以下、実施形態に従う液体吐出ヘッド駆動回路について、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
(第1実施形態)
マルチノズルの液体吐出装置1を搭載した画像形成装置として、記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタ10を説明する。図1は、インクジェットプリンタ10の概略構成を示す。インクジェットプリンタ10の筐体11の内部に、記録媒体の一例であるシートSを収納するカセット12、シートSの上流搬送路13、カセット12内から取り出したシートSを搬送する搬送ベルト14、搬送ベルト14上のシートSに向けてインクの液滴を吐出するインクジェットヘッド100~103、シートSの下流搬送路15、排出トレイ16、及び制御基板17を配置する。ユーザーインターフェイスである操作部18は、筐体11の上部側に配置する。インクジェットヘッド100は、液体吐出ヘッドの一例である。
シートSに印刷する画像データは、例えば外部接続機器であるコンピュータ200で生成する。コンピュータ200で生成した画像データは、ケーブル201、コネクタ202,203を通してインクジェットプリンタ10の制御基板17に送る。
ピックアップローラ204は、カセット12からシートSを一枚ずつ上流搬送路13へ供給する。上流搬送路13は、送りローラ対131、132と、シート案内板133、134で構成する。シートSは、上流搬送路13を経由して、搬送ベルト14の上面に送る。図中の矢印104は、カセット12から搬送ベルト14へのシートSの搬送経路を示す。
搬送ベルト14は、表面に多数の貫通孔を形成した網状の無端ベルトである。駆動ローラ141、従動ローラ142,143の3本のローラは、搬送ベルト14を回転自在に支持する。モータ205は、駆動ローラ141を回転することによって搬送ベルト14を回転させる。モータ205は、駆動装置の一例である。図中105は、搬送ベルト14の回転方向を示す。搬送ベルト14の裏面側に、負圧容器206を配置する。負圧容器206は、減圧用のファン207と連結する。ファン207は、形成する気流によって負圧容器206内を負圧にし、搬送ベルト14の上面にシートSを吸着保持させる。図中106は、気流の流れを示す。
インクジェットヘッド100~103は、搬送ベルト14上に吸着保持したシートSに対して、例えば1mmの僅かな隙間を介して対向するように配置する。インクジェットヘッド100~103は、シートSに向けてインクの液滴を夫々吐出する。インクジェットヘッド100~103は、下方をシートSが通過する際に画像を印刷する。各インクジェットヘッド100~103は、吐出するインクの色が異なることを除けば、同じ構造である。インクの色は、例えば、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックである。
各インクジェットヘッド100~103は、インク流路311~314を介してインクタンク315~318及びインク供給圧力調整装置321~324と夫々連結する。画像形成時、各インクタンク315~318のインクは、インク供給圧力調整装置321~324によって各インクジェットヘッド100~103に供給する。
画像形成後、搬送ベルト14から下流搬送路15へシートSを送る。下流搬送路15は、送りローラ対151,152,153,154と、シートSの搬送経路を規定するシート案内板155,156で構成する。シートSは、下流搬送路15を経由し、排出口157から排出トレイ16へ送る。図中矢印107は、シートSの搬送経路を示す。
続いて、図2~図4を参照しながら、インクジェットヘッド100の構成について説明する。インクジェットヘッド101~103は、インクジェットヘッド100と同じ構造であるので詳しい説明は省略する。
図2は、インクジェットヘッド100の斜視図である。インクジェットヘッド100は、液体吐出部の一例であるノズルヘッド部2、フレキシブルプリント配線板21、中継基板22を備えている。インクを吐出する各チャネルのノズル23は、ノズルヘッド部2の下面に形成する。ノズル23を形成したノズルプレートをノズルヘッド部2の下面に設けるようにしてもよい。ノズル23は、ノズルヘッド部2の長手方向(X方向)に沿って例えば一列に配列する。さらにY方向にも配列してもよい。ノズル密度は、例えば150~1200dpiの範囲内に設定する。各ノズル23から吐出するインクは、インク供給管24からノズルヘッド部2内に供給する。インク供給管24は、インク流路311を介してインク供給圧力調整装置321に接続している(図1参照)。
図3は、ノズルヘッド部2内のアクチュエーター基板25の部分断面図である。図3に示すように、アクチュエーター基板25は、ノズル23と連通するインクの圧力室26を備えている。インクの圧力室26は、ノズル23の配列に合わせて、少なくともチャネルの数だけ形成する。圧力室26は、アクチュエーター基板25の一面に例えばZ方向に延びる凹状の溝を形成し、その上面を弾性板27で封止している。アクチュエーター基板25は、例えば絶縁性のセラミックス基板である。弾性板27は、例えば絶縁性のセラミックス材で形成する。圧力室26は、一端側がノズル23に連通し、他端側が共通インク室28に連通する。共通インク室28は、例えばX方向に延びて各チャネルの圧力室26と連通している。さらに、共通インク室28に形成したインク供給口29が、インク供給管24と連通している。これにより、インクは、共通インク室28を介して各チャネルの圧力室26に供給する。
アクチュエーター3は、弾性板27の外面に配置する。静電容量性のアクチュエーター3は、圧電素子である圧電部材31に個別電極32と共通電極33を積層した構成である。個別電極32は、複数のチャネルのうちインクを吐出させるチャネルに個別に駆動電圧を与える電極である。共通電極33は、圧電部材31を介して個別電極32に対向し複数チャネル分結線して各チャネル共通の基準電位を与える電極である。個別電極32に与える駆動電圧は、例えば、電圧V1、電圧V0、電圧V2の3種類の電圧である。一例として、電圧V1は+15V、電圧V0は-15V、電圧V2は0(ゼロ)Vである。共通電極33は、例えば電圧V2(=0V)に接続する。圧電部材31は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)で形成する。圧電部材31は、共通電極33を電圧V2(=0V)に固定し、これを基準にして個別電極32に負の電圧を与えたときに外側に膨らみ、正の電圧を与えたときに内側にへこむように分極している。
よって、図4に示すように、アクチュエーター3に電圧V0を与えると、圧電部材31が弾性板27を外側に膨らませることで圧力室26が拡張し、共通インク室28からインクを引き込む。この負パルスの後縁でアクチュエーター3に電圧V2を与えて電位を元に戻すと、圧力室26が元の状態に復帰して室内のインク圧が上昇し、ノズル23からインクの液滴を吐出する。インクの吐出後、アクチュエーター3に電圧V1を与えて、圧電部材31が弾性板27を内側にへこませることで圧力室26が収縮し、この正パルスの後縁でアクチュエーター3に電圧V2を与えて電位を元に戻して圧力室26を元の状態に復帰させる。これにより、圧力室26内の残留振動をダンプする。すなわち、引き打ち後残留振動をダンプする駆動波形の一例である。但し、インクの吐出動作は、これに限るものではない。また、圧電部材31を挟む個別電極32と共通電極33の位置を逆にしてもよい。その場合、圧電素子31の分極方向や波形を発生させる順番なども変更するようにする。
説明を図2に戻すと、各チャネルの個別電極32及び共通電極33は、フレキシブルプリント配線板21に電気的に接続し、フレキシブルプリント配線板21は中継基板22に電気的に接続する。フレキシブルプリント配線板21には、駆動用のIC(Integrated Circuit)34を搭載している(以下、駆動ICと称す)。駆動IC34は、インクジェットプリンタ10の制御基板17からのプリントデータを一時的に格納し、所定のタイミングでインクを吐出するように駆動電圧をアクチュエーター3に与える。
図5は、インクジェットプリンタ10の制御系のブロック構成図である。制御部としての制御基板17は、CPU170、ROM171、RAM172、入出力ポートであるI/Oポート173、画像メモリ174を搭載している。CPU170は、I/Oポート173を通して、モータ205、インク供給圧力調整装置321~324、操作部18、及び各種センサーを制御する。外部接続機器であるコンピュータ200からの画像データは、I/Oポート173を通じて制御基板17へ送信し、画像メモリ174に格納する。CPU170は、画像メモリ174に格納した画像データを描画順に駆動回路35に送信する。駆動回路35は、駆動IC34の中に含まれる(図2参照)。
駆動回路35は、プリントデータバッファ36、デコーダ37、駆動ドライバ38を備えている。プリントデータバッファ36は、画像データをチャネル毎に時系列に格納する。デコーダ37は、チャネル毎にプリントデータバッファ36に格納した画像データに基づいて、駆動ドライバ38を制御する。駆動ドライバ38は、デコーダ37の制御に基づき、各チャネルのアクチュエーター3に駆動電圧を与える。
続いて、アクチュエーター3を駆動するアクチュエーター駆動回路5について詳述する。上述のように、アクチュエーター3を駆動するには、3種類の電圧を与える多値出力駆動回路が必要である。図6は、多値出力駆動回路の一例として、3種類の電圧を出力するアクチュエーター駆動回路5を示す。すなわち、複数の静電容量性のアクチュエーター3を充放電させる充放電回路である。アクチュエーター駆動回路5は、ハイサイドのDMOSトランジスタ51、ローサイドのDMOSトランジスタ52、中間電位の双方向MOSスイッチ53を備える(MOS;Metal-Oxide-Semiconductor)。ハイサイドのDMOSトランジスタ51は、例えばPチャンネルのDMOSトランジスタである(DMOS;Double-Diffused MOS)。ローサイドのDMOSトランジスタ52は、例えばNチャンネルのDMOSトランジスタである。なお、DMOSトランジスタは、いわゆる縦型構造のMOSトランジスタである。中間電位の双方向MOSスイッチ53は、極性が異なる2つの横型構造のMOSトランジスタ531,532を、互いのドレインとソース同士を繋いで並列接続して構成している。2つのMOSトランジスタ531,532のうち、一方がPチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ531で、他方がNチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ532である。
ハイサイドのDMOSトランジスタ51のドレイン,ローサイドのDMOSトランジスタ52のドレイン、及び双方向MOSスイッチ53の一方の端子は、互いに接続して、さらにアクチュエーター3の一方の端子と接続している。アクチュエーター3の一方の端子は、例えば個別電極32である。アクチュエーター3の他方の端子は、例えば共通電極33である。共通電極33は、電圧V2(例えば、0V)に接続する。ハイサイドのDMOSトランジスタ51のソースは、電圧V1(例えば、15Vの正電圧)に接続する。ローサイドのDMOSトランジスタ52のソースは、電圧V0(例えば、-15Vの負電圧)に接続する。双方向MOSスイッチ53の他方の端子は、電圧V2(例えば、0V)に接続する。さらに、双方向MOSスイッチ53のPチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ531は、バックゲートを電圧V1(例えば、15Vの正電圧)に接続する。双方向MOSスイッチのNチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ532は、バックゲートを電圧V0(例えば、-15Vの負電圧)に接続する。すなわち、第一極性(この例ではPチャンネル)の横型MOSトランジスタ531のバックゲートを第1の電位と第2の電位のうちの一方(この例では第1の電位)に接続したとき、第二極性(この例ではNチャンネル)の横型MOSトランジスタ532のバックゲートを第1の電位と第2の電位のうちの他方(この例では第2の電位)に接続する。
ハイサイドのDMOSトランジスタ51は、ON動作時において、電圧V1に対して負の電圧が出力端子に与えられ、出力電流の向きは流れ出しである。このときのDMOSトランジスタ51の静特性は、図7に示すような定電流特性を示す。ローサイドのDMOSトランジスタ52は、ON動作時において、電圧V0に対して正の電圧が出力端子に与えられ、出力電流の向きは流れ込みである。このときのDMOSトランジスタ52の静特性は、図7に示すような定電流特性を示す。
これに対し、双方向MOSスイッチ53は、ON動作時において、印加される電圧の向き、出力電流の流れの向きが一方向に決まっていない。すなわち、アクチュエーター3を充電するときと放電するときとでは出力電流の流れの向きが逆となる。つまり、双方向MOSスイッチ53がON動作のときに、アクチュエーター3の一方の端子が正電位であれば、アクチュエーター3から双方向MOSスイッチ53へ電流が流入する。反対にアクチュエーター3の一方の端子が負電位であれば、双方向MOSスイッチ53からアクチュエーター3へ電流が流出する。このことから、アクチュエーター駆動回路5は、中間電位に双方向MOSスイッチを配置して、詳しくは以下に説明するように電流の流入と流出を制御しているのである。
まず、双方向MOSスイッチ53のNチャンネルの横型MOSトランジスタ532は、電流の流入時はV2(=0V)側の端子をソースとし、アクチュエーター3に接続した端子をドレインとする「ソース接地動作」となる。このときの出力電圧と出力電流の関係は、定電流特性を示す。一方、電流の流出時はV2(=0V)側の端子をドレインとし、アクチュエーター3に接続した端子をソースとする「ソースフォロア動作」となる。このときの出力電圧と出力電流の関係は、抵抗性を示す。これと対称的に、Pチャンネルの横型MOSトランジスタ531は、電流の流入時はV2(=0V)側の端子をドレインとし、アクチュエーター3に接続した端子をソースとする「ソースフォロア動作」となる。このときの出力電圧と出力電流の関係は、抵抗性を示す。一方、電流の流出時はV2(=0V)側の端子をソースとし、アクチュエーター3に接続した端子をドレインとする「ソース接地動作」となる。このときの出力電圧と出力電流の関係は、定電流特性を示す。
どちらの場合も、ON動作時におけるゲート-ソース間の電位差が大きくなるソースフォロア動作の方が、ON抵抗は小さくなる。そこで、双方向MOSスイッチ53は、PチャンネルとNチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ531,532を並列接続し、さらに各々のゲートを互いに逆の電圧で駆動させる構成としている。これにより、電流の流出時及び流入時に少なくともどちらか一方のMOSトランジスタ531/532がソースフォロア動作する。どちらか一方でもMOSトランジスタ531/532がソースフォロア動作すると、双方向MOSスイッチ53に加わる電圧と流れる電流との関係は、ソースフォロア動作している方のMOSトランジスタ531/532が支配する。その結果、双方向MOSスイッチ53全体としての特性は、概ね図7に示すような抵抗性となる。
続いて、図6と図8を参照しながら、アクチュエーター駆動回路5の動作とアクチュエーター3に与える駆動波形OUTについて説明する。図8に示すように、ハイサイドのDMOSトランジスタ51は、ゲート電圧VGHにローレベルを与えるとON動作する。ローサイドのDMOSトランジスタ52は、ゲート電圧VGLにハイレベルを与えるとON動作する。双方向MOSスイッチ53のPチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ531は、ゲート電圧VGMPにローレベルを与えるとON動作する。双方向MOSスイッチのNチャンネルの横型構造のMOSトランジスタ532は、ゲート電圧VGMNにハイレベルを与えるとON動作する。各トランジスタ51,52,531,532のON/OFFにより、同図に示す駆動波形OUTをアクチュエーター3に与える。
まず、ローサイドのDMOSトランジスタ52をONにすると、出力電流はアクチュエーター3からの流れ込みとなり、アクチュエーター3を逆充電する。アクチュエーター3を逆充電すると、圧力室26が拡張してインクを室内に引き込む(図4の逆充電参照)。その後、ローサイドのDMOSトランジスタ52をOFFにし、双方向MOSスイッチ53の両方のMOSトランジスタ531,532をONにすると、出力電流はアクチュエーター3への流れ出しとなり、アクチュエーター3を放電する。アクチュエーター3を放電すると、圧力室26が元の状態に復帰して室内のインク圧が高くなり、ノズル23からインクを吐出する(図4の放電参照)。
インクの吐出後、双方向MOSスイッチ53の両方のMOSトランジスタ531,532をOFFにし、ハイサイドのDMOSトランジスタ51をONにすると、出力電流はアクチュエーター3への流れ出しとなり、アクチュエーター3を充電する。アクチュエーター3を充電すると、圧力室26が収縮する(図4の充電参照)。さらに続いて、ハイサイドのDMOSトランジスタ51をOFFにし、双方向MOSスイッチ53の両方のMOSトランジスタ531,532をONにすると、出力電流はアクチュエーター3からの流れ込みとなり、アクチュエーター3を逆放電する。アクチュエーター3を逆放電すると、圧力室26が元の状態に復帰する(図4の逆放電参照)。このように、インクの吐出後に、圧力室26の収縮と復帰を行うことによって残留振動をダンプする。
アクチュエーター駆動回路5は、ON抵抗が小さく占有面積が小さいことが望ましい。回路を構成するトランジスタに横型構造のMOSトランジスタを用いると、横型構造のMOSトランジスタは、実質的にはドレインとソースの区別が無いので、ドレインとソースが逆転しても動作可能である。しかし、横型構造のMOSトランジスタは、所定の耐圧でON抵抗を抑えようとするとチャネル幅を大きくしなくてはならず、駆動回路基板内の専有面積が大きくなってしまう。一方、回路を構成するトランジスタに縦型構造のDMOSトランジスタを用いると、縦型構造のDMOSトランジスタは、小さい専有面積で小さなON抵抗を実現できる。しかし、縦型構造のDMOSトランジスタは、その構造上、ドレイン-ソース間に寄生ダイオードを有するため、逆方向に電圧を印加すると寄生ダイオードがONになってしまい電流を制御できない。
そこで、アクチュエーター駆動回路5は、ハイサイドとローサイドの駆動用トランジスタには縦型構造のDMOSトランジスタ51,52を配置し、電流の流れが双方向になる中間電位には横型構造のMOSトランジスタ531,532によって構成した双方向MOSスイッチ53を配置している。すなわち、縦型構造のDMOSトランジスタ51,52と横型構造のMOSトランジスタ531,532を、適材適所に配置したアクチュエーター駆動回路5を実現しているのである。
既述のとおり、ハイサイドのDMOSトランジスタ51、ローサイドのDMOSトランジスタ52、及び双方向MOSスイッチ53は、図7に示したような特性を示す。よって、ハイサイドのDMOSトランジスタ51、ローサイドのDMOSトランジスタ52、及び双方向MOSスイッチ53の特性を例えば実際に測定するなどして把握しておけば、ゲートに与える電圧を調整することによって、ハイサイドのDMOSトランジスタ51、ローサイドのDMOSトランジスタ52、及び双方向MOSスイッチ53の夫々の出力電流を調節することができる。夫々の特性は、例えばメモリなどに格納しておき、マイクロプロセッサが読み出して所望の出力電流になるようにゲートに与える電圧を決めるようにしてもよい。
なお、アクチュエーター駆動回路5は、ハイサイド及びローサイドの両方にDMOSトランジスタ51,52を配置することが望ましいが、いずれか一方を横型構造のMOSトランジスタとしてもよい。
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に従うアクチュエーター駆動回路50について説明する。第2実施形態のアクチュエーター駆動回路50は、各トランジスタ51,52,531,532のゲートに与える電圧を調整する反転バッファ回路54,55,56,57と可変電圧源543,553,563,573を備えたことを除けば、第1実施形態のアクチュエーター駆動回路5と同様の構成である。よって、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付すことで詳しい説明を省略する。
図9に示すように、アクチュエーター駆動回路50は、ハイサイドのDMOSトランジスタ51のゲートを駆動する反転バッファ回路54、ローサイドのDMOSトランジスタ52のゲートを駆動する反転バッファ回路55、双方向MOSスイッチ53のPチャンネルのMOSトランジスタ531のゲートを駆動する反転バッファ回路56、双方向MOSスイッチ53のNチャンネルのMOSトランジスタ532のゲートを駆動する反転バッファ回路57を備える。ハイサイドの反転バッファ回路54は、ハイサイドのDMOSトランジスタ51をOFFにする「第2のトランジスタ541」とONにする「第3のトランジスタ542」を備える。第2のトランジスタ541は、例えばPチャンネルのMOSトランジスタである。第3のトランジスタ542は、例えばNチャンネルのMOSトランジスタである。すなわち、反転バッファ回路54は、極性が逆の2つのトランジスタ541,542を対にしている。そして、第1のトランジスタであるDMOSトランジスタ51をONにするトランジスタに、DMOSトランジスタ51とは逆の極性を有する第3のトランジスタ542を割り当てる。
第2のトランジスタ541と第3のトランジスタ542は、互いのドレインを接続し、さらにDMOSトランジスタ51のゲートに接続している。第2のトランジスタ541のソースは、電圧V1(この例では15Vの正電圧)に接続する。第3のトランジスタ542のソースは、例えば0~5Vの直流の可変電圧源543に接続する。可変電圧源543により、反転バッファ回路54の電源電圧VdHを例えば10~15Vの範囲内で調整する。
反転バッファ回路54の入力、すなわち第2のトランジスタ541と第3のトランジスタ542のゲートの駆動は、レベルシフタ58を介して駆動波形データ入力を与えることによって行う。レベルシフタ58を介して反転バッファ回路54に電圧V1を与えると、第2のトランジスタ541はOFF、第3のトランジスタ542がONとなり、DMOSトランジスタ51のゲート電圧VGHに反転バッファ回路54の電源電圧VdH(すなわち、電圧V1に対してローレベル)が与えられて、DMOSトランジスタ51がONとなる。また、レベルシフタ58を介して反転バッファ回路54に電圧V0を与えると、第3のトランジスタ542はOFF、第2のトランジスタ541がONとなり、DMOSトランジスタ51はOFFとなる。なお、第3のトランジスタ542のバックゲートは、第3のトランジスタ542のドレインと接続しなくてもよく、個別に配線して制御対象から外してもよい。
ローサイドの反転バッファ回路55は、ローサイドのDMOSトランジスタ52をOFFにする「第2のトランジスタ551」とONにする「第3のトランジスタ552」を備える。第2のトランジスタ551は、例えばNチャンネルのMOSトランジスタである。第3のトランジスタ552は、例えばPチャンネルのMOSトランジスタである。すなわち、反転バッファ回路55は、極性が逆の2つのトランジスタを対にしている。そして、第1のトランジスタであるDMOSトランジスタ52をONにするトランジスタに、DMOSトランジスタ52とは逆の極性を有する第3のトランジスタ552を割り当てる。
第2のトランジスタ551と第3のトランジスタ552は、互いのドレインを接続し、さらにDMOSトランジスタ52のゲートに接続している。第2のトランジスタ551のソースは、電圧V0(この例では-15V)に接続する。第3のトランジスタ552のソースは、例えば0~5Vの直流の可変電圧源553に接続する。可変電圧源553により、反転バッファ回路55の電源電圧VdLを例えば-15~-10Vの範囲内で調整する。
反転バッファ回路55の入力、すなわち第2のトランジスタ551と第3のトランジスタ552のゲートの駆動は、レベルシフタ58を介して駆動波形データ入力を与えることによって行う。レベルシフタ58を介して反転バッファ回路55に電圧V0を与えると、第2のトランジスタ551はOFF、第3のトランジスタ552がONとなり、DMOSトランジスタ52のゲート電圧VGLに反転バッファ回路55の電源電圧VdL(すなわち、電圧V0に対してハイレベル)が与えられて、DMOSトランジスタ52がONとなる。また、レベルシフタ58を介して反転バッファ回路55に電圧V1を与えると、第3のトランジスタ552はOFF、第2のトランジスタ551がONとなり、DMOSトランジスタ52はOFFとなる。第3のトランジスタ552のバックゲートは、第3のトランジスタ552のドレインと接続してもよく、個別に配線して制御対象から外してもよい。
中間電位の反転バッファ回路56は、MOSトランジスタ531をOFFにする「第2のトランジスタ561」とONにする「第3のトランジスタ562」を備える。第2のトランジスタ561は、例えばPチャンネルのMOSトランジスタである。第3のトランジスタ562は、例えばNチャンネルのMOSトランジスタである。すなわち、反転バッファ回路56は、極性が逆の2つのトランジスタ561,562を対にしている。そして、MOSトランジスタ531をONにするトランジスタに、MOSトランジスタ531とは逆の極性を有する第3のトランジスタ562を割り当てる。
第2のトランジスタ561と第3のトランジスタ562は、互いのドレインを接続し、さらにMOSトランジスタ531のゲートに接続している。例えば0~30Vの直流の可変電圧源563は、第2のトランジスタ561のソースと第3のトランジスタ562のソースの間に接続する。さらに、第2のトランジスタ561のソースは、電圧V1(この例では+15V)に接続する。第3のトランジスタ562のバックゲートは、電圧V0(この例では-15V)に接続する。可変電圧源563により、反転バッファ回路56の電源電圧VdMPを例えば0~-15Vの範囲内で調整する。
反転バッファ回路56の入力、すなわち第2のトランジスタ561と第3のトランジスタ562のゲートの駆動は、レベルシフタ58を介して駆動波形データ入力を与えることによって行う。レベルシフタ58を介して反転バッファ回路56に電圧V1を与えると、第2のトランジスタ561はOFF、第3のトランジスタ562がONとなり、MOSトランジスタ531のゲート電圧VGMPに反転バッファ回路56の電源電圧VdMP(すなわち、電圧V2に対してローレベル)が与えられて、DMOSトランジスタ531がONとなる。また、レベルシフタ58を介して反転バッファ回路56に電圧V0を与えると、第3のトランジスタ562はOFF、第2のトランジスタ561がONとなり、DMOSトランジスタ531はOFFとなる。
同様に、中間電位の反転バッファ回路57は、MOSトランジスタ532をOFFにする「第2のトランジスタ571」とONにする「第3のトランジスタ572」を備える。第2のトランジスタ571は、例えばNチャンネルのMOSトランジスタである。第3のトランジスタ572は、例えばPチャンネルのMOSトランジスタである。すなわち、反転バッファ回路56は、極性が逆の2つのトランジスタ571,572を対にしている。そして、MOSトランジスタ532をONにするトランジスタに、MOSトランジスタ532とは逆の極性を有する第3のトランジスタ572を割り当てる。
第2のトランジスタ571と第3のトランジスタ572は、互いのドレインを接続し、さらにMOSトランジスタ532のゲートに接続している。例えば0~30Vの直流の可変電圧源573は、第2のトランジスタ571のソースと第3のトランジスタ572のソースの間に接続する。さらに、第2のトランジスタ571のソースは、電圧V0(この例では-15V)に接続する。第3のトランジスタ572のバックゲートは、電圧V1(この例では+15V)に接続する。可変電圧源573により、反転バッファ回路57の電源電圧VdMNを例えば0~15Vの範囲内で調整する。
反転バッファ回路57の入力、すなわち第2のトランジスタ571と第3のトランジスタ572のゲートの駆動は、レベルシフタ58を介して駆動波形データ入力を与えることによって行う。レベルシフタ58を介して反転バッファ回路57に電圧V0を与えると、第2のトランジスタ571はOFF、第3のトランジスタ572がONとなり、MOSトランジスタ532のゲート電圧VGMNに反転バッファ回路57の電源電圧VdMN(すなわち、電圧V2に対してハイレベル)が与えられて、DMOSトランジスタ532がONとなる。また、レベルシフタ58を介して反転バッファ回路57に電圧V1を与えると、第3のトランジスタ572はOFF、第2のトランジスタ571がONとなり、DMOSトランジスタ532はOFFとなる。
アクチュエーター駆動回路50は、反転バッファ回路54,55,56,57と可変電圧源543,553,563,573によって、各トランジスタ51,52,531,532のゲートに与える電圧VGH,VGL,VGMP,VGMNを夫々調整する。すなわち、可変電圧源543を制御して、ハイサイドの反転バッファ回路54の電源電圧VdHを絞ると、図10に示すように、ハイサイドのDMOSトランジスタ51のゲート電圧VGHの振幅が小さくなり、DMOSトランジスタ51の出力電流を制限できる。同様に、可変電圧源553を制御して、ローサイドの反転バッファ回路55の電源電圧VdLを絞ると、ローサイドのDMOSトランジスタ52のゲート電圧VGLの振幅が小さくなり、DMOSトランジスタ52の出力電流を制限できる。
同様に、可変電圧源563を制御して中間電位の反転バッファ回路56の電源電圧VdMPを絞ると、双方向MOSスイッチ53のMOSトランジスタ531のゲート電圧VGMPの振幅が小さくなり、MOSトランジスタ531の出力電流を制限できる。同様に、可変電圧源573を制御して反転バッファ回路57の電源電圧VdMNを絞ると、双方向MOSスイッチ53のMOSトランジスタ532のゲート電圧VGMNの振幅が小さくなり、MOSトランジスタ532の出力電流を制限できる。
その結果、同図に示すように、例えば電源電圧VdH,VdL,VdMP,VdMNを絞らない場合(破線で示す)と比較して、駆動波形OUTの立ち上がり・立下りを緩くすることができる。すなわち、駆動波形OUTの立ち上がり・立下りを可変に調整することができる。駆動波形OUTの立ち上がり・立下り時間を絞ると、アクチュエーター3の収縮動作、復帰動作はその分ゆっくりになるので、電源電圧VdH,VdL,VdMP,VdMNを調節することによってインクの吐出速度が変化する。可変電圧源543,553,563,573による電源電圧VdH,VdL,VdMP,VdMNの絞りを、例えば3段階で出来るようにすれば、駆動波形OUTの立ち上がり・立下りの勾配を3段階に制御することができる。勿論、可変電圧源543,553,563,573による電源電圧VdH,VdL,VdMP,VdMNの絞りは、3段階でなくともよい。さらに、ハイサイド,ローサイド,中間電位の夫々に反転バッファ回路54,55,56,57と可変電圧源543,553,563,573を設けているので、駆動波形OUTの立ち上がり・立下りを各々独立して調整することが可能である。
仮に反転バッファ回路54,55,56,57と可変電圧源543,553,563,573を有しない場合、圧力室26の拡張・収縮・復帰時間は、DMOSトランジスタ51,52、双方向MOSスイッチ53の特性と、アクチュエーター3の圧電部材31の静電容量によって固定的に定まり、可変に調整することはできない。これに対し、反転バッファ回路54,55,56,57と可変電圧源543,553,563,573を設けて駆動波形OUTの立ち上がり・立下りを夫々調節可能な構成とすれば、DMOSトランジスタ51,52、双方向MOSスイッチ53の夫々の出力電流を調整することができる。このとき、DMOSトランジスタ51,52が図7のような特性であれば、飽和電流値は下がる。双方向MOSスイッチ53が図7のような特性であれば、ON抵抗は上昇する。よって、図8に示したように、圧力室26の拡張、復帰、収縮、復帰の際の充放電に要する時間を遅くする方向に調整することができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に従うインクジェットヘッド駆動回路6について説明する。第3実施形態のインクジェットヘッド駆動回路6は、第2実施形態のアクチュエーター駆動回路50を少なくともチャネルの数だけ備えている。インクジェットヘッド駆動回路6は、液体吐出ヘッド駆動回路の一例である。
図11は、インクジェットヘッド駆動回路6の全体構成を示している。インクジェットヘッド駆動回路6は、例えば駆動回路35の一部である。インクジェットヘッド駆動回路6は、駆動回路基板60,検出部61,マイクロプロセッサ62、A/Dコンバータ63、D/Aコンバータ64、増幅回路651~654などを備えている。各チャネルのアクチュエーター駆動回路50は、駆動回路基板60上に形成する。マイクロプロセッサ62、D/Aコンバータ64及び増幅回路651~654は、調整部を構成する。調整部は、マイクロプロッセッサ62がプログロムを実行することによって、可変電圧源543,553,563,573に相当する機能を実現する。
検出部61は、検出用トランジスタ66~69を備える。DMOSトランジスタ51と対になる検出用トランジスタ66、DMOSトランジスタ52と対になる検出用トランジスタ67は、夫々、カレントミラー回路機能部分を構成する。すなわち、インクジェットヘッド駆動回路6は、検出部61と調整部とが独立しており、その間にA/Dコンバータ63、D/Aコンバータ64及びマイクロプロセッサ62が介在しているが、回路の動作はカレントミラー回路と同様であり、カレントミラー回路の変形と見ることができる。この回路の構成は、マイクロプロセッサ62を介在するのでハードウエアだけで構成する通常のカレントミラー回路と比べて微調整が可能という利点がある。
検出用トランジスタ66は、ダイオード接続したPチャンネルのDMOSトランジスタである。このPチャンネルの検出用トランジスタ66は、PチャンネルのDMOSトランジスタの順電圧測定用である。すなわち、検出対象は、ハイサイドのDMOSトランジスタ51である。検出用トランジスタ66とDMOSトランジスタ51の一群は、共通の半導体基板上に形成するのが好ましい。このとき、トランジスタ同士の距離を近づけて半導体基板上に集合配置することが望ましい。さらに、検出用トランジスタ66は、検出対象のDMOSトランジスタ51との特性比を予め把握しておくのが好ましい。特性比は、例えばトランジスタのサイズ比である。トランジスタのサイズ比は、例えばチャネル幅とチャネル長の比の比によって特定する。マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ66と制御対象のDMOSトランジスタ51との間で、サイズ比に基づいた動作電流のスケーリングをする。一例を挙げると、DMOSトランジスタ51のトランジスタサイズに対し、検出用トランジスタ66のチャネル幅が1/5倍でチャネル長が2倍であれば、検出用トランジスタ61の動作電流は、DMOSトランジスタ51の動作電流の1/10倍の大きさとなる。
検出用トランジスタ67は、ダイオード接続したNチャンネルのDMOSトランジスタである。このNチャンネルの検出用トランジスタ67は、NチャンネルのDMOSトランジスタの順電圧測定用である。すなわち、検出対象は、ローサイドのDMOSトランジスタ52である。検出用トランジスタ67とDMOSトランジスタ52の一群は、共通の半導体基板上に形成するのが好ましい。このとき、トランジスタ同士の距離を近づけて半導体基板上に集合配置することが望ましい。さらに、検出用トランジスタ67は、例えば動作電流のスケーリングに使用するために、検出対象のDMOSトランジスタ52との特性比を予め把握しておくのが好ましい。
検出用トランジスタ68は、Pチャンネルの横型構造のMOSトランジスタである。このPチャンネルの横型構造の検出用トランジスタ68は、Pチャンネルの横型構造のMOSトランジスタのゲート電圧対ON抵抗の相関関係の測定用である。すなわち、検出対象は、双方向MOSスイッチ53のMOSトランジスタ531である。検出用トランジスタ68とMOSトランジスタ531の一群は、共通の半導体基板上に形成するのが好ましい。このとき、トランジスタ同士の距離を近づけて半導体基板上に集合配置することが望ましい。さらに、検出用トランジスタ68は、例えば動作電流のスケーリングに使用するために、検出対象のMOSトランジスタ531との特性比を予め把握しておくのが好ましい。
検出用トランジスタ69は、横型構造のNチャンネルのMOSトランジスタである。このNチャンネルの横型構造の検出用トランジスタ69は、NチャンネルのMOSトランジスタのゲート電圧対ON抵抗の相関関係の測定用である。すなわち、検出対象は、双方向MOSスイッチ53のMOSトランジスタ532である。検出用トランジスタ69とMOSトランジスタ532の一群は、共通の半導体基板上に形成する。このとき、トランジスタ同士の距離を近づけて半導体基板上に集合配置することが望ましい。さらに、検出用トランジスタ69は、例えば動作電流のスケーリングに使用するために、検出対象のMOSトランジスタ532との特性比を予め把握しておくのが好ましい。
並列に接続した3つの抵抗661,662,663、及び2つのトランジスタ664,665は、ハイサイドの検出用トランジスタ66に流す順電流を調節する電流切替回路である。具体的には、2つのトランジスタ664,665のONとOFFの組み合わせによって、抵抗661を通じてのみ電流を流す、抵抗661と抵抗662を通じて電流を流す、抵抗661と抵抗663を通じて電流を流す、抵抗661~663の全部を通じて電流を流す、の4つのパターンで検出用トランジスタ66に順電流を流すことができる。よって、マイクロプロセッサ62は、ONにする抵抗661~663の組み合わせを決めることによって、検出用トランジスタ66に流す設定電流を決めることができる。
マイクロプロセッサ62は、設定電流に応じて出力ポートDO1,DO2からの出力値を決め(DO;digital output)、インバータ71,72を介してトランジスタ664,665をON/OFF制御する。マイクロプロセッサ62は、設定電流を検出用トランジスタ66に流したときの電圧降下、すなわち検出用トランジスタ66の順方向電圧を、差動増幅器666とA/Dコンバータ63を介して取り込む。取り込んだ電圧は、DMOSトランジスタ51のゲートに与えるべき電圧のはずであるから、マイクロプロセッサ62は、D/Aコンバータ64と増幅回路651を介して、その電圧を反転バッファ回路54の電源電圧VdHに与える。なお、マイクロプロセッサ62は、差動増幅回路667を介して抵抗661~663に生じる電圧降下を計測し、検出用トランジスタ66に流れる電流値を算出することができる。但し、電圧V1及び電圧V0が安定している場合は、差動増幅回路667を省略してもよい。
同様に、並列に接続した3つの抵抗671,672,673、及び2つのトランジスタ674,675は、ローサイドの検出用トランジスタ67に流す順電流を調節する電流切替回路である。マイクロプロセッサ62は、ONにする抵抗671~673の組み合わせによって、検出用トランジスタ67に流す設定電流を決める。マイクロプロセッサ62は、設定電流に応じて出力ポートDO1,DO2からの出力値を決め、インバータ71,72を介してトランジスタ674,675をON/OFF制御する。マイクロプロセッサ62は、設定電流を検出用トランジスタ67に流したときの電圧降下、すなわち検出用トランジスタ67の順方向電圧を、差動増幅器676とA/Dコンバータ63を介して取り込む。取り込んだ電圧は、DMOSトランジスタ52のゲートに与えるべき電圧のはずであるから、マイクロプロセッサ62は、D/Aコンバータ64と増幅回路652を介して、その電圧を反転バッファ回路55の電源電圧VdLに与える。
並列に接続した3つの抵抗681,682,683、及び2つのトランジスタ684,685は、検出用トランジスタ68に流す電流を調節する電流切替回路である。さらに増幅回路686は、検出用トランジスタ68のゲートに与える電圧を調整する。マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ68のゲート電圧をD/Aコンバータ64から増幅回路686を介して設定する。設定したゲート電圧に対する検出用トランジスタ68のON抵抗は、検出用トランジスタ68に流すソース電流とドレインソース間電圧から求めることができる。
まず、マイクロプロセッサ62は、ONにする抵抗681~683の組み合わせによって、検出用トランジスタ68に流すソース電流の設定電流を決める。マイクロプロセッサ62は、設定電流に応じて出力ポートDO1,DO2からの出力値を決め、インバータ71,72を介してトランジスタ684,685をON/OFF制御する。マイクロプロセッサ62は、設定電流を検出用トランジスタ68に流したときの電圧降下、すなわち検出用トランジスタ68のドレインソース間電圧を、差動増幅器687とA/Dコンバータ63を介して取り込む。
これにより、マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ68にどのようなゲート電圧を与えればどのようなON抵抗になるかという、図7右下のグラフのような特性を測定できる。その測定値を用いて、MOSトランジスタ531とのサイズ比に応じたスケーリングを行えば、MOSトランジスタ531を所望のON抵抗に設定するためにMOSトランジスタ531のゲートに与えるべき電圧を求めることができる。マイクロプロセッサ62は、その電圧を、D/Aコンバータ64と増幅回路653を介して、反転バッファ回路56の電源電圧VdMPに与える。なお、トランジスタ684,685のON抵抗は、各々接続している抵抗682,683の抵抗値よりも十分小さく設定している。
同様に、並列に接続した3つの抵抗691,692,693、及び2つのトランジスタ694,695は、検出用トランジスタ69に流す電流を調節する電流切替回路である。さらに増幅回路696は、検出用トランジスタ69のゲートに与える電圧を調整する。マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ69のゲート電圧をD/Aコンバータ64から増幅回路696を介して設定する。設定したゲート電圧に対する検出用トランジスタ69のON抵抗は、検出用トランジスタ69に流すソース電流とドレインソース間電圧から求める。
まず、マイクロプロセッサ62は、ONにする抵抗691~693の組み合わせによって、検出用トランジスタ69に流すソース電流の設定電流を決める。マイクロプロセッサ62は、設定電流に応じて出力ポートDO1,DO2からの出力値を決め、インバータ71,72を介してトランジスタ694,695をON/OFF制御する。マイクロプロセッサ62は、設定電流を検出用トランジスタ69に流したときの電圧降下、すなわち検出用トランジスタ69のドレインソース間電圧を、差動増幅器697とA/Dコンバータ63を介して取り込む。
これにより、マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ69にどのようなゲート電圧を与えればどのようなON抵抗になるかという、図7右下のグラフのような特性を測定できる。その測定値を用いて、MOSトランジスタ532とのサイズ比に応じたスケーリングを行えば、MOSトランジスタ532を所望のON抵抗に設定するためにMOSトランジスタ532のゲートに与えるべき電圧を求めることができる。マイクロプロセッサ62は、その電圧を、D/Aコンバータ64と増幅回路654を介して、反転バッファ回路57の電源電圧VdMNに与える。トランジスタ694,695のON抵抗は、各々接続している抵抗692,693の抵抗値よりも十分小さく設定している。
すなわち、双方向MOSスイッチ53の要素であるMOSトランジスタ531とMOSトランジスタ532の特性を、検出用トランジスタ68と検出用トランジスタ69によって検出する。マイクロプロセッサ62は、検出用トランジスタ68,69に与えるゲート電圧をパラメータとした電流と電圧降下との関係に基づいて、図7右下のグラフのような双方向MOSスイッチの特性を検出し、検出した特性に応じて双方向MOSスイッチ53のゲート電圧を設定する。このように、マイクロプロセッサ62は、双方向MOSスイッチ53のゲート電圧を設定するゲート電圧設定部として機能する。
上述のように、インクジェットヘッド駆動回路60は、反転バッファ回路55,56,57,58の電源電圧VdH,VdL,VdMP,VdMNを夫々調整することができる。検出用トランジスタ66と対になるDMOSトランジスタ51を共通の半導体基板上に形成すれば、半導体ウエハ間の特性のばらつきの影響や、基板の温度変化の影響を抑えることができる。同じプロセスで同じ半導体基板上に形成しているので、相似の関係は維持されるからである。検出用トランジスタ67と対になるDMOSトランジスタ52、検出用トランジスタ68と対になるMOSトランジスタ531、検出用トランジスタ69と対になるMOSトランジスタ532についても同様である。なお、増幅回路651~654は、駆動回路基板60に内蔵してもよい。
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態に従うインクジェットヘッド駆動回路600について説明する。第4実施形態のインクジェットヘッド駆動回路600は、第3実施形態のインクジェットヘッド駆動回路6の変形例である。第3実施形態のインクジェットヘッド駆動回路6は、マイクロプロセッサ62によって、全てのトランジスタのゲートを駆動するプリバッファ電源電圧を制御している。そのうちDMOSトランジスタ51,52のゲート電圧VGH,VGLを制御する回路部分は、カレントミラー回路の機能を、ファームウエアを介して実現していると考えることができる。
第4実施形態のインクジェットヘッド駆動回路600は、このDMOSトランジスタ51,52のゲート電圧VGH,VGLを制御するカレントミラー回路機能部分を、ハードウエアで実現する回路構成にしている。すなわち、ハイサイドの検出用トランジスタ81とVi変換器82、ローサイドの検出用トランジスタ83とVi変換器84を設ける。ハイサイドの検出用トランジスタ81は、ダイオード接続したDMOSトランジスタである。検出用トランジスタ81は、制御対象であるDMOSトランジスタ51と同じPチャンネルである。ローサイドの検出用トランジスタ83は、ダイオード接続したDMOSトランジスタである。検出用トランジスタ83は、制御対象であるDMOSトランジスタ52と同じNチャンネルである。
ハイサイドの検出用トランジスタ81に流すリファレンス電流は、D/Aコンバータ64とVi変換器82を介して、マイクロプロセッサ62が電流値を設定する。このとき検出用トランジスタ81に生じる順電圧は、ボルテージフォロア回路85を介して、反転バッファ回路54の電源電圧VdHとして与える。同様に、ローサイドの検出用トランジスタ83に流すリファレンス電流は、D/Aコンバータ64とVi変換器84を介して、マイクロプロセッサ62が電流値を設定する。このとき検出用トランジスタ84に生じる順電圧は、ボルテージフォロア回路86を介して、反転バッファ回路55の電源電圧VdLとして与える。
なお、検出用トランジスタ81,84に流すリファレンス電流は、D/Aコンバータ64とVi変換器82,84を省略して、抵抗などを用いて所定の固定電流を流すようにしてもよい。また、出力回路数が少なく検出用トランジスタ81,84に十分な電圧供給能力がある場合には、ボルテージフォロア回路85,86を省略して、検出用トランジスタ81,84と反転バッファ回路55,56の電源電圧VdH,VdLとを直結してもよい。
これまで説明してきた検出用トランジスタ66,67,68,69,81,83は、夫々の対となるDMOSトランジスタ51,DMOSトランジスタ52,MOSトランジスタ531,MOSトランジスタ532とトランジスタ特性が同じか又はスケーリング可能な特性比を有していなくてはならない。そのため、対になる同士を共通の半導体基板上に形成していることが望ましい。
但し、例えば半導体基板のサイズが大きく同一基板内で半導体の特性や温度が均一ではない恐れがある場合、対となるDMOSトランジスタ51,DMOSトランジスタ52,MOSトランジスタ531,MOSトランジスタ532を半導体基板上で複数にグループ分けし、グループ毎に検出用トランジスタ66,67,68,69,81,83を配置するようにしてもよい。
図13は、検出用トランジスタ81,83を複数配置する回路構成の一例である。図13に示すように、複数のアクチュエーター駆動回路50は、チャネルの配列方向に沿って例えば4つのグループに分ける。例えばチャネルの数が1000個の場合、アクチュエーター駆動回路50を250個ごとにグループ分けする。そして、ハイサイドの検出用トランジスタ81とローサイドの検出用トランジスタ83を、グループごとに、該当するグループの近傍に配置する。これにより、グループごとに、検出用トランジスタ81(83)と、対になるDMOSトランジスタ51(52)による第1のカレントミラー回路を構成する。
さらに、各グループのハイサイドの検出用トランジスタ81及びローサイドの検出用トランジスタ83に対して、第1のリファレンス電流を与える第2のカレントミラー回路を半導体基板60上に形成してもよい。図14は、第2のカレントミラー回路の一例である。第2のカレントミラー回路は、ハイサイド出力回路制御用の複数のトランジスタ92、トランジスタ92と対になってカレントミラー回路を構成するハイサイド出力回路制御用のトランジスタ91、ローサイド出力回路制御用の複数のトランジスタ94、トランジスタ94と対になってカレントミラー回路を構成するローサイド出力回路制御用のトランジスタ93を備える。
ハイサイド出力回路制御用の複数のトランジスタ92は、第1のカレントミラー回路のハイサイドの検出用トランジスタ81と夫々電気的に接続する。各トランジスタ92は、第1のカレントミラー回路の検出用トランジスタ81に与える第1のリファレンス電流を生成する。ローサイド出力回路制御用の複数のトランジスタ94は、第1のカレントミラー回路のローサイドの検出用トランジスタ83と夫々電気的に接続する。各トランジスタ94は、第1のカレントミラー回路の検出用トランジスタ83に与える第1のリファレンス電流を生成する。第2のカレントミラー回路のハイサイド出力回路制御用のトランジスタ91に流す第2のリファレンス電流は、D/Aコンバータ64とVi変換器95を介して、マイクロプロセッサ62が電流値を設定する。電流値の設定は、トランジスタのサイズ比に従った比例定数を加味した値とする。同様に、ローサイド出力回路制御用のトランジスタ93に流す第2のリファレンス電流は、D/Aコンバータ64とVi変換器96を介して、マイクロプロセッサ62が電流値を設定する。複数の第1のカレントミラー回路、及び第2のカレントミラー回路は、例えば図15に示すような配置で共通の半導体基板90上に形成することができる。
上述のいずれかの実施形態によれば、容量性負荷であるアクチュエーター3に対し、3つの異なる電位を与えるアクチュエーター駆動回路5,50において、縦型構造のDMOSトランジスタ51,52と横型構造のMOSトランジスタ531,532を回路内の適材適所に配置したアクチュエーター駆動回路5,50を提供することができる。なお、上述のアクチュエーター駆動回路5,50、インクジェットヘッド駆動回路6,600において、特に指定しないトランジスタについては、MOSトランジスタに限らず、バイポーラートランジスタなどを用いてもよい。
すなわち、実施形態に従う多値出力駆動回路は、次のとおりである。
(1)圧電素子に第1の電位を与えるDMOSトランジスタと、前記圧電素子に第2の電位を与えるMOSトランジスタと、前記第1の電位及び前記第2の電位の一方よりも高く且つ他方よりも低い第3の電位を前記圧電素子に与える双方向MOSスイッチと、を備えている。
(2)前記双方向MOSスイッチは、バックゲートを前記第1の電位と前記第2の電位のうちいずれかに接続した第一極性の横型MOSトランジスタを備えている。
(3)前記双方向MOSスイッチは、バックゲートを前記第1の電位と前記第2の電位のうち前記第一極性の横型MOSトランジスタとは異なる方に接続した第二極性の横型MOSトランジスタが、前記第一極性の横型MOSトランジスタに並列接続しており、前記第一極性の横型MOSトランジスタのゲートと、前記第二極性の横型MOSトランジスタのゲートには互いに反転する駆動信号が与えられ、前記第一極性の横型MOSトランジスタのゲートと前記第二極性の横型MOSトランジスタの一方がON制御されるとき他方もON制御され、一方がOFF制御されるとき他方もOFF制御される。
(4)前記圧電素子に第2の電位を与えるMOSトランジスタは、DMOSトランジスタである。
(5)前記圧電素子に第3の電位を与える双方向MOSスイッチと共通の半導体基板に形成した検出用MOSトランジスタと、前記検出用MOSトランジスタにゲート電圧を与えて電流を流し、前記検出用MOSトランジスタに生じる電圧降下を検出する検出部と、前記検出用MOSトランジスタに与えるゲート電圧をパラメータとした前記検出用MOSトランジスタに流した電流と電圧降下との関係に基づいて、前記検出用MOSトランジスタの特性を検出し、検出した特性に応じて前記圧電素子に第3の電位を与える双方向MOSスイッチのゲート電圧を設定するゲート電圧設定部と、を備える。
(6)前記双方向MOSスイッチのON抵抗は、マイクロプロセッサから制御可能である。
(7)前記DMOSトランジスタのゲート電圧は、マイクロプロセッサから制御可能である。
(8)前記DMOSトランジスタのゲート電圧は、カレントミラー回路によって制御される。
(9)前記圧電素子は、インクジェットヘッドのアクチュエーターである。
(10)共通の半導体基板上に形成した複数の双方向MOSスイッチと、前記半導体基板と同一基板上に形成した検出用MOSトランジスタと、前記検出用MOSトランジスタにゲート電圧を与えて電流を流し、前記検出用MOSトランジスタに生じる電圧降下を検出する検出部と、前記検出用MOSトランジスタに与えるゲート電圧をパラメータとした前記検出用MOSトランジスタに流した電流と電圧降下との関係に基づいて、前記検出用MOSトランジスタの特性を検出し、検出した特性に応じて前記双方向MOSスイッチのゲート電圧を設定するゲート電圧設定部と、を備える。
かかる構成とすることにより、駆動回路を形成する半導体基板の例えば半導体ウエハ間の特性のばらつきや動作時の温度に依る特性変化の影響を抑えて、安定した吐出特性で液体吐出ヘッドを駆動させることのできる多値出力駆動回路を提供することができる。
(11)前記MOSスイッチは、並列接続したPチャンネルの横型MOSトランジスタとNチャンネルの横型MOSトランジスタを備え、前記検出部と前記ゲート電圧設定部は、Pチャンネルの横型MOSトランジスタ用とNチャンネルの横型MOSトランジスタ用の2組を備える。
なお、インクジェットヘッド100は、図3に例示したアクチュエーター3の構成に限らない。例えば、シアモード型のアクチュエーターであってもよい。また、例えばノズル23とアクチュエーター3の両方をノズルプレートの面上に複数配置した構成としてもよい。その他のドロップオンデマンド・ピエゾ方式のアクチュエーター3であってもよい。また、多値出力駆動回路の好ましい一例として、複数の静電容量性のアクチュエーター3を充放電させる回路について説明したが、駆動させる対象は圧電素子などの静電容量性素子であればよい。
上述の実施形態では、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド100を液体吐出装置の一例として説明したが、液体吐出装置は、3Dプリンタの造形材吐出ヘッド、分注装置の試料吐出ヘッドであってもよい。
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。