JP7457566B2 - 超音波診断装置、臍帯長測定方法及びプログラム - Google Patents

超音波診断装置、臍帯長測定方法及びプログラム Download PDF

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Description

本開示は、超音波診断装置、臍帯長測定方法及びプログラムに関し、特に、血管の拍動を観測する技術に関する。
医療の分野において超音波診断装置が活用されている。超音波診断装置は、被検者に対する超音波の送受波により得られたデータに基づいて超音波画像を形成する装置である。産科においては、母体の健康状態や胎児の発育状態を検査するために、超音波検査が実施される。
産科における超音波検査に際しては、様々な測定が実施される。現状において、それらの測定の中に、臍帯長測定は含まれていない。臍帯は、胎盤と胎児を繋ぐ重要な器官である。臍帯が長過ぎる場合及び臍帯が短過ぎる場合のいずれにおいても、胎児又は母体に問題が生じ易くなる。超音波検査時に臍帯長を測定することが望まれるが、現状においては、そのような測定は実現されていない。他の組織についても超音波検査時にその長さを測定することが望まれる。
なお、特許文献1には、脈波速度を測定する超音波診断装置が開示されている。その超音波診断装置においては、血管上の2点においてドプラ情報が観測され、それらに基づいて脈波伝搬時間が演算されている。2点間の距離を脈波伝搬時間で割ることにより、脈波速度が演算されている。2点間の距離は既知の情報である。
特開平6-261898号公報
上記のように超音波検査時に注目組織の長さを計測することが望まれる。注目組織の長さは、その中を走行する注目血管を流れる血液の平均速度に対して、注目血管の両端間を血液が移動する時間(時間差)を乗算することにより算出し得る。その場合において、注目血管の両端間において血液速度分布やドプラ波形を比較することにより時間差を特定することも考えられる。しかし、血液速度分布やドプラ波形は瞬時的に激しく変化する情報であるため、上記の方法で時間差を特定することは現実的ではない。
本開示の目的は、超音波診断を利用して注目組織の長さを測定することにある。あるいは、本開示の目的は、血液の移動時間を正確に測定する新しい方法を実現することにある。あるいは、本開示の目的は、臍帯長を測定する新しい技術を実現することにある。
本開示に係る超音波診断装置は、超音波の送受波により得られたデータに基づいて、注目組織内を走行する注目血管の第1端部における拍動の揺らぎを表すテンプレートを生成するテンプレート生成部と、前記データに基づいて、前記注目血管の第2端部における拍動の揺らぎを表すグラフを生成するグラフ生成部と、前記グラフの中で前記テンプレートにマッチングする部分を特定することにより、前記第1端部と前記第2端部の間での血液の移動時間を演算する演算部と、前記血液の移動時間に基づいて前記注目組織の長さを推定する推定部と、を含むことを特徴とする。
本開示に係る臍帯長計測方法は、超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部での拍動の揺らぎを表すテンプレートを生成する工程と、前記データに基づいて、前記注目血管の下流側端部での拍動の揺らぎを表すグラフを生成する工程と、前記グラフに対して前記テンプレートを比較することにより、前記上流側端部から前記下流側端部への血液の移動時間を演算する工程と、前記血液の移動時間に基づいて臍帯長を推定する工程と、を含むことを特徴とする。
本開示に係るプログラムは、情報処理装置において実行されるプログラムであって、母体に対する超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部の時間的変化を表すテンプレートを生成する機能と、前記データに基づいて、前記注目血管の下流側端部の時間的変化を表すグラフを生成する機能と、前記グラフの中で前記テンプレートとマッチングする部分を特定することにより、前記上流側端部から前記下流側端部への血液の移動時間を演算する機能と、を含むことを特徴とする。
本開示によれば、超音波診断を利用して注目組織の長さを測定できる。あるいは、本開示によれば、血液の移動時間を正確に測定できる新しい方法を実現することにある。あるいは、本開示によれば、臍帯長を測定する技術を実現することにある。
実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。 注目血管の上流側端部(第1端部)及び下流側端部(第2端部)を示す図である。 第1関心領域及び第2関心領域を示す図である。 テンプレートとグラフの比較を説明するための図である。 測定結果の表示例を示す図である。 動作例を示すフローチャートである。 変形例に係る超音波診断装置を示すブロック図である。 テンプレートとグラフの他の比較方法を示す図である。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、テンプレート生成部、グラフ生成部、演算部、及び、推定部を有する。テンプレート生成部は、超音波の送受波により得られたデータに基づいて、注目組織を走行する注目血管の第1端部における拍動の揺らぎを表すテンプレートを生成する。グラフ生成部は、データに基づいて、注目血管の第2端部における拍動の揺らぎを表すグラフを生成する。演算部は、グラフの中でテンプレートにマッチングする部分を特定することにより、第1端部と第2端部の間での血液の移動時間を演算する。推定部は、血液の移動時間に基づいて注目組織の長さを推定する。
拍動の揺らぎは、拍動周期(拍動数といってもいい)の時間的変動であり、血流速度分布やドプラ波形のように時間的に激しく変化するものとは異なり、時間的に緩やかな長周期の変動である。よって、2つの端部での拍動の揺らぎを表すテンプレート及びグラフを相互比較することにより、2つの端部間を流れる血液の移動時間を比較的に正確に演算することが可能となる。上記構成によれば、注目組織の長さを推定でき、また、その推定の精度を高められる。
測定対象となる各端部は、注目組織内に設定され、又は、注目組織が連なる他の組織内に設定される。注目組織の端部と注目血管の端部との間に空間的なずれが生じる場合、そのずれが解消されるように注目組織の長さを補正してもよい。そのずれが僅かであればそのずれを無視してもよい。
実施形態において、注目組織は臍帯であり、推定部は注目組織の長さとして臍帯長を推定する。臍帯内を2本の動脈及び1本の静脈が走行している。それらの血管内を流れる血流については、比較的長い周期(例えば数秒の周期)で拍動周期が時間的に変化する現象が認められる。そのような現象がテンプレートに反映される。実施形態においては、3本の血管の中から測定対象となる注目血管が選択される。個々の血管に対して個別的な測定を行った上で、それにより得られる3つの測定結果を総合してもよい。
実施形態において、推定部は、血液の移動時間に血液の平均速度を乗算することにより、注目組織の長さを推定する。実施形態に係る超音波診断装置は、更に、データに含まれるドプラ情報に基づいて血液の平均速度を演算する流速演算部を含む。平均速度の演算に際しては各種の方法を利用し得る。超音波ビームと血液の流れの方向とがなす角度に基づいて、演算された流速が補正されてもよい。
実施形態においては、血液の平均速度は、ユーザー指定又は胎児情報に基づいて特定される。この構成によれば、超音波ドプラ法を用いることなく、換言すれば、胎児への超音波の照射量を上げることなく、平均速度を特定できる。例えば、過去の測定結果に基づいて平均速度がユーザーにより指定されてもよい。あるいは、妊娠週数に基づいて平均速度が自動的に特定されてもよい。
実施形態に係る超音波診断装置は、更に、データに基づいて超音波画像を形成する画像形成部を含む。テンプレート生成部は、超音波画像における第1端部の輝度情報の時間的変化に基づいてテンプレートを生成する。グラフ生成部は、超音波画像における第2端部の輝度情報の時間的変化に基づいてグラフを生成する。
血管の拍動に伴って血管(及びその内外)の輝度情報が変化する。上記構成は、そのような輝度情報の時間的変化を利用してテンプレート及びグラフを生成するものである。血管の直径の変化、血管中のトラッキング点の変位等、他の情報が利用されてもよい。
実施形態においては、第1端部が含まれるように第1端部の輝度情報の時間的変化を観測するための第1関心領域が設定される。また、第2端部が含まれるように第2端部の輝度情報の時間的変化を観測するための第2関心領域が設定される。第1関心領域及び第2関心領域はユーザーにより設定され、あるいは、それらの領域は画像解析により自動的に設定される。
実施形態においては、超音波画像上に、第1関心領域及び第2関心領域を示す2つのマーカーが表示される。また、超音波画像と共に、血流の移動時間及び注目組織の長さが表示される。
実施形態に係る臍帯長測定方法は、テンプレート生成工程、グラフ生成工程、演算工程、及び、推定工程を含む。テンプレート生成工程では、超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部での拍動の揺らぎを表すテンプレートが生成される。グラフ生成工程では、データに基づいて、注目血管の下流側端部での拍動の揺らぎを表すグラフが生成される。演算工程では、グラフに対してテンプレートを比較することにより、上流側端部から下流側端部への血液の移動時間が演算される。推定工程では、血液の移動時間に基づいて臍帯長が推定される。
実施形態において、注目血管は動脈である。その場合、上流側端部は胎児の内部又は近傍に位置し、下流側端部は胎盤の内部又は近傍に位置する。あるいは、注目血管は静脈である。その場合、上流側端部は胎盤の内部又は近傍に位置し、下流側端部は胎児の内部又は近傍に位置する。
実施形態に係るプログラムは、情報処理装置において実行されるプログラムであって、テンプレート生成機能、グラフ生成機能、及び、演算機能を有する。テンプレート生成機能は、母体に対する超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部の時間的変化を表すテンプレートを生成する機能である。グラフ生成機は、データに基づいて、注目血管の下流側端部の時間的変化を表すグラフを生成する機能である。演算機能は、グラフの中でテンプレートとマッチングする部分を特定することにより、上流側端部から下流側端部への血液の移動時間を演算する機能である。
情報処理装置に対して、可搬型記憶媒体を介して又はネットワークを介して、プログラムがインストールされる。情報処理装置は、プログラムを実行するプロセッサを備える装置であり、その概念には、超音波診断装置、超音波診断システム、コンピュータ等が含まれる。
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が開示されている。超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、被検者に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成及び表示する装置である。以下、産科における妊婦の超音波検査を前提として、超音波診断装置の構成及び動作について説明する。
プローブ10は、可搬型の送受波器である。プローブ10は、ユーザーである検査者(医師、検査技師等)によって保持される。その送受波面が母体(妊婦)の腹部表面11上に当接される。プローブ10には、振動素子アレイが含まれる。振動素子アレイは、一次元配列された複数の振動素子により構成される。振動素子アレイにより超音波ビーム12が形成され、それが電子走査される。これにより走査面14が形成される。胎児内の1又は複数の観測部位が走査面14に含まれるように、プローブ10の位置及び姿勢が検査者により調整される。
超音波ビーム12の電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式等があげられる。走査面Sは、深さ方向r及び走査方向θによって特定される座標系を有する。プローブ10に二次元振動素子アレイを設けてもよい。すなわち、超音波ビームの二次元走査により、三次元空間からボリュームデータが取得されてもよい。
断層画像を表示するBモードが選択されている場合、上記のように、超音波ビーム12が電子走査される。ドプラ情報を観測するPWモード(又はCWモード)が選択されている場合、特定の観測方位に超音波ビーム16が繰り返し形成される。実施形態においては、必要に応じて、BモードとPWモードとを時分割で実行する複合モードが選択される。
送信回路18は、送信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。受信回路20は、受信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。送信時において送信回路18から振動素子アレイへ複数の送信信号が並列的に供給される。これにより送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波が振動素子アレイで受信されると、複数の振動素子から複数の受信信号が並列的に出力される。
複数の受信信号は、受信回路20において、整相加算(遅延加算)され、これにより受信ビームに相当するビームデータが生成される。Bモード実行時には、1回の超音波ビーム12の電子走査当たり1つの受信フレームデータが生成される。1つの受信フレームデータは、走査方向に並ぶ複数のビームデータにより構成される。1つのビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより生成される。なお、PWモードの実行時には特定方位に超音波ビームが繰り返し形成される。複合モードの実行時には、例えば、Bモード用の複数回の送受信とPWモード用の1回の送受信とが交互に実行される。
受信回路20の後段にはビームデータ処理部が設けられているが、その図示が省略されている。ドプラ処理部22は、PWモードに従う送受信により得られた各ビームデータからドプラ情報を抽出する回路である。具体的には、各ビームデータからサンプルゲートの情報が取り出され、それに対する周波数解析により、ドプラ情報の周波数解析結果であるスペクトルが生成される。スペクトルを示すデータがドプラ処理部22から表示処理部26へ送られている。また、そのデータが臍帯長演算部38へ送られている。臍帯長演算部38は、スペクトルに基づいて平均速度を演算する。平均速度の演算がドプラ処理部22で実行されてもよい。
断層画像形成部24は、受信フレームデータ列から表示フレームデータ列を生成するモジュールである。断層画像形成部24は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)を有している。DSCは、座標変換機能、補間機能、フレームレート調整機能、等を有している。生成された各表示フレームデータがそれぞれ断層画像に相当する。二次元血流画像等、他の超音波画像が形成されてもよい。そのような他の超音波画像から平均速度が演算されてもよい。表示フレームデータ列(つまり時系列順の断層画像列)は、表示処理部26及び拍動周期演算部28へ送られている。
表示処理部26は、画像合成機能、カラー演算機能、等を有する。断層画像のデータは、表示処理部26を介して、表示器40に送られている。表示器40は、LCD、有機ELデバイス、等により構成される。表示器40の画面上には、超音波画像としての断層画像が表示され、また、後述するように、2つの関心領域を示す2つのマーカー、血液の移動時間、推定された臍帯長、等が表示される。
実施形態に係る超音波診断装置は、拍動周期演算部28、テンプレート生成部30、テンプレート記憶部32、グラフ生成部34、時間差演算部36、及び、臍帯長演算部38を有している。それらの構成は、例えば、プロセッサ(後述するCPUであってもよい)が実現する複数の機能に相当する。それらの構成の説明に先立って、前提となる事項について説明しておく。
プローブ10の位置及び姿勢の調整により、胎児像及び胎盤像を含む断層画像が表示される。その際には、臍帯の2つの端部が断層画像上に現れるように、より具体的には、臍帯内を走行する注目血管の第1端部(実施形態において上流側端部)及び第2端部(実施形態において下流側端部)が断層画像上に現れるように、プローブ10の位置及び姿勢が調整される。なお、後述するパターンマッチングを行える限りにおいて、各端部が断層画像に順次現れるように、プローブ10の位置及び姿勢が調整されてもよい。
臍帯内を2つの動脈及び1つの静脈が走行しており、ユーザーにより、それらの中の1つの血管が注目血管として選択される。その選択が自動化されてもよい。臍帯は羊水内で曲がりくねっており、断層画像上には、通常、臍帯それ全体が現れることはなく、せいぜいその一部だけが現れる。
実施形態においては、プローブ10の位置及び姿勢の調整後、断層画像上において、注目血管の第1端部を含むように、第1関心領域(第1ROI)がマニュアルで設定され、注目血管の第2端部を含むように、第2関心領域(第2ROI)がマニュアルで設定される。断層画像の解析により、2つの関心領域が自動的に設定されてもよい。各関心領域内に他の血管が含まれないように、各関心領域の位置、サイズ、形状等が適宜定められる。
拍動周期演算部28は、各関心領域内の輝度情報の時間変化から拍動周期を順次演算する。拍動周期として、単位時間当たりの拍動数が演算されてもよい。断層画像上において、注目血管の各端部は、周期的に膨らんだりしぼんだりする。あるいは、各端部の形態や位置が周期的に変化する。つまり、その部分は周期的に明るくなったり暗くなったりする。断層画像の変化から個々の時刻における拍動周期を演算し得る。胎児においては、その周期がかなり長い周期(例えば、4,5秒の周期)で時間的に変動し、つまり拍動の揺らぎが認められる。なお、成人においてもそのような拍動の揺らぎが認められることもある。
拍動周期演算部28は、第1関心領域内の輝度情報から演算された周期列をテンプレート生成部30へ出力し、第2関心領域内の輝度情報から演算された周期列をグラフ生成部34へ出力する。
テンプレート生成部30は、入力された周期列として、又は、その一部として、テンプレートを生成する。テンプレートは、実施形態において、一定期間にわたる拍動周期の時間的変化を示す波形である。例えば、一定時間は、1秒から10秒の範囲内に設定される。但し、本願明細書に記載した数値はいずれも例示である。テンプレート記憶部32には、第1端部の輝度情報から生成されたテンプレートが記憶される。
グラフ生成部34は、第2端部の輝度情報から生成された周期列に基づいて拍動の時間的な変化を示すグラフを生成する。そのグラフは波形である。テンプレート生成とグラフ生成が同時進行で実行される。以下のパターンマッチングを適正に行える限りにおいて、それらを別々のタイミングで実行してもよい。
時間差演算部36は、マッチング部として機能するものである。すなわち、生成されたグラフの中からテンプレートがマッチングする部分を特定する。その際には、例えば、グラフに対してテンプレート位置を変更しながら、各テンプレート位置で相関演算が実行され、相関値が一定条件を満たした時点で、マッチング成立が判定される。
時間差演算部36は、テンプレート生成時とマッチング成立時の差(時間差)を演算する。その時間差は、テンプレート移動時間とも言い得る。つまり、その時間差は、注目血管において第1端部から第2端部まで血液が移動した時間に相当する。実施形態においては、拍動の揺らぎが長周期で変動することに着目し、両端間での揺らぎのパターンマッチングにより血流の移動時間を求めている。
臍帯長演算部38は、移動時間に対して平均速度(平均流速)を乗算することにより、臍帯長を推定する。平均速度は、ドプラ情報に基づいて特定される。あるいは、妊娠週数等から特定される。妊娠週数等の情報に基づいて平均速度を特定するテーブルを用意しておいてもよい。なお、ドプラ情報は、通常、第1端部から取得される。第2端部又は他の部位からドプラ情報が取得されてもよい。臍帯長を示すデータが表示処理部26へ送られている。
表示処理部26に対して、テンプレートを示すデータ、グラフを示すデータが送られてもよい。すなわち、表示器40の画面上に、テンプレート及びグラフが表示されてもよい。実施形態においては、動画像としての断層画像と共に、リアルタイム測定された移動時間及び臍帯長が数値として表示される。
制御部42は、図1に示されている各構成の動作を制御する。制御部42は、例えば、プログラムを実行するCPUにより構成される。制御部42には、操作パネル44が接続されている。操作パネル44は、複数のボタン、トラックボール、キーボード等を備える入力デバイスである。操作パネル44を利用して、2つの関心領域やサンプルゲートが設定される。操作パネル44を利用してテンプレート取得開始が指示される。操作パネル44を利用して平均速度が指定されてもよいし、妊娠週数が入力されてもよい。
図2には、断層画像46が示されている。但し、図2は実施形態を説明するための模式図である。図示の例において、断層画像46には、子宮の断面48が現れている。符号50は羊水を示し、符号52は子宮壁を示している。胎盤54と胎児57が臍帯56を介して繋がっている。臍帯56には、胎児側から見て2つの動脈及び1つの静脈が含まれる。通常、臍帯56それ全体は断層画像46に現れないが、図2においては、実施形態の理解のために、その全体が模式的に表現されている。
図示の例において、注目血管は特定の動脈である。その動脈における上流側端部aがテンプレート生成用の測定対象としての第1端部であり、その動脈における下流側端部bがグラフ生成用の測定対象としての第2端部である。
臍帯56の一方側端部及び他方側端部が胎児57内及び胎盤54内にまで及んでいるとの理解の下では、上流側端部aは臍帯56の一方側端部に属し、下流側端部bは臍帯56の他方側端部に属することになる。一方、臍帯56の一方側端部及び他方側端部が胎児57内及び胎盤54内にまで及んでいないとの理解の下では、上流側端部aは臍帯56の一方側端部の近傍であって胎児47内に位置し、下流側端部bは臍帯56の他方側端部の近傍であって胎盤54内に位置することになる。もっとも、いずれの理解を採用しても、臍帯長に実質的な違いは生じない。
図2においては、上流側端部aを通過するように、ドプラ情報観測用の方位58が設定されている。また、その方位58上において、上流側端部aを含むようにサンプルゲート60が設定されている。サンプルゲート60内からドプラ情報が取得される。ドプラ情報の取得が、テンプレート及びグラフの生成前に実施されてもよいし、それらの生成中に実施されてもよいし、それらの生成後に実施されてもよい。ドプラ情報から平均速度を演算する際に、血流方向とビーム方向のなす角度に応じた速度補正が適用されてもよい。
図3には、2つの関心領域62,64が示されている。断層画像46上において、上流側端部を囲むように第1関心領域62が設定され、下流側端部を囲むように第2関心領域64が設定される。なお、既に説明した要素と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。このことは図4以降の各図において同様である。第1関心領域62の設定及び上記サンプルゲートの設定の内で一方が他方を兼ねるようにしてもよい。
図4には、テンプレート70及びグラフ72が示されている。横軸tは時間軸であり、縦軸Dは拍動周期を示している。拍動周期は長い周期をもって変動する。つまり、拍動周期には揺らぎが認められる。その揺らぎにおける一周期の全部又は一部が入るようにテンプレート期間twが設定される。例えば、テンプレート期間twとして0.5秒~10秒の範囲内の期間が指定されてもよい。あるいは、2秒~8秒の範囲内の期間が指定されてもよい。図示の例では、テンプレート期間twの中心がt1で示されている。
グラフ72は時間的に成長していく。各タイミングでグラフ72に対してテンプレート70が比較される(例えば符号70Aを参照)。それらの比較に際しては相関演算が実行される。相関値が一定条件を満たした場合に一致が判定される。図示の例では、グラフ72の中で、符号72Aで示す部分がテンプレート70に一致している(符号70Bを参照)。部分72Aの中心が符号t2で示されている。t1からt2までの時間差dtが注目血管内における血液の移動時間であるとみなせる。血液の移動時間に対して血液の平均速度を乗算することにより、注目血管長を推定でき、その注目血管長を臍帯長であると推定できる。その際においては、必要に応じて、各種の補正を適用し得る。
図5には、表示例が示されている。画面74内には断層画像76が表示されている。断層画像76内には、第1端部に対して設定された第1関心領域を示すマーカー62A、及び、第2端部に対して設定された第2関心領域を示すマーカー64Aが含まれる。断層画像76の下側には、演算された移動時間を示す数値78、及び、推定された臍帯長を示す数値が表示されている。それらの数値を参照することにより、臍帯が長過ぎる異常又は短過ぎる異常を診断することが可能となる。
上記実施形態では、動脈が観測対象であったが、静脈が観測対象とされてもよい。その場合、上流側端部が胎盤側に設定され、下流側端部が胎児側に設定される。
図6には、動作例がフローチャートとして示されている。S10では、断層画像上において、注目血管の第1端部及び第2端部を含むように第1関心領域(第1ROI)及び第2関心領域(第2ROI)が設定される。S12では、血液の平均速度が特定される。その場合、ドプラ情報が利用されてもよい。妊娠週数から平均速度が特定されてもよい。S14では第1関心領域内の輝度情報に基づいてテンプレートが生成される。
S16では、第2関心領域内の輝度情報に基づいて生成されるグラフに対してテンプレートが順次比較される。S18において一致が判定されるまでその比較が繰り返される。一致が判定された場合、S20において、時間差つまり移動時間が演算される。S22では、血液の移動時間に血液の平均速度を乗算することにより、臍帯長が推定される。S24では、推定された臍帯長が表示される。
臍帯内の2本又は3本の血管に対して上記同様の手法により臍帯長を求め、それらの平均値を演算するようにしてもよい。記録された断層画像列に対して上記手法を適用してもよい。輝度情報の変化に代えて、血管径の変化、トラッキング点の変位、等を参照してもよい。ボリュームデータに基づいて上記手法により臍帯長が演算されてもよい。その場合には、プローブの位置及び姿勢の調整時の負担を軽減でき、第1関心領域及び第2関心領域をより適切に設定することが可能となる。同様の手法を他の血管を含む組織に適用してもよい。
図7には変形例が示されている。送信回路18及び受信回路20には、同時に動作する2つのプローブ10A及び10Bが接続されている。例えば、プローブ10Aにより注目血管の第1端部が観測され、プローブ10Bにより注目血管の第2端部が観測される。図7に示される構成を採用する場合、並列動作する2つの送信系統、及び、並列動作する2つの受信系統を設けてもよいし、1つの送信系統及び1つの受信系統をそれぞれ時分割動作させてもよい。
図8には他のマッチング方法が示されている。第1端部における拍動周期の揺らぎを示す波形82に対して平均化処理を適用することにより平均曲線86が生成される。平均曲線86と波形82の差分82Aがテンプレートを構成する。差分82Aが実施形態において注目する揺らぎ成分である。テンプレート期間がtw1で示されている。
一方、第2端部における拍動周期の揺らぎを示す波形84に対して上記同様に平均化処理を適用することにより平均曲線88が生成される。平均曲線88と波形84との差分84Aがグラフを構成する。差分84Aも実施形態において注目する揺らぎ成分である。
グラフ(符号84Aを参照)に対してテンプレート(符号82Aを参照)が逐次的に比較される。テンプレートに対して一致する部分が見付かった場合、時間差dt1が特定される。その時間差dt1が血液の移動時間である。図8に示した手法によれば、更に長周期の時間的変化が存在していても、その影響を受け難くなる。すなわち、移動時間の演算精度を高められる。
10 プローブ、22 ドプラ処理部、24 断層画像形成部、26 表示処理部、28 拍動周期演算部、30 テンプレート生成部、32 テンプレート記憶部、34 グラフ生成部、36 時間差演算部、38 臍帯長演算部。

Claims (11)

  1. 超音波の送受波により得られたデータに基づいて、注目組織を走行する注目血管の第1端部における拍動の揺らぎを表すテンプレートを生成するテンプレート生成部と、
    前記データに基づいて、前記注目血管の第2端部における拍動の揺らぎを表すグラフを生成するグラフ生成部と、
    前記グラフの中で前記テンプレートにマッチングする部分を特定することにより、前記第1端部と前記第2端部の間での血液の移動時間を演算する演算部と、
    前記血液の移動時間に基づいて前記第1端部と前記第2端部の間の長さを演算し、演算された長さ又はそれを補正した長さを前記注目組織の長さとして推定する推定部と、
    を含むことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記注目組織は臍帯であり、
    前記推定部は前記注目組織の長さとして臍帯長を推定する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記推定部は、前記血液の移動時間に前記血液の平均速度を乗算することにより、前記注目組織の長さを推定する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項3記載の超音波診断装置において、
    前記データに含まれるドプラ情報に基づいて前記血液の平均速度を演算する流速演算部を含む、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項3記載の超音波診断装置において、
    前記血液の平均速度は、ユーザー指定又は胎児情報に基づいて特定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  6. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記データに基づいて超音波画像を形成する画像形成部を含み、
    前記テンプレート生成部は、前記超音波画像における前記第1端部の輝度情報の時間的変化に基づいて前記テンプレートを生成し、
    前記グラフ生成部は、前記超音波画像における前記第2端部の輝度情報の時間的変化に基づいて前記グラフを生成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  7. 請求項6記載の超音波診断装置において、
    前記第1端部が含まれるように前記第1端部の輝度情報の時間的変化を観測するための第1関心領域が設定され、
    前記第2端部が含まれるように前記第2端部の輝度情報の時間的変化を観測するための第2関心領域が設定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  8. 超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部での拍動の揺らぎを表すテンプレートを生成する工程と、
    前記データに基づいて、前記注目血管の下流側端部での拍動の揺らぎを表すグラフを生成する工程と、
    前記グラフに対して前記テンプレートを比較することにより、前記上流側端部から前記下流側端部への血液の移動時間を演算する工程と、
    前記血液の移動時間に基づいて前記上流側端部と前記下流側端部の間の長さを演算し、その演算された長さ又はそれを補正した長さを臍帯長として推定する工程と、
    を含むことを特徴とする臍帯長測定方法。
  9. 請求項8記載の臍帯長測定方法において、
    前記注目血管は動脈であり、
    前記上流側端部は胎児の内部又は近傍に位置し、
    前記下流側端部は胎盤の内部又は近傍に位置する、
    ことを特徴とする臍帯長測定方法。
  10. 請求項8記載の臍帯長測定方法において、
    前記注目血管は静脈であり、
    前記上流側端部は胎盤の内部又は近傍に位置し、
    前記下流側端部は胎児の内部又は近傍に位置する、
    ことを特徴とする臍帯長測定方法。
  11. 情報処理装置において実行されるプログラムであって、
    母体に対する超音波の送受波により得られたデータに基づいて、臍帯内を走行する注目血管の上流側端部の時間的変化を表すテンプレートを生成する機能と、
    前記データに基づいて、前記注目血管の下流側端部の時間的変化を表すグラフを生成する機能と、
    前記グラフの中で前記テンプレートとマッチングする部分を特定することにより、前記上流側端部から前記下流側端部への血液の移動時間を演算する機能と、
    前記血液の移動時間に基づいて前記上流側端部と前記下流側端部の間の長さを演算し、その演算された長さ又はそれを補正した長さを臍帯長として推定する機能と、
    を含むことを特徴とするプログラム。
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