JP7466069B1 - 亜鉛箔及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

亜鉛を母材とし、ビスマスを実質的に非含有であるコア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置し且つ亜鉛を母材とし、ビスマスを含有するクラッド部とを有し、前記コア部と前記クラッド部とは分離不能に結合している亜鉛箔。前記コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが、前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズよりも大きいことが好ましい。前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが0.2μm以上24μm未満であることも好ましい。

Description

本発明は亜鉛箔及びその製造方法に関する。
本出願人は先に、ビスマスを含み、残部亜鉛及び不可避不純物からなり、亜鉛の結晶粒の平均サイズが0.2μm以上8μm以下である亜鉛箔を提案した(特許文献1参照)。この亜鉛箔は、該亜鉛箔を電池の負極活物質として用いた場合に、電池の長期保存中のガス発生量が従来の圧延亜鉛箔を用いた場合よりも抑制されるという利点を有する。
特許文献2には、負極カップを備えるボタン形アルカリ電池において、負極カップの負極合剤側を金属箔で覆うことが記載されている。
US2022/0037654A1 特開平9-161740号公報
近年、フレキシブル電池の需要が拡大している。フレキシブル電池では、引張等の負荷が加わりやすく、負極活物質として亜鉛箔を用いた場合、箔における破断が生じやすい。また前記の負荷が加わった状態において、当該破断及び/又は新生面の露出が起こり、これに起因して、電解液中での長時間保存中に亜鉛箔からガス発生量が増加しやすい。これらのことから、引張等の負荷を受けやすい環境下においても長時間保存中にガスの発生量を抑制できるとともに、引張等の負荷に対して容易に破断しない取り扱い性に優れた亜鉛箔が求められている。これに対して、特許文献1に記載の亜鉛箔は伸び性の点で改善の余地があった。また特許文献2では、ガス発生の抑制及び伸び性の向上を両立させる課題について、何ら考慮したものではない。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する課題を解消し得る亜鉛箔及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、亜鉛を母材とする特定の二種類の層を組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、亜鉛を母材とし、ビスマスを実質的に非含有であるコア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置し且つ亜鉛を母材とし、ビスマスを含有するクラッド部とを有し、
前記コア部と前記クラッド部とは分離不能に結合している亜鉛箔を提供するものである。
また、本発明は、亜鉛を母材としてなりビスマスを実質的に非含有である圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、薄膜形成手段によって亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する層を形成する、亜鉛箔の製造方法を提供するものである。
図1は、電解液の循環速度を算出するために用いられる電極間面積を表す模式図である。 図2は、亜鉛の結晶粒のサイズを求めるときに用いられるソフトウエアのキャプチャ像である。 図3は、実施例1で得られた亜鉛箔の厚み方向断面に沿う走査型電子顕微鏡像である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本実施形態の亜鉛箔は、コア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置するクラッド部とを有する。以下、コア部及びクラッド部のそれぞれについて説明する。
本実施形態において、コア部は亜鉛箔の大部分を占める部位である。コア部は亜鉛箔と同様に箔の形態をしている。つまりコア部は平面状であることが好適である。平面状とは、薄く広がりをもった平坦な形状を指す。当該形状は、フィルム状、シート状又は層状と呼ばれることがある。コア部は亜鉛箔における厚み方向の中心に位置していることが好ましい。つまり亜鉛箔における厚み方向の中心位置にコア部が含まれることが好ましい。例えば、仮にコア部の一方の面のみにクラッド部が形成されている場合もコア部の厚みがクラッド部よりも厚い場合、通常、そのような構成となる。また亜鉛箔における一方の面においてコア部が露出していてもよい。
コア部は、亜鉛を母材とするものである。「亜鉛を母材とする」とは、亜鉛元素が好ましくは80質量%以上の含有率を占めることをいう。コア部としては圧延亜鉛箔を用いることが、亜鉛箔の伸び性の向上のために好ましい。コア部における亜鉛の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。
コア部はビスマスを実質的に非含有である。後述するクラッド部がビスマスを含有し、コア部がビスマスを実質的に含有していないことで、コア部を伸び性の良好なものに構成でき、クラッド部の存在によりガス発生の抑制を図ることが可能となる。
コア部がビスマスを実質的に非含有であるとは、コア部におけるビスマスの含有量が質量基準にて10ppm以下であることを意味する。コア部におけるビスマスの含有量は7ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、0ppmであることが好ましい。ビスマス元素の含有割合は、ICP発光分光分析により測定することができる。
コア部は、亜鉛、添加元素及び不可避不純物からなるか、或いは、亜鉛及び不可避不純物からなることが好ましい。
コア部における添加元素としては、水素過電圧が亜鉛よりも高いか又は酸化還元電位が亜鉛よりも貴であるものを用いることが有利である。そのような金属元素としては、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
コア部における不可避不純物としては鉄、銅、スズ、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロムが挙げられる。上述した不可避不純物の量は、コア部中に、鉄、銅、スズ、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロムの合計の割合で、質量基準にて、好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下である。
コア部における亜鉛及び上記で挙げた各不可避不純物の含有割合は、亜鉛箔からコア部をサンプリングしてICP発光分光分析法に供することによって測定される。塩酸等の酸性溶液に試料を溶解させた後、ICP発光分光分析法で亜鉛以外の含有金属の濃度を測定し、全金属の溶液濃度を1として各種金属元素の含有割合を質量として換算する。コア部のサンプリング方法としては、後述する走査型電子顕微鏡における観察により、コア部の位置を確認した上で、コア部の一方の面のみにクラッド部が位置している場合には、コア部側表面をカッター、やすり等で削り取り、サンプリングすればよい。また、コア部の両面にクラッド部が位置している場合にはカッター、やすり等を用いてクラッド部を削除してコア部からなる試料を得ることができる。
亜鉛箔の伸び性を優れたものとする観点、及び繰り返しの曲げ等の変形に対する柔軟性の向上の観点から、コア部においては、亜鉛の結晶粒の平均サイズSrが24μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることが更に好ましい。また、コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズSrは100μm以下であることが好ましい。
これらの観点から、範囲としては、コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズSrは24μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下がより好ましく、35μm以上50μm以下が更に好ましい。
コア部にこのようなサイズの結晶粒を生じさせるためには、圧延法によってコア部を製造することが好適である。なお、結晶粒の平均サイズは、XRDパターンから求められる結晶子サイズとは異なる概念であることに留意すべきである。結晶粒の平均サイズの測定方法は後述する。
伸び性を優れたものとする観点から、コア部の厚みWrは50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましい。また、コア部の厚みWrは、柔軟性の点から300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。これらの点から、範囲としては、コア部の厚みWrは、50μm以上300μm以下であることが好ましく、70μm以上200μm以下であることがより好ましく、100μm以上150μm以下であることが更に好ましい。
クラッド部は、コア部の少なくとも一方の面に位置する。クラッド部はコア部の両面のうち、一方の面のみに位置していてもよく、両方の面に位置していてもよい。本実施形態においてクラッド部は、コア部と積層されている層である。また本実施形態において、クラッド部は、コア部と直接接触した状態で積層するように形成されている。コア部におけるクラッド部が位置している面上において、クラッド部はコア部の当該面の全体を被覆していてもよく、一部を被覆していてもよい。また亜鉛箔における少なくとも一方の面においてクラッド部が露出していることが好ましく、両方の面においてクラッド部が露出していてもよい。露出している状態の例として、亜鉛箔の最外層を構成する状態が挙げられる。
クラッド部は、亜鉛を母材とする。「亜鉛を母材とする」の意味は、コア部と同様であり、好ましくは80質量%以上の含有率を占めることをいう。クラッド部における亜鉛の含有量は90質量%以上であってよく、95質量%質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.5質量%以上であってもよい。
クラッド部はビスマスを含んでおり、それによって引張等の負荷が加わる状態であっても電池の保存中のガス発生が効果的に抑制される。クラッド部におけるビスマスの含有割合は、質量基準で100ppm以上であることが、伸び性を高めつつ、引張等の負荷をかけた場合においても長期保存時のガス発生量を効果的に抑制できるため好ましく、300ppm以上であることがより好ましく、400ppm以上であることが更に好ましく、500ppm以上であることが特に好ましい。
また、クラッド部におけるビスマスの含有割合は質量基準で10000ppm以下であることで、クラッド部内の均一分散性の利点があるため好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、1200ppm以下であることが更に好ましい。これらの観点から、範囲としては、クラッド部におけるビスマスの含有割合は質量基準で100ppm以上10000ppm以下が好ましく、300ppm以上3000ppm以下であることがより好ましく、400ppm以上1200ppm以下であることが更に好ましく、500ppm以上1200ppm以下であることが特に好ましい。
クラッド部中においてビスマスの存在状態は明らかでないが、少なくとも亜鉛との固溶体の状態ではないと本発明者は考えている。固溶体の状態とは金属元素の添加によって亜鉛の結晶構造が変化する状態のことである。ビスマスを含有する亜鉛箔の断面を、走査型電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分光法(特性X線検出法)を用いて元素マッピングすると、亜鉛がそれ単独で金属元素として存在している状態のマッピング像と、ビスマスが金属元素として存在している状態のマッピング像とがそれぞれ得られる。
クラッド部は、亜鉛、ビスマス、ビスマス以外の添加元素及び不可避不純物からなるか、或いは、亜鉛、ビスマス及び不可避不純物からなることが好ましい。クラッド部は合金であっても合金でなくてもよい。
クラッド部がビスマス以外の添加元素を含有する場合、水素過電圧が亜鉛よりも高いか又は酸化還元電位が亜鉛よりも貴であるものを用いることが有利である。そのような金属元素としては、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。上述した添加元素の量は、クラッド部中に、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンの合計の割合で、質量基準にて、好ましくは10000ppm以下であり、更に好ましくは8000ppm以下である。また、インジウム、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、スズ、バリウム、ストロンチウム、銀及びマンガンから選択される添加元素を含有する場合は、質量基準にて、合計で好ましくは10ppm以上が挙げられる。
クラッド部における不可避不純物としては鉄、銅、スズ、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムが挙げられる。上述した不可避不純物は、クラッド部中に、鉄、銅、スズ、アルミニウム、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムの合計の割合で、質量基準にて、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
クラッド部における亜鉛、上記で挙げた各添加元素、及び上記で挙げた各不可避不純物の含有割合は、亜鉛箔からクラッド部をサンプリングしてICP発光分光分析法に供することによって測定される。試料をICP発光分光分析法に供する方法はコア部と同様である。クラッド部のサンプリング方法としては、後述する走査型電子顕微鏡における観察により、クラッド部の位置を確認した上で、亜鉛箔のクラッド部が露出している表面をカッター、やすり等で削ぎ取り、サンプリングすればよい。
コア部に比べてクラッド部は、亜鉛の結晶粒の平均サイズが小さいことが好ましい。これにより、従来の亜鉛箔に比べて、伸び性を良くしつつ、電池の保管中のガス発生を効果的に抑制できるものとなるため好ましい。上述した通り、コア部において、亜鉛の結晶粒の平均サイズが大きいことは、亜鉛箔の伸び性を向上させる。一方で、クラッド部では比較的小さいサイズの亜鉛の結晶粒が分布し、粒界が多数存在する状態となることで、引張等の負荷が加わった後においても保管時のガス発生量を低減することができる。
引張等の負荷が加わった後においても保管時のガス発生量を低減する利点を一層顕著なものとする観点から、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズSdが24μm未満であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。また、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズSdは、引張等の負荷が加わった後においても保管時のガス発生量を低減する利点を一層顕著なものとする観点からの点で、0.2μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。これらの点から、範囲としては、上記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズSdが0.2μm以上24μm未満であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましく、2μm以上10μm以下であることが更に好ましい。クラッド部にこのようなサイズの結晶粒を生じさせるためには、電解法によってクラッド部を製造することが好適である。
コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズをSr、クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズをSdとしたときに、Sd/Srは1以下であることが伸び性を良くしつつ、電池の保管中のガス発生を抑制できるものとなる効果が顕著である点で好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。
亜鉛の結晶粒の平均サイズは次の方法で測定される。測定には、電子線後方散乱回折(以下「EBSD」ともいう。)評価装置(OIM Data Collection Ver.7.2.0、株式会社TSLソリューションズ製)を搭載したFE銃型の走査型電子顕微鏡(SUPRA 55VP、カールツァイス株式会社製)及び付属のEBSD解析装置を用いる。ウルトラミクロトームを用いて断面が切り出されたサンプルを調製し、このサンプルについて、EBSD法に準じて、サンプル全体の厚みを測定し得る断面視における結晶粒サイズのデータを得る。
EBSDの測定データのバックグラウンド処理は、前記EBSD評価装置の「Image Proccessing」内の「Background Subtraction」、「Normalize Intensity Histgram」、「Dynamic Background Subtraction」のチェックを外した状態の「Binning」が4x4(160x120)の条件にて実施する。「Gain」、「Exposure」は「Camera」内の像が図2に示すとおり電子回折において菊池パターンが観察されない状態且つ30±1fpsになるように適宜条件を変更してもよい。この条件下で「Image Proccessing Function」内の「Ave」の値が10の条件下で、「Capture Bkd」にてバックグラウンドの情報を取得する。
結晶粒サイズを測定するときのWD値は15±1mmとし、「Image Proccessing」内の「Background Subtraction」、「Normalize Intensity Histgram」、「Dynamic Background Subtraction」のチェックを入れた状態で、観察箇所上で前記EBSD評価装置の「Capture Pattern」内の「Phase」から「Zn」を選択し、「Solutions」の「Fit」の値が1.5以内、「CI」の値が0.1より高い条件下にて、WD値を調整する。
結晶粒サイズは「Scan」内の「Capture SEM」にて取り出したサンプル断面の写真を「Start Scan」にて測定する。
この測定データを、EBSD解析プログラム(OIM Analysis Ver.7.3.1、株式会社TSLソリューションズ製)の分析メニューの「Grain Size Quick Chart」より「All data」を使用して、結晶粒サイズ(平均)(Grain Size(Average))を求める。この結晶粒サイズ(平均)を、本発明における亜鉛の結晶粒の平均サイズとする。
本測定においては、方位差15°以上を結晶粒界とみなす。ただし、亜鉛の結晶構造は六方最密充填構造であるために双晶粒界を考慮して、ある粒界での方位差を回転軸と回転角で表し、回転軸が下記の(1)で表され、回転角が94.8±1°及び57±1°の場合と、回転軸が下記の(2)で表され、回転角が34.8±1°及び64.3±1°の場合は、結晶粒界とみなさない。観察時の走査型電子顕微鏡の条件は加速電圧:20kV、アパーチャー径:60μm、High Current mode、試料角度:70°とする。観察倍率、測定領域及びステップサイズは、結晶粒の大きさに応じて、適宜、条件を変更してもよい。
Figure 0007466069000001
上記の通りコア部とクラッド部では、コア部の方がクラッド部に比して結晶粒の平均サイズが大きいことが好ましいところ、クラッド部はその厚さ方向において、コア部に向かうに連れて、結晶粒の平均サイズは連続的に大きくなっていってもよく、不連続に大きくなっていってもよい。
クラッド部は引張等の負荷に対してガス発生を抑制する観点から、厚みWdが1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上が更に好ましい。クラッド部は厚みWdが200μm未満であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下が更に好ましい。これらの点からクラッド部の厚みWdは、1μm以上200μm未満であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上50μm以下であることが更に好ましい。
クラッド部の厚みは、コア部の両面それぞれにクラッド部が配置された場合は、両面側それぞれの厚みの合計値とする。
コア部の厚みをWr、クラッド部の厚みをWdとしたときに、Wd/Wrが1以下であることが伸び性を良くする効果が顕著である点で好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。Wd/Wrはガス発生抑制効果を顕著なものとする点からWd/Wrが0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることが特に好ましい。これらの点から、伸び性とガス発生抑制効果を優れて両立させる点から、Wd/Wrが0.1以上1以下であることが好ましく、0.2以上0.8以下であることがより好ましく、0.3以上0.5以下であることが特に好ましい。
コア部はクラッド部と分離不能に結合している。コア部はクラッド部と分離不能に結合していることは、亜鉛箔の厚み方向に沿う断面を走査型電子顕微鏡で観察したときにコア部とクラッド部との界面をまたぐ形状の結晶粒が一つ以上観察されることを指す。このような形状は、コア部における結晶粒の方位面を揃えるようにしてクラッド部における結晶粒が粒成長したことに起因して生じるものである。詳述すると、本実施形態の亜鉛箔の厚み方向に沿う断面において、コア部とクラッド部との界面には、図3に矢印で示す複数の小さな孔部からなる孔部列が観察され、この孔部列により界面の位置を特定できる。図3に示す通り、走査型電子顕微鏡像が反射電子像である場合、当該顕微鏡像において、結晶粒の方位面の違いを反映して、一つ一つの亜鉛の結晶粒の色の濃淡が異なる。この濃淡の違いより、亜鉛の結晶粒の形状を特定できる。例えば図3における左から二つ目の矢印(2)で示す孔と、三つ目の矢印(3)で示す孔の間には、白色の結晶粒がコア部とクラッド部の界面をまたぐ形状で観察される。同様に、図3の左から3番目の矢印(3)で示す孔と、4番目の矢印(4)で示す孔との間にも、白色の結晶粒がコア部とクラッド部の界面をまたぐ形状にて観察される。このように、コア部とクラッド部の界面をまたいで連続する形状の結晶粒が一つ以上観察される場合、コア部とクラッド部とが分離不能に結合していると判断でき、二つ以上観察されることが好ましい。なおコア部とクラッド部との界面は、EDS分析(エネルギー分散型分光法)により、ビスマスの存在位置を確認することによっても確認できる。
亜鉛箔は、一次電池及び二次電池において不働態化等の悪影響を低減する観点からアルミニウムを非含有であることが望ましい。また、環境負荷を軽減させる観点から鉛を非含有であることが望ましい。亜鉛箔はアルミニウム及び/又は鉛を不可避不純物として微量に含んでいてもよいが、亜鉛箔が、これらの元素のうちの両者又は一方を含有したとしても、それらの元素の含有割合は極力低いことが望ましい。具体的には、アルミニウムについてはその含有割合が亜鉛箔の質量基準で1%以下であることが好ましく、0.1%以下であることが更に好ましく、0.05%以下であることが一層好ましい。鉛についてはその含有割合が亜鉛箔の質量基準で200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、50ppm以下であることが一層好ましい。また亜鉛箔は、カドミウムを非含有であるか、又は不可避不純物として含有していてもよい。亜鉛箔においてカドミウムの割合は極力低いことが望ましい。特にカドミウムの含有割合は質量基準で10ppm以下であることが望ましい。亜鉛箔に含まれるアルミニウム、鉛及びカドミウムの含有割合は、ICP発光分光分析法によって測定される。ICP発光分光分析法による測定には、上記と同様の方法を採用できる。
本発明の亜鉛箔は、その厚みが好ましくは10μm以上500μm以下、更に好ましくは15μm以上400μm以下、一層好ましくは20μm以上300μm以下という薄型のものである。亜鉛箔の厚みは上述した方法によって測定される。このような薄型の亜鉛箔は、薄型一次電池や二次電池の負極材料として特に好適なものである。特に、本発明の亜鉛箔が上記のコア部とクラッド部とからなる場合、そのことに起因して柔軟性が高くなり、その結果、薄型でありながら割れや皺の発生が抑制されたものとなる。
次に、本発明の亜鉛箔の好適な製造方法について説明する。
本製造方法は、亜鉛を母材としてなりビスマスを実質的に非含有である圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、薄膜形成手段によって亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する層を形成するものである。本製造方法は、前記圧延亜鉛箔をカソードとし、該圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、亜鉛イオン及びビスマスイオンを含む電解液を用いて電解めっきを行い、亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する前記層を形成することが好ましい。
前記圧延亜鉛箔としては、例えば厚さ100~150μmの厚さのコア部とする場合は、厚さ200~300μmの亜鉛板を圧延ロール等の圧延手段にて圧延加工し、亜鉛箔とする方法が挙げられる。コア部の厚さを100μm未満又は150μm超とする場合においても当該方法に準じて製造できる。亜鉛板の製造方法としては、亜鉛を500~600℃で溶融させ、溶湯を鋳型に鋳込んで鋳造物を得る方法が挙げられる。圧延亜鉛箔の結晶粒の平均サイズは、圧延における温度条件やその後の冷却速度等の条件を調整することにて制御することができる。
圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、薄膜形成手段によって亜鉛を含む層を形成する方法としては、以下の(1)又は(2)の方法が挙げられる。このような方法をとることにより、圧延亜鉛箔からなるコア部とクラッド部が分離不能に結合し、ガス発生を効果的に抑制しつつ、圧延亜鉛箔の伸び性を生かした亜鉛箔を得ることができる。
(1)前記圧延亜鉛箔をカソードとし、該圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、亜鉛イオンを含む電解液を用いて電解めっきを行い、亜鉛を含む前記層を形成する。
(2)前記圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、物理気相成長法又は化学気相成長法によって亜鉛を含む前記層を形成する。
(1)の方法について説明する。
電解法においては、亜鉛源を含む電解液にアノード及びカソードを浸漬させ、カソードを圧延亜鉛箔として、その表面に電解亜鉛を析出させる。亜鉛源を含む電解液としては、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、塩化亜鉛水溶液等が挙げられる。電解液に含まれる亜鉛の濃度は、30g/L以上100g/L以下であることが、結晶粒の平均サイズが小さいクラッド部を容易に得ることができる点から好ましい。電解に使用するアノードとしては、公知の寸法安定化電極(DSE)を用いることが好ましい。DSEとしては、例えば酸化イリジウムをコートしたチタン電極、酸化ルテニウムをコートしたチタン電極などが好適に用いられる。
電解液は、亜鉛源に加えて、ビスマス源も含有する。電解液に含まれるビスマス源の濃度は、電解液中の亜鉛とビスマスとの合計質量に対して、ビスマスの質量の割合が10ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、15ppm以上8000ppm以下であることが更に好ましく、20ppm以上7000ppm以下であることが一層好ましく、30ppm以上6500ppm以下であることが更に一層好ましい。
電解液は、更に、他の化合物を含んでいてもよい。他の化合物としては、例えば電解液のpHを調整する目的で硫酸を添加することができる。
ガス発生量が抑制される亜鉛箔を首尾よく得る観点から、電解を行っている間、電解液を循環させることが有利である。電解液を循環させるためには、例えば電解装置として、閉じた流路と、該流路中に配置された電解槽と、該流路中に配置されたポンプとを備えたものを用い、ポンプを駆動させて電解液を一方向に向けて電解槽中を流通させればよい。電解に使用するアノード及びカソードは、電解槽内に、両者を対向させた状態で浸漬させればよい。アノード及びカソードは、それらの対向面(カソードで言えば電着面)が、電解液の流通方向と平行になるように電解槽中に配置されることが好ましい。
電解液を循環させつつ電解を行うときには、電解液の流速、すなわち循環速度を調整することが、所望の効果を奏する亜鉛箔を首尾よく得る観点から有利である。詳細には、電解液の循環速度を0.001L/(min・mm2)以上1L/(min・mm2)以下に設定することが好ましく、0.0015L/(min・mm2)以上0.6L/(min・mm2)以下に設定することが更に好ましく、0.002L/(min・mm2)以上0.4L/(min・mm2)以下に設定することが一層好ましく、0.0029L/(min・mm2)以上0.04L/(min・mm2)以下に設定することが更に一層好ましい。循環速度は、電解液の流量(L/min)を、電極間面積(mm2)で除すことで算出される。電極間面積は、図1に示すとおり、電極間距離(mm)と、電着電極幅(mm)との積で表される。図1においては、紙面と直交する方向に向けて電解液を流通させることが好ましい。また図1においては、紙面と直交する方向に沿って板状の電極が延在している。
電解を行うときの電流密度は、得られる亜鉛箔における亜鉛の結晶粒の大きさや、亜鉛箔のガス発生量に影響を及ぼす要因の一つである。詳細には、電流密度を通常の亜鉛電解の条件よりも大きくすることで、微細な結晶を多数生成させることができ、それによって結晶粒の平均サイズが小さい亜鉛箔を容易に得ることができる。この観点から、電流密度を1000A/m2以上10000A/m2以下に設定することが好ましく、1000A/m2以上6000A/m2以下に設定することが更に好ましく、1000A/m2以上4000A/m2以下に設定することが一層好ましい。
電解液は非加熱状態又は加熱状態で電解に供することができる。電解液を加熱した状態で電解を行う場合には、電解液の温度を好ましくは10℃以上90℃以下に設定する。電解液の温度は、より好ましくは20℃以上90℃以下であり、更に好ましくは30℃以上80℃以下であり、より更に好ましくは30℃以上70℃以下である。亜鉛箔の厚みが、目的とする値となるまで行う。
本発明は更に、上記電解液が亜鉛イオンを含む第1の電解液を用いてカソードの一面に第1の電解めっきを行い第1の電解亜鉛層を形成し、
亜鉛イオンを含む第2の電解液を用いてカソードの別の面に第2の電解めっきを行い第2の電解亜鉛層を形成する、亜鉛箔の製造方法も提供できる。第1の電解めっき及び第2の電解めっきにおいてめっき液の組成、電流密度等は同じであってもよく、異なっていてもよい。
次いで、(2)の方法について説明する。前記圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、物理気相成長法又は化学気相成長法によって亜鉛を含む前記層を形成する。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。化学気相成長法としては、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が挙げられる。中でもスパッタ蒸着法を用いる事がガス発生防止の点で好ましい。
以上のようにして得られた本発明の亜鉛箔は、一次電池及び二次電池の電池用負極活物質材料として好適に用いられる。一次電池としては例えばマンガン電池が挙げられる。二次電池としては例えばニッケル・亜鉛電池、空気・亜鉛電池及びマンガン・亜鉛電池が挙げられる。本発明の亜鉛は特に、一次電池の電池用負極活物質材料として好適に用いられる。更に、亜鉛箔自体が導電性を有することから、該亜鉛箔は集電体としても機能する。これによって、集電体を用いることなく、亜鉛箔そのものを負極として用いることも可能である。クラッド部がコア部の一面にのみ位置している亜鉛箔を負極として用いる場合には、クラッド部が配置された面が電解液と接触するように配置することが好ましい。
本発明の亜鉛箔は、上述のとおり、特定のクラッド部と特定のコア部とが分離不能に結合したものであることから、該亜鉛箔を備えた電池はガス発生量低減効果が良好なクラッド部に、より柔軟性が高い基材を一体化させることで、ハンドリング性(箔伸び)を担保したまま、ガス発生量を維持できる亜鉛電極材料として利用が可能になった。後述する実施例に示すように、テンションをかけた後も、ガス発生量は、従来の電解亜鉛箔と同等であり、破断も抑制可能なため、繰り返しの変形に対する柔軟性が向上したフレキシブル電池の作製が可能となる。
例えば、本発明の亜鉛箔は引張速度1mm/min、チャック間距離30mm、試験片幅45mmで測定された破断伸びが8%以上であることが好ましく、10%以上であることが好ましく、14%以上であることがより好ましい。このような亜鉛箔は、伸び性が良好であり、ハンドリング性に優れている。
破断伸びは、JIS-Z2241(2011)に規定される破断伸び(%)を引張試験機により以下の方法で測定できる。
(破断伸び)
引張試験機としては島津製作所社製AG100KNEを用いる。引張試験の条件は、上記の試験片幅、測定温度25℃、引張速度1mm/min、上記のチャック間距離にて、引張試験機のチャック(つかみ具)で亜鉛箔の端部同士をつかみ、そのつかんだ箇所同士の距離を試験前に測定してこれを亜鉛箔の原標点距離とし、チャックを移動させることで亜鉛箔を引っ張り続け、亜鉛箔破断に至ったときのチャックの移動距離を原標点距離に対する百分率で下記式にて破断伸びとする。繰り返し回数N=2(2個の試験片)で試験を行い、2つのデータの平均値を求める。
破断伸び(%)=チャックの移動距離(mm)/原標点距離(mm)×100
本発明は上記知見に基づくものであり、以下の〔1〕~〔10〕を提供するものである。
〔1〕亜鉛を母材とし、ビスマスを実質的に非含有であるコア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置し且つ亜鉛を母材とし、ビスマスを含有するクラッド部とを有し、
前記コア部と前記クラッド部とは分離不能に結合している亜鉛箔。
〔2〕前記コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが、前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズよりも大きい、〔1〕に記載の亜鉛箔。
〔3〕前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが0.2μm以上24μm未満である、〔2〕に記載の亜鉛箔。
〔4〕前記コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが24μm以上である、〔2〕又〔3〕に記載の亜鉛箔。
〔5〕前記クラッド部におけるビスマスの含有量が100ppm以上10000ppm以下である、〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の亜鉛箔。
〔6〕前記コア部の厚みが50μm以上300μm以下である、〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の亜鉛箔。
〔7〕前記クラッド部の厚みが1μm以上200μm未満である、〔1〕~〔6〕の何れか1項に記載の亜鉛箔。
〔8〕引張速度1mm/min、チャック間距離30mm、試験片幅45mmで測定された破断伸びが8%以上である、〔1〕~〔7〕の何れか1項に亜鉛箔。
〔9〕亜鉛を母材としてなりビスマスを実質的に非含有である圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、薄膜形成手段によって亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する層を形成する、亜鉛箔の製造方法。
〔10〕前記圧延亜鉛箔をカソードとし、該圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、亜鉛イオン及びビスマスイオンを含む電解液を用いて電解めっきを行い、亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する前記層を形成する〔9〕に記載の亜鉛箔の製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)圧延亜鉛箔の用意
表1に示す厚みを有する圧延亜鉛箔(純度99.99%、三井住友金属鉱山伸銅製)を用意した。
(1)電解液の調製
亜鉛化合物として酸化亜鉛を用いた。これを硫酸ととともに水に溶解して電解液を調製した。電解液における亜鉛の濃度は50g/Lとした。硫酸の濃度は硫酸イオンの総量をH2SO4として換算した値として200g/Lとした。電解液に硝酸ビスマスを添加した。ビスマスの濃度は、クラッド部に含まれるビスマスの含有割合が表1に示す値となるように調整した。
(2)亜鉛の還元析出
アノードとして、酸化イリジウムをコートしたチタン電極からなるDSEを用いた。カソードとして上記圧延亜鉛箔を用いた。電解液を35℃に加熱した状態下にアノードとカソードとの間に電流を流した。電流密度は2000A/m2とした。電解液は、循環速度を0.029L/(min・mm2)に設定して循環させた。圧延箔の一面をマスキングした状態でマスキングしていない面側を電解液に浸漬させて電解を行い、圧延亜鉛箔の片面に電解厚みが13μmの電解亜鉛層を形成し、電解亜鉛層と圧延亜鉛層一体の亜鉛箔を得た。本亜鉛箔において、圧延亜鉛層がコア部に該当し、電解亜鉛層がクラッド部に該当する。得られた亜鉛箔は、イオン交換水で洗浄し、熱風で乾燥させた。図1で得られた亜鉛箔の厚み方向に沿う断面を走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM-7900F)で倍率10000倍(測定視野は、亜鉛箔の厚み方向に9μm、亜鉛箔の厚み方向に垂直な方向に12μmとした。)にて観察した観察像を図3に示す。図3の観察像では濃淡をわかりやすくするためコントラストを調整している。
〔実施例2〕
実施例1の(2)の工程において、解時間を変更することにより、電解亜鉛層の厚みを表1に記載の値に変更したほか、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔実施例3〕
実施例1の(2)の工程において、電解時間を変更することにより、電解亜鉛層の厚みを表1に記載の値に変更したほか、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔実施例4〕
実施例1の(2)の工程において、電解時間を変更することにより、電解亜鉛層の厚みを表1に記載の値に変更したほか、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔実施例5〕
実施例1の(2)の工程において、電解時間を変更することにより、電解亜鉛層の厚みを表1に記載の値に変更したほか、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔実施例6〕
実施例2の(2)の工程において、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔実施例7〕
実施例2の(2)の工程において、添加硝酸ビスマスの量を亜鉛層のビスマスの量が表1の値となるように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
〔比較例1〕
実施例2で用いた圧延亜鉛箔をそのまま比較例1の亜鉛箔とした。
〔比較例2〕
本比較例は特許文献1に相当するものである。
カソードとしてアルミニウム板を用いた。また電解時間を変更することにより電解厚みを100μmとした。電流密度を2000A/m2とした。ビスマスの濃度は、電解層に含まれるビスマスの含有割合が表1に示す値となるように調整した。それらの点以外は実施例1と同様として、電解を行い、アルミニウム板の片面に電解亜鉛層を形成させた。電解後、カソードのアルミニウム板から電解亜鉛層をはぎ取り、亜鉛箔を得た。得られた亜鉛箔は、イオン交換水で洗浄し、熱風で乾燥させた。
〔比較例3〕
比較例2において、電解層の厚さを調整した以外は比較例2と同様として亜鉛箔を得た。
比較例1で得られた圧延亜鉛箔と上記で得られた亜鉛箔とを両面テープで貼り合わせた。
〔比較例4〕
実施例1において、圧延亜鉛箔を表1の結晶粒の平均サイズを有するもの(三井住友金属鉱山伸銅製)に変更した。電解時間を変更することにより、電解亜鉛層の厚みを表1に記載の値に変更したほか、添加硝酸ビスマスの量を無とするように変更した。これらの点以外は実施例1と同様とした。
各実施例及び比較例で得られた亜鉛箔において、電解亜鉛層と圧延亜鉛層とが分離不能に結合しているか否かを上記方法にて確認した。比較例3ではコア部とクラッド部が分離しており、コア部とクラッド部をまたぐ形状の結晶粒は観察されなかった。また、各実施例及び比較例で得られた亜鉛箔について、上述した方法によりコア部及びクラッド部それぞれの結晶粒の平均サイズを測定した。具体的には、コア部の結晶粒については、亜鉛箔全体の断面(厚み方向に沿う断面)のうちコア部において「コア部の厚み×コア部の厚み方向に垂直な方向に200μm」の視野にて結晶粒を観察し、結晶粒の平均サイズを求めた。また、クラッド部の結晶粒については、亜鉛箔全体の断面のうちクラッド部において「クラッド部の厚み×クラッド部の厚み方向に垂直な方向に200μm」の視野にて結晶粒を観察し、結晶粒の平均サイズを求めた。
また、各実施例及び比較例で得られた亜鉛箔の評価を、以下の方法にて行った。
(破断伸び)
上記の方法にて測定した。
(ガス発生量(引張後))
前記の引張試験の条件にて破断直前の伸びまで引張を行った亜鉛箔について下記条件にてガス発生量を求めた。
電解液として、20%塩化アンモニウム水溶液を用いた。当該電解液に、引張によりテンションを掛けた亜鉛箔の一面側を浸漬させ、70℃で96時間静置した。クラッド部がコア部の一方の面のみに形成されている場合は、当該面側を浸漬させた(以下の「ガス発生量(破断後)」の試験も同様)。その間に発生した水素ガスの量を、ガラスセルを用いて測定した。測定結果は、単位面積当たり且つ一日当たりのガス発生量に換算した。繰り返し回数N=1(2個の試験片)で試験を行い、2つのデータの平均値を求めた。
(ガス発生量(破断後))
電解液として、20%塩化アンモニウム水溶液を用い、上記破断伸び試験により破断した後の亜鉛箔を浸漬した。この電解液に70℃で96時間静置した。その間に発生した水素ガスの量を、ガラスセルを用いて測定した。測定結果は、単位面積当たり且つ一日当たりのガス発生量に換算した。繰り返し回数N=1(2個の試験片)で試験を行い、2つのデータの平均値を求めた。
Figure 0007466069000002
表1に示す通り、各実施例では、破断伸びに優れ、且つ、テンションを掛けた後のガス発生量が抑制されている。これに対し、圧延亜鉛箔を用いた比較例1及びクラッド部がビスマスを非含有である比較例4ではガス発生量が大きい。また比較例2では各実施例に比して破断伸びが小さい。コア部とクラッド部が分離した比較例3ではガス発生量測定中に層分離を生じ、ガス発生量の測定ができなかった。
本発明によれば、引張等の負荷を受けやすい環境下においても長時間保存中にガスの発生量を抑制できるとともに、破断伸びが良好で取り扱い性に優れた亜鉛箔が提供される。

Claims (9)

  1. 亜鉛を母材とし、ビスマスを実質的に非含有であるコア部と、該コア部の少なくとも一方の面に位置し且つ亜鉛を母材とし、ビスマスを含有するクラッド部とを有し、
    前記クラッド部が亜鉛を99質量%以上含有し、
    前記コア部と前記クラッド部とは分離不能に結合しており、コア部とクラッド部をまたぐ形状の結晶粒が存在する亜鉛箔。
  2. 前記コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが、前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズよりも大きい、請求項1に記載の亜鉛箔。
  3. 前記クラッド部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが0.2μm以上24μm未満である、請求項2に記載の亜鉛箔。
  4. 前記コア部における亜鉛の結晶粒の平均サイズが24μm以上100μm以下である、請求項2又3に記載の亜鉛箔。
  5. 前記クラッド部におけるビスマスの含有量が100ppm以上10000ppm以下である、請求項1又は2に記載の亜鉛箔。
  6. 前記コア部の厚みが50μm以上300μm以下である、請求項1又は2に記載の亜鉛箔。
  7. 前記クラッド部の厚みが1μm以上200μm未満である、請求項1又は2に記載の亜鉛箔。
  8. 引張速度1mm/min、チャック間距離30mm、試験片幅45mmで測定された破断伸びが8%以上である、請求項1又は2に記載の亜鉛箔。
  9. 亜鉛を母材としてなりビスマスを実質的に非含有である圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、薄膜形成手段によって亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する層を形成する、亜鉛箔の製造方法であって、
    前記圧延亜鉛箔をカソードとし、該圧延亜鉛箔の少なくとも一面に、亜鉛イオン及びビスマスイオンを含む電解液を用いて電解めっきを行い、亜鉛を母材としてなり、ビスマスを含有する前記層を形成する、亜鉛箔の製造方法





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