[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態のロッドの製造方法およびロッドの製造装置を図1~図5を参照して以下に説明する。
まず、第1実施形態の製造方法および製造装置で製造されるロッド10を含むシリンダ装置11を図1を参照して説明する。図1に示すシリンダ装置11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器であり、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。シリンダ装置11は、円筒状の内筒15と、内筒15よりも大径で内筒15の外周側に内筒15の外周部を覆って設けられる有底筒状の外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式(いわゆるツインチュープ式)の緩衝器である。外筒16と内筒15との間は、リザーバ室18となっている。
外筒16は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状の胴部21と、胴部21の軸方向の一端部側を閉塞する底部22と、胴部21の底部22とは反対側の開口23とを有している。内筒15は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状をなしている。
シリンダ装置11は、内筒15の軸方向の一端部に設けられる円環状のバルブボディ25と、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられる円環状のロッドガイド26と、を有している。バルブボディ25は、ボデーバルブ30を構成するものであり、外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有している。ロッドガイド26も、外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有している。
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ25の外周部の小径部分に嵌合されており、このバルブボディ25を介して外筒16の底部22に係合している。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド26の外周部の小径部分に嵌合されており、ロッドガイド26を介して外筒16の胴部21に係合している。この状態で、内筒15は、外筒16に対して径方向に位置決めされている。ここで、バルブボディ25と底部22との間は、バルブボディ25に形成された通路溝35を介して内筒15と外筒16との間に連通しており、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
シリンダ装置11は、ロッドガイド26の底部22とは反対側に、円環状のシール部材41を有している。このシール部材41も、ロッドガイド26と同様に胴部21の内周部に嵌合されている。胴部21の底部22とは反対の端部には、胴部21をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて係止部43が形成されている。シール部材41は、この係止部43とロッドガイド26とに挟持されている。シール部材41は、外筒16の開口23を閉塞するものであり、具体的にはオイルシールである。なお、シール部材41をシールワッシャで構成しても良い。
シリンダ装置11は、シリンダ17内に設けられるピストン45を有している。ピストン45は、内筒15に摺動可能に嵌装されている。ピストン45は、内筒15内を第1室48と第2室49との2室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド26との間に設けられ、第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ25との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ25によって、リザーバ室18と画成されている。第1室48および第2室49には作動流体としての油液Lが充填されており、リザーバ室18には作動流体としてのガスGと油液Lとが充填されている。
シリンダ装置11は、一端がピストン45と接続され、他側がシリンダ17の外筒16から開口23を介して外部に延出されるロッド10を有している。ロッド10には、ピストン45がナット51によって連結されている。
ロッド10は、金属製であり、円柱状の大径部55と、外径が大径部55の外径よりも小径の円柱状の小径部56と、大径部55と小径部56とを繋ぐ円環状の鍔部57と、大径部55の小径部56とは反対側に設けられたネジ軸部58と、を有している。大径部55と小径部56とネジ軸部58とは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
大径部55は、外周面55aが円筒面からなっている。鍔部57は、小径部56側に向く外面57aが円環状の平坦面からなっている。小径部56は、鍔部57側に、外周面61aが円筒面からなる小径軸部61を有しており、鍔部57とは反対側に、外周部がオネジ62aとされた小径ネジ軸部62を有している。外周面55aと外周面61aとオネジ62aとは中心軸線を一致させた同軸状に配置されており、外面57aは、この中心軸線に垂直に広がる平坦面となっている。ピストン45は小径軸部61に嵌合されている。ナット51は小径ネジ軸部62のオネジ62aに螺合されている。
ロッド10は、大径部55においてロッドガイド26およびシール部材41を通って内筒15および外筒16から外部へと延出している。これにより、ロッド10は、一端側が外筒16および内筒15内に配置され他端側が外筒16および内筒15の外部に配置されている。ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてロッドガイド26に摺接することになり、ロッドガイド26で案内されて、内筒15および外筒16に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてシール部材41に摺接することになり、シール部材41は、外筒16とロッド10との間を閉塞して、内筒15内の作動液体と、リザーバ室18内の作動気体および作動液体とが外部に漏出するのを規制する。
ピストン45には、軸方向に貫通する通路65および通路66が形成されている。通路65,66は、第1室48と第2室49とを連通可能となっている。シリンダ装置11は、ピストン45に当接することで通路65を閉塞可能な円環状のディスクバルブ67を、ピストン45の軸方向の底部22とは反対側に有している。また、シリンダ装置11は、ピストン45に当接することで通路66を閉塞可能な円環状のディスクバルブ68を、ピストン45の軸方向の底部22側に有している。ディスクバルブ67,68は、ピストン45とともにロッド10に連結されている。
ディスクバルブ67は、ロッド10が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも所定値以上高くなると通路65を開いて第2室49の油液Lを第1室48に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ68は、ロッド10が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動して第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも所定値以上高くなると通路66を開いて第1室48の油液Lを第2室49に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。
ピストン45およびディスクバルブ67のうちの少なくとも一方には、ディスクバルブ67が通路65を最も閉塞した状態でも通路65を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。また、ピストン45およびディスクバルブ68のうちの少なくとも一方にも、ディスクバルブ68が通路66を最も閉塞した状態でも通路66を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。
バルブボディ25には、軸方向に貫通する液通路71および液通路72が形成されている。液通路71,72は、第2室49とリザーバ室18とを連通可能となっている。ボデーバルブ30は、バルブボディ25の軸方向の底部22側に、バルブボディ25に当接することで液通路71を閉塞可能な円環状のディスクバルブ75を有している。また、ボデーバルブ30は、バルブボディ25の軸方向の底部22とは反対側に、バルブボディ25に当接することで液通路72を閉塞可能な円環状のディスクバルブ76を有している。ボデーバルブ30は、ピン78を有しており、このピン78によってディスクバルブ75,76がバルブボディ25に固定されている。バルブボディ25、ディスクバルブ75,76およびピン78等で構成されるボデーバルブ30は、シリンダ17を第2室49とリザーバ室18との2室に画成している。
ボデーバルブ30は、ロッド10が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値以上高くなると、ディスクバルブ75が液通路71を開くことになり、その際に減衰力を発生させる。ボデーバルブ30は、ロッド10が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下すると、ディスクバルブ76が液通路72を開くことになる。ディスクバルブ76は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブである。
シリンダ装置11は、例えばロッド10が車両の車体側に連結され、シリンダ17が車両の車輪側に連結されて、車輪の車体に対する移動に対して減衰力を発生させる。
次に、第1実施形態のロッド10の製造方法およびロッド10の製造装置131について説明する。第1実施形態のロッド10の製造方法では、ロッド10の大径部55にめっきを施す。具体的には、鋼鉄製のロッド10の大径部55の外周面55aにクロムめっきを施す。
ロッド10は、大径部55が外周面55aにおいてロッドガイド26およびシール部材41に対し摺動することになる。また、ロッド10は、小径部56の小径軸部61にピストン45を嵌合させ、小径部56の小径ネジ軸部62にナット51を螺合させる。ロッド10は、めっきが施される被めっき物であり、ロッドガイド26およびシール部材41に対し摺動したり、シール部材41よりも外部に露出したりする大径部55にめっきが電着される。具体的には、大径部55の外周面55aにめっきが電着される。他方で、常に油液に満たされた内筒15の内部にある、鍔部57と、小径部56の小径軸部61および小径ネジ軸部62とについてはめっきの電着が抑制される。
第1実施形態のロッド10の製造方法およびロッド10の製造装置131は、上記したロッド10に対し、めっきを電着させたくない鍔部57と小径部56の小径軸部61および小径ネジ軸部62とを外部に対し遮蔽しつつ、大径部55の外周面55aにめっきを電着させる方法および装置となっている。
第1実施形態のロッド10の製造方法およびロッド10の製造装置131では、図2に示す陰極部材81を用いる。
陰極部材81は、金属製の陰極部材本体82と、合成樹脂製の先端部材83との2部品が連結されて構成されている。陰極部材本体82と先端部材83とは着脱可能となっている。
陰極部材本体82は、継ぎ目のない一部材からなっており、円柱状の主体部91と、主体部91の軸方向の一端から突出する突出軸部92と、を有している。主体部91は、外周面91aが円筒面である。主体部91は、外径すなわち外周面91aの径が、図1に示すロッド10の大径部55の外径すなわち外周面55aの径と同等である。図2に示す主体部91は、軸方向の突出軸部92とは反対側の端部が当接部93となっている。当接部93は軸方向の突出軸部92とは反対側の端面93aが、主体部91の外周面91aの中心軸線に対し垂直に広がる平坦面となっている。主体部91は、軸方向の突出軸部92側の端部が接合部94となっている。接合部94は軸方向の突出軸部92側の端面94aが、主体部91の外周面91aの中心軸線に対し垂直に広がる平坦面となっている。当接部93の端面93aおよび接合部94の端面94aは、外周面91aの中心軸線を中心とする円形である。
主体部91には、当接部93の端面93aから接合部94側に向けて凹む形状の係合穴101が形成されている。係合穴101は、端面93a側に、内周面102aが円筒面からなる口元穴部102を有しており、端面93aとは反対側に、内周部がメネジ103aとされたネジ穴部103を有している。口元穴部102の内周面102aおよびネジ穴部103のメネジ103aは、外周面91aと中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。当接部93は、この係合穴101よりも、係合穴101の径方向における外側に広がっている。
突出軸部92は、外径が、主体部91の外径よりも小径となっている。突出軸部92は、外周部がオネジ92aとされている。主体部91の外周面91aと突出軸部92のオネジ92aとは中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
先端部材83は、継ぎ目のない一体成形品であり、一端側ほど外径が小さくなる先細の略円錐形状をなしている。先端部材83は、軸方向一端側の端面83aおよび軸方向他端側の端面83bがともに円形である。軸方向一端側の端面83aは、外径が、軸方向他端側の端面83bの外径よりも小径となっている。先端部材83は、端面83aの外周縁部と端面83bの外周縁部とを結ぶ外周面83cを有している。外周面83cは、軸方向の端面83a側ほど小径となっている。
外周面83cは、端面83aと端面83bとを結ぶ円錐面に対して径方向外方に膨出する流線形状をなしている。外周面83cは、径方向外側に膨らむR形状である。外周面83cは、回転中心軸線に対しその軸線方向の位置が異なり且つこの回転中心軸線からの距離が異なる2点を通り、この回転中心軸線から離れる方向に凸の円弧を、この回転中心軸線を中心に回転させた形状をなしている。
端面83aおよび端面83bは、外周面83cの中心軸線に対して垂直に広がる平坦面となっている。端面83aおよび端面83bは、それぞれの中心が外周面83cの中心軸線を通る。端面83bは、外径が、陰極部材本体82の主体部91の外径すなわち外周面91aの径と同等になっている。また、端面83bは、外径が、接合部94の端面94aの外径と同等になっている。
先端部材83には、端面83bから端面83a側に向けて凹む形状の接合穴115が形成されている。接合穴115は、内周部がメネジ115aとされている。メネジ115aは、外周面83cと中心軸線を一致させた同軸状に配置されている。
先端部材83の接合穴115に、陰極部材本体82の突出軸部92が挿入される。その際に、突出軸部92のオネジ92aが接合穴115のメネジ115aに螺合されることで、陰極部材本体82と先端部材83とが連結される。その際に、陰極部材本体82の接合部94の端面94aと、先端部材83の端面83bとが面接触で当接して密着する。すると、同径の端面94aと端面83bとが同軸状に配置される。その結果、陰極部材本体82の主体部91の外周面91aと先端部材83の外周面83cとが同軸状になり、段差なく連続する状態になる。このように陰極部材本体82と先端部材83とが連結され一体的になって陰極部材81が構成される。端面94aと端面83bとが面接触で当接して密着するため、先端部材83の接合穴115内は外部に対し密閉された状態になる。
先端部材83は、陰極部材本体82と先端部材83とが連結されて構成された陰極部材81の当接部93とは反対側の端部に、先細形状の先細先端部121を形成する。陰極部材81は、軸方向の一端が当接部93となり、軸方向の当接部93とは反対側の端部に先細形状の先細先端部121が設けられたものとなる。陰極部材81は、係合穴101と当接部93とを含む金属製の陰極部材本体82と、先細先端部121を形成する合成樹脂製の先端部材83とを有する。
そして、この陰極部材81の係合穴101に、図1に示すロッド10の小径部56が挿入されて収容されることになる。その際に、ロッド10は、小径ネジ軸部62がオネジ62aにおいてネジ穴部103のメネジ103aに螺合されることになり、当接部93の端面93aに鍔部57の外面57aが面接触で当接して密着する。このように、係合穴101に、ロッド10の小径部56が係合されることで、陰極部材81はロッド10に取り付けられる。
すると、同径の端面93aと外面57aとが同軸状に配置される。その結果、図3に示すように、陰極部材81の主体部91の外周面91aとロッド10の大径部55の外周面55aとが同軸状になり、段差なく連続する状態になる。言い換えれば、陰極部材81の主体部91の円筒面からなる外周面91aとロッド10の大径部55の円筒面からなる外周面55aとが同一の円筒面に配置される。端面93aに外面57aが面接触で当接して密着するため、係合穴101内は外部に対し密閉された状態になる。このように陰極部材81をロッド10に装着してから、ロッド10の大径部55にめっきを施す。
第1実施形態のロッド10の製造装置131は、ロッド10の大径部55の所定の範囲にめっきを施すめっき処理装置である。製造装置131は、図3に示すように、陰極部材81が取り付けられた状態のロッド10を把持する搬送ロボットの把持部132を有している。把持部132は、ロッド10の大径部55における陰極部材81とは反対側の端部を把持する。把持部132は、ロッド10の大径部55に接触する爪部133(めっき手段)が電極となっている。把持部132は、ロッド10を把持部132から鉛直下方に延出させた状態で把持する。把持部132は、上下に昇降可能となっている。把持部132で把持された状態のロッド10は鉛直方向に沿っており、大径部55よりも陰極部材81が下側に配置されている。
製造装置131は、把持部132で把持され把持部132とともに下降するロッド10および陰極部材81が進入可能な挿入口135を上部に有する筒状の処理槽本体136を備えている。また、製造装置131は、処理槽本体136内に、把持部132で把持され把持部132とともに下降するロッド10および陰極部材81が進入可能な挿入口141を上部に備える筒状の陽極142(隔壁,めっき手段)を有している。処理槽本体136の挿入口135よりも陽極142の挿入口141の方が下側に配置されている。陽極142は円筒状であり、中心軸線を鉛直方向に沿わせている。陽極142は、槽壁を兼ねており、ロッド10および陰極部材81の進入長さよりも長い。把持部132は、陽極142内に、ロッド10および陰極部材81を、陽極142と同軸をなすように配置する。
製造装置131は、爪部133の接点と陽極142の接点との間に給電を行う図示略の給電装置(めっき手段)を有している。
第1実施形態のロッド10の製造方法は、ロッド10にめっきを施す製造方法であり、ロッド10にめっきを施す前に、ロッド10の小径部56に自動または手動にて陰極部材81を装着して、ロッド10と陰極部材81とからなる処理対象部品150の状態としておく。
製造装置131は、処理対象部品150のロッド10を把持部132で把持し、把持した処理対象部品150を陰極部材81を先頭にして、処理槽本体136の挿入口135に上から挿入し、さらに陽極142の挿入口141に上から挿入する。そして、把持部132は、図3に示すように大径部55が所定長さ陽極142内に挿入されるように処理対象部品150を下降させて停止する。言い換えれば、陰極部材81およびロッド10を含む処理対象部品150の周囲に陽極142を配置する。このように把持部132で把持されて停止する処理対象部品150は、陽極142と同軸状に配置される。この状態で、処理対象部品150は、陰極部材81がロッド10の大径部55の下方に位置する状態となる。
この状態で、製造装置131には、ロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150と陽極142との間に上下に延在する筒状の第1流路161が形成されることになり、陽極142と処理槽本体136との間に上下に延在する筒状の第2流路162が形成されることになる。陽極142は第1流路161と第2流路162とを隔てる隔壁となっている。第1流路161と第2流路162とは陽極142一枚のみで隔てられている。言い換えれば、一枚壁の陽極142の内壁面が第1流路161を形成し、この陽極142の外壁面が第2流路162を形成する。
製造装置131は、このように大径部55が所定長さ陽極142内に挿入された状態で停止している処理対象部品150に向けて、めっき処理として、図4に二点鎖線矢印で示すように、陽極142内で下から上に向けてめっき液を流す。すると、めっき液は、陽極142内で陰極部材81の下方から、陰極部材81に向けて流れ、陰極部材81に接触して陰極部材81と陽極142との間の第1流路161を下から上に流れ、その後、第1流路161において大径部55と陽極142との間を下から上に流れる。言い換えれば、陽極142と、陰極部材81およびロッド10を含む処理対象部品150との間にある第1流路161がめっき液を一方向に流す。このとき、陰極部材81は、下端の先細先端部121によってめっき液の流れを整えることになる。言い換えれば、陰極部材81は、下端の先細先端部121がめっき液の流れに対して整流構造となっており、先細先端部121によってめっき液の乱流化を抑制する。よって、めっき液は、先細先端部121によって整流された状態で陰極部材本体82の主体部91の外周面91aの側方を流れ、続けて大径部55の外周面55aの側方を流れる。
そして、めっき処理として、上記のように第1流路161でめっき液を下から上に流し続けた状態で、電極である爪部133の接点と陽極142の接点との間に図示略の給電装置で給電を行う。すると、絶縁性の合成樹脂材からなる先端部材83は、めっきの電着すなわちめっき膜(めっき層)の形成はなく、金属製の陰極部材本体82の主体部91の外周面91aと、金属製のロッド10の大径部55の外周面55aとに、めっきが電着されめっき膜が形成される。言い換えれば、陽極142とロッド10を含む処理対象部品150との間の第1流路161にめっき液を一方向に流しつつロッド10にめっきを施すめっき処理を行う。さらに言い換えれば、図示略の給電装置と爪部133と陽極142とが、第1流路161を下から上への一方向に流れるめっき液によってロッド10の大径部55の外周面55aにめっきを施すめっき処理を行う。
このとき、ロッド10の鍔部57が全周にわたって当接部93に当接して係合穴101を閉塞していて、係合穴101内へのめっき液の流入を抑制することから、小径部56へのめっき膜の形成が抑制される。加えて、ロッド10の鍔部57の外周縁部が全周にわたって当接部93に当接しているため、鍔部57の外面57aと当接部93の端面93aとの間へのめっき液の流入をも抑制し、よって、鍔部57の外面57aもめっき膜の形成が抑制される。
ここで、ロッド10の大径部55の下側に陰極部材81の金属製の陰極部材本体82の主体部91が配置されているため、導電性の金属部分の下部に集中する電流を、ロッド10の下方に設けられた陰極部材本体82に集中させることができる。このことにより、大径部55の膜厚を均一化することができる。
製造装置131においては、上記のようの第1流路161を下から上への一方向に流れためっき液が、陽極142の上端部から溢れ出し、処理槽本体136と陽極142との間の第2流路162を重力により上から下への逆方向に流れる。言い換えれば、第1流路161を通過後のめっき液を陽極142の外側の第2流路162において第1流路161と対向流となるように逆方向に流す。さらに言い換えれば、第2流路162は、陽極142の外側にあって第1流路161を通過後のめっき液を第1流路161内での流れと対向流となるように逆方向に流す。その際に、第2流路162内を流れるめっき液は、陽極142の外周面に接触して下方に流れる。ここで、第2流路162内のめっき液の温度はほぼ一定であり、第2流路162内のめっき液の熱で陽極142の低温部分が温められ、陽極142を介して第1流路161内のめっき液の低温部分が温められる。
そして、第2流路162で第2流路162の下部に流れためっき液を図示略のポンプで吸い上げて第1流路161の下部から上方に向けて流す。このようにしてめっき液を、第1流路の下部から上部へ、第1流路161の上部から第2流路162の上部へ、第2流路162の上部から下部へ、第2流路162の下部から第1流路161の下部へ、第1流路の下部から上部へと循環させてめっき処理を続ける。
大径部55に所定厚さのめっき膜が形成されると、製造装置131は、陽極142内で陰極部材81に向けて下から流れるめっき液を停止させる。その後、把持部132が、上昇してロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150を陽極142および処理槽本体136から引き上げて、後工程に払い出し、次にめっき処理を行う処理対象部品150を把持する。
めっき処理が行われたロッド10は、後工程において陰極部材81が取り外される。ロッド10から取り外された陰極部材81は、めっき処理時に付着した付着物が洗浄により除去されて、再度めっき処理に使用される。
陽極142の下端を、陰極部材81の下端よりも下方まで延ばす構成とすることにより、めっき液の整流作用が得られる。それに加えて、先細形状の陰極部材81があることで整流作用がさらに改善する。
なお、第1実施形態では、ロッド10と陽極142とを鉛直方向に延在するように配置しているが、これに限らず、いずれの方向に延在するように配置しても良い。例えば水平方向に延在するようにロッド10と陽極142とを配置してもよい。そのような場合においても、めっき液が、陰極部材81の端面83aに対向する方向から陰極部材81に向けて流れるように構成する。
上記した特許文献1には、ワークのサイズに応じて高さ調整を行うことができるめっき用ハンガが記載されている。ところで、ロッドにめっき処理を行う際に、そのめっき品質を向上させることが要望されている。
ここで、クロムめっきでは温度が変化することで析出速度が異なることが知られている。そのため、めっきを行うセル部においては温度の分布を小さくするのが望ましい。ロッドの近傍に陽極を配置し、めっき液を流しながらクロムめっきを実施する場合、ロッドの周囲を流れるめっき液は、電流のジュール熱により流路の入口側の液温よりも出口側の液温の方が高くなって温度差が発生する。入口側の液温が特に低い場合、めっき液の導電率が低いためジュール熱が大きく、急峻な温度上昇により出口側の液温が上がり、温度差がさらに大きくなってしまう。めっき液の液温に大きな温度差のある分布が生じると、低温側では光沢のないめっき膜の析出が起こり、高温側ではめっき析出効率が低下して析出速度が下がり、結果としてめっき膜厚の分布が不均一となってしまう可能性がある。
第1実施形態は、ロッド10の周囲に隔壁となる金属製の陽極142を配置し、陽極142とロッド10との間の第1流路161にめっき液を一方向に流しつつロッド10にめっきを施し、第1流路161を通過後のめっき液を陽極142の外側の第2流路162において第1流路161と対向流となるように逆方向に流すようにしている。このため、第1流路161と第2流路162との間で陽極142を介して熱交換が行われることになって、第1流路161の入口側となる下部の温度と出口側となる上部の温度との温度差を抑制することができる。すなわち、第1流路161を通過後に第2流路162を通過するめっき液の温度は、第2流路162内で場所によらずほぼ一定であるため、第1流路161の入口側となる下部のめっき液の温度が、ほぼ一定温度の第2流路162の出口側となる下部のめっき液の熱で高められることになって、第1流路161の入口側となる下部の温度と出口側となる上部の温度との温度差を抑制することができる。よって、めっき膜の膜厚の均一性を改善することができ、表面の光沢の均一性も改善することができる。
ここで、図5(a)に示すように、第1流路161における入口側の液温をTC2、第1流路161における出口側の液温をTC1、第2流路162における入口側の液温をTH1、第2流路162における出口側の液温をTH2とする。すると、めっき液の温度分布は、図5(b)に示すようになり、第1実施形態によれば、液温TC2と液温TC1との温度差ΔTを小さくすることができる。なお、本実施形態においては、前記のように温度差を小さくすることに加えて、陰極部材81を用いることで液の流れを整流化することでロッドの円周方向での流速の均一化され、円周方向の膜厚分布の均一化を図ることができたが、円周方向の膜厚分布が十分小さい場合には整流化を目的とした陰極部材81を省くこともできる。
例えば、第1実施形態の製造装置131において、第1流路161の出口側からめっき液を第1流路161とは熱交換不可な配管で第1流路161の入口側に戻す場合は、第1流路161の入口側と出口側との温度差ΔTが15℃以上生じたのに対し、第1流路161の出口側からめっき液を第2流路162で第1流路161の入口側に戻す場合は、第1流路161の入口側と出口側との温度差ΔTを5℃程度に抑えることができた。その結果、めっき膜の膜厚の均一性が改善し、表面の光沢の均一性も改善することができた。
第1実施形態では、第1流路161と第2流路162とを仕切る隔壁が陽極142であるため、製造装置131の簡素化が図れる。
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態のロッドの製造方法およびロッドの製造装置を主に図6および図7を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図6に示すように、第2実施形態においては、製造装置131Aが製造装置131と一部異なっている。製造装置131Aは、陽極142Aが陽極142とは異なっている。陽極142Aは、円筒状ではなく、複数の分割体181Aからなっている。複数の分割体181Aは、それぞれが、処理槽本体136内で鉛直方向に延びる陽極本体部182Aと、陽極本体部182Aの上端部から水平方向に延びて処理槽本体136の上端部に接合される接合部183Aとを有している。接合部183Aには上下方向に貫通する貫通穴184Aが形成されている。貫通穴184Aは処理槽本体136の径方向内側の位置に配置されている。
製造装置131Aは、陽極本体部182Aと処理槽本体136との間に、全ての陽極本体部182Aを外側で囲むように円筒状の隔壁191Aが設けられている。貫通穴184Aは隔壁191Aと処理槽本体136との間にあって隔壁191Aに近接する位置に配置されている。製造装置131Aは、全ての貫通穴184Aを覆うように配置されて分割体181Aの接合部183Aに接合される蓋部材195Aを有している。
製造装置131Aは、ロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150と隔壁191Aとの間に上下に延在する筒状の第1流路161Aが形成されることになる。また、製造装置131Aは、この隔壁191Aと処理槽本体136との間に上下に延在する筒状の第2流路162Aが形成されることになる。製造装置131Aでは隔壁191Aが第1流路161Aと第2流路162Aとを隔てている。第1流路161Aと第2流路162Aとは隔壁191A一枚のみで隔てられている。言い換えれば、一枚壁の隔壁191Aの内壁面が第1流路161Aを形成し、この隔壁191Aの外壁面が第2流路162Aを形成する。ロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150と隔壁191Aとの間に陽極142Aの全ての陽極本体部182Aが設けられており、言い換えれば第1流路161A内に陽極142Aの全ての陽極本体部182Aが設けられている。
製造装置131Aは、第1実施形態と同様に大径部55が所定長さ陽極142A内に挿入された状態で停止している処理対象部品150に向けて、めっき処理として、図7に二点鎖線矢印で示すように、隔壁191A内で下から上に向けてめっき液を流す。すると、陽極142Aが互いの間に隙間を有する複数の分割体181Aからなるため、めっき液は、隔壁191Aと処理対象部品150との間の第1流路161A内で、一部が例えば隔壁191Aと陽極本体部182Aとの間を流れ、他の一部が例えば陽極本体部182Aと処理対象部品150との間を流れる。その間、めっき液は隔壁191Aと処理対象部品150との間の第1流路161Aで場合により陽極本体部182Aの内外を行き来しながら全体として第1流路161A内で入口側である下部から出口側である上部に向け流れる。言い換えれば、隔壁191Aと、陰極部材81およびロッド10を含む処理対象部品150との間にある第1流路161Aがめっき液を下から上への一方向に流す。めっき液は、その際に、陰極部材81の側方を流れ、大径部55の外周面55aの側方を流れる。
そして、めっき処理として、上記のように第1流路161Aでめっき液を下から上に流し続けた状態で、電極である爪部133の接点と陽極142Aの接点との間に図示略の給電装置で給電を行う。すると、金属製のロッド10の大径部55の外周面55aに、めっきが電着されめっき膜が形成される。言い換えれば、隔壁191Aとロッド10を含む処理対象部品150との間の第1流路161にめっき液を下から上への一方向に流しつつロッド10にめっきを施すめっき処理を行う。さらに言い換えれば、図示略の給電装置と爪部133と陽極142Aとが、第1流路161Aを下から上への一方向に流れるめっき液によってロッド10の大径部55の外周面55aにめっきを施すめっき処理を行う。
製造装置131Aにおいては、上記のようの第1流路161Aを下から上への一方向に流れためっき液が、陽極142Aの陽極本体部182Aとロッド10との隙間の上端部から溢れ出し、蓋部材195A内で流れて貫通穴184Aから、処理槽本体136と隔壁191Aとの間の第2流路162Aに流れ、第2流路162A内を重力により上から下への逆方向に流れる。言い換えれば、第1流路161Aを通過後のめっき液を隔壁191Aの外側の第2流路162Aにおいて第1流路161Aと対向流となるように逆方向に流す。さらに言い換えれば、第2流路162Aは、隔壁191Aの外側にあって第1流路161Aを通過後のめっき液を第1流路161A内での流れと対向流となるように逆方向に流す。その際に、第2流路162A内を流れるめっき液は、隔壁191Aの外面に接触して下方に流れる。ここでも、第2流路162A内のめっき液の温度はほぼ一定であり、第2流路162A内のめっき液の熱で隔壁191Aの低温部分が温められ、隔壁191Aを介して第1流路161A内のめっき液の低温部分が温められる。
そして、第2流路162Aで第2流路162Aの下部に流れためっき液を図示略のポンプで吸い上げて第1流路161Aの下部から上方に向けて流す。このようにしてめっき液を、第1流路161Aの下部から上部へ、第1流路161Aの上部から第2流路162Aの上部へ、第2流路162Aの上部から下部へ、第2流路162Aの下部から第1流路161Aの下部へ、第1流路161Aの下部から上部へと循環させてめっき処理を続ける。
大径部55に所定厚さのめっき膜が形成されると、製造装置131Aは、隔壁191A内で流すめっき液を停止させる。その後、把持部132が、上昇してロッド10および陰極部材81からなる処理対象部品150を陽極142および処理槽本体136から引き上げて、後工程に払い出し、次にめっき処理を行う処理対象部品150を把持する。
めっき処理が行われたロッド10は、後工程において陰極部材81が取り外される。ロッド10から取り外された陰極部材81は、めっき処理時に付着した付着物が洗浄により除去されて、再度めっき処理に使用される。
なお、第2実施形態でも、ロッド10と隔壁191Aとを鉛直方向に延在するように配置しているが、これに限らず、いずれの方向に延在するように配置しても良い。例えば水平方向に延在するようにロッド10と隔壁191Aとを配置してもよい。そのような場合においても、めっき液が、陰極部材81の端面83aに対向する方向から陰極部材81に向けて流れるように構成する。
第2実施形態は、ロッド10の周囲に隔壁191Aを配置し、隔壁191Aとロッド10との間の第1流路161Aにめっき液を一方向に流しつつロッド10にめっきを施し、第1流路161Aを通過後のめっき液を隔壁191Aの外側の第2流路162Aにおいて第1流路161Aと対向流となるように逆方向に流すようにしている。このため、第1流路161Aと第2流路162Aとの間で隔壁191Aを介して熱交換が行われることになって、第1実施形態と同様に第1流路161Aの入口側となる下部の温度と出口側となる上部の温度との温度差を抑制することができる。よって、めっき膜の膜厚の均一性を改善することができ、表面の光沢の均一性も改善することができる。
第2実施形態では、隔壁191Aとロッド10との間の第1流路161A内に陽極142Aが設けられているため、陽極142Aの形状および配置の自由度が高まる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、ロッドにめっきを施すロッドの製造方法であって、前記ロッドの周囲に隔壁を配置し、前記隔壁と前記ロッドとの間の第1流路にめっき液を一方向に流しつつ前記ロッドにめっきを施し、前記第1流路を通過後のめっき液を前記隔壁の外側の第2流路において前記第1流路と対向流となるように逆方向に流す。これにより、ロッドのめっき品質を向上させることができる。
実施形態の第2の態様は、上記第1の態様において、前記隔壁は陽極である。
実施形態の第3の態様は、ロッドにめっきを施すロッドの製造装置であって、前記ロッドの周囲に配置される隔壁と、前記隔壁と前記ロッドとの間にあってめっき液を一方向に流す第1流路と、前記第1流路を流れるめっき液によって前記ロッドにめっきを施すめっき手段と、前記隔壁の外側にあって前記第1流路を通過後のめっき液を前記第1流路内での流れと対向流となるように逆方向に流す第2流路と、を有する。これにより、ロッドのめっき品質を向上させることができる。
実施形態の第4の態様は、上記第3の態様において、前記隔壁は前記めっき手段の陽極である。
実施形態の第5の態様は、上記第3の態様において、前記第1流路内に前記めっき手段の陽極が設けられている。