JP7463843B2 - 調光システム - Google Patents

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Description

本発明は、調光フィルムを備えた調光システムに関する。
従来、例えば、車両のサイドガラス等に用いられる遮光手段として、共通の透明電極を備える透明基材と、複数に分割された透明電極を備える透明基材の間に液晶層を挟持した調光部材が知られている(特許文献1参照)。
特許第6489272号公報
上記従来例のように、分割された透明電極を有する調光部材では、電極端子に近い側と離れた側において、それぞれ流れる電流値に差が生じることがある。そのため、同じ透明電極であっても、電極端子に近い側と離れた側において透過率にばらつきが生じてしまい、光学特性が低下するという課題がある。
本発明の目的は、調光部材の光学特性をより向上させることができる調光システムを提供することにある。
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
第1の発明は、交流電圧の印加により透過率を制御可能な調光部材(1)と、前記調光部材を駆動するための電力を供給する電源部(22)と、前記電源部から供給される電力により前記調光部材に印加する交流電圧を制御して透過率を変化させる駆動制御部(23)と、を備えた調光システム(100)であって、前記調光部材は、少なくとも基材を有する第1積層体(5A)及び第2積層体(5B)と、前記第1積層体及び第2積層体により挟持される液晶層(8)と、前記第1積層体及び第2積層体にそれぞれ形成され、少なくとも一方は複数に分割された透明電極(11、16)と、少なくとも分割された前記透明電極の配線部(161)に設けられた補助電極(163)と、を備え、前記補助電極は、電圧の極性が反転した後の前記透明電極に流れる電流の絶対値をI、電圧の極性が反転した直後のIをIとしたとき、電圧の極性が反転して、IがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/15以下なるように抵抗値が設定されている調光システムに関する。
第2の発明は、第1の発明に係る調光システムにおいて、前記補助電極は、前記透明電極の前記配線部に積層された金属層である。
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る調光システムにおいて、前記補助電極は、複数に分割された前記透明電極の前記配線部に設けられている。
第4の発明は、第1~3までのいずれかの発明に係る調光システムにおいて、前記駆動制御部は、複数に分割された前記透明電極に印加する交流電圧を個別に制御する。
第5の発明は、第1~4までのいずれかの発明に係る調光システムにおいて、前記調光部材は、乗り物(30)のサイドウィンドウ、リアウィンドウ及びルーフウィンドウの少なくとも1つに設けられる。
本発明に係る調光システムによれば、調光部材の光学特性をより向上させることができる。
実施形態の調光システム100に用いられる調光フィルム1の概略構成を示す断面図である。 調光フィルム1が配置される車両30と調光フィルム1の駆動装置を説明する図である。 (A)~(D)は、調光フィルム1における透明電極16の構成及び使用形態を説明する図である。 調光フィルム1の4分割された部分電極16A~16Dの電極構成を説明する図である。 部分電極16Aと透明電極11との間に印加される交流電圧の波形を説明する図である。 部分電極16Aに交流電流が十分に流れる場合の波形を説明する図である。 部分電極16Aに交流電流が十分に流れない場合の波形を説明する図である。 補助電極163Aを設けた部分電極16Aに流れる交流電流の波形を説明する図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図、概念図等であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
まず、本実施形態の調光システム100に用いられる調光フィルム1の構成について説明する。
図1は、本実施形態の調光システム100に用いられる調光フィルム1の概略構成を示す断面図である。
調光フィルム1は、透明電極11、16(後述)に印加する電圧により、液晶層8における液晶分子の配向を制御して、光の透過率を調整可能なフィルム状の部材である。図1に示すように、調光フィルム1は、第1積層体5A及び第2積層体5Bと、これらの積層体により挟持される液晶層8により構成される。
第1積層体5Aは、基材6に、透明電極11、配向層13を備える。
第2積層体5Bは、基材15に、透明電極16、配向層17を備える。
基材6、15としては、種々の透明樹脂フィルムを用いることができるが、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380~800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂が挙げられる。
特に、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。
本実施形態において、基材6、15は、例えば、厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)が適用されるが、種々の厚みの透明樹脂フィルムを適用することができる。
透明電極11、16は、上記透明樹脂フィルムと透明樹脂フィルムに積層される透明導電膜から構成される。
透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
酸化錫(SnO2)系としては、ネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。
酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zic Oxide)が挙げられる。
酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide)により透明導電膜を形成した例について説明する。なお、本実施形態の透明電極11、16の電極構成については後に詳述する。
スペーサ12は、液晶層8の厚みを規定するために設けられる部材である。スペーサ12としては、各種の樹脂材料を広く適用することができる。本実施形態では、スペーサ12として、球状スペーサ(以下、「ビーズスペーサ」ともいう)を用いる例について説明するが、スペーサ12は、例えば、柱状スペーサであってもよい。
スペーサ12に用いられるビーズスペーサは、液晶表示装置やカラーフィルタ等に用いられる公知のビーズを適用することができる。具体的には、無機系成分ではガラス、シリカ、金属酸化物(MgO、Al2O3)等、有機系成分としてはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン共重合体、ジビニルベンゼン-アクリルエステル共重合体、ジアクリルフタレート共重合体、アリルイソシアヌレート共重合体等の材料系の懸濁重合や乳化重合、乳化重合で得られたコア粒子を用いるシード重合法等の重合法によって得られた球状、円柱体、円筒状等の粒状体や、多孔質体、中空体等を使用することができる。
また、配向層上におけるビーズの分散性や、密着性を向上させる観点から、ビーズスペーサの表面に表面処理を行うようにしてもよい。表面の被覆材料としては、ビーズ表面への固定化や、液晶材料中への化学物質の流出が問題とならなければ、とくに限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリメチル(メタ)アクリレート重合体、SBS型スチレン/ブタジエンブロック共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。
配向層13、17は、光配向層により形成されている。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができ、例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等を挙げることができる。
本実施形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。このような光二量化型の材料の具体例としては、例えば、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報及びWO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。
なお、光配向層に代えてラビング処理により配向層を作製してもよく、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。
液晶層8としては、例えば、ゲストホスト液晶組成物、二色性色素組成物を適用することができる。ゲストホスト液晶組成物にカイラル剤を含有させることにより、液晶分子を水平配向させた場合に、液晶層8の厚み方向(Z方向)に螺旋形状に配向させるようにしてもよい。
調光フィルム1は、電界印加時において、ゲストホスト液晶組成物の配向により遮光状態となるように、配向層13、17の配向規制力を設定した垂直配向層により構成される。これにより、調光フィルム1は、ノーマリークリアとして構成される。ノーマリークリアとは、無電界時に透過状態となり、電界印加時に遮光状態となる構造をいう。なお、電界印加時に遮光状態となるように、ノーマリーダークとして構成してもよい。ノーマリーダークとは、無電界時に遮光状態となり、電界印加時に透過状態となる構造をいう。
本実施形態では、液晶層8として、ゲストホスト液晶組成物を適用した例について説明したが、電界印加の有無により透過状態及び遮光状態を制御可能であれば、他の液晶組成物を適用してもよい。
調光フィルム1は、平面視で液晶層8を囲む枠状に、シール材19が配置される。シール材19により第2積層体5B、第1積層体5Aが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材19は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
調光フィルム1は、透明電極11、16に、所定周期で極性が切り替わる矩形波の交流電圧が印加され、この交流電圧により液晶層8に電界が形成される。また、この電界により液晶層8に設けられた液晶分子の配向が制御され、透過光が制御される。
図2は、調光フィルム1が配置される車両30と調光フィルム1の駆動装置を説明する図である。図2では、車両30を側方から見たときの車両全体を示している。
本実施形態の調光フィルム1は、車両(乗り物)30の前席サイドウィンドウ23A、後席サイドウィンドウ23B、前席サイドウィンドウ23C、後席サイドウィンドウ23Dのほぼ全面にそれぞれ配置される。なお、前席サイドウィンドウ23C、後席サイドウィンドウ23Dについては、位置のみを矢印で示している。調光フィルム1は、各ウィンドウ23A~23Dに対して、それぞれ個別に駆動のための電力を供給可能に構成される。そのため、各ウィンドウ23A~23Dは、個別に透過率を制御することができる。
また、各ウィンドウ23A~23Dに設けられる調光フィルム1において、透明電極11又は(及び)透明電極16は、それぞれ電気的に絶縁された複数の部分電極(領域)に分割されている。具体的には、各ウィンドウ23A~23Dに設けられる調光フィルム1は、図2に示すように、個別に透過率を変更することができる複数の領域(以下、「セグメント」ともいう)SG1~SG4を備えている。
なお、本実施形態では、一つの調光フィルム1を4つのセグメントに分割した例について説明するが、調光フィルム1におけるセグメントの分割数は、4に限らず、3以下でもよいし、5以上でもよい。
次に、複数のセグメントを有する調光フィルム1の構成について更に詳細に説明する。
図3(A)~(D)は、調光フィルム1における透明電極16の構成及び使用形態を説明する図である。図3の各分図においては、調光フィルム1を構成する透明電極16及び11以外の構成の図示を省略している。また、車両30の前席サイドウィンドウ23Aに設けられる調光フィルム1(図2参照)を例として説明する。
調光フィルム1の透明電極11、16は、例えば、以下のように分割される。
図3(A)に示す構成例において、調光フィルム1に設けられる透明電極16は、4分割された部分電極16A~16Dとして基材15(図1参照)上に形成されている。分割された部分電極16A~16Dは、図の左右方向に沿って延在するように帯状に形成されている。各部分電極16A~16Dの間は、それぞれ絶縁されている。一方、透明電極16に対向する透明電極11は、分割されることなく基材6上の全面に形成されている。本構成例において、透明電極11は、部分電極16A~16Dに対して共通電極となる。
なお、上記説明では、透明電極16が4分割される構成を示したが、透明電極11が4分割され、透明電極16が基材15上の全面に形成される構成としてもよい。
図3(B)に示す構成例において、透明電極11及び透明電極16は、図3(A)の透明電極16と同様に分割されている。具体的には、透明電極16は、4分割された部分電極16A~16Dとして基材15上に形成されている。同様に、透明電極16に対応する透明電極11も4分割され、部分電極11A~11Dとして基材6(図1参照)上に形成されている。分割された部分電極11A~11Dについても、図の左右方向に沿って延在するように帯状に形成されている。また、各部分電極11A~11Dの間は、それぞれ絶縁されている。
このような分割された透明電極11、16は、例えば、透明電極のパターニングにより作製することができる。透明電極11、16のパターニングによる分割は、対向する透明電極11、16において、それぞれの分割数を異ならせてもよい。
また、図3(A)及び図3(B)においては、透明電極11、16を、図の左右方向に沿って延在するように帯状にパターニングする例を示したが、例えば、縦方向、斜め方向に延在するように帯状にパターニングしてもよい。更には、曲線形状、六角形形状、台形形状、平行四辺形形状、三角形形状等の形状となるようにパターニングしてもよい。
本実施形態の調光フィルム1は、各セグメントSG1~SG4を個別に駆動できるため、例えば、図3(C)に示すように、下側から上側に向かって順次段階的に透過率が減少するように制御することにより、サイドウィンドウ23A~23Dの上部に目立たないように日除けを設けることができる。
また、調光フィルム1のセグメント数を増やし、例えば、各セグメントを、サイドウィンドウの上端から下端へ向けて段階的に透過率を変化させることにより、図3(D)に示すように、グラデーションを形成するようにしてもよい。なお、図3(D)では、各セグメント間の境界線の図示を省略している。
ここで、上述したように、本実施形態の調光フィルム1は、スペーサ12にビーズスペーサを適用しているので、フォトスペーサを適用した場合に比して、各セグメントの透過率をより精度よく変化させることができ、サイドウィンドウの上端から下端へ向けて外光の入射光量を滑らかに変化させることができる。
図2に示すように、本実施形態の車両30は、4人乗りの乗用車である。車両30では、外光が主に車内に入射する部位となる前席サイドウィンドウ23A、後席サイドウィンドウ23B、前席サイドウィンドウ23C、後席サイドウィンドウ23Dのほぼ全面に、それぞれ上述の調光フィルム1が配置される。各サイドウィンドウに設けられた調光フィルム1によって、必要に応じて外光を車内に取り入れたり、車内に入射する外光の光量を調節したりすることができる。
車両30は、上述の各サイドウィンドウ23A~23Dに配置された調光フィルム1のほか、操作情報取得部21、電源部22及び駆動制御部23を備えている。
操作情報取得部21は、運転者のほか、助手席、後部座席等に着座している乗員(以下、「運転者等」ともいう)がサイドウィンドウ23A~23Dから入射する外光の光量を調節する際に操作する装置であり、例えば、タッチパネルにより構成される。運転者等は、ドアサイドに設けられたタッチパネルを操作して、サイドウィンドウ23A~23Dから入射する外光の光量を同時に又は個別に調節することができる。
電源部22は、駆動制御部23に電力を供給する電源装置である。
駆動制御部23は、電源部22から供給される電力により、調光フィルム1に印加する交流電圧を制御して、調光フィルム1の透過率を制御する装置である。これにより、ウィンドウ23A~23D(図2参照)のそれぞれにおいて、車外から車内を視認されにくくしたり、車内から車外を視認しやすくしたりできる。
図示していないが、駆動制御部23は、調光フィルム1の透明電極16及び11に矩形波の交流電圧を印加する駆動回路と、この駆動回路の動作を制御するプロセッサユニットとから構成される。プロセッサユニットは、プロセッサ、ROM、RAM等を備える制御装置である。プロセッサユニットにおいて、プロセッサ(CPU)は、ROMに格納された調光フィルム1の制御プログラムを読み出して実行することにより、上述した駆動回路の動作を制御する。
次に、調光フィルム1の4分割された部分電極16A~16Dの電極構成について説明する。
図4は、調光フィルム1の4分割された部分電極16A~16Dの電極構成を説明する図である。図4においては、調光フィルム1を構成する透明電極16及び11以外の構成の図示を省略している。
図4に示すように、4分割された部分電極16A~16Dにおいて、駆動制御部23(図2参照)と接続される側の端部には、配線パターンとしての配線部161A~161D(以下、「配線部161」ともいう)が一体に形成されている。配線部161A~161Dは、部分電極16A~16Dと同じく基材15(図1参照)上に形成され、駆動制御部23から延出された配線(不図示)と接続される。また、透明電極11において、駆動制御部23と接続される側の端部には、配線部111が一体に形成されている。配線部111は、透明電極11と同じく基材6(図1参照)上に形成されている。基材6上の配線部111は、導通部(不図示)を介して部分電極16A~16Dと同じ基材15側に導かれ、駆動制御部23から延出された配線と接続される。
配線部161A~161Dの表面には、補助電極163A~163D(以下、「補助電極163」ともいう)が形成されている。補助電極163A~163Dは、対応する配線部161A~161Dの抵抗値を下げるために積層される抵抗体である。補助電極163は、配線部161A~161Dの表面に、例えば、金、銀等の導電性の高い金属材料をメッキすることにより形成することができる。なお、図4では一部分のみを示しているが、本実施形態において、補助電極163A~163Dは、配線部161A~161Dのすべての表面に形成されている。但し、補助電極163A~163Dは、後述する抵抗値を実現することができれば、配線部161A~161Dのどの範囲に形成されていてもよい。
次に、補助電極163に設定される抵抗値とその機能について説明する。ここでは、調光フィルム1に設けられた部分電極16A~16Dのうち、部分電極16Aを例として説明する。
図5は、部分電極16Aと透明電極11との間に印加される交流電圧の波形を説明する図である。図6は、部分電極16Aに交流電流が十分に流れる場合の波形を説明する図である。図7は、部分電極16Aに交流電流が十分に流れない場合の波形を説明する図である。図8は、補助電極163Aを設けた部分電極16Aに流れる交流電流の波形を説明する図である。図5において、横軸は時間(t)、縦軸は電圧(V)を示す。図6~図8において、横軸は時間(t)、縦軸は電流(A)を示す。
調光フィルム1の部分電極16Aと透明電極11との間には、駆動制御部23(図2参照)から、図5に示すような矩形波の交流電圧が印加される。調光フィルム1において、配線部161Aを含めた部分電極16Aの抵抗が十分に小さければ、部分電極16Aに交流電流が流れやすくなる。そのため、図5に示すような交流電圧が印加された場合、図6に示すように、電圧の極性が反転(以下、「電圧反転」ともいう)した後に電流値が急激に上昇し、その後、電流値が急激に降下するような電流波形となる。
一方、調光フィルム1において、配線部161Aを含めた部分電極16Aの抵抗が大きいと、部分電極16Aに交流電流が流れにくくなる。そのため、図7に示すように、電圧の極性が反転した後の電流値の上昇が鈍く、その後、電流値が徐々に降下するような電流波形となる。このような電流波形となる場合、部分電極16Aにおいて、配線部161Aに近い側と離れた側において、流れる電流値に差が生じるため、部分電極16Aに対応するセグメントSG1(図4参照)において、配線部161Aに近い側と離れた側で透過率にばらつきが生じる。
これに対して、本実施形態の調光フィルム1では、図8に示すように、電圧反転後の部分電極16Aに流れる電流の絶対値をI、電圧反転直後のIを最大値Iとしたとき、電圧反転して、IがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/15以下となるように補助電極163Aの抵抗値が設定される。
これによれば、配線部161Aを含めた部分電極16Aの抵抗が大きい場合でも、上記のような抵抗値となる補助電極163Aを設けることにより、図8に示すように、配線部161Aを含めた部分電極16Aの抵抗が十分に小さい場合の電流波形(図6参照)に近付けることができる。その結果、部分電極16Aでは、配線部161Aに近い側と離れた側において、流れる電流値の差が小さくなるため、部分電極16Aに対応するセグメントSG1において、配線部161Aに近い側と離れた側の透過率のばらつきを小さくすることができる。したがって、セグメントSG1(調光フィルム1)の光学特性をより向上させることができる。他の部分電極16B~16D(図4参照)についても、同様に補助電極163B~163Dの抵抗値が設定されるため、本実施形態の調光フィルム1においては、全体として光学特性をより向上させることができる。
なお、本実施形態では、電圧反転直後のIを最大値Iとした例について説明したが、電圧反転直後のIは、例えば、最大値Iの80~90%程度の値であってもよいし、電圧反転後の電圧の変化率に基づいて設定した値等であってもよい。
本実施形態の調光フィルム1において、補助電極163は金属層により形成されるため、メッキ等の手法により、配線部161に容易に積層することができる。また、補助電極163の抵抗値を、より正確に且つ広い範囲で調節することができる。
本実施形態の調光フィルム1において、補助電極163は、複数に分割された部分電極16A~16Dのそれぞれの配線部161A~161Dに設けられる。そのため、それぞれの部分電極16A~16D及び対応する配線部161A~161Dの抵抗分に応じて、より適切な抵抗値を設定することができる。
本実施形態の調光フィルム1において、駆動制御部23は、複数に分割された部分電極16A~16Dに印加する交流電圧を個別に制御するため、例えば、図3(C)、(D)に示すように、各セグメントの透過率を、様々な形態で制御することができる。
次に、本実施形態の調光フィルム1の性能評価として、実施例及び比較例の調光フィルムを用いて、透過率の変化を比べた結果について説明する。以下に説明する実施例及び比較例では、部分電極16A~16Dを有する同じ構成の調光フィルムを用意し、部分電極16A~16Dに設ける補助電極163の抵抗値を変えて3種類のサンプルを作製した。
(実施例)
補助電極163の抵抗値を、電圧反転後にIがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/15となるように設定した。
(比較例1)
補助電極163の抵抗値を、電圧反転後にIがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/10となるように設定した。
(比較例2)
補助電極163の抵抗値を、電圧反転後にIがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/5となるように設定した。
上記3種類の調光フィルムに対して、それぞれ同じ交流電圧を印加して、部分電極16A~16Dに対応するセグメントSG1~SG4の長手方向における透過率のばらつきを観測した。部分電極16A~16Dに対応するセグメントSG1~SG4の長手方向において、透過率のばらつきが2%未満を[○]、2~5%未満を「△」、5%以上を「×」とした。
実施例、比較例1及び比較例2の各調光フィルムについて、上記試験による評価結果を表1に示す。
Figure 0007463843000001
表1に示すように、実施例の調光フィルムは、透過率のばらつきが2%未満となり、評価は[○]となった。一方、補助電極の抵抗値を、電圧反転後にIがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/10となるように設定した比較例1では、透過率のばらつきが2.7%となり、評価は「△」となった。また、補助電極の抵抗値を、電圧反転後にIがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/5となるように設定した比較例1では、透過率のばらつきが5.3%となり、評価は「×」となった。
以上の結果から、実施例の調光フィルムでは、透過率のばらつきが少なく、全体として光学特性がより向上していることが明らかとなった。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
(変形形態)
実施形態では、補助電極163を複数に分割された部分電極16A~16Dの配線部161A~161Dに設けた例について説明したが、補助電極163は、分割された部分電極16A~16Dの配線部161A~161Dだけでなく、分割されていない透明電極11の配線部111に設けてもよい。
実施形態では、調光フィルム1を車両30のサイドウィンドウ(23A~23D)に配置する例について説明したが、これに限定されない。調光フィルム1を、車両30のフロントウィンドウ、ルーフウィンドウ等に配置した構成としてもよい。
実施形態では、調光部材として可撓性を有する調光フィルム1を各サイドウィンドウに設ける例について説明したが、これに限定されない。例えば、上述の調光フィルム1の基材をガラス板にして可撓性を有さない調光部材を構成し、この調光部材を各サイドウィンドウの代わりに車両30に配置してもよい。また、上述の調光フィルムを2枚のガラス板の間に挟持して合わせガラスを構成し、この合わせガラスを車両のサイドウィンドウとして配置してもよい。
実施形態では、調光フィルム1を設ける乗り物として、自動車を例として説明したが、これに限定されない。調光フィルム1は、例えば、鉄道車両、船舶、航空機等のウィンドウにも適用することができる。また、調光フィルム1は、乗り物に限らず、例えば、建物に設置される窓ガラス、パーティーション用の窓等にも適用することができる。
1 調光フィルム
5A 第1積層体
5B 第2積層体
6、15 基材
8 液晶層
11、16 透明電極
16A~16D 部分電極
21 操作情報取得部
22 電源部
23 駆動制御部
30 車両

Claims (6)

  1. 交流電圧の印加により透過率を制御可能な調光部材と、
    前記調光部材を駆動するための電力を供給する電源部と、
    前記電源部から供給される電力により前記調光部材に印加する交流電圧を制御して透過率を変化させる駆動制御部と、
    を備えた調光システムであって、
    前記調光部材は、
    少なくとも基材を有する第1積層体及び第2積層体と、
    前記第1積層体及び第2積層体により挟持される液晶層と、
    前記第1積層体及び第2積層体にそれぞれ形成され、少なくとも一方は複数に分割された透明電極と、
    複数に分割された前記透明電極のそれぞれに設けられた複数の配線部と、
    少なくとも分割された前記透明電極の前記配線部の上に設けられた補助電極と、を備え、
    前記補助電極は、
    電圧の極性が反転した後の前記透明電極に流れる電流の絶対値をI、電圧の極性が反転した直後のIをIとしたとき、電圧の極性が反転して、IがIから1/10×Iとなるまでの時間tが、電圧の極性が反転してから次に反転するまでの時間tの1/15以下なるように抵抗値が設定されている、調光システム。
  2. 請求項1に記載の調光システムにおいて、
    前記補助電極は、前記透明電極の前記配線部に積層された金属層である、調光システム。
  3. 請求項1又は2に記載の調光システムにおいて、
    前記補助電極は、複数に分割された前記透明電極の前記配線部に設けられている、調光システム。
  4. 請求項1~3までのいずれかに記載の調光システムにおいて、
    前記駆動制御部は、複数に分割された前記透明電極に印加する交流電圧を個別に制御する、調光システム。
  5. 請求項1~4までのいずれかに記載の調光システムにおいて、
    前記調光部材は、乗り物のサイドウィンドウ、リアウィンドウ及びルーフウィンドウの少なくとも1つに設けられる、調光システム。
  6. 請求項1~5までのいずれかに記載の調光システムにおいて、
    前記液晶層は、ゲストホスト方式である、調光システム。
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