以下、図面(図1~図22)を参照して本発明の基板処理方法、及び基板処理装置に係る実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
本明細書では、理解を容易にするため、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向を記載することがある。典型的には、X方向及びY方向は水平方向に平行であり、Z方向は鉛直方向に平行である。但し、これらの方向の定義により、本発明に係る基板処理方法の実行時の向き、及び本発明に係る基板処理装置の使用時の向きを限定する意図はない。
本発明の実施形態における「基板」には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、及び光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として、円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理方法及び基板処理装置を例に本発明の実施形態を説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また、基板の形状についても各種のものを適用可能である。
[実施形態1]
以下、図1~図10を参照して本発明の実施形態1を説明する。まず、図1(a)及び図1(b)を参照して本実施形態の基板処理装置100を説明する。本実施形態の基板処理装置100はバッチ式である。したがって、基板処理装置100は、複数の基板Wを一括して処理する。具体的には、基板処理装置100は、ロット単位で複数の基板Wをエッチング処理する。1ロットは、例えば25枚の基板Wからなる。
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態の基板処理装置100を示す図である。詳しくは、図1(a)は、基板Wを処理槽3に投入する前の基板処理装置100を示す。図1(b)は、基板Wを処理槽3に投入した後の基板処理装置100を示す。図1(a)及び図1(b)に示すように、基板処理装置100は、処理槽3と、制御装置110と、昇降部120と、基板保持部130とを備える。
処理槽3は、エッチング液Eを貯留する。エッチング液Eは、燐酸(H3PO4)を含む。エッチング液Eは、燐酸と希釈液とを含んでもよい。希釈液は、例えばDIW(Deionized Water:脱イオン水)である。DIWは純水の一種である。希釈液は、例えば、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、又は希釈濃度(例えば、10ppm程度~100ppm程度)の塩酸水であってもよい。なお、エッチング液Eは、添加剤を更に含み得る。
エッチング液Eは、加熱されている。例えば、エッチング液Eの温度は、120℃以上160℃以下である。したがって、エッチング液Eに含まれる水分は蒸発する。希釈液は、エッチング液Eにおける燐酸の濃度に対応する物理量が目標値を維持するように、エッチング液Eに適宜供給される。ここで、エッチング液Eにおける燐酸の濃度に対応する物理量は、例えば、エッチング液Eにおける燐酸の濃度値、又は、エッチング液Eにおける燐酸の比重値を示す。なお、以下の説明において、エッチング液Eにおける燐酸の濃度に対応する物理量を、「燐酸濃度に対応する物理量」と記載する場合がある。
処理槽3は、内槽31と、外槽32とを有する。外槽32は、内槽31を囲む。換言すると、処理槽3は二重槽構造を有する。内槽31及び外槽32は共に、上向きに開いた上部開口を有する。
内槽31及び外槽32は共にエッチング液Eを貯留する。内槽31は、複数の基板Wを収容する。詳しくは、基板保持部130に保持された複数の基板Wが内槽31に収容される。複数の基板Wは、内槽31に収容されることにより、内槽31内のエッチング液Eに浸漬される。
基板保持部130は、処理槽3(内槽31)のエッチング液E内で複数の基板Wを保持する。具体的には、基板保持部130は、複数の保持棒131と、本体板132とを含む。本体板132は板状の部材であり、鉛直方向(Z方向)に延びる。複数の保持棒131は、本体板132の一方の主面から水平方向(Y方向)に延びる。なお、本実施形態において、基板保持部130は3つの保持棒131を有する(図2参照)。
複数の基板Wは、複数の保持棒131によって保持される。詳しくは、各基板Wの下縁が複数の保持棒131に当接することにより、複数の基板Wが複数の保持棒131によって起立姿勢(鉛直姿勢)で保持される。より具体的には、基板保持部130によって保持された複数の基板Wは、Y方向に沿って間隔をあけて整列する。つまり、複数の基板Wは、Y方向に沿って一列に配列される。また、複数の基板Wの各々は、XZ平面に略平行な姿勢で基板保持部130に保持される。
制御装置110は、基板処理装置100の各部の動作を制御する。制御装置110は、例えば、昇降部120の動作を制御する。昇降部120は、制御装置110によって制御されて、基板保持部130を昇降させる。昇降部120が基板保持部130を昇降させることにより、基板保持部130が、複数の基板Wを保持した状態で鉛直上方又は鉛直下方に移動する。昇降部120は、駆動源及び昇降機構を有しており、駆動源によって昇降機構を駆動して、基板保持部130を上昇及び下降させる。駆動源は、例えば、モータを含む。昇降機構は、例えば、ラック・ピニオン機構又はボールねじを含む。
より具体的には、昇降部120は、処理位置(図1(b)に示す位置)と退避位置(図1(a)に示す位置)との間で基板保持部130を昇降させる。図1(b)に示すように、基板保持部130が、複数の基板Wを保持したまま鉛直下方(Z方向)に下降して処理位置まで移動すると、複数の基板Wが処理槽3に投入される。詳しくは、基板保持部130に保持されている複数の基板Wが内槽31内に移動する。この結果、複数の基板Wが内槽31内のエッチング液Eに浸漬されて、複数の基板Wがエッチング液Eによってエッチングされる。一方、図1(a)に示すように、基板保持部130が退避位置に移動すると、基板保持部130に保持されている複数の基板Wが処理槽3の上方に移動して、複数の基板Wがエッチング液Eから引き上げられる。
続いて図2を参照して本実施形態の基板処理装置100の構成を説明する。図2は本実施形態の基板処理装置100の構成を示す断面図である。図2に示すように、制御装置110は、制御部111と、記憶部112とを含む。
制御部111は、プロセッサーを有する。制御部111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、又は、MPU(Micro Processing Unit)を有する。あるいは、制御部111は、汎用演算機を有してもよい。制御部111は、記憶部112に記憶されているコンピュータプログラム及びデータに基づいて、基板処理装置100の各部の動作を制御する。
記憶部112は、データ及びコンピュータプログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容及び処理手順を規定する。データは、燐酸濃度に対応する物理量の目標値を示すデータを更に含む。記憶部112は、主記憶装置を有する。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。記憶部112は、補助記憶装置を更に有してもよい。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリ及びハードディスクドライブの少なくも一方を含む。記憶部112はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。
図2を参照して本実施形態の基板処理装置100の構成を更に説明する。図2に示すように、基板処理装置100は、燐酸供給ライン4と、希釈液供給ライン5と、圧力測定部6と、第1バブリング部7と、エッチング液循環部8と、オートカバー21とを更に備える。
オートカバー21は、処理槽3の上部開口を開閉する。換言すると、オートカバー21は、内槽31の上部開口及び外槽32の上部開口を開閉する。本実施形態において、オートカバー21は、第1カバー片22と、第2カバー片23とを有する。第1カバー片22は、処理槽3の上部開口に対して開閉自在である。第2カバー片23は、処理槽3の上部開口に対して開閉自在である。オートカバー21は、第1カバー片22及び第2カバー片23が開閉することにより、観音開き式に開閉する。
詳しくは、第1カバー片22は、第1回転軸P1を中心に回動自在である。第1回転軸P1は、Y方向に延びる。第1回転軸P1は、第1カバー片22におけるオートカバー21の中心側とは反対側の端部を支持する。第2カバー片23は、第2回転軸P2を中心に回動自在である。第2回転軸P2は、Y方向に延びる。第2回転軸P2は、第2カバー片23におけるオートカバー21の中心側とは反対側の端部を支持する。
制御装置110(制御部111)は、基板保持部130を退避位置(図1(a)に示す位置)から処理位置(図1(b)に示す位置)まで移動させる際に、オートカバー21を開状態にする。オートカバー21が開状態となることにより、処理槽3の上部開口が開放状態となり、処理槽3(内槽31)への基板Wの投入が可能となる。制御装置110(制御部111)は、基板Wのエッチング処理時に、オートカバー21を閉状態にする。オートカバー21が閉状態となることにより、処理槽3の上部開口が閉塞状態となる。この結果、処理槽3の内部が密閉空間となる。
制御装置110(制御部111)は、基板保持部130を処理位置(図1(b)に示す位置)から退避位置(図1(a)に示す位置)まで移動させる際に、オートカバー21を開状態にする。オートカバー21が開状態となることにより、処理槽3の上部開口が開放状態となり、基板Wの処理槽3(内槽31)からの引き上げが可能となる。
続いて図2を参照して、燐酸供給ライン4と、希釈液供給ライン5とを説明する。
燐酸供給ライン4は、燐酸を処理槽3に供給する。本実施形態では、燐酸供給ライン4は、燐酸を外槽32に供給する。詳しくは、燐酸供給ライン4は、燐酸供給ノズル41と、燐酸供給配管42と、開閉弁43とを含む。
燐酸供給ノズル41は、処理槽3の上方に配置される。燐酸供給ノズル41は、中空の管状部材である。燐酸供給ノズル41には、複数の吐出孔が形成されている。本実施形態において、燐酸供給ノズル41はY方向に延びる。燐酸供給ノズル41の複数の吐出孔は、Y方向に等間隔に形成されている。
燐酸供給配管42は、燐酸供給ノズル41まで燐酸を流通させる。燐酸供給配管42を介して燐酸供給ノズル41に燐酸が供給されると、燐酸供給ノズル41の複数の吐出孔から外槽32に向けて燐酸が吐出される。この結果、外槽32に燐酸が供給される。
燐酸供給配管42には、開閉弁43が介装されている。開閉弁43は、例えば電磁弁である。開閉弁43は、制御装置110(制御部111)によって制御される。
開閉弁43は、燐酸供給配管42の流路を開閉して、燐酸供給配管42を流れる燐酸の流通を制御する。詳しくは、開閉弁43が開くと、燐酸が燐酸供給配管42を介して燐酸供給ノズル41まで流れる。この結果、燐酸供給ノズル41から燐酸が吐出される。一方、開閉弁43が閉じると、燐酸の流通が遮断されて、燐酸供給ノズル41による燐酸の吐出が停止する。
希釈液供給ライン5は、処理槽3内のエッチング液Eに希釈液を供給する。具体的には、希釈液供給ライン5は、希釈液を処理槽3に供給する。希釈液供給ライン5は、供給ラインの一例である。詳しくは、希釈液供給ライン5は、希釈液供給ノズル51と、希釈液供給配管52とを含む。
希釈液供給ノズル51は、処理槽3の上方に配置される。希釈液供給ノズル51は、中空の管状部材である。希釈液供給ノズル51には、複数の吐出孔が形成されている。本実施形態において、希釈液供給ノズル51はY方向に延びる。希釈液供給ノズル51の複数の吐出孔は、Y方向に等間隔に形成されている。
希釈液供給配管52は、希釈液供給ノズル51まで希釈液を流通させる。希釈液供給配管52を介して希釈液供給ノズル51に希釈液が供給されると、希釈液供給ノズル51の複数の吐出孔から希釈液が吐出される。本実施形態では、希釈液供給ライン5は、内槽31の側壁の上端面に向けて希釈液を吐出する。処理槽3では、内槽31の側壁の上端面を介して、内槽31から外槽32へ向かってエッチング液Eが流れている。したがって、内槽31の側壁の上端面に向けて吐出された希釈液は、エッチング液Eの流れによって外槽32に供給される。
本実施形態によれば、内槽31の側壁の上端面に向けて希釈液が吐出されるため、希釈液の供給直後に希釈液から水分が蒸発することを抑制できる。詳しくは、既に説明したように、エッチング液Eは120℃以上160℃以下に加熱されている。したがって、内槽31又は外槽32のエッチング液Eの液面に向けて希釈液が吐出されると、希釈液の供給直後に希釈液から水分が蒸発し易い。これに対し、内槽31の側壁の上端面に向けて希釈液を吐出することにより、内槽31又は外槽32のエッチング液Eの液面に向けて希釈液を吐出する場合と比べて、希釈液の供給直後に希釈液から水分が蒸発することを抑制できる。
なお、外槽32の側壁の上端の高さは、内槽31の側壁の上端の高さよりも高い。また、外槽32内のエッチング液Eは、エッチング液循環部8によって外槽32から排出される。したがって、エッチング液Eは処理槽3から溢れ出ない。
続いて図2を参照して、圧力測定部6と、第1バブリング部7と、エッチング液循環部8とを説明する。
圧力測定部6は、処理槽3に貯留されたエッチング液Eの所定の深さにおける圧力を測定する。本実施形態において、圧力測定部6は、気体供給配管61と、圧力センサ62とを有する。
気体供給配管61は気体を流通させる。気体は、例えば不活性ガスである。具体的には、気体は、窒素であり得る。気体供給配管61の先端は、外槽32のエッチング液E内に浸漬されており、気体供給配管61は、外槽32のエッチング液E内で気体を吹き出す。
圧力センサ62は、気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力を測定する。気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力は、処理槽3に貯留されたエッチング液Eの所定の深さにおける圧力を示す。本実施形態では、気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力は、外槽32に貯留されたエッチング液Eの所定の深さにおける圧力を示す。なお、以下の説明において、気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力、又は、外槽32に貯留されたエッチング液Eの所定の深さにおける圧力を、「気体の吐出圧」と記載する場合がある。
第1バブリング部7は、内槽31のエッチング液E内に浸漬されている複数の基板Wに向けて気泡を供給する。詳しくは、第1バブリング部7は、複数の気体供給ノズル71と、気体供給配管72とを含む。なお、本実施形態では、第1バブリング部7は、2本の気体供給ノズル71を含むが、第1バブリング部7は、1本の気体供給ノズル71を含んでもよいし、3本以上の気体供給ノズル71を含んでもよい。
複数の気体供給ノズル71は、内槽31の底部側に配置される。より具体的には、複数の気体供給ノズル71は、内槽31のエッチング液E内に浸漬された複数の基板Wよりも下方に位置するように、内槽31内に配置される。
気体供給ノズル71の各々は、中空の管状部材である。気体供給ノズル71のそれぞれには、図7を参照して後述する複数の吐出孔711が形成されており、各吐出孔711から気体が吹き出すことで、内槽31のエッチング液E内に浸漬されている複数の基板Wに向けて気泡が供給される。気体は、例えば不活性ガスである。具体的には、気体は、窒素であり得る。
気体供給配管72は、複数の気体供給ノズル71まで気体を流通させる。気体供給配管72が気体を流通させることにより、内槽31のエッチング液E内に浸漬されている複数の基板Wに向けて気泡が供給される。この結果、図7を参照して後述するように、エッチング液Eにおけるシリコン濃度の不均一性が抑制されて、基板Wを均一にエッチングすることができる。
エッチング液循環部8は、外槽32と内槽31との間でエッチング液Eを循環させる。詳しくは、エッチング液循環部8は、複数のエッチング液供給ノズル81と、循環配管82と、循環ポンプ83と、循環ヒータ84と、循環フィルタ85とを含む。なお、本実施形態では、エッチング液循環部8は、2本のエッチング液供給ノズル81を含むが、エッチング液循環部8は、1本のエッチング液供給ノズル81を含んでもよいし、3本以上のエッチング液供給ノズル81を含んでもよい。
複数のエッチング液供給ノズル81は、内槽31の底部側に配置される。エッチング液供給ノズル81の各々は、中空の管状部材である。エッチング液供給ノズル81のそれぞれには、複数の吐出孔が形成されている。本実施形態において、エッチング液供給ノズル81はY方向に延びる。エッチング液供給ノズル81の複数の吐出孔は、Y方向に等間隔に形成されている。
循環配管82の一端は外槽32に接続しており、外槽32から循環配管82にエッチング液Eが流入する。循環配管82は、複数のエッチング液供給ノズル81までエッチング液Eを流通させる。
循環ポンプ83は、循環配管82に介装されている。循環ポンプ83は、循環配管82を流通するようにエッチング液Eを流体の圧力により駆動する。この結果、循環配管82を介して外槽32から内槽31へエッチング液Eが流れる。具体的には、エッチング液Eが循環配管82を流通して、エッチング液供給ノズル81の吐出孔から内槽31内にエッチング液Eが吐出される。つまり、エッチング液供給ノズル81から内槽31内にエッチング液Eが供給される。また、エッチング液供給ノズル81から内槽31内にエッチング液Eが吐出されることにより、内槽31の側壁の上端面を介して、内槽31から外槽32へ向かってエッチング液Eが流れる。
循環ヒータ84、及び循環フィルタ85は、循環配管82に介装されている。循環ヒータ84は、循環配管82を流れるエッチング液Eを加熱する。詳しくは、循環ヒータ84は、120℃以上160℃以下の温度でエッチング液Eを加熱する。循環フィルタ85は、循環配管82を流通するエッチング液Eから異物を除去する。
続いて、図3を参照して希釈液供給ライン5の構成について更に説明する。図3は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す図である。図3に示すように、希釈液供給ライン5は、流量制御弁53と、最大流量調整弁54と、開閉弁55とを更に含む。流量制御弁53、最大流量調整弁54、及び開閉弁55は、希釈液供給配管52に介装されている。
流量制御弁53は、希釈液供給配管52を流通する希釈液の流量を制御する。つまり、流量制御弁53は、希釈液供給ノズル51からエッチング液Eに供給される希釈液の流量を制御する。流量制御弁53は、例えば、オリフィスの開度を調整して希釈液の流量を制御する。流量制御弁53は、例えばセルフコントロールバルブであり得る。
最大流量調整弁54は、希釈液供給配管52を流通する希釈液の最大流量を調整する。最大流量調整弁54は、例えば、ニードル弁である。なお、以下の説明において、希釈液供給配管52を流通する希釈液の最大流量を、「希釈液の最大流量」と記載する場合がある。希釈液の最大流量は、流量制御弁53によって制御される希釈液の最大流量が、最大流量調整弁54によって調整される希釈液の最大流量と同等以上である場合、最大流量調整弁54の開口率に応じた流量となる。つまり、希釈液の最大流量は、最大流量調整弁54によって調整される希釈液の最大流量によって規制される。一方、最大流量調整弁54によって調整される希釈液の最大流量が、流量制御弁53によって制御される希釈液の最大流量よりも大きい場合、希釈液の最大流量は、流量制御弁53によって制御される希釈液の最大流量によって規制される。
開閉弁55は、例えば電磁弁である。開閉弁55は、制御装置110(制御部111)によって制御される。開閉弁55は、希釈液供給配管52の流路を開閉して、希釈液供給配管52を流れる希釈液の流通を制御する。詳しくは、開閉弁55が開くと、希釈液が希釈液供給配管52を介して希釈液供給ノズル51まで流れる。この結果、希釈液供給ノズル51から希釈液が吐出される。一方、開閉弁55が閉じると、希釈液の流通が遮断されて、希釈液供給ノズル51による希釈液の吐出が停止する。
続いて図3を参照して本実施形態の基板処理装置100の構成を説明する。図3に示すように、基板処理装置100は、コントローラ140と、駆動部160とを更に備える。
コントローラ140は、燐酸濃度に対応する物理量(エッチング液Eにおける燐酸の濃度に対応する物理量)が目標値となるように、駆動部160を介して、流量制御弁53の開度を制御する。つまり、コントローラ140は、燐酸濃度に対応する物理量が目標値となるように、希釈液供給ノズル51からエッチング液Eに供給される希釈液の流量を制御する。エッチング液Eに供給される希釈液の流量は、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータの一例である。コントローラ140は、パラメータ制御部の一例である。
本実施形態において、コントローラ140は、エッチング液Eにおける燐酸の比重値が目標値となるように希釈液の流量を制御する。なお、以下の説明において、エッチング液Eにおける燐酸の比重値を、「燐酸の比重値」と記載する場合がある。
詳しくは、コントローラ140は、圧力センサ62による測定の結果に基づいて、燐酸の比重値を測定する。そして、コントローラ140は、圧力センサ62による測定の結果(燐酸の比重値)が目標値となるように希釈液の流量を制御する。例えば、コントローラ140は、圧力センサ62による測定の結果に基づいて、PID制御値を駆動部160に出力する。具体的には、コントローラ140は、PID制御値を示す電流信号を駆動部160に出力する。
なお、燐酸の比重値と気体の吐出圧(気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力)との間には相関関係がある。具体的には、燐酸の比重値が大きいほど、エッチング液Eの単位体積当たりの重量が大きくなり、気体の吐出圧が大きくなる。したがって、圧力センサ62による測定の結果に基づいて、燐酸の比重値を測定することができる。
駆動部160は、コントローラ140によって制御されて、流量制御弁53を駆動する。その結果、燐酸の比重値が目標値となるように流量制御弁53の開度が制御される。駆動部160は、例えば、電空レギュレータである。
ここで、制御装置110について更に説明する。図2を参照して説明したように、制御装置110の記憶部112は、燐酸濃度に対応する物理量の目標値を示すデータを記憶している。本実施形態では、記憶部112は、燐酸濃度に対応する物理量の目標値として、燐酸の比重値に対する目標値を示すデータを記憶する。制御装置110(制御部111)は、記憶部112に記憶されている目標値をコントローラ140に設定する。
本実施形態において、制御装置110(記憶部112)は、燐酸濃度に対応する物理量の目標値として、第1目標値と、第1目標値よりも低い第2目標値とを記憶している。制御装置110(制御部111)は、基板Wのエッチング処理中に、燐酸濃度に対応する物理量の目標値を第1目標値から第2目標値に変更する。制御装置110は、変更部の一例である。
具体的には、第1目標値及び第2目標値は、燐酸の比重値に対する目標値である。以下、燐酸の比重値に対する第1目標値を「第1目標値TV1」と記載する場合がある。また、燐酸の比重値に対する第2目標値を「第2目標値TV2」と記載する場合がある。
第2目標値TV2は、第1目標値TV1よりも低い値を示す。制御装置110(制御部111)は、基板Wのエッチング処理の開始前に、コントローラ140に第1目標値TV1を設定する。その後、制御装置110(制御部111)は、コントローラ140に第2目標値TV2を設定する。例えば、制御装置110(制御部111)は、基板Wのエッチング処理が開始してから所定時間が経過した後、コントローラ140に第2目標値TV2を設定する。
ここで図4を参照して、本実施形態の基板処理装置100によって処理される基板Wについて説明する。図4は、本実施形態の基板処理装置100によって処理される前の基板Wを示す図である。本実施形態の基板処理装置100によって処理される基板Wは、例えば、三次元フラッシュメモリー(例えば三次元NANDフラッシュメモリー)に用いられる。
図4に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Mとを含む。基材Sは、XZ平面に広がる薄膜状である。基材Sは、例えば、シリコンからなる。積層構造Mは、基材Sの上面に形成される。積層構造Mは、基材Sの上面からY方向に延びるように形成される。積層構造Mは、Y方向に沿って交互に積層された酸化膜Maと窒化膜Mbとを含む。酸化膜Maは、例えば、シリコン酸化膜である。窒化膜Mbは、例えば、シリコン窒化膜である。酸化膜Maのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。窒化膜Mbのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。
積層構造Mは、1以上の凹部Rを有する。凹部Rは、積層構造Mの上面から基材Sにまで達しており、基材Sの上面の一部が凹部Rから露出している。また、凹部Rの界面から、酸化膜Ma及び窒化膜Mbの側面が露出している。凹部Rは、基板Wが半導体製品に用いられる場合、例えばトレンチ又はホールとして機能する。
図3を参照して説明した第2目標値TV2は、第1目標値TV1と比べて、窒化膜Mbのエッチング速度が大きくなり、酸化膜Maのエッチング速度が小さくなる値を示す。詳しくは、第1目標値TV1は、窒化膜Mbのエッチング速度が酸化膜Maのエッチング速度と比べて大きくなる値を示す。第2目標値TV2は、第1目標値TV1よりも低い値であるため、燐酸の比重値が第1目標値TV1から第2目標値TV2に変更されると、窒化膜Mbのエッチング速度が大きくなり、酸化膜Maのエッチング速度が小さくなる。
続いて図4及び図5を参照して、本実施形態の基板処理装置100によるエッチング処理を説明する。図5は、本実施形態の基板処理装置100によって処理された後の基板Wの一例を示す図である。
基板Wに対するエッチング処理が開始すると、エッチング液Eが凹部Rに浸入する。その結果、エッチング液Eが、凹部Rの界面において酸化膜Ma及び窒化膜Mbに接触する。
基板Wに対するエッチング処理の開始時には、コントローラ140に、燐酸の比重値に対する目標値として第1目標値TV1が設定されている。したがって、エッチング液Eにおける燐酸の比重値が第1目標値TV1となるように希釈液の流量が制御される。
既に説明したように、第1目標値TV1は、窒化膜Mbのエッチング速度が酸化膜Maのエッチング速度と比べて大きくなる値を示す。また、第1目標値TV1は、第2目標値TV2と比べて、窒化膜Mbのエッチング速度が小さくなり、酸化膜Maのエッチング速度が大きくなる値を示す。したがって、エッチング液Eにより、窒化膜Mb及び酸化膜Maがエッチングされる。具体的には、窒化膜Mb及び酸化膜Maは、凹部Rの界面側からエッチング液Eによって徐々に溶解する。但し、第1目標値TV1は、窒化膜Mbのエッチング速度が酸化膜Maのエッチング速度と比べて大きくなる値を示すため、酸化膜Maのエッチング量は、窒化膜Mbのエッチング量よりも少ない。
なお、以下の説明において、燐酸の比重値が第1目標値TV1となるように希釈液の流量が制御される際のエッチング処理を、「第1エッチング処理」と記載する場合がある。
その後、制御装置110によって燐酸の比重値に対する目標値が第1目標値TV1から第2目標値TV2に変更される。つまり、コントローラ140に、燐酸の比重値に対する目標値として第2目標値TV2が設定される。したがって、エッチング液Eにおける燐酸の比重値が第2目標値TV2となるように希釈液の流量が制御される。
既に説明したように、第2目標値TV2は、第1目標値TV1と比べて、窒化膜Mbのエッチング速度が大きくなり、酸化膜Maのエッチング速度が小さくなる値を示す。したがって、エッチング液Eにより、主として窒化膜Mbがエッチングされる。
なお、以下の説明において、燐酸の比重値が第2目標値TV2となるように希釈液の流量が制御される際のエッチング処理を、「第2エッチング処理」と記載する場合がある。
第2エッチング処理は、窒化膜Mbの略全部分が溶解するまで続けられる。換言すると、第2エッチング処理は、積層構造Mから窒化膜Mbが略無くなるまで続けられる。
以上説明した第1エッチング処理及び第2エッチング処理を実行することにより、図5に示すように、積層構造Mを任意の形状に制御できる。したがって、基板Wをより複雑な形状に加工できる。具体的には、第1エッチング処理により酸化膜Maがエッチングされる。酸化膜Maは、凹部Rの界面側からエッチング液Eによって徐々に溶解するため、図5に示すように、酸化膜Maの形状は、凹部R側が先細りとなる。
続いて図6を参照して圧力測定部6の構成を説明する。図6は、圧力測定部6の構成を示す図である。図6に示すように、圧力測定部6は、レギュレータ63と、開閉弁64と、三方弁65と、分岐管66とを更に含む。また、気体供給配管61は、上流側配管61aと、下流側配管61bとを含む。
レギュレータ63は、開閉弁64よりも上流側において気体供給配管61に介装されている。より具体的には、レギュレータ63は上流側配管61aに介装されている。レギュレータ63は、レギュレータ63から気体供給配管61に流入する気体の圧力を一定の圧力に調整する。
開閉弁64は、三方弁65よりも上流側において気体供給配管61に介装されている。より具体的には、開閉弁64は上流側配管61aに介装されている。開閉弁64は、例えば電磁弁である。開閉弁64は、制御装置110(制御部111)によって制御される。開閉弁64は、気体供給配管61の流路を開閉して、気体供給配管61を流れる気体の流通を制御する。詳しくは、開閉弁64が開くと、気体が気体供給配管61を流通する。この結果、気体供給配管61の先端からエッチング液E内に気体が吐出される。一方、開閉弁64が閉じると、気体の流通が遮断されて、気体供給配管61の先端からの気体の吐出が停止する。
三方弁65は、気体供給配管61に介装されている。また、三方弁65には、分岐管66の一端が接続している。より具体的には、三方弁65には、上流側配管61aの下流端、下流側配管61bの上流端、及び分岐管66の一端が接続している。分岐管66の他端には、圧力センサ62が接続している。
三方弁65は、制御装置110(制御部111)によって制御される。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、三方弁65を制御して、上流側配管61aの下流端と下流側配管61bの上流端とを連通させ、下流側配管61bの下流端(気体供給配管61の先端)から気体を吐出させる。その後、制御装置110(制御部111)は、気体の吐出圧(気体供給配管61の先端から気体を吐出させる圧力)の測定時に、三方弁65を制御して、下流側配管61bの上流端と分岐管66の一端とを連通させる。この結果、圧力センサ62によって気体の吐出圧が測定される。
続いて図7を参照して第1バブリング部7の構成を更に説明する。図7は、第1バブリング部7及び処理槽3の構成を示す図である。図7に示すように、第1バブリング部7は、フィルタ73と、ヒータ74と、排気管75とを更に含む。フィルタ73及びヒータ74は、気体供給配管72に介装されている。
フィルタ73は、気体供給配管72を流通する気体から異物を除去する。ヒータ74は、気体供給配管72を流通する気体を加熱して、気体供給配管72を流通する気体の温度を調整する。ヒータ74は、制御装置110(制御部111)によって制御される。気体供給配管72を流通する気体の温度を調整することにより、燐酸の比重値(エッチング液Eにおける燐酸の比重値)を制御することができる。詳しくは、気体供給ノズル71から内槽31内のエッチング液Eに供給される気泡の温度を調整することにより、燐酸の比重値を制御することができる。
気体供給配管72は、気体供給ノズル71の一端に接続して、気体供給ノズル71に気体を供給する。排気管75は、気体供給ノズル71の他端に接続する。排気管75には、気体供給ノズル71の吐出孔711から吐出されずに気体供給ノズル71を流通した気体が流入する。
続いて、気体供給ノズル71について説明する。図7に示すように、複数の吐出孔711は、気体供給ノズル71の上面部に形成される。本実施形態において、気体供給ノズル71はY方向に延びる。複数の吐出孔711は、Y方向に等間隔に形成されている。
複数の吐出孔711から吐出される気泡は、複数の基板Wに向けて供給される。詳しくは、気泡は、複数の基板Wの表面に沿って上方へ移動する。この結果、気泡により、各基板Wの表面に接触するエッチング液Eが新鮮なエッチング液Eに効果的に置換される。したがって、拡散現象によって、基板Wの表面に形成されている凹部R(図4)内のエッチング液Eを新鮮なエッチング液Eに効果的に置換できる。よって、凹部Rの界面に露出する酸化膜Ma及び窒化膜Mbを、凹部Rの界面に対して近い箇所から遠い箇所まで、エッチング液Eによって効果的にエッチングすることができる。
更に、図4を参照して説明したように、基板Wはシリコン窒化膜(窒化膜Mb)を有する。燐酸を含有する液体(エッチング液E)によってシリコン窒化膜(窒化膜Mb)がエッチングされると、反応物としてシリコンが生成される。シリコンはエッチング液Eに溶出する。基板Wの表面が立体的な凹凸形状を有する場合、その形状に起因して、溶出したシリコンの濃度が不均一となる。これに対し、本実施形態によれば、基板Wの表面に沿って気泡が上方へ移動する。この結果、エッチング液Eにおけるシリコン濃度の不均一性が抑制されて、基板Wを均一にエッチングすることができる。
続いて図7を参照して処理槽3の構成を更に説明する。図7に示すように、処理槽3は、槽ヒータ33を更に含む。槽ヒータ33は、内槽31の底面に配置されて、内槽31を加熱する。例えば、槽ヒータ33は、120℃以上160℃以下の温度で内槽31を加熱する。
続いて図8を参照して制御装置110の構成について更に説明する。図8は、制御装置110の構成を示すブロック図である。図8に示すように、制御装置110は、入力部113を更に含む。
入力部113は、作業者によるデータの入力を受け付ける。入力部113は、作業者が操作するユーザーインターフェース装置である。入力部113は、作業者の操作に応じたデータを制御部111に入力する。入力部113は、例えば、キーボード及びマウスを有する。入力部113は、タッチセンサーを有してもよい。
入力部113は、例えば、レシピデータにおいて作業者による設定が可能なパラメータの設定値の入力を受け付ける。また、入力部113は、燐酸濃度に対応する物理量の目標値の入力を受け付ける。本実施形態では、入力部113は、第1目標値TV1及び第2目標値TV2の入力を受け付ける。更に、入力部113は、図9を参照して後述する比重値変化期間SGVの設定値の入力を受け付ける。
続いて図9を参照して、エッチング処理時における燐酸の比重値の変化について説明する。図9は、本実施形態の基板処理装置100によるエッチング処理時における燐酸の比重値の変化の一例を示す図である。
図9において、縦軸は、燐酸の比重値を示す。横軸は、処理時間を示す。また、図9において、破線は、コントローラ140によって測定される燐酸の比重値を示す。実線は、燐酸の比重値に対する目標値を示す。なお、以下の説明において、コントローラ140によって測定される燐酸の比重値を、「測定値」と記載する場合がある。
図9に示すように、コントローラ140に第1目標値TV1が設定されているとき、燐酸の比重値(測定値)が第1目標値TV1となるように希釈液の流量が制御される。エッチング処理中に、燐酸の比重値に対する目標値が、第1目標値TV1から第2目標値TV2に変更されると、燐酸の比重値(測定値)が第2目標値TV2となるように希釈液の流量が制御される。
図5を参照して説明した酸化膜Maの形状は、燐酸の比重値(測定値)が第1目標値TV1から第2目標値TV2に変化するまでの期間SGVの長さに依存する。以下、燐酸の比重値(測定値)が第1目標値TV1から第2目標値TV2に変化するまでの期間SGVを、「比重値変化期間SGV」と記載する場合がある。比重値変化期間SGVの長さは、例えば、希釈液の流量によって制御される。
本実施形態では、比重値変化期間SGVの設定値が記憶部112(図8)に記憶される。具体的には、入力部113(図8)が、比重値変化期間SGVの設定値の入力を受け付ける。制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの長さが設定値と一致するように、例えば希釈液の流量を調整する。作業者は、例えば、比重値変化期間SGVの長さが比較的長くなるように、比重値変化期間SGVの設定値を入力することができる。比重値変化期間SGVの長さを比較的長くすることにより、希釈液の流量が急峻に増加することを抑制できる。この結果、基板Wの面内における窒化膜Mbの均一性を、希釈液の流量が急峻に増加する場合と比べて向上させることができる。
続いて図10を参照して本実施形態の基板処理方法を説明する。図10は、本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。本実施形態の基板処理方法は、図1~図9を参照して説明した基板処理装置100によって実施されてもよい。以下、図1~図9を参照して説明した基板処理装置100によって実施される基板処理方法を説明する。図10に示すように、本実施形態の基板処理方法は、ステップS1~ステップS5を含む。
まず、基板Wのエッチング処理が開始されると、複数の基板Wがエッチング液Eに浸漬される(ステップS1)。具体的には、基板保持部130が処理位置まで移動する。この結果、基板保持部130に保持されている複数の基板Wが内槽31内に収容されて、内槽31のエッチング液E内に複数の基板Wが浸漬される。
複数の基板Wがエッチング液Eに浸漬されると、第1エッチング処理が行われる(ステップS2)。このとき、燐酸濃度(エッチング液Eにおける燐酸の濃度)に対応する物理量が第1目標値となるように、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータが制御される。本実施形態では、エッチング液Eに供給される希釈液の流量が制御される。具体的には、燐酸の比重値が第1目標値TV1となるように、コントローラ140が、駆動部160を介して流量制御弁53を制御する。
複数の基板Wがエッチング液Eに浸漬されてから所定時間が経過すると、制御装置110(制御部111)が、燐酸濃度に対応する物理量の目標値を第1目標値から第2目標値へ変更する(ステップS3)。本実施形態では、制御装置110(制御部111)は、燐酸の比例値に対する目標値を第1目標値TV1から第2目標値TV2に変更する。より具体的には、制御装置110(制御部111)は、コントローラ140に設定されている目標値を第1目標値TV1から第2目標値TV2に変更する。
燐酸濃度に対応する物理量の目標値が第1目標値から第2目標値へ変更されると、第2エッチング処理が行われる(ステップS4)。このとき、燐酸濃度に対応する物理量が第2目標値となるように、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータが制御される。本実施形態では、エッチング液Eに供給される希釈液の流量が制御される。具体的には、燐酸の比重値が第2目標値TV2となるように、コントローラ140が、駆動部160を介して流量制御弁53を制御する。
燐酸濃度に対応する物理量の目標値が第1目標値から第2目標値へ変更されてから所定時間が経過すると、複数の基板Wがエッチング液Eから引き上げられて(ステップS5)、図10に示す処理が終了する。具体的には、基板保持部130が処理位置から退避位置まで移動する。この結果、基板保持部130に保持されている複数の基板Wが内槽31内のエッチング液Eから引き上げられる。
以上、図1~図10を参照して本発明の実施形態1を説明した。本実施形態によれば、積層構造Mを、複数の平坦な酸化膜Maが櫛状に配列された構造と比べて、より複雑な形状に加工することができる。具体的には、酸化膜Maの形状を先細り形状とすることができる。
また、本実施形態によれば、酸化膜Maをエッチングすることができる。したがって、主として窒化膜Mbをエッチングする場合と比べて、酸化膜Maの厚みが増すことを抑制できる。
詳しくは、エッチング処理においてエッチング液Eに溶解したシリコンは、酸化膜Maの表面に析出することがある。シリコンが酸化膜Maの表面に析出することにより、酸化膜Maの厚みが増加する。これに対し、本実施形態によれば、第1エッチング処理により酸化膜Maをエッチングすることができるので、主として窒化膜Mbをエッチングする場合と比べて、酸化膜Maの厚みの増加を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、比重値変化期間SGVの長さを設定値に制御することにより、酸化膜Maの形状を制御することができる。具体的には、比重値変化期間SGVの設定値が比較的小さい場合、図11(a)に示すように、酸化膜Maの先端の幅MWが大きくなり、凹部R(図5)の界面から奥へ向かう方向(Z方向)における酸化膜Maの勾配Mθが小さくなる。一方、比重値変化期間SGVの設定値が比較的大きい場合、図11(b)に示すように、酸化膜Maの先端の幅MWが小さくなり、凹部R(図5)の界面から奥へ向かう方向(Z方向)における酸化膜Maの勾配Mθが大きくなる。
なお、本実施形態では、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御されたが、比重値変化期間SGVの長さは制御されなくてもよい。
[実施形態2]
続いて図1~図8及び図10~図12を参照して本発明の実施形態2について説明する。但し、実施形態1と異なる事項を説明し、実施形態1と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態2では、実施形態1と異なり、比重値変化期間SGVの長さは設定値に制御されない。
図11は、本実施形態の基板処理装置100によるエッチング処理時における燐酸の比重値の変化の一例を示す図である。図11において、縦軸は、燐酸の比重値を示す。横軸は、処理時間を示す。また、図11において、破線は、測定値(コントローラ140によって測定される燐酸の比重値)を示す。実線は、燐酸の比重値に対する目標値を示す。
図11に示すように、本実施形態では、第1目標値TV1から第2目標値TV2まで段階的に目標値が変化する。詳しくは、本実施形態において、制御装置110の入力部113(図8)は、第1目標値TV1と第2目標値TV2とに加えて、複数の中間目標値TX(図11)の入力を受け付ける。複数の中間目標値TXは、第1目標値TV1と第2目標値TV2との間の値を示す。また、複数の中間目標値TXは、互いに異なる値を示す。
本実施形態では、図11に示すように、複数の中間目標値TXは、第1中間目標値TX1~第3中間目標値TX3を含む。第1中間目標値TX1~第3中間目標値TX3は、この順に小さくなる。
制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理中に(図10のステップS4)、コントローラ140に設定する目標値を、第1中間目標値TX1、第2中間目標値TX2、第3中間目標値TX3、第2目標値TV2の順に変更する(図11)。つまり、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理中に、燐酸の比重値に対する目標値を第1目標値TV1から第2目標値TV2まで段階的に変化させる。
本実施形態によれば、中間目標値TXの数に応じて、比重値変化期間SGVの長さが変化する。具体的には、中間目標値TXの数が増えるほど、比重値変化期間SGVの長さが長くなる。
また、本実施形態によれば、中間目標値TXの数に応じて、比重値変化期間SGVの長さを制御できるため、実施形態1と同様に、中間目標値TXの数に応じて、積層構造Mの形状を制御することができる。
以上、図1~図8及び図10~図12を参照して本発明の実施形態2について説明した。本実施形態によれば、比重値変化期間SGVの長さを制御して、積層構造Mの形状を制御することができる。
なお、本実施形態では、中間目標値TXの数を任意に変更できたが、燐酸の比重値(測定値)を各中間目標値TXで維持する時間の長さ(維持時間の長さ)が任意に設定されてもよい。この場合、中間目標値TXの数は一定数であってもよいし、任意に変更されてもよい。
また、本実施形態では、目標値を段階的に変化させたが、目標値を滑らかに変化させてもよい。
[実施形態3]
続いて図1、図2、及び図4~図13を参照して本発明の実施形態3について説明する。但し、実施形態1、2と異なる事項を説明し、実施形態1、2と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態3は、希釈液供給ライン5の構成が実施形態1、2と異なる。なお、実施形態3では、実施形態1と同様に、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御される。
図13は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す図である。図13に示すように、希釈液供給ライン5は、希釈液供給ノズル51と、第1希釈液供給配管52aと、第2希釈液供給配管52bと、流量制御弁53と、第1最大流量調整弁54aと、第2最大流量調整弁54bと、第1開閉弁55aと、第2開閉弁55bとを含む。
第1希釈液供給配管52aには、流量制御弁53と、第1最大流量調整弁54aと、第1開閉弁55aとが介装されている。詳しくは、流量制御弁53、第1最大流量調整弁54a、及び第1開閉弁55aは、第1希釈液供給配管52aの上流側から下流側に向かって、この順に配置される。また、希釈液供給ノズル51は、第1希釈液供給配管52aの一端に接続している。
第2希釈液供給配管52bには、第2最大流量調整弁54bと、第2開閉弁55bとが介装されている。また、第2希釈液供給配管52bの一端は、流量制御弁53と第1最大流量調整弁54aとの間で第1希釈液供給配管52aに接続している。第2希釈液供給配管52bの他端は、第1開閉弁55aと希釈液供給ノズル51との間で第1希釈液供給配管52aに接続している。
流量制御弁53は、第1希釈液供給配管52a及び第2希釈液供給配管52bを流通する希釈液の流量を制御する。つまり、流量制御弁53は、希釈液供給ノズル51からエッチング液Eに供給される希釈液の流量を制御する。流量制御弁53は、例えば、オリフィスの開度を調整して希釈液の流量を制御する。流量制御弁53は、例えばセルフコントロールバルブであり得る。
第1最大流量調整弁54aは、第1希釈液供給配管52aを流通する希釈液の最大流量を調整する。同様に、第2最大流量調整弁54bは、第2希釈液供給配管52bを流通する希釈液の最大流量を調整する。第1最大流量調整弁54a及び第2最大流量調整弁54bは、例えば、ニードル弁である。なお、以下の説明において、第1希釈液供給配管52aを流通する希釈液の最大流量を、「第1最大流量」と記載する場合がある。同様に、第2希釈液供給配管52bを流通する希釈液の最大流量を、「第2最大流量」と記載する場合がある。
本実施形態において、第1最大流量は、第1最大流量調整弁54aの開口率に応じた流量となる。また、第2最大流量は、第2最大流量調整弁54bの開口率に応じた流量となる。第2最大流量は、第1最大流量よりも大きい値を示す。
第1開閉弁55a及び第2開閉弁55bは、例えば電磁弁である。第1開閉弁55a及び第2開閉弁55bは、制御装置110(制御部111)によって制御される。具体的には、制御装置110(制御部111)は、希釈液供給ノズル51から希釈液を吐出する際に、第1開閉弁55a及び第2開閉弁55bのうちの一方を開き、他方を閉じる。
第1開閉弁55aは、第1希釈液供給配管52aの流路を開閉して、第1希釈液供給配管52aを流れる希釈液の流通を制御する。詳しくは、第1開閉弁55aが開くと、希釈液が第1希釈液供給配管52aを介して希釈液供給ノズル51まで流れる。この結果、希釈液供給ノズル51から希釈液が吐出される。一方、第1開閉弁55aが閉じると、第1希釈液供給配管52aを流れる希釈液の流通が遮断される。
第2開閉弁55bは、第2希釈液供給配管52bの流路を開閉して、第2希釈液供給配管52bを流れる希釈液の流通を制御する。詳しくは、第2開閉弁55bが開くと、希釈液が第2希釈液供給配管52bを介して希釈液供給ノズル51まで流れる。この結果、希釈液供給ノズル51から希釈液が吐出される。一方、第2開閉弁55bが閉じると、第2希釈液供給配管52bを流れる希釈液の流通が遮断される。
本実施形態において、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理(図10のステップS4)の開始前に、あるいは、第2エッチング処理中に、希釈液の最大流量を第1最大流量と第2最大流量とのうちから選択して、比重値変化期間SGVの長さ(図9)を制御する。具体的には、作業者が、制御装置110の入力部113(図8)を操作して、第1最大流量と第2最大流量とのうちの一方を選択する指示(設定値)を入力する。制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理(図10のステップS4)の開始前に、あるいは、第2エッチング処理中に、作業者からの指示(設定値)に基づいて、希釈液の最大流量を第1最大流量と第2最大流量とのうちから選択する。
詳しくは、希釈液の最大流量が大きいほど、比重値変化期間SGVの長さが短くなる。したがって、作業者は、比重値変化期間SGVの長さを比較的短くする場合、第2最大流量を選択する。この結果、制御装置110(制御部111)は、第1開閉弁55aを閉じ、第2開閉弁55bを開閉して、エッチング液Eへの希釈液の供給を制御する。一方、作業者は、比重値変化期間SGVの長さを比較的長くする場合、第1最大流量を選択する。この結果、制御装置110(制御部111)は、第2開閉弁55bを閉じ、第1開閉弁55aを開閉して、エッチング液Eへの希釈液の供給を制御する。
なお、制御装置110(制御部111)は、燐酸の比重値を第1目標値TV1又は第2目標値TV2に維持する際、第2開閉弁55bを閉じ、第1開閉弁55aを開閉して、エッチング液Eへの希釈液の供給を制御する。
以上、図1、図2、及び図4~図13を参照して本発明の実施形態3について説明した。本実施形態によれば、希釈液の最大流量を選択して、比重値変化期間SGVの長さを制御することができる。したがって、実施形態1と同様に、積層構造Mの形状を制御することができる。
なお、本実施形態において、基板処理装置100は、希釈液の供給ラインを2つ備えたが(第1最大流量の供給ラインと第2最大流量の供給ライン)、基板処理装置100は、互いに最大流量が異なる希釈液の供給ラインを3つ以上備えてもよい。
また、本実施形態において、作業者は、制御装置110の入力部113(図8)を操作して、第1最大流量と第2最大流量とのうちの一方を選択する指示(設定値)を入力したが、制御装置110は、第1最大流量に対応する比重値変化期間SGVの設定値と、第2最大流量に対応する比重値変化期間SGVの設定値とのうちの一方を選択する指示を入力する構成であってもよい。
[実施形態4]
続いて図1、図2、図4~図12、及び図14を参照して本発明の実施形態4について説明する。但し、実施形態1~3と異なる事項を説明し、実施形態1~3と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態4は、希釈液供給ライン5の構成が実施形態1~3と異なる。なお、実施形態4では、実施形態1と同様に、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御される。
図14は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す図である。図14に示すように、希釈液供給ライン5は、希釈液供給ノズル51と、希釈液供給配管52と、流量制御弁53と、最大流量制御弁54cと、開閉弁55とを含む。
最大流量制御弁54cは希釈液供給配管52に介装されている。最大流量制御弁54cは、希釈液供給配管52を流通する希釈液の最大流量を制御する。最大流量制御弁54cは、例えば、電動式のニードル弁である。最大流量制御弁54cは、制御装置110(制御部111)によって制御される。
制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値に基づいて最大流量制御弁54cの開口率を調整することにより、希釈液の最大流量を制御する。本実施形態において、希釈液の最大流量は、最大流量制御弁54cの開口率に応じた流量となる。
制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理(図10のステップS4)の開始前に、あるいは、第2エッチング処理中に、比重値変化期間SGVの設定値に基づいて最大流量制御弁54cの開口率を調整することにより、比重値変化期間SGVの長さ(図9)を制御する。
詳しくは、希釈液の最大流量が大きいほど、比重値変化期間SGVの長さが短くなる。したがって、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的小さい場合、最大流量制御弁54cの開口率を比較的大きくする。一方、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的大きい場合、最大流量制御弁54cの開口率を比較的小さくする。
以上、図1、図2、図4~図12、及び図14を参照して本発明の実施形態4について説明した。本実施形態によれば、希釈液の最大流量を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御することができる。したがって、実施形態1と同様に、積層構造Mの形状を制御することができる。
なお、本実施形態では、希釈液供給ライン5に最大流量制御弁54cが設けられたが、最大流量制御弁54cに代えてマスフローコントローラーが設けられてもよい。
[実施形態5]
続いて図1、図2、図4~図12、及び図15を参照して本発明の実施形態5について説明する。但し、実施形態1~4と異なる事項を説明し、実施形態1~4と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態5は、基板処理装置100の構成が実施形態1~4と異なる。なお、実施形態5では、実施形態1と同様に、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御される。
図15は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す図である。図15に示すように、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値に基づいて駆動部160の最大出力を調整することにより、希釈液の最大流量を制御する。詳しくは、駆動部160の最大出力が小さいほど、希釈液の最大流量が小さくなる。
本実施形態において、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理(図10のステップS4)の開始前に、あるいは、第2エッチング処理中に、比重値変化期間SGVの設定値に基づいて駆動部160の最大出力を調整することにより、比重値変化期間SGVの長さ(図9)を制御する。
詳しくは、駆動部160の最大出力が小さいほど、比重値変化期間SGVの長さが長くなる。したがって、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的小さい場合、駆動部160の最大出力を比較的大きくする。一方、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的大きい場合、駆動部160の最大出力を比較的小さくする。
以上、図1、図2、図4~図12、及び図15を参照して本発明の実施形態5について説明した。本実施形態によれば、駆動部160の最大出力を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御することができる。したがって、実施形態1と同様に、積層構造Mの形状を制御することができる。
なお、本実施形態において、制御装置110(制御部111)は駆動部160の最大出力を調整したが、制御装置110(制御部111)は、コントローラ140から駆動部160に出力される電流信号の電流値(PID制御値)を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御してもよい。
[実施形態6]
続いて図1、図3~図12、及び図16を参照して本発明の実施形態6について説明する。但し、実施形態1~5と異なる事項を説明し、実施形態1~5と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態6は、オートカバー21の開度を調整して比重値変化期間SGVの長さを制御する点で実施形態1~5と異なる。なお、実施形態6では、実施形態1と同様に、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御される。
図16は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す断面図である。本実施形態において、制御装置110(制御部111)は、燐酸の比重値(測定値)が第1目標値TV1から第2目標値TV2まで変化する際のオートカバー21の開度を調整して、エッチング液Eから蒸発する水分の量を制御する。詳しくは、制御装置110(制御部111)は、オートカバー21の開度を調整して、単位時間当たりにエッチング液Eから水分が蒸発する量を制御する。以下、単位時間当たりにエッチング液Eから水分が蒸発する量を、「水分の蒸発量」と記載する場合がある。
具体的には、図16に示すように、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理中にオートカバー21を開状態にする。オートカバー21が開状態になると、第1カバー片22と第2カバー片23との間に隙間Gが形成される。隙間Gの幅GWが大きいほど、水分の蒸発量が増える。そして、水分の蒸発量が増えると、比重値変化期間SGVが長くなる。したがって、隙間Gの幅GWが大きいほど、比重値変化期間SGVが長くなる。
本実施形態において、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理(図10のステップS4)の開始前に、あるいは、第2エッチング処理中に、比重値変化期間SGVの設定値に基づいて隙間Gの幅GWの大きさ(オートカバー21の開度)を調整することにより、比重値変化期間SGVの長さ(図9)を制御する。
詳しくは、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的小さい場合、隙間Gの幅GWを比較的狭くして(オートカバー21の開度を比較的小さくして)、水分の蒸発量を抑える。この結果、比重値変化期間SGVの長さが比較的短くなる。一方、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が比較的大きい場合、隙間Gの幅GWを比較的広くして(オートカバー21の開度を比較的大きくして)、エッチング液Eからの水分の蒸発を促進させる。この結果、比重値変化期間SGVの長さが比較的長くなる。
以上、図1、図3~図12、及び図16を参照して本発明の実施形態6について説明した。本実施形態によれば、水分の蒸発量を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御することができる。したがって、実施形態1と同様に、積層構造Mの形状を制御することができる。
[実施形態7]
続いて図1、図3~図12、図17、及び図18を参照して本発明の実施形態7について説明する。但し、実施形態1~6と異なる事項を説明し、実施形態1~6と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態7は、基板処理装置100の構成が実施形態1~6と異なる。なお、実施形態7では、実施形態1と同様に、比重値変化期間SGVの長さが設定値に制御される。
図17は、本実施形態の基板処理装置100の構成を示す断面図である。本実施形態において、基板処理装置100は、第2バブリング部9を更に備える。第2バブリング部9は、外槽32内のエッチング液Eに気泡を供給する。外槽32内のエッチング液Eに供給された気泡は、エッチング液循環部8により、エッチング液Eと共に内槽31へ供給される。この結果、内槽31内のエッチング液Eからの水分の蒸発が促進される。したがって、外槽32内のエッチング液Eに気泡が供給されることにより、比重値変化期間SGVの長さ(図9)が比較的長くなる。
以下、第2バブリング部9の構成について説明する。図17に示すように、第2バブリング部9は、複数の気体供給ノズル91と、気体供給配管92とを含む。なお、本実施形態では、第2バブリング部9は、2本の気体供給ノズル91を含むが、第2バブリング部9は、1本の気体供給ノズル91を含んでもよいし、3本以上の気体供給ノズル91を含んでもよい。
複数の気体供給ノズル91は、外槽32の底部側に配置される。気体供給ノズル91の各々は、中空の管状部材である。気体供給ノズル91のそれぞれには、図18を参照して後述する複数の吐出孔911が形成されており、各吐出孔911から気体が吹き出すことで、外槽32内のエッチング液Eに気泡が供給される。気体は、例えば不活性ガスである。具体的には、気体は、窒素であり得る。
気体供給配管92は、複数の気体供給ノズル91まで気体を流通させる。気体供給配管92が気体を流通させることにより、外槽32内のエッチング液Eに気泡が供給される。
続いて図18を参照して第2バブリング部9の構成を更に説明する。図18は、第2バブリング部9の構成を示す図である。図18に示すように、第2バブリング部9は、フィルタ93と、ヒータ94と、排気管95と、開閉弁96とを更に含む。フィルタ93、ヒータ94、及び開閉弁96は、気体供給配管92に介装されている。
フィルタ93は、気体供給配管92を流通する気体から異物を除去する。ヒータ94は、気体供給配管92を流通する気体を加熱して、気体供給配管92を流通する気体の温度を調整する。ヒータ94は、制御装置110(制御部111)によって制御される。気体供給配管92を流通する気体の温度を調整することにより、燐酸の比重値を制御することができる。詳しくは、エッチング液循環部8を介して内槽31内のエッチング液Eに供給される気泡の温度を調整することにより、燐酸の比重値を制御することができる。
気体供給配管92は、気体供給ノズル91の一端に接続して、気体供給ノズル91に気体を供給する。排気管95は、気体供給ノズル91の他端に接続する。排気管95には、気体供給ノズル91の吐出孔911から吐出されずに気体供給ノズル91を流通した気体が流入する。
開閉弁96は、例えば電磁弁である。開閉弁96は、制御装置110(制御部111)によって制御される。開閉弁96は、気体供給配管92の流路を開閉して、気体供給配管92を流れる気体の流通を制御する。詳しくは、開閉弁96が開くと、気体が気体供給配管92を介して気体供給ノズル91まで流れる。この結果、気体供給ノズル91から気体が吐出される。一方、開閉弁96が閉じると、気体の流通が遮断されて、気体供給ノズル91による気体の吐出が停止する。
続いて、気体供給ノズル91について説明する。図18に示すように、複数の吐出孔911は、気体供給ノズル91の上面部に形成される。本実施形態において、気体供給ノズル91はY方向に延びる。複数の吐出孔911は、Y方向に等間隔に形成されている。
続いて、制御装置110について説明する。本実施形態において、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理中に、開閉弁96を開状態にする。あるいは、制御装置110(制御部111)は、第2エッチング処理中に、開閉弁96を閉状態にする。その結果、比重値変化期間SGVの長さ(図9)が制御される。
詳しくは、制御装置110の入力部113(図8)は、比重値変化期間SGVの設定値として、第1設定値と第2設定値とのうちの一方の入力を受け付ける。第1設定値は、第2設定値よりも小さい値を示す。制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が第1設定値である場合、開閉弁96を閉状態にして、内槽31内のエッチング液Eからの水分の蒸発量を抑える。この結果、比重値変化期間SGVの長さが比較的短くなる。一方、制御装置110(制御部111)は、比重値変化期間SGVの設定値が第2設定値である場合、開閉弁96を開状態にして、内槽31内のエッチング液Eからの水分の蒸発を促進させる。この結果、比重値変化期間SGVの長さが比較的長くなる。
以上、図1、図3~図12、図17、及び図18を参照して本発明の実施形態7について説明した。本実施形態によれば、内槽31内のエッチング液Eからの水分の蒸発量を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御することができる。したがって、実施形態1と同様に、積層構造Mの形状を制御することができる。
なお、外槽32内のエッチング液Eへ供給する気泡の量を調整して、比重値変化期間SGVの長さを制御してもよい。例えば、気体供給配管92にマスフローコントローラーが設けられてもよい。この場合、制御装置110の入力部113(図8)は、比重値変化期間SGVの設定値として、実施形態1と同様に任意の値の入力を受け付ける。
[実施形態8]
続いて図1~図9、及び図11~図20を参照して本発明の実施形態8について説明する。但し、実施形態1~7と異なる事項を説明し、実施形態1~7と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態8は、基板Wを用いて製造されるデバイスのサイズに基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定する点で実施形態1~7と異なる。
図19は、決定テーブルTL10を示す図である。本実施形態において、記憶部112(図8)は、決定テーブルTL10を記憶する。図19に示すように、決定テーブルTL10は、デバイスサイズ欄TL11と、第1目標値欄TL12と、第2目標値欄TL13と、比重値変化期間欄TL14とを含む。デバイスサイズ欄TL11には、各種のデバイスサイズ(デバイスの寸法)が登録される。第1目標値欄TL12には、第1目標値TV1が登録される。第2目標値欄TL13には、第2目標値TV2が登録される。比重値変化期間欄TL14には、比重値変化期間SGVの設定値が登録される。決定テーブルTL10は、デバイスのサイズと、第1目標値TV1と、第2目標値TV2と、比重値変化期間SGVの設定値とを互いに関連付ける。
本実施形態において、入力部113(図8)は、基板Wを用いて製造されるデバイスのサイズの入力を受け付ける。制御部111(図8)は、入力部113からデバイスのサイズを示すデータが入力されると、記憶部112(図8)に記憶されている決定テーブルTL10を参照して、第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定する。
続いて図20を参照して本実施形態の基板処理方法を説明する。図20は、本実施形態の基板処理方法を示すフロー図である。本実施形態の基板処理方法は、例えば、図1~図9を参照して説明した基板処理装置100によって実施されてもよい。図20に示すように、本実施形態の基板処理方法は、ステップS11~ステップS16を含む。
本実施形態では、基板Wのエッチング処理が開始される前に、入力部113が、基板Wを用いて製造されるデバイスのサイズの入力を受け付ける。入力部113がデバイスのサイズの入力を受け付けると、制御部111が、記憶部112に記憶されている決定テーブルTL10を参照して、第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定する(ステップS11)。
以降、ステップS12~ステップS16の各処理が実行される。なお、ステップS12~ステップS16の各処理は、図10を参照して説明したステップS11~ステップS15の各処理と同様であるため、その説明は割愛する。
以上、図1~図9、及び図11~図20を参照して本発明の実施形態8について説明した。本実施形態によれば、積層構造Mの形状をデバイスのサイズに応じた形状に制御することができる。
なお、本実施形態では、デバイスのサイズに基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定したが、デバイスのサイズに基づいて、第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値のうち、第1目標値TV1と第2目標値TV2とが決定されてもよい。この場合、比重値変化期間欄TL14は省略されてもよい。
また、本実施形態では、デバイスのサイズに基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定したが、積層構造Mの仕上がり形状に基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定してもよい。あるいは、積層構造Mの種別に基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定してもよい。
図21は、決定テーブルの他例1(決定テーブルTL20)を示す図である。積層構造Mの仕上がり形状に基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定する場合、記憶部112(図8)は、決定テーブルTL20を記憶してもよい。図21に示すように、決定テーブルTL20は、積層構造Mの仕上がり形状欄TL21と、第1目標値欄TL22と、第2目標値欄TL23と、比重値変化期間欄TL24とを含む。積層構造Mの仕上がり形状欄TL21には、各種の仕上がり形状が登録される。仕上がり形状は、例えば、図11(a)及び図11(b)を参照して説明した酸化膜Maの勾配Mθを示してもよい。
図22は、決定テーブルの他例2(決定テーブルTL30)を示す図である。積層構造Mの種別に基づいて第1目標値TV1、第2目標値TV2、及び比重値変化期間SGVの設定値を決定する場合、記憶部112(図8)は、決定テーブルTL30を記憶してもよい。図22に示すように、決定テーブルTL30は、膜種欄TL31と、第1目標値欄TL32と、第2目標値欄TL33と、比重値変化期間欄TL34とを含む。膜種欄TL31には、積層構造Mの種別が登録される。積層構造Mの種別は、例えば、図4を参照して説明した酸化膜Ma及び窒化膜Mbの積層数を示してもよい。
以上、図面(図1~図22)を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、図1~図22を参照して説明した実施形態では、コントローラ140が燐酸の比重値を測定したが、作業者がエッチング液Eをサンプリングして、燐酸の比重値又は濃度を測定してもよい。
また、図1~図22を参照して説明した実施形態では、希釈液は、処理槽3の外方から処理槽3内のエッチング液Eに供給されたが、希釈液は、処理槽3の内側においてエッチング液Eに供給されてもよい。例えば、希釈液供給ノズル51が内槽31又は外槽32の内側に配置されることにより、処理槽3の内側において希釈液をエッチング液Eに供給することができる。処理槽3の内側において希釈液をエッチング液Eに供給した場合、処理槽3の外方から処理槽3内のエッチング液Eに希釈液を供給する場合と比べて、比重値変化期間SGVの長さを短くすることができる。
また、図1~図22を参照して説明した実施形態において、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータは希釈液の流量であったが、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータは希釈液の流量に限定されない。例えば、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータは、気体供給ノズル71(図7)から吐出する気泡の温度であってもよい。この場合、制御装置110(制御部111)は、図7を参照して説明したヒータ74を制御することにより、燐酸濃度に対応する物理量を変動させる。あるいは、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータは、気体供給配管92(図18)から吐出する気泡の温度であってもよい。詳しくは、燐酸濃度に対応する物理量を変動させるパラメータは、エッチング液循環部8を介して内槽31内のエッチング液Eに供給される気泡の温度であってもよい。この場合、制御装置110(制御部111)は、図18を参照して説明したヒータ94を制御することにより、燐酸濃度に対応する物理量を変動させる。
また、図1~図22を参照して説明した実施形態において、気体供給配管61の先端は、外槽32のエッチング液E内に浸漬されたが、気体供給配管61の先端は、外槽32内に設けられた制御槽のエッチング液E内に浸漬されてもよい。具体的には、処理槽3は、内槽31と外槽32とに加えて、外槽32内に設けられた制御槽を更に有し、気体供給配管61の先端は、制御槽のエッチング液E内に浸漬されてもよい。この構成によれば、気体の吐出圧をより高い精度で測定することができる。したがって、燐酸の比重値をより高い精度で測定することができる。
詳しくは、外槽32内のエッチング液Eの液面高さは、外槽32内のエッチング液Eの液面に発生する泡や、外槽32内のエッチング液Eの減少等によって変動する。泡は、内槽31から外槽32にエッチング液Eが流れ込む際に発生することがある。外槽32内のエッチング液Eは、循環ポンプ83の駆動によって循環配管82にエッチング液Eが流入する際に減少することがある。これに対し、制御槽内のエッチング液Eの液面高さは、外槽32内のエッチング液Eの液面に発生する泡や、外槽32内のエッチング液Eの減少等の影響を受け難く、安定している。したがって、気体供給配管61の先端を制御槽のエッチング液E内に浸漬させることにより、燐酸の比重値をより高い精度で測定することができる。