JP7455644B2 - 発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラム - Google Patents

発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラムに関する。
今後、中長期的に電力系統への再生可能エネルギー電源(以下、「再エネ」とも称する。)の大量導入が見込まれており、同期発電機を多数停止した運用が想定される。同期発電機の停止に伴い同期化力が低下する点と、再エネ増大により系統の潮流が重潮流化・不確実化する点を考慮すると、過渡安定度が低下することが懸念される。過渡安定度を維持するための方策の1つとして、発電計画時点で過渡安定度が維持できない断面(場面)について発電機の運転・停止状態や発電計画を変更する方法が考えられる。
特開2016-208826号公報
上述の過渡安定度低下への懸念の対策として、例えば、詳細過渡安定度計算を繰り返し実行して過渡安定度を維持できる断面を探索する方法が考えられる。しかしながら、条件によっては実行すべき詳細過渡安定度計算の回数が膨大となり、限りある時間内で計算が終了しないことや、計算資源(計算機台数、演算プロセッサ数等)の増大によりシステムのコストが増加することが懸念される。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、計算量を抑制しつつ、過渡安定度を維持できる適切な発電計画を決定することができる発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラムを提供することである。
実施形態の発電計画決定システムは、電力系統について詳細過渡安定度計算に基づいて過渡安定度を評価する安定度評価部と、過渡安定度の維持可否を判定するための閾値を算出する安定度評価閾値生成部と、過渡安定度を維持可能な制約条件に基づいて予め定義した目的関数の値を最小化する発電計画と需要計画とを含む計画を、前記閾値を用いて過渡安定度の維持可否の判定を繰り返すことで作成する最適計画作成部と、前記最適計画作成部において作成された前記計画に対して詳細過渡安定度計算を実行して前記制約条件を満たさない場合には前記制約条件を満たすように計画を補正する計画補正部と、を備える。
図1は、実施形態の発電計画決定システムの全体構成等を示す図である。 図2は、再エネ出力予測情報の一例を示す図である。 図3は、需要計画情報の一例を示す図である。 図4は、発電計画情報の一例を示す図である。 図5は、発電機情報の一例を示す図である。 図6は、想定事故ケース情報の一例を示す図である。 図7は、系統状態情報の一例を示す図である。 図8は、安定度評価部の処理を示すフローチャートである。 図9は、安定度評価情報の一例を示す図である。 図10は、安定度評価閾値生成部の処理を示すフローチャートである。 図11は、図10のS23の詳細の一例を示すフローチャートである。 図12は、閾値情報の一例を示す図である。 図13は、計画補正部の処理を示すフローチャートである。 図14は、最適化履歴情報の一例を示す図である。 図15は、最適化履歴情報の一例をグラフ化した図である。 図16は、メタヒューリスティクス手法の説明図である。
以下、実施形態の発電計画決定システム、発電計画決定方法、およびプログラムについて、図面を参照して説明する。
[発電計画決定システムの全体構成]
図1は、実施形態の発電計画決定システム1の全体構成等を示す図である。電力系統2には、例えば、発電機21(21A(G1)、21B(G2))と、再エネ22(22A、22B)と、負荷23(23A、23B)と、系統状態情報収集装置24(24A、24B、24C、24D、24E)と、制御装置25(25A、25B、25C、25D)と、が接続される。なお、以下において、発電機21と再エネ22を総称して「発電機」と称する場合がある。
発電機21は、火力発電機、水力発電機、原子力発電機などの大規模電源である。再エネ22は、太陽光発電や風力発電などの複数の電源で構成される。負荷23は、ビル、工場、一般家庭などの複数の需要家により構成される。系統状態情報収集装置24は、開閉器の開放・投入状態や、発電機の並解列状態など、電力系統2の構成に関する情報を発電計画決定システム1に送信する。制御装置25は発電計画決定システム1から計画データを受信し、発電機21や再エネ22や負荷23の制御を実施する。
発電計画決定システム1は、過渡安定度(以下、単に「安定度」とも称する。)を維持可能な制約条件(例えば、発電機の物理的な制約を含む。)に基づいて予め定義した目的関数(例えば、発電機21の調整に伴い発生する総コスト最小の目的関数)の値を最小化する電力系統2における発電機21、再エネ22の発電計画や負荷23の需要計画を作成する。発電計画や需要計画は、例えば、実需給断面の1時間前に単一時間コマを対象に作成したり、前日に翌日の全時刻を対象に作成したり、1週間前に翌週の各日を対象に計画したりしても良い。発電計画等の単位時間は、例えば30分や1時間などであるが、これらに限定されない。
発電計画決定システム1は、一以上のプロセッサを含む。発電計画決定システム10は、単体のコンピュータ装置であってもよいし、二以上に分散化されたコンピュータ装置であってもよい。発電計画決定システム1は、処理部11、記憶部12、入力部13、表示部14を有する。
入力部13は、例えば、各種キー、ボタン、ダイヤルスイッチ、マウス、表示部14と一体として形成されるタッチパネルなどのうち一部または全部を含む。また、入力部13は、外部装置と電気的に接続される接続部であってもよい。表示部14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-luminescence)表示装置などである。記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などのフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などである。
処理部11における各機能部(各部11A~11G)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む。)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
処理部11のうち、データ管理部11Aは、入力部13から入力された情報を記憶部12における再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12Eに記録する。入力部13にはキーボードやタッチパネルなどのI/O機器を接続してもよいし、あるいは、別のシステムからの情報を入力部13に入力(伝送)してもよい。
図2は、再エネ出力予測情報12Aの一例を示す図である。再エネ出力予測情報12Aは、再エネ22の出力予測値を計画対象時刻ごとに保存した情報である。太陽光発電や風力発電などの再エネ22の出力値は天候に応じて変動する可能性があるため、想定されるパターンを複数保持しておく。
図3は、需要計画情報12Bの一例を示す図である。需要計画情報12Bは、負荷23の需要を計画対象時刻ごとに保存した情報である。需要は、例えば、小売事業者から受領した需要計画値や需要予測値を用いれば良い。
図4は、発電計画情報12Cの一例を示す図である。発電計画情報12Cは、発電機21の出力値を計画対象時刻ごとに保存した情報である。発電機21の出力値は、例えば、発電事業者から受領した発電計画値を用いれば良い。
図5は、発電機情報12Dの一例を示す図である。発電機情報12Dは、最小出力、最大出力、上げ出力変化速度、下げ出力変化速度、上げ調整単価、下げ調整単価などの各発電機21に関する諸元(諸要素)の情報を保存した情報である。
図6は、想定事故ケース情報12Eの一例を示す図である。想定事故ケース情報12Eは、想定事故ケースの事故箇所、事故様相、安定化制御などの情報を保存した情報である。安定化制御の情報については、例えば、系統安定化システムなどの別システムから入力すれば良い。
処理部11のうち、系統状態情報収集部11Fは、電力系統2の系統状態情報収集装置24を介して開閉器の開放・投入状態や、発電機の並解列状態など、電力系統2の構成に関する情報を収集し、記憶部12の系統状態情報12Fに保存する。図7は、系統状態情報12Fの一例を示す図である。なお、系統状態情報12Fの情報は、入力部13およびデータ管理部11Aを介して入力されても良い。
処理部11のうち、安定度評価部11Bは、記憶部12における再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12E、系統状態情報12Fを読み込み、計画対象時刻、想定事故ケース、再エネ出力予測パターンの全組合せに対して各1回の詳細過渡安定度計算を実行のうえ、その結果を安定度評価情報12Gに保存する。
処理部11のうち、安定度評価閾値生成部11Cは、記憶部12における再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12E、系統状態情報12F、安定度評価情報12Gを読み込み、過渡安定度の維持可否を判定(以下、「過渡安定度の判定」とも称する。)するための閾値を算出して閾値情報12Hに保存する。
処理部11のうち、最適計画作成部11Dは、記憶部12における再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12E、系統状態情報12F、安定度評価情報12G、閾値情報12Hを読み込み、過渡安定度を維持可能な制約条件下で、計画により生じる目的関数値を最小化する電力系統2における発電機21、再エネ22の発電計画や負荷23の需要計画を作成し、最適化履歴情報21Iに保存する。
処理部11のうち、計画補正部11Eは、最適計画作成部11Dの解である発電機21、再エネ22の発電計画や負荷23の需要計画が反映された系統状態を対象に詳細過渡安定度計算を実行し、不安定となる場合には安定となるように計画(解。例えば図4の出力値)を補正する。
処理部11のうち、制御指令送信部11Gは、計画補正部11Eにより作成された解すなわち発電計画や需要計画を制御装置25に送信する。また、制御指令送信部11Gは、表示部14に発電計画や需要計画を表示する。
なお、記憶部12に記憶する各情報12A~12Iのうち、従来技術と比較して特に新しいのは、安定度評価情報12G、閾値情報12H、最適化履歴情報21Iである。また、処理部11における各部11A~11Gのうち、従来技術と比較して特に新しいのは、安定度評価閾値生成部11C、計画補正部11Eである。
[発電計画決定システムの作用(処理)]
次に、実施形態の発電計画決定システム1の作用(処理)について説明する。図8は、安定度評価部11Bの処理を示すフローチャートである。安定度評価部11Bは、S1で想定事故ケースを初期化し(f=0)、S2で再エネ出力パターンを初期化し(p=0)、S3で計画対象時刻を初期化する(t=0)。なお、以下において、各変数(f、p、t)のインクリメント処理については適宜行うものとし、説明を省略する。
次に、安定度評価部11Bは、S14、S15、S16の処理を想定事故ケース数Fmax、再エネ出力パターン数Pmax、計画対象時刻数Tmaxの全組合せに対して実行する。具体的には、以下のとおりである。
安定度評価部11Bは、S14において、再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12E、系統状態情報12Fを読み込み、系統データを作成して詳細過渡安定度計算を実行する。
次に、安定度評価部11Bは、S15において、詳細過渡安定度計算結果から過渡安定度を判定し、安定度評価情報12Gに保存する。過渡安定度の判定は、例えば詳細過渡安定度計算結果において発電機の内部相差角が180deg.を超過する発電機が存在する場合には不安定、その他の場合には安定とする方法が考えられる。
次に、安定度評価部11Bは、S16において、詳細過渡安定度計算結果を保存したファイルを安定度評価情報12Gに保存する。保存する詳細過渡安定度計算結果は潮流計算結果、発電機内部相差角の時間推移、などの情報を含む。
S17において、t<TmaxであればS14に戻り、t=TmaxであればS18に進む。S18において、p<PmaxであればS13に戻り、p=PmaxであればS19に進む。S19において、f<FmaxであればS12に戻り、f=FmaxであればS20に進む。
安定度評価部11Bは、S20において、安定度評価閾値生成部11Cでの閾値の算出要否を判定して、安定度評価情報12Gに保存する。閾値の詳細は後述するが、最適計画作成部11Dにおいて最適化計算過程で詳細過渡安定度計算を実行せずに過渡安定度を判定する場合に用いる。元の計画において安定であるケースは最適化計算自体が不要であるので、閾値の算出は不要である。また、元の計画において不安定であるケースのうち、最適化計算過程で詳細過渡安定度計算を実行して過渡安定度を判定するケースについても閾値の算出は不要である。詳細過渡安定度計算を実行するケース数は計算機の処理能力や事故条件の複雑さ等に応じて任意に決定することができる。
図9は、安定度評価情報12Gの一例を示す図である。安定度評価情報12Gは、事故ケース、再エネ出力パターン、時間、過渡安定度、過渡安定度計算結果を保存したファイル名、閾値の算出の要否(あり/なし)の各項目から構成される。
図10は、安定度評価閾値生成部11Cの処理を示すフローチャートである。安定度評価閾値生成部11Cは、S21で、ケースの変数を初期化する(N=0)。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S22、S23の処理について、不安定かつ閾値を算出する対象としたケース数Nmaxだけ繰り返す。具体的には、以下のとおりである。
安定度評価閾値生成部11Cは、S22において、過渡安定度との相関性があり、かつ潮流計算などの詳細過渡安定度計算以外の方法によって算出可能な指標を過渡安定度の評価指標に決定する。例えば、詳細過渡安定度計算で最初に脱調する発電機の端子電圧の相差角とする方法や、過去の計算データから相関係数の最も大きい計算値とする方法や、事前のオフライン検討で指標を決定して保存しておく方法などが考えられる。また、指標は複数あっても良く、さらに複数の指標について加重平均を取った値などでも良い。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S23において、S22で決定した過渡安定度の評価指標について、不安定と安定の境界となる閾値を算出する。不安定と安定の境界となる閾値の算出方法としては、図11に示されるように、発電機の有効電力出力を2分法によって変化させて不安定と安定の境界となる閾値を算出する方法が考えられる。
図11は、図10のS23の詳細の一例を示すフローチャートである。安定度評価閾値生成部11Cは、S201において安定度評価情報12Gに保存された詳細過渡安定度計算結果を参照し、不安定発電機群を決定する。不安定発電機群を決定する方法としては、例えば、発電機の内部相差角が180deg.を超過する発電機が出現する時刻まで、発電機の内部相差角が単調増加する発電機群とする方法が考えられる。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S202において、不安定発電機群の有効電力出力合計値をPGuとする。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S203において、PGulに不安定発電機群の最低出力の合計値を代入し、PGuuにPGuを代入する。
そして、安定度評価閾値生成部11Cは、S206~S212の処理を、iがImaxに達するまで(S205でYesになるまで)繰り返す。
安定度評価閾値生成部11Cは、S206において、iをインクリメントする。次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S207において、PGulとPGuuの平均値をPGucに代入する。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S208において、不安定発電機群のPG合計値がPGucになるように各発電機出力値を変更し、変更により生じた需給インバランス分は不安定発電機群以外の発電機にて調整する。
次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S209において、過渡安定度計算を実行する。次に、安定度評価閾値生成部11Cは、S210において、過渡安定度が安定か否かを判定し、Yesの場合はS211に進み、Noの場合はS212に進む。
S211において、安定度評価閾値生成部11Cは、PGulにPGucを代入する。S212において、安定度評価閾値生成部11Cは、PGuuにPGucを代入する。S211、S212の後、S205に戻る。
安定度評価閾値生成部11Cは、S213において、不安定発電機群のPG合計値がPGuuである場合における過渡安定度の評価指標の値を閾値に設定する。なお、上記の例は2分法による実現案を示したが、その他の探索アルゴリズムを用いても良い。
図12は、閾値情報12Hの一例を示す図である。閾値情報12Hは、例えば、過渡安定度の評価指標値がG1の端子電圧の相差角である。
最適計画作成部11Dは、記憶部12における再エネ出力予測情報12A、需要計画情報12B、発電計画情報12C、発電機情報12D、想定事故ケース情報12E、系統状態情報12F、安定度評価情報12G、閾値情報12Hを読み込み、各時刻について、すべての事故ケース、再エネ出力パターンにおいて過渡安定度を維持可能な制約条件下で、予め定義した目的関数(例えば、発電機の調整に伴い発生する総コスト最小の目的関数)の値を最小化する電力系統2における発電機21、再エネ22の発電計画や負荷23の需要計画を作成する。
ただし、最適計画作成部11Dは、過渡安定度の判定方法として、安定度評価情報12Gにおいて過渡安定度が「不安定」でかつ閾値の算出が「なし」のケースについては、詳細過渡安定度計算を実行することにより判定する。過渡安定度が「不安定」でかつ閾値の算出が「あり」のケースについては、潮流計算などの詳細過渡安定度計算よりも高速に実行することが可能な方法によって過渡安定度の評価指標を算出し、閾値情報12Hに保存された閾値と比較することにより判定する。最適化問題は、例えば遺伝的アルゴリズムや差分進化などのメタヒューリスティクス手法や、最適潮流計算として定式化できる場合には汎用最適化ソルバーを用いて解くことができる。
図13は、計画補正部11Eの処理を示すフローチャートである。計画補正部11Eは、S31において、時刻を初期化する(t=0)。次に、計画補正部11Eは、最適化を実行し、かつ過渡安定度の判定に際して閾値情報12Hを用いたケースが存在する時刻数TOmaxだけ(S41でYesになるまで)S32からS40までの処理を繰り返す。具体的には、以下のとおりである。
計画補正部11Eは、S32において、最適計画作成部11Dの最適解について、全ての事故ケース、再エネ出力パターンで詳細過渡安定度計算を実行する。S33で不安定なケースが存在する(つまり、安定でない)場合には(No)、計画補正部11Eは、S34において、図14に示すような、過渡安定度の評価指標値と最適化の目的関数値の関係を保存したデータベースを作成し、最適化履歴情報12Iに保存する。
図14は、最適化履歴情報12Iの一例を示す図である。なお、最適化履歴情報12Iは例えば最適化方法としてメタヒューリスティクス手法を用いた場合には全世代、全個体の計算結果をデータベース化すれば良い。
ここで、図16は、メタヒューリスティクス手法の説明図である。メタヒューリスティクス手法では、例えば、まず、発電機G1の出力値と発電機G2の出力値の組み合わせ(P1~P9)をランダムに設定する。そして、最適化の計算を実行するたびに、その組み合わせ(P1~P9)が最適値に近づく。この場合、発電機G1の出力値と発電機G2の出力値の組み合わせを個体と呼び、最適化を繰り返す回数を世代数と呼ぶ。
次に、図15は、最適化履歴情報12Iの一例をグラフ化した図である。図15は、図14のデータベースについて、横軸をG1の端子電圧の相差角、縦軸を目的関数値としてプロットした例である。
計画補正部11Eは、図13のS35において、最適解における過渡安定度の評価指標をθ_0^solとする。次に、計画補正部11Eは、S36でi=0に設定し、S37において、過渡安定度の評価指標がθ_i^sol未満で最適化の目的関数値が最小の点について全ての事故ケース、再エネ出力パターンについて詳細過渡安定度計算を実行する。
S38で不安定なケースが存在する(つまり、安定でない)場合には(No)、計画補正部11Eは、S39でθ_(i+1)^sol=θ_i^sol-α、S40でi=i+1に設定し、S37以降の処理を再度実行する。図15の例では、(ア)点(最適解)において不安定となるケースがあり、また、θ_0^sol未満のデータで目的関数値が最小である(イ)点でも不安定となるケースがある。そして、θ_1^sol未満のデータで目的関数値が最小である(ウ)点で全ケースが安定となり、(ウ)点を新たな解として選択する。
なお、αは固定値として事前に設定した値とするか、あるいはiが増加するにつれて可変にしても良い。また、実施形態では図15において横軸方向に新たな解を探索したが、縦軸方向に解を探索しても良い。さらに、過渡安定度以外の制約条件も同時に確認し、これも満たすような解に補正しても良い。
計画補正部11Eにより作成された解すなわち発電計画や需要計画を制御装置25に送信する。なお、実需給断面において需要・供給が発電計画や需要計画作成時の想定と一致しない場合には、一般的な経済負荷配分装置や負荷周波数制御装置の情報を用いて制御指令を補正すれば良い。また、同時に表示部14にも発電計画や需要計画を表示する。
[発電計画決定システムの効果]
安定度評価閾値生成部11Cで算出した閾値を用いて、最適計画作成部11Dの最適化過程において詳細過渡安定度計算よりも高速な手法で過渡安定度を判定した場合、詳細過渡安定度計算結果に基づき過渡安定度を判定する場合と比較して高速に発電計画、需要計画を策定可能である。
一例として、最適計画作成部11Dでメタヒューリスティクス手法により最適化を実行した場合、個体数100、世代数100と設定すると、1時刻、1事故ケース、1再エネパターンに対して10,000回の過渡安定度の評価が必要になる。例えば1回の計算につき10秒の計算時間を要する詳細過渡安定度計算を過渡安定度の評価のために実行した場合には100,000秒の計算時間を要する。
一方、例えば1回の計算につき0.1秒の計算時間を要する潮流計算を過渡安定度の評価のために実行した場合には1,000秒で計画を策定可能である。ただし、本実施形態を用いた場合、設定値に応じて安定度評価閾値生成部11Cおよび計画補正部11Eで複数回の詳細過渡安定度計算が必要であり、それぞれ10回とした場合には20回分の詳細過渡安定度計算のために200秒を要し、最適計画作成部11Dの計算時間と合わせて1、200秒の計算時間を要する。それでも最適計画作成部11Dで詳細過渡安定度計算を過渡安定度の評価のために実行した場合と比較すると98.8%の削減、即ち1.2%の計算時間で済む。
このように、本実施形態の発電計画決定システム1によれば、詳細過渡安定度計算だけを行うのではなく、詳細過渡安定度計算と他の計算(例えば潮流計算)を使い分けることで、計算量を抑制しつつ、過渡安定度を維持できる適切な発電計画を決定することができる。具体的には、過渡安定度を維持できる制約条件下で目的関数値の最小化を図りつつ、詳細過渡安定度計算を用いるよりも高速に最適化計算を実行できる。
従来技術では、例えば、固有値に基づく最適化計算によって安定度が向上するように発電機の出力配分を決定する技術を提案している。固有値は詳細過渡安定度計算よりも高速に導出できるが、線形領域を対象とした定態安定度の評価に用いられる指標であり、今回目的とする過渡安定度の向上に用いた場合には非線形領域において精度面で問題が生じることが懸念される。本実施形態の発電計画決定システム1によれば、非線形領域においても高精度な発電計画等の計画を策定できる。
また、発電計画決定システム1によれば、過渡安定度との相関があり、かつ詳細過渡安定度計算以外の方法によって算出可能な指標を過渡安定度の評価指標に決定し、その評価指標を用いることで、詳細過渡安定度計算を用いるよりも高速な最適化計算を具体的に実行できる。
また、詳細過渡安定度計算よりも高速な手法で過渡安定度を判定した場合には、過渡安定度が不安定となる解が得られてしまうリスクがあるが、計画補正部11Eの処理によって必ず安定となる計画(解)を得ることが可能である。
また、上述のように安定度評価閾値生成部11Cによる閾値の算出の要否を判定することで、発電計画決定システム1における手法と従来と同様の詳細過渡安定度計算の手法を適切に組み合わせることができる。
本実施形態の発電計画決定システム1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
当該プログラムは、上述した各部11A~11Gを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部11A~11Gが主記憶装置上にロードされ、主記憶装置上に生成される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…発電計画決定システム、2…電力系統、11…処理部、11A…データ管理部、11B…安定度評価部、11C…安定度評価閾値生成部、11D…最適計画作成部、11E…計画補正部、11F…系統状態情報収集部、11G…制御指令送信部、12…記憶部、13…入力部、14…表示部、21…発電機、22…再エネ、23…負荷、24…系統状態情報収集装置、25…制御装置

Claims (4)

  1. 電力系統について過渡安定度計算に基づいて過渡安定度を評価する安定度評価部と、
    過渡安定度の維持可否を判定するための閾値を算出する安定度評価閾値生成部と、
    過渡安定度を維持可能な制約条件に基づいて予め定義した目的関数の値を最小化する発電計画と需要計画とを含む計画を、前記閾値を用いて過渡安定度の維持可否の判定を繰り返すことで作成する最適計画作成部と、
    前記最適計画作成部において作成された前記計画に対して過渡安定度計算を実行して前記制約条件を満たさない場合には前記制約条件を満たすように計画を補正する計画補正部と、
    を備え
    前記安定度評価閾値生成部は、
    過渡安定度との相関があり、かつ過渡安定度計算以外の方法によって算出可能な指標を過渡安定度の評価指標に決定し、前記評価指標について不安定と安定の境界となる前記閾値を算出し、
    前記安定度評価部は、前記閾値の算出要否を評価して記録し、
    前記閾値の算出が必要である場合は、前記安定度評価閾値生成部において前記閾値を算出し、前記最適計画作成部において過渡安定度の前記評価指標の値と閾値とを比較して、前記過渡安定度計算よりも高速に過渡安定度の維持可否を判定し、
    前記閾値の算出が不要である場合は、前記最適計画作成部において過渡安定度計算を実行して過渡安定度の維持可否を判定する、発電計画決定システム。
  2. 前記計画補正部は、
    前記最適計画作成部における計算過程で得られた過渡安定度の前記評価指標の値と、前記目的関数の値とを組み合わせたデータベースを構築し、前記データベース中の任意のデータに対して過渡安定度計算の実行を繰り返すことにより前記制約条件を満たすように前記計画を補正する、請求項に記載の発電計画決定システム。
  3. 電力系統について過渡安定度計算に基づいて過渡安定度を評価する安定度評価ステップと、
    過渡安定度の維持可否を判定するための閾値を算出する安定度評価閾値生成ステップと、
    過渡安定度を維持可能な制約条件に基づいて予め定義した目的関数の値を最小化する発電計画と需要計画とを含む計画を、前記閾値を用いて過渡安定度の維持可否の判定を繰り返すことで作成する最適計画作成ステップと、
    前記最適計画作成ステップにおいて作成された前記計画に対して過渡安定度計算を実行して前記制約条件を満たさない場合には前記制約条件を満たすように計画を補正する計画補正ステップと、
    を含み、
    前記安定度評価閾値生成ステップは、
    過渡安定度との相関があり、かつ過渡安定度計算以外の方法によって算出可能な指標を過渡安定度の評価指標に決定し、前記評価指標について不安定と安定の境界となる前記閾値を算出し、
    前記安定度評価ステップは、前記閾値の算出要否を評価して記録し、
    前記閾値の算出が必要である場合は、前記安定度評価閾値生成ステップにおいて前記閾値を算出し、前記最適計画作成ステップにおいて過渡安定度の前記評価指標の値と閾値とを比較して、前記過渡安定度計算よりも高速に過渡安定度の維持可否を判定し、
    前記閾値の算出が不要である場合は、前記最適計画作成ステップにおいて過渡安定度計算を実行して過渡安定度の維持可否を判定する、発電計画決定方法。
  4. コンピュータに、
    電力系統について過渡安定度計算に基づいて過渡安定度を評価する安定度評価部と、
    過渡安定度の維持可否を判定するための閾値を算出する安定度評価閾値生成部と、
    過渡安定度を維持可能な制約条件に基づいて予め定義した目的関数の値を最小化する発電計画と需要計画とを含む計画を、前記閾値を用いて過渡安定度の維持可否の判定を繰り返すことで作成する最適計画作成部と、
    前記最適計画作成部において作成された前記計画に対して過渡安定度計算を実行して前記制約条件を満たさない場合には前記制約条件を満たすように計画を補正する計画補正部と、
    を実行させるためのプログラムであって、
    前記安定度評価閾値生成部は、
    過渡安定度との相関があり、かつ過渡安定度計算以外の方法によって算出可能な指標を過渡安定度の評価指標に決定し、前記評価指標について不安定と安定の境界となる前記閾値を算出し、
    前記安定度評価部は、前記閾値の算出要否を評価して記録し、
    前記閾値の算出が必要である場合は、前記安定度評価閾値生成部において前記閾値を算出し、前記最適計画作成部において過渡安定度の前記評価指標の値と閾値とを比較して、前記過渡安定度計算よりも高速に過渡安定度の維持可否を判定し、
    前記閾値の算出が不要である場合は、前記最適計画作成部において過渡安定度計算を実行して過渡安定度の維持可否を判定する、プログラム
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