mmの面まで研磨後、化学研磨によりさらに0.1mm研磨した面に対して測定した。具体的には、X線回折装置でCoKα線を用いて、fcc鉄の{200}、{220}、{311}面および、bcc鉄の{200}、{211}、{220}面の回折ピークの各々の積分強度比を測定し、得られた9つの積分強度比を平均化して求めた。
アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値:1.1以上
アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値が1.1以上であることは、本発明において極めて重要な構成案件である。良好な延性を確保するためには、Mnが濃化した安定な残留オーステナイトの面積率が高い必要がある。好ましくは1.2以上である。残留オーステナイト中の平均Mn量は、高ければ高いほど延性が向上するので上限値は特に定めないが、10.0を超えると延性の向上効果が飽和するため、10.0以下であることが好ましい。
残留オーステナイトおよびフェライト中のCおよびMn量は、FE-EPMA(Field Emission-Electron Probe Micro Analyzer:電界放出型電子プローブマイクロアナライザ)を用いて求める。具体的には、板厚1/4位置における圧延方向断面の各相へのCおよびMnの分布状態を定量化し、30個の残留オーステナイト粒および30個のフェライト粒のCおよびMn量分析結果の平均値により求めることができる。
残留オーステナイトとマルテンサイトから残留オーステナイトを識別するために、SEM(Scanning Electron Microscope)とEBSD(Electron Backscattered Diffraction)で同一視野を観察する。次いで、EBSDのPhase Map識別により、SEM像における残留オーステナイトを特定する。なお、残留オーステナイトのアスペクト比は、Photoshop elements 13を用いて、残留オーステナイト粒に外接する楕円を描画し、その長軸長さを短軸長さで除することで算出し、30個の残留オーステナイト粒のアスペクト比の平均値により求めることができる。
また、残留オーステナイトの平均円相当径は、Media Cybernetics社のImage-Proを用いて、30個の残留オーステナイト粒の面積を求め、円相当直径を算出し、それらの値を平均して求める。
鋼中拡散性水素量:0.3質量ppm以下
良好な耐水素曲げ脆化特性を確保するためには、鋼中拡散性水素量は0.3質量ppm以下とすることが重要である。好ましい上限は0.20質量ppm以下である。なお、鋼中拡散性水素量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、0.01質量ppm以上となりうる。
ここで、鋼中拡散性水素量の測定方法は、以下のとおりである。製品コイルから、長さが30mm、幅が5mmの試験片を採取する。溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、試験片の溶融亜鉛めっき層又は合金化溶融亜鉛めっき層を研削又はアルカリにより除去する。その後、試験片から放出される水素量を昇温脱離分析法(Thermal Desorption Spectrometry:TDS)によって測定する。具体的には、試験片を室温から300℃まで昇温速度200℃/hで連続加熱した後、室温まで冷却し、室温から210℃までに試験片から放出された積算水素量を測定して、鋼中拡散性水素量とする。
Mnγ eq.:5.0以上
Mnγ eq.が5.0以上であることは、本発明において重要な構成要件である。Mnγ eq.は残留オーステナイトの安定性を向上させ、めっき処理時に残留オーステナイトの分解を抑制し、良好なめっき処理後延性を得るために有効なパラメータである。Mnγ eq.が5.0未満では、残留オーステナイトの安定性が低下し、めっき処理後に延性が低下する。一方、上限は特に規定しないが、残留オーステナイトの過剰な安定化によりTRIP効果が発現しなくなるため、Mnγ eq.は250以下とすることが好ましい。より好ましくは、10.0以上200以下とする。ここで、Mnγ eq.は、次式(1)により算出する。
Mnγ eq.={ln([C]γ-0.2)+ln([Mn]γ-2.6)+4.30}×λγ/Dγ ・・・(1)
ここで、[C]γ、[Mn]γは夫々、全残留オーステナイト中の平均C量、平均Mn量(質量%)、
λγは全残留オーステナイトの平均アスペクト比、Dγは全残留オーステナイトの平均円相当径(μm)。
δLME:1.0以下
δLMEが1.0以下であることは本発明において極めて重要な構成案件である。δLMEは鋼板に含まれるC、Si、Mn濃度によりスポット溶接時のLME割れ感受性を低減させ、良好な耐LME性を得るために有効なパラメータである。δLMEが1.0超では、鋼板のLME割れ感受性が増加することで溶接時に割れを生じやすくなり、耐LME性が低下する。一方、下限は特に規定しないが、δLMEが0.2未満となるC、Si、Mn量では、1180MPa以上のTSが得られない場合があることから、0.2以上とすることが好ましい。より好ましい下限は0.3以上である。よりこのましい上限は0.9以下とする。ここで、δLMEは、次式(2)により算出する。
δLME=1/2×log{(1+[C])/(0.35-[C])}+{exp([Si]/3.23)-1}+{exp([Mn]/22)-1} ・・・(2)
ここで、[C]、[Si]、[Mn]は鋼板全体に含まれるC量、Si量、Mn量(質量%)である。
全ての残留オーステナイト中のC量をT組織におけるC量で除した値:1.0未満
組成とは、任意の温度でfccとbccの自由エネルギーが等しくなる組成であり、オーステナイトはfcc、フェライトやベイナイトはbccである。全ての残留オーステナイト中のC量をfccとbccの自由エネルギーが等しくなるT組成におけるC量よりも低くすることで、残留オーステナイトの加工によるマルテンサイト変態した後の硬さが低減する。その結果、軟質層との硬度差が緩和され、より良好な曲げ性を得られる。そのため、全ての残留オーステナイト中のC量をT組成におけるC量で除した値が1.0未満であることが好ましい。また、下限値は特に規定しないが、全ての残留オーステナイト中のC量をT組成におけるC量で除した値が0.1未満になると残留オーステナイトそのものの安定性が低下し、良好な延性が得られない場合がある。したがって、0.1以上とすることが好ましい。より好ましい下限は0.2以上である。また、より好ましい上限は0.9以下である。
ここでの全ての残留オーステナイト中のC量はX線回折装置でCoのKα線を用い、(220)面の回折ピークのシフト量と、下記[1]、[2]式を用いて算出する。
a=1.7889×√2/sinθ ・・・[1]
a=3.578+0.033[C]+0.00095[Mn] ・・・[2]
ここで、[1]、[2]式において、aはオーステナイトの格子定数(Å)であり、θは(220)面の回折ピーク角度を2で除した値(rad)である。[2]式において、[M]は全てのオーステナイト中の元素Mの質量%である。本発明では残留オーステナイト中の元素Mの質量%は鋼全体に占める質量%とした。
また、T組成におけるC量は、統合型熱力学計算ソフトウェアであるThermo-Calcを用いて、かつ、データベースはTCFE7を用いることで、鋼の成分とその含有量から一義的に計算することができる。計算されるT組成は、亜鉛めっき浴侵入直前のMs’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度で計算される組成である。なお、Ms’については後の製造方法の説明にて詳細を記載する。
本発明の鋼組織には、フェライト、フレッシュマルテンサイト、ベイナイト、焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイト以外に、パーライト、セメンタイト等の炭化物が、面積率で10%以下の範囲で含まれても、本発明の効果が損なわれることはない。
上記高強度めっき鋼板は、めっき層としてAl-Ni系めっき層を含むAl系めっき層を有していても良いが、亜鉛めっき層であることが好ましい。亜鉛めっき層は、合金化処理が施された合金化亜鉛めっき層であっても良い。
次に、本発明の製造方法について説明する。
鋼スラブの加熱温度
本発明において、特に限定はしないが、スラブの加熱温度は1100℃以上1300℃以下にすることが好ましい。鋼スラブの加熱段階で存在している析出物は、最終的にえられる鋼板内では粗大な析出物として存在し、強度に寄与しないため、鋳造時に析出したTi、Nb系析出物を再溶解させることが好ましい。そのため、鋼スラブの加熱温度は1100℃以上にすることが好ましい。また、スラブ表層の気泡、偏析などの欠陥をスケールオフし、鋼板表面の亀裂、凹凸を減少し、平滑な鋼板表面を達成する観点からも鋼スラブの加熱温度は1100℃以上にすることが好ましい。一方、鋼スラブの加熱温度が1300℃超では、酸化量の増加に伴いスケールロスが増大するため、鋼スラブの加熱温度は1300℃以下にすることが好ましい。より好ましくは、1150℃以上1250℃以下とする。
鋼スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましいが、造塊法や薄スラブ鋳造法などにより製造することも可能である。また、鋼スラブを製造した後、一旦室温まで冷却し、その後再度加熱する従来法を用いることができる。これに加え、室温まで冷却しないで、温片のままで加熱炉に装入する、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに圧延する直送圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。また、スラブは通常の条件で粗圧延によりシートバーとされ得る。しかし、加熱温度を低目にした場合は、熱間圧延時のトラブルを防止する観点から、仕上げ圧延前にバーヒーターなどを用いてシートバーを加熱することが好ましい。
熱間圧延の仕上げ圧延出側温度:750℃以上1000℃以下
加熱後の鋼スラブは、粗圧延および仕上げ圧延により熱間圧延され熱延鋼板となる。このとき、仕上げ温度が1000℃を超えると、酸化物(スケール)の生成量が急激に増大し、地鉄と酸化物の界面が荒れ、酸洗、冷間圧延後の表面品質が劣化する傾向にある。また、酸洗後に熱延スケールの取れ残りなどが一部に存在すると、延性や穴広げ性に悪影響を及ぼす。さらに、結晶粒径が過度に粗大となり、加工時にプレス品表面荒れを生じる場合がある。一方、仕上げ温度が750℃未満では圧延荷重が増大し、圧延負荷が大きくなることや、オーステナイトが未再結晶状態での圧下率が高くなることが生じる。その結果、異常な集合組織が発達し、最終製品における面内異方性が顕著となり、材質の均一性(材質安定性)が損なわれるだけでなく、延性そのものも低下する。従って、熱間圧延の仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下にする必要がある。好ましい下限は800℃以上とする。また、好ましい上限は950℃以下とする。
熱間圧延後の巻き取り温度:300℃以上750℃以下
熱間圧延後の巻き取り温度が750℃を超えると、熱延板組織のフェライトの結晶粒径が大きくなり、最終焼鈍板の所望の強度確保が困難となる。一方、熱間圧延後の巻き取り温度が300℃未満では、熱延板強度が上昇し、冷間圧延における圧延負荷が増大したり、板形状の不良が発生したりするため、生産性が低下する。従って、熱間圧延後の巻き取り温度を300℃以上750℃以下にする必要がある。好ましい下限は400℃以上とする。また、好ましい上限は650℃以下とする。
なお、熱延時に粗圧延板同士を接合して連続的に仕上げ圧延を行っても良い。また、粗圧延板を一旦巻き取っても構わない。また、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために仕上げ圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延時の摩擦係数は、0.10以上0.25以下とすることが好ましい。
このようにして製造した熱延鋼板に、必要に応じて酸洗を行う。酸洗は鋼板表面の酸化物の除去が可能であることから、最終製品の高強度めっき鋼板の良好な化成処理性やめっき品質の確保のために行うことが好ましい。また酸洗を行う場合には、一回の酸洗を行っても良いし、複数回に分けて酸洗を行っても良い。
Ac変態点以下の温度域で1800s超保持
Ac変態点以下の温度域で、1800s超保持することは、続く冷間圧延を施すための鋼板を軟質化させることができるので、必要に応じて実施する。Ac変態点超の温度域で保持する場合、オーステナイトが粒界から形成されてしまい、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加してしまう。これにより、残留オーステナイトの安定性が低下することで、めっき処理後延性が低下する。また、1800s以下で保持する場合、熱間圧延後のひずみが除去できず、鋼板の軟質化がなされない場合がある。
なお、熱処理方法は連続焼鈍やバッチ焼鈍のいずれの焼鈍方法でも構わない。また、前記の熱処理後、室温まで冷却するが、その冷却方法および冷却速度は特に規定せず、バッチ焼鈍における炉冷、空冷および連続焼鈍におけるガスジェット冷却、ミスト冷却、水冷などのいずれの冷却でも構わない。また、酸洗処理を施す場合は常法でよい。
冷間圧延
巻き取った後、必要に応じて酸洗を施した後、冷間圧延を行う。50%超の圧延率で冷間圧延を施すと、その後の焼鈍工程で形成される残留オーステナイトの粒径が微細になり、残留オーステナイト中のC量が著しく濃化してしまい、硬度が上昇して曲げ性が低下し、一方で、アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中のMn濃化が阻害され、延性が低下する。したがって、圧延率は50%以下とする。好ましい下限は5%以上、より好ましくは10%以上である。好ましい上限は45%以下、より好ましくは40%以下である。
Ac変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持(実施例の冷延板1回目焼鈍処理に対応)
Ac変態点-50℃未満の温度域で保持する場合、オーステナイト中にMnが濃化し、冷却中にマルテンサイト変態が生じず、アスペクト比の大きな残留オーステナイトの核を得ることが出来ない。その結果、その後の焼鈍工程(実施例の冷延板2回目焼鈍処理に対応)において、残留オーステナイトが粒界から形成されてしまい、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加してしまう。これにより、残留オーステナイトの安定性が低下することで、延性およびめっき処理後延性が低下する。一方、焼鈍温度の上限は特に規定しないが、Ac変態点+300℃超の温度域で保持する場合、オーステナイト中の炭素の拡散が促進され、炭素が表層から脱離し、所望の組織が得られないため、好ましくはAc変態点+300℃以下とする。
一方で、20s未満で保持する場合、十分な再結晶が行われず、所望の組織が得られないため、延性が低下する。一方、1800sを超えて保持する場合、Mn表面濃化が過剰となりめっき品質が劣化するだけでなく、焼鈍中のオーステナイト粒が粗大化することで、その後の冷却過程で形成される残留オーステナイトの核も粗大化してしまう。その結果、その後の焼鈍工程(実施例の冷延板2回目焼鈍処理に対応)において、残留オーステナイトが粒界から形成されてしまい、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加してしまう。これにより、残留オーステナイトの安定性が低下することで、延性およびめっき処理後延性が低下する。
マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却
マルテンサイト変態開始温度超の冷却停止温度の場合、変態するマルテンサイト量が少ないと、未変態オーステナイトが最終冷却で全てマルテンサイト変態してしまい、アスペクト比の大きな残留オーステナイトの核を得ることが出来ない。その結果、その後の焼鈍工程(実施例の冷延板2回目焼鈍処理に対応)において、残留オーステナイトが粒界から形成されてしまい、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加してしまう。その結果、残留オーステナイトの安定性が低下することで、延性およびめっき処理後延性が低下する。好ましい冷却停止温度は、マルテンサイト変態開始温度-250℃以上マルテンサイト変態開始温度-50℃以下である。
Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却
Bs-150℃未満の再加熱温度の場合、その後の焼鈍工程で形成される残留オーステナイト中にCが過剰に濃化し、曲げ性が低下し、一方でアスペクト比が大きな残留オーステナイト中へのMn濃化が阻害され、延性が低下する。Bs+150℃超の再加熱温度の場合、アスペクト比の大きな残留オーステナイトの核が分解し、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加し、所望の組織が得られないため、延性とめっき処理後延性が低下する。また、2s未満で保持する場合も同じく、アスペクト比の大きな残留オーステナイトの核を得ることが出来ず、所望の組織が得られないため、延性、およびめっき処理後延性が低下する。さらに1800sを超えて保持する場合、アスペクト比の大きな残留オーステナイトの核が分解し、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加し、所望の組織が得られないため、延性およびめっき処理後延性が低下する。なお、Bsは、以下の(3)式から求まる温度(℃)である。
Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
[C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
当該再加熱後に所定の時間保持した後、一旦室温まで冷却する。冷却方法は特に制限されず、公知の方法で良い。
Ac変態点-150℃からAc変態点の温度域までの加熱速度:2℃/s以上
Ac変態点-150℃からAc変態点の温度域まで2℃/s未満の加熱速度で加熱した場合、微細な安定性の高い残留オーステナイトの核が分解してしまう。その結果、その後の焼鈍工程(実施例の冷延板2回目焼鈍処理に対応)において、残留オーステナイトが粒界から形成されてしまい、アスペクト比の小さな残留オーステナイトが増加してしまう。これにより、残留オーステナイトの安定性が低下することで、延性およびめっき処理後延性が低下する。また、加熱速度の上限は特に規定しないが、加熱速度が200℃/s超となると過剰に微細なオーステナイトが生成する。このため残留オーステナイト中のC量が著しく濃化してしまい、硬度が上昇して曲げ性が低下するので、好ましくは200℃/s以下とする。より好ましい下限は3℃/s以上である。また、より好ましい上限は150℃/s以下とする。
Ac変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持(実施例の冷延板2回目焼鈍処理に対応)
Ac変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持することは、本発明において、極めて重要な発明構成要件である。Ac変態点未満の温度域で保持する場合、フェライト量が過剰となり残留オーステナイトが得られない。好ましくは、Ac変態点+20℃以上である。より好ましくはAc変態点+30℃以上である。また、好ましい上限は、Ac変態点以下である。また、20s未満の保持の場合、オーステナイト中にMnが濃化せず、安定な残留オーステナイトが得られないだけでなく、最終冷却後に焼入れマルテンサイト量が過剰となり、耐水素曲げ脆性および延性が低下する。さらに、600sを超えて保持する場合、焼鈍中にオーステナイトが粗大化するために、オーステナイトの安定性が低下し、所望の残留オーステナイト量が得られず、さらに、良好なめっき処理後延性を得ることができない。
Ms’以下の冷却停止温度まで冷却
Ms’超の冷却停止温度の場合、変態するマルテンサイト量が少なく、その後の再加熱で焼戻すマルテンサイトの量が少なく、所望の焼戻しマルテンサイト量が得られない。好ましくはMs’-250℃以上マルテンサイト変態開始温度-30℃以下である。
ここでMs’は次式(4)から算出される温度(℃)である。また、Mnγ eq.は、上述の式(1)から算出される。
Ms’=Ms×15/Mnγ eq. ・・・(4)
ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度(℃)であり、Mnγ eq.<15のとき、Mnγ eq.=15とする。
Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持、めっき処理を施し、室温まで冷却
Ms’未満の再加熱の場合、フレッシュマルテンサイトが焼戻されず、所望の組織が得られない。Ms’+350℃超の再加熱温度の場合、ベイナイト変態が遅延し、所望の組織が得られない。また、2s未満で保持する場合、ベイナイト変態の進行が不十分なため、所望の組織が得られない。一方、600s超の保持の場合、ベイナイト変態時に炭化物が析出し、残留オーステナイト中のC量が低下し、所望の組織が得られない。
当該温度で所定の時間保持した後、めっき処理を施し、室温まで冷却する。また、めっき処理後の冷却方法は特に限定されず、公知の方法で良い。
めっき処理
めっき処理として、亜鉛めっき処理、Al-Niめっきを含むAl系めっき処理等が挙げられるが、溶融亜鉛めっき処理、電気亜鉛めっき処理を含む亜鉛めっき処理が好ましい。溶融亜鉛めっき処理を施す場合には、前記焼鈍処理を施した鋼板を440℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴中に浸漬し、溶融亜鉛めっき処理を施し、その後、ガスワイピング等によって、めっき付着量を調整する。なお、溶融亜鉛めっきはAl量が0.08%以上0.30%以下である亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。
溶融亜鉛めっきの合金化処理を施す場合には、溶融亜鉛めっき処理後に、450℃以上600℃以下の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施す。600℃を超える温度で合金化処理を行うと、未変態オーステナイトがパーライトへ変態し、所望の残留オーステナイトの面積率を確保できず、延性が低下する場合がある。したがって、亜鉛めっきの合金化処理を行うときは、450℃以上600℃以下の温度域で亜鉛めっきの合金化処理を施すことが好ましい。
その他の製造方法の条件は、特に限定しないが、生産性の観点から、上記の焼鈍は、連続焼鈍設備で行うことが好ましい。また、焼鈍、溶融亜鉛めっき、亜鉛めっきの合金化処理などの一連の処理は、溶融亜鉛めっきラインであるCGL(Continuous Galvanizing Line)で行うのが好ましい。
50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持
最後の熱処理として、50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持することは、本発明において重要な発明構成要件である。50℃未満の温度域内または2s未満で保持する場合、フレッシュマルテンサイト量が過剰に生成され、さらに鋼中拡散性水素が鋼板から放出されないため、耐水素曲げ脆化特性が低下する。一方、400℃超の温度域で保持する場合、残留オーステナイトの分解により、十分な体積率の残留オーステナイトが得られず鋼の延性が低下する。保持時間の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、43200s以下となりうる。
なお、上記の「高強度めっき鋼板」に、形状矯正や表面粗度の調整等を目的にスキンパス圧延を行うことができる。スキンパス圧延の圧下率は、0.1%以上2.0%以下の範囲が好ましい。0.1%未満では効果が小さく、制御も困難であることから、これが良好範囲の下限となる。また、2.0%を超えると、生産性が著しく低下するので、これを良好範囲の上限とする。なお、スキンパス圧延は、オンラインで行っても良いし、オフラインで行っても良い。また、一度に目的の圧下率のスキンパスを行っても良いし、数回に分けて行っても構わない。また、樹脂や油脂コーティングなどの各種塗装処理を施すこともできる。
表1、2に示す成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にてスラブとした。得られたスラブを1250℃まで再加熱した後、表3、4に示す条件で溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を得た。なお、GI、GAの板厚は1.0mm以上1.8mm以下であった。溶融亜鉛めっき浴は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)では、Al:0.19質量%含有亜鉛浴を使用し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)では、Al:0.14質量%含有亜鉛浴を使用し、浴温は465℃とした。めっき付着量は片面あたり45g/m(両面めっき)とし、GAは、めっき層中のFe濃度を9質量%以上12質量%以下になるように調整した。得られた鋼板の断面の鋼組織を上述の方法で観察し、引張特性、曲げ性、耐LME性について調査を行い、その結果を表5~8に示した。
Figure 0007468816000001
Figure 0007468816000002
マルテンサイト変態開始温度および、Ac変態点とAc変態点は以下の式を用いて求めた。
マルテンサイト変態開始温度Ms(℃)=550-350×(%C)-40×(%Mn)-10×(%Cu)-17×(%Ni)-20×(%Cr)-10×(%Mo)-35×(%V)-5×(%W)+30×(%Al)
Ac変態点(℃)=751-16×(%C)+11×(%Si)-28×(%Mn)-5.5×(%Cu)-16×(%Ni)+13×(%Cr)+3.4×(%Mo)
Ac変態点(℃)=910-203√(%C)+45×(%Si)-30×(%Mn)-20×(%Cu)-15×(%Ni)+11×(%Cr)+32×(%Mo)+104×(%V)+400×(%Ti)+200×(%Al)
ここで、(%C)、(%Si)、(%Mn)、(%Ni)、(%Cu)、(%Cr)、(%Mo)、(%V)、(%Ti)、(%W)、(%Al)は、それぞれの元素の含有量(質量%)であり、含有しない場合にはゼロとする。
Figure 0007468816000003
Figure 0007468816000004
Figure 0007468816000005
Figure 0007468816000006
Figure 0007468816000007
Figure 0007468816000008
引張試験は、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるようにサンプルを採取したJIS5号試験片を用いて、JIS Z 2241(2011年)に準拠して行った。TS(引張強さ)、EL(全伸び)および、GAの場合は合金化後延性(EL/EL’)を測定した。ここで、EL’は合金化せずに通板した場合の全伸びを示し、GIの場合は、EL=EL’である。また、機械的特性は以下の場合を良好と判断した。
EL≧12%、且つ、EL/EL’≧0.7
曲げ試験は、各焼鈍鋼板から、圧延方向が曲げ軸(Bending direction)となるように幅30mm、長さ100mmの曲げ試験片を採取し、JIS Z 2248(1996年)のVブロック法に基づき測定を実施した。押し込み速度100mm/秒、各曲げ半径でn=3の試験を実施し、曲げ部外側について実体顕微鏡で亀裂の有無を判定し、亀裂が発生していない最小の曲げ半径を限界曲げ半径Rとした。なお、本発明では、90°V曲げでの限界曲げR/t≦2.5(t:鋼板の板厚)を満足する場合を、鋼板の曲げ性が良好と判定した。
耐水素曲げ脆化特性は上記の曲げ試験から次のように評価した。上記で測定した鋼板におけるR/tを、同一鋼板の鋼中水素量が0.00質量ppmのときの(R/t)’で除した値が1.4未満のとき、本発明では耐水素脆化特性が良好と判定した。なお、(R/t)’は、同一鋼板を大気中に長時間放置することで内部の鋼中水素を低減させた。その後、TDS(Thermal Desorption Spectrometry)により鋼中水素量が0.00質量ppmになったことを確認してから、曲げ試験を行うことで測定した。
耐LME性の評価は、圧延直角方向:100mm、圧延方向:30mmとなるサンプルを鋼板から採取して行った。評価サンプルを2枚重ねて、溶接ガンに取付けられたサーボモータ加圧式で単相直流(50Hz)の抵抗溶接機を用いて抵抗スポット溶接を施す際、打角5°つけて行い、溶接の加圧力は3.5kNとした。ここで、スポット溶接における打角は、スポット溶接部材の断面において、ナゲットの長径を通る線と、鋼板の表面に平行な線とがなす角θのことと定義する。また、溶接電流パターンは、得られるナゲット径が4.0√tとなるように制御した。ここで、tは鋼板1枚の板厚(1.4mm)である。抵抗スポット溶接においては、DR6型のCuCr電極を使用し、重ね合わせた評価サンプルと電極のクリアランスは1.5mmとした。なお、耐LME性の評価におけるホールド時間は5Cycles/50Hzである。
1つの評価につき、10個の評価サンプルをスポット溶接し、溶接部材を作製し、光学顕微鏡(倍率100倍)を用いてスポット溶接部材の断面を観察して耐LME性の評価を行った。割れ発生した部材無しの場合は◎、割れ発生した部材が2個以下で、かつ、割れの平均深さが100μm未満の場合は○、割れ発生した部材が2個以下で、かつ、割れの平均深さが100μm以上の場合は△、割れ発生した部材が3個以上の場合は×と判定した。実施例において、×と判定された鋼は比較例とした。
本発明例の高強度めっき鋼板は、いずれも1180MPa以上のTSを有し、成形性に優れた高強度めっき鋼板が得られている。一方、比較例では、TS、EL、めっき処理後延性、曲げ性、耐水素曲げ脆化特性、耐LME性の少なくとも一つの特性が劣っている。
本発明によれば、1180MPa以上のTS(引張強さ)を有する成形性、耐水素曲げ脆化特性および耐LME性に優れた高強度めっき鋼板が得られる。本発明の高強度めっき鋼板を、例えば、自動車構造部材に適用することにより車体軽量化による燃費改善を図ることができ、産業上の利用価値は非常に大きい。

Claims (15)

  1. 質量%で、
    C:0.030%以上0.300%以下、
    Si:0.01%以上2.50%以下、
    Mn:0.10%以上8.00%以下、
    P:0.100%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:0.100%以下、
    N:0.0100%以下、および、
    O:0.0100%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
    板厚1/4位置において、
    面積率で、フェライトが1%以上30%以下、フレッシュマルテンサイト量が1%未満であり、ベイナイトと焼戻しマルテンサイトの和が35%以上90%以下であり、残留オーステナイト量が6%以上である鋼組織と、を有し、
    アスペクト比が2.0以上の残留オーステナイト中の平均Mn量(質量%)をフェライト中の平均Mn量(質量%)で除した値が1.1以上であり、鋼中拡散性水素量が0.3質量ppm以下であり、かつ、
    (1)式から求められるMnγ eq.が5.0以上であり、
    (2)式から求められるδLMEが1.0以下である、高強度めっき鋼板。
    Mnγ eq.={ln([C]γ-0.2)+ln([Mn]γ-2.6)+4.30}×λγ/Dγ ・・・(1)
    δLME=1/2×log{(1+[C])/(0.35-[C])}+{exp([Si]/3.23)-1}+{exp([Mn]/22)-1} ・・・(2)
    ここで、[C]γ、[Mn]γは夫々、全残留オーステナイト中の平均C量、平均Mn量(質量%)、
    λγは全残留オーステナイトの平均アスペクト比、
    Dγは全残留オーステナイトの平均円相当径(μm)、
    [C]、[Si]、[Mn]は鋼板全体に含まれるC量、Si量、Mn量(質量%)である。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、
    V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、
    W:0.10%以下、B:0.0100%以下、
    Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、
    Co:1.000%以下、Ni:1.00%以下、
    Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、
    Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、
    Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、
    Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、
    Hf:0.10%以下、Bi:0.200%以下、
    のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1に記載の高強度めっき鋼板。
  3. 全ての残留オーステナイト中のC量をT組織におけるC量で除した値が1.0未満である、請求項1に記載の高強度めっき鋼板。
  4. 全ての残留オーステナイト中のC量をT 組織におけるC量で除した値が1.0未満である、請求項2に記載の高強度めっき鋼板。
  5. 前記高強度めっき鋼板が溶融亜鉛めっき層を有する、請求項1~のいずれかに記載の高強度めっき鋼板。
  6. 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項5に記載の高強度めっき鋼板。
  7. 請求項1に記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼スラブを、加熱し、仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下で熱間圧延し、300℃以上750℃以下で巻き取り、50%以下の圧延率で冷間圧延を施し、
    その後、Ac変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、
    (3)式から求まるBs温度において、Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却し、
    その後、Ac変態点-150℃からAc変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持後、(4)式から求まるMs’以下の冷却停止温度まで冷却し、
    Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却し、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持する、高強度めっき鋼板の製造方法。
    Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
    [C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
    Ms’=Ms×15/Mnγ eq. ・・・(4)
    ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度であり、Mnγ eq.<15のとき、Mnγ eq.=15とする。
  8. 請求項2に記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼スラブを、加熱し、仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下で熱間圧延し、300℃以上750℃以下で巻き取り、50%以下の圧延率で冷間圧延を施し、
    その後、Ac 変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、
    (3)式から求まるBs温度において、Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却し、
    その後、Ac 変態点-150℃からAc 変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac 変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持後、(4)式から求まるMs’以下の冷却停止温度まで冷却し、
    Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却し、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持する、高強度めっき鋼板の製造方法。
    Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
    [C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
    Ms’=Ms×15/Mn γ eq. ・・・(4)
    ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度であり、Mn γ eq. <15のとき、Mn γ eq. =15とする。
  9. 請求項3に記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼スラブを、加熱し、仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下で熱間圧延し、300℃以上750℃以下で巻き取り、50%以下の圧延率で冷間圧延を施し、
    その後、Ac 変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、
    (3)式から求まるBs温度において、Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却し、
    その後、Ac 変態点-150℃からAc 変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac 変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持後、(4)式から求まるMs’以下の冷却停止温度まで冷却し、
    Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却し、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持する、高強度めっき鋼板の製造方法。
    Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
    [C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
    Ms’=Ms×15/Mn γ eq. ・・・(4)
    ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度であり、Mn γ eq. <15のとき、Mn γ eq. =15とする。
  10. 請求項4に記載の高強度めっき鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼スラブを、加熱し、仕上げ圧延出側温度を750℃以上1000℃以下で熱間圧延し、300℃以上750℃以下で巻き取り、50%以下の圧延率で冷間圧延を施し、
    その後、Ac 変態点-50℃以上の温度域で20s以上1800s以下保持後、マルテンサイト変態開始温度以下の冷却停止温度まで冷却し、
    (3)式から求まるBs温度において、Bs-150℃以上Bs+150℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上1800s以下保持後、室温まで冷却し、
    その後、Ac 変態点-150℃からAc 変態点の温度域まで2℃/s以上の加熱速度で加熱し、Ac 変態点以上の温度域で20s以上600s以下保持後、(4)式から求まるMs’以下の冷却停止温度まで冷却し、
    Ms’以上Ms’+350℃以下の範囲内の再加熱温度まで再加熱後、前記再加熱温度で2s以上600s以下保持後、めっき処理を施し、室温まで冷却し、さらに50℃以上400℃以下の温度域内で2s以上保持する、高強度めっき鋼板の製造方法。
    Bs=732-202×[C]-108×[Si]-85×[Mn]-39×[Mo] ・・・(3)
    [C]、[Si]、[Mn]、[Mo]は鋼板全体に含まれる、C量、Si量、Mn量、Mo量(質量%)であり、含まれない場合にはゼロとする。
    Ms’=Ms×15/Mn γ eq. ・・・(4)
    ただし、Msはマルテンサイト変態開始温度であり、Mn γ eq. <15のとき、Mn γ eq. =15とする。
  11. 前記めっき処理が亜鉛めっき処理である、請求項7~10のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
  12. 前記亜鉛めっき処理に続いて、450℃以上600℃以下で合金化処理を施す、請求項11に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
  13. 前記巻き取り後、冷間圧延前に、Ac変態点以下の温度域で1800s超保持する、請求項7~10のいずれかに記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
  14. 前記巻き取り後、冷間圧延前に、Ac 変態点以下の温度域で1800s超保持する、請求項11に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
  15. 前記巻き取り後、冷間圧延前に、Ac 変態点以下の温度域で1800s超保持する、請求項12に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
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