本発明に係る車両の走行支援方法及び走行支援装置は、車両の速度制御や操舵制御を自律的に実行する自律走行制御に適用できるほか、ドライバーが手動運転する際に適切な走行経路を提示してドライバーの手動運転を支援するナビゲーションシステムにも適用できる。車両の自律走行制御に適用する場合、速度制御と操舵制御の両方を自律制御するほか、速度制御と操舵制御の一方を自律制御し、他方を手動制御する場合にも適用できる。
以下、自律走行制御機能を備えた車両に、本発明に係る車両の走行支援方法及び走行支援装置を適用した一例を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、左側通行の法規を有する国にて、車両が左側通行で走行することが前提となっている。右側通行の法規を有する国では、車両が右側通行で走行するため、以下の説明の右と左を対称にして読み替えるものとする。
[走行支援システムの構成]
図1は、本実施形態の走行支援システム1000の構成を示すブロック図である。走行支援システム1000は、検出装置1、ナビゲーション装置2、地図情報3、自車情報検出装置4、環境認識装置5、物体認識装置6、走行支援装置100、及び車両制御装置200を備える。これらの装置は、図1に示すように、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
検出装置1は、自車両の前方、側方、後方の全周囲など、自車両の周囲に位置する障害物の存在を含む走行環境に関する情報その他の自車両の周囲の状況を検出する。検出装置1は、自車両周囲の環境情報を認識するための撮像装置、例えばCCD等の撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどを含む。撮像装置は車両に設置され、車両の周囲を撮像し、車両の周囲に存在する対象車両を含む画像データを取得する。画像データは、走行支援装置100により、所定の時間間隔で取得される。
検出装置1は、測距装置を含み、当該測距装置は、自車両と対象物との相対距離および相対速度を演算する。測距装置により検出された対象物の情報は、走行支援装置100により、所定の時間間隔で取得される。測距装置としては、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。
検出装置1として、一又は複数の撮像装置と、測距装置とを採用することができる。検出装置1は、撮像装置の検知情報と測距装置の検知情報など複数の異なる装置の情報を統合し、もしくは合成することにより、検知情報において不足している情報を補完し、自車両周囲の環境情報とするセンサフュージョン機能を備える。このセンサフュージョン機能は、環境認識装置5や物体認識装置6やその他のコントローラやロジックに組み込まれるようにしてもよい。
検出装置1が検出する対象物は、道路の車線境界線、センターライン、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限、車線閉鎖を含む。検出装置1が検出する対象物は、自車両以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、歩行者を含む。検出装置1が検出する対象物は、障害物を含む。障害物は、自車両の走行に影響を与える可能性がある対象物である。検出装置1は、少なくとも障害物に関する情報を検知する。検出装置1が検出する対象物は、GPS等の自車両が走行する位置である自己位置情報と、自車両と対象物の相対位置(距離と方向)により、対象物の位置情報を検出されることができる。また検出装置1が検出する対象物は、地図情報と、オドメトリによる自車両が走行する位置である自己位置情報と、自車両と対象物の相対位置(距離と方向)とにより、対象物の位置情報を地図情報と対応させて検出されることができる。
ナビゲーション装置2は、地図情報3を参照し、自車情報検出装置4により検出された現在位置から目的地までの走行レーン/走行経路を算出する。走行レーン又は走行経路は、自車両が走行する道路、方向(上り/下り)及び車線が識別された線形である。走行経路は、走行レーンの情報を含む。以下、走行レーンをレーンと省略して記載することもある。
地図情報3は、走行支援装置100、車載装置、又はサーバ装置に設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記憶され、経路生成及び/又は運転制御に用いられる。地図情報3は、道路情報、施設情報、それらの属性情報を含む。道路情報及び道路の属性情報には、道路幅、曲率半径、路肩構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)、道路の合流地点、分岐地点、車線数の増加・減少位置等の情報が含まれている。地図情報3は、いわゆる高精細地図情報であり、高精細地図情報によれば、レーンごとの移動軌跡を把握できる。高精細地図情報は、各地図座標における二次元位置情報及び/又は三次元位置情報、各地図座標における道路・レーンの境界情報、道路属性情報、レーンの上り・下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報を含む。
また、地図情報3は、自車両が走行する走路とそれ以外との境界を示す走路境界の情報を含む。自車両が走行する走路とは、自車両が走行するための道であり、走路の形態は特に限定されない。走路境界は、自車両の進行方向に対して左右それぞれに存在する。走路境界の形態は特に限定されず、例えば、路面標示、道路構造物が挙げられる。路面標示の走路境界としては、例えば、車線境界線、センターラインが挙げられる。また道路構造物の走路境界としては、例えば、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁が挙げられる。なお、走路境界が明確に特定できない地点(例えば、交差点内)に対して、地図情報3には予め走路境界が設定されている。予め設定された走路境界は、架空の走路境界であって実際に存在する路面標示または道路構造物ではない。
自車情報検出装置4は、自車両の状態に関する検知情報を取得する。自車両の状態とは、自車両の現在位置、速度、加速度、姿勢、車両性能を含む。これらは、自車両の車両制御装置200から取得してもよいし、自車両の各装置から取得してもよい。自車情報検出装置4は、自車両のGPS(Global Positioning System)ユニット、ジャイロセンサ、オドメトリから取得した情報に基づいて自車両の現在位置を取得する。自車情報検出装置4は、自車両の車速センサから自車両の速度及び加速度を取得する。また、自車情報検出装置4は、自車両の慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)から自車両の姿勢データを取得する。
環境認識装置5は、検出装置1が取得した位置情報、自車両周囲の画像情報及び測距情報から得られた物体認識情報と、地図情報に基づいて構築された環境に関する情報とを認識する。環境認識装置5は、複数の情報を統合することにより、自車両の周囲の環境情報を生成する。物体認識装置6も、地図情報3を用いて、検出装置1が取得した自車両周囲の画像情報及び測距情報を用いて、自車両周囲の物体の認識や動きを予測する。
車両制御装置200は、電子コントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の運転を律する駆動機構210を電子的に制御する。車両制御装置200は、駆動機構210に含まれる駆動装置、制動装置、および操舵装置を制御して、目標車速及び目標走行経路に従って自車両を走行させる。車両制御装置200には、走行支援装置100から、自車両の運転計画に基づく制御命令が入力される。自車両の目標車速、目標走行経路、及び運転計画については後述する。
駆動機構210には、走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、動力伝達装置を制御する駆動装置、車輪を制動する制動装置、及びステアリングホイール(いわゆるハンドル)の操舵角に応じて総舵輪を制御する操舵装置などが含まれる。車両制御装置200には、走行支援装置100から、目標車速に応じた制御信号が入力される。車両制御装置200は、走行支援装置100から入力される制御信号に基づいてこれら駆動機構210の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転制御を実行する。駆動機構210の駆動装置に制御情報を送信することにより、車両の速度制御を自律的に制御することができる。
また、車両制御装置200は、地図情報3が記憶するレーン情報と、環境認識装置5が認識した情報と、物体認識装置6で取得した情報とのうちの何れか一つ以上を用いて、自車両が目標走行経路に対して所定の横位置(車両の左右方向の位置)を維持しながら走行するように、駆動機構210の操舵装置の制御を行う。操舵装置は、ステアリングアクチュエータを備え、ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。車両制御装置200には、走行支援装置100から、目標走行経路に応じた制御信号が入力される。駆動機構210の操舵装置は、車両制御装置200から入力される制御信号に基づいて車両の操舵制御を実行する。駆動機構210の操舵装置に制御情報を送信することにより、車両の操舵制御を自律的に制御することができる。
走行支援装置100は、走行支援システム1000に含まれる装置を制御して協働させることで自車両の走行を制御し、設定された走行経路に沿った自車両の走行を支援する装置である。走行支援装置100は、プロセッサ10により自律走行支援を実現する。プロセッサ10は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、ROM12に格納されたプログラムを実行することで、走行支援装置100として機能するための動作回路であるCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13とを備える。
本実施形態の走行支援装置100で用いるプログラムは、走行支援装置100による自律走行支援を実現するための機能ブロックである自律走行支援部110を含む。自律走行支援部110は、設定された経路に沿って自車両が走行するための走行動作を自律制御する機能を有する。自律走行支援部110は、目的地設定部120、経路計画部130、運転計画部140、走行可能領域算出部150、経路算出部160、及び運転行動制御部170を備える。図1には、各部を便宜的に抽出して示す。
[走行支援システムの処理]
図2は、図1の走行支援システム1000の情報処理手順を示すフローチャートの一例である。以下、図2を参照して、走行支援システム1000の処理手順を説明する。なお、図2に示すルーチンのステップは、プロセッサ10により実行される。
まず、図2のステップS1にて、目的地設定部120の機能により、自車情報検出装置4の検出結果に基づいて、自車両の現在位置を取得する処理を実行する。続くステップS2にて、自車両の目的地を設定する処理を実行する。目的地は、ユーザが入力したものであってもよいし、他の装置により予測されたものであってもよい。続くステップS3にて、経路計画部130の機能により、地図情報3を含む各種検出情報を取得する。続くステップS4にて、経路計画部130の機能により、目的地設定部120によって設定された目的地に対する走行レーン(又は走行経路)を設定する。走行レーンは、地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて設定される。また、走行経路には、自車両が走行する道路を設定するが、道路に限らず、道路内において自車両が走行する車線を設定することもできる。
続くステップS5にて、運転計画部140の機能により、経路上の各地点における自車両の運転行動を計画する処理を実行する。運転計画は、各地点における進行(GO)、停止(No-GO)といった運転行動が規定される。例えば、交差点を右折する場合では、停止線の位置で停止するのか否かの判定や、対向車線の車両に対する進行判定を実行する。
続くステップS6にて、ステップS5で計画された運転行動を実行するために、走行可能領域算出部150の機能により、地図情報3や自己位置情報に加え、環境認識装置5や物体認識装置6から得られた情報を用いて、自車両の周囲で走行可能な領域(走行可能領域ともいう)を算出する処理を実行する。走行可能領域は、自車両が走行する車線内に限られず、自車両が走行する車線に隣接する車線(隣接車線ともいう)であってもよい。また走行可能領域は、自車両が走行可能な領域であればよく、道路のうち車線として認識されている領域以外であってもよい。
続くステップS7にて、経路算出部160の機能により、自車両が走行する目標走行経路を生成する処理を実行する。これに加えて、運転行動制御部170により、目標走行経路に沿って走行するときの目標車速、及び目標車速のプロファイルを算出する。ここで、目標車速に代えて、又はこれとともに、現在の車速に対しての目標減速度及び目標加速度、及びそれらのプロファイルを算出してもよい。また、算出した目標車速を、目標走行経路の生成処理にフィードバックして、車両の挙動変化及び車両の乗員が違和感を覚える動き(挙動)を抑制するように、目標走行経路を生成するようにしてもよい。生成した目標走行経路を目標車速の算出処理にフィードバックして、車両の挙動変化及び車両の乗員が違和感を覚える動き(挙動)を抑制するように、目標車速を算出するようにしてもよい。
ステップS8にて、生成した目標走行経路を自車両に走行させる運転計画を立案する処理を実行する。また、同ステップにて、算出した目標車速の速度で自車両を走行させる運転計画を立案する処理を実行する。そして、続くステップS9にて、運転計画に基づく制御命令、制御指令値を車両制御装置200に出力し、各種アクチュエータである駆動機構210を動作させる。
車両制御装置200は、プロセッサ10からの指令値に基づいて、自車両の走行位置を制御する縦力及び横力を入力する。これらの入力に従い、自車両が目標とする目標走行経路に追従して自律的に走行するように、車体の挙動及び車輪の挙動が制御される。これらの制御に基づいて、車体の駆動機構210の駆動アクチュエータ、制動アクチュエータの少なくとも一方、必要に応じて操舵装置のステアリングアクチュエータが自律的に動作し、目的地に至る自律的な運転制御が実行される。もちろん、手動操作に基づく指令値に従い、駆動機構210を操作することもできる。
[自律走行支援部の構成]
走行支援装置100は、図2のステップS7で目標走行経路を生成するときに、経路算出部160の機能を用いる。本実施形態の経路算出部160は、自車両が走行する目標走行経路を生成する処理を実行するが、そのための予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル、及び第2車線変更リスクポテンシャルを求めるため、たとえば図3に示す機能ブロックを備える。すなわち、本実施形態の経路算出部160は、軌跡取得部1601、物体分類部1602、情報蓄積部1603、記憶部1604、予測リスクマップ生成部1605、設定経路読込み部1609、車線変更要否判定部1610、第1車線変更リスク判定部1611、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612、第2車線変更リスク判定部1613、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614、車線変更リスクポテンシャル統合部1615、顕在リスクマップ学習部1616、顕在リスクマップ生成部1617、リスクマップ統合部1618、及び行動決定部1619を備える。また、予測リスクマップ生成部1605は、リスクポテンシャル計算部1606、遭遇確率計算部1607、及び予測リスクポテンシャル生成部1608を備える。なお、第2車線変更リスク判定部1613、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614、及び車線変更リスクポテンシャル統合部1615は、必要に応じて省略することができる。
図1及び図3に示す経路算出部160は、車両に設けたものとして以下の実施形態を説明するが、本発明に係る経路算出部160、特に図3の物体分類部1602、情報蓄積部1603、記憶部1604、予測リスクマップ生成部1605、リスクポテンシャル計算部1606、遭遇確率計算部1607、予測リスクポテンシャル生成部1608、設定経路読込み部1609、車線変更要否判定部1610、第1車線変更リスク判定部1611、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612、第2車線変更リスク判定部1613、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614、車線変更リスクポテンシャル統合部1615、顕在リスクマップ学習部1616、顕在リスクマップ生成部1617、リスクマップ統合部1618、及び行動決定部1619は、必ずしも車両側に備わっている必要はなく、これらの一部又は全部がサーバなどに備わっていてもよい。
経路算出部160を構成する各部の一部又は全部が、サーバなど車両以外に設けられ、残りの各部が車両に設けられている場合、車両とサーバとの間の情報の送受信は、インターネットなどの電気通信回線網を介してリアルタイムに行うことができる。顕在リスクポテンシャル、予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル及び第2車線変更リスクポテンシャルのうち一部又は全部をサーバにおいて算出した場合には、これらのうちの少なくとも1つを用いて車両の走行を自律制御するときに、自己位置情報に対応した顕在リスクポテンシャル、予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル及び第2車線変更リスクポテンシャルをサーバから取得することができる。
また、予測リスクポテンシャル生成部1608で生成される予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612で生成される第1車線変更リスクポテンシャル、及び第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614で生成される第2車線変更リスクポテンシャルは、サーバにリスクポテンシャルを蓄積する時など、目標経路を生成する前に予めサーバで算出しておいてもよいし、自律走行支援による走行中で算出してもよい。さらに、顕在リスクマップ生成部1617で生成される顕在リスクマップ、予測リスクマップ生成部1605で生成される予測リスクマップ及びリスクマップ統合部1618で生成される統合リスクマップのいずれかが、サーバで生成され、その他が車両で生成されてもよい。
さらに予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル、及び第2車線変更リスクポテンシャルは、蓄積したデータから算出してもよいし、道路交通システムのようなインフラから入手できる工事や渋滞などの情報を基に算出してもよい。以下、各部について説明する。
<情報の蓄積>
軌跡取得部1601は、車両の周辺の交通参加者のそれぞれの軌跡を取得する機能を有する。交通参加者には、自動車、歩行者、自転車、バイク、その他の物体(工事区間などの障害物等)が含まれる。また自動車には、先行車両、駐車車両、最後尾の車両、流出車両(現在の車線から他車線に分岐する車両)、合流車両(他車線から現在の車線に合流する車両)、障害になる車両、その他の車両が含まれる。また歩行者には、子供・老人・その他の年齢に応じた歩行者、停止中・歩行中・ランニング中の歩行者が含まれる。また自転車には、子供・老人・その他の年齢に応じた自転車、停止中・低速走行中・高速走行中の自転車が含まれる。またバイクには、先行バイク、停車中のバイク、最後尾のバイク、流出バイク(現在の車線から他車線に分岐するバイク)、合流バイク(他車線から現在の車線に合流するバイク)、障害になるバイク、その他のバイクが含まれる。
軌跡取得部1601は、自車両が任意の場所を走行中に当該自車両がプローブカーとなり、撮像装置や測距装置その他の検出装置1を用いて、交通参加者その他の物体を検出して追跡し、当該交通参加者の位置・速度・方向の各情報を時間スタンプとともに、物体分類部1602へ送出する。物体分類部1602は、軌跡取得部1601から読み込んだ交通参加者その他の物体の位置・速度・方向・時間の各情報を、上述した交通参加者その他の物体の分類基準に基づいて分類した上で、情報蓄積部1603と、顕在リスクマップ学習部1616へ送出する。情報蓄積部1603へ送出される交通参加者その他の物体の位置・速度・方向・時間の各情報は、その後の走行支援要求に対する予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル、及び第2車線変更リスクポテンシャルの生成に供される。一方、顕在リスクマップ学習部1616へ送出される交通参加者その他の物体の位置・速度・方向・時間の各情報は、現在行われている走行支援に対する顕在リスクマップの生成に供される。
軌跡取得部1601による軌跡の取得は、必ずしも自車両で行われる必要はなく、たとえば、自車両以外の他車両、専ら交通参加者の軌跡を取得する用途に用いる車両(つまりプローブカー)などを用いて取得してもよい。本実施形態では、車両の走行状態の検出を含む、交通参加者の軌跡を取得する車両を検出車両というものとする。検出車両には、自車両が含まれる。交通参加者の軌跡の取得は自車両を用いたものに限られないため、情報蓄積部1603及び記憶部1604をサーバに設け、複数の検出車両で検出された物体に関する情報を、当該情報蓄積部1603や記憶部1604に併せて蓄積することもできる。この場合、物体を検出した車両と、リスクポテンシャルの情報を使用する車両は必ずしも一致しなくてよい。
物体分類部1602は、交通参加者その他の物体を上述したように分類することに加え、本実施形態では、周辺物体の軌跡取得部1601で取得された、交通参加者を含む物体を、車線を長時間閉塞する物体、車線を一時的に閉塞する物体、交通流を妨げる物体又は部分的に交通流を妨げる物体のいずれかに分類する。たとえば、検出した物体が、駐車中の車両である場合又は工事区間である場合は、車線を長時間閉塞する物体に分類し、検出した物体が、右左折待ちの車両又は停車中のバスなど、現在は動きが停止しているが時間が経過すれば交通流が解消する場合は、車線を一時的に閉塞する物体に分類する。また、検出した物体が、合流する車両又は車線特有の渋滞車両など、動きが停止していないまでも交通流を乱す場合は、交通流を妨げる物体に分類し、検出した物体が、車線を歩行する歩行者、自転車又は二輪車など、自車両の横方向への回避により走行を継続できる可能性がある物体である場合は、部分的に交通流を妨げる物体に分類する。
検出した物体は、予めこれらの分類ごとにリスクポテンシャルが設定され、後述するリスクポテンシャル計算部1606により分類ごとのリスクポテンシャルの値が用いられる。ここでいうリスクポテンシャルとは、障害物への自車両の接近リスクの高さの指標(リスク感指標)を意味し、リスクポテンシャルの値が大きいほど、自車両の障害物に対する接近リスクが高いことになる。リスク感の指標であるため、相対的数値が用いられる。たとえば、交通参加者のうちの歩行者についてのリスクポテンシャルの大小関係は、子供の歩行者>老人の歩行者>その他の歩行者、のように予め設定されている。子供も老人もその他の歩行者に比べれば同じ交通弱者ではあるが、老人に比べて子供の方が活発であるから、車両に対する急な飛び出しなどが予想される。そのため、子供の歩行者のリスクポテンシャルが最も高い値に設定されている。このようにして、自車両の接近リスクの高さという観点から、交通参加者その他の物体の全てについて、リスクポテンシャルが予め設定されている。
特に本実施形態では、車線を長時間閉塞する物体、車線を一時的に閉塞する物体、交通流を妨げる物体、部分的に交通流を妨げる物体の順序で、高いリスクポテンシャルが設定されている。すなわち、車線の交通流を妨げる物体という観点から、車線を長時間閉塞する物体、車線を一時的に閉塞する物体、交通流を妨げる物体、部分的に交通流を妨げる物体という4つに分類されたもののリスクポテンシャルの大小関係は、車線を長時間閉塞する物体>車線を一時的に閉塞する物体>交通流を妨げる物体>部分的に交通流を妨げる物体とされている。
情報蓄積部1603は、物体分類部1602で分類された交通参加者その他の物体の位置・速度・方向・時間の各情報を記憶部1604に蓄積する。すなわち、自車両を含む複数の車両が、任意の場所を走行中に検出車両となり、以上の軌跡取得部1601、物体分類部1602、情報蓄積部1603及び記憶部1604による処理を繰り返すことで、交通参加者その他の物体のリスクポテンシャルが、それぞれの物体が検出された位置の位置情報と関連付けられて、記憶部1604に順次蓄積される。
なお、物体が検出された位置の位置情報に加え、物体が検出された日時及び/又は天候といった属性情報も関連付けて記憶部1604に蓄積してもよい。この場合、物体が検出された日にちの属性、たとえば月、曜日、祝祭日、月初め・月末などといった属性を関連付けたり、時間の属性、たとえば午前・午後・深夜、出勤時間帯・退社時間帯、食事時間帯などといった属性を関連付けたりしてもよい。
天候の属性を関連付ける場合、インターネットなどの通信網を介して天気情報を取得してもよいが、検出装置1に含まれる雨滴センサにより雨天か否かを判断したり、自車情報検出装置4によりワイパーの作動状況を検出することで、雨天か否かを判断したりしてもよい。
自車両を含む複数の車両が、任意の場所を走行中に検出車両となり、図3の周辺物体の軌跡取得部1601、物体分類部1602、情報蓄積部1603及び記憶部1604による処理を繰り返すことで、周辺物体の情報が、図3の記憶部1604に蓄積される例を説明する。図4は、本実施形態の走行支援装置100の経路計画部130により設定される現在位置Pcから目的地Pxまでの走行経路の一例を示す平面図であり、たとえば、自車両V1の通勤経路の一部であるものとする。図5は、図4の走行経路における、ある日時の交通状況の一例を示す平面図である。
図4のS1~S4は信号機を表し、交差点Cにおいて、図面の上下方向に延在する車線の左側を走行する車両は信号機S1に、図面の上下方向に延在する車線の右側を走行する車両は信号機S2に、図面の左右方向に延在する車線の上側を走行する車両は信号機S3に、図面の左右方向に延在する車線の下側を走行する車両は信号機S4に、それぞれ従って走行するものとする。また、図4に示す走行シーンでは、信号機S1及びS2は左側の青信号が点灯しており、信号機S3及びS4は右側の赤信号が点灯しているものとする。加えて、道路D1の走行方向の後方には交差点Cとは別の交差点があり、当該交差点にて、左車線L1は左折又は直進が可能な車線であり、中央車線L2は直進専用の車線であり、右車線L3は右折又は直進が可能な車線であるものとする。なお、信号機及び車線の設定は、図5、図9、及び図11~16に示す走行シーンにおいても同様である。
図4に示す自車両V1の通勤経路は、走行経路R1で示すように、自車両V1の現在位置Pcである道路D1の右車線L3から左車線L1に車線変更し、走行経路R2で示すように、交差点Cを左折して道路D2の左車線に入り、直進する走行経路である。自車両V1は、図4に示す通勤経路R1及びR2(以下、これらを総称して走行経路Rともいう。)を毎日走行するものとし、ある日時の交通状況が図5に示すものであったとする。図5に示す車両は全て他車両である。
図5にて、道路D1の左車線L1には、路肩に駐車している他車両V2がある。他車両V2の前方には、側道D3に進入するために低速で左折している他車両V3aがあり、他車両V3aの後方には、他車両V3aの左折待ちをしている他車両V3bがある。また、道路D1の左車線L1には、交差点Cで左折待ちをする他車両V4a、V4b、及びV4cの渋滞が発生している。道路D1の中央車線L2には、他車両V5が走行しており、その前方を、他車両V6、V7、及びV8が走行している。道路D1の右車線L3には、他車両V9が走行しており、その前方を、他車両V10、V11、及びV12が走行している。また、道路D1の右車線L3には、交差点Cで右折待ちをしている他車両V13a、V13b、及びV13cの渋滞が発生している。
このような状況にあるとき、ある日時(2020年4月1日6時~7時とする)に、検出車両Vdが道路D1の中央車線L2を走行し、交差点Cを直進したとする。検出車両Vdは、進行方向に垂直な方向に道路を区切り、区切った区間ごとに交通参加者の軌跡を取得する。本実施形態では、検出車両Vdは、道路D1を0001~0005の5つの区間に区切り、各区間で他車両の走行状態を検出するものとする。
まず、検出車両Vdは、駐車中の他車両V2(リスクポテンシャルをリスクAとする)を検出することで、この日時(2020年4月1日6時~7時)の、道路区間0002の車線L1に、リスクAの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶される。次に、道路D1の左車線L1から側道D3に進入しようとしている他車両V3a、及び他車両V3aの後方で他車両V3aの左折待ちをしている他車両V3b(リスクポテンシャルをリスクBとする)を検出することで、この日時の、道路区間0003の車線L1に、リスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶される。さらに、道路D1の左車線L1で交差点Cの左折待ちをする他車両V4a、V4b、及びV4c(リスクポテンシャルをリスクBとする)を検出することで、この日時の、道路区間0005の車線L1に、リスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶される。さらに、道路D1の右車線L3に並ぶ、交差点Cの右折待ちをしている他車両V13a、V13b、及びV13c(リスクポテンシャルをリスクBとする)を検出することで、この日時の道路区間0005の車線L3に、リスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶される。
一方、走行している他車両V5~V12は、車線を閉塞する、又は交通流を妨げるおそれがないため、検出車両Vdによって走行状態を含む軌跡は取得されるが、リスクとしては分類されない。このため、他車両V5~V12については、リスクポテンシャルを0として記憶する。また、道路区間0001の左車線L1、及び道路区間0004の左車線L1では物体が検出されないので、物体検出に関するリスクポテンシャルを0として記憶する。
図6は、図4の走行経路を複数回走行した結果得られ、図3の記憶部1604に記憶される周辺物体の情報の蓄積例を示す図である。同図のリスクA~Dの列欄において、数字の「1」は、該当するリスクが「あり」、数字の「0」は、該当するリスクは「なし」を示す。上述したとおり、2020年4月1日6時~7時に、図5に示す交通状況にある通勤経路Rを走行したことにより、図6の2020年4月1日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0002の車線L1にリスクAの顕在リスクポテンシャルがあったこと、道路区間0003の車線L1にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったこと、道路区間0005の車線L1にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったこと、及び道路区間0005の車線L3にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶され、これら以外の道路区間・車線には、リスクA~Dのリスクは検出されなかったことが記憶されている。
また同様に、図6の2020年4月2日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0003の車線L1にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったこと、道路区間0005の車線L1にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったこと、及び道路区間0005の車線L3にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶され、これら以外の道路区間・車線には、リスクA~Dのリスクは検出されなかったことが記憶されている。さらに、図6の2020年4月3日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0002の車線L1にリスクAの顕在リスクポテンシャルがあったこと、道路区間0005の車線L1にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったこと、及び道路区間0005の車線L3にリスクBの顕在リスクポテンシャルがあったことが記憶され、これら以外の道路区間、車線には、リスクA~Dのリスクは検出されなかったことが記憶されている。
リスクとして分類されなかった他車両V5~V12について、本実施形態の経路算出部160は、検出した他車両V5~V12の車速を、検出車両Vdの走行位置に対応させて記憶部1604に蓄積しておく。また、本実施形態の経路算出部160は、検出車両Vdの車速も、検出車両Vdの走行位置に対応させて記憶部1604に蓄積しておく。
図5に示す状況にて、ある日時(2020年4月1日6時~7時とする)に、検出車両Vdが道路D1の中央車線L2を走行し、交差点Cを直進したとする。この場合には、検出車両Vdは、道路区間0001の中央車線L2を走行しているので、車速センサなどの検出装置1を用いて検出車両Vdの車速を検出し、検出した車速を、走行位置である道路区間0001及び中央車線L2と対応させて蓄積する。検出した車速が60km/hであれば、この日時(2020年4月1日6時~7時)の、道路区間0001の車線L2を車速60km/hで車両が走行していたことが記憶される。
図5に示す状況では、検出車両Vdの右側、道路区間0001の右車線L3を他車両V9が走行している。この場合には、検出車両Vdは、測距装置などの検出装置1、環境認識装置5及び物体認識装置6を用いて他車両V9の車速を検出し、検出した車速を、走行位置である道路区間0001及び右車線L3と対応させて蓄積する。検出した車速が15km/hであれば、この日時の、道路区間0001の車線L3を車速15km/hで車両が走行していたことが記憶される。なお、他車両V9の車速は、検出車両Vdの車速よりも小さいが、これは、道路D1の走行方向の後方の交差点にて、右車線L3を走行する右折車両との接触を避けるため、同じく右車線L3を走行する他車両V9が大きく減速したためである。
次に、検出車両Vdは、検出車両Vdの前方、道路区間0002の中央車線L2を走行する他車両V5と、道路区間0002の右車線L3を走行する他車両V10とを検出する。検出車両Vdは、測距装置などの検出装置1、環境認識装置5及び物体認識装置6を用いて他車両V5及びV10の車速を検出し、検出した車速を、走行位置である道路区間0003の中央車線L2及び右車線L3と対応させて蓄積する。検出した他車両V5の車速が60km/hであれば、この日時の、道路区間0002の中央車線L2を車速60km/hで車両が走行していたことが記憶される。また、検出した他車両V10の車速が30km/hであれば、この日時の、道路区間0002の右車線L3を車速30km/hで車両が走行していたことが記憶される。
さらに、他車両V5の前方には、道路区間0003の中央車線L2を走行する他車両V6、道路区間0003の右車線L3を走行する他車両V11、道路区間0004の中央車線L2を走行する他車両V7、道路区間0004の右車線L3を走行する他車両V12、及び道路区間0005の中央車線L2を走行する他車両V8が検出される。検出車両Vdは、測距装置などの検出装置1、環境認識装置5及び物体認識装置6を用いてこれらの他車両の車速を検出し、検出した車速を、走行位置である道路区間及び車線と対応させて蓄積する。具体的には、検出した他車両V6の車速が65km/hであれば、この日時の、道路区間0003の中央車線L2を車速65km/hで車両が走行していたことが記憶される。検出した他車両V11の車速が50km/hであれば、この日時の、道路区間0003の右車線L3を車速50km/hで車両が走行していたことが記憶される。
同様に、検出した他車両V7の車速が60km/hであれば、この日時の、道路区間0004の中央車線L2を車速60km/hで車両が走行していたことが記憶される。検出した他車両V12の車速が20km/hであれば、この日時の、道路区間0004の右車線L3を車速20km/hで車両が走行していたことが記憶される。他車両V12は、交差点Cにて右折待ちをしている他車両V13cとの接触を避けるために、減速している。このため、他車両V12の車速は、他車両V7の車速よりも低くなる。また、検出した他車両V8の車速が70km/hであれば、この日時の、道路区間0005の中央車線L2を車速70km/hで車両が走行していたことが記憶される。
図7は、図4の走行経路を複数回走行した結果得られ、図3の記憶部1604に記憶される走行する車両の車速の蓄積例を示す図である。図7の「日にち」、「時間帯」、「道路区間」、「車線」、及び「天候」の列欄は、図6の列欄と同じである。一方、図7の「信号機」及び「車速」の列欄は、図6にはないものである。「信号機」の列欄において、「進行」は信号機S1が青信号を提示しており、「停止」は信号機S1が赤信号(停止信号)を提示していることを示す。走行する車両の車速は、走行シーン、特に信号機の灯火状態の影響を受ける。このため、本実施形態の経路算出部160は、検出車両Vdの車速と、走行する他車両の車速に加えて、信号機の状態を検出し、検出車両Vdの車速と、走行する他車両の車速とを、信号機の状態に対応させて蓄積しておく。
上述したとおり、2020年4月1日6時~7時に、図5に示す交通状況にある通勤経路Rを走行したことにより、図7の2020年4月1日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0001の車線L2に車速60km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0001の車線L3に車速15km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0002の車線L2に車速60km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0002の車線L3に車速30km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0003の車線L2に車速65km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0003の車線L3を車速50km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0004の車線L2を車速60km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0004の車線L3を車速20km/hで走行する車両がいたこと、及び道路区間0005の車線L2を車速70km/hで走行する車両がいたことが記憶される。
また、図7では、図6にてリスクとして分類した路肩に駐車している他車両V2、側道D3に進入するために低速で左折している他車両V3a、他車両V3aの後方で他車両V3aの左折待ちをしている他車両V3b、交差点Cで左折待ちをする他車両V4a、V4b、及びV4c、並びに、交差点Cで右折待ちをしている他車両V13a、V13b、及びV13cについて、車速が0km/hであるとして記憶されている。具体的には、2020年4月1日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0002の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、道路区間0003の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、道路区間0005の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、及び道路区間0005の車線L3に車速0km/hの車両があったことが記憶される。これら以外の道路区間・車線には、車両が検出されなかったため、車速の検出結果がないことを示す「-」を記入する。
また同様に、2020年4月2日6時~7時の日にちの行欄に、道路区間0001の車線L2に車速55km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0002の車線L2に車速55km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0002の車線L3に車速20km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0003の車線L3を車速45km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0004の中央車線L2を車速25km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0004の右車線L3を車速15km/hで走行する車両がいたこと、及び道路区間0005の中央車線L2を車速5km/hで走行する車両がいたことが記憶される。この日時(2020年4月2日6時~7時)では、信号機S1は赤信号(停止信号)を示していたため、特に中央車線L2を走行する他車両の車速が、信号機S1は青信号を示す、2020年4月2日6時~7時の日にちの行欄のものと大きく異なっている。また、これらに加えて、2020年4月2日6時~7時の日にちの行欄には、道路区間0003の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、道路区間0005の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、及び道路区間0005の車線L3に車速0km/hの車両があったことが記憶される。これら以外の道路区間・車線には、車両が検出されなかったため、車速の検出結果がないことを示す「-」を記入する。
さらに、2020年4月3日6時~7時の日にちの行欄には、道路区間0001の車線L2に車速50km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0001の車線L3に車速15km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0003の車線L2に車速55km/hで走行する車両がいたこと、道路区間0004の車線L3を車速20km/hで走行する車両がいたこと、及び道路区間0005の車線L2を車速60km/hで走行する車両がいたことが記憶される。また、これらに加えて、2020年4月2日6時~7時の日にちの行欄には、道路区間0002の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、道路区間0005の車線L1に車速0km/hの車両があったこと、及び道路区間0005の車線L3に車速0km/hの車両があったことが記憶される。これら以外の道路区間・車線には、車両が検出されなかったため、車速の検出結果がないことを示す「-」を記入する。なお、本実施形態のでは、図7に示す車速の蓄積情報を検出車両の検出結果から取得したが、道路交通情報通信システム、車車間通信などから車速情報を取得してもよい。
<予測リスクポテンシャル>
図3に戻り、経路算出部160は、自車両V1が目的地Pxを入力してこれから走行を開始する際又は走行計画を立案する際に、自車両V1の現在位置Pcから目的地Pxに至る走行経路R1及びR2の全域について、予め記憶部1604に蓄積しておいた走行位置(検出物体との遭遇位置でもある。以下同じ。)ごとの顕在リスクポテンシャルと、物体への遭遇確率から、走行位置ごとに予測される予測リスクポテンシャルとを求め、予測リスクポテンシャルに基づいて、車両の走行経路を設定する。以下の説明では、図6に示す走行経路Rの範囲について、走行位置ごとのリスクポテンシャルと物体への遭遇確率の求め方等を説明するが、他の範囲についても同様の方法で求められる。
まず、予測リスクポテンシャルの求め方について説明する。リスクポテンシャル計算部1606は、記憶部1604に蓄積された情報から、現在位置Pcから目的地Pxに至る走行経路の各道路区間の顕在リスクポテンシャルを抽出する。これと並行して、遭遇確率計算部1607は、同じく記憶部1604に蓄積された情報から、現在位置Pcから目的地Pxに至る走行経路の各道路区間の遭遇確率を求める。遭遇確率を求めるタイミングは、定期的でもよいし、遭遇確率を取得する時でもよい。図8は、図6に示す周辺物体の蓄積情報を用いて、予測リスクマップ生成部1605のリスクポテンシャル計算部1606と遭遇確率計算部1607により生成される顕在リスクポテンシャルと遭遇確率の一例を示す図である。なお、リスクAの顕在リスクポテンシャルを100、リスクBの顕在リスクポテンシャルを80、リスクCの顕在リスクポテンシャルを50、リスクDの顕在リスクポテンシャルを20とし、図8においてリスクDの欄の図示は省略する。
図6に示すように、道路区間0002の車線L1は、3回走行したうち2回でリスクAの物体が検出されたが、他のリスクB、C及びDの物体は検出されなかった。そのため、図8に示すように、道路区間0002の車線L1のリスクAの遭遇確率は66%(=2÷3)、リスクB、C及びDの遭遇確率は0%として算出される。同様にして、道路区間0003の車線L1は、図6に示すように、3回走行したうち2回でリスクBの物体が検出されたが、他のリスクA、C及びDの物体は検出されなかった。そのため、図8に示すように、道路区間0003の車線L1のリスクBの遭遇確率は66%(=2÷3)、リスクA、C及びDの遭遇確率は0%として算出される。また、道路区間0005の車線L1及びL3は、図6に示すように、3回走行した全ての日でリスクBの物体が検出されたので、図8に示すように、道路区間0005の車線L1及びL3のリスクBの遭遇確率は、100%として算出される。一方、これら以外の道路区間・車線では、いずれの日もリスクA~Dの物体は検出されなかった。そのため、図8に示すように、リスクA~Dの遭遇確率は、全て0%として算出される。
予測リスクポテンシャル生成部1608は、道路の延在方向に区画した道路区間ごとの車線ごとの顕在リスクポテンシャルに、遭遇確率が大きいほど大きい係数を乗じ、これらを加算することで、予測リスクポテンシャルを求める。道路区間は、道路の延在方向に対してたとえば100mごとに区画した道路区間ごとに求められ、さらに複数車線がある道路については、車線ごとに求められる。
顕在リスクポテンシャルに乗じる係数は、遭遇確率が大きいほど大きい係数であれば特に限定されず、百分率で表された遭遇確率の数値をそのまま乗じてもよい。たとえば、図8に示すように、道路区間0002の車線L1は、リスクA(顕在リスクポテンシャルが100)の遭遇確率が66%、リスクB(顕在リスクポテンシャルが80)の遭遇確率が0%、リスクC(顕在リスクポテンシャルが50)の遭遇確率が0%であるので、予測リスクポテンシャルは、100×66%+80×0%+50×0%=6600として算出される。また同様に、図8に示すように、道路区間0003の車線L1は、リスクA(顕在リスクポテンシャルが100)の遭遇確率が0%、リスクB(顕在リスクポテンシャルが80)の遭遇確率が66%、リスクC(顕在リスクポテンシャルが50)の遭遇確率が0%であるので、予測リスクポテンシャルは、100×0%+80×66%+50×0%=5280として算出される。さらに、道路区間0005の車線L1及びL3は、リスクA(顕在リスクポテンシャルが100)の遭遇確率が0%、リスクB(顕在リスクポテンシャルが80)の遭遇確率が100%、リスクC(顕在リスクポテンシャルが50)の遭遇確率が0%であるので、予測リスクポテンシャルは、100×0%+80×100%+50×0%=8000として算出される。このように、顕在リスクポテンシャルと遭遇確率とから求められる予測リスクポテンシャルは、顕在リスクポテンシャル以下の値になる。
なお、予測リスクポテンシャルの値を求めるにあたり、検出した物体を回避するのに要した回避時間を検出物体の分類ごとに蓄積し、予測リスクポテンシャルを、分類ごとの回避時間の割合で重み付けしてもよい。たとえば、車線を長時間閉塞する物体をリスクA(=100)、車線を一時的に閉塞する物体をリスクB(=80)、交通流を妨げる物体をリスクC(=50)、部分的に交通流を妨げる物体をリスクD(=20)として分類するものとし、リスクA、B、C、Dに分類された各物体を回避するのに要した平均時間が、それぞれ10分、5分、1分、0.5分であったとすると、リスクA、B、C、Dの各リスクポテンシャルに各遭遇確率を乗じた値に、重み付けとして、10、5、1、0.5をそれぞれ乗じたのち、これらを加算することで予測リスクポテンシャルを求めてもよい。
また、予測リスクポテンシャルの値を求めるにあたり、走行位置ごとの遭遇確率は、記憶部1604に蓄積された情報の中から、現在位置Pcから目的地Pxまで走行する時の時間を含む時間帯の情報を抽出して求めてもよい。同様に、予測リスクポテンシャルの値を求めるにあたり、走行位置ごとの遭遇確率は、記憶部1604に蓄積された情報の中から、現在位置Pcから目的地Pxまで走行する時の日にちの属性が共通する情報を抽出して求めてもよい。同様に、予測リスクポテンシャルの値を求めるにあたり、走行位置ごとの遭遇確率は、記憶部1604に蓄積された情報の中から、現在位置Pcから目的地Pxまで走行する時のワイパーの作動状況が共通する情報を抽出して求めてもよい。
以上のように、予測リスクマップ生成部1605において、走行位置ごとの予測リスクポテンシャルが求められ、この予測リスクポテンシャルを地図情報に展開した予測リスクマップが生成される。図9は、図4の走行経路Rについて、図3の予測リスクマップ生成部1605により生成された予測リスクマップの一例を示す平面図である。図9において、車線に付した色が濃いほど予測リスクポテンシャルが大きいことを示している。最も濃い色が付された走路は対向車線であり、自車両V1が走行できない走路であることを示している。
対向車線ではない自車両V1が走行できる走路には、2番目に濃い色が付された走路と、3番目に濃い色が付された走路と、何も付されていない走路とがある。たとえば、道路D1の道路区間0002の左車線L1は、他車両V2が頻繁に路肩に駐車することで、予測リスクポテンシャル生成部1608で求められた予測リスクポテンシャルが大きい値になっているので、路肩の停車位置に2番目に濃い色が付されている。道路D1の道路区間0003の左車線L1は、他車両V3aの側道D3進入に伴う他車両V3a及びV3bによる渋滞が頻繁に発生することで、予測リスクポテンシャル生成部1608で求められた予測リスクポテンシャルが大きい値になっているので、渋滞が発生する位置に3番目に濃い色が付されている。同様に、道路D1の道路区間0005の左車線L1には、他車両V4a~V4cによる左折待ちの渋滞が頻繁に発生することで、予測リスクポテンシャル生成部1608で求められた予測リスクポテンシャルが大きい値になっているので、渋滞が発生する位置に2番目に濃い色が付されている。また、道路D1の道路区間0005の右車線L3は、他車両V13a~V13cによる右折待ちの渋滞が頻繁に発生することで、予測リスクポテンシャル生成部1608で求められた予測リスクポテンシャルが大きい値になっているので、渋滞が発生する位置に2番目に濃い色が付されている。
また、道路D1において、道路D2を通り過ぎてしまい道路D2に左折できなくなる部分、交差点C内において交差点Cを右折する車両が走行する部分、及び交差点Cを右折した先の道路にも2番目に濃い色が付されている。これらの部分は、自車両V1が交差点Cを左折することができない位置に対応しており、自車両V1が道路D2の左車線に進入できないという意味でリスクポテンシャルが大きくなるからである。さらに、側道D3にも2番目に濃い色が付されている。自車両V1が側道D3に進入すると、交差点Cに到達できず走行経路Rに沿った走行ができなくなるという意味でリスクポテンシャルが高いからである。
<第1車線変更リスクポテンシャル>
図3に戻り、本実施形態の経路算出部160は、設定経路読込み部1609、車線変更要否判定部1610、第1車線変更リスク判定部1611、及び第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612を備える。本実施形態の経路算出部160は、これらの機能を用いて、隣接車線を走行する他車両との速度差が小さい区間に車線変更位置を設定し、車線変更ための加速又は減速に費やす時間を低減することで、速度差が大きい場合よりも車線変更を実行する時間を長く確保する。以下、各部について説明する。
設定経路読込み部1609は、経路計画部130により設定された走行経路Rを読み込み、車線変更要否判定部1610に送る。車線変更要否判定部1610は、設定された走行経路Rと、検出装置1及び自車情報検出装置4から得た自車両V1の現在位置Pc及び自車両V1の走行車線などとを比較し、経路に沿って走行するために車線変更が必要か否かを判定する。たとえば、走行経路Rに沿って走行するために、次の交差点Cを左折しなければならない場合に、検出装置1及び自車情報検出装置4から得られた情報から、自車両V1が、交差点Cに向かう3車線の道路D1の右車線L3を走行していることが検出され、交差点Cでは道路D1の左車線L1のみが左折できると判定されたときには、車線変更要否判定部1610は、自車両V1が走行経路Rに沿って走行するために、交差点Cに至るまでに右車線L3から左車線L1へ車線変更する必要があると判定する。
第1車線変更リスク判定部1611は、車線変更要否判定部1610において車線変更が必要であると判定された場合に、自車両V1の車速と、車線変更先の車線(つまり隣接車線)を走行する他車両の車速との速度差に伴うリスクを判定し、さらに当該リスクに基づいて車線変更の難易度を判定する。第1車線変更リスク判定部1611は、速度差に伴うリスクを判定するために、記憶部1604に蓄積された情報から、現在位置Pcから目的地Pxに至る走行経路の各道路区間で検出された車両の車速を抽出し、速度差を算出する。
図10は、図7に示す蓄積した車速情報を用いて算出した、検出車両と、検出車両が走行する車線の隣接車線を走行する他車両との速度差の一例を示す図である。表の列欄において、「道路区間」と「車線」は、それぞれ速度差を算出した道路区間と車線とを示す。速度差は、信号機S1が青信号であった場合と、赤信号(停止信号)であった場合とで分けて求めている。また、図5に示す走行シーンでは、検出車両Vdは、道路D1の中央車線L2を走行し、交差点Cを直進しているため、図10に示す速度差は、検出車両Vdが走行した中央車線L2を基準に算出されている。以下、具体的に速度差の求め方を説明する。なお、図10において、「速度差」の単位は「km/h」であるが、記載を省略している。
たとえば、図10の道路区間0001の車線L3の行欄には、信号機が進行指示を示す状態において、算出された速度差が「-40」であると記載されている。図7では、道路区間0001の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、60km/hで走行する車両と、50km/hで走行する車両が検出され、それぞれが車速情報として記憶されている。一方で、道路区間0001の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも15km/hで走行する車両が検出され、それぞれが車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0001の車線L3における速度差は、(15+15)/2-(60+50)/2=-40と求められる。当該速度差を換言すると、道路区間0001の右車線L3を走行する車両の車速は、道路区間0001の中央車線L2を走行する車両の車速よりも40km/h遅い、ということになる。なお、本実施形態では、同一の道路区間の同一の車線について、複数の車速情報が記憶されている場合には、車速の平均値を用いて速度差を算出したが、必ずしも平均値を用いる必要はなく、たとえば、記憶された複数の車速情報のうち、いずれかの車速のみを用いてもよい。
同様に、図7では、道路区間0002の左車線L1を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも0km/hで停車している車両が検出され、それぞれが車速情報として記憶されている。一方、道路区間0002の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、60km/hで走行する車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0002の車線L1における速度差は、0-60=-60と求められる。また、図7では、道路区間0002の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、30km/hで走行している車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、30-60=-30と求められる。
同様に、道路区間0002の左車線L1を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも0km/hで停車している車両が検出され、それぞれが車速情報として記憶されている。一方、道路区間0002の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、60km/hで走行する車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0002の車線L1における速度差は、0-60=-60と求められる。また、図7では、道路区間0002の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、30km/hで走行している車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、30-60=-30と求められる。
同様に、道路区間0003の左車線L1を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、0km/hで停車している車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。一方、道路区間0003の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、65km/hで走行する車両と、55km/hで走行する車両とが検出され、それぞれ車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0003の車線L1における速度差は、(65+55)/2-0=-60と求められる。また、図7では、道路区間0003の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、50km/hで走行している車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、(65+55)/2-50=-10と求められる。
同様に、道路区間0004の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、60km/hで走行する車両が1回検出され、車速情報として記憶されている。一方、道路区間0004の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも20km/hで走行している車両が出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、60-(20+20)/2=-40と求められる。
同様に、道路区間0005の左車線L1を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも0km/hで停車している車両が検出され、車速情報として記憶されている。一方、道路区間0005の中央車線L2を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、70km/hで走行する車両と、60km/hで走行する車両とが検出され、それぞれ車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0005の車線L1における速度差は、0-(70+60)/2=-65と求められる。また、図7では、道路区間0005の右車線L3を走行する車両の車速として、信号機が進行指示を示す場合には、2回走行して、どちらでも0km/hで停車している車両が検出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、0-(70+60)/2=-65と求められる。
車線L1及びL3について、これら以外の道路区間では、いずれかの車線において車両が検出されず、速度差を算出できないため、データがないことを示す「-」を記入する。また、車線L2については、検出車両Vdが走行した中央車線L2を基準に速度差を算出しているため、速度差を算出せずに、データがないことを示す「-」を記入する。
一方で、信号機が停止指示を示す場合には、図7の道路区間0002の中央車線L2の行欄にて、55km/hで走行する車両が検出されたことが記憶されている。また、道路区間0002の右車線L3の行欄には、25km/hで走行する車両が検出されたことが記憶されている。これらの車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、20-55=-35と求められる。
同様に、道路区間0004の中央車線L2の行欄にて、25km/hで走行する車両が検出されたことが記憶されている。また、道路区間0002の右車線L3の行欄には、15km/hで走行する車両が検出されたことが記憶されている。これらの車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、15-25=-10と求められる。
同様に、道路区間0005の左車線L1を走行する車両の車速として、0km/hで停車している車両が検出され、車速情報として記憶されている。一方、道路区間0005の中央車線L2を走行する車両の車速として、5km/hで走行する車両が検出され、車速情報として記憶されている。これらの蓄積された車速情報から、道路区間0005の車線L1における速度差は、0-5=-5と求められる。また、図7では、道路区間0005の右車線L3を走行する車両の車速として、0km/hで停車している車両が検出され、車速情報として記憶されている。当該車速情報から、道路区間0002の車線L3における速度差は、0-5=-5と求められる。
また、信号機が進行を指示する場合と同様に、信号機が停止を指示する場合も、速度差が算出できない道路区間及び車線には、データがないことを示す「-」を記入する。このようにして、第1車線変更リスク判定部1611は、蓄積した検出車両Vdの車速と他車両の車速とを用いて、検出車両Vdと、車線変更先の車線である隣接車線を走行する他車両との速度差を、道路区間及び車線ごとに算出する。
このように、道路区間及び車線ごとに算出した速度差を用いて、第1車線変更リスク判定部1611は、速度差に伴うリスクを判定し、当該リスクに基づいて車線変更の難易度を判定する。一例として、図5に示した状況において、図4に示す走行経路Rに沿って自車両V1が道路D1を走行するシーンにおける速度差に伴うリスク、及び当該リスクに基づく車線変更の難易度の判定について説明する。
図4に示す走行経路Rに沿って走行するために、自車両V1は、道路D1の右車線L3から中央車線L2に車線変更し、その後、中央車線L2から左車線L1に車線変更する。図4に示す走行シーンのように、3車線以上の車線を有する道路にて、複数回車線変更を行う場合に、第1車線変更リスク判定部1611は、速度差に伴うリスク、及び当該リスクに基づく車線変更の難易度を車線変更ごとに判定する。右車線L3から中央車線L2への車線変更について、信号機S1が青信号である場合には、図10にて示した中央車線L2を基準とする中央車線L2と右車線L3との速度差は、道路区間0001では-40、道路区間0002では-30、道路区間0003では-10、道路区間0004では-40、道路区間0005では-65である。右車線L3を走行する車両から見ると、道路区間0003では、中央車線L2を走行する車両より10km/h遅い車速で走行しており、道路区間0005では、中央車線L2を走行する車両より65km/h遅い車速で走行していることになる。
ここで、自車両V1は、隣接車線を走行する他車両との接触を避けるため、車線変更時に加速又は減速し、隣接車線を走行する他車両の車速に自車両V1の車速を近づける必要があることを考えると、隣接車線を走行する他車両の車速と、自車両V1の車速と速度差の絶対値が大きいほど、自車両V1は、車線変更時に大きく加速又は減速しなければならない。つまり、隣接車線を走行する他車両と自車両V1との速度差が大きいほど、車線変更するときに加速又は減速に費やす時間が増加し、車線変更を実行する時間が限られてしまう。
右車線L3から中央車線L2への車線変更の例で言えば、道路区間0003では、右車線L3を走行する自車両V1が10km/h増速すれば、中央車線L2を走行する他車両と同じ車速となるが、道路区間0005では、右車線L3を走行する自車両V1が65km/h増速しなければ、中央車線L2を走行する他車両と同じ車速とならない。つまり、道路区間0003で右車線L3から中央車線L2に車線変更した方が、道路区間0005で同じ車線変更した場合に比べて、自車両V1の加速に費やす時間が少なく、車線変更の走行動作を行う時間が長くなる。このように、本実施形態の第1車線変更リスク判定部1611は、速度差に伴う加速又は減速に費やす時間をリスクとして判定し、これに基づいて車線変更の難易度を判定する。本実施形態の第1車線変更リスク判定部1611は、速度差の絶対値から、加速又は減速に費やす時間をリスクとして判定し、速度差の絶対値が大きいほど車線変更の難易度が高いと判定する。加速であっても減速であっても、速度差の絶対値が大きいほど、速度を変化させるために時間がかかるからである。
そして、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612は、第1車線変更リスク判定部1611にて判定された車線変更の難易度を用いて第1車線変更リスクポテンシャルを算出する。具体的には、自車両V1が走行する自車線の各位置において、第1車線変更リスク判定部1611にて判定された車線変更の難易度に応じて、車線変更リスクポテンシャルを算出する。車線変更リスクポテンシャルは、車線変更の難易度、つまり隣接車線を走行する他車両と自車両V1との速度差に伴うリスクが高いほど高い値をとる。自車線において車線変更の難易度が高い位置には、高い第1車線変更リスクポテンシャルが配置され、自車線において車線変更の難易度が低い位置には、低い第1車線変更リスクポテンシャルが配置される。後述する図3の行動決定部1619は、自車線において第1車線変更リスクポテンシャルが低い位置で車線変更を行うように、自車両V1の走行経路を算出する。
第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612にて算出した第1車線変更リスクポテンシャルは、予測リスクマップ生成部1605にて生成された予測リスクマップに統合することができる。走行支援装置100は、自車両V1が走行する自車線の第1車線変更リスクポテンシャルを用いて、自車両V1が車線変更する位置を設定する。このような自車線のリスクポテンシャルの例を図11に示す。なお、図11に示す第1車線変更リスクポテンシャルは、図5に示す、ある日付のある特定の時間の交通状況に対して算出されたものであり、時間の経過とともに交通状況が変化すると、変化した交通状況に基づいて第1車線変更リスクポテンシャルが算出される。交通状況の変化に対応するため、第1車線変更リスク判定部1611による車線変更の難易度の判定、及び第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612による第1車線変更リスクポテンシャルの生成は、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
図11は、図9の予測リスクマップに、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612にて算出した第1車線変更リスクポテンシャルを統合したリスクマップである。図11に示すリスクマップでは、説明の便宜のため、道路D1に配置された予測リスクポテンシャルは削除されている。それ以外の点は、図9の予測リスクマップと同様である。図11に示す第1車線変更リスクポテンシャルは、右車線L3と中央車線L2に配置されている。右車線L3に配置されたリスクポテンシャルが、図5に示した状況において、右車線L3から中央車線L2に車線変更する場合の第1車線変更リスクポテンシャルを示し、中央車線L2に配置されたリスクポテンシャルが、中央車線L2から左車線L1へ車線変更する場合の第1車線変更リスクポテンシャルを示す。行動決定部1619は、車線変更を行う位置を設定する場合に第1車線変更リスクポテンシャルを用いることができ、たとえば、右車線L3及び中央車線L2のそれぞれにて、第1車線変更リスクポテンシャルが低い位置で車線変更を行うように、自車両V1の走行経路を算出する。
図11のリスクマップでは、道路D1の右車線L3にて、2番目に濃い色が付された道路区間と、3番目に濃い色が付された道路区間と、色が付されていない道路区間とがある。道路区間0005には、2番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0005において、中央車線L2と右車線L3との速度差の絶対値が65と大きなことに対応して、高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置しているためである。また、道路区間0001、0002、及び0004には、3番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0001及び0004において、中央車線L2と右車線L3との速度差の絶対値が40であり、また道路区間0002では30であり、速度差の絶対値が比較的大きなことに対応して、比較的高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置しているためである。一方、道路区間0003には、色が付されていない。道路区間0003では、中央車線L2と右車線L3との速度差の絶対値が10であり、値が小さいため、第2車線変更リスクポテンシャルを配置していない。
同様に、中央車線L2にも、2番目に濃い色が付された道路区間と、色が付されていない道路区間とがある。道路区間0002、0003、及び0005には、2番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0002及び0003において、左車線L1と中央車線L2との速度差の絶対値が60と大きく、また道路区間0005においても、左車線L1と中央車線L2との速度差の絶対値が65と大きいため、これらの道路区間に、高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置しているためである。一方、道路区間0001及び0004には、色が付されていない。これは、左車線L1の道路区間0001及び0004では他車両が検出されていないため、速度差に伴うリスクが存在しないからである。図11のリスクマップに基づけば、行動決定部1619は、右車線L3から中央車線L2へ車線変更する位置を道路区間0003に設定し、中央車線L2から左車線L1へ車線変更する位置を道路区間0004に設定することになる。なお、図11のリスクマップは、信号機S1が青信号であることを前提としているが、信号機S1が赤信号(停止信号)を示す場合、自車両V1が交差点Cを直進する場合など、走行シーンに応じてリスクマップを生成し、車線変更の位置を設定する。
第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612は、速度差の絶対値が所定値以下の場合には、第1車線変更リスクポテンシャルを0とし、速度差の絶対値が所定値を超える場合には、速度差の絶対値が大きくなるほど、第1車線変更リスクポテンシャルが大きくなるようにしてもよい。当該所定値は、自車両V1と、隣接車線を走行する他車両との接触が回避できる範囲で、適宜の値を設定できる。また、当該所定値は、自車両V1の走行経路における走行方向前方の右折位置又は左折位置が近いほど小さい値に設定され、現在位置Pcから、交差点及び/又は車線の合流位置までの距離が近いほど小さい値に設定され、自車両V1の車速、及び/又は自車両V1が走行する道路の制限車速が大きいほど大きい値に設定される。
また、第1車線変更リスクポテンシャルが大きくなる割合は、検出車両Vdの車速が隣接車線を走行する他車両の車速より遅い場合よりも、検出車両Vdの車速が隣接車線を走行する他車両の車速より速い場合のほうが小さくてもよい。隣接車線を走行する他車両が自車両V1よりも遅い場合には、自車両V1は減速して車線変更する。このため、現在位置Pcから車線変更が完了しなければならない位置までの距離が一定の場合、自車両V1が減速して車線変更する走行シーンの方が、自車両V1が加速して車線変更する走行シーンよりも、車線変更の走行動作は完了しやすいためである。
さらに、自車両V1が、現在位置Pcから、走行経路Rに沿って走行するために車線変更が完了しなければならない位置(たとえば交差点C)まで走行する間に、障害物などを回避するために減速する場合がある。この場合には、予め設定された加速度で加速したとしても、自車両V1の車速が、当該車線変更が完了しなければならない位置に対応する位置において、検出車両Vdにより検出され、記憶部1604に蓄積された車速に達しない場合がある。このように、検出車両Vdにより蓄積された車速情報と、自車両V1の実際の車速とに乖離がある場合には、設定された加速度を用いて走行位置ごとの自車両V1の車速を予測し、予測された自車両V1の車速と、前記隣接車線を走行する、蓄積された前記他車両の車速との差を前記速度差として算出する。当該予測では、自車両V1が走行する道路のカーブ曲率を用いて、予測された車速を補正してもよい。
<第2車線変更リスクポテンシャル>
図3に戻り、経路算出部160は、第2車線変更リスク判定部1613、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614を備える。経路算出部160は、これらの機能を用いて、車線変更先の車線に配置されたリスクポテンシャルによるリスクに応じた車線変更の難易度を、車線変更リスクポテンシャルとして算出する。車線変更リスクポテンシャルを予測リスクポテンシャルと統合することで、難易度の高い車線変更を回避しつつ、適切な位置で車線変更をすることができる。なお、第2車線変更リスク判定部1613及び第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614は、走行支援装置100に必須の構成ではなく、必要に応じて省略することができる。以下、各部について説明する。
第2車線変更リスク判定部1613は、車線変更要否判定部1610において車線変更が必要であると判定された場合に、自車両V1の車線変更の走行動作に伴うリスクを判定し、さらに当該リスクに基づいて車線変更の難易度を判定する。本実施形態の車線変更の走行動作に伴うリスクとは、自車両V1が、自車両V1が走行する自車線のある位置から、車線変更先の車線(つまり、自車線の隣接車線)のある位置に車線変更する場合に、自車両V1が遭遇する、車線変更先の車線に検出された物体に由来するリスクをいうものとする。第2車線変更リスク判定部1613は、車線変更の走行動作に伴うリスクを判定するときに、車線変更先の車線に配置された顕在リスクポテンシャル又は予測リスクポテンシャルのうち少なくとも1つを用いる。具体的には、車線変更先の車線に配置された顕在リスクポテンシャルと予測リスクポテンシャルとの少なくともいずれか一方によるリスクから、車線変更先の車線にて遭遇する物体の分類を把握する。物体の分類は、予測リスクポテンシャル生成部1608で予測リスクポテンシャルを求めるときに用いたリスクポテンシャルと遭遇位置から把握できる。すなわち、リスクポテンシャルは分類されたリスク(たとえばリスクA~D)に対応しているため、走行経路Rのどの位置でどのような物体に遭遇するかは、リスクポテンシャルと遭遇位置から把握できる。
第2車線変更リスク判定部1613は、自車両V1が自車線から車線変更先の車線へ車線変更するときの走行シーンを想定し、想定された走行シーンにおいて、自車両V1が遭遇する物体の分類と自車両V1との関係から、当該物体が自車両V1の車線変更の走行動作に与える影響を把握する。たとえば、当該物体が存在するために、走行支援装置100が自車両V1の車線変更を支援できずに車線変更を断念するような事態が発生するか、又は当該物体が存在するために、再度の車線変更が必要になるかなどを推定する。そして、この推定結果を基に、自車両V1が自車線から隣接車線に車線変更するときに、走行支援装置100が車線変更の走行動作の支援を完了することができる否かの確度を、車線変更の難易度として算出する。以下、どのように車線変更リスクを判定するのか、図12に示す走行シーンを例に説明する。
図12は、図5に示す走行シーンにおいて、走行経路Rに沿って自車両V1が交差点Cを左折する場合に、道路D1の中央車線L2から左車線L1に車線変更するときに想定される複数の走行シーンの例を示す平面図である。図12では、道路D1の左車線L1に、駐車中の他車両V2、側道D3に進入する他車両V3a、他車両V3aの後方で他車両V3aの左折待ちをしている他車両V3b、及び交差点Cで左折待ちをする他車両V4a~V4cが存在している。これらの車両が顕在リスクポテンシャル又は予測リスクポテンシャルによるリスクに該当することになる。
図12に示す走行シーンにおいて、自車両V1が、たとえば道路D1の中央車線L2のV1aの位置から左車線L1に車線変更するものとする。この場合には、自車両V1は、左車線L1において、駐車中の他車両V2の後方に進入することになる。ここで、駐車中の車両は車線を長時間閉塞する物体に分類され、他車両V2の後方にいる限り、自車両V1は、走行経路Rに沿った走行を行うことができない。そのため、自車両V1は、走行経路Rに沿った走行を行うために、左車線L1から中央車線L2に再度車線変更をすることになる。当該再度の車線変更は、駐車中の他車両V2の後方からの車線変更となるため、自車両V1は、停車した状態又は車速が低速の状態から車線変更を行うことになる。このような車線変更は、後方から接近する他車両との車速差が大きくなるため、走行支援装置による支援が限定的になる場合がある。また、中央車線L2に車線変更した後に、交差点Cまでの限られた距離において、の中央車線L2から左車線L1への車線変更を再び行う必要があり、走行支援装置による支援ではなく、ドライバーの判断による車線変更が必要になる場合がある。よって、第2車線変更リスク判定部1613は、駐車中の他車両V2の後方に進入するような位置V1aからの車線変更は、車線変更の難易度が高いと判定する。
別の例として、図12に示す走行シーンにおいて、自車両V1が、たとえば道路D1の中央車線L2のV1bの位置から左車線L1に車線変更するものとする。この場合には、自車両V1は、左車線L1において、駐車中の他車両V2の前方に進入することになる。ここで、駐車中の車両は車線を長時間閉塞する物体に分類され、自車両V1が他車両V2の前方に進入したとしても、他車両V2が自車両V1に後方から接近することは考えにくい。また、自車両V1は、左車線L1に進入した後に、他車両V3bの後方に位置することになるが、他車両V3aの左折を待つ他車両V3bは、現在は動きが停止しているが時間が経過すれば交通流が解消する、車線を一時的に閉塞する物体に分類されている。したがって、他車両V3a及びV3bの渋滞の解消を待っていれば、自車両V1は、左車線L1から中央車線L2に再度車線変更をしなくとも、走行経路Rに沿った走行を続けることができる。よって、第2車線変更リスク判定部1613は、駐車中の他車両V2の前方に進入するような位置V1bからの車線変更は、車線変更の難易度が低いと判定する。
これに類似する例として、図12に示す走行シーンにおいて、自車両V1が、たとえば道路D1の中央車線L2のV1cの位置から左車線L1に車線変更する場合を考える。この場合も、自車両V1は、左車線L1において、駐車中の他車両V2の前方であり、他車両V3bの後方に進入することになる。したがって、位置V1bから車線変更した場合と同様に、他車両V2が自車両V1に後方から接近することは考えにくく、他車両V3a及びV3bの渋滞の解消を待っていれば、左車線L1から中央車線L2に再度車線変更をしなくとも、走行経路Rに沿った走行を続けることができる。ただし、V1bの位置から車線変更した場合に比べて、左車線L1に進入した後の自車両V1の位置が、車線を一時的に閉塞する物体である他車両V3bにより接近しているため、車線変更中及び車線変更後の減速といった自車両V1の挙動は、位置V1bから車線変更した場合と比較して大きくなる場合がある。この点を考慮し、第2車線変更リスク判定部1613は、位置V1cからの車線変更は、位置V1aからの車線変更より低いが、位置V1bからの車線変更の難易度より高いと判定する。
また別の例として、図12に示す走行シーンにおいて、自車両V1が、たとえば道路D1の中央車線L2のV1dの位置から左車線L1に車線変更するものとする。この場合には、自車両V1は、左車線L1において、側道D3へ左折する他車両V3aの前方に進入することになる。自車両V1は、左車線L1に進入した後に、他車両V4cの後方に位置することになるが、左折待ちをする他車両V4a~V4cは、現在は動きが停止しているが時間が経過すれば交通流が解消する、車線を一時的に閉塞する物体に分類されている。したがって、他車両V4a~V4cの渋滞の解消を待っていれば、自車両V1は、左車線L1から中央車線L2に再度車線変更をしなくとも、走行経路Rに沿った走行を続けることができる。ただし、他車両V3aの左折が完了すると、車線を一時的に閉塞する物体である他車両V3bは、渋滞が解消されることで左車線L1において走行を再開すると考えられる。このときに、他車両V3aの前方に進入した自車両V1は、後方から他車両V3bに接近される場合がある。この点を考慮し、第2車線変更リスク判定部1613は、渋滞の先頭車両である他車両V3aの前方に進入するような位置V1dからの車線変更は、位置V1aからの車線変更より低いが、位置V1bからの車線変更の難易度より高いと判定する。
さらに別の例として、図12に示す走行シーンにおいて、自車両V1が、たとえば道路D1の中央車線L2のV1eの位置から左車線L1に車線変更するものとする。この場合には、自車両V1は、左車線L1において左折待ちをする他車両V4a~V4cの車列に割り込みつつ車線変更をすることになる。ここで、車線を一時的に閉塞する物体である左折待ち渋滞の車列への割り込みを伴う車線変更は、中央車線L2のような走行車線において自車両V1が停車する必要があり、後方から高い車速の他車両が接近する場合がある。また、左折待ち渋滞の車列における車間距離は短い場合があり、車間距離が短い場合には、走行支援装置による支援が限定的になることがある。よって、第2車線変更リスク判定部1613は、左折待ち渋滞の車列に割り込むような位置V1eからの車線変更は、車線変更の難易度が高いと判定する。
なお、図12に示す例は左折時に左側の車線に車線変更する走行シーンを想定しているが、右折時に右側の車線に車線変更する走行シーンにおいても、これらの例と同様に、車線変更の際の走行シーンを想定し、車線変更の難易度を車線変更リスクとして判定することができる。また、自車両が3車線以上の車線を有する道路を走行する場合に、複数回の車線変更が必要と判定された場合にも、上述と同じ方法で、車線変更ごとに車線変更のリスクを判定することができる。
そして、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614は、第2車線変更リスク判定部1613にて判定された車線変更の難易度を用いて車線変更リスクポテンシャルを算出する。具体的には、自車両V1が走行する自車線の各位置において、第2車線変更リスク判定部1613にて判定された、当該位置から隣接車線への車線変更の難易度に応じて車線変更リスクポテンシャルを算出する。車線変更リスクポテンシャルは、車線変更の難易度、つまり自車両V1の車線変更の走行動作に伴うリスクが高いほど高い値をとる。つまり、自車線において車線変更の難易度が高い位置には、高い車線変更リスクポテンシャルが配置され、自車線において車線変更の難易度が低い位置には、低い車線変更リスクポテンシャルが配置される。後述する図3の行動決定部1619は、自車線において車線変更リスクポテンシャルが低い位置で車線変更を行うように、自車両V1の走行経路を算出する。
第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614にて算出した第2車線変更リスクポテンシャルは、予測リスクマップ生成部1605にて生成された予測リスクマップに統合することができる。走行支援装置100は、自車両V1が走行する自車線の予測リスクポテンシャルに第2車線変更リスクポテンシャルを加えて、自車線のリスクポテンシャルを求め、当該自車線のリスクポテンシャルを用いて自車両V1が車線変更する位置を設定する。このような自車線のリスクポテンシャルの例を図13に示す。なお、図13に示す第2車線変更リスクポテンシャルは、図5に示す、ある日付のある特定の時間の交通状況に対して算出されたものであり、時間の経過とともに交通状況が変化すると、変化した交通状況に基づいて第2車線変更リスクポテンシャルが算出される。交通状況の変化に対応するため、第2車線変更リスク判定部1613による車線変更の難易度の判定、及び第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614による第2車線変更リスクポテンシャルの生成は、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
図13は、図9の予測リスクマップに、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614にて算出した第2車線変更リスクポテンシャルを統合したリスクマップである。図13に示すリスクマップは、道路D1の中央車線L2に第2車線変更リスクポテンシャルが配置されている点で図9の予測リスクマップと異なる。中央車線L2以外の車線については、図13のリスクポテンシャルは、図9のものと同一である。図13に示す第2車線変更リスクポテンシャルは、図5に示した状況において、中央車線L2から左車線L1へ車線変更する走行シーンを想定して算出されたため、車線変更の前に自車両が走行している中央車線L2にリスクポテンシャルが配置されている。行動決定部1619は、車線変更を行う位置を設定する場合に第2車線変更リスクポテンシャルを用いることができ、たとえば、中央車線L2にて第2車線変更リスクポテンシャルが低い位置で車線変更を行うように、自車両V1の走行経路を算出する。
図13のリスクマップでは、道路D1の中央車線L2に、2番目に濃い色が付された道路区間と、3番目に濃い色が付された道路区間がある。道路区間0001の中央車線L2には、2番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0002の左車線L1に駐車中の他車両V2に起因する第2車線変更リスクに対応した第2車線変更リスクポテンシャルである。すわなち、第2車線変更リスク判定部1613により、道路区間0002の左車線L1に駐車している他車両V2の後方に進入するような車線変更は、車線変更の難易度が高いと判定されている。そこで、道路区間0001における中央車線L2から左車線L1への車線変更を回避するように、道路区間0001の中央車線L2に、高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置している。
道路区間0002の中央車線L2には、3番目に濃い色が付されている。これは、第2車線変更リスク判定部1613により、道路区間0002の左車線L1に駐車している他車両V2の前方に進入するような車線変更は、車線変更の難易度が低いと判定されていることに対応する。すなわち、道路区間0002にて中央車線L2から左車線L1への車線変更を実行し、停車中の他車両V2の前方で、他車両V3aの左折を待つ他車両V3bの後方の位置に車線変更するように、道路区間0002の中央車線L2に、低い第2車線変更リスクポテンシャルを配置している。
道路区間0003の中央車線L2には、2番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0003にて中央車線L2から左車線L1へ車線変更すると、自車両V1が他車両V3a又はV3bと接触するおそれがあるためである。また、第2車線変更リスク判定部1613により、道路区間0002の左車線L1に駐車している他車両V2の前方ではあるが、他車両V3aに接近した位置に進入するような車線変更は、車線変更の難易度が比較的高いと判定されていることにも対応する。このため、道路区間0003にて中央車線L2から左車線L1への車線変更を回避するように、道路区間0003の中央車線L2に、高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置している。
道路区間0004の中央車線L2には、3番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0004の左車線L1には、予測リスクポテンシャルが配置されておらず、また、他車両V3aの左折が完了し、渋滞が解消されることで左車線L1において他車両V3bが走行を再開したとしても、他車両V3bと自車両V1との車間距離が十分に確保できるためである。第2車線変更リスク判定部は、このような走行シーンでは、車線変更の難易度はそれほど高くないと判定する。そして、道路区間0004にて中央車線L2から左車線L1への車線変更を促すため、道路区間0004の中央車線L2に、低い第2車線変更リスクポテンシャルが配置される。
道路区間0005の中央車線L2には、2番目に濃い色が付されている。これは、道路区間0005の左車線L1には、左折待ちをする他車両V4a~V4cの車列に起因するリスクポテンシャルが配置され、左折待ち渋滞の車列への割り込みを伴う車線変更は車線変更の難易度が高いと、第2車線変更リスク判定部1613が判定しているためである。そこで、道路区間0005における中央車線L2から左車線L1への車線変更を回避するように、道路区間0005の中央車線L2に、高い第2車線変更リスクポテンシャルを配置している。
図13に示すリスクマップにおいて、道路D1の中央車線L2のリスクポテンシャルを見ると、道路区間0002及び0004の位置では、他の道路区間と比較してリスクポテンシャルの値が低くなっている。後述する行動決定部1619は、このリスクポテンシャルの値が低くなっている道路区間0002又は0004に車線変更を開始する位置を設定する。なお、図14では色の濃淡で示したが、第2車線変更リスクポテンシャルの大きさは、車線変更先に配置された予測リスクポテンシャルの値を用いて、難易度の高い車線変更を回避し、車線変更の走行動作に伴うリスクを抑制することができるような適宜の値を設定することができる。たとえば、車線変更先に配置された予測リスクポテンシャルの値に、係数(たとえば1.5)を掛けて車線変更リスクポテンシャルの値としてもよい。
<統合車線変更リスクポテンシャル>
第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612にて生成された第1車線変更リスクポテンシャルと、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614で生成された第2車線変更リスクポテンシャルは、車線変更リスクポテンシャル統合部1615にて統合することができる。これにより、車線変更先の車線を走行する他車両と自車両V1との速度差に起因する第1車線変更リスクポテンシャルと、車線変更先の車線における車線の閉塞に起因する第2車線変更リスクポテンシャルとを考慮して、より適切な位置を車線変更位置に設定することができる。
図14は、図11の第1車線変更リスクポテンシャルと、図13の第2車線変更リスクポテンシャルを統合した統合車線変更リスクポテンシャルを、図9の予測リスクマップに配置した平面図である。図14に示すリスクマップでは、説明の便宜のため、道路D1に配置された予測リスクポテンシャルは削除されている。図14では、図11と同様に、右車線L3から中央車線L2に車線変更する場合のリスクポテンシャルを右車線L3に配置し、中央車線L2から左車線L1へ車線変更する場合のリスクポテンシャルを中央車線L2に配置している。各車線でリスクポテンシャルの低い位置を見ると、右車線L3では、道路区間0003の位置でリスクポテンシャルが最小になり、中央車線L2では、道路区間0004の位置でリスクポテンシャルが最小になる。これに基づいて、行動決定部1619は、右車線L3から中央車線L2への車線変更を道路区間0003内の位置で行い、中央車線L2から左車線L1への車線変更を道路区間0004内の位置で行うように、自車両V1の走行経路を算出する。
<統合リスクポテンシャル>
図3に戻り、経路算出部160は、顕在リスクマップ学習部1616、顕在リスクマップ生成部1617、及びリスクマップ統合部1618を備える。
顕在リスクマップ学習部1616は、顕在リスクマップを生成するための軌跡誘導ポテンシャルを生成する。人間の運転者は、交通環境内に駐車中の車両などの物体を見た場合、それからどれくらい距離を取るべきかではなく、それを処理するのに何をすべきか又はどの経路を通るべきかを考える。このような機構を模倣するために、顕在リスクマップ学習部1616は、運転データから、顕在リスクマップを表示するための軌跡誘導ポテンシャルを生成する。すなわち、実際に検出された、例えば車両、歩行者、自転車などの各物体のそれぞれの分類に対し、リアルタイムで軌跡誘導ポテンシャルが生成される。これには、衝突防止のための反発空間ポテンシャル、所望の軌跡を誘導するための吸引空間ポテンシャル、及び適切な目標速度を誘導するための速度ポテンシャルが含まれる。さらに、検出車両Vd(プローブカー)が各分類の各種の交通参加者に対処するときの、自然な運転データでのその軌跡を学習する。オンライン処理においては、軌跡誘導ポテンシャルを使用して、所望のローカル軌跡及び目標速度プロファイルが計算される。
顕在リスクマップ生成部1617は、顕在リスクマップ学習部1616から得られる、分類毎に予め学習された軌跡誘導ポテンシャルと、自車両V1の周囲の交通参加者の分類結果とに基づいて、自車両V1の周囲の交通参加者毎に、分類に応じた軌跡誘導ポテンシャルを当てはめて、顕在リスクマップを生成する。予測リスクマップ生成部1605にて生成された予測リスクマップは、これまでの経験に基づくリスクポテンシャルを遭遇確率という特性値を用いて予測したものであるのに対し、この顕在リスクマップ生成部1617にて生成される顕在リスクマップは、実際に走行経路を走行しているときに検出される物体に対するリスクポテンシャルを求めたものである。これにより、検出物体との遭遇確率が低い等の原因で予測リスクポテンシャル及び割り込まれリスクポテンシャルが低い道路区間又は車線に、偶然又は突発的に物体が検出された場合には、顕在リスクポテンシャルに基づく適切な走行支援を実行することができる。
なお、同じリスクに起因する場合は、検出したリスクについて算出された顕在リスクポテンシャルは、当該リスクに係る予測リスクポテンシャルよりも大きい。予測リスクポテンシャルは、リスクポテンシャルに対し、遭遇確率という特性値を用いて予測したリスクポテンシャルだからである。
リスクマップ統合部1618は、予測リスクマップ生成部1605にて生成された予測リスクマップと、顕在リスクマップ生成部1617にて生成された顕在リスクマップと、車線変更リスクポテンシャル統合部1615にて生成された統合車線変更リスクポテンシャルとを統合し、統合リスクポテンシャルを生成する。そして、統合リスクポテンシャルを配置した統合リスクマップを生成する。具体的には、リスクマップ統合部1618は、実際に自車両V1を走行させる場合に自車両V1の周囲の物体を検出し、障害物その他の物体を検出した場合には、顕在リスクマップ生成部1617により検出した物体の顕在リスクポテンシャルを求める。そして、予測リスクポテンシャルと顕在リスクポテンシャルとを比較し、リスクポテンシャルが大きい方のリスクポテンシャルに基づいて、自車両V1が走行する車線の設定のような車両の走行を支援するように、統合リスクマップを生成する。この際に、車線変更要否判定部1610にて右折又は左折のために車線変更が必要であると判定され、車線変更リスクポテンシャル統合部1615にて統合車線変更リスクポテンシャルが算出された場合には、統合リスクマップにおいて、自車両V1の走行する自車線に配置された顕在リスクポテンシャル、予測リスクポテンシャル及び統合車線変更リスクポテンシャルを加える。
なお、自車両V1の車線変更の位置は、統合車線変更リスクポテンシャルのみを用いて設定してもよいし、第1車線変更リスクポテンシャル又は第2車線変更リスクポテンシャルのみを用いて設定してもよい。たとえば、統合車線変更リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル、又は第2車線変更リスクポテンシャルが最小になる位置を自車両V1が車線変更する位置として設定する。この場合、当該設定された位置で車線変更を実行するように、顕在リスクポテンシャルと予測リスクポテンシャルとを統合した統合リスクマップを用いて自車両V1の自律走行を支援する。また、リスクマップ統合部1618にて生成された統合リスクポテンシャルを用いて、統合リスクポテンシャルが最小になる位置で車線変更を行うように、自車両V1の車線変更の位置を設定してもよい。
図15は、リスクマップ統合部1618により生成された統合リスクマップの一例を示す平面図である。図15に示す統合リスクマップは、予測リスクマップ生成部1605にて生成された、図9に示す予測リスクマップに、図14に示す統合車線変更リスクポテンシャルが統合されている。これに加えて、顕在リスクマップ生成部1617によって生成された顕在リスクポテンシャルとして、実際に走行経路R1に沿って道路D1を走行する場合に、道路区間0001の左車線L1にて検出された障害物に対応するリスクポテンシャルが配置されている。
設定した車線変更の位置を踏まえて、図3の行動決定部1619は、図15に示す統合リスクマップを参照し、図4の走行経路R1及びR2を走行するとした場合に、最もリスクポテンシャルが小さくなる走行経路を選択する。たとえば、統合車線変更リスクポテンシャルに基づいて、右車線L3から中央車線L2への車線変更の位置は、右車線L3の道路区間0003内に設定され、中央車線L2から左車線L1への車線変更の位置は、中央車線L2の道路区間0004内に設定されているものとする。この場合、車線変更の位置は設定されているので、図15の統合リスクマップを参照し、設定された位置で車線変更する走行経路の中で、リスクポテンシャルをできるだけ回避するような走行経路を選択する。ここで、図4の走行経路R1及びR2を走行する場合には、走行位置付近(検出物体との遭遇位置付近)、つまり同じ車線を走行する必要はなく、同じ道路を走行する場合を含む。また、少なくとも走行位置(検出物体との遭遇位置)を走行する手前で、予測リスクポテンシャル、第1車線変更リスクポテンシャル、及び第2車線変更リスクポテンシャルを算出する。
図16に示す走行経路R1a及びR2aは、図4の走行経路R1及びR2を走行するとした場合に、予測リスクポテンシャル、統合車線変更リスクポテンシャル、及び顕在リスクポテンシャルを考慮した図15に示すリスクマップを参照した上で、行動決定部1619が最終的に設定した走行経路である。
図16に示す走行経路R1aでは、自車両V1は、車線変更先の車線である中央車線L2を走行する他車両との速度差の絶対値が最も小さくなる位置で、右車線L3から中央車線L2に車線変更する。この車線変更の位置は、主として第1車線変更リスクポテンシャルに基づいて設定され、道路区間0003に含まれている。次に、自車両V1は、車線変更先の車線である左車線L1に予測リスクポテンシャルが配置されておらず、また、後方から他車両が接近したとしても車間距離を十分に確保できる位置で、中央車線L2から左車線L1に車線変更する。この車線変更の位置は、主として第2車線変更リスクポテンシャルに基づいて設定され、道路区間0004に含まれている。
走行経路R1aに沿って走行することで、道路D1の右車線L3から左車線L1に車線変更した自車両V1は、走行経路R2aに沿って走行し、交差点Cを左折する。左折後は、走行経路R2aに沿って道路D2の左車線を走行し、目的地Pxに到達する。また、自車両V1が交差点Cを左折するときに、左折待ちをする他車両V4a~V4cが左車線L1にて渋滞している場合には、自車両V1は、他車両V4cの後方に向けて車線変更し、左折待ちの渋滞が解消するまで、他車両V4cの後方で待機し、当該渋滞が解消した後に、交差点Cを左折する。
行動決定部1619は、目的地Pxが設定されている場合に、統合リスクマップを参照して複数の走行経路が設定できるときは、複数の走行経路から、統合車線変更リスクポテンシャルの和が最小になるルートを選択する。また、次の右折又は左折位置が設定されている場合には、当該右折又は左折位置まで統合車線変更リスクポテンシャルを算出してもよい。これにより、走行支援装置100の計算負荷を低減できる。
本実施形態では、隣接車線を走行する他車両の台数は特に限定しなかったが、当該他車両が複数台検出された場合に限り、第1車線変更リスクポテンシャル及び第2車線変更リスクポテンシャルを算出することとしてもよい。また、自車両V1が交差点Cで停止し、走行経路の走行方向前方に右折位置又は左折位置が存在する場合に限り、第1車線変更リスクポテンシャル及び前記第2車線変更リスクポテンシャルを算出してもよい。
[経路算出部の処理]
次に、経路算出部160にて実行される処理内容を説明する。図17は、経路算出部160の周辺物体の軌跡取得部1601、物体分類部1602、周辺物体の情報蓄積部1603及び記憶部1604における情報処理手順を示すフローチャートの一例である。図18は、経路算出部160の予測リスクマップ生成部1605、顕在リスクマップ学習部1616、顕在リスクマップ生成部1617、リスクマップ統合部1618及び行動決定部1619、並びに設定経路読込み部1609、車線変更要否判定部1610、第1車線変更リスク判定部1611、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612、第2車線変更リスク判定部1613、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614、車線変更リスクポテンシャル統合部1615における情報処理手順を示すフローチャートの一例である。各フローチャートのステップにおける処理は、プロセッサ10により実行される。
まず、それぞれの車両が任意の道路を走行する際に図17に示す処理が実行され、これにより蓄積されたデータが、その後の各車両に対する走行支援に供される。図17のステップS11において、プロセッサ10は、それぞれの車両が走行を開始したか否かを判定し、走行を開始したらステップS12へ進み、撮像装置や測距装置などの検出装置1を用いて周辺物体を検出する。車両が走行を開始していない場合は、ステップS11を繰り返す。
ステップS12にて自車両V1の周囲の物体が検出されたらステップS13へ進み、環境認識装置5と物体認識装置6とを用いて検出した物体を分類するとともに、自車情報検出装置4を用いて物体を検出した位置の位置情報を取得する。そして、検出した物体の顕在リスクポテンシャルに係る分類と、検出した位置とを関連付け、記憶部1604に記憶する。続くステップS14にて、検出車両が道路を走行したときの車速を、検出車両の走行位置と対応させて記憶部1604に記憶する。車速は、車速センサなどの検出装置1を用いて検出し、走行位置は、GPS等の自車情報検出装置4を用いて取得する。
ステップS15では、自車両V1の走行が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップS12へ戻って物体の検出とデータの蓄積を、走行が終了するまで繰り返す。このような分類別の物体と位置情報とが関連付けられたデータが、記憶部1604に多数蓄積されることにより、任意の位置における経験的なリスクポテンシャルデータを得ることができる。
次に、自車両V1の走行支援を開始する場合には、図18に示す処理が実行される。本実施形態の走行支援は、ドライバーが目的地Pxを入力することで、現在位置Pcから目的地Pxまでの走行経路Rを用いて自律走行制御する走行支援であるものとする。なお、目的地Pxには、最終目的地のほか、中間地点や、次に遭遇する交差点、例えば左折が予定されている交差点などを含むものとする。
まず、ステップS21にて、自車両V1の走行支援が開始したか否かを判断し、開始した場合にはステップS22へ進む。走行支援が開始していない場合には、ステップS21を繰り返す。ステップS22では、ドライバーに目的地Pxの入力を促し、自車情報検出装置4により自車両V1の現在位置Pcを取得するとともに、ドライバーにより入力された目的地Pxを取得する。
続くステップS23にて、ステップS22で取得された自車両V1の現在位置Pcと目的地Pxに基づいて走行経路Rを計算し、ステップS24にて、ステップS23で算出した走行経路Rの走行位置ごと(つまり、道路区間ごと及び車線ごと)の顕在リスクポテンシャルを記憶部1604から取得する。顕在リスクポテンシャルを取得後、ステップS25にて、ステップS23で算出した走行経路Rの走行位置ごと(つまり、道路区間ごと及び車線ごと)の物体への遭遇確率を記憶部1604から取得する。そして、ステップS26にて、ステップS23及びS24で取得された、検出物体のそれぞれの顕在リスクポテンシャルと遭遇確率とを乗算して予測リスクポテンシャルを算出する。自車両V1の走行支援を開始したら、好ましくは走行を開始する前にステップS22~S26の処理を実行し、予測リスクポテンシャルが最も小さくなる道路区間及び車線を選択することで走行経路Rを設定する。
走行経路Rに沿って自車両V1が走行を開始したら、プロセッサ10は、ステップS27においてリアルタイムで周囲の物体を検出する。物体が検出されない場合には、ステップS29に進む。一方、物体が検出された場合には、ステップS28へ進み、顕在リスクマップ生成部1617により検出した物体の顕在リスクポテンシャルを算出する。ステップS29において、設定経路読込み部1609により読み込まれた設定済みの経路について、車線変更要否判定部1610により、設定済みの経路に沿って走行するために車線変更が必要か否かを判定する。設定された経路に沿って走行するために車線変更が必要であると判定した場合には、ステップS30及びS33に進む。これに対して、設定された経路に沿って走行するために車線変更が必要でないと判定した場合には、ステップS39に進む。
ステップS29からステップS30に進んだ場合には、第2車線変更リスク判定部1613により、自車両V1が車線変更した先の車線に予測リスクポテンシャルが配置されているか否かを判定する。自車両V1が車線変更した先の車線に予測リスクポテンシャルが配置されていると判定した場合には、ステップS31に進む。一方、自車両V1が車線変更した先の車線に予測リスクポテンシャルが配置されていないと判定した場合には、ステップS39に進む。
ステップS30からステップS31に進んだ場合には、第2車線変更リスク判定部を用いて、車線変更先の車線にリスクから、第2車線変更リスク判定部の機能を用いて、車線変更の難易度を判定する。続くステップS32にて、第2車線変更リスクポテンシャル生成部1614の機能により、第2車線変更リスクポテンシャルを算出する。
一方、ステップS29からステップS33に進んだ場合には、第1車線変更リスク判定部の機能を用いて、記憶部1604から、走行位置、つまり道路区間と車線ごとに対応させて蓄積された車両の車速の情報を取得する。続くステップS34にて、取得した車速の情報から、自車両V1が走行する自車線と、隣接車線を走行する他車両との速度差を求め、当該速度差から、速度差に伴うリスクを判定する。そして、ステップS35にて、第1車線変更リスクポテンシャル生成部1612の機能により、第1車線変更リスクポテンシャルを算出する。
ステップS32及びS35での処理が完了すると、ステップS36で、車線変更リスクポテンシャル統合部の機能により、第1車線変更リスクポテンシャルと第2車線変更リスクポテンシャルとを統合して車線変更リスクポテンシャルを生成する。続くステップS37にて、算出した統合車線変更リスクポテンシャルを用いて、自車両V1が目的の車線に車線変更する位置を設定する。そして、ステップS38にて、リスクマップ統合部1618の機能を用いて、顕在リスクマップと予測リスクマップを統合し、統合したリスクマップと、ステップS37にて設定した車線変更の位置とを用いて、設定した位置で車線変更をするように自車両V1の走行を支援する。
一方、ステップS29又はステップS30からステップS39に進んだ場合には、顕在リスクポテンシャルが予測リスクポテンシャル以上か否かを判定する。顕在リスクポテンシャルが予測リスクポテンシャル以上である場合にはステップS40に進み、顕在リスクポテンシャルを用いて自車両V1の走行を支援する。一方、顕在リスクポテンシャルが予測リスクポテンシャル及び割り込まれリスクポテンシャル未満である場合には、ステップS41に進み、予測リスクポテンシャルを用いて自車両V1の走行を支援する。
ステップS27において周囲の物体が検出されず、ステップS28において顕在リスクポテンシャルを算出していない場合には、顕在リスクポテンシャルを0としてステップS39の判断をする。つまり、顕在リスクポテンシャルを算出していない場合には、常に予測リスクポテンシャルは顕在リスクポテンシャルより大きいと判断し、ステップS41に進む。
なお、ステップS30~S32は、必要に応じて省略することができる。この場合には、ステップS35にて算出された第1車線変更リスクポテンシャルを統合車線変更リスクポテンシャルとし、ステップS36~S38の処理を実行する。つまり、第1車線変更リスクポテンシャルのみを用いて車線変更の位置を設定する。また、図18に示すルーチンでは、第1車線変更リスクポテンシャル、第2車線変更リスクポテンシャル、又は統合車線変更リスクポテンシャルに基づいて車線変更の位置を設定するが、リスクマップ統合部1618にて生成された統合リスクマップに基づいて車線変更の位置を設定してもよい。
[本発明の実施態様]
本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、車両の走行状態を検出する検出車両Vdを用いて前記検出車両Vdの車速と、前記検出車両Vdの周囲の他車両の車速とを検出し、前記検出車両Vdの車速と前記他車両の車速とを、前記検出車両の走行位置に対応させて蓄積しておき、自車両V1が走行する設定された経路上に前記走行位置が存在する場合に、自車両V1が走行する自車線から前記自車線の隣接車線に自車両が車線変更する必要があるときは、蓄積した前記検出車両Vdの車速と前記他車両の車速とを用いて前記検出車両Vdと、前記隣接車線にて前記走行位置に対応する位置を走行する前記他車両との速度差を算出し、前記速度差を用いて、車線変更時の速度差に伴うリスクを示す第1車線変更リスクポテンシャルを算出し、前記第1車線変更リスクポテンシャルを用いて、自車両が車線変更する位置を設定する走行支援方法及び走行支援装置100が提供される。これにより、車線変更先の車線を走行する他車両と自車両V1との速度差が大きいため、車線変更のための加速又は減速に時間がかかり、車線変更を実行する十分な時間を確保できず、車線変更の走行動作が完了しないというリスクを未然に回避することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記速度差の絶対値が所定値を超える場合には、前記速度差の絶対値が大きくなるほど、前記第1車線変更リスクポテンシャルが大きくなる。これにより、車線変更時の速度差に伴うリスクを走行シーンにあわせて算出することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記第1車線変更リスクポテンシャルが大きくなる割合は、前記検出車両Vdの車速が前記隣接車線を走行する前記他車両の車速より遅い場合よりも、前記検出車両Vdの車速が前記隣接車線を走行する前記他車両の車速より速い場合のほうが小さい。これにより、減速して車線変更するシーンのリスクよりも、加速して車線変更する走行シーンのリスクを高く設定することができる。すわなち、隣接車線を走行する他車両が自車両V1よりも速い場合には、自車両V1は加速して車線変更する一方、隣接車線を走行する他車両が自車両V1よりも遅い場合には、自車両V1は減速して車線変更する。現在位置Pcから車線変更が完了しなければならない位置までの距離が一定の場合、自車両V1が減速して車線変更する走行シーンの方が、自車両V1が加速して車線変更する走行シーンよりも、車線変更の走行動作は完了しやすい。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記経路における走行方向前方の右折位置又は左折位置が近いほど小さく設定される。これにより、現在位置Pcから右折位置又は左折位置までの距離を考慮した第1車線変更リスクポテンシャルを設定することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記所定値は、現在位置から、交差点及び/又は車線の合流位置までの距離が近いほど小さく設定される。これにより、現在位置Pcから交差点及び/又は車線の合流位置までの距離を考慮した第1車線変更リスクポテンシャルを設定することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、自車両V1が、現在位置Pcから、前記経路に沿って走行するために車線変更が完了しなければならない位置まで走行する間に、自車両V1の車速が、設定された加速度では前記車線変更が完了しなければならない位置に対応する前記検出車両Vdの車速に達しない場合には、設定された加速度を用いて走行位置ごとの自車両V1の車速を予測し、予測された自車両V1の車速と、前記隣接車線を走行する、蓄積された前記他車両の車速との差を前記速度差として算出する。これにより、検出車両Vdにより蓄積された車速情報と、自車両V1の実際の車速とに乖離がある場合に、自車両V1の実際の車速に基づいて第1車線変更リスクポテンシャルを設定することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記検出車両Vdの車速と前記他車両の車速に加えて、信号機の状態を検出し、前記検出車両Vdの車速と前記他車両の車速とを、前記信号機の状態に対応させて蓄積しておき、前記経路上に前記信号機が存在する場合には、前記信号機の現在の状態を検出し、前記信号機の状態に対応させて蓄積しておいた車速の中から、前記信号機の現在の状態に対応する車速を用いて前記速度差を算出する。これにより、信号機の示す指示を考慮した第1車線変更リスクポテンシャルを設定することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記検出車両Vdで物体を検出し、前記物体のリスクポテンシャルを求め、前記物体のリスクポテンシャルと前記物体に遭遇した遭遇位置とを対応させて、前記遭遇位置におけるリスクポテンシャルを顕在リスクポテンシャルとして蓄積し、蓄積された前記遭遇位置における前記顕在リスクポテンシャルを用いて、前記遭遇位置において遭遇が予測される前記物体の予測リスクポテンシャルを求め、前記経路上に前記遭遇位置が存在する場合に、前記顕在リスクポテンシャルと前記予測リスクポテンシャルとの少なくともいずれか一方を用いて、車線変更の走行動作に伴うリスクを示す第2車線変更リスクポテンシャルを算出し、前記第1車線変更リスクポテンシャル及び前記第2車線変更リスクポテンシャルを統合して統合車線変更リスクポテンシャルを算出し、前記自車線において前記統合車線変更リスクポテンシャルが最も小さくなる位置を、自車両が車線変更する位置に設定する。これにより、車線変更先の車線を走行する他車両と自車両V1との速度差に起因する第1車線変更リスクポテンシャルと、車線変更先の車線における車線の閉塞に起因する第2車線変更リスクポテンシャルとを考慮して車線変更位置を設定することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記統合車線変更リスクポテンシャルに、前記顕在リスクポテンシャル及び前記予測リスクポテンシャルを統合して統合リスクポテンシャルを算出し、前記自車線において前記統合リスクポテンシャルが最も小さくなる位置を、自車両V1が車線変更する位置に設定する。これにより、自車両V1が遭遇する、又は遭遇すると予測される障害物を回避する自律走行支援を実行することができる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、前記隣接車線を走行する前記他車両が複数台検出された場合に限り、前記第1車線変更リスクポテンシャル及び前記第2車線変更リスクポテンシャルを算出する。これにより、特に、車線変更に伴うリスクが高い位置での車線変更を回避することができる。すなわち、車線変更先の車線に複数の他車両が検出された場合は、他車両同士の限られた車間距離に向けて車線変更するため、一台の他車両が検出された場合に比べて車線変更の走行動作の制御が複雑になる。このような、複雑な走行動作の自律制御をより回避できるようになる。
また、本実施形態の走行支援方法及び走行支援装置によれば、自車両V1が交差点Cで停止し、前記経路の走行方向前方に右折位置又は左折位置が存在する場合に限り、前記第1車線変更リスクポテンシャル及び前記第2車線変更リスクポテンシャルを算出する。これにより、特に限られた距離の間で車線変更を完了しなければならない走行シーンで、車線変更に伴うリスクを考慮することができる。