JP7467272B2 - さび止め油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、さび止め油組成物に関する。
従来、鋼板、軸受、鋼球、ガイドレールなどの金属製部材の分野では、該金属製部材のさびの発生を防止するためにさび止め油組成物が使用されている。
鉄を主成分とする鋼などを用いた金属製部材は、最終的には塗装やメッキなどによりさびの発生を防止するが、製造工程の途中ではそのような処理は困難となる。そのため、該金属製部材のさびの発生を一時的に防止する観点から、該金属製部材をさび止め油組成物により処理することが一般的である。
さびの発生は、製品の外観を損ねるだけでなく、強度や精度にも大きく影響するため、さび止め性の高いさび止め油組成物が求められている。
例えば、特許文献1には、40℃における動粘度が6mm/s以下の鉱油である第1の鉱油と、40℃における動粘度が250mm/s以上の鉱油である第2の鉱油と、脂肪酸アミン塩と、エステルと、ザルコシン型化合物、ノニオン系界面活性剤、スルホン酸塩、アミン、カルボン酸、脂肪酸アミン塩、カルボン酸塩、パラフィンワックス、酸化ワックス塩及びホウ素化合物からなる群から選ばれる1種以上のさび止め剤と、を含有するさび止め油組成物が開示されており、鋼板、軸受、鋼球、ガイドレールなどの様々な金属加工後の部品や金属部品に付着している水分を除去する性能、及び、十分なさび止め性を有するとされている。
特開2013-199670号公報
近年、よりさび止め性が高められたさび止め油組成物が求められている。
切削加工を行う金属製部材においては、切削加工で用いる切削油の影響で、さび止め油組成物により、該金属製部材のさびの発生を防止することが困難となる場合がある。そのため、さび止め油組成物は、どのような製品に用いられる場合であっても、安定的に高いさび止め性を有することが求められる。
一方で、さび止め油組成物は、製品を製造する途中段階の一時的なさび止めのために用いられるものであり、最終的には除去されるべきものであるため、さび止め性と除去性の両立も求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、さび止め性及び除去性が良好なさび止め油組成物を提供することを課題とする。
従来、さび止め油組成物における添加剤については、様々な検討が行われていたが、添加剤と基油との組み合わせについては、あまり検討がされていなかった。
本発明者らは、上記課題を解決するために、さび止め油組成物に含有される基油と添加剤との組み合わせに着目して鋭意研究を重ねた。その結果、所定の割合のナフテン分を有する基油と、特定の化合物とを組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、基油(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B1)と、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)とを含有し、前記基油(A)は、ナフテン分が35容量%以上である、さび止め油組成物である。
Figure 0007467272000001
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。]
本発明の第1の態様において、さらに、防錆剤(C)を含有し、前記防錆剤(C)は、酸化ワックス塩、カルボン酸、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩、スルホン酸塩、脂肪酸エステル、サルコシン化合物、アミン及びホウ素化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
本発明の第1の態様に係るさび止め油組成物は、40℃における動粘度が0.5mm/s以上10mm/s以下であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記脂肪酸アルカノールアミド(B1)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記化合物(B2)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
本発明によれば、さび止め性及び除去性が良好なさび止め油組成物を提供することができる。
本明細書において、動粘度は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
本明細書において、ナフテン分、パラフィン分とは、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定するものである。以下にその測定法を具体的に示す。
(1)径18mm、長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74~149μmシリカゲル(富士シリシア化学(株)製grade923)120gを充填する。
(2)n-ペンタン75mLを注入し、シリカゲルを予め湿す。
(3)試料約2gを精秤し、等容量のn-ペンタンで希釈し、得られた試料溶液を注入する。
(4)試料溶液の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するために、n-ペンタン140mLを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
(5)溶出液をロータリーエバポレーターにかけて溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得る。
(6)飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行う。質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は日本電子(株)製JMS-AX505Hを使用する。
測定条件を以下に示す。
加速電圧:3.0kV、カソード電圧:-5~-6kV、分解能:約500、エミッター:カーボン、エミッター電流:5mA、測定範囲:質量数35~700、補助オーブン温度:300℃、セパレータ温度:300℃、主要オーブン温度:350℃、試料注入量:1μL。
質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(C2n+2)とナフテン類(C2n、C2n-2、C2n-4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定める。次いで、飽和炭化水素成分の含有量をもとに、試料全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求める。
なお、FI法質量分析のタイプ分析法によるデータ処理の詳細は、「日石レビュー」第33巻第4号135~142頁の特に「2.2.3データ処理」の項に記載されている。
本明細書において、芳香族分とは、JIS K2536-1「石油製品-成分試験方法」の蛍光指示薬吸着法に準拠して測定された値を意味する。
(さび止め油組成物)
本実施形態のさび止め油組成物は、基油(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B1)と、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)とを含有する。
Figure 0007467272000002
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。]
本実施形態のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは0.5mm/s以上であり、より好ましくは0.8mm/s以上であり、さらに好ましくは1mm/s以上であり、特に好ましくは1.5mm/s以上である。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは10mm/s以下であり、より好ましくは8mm/s以下、さらに好ましくは5mm/s以下、特に好ましくは2mm/s以下である。
本実施形態のさび止め油組成物の40℃における動粘度が、上記の好ましい下限値以上であれば、被膜強度がより向上し、さび止め性がより良好となる。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物の40℃における動粘度が、上記の好ましい上限値以下であれば、除去性がより向上する。
例えば、本実施形態のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは0.5mm/s以上10mm/s以下であり、より好ましくは0.8mm/s以上8mm/s以下であり、さらに好ましくは1mm/s以上5mm/s以下であり、特に好ましくは1.5mm/s以上2mm/s以下である。
<基油(A)>
本実施形態のさび止め油組成物は、基油(A)を含有する。
基油(A)としては、鉱油、合成油が挙げられる。
≪鉱油≫
鉱油として、具体的には、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種以上の精製手段を適用して得られる鉱油等が挙げられる。
≪合成油≫
合成油としては、ポリオレフィン、アルキルベンゼン等が挙げられる。
・ポリオレフィン
ポリオレフィンとしては、炭素原子数2~16、好ましくは炭素原子数2~12のオレフィンモノマーを単独重合又は共重合したもの、これらの重合体の水素化物等が挙げられる。前記オレフィンモノマーは、α-オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分岐鎖状オレフィンのうちのいずれであってもよい。このようなオレフィンモノマーとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン及びこれらの混合物等が挙げられる。
上記ポリオレフィンは公知の方法により製造することができる。例えば、無触媒による熱反応によって製造することができるほか、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物触媒;塩化アルミニウム、塩化アルミニウム-多価アルコール系、塩化アルミニウム-四塩化チタン系、塩化アルミニウム-アルキル錫ハライド系、フッ化ホウ素等のフリーデルクラフツ型触媒;有機塩化アルミニウム-四塩化チタン系、有機アルミニウム-四塩化チタン系等のチーグラー型触媒;アルミノキサン-ジルコノセン系、イオン性化合物-ジルコノセン系等のメタロセン型触媒;塩化アルミニウム-塩基系、フッ化ホウ素-塩基系等のルイス酸コンプレックス型触媒等の公知の触媒を用いて、上記のオレフィンを単独重合又は共重合させることによって目的のポリオレフィンを製造することができる。
・アルキルベンゼン
アルキルベンゼンとしては、分子中に炭素原子数1~40のアルキル基を1~4個有するものが好ましい。また、アルキルベンゼンのアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、安定性、粘度特性等の点から分岐鎖状のアルキル基が好ましく、特に入手が容易であるという点から、プロピレン、ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーから誘導される分岐鎖状アルキル基がより好ましい。
本実施形態におけるアルキルベンゼンは上記の中でも、安定性、入手可能性の点から1個又は2個のアルキル基を有するアルキルベンゼン、すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、又はこれらの混合物が最も好ましい。また、アルキルベンゼンとしては、単一の構造のアルキルベンゼンだけでなく、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であっても良い。
上記アルキルベンゼンは公知の方法により製造することができる。例えば、芳香族化合物を原料とし、アルキル化剤及びアルキル化触媒を用いて製造することができる。
ここで、原料として使用される芳香族化合物として、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、これらの混合物等が挙げられる。
アルキル化剤として、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン等の低級モノオレフィン、好ましくはプロピレンの重合によって得られる炭素原子数6~40の直鎖状又は分枝鎖状のオレフィン;ワックス、重質油、石油留分、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱分解によって得られる炭素原子数6~40の直鎖状又は分岐鎖状のオレフィン;灯油、軽油等の石油留分からn-パラフィンを分離し、これを触媒によりオレフィン化することによって得られる炭素原子数9~40の直鎖状オレフィン、これらの混合物等が挙げられる。
アルキル化の際のアルキル化触媒としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のフリーデルクラフツ型触媒;硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸、活性白土等の酸性触媒、等の公知の触媒が挙げられる。
本実施形態のさび止め油組成物における基油は、上述した鉱油及び/又は合成油をそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、上述した鉱油を1種単独で用いること、又は、2種以上を混合して用いることが好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)は、ナフテン分が35容量%以上であり、好ましくは40容量%以上であり、より好ましくは45容量%以上である。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)は、ナフテン分が好ましくは70容量%以下であり、より好ましくは65容量%以下であり、さらに好ましくは55容量%以下である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のナフテン分が、35容量%以上であると後述する脂肪酸アルカノールアミド(B1)、及び、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)との相溶性が向上し、さび止め性が良好となる。
また、基油(A)のナフテン分が、上記の好ましい下限値以上であれば、後述する脂肪酸アルカノールアミド(B1)、及び、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)との相溶性がより向上し、さび止め性がより良好となる。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のナフテン分が、上記の好ましい上限値以下であれば、ナフテン分に起因する独特の臭気を低減でき、より作業環境が良好なる。
例えば、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のナフテン分は、好ましくは35容量%以上70容量%以下であり、より好ましくは40容量%以上65容量%以下であり、さらに好ましくは45容量%以上55容量%以下である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)は、パラフィン分が好ましくは30容量%以上であり、より好ましくは35容量%以上であり、さらに好ましくは45容量%以上である。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)は、パラフィン分が好ましくは65容量%以下であり、より好ましくは60容量%以下であり、さらに好ましくは55容量%以下である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のパラフィン分が、上記の好ましい下限値以上であれば、より低臭気となり作業環境がより良好となる。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のパラフィン分が、上記の好ましい上限値以下であれば、後述する脂肪酸アルカノールアミド(B1)、及び、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)との相溶性が向上し、さび止め性がより良好となる。
例えば、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)のパラフィン分は、好ましくは30容量%以上65容量%以下であり、より好ましくは35容量%以上60容量%以下であり、さらに好ましくは45容量%以上55容量%以下である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の芳香族分は、作業環境の観点から、5容量%以下が好ましく、3容量%以下がより好ましく、1容量%以下がさらに好ましく、0.5容量%以下が特に好ましく、0.3容量%以下が最も好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量以上であり、さらに好ましくは93質量以上である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下である。
例えば、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の含有量は、好ましくは80質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは90質量以上98質量%以下であり、さらに好ましくは93質量以上98質量%以下である。
本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の40℃における動粘度は、好ましくは0.5mm/s以上であり、より好ましくは0.8mm/s以上であり、さらに好ましくは1mm/s以上であり、特に好ましくは1.5mm/s以上である。
一方で、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の40℃における動粘度は、好ましくは10mm/s以下であり、より好ましくは8mm/s以下、さらに好ましくは5mm/s以下、特に好ましくは2mm/s以下である。
本実施形態における基油(A)の40℃における動粘度が、上記の好ましい下限値以上であれば、被膜強度がより向上し、さび止め性がより良好となる。
一方で、本実施形態における基油(A)の40℃における動粘度が、上記の好ましい上限値以下であれば、除去性がより向上する。
例えば、本実施形態のさび止め油組成物における基油(A)の40℃における動粘度は、好ましくは0.5mm/s以上10mm/s以下であり、より好ましくは0.8mm/s以上8mm/s以下であり、さらに好ましくは1mm/s以上5mm/s以下であり、特に好ましくは1.5mm/s以上2mm/s以下である。
<脂肪酸アルカノールアミド(B1)>
本実施形態のさび止め油組成物は、脂肪酸アルカノールアミド(B1)(以下、(B1)成分ともいう)を含有する。
(B1)成分は、例えば、脂肪酸とアルカノールアミンとを反応させることにより得ることができる。
・脂肪酸
脂肪酸アルカノールアミド(B1)の原料として使用される脂肪酸としては、炭素原子数4~26の脂肪酸が好ましく、炭素原子数8~24の脂肪酸がより好ましく、炭素原子数16~20の脂肪酸がさらに好ましい。炭素原子数が上記好ましい範囲であれば、さび止め性がより向上する。該脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖状脂肪酸でも分岐鎖状脂肪酸でもよい。
好適な具体例としては、n-ブタン酸(酪酸)、n-ヘキサン酸(カプロン酸)、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-ノナン酸、n-デカン酸(カプリン酸)、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸(ラウリン酸)、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(ステアリン酸)、n-イコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸等の直鎖状の飽和脂肪酸;イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソイコサン酸等の分岐鎖状の飽和脂肪酸;9-テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9-オクタデセン酸(オレイン酸)、エイコセン酸、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)等の不飽和脂肪酸これらの混合物;これらの脂肪酸を1種以上含む天然由来の脂肪酸(例えば、牛脂、ヤシ油など)等が挙げられる。
・アルカノールアミン
脂肪酸アルカノールアミド(B1)の原料として使用されるアルカノールアミンとしては、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基とを持つ化合物であれば特に限定されず、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソ-プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、及び、これらの混合物等が挙げられ、その中でも、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソ-プロパノールアミンが好ましい。
上記脂肪酸とアルカノールアミンとを反応させることにより得られる脂肪酸アルカノールアミド(B1)としては、ブタン酸(酪酸)ジエタノールアミド、ヘキサン酸(カプロン酸)ジエタノールアミド、デカン酸(カプリン酸)ジエタノールアミド、ドデカン酸(ラウリン酸)モノエタノールアミド、ドデカン酸ジエタノールアミド、ドデカン酸イソプロパノールアミド、オクタデカン酸ジエタノールアミド、オクタデカン酸モノエタノールアミド、イコサン酸(アラキジン酸)ジエタノールアミド、テトラコサン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、テトラデカン酸(ミリスチン酸)ジエタノールアミド、テトラデカン酸モノエタノールアミド、テトラデカン酸ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノイソプロパノールアミド、ヘキサデカン酸ジプロパノールアミド、ヘキサデカン酸ジブタノールアミド、イソ-オクタデカン酸ジエタノールアミド、イソ-オクタデカン酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド等を挙げることができる。
本実施形態のさび止め油組成物における脂肪酸アルカノールアミド(B1)としては、上記の中でも、さび止め性をより向上させる観点から、ブタン酸(酪酸)ジエタノールアミド、ヘキサン酸(カプロン酸)ジエタノールアミド、デカン酸(カプリン酸)ジエタノールアミド、イコサン酸(アラキジン酸)ジエタノールアミド、テトラコサン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノイソプロパノールアミド、ヘキサデカン酸ジプロパノールアミド、及び、ヘキサデカン酸ジブタノールアミドから選択させる一種以上の化合物であることが好ましく、デカン酸(カプリン酸)ジエタノールアミド、イコサン酸(アラキジン酸)ジエタノールアミド、テトラコサン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)ジエタノールアミド、ヘキサデカン酸モノエタノールアミド、及び、ヘキサデカン酸モノイソプロパノールアミドから選択させる一種以上の化合物であることがより好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物において、(B1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のさび止め油組成物における(B1)成分の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、(B1)成分の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、5質量%未満であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
(B1)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、さび止め性がより向上する。
(B1)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、除去性がより向上する。
例えば、本実施形態における(B1)成分の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%未満であることが好ましく、0.05質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
上記脂肪酸アルカノールアミド(B1)の製造方法としては、例えば、所定量の脂肪酸に対して2倍モル量のアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソ-プロパノールアミン等)を添加し、窒素気流下で加熱、脱水縮合させる方法を用いることができる。
<化合物(B2)>
本実施形態のさび止め油組成物は、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)(以下、(B2)成分ともいう)を含有する。
Figure 0007467272000003
[式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。]
式(B2-1)中、Rは、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。
・炭素原子数4~26の飽和炭化水素基
炭素原子数4~26の飽和炭化水素基としては、炭素原子数4~26の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数4~26の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体的には、直鎖状又は分岐鎖状のブチル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンチル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキシル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプチル基、直鎖状又は分岐鎖状のオクチル基、直鎖状又は分岐鎖状のノニル基、直鎖状又は分岐鎖状のデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のウンデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のドデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のトリデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のテトラデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンタデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプタデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のオクタデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のノナデシル基、直鎖状又は分岐鎖状のイコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘンイコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のドコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のトリコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のテトラコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンタコシル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサコシル基が挙げられる。
・炭素原子数4~26の不飽和炭化水素基
炭素原子数4~26の不飽和炭化水素基としては、例えば、炭素原子数4~26直鎖状のアルケニル基、炭素原子数4~26分岐鎖状のアルケニル基等が挙げられる。具体的には、直鎖状又は分岐鎖状のブテニル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンテニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプテニル基、直鎖状又は分岐鎖状のオクテニル基、直鎖状又は分岐鎖状のノネニル基、直鎖状又は分岐鎖状のデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のウンデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のドデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のトリデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のテトラデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンタデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘプタデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のオクタデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のノナデセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のイコセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘンイコセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のドコセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のトリコセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のテトラコセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のペンタセニル基、直鎖状又は分岐鎖状のヘキサコセニル基が挙げられる。なお、二重結合の位置は任意であり、例えば、8-トリデセニル基、8-ペンタデセニル基、8-ヘプタデセニル基、10-ノナデセニル基等が挙げられる。
式(B2-1)中、Rは、上記の中でも、炭素原子数10~18の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数14~18の直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数16~18の直鎖状のアルキル基であることがさらに好ましい。炭素原子数が上記好ましい範囲であれば、さび止め性がより向上する。
式(B2-1)中、Rは、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。
における炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基としては、上述したRにおける炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。
式(B2-1)中、Rは、上記の中でも、炭素原子数7~19の飽和又は不飽和炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数11~19の直鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数17~19の直鎖状のアルケニル基であることがさらに好ましい。炭素原子数が上記好ましい範囲であれば、さび止め性がより向上する。
本実施形態のさび止め油組成物における(B2)成分としては、上記の中でも、さび止め性をより向上させる観点から、N-ブチルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-オクチルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-デシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-オクタデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-イコシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサコシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンヘキサン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオクタン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンドデカン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンイコサン酸塩、
N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンヘキサコサン酸塩が好ましく、N-デシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-オクタデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンドデカン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンヘキサコサン酸塩がより好ましく、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-オクタデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンドデカン酸塩、N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンヘキサコサン酸塩がさらに好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物において、(B2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のさび止め油組成物における(B2)成分の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、(B2)成分の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、8質量%未満であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
(B2)成分の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、さび止め性がより向上する。
(B2)成分の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、除去性がより向上する。
例えば、本実施形態における(B2)成分の含有量は、0.01質量%以上8質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物において、(B2)成分の含有量と、(B1)成分の含有量との質量比率((B2)成分の含有量/(B1)成分の含有量)は、0.1~15が好ましく、0.5~10がより好ましい。
(B2)成分の製造方法としては、例えば、相当するN-アルキル一級アミンとアクリロニトリルを窒素雰囲気下、100~200℃で触媒を用いて反応させ、さらに水素化し、得られたN-アルキルジアミンに窒素雰囲気下で脂肪酸を加える方法を採用することができる。
<任意成分>
本実施形態のさび止め油組成物は、上述した基油(A)、(B1)成分、及び(B2)成分以外の任意成分を含有してもよい。
該任意成分としては、後述する防錆剤(C);フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、サリチル酸エステル系酸化防止剤、トリアジン系酸化防止剤等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール又はその誘導体、チアジアゾール、ベンゾチアゾール等の腐食防止性能を向上させるための腐食防止剤;ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス、ペトロラタム等造膜剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;(B1)成分及び(B2)成分以外の界面活性剤等が挙げられる。
≪防錆剤(C)≫
本実施形態のさび止め油組成物は、よりさび止め性を向上させる観点から、さらに、防錆剤(C)を含有することが好ましい。
防錆剤(C)としては、酸化ワックス塩、カルボン酸、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩、スルホン酸塩、脂肪酸エステル、サルコシン化合物、アミン、及び、ホウ素化合物のいずれか一種以上を含有することが好ましい。
[酸化ワックス塩]
本実施形態のさび止め油組成物における酸化ワックス塩としては、ワックスを酸化して得られる酸化ワックスと、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属又はアミンとを反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部又は全部を中和して塩としたものが挙げられる。
酸化ワックス塩の原料として使用される酸化ワックスは、ワックスを酸化して得られるものである。前記ワックスとして、具体的には、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム、合成により得られるポリオレフィンワックス等が挙げられる。
酸化ワックス塩がアルカリ金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
酸化ワックス塩がアルカリ土類金属塩である場合、原料として使用されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
酸化ワックス塩が重金属塩である場合、原料として使用される重金属としては、亜鉛、鉛等が挙げられる。なお、人体や生体系に対する安全性の点から、酸化ワックス塩はバリウム塩及び重金属塩でないことが好ましい。
酸化ワックス塩がアミン塩である場合、アミンとしては、モノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。
・モノアミン
モノアミンとして、具体的には、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、芳香族置換アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、アルキルシクロアルキルアミン、油脂から誘導されるアミン(牛脂アミンなど)等が挙げられる。
アルキルアミンとして、より具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、モノペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、モノヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジオクチルアミン、モノノニルアミン、モノデシルアミン、モノウンデシルアミン、モノドデシルアミン、モノトリデシルアミン、モノテトラデシルアミン、モノペンタデシルアミン、モノヘキサデシルアミン、モノヘプタデシルアミン、モノオクタデシルアミン、モノノナデシルアミン、モノイコシルアミン、モノヘンイコシルアミン、モノドコシルアミン、モノトリコシルアミン、ジメチル(エチル)アミン、ジメチル(プロピル)アミン、ジメチル(ブチル)アミン、ジメチル(ペンチル)アミン、ジメチル(ヘキシル)アミン、ジメチル(ヘプチル)アミン、ジメチル(オクチル)アミン、ジメチル(ノニル)アミン、ジメチル(デシル)アミン、ジメチル(ウンデシル)アミン、ジメチル(ドデシル)アミン、ジメチル(トリデシル)アミン、ジメチル(テトラデシル)アミン、ジメチル(ペンタデシル)アミン、ジメチル(ヘキサデシル)アミン、ジメチル(ヘプタデシル)アミン、ジメチル(オクタデシル)アミン、ジメチル(ノナデシル)アミン、ジメチル(イコシル)アミン、ジメチル(ヘンイコシル)アミン、ジメチル(トリコシル)アミン等が挙げられる。
アルケニルアミンとして、より具体的には、モノビニルアミン、ジビニルアミン、トリビニルアミン、モノプロペニルアミン、ジプロペニルアミン、トリプロペニルアミン、モノブテニルアミン、ジブテニルアミン、トリブテニルアミン、モノペンテニルアミン、ジペンテニルアミン、トリペンテニルアミン、モノヘキセニルアミン、ジヘキセニルアミン、モノヘプテニルアミン、ジヘプテニルアミン、モノオクテニルアミン、ジオクテニルアミン、モノノネニルアミン、モノデセニルアミン、モノウンデセニルアミン、モノドデセニルアミン、モノトリデセニルアミン、モノテトラデセニルアミン、モノペンタデセニルアミン、モノヘキサデセニルアミン、モノヘプタデセニルアミン、モノオクタデセニルアミン、モノノナデセニルアミン、モノイコセニルアミン、モノヘンイコセニルアミン、モノドコセニルアミン、モノトリコセニルアミン等が挙げられる。
アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンとして、より具体的には、ジメチル(ビニル)アミン、ジメチル(プロペニル)アミン、ジメチル(ブテニル)アミン、ジメチル(ペンテニル)アミン、ジメチル(ヘキセニル)アミン、ジメチル(ヘプテニル)アミン、ジメチル(オクテニル)アミン、ジメチル(ノネニル)アミン、ジメチル(デセニル)アミン、ジメチル(ウンデセニル)アミン、ジメチル(ドデセニル)アミン、ジメチル(トリデセニル)アミン、ジメチル(テトラデセニル)アミン、ジメチル(ペンタデセニル)アミン、ジメチル(ヘキサデセニル)アミン、ジメチル(ヘプタデセニル)アミン、ジメチル(オクタデセニル)アミン、ジメチル(ノナデセニル)アミン、ジメチル(イコセニル)アミン、ジメチル(ヘンイコセニル)アミン、ジメチル(トリコセニル)アミン等が挙げられる。
芳香族置換アルキルアミンとして、より具体的には、モノベンジルアミン、(2-フェニルエチル)アミン(別名;モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1-フェニルエチル)アミン、ビス(2-フェニルエチル)アミン(別名;ジフェネチルアミン)等が挙げられる。
シクロアルキルアミンとして、より具体的には、モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン等が挙げられる。
アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミンとして、より具体的には、ジメチル(シクロペンチル)アミン、ジメチル(シクロヘキシル)アミン、ジメチル(シクロヘプチル)アミン等が挙げられる。
アルキルシクロアルキルアミンとして、より具体的には、(メチルシクロペンチル)アミン、ビス(メチルシクロペンチル)アミン、(ジメチルシクロペンチル)アミン、ビス(ジメチルシクロペンチル)アミン、(エチルシクロペンチル)アミン、ビス(エチルシクロペンチル)アミン、(メチルエチルシクロペンチル)アミン、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アミン、(ジエチルシクロペンチル)アミン、(メチルシクロヘキシル)アミン、ビス(メチルシクロヘキシル)アミン、(ジメチルシクロヘキシル)アミン、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、(エチルシクロヘキシル)アミン、ビス(エチルシクロヘキシル)アミン、(メチルエチルシクロヘキシル)アミン、(ジエチルシクロヘキシル)アミン、(メチルシクロヘプチル)アミン、ビス(メチルシクロヘプチル)アミン、(ジメチルシクロヘプチル)アミン、(エチルシクロヘプチル)アミン、(メチルエチルシクロヘプチル)アミン、(ジエチルシクロヘプチル)アミン等が挙げられる。
・ポリアミン
ポリアミンとして、具体的には、アルキレンポリアミン、N-アルキルエチレンジアミン、N-アルケニルエチレンジアミン、N-アルキル又はN-アルケニルアルキレンポリアミン、及び、油脂から誘導されるポリアミン(牛脂ポリアミンなど)等が挙げられる。
アルキレンポリアミンとして、より具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ブチレンジアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタブチレンヘキサミン等が挙げられる。
N-アルキルエチレンジアミンとして、より具体的には、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N-プロピルエチレンジアミン、N-ブチルエチレンジアミン、N-ペンチルエチレンジアミン、N-ヘキシルエチレンジアミン、N-ヘプチルエチレンジアミン、N-オクチルエチレンジアミン、N-ノニルエチレンジアミン、N-デシルエチレンジアミン、N-ウンデシルエチレンジアミン、N-ドデシルエチレンジアミン、N-トリデシルエチレンジアミン、N-テトラデシルエチレンジアミン、N-ペンタデシルエチレンジアミン、N-ヘキサデシルエチレンジアミン、N-ヘプタデシルエチレンジアミン、N-オクタデシルエチレンジアミン、N-ノナデシルエチレンジアミン、N-イコシルエチレンジアミン、N-ヘンイコシルエチレンジアミン、N-ドコシルエチレンジアミン、N-トリコシルエチレンジアミン等が挙げられる。
N-アルケニルエチレンジアミンとして、より具体的には、N-ビニルエチレンジアミン、N-プロペニルエチレンジアミン、N-ブテニルエチレンジアミン、N-ペンテニルエチレンジアミン、N-ヘキセニルエチレンジアミン、N-ヘプテニルエチレンジアミン、N-オクテニルエチレンジアミン、N-ノネニルエチレンジアミン、N-デセニルエチレンジアミン、N-ウンデセニルエチレンジアミン、N-ドデセニルエチレンジアミン、N-トリデセニルエチレンジアミン、N-テトラデセニルエチレンジアミン、N-ペンタデセニルエチレンジアミン、N-ヘキサデセニルエチレンジアミン、N-ヘプタデセニルエチレンジアミン、N-オクタデセニルエチレンジアミン、N-ノナデセニルエチレンジアミン、N-イコセニルエチレンジアミン、N-ヘンイコセニルエチレンジアミン、N-ドコセニルエチレンジアミン、N-トリコセニルエチレンジアミン等が挙げられる。
N-アルキル又はN-アルケニルアルキレンポリアミンとして、より具体的には、N-アルキルジエチレントリアミン、N-アルケニルジエチレントリアミン、N-アルキルトリエチレンテトラミン、N-アルケニルトリエチレンテトラミン、N-アルキルテトラエチレンペンタミン、N-アルケニルテトラエチレンペンタミン、N-アルキルペンタエチレンヘキサミン、N-アルケニルペンタエチレンヘキサミン、N-アルキルプロピレンジアミン、N-アルケニルプロピレンジアミン、N-アルキルジプロピレントリアミン、N-アルケニルジプロピレントリアミン、N-アルキルトリプロピレンテトラミン、N-アルケニルトリプロピレンテトラミン、N-アルキルテトラプロピレンペンタミン、N-アルケニルテトラプロピレンペンタミン、N-アルキルペンタプロピレンヘキサミン、N-アルケニルペンタプロピレンヘキサミン、N-アルキルブチレンジアミン、N-アルケニルブチレンジアミン、N-アルキルジブチレントリアミン、N-アルケニルジブチレントリアミン、N-アルキルトリブチレンテトラミン、N-アルケニルトリブチレンテトラミン、N-アルキルテトラブチレンペンタミン、N-アルケニルテトラブチレンペンタミン、N-アルキルペンタブチレンヘキサミン、N-アルケニルペンタブチレンヘキサミン等が挙げられる。該アルキル基及びアルケニル基としては、炭素原子数1~30のアルキル基及びアルケニル基が挙げられる。
・アルカノールアミン
アルカノールアミンとして、具体的には、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n-プロパノール)アミン、ジ(n-プロパノール)アミン、トリ(n-プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、モノペンタノールアミン、ジペンタノールアミン、トリペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、ジヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、ジヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、モノデカノールアミン、モノウンデカノールアミン、モノドデカノールアミン、モノトリデカノールアミン、モノテトラデカノールアミン、モノペンタデカノールアミン、モノヘキサデカノールアミン、ジエチルモノエタノールアミン、ジエチルモノプロパノールアミン、ジエチルモノブタノールアミン、ジエチルモノペンタノールアミン、ジプロピルモノエタノールアミン、ジプロピルモノプロパノールアミン、ジプロピルモノブタノールアミン、ジプロピルモノペンタノールアミン、ジブチルモノエタノールアミン、ジブチルモノプロパノールアミン、ジブチルモノブタノールアミン、ジブチルモノペンタノールアミン、モノエチルジエタノールアミン、モノエチルジプロパノールアミン、モノエチルジブタノールアミン、モノエチルジペンタノールアミン、モノプロピルジエタノールアミン、モノプロピルジプロパノールアミン、モノプロピルジブタノールアミン、モノプロピルジペンタノールアミン、モノブチルジエタノールアミン、モノブチルジプロパノールアミン、モノブチルジブタノールアミン、モノブチルジペンタノールアミン、モノシクロヘキシルモノエタノールアミン、モノシクロヘキシルジエタノールアミン、モノシクロヘキシルモノプロパノールアミン、モノシクロヘキシルジプロパノールアミン等が挙げられる。
酸化ワックス塩がアミン塩である場合、アミンとしては、上記の中でも、耐ステイン性がより向上する観点から、モノアミンが好ましい。その中でもアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン、並びに、アルキルシクロアルキルアミンがより好ましい。また、その中でも、アミン分子中の炭素原子数の合計が、3以上のアミンが好ましく、5以上のアミンがより好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物における酸化ワックス塩としては、さび止め性をより向上させる観点から、酸化ワックスのアルカリ土類金属塩又は酸化ワックスのアミン塩であることが好ましく、酸化ワックスのカルシウム塩又は酸化ワックスの炭素原子数5以上のアルキルアミン塩(ポリオレフィンワックスのモノオクチルアミン塩等)例えば、であることがより好ましい。
[カルボン酸]
本実施形態のさび止め油組成物におけるカルボン酸としては、脂肪酸、ジカルボン酸、ヒドロキシ脂肪酸、ナフテン酸、樹脂酸、酸化ワックス、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
・脂肪酸
本実施形態のさび止め油組成物における脂肪酸としては、炭素原子数6~24の脂肪酸が好ましく、炭素原子数10~22の脂肪酸がより好ましい。該脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖状脂肪酸でも分岐鎖状脂肪酸でもよい。
好適な具体例としては、n-ヘキサン酸(カプロン酸)、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸(カプリル酸)、n-ノナン酸、n-デカン酸(カプリン酸)、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸(ラウリン酸)、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸(ステアリン酸)、n-イコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸等の直鎖状の飽和脂肪酸;イソヘプタン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソイコサン酸等の分岐鎖状の飽和脂肪酸;9-テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、9-オクタデセン酸(オレイン酸)、エイコセン酸、9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)等の不飽和脂肪酸これらの混合物;これらの脂肪酸を1種以上含む天然由来の脂肪酸(例えば、牛脂、ヤシ油など)等が挙げられる。
・ジカルボン酸
ジカルボン酸は、2つのカルボキシ基をもつ化合物である。
ジカルボン酸としては、炭素原子数2~40のジカルボン酸が好ましく、炭素原子数5~36のジカルボン酸がより好ましい。これらの中でも、炭素原子数6~18の不飽和脂肪酸をダイマー化したダイマー酸、アルキル又はアルケニルコハク酸が好ましい。
ダイマー酸としては、例えば、オレイン酸の二量化によって生成されるカルボン酸が挙げられる。
アルキル又はアルケニルコハク酸としては、炭素原子数8~18のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸がより好ましい。
・ヒドロキシ脂肪酸
ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ基を1つ以上有する脂肪酸である。ヒドロキシ脂肪酸が有するヒドロキシ基の数は、1~3が好ましい。
炭素原子数12~48のヒドロキシ脂肪酸として、具体的には、リシノール酸等が挙げられる。
・ナフテン酸
ナフテン酸は、石油中のカルボン酸類であって、ナフテン環にカルボキシ基が結合したものをいう。
・樹脂酸
樹脂酸は、天然樹脂中に存在するカルボン酸である。
樹脂酸として、具体的には、アビエチン酸、ピマル酸、レポピマール酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸等が挙げられる。
・酸化ワックス
酸化ワックスは、ワックスを酸化して得られるものである。前記ワックスとして、具体的には、石油留分の精製の際に得られるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトラタム、合成により得られるポリオレフィンワックス等が挙げられる。
・ラノリン脂肪酸
ラノリン脂肪酸は、羊の毛に付着するろう状物質を精製(加水分解等)して得られるカルボン酸である。
本実施形態のさび止め油組成物におけるカルボン酸としては、さび止め性をより向上させる観点から、ジカルボン酸又はラノリン脂肪酸が好ましく、ダイマー酸又はラノリン脂肪酸がより好ましく、オレイン酸のダイマー酸又はラノリン脂肪酸がさらに好ましい。
[カルボン酸塩]
本実施形態のさび止め油組成物におけるカルボン酸塩としては、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩であり、具体的には、上記カルボン酸のアルカリ金属塩、上記カルボン酸のアルカリ土類金属塩、上記カルボン酸のアミン塩等が挙げられる。カルボン酸塩を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンとしては、それぞれ酸化ワックス塩の説明において例示したアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンと同様のものが挙げられる。
本実施形態のさび止め油組成物におけるカルボン酸塩としては、上記の中でも、上記カルボン酸のアルカリ金属塩、又は、上記カルボン酸のアルカリ土類金属塩であることが好ましく、上記カルボン酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物におけるカルボン酸塩として、より具体的には、ラノリン脂肪酸のアルカリ土類金属塩又はリシノール酸のアルカリ金属塩であることが好ましく、ラノリン脂肪酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましい、ラノリン脂肪酸のカルシウム塩であることがさらに好ましい。
[スルホン酸塩]
本実施形態のさび止め油組成物におけるスルホン酸塩としては、スルホン酸アルカリ金属塩、スルホン酸アルカリ土類金属塩、スルホン酸アミン塩等が挙げられる。
本実施形態におけるスルホン酸塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアミンとスルホン酸とを反応させることにより得ることができる。
・アルカリ金属
スルホン酸アルカリ金属塩の原料として使用されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。
・アルカリ土類金属
スルホン酸アルカリ土類金属塩の原料として使用されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましく、カルシウム、バリウムがより好ましい。
・アミン
スルホン酸アミン塩の原料として使用されるアミンとしては、酸化ワックスのアミン塩の説明において例示されたアミンと同様のものが挙げられる。
・スルホン酸
スルホン酸塩の原料として使用されるスルホン酸は、常法によって製造された公知のものを使用することができる。具体的には、石油スルホン酸、合成スルホン酸等が挙げられる。
・・石油スルホン酸
石油スルホン酸とは、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生するマホガニー酸等である。
・・合成スルホン酸
合成スルホン酸とは、洗剤等の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生するもの、若しくは、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる直鎖状や分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、又は、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等が挙げられる。これらのスルホン酸の分子量について特に制限はないが、好ましくは100~1500、より好ましくは200~700のものが使用される。
上記スルホン酸の中でも、ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30であるジアルキルナフタレンスルホン酸;ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、かつ、2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30であるジアルキルベンゼンスルホン酸;及びベンゼン環に結合するアルキルの炭素原子数が15以上であるモノアルキルベンゼンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
・・・ジアルキルナフタレンスルホン酸
ナフタレン環に結合する2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30のジアルキルナフタレンスルホン酸は、2つのアルキル基の総炭素原子数が14以上であれば、抗乳化性がより向上する。一方で、30以下であれば、貯蔵安定性がより向上する。なお、2つのアルキル基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30であれば各アルキル基の炭素原子数について特に制限はないが、各アルキル基の炭素原子数はそれぞれ6~18であることが好ましい。
・・・ジアルキルベンゼンスルホン酸
ベンゼン環に結合する2つのアルキル基がそれぞれ直鎖アルキル基又は側鎖メチル基を1個有する分岐鎖状アルキル基であり、かつ、2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30のジアルキルベンゼンスルホン酸は、アルキル基の炭素原子数が14以上であれば、抗乳化性がより向上する。一方で、30以下であれば、貯蔵安定性がより向上する。なお、ベンゼン環に結合する2つのアルキル基の総炭素原子数が14~30であれば各アルキル基の炭素原子数については特に限定はないが、各アルキル基の炭素原子数はそれぞれ6~18であることが好ましい。
・・・モノアルキルベンゼンスルホン酸
ベンゼン環に結合する1つのアルキル基の炭素原子数が15以上のモノアルキルベンゼンスルホン酸は、炭素原子数が14以上であれば、貯蔵安定性がより向上する。また、ベンゼン環に結合するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
上記の原料を用いて得られるスルホン酸塩としては、具体的には以下のものが挙げられる。すなわち、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又はアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とスルホン酸とを反応させることにより得られる中性(正塩)スルホネート;上記の中性(正塩)スルホネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られる塩基性スルホネート;炭酸ガスの存在下で上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;上記の中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基若しくはアミン、及び、ホウ酸、若しくは無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応、又は、上記の炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネートとホウ酸、若しくは無水ホウ酸等のホウ酸化合物との反応によって得られるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、上記の中性(正塩)スルホネートを製造する場合、反応促進剤として目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加することや、目的とするスルホネートと異なるアルカリ金属、アルカリ土類金属又アミンの中性(正塩)スルホネートを調製した後に目的とするスルホン酸塩と同じアルカリ金属アルカリ土類金属又はアミンの塩化物を添加して交換反応を行うことによっても目的のスルホン酸塩を得ることが可能である。
本実施形態のさび止め油組成物におけるスルホン酸塩としては、上記の中でも、ジアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩、ジアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ土類金属塩、又はジアルキルベンゼンスルホン酸アミン塩であることが好ましく、ジアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ土類金属塩であることがより好ましく、ジアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム又はジアルキルベンゼンスルホン酸バリウムであることがさらに好ましい。
[脂肪酸エステル]
本実施形態のさび止め油組成物における脂肪酸エステルとしては、多価アルコールの部分エステル、エステル化酸化ワックス、エステル化ラノリン脂肪酸、アルキル又はアルケニルコハク酸エステル等が挙げられる。
・多価アルコールの部分エステル
多価アルコールの部分エステルは、多価アルコール中のヒドロキシ基の少なくとも1つ以上がエステル化されておらず、ヒドロキシ基のままで残っているエステルである。
多価アルコールの部分エステルの原料である多価アルコールとしては、分子中のヒドロキシ基の数が、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~6の多価アルコールが挙げられる。加えて、好ましくは炭素原子数が2~20であり、より好ましくは炭素原子数が3~10である多価アルコールが挙げられる。
これらの多価アルコールの中でも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを用いることが好ましい。
多価アルコールの部分エステルの原料であるカルボン酸としては、カルボン酸の炭素原子数が、好ましくは2~30、より好ましくは6~24、さらに好ましくは10~22である。
当該カルボン酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよく、また直鎖状カルボン酸であっても分岐鎖状カルボン酸であってもよい。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪酸;ドデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸等)、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸、リノール酸等)、エイコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
・エステル化酸化ワックス
エステル化酸化ワックスとは、酸化ワックスとアルコール類とを反応させ、酸化ワックスが有する酸性基の一部又は全部をエステル化させたものをいう。
エステル化酸化ワックスの原料として使用される酸化ワックスとしては、上記酸化ワックス塩の説明において例示された酸化ワックスと同様のものが挙げられる。
エステル化酸化ワックスの原料として使用されるアルコール類としては、炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐鎖状の飽和1価アルコール、炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐鎖状の不飽和1価アルコール、上記脂肪酸エステルの説明において例示した多価アルコール、ラノリンの加水分解により得られるアルコール等が挙げられる。
・エステル化ラノリン脂肪酸
エステル化ラノリン脂肪酸とは、羊の毛に付着するろう状物質を、加水分解等の精製によって得られたラノリン脂肪酸とアルコールとを反応させて得られたものを指す。エステル化ラノリン脂肪酸の原料として使用されるアルコールとしては、上記エステル化酸化ワックスの説明において例示されたアルコールが挙げられ、中でも多価アルコールが好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセリンがより好ましい。
・アルキル又はアルケニルコハク酸エステル
アルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、上述したアルキル又はアルケニルコハク酸と1価アルコール又は2価以上の多価アルコールとのエステルが挙げられる。これらの中でも1価アルコール又は2価アルコールのエステルが好ましい。
1価アルコールは、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても、不飽和であってもよい。
1価アルコールとして、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール(カプリルアルコール)、ノナノール、デカノール(カプリンアルコール)、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、エイコサノール(アラキジルアルコール)、ヘンエイコサノール、ドコサノール(ベへニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール等の直鎖状の飽和アルコール;2-エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、2-n-オクチル-1-ドデカノール等の分岐鎖状の飽和アルコール;シス-9-ヘキサデセン-1-オール(パルミトレイルアルコール)、9E-オクタデセン-1-オール(エライジルアルコール)、シス-9-オクタデセン-1-オール(オレイルアルコール)、9Z,12Z-オクタデカジエン-1-オール(リノレイルアルコール)等の直鎖状の不飽和アルコールなどが挙げられる。
1価アルコールとしては、上記の中でも、炭素原子数8~18の直鎖状の飽和アルコールが好ましい。
2価アルコールとしては、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールが好ましい。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、ノニレングリコール、デシレングリコールが挙げられる。
ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを単独重合又は共重合させたものが挙げられる。
ポリオキシアルキレングリコールにおいて、構造の異なるアルキレンオキサイドが共重合している場合、オキシアルキレン基の重合形式は特に制限されず、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれでもよい。
また、ポリオキシアルキレングリコールの重合度は、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~6がさらに好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物におけるアルキル又はアルケニルコハク酸エステルとしては、アルキル又はアルケニルコハク酸の2個の-COOH基の双方がエステル化されたジエステル(完全エステル)であってもよく、-COOH基の一方のみがエステル化されたモノエステル(部分エステル)であってもよい。
本実施形態のさび止め油組成物におけるアルキル又はアルケニルコハク酸エステルは、上記の中でも、よりさび止め性を向上させる観点から、モノエステルであることが好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物における脂肪酸エステルとしては、上記の中でも、多価アルコールの部分エステル又はエステル化ラノリン脂肪酸であることが好ましく、ソルビタンモノオレート又はラノリン脂肪酸ペンタエリスリトールエステル(フルエステル)であることがより好ましい。
[サルコシン化合物]
本実施形態のさび止め油組成物におけるサルコシン化合物としては、下記一般式(S-1)~(S-3)でそれぞれ表される化合物が好ましい。
-CO-NR-(CH)n-COOX・・・(S-1)
(R-CO-NR-(CH)n-COO)Y・・・(S-2)
(R-CO-NR-(CH)n-COO)-Z-(OH)m’・・・(S-3)
[式(S-1)~(S-3)中、Rは炭素原子数6~30のアルキル基又は炭素原子数6~30のアルケニル基であり、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、nは1~4の整数である。
式(S-1)中、Xは水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数1~30のアルケニル基である。
式(S-2)中、Yはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Yがアルカリ金属の場合、mは1であり、Yがアルカリ土類金属の場合、mは2である。
式(S-3)中、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基であり、mは1以上の整数であり、m’は0以上の整数であり、m+m’はZの価数を示す。]
上記式(S-1)~(S-3)中、Rは炭素原子数6~30のアルキル基又は炭素原子数6~30のアルケニル基であり、好ましくは炭素原子数7~24のアルキル基又は炭素原子数7~24のアルケニル基であり、より好ましくは炭素原子数8~20のアルキル基又は炭素原子数8~20のアルケニル基である。
このようなアルキル基及びアルケニル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい);ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよく、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。
上記式(S-1)~(S-3)中、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、貯蔵安定性等の点から、炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましい。
上記式(S-1)~(S-3)中、nは、貯蔵安定性の観点から、4以下の整数であり、3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
上記式(S-1)中、Xにおける炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数1~30のアルケニル基は、その中でも、貯蔵安定性向上の観点から、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルケニル基であることがより好ましい。このようなアルキル基又はアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい);エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよく、また二重結合の位置も任意である)等が挙げられる。
上記式(S-1)中、Xは、上記の中でも、さび止め性がより向上する観点から、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルケニル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基がさらに好ましい。
上記式(S-2)中、Yはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、又はバリウムであることが好ましく、マグネシウム又はカルシウムであることがより好ましい。
上記式(S-3)中、Zは2価以上の多価アルコールの水酸基を除いた残基である。該多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、イソプレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール等の2価のアルコール;グリセリン、2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;ポリグリセリン又はこれらの脱水縮合物が挙げられる。
上記式(S-3)中、m及びm’は、Zの多価アルコールの水酸基のうち、全てが置換されていてもよく、その一部のみが置換されていてもよいことを意味する。
本実施形態のさび止め油組成物におけるサルコシン化合物としては、上記の中でも、さび止め性をより向上させる観点から、上記式(S-1)又は(S-2)のいずれかで表される化合物が好ましく、上記式(S-1)で表される化合物がより好ましく、N-オレオイルサルコシンがさらに好ましい。
[アミン]
本実施形態のさび止め油組成物におけるアミンとしては、上記酸化ワックス塩の説明において例示されたアミンと同様のものが挙げられる。
本実施形態のさび止め油組成物におけるアミンとしては、上記の中でも、モノアミンであることが好ましく、アルキルアミン又はシクロアルキルアミンであることがより好ましく、モノオクチルアミン又はジシクロヘキシルアミンであることがさらに好ましい。
[ホウ素化合物]
本実施形態のさび止め油組成物におけるホウ素化合物として、具体的には、ホウ酸カルシウムが好適に挙げられる。
本実施形態のさび止め油組成物において、防錆剤(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防錆剤(C)としては、上記の中でも、よりさび止め性を向上させる観点から、酸化ワックス塩、カルボン酸、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩、スルホン酸塩、脂肪酸エステル、及び、サルコシン化合物のいずれか一種以上を含有することが好ましく、カルボン酸、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩、スルホン酸塩、及び、サルコシン化合物のいずれか一種以上を含有することがより好ましく、カルボン酸、及び、サルコシン化合物のいずれか一種以上を含有することがさらに好ましい。
本実施形態のさび止め油組成物において、防錆剤(C)の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、防錆剤(C)の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
防錆剤(C)の含有量が上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、さび止め性がより向上する。
防錆剤(C)の含有量が上記の好ましい範囲の上限値以下であれば、除去性がより向上する。
例えば、本実施形態における防錆剤(C)の含有量は、さび止め油組成物全量100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
以上説明した本実施形態のさび止め油組成物は、基油(A)と、(B1)成分と、(B2)成分とを含有する。
本実施形態のさび止め油組成物における(B1)成分及び(B2)成分は、金属製部材の表面に吸着しやすい特定の構造をしている。加えて、本実施形態のさび止め油組成物における基油は、該(B1)成分及び(B2)成分との相溶性を向上させる観点から、ナフテン分が35容量%以上の基油(A)を採用している。
これらの相乗効果によって、本実施形態のさび止め油組成物は、従来のさび止め油組成物よりもさび止め性が優れたものである。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施形態のさび止め油組成物の原料として用いた基油(A)-1~(A)-3、(a)-1、(a)-2のナフテン分、パラフィン分及び芳香族分を表1に示す。
基油(A)-1~(A)-3、(a)-1、(a)-2のナフテン分及びパラフィン分は、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定した。
以下にその測定法を具体的に示す。
(1)径18mm、長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74~149μmシリカゲル(富士シリシア化学(株)製grade923)120gを充填した。
(2)n-ペンタン75mLを注入し、シリカゲルを予め湿らせた。
(3)各基油約2gを精秤し、等容量のn-ペンタンで希釈し、n-ペンタンで希釈した各基油を注入した。
(4)n-ペンタンで希釈した各基油の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するために、n-ペンタン140mLを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収した。
(5)回収した溶出液をロータリーエバポレーターにかけて溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得た。
(6)飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行った。
質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は、日本電子社製、JMS-AX505Hを使用した。
測定条件を以下に示す。
加速電圧:3.0kV、カソード電圧:-5~-6kV、分解能:約500、エミッター:カーボン、エミッター電流:5mA、測定範囲:質量数35~700、補助オーブン温度:300℃、セパレータ温度:300℃、主要オーブン温度:350℃、試料注入量:1μL。
質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(C2n+2)とナフテン類(C2n、C2n-2、C2n-4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定めた。次いで、飽和炭化水素成分の含有量をもとに、各基油全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求めた。
基油の芳香族分は、JIS K2536-1「石油製品-成分試験方法」の蛍光指示薬吸着法に準拠して測定した。
Figure 0007467272000004
<さび止め油組成物の調製>
(実施例1~43、比較例1~5)
表2~7に示す各成分を用いて、各例のさび止め油組成物をそれぞれ調製した。
なお、表2~7中の各基油(A)及び各例のさび止め油組成物の40℃における動粘度は、JIS K 2283-2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定した値である。
[さび止め性試験]
・試験片の作製
試験片としては、JIS G3141に規定されるSPCC-SB材を用いた。脱脂後の試験片を切削油(10倍希釈)に60秒間浸漬し30秒懸架することで余分な切削油を除去した後、評価する各例のさび止め油組成物に浸漬し、試験片を作製した。
・さび止め性の評価
JIS K 2246に規定される湿潤試験に準拠して、各例のさび止め油組成物のさび止め性の評価を行った。評価は所定の時間毎(168時間後、366時間後、504時間後、672時間後、840時間後、1008時間後)に行った。本試験における評価はJIS K 2246に規定されるさび発生度(A級(A)~E級(E);A級(A)が最もさび止め性に優れていることを表す)に基づいて行った。
その結果を、「さび止め性試験」として表2~7に示した。
[除去性試験]
上記各例のさび止め油組成物に浸漬させることにより作製した各試験片を、40℃の脱脂溶剤(ENEOS社製;商品名「NS100」)を2Lビーカに1L入れ120回転/秒にて撹拌しているところに浸漬させ、30秒間脱脂することにより、各試験片から各例のさび止め油組成物を除去した。その後、各試験片に90℃の温風を60秒(両面に30秒ずつ)吹きかけて溶剤を揮発させ、速やかに湿度95%、温度40℃の恒湿恒温槽内に水平に48時間静置した。その後、JIS K 2246に規定される湿潤試験に準拠して、さびの発生具合を評価した。本試験における評価はJIS K 2246に規定されるさび発生度(A級~E級;A級が最もさび止め性に優れていることを表す)に基づいて行い、以下の基準で評価した。すなわち、さびが発生するもの(E級)ほど、さび止め油組成物の除去性が良好であることを意味する。
その結果を、「除去性試験」として表2~7に示した。
<除去性の評価>
A(最も除去性が優れている):さび発生度E級(最もさびが発生している)
B:さび発生度D級
C:さび発生度C級
D:さび発生度B級
E(最も除去性が劣っている):さび発生度A級(最もさびが発生していない)
Figure 0007467272000005
Figure 0007467272000006
Figure 0007467272000007
Figure 0007467272000008
Figure 0007467272000009
Figure 0007467272000010
表2~7中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。なお、数値は配合量(質量%)である。
(A)-1~(A)-3、(a)-1、(a)-2:表1に示す性状の鉱油
なお、(a)-2は、ノルマルドデカンである。
(B1)-1:ヘキサデカン酸(パルミチン酸)ジエタノールアミド
(B1)-2:オレイン酸ジエタノールアミド
(B1)-3:デカン酸(カプリン酸)ジエタノールアミド
(B1)-4:イコサン酸(アラキジン酸)ジエタノールアミド
(B1)-5:ヘキサン酸(カプロン酸)ジエタノールアミド
(B1)-6:ブタン酸(酪酸)ジエタノールアミド
(B1)-7:テトラコサン酸ジエタノールアミド
(B1)-8:ヘキサデカン酸モノエタノールアミド
(B1)-9:ヘキサデカン酸モノイソプロパノールアミド
(B1)-10:ヘキサデカン酸ジプロパノールアミド
(B1)-11:ヘキサデカン酸ジブタノールアミド
(B2)-1:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-2:N-オクタデシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-3:N-デシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-4:N-オクチルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-5:N-イコシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-6:N-ブチルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-7:N-ヘキサコシルトリメチレンジアミンオレイン酸塩
(B2)-8:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンドデカン酸塩
(B2)-9:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオクタン酸塩
(B2)-10:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンイコサン酸塩
(B2)-11:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンオクタン酸塩
(B2)-12:N-ヘキサデシルトリメチレンジアミンヘキサコサン酸塩
(C)-1:パラフィンワックスのカルシウム塩
(C)-2:ポリオレフィンワックスのモノオクチルアミン塩
(C)-3:ラノリン脂肪酸のカルシウム塩
(C)-4:リシノール酸のナトリウム塩
(C)-5:ソルビタンモノオレート
(C)-6:ラノリン脂肪酸ペンタエリスリトールエステル(フルエステル)
(C)-7:N-オレオイルサルコシン
(C)-8:ジシクロヘキシルアミン
(C)-9:モノオクチルアミン
(C)-10:ラノリン脂肪酸
(C)-11:ダイマー酸
(C)-12:ジアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム
(C)-13:ジアルキルベンゼンスルホン酸バリウム
(C)-14:スルホン酸エチレンジアミン
(C)-15:ホウ酸カルシウム
表2~7に示す通り、実施例のさび止め油組成物は、比較例のさび止め油組成物に比べ、遜色ない除去性でありながら、さび止め性が優れていることが確認できた。

Claims (5)

  1. 基油(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B1)と、下記一般式(B2-1)で表される化合物(B2)とを含有し、
    前記基油(A)は、ナフテン分が35容量%以上である、さび止め油組成物。
    Figure 0007467272000011
    [式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数4~26の飽和又は不飽和炭化水素基である。]
  2. さらに、防錆剤(C)を含有し、前記防錆剤(C)は、酸化ワックス塩、カルボン酸、前記化合物(B2)以外のカルボン酸塩、スルホン酸塩、脂肪酸エステル、サルコシン化合物、アミン及びホウ素化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項1に記載のさび止め油組成物。
  3. 40℃における動粘度が0.5mm/s以上10mm/s以下である、請求項1又は2に記載のさび止め油組成物。
  4. 前記脂肪酸アルカノールアミド(B1)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、0.01質量%以上5質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のさび止め油組成物。
  5. 前記化合物(B2)の含有量は、さび止め油組成物全量に対して、0.01質量%以上8質量%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のさび止め油組成物。
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