JP7450929B2 - 圧力測定システム、圧力測定方法、およびプログラム - Google Patents

圧力測定システム、圧力測定方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、圧力測定システム、圧力測定方法、およびプログラムに関する。
生体の活動状態を示す指標として、血圧、脈拍、体温などが代表的である。これらの指標は、いずれも圧力と関連する。生体の圧力を計測することは、活動状態を把握するうえで重要である。生体に埋植可能とする圧力の検出器が従来から提案されている。
例えば、特許文献1には、所定量の流体がハウジング内の可撓性部材に封止され、可撓性部材の一端には位置支持部材が連結され、外部の圧力変化に応じて流体により可撓性部材が伸縮し、ハウジングに対する位置支持部材の相対的位置により生理学的圧力が測定される膨張可能インジケータについて記載されている。
特許文献2には、電気機械的基板上に少なくとも一部分を取り囲むように成形された可撓性外膜を含むように液体カプセル化によりパッケージングされた圧力センサを備え、圧力センサの少なくとも一部分と可撓性外膜との間に疎水性液体を含む埋め込み型医療装置について記載されている。
特許文献3には、門脈及び肝静脈系の各々に埋め込まれたセンサ装置が周囲流体圧力に依存する共振周波数を有する振動センサを備え、各センサ装置で超音波振動を受けさせ、超音波振動に応答して発生した振動を受信し、各センサ装置のそれぞれの振動数から共振周波数を決定し、決定した共振周波数から各センサ装置を囲む流体の周囲圧力と圧力勾配を決定する検出方法について記載されている。
特開平11-218455号公報 特表2018-516102号公報 特表2014-527866号公報
生体内に埋植する検出器には、日用品よりも厳格な要件が課される。例えば、生体情報を計測できることはもとより、生体適合性があること、安定した電力供給、確実な情報伝達などが求められる。従来の手法によれば、生体情報の計測を実現できるとしても、実用性を図るうえで、生体適合性の他、電力供給や情報伝達の安定性なども含む諸要件が十分に考慮されていないことがあった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、より実用的に生体内の圧力を計測可能とする圧力測定システム、圧力測定方法、およびプログラムを提供することを課題の一つとする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、液体を収容する空間を有する容器と、弾性体からなり、前記容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜と、膜の形状を計測する計測部と、前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する圧力推定部と、を備える圧力測定システムである。
また、本発明の一態様は、弾性体からなり、液体を収容する空間を有する容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜の形状を計測する第1ステップと、前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する第2ステップと、を備える圧力測定方法である。
また、本発明の一態様は、コンピュータに、弾性体からなり、液体を収容する空間を有する容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜の形状を計測する第1ステップと、前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する第2ステップと、を備える圧力測定装置として機能させるためのプログラムであってもよい。
より実用的に生体内の圧力を計測可能とする圧力測定システム、圧力測定方法、およびプログラムを提供することできる。
第1の実施形態に係る圧力測定システムの概要を説明するための説明図である。 第1の実施形態に係る感圧部の構成例を示す斜視図である。 第1の実施形態に係る感圧部の構成例を示す断面図である。 第1の実施形態に係る膜の形状変化の第1例を示す断面図である。 第1の実施形態に係る膜の形状変化の第2例を示す断面図である。 第1の実施形態に係る計測部の機能構成を示す概略ブロック図である。 第1の実施形態に係る圧力推定部の機能構成例を示す概略ブロック図である。 第1の実施形態に係る圧力推定処理の例を示すフローチャートである。 検査画像の第1例を示す図である。 検査画像の第2例を示す図である。 検査画像の第3例を示す図である。 第1の実施形態に係る感圧部の他の構成例を示す断面図である。 第1の実施形態に係る感圧部の他の構成例を示す平面図である。 第1の実施形態に係る圧力の測定系の一例を示す図である。 圧力の測定値と圧力変化の関係の例を示す図である。 圧力伝達率の例を示す表である。 圧力伝達率の例を示す図である。 第2の実施形態に係る圧力推定処理の例を示すフローチャートである。 第2の実施形態に係る圧力の測定系の一例を示す図である。 管材の断面の例を示す断面図である。 検査画像の第4例を示す図である。 検査画像の画素数の輝度分布の第1例を示すヒストグラムである。 検査画像の画素数の増加量の輝度分布の例を示すヒストグラムである。 所定輝度における画素数の増加量の例を示す図である。 回帰線の傾きの例を示す図である。 圧力誤差の例を示す図である。 標準偏差の例を示す図である。 微小気泡の共振周波数の例を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る圧力測定システム1の概要を説明するための説明図である。
図1は、圧力測定システム1が人体Hb内の被検体の圧力を計測する場合を例示する。ここで、妊婦の体内において成育する胎児(fetus)Ftに生じた脊髄髄膜瘤(myelomeningocele)への応用を例とする。脊髄髄膜瘤は、脊椎の成育不全により脊髄が体内から露出し、瘤が生じる病変である。瘤からは髄液が漏れ出す。脊髄髄膜瘤の治療において、胎児期に瘤をパッチで覆うことにより保護することがある。これにより、瘤からの髄液の漏れを防ぐとともに、脊髄と胎盤等との接触を抑制することができる。そのため、治療後において髄液圧をモニタリングすることでパッチの剥がれや髄液圧の異常な変化の有無を定期的に確認することが重要となる。しかしながら、体温や血圧などとは異なり体外に測定器を装着して髄液圧を直接計測することは現実的ではない。そこで、本実施形態に係る圧力測定システム1は、人体Hbの外部から超音波を照射して、被検体の例として髄液の圧力計測を実現する。図1に示す例では、瘤を覆うパッチに感圧部10を設置もしくはパッチの一部として構成することで、脊髄髄膜瘤の治療、診断に役立てることができる。
図1に示す例では、圧力測定システム1は、感圧部10と、計測部20と、圧力推定部30と、を含んで構成される。感圧部10は、被検体Obの圧力を検出するため、人体Hbの被検体Obに接する部位に設置される。感圧部10は、液体を収容する容器12(後述)と、弾性体からなり、容器12の外周の一部を覆い、液体を封止する膜16(後述)を備える。感圧部10は、被検体Obの圧力に応じて膜16が変形することで、加えられた圧力による影響を受ける。感圧部10はシリコンゴムなどの生体適合性と、外力による変形に対する弾性を有する材料で構成することができる。
計測部20として、超音波検査装置が用いられている。計測部20は、プローブ(探触子)20pに接続される。プローブ20pは、計測に用いる放射波として超音波を放射し、所定の観測領域内に分布した物体から反射される反射波を検出する。計測部20は、プローブ20pにより検出された反射波を用いて膜16の形状を示す検査画像を撮影する。検査画像には、観測領域内に配置した物体を表す部位が、その周囲よりも高い輝度で表される。従って、検査画像を撮影することで、感圧部10の膜16の形状が計測される。
圧力推定部30として、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)が用いられている。圧力推定部30は、計測部20で撮影した検査画像を取得し、検査画像に表される膜16の変形量を解析する。圧力推定部30は、解析した変形量から所定の基準圧力を基準とした相対的な圧力であって、容器12から膜16を挟んで隔離される外部の圧力を推定することができる。基準圧力は、容器12の外部の圧力と、容器12の内部の圧力とが釣り合う状態、つまり、平衡状態における圧力である。
生体適合性を確保するためには、生体内に埋植されうる感圧部10の素材として生体適合性を有する素材を用いればよい。また、計測部20は、人体Hbの外部から超音波を照射して得られる膜16の形状を示す検査画像を取得することができる。膜16の変形量と被検体Obの圧力との対応関係を示す圧力変換データを予め圧力推定部30に設定しておくことで、検査画像を用いて被検体Obの圧力の情報が感圧部10へ電力を供給せずに伝達される。よって、本実施形態によれば、より実用的な生体内の圧力計測を実現することができる。
次に、本実施形態に係る感圧部10の構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る感圧部10の構成例を示す斜視図である。図3は、図2に例示される感圧部10のA-A’断面を示す断面図である。
図2、図3に示す例では、感圧部10は、一辺の長さが他の辺よりも短い平べったい直方体の形状を有する。感圧部10を平面視した表面の形状は、ほぼ正方形である。以下の説明では、短辺の長さ、方向をそれぞれ厚みもしくは深さ、Z方向もしくは厚み方向と呼ぶことがある。Z方向と相互に直交する一つの方向、他の方向を、それぞれX方向もしくは幅方向、Y方向もしくは奥行方向と呼ぶことがある。X方向の長さ、Y方向の長さを、それぞれ幅、奥行と呼ぶことがある。
感圧部10は、周囲よりも凹んだ空間をなす空洞部14を有し、空洞部14に液体が収容される容器12を備える。図2に示す例では、空洞部14の平面視した形状は正方形である。空洞部14の深さは、容器12の厚みのほぼ半分となる。容器12の表面の一部は膜16で覆われる。膜16で覆われる領域は、空洞部14の表面全体と、そのX-Y面内の周囲の所定の幅を有する支持領域Sp(図3)である。膜16は、容器12表面の支持領域Spにおいて接着剤をもって接着され、空洞部14内の液体を封止する。空洞部14内の圧力(以下、内部圧力と呼ぶことがある)と、空洞部14外の圧力(以下、外部圧力と呼ぶことがある)とが釣り合った状態では、膜16の表面は、感圧部10の表面と同一平面内に配置される。容器12の表面のうち、膜16で覆われていない部分を基準面Tsと呼ぶ。外部圧力と内部圧力が釣り合った状態、即ち、平衡状態での内部圧力もしくは外部圧力が基準圧力に相当する。
容器12および膜16の素材として、加圧により弾性変形する弾性体が用いられる。膜16の厚みは、容器12の厚みよりも薄いため、膜16の方が容器12よりも剛性が低い。当該素材として、例えば、生体適合性を有する材料が用いられてもよい。生体適合性とは、毒性やアレルギー反応などの生体との相互作用、近接する生体組織の反応もしくは生体全体の反応を惹起させず、化学的安定性が高く、生体内で劣化、分解ならびに生体との癒着が生じないことを指す。容器12および膜16の素材として、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴムなどの合成高分子材料が利用可能である。
ここで、外部圧力が上昇し、内部圧力よりも外部圧力が相対的に高くなる場合(陽圧)を仮定する。その場合、図4に示すように、膜16が容器12の外部から空洞部14の内部に押される。よって、膜16が基準面Tsよりも空洞部14の内部に窪む。他方、外部圧力が内部圧力よりも相対的に低くなる場合(陰圧)には、膜16が空洞部14の内部から容器12の外部に向けて押される。よって、膜16が基準面Tsよりも容器12の外部に突き出る。後述するように、圧力推定部30は、膜16の変形量として、空洞部14の平面視中央部における基準面TsからのZ方向の変位(図5)を膜16の検査画像から定めることができる。膜16の変形量は、その周囲をなす基準面Tsに近づくほど小さく、空洞部14の平面視中央部において最も著しい。そして、圧力推定部30は、圧力変換データを用いて、定めた変位に基づいて外部圧力と内部圧力との圧力差、ひいては、基準圧力を基準とする外部圧力を定めることができる。
(計測部)
次に、本実施形態に係る計測部20の機能構成例について説明する。図6は、本実施形態に係る計測部20の機能構成例を示す概略ブロック図である。以下の説明では、計測部20が主に医療用の超音波検査装置として構成されている場合を例にするが、他の用途を主目的とする装置(例えば、非破壊検査装置)や専用のハードウェアで構成されてもよい。超音波検査装置は、超音波を検査対象物に照射し、検査対象物から反射される反射波に基づいて被検体の状態を示す画像を取得することができる。超音波検査は、非侵襲な検査方法であるうえ、X線などとは異なり被曝による生体組織の損傷を生じない。計測部20は、生体の外部から生体内に埋植された感圧部10の膜16の形状を表す画像を検出することができる。
計測部20は、検出部21、入出力部23、表示部24、記憶部25、および制御部26を含んで構成される。
検出部21は、プローブ20p(図1)を構成する。検出部21は、所定の周波数(例えば、3~10[MHz])の超音波パルスを放射波として放射する。検出部21は、例えば、パルス信号を生成する発振器と発生したパルス信号の振幅に応じて振動する圧電振動子を備える。圧電振動子は、放射波の放射器(アクチュエータ)と反射波の検出器(センサ)の機能を有する。なお、発振器は、生成したパルス信号を制御部26に出力する。
検出部21は、検査対象物から自部に到来する反射波を受信し、受信した反射波に応じた振幅を有する検出信号を生成し、生成した検出信号を制御部26に出力する。また、検出部21は、制御部26から入力される受信制御信号に基づいて反射波の受信方向を制御可能とする。従って、反射波の受信方向が走査される。
入出力部23は、他装置との間で各種のデータを入出力可能とする。入出力部23は、例えば、入出力インタフェースを含んで構成される。
表示部24は、制御部26から入力される各種の画像データに応じた画像を表示する。表示部24は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを備える。表示部24は、検査画像取得部262から入力される検査画像データに基づく検査画像を表示することができる。
記憶部25は、制御部26における処理に用いられる各種のデータ、制御部26により取得される各種のデータを一時的または永続的に記憶する。記憶部25は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含む。
制御部26は、計測部20としての各種の機能を発揮させるための処理、または、その機能を制御するための処理を実行する。制御部26は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含み、記憶部25に記憶された所定の制御プログラムに記述された命令で指示される処理を実行して、その機能を発揮する。なお、本願では、各種のプログラムに記述された命令で指示される処理を実行することを、プログラムを実行する、プログラムの実行、などと呼ぶことがある。
制御部26は、その機能を実現する機能部として検査画像取得部262を備える。
検査画像取得部262は、検出部21から放射される放射波と受信される反射波を用いて、放射波が伝搬する媒体の位置ごとの反射波の強度を検出画像として取得する。より具体的には、検査画像取得部262は、検出部21から入力されるパルス信号の周期ごとに、パルス信号の信号値のピーク値をとる時刻を基準とする相対的な各時刻における検出信号の信号値を、その時刻に対応する距離における反射波の強度として定める。この各時刻は、パルス信号の放射時刻から反射波の到来時刻までの波動の往復時間に相当する。検査画像取得部262は、各時刻と予め設定された音速との積を2で除算して得られる値を検出部21から反射体までの距離として定めることができる。他方、検査画像取得部262は、所定の走査周期で変動する受信方向を定め、定めた受信方向を示す受信制御信号を生成し、生成した受信制御信号を検出部21に出力する。
検査画像取得部262は、定めた距離と受信方向から被検体の位置に対応する画素を特定し、その受信波の強度に対応する輝度を定める(Bモード)。検査画像取得部262は、被検体の断面をなす2次元平面内に分布した複数のサンプル点ごとの強度を示す信号値、それぞれのサンプル点に対応する画素の輝度を示す輝度値として、所定の値域を有する整数値に変換する。従って、検査画像は、2次元平面内に分布した複数のサンプル点のそれぞれに対応する輝度で表される。輝度が高い部位は、ある物体の外縁、つまり他の物体との境界をなす可能性が高い。言い換えれば、検査画像取得部262は、検査画像として膜16の形状が表される形状計測部として機能する。
検査画像取得部262は、画素ごとの輝度で表される検査画像データを生成し、生成した検査画像データを表示部24に出力する。検査画像取得部262は、生成した検査画像データを圧力推定部30に入出力部23を経由して出力する。
(圧力推定部)
次に、本実施形態に係る圧力推定部30の機能構成例について説明する。図7は、本実施形態に係る圧力推定部30の機能構成例を示す概略ブロック図である。以下の説明では、圧力推定部30がPC、タブレット端末装置、スマートフォンなどの汎用のハードウェアで構成されている場合を例にするが、専用のハードウェアで構成されてもよい。
圧力推定部30は、入出力部33、表示部34、記憶部35、および制御部36を含んで構成される。
入出力部33は、他装置との間で各種のデータを入出力可能とする。入出力部33は、例えば、入出力インタフェースを含んで構成される。
表示部34は、制御部36から入力される各種の画像データに応じた画像を表示する。表示部34は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを備える。表示部34は、例えば、圧力変換部364(後述)から入力される圧力情報を含む圧力情報表示画面を表示する。表示部34は、生体情報解析部366から入力される生体情報を含む生体情報表示画面を表示する。
記憶部35は、制御部36における処理に用いられる各種のデータ、制御部36により取得される各種のデータを一時的または永続的に記憶する。記憶部35は、例えば、ROM、RAMなどの記憶媒体を含む。
制御部36は、圧力推定部30としての各種の機能を発揮させるための処理、または、その機能を制御するための処理を実行する。制御部26は、CPUなどのプロセッサを含み、記憶部35に記憶された所定の制御プログラムを実行して、その機能を発揮する。制御部36は、かかる機能を実現する機能部の例として、変形量解析部362、圧力変換部364、および生体情報解析部366を備える。
変形量解析部362は、計測部20から入力される検査画像から膜16の形状を定め、定めた形状から膜16に生じた変形量を解析する。変形量解析部362は、例えば、検査画像に対して画像認識処理を行って膜16が表れている部位と膜16の形状を定める。変形量解析部362には、膜16の形状を示す形状特徴量として、可能性のある範囲(例えば、弧の曲率、弧または線分の長さの範囲など)の値を予め設定しておく。変形量解析部362は、例えば、検査画像から輝度が所定の輝度よりの高い領域の輪郭を抽出し、その輪郭の形状を示す形状特徴量が設定した範囲内に含まれる部位を膜16の部位として定めることができる。変形量解析部362は、定めた部位とその周囲における輪郭を膜16と膜16が支持されている部位である容器12の基準面Tsと、その形状からZ方向を特定する。そして変形量解析部362は、特定した基準面Tsからの膜16の中央部におけるZ方向への変形量を定める。変形量解析部362は、定めた変形量を圧力変換部364に出力する。
圧力変換部364は、記憶部35に予め記憶された圧力変換データを用いて、変形量解析部362から入力される変形量に対応する圧力を、空洞部14から膜16を挟んで対面する空間における外部圧力を定める。圧力変換データは、例えば、複数の変形量のそれぞれに対応する外部圧力を示すテーブルであってもよいし、所定の関数に基づいて変形量に対応する外部圧力を算出するためのパラメータであってもよい。圧力変換データがテーブルである場合には、複数の変形量は離散的に分布するため、入力される変形量が圧力変換データに存在するとは限らない。そこで、圧力変換部364は、入力される変形量に対応する外部圧力として、その変形量から所定の範囲内の複数の変形量にそれぞれ対応する外部圧力を補間して定めることができる。圧力変換部364は、例えば、定めた外部圧力を示す圧力情報を表示部34に出力してもよいし、入出力部33を経由して他機器に出力してもよい。圧力変換部364は、圧力情報を記憶部35に記憶してもよいし、生体情報解析部366に出力してもよい。
生体情報解析部366は、圧力変換部364から入力される圧力情報に基づいて生体の活動状態を示すパラメータを生体情報の一例として解析してもよい。例えば、生体情報解析部366は、圧力情報が示す外部圧力として髄液圧の時間変化を示す傾きを算出し、算出した傾きが所定の基準範囲よりも有意に小さいもしくは大きいとき、髄液圧の異常の発生を判定する。生体情報解析部366、その値が所定の基準範囲内であるとき、髄液圧が正常と判定してもよい。また、生体情報解析部366は、圧力情報が示す外部圧力の時間変化の度合いを示す移動平均値の所定期間内における分散を算出し、その分散から生体活動の活性度を推定してもよい。
次に、本実施形態に係る圧力推定処理の例について説明する。図8は、本実施形態に係る圧力推定処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)検出部21は、感圧部10に超音波を放射する。
(ステップS104)検出部21は、感圧部10から反射される反射波を検出する。
(ステップS106)検査画像取得部262は、検出された反射波に基づく検出信号に基づいて検査画像を生成することで、感圧部10に設置された膜16の形状が検出される。
(ステップS108)変形量解析部362は、生成された検査画像に表される膜16の形状を定め、定めた形状から基準圧力を基準とした膜16の変形量を解析する。
(ステップS110)圧力変換部364は、予め設定された圧力変換データに基づいて、解析した変形量から外部圧力を推定する。その後、図8に示す処理を終了する。
次に、検査画像の例について説明する。図9は、検査画像の第1例を示す図である。図9に例示される検査画像は、感圧部10の中心部を通るX方向とZ方向に平行に張られる断面(X-Z面)を示す。検査画像の濃淡は、X-Z面内の反射体の位置ごとの反射波の反射強度を示す。明るい部分ほど反射強度が高く、暗い部分ほど反射強度が低いことを示す。従って、明るい部分がX-Z面内の反射体として推認される部位を示す。そのうち、図9に例示される検査画像のほぼ中央部における横長の明るい部分が、平衡状態における膜16の形状を示す。検査画像の膜16に相当する部分は、ほぼ水平方向の線分を表す。このことは、膜16がX-Y面に平行であることを示す。変形量解析部362は、例えば、この状態における膜16の形状を基準(つまり、変形量0)として、膜16の変形量を解析する。
図10は、検査画像の第2例を示す図である。この例では、感圧部10の外部圧力よりも内部圧力の方が高い(陰圧)。そのため、図10では膜16の部分が水平方向よりも上方に凸に示される。この状態は、膜16が空洞部14から突き出ていることを示す。そこで、変形量解析部362は、検査画像から膜16の部位を検出し、平衡状態におけるZ方向の高さ(破線)を基準とし、検出した部位の中央部のZ方向の高さを負の変形量として定める。圧力変換部364は、圧力変換データに基づいて、変形量解析部362で定めた変形量に対応する外部圧力として基準圧力よりも低い圧力を定めることができる。
図11は、検査画像の第3例を示す図である。この例では、感圧部10の外部圧力の方が内部圧力よりも高い(陽圧)。そのため、図11では膜16の部分が水平方向よりも下方に凸に示される。この状態は、膜16が空洞部14に窪むことを示す。そこで、変形量解析部362は、検査画像から膜16の部位を検出し、平衡状態におけるZ方向の高さ(破線)を基準とし、検出した部位の中央部のZ方向の高さを正の変形量として定める。圧力変換部364は、圧力変換データに基づいて、変形量解析部362で定めた変形量に対応する外部圧力として基準圧力よりも高い圧力を定めることができる。
なお、感圧部10の大きさは、検出部21から放射される放射波が膜16に到来し、膜16から反射した反射波が検出部21において検出されるまでの往復時間を所定の精度をもって検出可能な検出範囲内に収まる大きさであればよい。また、生体への埋植を目的とする場合には、生体活動に支障を生じない大きさであればよい。一例として、感圧部10のX-Y平面内の一辺の長さは、10~40[mm]、Z方向の厚みは、5~20[mm]である。また、空洞部14のX-Y平面内の一辺の長さは、4~15[mm]、Z方向の厚みは、3~13[mm]である。感圧部10の形状は直方体に限らず、立方体、円柱、角柱、角錐台、円錐台などのいずれであってもよい。空洞部14の形状も円柱に限らず、立方体、直方体、角柱、角錐台、円錐台などのいずれであってもよい。感圧部10の全体を示す容器12の形状と空洞部14の形状が異なってもよい。図12、図13に示す変形例では、容器12の形状は四角錐台であるが、空洞部14の形状は円柱である。
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。図12、図13は、それぞれ本変形例に係る感圧部10の構成例を示す断面図、平面図である。図12は、図13に例示される感圧部10のB-B’断面を示す。
本変形例に係る感圧部10は、空洞部14を有する容器12と、基準面12t(基準面Tsに相当)と基準圧力下で同一平面をなす膜16と、さらに被覆部42を備える。被覆部42は、外部から膜16への機械的な接触や衝撃を避けることで、膜16を保護する。
被覆部42は、容器12とほぼ同じ大きさの四角錐台の形状を有し、その内部に空洞部44を有する。被覆部42は、その基準面42tが容器12の基準面12tに対面するように配置されている。空洞部44は、空洞部44を有し、容器12の空洞部14と膜16を挟んで対面している。空洞部44は、側面42sに連なる流路48が設けられている。但し、容器12の空洞部14内の液体は膜16で封止されるため、空洞部44や流路48には漏洩しない。他方、被覆部42の外部を覆う流体(液体を含む)は流路48を経由して空洞部44にも流入し充填される。感圧部10を覆う流体は、ほぼ静水圧とみなせる。そのため、感圧部10が流体で覆われる状況のもとで空洞部44内の圧力は外部圧力に相当する。
図12に示す例では、流路48が、空洞部44から水平方向に延伸しているが、正面42bと交差する面に連接していれば、よりZ方向に傾いていてもよいが、Z方向と交差せずZ方向に平行、つまり正面42bに延伸しないことが望ましい。また、被覆部42の形状が図12、13に示す例とは異なる場合には、流路48は被覆部42の正面と交差する面に連接していることが望ましい。これにより、被覆部42の正面から受けうる機械的な衝撃や接触もしくは圧力の変動が膜16に伝達されるまでに緩和される。そのため、膜16は、外力から保護される。
空洞部44の基準面42t内の形状と大きさは、空洞部14の基準面12t内の形状と大きさと異なっていてもよいが、それぞれ等しい方が好ましい。これは、外部圧力と内部圧力との圧力差によって生ずる膜16の変形が、陰圧の場合と陽圧の場合とで対称となるためである。そのため、変形量解析部362における膜16の形状の解析と、圧力変換部364における変形量に基づく外部圧力の推定において複雑な演算を要せずに済む。
また、被覆部42基準面42tの形状と大きさは、対面する容器12の基準面12tの形状と大きさと異なっていてもよいが、それぞれ等しい方が好ましい。これは、基準面42tから基準面12tへ、または、その逆方向への力の伝達に偏りが生じないため、構造的に安定なためである。圧力変化に伴う膜16の変形により、膜16が容器12から剥離することを予防することができる。
(測定値の例)
次に、図14に例示される測定系において実測した圧力の測定値について説明する。
測定系では、図2、図3に例示される感圧部10の表面(基準面Tsに相当)に配置された膜16の全体を覆うように加圧部Psを配置した。加圧部Psの正面にプローブ20pを接触させ、プローブから放射される放射波に基づく膜16からの反射波を検出することで膜16の形状を示す検査画像を取得した。測定値は、上記の手法により検査画像に現れる膜16の形状の変形量に基づいて得られる。
加圧部Psには、感圧部10の空洞部と膜16を挟んで対面する位置に空洞部が設けられている。加圧部Psの空洞部の開口面の大きさは、感圧部10の開口面よりも大きく、その全体を覆う。加圧部Psの空洞部は、管材Tbの一端と連通し、管材Tbの他端にシリンジSgが配置されている。そして、感圧部10の空洞部、加圧部Psの空洞部、管材Tbの内部には、それぞれ生理食塩水を充填する。このような構成により、シリンジSgにかける力により、加圧部Psの空洞部内の圧力を任意に変化させることができる。管材Tbには、その内部の流体の圧力を測定するための圧力計Mnが設置され、加圧部Psに加える圧力を観測可能としている。なお、図14では図示が省略されているが、実験では感圧部10の空洞部内の液体の圧力を測定するための圧力計を設置した。
本実施形態に係る圧力の計測方法は、膜16の変形量を用いるため、膜16の剛性と弾性に基づく張力により内部圧力と外部圧力との圧力差(以下、測定値)が、現実の基準圧力と外部圧力との圧力差(以下、圧力変化)よりも小さくなる傾向がある。図15は、膜厚が0.73[mm]である場合を例として、縦軸、横軸に、それぞれ測定値[kPa]、圧力変化[kPa]を示す。この場合には、測定値yは、圧力変化xの0.16倍と、ほぼ正比例する。このことは、測定値が圧力変化よりも小さくなるとしても、本実施形態により変形量に基づいて正確に外部圧力を測定できることを裏付ける。
また、膜厚が小さくなるほど測定値が大きくなる傾向がある。これは、膜16が薄いほど剛性が低くなるので、加えられた圧力変化が内部圧力と外部圧力との圧力差として、より反映されるためである。図16は、膜厚[mm]と圧力伝達率[%]の関係を示す表である。圧力伝達率は、内部圧力と外部圧力との圧力差の加えられた圧力変化に対する比である。図17は、縦軸、横軸に、それぞれ圧力伝達率[%]、膜厚[mm]を示す。図16、図17は、膜厚が小さいほど測定値が大きくなる傾向を示す。圧力伝達率yと膜厚xとの関係は、y=7.2346x-1.146となる。なお、回転数[rpm]とは、膜16の生産工程で用いられるスピンコータ(spin coater)の回転数である。スピンコータは、材料を塗布した基板を回転させることにより生ずる遠心力を利用して薄膜(ダイアフラム)を生成する装置である。一般に回転数が大きいほど、生成される膜の膜厚が小さくなる。より具体的には、生成される膜の膜厚hと材料の初期膜厚hとは、式(1)に示す関係がある。
Figure 0007450929000001
式(1)において、ω、t、νは、それぞれ回転速度[rad/sec]、時間[sec]、材料の動粘度[mm/sec]を示す。動粘度ν[m/sec]は、材料の密度ρ[kg/m]に対する粘度μ[Pa]の比μ/ρとして定義される。
従って、本実施形態によれば、膜16の厚みにより測定対象とする圧力の感度を定量的に調整することができる。
なお、上記の説明では、計測部20と、圧力推定部30が、それぞれ別個の機器で実現される場合を例にしたが、これには限られない。圧力推定部30の各機能部(例えば、変形量解析部362、圧力変換部364、生体情報解析部366の全部または一部)は、計測部20と共通の部材(例えば、制御部26)により実現されてもよい。また、形状計測部とする検査画像取得部262が、圧力推定部30と共通の部材(例えば、制御部36)により実現されてもよい。
また、計測部20は、必ずしも検査、診断を主目的とする検査装置もしくは診断装置として構成されていなくてもよい。計測部20は、膜16の形状の検出に役立つ情報(例えば、パルス信号、検出信号)を取得することができれば、必ずしも検出画像を生成または表示する機能を有していなくてもよい。また、計測部20は、超音波以外の波動、例えば、赤外線、ミリ波、など、膜16の形状の特定に利用可能な検出情報を安全に取得することができればよい。また、計測部20は、圧力推定部30の各機能部(例えば、変形量解析部362、圧力変換部364、生体情報解析部366の全部または一部)を備えてもよいし、所定のプログラムの実行により、それらの機能を実現してもよい。
以上に説明したように、本実施形態に係る圧力測定システム1は、液体を収容する空間(例えば、空洞部14)を有する容器12と、弾性体からなり、容器12の外周の一部を覆い、液体を封止する膜16を備える。また、圧力測定システム1は、膜の形状を計測する計測部20と、計測した形状の変形量から、その空間の内部の圧力と平衡する圧力(例えば、基準圧力)を基準とし、その空間から膜16を挟んで隔離される空間の外部の圧力を推定する圧力推定部30と、を備える。
この構成により、容器12と膜16に電力を供給しなくても、計測した膜16の変形量に基づいて外部圧力を定めることができる。そのため、生体内の圧力計測の実用性を向上することができる。
また、容器12の外周をなす基準面のうち液体を収容する空間の周縁部において膜16が支持され、膜16の剛性は容器12の剛性よりも低くてもよい。
この構成により、容器12の周囲への圧力変化が膜16の変形として表れる。そのため、膜16の変形量に基づいて計測される圧力の精度を確保することができる。また、膜厚により膜16の剛性を変更することで、圧力変化に対する感度を調整することができる。
また、計測部20は、放射波を放射し、膜16からの反射波を検出する検出部と、放射波と反射波との時間差に基づいて膜16の形状を計測する形状計測部(例えば、検査画像取得部262)を備えてもよい。
この構成により、膜16に対して時刻や周波数等の特性が既知な放射波と反射波との時間差を用いて、膜16を構成する各部位までの距離を取得することで膜16の変形量を取得することができる。
また、放射波は超音波であってもよい。超音波を用いることで、生体に対する被曝による損傷や障害などの影響を生じないため、安全に膜16の形状を計測することができる。
また、容器12と膜16は、生体適合性材料からなってもよい。生体適合性材料を用いることで、容器12と膜16を生体内に埋植しても、生体組織や活動に対する影響を生じないため、安全に膜16の形状を計測することができる。
また、膜16を覆う被覆部42を備え、被覆部42は、空洞部44を有し、空洞部44は、容器12の空間と膜16を挟んで対面し、かつ、被覆部42の正面と交差する面につながる流路48を有してもよい。
この構成により、膜16に対面する空洞部44内に液体が流入するので、空洞部44を経由して、被覆部42の正面に加わる力が膜16に直接伝わらない。そのため、容器12の周囲に満たされる液体の圧力を高い精度で測定できるとともに、容器12に加わる力から膜16が保護される。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と共通の構成、処理については、特に断らない限り、第1の実施形態と共通の符号や名称を付して、その説明を援用する。以下の説明は、第1の実施形態との差異点を主とする。
本実施形態に係る圧力測定システム1も、感圧部10、計測部20、および圧力推定部30を備える(図1)。本実施形態に係る感圧部10は、空洞部14を有する容器12を備え、空洞部14に液体を収容する。但し、本実施形態では、空洞部14に満たされる微小気泡が封止される。微小気泡の直径は、例えば、1~4[μm]である。微小気泡は、超音波造影剤として作用する。つまり、超音波造影剤が添加された液体は、空洞部14に到来する超音波を反射する反射体となる。超音波造影剤として、例えば、ソナゾイド(登録商標)などが利用可能である。個々の気泡は、難溶性で生体と反応せず、かつ化学的に安定なガスを充填した脂質膜で覆われる。気泡に充填されるガスは、例えば、ペルフルブタンなどのフッ化炭素ガスが利用される。個々の脂質膜は、リン脂質の油膜をなす。そのため、微小気泡は生体の代謝により生体外に排出される。万一、封止された液体が容器12から漏洩しても生体適合性が害されない。
計測部20の検出部21は、感圧部10に超音波を放射し、感圧部10から反射した反射波に基づく検出信号を検出する。計測部20の検査画像取得部262は、検出した反射波に基づいて、感圧部10の一部または全体の状態を示す検査画像を取得する。但し、本実施形態において出力される検査画像は、微小気泡が封止された液体を表す部分が含まれる画像である。また、超音波が照射されると、微小気泡は共振する特性を有し、共振により高調波が発生する。高調波の発生要因となる微小気泡の挙動には、例えば、座屈、弾性変形、破裂、崩壊などがある。そのため、検査画像には、高調波の発生により周囲の部位よりも輝度が高くなる高輝度部位が含まれる。共振周波数は後述するように圧力に応じて変化するので、検査画像の輝度分布は、液体の圧力に応じて有意に変化する。そこで、本実施形態では、圧力推定部30において検査画像の輝度による画素数の分布に基づいて外部圧力を推定する。
圧力推定部30は、圧力変換部364を備え、膜16の変形量を解析する変形量解析部362を必ずしも要しない。圧力推定部30は、生体情報解析部366を備えてもよいし、備えなくてもよい。
本実施形態では、圧力変換部364は、計測部20から入力された各1フレームの検査画像から輝度ごとの画素数を計数し、輝度ごとの画素数の分布を示すヒストグラムを生成する。圧力変換部364は、生成したヒストグラムに基づいて外部圧力を定める。より具体的には、圧力変換部364は、所定の検出範囲内の輝度を有する画素数をヒストグラムから特定し、予め記憶部35に記憶させた圧力変換データに基づいて計数した画素数に対応する外部圧力を定める。検出範囲として、圧力の変化に応じて有意かつ単調に画素数が変化する輝度の範囲を予め設定しておく。検出範囲に代えて、検出範囲内の単一の特定の輝度を特定輝度として予め設定しておいてもよい。また、本実施形態では、圧力変換データとして、その輝度の画素数と外部圧力との関係を示す情報を予め設定しておく。
次に、本実施形態に係る圧力推定処理の例について説明する。図18は、本実施形態に係る圧力推定処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS202)検出部21は、感圧部10に超音波を放射する。
(ステップS204)検出部21は、感圧部10から反射される反射波を検出する。
(ステップS206)検査画像取得部262は、検出された反射波に基づく検出信号に基づいて検査画像を生成する。
(ステップS208)圧力変換部364は、生成された検査画像から輝度ごとの画素数を計数し、輝度ごとの画素数の分布を示すヒストグラムを生成する。
(ステップS210)圧力変換部364は、所定の検出範囲内の特定輝度の画素数を特定し、特定した画素数から外部圧力を推定する。その後、図18に示す処理を終了する。
(測定例)
次に、図19に例示される測定系を用いた圧力の測定例について説明する。
図19に示す例では、微小気泡を含む液体が充填された管材Tbを観測対象として用いた。この測定系は、感圧部10の空洞部14には管材Tbの内部に連なる流路が設けられ、感圧部10に加わる外部圧力を管材Tbの内部の液体に膜16を介して空洞部14内に予め伝達された状態を模擬している。よって、管材Tb内部の圧力が容器12内部の圧力に相当する。管材Tbとして内径が15mmの医療用チューブを用いた。管材Tbは環を形成し、循環器Pp(いわゆる、ペリスタポンプ(登録商標))が設置されている。循環器Ppは、管材Tbに充填される液体を循環させることができる。管材Tbには、微小気泡の他、顔料(絵の具)を希釈した生理食塩水を充填した。管材Tbは、分枝を有し、分枝の中間と端点には、それぞれ圧力計MnとシリンジSgが設置されている。シリンジSgは、押下により管材Tbの内部を加圧することができる。圧力計Mnは、管材Tb内部の圧力を計測する。
図20は、管材Tbの断面の例を示す。サンプルボリュームは、管材Tb断面のほぼ中央部に設置されている。サンプルボリュームは、検査画像を撮像する空間的な領域である。
図21は、検査画像の一例を示す。図21に示す例では、検査画像は、左方、右方にそれぞれ管材Tbの断面の画像、波形部分を示す。波形部分は、縦軸、横軸にそれぞれ、検査画像の特定輝度に係る画素数、時刻を示す。波形部分は、画素数が時間変化に応じて周期的に変動することを示す。これは、循環器Ppの動作により、管材Tb内部における流速が周期的に変動することを示す。図22-図28に示す例では、超音波の周波数を7.81[MHz]、サンプルボリュームを0.5[mm]、流速を24.8[cm/s]、スイープ速度を50[mm/s]とした。
図22は、あるフレームにおける検査画像における輝度値ごとの画素数の分布例を表すヒストグラムである。図23は、基準圧力における画素数を基準とした、画素数の増加量の輝度値間の分布例を示す。この例では、シリンジSgから加圧されない状態での圧力を基準圧力(0kPa)としている。また、画素ごとの輝度値のビット深度は、8ビットとしている。輝度値は0から255までの整数となる。
図22、図23に示す例では、輝度値が220以上であって230以下となる高輝度範囲において、圧力が高いほど画素数が有意に増加する現象が認められる。輝度値が229の場合には、画素数のピークが検出される。圧力変換部364には、この高輝度範囲を検出範囲として設定しておけばよい。また、圧力変換部364は、高輝度範囲内のいずれかの輝度値を特定輝度として設定しておいてもよい。高輝度範囲内の輝度を与える反射波の成分は、微小気泡の共振により生じる高調波成分が主となる。図24に示す例では、圧力は画素数の増加量にほぼ正比例し、画素数の増加量に対応する圧力の回帰線は、直線に適合する。図24に示す例では、輝度値は229である場合における、圧力ごとの画素数の増加量を示す。圧力が画素数の増加量に正比例することを仮定すると、画素数に基づく圧力の推定誤差(以下、圧力誤差)、標準偏差は、それぞれ0.4[kPa]、1.6[kPa]となった。この圧力誤差、標準偏差は、画素数の推定誤差、画素数の標準誤差をそれぞれ圧力に換算して得られる。
図25は、輝度値ごとの回帰線の傾きの例を示す。回帰線の傾きは、輝度値が増加するほど有意に増加する傾向が認められる。
但し、図26に例示されるように、圧力誤差は、輝度値に対してランダムに変動する。この変動は、圧力誤差の輝度値に対する依存性が乏しいことを示す。他方、図27は、輝度値が増加するほど標準偏差が低下する傾向を示す。この傾向は、回帰線の傾きが大きいほど、画素数の増加量に基づく圧力の推定精度が高いことを示す。よって、圧力変換部364には、圧力変化により画素数の変化量が十分に大きい輝度値を予め設定しておくことで、画素数に基づいて推定される外部圧力の推定精度を確保することができる。
検査画像に表される高輝度画素の部位は、照射される超音波により励起される微小気泡の共振による、高調波成分の放射による。微小気泡の共振周波数は、後述するように圧力が高いほど高くなり、個々の微小気泡の半径が大きいほど低くなる傾向がある。被検体には大きさの異なる多数の微小気泡が混合しているため、超音波の周波数が一定である場合には、圧力の増加により高調波成分の輝度ごとの画素数の分布が変化する。このことが、圧力変化に伴う所定の輝度値を有する画素数の変化をもたらすと考えられる。なお、高調波成分のうち最も強度が著しい二次調波成分の周波数は放射波の周波数の2倍となる。
微小気泡の共振周波数ωは、理論的には、式(2)に示すように、その周囲の液体の密度ρ、初期気泡半径Rおよび圧縮係数Kにより定まる。圧縮係数Kは、式(3)に示すように圧力Pに依存する。但し、微小気泡の挙動の態様(モード)により共振周波数ωが異なる。微小気泡の挙動の態様は、座屈、弾性変形、破裂もしくは崩壊に分類される。座屈とは、気泡がその周囲の脂質膜から突出することである。弾性変形とは、気泡と脂質膜がともに収縮または膨張することである。破裂とは脂質膜が分解するが気泡が維持されることである。崩壊とは油膜も気泡も分解されることである。式(3)において、Rは気泡半径、κは微小気泡のポリトロープ係数、χは微小気泡の圧縮弾性率、σは液体との界面の表面張力を示す。本実施形態では、圧力の観測範囲内において弾性変形による共振周波数が二次高調波の周波数と等しいか、所定の周波数の範囲内に近似するように初期微小気泡の半径の範囲を考慮して、放射する超音波の周波数を予め設定しておく。
Figure 0007450929000002
Figure 0007450929000003
微小気泡が弾性変形する場合を例にすると、所定の基準圧力(例えば、大気圧)における共振周波数を基準とする共振周波数の変化量(以下、共振周波数シフト量Δω)は、式(4)に示すように基準圧力を基準とする圧力変化ΔPと正比例する。式(4)は、気泡半径Rを初期気泡半径Rとすることで、式(2)と式(3)右辺第2行から導出される。図28は、微小気泡の共振周波数の圧力依存性の例を示す図である。図28の縦軸、横軸は、それぞれ共振周波数シフト量[MHz]、圧力変動量[kPa]を示す。図28に示す共振周波数シフト量Δωは、基準圧力Pを101[kPa]とし、ポリトロープ係数κを1、密度ρを1004[kg/m]、半径Rを3.75[μm]、圧縮弾性率χを0.2[Pa・m]とした計算例である。
Figure 0007450929000004
以上に説明したように、本実施形態に係る圧力測定システム1は、微小気泡を混合した液体を収容する空間(例えば、空洞部14)を有し、弾性体からなる容器12と、弾性体からなり、容器12の外周の一部を覆い、液体を封止する膜16を備える。また、圧力測定システム1は、超音波を放射し、前記容器から反射される反射波を用いて前記空間内の状態を複数の画素からなる示す検査画像を取得する計測部20と、検査画像の輝度ごとの画素数の分布を解析し、解析により得られた画素数の分布に基づいて、容器12の外部の圧力を推定する圧力推定部30と、を備える。
この構成により、容器12に電力を供給しなくても、膜16を介して伝達される空間内の液体の圧力変化に基づく検査画像の画素数の輝度分布に基づいて容器12に加わる圧力を定めることができる。そのため、生体内の圧力計測の実用性を向上することができる。
加えて、放射波として超音波を用いることで、生体に対する被曝による損傷や障害などの影響を生じないため、安全に外部圧力を計測することができる。
また、容器12に生体適合性材料を用いることで、容器12を生体内に埋植しても、生体組織や活動に対する影響を生じないため、安全に外部圧力を計測することができる点は、第1の実施形態と同様である。計測部20として、検出画像を取得するための既存のハードウェアとして、超音波診断装置が利用可能であり、医療または検査目的での活用を図ることができる点も、第1の実施形態と同様である。
また、所定の圧力推定部30は、画素数と外部圧力との関係を示す圧力変換データを用いて、所定の輝度値(例えば、特定輝度、検出範囲内の輝度)を有する画素の画素数に基づいて、外部圧力を定めてもよい。この構成により、検査画像に対する簡素な処理により外部圧力を定めることができる。そのため、ハードウェアの規模を抑制でき、経済的に外部圧力を計測することができる。
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、感圧部10は、新生児の脊髄に限らず、消化器などの臓器、筋肉、血管、その他の組織における体液が満たされた体腔内に設置されてもよい。また、感圧部10は、人間に限らず、人間以外の動物や植物の体内に埋植されてもよい。
また、設置対象物は、動植物に限らず、配管、容器、筐体など液体で満たされる非生物の環境であってもよい。これにより、被検体に対する保護を図りながら、感圧部10に対する電力供給を伴わずに圧力を計測することができる。
1…圧力計測システム、10…感圧部、12…容器、14…空洞部、16…膜、20…計測部、20p…プローブ、21…検出部、23…入出力部、24…表示部、25…記憶部、26…制御部、30…圧力推定部、33…入出力部、34…表示部、35…記憶部、36…制御部、42…被覆部、44…空洞部、48…流路、262…検査画像取得部、362…変形量解析部、364…圧力推定部、366…生体情報解析部

Claims (8)

  1. 液体を収容する空間を有する容器と、
    弾性体からなり、前記容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜と、
    前記膜の形状を計測する計測部と、
    前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する圧力推定部と、
    を備える圧力測定システム。
  2. 前記容器の外周をなす基準面のうち前記空間の周縁部において前記膜が支持され、
    前記膜の剛性は前記容器の剛性よりも低い
    請求項1に記載の圧力測定システム。
  3. 前記計測部は、放射波を放射し、前記膜からの反射波を検出する検出部と、前記放射波と前記反射波との時間差に基づいて前記膜の形状を計測する形状計測部と、を備える
    請求項1または請求項2に記載の圧力測定システム。
  4. 前記放射波は、超音波である
    請求項3に記載の圧力測定システム。
  5. 前記容器と前記膜は、生体適合性材料からなる
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧力測定システム。
  6. 前記膜を覆う被覆部を備え、
    前記被覆部は、空洞部を有し、
    前記空洞部は、前記空間と前記膜を挟んで対面し、かつ、前記被覆部の正面と交差する面につながる流路を有する
    請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧力測定システム。
  7. 弾性体からなり、液体を収容する空間を有する容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜の形状を計測する第1ステップと、
    前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する第2ステップと、
    を備える圧力測定方法。
  8. コンピュータに
    弾性体からなり、液体を収容する空間を有する容器の外周の一部を覆い、前記液体を封止する膜の形状を計測する第1ステップと、
    前記形状の変形量から、前記空間の内部の圧力と平衡する圧力を基準とし、前記空間から前記膜を挟んで隔離される前記空間の外部の圧力を推定する第2ステップと、
    を備える圧力測定装置として機能させるためのプログラム。
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