JP2023043470A - 壁紙裏打ち用耐火シート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、無機粒子層の塗工性に優れ、壁紙裏打ち用耐火シートにおけるポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、さらにポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けがなく、柔軟性と耐火性と不燃性を兼ね備え、耐折強度に優れた壁紙裏打ち用耐火シートを提供することにある。【解決手段】基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該フィブリル化繊維の含有率が、該基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有していることを特徴とする壁紙裏打ち用耐火シート。【選択図】図1

Description

本発明は、家屋等に使用される内装用の壁紙裏打ち用耐火シートに関するものである。
建築基準法及び同法施行令によって防火対象となる建築物が定められている。これに該当する商業施設、オフィスビル、医療・福祉施設などを中心に、新築又はリニューアルの際に、壁、天井などの内装制限を受ける物件では、不燃材料認定の防火性能を持つ壁装材料を使用することが要求されている。そのため、防炎性、耐熱性、不燃性等を有する壁装材料がいくつか提案されている。しかし、防炎性、耐熱性、不燃性等の性能を満足すると共に、壁紙裏打ち用耐火シートにおけるポリ塩化ビニル樹脂(発泡塩ビゾル)塗工表面の平坦性が良好で、施工し易い柔軟性を兼ね備えた安価な壁紙裏打ち用耐火シートは未だ見出されていないというのが現状である。
例えば、シート材料として、特許文献1では、ガラス繊維が20~100%で、パルプ及び/又はその他の有機繊維が80~0%である繊維基材シートの間隙部に、無機質充填材(無機粒子)と有機系合成樹脂とを混合して付与(附与)したシート材料が開示されている。このように、無機質充填材を使用した場合には、繊維基材シートには、無機質充填材を付与する際の塗工性が優れていることが求められる。また、シート材料には、無機質充填材が脱落する「粉落ち」と呼ばれる現象が発生し難いことが求められる。特許文献1のシート材料は、有機繊維が使用されるため、不燃性が不十分であり、また、有機繊維が使用されない場合、強度が弱く、無機質充填材を付与し難く、塗工性が低いという課題がある。また、無機質充填材のバインダーとして、有機系合成樹脂を使用しており、不燃性と耐熱性が低下する問題点があった。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性も不十分であった。
また、光沢を有する難燃紙として、特許文献2では、消炎性ガスを発生する無機粉体(無機粒子)を主成分とする難燃塗料を、無機繊維の紙状物に含浸せしめてなるシート状物が開示されている。この難燃紙では、難燃塗料に有機バインダーが使用されているため、不燃性が十分でなく、また、無機粉体の塗工に離型紙が使用されており、生産性が悪く、コスト高になる課題があり、さらに、壁紙裏打ち用シートとしては、柔軟性に欠ける問題点があった。
また、特許文献3では、少なくとも、ガラス繊維、木材パルプ、及びバインダー繊維からなるガラス繊維混抄紙の表面にラテックスを含む樹脂組成物を塗工することが開示されている。このガラス繊維混抄紙は、木材パルプやラテックス等の樹脂組成物を塗工しているため、不燃性や耐火性が低かった。また、ポリ塩化ビニル樹脂(発泡塩ビゾル)塗工表面の平坦性も、クッション床材用シートとしては十分であるものの、壁紙裏打ち用シートとしては不十分であった。また、壁の角で折り曲げる際の耐折強度が不十分であり、壁紙施工時の角割れが発生する問題点があった。
また、特許文献4では、扁平断面のガラス繊維を構成材料の一つとするガラス不織布であり、扁平断面のガラス繊維を10重量%以上含み、他に円形断面のガラス繊維を構成材料としたガラス不織布が開示されている。このガラス不織布は、電気絶縁板及びプリント配線板用積層板の基材として使用されることを目的としたものであり、実施例では、ガラス不織布が扁平断面のガラス繊維を75質量%以上含んでいるものの、残りの成分がバインダーであり、ガラス繊維を接着する樹脂(バインダー)としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等の樹脂が使用できるとされている。そのため、耐火性や不燃性が不十分であった。さらに、ガラス不織布の密度が高く、無機粒子の含浸性に著しく劣る課題があった。また、ポリ塩化ビニル樹脂を塗工した場合、ポリ塩化ビニル樹脂がガラス不織布の裏面に裏抜けし、ペーパーロールを汚す問題があった。そのため、ポリ塩化ビニル樹脂の塗工表面の平坦性が不十分であった。
さらに、特許文献5では、導体の外部に耐火層、絶縁層、外部被覆層をそれぞれ順次設けた耐火電線の耐火層であって、該耐火層は集成マイカと無機繊維シートを貼り合わせた耐火性複合テープであり、集成マイカを保持する補強層となる無機繊維シートがシート重量を100重量部として60~100重量部の扁平断面を有する繊維と、有機または無機バインダー0~40重量部で構成されることを特徴とする耐火性絶縁テープが開示されている。この耐火性絶縁テープは、60~100重量部の扁平断面を有する無機繊維が使用されるため、厚みが薄く、高密度となるため、無機粒子の含浸性には著しく劣るシートである。さらに、実施例では集成マイカとの接着剤として、シリコーン系樹脂接着剤を使用しているため、耐火性や不燃性が不十分であった。また、ポリ塩化ビニル樹脂を塗工した場合、ポリ塩化ビニル樹脂が耐火性絶縁テープの裏面に裏抜けし、ペーパーロールを汚す問題があった。そのため、ポリ塩化ビニル樹脂の塗工表面の平坦性が不十分であった。
実公昭61-21240号公報 実開昭62-114100号公報 特開平10-046485号公報 特開平6-257042号公報 特開平10-326528号公報
本発明の課題は、無機粒子層の塗工性に優れ、壁紙裏打ち用耐火シートにおけるポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、さらにポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けがなく、柔軟性と耐火性と不燃性を兼ね備え、耐折強度に優れた壁紙裏打ち用耐火シートを提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
(1)基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該フィブリル化繊維の含有率が、該基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有していることを特徴とする壁紙裏打ち用耐火シート。
(2)該扁平断面のガラス繊維の含有率が、ガラス繊維全量に対して55質量%以上90質量%以下である上記(1)記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
(3)該湿熱接着性バインダー繊維がシラノール変性ポリビニルアルコール繊維である上記(1)又は(2)記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
(4)該繊維形状を有する無機バインダーがセピオライトであり、体積平均の中心粒子径(D50)が30~90μmである上記(1)~(3)のいずれか記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、ガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有する基材を含有している。フィブリル化繊維がガラス繊維や湿熱接着性バインダー繊維や繊維形状を有する無機バインダーと絡み合い、結合させ、湿熱接着性バインダーの被膜で繊維同士を強力に固定するため、シート強度を向上する効果があり、無機粒子層の塗工性に優れている。繊維形状を有する無機バインダーは、フィブリル化繊維と絡み合うことで基材からの脱落が少なく、繊維間の空隙を埋めるため、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けを防止すると共に、耐熱性、不燃性を向上させることができる。
また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、円形断面のガラス繊維の他に、扁平断面のガラス繊維を含有することで、該壁紙裏打ち用耐火シートのポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性を良好とすることができる。さらに、扁平断面のガラス繊維の含有率がガラス繊維全量に対して、55質量%以上90質量%以下にすることで、厚みが薄くなり、柔軟性が向上すると共に、無機粒子層の塗工性を確保しつつ、引張強度や引裂強度や耐折強度を格段に向上させることができる。
また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、無機粒子と無機バインダーを含有する無機粒子層を含有しており、基材にも耐熱性が高い繊維形状を有する無機バインダーを含有するため、耐火性及び不燃性に優れるという効果を達成できる。
壁紙裏打ち用耐火シートの基材の表面観察画像である。
本発明において、壁紙裏打ち用耐火シートは、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該フィブリル化繊維の含有率が、該基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下で含有していることを特徴とする。本明細書において、「壁紙裏打ち用耐火シート」を「耐火シート」と略記する場合がある。
本発明におけるガラス繊維としては、例えば、チョップドストランド、グラスウール、グラスフレークが挙げられる。折れ難く、基材の形成能があればいずれのガラス繊維でも良い。
本発明において、ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有する。扁平断面のガラス繊維において、扁平断面の長径と短径のそれぞれの寸法は特に限定されず、その断面が長径と短径を有する繊維であれば良いが、長径と短径の比(以下、「長径と短径の比」を「扁平比」と記載する。)が3~5であることが好ましい。扁平比が3未満の場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性や強度の向上効果が低くなる場合があり、一方、扁平比が5を超えた場合、扁平ガラス繊維の紡糸が困難になる場合や、抄紙において、繊維本数が減少するため、基材の地合が悪化する場合や、耐火シートが薄くなり過ぎる場合や、ピンホールが発生し易くなる場合がある。
円形断面のガラス繊維の繊維径は、1~11μmであることが好ましく、2~8μmであることがより好ましく、3~7μmであることがさらに好ましい。繊維径が1μm未満の場合、細か過ぎて抄造時に基材からガラス繊維が脱落し、基材の強度及び厚みが不十分となる場合がある。繊維径が11μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、基材の隙間が大きくなり、無機粒子層を形成しても、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が損なわれる場合や無機粒子の粉落ちが増加する場合や柔軟性が悪化する場合がある。ガラス繊維の繊維径が1~11μmである場合、基材の隙間が細かく、均一となるため、無機粒子層を形成後の粉落ちが少なく、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面が平坦となり易く、さらに、柔軟性も優れた耐火シートになる。
扁平断面のガラス繊維の換算繊維径は、5~17μmが好ましく、6~14μmがより好ましく、7~11μmがさらに好ましい。また、短径は、2.8~9.6μmが好ましく、3.5~7.0μmがより好ましく、4.0~6.0μmがさらに好ましい。換算繊維径とは、扁平繊維の断面積と同面積を有する円形断面繊維の直径の値を意味する。換算繊維径が5μm未満の場合、経済的な紡糸が困難になり、一方、換算繊維径が17μmを超えた場合、繊維が太くなり過ぎて、剛性が高く、抄紙工程での分散が難しくなる場合がある。また、ガラス繊維の本数が減るため、空隙が大きくなり、無機粒子層の塗工性や付着量が低下する場合や耐火シートのポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が悪化する場合がある。
ガラス繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~6mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、基材の強度が不足する場合があり、繊維長が15mmを超えた場合、基材の地合が悪くなる場合やガラス繊維が絡まった塊やよれが発生し易くなる場合や柔軟性が悪化する場合がある。
ガラス繊維の含有率は、基材を構成する全原料に対して、75~93質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましく、83~87質量%であることがさらに好ましい。含有率が75質量%未満であると、基材強度や耐火性又は不燃性が悪くなる場合があり、含有率が93質量%を超えると、ガラス繊維同士の結合は弱いことから、基材強度が弱くなり、無機粒子層の塗工性が悪化する場合があり、さらに、基材の繊維の隙間が大きくなるため、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が損なわれる場合がある。
扁平断面のガラス繊維の含有率は、ガラス繊維全量に対して、55質量%以上90質量%以下が好ましく、65質量%以上90質量%以下がより好ましく、75質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。含有率がこの範囲の場合、基材の乾燥時及び湿潤時の引張強度が強く、無機粒子層の塗工性が優れる。また、耐火シートの柔軟性に優れ、耐折強度が強くなり、壁紙施工時の角割れを防ぐことができる。含有率が55質量%未満の場合、基材の強度の向上効果が見られない場合がある。一方、90質量%を超えた場合、厚みが薄くなり、繊維本数が減少するため、耐火シートにピンホールが発生し易くなり、耐火シートにポリ塩化ビニル樹脂塗工液を塗工した際に、裏抜けが発生し易くなる場合がある。
本発明に用いるバインダー繊維は湿熱接着性バインダー繊維である。湿熱接着性バインダー繊維とは、湿潤状態において、ある温度で繊維状態から流動、又は容易に変形して接着機能を発現する繊維のことを言う。具体的には、熱水又は水蒸気(例えば、80~120℃程度)で軟化して自己接着、又は他の繊維に接着可能な熱可塑性繊維であり、例えば、ポリビニル系繊維(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなど)、セルロース系繊維(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロース、又はその塩など)、変性ビニル系共重合体からなる繊維(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、又は、その無水物との共重合体、又はその塩など)などが挙げられる。本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、ポリビニル系繊維が好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)繊維がより好ましい。ポリビニルアルコール繊維を用いた場合、基材強度がより高くなり、また、繊維間に皮膜を形成し易く、無機粒子を繊維間に保持し易くなる。また、耐火シートにおけるポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が向上し易くなる。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、架橋性官能基を有する化合物で変性された変性ポリビニルアルコール繊維、架橋剤を用いて紡糸時又は紡糸後に温和な条件下で架橋を行った架橋ポリビニルアルコール繊維が、低延伸糸に耐熱水特性を付与することが可能となり、より好ましい。
架橋性官能基としては、シラノール基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられる。pH等を調整することによって、架橋性官能基を有する化合物で変性されたポリビニルアルコールを架橋させることなく水に溶解し、紡糸して、変性ポリビニルアルコール繊維を得ることができる。紡糸時又は紡糸後に、変性ポリビニルアルコール繊維を架橋させても良い。変性度は、好ましくは0.01~10mol%であり、より好ましくは、0.1~5mol%である。好適な例としては、シラノール変性ポリビニルアルコール(変性度0.1~2mol%)をアルカリ溶液(pH9~13)に溶解し、該溶液を酸性(pH5~6)にすることにより架橋させつつ紡糸し、乾燥後熱処理して得られるシラノール変性ポリビニルアルコール繊維が挙げられる。
また、自己架橋性の無い未変性ポリビニルアルコールを紡糸後、各種有機系又は無機系架橋剤を付与して架橋せしめる方法によって得られた、架橋ポリビニルアルコール繊維を用いることもできる。無機系架橋剤としては、リン酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸チタニル等が挙げられる。また、有機系架橋剤として、メチロール系、エポキシ系、イソシアネート系、アルデヒド系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤を未変性ポリビニルアルコール紡糸原液に添加して紡糸した後、又は、未変性ポリビニルアルコールを単独で紡糸して架橋剤含有浴を通した後、熱処理することで架橋を進行させることができる。また、これらの方法を併用することも可能である。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維は上記に限定されるものではないが、シラノール変性ポリビニルアルコール繊維は、ガラス繊維との接着性がさらに高まるため、基材の引張強度をさらに高めることができるため、特に好ましい。
湿熱接着性バインダー繊維の繊度は、0.1~5.6デシテックスであることが好ましく、0.4~2.2デシテックスであることがより好ましく、0.6~1.1デシテックスであることがさらに好ましい。繊度が0.1デシテックス未満の場合、繊維自体が非常に高価になり、また、基材が緻密で薄くなり過ぎる場合がある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、ガラス繊維との接点が少なくなり、湿潤状態での強度維持が困難になる場合がある。また、均一な地合が取れない場合がある。湿熱接着性バインダー繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~5mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから湿熱接着性バインダー繊維が抜け落ちる場合があり、十分な強度の耐火シートが得られない場合がある。一方、15mmを超えた場合、水に分散する際に湿熱接着性バインダー繊維がもつれる場合があり、耐火シートの地合が不均一になる場合がある。
湿熱接着性バインダー繊維の含有率は、ガラス繊維全量に対して、3~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維が3質量%未満の場合、基材の強度が低下し、無機粒子層を塗工する際に断紙する場合やガラス繊維が脱落する場合がある。一方、湿熱接着性バインダー繊維の含有率が20質量%を超えた場合、基材を湿式抄造法で抄紙する際、ドライヤーからの剥離性が悪化する場合があり、また、無機粒子層を塗工する際に、基材への浸透性が低下する場合があり、壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性が悪化する場合がある。
フィブリル化繊維としては、天然セルロース、溶剤紡糸セルロースやアクリル、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂からなるフィブリル化繊維が挙げられる。これらの中でも、耐熱性が高く、親水性が高く、フィブリル化し易い全芳香族ポリアミドが好ましい。さらに好ましくは、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)樹脂等のメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が好ましい。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は、抄紙機を用いて紙に似た構造物を作ることができる多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状、もしくは鱗片状の小片であり、基材の空隙を埋め、シートを平滑にする効果がある。また、結晶構造内に存在する水分が加熱・減圧などにより除去される際に大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするため、基材の湿潤強度を向上させる効果がある。
本発明におけるフィブリル化繊維の変法濾水度は、0~300mlであることが好ましく、より好ましくは0~200mlであり、さらに好ましくは0~100mlである。変法濾水度が300mlを超えた場合、フィブリル化繊維の幹部分の繊維幅が太く、フィブリル化があまり進んでいないため、ガラス繊維との緻密なネットワークが少なくなるため、引張強度が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満の場合、フィブリル化繊維のファイン分が増えて、基材から脱落する割合が増え、歩留まりが低下する場合がある。また、繊維のフィブリル化処理に時間が掛かり、非常に高価なものになる。また、基材が薄くなり易く、高密度化し易くなるため、無機粒子層形成用塗工液が内部に浸透し難くなり、耐火性が悪化する場合がある。フィブリル化繊維のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値のことである。
本発明のフィブリル化繊維において、質量加重平均繊維長は、0.02mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、長さ加重平均繊維長は、0.02mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、基材からフィブリル化繊維が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、繊維の離解が悪くなり、分散不良が発生し易くなる。
フィブリル化繊維が、上記の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長を持つ場合、基材に含まれるフィブリル化繊維の含有率が少ない場合でも、フィブリル化繊維間やフィブリル化繊維とガラス繊維との間において、繊維による緻密なネットワーク構造が形成され、引張強度が高く、無機粒子層形成用塗工液の浸透性や液保持性を高めることができる基材が得られ易くなる。
フィブリル化繊維の平均繊維幅は、0.5μm以上40.0μm以下が好ましく、3.0μm以上35.0μm以下がより好ましく、5.0μm以上30.0μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40.0μmを超えた場合、フィブリル化繊維とガラス繊維の絡み合いが減少するため、引張強度が低下する場合があり、平均繊維幅が0.5μm未満の場合、基材からフィブリル化繊維が脱落するようになり、交点が増え過ぎるために湿熱接着性バインダー繊維を増やさないと、引張強度が低下する場合がある。
本発明において、フィブリル化繊維の質量加重平均繊維長、長さ加重平均繊維長及び平均繊維幅は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して、投影繊維長(Proj)モードにおいて測定した質量加重平均繊維長(L(w))、長さ加重平均繊維長(L(l))及び繊維幅である。
フィブリル化繊維は、繊維状、パルプ状等の樹脂をリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、耐熱性樹脂の懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、樹脂にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて処理することによって得ることができる。
本発明において、フィブリル化繊維の含有率は、基材を構成する全原料に対して、2質量%以上9質量%以下であり、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましい。フィブリル化繊維の含有率が9質量%を超えた場合、耐火性や耐火試験後の形状維持性が低下する。また、基材が薄くなり過ぎて、基材の空隙が減少するため、無機粒子層形成用塗工液の浸透性や液保持性が低下し、無機粒子層の塗工量が減少するため、塗工回数を増やす必要がある。一方、フィブリル化繊維の含有率が2質量%未満である場合、フィブリル化繊維間やフィブリル化繊維とガラス繊維との緻密なネットワーク構造が形成され難く、引張強度の向上効果が発現しない。また、繊維形状を有する無機バインダーの歩留まりが低下する。
本発明において、基材に用いる繊維形状を有する無機バインダーとしては、セピオライトを好適に使用することができ、天然に存在するセピオライトを適度に粉砕するか、加水混合・撹拌して解繊し、所望の繊維形状を有するセピオライトを得る。市販品としては、ミルコン(登録商標、昭和KDE社製品)等を使用できる。その単繊維の断面は、タルクを互い違いに積み重ねた構造(口径約0.56×1.1nm)の長いトンネルがいくつも空いており、このトンネルが無機粒子層の塗工液の吸収性向上に寄与し、また、ポリ塩化ビニル樹脂塗工液の裏抜け防止に寄与する。
繊維形状を有する無機バインダーの粒子径は、30μm以上90μm以下が好ましく、35μm以上85μm以下がより好ましく、36μm以上80μm以下がさらに好ましい。粒子径がこの範囲の場合、基材からの流失や脱落が少なく、基材の最大細孔径を細かくすることができ、基材の耐火性を向上させることができる。粒子径が30μm未満の場合、基材からの流失が増える場合があり、粒子径を大きくするため、凝集剤の添加が必要になる場合がある。粒子径が90μmを超えた場合、粒子径が大き過ぎるため、基材の平滑性が損なわれる場合や基材から脱落する場合がある。無機バインダーの粒子径は、無機バインダーを水で希釈し、撹拌機で分散し、これをレーザー散乱タイプの粒度測定機(マイクロトラック社製、商品名:MT3000)によって測定し、得られた体積平均の中心粒子径(D50)を粒子径とした。
本発明において、基材に用いる繊維形状を有する無機バインダーの含有量は、基材を構成する全原料に対して、5質量%以上20質量%未満であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましく、8質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。繊維形状を有する無機バインダーの含有量が5質量%未満の場合、無機粒子層の塗工液の吸収性やポリ塩化ビニル樹脂塗工の塗工液の裏抜け防止の効果が少なくなる場合がある。一方、含有率が20質量%以上の場合、耐火シートの強度が低下し、無機粒子層の塗工性が低下する場合がある。また、耐折強度が低下し、壁紙製品とした場合、角割れが発生する場合がある。
本発明において、ガラス繊維、湿熱接着性バインダー繊維、フィブリル化繊維、繊維形状を有する無機バインダーに加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、各種繊維を配合することができる。その結果、さらに細かい空隙部を増やすことができ、無機粒子の保持性や壁紙裏打ち用耐火シートの強度を向上させることができる。このような繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、アルミナ、シリカ、セラミックス、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
合成樹脂繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートに含まれることができる上記各種繊維は、1種でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明において、基材の厚みは、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。また、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。基材の厚みを上記の範囲とした場合において、本発明における基材では、抄紙工程や塗工工程で必要な引張強度を維持できるため、基材の抄造性も含め、各工程での作業性が良好なものとなる。基材の厚みが1.0mmを超えると、壁紙裏打ち用耐火シートとして、柔軟性が損なわれて、取り扱い難くなる場合がある。基材の厚みが0.1mm未満であると、基材の空隙が大きくなり、塗工し難くなり、また、無機粒子層を多く塗工する必要があり、粉落ちが増える場合や柔軟性が悪化する場合がある。
本発明における基材の密度は、0.10g/cm以上であることが好ましく、0.20g/cm以上であることがより好ましい。また、0.50g/cm以下であることが好ましく、0.40g/cm以下であることがより好ましい。密度が0.10g/cm未満である場合、基材の引張強度が弱くなり過ぎて、基材の取り扱い時や塗工時に破損する場合があり、0.50g/cmを超えた場合、基材の柔軟性が悪化して、抄紙のリーラーで巻き取り難くなる場合や無機粒子層の塗工量が低下する場合がある。
本発明における基材は、湿式抄造法(抄紙法)によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は繊維を水に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを抄紙機で抄いて湿式不織布を製造する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機が挙げられる。また、複数のヘッドボックスを有し、ワイヤー上で湿紙を重ね合わせる抄紙機にて製造することができる。抄紙スラリーには、繊維原料の他に、必要に応じて、分散剤、紙力増強剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加することができる。抄紙スラリーの固形分濃度は、0.5~0.001質量%程度であることが好ましい。この抄紙スラリーを、さらに所定濃度に希釈してから抄造し、湿紙ウェブを得る。ついで、抄造された湿紙ウェブは、プレスロールなどでニップされ、ついで、ヤンキードライヤーを使用し、湿熱接着性バインダー繊維を溶融させて、強度を発現させる。ヤンキードライヤーにて乾燥することにより、乾燥された表面は平坦となり、表面の凹凸が少ない面を形成できる。その他、補助乾燥として、熱風乾燥機、加熱ロール、赤外線ヒーターなどの加熱装置を併用しても問題無い。この時の乾燥温度としては、湿紙ウェブの水分が十分に除去でき、湿熱接着性バインダー繊維により強度を発現できる温度とすることが好ましい。
本発明において、無機粒子層は、無機粒子と無機バインダーを含有している層である。この無機粒子層が、基材に含有される繊維の表面全体を被覆しており、また、基材の空隙に充填されていることによって、耐火シートの耐火性と不燃性の効果が得られる。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂の浸透性が抑えられ、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好となる。
図1は、壁紙裏打ち用耐火シートの基材において、ヤンキードライヤー面の電子顕微鏡(SEM)観察写真である。基材に含有される円形断面と扁平断面のガラス繊維、溶剤紡糸セルロース繊維であるフィブリル化繊維2及び湿熱接着性バインダー繊維と繊維形状を有する無機バインダーが確認できる。フィブリル化繊維2はガラス繊維の間に入り込み、ガラス繊維間の隙間を埋めている。また、湿熱接着性バインダー繊維は、湿潤状態において、ある温度で繊維状態から流動、又は容易に変形して皮膜状となり、ガラス繊維の交点やフィブリル化繊維を覆っており、図1のSEM観察写真では表面上に不定形な皮膜状物として観察される。これにより接着性を発現すると共に、基材の平坦性を向上させている。繊維形状を有する無機バインダーは、ガラス繊維の表面やガラス繊維の間に、フィブリル化繊維2や湿熱性接着繊維と絡みながら付着しており、基材の平坦性を向上させ、塩化ビニル樹脂の裏抜けを防止させる。
無機粒子としては、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石膏、アルミン酸三カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、二酸化チタン等の水分散性の良い無機粒子が使用できる。上記無機粒子は、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
無機粒子の中でも、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸塩系の無機粒子は、火炎が当たった際に無機粒子が固化し、耐火シートから無機粒子が脱落することを防止できるため好ましい。さらに、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリンは、耐火シートを高温化で保持した場合でも、耐火性と不燃性に優れ、耐火シートの強度を維持できるため、より好ましい。
本発明において、無機粒子の粒子径は、0.08μm以上20.0μm以下であることが好ましく、0.30μm以上15.0μm以下であることがより好ましく、0.40μm以上10.0μm以下であることがさらに好ましい。粒子径が20.0μmを超えると、壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性が悪化する場合や粉落ちや高温下に曝した際の断熱性が悪化する場合がある。一方、粒子径が0.08μm未満の場合、無機粒子を分散する際に増粘し易く、分散し難くなり、基材に塗工した場合、無機粒子が基材から脱落し易くなる場合や、脱落を防ぐために無機バインダーを増量する必要があり、耐火シートの柔軟性が損なわれる場合がある。なお、無機粒子の粒子径は、無機粒子を水で希釈し、撹拌機で分散し、これをレーザー散乱タイプの粒度測定機(マイクロトラック社製、商品名:MT3000)によって測定し、得られた中心粒子径(D50、体積平均)を粒子径とした。
本発明において、無機粒子層は無機バインダーを含む。無機バインダーとしては、例えば、セピオライト、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、ベントナイトなどが挙げられる。上記無機バインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
本発明において、無機粒子層に含まれる無機バインダーの含有率は、無機粒子の総量に対して、2質量%以上100質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダーの含有率が2質量%未満の場合、無機粒子が基材から脱落し易くなる場合がある。また、無機バインダーの含有率が100質量%を超えた場合、無機粒子層の塗工性が悪化する場合がある。
無機粒子層形成用塗工液を調製するための媒体としては、無機バインダーや無機粒子を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。また、使用する媒体は、基材を膨張させない媒体又は基材を溶解しない媒体が好ましい。
無機粒子層の含有率は、「無機粒子層の塗工量(g/m)/基材坪量(g/m)×100」で算出される値であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%以上がさらに好ましい。無機粒子層の含有率が60質量%以上であれば、壁紙裏打ち用耐火シートに火炎を当てた場合でも、耐火シートの溶融や損傷がほとんどない。一方、無機粒子層の含有率は160質量%未満が好ましい。無機粒子層の含有率が高いほど、耐火シートの厚みが増加し、耐火性と不燃性は高くなるが、無機粒子層の含有率が160質量%以上の場合、粉落ちが発生する場合や耐火シートの柔軟性が損なわれる場合がある。
無機粒子層を形成するために、無機粒子を基材に塗工する装置としては、各種の塗工装置を用いることができる。例えば、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、キスタッチコーター、ディップコーター等の含浸、又は塗工装置による各種コーターを用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明において、基材の扁平断面のガラス繊維の含有率が高い場合、厚みが薄くなり、無機粒子層の塗工液の液保持量が減少するため、塗工液の濃度を調整するか、2ロールサイズプレスを用いる場合には、ロール間の隙間を精密に調整する機能を有する装置(例えば、シリンダーとコッターの構成)を使用することが好ましい。
本発明において、無機粒子層には、前記無機粒子及び無機バインダーの他に、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の各種分散剤、塗工液の液安定性を増すため、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の各種増粘剤、各種保水剤、各種の濡れ剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。一般に、媒体として有機溶剤を使用した非水系塗工液は表面張力が低く、媒体として水を用いた水系塗工液の表面張力は高い。本発明の基材は、塗工液の受理性が高いため、非水系塗工液も水系塗工液も、両方共に問題無く塗工することができるが、本発明において、媒体として水のみを用いた水系塗工液を使用することが好ましい。
本発明において、壁紙裏打ち用耐火シートの少なくとも片側の面を共焦点レーザー顕微鏡によって表面粗さを計測して得られるコア部のレベル差Skが55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることがさらに好ましい。また、Skは20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。そして、ポリ塩化ビニル樹脂は、壁紙裏打ち用耐火シートのSkが55μm以下である面に塗工されることが好ましい。「コア部のレベル差Sk」は、表面粗さを比較する指標であり、ISO25178に準拠したコア部の上側レベルと下側レベルとの差である。ポリ塩化ビニル樹脂の塗工では、発泡塩ビゾルを塗工し、乾燥・ゲル化させた後、発泡させる。本発明の壁紙裏打ち用耐火シートの少なくとも片側の面のSkが55μm以下である場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好であることを意味する。また、本発明の壁紙裏打ち用耐火シートの少なくとも片側の面のSkが55μm以下である場合、無機粒子層の粉落ちが少なく、柔軟性と耐火性と不燃性を兼ね備えた壁紙裏打ち用耐火シートが得られ易くなる。Skが55μmを超えた場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が悪化する場合がある。一方、Skが20μm未満の場合、ポリ塩化ビニル樹脂塗工表面の平坦性が良好で、耐火性や不燃性も良好であるが、壁紙裏打ち用耐火シートとして柔軟性が損なわれる場合がある。
本明細書におけるSkの測定方法を説明する。
(1)壁紙裏打ち用耐火シートの写真撮影
壁紙裏打ち用耐火シートを幅方向45mm×流れ方向60mmに断裁して試料とする。断裁した壁紙裏打ち用耐火シートの写真を、株式会社キーエンス製共焦点レーザー顕微鏡VK-X1050(製品名)を用いて、以下の条件で観察する。
「VK観察アプリケーション」の「形状計測」の「簡易測定」で、同軸照明で壁紙裏打ち用耐火シートを照らし、撮影倍率20倍で観察する。「ナビゲーション画像作成」を行い、「連結測定」の「連結領域の指定方法」として「始点と長さ」を選び、撮影サイズを「横:3000μm×縦:2000μm」に指定し、写真撮影位置を決定して、測定を開始する。
(2)画像補正
得られた壁紙裏打ち用耐火シートの写真を「マルチファイル解析アプリケーション」で開き、以下の順で画像補正処理を行う。
面形状補正:補正方法は「うねり除去」、指定方法は「補正の強さ」を選び、補正の強さを「5」に設定して面形状補正を行う。
(3)表面粗さ計測
計測領域として「全領域」を指定し、Skを計測する。一つの壁紙裏打ち用耐火シートについて、5箇所で本測定を実施し、5箇所におけるSkの平均値を算出する。
表面粗さ計測の詳細設定条件を表1に記載する。
Figure 2023043470000002
壁紙裏打ち用耐火シートのSkを55μm以下にする方法としては、
(I)繊維径の細いガラス繊維を使用する。
(II)扁平断面のガラス繊維を使用する。
(III)湿熱接着性バインダー繊維を増量する。
(IV)フィブリル化繊維を増量する。
(V)無機粒子層の塗工量を増量する。
(VI)無機粒子層を、例えば、グラビアコーターやロッドコーター等の表面塗工方式で塗工する。
等の方法から選択される1以上の方法が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。また、塗工量は絶乾塗工量である。
実施例1
<フィブリル化繊維1の作製>
硫酸中の対数粘度1.5のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)10部を、塩化リチウム15部を含むN,N-ジメチルアセトアミド90部に溶解し、この溶液を高速回転でかき混ぜているホモミキサー中のグリセリン水溶液に導入してパルプ状物を得て、このパルプ状物をシングルディスクリファイナーに通し、フィブリル化させて変法濾水度を調整し、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)を得た。
<基材の作製>
扁平ガラス繊維(日東紡績株式会社製、長径28μm、短径7μm、繊維長13mm、扁平断面)を69部、ガラス繊維(日東紡績株式会社製、繊維径6.5μm、繊維長6mm、円形断面)を10部、シラノール変性PVA繊維(湿熱接着性バインダー繊維、商品名:SPG056-11、株式会社クラレ製、繊度0.6デシテックス、繊維長3mm)を8部、上述のフィブリル化繊維1を5部、粒子径36.5μmの繊維形状を有する無機バインダー(昭和KDE社製、商品名:ミルコン(登録商標)E2)8部を、パルパーにより水中に分散し、濃度0.5%の均一な抄紙スラリーを調成し、目標坪量を50.0g/mに設定して円網抄紙機を用いて湿紙ウェブを得て、表面温度120℃のヤンキードライヤーによって乾燥し、坪量50.2g/m、厚み0.192mmの基材を作製した。
<無機粒子層形成用塗工液の調製>
カオリン(商品名:ASP(登録商標) NC X-1、BASF CORPORATION製)100部と、水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロン(登録商標)T-50、東亞合成株式会社製)0.4部を水中に混合し十分撹拌し、カオリン分散液を調製した。ついで、セピオライト(商品名:ミルコン(登録商標)SP-2、昭和KDE株式会社製)20部と水溶性アクリル酸系分散剤(アロンT-50)1.0部を水中に混合し十分撹拌し、セピオライト分散液を調製した。ついで、カオリン分散液全量とセピオライト分散液全量を混合、撹拌し、水で濃度を調整して、固形分濃度40%の塗工液を調製した。
<壁紙裏打ち用耐火シートの作製>
前記基材を、無機粒子層形成用塗工液に含浸し、隙間調整機能(コッター)を有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.2g/m、総坪量109.4g/m、厚み0.206mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。耐火性と不燃性とを良好に維持するために、隙間調整機能(コッター)を有した2ロールサイズプレスにて隙間の間隔を調節することにより、目標塗工量を合わせた。
実施例2
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を72部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を8部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を2部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを10部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量49.6g/m、厚み0.185mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.5g/m、総坪量110.1g/m、厚み0.201mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例3
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を55部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を23部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を9部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.3g/m、厚み0.208mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量110.4g/m、厚み0.220mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例4
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を47部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を35部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.5g/m、厚み0.213mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.8g/m、総坪量110.3g/m、厚み0.225mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例5
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を10部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、粒子径79.5μm(昭和KDE社製、商品名:ミルコン(登録商標)YS-2)の繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.3g/m、厚み0.195mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量110.4g/m、厚み0.210mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例6
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を42部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を37部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.4g/m、厚み0.221mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.0g/m、総坪量110.4g/m、厚み0.235mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例7
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を74部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を5部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.2g/m、厚み0.180mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.2g/m、総坪量110.4g/m、厚み0.195mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例8
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を10部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、フィブリル化繊維2として、リファイナーを用いて平均繊維径12μm、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース繊維を微細化し、変法濾水度100mlに叩解されてなるフィブリル化セルロース繊維5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量49.5g/m、厚み0.183mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.5g/m、総坪量109.0g/m、厚み0.199mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例9
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を10部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、粒子径18.9μm(昭和KDE社製、商品名:ミルコン(登録商標)SP)の繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量48.2g/m、厚み0.182mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.6g/m、総坪量107.8g/m、厚み0.192mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例10
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を10部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、粒子径91.2μm(昭和KDE社製、商品名:ミルコン(登録商標)SS)の繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.5g/m、厚み0.198mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量110.6g/m、厚み0.212mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例11
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を10部、PVA繊維(湿熱接着性バインダー繊維、商品名:VPB(登録商標)107-1、株式会社クラレ製、1.1デシテックス、3mm)を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.3g/m、厚み0.194mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.8g/m、総坪量110.1g/m、厚み0.207mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例12
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を58部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を9部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを20部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.1g/m、厚み0.178mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量110.2g/m、厚み0.185mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例1
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を78部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を9部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.1g/m、厚み0.165mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量59.5g/m、総坪量109.6g/m、厚み0.180mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例2
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を76部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を8部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを8部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量47.8g/m、厚み0.158mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量107.9g/m、厚み0.172mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例3
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を74部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を8部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を1部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを9部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量48.8g/m、厚み0.157mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.2g/m、総坪量109.0g/m、厚み0.170mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例4
繊維配合において、実施例1で使用した扁平ガラス繊維を69部、実施例1で使用したガラス繊維(円形断面)を8部、実施例1で使用したシラノール変性PVA繊維を8部、実施例1で使用したフィブリル化繊維1を10部、実施例1で使用した繊維形状を有する無機バインダーを5部とした以外、実施例1と同様な方法で、坪量50.6g/m、厚み0.191mmの基材を作製した。
この基材に実施例1で用いた塗工液を含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.3g/m、総坪量110.9g/m、厚み0.205mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
比較例5
無機粒子層形成用塗工液として、実施例1で使用したカオリン100部と水溶性アクリル酸系分散剤0.4部と塩化ビニル系エマルジョン(商品名:ビニブラン(登録商標)278、固形分濃度43%、日信化学工業株式会社製)20部を水中で混合し十分撹拌し、固形分濃度40%の塗工液を調製した。
この塗工液を実施例1で作製した坪量50.2g/m、厚み0.192mmの基材に含浸し、コッターを有した2ロールサイズプレスにて、目標塗工量を60g/mに近づくようにロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、絶乾塗工量60.1g/m、総坪量110.3g/m、厚み0.207mmの壁紙裏打ち用耐火シートを作製した。
実施例及び比較例の基材及び壁紙裏打ち用耐火シートについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表2~表3に示した。
<基材及び壁紙裏打ち用耐火シートの坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、基材の坪量及び耐火シートの総坪量を測定した。無機粒子層の絶乾塗工量は耐火シートの坪量から基材の坪量を差し引いて算出した。
<基材及び壁紙裏打ち用耐火シートの厚み>
JIS B7502:2016に規定された外側マイクロメーターを用いて、5N荷重時の厚みを測定した。
<基材の引張強度>
各基材について、長辺が流れ方向になるように、流れ方向250mm×幅方向50mmのサンプル片を5枚切り出し、卓上型万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、商品名STB-1225S)を用いて、JIS P8113:1998に準じて、引張速度100mm/minで引張試験を行った。引張応力の最大値を「引張強度」とし、5枚の平均値とした。
<耐火シートの耐折強度>
各耐火シートについて、長辺が流れ方向になるように、流れ方向110mm×幅方向15mmのサンプル片を10回測定分の枚数を切り出し、MIT試験機を用いて、JIS P8115:2001に準じて、9.8Nの荷重を加え、流れ方向の耐折強度試験を行った。耐折強度の値は10回の平均値とした。耐折強度が強い方が、製品の角割れ耐性に優れていると言える。壁紙裏打ち用耐火シートとしては、耐折強度が20回以上の場合、施工時に角割れが発生し難く、好ましい。
<無機粒子層の塗工性>
基材に無機粒子層を形成する際の塗工し易さを、次の評価基準で評価した。
○:塗工液を塗工する際に、基材に断紙や亀裂や割れが発生しない場合。
△:塗工液を塗工する際に、基材に断紙や亀裂や割れが発生しないが、張力を調整しても、湿潤状態において、基材にシワや凹凸が発生し、乾燥後も基材にシワや凹凸が残る場合。
×:塗工液を塗工する際に、張力を調整しても、基材に断紙や亀裂や割れが発生する場合。
<耐火性>
壁紙裏打ち用耐火シートの耐火性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片の中央部にバーナー(商品名:ラボバーナーAPTL、株式会社フェニックスデント製)の火炎を5分間当てた。その後、火炎を当てた側の耐火シートの表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。バーナーの火炎温度は、1000℃であった。
○:耐火シートに穴や亀裂や溶融が無い。
△:火炎を当てた耐火シートの表面に溶融や凹みがわずかに見られる。
×:耐火シートに穴や亀裂がある。
<不燃性>
壁紙裏打ち用耐火シートを不燃性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を2枚切り出し、各試験片を750℃±5℃に保持できる加熱電気炉の中に挿入し、次の評価基準で評価した。
○:挿入後、発火しない。
△:挿入後、一瞬発火する。
×:挿入後、シート表面が発火する。
<コア部のレベル差Sk>
上述した測定方法によって、各壁紙裏打ち用耐火シートにおいて、基材の乾燥時にヤンキードライヤーに接触している面を表面として、表面のSkを評価した。
<ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜け>
各壁紙裏打ち用耐火シートを幅方向15cm×流れ方向20cmに裁断し、ガラス板の上に敷いたPPC用紙上に、表面が上になるように耐火シートを置き、耐火シートの上部を粘着テープで固定した。表面に黒色に着色した壁紙用の発泡塩ビゾルをギャップ0.15mmのアプリケーターバーで耐火シートに塗工し、PPC用紙と耐火シートを一緒に150℃の恒温熱風乾燥機で25秒加熱し、ゲル化させた。粘着テープを剥がして、耐火シートを外した後のPPC用紙上における黒色の発泡塩ビゾルの付着状態を目視で観察し、次の評価基準で評価した。
○:付着がない。
△:非常に小さな黒点がわずかに見られる。
×:はっきりした黒点が多数見られる。
<柔軟性>
壁紙裏打ち用耐火シートにおいて、無機粒子層を塗工後、コーターのリーラーで外周直径10cmの紙管に巻き付けた際に、シートの様子を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:紙管にきれいに巻き付けることができる。
△:紙管の巻き付け直後、シートが紙管外周から多少浮き気味、もしくはシワが見られるが、しばらくするときれいに巻くことができる。
×:紙管にきれいに巻き付けることができず、大きな浮きや割れやシワが発生する。
Figure 2023043470000003
Figure 2023043470000004
表2~表3に示した通り、実施例1~12で作製した耐火シートは、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該フィブリル化繊維の含有率が、該基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有している。フィブリル化繊維がガラス繊維を固定し、その固定した交点を湿熱接着性バインダー繊維がさらに固定するため、基材の引張強度が強く、無機粒子層形成用塗工液を塗工しても、断紙等が発生することがなかった。
実施例1~5と実施例6~7を比較すると、扁平断面のガラス繊維の含有率がガラス繊維全量に対して55質量%以上90質量%以下であることで、基材が薄くなり、高密度になるため、引張強度が強くなり、耐火シートの柔軟性が向上すると共に、耐折強度が格段に向上した。また、扁平ガラス繊維と湿熱接着性バインダーの被膜が耐火シートの平坦性を向上させ、また、フィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーが、耐火シートの空隙を埋め、さらに平坦性を向上させると共に、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けを防止することができた。扁平断面のガラス繊維の含有率が90質量%超である実施例7では、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けがわずかに見られ、扁平断面のガラス繊維の含有率が55質量%未満である実施例6では、耐折強度が弱くなる傾向が確認され、無機粒子層形成用塗工液を塗工したときに、シワ等が発生した。
実施例1と実施例11を比較すると、湿熱接着性バインダー繊維として、シラノール変性ポリビニルアルコール繊維を使用した方が、引張強度が強く、無機粒子層の塗工性が向上することが判った。また、耐折強度に優れることが判った。
基材の目標坪量を50g/mに設定している中で、実施例1及び実施5と実施例9~10を比較すると、繊維形状を有する無機バインダーの体積平均の中心粒子径が30μm未満の実施例9は、基材の坪量が2g/m減少しており、繊維形状を有する無機バインダーの抄紙での流失が認められた。一方、繊維形状を有する無機バインダーの体積平均の中心粒子径が90μmを超えた場合、耐火シートの空隙を埋める効果が低下し、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けがわずかに起こった。繊維形状を有する無機バインダーの体積平均の中心粒子径が30~90μmの範囲である場合、基材からの脱落が少なく、また、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けを防止できた。また、繊維形状を有する無機バインダーの中心粒子径が小さい方が、耐火シートのSkが低くなり、耐火シートの平坦性が向上した。
実施例1~2と実施例12を比較した場合、繊維形状を有する無機バインダーが基材を構成する全原料の20質量%未満である方が、無機粒子層の塗工性や耐折強度に優れることが判った。
比較例1の耐火シートは、繊維形状を有する無機バインダーを含まない場合であるが、耐火シートの厚みが薄く、ポリ塩化ビニル樹脂を塗工した場合、その浸透を抑えることができず、裏抜けが発生した。
比較例2の耐火シートは、フィブリル化繊維を含まない場合であるが、基材の目標坪量が50g/mであるのに対して、47.8g/mに低下しており、繊維形状を有する無機バインダーが流失し易く、その結果、ポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けが発生した。また、ガラス繊維及びガラス繊維間がつなぎ留められていないため、無機粒子層の塗工性が悪化した。
実施例2~3と比較例3~4を比較した場合、フィブリル化繊維の含有量が、基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下である場合、無機粒子層の塗工性に優れ、不燃性とポリ塩化ビニル樹脂の裏抜けが向上することが判った。
比較例5の耐火シートは、無機粒子層に有機系バインダーを使用した場合であるが、750℃の加熱電気炉に挿入した際、表面が発火し、不燃性が不十分であった
本発明の壁紙裏打ち用耐火シートは、家屋等に使用される内装用の壁紙裏打ち用シートに関するものであり、発泡ポリ塩化ビニル樹脂(発泡塩ビゾル)塗工の壁紙裏打ち用シートに好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と繊維形状を有する無機バインダーを含有し、該ガラス繊維が円形断面と扁平断面の両方のガラス繊維を含有し、該フィブリル化繊維の含有率が、該基材を構成する全原料に対して2質量%以上9質量%以下であり、該無機粒子層が無機粒子と無機バインダーを含有していることを特徴とする壁紙裏打ち用耐火シート。
  2. 該扁平断面のガラス繊維の含有率が、ガラス繊維全量に対して55質量%以上90質量%以下である請求項1記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  3. 該湿熱接着性バインダー繊維がシラノール変性ポリビニルアルコール繊維である請求項1又は2記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
  4. 該繊維形状を有する無機バインダーがセピオライトであり、体積平均の中心粒子径(D50)が30~90μmである請求項1~3のいずれか記載の壁紙裏打ち用耐火シート。
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