次に、本発明の実施形態を図1~図45に基づいて説明する。図1~図10は、本発明の第1実施形態に係る携帯用切断機1を示している。第1実施形態に係る携帯用切断機1は、チップソーカッタと称される金工用の手持ち式の切断機で、切断材Wに当接するベース10と、ベース10の上面側に支持した切断機本体20を備えている。ベース10は矩形平板形状を有しており、切断材Wの上面に当接される。
図1~4に示すように切断機本体20は、駆動源としての電動モータ21と、円形の回転刃具22と、ループ形のハンドル部23を備えている。回転刃具22には、鋼材切断用のチップソーが用いられている。回転刃具22の上側ほぼ半周の範囲(ベース10の上面側の範囲)の全体が防塵形の固定カバー24で覆われている。固定カバー24は、固定ねじ24aを緩めることにより、回転刃具22の周囲から取り外すことができる。固定カバー24の右側面には、回転刃具22の回転方向を示す矢印24bが表示されている。固定カバー24の後部には、集塵された切断粉を排出するための蓋部24cが設けられている。
図8に示すように固定カバー24の左側面には、減速ギヤ部25を介して電動モータ21が結合されている。減速ギヤ部25のほぼ円筒形状を有するギヤハウジング25aの前部には、支持アーム部25bが一体に設けられている。支持アーム部25bは前方へ延びている。支持アーム部25bの前部が上下揺動支軸26aを介してベース10の上面に結合されている。切断機本体20は、ベース10の前部上面に、上下揺動支軸26aを介して上下に揺動可能に支持されている。支持アーム部25bと上下揺動支軸26aにより、切断機本体20をベース10に対して上下に揺動可能に支持するための上下揺動支持部26が構成されている。
回転刃具22の下部側は、ベース10の窓部を経て下面側へ突き出されている。ベース10の下面側へ突き出された回転刃具22の下部側の周囲は、可動カバー12で覆われている。可動カバー12は、回転刃具22の周囲に沿って開閉可能に設けられている。図示するように可動カバー12は、その前端部を切断材Wに当接させた状態で携帯用切断機1を切断進行側に移動させることにより相対的に開かれていく。
ベース10の下面側へ突き出された部分が切断材Wに切り込まれて切断加工がなされる。回転刃具22のベース10の下面側への突き出し部分が、回転刃具22の切断材Wに対する切り込み深さに相当する。切断機本体20を上下揺動支軸26aを中心にして上下に揺動させることにより、回転刃具22の切断材Wに対する切り込み深さを調整することができる。
図3及び図8に示すように固定カバー24の後部側は、デプスガイド27を介してベース10の後部上面に結合されている。デプスガイド27のガイド溝には、固定カバー24の左側部に結合した固定ねじ軸29が挿通されている。固定レバー28の緩め操作により固定ねじ軸29に対して固定ナット29aを緩めことにより、切断機本体20を上下揺動支軸26aを中心にして上下に揺動させて切り込み深さを調整することができる。
減速ギヤ部25の上方にループ形のハンドル部23が設けられている。ハンドル部23の内周側にトリガ形式のスイッチレバー38が設けられている。スイッチレバー38を指先で上方へ引き操作するとメインスイッチ39がオンされる。メインスイッチ39がオンすると電動モータ21が起動する。スイッチレバー38の引き操作を解除すると、メインスイッチ39がオフして電動モータ21が停止する。
ハンドル部23の前部23aはギヤハウジング25aの上部に結合されている。ハンドル部23の前部23aは、ギヤハウジング25aの上部から上方へ起立している。前部23aの上部から後方斜め下方に向けてグリップ部23bが延びている。グリップ部23bの後部は、バッテリ取り付け部30を介してギヤハウジング25aの後面側に結合されている。バッテリ取り付け部30の下面側に一つのバッテリパック31が取り付けられている。駆動源としての電動モータ21はこのバッテリパック31を電源として動作する。バッテリパック31は、バッテリ取り付け部30から取り外して充電することにより繰り返し使用することができる。図3において白抜き矢印で示すようにバッテリパック31は、バッテリ取り付け部30に対して右方にスライドさせて取り付けることができ、左方にスライドさせて取り外すことができる。
減速ギヤ部25の前方であってハンドル部23の前部23aの下部には、照明具11が設けられている。照明具11により切断部位(切断材Wに対する回転刃具22の切り込み部位)が明るく照らされて、暗所等での切断作業の便宜が図られる。
図7および図8に示すように減速ギヤ部25のギヤハウジング25aに対して電動モータ21のモータハウジング21aがねじ結合されている。電動モータ21にはブラシレスモータが用いられている。モータハウジング21aの内周側に沿って円環形のステータ21bが固定され、ステータ21bの内周側にロータ21cが回転支持されている。ロータ21cに結合されたモータ軸21dには冷却ファン21eが取り付けられている。電動モータ21の起動により冷却ファン21eが回転することにより、モータハウジング21aの後部に設けた吸気孔21fから外気が導入される。吸気孔21fから導入された外気は、モータハウジング21a内を右方に流れることにより、ステータ21b及びロータ21c等の冷却がなされる。モータ軸21dの右端部が減速ギヤ部25のギヤ列に噛み合わされている。
図7に示すように電動モータ21の回転出力は、2段階の減速ギヤ列を経て出力軸32に伝達される。出力軸32は、固定カバー24の内側に進入している。固定カバー24内において、出力軸32の右端部に回転刃具22が取り付けられている。回転刃具22は、2つの取付フランジ33,34間に挟み込まれ、かつ刃具固定ねじ13の締め込みによりこの挟み込み状態で出力軸32の左端部に取り付けられている。
図8に示すように、電動モータ21の後部側であってバッテリ取り付け部30との間には、コントローラ収容部35が設けられている。コントローラ収容部35には、主として電動モータ21の動作制御を行うためのコントローラ36が収容されている。コントローラ36は矩形底浅のケースに制御基板を収容して樹脂モールドしたもので、図4~図6において破線で示すようにその前側を上方とする方向に傾いた姿勢で収容されている。電動モータ21の冷却ファン21eによりモータハウジング21a内に導入されたモータ冷却風は、コントローラ収容部35内にも流入されてコントローラ36の冷却がなされるようになっている。
第1実施形態の携帯用切断機1には、当該携帯用切断機1を例えば作業現場の足場や手摺等に吊り下げておくためのテザーストラップ等の吊り下げ具41を結合するための結合部40と、足場や手摺等に直接引き掛けるための吊り下げフック50が設けられている。結合部40は、ハンドル部23の後部であって、グリップ部23bとバッテリ取り付け部30の結合部付近に設けられている。第1実施形態に係る結合部40の詳細が図9及び図10に示されている。結合部40は、概ね三角形の結合孔42を備えている。結合孔42は、グリップ部23bの後部側を左右に貫通している。
図2、図3、図9及び図10に示すようにハンドル部23は、左右半割構造の左ハンドルハウジング23Lと右ハンドルハウジング23Rを相互に突き合わせて結合した構成を有している。左ハンドルハウジング23Lと右ハンドルハウジング23Rは、合計4個所のねじ止め部37で相互に結合されている。図では、左ハンドルハウジング23Lと右ハンドルハウジング23Rの突き合わせ部に符合Jが付されている。また、図9及び図10では、左ハンドルハウジング23Lが省略された状態で示されている。結合孔42は、左右ハンドルハウジング23L、23Rを貫通している。
図9に示すように結合孔42の周囲には壁部42aが設けられている。壁部42aの内周側が結合孔42とされている。結合孔42には、一つのねじ止め部37が隣接して配置されている。結合孔42の壁部42aと、ねじ止め部37のボス部の双方に跨って報知部材43が装着されている。本実施形態では、報知部材43には、円環形の金属ワイヤが用いられている。報知部材43は、その内周側に結合孔42の壁部42aとねじ止め部37のボス部を位置させた状態で組み込まれている。報知部材43は、当該携帯用切断機1の組み立て段階でハンドル部23に組み込まれている。
図9に示すようにストラップ等の吊り下げ具41は、結合孔42に挿通してハンドル部23の端部23cに巻き付けるようにして結合部40に結合されている。このため吊り下げ具41は、結合孔42に挿通されるとともに、報知部材43の内周側にも挿通された状態で結合部40に結合されている。
係る結合部40によれば、図10に示すように吊り下げ具41の長年の使用等によりハンドル部23の端部23cに外力が付加され、その結果端部23cが損傷等して破断されると、吊り下げ具41は結合孔42への挿通状態が外れてしまう。しかしながら、上記したように吊り下げ具41は報知部材43の内周側にも挿通されている。このため、ハンドル部23の端部23cが破断して吊り下げ具41が結合孔42から外れても、報知部材43の内周側に挿通された状態が維持される。しかも、報知部材43は、ねじ止め部37のボス部を内周側に位置させて引き掛けられた状態が維持される。このため、吊り下げ具41は、報知部材43を介してハンドル部23に結合された状態に維持され、その結果当該吊り下げ具41の吊り下げ機能が維持される。
また、図10に示すようにハンドル部23の端部23cが破断して分離され、その結果吊り下げ具41が結合孔42から外れると、報知部材43がハンドル部23の内部から外側へ引き出される。結合部40の内部に組み込まれた報知部材43が外部へ引き出されるため、使用者等は引き出された報知部材43を容易に目視することができる。引き出された報知部材43を使用者等が目視することにより、使用者等は結合部40の内部が外力により変形若しくは損傷等を受けたことを確認することができる。このように報知部材43は、吊り下げ具41の結合部40が変形若しくは損傷等を受けた状態であることを使用者等に確実に報知する機能を有している。
図1~図4に示すように本実施形態の携帯用切断機1には、上記した吊り下げ具41を結合するための結合部40に加えて、吊り下げフック50を備えている。吊り下げフック50は、切断機本体20の前部であって、固定カバー24よりも前方に設けられている。第1実施形態では、吊り下げフック50は、切断機本体20をベース10に対して揺動支持する支持アーム部25bの上面に設けられている。吊り下げフック50は、棒鋼材をJ形に折り曲げて製作したフックバー51と、フックバー51を支持アーム部25bの上面に支持するフック支持部52を備えている。
フックバー51は、左右方向に延びる支持部51aと、支持部51aの右端部から上方に延びる中間部51bと、中間部51bの上部から左方へ延びる引き掛け部51cを有している。支持部51aは、フック支持部52から右方へ長く延びている。支持部51aの右端部から中間部51bがほぼ直角方向に延びている。中間部51bの上部から引き掛け部51cが左方に延びている。引き掛け部51cは、中間部51bの上部からやや鋭角方向に延びている。支持部51aには、位置決め突起51dが設けられている。引き掛け部51cの先端側には、足場等の引き掛け対象部に係合させるための引き掛け突起51eが設けられている。
図3に示すようにフック支持部52は、2本の取り付けねじ52aで支持アーム部25bの上面にねじ結合されている。フック支持部52には、円筒形の支持筒部52bが設けられている。この支持筒部52bに、支持部51aが回転可能かつ軸方向に移動可能に挿入されている。これにより、フックバー51が回転刃具22の回転軸線に平行な支持部51a(左右横軸線)を中心にして上下に揺動可能かつ左右に変位可能に支持されている。図5に示すように支持筒部52bの左端部には、2つのV字形の係合溝部52c,52dが設けられている。2つの係合溝部52c,52dは、相互に一定の角度(本実施形態では約120°程度)をおいてそれぞれ支持筒部52bの中心を通る径方向に配置されている。
フックバー51の支持部51aの左端部は支持筒部52bの左端部から突き出されており、この突き出し部分に係合ピン51fが設けられている。係合ピン51fは、支持部51aの径方向両側に突き出されている。図では見えていないが支持筒部52bの内周側と支持部51aとの間には圧縮ばねが介装されている。この圧縮ばねにより支持部51aが軸方向右向きに付勢されている。この付勢力により、係合ピン51fが係合溝部52c又は係合溝部52dに嵌まり込んだ状態に保持されて、支持部51aの回転が規制される。支持部51aの回転が規制されることにより、フックバー51が引き掛け部51cを上方に位置させた格納位置と、引き掛け部51cを下方(前方)に位置させた使用位置に保持される。図1~図4は、フックバー51を格納位置に格納した状態を示している。図5は、フックバー51を使用位置に取り出した状態を示している。
図1~図4に示すようにフックバー51は格納位置に格納すると、その中間部51bをベース10の前端部付近から後方斜め上方に向けて傾かせた位置に位置する。これに対してフックバー51は使用位置に取り出すと、前端部付近からほぼ水平に前方へ大きく張り出した状態となる。フックバー51の引き掛け部51cがベース10の前端から前方へ大きく離れた部位に取り出されることから、フックバー51を足場や手摺に引き掛け易くなり、この点で当該吊り下げフック50の使い勝手を高めることができる。図5に示すようにフックバー51の使用位置は、ベース10の下面側へ張り出さない位置であって、ベース10よりも上方となる位置に規制されている。これにより切断作業にフックバー51を不用意に使用位置に移動させてもフックバー51が切断材Wや回転刃具22に干渉しないようになっている。
また、フックバー51の引き掛け部51cは、中間部51bの先端から鋭角方向であって当該携帯用切断機1の重心側に折り曲げられている。このため、支持部51aと引き掛け部51cとの間に引き掛け対象部位を位置させて当該フックバー51を引き掛ける他、引き掛け部51cの先端部51ccを作業台や足場の上面に突き当てておくことによっても当該携帯用切断機1を安定した姿勢で吊り下げておくことができる。
図11~図24には、第2実施形態に係る携帯用切断機1が示されている。第1実施形態の携帯用切断機1と同等の部材若しくは構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。第2実施形態の携帯用切断機1は、主として木材等を切断加工するための手持ち式の切断機で、携帯マルノコとも称される。第2実施形態の携帯用切断機1では回転刃具61として、円形のマルノコ刃が用いられている点で、第1実施形態の携帯用切断機1とは異なっている。また、固定カバー62は、回転刃具61の上部周縁部に沿って設けられ、回転刃具61の中心側は側方へ露出されて、刃具交換時の便宜が図られるようになっている。この点、第1実施形態の携帯用切断機1では、ベース10の上面側において回転刃具22のほぼ全体が覆われて集塵性が高められている。第1実施形態では、固定カバー24を取り外し可能として、刃具交換時等の便宜が図られている。
第2実施形態の携帯用切断機1においても、切断機本体20は、上下揺動支持部63の上下揺動支軸63aを中心にしてベース10に対して上下に揺動可能に支持されており、第1実施形態の携帯用切断機1と同様回転刃具61の切断材Wに対する切り込み深さ調整機構を備えている。第2実施形態の携帯用切断機1は、ベース10の前部側に対する前側支持部64と後部側に対する後側支持部65を介して切断機本体20が左右に揺動可能に支持されている。切断機本体20を左右に傾斜させることによりいわゆる斜め切りをすることができる。第2実施形態の携帯用切断機1は、斜め切り機能を有する点で、第1実施形態の携帯用切断機1とは異なっている。
第2実施形態の携帯用切断機1では、ハンドル部23の前部にフロントグリップ部68が設けられている。使用者は、当該携帯用切断機1の後側に位置して、ハンドル部23を右手で把持し、フロントグリップ部68を左手で把持して、携帯用切断機1を安定した状態で移動操作することができ、この点で携帯用切断機1の操作性が高められている。
図14に示すように第2実施形態の携帯用切断機1では、電動モータ21の動作制御を行うためのコントローラ66は、電動モータ21の前側に設けたコントローラ収容部67に収容されている。第1実施形態とは異なってコントローラ収容部67を電動モータ21の前側に配置することにより、バッテリ取り付け部30をより電動モータ21に接近させて配置することでき、これにより切断機本体20の前後方向のコンパクト化が図られている。このため、図11、図13及び図14に示すように第2実施形態の携帯用切断機1では、切断機本体20がベース10の後端からはみ出さないようになっており、これにより携帯用切断機1の切断作業時の取り扱い性が高められ、また格納時のコンパクト性が確保されている。
第2実施形態の携帯用切断機1は、第1実施形態に係る結合部40と吊り下げフック50とは異なる構成の結合部70と吊り下げフック80を備えている。結合部70は、いわゆるテザーストラップ等の吊り下げ具71を結合するための部位で、第1実施形態と同じくハンドル部23の後面に設けられている。第2実施形態に係る結合部70の詳細が図19~図24に示されている。
第2実施形態に係る結合部70は、結合孔72を備えている。結合孔72は、ハンドル部23の左右半割構造の左ハンドルハウジング23Lと右ハンドルハウジング23Rを相互に突き合わせて結合するねじ止め部37の周囲に沿ってU字形の経路で設けられている。このため、結合孔72の開口72a,72bは、ねじ止め部37の上側と下側の双方に設けられている。結合孔72は、ねじ止め部37の周囲に沿って設けた壁部72cにより、ハンドル部23の内部から区画されている。結合孔72は、壁部72cとねじ止め部37との間に沿ったU字形の経路に沿って設けられている。
結合孔72の内側に報知部材73が組み込まれている。図24には、報知部材73が単独で示されている。第2実施形態に係る報知部材73は、棒鋼材を曲げ加工して製作したもので、U字形に屈曲させた引き掛け部73aと、引き掛け部73aの一端部を左側へL字形に屈曲させた係合部73bと、引き掛け部73aの他端部を前側へ同じくL字形に屈曲させた脚部73cを備えている。脚部73cの前部には、円形に折り曲げた支持部73dが設けられている。図20~図23に示すように報知部材73は、その引き掛け部73aを結合孔72内においてねじ止め部37の概ね下側に位置させた状態で組み込まれている。
報知部材73の係合部73bと脚部73c及び支持部73dは、結合孔72の壁部72cに設けた切り欠き部72dを経て壁部72cの外側に位置されている。図示するように右側の脚部73cは、右ハンドルハウジング23Rに設けた係合部74に支持部73dを引き掛けて結合されている。図では省略されているが、左側の係合部73bは、左ハンドルハウジング23Lの内面に設けた係合孔に挿入されている。このように左側の係合部73bと右側の脚部73cが左右ハンドルハウジング23L、23Rに結合されて、引き掛け部73aが切り欠き部72dの開口範囲内で上下に揺動可能に設けられている。
図20及び図21に示すように吊り下げ具71は、報知部材73の引き掛け部73aの内側を挿通させつつ、ねじ止め部37の周囲に巻き付けて結合されている。このように構成した結合部70によれば、吊り下げ具71の長年の使用等によりねじ止め部37に外力が付加され、その結果図22及び図23に示すようにねじ止め部37が損傷等を受けて欠落した場合であっても、吊り下げ具71は報知部材73の引き掛け部73aに引き掛けられた状態に維持される。報知部材73は、係合部73bと脚部73cを経てハンドル部23に結合された状態に維持される。このため、吊り下げ具71は、報知部材73を介してハンドル部23に結合された状態に維持され、その結果当該吊り下げ具71の吊り下げ機能が維持される。
また、ねじ止め部37が破断して結合部70から分離され、その結果吊り下げ具71が結合孔72から外れると、報知部材73が結合孔72の下側の開口72bから外部へ引き出される。結合部70の内部に組み込まれた報知部材73が外部へ引き出されるため、使用者等は引き出された報知部材73を容易に目視することができる。結合部70から外部へ引き出された報知部材73を使用者等が目視することにより、使用者等は結合部70の内部が外力により変形若しくは損傷等を受けたことを確認することができる。このように報知部材73は、吊り下げ具71の結合部70が変形若しくは損傷等を受けた状態であることを使用者に確実に報知する機能を有している。報知部材73の報知機能により、第1実施形態と同じく、当該携帯用切断機1の使用者に対して注意喚起することができる。
図11~図14に示すように第2実施形態に係る吊り下げフック80は、固定カバー62の前部に支持されている。吊り下げフック80は、棒鋼材をJ形に折り曲げ加工して製作したフックバー81と、フックバー81を固定カバー62の前部に支持するフック支持部82を備えている。フックバー81は、フック支持部82から上方へ延びる支持部81aと、支持部81aの上部からほぼ直角方向に延びる中間部81bと、中間部81bの先端から下方へ鋭角方向に延びる引き掛け部81cを有している。引き掛け部81cの先端側には、足場等の引き掛け対象部に係合させるための引き掛け突起81dが設けられている。図11に示すように支持部81aは、その上部側ほど後方へ変位する後傾方向に傾斜している。
フック支持部82は、2本の取り付けねじ82aで固定カバー62の前部にねじ結合されている。フック支持部82には、円筒形の支持筒部82bが設けられている。この支持筒部82bに、支持部81aの下部側が回転可能かつ軸方向に移動可能に挿入されている。これにより、フックバー81が支持部81aを中心にして左右に揺動可能かつ上下に変位可能に支持されている。
フックバー81の支持部81aの下端部は、支持筒部82bの下端部から突き出されている。支持部81aの突き出し部には、径方向両側に突き出す係合ピン81eが設けられている。支持筒部82bの下端部には、その中心を通る2つのV字形の係合溝部が設けられている。第1実施形態と同じく、何れかの係合溝部に係合ピン81eが嵌まり込むことにより、支持部81aの回転動作が規制され、これによりフックバー81の位置がロックされる。第2実施形態では、フックバー81は、その支持部81a回りの4つの位置で位置保持される。第1実施形態と同じく、フックバー81の支持部81aは、支持筒部82bとの間に介装した圧縮ばねにより上方へ変位する方向に付勢されている。この圧縮ばねの付勢力により係合ピン81eが係合溝部に嵌まり込んだ状態に保持されて、フックバー81の支持部81a回りの位置が保持される。
図11~図14は、引き掛け部81cをハンドル部23の前方(固定カバー62の左側方)に位置させた格納位置に位置保持した状態を示している。図15及び図16は、引き掛け部81cを固定カバー62の前方に位置させた前方使用位置に位置保持した状態を示している。図17及び図18は、引き掛け部81cを固定カバー62の右側方に位置させた側方使用位置に位置保持させた状態を示している。それぞれの位置において、係合ピン81eが対応する係合溝に弾性的に嵌まり込むことにより、フックバー81が位置保持される。なお、図示は省略されているが、フックバー81を上記前方使用位置から180°反転させて引き掛け部81cを固定カバー62の上方に位置させた格納位置に保持することもできる。このようにフックバー81は、引き掛け部81cを固定カバー62の前方、上方、左側方及び右側方に位置させた、合計4つの位置において、係合ピン81eが係合溝部に弾性的に嵌まり込むことによりそれぞれ位置保持される。
第2実施形態に係る吊り下げフック80によれば、不使用時には、フックバー81が邪魔にならない格納位置に格納しておくことにより、当該携帯用切断機1のコンパクト性を確保することができる。一方、作業現場の状況に応じて、フックバー81を、前方使用位置若しくは側方使用位置を選択して位置保持することにより当該携帯用切断機1を異なる姿勢で吊り下げておくことができ、この点で当該吊り下げフック80の機能を高めることができる。
また、第1実施形態と同じくフックバー81の引き掛け部81cが中間部81bの先端から鋭角方向であって当該携帯用切断機1の重心側に折り曲げられている。このため、支持部81aと引き掛け部81cとの間に引き掛け対象部位を位置させて当該フックバー81を引き掛ける他、引き掛け部位81cの先端部81ccを作業台や足場の上面に突き当てておくことによっても当該携帯用切断機1を安定した姿勢で吊り下げておくことができる。
第1実施形態の吊り下げフック50と、第2実施形態の吊り下げフック80については、フックバー51,81の位置を保持するために係合ピンを係合溝部に弾性的に嵌まり込ませる構成を例示したが、例えば固定ねじの締め付けによりフックバー51,81の位置をロックする構成としてもよい。
図25~図28には、第3実施形態の携帯用切断機1が示されている。第3実施形態の携帯用切断機1は、第2実施形態の吊り下げフック80とは異なる吊り下げフック91を備える点で第2実施形態の携帯用切断機1とは異なっている。吊り下げフック91以外の部材及び構成については、第2実施形態の携帯用切断機1と同様であるので同位の符合を用いてその説明を省略する。第3実施形態における携帯用切断機1のハンドル部23の後部にも、第2実施形態と同様、テザーストラップ等の吊り下げ具71を結合するための結合部70が設けられている。
第3実施形態に係る吊り下げフック91は、第2実施形態と同じく固定カバー62の前部に支持されている。吊り下げフック91は、棒鋼材をJ字形に折り曲げ加工して製作したフックバー92と、フックバー92を固定カバー62の前部に支持するフック支持部93を備えている。フックバー92は、フック支持部93から上方へ延びる支持部92aと、支持部92aの上部からほぼ直角方向に延びる中間部92bと、中間部92bの先端から下方へ鋭角方向に延びる引き掛け部92cを有している。引き掛け部92cの先端側には、足場等の引き掛け対象部に係合させるための引き掛け突起92dが設けられている。図25に示すように支持部92aは、その上部側ほど後方へ変位する後傾方向に傾斜しており、この点も第2実施形態に係る吊り下げフック80と同様に構成されている。
フックバー92の支持部92aには、より細径の支軸部92eが同軸に設けられている。支軸部92eは、支持部92aの下端から下方へ長く延びている。支軸部92eの下部は、支持筒部93aの下端から突き出されている。この突き出し部分に係合ピン95が径方向両側に突き出す状態で設けられている。
フック支持部93は、円筒形の支持筒部93aと、固定カバー62に対する取り付け部93fを有している。取り付け部93fを2本の取り付けねじ94で結合して、フック支持部93が固定カバー62の前部に取り付けられている。第3実施形態における支持筒部93aは、第2実施形態の支持筒部82bよりも長い円筒形を有している。支持筒部93aの内周側には、径が異なる2つの挿通孔が同軸に設けられている。上側の挿通孔93bは、下側の挿通孔93cよりも大径に形成されている。上側の挿通孔93bは、フックバー92の支持部92aを挿通可能な径で形成されている。下側の挿通孔93cは、フックバー92の支軸部92eを挿通可能で、より大径の支持部92aを挿通不能な径で形成されている。
フックバー92の支軸部92e回りであって支持部92aの下面と、挿通孔93bの底部との間に圧縮ばね96が介装されている。この圧縮ばね96の付勢力によって支持部92aが支持筒部93aの挿通孔93bから上方へ抜け出す方向に付勢され、これによりフックバー92が上側へ変位した上方位置側に付勢されている。図25及び図26は、フックバー92を上方位置に位置させた状態を示している。
支持筒部93aの下面には、長手方向の深さが異なる2つの係合溝部93d,93eが設けられている。係合溝部93dは深く形成され、係合溝部93eは浅く形成されている。支持筒部93aの下面視で(図25中矢印XXVで示す方向から見て)、深い係合溝部93dと浅い係合溝部93eは、それぞれ支持筒部93aの下面中心を通って径方向に設けられ、かつ相互に十字形に交差して配置されている。
図25に示すようにフックバー92を支持部92a回りに回転させて、係合ピン95を深い係合溝部93d内に位置させると、フックバー92は、圧縮ばね96の付勢力により係合ピン95を係合溝部93dの底部に当接させた上方位置に保持される。フックバー92を上方位置に位置させた状態では、中間部92bが支持部92aの上部から前方斜め上方に向けて延びる状態(上方使用位置)、若しくは後方斜め下方に向けて延びる状態(上方格納位置)となる。中間部92bが前方斜め上方に延びる上方使用位置では、引き掛け部92cがベース10の前部側上方に位置する状態となる。フックバー92の上方使用位置が、例えば足場等の他部位へ引き掛けるために好都合な使用位置に相当する。この上方使用位置から180°反転させた上方格納位置では、中間部92b及び引き掛け部92cを固定カバー62の上方に位置させることができる。
使用位置からフックバー92を下方へ押し下げて係合ピン95を深い係合溝部93dから離脱させ、その後フックバー92を支持部92a回りに約90°回転させ、その後押し下げ操作を止めることにより、フックバー92が上方へ戻されて係合ピン95が浅い係合溝部93eに嵌まり込む。この状態が図27及び図28に示されている。係合ピン95を浅い係合溝部93eに嵌まり込ませた位置にフックバー92を位置させると、当該フックバー92は全体として上記使用位置よりも低い位置に保持される。この低い位置がフックバー92の格納位置に相当する。図示するようにフックバー92を格納位置に格納すると、その中間部92bが支持部92aの上部から左方へ向けて延びる状態となり、その結果引き掛け部92cがハンドル部23の前方に位置する状態となる。このため、フックバー92は格納位置に格納すると、使用位置よりも低い位置でかつより後側に位置する状態となり、この点で携帯用切断機1のコンパクト化を図ることができる。フックバー92をコンパクトに格納した状態で切断作業を行うことができるので、当該携帯用切断機1の作業性を高めることができる。
以上説明した第1実施形態の携帯用切断機1によれば、吊り下げフック50が切断機本体10の前部であって支持アーム部25bの上面(上下揺動支持部26付近)に吊り下げフック50が設けられている。係る部位に設けられることにより、吊り下げフック50は固定カバー24よりも前方に配置されている。このため、切断作業時にハンドル部23を把持した姿勢のまま携帯用切断機1を移動させてフックバー51を足場等の他部位へ引き掛けることが容易になり、この点で当該吊り下げフック50の使い勝手を一層良くすることができる。
第1実施形態に係る吊り下げフック50のように支持アーム部25bの上面に設ける構成とする他、第2、第3実施形態に係る吊り下げフック80,91のように固定カバー24の前部に設けて、固定カバー24よりも前方に配置した構成とすることができる。第2、第3実施形態の吊り下げフック80,91におけるフックバー81,92は、それぞれ固定カバー24の前面に直接取り付けたフック支持部82,93を介して固定カバー24の前方に支持されている。第2、第3実施形態の吊り下げフック80,91によっても、固定カバー24の前方に設けられることにより、その使い勝手をより良くすることができる。
また、第1実施形態の吊り下げフック50が支持アーム部25bの上面であって上下揺動支持部26付近の空きスペースを有効活用して配置されていることから、当該吊り下げフック50のコンパクト性を高めることができる。
さらに、第1実施形態の吊り下げフック50によれば、フックバー51の使用位置が、ベース10の下面側へ張り出さない範囲に規制されている。これにより切断作業にフックバー51を不用意に使用位置に移動させてもフックバー51が切断材Wや回転刃具22に干渉しないようになっている。
第2、第3実施形態の吊り下げフック80,91によれば、固定カバー62の周縁に対する接線方向の上下縦軸(支持部81a,92aの軸線)回りにフックバー81,92を回転させて使用位置へ取り出し、格納位置に格納することができる。
特に、第3実施形態の吊り下げフック91によれば、フックバー92を上下縦軸線(支持部92aの軸線方向)に移動させて上側の使用位置と下側の格納位置に移動させることができ、この点で当該吊り下げフック91の使い勝手をより一層高めることができ、また格納時のコンパクト性を高めることができる。
また、第1、第2実施形態と同じく、第3実施形態のフックバー92の引き掛け部92cが中間部92bの先端から鋭角方向であって当該携帯用切断機1の重心側に折り曲げられている。このため、支持部92aと引き掛け部92cとの間に引き掛け対象部位を位置させて当該フックバー92を引き掛ける他、引き掛け部92cの先端部92ccを作業台や足場の上面に突き当てておくことによっても当該携帯用切断機1を安定した姿勢で吊り下げておくことができる。
以上説明した実施形態にはさらに変更を加えることができる。例えば、J形に屈曲させたフックバー51,81,92を例示したが、L字形あるいはループ形に曲げられたフックバーを用いる構成としてもよい。
また、上下揺動支持部26,63付近あるいは固定カバー24,62の前面に吊り下げフック50,80,91を配置する構成を例示したが、固定カバー24,62の前方であれば、例えば前側支持部64あるいはベース10の上面に吊り下げフックを設ける構成とすることができる。
さらに、吊り下げフックを配置する部位について、第1実施形態では、切断機本体20をベース10に対して揺動支持する支持アーム部25bの上面に設け、第2、第3実施形態では、固定カバー24の前部に設けた構成を例示したが、その他の部位に設けることもできる。例えば、ハンドル部20の左側部に吊り下げフックを設け(第4実施形態)、電動モータ21の前部に吊り下げフックを設け(第5実施形態)、電動モータ21の上部に吊り下げフックを設け(第6実施形態)、ハンドル部20の後部に吊り下げフックを設け(第7実施形態)た構成とすることができる。第4~第7実施形態は、吊り下げフックを設けた部位が異なり、携帯用切断機1の基本的構成については第1実施形態と同じであり、特に変更を要しない。第1実施形態と同じ部材及び構成については同位の符合を用いてその説明を省略する。
図29~図33は、第4実施形態に係る吊り下げフック100を備えた携帯用切断機1が示されている。第4実施形態に係る吊り下げフック100は、ハンドル部23の左側部に設けられている。係る吊り下げフック100は、J形に屈曲させたフックバー101と、フックバー101を支持するフック支持部102を備えている。フックバー101は、前後に延びる支持部101aと、支持部101aの前端から上下に延びる中間部101bと、中間部101bの先端から後方へ屈曲する引き掛け部101cを備えている。引き掛け部101cの先端側には、引き掛け突起101dが設けられている。
フック支持部102は、ハンドル部23の前部23aの左側部に設けた台座部104に2本の固定ねじ105でねじ結合されている。円筒形を有するフック支持部102に、支持部101aがその軸回りに回転可能かつ軸線方向に変位可能に挿通されている。フック支持部102の後端面から突き出された支持部101aの後部に係合ピン103が取り付けられている。係合ピン103が、フック支持部102の後端面に設けたV字形の係合溝部102aに嵌まり込むことにより、フックバー101が使用位置と格納位置に保持される。
図29と図30に示すようにフックバー101を格納位置に格納すると、中間部101bが支持部101aの先端から下方へ延びる姿勢となる。これに対して図31と図32に示すようにフックバー101を使用位置に取り出すと、中間部101bが支持部101aの先端から上方斜め左方へ傾いた方向へ延びた状態となる。
第4実施形態に係る吊り下げフック100によれば、ハンドル部23の左側部から斜め上方に延びるフックバー101を足場や作業台の端部に引き掛けて、携帯用切断機1を吊り下げておくことができる。吊り下げフック100を利用しない場合には、切断作業時に邪魔にならない位置に格納しておくことができる。
第4実施形態では、フックバー101の使用位置が特に適切に設定されている。前記したようにフックバー101は、ハンドル部23から前方へ延びる支持部101aと、支持部101aの前部から上下に延びる中間部101bと、中間部101bの先端部から折り返されて後方に延びる引き掛け部101cを備えたJ形を有している。図32に示すようにフックバー101を使用位置に取り出すと、支持部101aと中間部101bと引き掛け部101cが一つの仮想平面S上に位置する。支持部101aと中間部101bと引き掛け部101cが位置する一つの仮想平面S上に、当該携帯用切断機1の重心Gが位置するよう、当該フックバー101の使用位置(左方上方へ向けた傾斜角度)が設定されている。しかも、引き掛け部101cが中間部101bの先端部から鋭角方向に折り曲げられて重心Gに向けて延びるよう当該引き掛け部101cの中間部101bに対する折り返し角度が設定されている。尚、本実施形態では支持部101aと中間部101bと引き掛け部101cが位置する一つの仮想平面S上に、当該携帯用切断機1の重心Gが位置しているが、重心Gは正確に仮想平面S上にある必要はなく、重心Gを中心とする周辺領域の一部が仮想平面Sと交差していれば足りる。
このように第4実施形態の吊り下げフック100によれば、フックバー101の支持部101aと中間部101bと引き掛け部101cを含む一つの仮想平面S上に当該携帯用切断機1の重心Gが位置するように当該フックバー101の使用位置が設定されていることにより、当該携帯用切断機1の吊り下げ姿勢の安定化を図ることができる。
しかも、引き掛け部101cが重心G側に向けて延びるよう当該引き掛け部101cの折り返し方向が設定されている。このため、支持部101aと引き掛け部101cとの間に位置させるに適当な引き掛け対象部位がない場合には、例えば図33に示すように引き掛け部101cの先端部101ccを作業台Dの上面に突き当てた状態で吊り下げておくことができる。この場合にも、先端部101ccの突き当て部位の鉛直方向の下方に当該携帯用切断機1の重心Gが位置することから、安定した姿勢で吊り下げておくことができる。
図34~図37には第5実施形態に係る吊り下げフック110が示されている。第5実施形態に係る吊り下げフック110は、電動モータ10の前部に設けられている。吊り下げフック110は、棒鋼材をJ形に折り曲げて製作したフックバー111と、フックバー111を電動モータ21の前部に支持するフック支持部112を備えている。
フックバー111は、上方に延びる支持部111aと、支持部111aの上部から横方向へ延びる中間部111bと、中間部111bの先端から下方へ延びる引き掛け部111cを有している。引き掛け部111cの先端側には、足場等の引き掛け対象部に係合させるための引き掛け突起111dが設けられている。
フック支持部112は、2本の固定ねじ113でモータハウジング21aの前部に結合されている。円筒形を有するフック支持部112の内周孔にフックバー111の支持部111aが軸回りに回転可能かつ軸方向に変位可能に挿通されている。支持部111aの下端部側はフック支持部112の下部から下方へ突き出されている。突き出し部分には、係合ピン114が取り付けられている。係合ピン114が、フック支持部112の下面に設けたV字形の係合溝部112aに嵌まり込むことでフックバー111が使用位置と格納位置とに位置保持される。フックバー111は、フック支持部112との間に介装した圧縮ばね(図では見えていない)により係合ピン114を係合溝部112aに嵌り込ませる方向に付勢されている。
上記のばね付勢力に抗してフックバー111を下方へ押し下げて係合ピン114を係合溝部112aから離脱させた状態で、当該フックバー111をその支持部111aの軸線回りに回転させることにより、使用位置と格納位置に変位させることができる。図34と図35は、引き掛け部111cを電動モータ21の後側に位置させた格納位置に保持された状態を示している。図36と図37は、引き掛け部111cを電動モータ21の前方斜め左方に位置させた使用位置に保持した状態を示している。
フック支持部112の下面に設けた係合溝部112aの位置を変更することにより、フックバー111の使用位置と格納位置に変更することができる。フックバー111を使用位置に取り出して、その支持部111cを電動モータ21の前方斜め左方に位置させることにより、当該吊り下げフック110を用いて携帯用切断機1を足場や手摺あるいは作業台の端部に引き掛けておくことができる。フックバー111は格納位置に保持しておくことにより、切断作業の邪魔にならにようにすることができる。
また、第1~第4実施形態と同じく、フックバー111の引き掛け部111cは、中間部111bの先端から鋭角方向であって当該携帯用切断機1の重心G側に折り曲げられている。このため、支持部111aと引き掛け部111cとの間に引き掛け対象部位を位置させて当該フックバー111を引き掛ける他、図33に示した第4実施形態と同様、引き掛け部111cの先端部111ccを作業台Dや足場の上面に突き当てておくことによっても当該携帯用切断機1を安定した姿勢で吊り下げておくことができる。
図38~図41には、第6実施形態に係る吊り下げフック120を備えた携帯用切断機1が示されている。第6実施形態の吊り下げフック120は、モータハウジング21aの上部(頂部)よりやや前側に設けられている。吊り下げフック120は、フックバー121と、フックバー121を支持するフック支持部122を備えている。フックバー121は、フック支持部122から前方斜め下方に向けて延びる支持部121aと、支持部121aの先端から下方又は左側方に延びる中間部121bと、中間部121bの先端から後方へ屈曲された引き掛け部121cを備えている。引き掛け部121cの先端側には引き掛け突起121dが設けられている。
モータハウジング21aの上部に台座部123が設けられている。台座部123にフック支持部122が2本の固定ねじ124で取り付けられている。円筒形を有するフック支持部122に支持部121aが軸方向に変位可能かつ軸回りに回転可能に挿通されている。支持部121aの後部であって、フック支持部122から後方へ突き出された部位に、係合ピン125が径方向の両側に突き出す状態に設けられている。係合ピン125が、フック支持部122の後面に設けたV字形の係合溝部122aに弾性的に嵌まり込むことにより、フックバー121が格納位置と使用位置に保持される。
図38及び図39に示すようにフックバー121を格納位置に位置させると、中間部121bと引き掛け部121cをモータ21の前方に位置させた状態となる。フックバー121を支持部121aの軸回りに回転させて使用位置に取り出すことができる。図40及び図41に示すようにフックバー121を使用位置に取り出すと、中間部121bが左方斜め上方へ向けて延びる状態となる。
第6実施形態の吊り下げフック120によっても、フックバー121を使用位置に取り出して足場や作業台の端部に引き掛けることで、当該携帯用切断機1を吊り下げておくことができる。
また、第1~第5実施形態と同じく、第6実施形態によってもフックバー121の引き掛け部121cは、中間部121bの先端から鋭角方向であって当該携帯用切断機1の重心G側に折り曲げられている。このため、支持部121aと引き掛け部121cとの間に引き掛け対象部位を位置させて当該フックバー121を引き掛ける他、引き掛け部121cの先端部121ccを作業台Dや足場の上面に突き当てておくことによっても当該携帯用切断機1を安定した姿勢で吊り下げておくことができる(図33参照)。
図42~図45には第7実施形態に係る吊り下げフック130を備えた携帯用切断機1が示されている。第7実施形態の吊り下げフック130は、ハンドル部23の後部側に設けられている。吊り下げフック130は、フックバー131と、フックバー131を支持するフック支持部132を備えている。フックバー131は、フック支持部132から左方へ水平に延びる支持部131aと、支持部131aの先端から下方又は後方に延びる中間部131bと、中間部131bの先端から右方へ屈曲された引き掛け部131cを備えている。引き掛け部131cの先端側には引き掛け突起131dが設けられている。
フックバー131の支持部131aは、円筒形を有するフック支持部132に軸回りに回転可能かつ軸線方向に変位可能に挿通されている。フック支持部132の端面から突き出された支持部131aの端部には係合ピン135が径方向両側へ突き出す状態に取り付けられている。係合ピン135が、フック支持部132の端面に設けたV字形の係合溝部132aに嵌まり込むことにより、フックバー131が使用位置と格納位置に保持される。
バッテリ取り付け部30の後部には、台座部134が後方へ突き出す状態に設けられている。フック支持部132は、台座部134に2本の固定ねじ133でねじ結合されている。図42及び図43に示すようにフックバー131を格納位置に格納すると、中間部131bが下方へ延びて引き掛け部131cがバッテリパック31の後方に沿って格納された状態となる。格納位置から当該フックバー131を支持部131aの軸線回りに約90°回転させることにより使用位置に取り出すことができる。
図44及び図45に示すようにフックバー131が使用位置に取り出された状態では、中間部131bが支持部131aの先端から後方へ延びる状態となる。フックバー131を使用位置に取り出すことにより、引き掛け部131cを例えば足場や作業台の端部等に引き掛けて、当該携帯用切断機1を吊り下げておくことができる。
また、第7実施形態においても、フックバー131の引き掛け部131cがJ形に折り返されて使用位置では当該携帯用切断機1の重心G側に向けられている。このため、引き掛け部131cと、支持部131aとの間に引き掛け対象部位を位置させてフックバー131を引き掛ける他、引き掛け部131cの先端部131ccを作業台Dや足場の上面に突き当てた状態でも、当該携帯用切断機1を安定して吊り下げておくことができる(図33参照)。
また、第7実施形態に係る吊り下げフック130は、ハンドル部23の後部に設けられているので、切断作業時に切断部位を目視する際に邪魔になることがなく、携帯用切断機1の作業性を損なうことがない。
以上説明した第1~第7実施形態では、携帯用切断機1として円形の刃具を回転させて切断加工を行うマルノコを例示したが、帯板形状のブレードを往復動させて切断加工を行うジグソー等のその他の形態の切断機について例示した吊り下げフックやストラップの結合部を適用することができる。