JP2023148946A - 耐熱ガラス繊維不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、建材や工業用部材に使用される、高い耐火性と強度、優れた加工性を有する耐熱ガラス繊維不織布を提供することにある。【解決手段】基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有し、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平断面のガラス繊維を含有し、該扁平断面のガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、該無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満であることを特徴とする耐熱ガラス繊維不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、建材や工業用部材に使用される耐熱ガラス繊維不織布に関するものである。
ガラス繊維は、安価でありながら耐熱性、難燃性に優れているため、建材、自動車用部品、絶縁体、工業部品などに広く使用されてきた。建材としては、例えば壁紙材料、クッションフロア、天井材などの耐火性が要求される用途に広く活用されている。自動車用部材としては、電池カバー、ブレーキパッド、フロントバンパー、天井材、内装材などに使用されている。そして、ガラス繊維を使用した不織布(ガラス繊維不織布)もこれまでいくつか提案されている。しかし、ガラス繊維は、不織布として加工する際に必ずバインダーが必要であり、バインダーは可燃性を有するため、高強度を得るためにバインダーを多く配合すれば、火災や自動車のエンジンルームなどでの使用を想定した防炎性、耐火性を満足することができず、バインダーを少なく配合すれば、ガラス繊維不織布の強度が下がり、加工性が著しく低下する。そのため、高い耐火性と強度を併せ持った耐熱ガラス繊維不織布を得ることは非常に難しいというのが現状である。
例えば、特許文献1では、ガラス繊維が20~100%で、パルプ及び/又はその他の有機繊維が80~0%である繊維基材シートの間隙部に、無機質充填材(無機粒子)と有機系合成樹脂とを混合して付与(附与)したシート材料が開示されている。特許文献1のシート材料は、パルプ及び/又は有機繊維の使用量が多い場合は、耐火性が不十分であり、有機繊維の使用量が少ない場合、強度が弱く、無機質充填材を付与し難く、塗工性が低いという課題がある。
また、光沢を有する難燃紙として、特許文献2では、消炎性ガスを発生する無機粉体(無機粒子)を主成分とする難燃塗料を、無機繊維の紙状物に含浸せしめてなるシート状物が開示されている。この難燃紙では、紙状物に例えば繊維に対して10%以下好ましくは5%以下の有機バインダー、要すれば無機バインダーを併用した含浸液で、含浸乾燥処理を施しているが、紙の強度が低いため、無機粉体の塗工に離型紙、剥離性の良い金属ベルトなどを使用せねばならず、生産性が悪く、コスト高になる課題があった。
また、特許文献3では、少なくとも、ガラス繊維、木材パルプ、及びバインダー繊維からなるガラス繊維混抄紙の表面にラテックスを含む樹脂組成物を塗工することが開示されている。このガラス繊維混抄紙は、十分な強度を得るためには、バインダー繊維を多く使用する必要があり、耐火性に劣るという問題点があった。
また、特許文献4では、扁平断面のガラス繊維を構成材料の一つとするガラス不織布であり、扁平断面のガラス繊維を10質量%以上含み、他に円形断面のガラス繊維を構成材料としたガラス不織布が開示されている。このガラス不織布は、電気絶縁板及びプリント配線板用積層板の基材として使用されることを目的としたものであり、実施例では、ガラス不織布が扁平断面のガラス繊維を75質量%以上含んでいるものの、残りの成分がバインダーであり、ガラス繊維を接着する樹脂(バインダー)としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等の樹脂が使用できるとされている。そのため、耐火性が不十分であった。さらに、無機粒子層の塗工性が劣るという課題があった。
さらに、特許文献5では、導体の外部に耐火層、絶縁層、外部被覆層をそれぞれ順次設けた耐火電線の耐火層であって、該耐火層は集成マイカと無機繊維シートを貼り合わせた耐火性複合テープであり、集成マイカを保持する補強層となる無機繊維シートがシート質量を100質量部として60~100質量部の扁平断面を有する繊維と、有機又は無機バインダー0~40質量部で構成されることを特徴とする耐火性絶縁テープが開示されている。この耐火性絶縁テープは、60~100質量部の扁平断面を有する無機繊維が使用されるため、無機粒子層の塗工性が劣るシートである。さらに、実施例では集成マイカとの接着剤として、シリコーン系樹脂接着剤を多く使用しているため、耐火性が不十分であった。
実公昭61-21240号公報 実開昭62-114100号公報 特開平10-046485号公報 特開平6-257042号公報 特開平10-326528号公報
本発明の課題は、耐火性に優れ、高い強度を備えていることから、無機粒子層の塗工性に優れ、建材や工業部品等に使用する際に加工しやすい耐熱ガラス繊維不織布を提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
(1)基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有し、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平断面のガラス繊維を含有し、該扁平断面のガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、該無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満であることを特徴とする耐熱ガラス繊維不織布。
(2)該湿熱接着性バインダー繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である(1)記載の耐熱ガラス繊維不織布。
(3)該フィブリル化繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である(1)又は(2)記載の耐熱ガラス繊維不織布。
(4)該熱融着性バインダー繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である(1)~(3)のいずれか記載の耐熱ガラス繊維不織布。
本発明の耐熱ガラス繊維不織布は、基材と無機粒子層とを含有しており、基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有している。そのため、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平断面のガラス繊維(「扁平断面のガラス繊維」を「扁平ガラス繊維」と略記する場合がある)を含有し、該扁平ガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であっても、基材の強度が高く、無機粒子層の塗工性に優れ、また、耐熱ガラス繊維不織布は柔軟性に優れ、加工性が高いという効果を達成できる。
扁平ガラス繊維は、接点の面積が広く、湿熱接着性バインダー繊維又は熱融着性バインダー繊維によって強固に結着されるため、これらのバインダー繊維によって基材の強度が向上する効果をより効果的に発現させることができ、これにより、基材及び耐熱ガラス繊維不織布の強度を格段に向上させることができる。
また、柔軟性に乏しいガラス繊維同士を結着させるのに有効な湿熱接着性バインダー繊維と、湿潤時であっても高い強度が得られる熱融着性バインダー繊維とが、ガラス繊維に絡まって結着することによって、ガラス繊維を安定化させることができ、また、フィブリル化繊維を併用することによって脱落繊維を抑制することができることから、基材及び耐熱ガラス繊維不織布の強度が高くなり、また、高い耐火性を得るために、バインダー繊維の量を少なくしても、高い強度を達成することができる。
また、本発明の耐熱ガラス繊維不織布は、無機粒子層によって、耐火性を向上させることができる。そして、無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満であることによって、高い強度と耐火性を同時に得るという効果を達成できる。
本発明の耐熱ガラス繊維不織布は、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有し、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平断面のガラス繊維を含有し、該扁平断面のガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、該無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満であることを特徴とする。
本発明において、ガラス繊維としては、例えば、チョップドストランド、グラスウール、グラスフレークが挙げられる。折れ難く、基材の形成能があればいずれのガラス繊維でも良い。
本発明において、ガラス繊維は扁平断面のガラス繊維(扁平ガラス繊維)を含有する。扁平ガラス繊維において、扁平断面の長径と短径のそれぞれの寸法は、特に限定されず、その断面が長径と短径を有する繊維であれば良いが、長径と短径の比(以下、「長径と短径の比」を「扁平比」と記載する。)が3~5であることが好ましい。扁平比が3未満の場合、耐熱ガラス繊維不織布の強度が低くなる場合があり、一方、扁平比が5を超えた場合、基材の地合が悪化して、抄紙が難しくなる場合がある。
扁平ガラス繊維の配合比率は、全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であっても良い。扁平ガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%未満である場合、無機粒子層の塗工性が悪化し、繊維が脱落する。また、場合によってであるが、基材及び耐熱ガラス繊維不織布の強度を上げる効果が十分に得られない。
円形断面のガラス繊維の繊維径は、1~12μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましく、3~9μmであることがさらに好ましい。繊維径が1μm未満の場合、細か過ぎて抄造時に基材からガラス繊維が脱落し、基材の強度及び厚みが不十分となる場合がある。繊維径が12μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、基材の隙間が大きくなり、無機粒子層の塗工性が悪化する場合や耐熱ガラス繊維不織布の柔軟性が悪化する場合がある。ガラス繊維の繊維径が1~12μmである場合、基材の隙間が細かく、均一となり易く、無機粒子層の塗工性に優れ、柔軟性も優れた耐熱ガラス繊維不織布が得られ易い。
扁平断面のガラス繊維の換算繊維径は、5~17μmが好ましく、6~14μmがより好ましく、7~11μmがさらに好ましい。また、短径は、2.8~9.6μmが好ましく、3.5~8.0μmがより好ましく、4.0~7.0μmがさらに好ましい。換算繊維径とは、扁平繊維の断面積と同面積を有する円形断面繊維の直径の値を意味する。換算繊維径が5μm未満の場合、経済的な紡糸が困難になり、一方、換算繊維径が17μmを超えた場合、繊維が太くなり過ぎて、剛性が高く、抄紙工程での分散が難しくなる場合がある。また、ガラス繊維の本数が減るため、空隙が大きくなり、基材及び耐熱ガラス繊維不織布の強度が低下する場合がある。
ガラス繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~14mmであることがより好ましく、3~13mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、基材の強度が不足する場合や、抄紙の際にワイヤーから繊維が落ちる場合があり、繊維長が15mmを超えた場合、基材の地合が悪くなる場合やガラス繊維が絡まった塊やよれが発生し易くなる場合がある。
ガラス繊維の配合比率は、基材質量に対して、70質量%以上95質量%未満であり、より好ましくは75質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上90質量%以下である。ガラス繊維の配合比率が70質量%未満であると、基材及び耐熱ガラス繊維不織布の強度、耐火性が悪くなる。ガラス繊維の配合比率が95質量%以上であると、ガラス繊維同士の結合は弱いことから、基材の強度が弱くなり、抄紙や無機粒子層の塗工の際、また、耐熱ガラス繊維不織布の加工の際にトラブルが発生する場合がある。
本発明において、ガラス繊維同士を結着するためのバインダーとして、耐熱ガラス繊維不織布の基材は湿熱接着性バインダー繊維を含有する。湿熱接着性バインダー繊維とは、湿潤状態において、ある温度で繊維状態から流動、又は容易に変形して接着機能を発現する繊維のことを言う。具体的には、熱水又は水蒸気(例えば、80~120℃程度)で軟化して自己接着、又は他の繊維に接着可能な熱可塑性繊維であり、例えば、ポリビニル系繊維(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなど)、セルロース系繊維(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロース、又はその塩など)、変性ビニル系共重合体からなる繊維(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、又は、その無水物との共重合体、又はその塩など)などが挙げられる。本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、ポリビニル系繊維が好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)繊維がより好ましい。ポリビニルアルコール繊維を用いた場合、繊維間に皮膜を形成することで、耐熱ガラス繊維不織布として高い強度を得ることができる。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維としては、架橋性官能基を有する化合物で変性された変性ポリビニルアルコール繊維、架橋剤を用いて紡糸時又は紡糸後に温和な条件下で架橋を行った架橋ポリビニルアルコール繊維が、低延伸糸に耐熱水特性を付与することが可能となり、より好ましい。
架橋性官能基としては、シラノール基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられる。pH等を調整することによって、架橋性官能基を有する化合物で変性されたポリビニルアルコールを架橋させることなく水に溶解し、紡糸して、変性ポリビニルアルコール繊維を得ることができる。紡糸時又は紡糸後に、変性ポリビニルアルコール繊維を架橋させても良い。変性度は、好ましくは0.01~10mol%であり、より好ましくは、0.1~5mol%である。好適な例としては、シラノール変性ポリビニルアルコール(変性度0.1~2mol%)をアルカリ溶液(pH9~13)に溶解し、該溶液を酸性(pH5~6)にすることにより架橋させつつ紡糸し、乾燥後熱処理して得られるシラノール変性ポリビニルアルコール繊維が挙げられる。
また、自己架橋性の無い未変性ポリビニルアルコールを紡糸後、各種有機系又は無機系架橋剤を付与して架橋せしめる方法によって得られた、架橋ポリビニルアルコール繊維を用いることもできる。無機系架橋剤としては、リン酸、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸チタニル等が挙げられる。また、有機系架橋剤として、メチロール系、エポキシ系、イソシアネート系、アルデヒド系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤を未変性ポリビニルアルコール紡糸原液に添加して紡糸した後、又は、未変性ポリビニルアルコールを単独で紡糸して架橋剤含有浴を通した後、熱処理することで架橋を進行させることができる。また、これらの方法を併用することも可能である。
本発明に用いる湿熱接着性バインダー繊維は上記に限定されるものではないが、シラノール変性ポリビニルアルコール繊維は、ガラス繊維との接着性がさらに高まるため、基材の引張強度をさらに高めることができるため、特に好ましい。
湿熱接着性バインダー繊維の繊度は、0.1~5.6デシテックスであることが好ましく、0.4~2.2デシテックスであることがより好ましく、0.6~1.1デシテックスであることがさらに好ましい。繊度が0.1デシテックス未満の場合、繊維自体が非常に高価になり、また、基材が緻密で薄くなり過ぎる場合がある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、ガラス繊維との接点が少なくなり、湿潤状態での強度維持が困難になる場合がある。また、均一な地合が取れない場合がある。湿熱接着性バインダー繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~5mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから湿熱接着性バインダー繊維が抜け落ちる場合があり、十分な強度の耐熱ガラス繊維不織布が得られない場合がある。一方、15mmを超えた場合、水に分散する際に湿熱接着性バインダー繊維がもつれる場合があり、耐熱ガラス繊維不織布の地合が不均一になる場合がある。
湿熱接着性バインダー繊維の配合比率は、基材を構成する全原料に対して、1質量%以上15質量%未満であることが好ましく、2質量%以上14質量%未満であることがより好ましく、3質量%以上13質量%未満であることがさらに好ましい。湿熱接着性バインダー繊維が1質量%未満の場合、基材の強度が低下し、無機粒子層を塗工する際に断紙する場合やガラス繊維が脱落する場合がある。一方、湿熱接着性バインダー繊維の配合比率が15質量%以上である場合、基材を湿式抄造法で抄紙する際、ドライヤーからの剥離性が悪化する場合があり、また、無機粒子層を塗工する際に、基材への浸透性が低下する場合があり、耐熱ガラス繊維不織布の耐火性が悪化する場合がある。
フィブリル化繊維としては、天然セルロース、溶剤紡糸セルロース、アクリル、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂からなるフィブリル化繊維が挙げられる。また、全芳香族ポリアミドとしては、ポリ(p-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)等のパラ系芳香族ポリアミド、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)等のメタ系芳香族ポリアミド等が挙げられる。
本発明において、フィブリル化繊維がフィブリル化セルロース繊維であることが好ましく、ガラス繊維にフィブリル化セルロース繊維が絡まることで、繊維の脱落を抑制することができる。また、不織布を抄紙法で製造する場合、操業性が安定するという効果も得られる。セルロース繊維の種類としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維等が挙げられる。天然セルロース繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ;藁パルプ、竹パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどの木本類又は草本類のパルプが挙げられる。再生セルロース繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生セルロース繊維が挙げられる。古紙、損紙などから得られるパルプ繊維を使用してもよい。
上記セルロース繊維の中で、針葉樹パルプ、リンターパルプ及びリヨセルの群から選ばれる1種以上のセルロース繊維を使用することが好ましく、リヨセルを使用することがより好ましい。これらの好ましいセルロース繊維を使用することによって、上述した繊維の脱落を抑制する効果及び抄紙法での操業性安定効果がより高くなる。
フィブリル化(叩解)繊維は、上記のセルロース、耐熱性樹脂等からなる繊維をフィブリル化することによって製造することができる。フィブリル化するための装置としては、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル、ミキサー、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等の装置が挙げられる。これらの装置を、単独又は組み合わせて用いることによって、フィブリル化繊維を製造することができる。そして、これらの装置の種類、処理条件(繊維濃度、温度、圧力、回転数、リファイナーの刃の形状、リファイナーのプレート間のギャップ、処理回数)等のフィブリル化条件の調整により、目的のフィブリル化状態を得ることができる。
本発明におけるフィブリル化繊維の変法濾水度は、0~300mlであることが好ましく、より好ましくは0~200mlであり、さらに好ましくは0~100mlである。変法濾水度が300mlを超えた場合、フィブリル化繊維の幹部分の繊維幅が太く、フィブリル化があまり進んでいないため、ガラス繊維との緻密なネットワークが少なくなるため、引張強度が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満の場合、フィブリル化繊維のファイン分が増えて、基材から脱落する割合が増え、歩留まりが低下する場合がある。また、繊維のフィブリル化処理に時間が掛かり、非常に高価なものになる。また、基材が薄くなり易く、高密度化し易くなるため、無機粒子層形成用塗工液が内部に浸透し難くなり、耐火性が悪化する場合がある。フィブリル化繊維のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値のことである。
本発明において、フィブリル化繊維の質量加重平均繊維長は、0.02mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、長さ加重平均繊維長は、0.02mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、基材からフィブリル化繊維が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、繊維の離解が悪くなり、分散不良が発生し易くなる。
フィブリル化繊維が、上記の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長を持つ場合、基材に含まれるフィブリル化繊維の配合比率が少ない場合でも、フィブリル化繊維間やフィブリル化繊維とガラス繊維との間において、繊維による緻密なネットワーク構造が形成され、引張強度が高く、無機粒子層形成用塗工液の浸透性や液保持性を高めることができる基材が得られ易くなる。
フィブリル化繊維の平均繊維幅は、0.5μm以上40.0μm以下が好ましく、3.0μm以上35.0μm以下がより好ましく、5.0μm以上30.0μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40.0μmを超えた場合、フィブリル化繊維とガラス繊維の絡み合いが減少するため、引張強度が低下する場合があり、平均繊維幅が0.5μm未満の場合、基材からフィブリル化繊維が脱落するようになり、交点が増え過ぎるために湿熱接着性バインダー繊維を増やさないと、引張強度が低下する場合がある。
本発明において、フィブリル化繊維の質量加重平均繊維長、長さ加重平均繊維長及び平均繊維幅は、「JIS P 8226-2:2011、パルプ-光学自動分析法による繊維長測定方法 第2部:非偏光法」に基づき、OpTest Equipment Inc.社製ファイバークオリティーアナライザー(FQA-360)を使用して測定した値である。
本発明において、フィブリル化繊維の配合比率は、基材を構成する全原料に対して、1質量%以上15質量%未満であることが好ましく、2質量%以上14質量%未満であることがより好ましく、3質量%以上13質量%未満であることがさらに好ましい。フィブリル化繊維の配合比率が15質量%を超えた場合、耐火性が低下する。一方、フィブリル化繊維の配合比率が1質量%未満である場合、フィブリル化繊維間やフィブリル化繊維とガラス繊維との緻密なネットワーク構造が形成され難く、引張強度の向上効果が発現しない場合がある。
本発明における熱融着性バインダー繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維;未延伸繊維;低融点合成樹脂単繊維等が挙げられる。熱融着性バインダー繊維は、繊維全体又は繊維の一部のガラス転移温度又は溶融温度(融点)が低く、抄紙機の乾燥工程において、バインダー能力を発現する。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、不織布の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。より具体的には、複合繊維としては、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ等が挙げられる。未延伸繊維としては、ポリエステル等の未延伸繊維が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)等の低融点合成樹脂単繊維は乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、本発明では性能を阻害しない範囲で使用することができる。
熱融着性バインダー繊維の繊度は、0.1~5.6デシテックスであることが好ましく、0.4~2.2デシテックスであることがより好ましく、0.6~1.1デシテックスであることがさらに好ましい。繊度が0.1デシテックス未満の場合、繊維自体が非常に高価になり、また、基材が緻密で薄くなり過ぎる場合がある。一方、5.6デシテックスを超えた場合、ガラス繊維との接点が少なくなり、強度維持が困難になる場合がある。また、均一な地合が取れない場合がある。熱融着性バインダー繊維の繊維長は、1~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、3~5mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満の場合、抄造時に抄紙ワイヤーから熱融着性バインダー繊維が抜け落ちる場合があり、十分な強度の耐熱ガラス繊維不織布が得られない場合がある。一方、15mmを超えた場合、水に分散する際に熱融着性バインダー繊維がもつれる場合があり、耐熱ガラス繊維不織布の地合が不均一になる場合がある。
熱融着性バインダー繊維の配合比率は1質量%以上15質量%未満であることが好ましく、2質量%以上14質量%未満であることがより好ましく、3質量%以上13質量%未満であることがさらに好ましい。熱融着性バインダー繊維が1質量%未満である場合、湿紙状態での強度が十分に保たれず、塗工時に紙切れが発生する場合がある。熱融着性バインダー繊維が15質量%以上である場合、耐熱ガラス繊維不織布の耐火性が悪化する場合がある。
本発明において、ガラス繊維、湿熱接着性バインダー繊維、フィブリル化繊維、熱融着性バインダー繊維に加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、各種繊維を配合することができる。その結果、さらに細かい空隙部を増やすことができ、無機粒子の保持性や耐熱ガラス繊維不織布の強度を向上させることができる。このような繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、アルミナ、シリカ、セラミックス、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。
合成樹脂繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。また、本発明の耐熱ガラス繊維不織布に含まれることができる上記各種繊維は、1種でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明において、基材の厚みは、0.10mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましく、0.20mm以上であることがさらに好ましい。また、1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましい。基材の厚みを上記の範囲とした場合において、本発明における基材では、抄紙工程や塗工工程で必要な引張強度を維持できるため、基材の抄造性も含め、各工程での作業性が良好なものとなる。基材の厚みが1.0mmを超えると、耐熱ガラス繊維不織布として、柔軟性が損なわれて、取り扱い難くなる場合がある。基材の厚みが0.10mm未満であると、基材の空隙が大きくなり、塗工し難くなり、また、無機粒子層を多く塗工する必要があり、粉落ちが増える場合や柔軟性が悪化する場合がある。
本発明における基材の密度は、0.10g/cm以上であることが好ましく、0.20g/cm以上であることがより好ましい。また、0.50g/cm以下であることが好ましく、0.40g/cm以下であることがより好ましい。密度が0.10g/cm未満である場合、基材の引張強度が弱くなり過ぎて、基材の取り扱い時や塗工時に破損する場合があり、0.50g/cmを超えた場合、基材の柔軟性が悪化して、抄紙のリーラーで巻き取り難くなる場合や無機粒子層の塗工量が低下する場合がある。
本発明における基材は、湿式抄造法(抄紙法)によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は繊維を水に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを抄紙機で抄いて湿式不織布を製造する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機が挙げられる。また、複数のヘッドボックスを有し、ワイヤー上で湿紙を重ね合わせる抄紙機にて製造することができる。抄紙スラリーには、繊維原料の他に、必要に応じて、分散剤、紙力増強剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加することができる。抄紙スラリーの固形分濃度は、0.5~0.001質量%程度であることが好ましい。この抄紙スラリーを、さらに所定濃度に希釈してから抄造し、湿紙ウェブを得る。ついで、抄造された湿紙ウェブは、プレスロールなどでニップされ、ついで、ヤンキードライヤーを使用し、湿熱接着性及び熱融着性バインダー繊維を溶融させて、強度を発現させる。ヤンキードライヤーにて乾燥することにより、乾燥された表面は平坦となり、表面の凹凸が少ない面を形成できる。その他、補助乾燥として、熱風乾燥機、加熱ロール、赤外線ヒーターなどの加熱装置を併用しても問題無い。この時の乾燥温度としては、湿紙ウェブの水分が十分に除去でき、湿熱接着性バインダー繊維により強度を発現できる温度とすることが好ましい。
本発明において、無機粒子層は、無機粒子とバインダーを含有している層である。この無機粒子層が、基材に含有される繊維の表面全体を被覆しており、また、基材の空隙に充填されていることによって、耐熱ガラス繊維不織布の耐火性の効果が得られる。
無機粒子としては、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石膏、アルミン酸三カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、二酸化チタン等の水分散性の良い無機粒子が使用できる。上記無機粒子は、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
無機粒子の中でも、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、炭酸塩系の無機粒子は、火炎が当たった際に無機粒子が固化し、耐熱ガラス繊維不織布から無機粒子が脱落することを防止できるため好ましい。さらに、水酸化酸化アルミニウム、クレー、カオリン、焼成カオリンは、耐熱ガラス繊維不織布を高温化で保持した場合でも、耐火性に優れ、耐熱ガラス繊維不織布の強度を維持できるため、より好ましい。
本発明において、無機粒子の粒子径は、0.08μm以上20.0μm以下であることが好ましく、0.30μm以上15.0μm以下であることがより好ましく、0.40μm以上10.0μm以下であることがさらに好ましい。粒子径が20.0μmを超えると、耐熱ガラス繊維不織布の耐火性が悪化する場合や粉落ちや高温下に曝した際の断熱性が悪化する場合がある。一方、粒子径が0.08μm未満の場合、無機粒子を分散する際に増粘し易く、分散し難くなり、基材に塗工した場合、無機粒子が基材から脱落し易くなる場合や、脱落を防ぐために無機バインダーを増量する必要があり、耐熱ガラス繊維不織布の柔軟性が損なわれる場合がある。なお、無機粒子の粒子径は、無機粒子を水で希釈し、撹拌機で分散し、これをレーザー散乱タイプの粒度測定機(マイクロトラック社製、商品名:MT3000)によって測定し、得られた中心粒子径(D50、体積平均)を粒子径とした。
本発明において、無機粒子層のバインダーとしては、有機バインダー及び無機バインダーが挙げられる。有機バインダーとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等が挙げられる。無機バインダーとしては、例えば、セピオライト、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、ベントナイトなどが挙げられる。上記バインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。耐火性のためには、バインダーが無機バインダーであることが好ましい。
無機粒子層形成用塗工液を調製するための媒体としては、無機粒子やその他の含有物を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。また、使用する媒体は、基材を膨張させない媒体又は基材を溶解しない媒体が好ましい。
無機粒子層の配合比率は、「無機粒子層の塗工量(g/m)/基材の坪量(g/m)×100」で算出される値であり、20質量%以上200質量%未満であり、30質量%以上180質量%未満がより好ましく、40質量%以上160質量未満がさらに好ましい。無機粒子層の配合比率が20質量%以上200質量%未満であれば、耐熱ガラス繊維不織布に火炎を当てた場合でも、耐熱ガラス繊維不織布の溶融や損傷が無い。一方、無機粒子層の配合比率は200質量%未満である。無機粒子層の配合比率が高いほど、耐熱ガラス繊維不織布の厚みが増加し、耐火性は高くなるが、無機粒子層の配合比率が200質量%以上の場合、粉落ちが発生し、耐熱ガラス繊維不織布の柔軟性が損なわれる。
無機粒子層を形成するために、無機粒子層形成用塗工液を基材に塗工する装置としては、各種の塗工装置を用いることができる。例えば、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、キスタッチコーター、ディップコーター等の含浸、又は塗工装置による各種コーターを用いることができるが、これに限定されるものではない。本発明において、基材の扁平ガラス繊維の配合比率が高い場合、厚みが薄くなり、無機粒子層形成用塗工液の液保持量が減少するため、塗工液の濃度を調整するか、2ロールサイズプレスを用いる場合には、ロール間の隙間を精密に調整する機能を有する装置(例えば、シリンダーとコッターの構成)を使用することが好ましい。
本発明において、無機粒子層には、前記無機粒子及び無機バインダーの他に、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の各種分散剤、塗工液の液安定性を増すため、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の各種増粘剤、各種保水剤、各種の濡れ剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。一般に、媒体として有機溶剤を使用した非水系塗工液は表面張力が低く、媒体として水を用いた水系塗工液の表面張力は高い。本発明の基材は、塗工液の受理性が高いため、非水系塗工液も水系塗工液も、両方共に問題無く塗工することができるが、本発明において、媒体として水のみを用いた水系塗工液を使用することが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。また、塗工量は絶乾塗工量である。
実施例1~28、比較例1~12
ガラス繊維、湿熱接着性バインダー繊維、熱融着性バインダー繊維、フィブリル化繊維を、表1及び表2記載の配合比率(質量基準)で水に投入して、縦型パルパーで10分間混合分散した後、傾斜ワイヤー方式を用いて一層抄きで湿式抄造して得られた湿紙を、表面温度130℃のヤンキードライヤーで乾燥し、抄紙速度20m/minで、表1及び表2記載の坪量の基材を得た。
表1及び表2に記載されている繊維の詳細は、以下のとおりである
<扁平ガラス繊維>(日東紡績株式会社製、長径28μm、短径7μm、繊維長13mm、扁平断面)
<円形ガラス繊維>(日東紡績株式会社製、繊維径10.5μm、繊維長6mm、円形断面>
<湿熱接着性バインダー繊維>(シラノール変性PVA繊維、商品名:SPG056-11、株式会社クラレ製、繊度0.6デシテックス、繊維長3mm)
<熱融着性バインダー繊維>(芯鞘バインダー繊維、商品名TJ04CN、帝人製、繊度1.1デシテックス、繊維長5mm)
<フィブリル化繊維1>リヨセル繊維(繊度1.7dtex、繊維長3mm)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理し、平均繊維径14.0μmの幹部から平均繊維径1μm以下の枝部を発生させるように調整して、変法濾水度90mlのセルロースからなるフィブリル化繊維を得た。
<フィブリル化繊維2>:硫酸中の対数粘度1.5のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)10部を、塩化リチウム15部を含むN,N-ジメチルアセトアミド90部に溶解し、この溶液を高速回転でかき混ぜているホモミキサー中のグリセリン水溶液に導入してパルプ状物を得て、ダブルディスクリファイナーを用いてこのパルプ状物を処理し、変法濾水度65mlのメタ系芳香族ポリアミドからなるフィブリル化繊維を得た。
<無機粒子層形成用塗工液の調製>
カオリン(商品名:ASP(登録商標) NC X-1、BASF CORPORATION製)90部と、ポリビニルアルコールバインダー(商品名:VC‐13、日本酢ビ・ポバール株式会社製)9.5部と、水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロン(登録商標)T-50、東亞合成株式会社製)0.5部を水中に混合し十分撹拌し、水で濃度を調整して、固形分濃度50%の無機粒子層形成用塗工液を調製した。
<耐熱ガラス繊維不織布の作製>
前記基材を、無機粒子層形成用塗工液に含浸し、隙間調整機能(コッター)を有した2ロールサイズプレスにて、ロール間の隙間間隔を調整して、WET塗工量を調整し、乾燥し、耐熱ガラス繊維不織布を作製した。
実施例及び比較例の基材及び耐熱ガラス繊維不織布について、下記物性の測定と評価を行い、結果を表1及び表2に示した。
<基材及び耐熱ガラス繊維不織布の坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、基材の坪量及び耐熱ガラス繊維不織布の総坪量を測定した。無機粒子層の絶乾塗工量は耐熱ガラス繊維不織布の坪量から基材の坪量を差し引いて算出した。
<基材及び耐熱ガラス繊維不織布の厚み>
JIS B7502:2016に規定された外側マイクロメーターを用いて、5N荷重時の厚みを測定した。
<基材の引張強度>
各基材について、長辺が流れ方向になるように、流れ方向250mm×幅方向50mmのサンプル片を5枚切り出し、卓上型万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、商品名STB-1225S)を用いて、JIS P8113:1998に準じて、引張速度100mm/minで引張試験を行った。引張応力の最大値を「引張強度」とし、5枚の平均値とした。
<抄造性>
基材を抄造する際の抄造しやすさを、次の評価基準で評価した。
○:抄紙を行う際に、断紙やドライヤーへの貼り付きなどが発生せず、安定して抄紙できる場合。
△:抄紙を行う際に、断紙やドライヤーへの貼り付きが発生しうる状況も、抄紙条件の調整により抄紙が可能となる場合。
×:抄紙を行う際に、断紙やドライヤーへの貼り付きが発生し、抄紙条件の調整を行っても抄紙をすることができない場合。
<基材の熱水耐水性>
基材の熱水耐水性を次の評価基準で評価した。基材の熱水耐水性が低い場合、塗工の際に断紙が発生しやすく、後加工でも問題となる場合がある。
○:基材を幅方向50mm×流れ方向200mmサイズに断裁後、90℃の熱水に5秒間浸漬し、取り出した後も自壊せずに安定して形状を維持している場合。
△:基材を幅方向50mm×流れ方向200mmサイズに断裁後、90℃の熱水に5秒間浸漬し、取り出した直後は形状を維持するものの、上部を固定して吊るした際に1分以内に自壊する場合。
×:基材を幅方向50mm×流れ方向200mmサイズに断裁後、90℃の熱水に5秒間浸漬し、取り出した直後に自壊する場合。
<無機粒子層の塗工性>
基材に無機粒子層を形成する際の塗工し易さを、次の評価基準で評価した。
○:塗工液を塗工する際に、基材に断紙や亀裂や割れが発生しない場合。
△:塗工液を塗工する際に、基材に断紙や亀裂や割れが発生しないが、張力を調整しても、湿潤状態において、基材にシワや凹凸が発生し、乾燥後も基材にシワや凹凸が残る場合。
×:塗工液を塗工する際に、張力を調整しても、基材に断紙や亀裂や割れが発生する場合。
<耐火性>
試験片として幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの耐熱ガラス繊維不織布を3枚切り出し、各試験片の中央部にバーナー(商品名:ラボバーナーAPTL、株式会社フェニックスデント製)の火炎を5分間当てた。その後、火炎を当てた側の耐熱ガラス繊維不織布の表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。バーナーの火炎温度は、1000℃であった。
○:耐熱ガラス繊維不織布に穴や亀裂や溶融が無い。
△:火炎を当てた耐熱ガラス繊維不織布の表面に溶融や凹みがわずかに見られる。
×:耐熱ガラス繊維不織布に穴や亀裂がある。
<脱落繊維>
試験片として幅方向50mm×流れ方向200mmサイズの耐熱ガラス繊維不織布を切り出し、黒色の布で表面を5度こすり脱落繊維を確認。次の基準で評価した。
〇:脱落繊維の本数は5本以内だった。
△:脱落繊維の本数は6~20本の範囲だった。
×:脱落繊維の本数は20本よりも多かった。
<柔軟性>
無機粒子層を塗工後、塗工装置のリーラーで外周直径10cmの紙管に巻き付けた際の耐熱ガラス繊維不織布の様子を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:紙管にきれいに巻き付けることができる。
△:紙管の巻き付け直後、シートが紙管外周から多少浮き気味、もしくはシワが見られるが、しばらくするときれいに巻くことができる。
×:紙管にきれいに巻き付けることができず、大きな浮きや割れやシワが発生する。
表1~表2に示したとおり、実施例1~28で作製した耐熱ガラス繊維不織布は、基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有し、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平ガラス繊維を含有し、該扁平ガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、該無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満である。ガラス繊維が耐火性を向上させ、扁平断面のガラス繊維を含有するため、高密度になり、それにより高い強度が得られ、フィブリル化繊維がガラス繊維同士に絡むことで、抄造性が良くなり、湿熱接着性バインダー繊維が高い強度を発現し、熱融着性バインダー繊維が高い熱水耐水性を発現しており、安定した抄造性・塗工性と高い耐火性を得ることができた。
比較例1の耐熱ガラス繊維不織布は、湿熱接着性バインダー繊維を含まないため、基材の強度が不十分で、抄造性が低く、無機粒子の塗工が困難な結果となった。
比較例2の耐熱ガラス繊維不織布は、湿熱接着性バインダー繊維を多く配合しており、基材のガラス繊維の配合比率が70質量%よりも低くなっていることから、耐火性が悪化する結果となった。また、ヤンキードライヤーに著しく貼り付くことで抄造性が悪く、また、紙管にきれいに巻くことが難しい結果となった。
比較例3の耐熱ガラス繊維不織布は、熱融着性バインダー繊維を含まないため、塗工時に基材の強度が著しく低下し、塗工が困難となる結果となった。
比較例4の耐熱ガラス繊維不織布は、熱融着性バインダー繊維を多く配合しており、基材のガラス繊維の配合比率が70質量%よりも低くなっていることから、耐火性が悪化する結果となった。
比較例5の耐熱ガラス繊維不織布は、フィブリル化繊維を含まないため、ガラス繊維と絡み、繋ぎ止める繊維が存在しないことにより、脱落繊維が著しく増加し、湿熱接着性バインダー繊維も皮膜化し易くなり、ヤンキードライヤーに貼り付き易くなることから、抄造性も悪化する傾向が見られた。
比較例6の耐熱ガラス繊維不織布は、フィブリル化繊維を多く配合しており、基材のガラス繊維の配合比率が70質量%よりも低くなっていることから、耐火性が悪化する結果となった。
比較例7の耐熱ガラス繊維不織布は、扁平ガラス繊維の含有率が全ガラス繊維に対して90質量%未満であることから、耐熱ガラス繊維不織布が低密度となり、空間当たりのバインダー、フィブリル化繊維の割合が少なくなることで、強度が低下し、脱落繊維が悪化する傾向が確認された。
比較例8の耐熱ガラス繊維不織布は、基材のガラス繊維の配合比率が70質量%よりも低くなっていることから、耐火性が悪化する結果となった。
比較例9では、基材のガラス繊維の配合比率が95質量%以上であることから、繊維同士を繋ぎ止めるバインダー繊維やフィブリル化繊維が不足しており、基材の抄造を行うことができず、耐熱ガラス繊維不織布を得ることができなかった。
比較例10の耐熱ガラス繊維不織布は、無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%未満であることから、耐火性に劣る結果となった。
比較例11の耐熱ガラス繊維不織布は、無機粒子層の配合比率が基材に対して200質量%以上であることから、基材が固くなり、柔軟性が劣るため、巻取とすることが難しい結果となった。また塗工の際に多量の液を付着させる必要があることから、塗液の塗工性や塗工後の乾燥が著しく悪化する傾向となった。
比較例12の耐熱ガラス繊維不織布は、扁平ガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%未満であることから、無機粒子層の塗工性が悪化し、脱落繊維も多かった。
本発明は、建材や自動車用部品、工材などに使用される耐熱ガラス繊維不織布に関するものであり、該耐熱ガラス繊維不織布を加工して耐熱部材に加工する用途に好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 基材と無機粒子層とを含有し、該基材がガラス繊維と湿熱接着性バインダー繊維とフィブリル化繊維と熱融着性バインダー繊維を含有し、該ガラス繊維の配合比率が基材質量の70質量%以上95質量%未満であり、該ガラス繊維が扁平断面のガラス繊維を含有し、該扁平断面のガラス繊維の配合比率が全ガラス繊維に対して90質量%以上であり、該無機粒子層の配合比率が基材に対して20質量%以上200質量%未満であることを特徴とする耐熱ガラス繊維不織布。
  2. 該湿熱接着性バインダー繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である請求項1記載の耐熱ガラス繊維不織布。
  3. 該フィブリル化繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である請求項1又は2記載の耐熱ガラス繊維不織布。
  4. 該熱融着性バインダー繊維が基材質量の1質量%以上15質量%未満である請求項1~請求項3のいずれか記載の耐熱ガラス繊維不織布。
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