JP7446217B2 - 壁紙裏打ち用耐火シート - Google Patents

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Description

本発明は、家屋等に使用される内装用の壁紙裏打ち用耐火シートに関するものであり、発泡ポリ塩化ビニル樹脂(発泡塩ビゾル)塗工の壁紙裏打ち用耐火シートに好適に用いられる。
建築基準法及び同法施行令によって防火対象となる建築物が定められている。これに該当する商業施設、オフィスビル、医療・福祉施設などを中心に、新築又はリニューアルの際に、壁、天井などの内装制限を受ける物件では、不燃材料認定の防火性能を持つ壁装材料を使用することが要求されている。そのため、防炎性、耐熱性、不燃性等を有する壁装材料がいくつか提案されている。しかし、防炎性、耐熱性、不燃性等の性能を満足すると共に、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、施工しやすい柔軟性を兼ね備えた壁紙裏打ち用シートは未だ見出されていないというのが現状である。
例えば、シート材料として、特許文献1では、ガラス繊維が20~100%で、パルプ及び/又はその他の有機繊維が80~0%である繊維基材シートの間隙部に、無機質充填材と有機系合成樹脂とを混合して付与(附与)したシート材料が開示されている。このように、無機質充填材を使用した場合には、繊維基材シートには、無機質充填材を付与する際の塗工性が優れていることが求められる。また、シート材料には、無機質充填材が脱落する「粉落ち」と呼ばれる現象が発生し難いことが求められる。特許文献1のシート材料は、有機繊維が使用されるため、不燃性が不十分であり、また、有機繊維が使用されない場合、強度が弱く、無機質充填材を付与しにくく、塗工性が低いという課題がある。また、無機質充填材のバインダーとして、有機系合成樹脂を使用しており、不燃性と耐熱性が低下する問題点があった。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性も不十分であった。
また、光沢を有する難燃紙として、特許文献2では、消炎性ガスを発生する無機粉体を主成分とする難燃塗料を、無機繊維の紙状物に含浸せしめてなるシート状物が開示されている。この難燃紙では、難燃塗料に有機バインダーが使用されているため、不燃性が十分でなく、また、無機粉体の塗工に離型紙が使用されており、生産性が悪く、コスト高になる課題があり、さらに、壁紙裏打ち用シートとしては、柔軟性に欠ける問題点があった。
また、特許文献3では、少なくとも、ガラス繊維、木材パルプ、及びバインダー繊維からなるガラス繊維混抄紙の表面にラテックスを含む樹脂組成物を塗工することが開示されている。このガラス繊維混抄紙は、木材パルプやラテックス等の樹脂組成物を塗工しているため、不燃性や耐火性が低かった。また、発泡塩ビゾル表面の平坦性も、クッション床材用としては十分であるものの、壁紙裏打ち用としては不十分であった。
また、特許文献4では、扁平断面のガラス繊維を構成材料の一つとするガラス不織布であり、扁平断面のガラス繊維を10重量%以上含み、他に円形断面のガラス繊維を構成材料としたガラス不織布が開示されている。このガラス不織布は、電気絶縁板及びプリント配線板用積層板の基材として使用されることを目的としたものであり、実施例では、ガラス不織布が扁平断面のガラス繊維を75質量%以上含んでいるものの、残りの成分がバインダーであり、ガラス繊維を接着する樹脂(バインダー)としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等の樹脂が使用できるとされている。そのため、耐火性や不燃性が不十分であった。さらに、ガラス不織布の密度が高く、無機粒子の含浸性に著しく劣る課題があった。
さらに、特許文献5では、導体の外部に耐火層、絶縁層、外部被覆層をそれぞれ順次設けた耐火電線の耐火層であって、該耐火層は集成マイカと無機繊維シートを貼り合わせた耐火性複合テープであり、集成マイカを保持する補強層となる無機繊維シートがシート重量を100重量部として60~100重量部の扁平断面を有する繊維と、有機または無機バインダー0~40重量部で構成されることを特徴とする耐火性絶縁テープが開示されている。この耐火性絶縁テープは、60~100重量部の扁平断面を有する無機繊維が使用されるため、厚みが薄く、高密度となるため、無機粒子の含浸性には著しく劣るシートである。さらに、実施例では集成マイカとの接着剤として、シリコーン系樹脂接着剤を使用しているため、耐火性や不燃性が不十分であった。
実公昭61-21240号公報 実開昭62-114100号公報 特開平10-046485号公報 特開平6-257042号公報 特開平10-326528号公報
本発明の課題は、無機粒子層の塗工性に優れ、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、さらに柔軟性と耐火性と不燃性を兼ね備え、粉落ちが少なく、強度に優れた壁紙裏打ち用耐火シートを提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
(1)基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が、ガラス繊維に対して2質量%以上11質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有していることを特徴とする壁紙裏打ち用耐火シート。
(2)該扁平断面のガラス繊維の含有率が、ガラス繊維に対して20質量%以上55質量%以下である上記(1)記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
(3)該湿熱接着性バインダー繊維がシラノール変性ポリビニルアルコール繊維である上記(1)又は(2)記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、ガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有する基材を含有している。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物がガラス繊維間に入り込み、乾燥により、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の結晶構造内に存在する水分が除去される際に、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするバインダー効果が発現するため、基材の耐熱水特性を向上させる効果があり、無機粒子層形成用塗工液を基材へ塗工する際の操業安定性に優れている。
また、湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有することで、該壁紙裏打ち用耐火シートの平坦性が向上するため、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好となり、粉落ちが少なく、施工しやすい柔軟性を確保することができる。
また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、無機粒子と無機バインダーを含有する無機粒子層を含有しており、基材に耐熱性と親水性が高いメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有するため、無機粒子層形成用塗工液の液保持性に優れるため、無機粒子の含有率を高めることができ、耐火性及び不燃性に優れるという効果を達成できる。
また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、円形断面のガラス繊維の他に、扁平断面のガラス繊維を含有することで、該壁紙裏打ち用耐火シートの平坦性がさらに向上するため、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性がさらに良好とすることができる。さらに、扁平断面のガラス繊維の含有率がガラス繊維に対して、20質量%以上55質量%以下であることで、厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、無機粒子の塗工性を確保しつつ、引張強度や引裂強度等の強度を向上させることができる。
壁紙裏打ち用耐火シートの基材の表面観察画像である。
本発明において、壁紙裏打ち用耐火シートは、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が、ガラス繊維に対して2質量%以上11質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有していることを特徴とする。本明細書において、「壁紙裏打ち用耐火シート」を「耐火シート」と略記する場合がある。
本発明におけるガラス繊維としては、例えば、チョップドストランド、グラスウール、グラスフレークが挙げられる。折れ難く、基材の形成能があればいずれのガラス繊維でも良い。
本発明において、ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有する。扁平断面のガラス繊維において、扁平断面の長径と短径のそれぞれの寸法は特に限定されず、その断面が長径と短径を有する繊維であれば良いが、長径と短径の比(以下、「長径と短径の比」を「扁平比」と記載する。)が3~5であることが好ましい。扁平比が3未満の場合、基材の平坦性や強度の向上効果が低くなる場合があり、一方、扁平比が5を超えた場合、扁平ガラス繊維の紡糸が困難になる場合や抄紙において、繊維本数が減少するため、基材の地合が悪化する場合や耐火シートが薄くなり過ぎる場合がある。
円形断面のガラス繊維の繊維径は、1~11μmであることが好ましく、2~8μmであることがより好ましく、3~7μmであることがさらに好ましい。繊維径が1μm未満の場合、細か過ぎて抄造時に基材からガラス繊維が脱落し、基材の強度及び厚みが不十分となる場合がある。繊維径が11μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、基材の隙間が大きくなり、無機粒子層を形成しても、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が損なわれる場合や無機粒子の粉落ちが増加する場合や柔軟性が悪化する場合がある。ガラス繊維の繊維径が1~11μmである場合、基材の隙間が細かく、均一となるため、無機粒子層を形成後の粉落ちが少なく、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面が平坦となりやすく、さらに、柔軟性も優れた耐火シートになる。
扁平断面のガラス繊維の換算繊維径は、5~17μmが好ましく、6~14μmがより好ましく、7~11μmがさらに好ましい。また、短径は、2.8~9.6μmが好ましく、3.5~7.0μmがより好ましく、4.0~6.0μmがさらに好ましい。換算繊維径とは、扁平繊維の断面積と同面積を有する円形断面繊維の直径の値を意味する。換算繊維径が5μm未満の場合、経済的な紡糸が困難になり、一方、換算繊維径が17μmを超えた場合、繊維が太くなり過ぎて、剛性が高く、抄紙工程での分散が難しくなる場合がある。また、ガラス繊維の本数が減るため、空隙が大きくなり、無機粒子層の塗工性や付着量が低下する場合や耐火シートの塗工表面の平坦性が悪化する場合がある。
本発明におけるガラス繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~6mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、基材の強度が不足する場合があり、繊維長が15mmを超えた場合、基材の地合が悪くなる場合や柔軟性が悪化する場合がある。
ガラス繊維の含有率は、繊維成分に対して、75~93質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましく、83~87質量%であることがさらに好ましい。含有率が75質量%未満であると、耐火性又は不燃性が悪くなる場合があり、含有率が93質量%を超えると、ガラス繊維同士の結合は弱いことから、基材強度が弱くなり、無機粒子層の塗工性が悪化する場合があり、さらに、基材の繊維の隙間が大きくなるため、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が損なわれる場合がある。
扁平断面のガラス繊維の含有率は、ガラス繊維に対して、20質量%以上55質量%以下が好ましく、25質量%以上50質量%以下がより好ましく、30質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。含有率が20質量%未満の場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性や基材の強度の向上効果が見られない場合があり、一方、55質量%を超えた場合、厚みが薄くなり、空隙が減少するため、無機粒子の塗工量が減少し、耐火性や不燃性が低下する場合がある。
本発明に用いるバインダー繊維は湿熱接着性バインダー繊維である。湿熱接着性バインダー繊維とは、湿潤状態において、ある温度で繊維状態から流動、又は容易に変形して接着機能を発現する繊維のことを言う。具体的には、熱水(例えば、80~120℃程度)で軟化して自己接着、又は他の繊維に接着可能な熱可塑性繊維であり、例えば、ポリビニル系繊維(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなど)、セルロース系繊維(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロース、又はその塩など)、変性ビニル系共重合体からなる繊維(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、又は、その無水物との共重合体、又はその塩など)などが挙げられる。本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、ポリビニル系繊維が好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)繊維がより好ましい。ポリビニルアルコール繊維を用いた場合、基材強度がより高くなり、また、繊維間に皮膜を形成しやすく、無機粒子を繊維間に保持しやすくなる。また、耐火シートの平坦性が向上しやすくなる。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、架橋性官能基を有する化合物で変性された変性ポリビニルアルコール繊維、架橋剤を用いて紡糸時又は紡糸後に温和な条件下で架橋を行った架橋ポリビニルアルコール繊維が、低延伸糸に耐熱水特性を付与することが可能となり、より好ましい。
架橋性官能基としては、シラノール基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられる。pH等を調整することによって、架橋性官能基を有する化合物で変性されたポリビニルアルコールを架橋させることなく水に溶解し、紡糸して、変性ポリビニルアルコール繊維を得ることができる。紡糸時又は紡糸後に、変性ポリビニルアルコール繊維を架橋させても良い。変性度は、好ましくは0.01~10mol%であり、より好ましくは、0.1~5mol%である。好適な例としては、シラノール変性ポリビニルアルコール(変性度0.1~2mol%)をアルカリ溶液(pH9~13)に溶解し、該溶液を酸性(pH5~6)にすることにより架橋させつつ紡糸し、乾燥後熱処理して得られるシラノール変性ポリビニルアルコール繊維が挙げられる。
また、自己架橋性の無い未変性ポリビニルアルコールを紡糸後、各種有機系又は無機系架橋剤を付与して架橋せしめる方法によって得られた、架橋ポリビニルアルコール繊維を用いることもできる。無機系架橋剤としては、リン酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸チタニル等が挙げられる。また、有機系架橋剤として、メチロール系、エポキシ系、イソシアネート系、アルデヒド系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤を未変性ポリビニルアルコール紡糸原液に添加して紡糸した後、又は、未変性ポリビニルアルコールを単独で紡糸して架橋剤含有浴を通した後、熱処理することで架橋を進行させることができる。また、これらの方法を併用することも可能である。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維は上記に限定されるものではないが、シラノール変性ポリビニルアルコール繊維は、ガラス繊維との接着性がさらに高まるため、基材の引張強度をさらに高めることができるため、特に好ましい。
湿熱接着性バインダー繊維の繊度は、0.1~5.6デシテックスであることが好ましく、0.4~2.2デシテックスであることがより好ましく、0.6~1.1デシテックスであることがさらに好ましい。繊度が0.1デシテックス未満の場合、繊維自体が非常に高価になり、また、基材が緻密で薄くなり過ぎる場合がある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、ガラス繊維との接点が少なくなり、湿潤状態での強度維持が困難になる場合がある。また、均一な地合が取れない場合がある。湿熱接着性バインダー繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~5mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから湿熱接着性バインダー繊維が抜け落ちる場合があり、十分な強度の耐火シートが得られない場合がある。一方、15mmを超えた場合、水に分散する際に湿熱接着性バインダー繊維がもつれる場合があり、耐火シートの地合が不均一になる場合がある。
湿熱接着性バインダー繊維の含有率は、ガラス繊維に対して、3~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維が3質量%未満の場合、基材の強度が低下し、無機粒子層を塗工する際に断紙する場合やガラス繊維が脱落する場合がある。一方、湿熱接着性バインダー繊維の含有率が20質量%を超えた場合、基材を湿式抄造法で抄紙する際、ドライヤーからの剥離性が悪化する場合があり、また、無機粒子層を塗工する際に、基材への浸透性が低下する場合があり、壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性が悪化する場合がある。
本発明に用いるメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物としては、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)樹脂等からなるパルプ状物が挙げられる。
また、本発明に用いるメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物とは、抄紙機を用いて紙に似た構造物を作ることができる多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状、もしくは燐片状の小片であり、繊維の結晶構造が強固に形成されることなく、非結晶状態で水分子又は水分が結晶構造内に存在する微細な耐熱繊維を指す。図1はメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含む壁紙裏打ち用耐火シートの基材の電子顕微鏡写真であり、パルプ状物は薄葉状である。
上述したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物としては、繊維形成性高分子重合体溶液を水系凝固浴に導入して得られた形成物を、乾燥することなく回収し、必要に応じて叩解等のフィブリル化をすることにより得られる。例えば、ポリマー重合体溶液をその沈殿剤とせん断力の存在する系において混合することにより製造されるフィブリッドや、光学的異方性を示す高分子重合体溶液から形成した分子配向性を有する非晶質含水形成物であり、例えば、特公昭35-11851号公報、特公昭37-5732号公報などに記載の製造方法により製造される。必要に応じて叩解処理を施すことができる。
叩解処理としては、フィブリッドをリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて処理することによって得ることができる。
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は結晶構造内に存在する水分が加熱・減圧などにより除去される際に大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするため、基材の耐熱水特性を向上させる効果がある。
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長は、0.10mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、パルプ状物の長さ加重平均繊維長は、0.10mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、基材からパルプ状物が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、パルプ状物のもつれや分散不良が発生する場合がある。
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が、上記の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長を持つ場合、基材に含まれるパルプ状物の含有率が少ない場合でも、パルプ状物間やパルプ状物とガラス繊維との間において、繊維による緻密なネットワーク構造が形成され、引張強度が高い基材が得られやすく、無機粒子層形成用塗工液の浸透性や液保持性の高い基材が得られやすくなる。また、無機粒子層形成用塗工液を塗工し、乾燥させる際に、塗液温度が上昇し、湿熱接着性バインダー繊維の溶解温度に達した際の基材の強度低下を防ぐことができる。
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の平均繊維幅は、5.0μm以上40.0μm以下が好ましく、8.0μm以上35.0μm以下がより好ましく、10.0μm以上25.0μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40.0μmを超えた場合、繊維同士のネットワークが低下し、基材の引張強度が低下する場合や無機粒子が浸透しにくくなる場合がある。一方、平均繊維幅が5.0μm未満の場合、パルプ状物を叩解する処理時間が長くなり、生産性が著しく低下する。
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長、長さ加重平均繊維長及び平均繊維幅は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して、投影繊維長(Proj)モードにおいて測定した質量加重平均繊維長(L(w))、長さ加重平均繊維長(L(l))及び繊維幅である。
本発明において、ガラス繊維に対して、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率は2質量%以上11質量%以下であり、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましく、3.5質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が11質量%を超えた場合、基材が薄くなりやすく、基材の空隙が減少するため、無機粒子層形成用塗工液の浸透性や液保持性が逆に悪化する。また、無機粒子層が基材表面に形成されやすく、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性は良化するものの、耐火シートの柔軟性が損なわれる。さらに、無機粒子の粉落ちが悪化する。また、パルプ状物がガラス繊維間の入り込み過ぎるため、ガラス繊維同士の交点が減少し、基材の引張強度が低下する。一方、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が2質量%未満である場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物間やパルプ状物とガラス繊維との緻密なネットワーク構造が形成されにくく、引張強度の向上効果が発現しない。また、基材の空隙が増大するため、ポリ塩化ビニル樹脂が基材内部に入り込みやすくなり、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が悪化する。
本発明におけるメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の変法濾水度は0~300mlであることが好ましく、より好ましくは0~200mlであり、さらに好ましくは0~100mlである。変法濾水度が300mlを超えた場合、パルプ状物の繊維幅が太く、フィブリル化があまり進んでいないため、ガラス繊維との緻密なネットワークが少なくなるため、引張強度が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満の場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のファイン分が増えて、基材から脱落する割合が増え、歩留まりが低下する場合がある。また、繊維のフィブリル化処理に時間が掛かり、非常に高価なものになる。また、基材が薄くなりやすく、高密度化しやすくなるため、無機粒子層形成用塗工液が内部に浸透しにくくなり、耐火性が悪化する場合がある。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値である。
本発明において、ガラス繊維、湿熱接着性バインダー繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物に加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、各種繊維を配合することができる。その結果、さらに細かい空隙部を増やすことができ、無機粒子の保持性や壁紙裏打ち用耐火シートの強度を向上させることができる。このような繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、アルミナ、シリカ、セラミックス、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
合成樹脂繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートに含まれることができる上記各種繊維は、1種でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明において、基材の厚みは、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。また、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。基材の厚みを上記の範囲とした場合において、本発明における基材では、抄紙工程や塗工工程で必要な引張強度を維持できるため、基材の抄造性も含め、各工程での作業性が良好なものとなる。基材の厚みが1.0mmを超えると、壁紙裏打ち用耐火シートとして、柔軟性が損なわれて、取り扱い難くなる場合がある。基材の厚みが0.1mm未満であると、基材の空隙が大きくなり、塗工し難くなり、また、無機粒子層を多く塗工する必要があり、粉落ちが増える場合や柔軟性が悪化する場合がある。
本発明における基材の密度は、0.07g/cm以上であることが好ましく、0.10g/cm以上であることがより好ましい。また、0.50g/cm以下であることが好ましく、0.30g/cm以下であることがより好ましい。密度が0.07g/cm未満である場合、基材の引張強度が弱くなり過ぎて、基材の取り扱い時や塗工時に破損する場合があり、0.50g/cmを超えた場合、基材の柔軟性が悪化して、抄紙のリーラーで巻き取り難くなる場合や無機粒子層の塗工量が低下する場合がある。
本発明における基材は、湿式抄造法(抄紙法)によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は繊維を水に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを抄紙機で抄きあげて湿式不織布を製造する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機が挙げられる。また、複数のヘッドボックスを有し、ワイヤー上で湿紙を重ね合わせる抄紙機にて製造することができる。抄紙スラリーには、繊維原料の他に、必要に応じて、分散剤、紙力増強剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加することができる。抄紙スラリーの固形分濃度は、0.5~0.001質量%程度であることが好ましい。この抄紙スラリーを、さらに所定濃度に希釈してから抄造し、湿紙ウェブを得る。ついで、抄造された湿紙ウェブは、プレスロールなどでニップされ、ついで、ヤンキードライヤーを使用し、湿熱接着性バインダー繊維を溶融させて、強度を発現させる。ヤンキードライヤーにて乾燥することにより、乾燥された表面は平坦となり、表面の凹凸が少ない面を形成できる。その他、補助乾燥として、熱風乾燥機、加熱ロール、赤外線ヒーターなどの加熱装置を併用しても問題無い。この時の乾燥温度としては、湿紙ウェブの水分が十分に除去でき、湿熱接着性バインダー繊維により強度を発現できる温度とすることが好ましい。
本発明において、無機粒子層は、無機粒子と無機バインダーを含有している層である。この無機粒子層が、基材に含有される繊維の表面全体を被覆しており、また、基材の空隙に充填されていることによって、耐火シートの耐火性と不燃性の効果が得られる。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂の浸透性が抑えられ、塗工表面の平坦性が良好となる。
図1は、壁紙裏打ち用耐火シートの基材において、ヤンキードライヤー面の電子顕微鏡(SEM)観察写真である。基材に含有される円形断面と扁平断面のガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物及び湿熱接着性バインダー繊維が確認できる。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状、もしくは燐片状の小片であり、ガラス繊維の間に入り込み、ガラス繊維間の隙間を埋めている。また、湿熱接着性バインダー繊維は、湿潤状態において、ある温度で繊維状態から流動、又は容易に変形して皮膜状となり、ガラス繊維の交点やメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を覆っており、図1のSEM観察写真では表面上に不定形な皮膜状物として観察される。これにより接着性を発現すると共に、基材の平坦性を向上させている。
無機粒子としては、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石膏、アルミン酸三カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、二酸化チタン等の水分散性の良い無機粒子が使用できる。上記無機粒子は、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
無機粒子の中でも、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸塩系の無機粒子は、火炎が当たった際に無機粒子が固化し、耐火シートから無機粒子が脱落することを防止できるため好ましい。さらに、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリンは、耐火シートを高温化で保持した場合でも、耐火性と不燃性に優れ、耐火シートの強度を維持できるため、より好ましい。
本発明において、無機粒子の粒子径は、0.08μm以上2.00μm以下であることが好ましく、0.30μm以上1.50μm以下であることがより好ましく、0.40μm以上1.00μm以下であることがさらに好ましい。粒子径が2.00μmを超えると、壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性が悪化する場合や粉落ちや高温下に曝した際の断熱性が悪化する場合がある。一方、粒子径が0.08μm未満の場合、無機粒子を分散する際に増粘しやすく、分散し難くなり、基材に塗工した場合、無機粒子が基材から脱落しやすくなる場合や、脱落を防ぐために無機バインダーを増量する必要があり、耐火シートの柔軟性が損なわれる場合がある。なお、本発明で言う粒子径とは、無機粒子のSEM写真から得られた無機粒子の面積から真円の直径を換算した値である。
本発明において、無機粒子層は無機バインダーを含む。無機バインダーとしては、例えば、セピオライト、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、ベントナイトなどが挙げられる。上記無機バインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
本発明において、無機粒子層に含まれる無機バインダーの含有率は、無機粒子の総量に対して、2質量%以上100質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダーの含有率が2質量%未満の場合、無機粒子が基材から脱落しやすくなる場合がある。また、無機バインダーの含有率が100質量%を超えた場合、無機粒子層の塗工性が悪化する場合がある。
無機粒子層形成用塗工液を調製するための媒体としては、無機バインダーや無機粒子を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。また、使用する媒体は、基材を膨張させない媒体又は基材を溶解しない媒体が好ましい。
無機粒子層の含有率は、「無機粒子層の塗工量(g/m)/基材坪量(g/m)×100」で算出される値であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%以上がさらに好ましい。無機粒子層の含有率が60質量%以上であれば、壁紙裏打ち用耐火シートに火炎を当てた場合でも、耐火シートの溶融や損傷がほとんどない。一方、無機粒子層の含有率は160質量%未満が好ましい。無機粒子層の含有率が高いほど、耐火シートの厚みが増加し、耐火性と不燃性は高くなるが、無機粒子層の含有率が160質量%以上の場合、粉落ちが発生する場合や耐火シートの柔軟性が損なわれる場合がある。
無機粒子層を形成するために、無機粒子を基材に塗工する装置としては、各種の塗工装置を用いることができる。例えば、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、キスタッチコーター、ディップコーター等の含浸、又は塗工装置による各種コーターを用いることができるが、これに限定されるものではない。
本発明において、無機粒子層には、前記無機粒子及び無機バインダーの他に、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の各種分散剤、塗工液の液安定性を増すため、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の各種増粘剤、各種保水剤、各種の濡れ剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。一般に、媒体として有機溶剤を使用した非水系塗工液は表面張力が低く、媒体として水を用いた水系塗工液の表面張力は高い。本発明の基材は、塗工液の受理性が高いため、非水系塗工液も水系塗工液も、両方共に問題無く塗工することができるが、本発明において、媒体として水のみを用いた水系塗工液を使用することが好ましい。
本発明において、壁紙裏打ち用耐火シートの少なくとも片側の面を共焦点レーザー顕微鏡によって表面粗さを計測して得られるコア部のレベル差Skが55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることがさらに好ましい。また、Skは20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。そして、ポリ塩化ビニル樹脂は、Skが55μm以下である面に塗工されることが好ましい。「コア部のレベル差Sk」は、表面粗さを比較する指標であり、ISO25178に準拠したコア部の上側レベルと下側レベルとの差である。ポリ塩化ビニル樹脂の塗工では、発泡塩ビゾルを塗工し、乾燥・ゲル化させた後、発泡させる。本発明の壁紙裏打ち用耐火シートの少なくとも片側の面のSkが55μm以下である場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好であることを意味する。また、無機粒子層の粉落ちが少なく、柔軟性と耐火性と不燃性を兼ね備えた壁紙裏打ち用耐火シートが得られやすくなる。Skが55μmを超えた場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が悪化する場合がある。一方、Skが20μm未満の場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、耐火性や不燃性も良好であるが、壁紙裏打ち用耐火シートとして柔軟性が損なわれる場合がある。
本明細書におけるSkの測定方法を説明する。
(1)壁紙裏打ち用耐火シートの写真撮影
壁紙裏打ち用耐火シートを幅方向45mm×流れ方向60mmに断裁して試料とする。断裁した壁紙裏打ち用耐火シートの写真を、株式会社キーエンス製共焦点レーザー顕微鏡VK-X1050(製品名)を用いて、以下の条件で観察する。
「VK観察アプリケーション」の「形状計測」の「簡易測定」で、同軸照明で壁紙裏打ち用耐火シートを照らし、撮影倍率20倍で観察する。「ナビゲーション画像作成」を行い、「連結測定」の「連結領域の指定方法」として「始点と長さ」を選び、撮影サイズを「横:3000μm×縦:2000μm」に指定し、写真撮影位置を決定して、測定を開始する。
(2)画像補正
得られた壁紙裏打ち用耐火シートの写真を「マルチファイル解析アプリケーション」で開き、以下の順で画像補正処理を行う。
面形状補正:補正方法は「うねり除去」、指定方法は「補正の強さ」を選び、補正の強さを「5」に設定して面形状補正を行う。
(3)表面粗さ計測
計測領域として「全領域」を指定し、Skを計測する。一つの壁紙裏打ち用耐火シートについて、5箇所で本測定を実施し、5箇所におけるSkの平均値を算出する。
表面粗さ計測の詳細設定条件を表1に記載する。
壁紙裏打ち用耐火シートのSkを55μm以下にする方法としては、
(I)繊維径の細いガラス繊維を使用する。
(II)扁平断面のガラス繊維を使用する。
(III)湿熱接着性バインダー繊維を増量する。
(IV)メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を増量する。
(V)無機粒子層の塗工量を増量する。
(VI)無機粒子層を、例えば、グラビアコーターやロッドコーター等の表面塗工方式で塗工する。
等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。また、塗工量は絶乾塗工量である。
実施例1
<メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の作製>
硫酸中の対数粘度1.5のポリメタフェニレンイソフタルアミド10部を、塩化リチウム15部を含むN,N-ジメチルアセトアミド90部に溶解し、この溶液を高速回転でかき混ぜているホモミキサー中のグリセリン水溶液に導入してパルプ状物を得て、このパルプ状物をシングルディスクリファイナーに通し、フィブリル化させて変法濾水度を調整し、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)を得た。
<基材の作製>
ガラス繊維(日東紡績株式会社製、繊維径6.5μm×繊維長6mm、円形断面)を52部、扁平ガラス繊維(日東紡績株式会社製、長径28μm、短径7μm×繊維長13mm、扁平断面)を35部、シラノール変性PVA繊維(湿熱接着性バインダー繊維、商品名:SPG056-11、株式会社クラレ製、0.6デシテックス×3mm)を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部を、パルパーにより水中に分散し、濃度0.5%の均一な抄紙スラリーを調成し、円網抄紙機を用いて湿紙ウェブを得て、表面温度120℃のヤンキードライヤーによって乾燥し、坪量50.7g/m、厚み0.239mmの基材を作製した。
<無機粒子層形成用塗工液の調製>
カオリン(商品名:ASP(登録商標) NC X-1、BASF CORPORATION製)100部と、水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロン(登録商標)T-50、東亞合成株式会社製)0.4部を水中に混合し十分撹拌し、カオリン分散液を調製した。ついで、セピオライト(商品名:ミルコン(登録商標)SP-2、昭和KDE株式会社製)20部と水溶性アクリル酸系分散剤(アロンT-50)1.0部を水中に混合し十分撹拌し、セピオライト分散液を調製した。ついで、カオリン分散液全量とセピオライト分散液全量を混合、撹拌し、水で濃度を調整して、固形分濃度40%の塗工液を調製した。
<壁紙裏打ち用耐火シートの作製>
前記基材に、サイズプレスにて塗工液を含浸し、乾燥し、絶乾塗工量44.6g/m、総坪量95.3g/m、厚み0.256mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例2
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を69部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.1g/m、厚み0.259mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量51.3g/m、総坪量101.4g/m、厚み0.286mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例3
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を40部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を47部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.5g/m、厚み0.225mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量39.4g/m、総坪量89.9g/m、厚み0.236mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例4
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を71部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を16部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.5g/m、厚み0.266mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量54.0g/m、総坪量104.5g/m、厚み0.295mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例5
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を37部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を50部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量51.0g/m、厚み0.215mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量35.7g/m、総坪量86.7g/m、厚み0.225mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例6
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を22部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を65部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.6g/m、厚み0.203mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量29.8g/m、総坪量80.4g/m、厚み0.205mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例7
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を72部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)2部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.2g/m、厚み0.265mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量52.2g/m、総坪量102.4g/m、厚み0.281mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例8
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を66部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を17部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)9部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.5g/m、厚み0.250mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量48.7g/m、総坪量99.2g/m、厚み0.270mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例9
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を69部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、PVA繊維(湿熱接着性バインダー繊維、商品名:VPB107-1、株式会社クラレ製、1.1デシテックス×3mm)を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.3g/m、厚み0.260mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量52.1g/m、総坪量102.4g/m、厚み0.292mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
参考例1
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維を87部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.2g/m、厚み0.281mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量57.4g/m、総坪量107.6g/m、厚み0.320mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例1
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維72部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維10部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.3g/m、厚み0.213mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量32.6g/m、総坪量82.9g/m、厚み0.220mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例2
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維72部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を9部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)1部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量50.1g/m、厚み0.268mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量48.1g/m、総坪量98.2g/m、厚み0.281mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例3
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維66部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を17部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を7部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)10部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量50.8g/m、厚み0.245mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量45.5g/m、総坪量96.3g/m、厚み0.262mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例4
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維69部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例9で使用したPVA繊維8部、未叩解NBKPを5部とした以外、実施例1と同様な抄紙方法で坪量51.4g/m、厚み0.254mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量50.6g/m、総坪量102.0g/m、厚み0.271mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例5
繊維配合において、実施例1で使用したガラス繊維69部、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を18部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維8部、リファイナーを用いて平均繊維径12μm、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース繊維を微細化し、変法濾水度100mlに叩解されてなるフィブリル化セルロース繊維5部とした以外、実施例1と同様な抄紙方法で坪量49.9g/m、厚み0.265mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液をサイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量51.6g/m、総坪量101.5g/m、厚み0.283mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例6
無機粒子層形成用塗工液として、実施例1で使用したカオリン100部と水溶性アクリル酸系分散剤0.4部と塩化ビニル系エマルジョン(商品名:ビニブラン(登録商標)278、固形分濃度43%、日信化学工業株式会社製)20部を水中で混合し十分撹拌し、固形分濃度40%の塗工液を調製した。
この塗工液を実施例2で作製した坪量50.1g/m、厚み0.259mmの基材に、サイズプレスにて含浸し、乾燥し、絶乾塗工量51.6g/m、総坪量101.7g/m、厚み0.285mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例及び比較例の基材及び壁紙裏打ち用耐火シートについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表2に示した。
<基材及び壁紙裏打ち用耐火シートの坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、基材の坪量及び耐火シートの総坪量を測定した。無機粒子層の塗工量は耐火シートの総坪量から基材の坪量を差し引いて算出した。
<基材及び壁紙裏打ち用耐火シートの厚み>
JIS B7502:2016に規定された外側マイクロメーターを用いて、5N荷重時の厚みを測定した。
<基材の引張強度>
各基材について、長辺が流れ方向になるように、流れ方向250mm×幅方向50mmのサンプル片を5枚切り出し、卓上型万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、商品名STB-1225S)を用いて、JIS P8113:1998に準じて、引張速度100mm/minで引張試験を行った。引張応力の最大値を「引張強度」とし、5枚の平均値とした。
<基材の引裂強度>
各基材について、流れ方向63mm×幅方向76mmのサンプル片を10回測定分の枚数を切り出し、エレメンドルフ型引裂試験機(東西精器株式会社製)を用いて、JIS P8116:2000に準じて、流れ方向の引裂強度試験を行った。引裂強度の値は10回の平均値とした。
<基材の80℃熱水崩落時間>
各基材について、長辺が流れ方向になるように、流れ方向200mm×幅方向50mmのサンプル片を3枚切り出し、サンプル片の下端に11gのクリップをつけ、80℃±1℃に保った熱水中にサンプル片の中央まで100mm浸漬し、クリップをつけた下端部が熱水に浸漬してから崩れ落ちるまでの熱水崩落時間(秒)を最大600秒まで測定した。崩落時間は3枚の平均値とした。熱水崩落時間が長い方が耐熱水特性に優れていると言える。
<無機粒子層の塗工性>
基材に無機粒子層を形成する際の塗工しやすさを、次の評価基準で評価した。
○:塗工液を塗工する際に、基材に断紙や亀裂や割れが発生しない場合
△:塗工液を塗工する際に、基材に張力が過剰に加わった場合や基材が蛇行した場合、基材に断紙や亀裂や割れが発生する場合
×:塗工液を塗工する際に、基材に張力が過剰に加わっていない場合や基材が蛇行していない場合であって、張力を調整しても、基材に断紙や亀裂や割れが発生する場合
<耐火性>
壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片の中央部にバーナー(商品名:ラボバーナーAPTL、株式会社フェニックスデント製)の火炎を5分間当てた。その後、火炎を当てた側の耐火シートの表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。バーナーの火炎温度は、1000℃であった。
○:耐火シートに穴や亀裂や溶融が無い。
△:火炎を当てた耐火シートの表面に溶融や凹みがわずかに見られる。
×:耐火シートに穴や亀裂がある。
<不燃性>
壁紙裏打ち用耐火シートを不燃性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を2枚切り出し、各試験片を750℃±5℃に保持できる加熱電気炉の中に挿入し、次の評価基準で評価した。
○:挿入後、発火しない。
△:挿入後、一瞬発火する。
×:挿入後、シート表面が発火する。
<コア部のレベル差Sk>
上述した測定方法によって、各壁紙裏打ち用耐火シートにおいて、基材の乾燥時にヤンキードライヤーに接触している面を表面として、表面のSkを評価した。
<ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性>
上記の壁紙裏打ち用耐火シートを幅方向15cm×流れ方向20cmに裁断し、ガラス板の上に表面が上になるように載せ、表面に壁紙用の発泡塩ビゾルをギャップ0.15mmのアプリケーターバーで塗工し、150℃の恒温熱風乾燥機で25秒加熱し、ゲル化させた。その後、220℃の恒温熱風乾燥機で40秒加熱し、発泡塩ビゾルを発泡させた。上記の発泡塩ビ表面の凹凸を目視で観察し、次の評価基準で評価した。
○:発泡面が平坦である。
△:発泡面に少し凹凸がある。
×:発泡面の凹凸が大きい。
<粉落ち>
上記の壁紙裏打ち用耐火シートの表面を手で触った際の手に無機粒子が付着する状態と、卓上ギロチンカッターでシートを裁断した際の粉落ちを目視で観察し、次の基準で評価した。
○:手に無機粒子が付着しないし、裁断しても粉落ちしない。
△:手に無機粒子がうっすらと付着し、10枚以上裁断すると、粉落ちが見られる。
×;手に無機粒子が付着し、裁断すると、粉落ちが見られる。
<柔軟性>
上記の壁紙裏打ち用耐火シートを塗工後、コーターのリーラーで外周直径10cmの紙管に巻き付けた際に、シートの様子を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:紙管にきれいに巻き付けることができる。
△:紙管の巻き付け直後、シートが紙管外周から多少浮き気味、もしくはシワが見られるが、しばらくするときれいに巻くことができる。
×:紙管にきれいに巻き付けることができず、大きな浮きや割れやシワが発生する。
表2に示した通り、実施例1~9及び参考例1で作製した耐火シートは、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が、ガラス繊維に対して2質量%以上11質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有している。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物がガラス繊維を固定し、その固定した交点を湿熱接着性バインダー繊維がさらに固定するため、80℃の熱水に浸漬しても基材が崩落しにくく、無機粒子層形成用塗工液を塗工しても、断紙等が発生することがほとんど無かった。
実施例1~6と参考例1を比較すると、ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有している実施例1~6の耐火シートは、ガラス繊維が円形断面のガラス繊維のみを含有している参考例1の耐火シートよりも、引張強度及び引裂強度が強く、80℃の熱水に浸漬しても基材が崩落しにくく、Skが向上した。
また、実施例1~4と実施例7~9の耐火シートは、耐火性と不燃性に優れていた。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が非常に良好で、無機粒子層からの粉落ちが少なく、柔軟性に優れていた。
実施例1~6を比較すると、扁平断面のガラス繊維の含有率が多い程、基材の引張強度と引裂強度が強くなり、基材の抄造や無機粒子層の塗工の操業安定性がさらに向上した。また、基材が薄くなり、高密度になるため、耐火シートのSkが低くなり、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性がより一層向上した。しかし、実施例5及び6は、扁平ガラスの含有率がガラス繊維に対して、55質量%を超えた場合であるが、厚みが薄くなり、空隙が減少し過ぎたため、無機粒子層の絶乾塗工量が減少し、実施例1~4と比較して、耐火性と不燃性が低下し、さらに、粉落ちが見られた。よって、扁平断面のガラス繊維の含有率は55質量%以下であることが好ましい。実施例2と実施例4を比較すると、扁平ガラスの含有率がガラス繊維に対して、20質量%未満の場合、引張強度や引裂強度や耐火シートのSkの向上効果が少ないことが判り、扁平断面のガラス繊維の含有率は20質量%以上であることが好ましい。
実施例1と実施例7と実施例8を比較すると、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が、2質量%以上配合した場合、ガラス繊維間の空隙を埋めるため、Skは小さくなり、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性はいずれも良好になった。また、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が多い程、パルプ状物がガラス繊維を固定化するため、80℃熱水崩落時間が長くなった。
実施例2と実施例9を比較すると、湿熱接着性バインダー繊維として、シラノール変性ポリビニルアルコール繊維を使用した方が、無機粒子層の塗工性が向上することが判った。
比較例1の耐火シートは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含まない場合であるが、80℃熱水崩落時間が短く、無機粒子層形成用塗工液を塗工する際に断紙等が発生した。750℃の加熱電気炉に挿入した際、表面が発火し、不燃性が不十分であった。また、Sk値が大きくなり、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面に凹凸が見られた。また、粉落ちは発生しやすくなった。
比較例2の耐火シートは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が2質量%未満の場合であるが、80℃熱水崩落時間が短くなった。また、Sk値が大きくなり、発泡塩ビゾル塗工表面に少し凹凸が見られた。
比較例3の耐火シートは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が11質量%を超えた場合であるが、ガラス繊維の間にメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が入り込み、空隙を埋めるため、無機粒子層が基材表面に形成されやすく、Sk値が小さくなり、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面に平坦性は良好であるが、引張強度の低下が見られた。
比較例4の耐火シートはセルロース繊維を含んでいるが、750℃の加熱電気炉に挿入した際、表面が発火し、不燃性が不十分であった。また、比較例4及び5の耐火シートは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含まないため、80℃熱水崩落時間が短かった。また、比較例4では、無機粒子層形成用塗工液を塗工する際に断紙等が発生した。
比較例6の壁紙裏打ち用耐火シートは、無機粒子層に有機系バインダーを使用した場合であるが、750℃の加熱電気炉に挿入した際、表面が発火し、不燃性が不十分であった。
本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、家屋等に使用される内装用の壁紙裏打ち用シートに関するものであり、発泡ポリ塩化ビニル樹脂(発泡塩ビゾル)塗工の壁紙裏打ち用シートに好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、
    該ガラス繊維の含有率が、繊維成分に対して75質量%以上93質量%以下であり、
    該湿熱接着性バインダー繊維の含有率が、該ガラス繊維に対して3質量%以上20質量%以下であり、
    該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が、ガラス繊維に対して2質量%以上11質量%以下であり、
    該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該扁平断面のガラス繊維の含有率が、該ガラス繊維に対して18.4質量%以上74.7質量%以下であり、
    該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有しており、その絶乾塗工量が、29.8g/m 以上であることを特徴とする壁紙裏打ち用耐火シート(ただし、該基材に未叩解NBKPを含有するものを除く)
  2. 該湿熱接着性バインダー繊維の含有率が、該ガラス繊維に対して5質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  3. 該扁平断面のガラス繊維の含有率が、ガラス繊維に対して20質量%以上55質量%以下である請求項1又は2記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  4. 該湿熱接着性バインダー繊維がシラノール変性ポリビニルアルコール繊維である請求項1ないし3の何れかの請求項記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  5. 該基材の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下である請求項1ないし4の何れかの請求項記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  6. 該無機粒子層の該基材に対する割合が、60質量%以上160質量%未満である請求項1ないし5の何れかの請求項記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
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