以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。図面に示された“X方向”、“Y方向”及び“Z方向”は、互いに交差する方向に対応している。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号が付されている。参照符号を構成する文字の後の数字等は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素はそれぞれ文字のみを含んだ参照符号により参照される。
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば当該距離計測装置1と対象物TGと間の距離を計測することが可能なLiDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。
[1-1]距離計測装置1の構成
[1-1-1]距離計測装置1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、本例では、距離計測装置1の前方に、測距の対象物TGの一例として車両が配置されている。第1実施形態に係る距離計測装置1は、制御部10、出射部20、受光部30、及び計測部40を備えている。
制御部10は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、発振器を含んでいる(図示せず)。ROMは、距離計測装置1の動作に使用されるプログラム等を記憶している。CPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、出射部20、受光部30、及び計測部40を制御する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。制御部10は、様々なデータ処理や、演算処理を実行することも可能である。
出射部20は、レーザ光を間欠的に生成及び出射する。生成及び出射されたレーザ光は、対象物TGに照射され、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測に使用される。本明細書では、出射部20から出射されたレーザ光のことを、“出射光L1”と呼ぶ。対象物TGによって反射された出射光L1のことを、“反射光L2”と呼ぶ。“出射部20”は、投光部と呼ばれても良い。
受光部30は、距離計測装置1に入射した光を検出して、受光結果を計測部40に転送する。言い換えると、受光部30は、距離計測装置1に入射した光を電気信号に変換して、変換した電気信号を計測部40に転送する。受光部30は、距離計測装置1に間欠的に入射する反射光L2の検出に使用される。
計測部40は、受光部30から転送された受光結果に基づいて、受光部30が反射光L2を検出した時刻を計測する。そして、計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された時刻と、受光部30が反射光L2を検出した時刻とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。出射部20から出射光L1が出射された時刻は、例えば制御部10から通知される。また、計測部40は、受光部30から入力された電気信号を処理した結果の一部を制御部10に入力しても良い。
尚、距離計測装置1では、制御部10が、出射部20と受光部30から独立した1つのブロックとして説明されている。制御部10は、距離計測装置1の全体的な制御を司り、受光部30や計測部40のそれぞれの制御部10に指示を出す。実際には、後述されるように、制御部10の機能の一部が、受光部30や計測部40に実装されていても良い。これにより、距離計測装置1は、細かい操作をタイムリーに行うことが出来る。以下の説明で特に明示されていない制御は、説明を簡単にするために、制御部10によって実行されるものとする。
図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1の測距方法の概要を示す概略図である。入力電圧の波形は、出射部20に含まれた光源に供給される電圧の時間変化を示している。受光結果の波形は、受光部30が検出した光に基づいた電気信号の強度の時間変化を示している。図2に示すように、出射部20の光源にパルス信号が供給されると、パルス信号の立ち上がりに基づいて出射光L1が生成及び出射される。そして、当該出射光L1が対象物TGに照射され、受光部30が、対象物TGから反射した反射光L2を検出する。
計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された出射時刻T1と、受光部30が反射光L2を検出した受光時刻T2との差に基づいて、出射光L1の飛行時間(ToF:Time of Flight)を算出する。そして、計測部40は、出射光L1の飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測(測距)する。このような距離計測装置1の測距方法は、“ToF方式”とも呼ばれる。計測部40は、距離計測装置1が出射及び受光する出射光L1及び反射光L2の組毎に、測距結果を出力する。
尚、計測部40は、少なくとも出射光L1の出射に関する時間に基づいて出射時刻T1を決定し、反射光L2の受光に関する時間に基づいて受光時刻T2を決定していれば良い。例えば、計測部40は、出射時刻T1及び受光時刻T2を、信号の立ち上がり時間に基づいて決定しても良いし、信号のピーク時刻に基づいて決定しても良い。制御部10は、出射部20、受光部30、及び計測部40毎に設けられても良い。計測部40の処理が制御部10によって実行されても良い。距離計測装置1は、計測部40の測距結果に基づいた画像を生成する画像処理部を有していても良い。このような画像は、距離計測装置1を搭載した車両等の制御プログラムによって参照される。
[1-1-2]出射部20の構成
図3は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える出射部20及び受光部30の構成の一例を示す概略図である。図3に示すように、出射部20は、例えば、駆動回路21及び22、光源23、光学系24、及びミラー25を含む。
駆動回路21は、制御部10の発振器から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路21は、生成した駆動電流を光源23に供給する。つまり、駆動回路21は、光源23の電流供給源として機能する。
駆動回路22は、制御部10による制御に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路22は、生成した駆動電流をミラー25に供給する。つまり、駆動回路22は、ミラー25の電源回路として機能する。
光源23は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源23は、駆動回路21から供給された間欠的な駆動電流(パルス信号)に基づいて、レーザ光(出射光L1)を間欠的に出射する。光源23により出射されたレーザ光は、光学系24に入射する。
光学系24は、複数のレンズや光学素子を含み得る。光学系24は、光源23により出射される出射光L1の光路上に配置される。例えば、光学系24は、入射した出射光L1をコリメートして、コリメートした出射光L1をミラー25に導光する。光学系24は、ビームシェイパや、ビームスプリッタ等を含んでいても良い。
ミラー25は、駆動回路22から供給される駆動電流に基づいて駆動し、当該ミラー25に入射した出射光L1を反射する。例えば、ミラー25の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転或いは揺動可能に構成される。ミラー25によって反射された出射光L1が、距離計測装置1の外部の対象物TGに照射される。
第1実施形態に係る距離計測装置1において、制御部10は、ミラー25を制御して出射光L1の出射方向を変更することによって、測距したい領域をスキャンする。出射部20は、レーザ光を用いたスキャンをすることが可能な構成を有していれば良く、その他の構成であっても良い。例えば、出射部20は、ミラー25によって反射されたレーザ光の光路上に配置された光学系をさらに備えていても良い。
本明細書では、距離計測装置1によって測距される領域のことを、“スキャン領域SA”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャン領域SA内で複数点の計測動作を実行し、様々な対象物TGとの距離を計測する。また、1回のスキャンに対応する複数点の測距結果の組のことを“フレーム”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャンを連続的に実行することによって、距離計測装置1の前方の対象物TGとの距離を逐次取得することが出来る。
図4は、第1実施形態に係る距離計測装置1か備える出射部20のスキャン方法の一例を示すテーブルである。図4に示されたテーブルは、スキャン方法の名称とスキャン方法の具体例との3種類の組み合わせを示している。図4において、符号“L1”により示された部分は、関連付けられたスキャン方法における出射光L1の形状及び出射タイミングを示している。“スキャン位置”の矢印は、スキャン領域SA内で、複数の出射光L1が順に照射される経路を模式的に示している。“左方向”及び“右方向”は、紙面上の左方向及び右方向をそれぞれ示している。
図4(1)に示されたスキャン方法では、例えばドット状の照射面を有する出射光L1が使用される。そして、距離計測装置1は、左右方向のスキャンを繰り返し実行する。え例えば、距離計測装置1が、右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンして、再び右方向にスキャンした後に、再び折り返して左方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“ラスタスキャン”と呼ばれる。ラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、2軸のミラー等が使用され得る。尚、この例では折り返して左方向にスキャンしているが、折り返しが省略され、右方向のスキャンだけであっても良い。
図4(2)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えばコリメータレンズ及びシリンドリカルレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素PXを同時に照射して、右方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルスキャン”と呼ばれる。マルチチャネルスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、ポリゴンミラーや、回転ミラーや、1軸のMEMSミラー等が使用され得る。マルチチャネルスキャンは、ミラー25を使用せずに、距離計測装置1自身を回転させることによって実現されても良い。マルチチャネルスキャンは、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射することが出来る。このため、マルチチャネルスキャンは、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートを実現し得る。
図4(3)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えば異方性のある非球面コリメータレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素を同時に照射して、例えば、右方向にスキャンした後に、垂直位置がずらされたスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルラスタスキャン”と呼ばれる。マルチチャネルラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、異なるチルト角を有するポリゴンミラーや、回転ミラーや、2軸のミラー等が使用され得る。マルチチャネルラスタスキャンは、マルチチャネルスキャンと同様に、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射することが出来る、マルチチャネルラスタスキャンは、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートを実現し得る。このため、距離計測装置1がある程度の高解像及び高フレームレートを得るためには、マルチチャネルラスタスキャンが使用されることが好ましい。
以上で説明されたスキャン方法は、あくまで一例である。図4(1)~(3)に示されたスキャン方法は、機械的な方法に対応している。距離計測装置1は、別のスキャン方法として、OPA方法(Optical Phased Array)を使用しても良い。1回のスキャンにおける直線経路の数やスキャン方向は、その他の設定であっても良い。第1実施形態に係る距離計測装置1による動作及び効果は、出射光L1のスキャン方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いて、スキャンを実行しても良い。以下では、距離計測装置1がマルチチャネルラスタスキャンを使用する場合について説明する。
[1-1-3]受光部30の構成
再び図3を参照して、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える受光部30の構成について説明する。図3に示すように、受光部30は、例えば、光学系31、及び光検出器PDを含む。光検出器PDは、例えば、画素アレイ32、出力段33、及び制御部34を含む。光検出器PDの各構成は、同じ基板(チップ)に形成され得る。
光学系31は、少なくとも1つのレンズを含み得る。光学系31は、距離計測装置1に入射した反射光L2を画素アレイ32に集める。
画素アレイ32は、光学系31を介して当該画素アレイ32に入射した光を電気信号に変換する。画素アレイ32は、例えば、半導体を用いた光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、アバランシェフォトダイオードの一種である、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。画素アレイ32によって変換された電気信号(受光結果)は、出力段33に出力される。
出力段33は、画素アレイ32から転送された電気信号を出力するための処理、例えば、出力レベルを調整し(電流を増強・低減させる等の処理を行い)、計測部40に出力する。
制御部34は、制御部10の制御に基づいて、光検出器PDの全体の動作を制御する。
第1実施形態に係る距離計測装置1において、受光部30の光検出器PDに入射する光の光軸は、出射部20の光源23の光軸と異なっている。つまり、距離計測装置1は、出射部20及び受光部30の間で非同軸の光学系を有している。受光部30は、距離計測装置1に入射した反射光L2を検出可能であれば、その他の構成であっても良い。例えば、距離計測装置1に、同軸光学系や、分離光学系が利用されても良い。
(光検出器PDの構成)
図5は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器PDの平面レイアウトの一例を示す平面図である。図5に示すように、光検出器PDにおいて、画素アレイ32は、例えば矩形の受光面を有する。制御部34は、カラムデコーダCD、ロウデコーダRD、及び制御レジスタCRを有する。光検出器PDは、チャネル結合部CBを有する。
カラムデコーダCDは、画素アレイ32のカラム方向に沿って設けられる。カラムデコーダCDと画素アレイ32との間は、複数のカラム選択線により接続される。カラムデコーダCDは、複数のカラム選択線の何れかを選択することによって、カラム方向に並んだ複数の画素PXの何れかを選択することが出来る。
ロウデコーダRDは、画素アレイ32のロウ方向に沿って設けられる。ロウデコーダRDと画素アレイ32との間は、複数のロウ選択線により接続される。ロウデコーダRDは、複数のロウ選択線の何れかを選択することによって、ロウ方向に並んだ複数の画素PXの何れかを選択することが出来る。
制御レジスタCRは、制御部10からの指示に基づいて、カラムデコーダCD、ロウデコーダRD、及び出力段33を制御する。尚、制御レジスタCRは、チャネル結合部CBをさらに制御しても良い。
チャネル結合部CBは、例えば画素アレイ32のロウ方向に沿って設けられる。そして、チャネル結合部CBは、画素アレイ32と出力段33との間を選択的に接続する。チャネル結合部CBの詳細については後述する。
(画素アレイ32の構成)
図6は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32の平面レイアウトの一例を示す平面図であり、画素アレイ32の受光面の全体と、画素アレイ32の受光面の一部の拡大図とを示している。拡大図に付加された破線のグリッドは、画素PX毎の領域を例示している。図6に示すように、画素アレイ32は、複数のアバランシェフォトダイオードAPDを備えている。
画素アレイ32の受光面は、スキャン位置に合わせて、複数の領域に分割され得る。例えば、画素アレイ32の受光面には、Y方向(ロウ方向)に並んだスキャン部SP1~SP4が設けられる。スキャン部SP1~SP4のそれぞれは、例えば矩形の領域であり、X方向(カラム方向)に沿って並んだ複数の画素PXを含む。スキャン部SPは、Y方向に並んだ複数の画素PXも含み得る。さらに、画素アレイ32の受光面は、スキャン部SP毎に、複数の領域に分割され得る。本例では、画素アレイ32の各スキャン部SPが、Y方向に並んだ画素グループPG1~PG4を含む。画素グループPG1~PG4のそれぞれは、例えば矩形の領域であり、X方向に沿って並んだ複数の画素PXを含む。尚、画素グループPGの数と、スキャン部SPの数とのそれぞれは、画素アレイ32の設計に応じて変更され得る。
尚、画素アレイ32がスキャン部SP1~SP4に分割され、各スキャン部SPが矩形である場合について例示したが、これに限定されない。スキャン部SP1~SP4は、互いに重なり合ってもよく、矩形でなくても良い。通常、一度の計測では、Y方向及びX方向のそれぞれに固定数(例えば複数)の画素PXが選択、すなわちアクティブ状態に設定される。アクティブ状態に設定された固定数の画素PXのY方向の位置は、計測の度に変更され得る。さらに、制御部34は、アクティブ状態に設定する画素PXの集合を、画素アレイ32上に、同時に複数箇所設けても良い。
画素PXは、画素アレイ32が光を検出することが可能な領域の最小単位として使用される。画素PXを構成するアバランシェフォトダイオードAPDの数は、少なくとも1つ以上であれば良い。第1実施形態に係る光検出器PDでは、Y方向に隣り合う2つのアバランシェフォトダイオードAPDが、1つの画素PXを構成している。複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。画素アレイ32が検出可能な光のダイナミックレンジは、1つの画素PXが含むアバランシェフォトダイオードAPDの数に応じて変化し得る。また、アバランシェフォトダイオードAPDの出力電流の向きは、アバランシェフォトダイオードAPDの極性に応じて変わり得る。
各画素PXには、例えばカラムアドレスCA及びロウアドレスRAの組が割り当てられる。すなわち、各画素PXは、カラムアドレスCA及びロウアドレスRAの組によって特定され得る。アバランシェフォトダイオードAPDは、制御部34によってアクティブ状態又は非アクティブ状態に設定可能に構成される。アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDは、当該アバランシェフォトダイオードAPDに入射した光を検知し、検知結果を示す光信号を出力段33に出力する。非アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDは、通常、省電力な状態であり、光を検知しない。
尚、制御部34は、カラムデコーダCDを介して、X方向に並んだ画素PXのうち少なくとも1つの画素PXをアクティブ状態或いは非アクティブ状態に設定し得る。同様に、制御部34は、ロウデコーダRDを介して、Y方向に並んだ画素PXのうち少なくとも1つの画素PXをアクティブ状態或いは非アクティブ状態に設定し得る。制御レジスタCRは、光検出器PDにおけるアクティブ領域の設定や出力段33の設定等の固定的な設定を記憶し得る。アクティブ領域は、画素アレイ32内で反射光L2の検出に使用され、少なくとも1つの画素PXによって構成される領域である。制御部10は、制御レジスタCRに記憶された固定的な設定を利用することによって、制御レジスタCRを介して、カラムデコーダCD、ロウデコーダRD、及び出力段33を制御しても良い。固定的な設定としては、例えば、同時に選択される画素PXの数等が挙げられる。
また、受光部30は、画素アレイ32と重なるように設けられたマイクロレンズアレイMLAをさらに有している。マイクロレンズアレイMLAは、光学系31に含まれている。マイクロレンズアレイMLAは、複数のマイクロレンズMLを有する。複数のマイクロレンズMLは、例えばマトリクス状に配置される。複数のマイクロレンズMLは、複数のアバランシェフォトダイオードAPDにそれぞれ重なっている。また、マイクロレンズMLは、自身を透過した光が、関連付けられたアバランシェフォトダイオードAPDに入射するように構成される。各マイクロレンズMLは、複数のアバランシェフォトダイオードAPDに光を入射させるように構成されても良い。
(スキャン部SPの構成)
図7は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32の1つのスキャン部SPに含まれた構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、各スキャン部SPにおいて、画素アレイ32は、例えば、複数の画素PX1~PX4と、複数のスイッチ部SWと、複数の出力ノードOUT1~OUT4とを含む。
複数の画素PX1~PX4のそれぞれは、例えばアバランシェフォトダイオードAPD1及びAPD2を含む。複数の画素PX1~PX4は、それぞれ画素グループPG1~PG4に含まれている。複数の画素PX1の各々は、スイッチ部SWを介して、出力ノードOUT1に接続される。複数の画素PX2の各々は、スイッチ部SWを介して、出力ノードOUT2に接続される。複数の画素PX3の各々は、スイッチ部SWを介して、出力ノードOUT3に接続される。複数の画素PX4の各々は、スイッチ部SWを介して、出力ノードOUT4に接続される。出力ノードOUT1~OUT4のそれぞれは、“チャネル”と呼ばれても良い。すなわち、スキャン部SPにおいて画素アレイ32は、複数のチャネルを含み得る。同じロウの画素PXは、同一のチャネルに接続されている。チャネルは、信号の経路を意味し、受光部30の出力と1対1で対応している。
各スイッチ部SWは、制御部34の制御に応じて、画素PXと、当該画素PXに関連付けられた出力ノードOUTとの間を電気的に接続(オン状態)、又は電気的に非接続(オフ状態)にさせる。具体的には、制御部34は、アクティブ状態に設定する画素PX、すなわち選択された画素PXに関連付けられたスイッチ部SWをオン状態に設定し、非アクティブ状態に設定する画素PX、すなわち非選択の画素PXに関連付けられたスイッチ部SWをオフ状態に設定する。制御部34は、1回の測距(計測)時に、1つのチャネル内の複数の画素PXをアクティブ状態に設定しても良い。この場合、アクティブ状態に設定された複数の画素PXの出力が、共有された出力ノードOUTの結合により加算され、非アクティブ状態に設定された画素PXの出力は、当該出力ノードOUTに入力されない。
尚、非アクティブ状態の画素PXの出力は、スイッチ部SWのリークレベルで出力ノードOUTに入力され得る。出力ノードOUTの結合は、機能の面では、加算器に相当する。アクティブ状態に設定された複数の画素PXの出力は、選択位置に応じて、重み付け加算されても良い。制御部10は、基本的に、X方向に連続して並んだ複数の画素PXを選択する。距離の非計測時に、非選択の画素PXの出力が、出力ノードOUTに入力されても良い。距離の非計測時における非選択の画素PXの出力は、例えば、光の入射位置にずれがあるか否かの確認に使用される。
(画素アレイ32及び出力段33の接続関係)
図8は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器PDにおける画素アレイ32と出力段33との間の接続関係の一例を示すブロック図である。以下では、スキャン部SP1の画素グループPG1~PG4にそれぞれ接続された4本の出力ノードOUT1~OUT4のことを、それぞれ“SP1_OUT1”~“SP1_OUT4”と呼ぶ。スキャン部SP2の画素グループPG1~PG4にそれぞれ接続された4本の出力ノードOUT1~OUT4のことを、それぞれ“SP2_OUT1”~“SP2_OUT4”と呼ぶ。スキャン部SP3の画素グループPG1~PG4にそれぞれ接続された4本の出力ノードOUT1~OUT4のことを、それぞれ“SP3_OUT1”~“SP3_OUT4”と呼ぶ。スキャン部SP4の画素グループPG1~PG4にそれぞれ接続された4本の出力ノードOUT1~OUT4のことを、それぞれ“SP4_OUT1”~“SP4_OUT4”と呼ぶ。図8に示すように、チャネル結合部CBは、複数のノードN_CH1~N_CH4を含む。出力段33は、複数の出力回路OC1~OC4と、出力チャネルOUT_CH1~OUT_CH4とを含む。
ノードN_CHは、各スキャン部SPのチャネル毎に設けられ、スキャン部SP間で適宜共有されている。具体的には、ノードN_CH1(第1ノード)は、出力ノードSP1_OUT1、SP2_OUT1、SP3_OUT1、及びSP4_OUT1に接続される。ノードN_CH2は、出力ノードSP1_OUT2、SP2_OUT2、SP3_OUT2、及びSP4_OUT2に接続される。ノードN_CH3は、出力ノードSP1_OUT3、SP2_OUT3、SP3_OUT3、及びSP4_OUT3に接続される。ノードN_CH4は、出力ノードSP1_OUT4、SP2_OUT4、SP3_OUT4、及びSP4_OUT4に接続される。すなわち、ノードN_CH1は、スキャン部SP1~SP4のそれぞれの出力ノードOUT1に接続される。ノードN_CH2は、スキャン部SP1~SP4のそれぞれの出力ノードOUT2に接続される。ノードN_CH3は、スキャン部SP1~SP4のそれぞれの出力ノードOUT3に接続される。ノードN_CH4は、スキャン部SP1~SP4のそれぞれの出力ノードOUT4に接続される。
このように、各ノードN_CHには、異なるロウの画素PXが接続されている。言い換えると、ロウとチャネルは、サイクリックに、多対一で接続されている。この場合、チャネルの出力と画素PXの垂直位置との関係が、選択されたスキャン部SPの位置に応じて変化する。例えば、スキャン部SP2でノードN_CH1に接続された画素PXの位置は、スキャン部SP1でノードN_CH2に接続された画素PXの位置よりも下側に位置する。この対策として、距離の計測時に、制御部10は、複数のスキャン部SPのうちいずれかを選択し、各ノードN_CHには、選択されたスキャン部SPに含まれたアクティブ状態の画素PXの出力が入力される。それから、計測部40が、チャネルの出力の順番に応じて、計測結果を並び替える。これに限定されず、チャネルの出力は、画素アレイ32内で並び替えられても良い。
出力回路OC1は、ノードN_CH1に入力された信号の出力レベルを調整して、出力チャネルOUT_CH1(第2ノード)に出力する。出力回路OC2は、ノードN_CH2に入力された信号の出力レベルを調整して、出力チャネルOUT_CH2に出力する。出力回路OC3は、ノードN_CH3に入力された信号の出力レベルを調整して、出力チャネルOUT_CH3に出力する。出力回路OC4は、ノードN_CH4に入力された信号の出力レベルを調整して、出力チャネルOUT_CH4に出力する。各出力回路OCには、選択された画素PXの出力のみが入力される。出力回路OCに対する入力には、非選択の画素PXからのリーク成分が含まれていても良い。出力段33に接続された複数の出力チャネルの数は、受光部30の出力と1対1に対応している。出力段33が含む出力回路OCの数は、受光部30の設計に応じて変更され得る。出力チャネルOUT_CHの各々には、例えば出力端子が接続されても良い。出力チャネルOUT_CHは、ノードと呼ばれても良い。
尚、図8では、チャネル結合部CBに含まれたノードN_CH1~N_CH4のそれぞれが単なる結線部である場合について例示したが、これに限定されない。図9は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器PBのチャネル結合部CBの構成のその他の一例を示すブロック図である。図9に示すように、チャネル結合部CBaは、複数のトランジスタCSTを含んでいても良い。トランジスタCSTは、例えばP型トランジスタである。
具体的には、1つのトランジスタCSTが、ノードN_CH1と、出力ノードSP1_OUT1~SP1_OUT4のそれぞれとの間に、それぞれ接続される。1つのトランジスタCSTが、ノードN_CH2と、出力ノードSP2_OUT1~SP2_OUT4のそれぞれとの間に、それぞれ接続される。1つのトランジスタCSTが、ノードN_CH3と、出力ノードSP3_OUT1~SP3_OUT4のそれぞれとの間に、それぞれ接続される。1つのトランジスタCSTが、ノードN_CH4と、出力ノードSP4_OUT1~SP4_OUT4のそれぞれとの間に、それぞれ接続される。
スキャン部SP1に接続された各トランジスタCSTのゲートには、制御信号CS1が入力される。スキャン部SP2に接続された各トランジスタCSTのゲートには、制御信号CS2が入力される。スキャン部SP3に接続された各トランジスタCSTのゲートには、制御信号CS3が入力される。スキャン部SP4に接続された各トランジスタCSTのゲートには、制御信号CS4が入力される。制御部34は、制御信号CS1~CS4のうち何れか一つを“L”レベルにすることによって、ノードN_CH1~N_CH4と、1つのスキャン部SPとの間を選択的に接続することが出来る。言い換えると、トランジスタCSTは、ロウ毎に設けられる。そして、制御部34は、選択対象のロウに接続されたトランジスタCSTをオン状態に制御することによって、関連付けられた出力ノードOUTとノードN_CHとの間を選択的に導通させることが出来る。
チャネル結合部CBaは、各トランジスタCSTにより、画素アレイ32及び出力段33間を接続する複数の配線の寄生容量を抑制することが出来る。その結果、チャネル結合部CBaは、画素アレイ32と出力段33との間で、高速に信号を伝達させることが出来る。尚、トランジスタCSTは、N型トランジスタであっても良い。制御信号CSは、スキャン部SP毎でなく、トランジスタCST毎に制御されても良い。
[1-1-4]計測部40の構成
図10は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40の構成の一例を示すブロック図である。図10に示すように、計測部40は、複数の計測ブロックMBを含む。計測ブロックMB1~MB4は、それぞれ出力チャネルOUT_CH1~OUT_CH4から入力された信号を処理する。複数の計測ブロックMBの各々は、信号処理回路41、AD(Analog to Digital)変換回路42、及び計測回路43を含む。
信号処理回路41は、関連付けられた出力チャネルOUT_CHに入力された信号の増幅等の処理をして、処理した信号をAD変換回路42に出力する。信号処理回路41に利用される増幅器としては、例えば、トランスインピーダンス・アンプ(TIA)が挙げられる。信号処理回路41は、後述されるアバランシェフォトダイオードAPDのオーバードライブ電圧Vovを調整する機能や、ゲイン適合機能や、増幅率を調整する機能を有し得る。
AD変換回路42は、信号処理回路41から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を計測回路43に入力する。尚、計測部40は、AD変換回路42の替わりに、TD(Time to Digital)変換回路を備えていても良いし、AD変換回路とTD変換回路との両方を備えていても良い。
計測回路43は、AD変換回路42から入力されたデジタル信号に基づいて対象物TGと距離計測装置1との間の距離を計測し、計測結果を外部に出力する。本例では、計測ブロックMB1~MB4が、それぞれ出力チャネルOUT_CH1~OUT_CH4に入力された信号を処理して、それぞれ計測結果R1out~R4outを出力している。
(信号処理回路41の回路構成)
図11は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40に含まれた信号処理回路41の回路構成の一例を示す回路図である。図11に示すように、信号処理回路41は、例えば、N型トランジスタNM10~NM13と、P型トランジスタPM10~PM19と、レギュレーションアンプREG1と、抵抗器R0及びR1と、ノードN11~N16と、電源ノードVDDと、電源ノードVSSとを含む。電源ノードVDDに印加される電圧は、電源ノードVSSに印加される電圧よりも高い。尚、一部の例外を除いて、N型トランジスタのバックゲートは電源ノードVSSに接続され、P型トランジスタのバックゲートは電源ノードVDDに接続される。以下の回路構成の説明では、説明を簡潔にするために、トランジスタのバックゲートに対する接続の説明が適宜省略されている。電源ノードに印加される電圧のことを、当該電源ノードに付加された参照符号により示している。
N型トランジスタNM10及びNM11は、出力回路OCから出力された信号が入力される信号処理回路41の入力段として機能する。具体的には、N型トランジスタNM10のドレイン及びソースは、それぞれノードN11及びN12に接続される。N型トランジスタNM11のドレイン及びソースは、それぞれノードN12及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM11のゲートには、電圧VN1が印加される。電圧VN1は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜定められる(キャリブレーションがなされる)。VN1は、比較的低めの値が好ましい。ノードN12は、出力チャネルOUT_CHに接続される。
レギュレーションアンプREG1は、信号処理回路41に入力される電圧及び電流を安定化し得る。レギュレーションアンプREG1は、制御値DAC1とノードN12の電圧とに基づいた電圧を出力する。レギュレーションアンプREG1の出力は、信号処理回路41の入力段に含まれたN型トランジスタNM10のゲートに接続される。制御値DAC1は、例えば制御部10によって生成される。尚、制御値DAC1は、計測部40(計測IC)が備える制御部によって生成されても良い。この場合、制御値DAC1の制御に係る通信速度は、制御部10から転送される場合(例えばマイクロ秒オーダー)よりも高速に制御され得る(例えばナノ秒オーダー)。
P型トランジスタPM10~PM13は、信号処理回路41の電流源として機能するカレントミラー回路である。P型トランジスタPM10のソース及びゲートは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN11に接続される。P型トランジスタPM10のドレインは、P型トランジスタPM11のソースに接続される。P型トランジスタPM11のドレイン及びゲートは、それぞれノードN11及びN13に接続される。P型トランジスタPM12のソース及びゲートは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN11に接続される。P型トランジスタPM12のドレインは、P型トランジスタPM13のソースに接続される。P型トランジスタPM13のドレイン及びゲートは、それぞれノードN14及びN13に接続される。ノードN13には、電圧VP1が印加される。電圧VP1は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜定められる(キャリブレーションがなされる)。例えば、VP1は、VN1よりも低い値が好ましい。ノードN14は、信号処理回路41に含まれたカレントミラー回路の出力ノードに対応している。
N型トランジスタNM12及びNM13は、電流調整器として機能する。N型トランジスタNM12のドレインは、ノードN14に接続される。N型トランジスタNM12のソースは、N型トランジスタNM13のドレインに接続される。N型トランジスタNM13のソースは、電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM12及びNM13のそれぞれのゲートには、電圧VN2が入力される。電圧VN2は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜定められる(キャリブレーションがなされる)。尚、N型トランジスタNM12及びNM13のそれぞれのゲートには、信号処理回路41から出力される差動信号に基づいた電圧がフィードバックされても良い。この場合、N型トランジスタNM12及びNM13のそれぞれは、差動信号のバランスをとることが可能となる。
P型トランジスタPM12~PM15及びNM12~NM13は、単相-差動変換回路として機能する。P型トランジスタPM14のソース及びゲートは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN14に接続される。P型トランジスタPM14のドレインは、P型トランジスタPM15のソースに接続される。P型トランジスタPM15のドレイン及びゲートは、それぞれノードN14及びN13に接続される。
P型トランジスタPM16~PM19と抵抗器R0及びR1とは、単相信号から差動信号に変換された電流源の出力に対する電流-電圧変換回路として機能する。P型トランジスタPM16のソース及びゲートは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN11に接続される。P型トランジスタPM16のドレインは、P型トランジスタPM17のソースに接続される。P型トランジスタPM17のドレイン及びゲートは、それぞれノードN15及びN13に接続される。P型トランジスタPM18のソース及びゲートは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN14に接続される。P型トランジスタPM18のドレインは、P型トランジスタPM19のソースに接続される。P型トランジスタPM19のドレイン及びゲートは、それぞれノードN16及びN13に接続される。抵抗器R0は、ノードN15と電源ノードVSSとの間に接続される。抵抗器R1は、ノードN16と電源ノードVSSとの間に接続される。ノードN15及びN16は、信号処理回路41の出力ノードADC_IN1及びADC_IN2にそれぞれ接続される。出力ノードADC_IN1及びADC_IN2は、AD変換回路42に接続される。この場合、AD変換回路42は、出力ノードADC_IN1及びADC_IN2の電圧(差動信号)に応じたデジタル信号を生成する。
図12は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40に含まれた信号処理回路41の入出力信号の一例を示す波形図である。図12の(A)は、信号処理回路41に入力された信号の電圧(出力チャネルOUT_CHの電圧)の時間変化を示している。図12の(B)及び(C)は、それぞれ出力ノードADC_IN1及びADC_IN2の電圧の時間変化を示している。図12に示すように、信号処理回路41に入力された信号は、差動信号として出力される。具体的には、図12の(A)に示された1周期の波形に注目すると、図12の(B)に示された出力ノードADC_IN1の電圧の波形と、図12の(C)に示された出力ノードADC_IN2の電圧の波形とのそれぞれには、信号処理回路41の処理に応じた遅延が生じている。そして、出力ノードADC_IN1の電圧の波形が正相となり、出力ノードADC_IN2の電圧の波形が逆相となっている。
(計測部40の処理の一例)
図13は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40の処理の一例を示す概略図である。図13に示すように、計測部40は、例えば、TIA(Trans Impedance Amplifier)、アナログデジタル変換器(ADC)、及び平均化回路(SAT)を含む。TIAは、信号処理回路41に対応している。ADCは、AD変換回路42に対応している。SATは、計測回路43に対応している。
TIA及びADCのそれぞれの数は、光検出器PDの出力、すなわち選択された画素PXの出力と等しい。具体的には、選択された画素PXの出力は、TIA及びADCを介して、SATに入力される。SATは、選択された画素PXの信号と、周囲の画素PXからの信号を平均化(時分割積算)した結果(距離値やピーク輝度等)を出力する。SATは、他の平均化回路と異なり、画素PX毎に結果を出力する。このため、SATは、解像度の低下を抑制し得る。
具体的には、SATは、光検出器PDの出力毎に、少なくとも1つの輝度バッファLBを備えている。本例では、SATは、光検出器PDの出力毎に、n番目の出射光L1の輝度値を保持する輝度バッファLB(n)と、(n-1)番目の出射光L1の輝度値を保持する輝度バッファLB(n-1)とを有している。SATに含まれた各輝度バッファLB(n)及びLB(n-1)の出力は、SATの演算部に入力される。
演算部は、積算ゲートを用いた時分割積算処理や、突出部(ピーク)の検出及び補間処理等を実行し得る。SATでは、一つ前の計測(マルチチャネルラスタスキャンの場合、例えば、左側の画素PXの計測結果)のADCサンプリング結果、つまり輝度の時系列信号が、輝度バッファLB(n-1)によって保持される。また、SATでは、周辺の画素PX(例えば、上下左右、斜め上などに位置する画素PX)の類似性を判別して、類似している時系列信号が抽出されて積算される。画素PXの類似性の判別基準としては、例えば、各々の時系列信号の底部(フロア)値の類似性と、突出部(ピーク)の値の類似性との両方が使用される。底部(フロア)値は、例えば、信号をある時間積算する、あるいは平均することにより得られる。ある期間とは、例えば、計測時間でもよいし、計測と計測の合間の時間でも良い。底部(フロア)値は、環境光の強さに該当する。
これにより、SATは、対象物の類似・同一性を高い確度で判別でき、異なる対象物からの信号、すなわちノイズを除外して、信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)を高めることが出来る。また、SATは、画素PXのダイナミックレンジを実効的に高めることが出来る。以下で説明される画素PXは、高解像を実現することが可能である。一方で、画素PXは、ダイナミックレンジが低くなる傾向を有する。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、SATを利用することによって、高解像を維持しつつ、ダイナミックレンジの問題を緩和している。
[1-2]画素アレイ32の詳細な構成
図14は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32の構成の一例を示すブロック図であり、1つの画素PXに関連付けられた構成要素を表示している。図14に示すように、画素アレイ32は、カラム(列)選択線CSL(n,m)と、ロウ(行)選択線RSL(m)と、画素PX(n,m)とを含む。“n”及び“m”は、それぞれカラムアドレスCA及びロウアドレスRAを示している。“n”、“m”のそれぞれは、1以上の整数である。1つの画素PXは、カラムアドレスCAとロウアドレスRAとの組によって特定され得る。
カラム選択線CSL(n,m)は、画素PX(n,m)に接続され、画素PX(n,m)に対してカラム選択信号を転送するための配線である。画素アレイ32では、例えば画素PX毎に、カラム選択線CSLが設けられる。
ロウ選択線RSL(m)は、同じロウアドレスRAを共有する複数の画素PXに接続され、当該画素PXに対してロウ選択信号を転送するための配線である。画素アレイ32は、例えばY方向に並んだ画素PXの数に対応して、複数のロウ選択線RSLを備えている。
各画素PXは、例えば、2つのAPDユニット51A及び51Bと、選択回路52と、シフト回路53とを含む。APDユニット51A及び51Bのそれぞれは、光の検出に使用可能なアバランシェフォトダイオードAPDを含む回路である。APDユニット51A及び51Bのそれぞれの出力は、選択回路52に入力される。
選択回路52は、カラム選択線CSL(n,m)と、ロウ選択線RSL(m)とに接続される。選択回路52は、入力されたカラム選択信号及びロウ選択信号に基づいて、画素PX(n,m)をアクティブ状態又は非アクティブ状態にする。アクティブ状態の画素PXは、受光結果を、選択回路52を介してチャネル結合部CBに出力する(“OUT”)。非アクティブ状態の画素PXは、受光結果をチャネル結合部CBに出力しない。尚、この例では、選択回路52とAPDユニット51とが分離されているが、選択回路の一部がAPDユニット51に含まれていても良い。
シフト回路53は、制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxに基づいて、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、画素PX(n,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n,m+1)、画素PX(n-1,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n-1,m+1)、又は画素PX(n+1,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n+1,m+1)に転送する。
制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxのそれぞれは、制御部10によって生成され、シフト回路53に入力される。制御信号R_Shiftxは、画素アレイ32のアクティブ領域の一部を右側(X座標の正側)にシフトさせるための信号である。制御信号L_Shiftxは、画素アレイ32のアクティブ領域の一部を左側(X座標の負側)にシフトさせるための信号である。この例では、カラム選択線CSLに対してシフト回路が適用されているが、ロウ選択線RSLに対してシフト回路によるシフト機能が適用されても良い。また、画素アレイ32が2つのシフト回路を備えることによって、カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとの両方に、シフト回路によるシフト機能が適用されても良い。
[1-2-1]APDユニット51A及び51B及び選択回路52の構成
図15は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32が備える画素PXに含まれたAPDユニット51A及び51B並びに選択回路52の回路構成の一例を示す回路図である。図15に示すように、APDユニット51Aは、例えば、アバランシェフォトダイオードAPD0、保護抵抗Rs0、ダイオードDI0、及びクエンチ抵抗Rq0を含む。APDユニット51Bは、例えば、アバランシェフォトダイオードAPD1、保護抵抗Rs1、ダイオードDI1、及びクエンチ抵抗Rq1を含む。選択回路52は、P型トランジスタPM0及びPM1を含む。また、画素PXは、ノードN0~N3を含む。
アバランシェフォトダイオードAPD0のアノードには、基板電圧Vsubが印加される。アバランシェフォトダイオードAPD0のカソードは、保護抵抗Rs0の一端に接続される。保護抵抗Rs0の他端は、ノードN0に接続される。ダイオードDI0は、整流ダイオードである。ダイオードDI0のカソードは、ノードN0に接続される。ダイオードDI0のアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rq0の一端は、ノードN0に接続される。クエンチ抵抗Rq0の他端は、ノードN3に接続される。
アバランシェフォトダイオードAPD1のアノードには、基板電圧Vsubが印加される。アバランシェフォトダイオードAPD1のカソードは、保護抵抗Rs1の一端に接続される。保護抵抗Rs1の他端は、ノードN1に接続される。ダイオードDI1は、整流ダイオードである。ダイオードDI1のカソードは、ノードN1に接続される。ダイオードDI1のアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rq1の一端は、ノードN1に接続される。クエンチ抵抗Rq1の他端は、ノードN3に接続される。
ノードN2は、定電圧ノードDOUTに接続される。定電圧ノードDOUTに印加される電圧は、通常、アバランシェフォトダイオードAPD0において電子雪崩が停止する電圧(ブレークダウン電圧)とダイオードDI0の閾値電圧Vthとの和と、アバランシェフォトダイオードAPD1において電子雪崩が停止する電圧とダイオードDI1の閾値電圧Vthとの和とのそれぞれよりも低い電圧に設定される。
P型トランジスタPM0のソースは、ノードN3に接続される。P型トランジスタPM0のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM0のゲートには、カラム選択線CSLが接続され、カラム選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のソースは、P型トランジスタPM0のドレインに接続される。P型トランジスタPM1のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM1のゲートには、ロウ選択線RSLが接続され、ロウ選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のドレインは、画素PXの出力ノードOUTに接続される。つまり、アクティブ状態の画素PXは、P型トランジスタPM1のドレインから、アバランシェフォトダイオードAPDの受光結果に相当する出力信号を出力する。
アクティブ状態の画素PXでは、アバランシェフォトダイオードAPDに、基板電圧Vsubと、クエンチ抵抗Rqを介して印加される電圧とによる、逆バイアスが印加される。逆バイアスが印加されたアバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出することが可能なSPADとして動作し得る。尚、P型トランジスタPM0及びPM1の接続順番は、逆であっても良い。この場合、アクティブ状態の画素PXでは、P型トランジスタPM0のドレインから、出力信号が出力される。クエンチ抵抗Rq0及び/或いは保護抵抗Rs1は、トランジスタの様なアクティブ素子であっても良い。画素PXは、ノードN3に接続されたN型トランジスタをさらに備えても良く、非アクティブ状態においてノードN3に蓄積されたキャリアを、当該N型トランジスタを介して放出させても良い。この場合、例えば、ノードN3に2つのN型トランジスタが並列に接続され、当該2つのN型トランジスタの他端が電位の低い電源ノードVSSに接続される。そして、当該2つのN型トランジスタのそれぞれのゲートに、それぞれカラム選択線CSLとロウ選択線RSLとが接続される。非アクティブ時には、カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとのいずれかの電圧が“H”レベルとなり、並列に接続された2つのN型トランジスタのいずれかがオン状態になる。これにより、ノードN3に不要に蓄積されたキャリアが、ノードN3に2つのN型トランジスタが接続されない場合よりも、電源ノードVSSに放出され得る。
(アバランシェフォトダイオードAPDの特性)
以下に、アバランシェフォトダイオードAPDの特性の一例について説明する。
図16は、アバランシェフォトダイオードAPDの光検出効率PDEとアバランシェフォトダイオードAPDに印加されるバイアス電圧との関係を示す波形図である。“バイアス電圧”は、アバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソード間の電圧差に対応している。図16に示すように、バイアス電圧がブレークダウン電圧Vbd以上になると、PDEが上昇し始める。そして、バイアス電圧は、アバランシェフォトダイオードAPDに光を検出させる場合に、動作電圧Vopに設定される。本明細書では、“Vop-Vbd”により算出される電圧のことを、オーバードライブ電圧Vovと呼ぶ。
図17は、アバランシェフォトダイオードAPD当りの出力電流とアバランシェフォトダイオードAPDに印加されるバイアス電圧との関係を示す波形図である。図17に示すように、バイアス電圧がブレークダウン電圧Vbd以上になると、アバランシェフォトダイオードAPD当りの出力電流が上昇し始める。そして、バイアス電圧がブレークダウン電圧Vbd以上である場合において、1フォトン受光の出力電流は、“ゲイン×電子素量”に応じて変化する。より具体的には、1フォトン受光の出力電流は、“ゲイン×電子素量×SPAD数×オーバードライブ電圧”により算出される。
尚、ブレークダウン電圧Vbdやゲインは、アバランシェフォトダイオードAPD毎にばらつき得る。同様に、最適なオーバードライブ電圧Vovは、アバランシェフォトダイオードAPD毎に異なり、距離計測装置1の測距環境によっても変化し得る。このため、オーバードライブ電圧Vovは、アバランシェフォトダイオードAPD毎に調整されることが好ましい。動作電圧Vopの変化に応じてオーバードライブ電圧Vovも変化するため、動作電圧Vopが調整されることは、オーバードライブ電圧Vovが調整されることと同義である。第1実施形態に係る距離計測装置1では、出力段33が、動作電圧Vopを調整し、アバランシェフォトダイオードAPDのゲインを調整する機能を有する。本機能に関する構成の詳細については後述する。
[1-2-2]シフト回路53の構成
図18は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32が備える画素PXに含まれたシフト回路53の回路構成の一例を示す回路図であり、カラム選択線CSL(n,m)に関連付けられたシフト回路53に注目して示している。図18に示すように、シフト回路53は、第1シフト回路531、インバータ532、第2シフト回路533、及びインバータ534を含む。また、シフト回路53は、入力端子FR(From Right)及びFL(From Left)と、出力端子TR(To Right)及びTL(To Left)と、ノードN4~N10とを含む。
第1シフト回路531は、P型トランジスタPM2及びN型トランジスタNM0を含む。P型トランジスタPM2のソースは、ノードN4に接続される。P型トランジスタPM2のドレインは、出力端子TLに接続される。画素PX(n,m)のシフト回路53の出力端子TLは、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の入力端子FRに接続される。P型トランジスタPM2のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM2のゲートは、ノードN5に接続される。N型トランジスタNM0のドレインは、ノードN4に接続される。N型トランジスタNM0のソースは、ノードN6に接続される。N型トランジスタNM0のボディは、電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM0のゲートは、ノードN5に接続される。
ノードN5には、制御信号L-Shiftxが入力される。制御信号L-Shiftxは、例えば光検出器PD内の制御部34のロウデコーダ論理回路によって生成される。第1シフト回路531は、制御信号L-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、出力端子TLを介して、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の入力端子FRに転送する。一方で、第1シフト回路531は、制御信号L-Shiftxが“H”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、ノードN6に転送する。つまり、第1シフト回路531は、光検出器PD内の制御部34による制御信号L-Shiftxの制御に基づいて、カラム制御信号を、画素PX(n-1,m)に転送する機能を有する。
ノードN6には、入力端子FRが接続される。つまり、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN6には、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の出力端子TLを介して出力されたカラム選択信号が入力され得る。具体的には、制御信号L-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n+1,m)に入力されたカラム選択信号が、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN6に入力される。
インバータ532は、P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1を含む。P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1のそれぞれのゲートは、ノードN6に接続される。P型トランジスタPM3のソース及びボディは、電源ノードVDDに接続される。N型トランジスタNM1のソース及びボディは、電源ノードVSSに接続される。P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1のそれぞれのドレインは、ノードN7に接続される。これにより、インバータ532は、ノードN6の電圧が“L”レベルである場合に、ノードN7と電源ノードVDDとの間の電流経路を形成して、ノードN7の電圧を“H”レベルに上昇させる。一方で、インバータ532は、ノードN6の電圧が“H”レベルである場合に、ノードN7と電源ノードVSSとの間の電流経路を形成して、ノードN7の電圧を“L”レベルに下降させる。
第2シフト回路533は、P型トランジスタPM4及びN型トランジスタNM2を含む。P型トランジスタPM4のソースは、ノードN7に接続される。P型トランジスタPM4のドレインは、出力端子TRに接続される。画素PX(n,m)のシフト回路53の出力端子TRは、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の入力端子FLに接続される。P型トランジスタPM4のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM4のゲートは、ノードN8に接続される。N型トランジスタNM2のドレインは、ノードN7に接続される。N型トランジスタNM2のソースは、ノードN9に接続される。N型トランジスタNM2のボディは、電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM2のゲートは、ノードN8に接続される。
ノードN8には、制御信号R-Shiftxが入力される。制御信号R-Shiftxは、例えば光検出器PD内の制御部34のロウデコーダ論理回路によって生成される。第2シフト回路533は、制御信号R-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、出力端子TRを介して、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の入力端子FLに転送する。一方で、第2シフト回路533は、制御信号R-Shiftxが“H”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、ノードN9に転送する。つまり、第2シフト回路533は、光検出器PD内の制御部34による制御信号R-Shiftxの制御に基づいて、カラム制御信号を、画素PX(n+1,m)に転送する機能を有する。
ノードN9には、入力端子FLが接続される。つまり、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN9には、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の出力端子TRを介して出力されたカラム選択信号が入力され得る。具体的には、制御信号R-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n-1,m)に入力されたカラム選択信号が、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN9に入力される。
インバータ534は、P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3を含む。P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3のそれぞれのゲートは、ノードN9に接続される。P型トランジスタPM5のソース及びボディは、電源ノードVDDに接続される。N型トランジスタNM3のソース及びボディは、電源ノードVSSに接続される。P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3のそれぞれのドレインは、ノードN10に接続される。これにより、インバータ534は、ノードN9の電圧が“L”レベルである場合に、ノードN10と電源ノードVDDとの間の電流経路を形成して、ノードN10の電圧を“H”レベルに上昇させる。一方で、インバータ534は、ノードN9の電圧が“H”レベルである場合に、ノードN10と電源ノードVSSとの間の電流経路を形成して、ノードN10の電圧を“L”レベルに下降させる。
ノードN10は、カラム選択線CSL(n,m+1)に接続される。つまり、ノードN10の電圧は、画素PX(n,m+1)に入力されるカラム選択信号に対応している。シフト回路53に入力されたカラム選択信号は、偶数個のインバータを介して次のシフト回路53に転送される。このため、シフト回路53に入力されたカラム選択信号と、当該シフト回路53によって画素PX(n-1,m+1)、PX(n,m+1)、又はPX(n+1,m+1)に転送されるカラム選択信号との論理レベルは一致する。
尚、以上で説明されたシフト回路53の回路構成は、あくまで一例である。各画素PXのシフト回路53は、入力されたカラム選択信号を、Y方向(ロウ方向)に隣り合う画素PXと、当該Y方向に隣り合う画素PXをX方向(カラム方向)に挟む2つの画素PXのそれぞれとのいずれかに転送する機能を有していれば良い。シフト回路53は、光検出器PDがアクティブ領域のシフト機能を利用しない場合に省略されても良い。例えば、制御信号L-Shiftx及びR-Shiftxとのそれぞれは、制御部10によって生成され、光検出器PD内の周辺回路でロウ毎に生成される。シフト回路53は、以上で説明された機能を実現することが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。入力端子FR及びFLと出力端子TR及びTLとのそれぞれとしては、同様の機能を有した構成が利用されていれば良く、端子であることに限定されない。
(アクティブ領域の設定)
以下に、画素アレイ32に対するアクティブ領域の設定例について説明する。
第1実施形態に係る距離計測装置1に入射する反射光L2は、出射光L1のスキャン位置と光学系31の設計とに基づいて、画素アレイ32の一部に照射される。これに対して、制御部10及び光検出器PD内の制御部34は、各画素PXを、反射光L2の照射位置に基づいて、アクティブ状態又は非アクティブ状態にする。以下では、アクティブ状態の画素PXのことを“オン画素”とも呼び、非アクティブ状態の画素PXのことを“オフ画素”とも呼ぶ。つまり、オン画素を含む領域が、画素アレイ32のアクティブ領域に対応している。アクティブ領域は、距離計測装置1の計測動作において、出射光L1毎に設定される。
アクティブ領域の設定において、制御部10は、例えば、出射光L1が出射されたタイミングのミラー25の傾きに関連付けられた画素PXのX座標及びY座標を選択する。そして、制御部10は、選択したX座標及びY座標を光検出器PDの制御部34に通知する。それから、光検出器PDの制御部34は、制御部10によって通知(選択)されたX座標及びY座標に基づいて制御レジスタCR、カラムデコーダCD、及びロウデコーダRDを制御して、画素アレイ32にアクティブ領域を設定する。制御部34は、画素PXの選択数の設定に基づいて、アクティブ領域に設定する画素PXの範囲を決定することも出来る。例えば、選択数が“3”の場合、制御部34は、画素PXのX座標からその右隣と更に右隣の、連続する3画素を選択する
アクティブ領域の設定に使用されるX座標及びY座標は、例えば、アクティブ領域の左上の画素PXの座標を示している。マルチチャネルスキャンが実行される場合、アクティブ領域は、スキャン方向と交差する方向(例えばY方向)に沿って並んだ複数のオン画素によって形成される。尚、アクティブ領域は、スキャン方向(例えばX方向)に広がりを有していても良い。アクティブ領域の位置及び形状は、少なくとも制御部10によって指定された座標に基づいて設定されていれば良い。
画素アレイ32は、アクティブ領域AA内の画素PXによる受光結果を、例えばロウアドレスRAを共有する画素PX毎に出力する。これにより、アクティブ領域外の画素PXからのノイズが、光検出器PDの受光結果から除去され、受光結果のS/N比が高くなる。また、アクティブ領域外の画素PXに対する電圧の印加が適宜省略されるため、光検出器PDの消費電力が抑制される。
また、第1実施形態に係る距離計測装置1において、光検出器PDは、シフト回路53によってアクティブ領域の形状を変更することが出来る。以下に、マルチチャネルラスタスキャンにおいて、シフト回路53によるシフト機能が利用される場合のアクティブ領域の設定例について説明する。
図19は、第1実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32のアクティブ領域の設定の一例を示す平面図であり、シフト機能が利用される場合のアクティブ領域の設定を例示している。また、図19は、画素アレイ32内で、カラムアドレスCAに関連付けられたX座標“0”~“7”と、ロウアドレスRAに関連付けられたY座標“0”~“3”とに対応する部分を表示している。選択された画素PXは、太線で囲われている。オン画素には、ハッチングが付加されている。
図19に示すように、座標(2(X座標),0(Y座標))が選択された場合、画素アレイ32は、選択された画素PXを基準として、ロウ方向(Y方向)に沿った複数の画素PXをオン画素に設定し、本例では、アクティブ領域を右側(X座標の正側)にシフトさせる。具体的には、画素アレイ32が、座標(2,0)の画素PXが選択されたことに基づいて、座標(3,1)の画素PXと、座標(4,2)の画素PXと、座標(5,3)の画素PXとのそれぞれをオン画素に設定し、その他の画素PXをオフ画素に設定する。つまり、座標(2,0)、(3,1)、(4,2)及び(5,3)のそれぞれの画素PXによって、アクティブ領域が形成される。そして、座標(2,0)、(3,1)、(4,2)及び(5,3)のそれぞれの画素PXが、個別に受光結果を出力する。
アクティブ領域を右側(X座標の正側)にシフトさせる場合、制御部34は、例えば、制御信号L_Shiftxを“H”レベルにして、制御信号R_Shiftxを“L”レベルにする。すると、例えば画素PX(n,m)のシフト回路53は、入力されたカラム選択信号を、画素PX(n+1,m+1)に転送する。その結果、選択された画素PXを基準として、下側で隣り合うオン画素が右側に1画素ずつシフトされたアクティブ領域が設定される。アクティブ領域を左側(X座標の負側)にシフトさせる場合の動作は、シフト方向が逆である点を除いて、アクティブ領域を右側にシフトさせる場合の動作と同様である。
尚、制御部10及び34は、スキャン位置に応じてシフト機能を適宜使用することが出来る。選択された座標を基準としてオン画素に設定される画素PXの数は、X方向とY方向とのそれぞれにおいて自由に設定され得る。シフト回路53によるアクティブ領域のシフト機能は、X方向に並んだ複数の画素PXがアクティブ状態に設定される場合についても同様に使用され得る。アクティブ領域において、Y方向に沿って形成されるオン画素の数は、通常、チャネル数に一致する、或いは、チャネル数よりも少なく設定される。
[1-3]出力段33の詳細な構成
図20は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力段33に含まれた出力回路OCの構成の一例を示すブロック図である。図20に示すように、出力回路OCは、例えば、電圧降下回路60、及び電流源61を含む。
電圧降下回路60は、ノードN_CHに入力された信号に基づいた信号を、電流源61に入力する。電圧降下回路60は、選択信号SEL1~SEL4に応じて、ノードN_CHの電圧を降下させる機能を有する。電圧降下回路60は、ノードN_CHの電圧を調整することによって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される動作電圧Vopを調整し得る。すなわち、電圧降下回路60は、アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDに印加されるオーバードライブ電圧Vovを調整し得る。
電流源61は、カレントミラー回路(CM)を備えている。電流源61が備えるカレントミラー回路の段数は、ノードN_CHに入力される電流の向きに応じて設計される。電流源61は、電源ノードVDDと電源ノードVSS2とのそれぞれに接続される。電源ノードVSS2に印加される電圧は、例えば、VDDとVSSとの間の電圧である。電源ノードVSS2は、低電位ノードと呼ばれても良い。例えば、電流源61は、入力された電流を3倍弱増幅し得る。
[1-3-1]電圧降下回路60の構成
図21は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCが備える電圧降下回路60の回路構成の一例を示す回路図である。図21に示すように、電圧降下回路60は、P型トランジスタPM20~PM29と、抵抗器R3と、キャパシタCPと、ノードN20~N26とを含む。
ノードN_CHは、ノードN20に接続される。抵抗器R3の一端は、ノードN20に接続される。抵抗器R3の他端は、電源ノードVSSLOWに接続される。電源ノードVSSLOWには、例えば、VSSと同じかVSSよりも低い電圧が印加される。抵抗器R3は、高抵抗の素子であり、ノードN20から電源ノードVSSLOWに向かって、常時微小な電流を供給する。これにより、電圧降下回路60は、常に、オーバードライブ電圧Vovを降下させ得る。電圧降下回路60は、抵抗器R3が設けられることによって、アバランシェフォトダイオードAPDの動作が無い状況におけるノードN_CHの電位を安定化させ、選択信号SEL1~SEL4による設定電圧を正しくノードN_CHに反映させることが出来る。抵抗器R3の替わりに、トランジスタが利用されても良い。
P型トランジスタPM20のソース及びゲートは、ノードN20に接続される。P型トランジスタPM20のドレインは、ノードN21に接続される。P型トランジスタPM21のソース及びゲートは、ノードN20に接続される。P型トランジスタPM21のドレインは、ノードN22に接続される。P型トランジスタPM22のソース及びゲートは、ノードN22に接続される。P型トランジスタPM22のドレインは、ノードN23に接続される。P型トランジスタPM23のソース及びゲートは、ノードN23に接続される。P型トランジスタPM23のドレインは、ノードN24に接続される。P型トランジスタPM24のソース及びゲートは、ノードN24に接続される。P型トランジスタPM24のドレインは、ノードN25に接続される。P型トランジスタPM25のソース及びゲートは、ノードN25に接続される。P型トランジスタPM25のドレインは、ノードN26に接続される。
P型トランジスタPM26のソース及びドレインは、それぞれノードN20及びN27に接続される。P型トランジスタPM27のソース及びドレインは、それぞれノードN22及びN27に接続される。P型トランジスタPM28のソース及びドレインは、それぞれノードN24及びN27に接続される。P型トランジスタPM29のソース及びドレインは、それぞれノードN26及びN27に接続される。P型トランジスタPM26、PM27、PM28、及びPM29のそれぞれのゲートには、それぞれ選択信号SEL1、SEL2、SEL3、及びSEL4が入力される。キャパシタCPの一方電極及び他方電極は、それぞれノードN20及びN27に接続される。ノードN27は、電圧降下回路60の出力ノードVDOUTに接続される。
選択信号SEL1~SEL4は、例えば制御部10によって生成される。制御部10は、距離の計測時において、選択信号SEL1~SEL4のいずれかを選択し、P型トランジスタPM26~PM29のうち1つのP型トランジスタPMをオン状態にして、その他のP型トランジスタPMをオフ状態にする。言い換えると、制御部10は、距離の計測時において、選択信号SEL1~SEL4のうち、選択した選択信号SELを“L”レベルにして、その他の選択信号SELを“H”レベルにする。以下の説明では、“選択信号SELが選択されること”は、当該選択信号SELが“L”レベルに設定されることに対応している。
P型トランジスタPM26がオン状態に設定された場合、P型トランジスタPM26(すなわち1つのトランジスタ)を介した電流が、ノードN20及びN27の間を流れる。P型トランジスタPM27がオン状態に設定された場合、P型トランジスタPM20、PM21、及びPM27(すなわち3つのトランジスタ)を介した電流が、ノードN20及びN27の間を流れる。P型トランジスタPM28がオン状態に設定された場合、P型トランジスタPM20~PM23、及びPM28(すなわち5つのトランジスタ)を介した電流が、ノードN20及びN27の間を流れる。P型トランジスタPM29がオン状態に設定された場合、P型トランジスタPM20~PM25、及びPM29(すなわち7つのトランジスタ)を介した電流が、ノードN20及びN27の間を流れる。
このように、制御部10は、ノードN20及びN27の間を流れる電流が通過するトランジスタの数(段数)を、選択信号SEL1~SEL4のいずれかを“L”レベルに制御することによって切り替えることが出来る。その結果、電圧降下回路60は、P型トランジスタPMの閾値電圧に基づいた電圧降下によって、ノードN27の電圧、すなわち出力ノードVDOUTの電圧の降下量を変更し得る。本例では、選択信号SELの末尾に付与された番号が大きいほど、電流が通過するトランジスタの段数が多い、すなわち電圧降下量が大きくなるように設定されている。
尚、図示が省略されているが、P型トランジスタPM20~PM29のそれぞれのバックゲートには、電源ノードVDD2が接続される。電源ノードVDD2は、例えば固定される。一方で、電源ノードVDD2がフローティングである場合には、各P型トランジスタPMの出力電流が、電源ノードVDD2の電圧が固定される場合よりも多くなり得る。電圧降下回路60の面積は、電圧の降下に使用される一部のP型トランジスタPMが、複数の電圧降下経路間で共有されることによって抑制され得る。
また、出力ノードVDOUTの電圧の降下量の調整には、トランジスタの替わりにダイオードが使用されても良い。選択信号SELが入力されるトランジスタは、N型トランジスタであっても良い。この場合に、制御部10は、距離の計測時において、選択信号SEL1~SEL4のうち、いずれかの選択信号SELを“H”レベルにして、その他の選択信号SELを“L”レベルにする。電圧降下に使用されるトランジスタの段数は、以上で説明された数に限定されない。電圧降下量の調整量は、一定でなくても良い。使用される選択信号SELの種類は、電圧降下回路60の構成に応じて適宜変更され得る。
制御部10は、例えば、光検出器PDの出力の大きさ(すなわち、出力回路OCの出力の大きさ)に応じて、選択信号SEL1~SEL4のうちいずれかを選択する。例えば、計測部40は、光検出器PDの出力に基づいた信号を時間的に積算し、積算結果を制御部10に通知する。すると、制御部10が、積算結果、すなわち光検出器PDの出力の大きさに応じて、選択信号SELを選択する。例えば、光検出器PDの出力が大きい場合に、光検出器PDの出力が小さくなるように選択信号SELを選択し、光検出器PDの出力が小さい場合に、光検出器PDの出力が大きくなるように選択信号SELを選択する。これに限定されず、制御部10は、少なくとも光検出器PDの出力の大きさに応じて、選択信号SELを選択していれば良い。また、制御部10は、光検出器PDの出力に基づいた選択信号SELの選択を、例えば次の反射光L2の計測時に適用する。つまり、第1実施形態に係る距離計測装置1は、距離を計測する際に、反射光L2毎にバイアス電圧(すなわオーバードライブ電圧Vov)を可変に制御し得る。
図22は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCが備える電圧降下回路60の出力信号の一例を示す波形図であり、選択信号SEL1~SEL4のいずれかが選択された状態でアバランシェフォトダイオードAPDが光を検出した場合の波形を例示している。図示されたSiPM印加電圧は、ノードN_CHの電圧に基づいて、アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDに印加された電圧を示している。図22に示すように、選択された選択信号SELに応じて、SiPM印加電圧と、オーバードライブ電圧Vovとのそれぞれが変化している。
選択信号SEL1が選択された場合、SiPM印加電圧の降下量が0.7Vになり、Vov=6.3Vになる。選択信号SEL2が選択された場合、SiPM印加電圧の降下量が2.0Vになり、Vov=5Vになる。選択信号SEL3が選択された場合、SiPM印加電圧の降下量が3.7Vになり、Vov=3.3Vになる。選択信号SEL4が選択された場合、SiPM印加電圧の降下量が6.1Vになり、Vov=0.9Vになる。このように、制御部10は、選択信号SEL1~SEL4を適宜選択する(切り替える)ことによって、オーバードライブ電圧Vovを調整することが出来る。例えば、選択信号SEL4が選択された場合のオーバードライブ電圧Vovは、選択信号SEL1が選択された場合のオーバードライブ電圧Vovの1/6以下になる。
図23は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40に含まれた信号処理回路41の出力信号の一例を示す波形図であり、選択信号SEL1~SEL4のいずれかが選択された状態でアバランシェフォトダイオードAPDが光を検出した場合の波形を例示している。図示されたTIA電流は、信号処理回路41に入力される電流を例示している。図23に示すように、選択された選択信号SELに応じて、光が検出された際のTIA電流の下降量が変化している。TIA電流の下降量は、選択信号SEL1が選択された場合よりも選択信号SEL2が選択された場合の方が小さく、選択信号SEL2が選択された場合よりも選択信号SEL3が選択された場合の方が小さく、選択信号SEL3が選択された場合よりも選択信号SEL4が選択された場合の方が小さい。すなわち、TIA電流の下降量(すなわち、信号処理回路41によって処理されたアバランシェフォトダイオードAPDの出力電流の大きさ)は、オーバードライブ電圧Vovが大きいほど大きくなっている。
図24は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCが備える電圧降下回路60の出力信号の一例を示す波形図であり、キャパシタCPの有無による波形の変化を例示している。図24の(A)は、電圧降下回路60からキャパシタCPが省略された場合の出力ノードVDOUTの電圧を示している。図24の(B)は、電圧降下回路60がキャパシタCPを備える場合の出力ノードVDOUTの電圧を示している。図24の(A)及び(B)に示すように、トランジスタの段数が多い場合の出力の減衰量は、キャパシタCPが有る場合よりもキャパシタCPが無い場合の方が大きくなっており、SiPMの特徴である、鋭いパルス状の電流が目立たなくなっている。つまり、4つの電圧降下経路に並列に接続されたキャパシタCPは、トランジスタの段数が多い場合における電圧降下回路60の出力の減衰を抑制することが出来、電圧降下回路60の応答を高速化させることが出来る。
[1-3-2]電流源61の構成
図25は、第1実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCが備える電流源61の回路構成の一例を示す回路図である。図25に示すように、電流源61は、2つのカレントミラー回路(つまり、2段のカレントミラー回路)によって増幅した電流を、出力チャネルOUT_CHに出力する。具体的には、電流源61は、例えば、P型トランジスタPM30及びPM31と、N型トランジスタNM30及びNM31と、ノードN30及びN31とを含む。
P型トランジスタPM30及びPM31は、出力ノードVDOUTに入力された電流を増幅するP型のカレントミラー回路として機能する。具体的には、P型トランジスタPM30のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN30に接続される。P型トランジスタPM31のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN31に接続される。P型トランジスタPM30及びPM31のそれぞれのゲートは、ノードN30に接続される。ノードN30は、出力ノードVDOUT、すなわち電圧降下回路60の出力に接続される。そして、P型トランジスタPM31のサイズ(ゲート幅)は、P型トランジスタPM30よりも大きく設計される。例えば、P型トランジスタPM31のゲート幅は、P型トランジスタPM30のゲート幅の2倍に設計される。
N型トランジスタNM30及びNM31は、ノードN31に入力された電流を増幅するN型のカレントミラー回路として機能する。具体的には、N型トランジスタNM30のドレイン及びソースは、それぞれノードN31及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM31のドレイン及びソースは、それぞれ出力チャネルOUT_CH及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM30及びNM31のそれぞれのゲートは、ノードN31に接続される。そして、N型トランジスタNM31のサイズ(ゲート幅)は、N型トランジスタNM30よりも大きく設計される。例えば、N型トランジスタNM31のゲート幅は、N型トランジスタNM30のゲート幅の2倍に設定する。
[1-4]第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る距離計測装置1に依れば、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。以下に、第1実施形態の効果の詳細について説明する。
距離計測システムの一種であるLIDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物から反射された反射光の強度をセンサで感知し、センサの出力を時系列のデジタル信号に変換する。そして、LIDARと計測対象物との間の距離が、例えばレーザが発光してから感知した反射光のピークまでの時間差に基づいて計算される。LIDARの計測データは、例えば車両の制御に使用することが想定されるため、遠距離の物体を高解像で検出可能であることと、高い精度が求められている。
LIDARを安価に製造するためには、可能な限り簡素な構成であることが好ましい。コストを抑制する方法としては、非同軸光学系と2Dセンサとの組み合わせにより、光学系のコストを抑制することが考えられる。しかしながら、2Dセンサでは、受光領域のレイアウトの都合上、1つの画素PXに使用可能なSPADの数が1Dセンサよりも少なく設計される傾向がある。同軸光学系と1D_SiPMとの組合せの場合、距離計測装置に入射する光は、スキャンの方向に関わらず、常に1D_SiPMに集光される。これに対し、非同軸光学系と2Dセンサとの組み合わせの場合、光は、スキャンの方向(計測)毎に違う領域に照射される。光が計測毎に異なる画素に集光され、且つ1つの画素PXに使用可能なSPADの数が2Dセンサも同じであると仮定した場合には、2Dセンサのサイズは、1Dセンサのサイズの、計測数(1フレーム当りの)倍必要になる。通常、このサイズは現実的でないため、2Dセンサの設計上では、1つの画素PXに使用可能なSPADの数を出来るだけ少なくして、センサのサイズを現実的なサイズに抑えることになる。従って、2Dセンサの、1つの画素PXに使用可能なSPADの数は、1Dセンサのそれより相当に少なく、例えば、1/10くらいになる。
図26は、1D_SiPMと2D_SiPMとの特性の違いを説明するための波形図である。図26において、横軸は単位時間当たりの受光フォトン数に対応し、縦軸はSiPMの出力電流に対応している。また、1D_SiPMが備えるSPADの数が、2D_SiPMが備えるSPADの数よりも多い場合のシミュレーション結果が例示されている。図26に示された(1)及び(2)のそれぞれは環境光の大きさを示し、環境光の大きさは(1)よりも(2)の方が大きい。図26に示すように、2D_SiPMのダイナミックレンジは、1D_SiPMのダイナミックレンジよりも狭い。また、検出可能な信号出力は、各環境光の状態において、2D_SiPMよりも1D_SiPMの方が大きい。
1D_SiPMでは、環境光の大きさが(1)及び(2)のいずれである場合でも、検出可能な信号出力を大きく得ることが出来る。一方で、2D_SiPMでは、環境光の影響が大きい。例えば、2D_SiPMは、環境光の大きさが(1)である場合に必要なダイナミックレンジが確保できていても、環境光の大きさが(2)である場合にダイナミックレンジが不足し得る。ダイナミックレンジの不足によりpile up(信号の飽和)が発生すると、反射光L2の検出が困難になる。光検出器のダイナミックレンジを改善させる手段としては、バイアス電圧を下げることが考えられる。しかしながら、光検出器内でバイアス電圧を一律で下げた場合、光検出器の全体の光検出性能が低下してしまう。
そこで、第1実施形態に係る距離計測装置1は、画素アレイ32に配置された複数の画素PXから選択的に画素PXをアクティブ状態に設定することが可能な光検出器PDを備える。そして、光検出器PDの出力段33が、オーバードライブ電圧Vovを可変させることが可能な機構(電圧降下回路60)を備えている。さらに、距離計測装置1は、光検出器PDの出力(出力段33の出力チャネルOUT_CHの電圧変化)に基づいて、次の計測で使用されるオーバードライブ電圧Vovを変更可能に構成される。距離計測装置1は、電圧降下回路60によって、オーバードライブ電圧Vovを瞬時に(例えば1nm未満)に大きく変化させることが出来る。このようなオーバードライブ電圧Vovの変化は、外部電源を用いることでは実現不可能である。
これにより、最適なバイアス電圧が、画素PX毎及び計測毎に設定され得る。例えば、距離計測装置1は、光検出器PDの出力が大きくなった場合に、オーバードライブ電圧Vovが小さくなるように制御する。すると、アバランシェフォトダイオードAPDの出力電流が下がるため、ダイナミックレンジの不足(すなわち、pile upの発生)が抑制される。一方で、距離計測装置1は、光検出器PDの出力が小さくなった場合に、オーバードライブ電圧Vovが大きくなるように制御する。すると、アバランシェフォトダイオードAPDの出力電流が上がるため、光検出器PDの感度(光検出性能)が改善する。
言い換えると、従来では、環境光が強い場合に、光検出器PDの出力電流が図26の(2)の様になり、pile-upにより反射光の検出が難しくなる。一方で、第1実施形態に係る光検出器PDでは、光検出器PDの出力の平均値の増加に伴い、オーバードライブ電圧Vovが下げられる。その結果、第1実施形態に係る光検出器PDは、光検出器PDの出力のpile-upの発生を抑制し、反射光を検出することが可能な状態を維持することが出来る。第1実施形態に係る光検出器PDは、電圧降下回路60を用いることによって、オーバードライブ電圧Vovを大きくすること、例えば、一桁小さくすることが可能である。また、第1実施形態に係る光検出器PDは、電圧降下回路60が備えるトランジスタやダイオードの閾値により、オーバードライブ電圧Vovの降下量が決定されるため、安定的な動作を実現し得る。
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、環境光の状態に応じてオーバードライブ電圧Vovを適宜調整することによって、光検出性能の低下を抑制し、且つ実効的なダイナミックレンジを改善させることが出来る。言い換えると、第1実施形態に係る距離計測装置1は、ハイダイナミックレンジ(HDR)を実現することが出来、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。尚、オーバードライブ電圧Vovを変更する構成(電圧降下回路60)は、出力段33に設けられるため、第1実施形態は、画素PXに特別な回路が設けられることなく実現され得る。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、低コストで実現され、且つ、光に対する感度低下もなく、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。
[1-5]第1実施形態の変形例
第1実施形態で説明された電流源61は、その他の回路構成であっても良い。
アバランシェフォトダイオードAPDは、第1実施形態にて示したバイアス電圧の大きな変化や、素子が元々保持している特性の違いやばらつきにより、出力電流の大きさが変化し得る。光検出器の検出結果に基づいて距離の計測処理を実行する計測ICは、定電圧下での利用が想定され、微細なプロセスを用いて作製されるため、入力電流の調整幅が小さく設計されることが多い。このため、光検出器の出力電流が小さくなることは、光検出器により検出された反射光L2のS/N比の劣化に繋がり得る。例えば、オーバードライブ電圧Vovの一桁程度の変化による電流変化や、画素サイズの縮小に伴うSiPMのゲインの減少等による影響は、計測ICによる入力電流の調整機能では対処しきれない。
そこで、第1実施形態の変形例では、電流源61が、出力電流を可変させることが可能な構成を有する。以下に、第1実施形態の出力回路OCが備える電流源61の変形例として、第1実施形態の第1変形例及び第2変形例について説明する。
(第1実施形態の第1変形例)
図27は、第1実施形態の第1変形例における電流源61aの回路構成を示す回路図である。図27に示すように、第1実施形態の第1変形例における電流源61aは、第1実施形態の電流源61に対して、N型トランジスタNM32及びNM33が追加された構成を有する。
N型トランジスタNM32は、ノードN31とN型トランジスタNM30との間に接続される。具体的には、N型トランジスタNM32のドレイン及びソースは、それぞれノードN31と、N型トランジスタNM30のドレインとに接続される。N型トランジスタNM33は、ノードN32とN型トランジスタNM31との間に接続される。具体的には、N型トランジスタNM33のドレイン及びソースは、それぞれノードN32と、N型トランジスタNM31のドレインとに接続される。N型トランジスタNM32及びNM33のそれぞれのゲートには、電圧VN3が入力される。電圧VN3は、例えば、制御部34によって制御される電圧であり、距離計測装置1の動作環境に応じて調整され得る。電圧VN3の大きさの調整には、例えばDAC(Digital to Analog Converter)が使用される。
このように、第1実施形態の第1変形例における電流源61aは、N型トランジスタNM32及びNM33のそれぞれのゲート電圧(VN3)の制御に応じて、出力電流の大きさを変更することが出来る。具体的には、制御部34は、電圧VN3を高く調整することによって、出力チャネルOUT_CHの出力電流を大きくすることが出来る。例えば、制御部10は、出力回路OCからの出力電流が小さい場合に、VN3を上昇させることによって、出力電流を大きくする。
第1実施形態で説明された様に、オーバードライブ電圧Vovは、適宜変更され得る。例えば、ある画素PXについてオーバードライブ電圧Vovが小さく調整された場合、SPAD(アバランシェフォトダイオードAPD)のゲインが低下し、その出力電流も減少する。そして、同時にアバランシェ確率及びPDEも低下するため、SiPM(画素PX)の全体の出力電流がさらに減少する。この場合、その画素PXの出力電流が、他の画素PXと比べて少なくなり、他の画素PXと比較することが困難になる。
そこで、第1実施形態の第1変形例における電流源61では、制御部34がゲート電圧(VN3)を制御することによって、出力電流が減少した画素PXの出力電流を増やして補償し、他の画素PXと比較できる様にする。尚、電流の大きさには、後段の計測部40に応じて適正な範囲が有り、制御部34は、各画素PXの出力電流が適正な範囲になる様に、電圧VN3の大きさを調整する。その結果、電流源61aは、検出された反射光L2のS/N比を改善させることが出来る。また、電流源61aは、2D_SiPMでサイズの小さいSPADが使用された場合においても、ゲインを大きくすることが出来るため、1D_SiPMのゲインに近づけることが出来る。
(第1実施形態の第2変形例)
図28は、第1実施形態の第2変形例における電流源61bの回路構成を示す回路図である。図28に示すように、第1実施形態の第2変形例における電流源61bは、第1実施形態の第1変形例の電流源61aに対して、P型トランジスタPM32と、N型トランジスタNM34~NM37と、ノードN33とが追加された構成を有する。
P型トランジスタPM32のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN33に接続される。P型トランジスタPM32のゲートは、ノードN30に接続される。N型トランジスタNM34のドレイン及びゲートは、ノードN33に接続される。N型トランジスタNM33のソースは、電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM35のドレイン、ソース及びゲートは、それぞれノードN32、電源ノードVSS、及びノードN33に接続される。N型トランジスタNM36は、ノードN33とN型トランジスタNM34との間に接続される。具体的には、N型トランジスタNM36のドレイン及びソースは、それぞれノードN33と、N型トランジスタNM34のドレインとに接続される。N型トランジスタNM37は、ノードN32とN型トランジスタNM35との間に接続される。具体的には、N型トランジスタNM37のドレイン及びソースは、それぞれノードN32と、N型トランジスタNM35のドレインとに接続される。N型トランジスタNM36及びNM37のそれぞれのゲートには、電圧VN4が入力される。電圧VN4は、例えば、制御部34によって制御される電圧であり、距離計測装置1の動作環境に応じて調整され得る。
例えば、電圧VN3が“H”レベルに設定されると、N型トランジスタNM31の電流が出力チャネルOUT_CHに寄与し、電圧VN3が“L”レベルに設定されると、N型トランジスタNM31の電流が出力チャネルOUT_CHに寄与しなくなる。電圧VN3及びVN4の両方が“H”レベルに設定された場合、電圧VN3のみが“H”レベルに設定された場合のおよそ倍の電流が、出力チャネルOUT_CHに流れる。言い換えると、電流源61bでは、2つのカレントミラー回路(出力回路)の出力が並列に接続されており、電流源61bの出力電流が2段階で調整され得る。例えば、4個の出力回路が並列に接続された場合には、電流源61bの出力電流が4段階で調整され得る。電流源61bが備える出力回路の数は、要求される出力電流の調整の段階数に応じて適宜設計される。
以上で説明されたように第1実施形態の第2変形例における電流源61bは、カレントミラー回路に挿入されたN型トランジスタ(NM32及びNM35)を選択的にオン状態にすることによって、出力電流の大きさを変更することが出来る。言い換えると、電流源61bは、出力段のトランジスタを複数備え、当該出力段のトランジスタが選択されることによって出力電流の大きさを変更することが出来る。また、制御部34は、N型トランジスタNM32及びNM35のそれぞれのゲート電圧を、DAC等によって微調整し得る。そして、第1実施形態の第2変形例における電流源61bは、出力電流の調整に使用されるトランジスタの数が第1実施形態の第1変形例よりも多いため、第1実施形態の第1変形例よりも細かく出力電流の大きさを調整し得る。
その結果、第1実施形態の第2変形例における電流源61bは、電流源61bの出力電流の大きさを、第1実施形態の変形例における電流源61aよりも適切な大きさに調整することが出来、第1実施形態の第1変形例に記したように、オーバードライブ電圧Vovの変化に対する出力電流の補償を可能とし、検出された反射光L2のS/N比を改善させることが出来る。
尚、電流源61bでは、電圧VN3及びVN4のそれぞれに中間電位が使用されても良い。この中間電位は、N型トランジスタがオン状態になり、且つ上述された“H”レベルの電圧よりも低い電圧に相当する。電圧VN3及びVN4のそれぞれに中間電位が利用されることによって、出力回路の並列数を増やさない場合においても、電流源61bの出力電流を多段階に調整することが可能になる。電圧VN3及びVN4のそれぞれの中間電位の調整には、例えばDACが使用される。
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と異なる構成の出力段33によって、光検出器PDの特性を改善させる構成を有する。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
[2-1]出力段33の構成
図29は、第2実施形態に係る距離計測装置1における出力段33が備える出力回路OCaの構成の一例を示すブロック図である。図29に示すように、出力回路OCaは、電圧降下回路60、電流源61c、及び入力段62を含む。
出力回路OCaにおいて、電圧降下回路60の出力は、入力段62に入力される。入力段62は、電流源61cと、電源ノードVSS2との間に接続される。入力段62は、N型MOSトランジスタを利用したゲート接地回路である(Gate接地)。このような入力段62は、低インピーダンスに構成され得る。電流源61cは、入力段62から入力された信号を増幅して、出力チャネルOUT_CHに出力する。
(電流源61c及び入力段62の構成)
図30は、第2実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCaが備える電流源61c及び入力段62の回路構成の一例を示す回路図である。図30に示すように、電流源61cは、第1実施形態の第1変形例の電流源61aに対して、P型トランジスタPM40及びPM41が追加された構成を有する。入力段62は、N型トランジスタNM40及びNM41とノードN40とを含む。
P型トランジスタPM40は、P型トランジスタPM30とノードN30との間に接続される。具体的には、P型トランジスタPM40のソース及びドレインは、それぞれP型トランジスタPM30のドレインとノードN30とに接続される。P型トランジスタPM41は、P型トランジスタPM31とノードN31との間に接続される。具体的には、P型トランジスタPM41のソース及びドレインは、それぞれP型トランジスタPM31のドレインとノードN31とに接続される。P型トランジスタPM40及びPM41のそれぞれのゲートには、電圧VP2が印加される。
N型トランジスタNM40のドレイン及びソースは、それぞれノードN30及びN40に接続される。N型トランジスタNM40のゲートには、電圧VN5が印加される。電圧VN5は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜定められる(キャリブレーションがなされる)。電圧VN5は、比較的低い値であることが好ましい。例えば、電圧VN5は、VDDとVSSの真ん中の値よりも低く、VP2より若干高い。N型トランジスタNM41のドレイン及びソースは、それぞれノードN40及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM41のゲートには、電圧VN6が印加される。電圧VN6は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜定められる(キャリブレーションがなされる)。電圧VN6は、比較的低い値であることが好ましい。例えば、電圧VN6は、VN5と同程度か、VN5より若干高い。ノードN40は、出力ノードVDOUTに接続される。すなわち、電圧降下回路60の出力が、ノードN40に入力される。第2実施形態に係る距離計測装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
[2-2]第2実施形態の効果
以上で説明された第2実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様に、オーバードライブ電圧Vovを調整することが出来、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。さらに、第2実施形態に係る距離計測装置1では、出力回路OCaが、電圧降下回路60からの出力信号が入力される入力段62を備えている。そして、入力段62が、ゲート接地で使用され、高い相互コンダクタンスgmを有するN型トランジスタを備えている。このため、第2実施形態の出力回路OCaの入力インピーダンスは、第1実施形態の出力回路OCよりも低くなる。その結果、第2実施形態の出力回路OCaは、第1実施形態の出力回路OCよりも、出力信号の帯域の劣化を抑制することが出来、高周波の増幅に適している。
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る距離計測装置1は、第1及び第2実施形態と異なる構成の出力段33によって、光検出器PDの特性を改善させる構成を有する。以下に、第3実施形態に係る距離計測装置1について、第1及び第2実施形態と異なる点を説明する。
[3-1]出力段33の構成
図31は、第3実施形態に係る距離計測装置1における出力段33に含まれた出力回路OCbの構成の一例を示すブロック図である。図31に示すように、出力回路OCbは、電圧降下回路60、電流源61c、及び入力段62を含む。
出力回路OCbにおいて、画素アレイ32のノードN_CHに入力された信号は、入力段62に入力される。出力回路OCbにおいて、電圧降下回路60は、入力段62と電源ノードVSS2との間に接続される。具体的には、図示が省略されているが、電圧降下回路60の入力ノード(ノードN20)は、入力段62に含まれたN型トランジスタNM41のソースに接続される。電流源61cは、入力段62から入力された信号を増幅して、出力チャネルOUT_CHに出力する。第3実施形態に係る距離計測装置1のその他の構成は、第2実施形態と同様である。
[3-2]第3実施形態の効果
以上で説明されたように、第3実施形態に係る距離計測装置1における電圧降下回路60は、入力段62を介して、出力チャネルOUT_CHの電圧を下降させる機能を有する。このように、電圧降下回路60の接続順序が変更された場合においても、第3実施形態における出力回路OCbは、オーバードライブ電圧Vovを調整することが出来る。その結果、第3実施形態に係る距離計測装置1は、第2実施形態と同様に、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る距離計測装置1は、第1~第3実施形態と異なる構成の出力段33によって、光検出器PDの特性を改善させる構成を有する。以下に、第4実施形態に係る距離計測装置1について、第1~第3実施形態と異なる点を説明する。
[4-1]出力段33の構成
図32は、第4実施形態に係る距離計測装置1における出力段33に含まれた出力回路OCcの構成の一例を示すブロック図である。図32に示すように、出力回路OCcは、第2実施形態の出力回路OCcに対して、電圧調整回路63が追加された構成を有する。
電圧調整回路63は、入力段62に含まれたトランジスタのゲート電圧を制御する。これにより、電圧調整回路63は、電圧降下回路60を介して、ノードN_CHの電圧、すなわちオーバードライブ電圧Vovを微調整し得る。電圧調整回路63によって調整可能なオーバードライブ電圧Vovの電圧幅は、電源電圧が3.3Vである場合、例えば最大で1.5V以上である。
(入力段62及び電圧調整回路63の構成)
図33は、第4実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCcが備える電流源61c、入力段62、及び電圧調整回路63の回路構成の一例を示す回路図である。図33に示すように、電流源61c及び入力段62の構成は、第2実施形態と同様である。電圧調整回路63は、レギュレーションアンプREG2を含む。
レギュレーションアンプREG2、出力回路OCcに入力される電圧及び電流を安定化させ、ノードN40の電圧を微調整する。具体的には、制御値DAC2とノードN40の電圧とに基づいた電圧を、出力回路OCcの入力段62に含まれたN型トランジスタNM40のゲートに入力する。言い換えると、レギュレーションアンプREG2の第1入力端に制御値DAC2が入力され、レギュレーションアンプREG2の第2入力端がノードN40に接続され、レギュレーションアンプREG2の出力端がN型トランジスタNM40のゲートに接続される。制御値DAC2は、例えば制御部34によって生成される。以下では、レギュレーションアンプREG2の第2入力端のことを、入力ノードR_INとも呼び、レギュレーションアンプREG2の出力端のことを、出力ノードR_OUTとも呼ぶ。
(レギュレーションアンプREG2の構成)
図34は、第4実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCcが備える電圧調整回路63に含まれたレギュレーションアンプREG2の回路構成の一例を示す回路図である。図34に示すように、レギュレーションアンプREG2は、例えば、P型トランジスタPM50~PM52と、N型トランジスタNM50~NM55と、ノードN50~N56とを含む。
P型トランジスタPM50のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN50に接続される。P型トランジスタPM51のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN51に接続される。P型トランジスタPM50及びPM51のそれぞれのゲートは、ノードN51に接続される。ノードN50は、出力ノードR_OUTに接続される。
N型トランジスタNM50のドレイン及びソースは、それぞれノードN50及びN52に接続される。N型トランジスタNM51のドレイン及びソースは、それぞれノードN51及びN53に接続される。N型トランジスタNM50及びNM51のそれぞれのゲートは、ノードN54に接続される。ノードN54には、電圧VN7が印加される。電圧VN7は、例えば、制御部34によって制御される電圧であり、距離計測装置1の動作環境に応じて調整され得る。 N型トランジスタNM52のドレイン及びソースは、それぞれノードN52及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM53のドレイン及びソースは、それぞれノードN53及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM52及びNM53のそれぞれのゲートは、ノードN55に接続される。ノードN55には、電圧VN8が印加される。電圧VN8は、例えば、制御部34によって制御される電圧であり、距離計測装置1の動作環境に応じて調整され得る。
N型トランジスタNM54のドレイン及びソースは、それぞれノードN56及びN53に接続される。N型トランジスタNM54のゲートには、制御値DACが入力される。制御値DACは、図33に示された制御値DAC2に対応している。N型トランジスタNM55のドレイン及びソースは、それぞれノードN56及びN52に接続される。N型トランジスタNM55のゲートは、入力ノードR_INに接続される。入力ノードR_INは、レギュレーションアンプREG2の第2入力端に対応し、ノードN40に接続される(図示せず)。
P型トランジスタPM52のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN56に接続される。P型トランジスタPM52のゲートには、電圧VP3が印加される。電圧VP3は、例えば、制御部34によって制御される電圧であり、距離計測装置1の動作環境に応じて調整され得る。第4実施形態に係る距離計測装置1のその他の構成は、第2実施形態と同様である。図11に示されたレギュレーションアンプREG1の構成は、図34に示されたレギュレーションアンプREG2の構成と同様であっても良い。
図35は、第4実施形態に係る距離計測装置1におけるレギュレーションアンプREG2の出力信号の一例を示す波形図である。図35に示すように、レギュレーションアンプREG2において、制御値DACの電圧が上昇すると、出力ノードR_OUTの電圧が上昇する。すると、出力ノードR_OUTに接続されたN型トランジスタNM40のゲート電圧も上昇し、N型トランジスタNM40の抵抗値が下がる。その結果、入力ノードR_INの電圧も上昇する。レギュレーションアンプREG2は、電源ノードVDDの電圧が3.3Vである場合、入力ノードR_INの電圧を1.5V以上変化させることが可能である。ここで、レギュレーションアンプREG2は、任意の差動アンプでも構わない。他の差動アンプがレギュレーションアンプREG2として使用される場合には、電源電圧当りの調整範囲が狭くなる傾向にある。
[4-2]第4実施形態の効果
以上で説明された第4実施形態に係る距離計測装置1では、出力回路OCcが、電圧調整回路63(レギュレーションアンプREG2)を備えている。そして、第4実施形態に係る距離計測装置1では、制御部34が、入力段62に含まれたN型トランジスタNM40のゲート電圧を、レギュレーションアンプREG2に制御させる。これにより、第4実施形態に係る光検出器PDは、ノードN40の電圧の調整範囲を第2実施形態よりも大きく且つ細かくすることが出来る。言い換えると、レギュレーションアンプREG2の出力電圧を、制御値DAC2により調整することによって、電圧降下回路60による選択信号SELの切り替えよりも、オーバードライブ電圧Vovを細かく調整することが出来る。
例えば、第2実施形態で説明されたオーバードライブ電圧Vovの電圧変化は、トランジスタあるいはダイオードの閾値電圧の単位、例えば、0.4V~0.6V単位で決定される。このため、第2実施形態に係る光検出器PDは、それより小さい量で、オーバードライブ電圧Vovを変化させることができない。一方で、第4実施形態の出力回路OCcは、第1実施形態の出力回路OCよりも微細にオーバードライブ電圧Vovを調整することが可能であるため、より適切なオーバードライブ電圧Vovを設定することが出来る。その結果、第4実施形態の出力回路OCaは、第2実施形態よりも、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。
[4-3]第4実施形態の変形例
図36は、第4実施形態の変形例における出力回路OCcが備える電流源61c、入力段62、及び電圧調整回路63aの回路構成の一例を示す回路図である。図36に示すように、第4実施形態の変形例における電圧調整回路63aは、第4実施形態の電圧調整回路63に対して、N型トランジスタNM42とレギュレーションアンプREG3とが追加された構成を有する。
N型トランジスタNM42のドレインには、制御値DAC3が入力される。制御値DAC3は、例えば制御部10によって生成される。N型トランジスタNM42のソースは、電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM42のゲートは、N型トランジスタNM41のゲートに接続される。レギュレーションアンプREG3は、制御値DAC2及びDAC3に基づいた電圧を、出力回路OCcの入力段62に含まれたN型トランジスタNM41のゲートに入力する。言い換えると、レギュレーションアンプREG3の第1入力端に制御値DAC2が入力され、レギュレーションアンプREG3の第2入力端に制御値DAC3が入力され、レギュレーションアンプREG3の出力端がN型トランジスタNM41及びNM42のそれぞれのゲートに接続される。制御値DAC3は、例えば制御部34によって生成される。
これにより、第4実施形態の変形例における電圧調整回路63aは、調整範囲を校正(キャリブレーション)及び微調整することが出来、第4実施形態の電圧調整回路63よりも適切に、オーバードライブ電圧Vovを調整することが出来る。尚、制御値DAC2及びDAC3の組み合わせは、例えば制御部34によって管理される。
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る距離計測装置1は、第1~第4実施形態と異なる構成の出力段33によって、光検出器PDの特性を改善させる構成を有する。以下に、第5実施形態に係る距離計測装置1について、第1~第4実施形態と異なる点を説明する。
[5-1]出力段33の構成
図37は、第5実施形態に係る距離計測装置1における出力段33に含まれた出力回路OCdの構成の一例を示すブロック図である。図37に示すように、出力回路OCdは、電圧降下回路60、放電回路65、及びノードN60を含む。
出力回路OCdにおいて、電圧降下回路60の出力ノードVDOUTは、ノードN60に接続される。ノードN60には、出力チャネルOUT_CHと、放電回路65とが接続される。放電回路65は、ノードN60と電源ノードVSS2との間に接続される。放電回路65は、制御部34の制御に基づいて、ノードN60の電圧を下降させ得る。すなわち、放電回路65は、電圧降下回路60を介して、ノードN_CHの電圧、すなわちオーバードライブ電圧Vovを下降させることが出来る。
(放電回路65の回路構成)
図38は、第5実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCdに含まれた放電回路65の回路構成の一例を示す回路図である。図38に示すように、放電回路65は、N型トランジスタNM60を含む。
N型トランジスタNM60のドレインは、ノードN60に接続される。N型トランジスタNM60のソースは、接地される。N型トランジスタNM60のゲートには、電圧VN9が印加される。電圧VN9は、例えば制御部10によって生成される。電圧VN9は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜調整される(キャリブレーションがなされる)。制御部34は、出力回路OCdの出力電流を減少させたい場合に、電圧VN9を高い電圧に設定する。つまり、出力回路OCdの出力電流の大きさは、電圧VN9の高さに応じて調節される。
[5-2]第5実施形態の効果
以上で説明されたように、第5実施形態に係る距離計測装置1において、出力回路OCdは、出力チャネルOUT_CHの出力電力を放出することが可能な放電回路65を備えている。その結果、第5実施形態に係る距離計測装置1は、オーバードライブ電圧Vovを調整することが出来、且つ、出力回路OCdの出力電流の量を適正に調整することが出来、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。また、出力回路OCdは、電流源61(カレントミラー回路)を有さない。このため、出力回路OCdでは、SiPMの出力電流が、出力チャネルOUT_CHに出力される。その結果、第5実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態よりも、信号の遅延や帯域の低下を抑制することが出来、省電力に動作することが出来る。
[5-3]第5実施形態の変形例
図39は、第5実施形態の変形例における出力回路OCdに含まれた放電回路65aの回路構成の一例を示す回路図である。図39に示すように、放電回路65aは、放電回路65に対して、N型トランジスタNM61が追加された構成を有する。
N型トランジスタNM61のドレインは、ノードN60に接続される。N型トランジスタNM61のソースは、接地される。N型トランジスタNM61のゲートには、電圧VN10が印加される。電圧VN10は、例えば制御部34によって生成される。電圧VN10は、VDDとVSSとの間の固定的な中間電位であり、動作環境に応じて適宜調整される(キャリブレーションがなされる)。制御部34は、出力回路OCdの出力電流を減少させたい場合に、電圧VN10を高い電圧に設定する。つまり、出力回路OCdの出力電流の大きさは、電圧VN9及びVN10のそれぞれの電圧の高さに応じて調節される。
また、制御部34は、放電回路65aに含まれたN型トランジスタNM60及びNM61を選択的にオン状態にさせることで、放電回路65によるノードN60の放電量を調整することが出来る。放電回路65が含むトランジスタの数及び種類は、自由に設計され得る。放電回路65は、ノードN60と電源ノードVSS2との間に接続された少なくとも1つのトランジスタのオンオフを制御することによって、ノードN60の電圧を下降させる機能を有していれば良い。
[6]第6実施形態
第6実施形態に係る距離計測装置1は、アバランシェフォトダイオードAPDの極性に応じた出力段33を備え、光検出器PDの特性を改善させる。以下に、第6実施形態に係る距離計測装置1について、第1~第5実施形態と異なる点を説明する。
[6-1]出力段33の構成
図40は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力段33に含まれた出力回路OCeの構成の一例を示すブロック図である。図40に示すように、出力回路OCeは、第1実施形態の出力回路OCに対して、電流源61が電流源66に置き換えられた構成を有する。
電流源66は、入力された電流の向きを反転させて出力するカレントミラー回路(CM、反転)を備えている。電流源61が備えるカレントミラー回路の段数は、電流源61に要求されるゲインの大きさに応じて設計される。電流源66は、電源ノードVDDと電源ノードVSS2とのそれぞれに接続される。電流源66は、アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの構造(すなわち、光検出器PDの構造)に応じた構造に設計される。
図41は、第6実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器PDの構造の一例を示すブロック図であり、光検出器PDにおけるアバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqの接続関係と、当該接続関係に対応するアバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例とを示している。図41の(1)及び(2)間は、アバランシェフォトダイオードAPDの構造が異なっている。以下では、図41の(1)及び(2)に示された光検出器PDの構造のことを、それぞれNonP構造及びPonN構造のアバランシェフォトダイオードAPDと呼ぶ。
図41の(1)に示されるように、NonP構造では、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードにクエンチ抵抗Rqが接続されている。そして、半導体基板SUB(Si Sub)の上に、アバランシェフォトダイオードAPDとして機能するP型半導体層PP(P+)とN型半導体層NP(N+)とが、この順番に積層されている。つまり、NonP構造では、半導体基板SUBの裏面側に、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが設けられ、半導体基板SUBの表面側に、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが設けられる。
図41の(2)に示されるように、PonN構造では、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードにクエンチ抵抗Rqが接続されている。そして、半導体基板SUB(Si Sub)の上に、アバランシェフォトダイオードAPDとして機能するN型半導体層NP(N+)とP型半導体層PP(P+)とが、この順番に積層されている。つまり、PonN構造では、半導体基板SUBの裏面側に、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが設けられ、半導体基板SUBの表面側に、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが設けられる。
以上で説明されたように、NonP構造のAPDの向きと、PonN構造のAPDの向きとは反対である。そして、NonP構造のAPDとPonN構造のAPDには、どちらも逆バイアス電圧が印加される。このため、NonP構造のAPDに流れる電流の向きと、PonN構造のAPDに流れる電流の向きも反対になる。
(第1構成例の電流源66a)
図42は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCeに含まれた第1構成例の電流源66aの回路構成を示す回路図である。図42は、NonP構造のアバランシェフォトダイオードAPDとPonN構造向けの計測部40(TIA41)との組合わせに対応して利用される電流源66の一例を示している。図42に示すように、第1の構成例の電流源66aは、P型トランジスタPM60及びPM61と、ノードN60及びN61とを含む。
P型トランジスタPM60及びPM61は、出力ノードVDOUTに入力された電流を増幅するP型のカレントミラー回路として機能する。P型トランジスタPM60のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN60に接続される。P型トランジスタPM61のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN61に接続される。P型トランジスタPM60及びPM61のそれぞれのゲートは、ノードN60に接続される。ノードN60は、出力ノードVDOUTに接続される。ノードN61は、出力チャネルOUT_CHに接続される。
これにより、電流源61aは、1つのP型のカレントミラー回路(つまり、1段のカレントミラー回路)によって増幅及び反転させた電流を、出力チャネルOUT_CHに出力する。電流源61aが使用される場合、計測部40の信号処理回路41(TIA)は、PonN構造向けに設計される。
(第2構成例の電流源66b)
図43は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCeに含まれた第2構成例の電流源66bの回路構成を示す回路図である。図43は、NonP構造のアバランシェフォトダイオードAPDとPonN構造向けの計測部40(TIA41)との組合わせに対応して利用される電流源66の一例を示している。図43に示すように、第2の構成例の電流源66bは、第1の構成例の電流源66aに対して、ノードN61と出力ノードOUT-CHとが離れ、N型トランジスタNM60及びNM61と、P型トランジスタPM62及びPM63と、ノードN62及びN63とが追加された構成を有する。
N型トランジスタNM60及びNM61は、ノードN61に入力された電流を増幅するN型のカレントミラー回路として機能する。N型トランジスタNM60のドレイン及びソースは、それぞれノードN61及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM61のドレイン及びソースは、それぞれノードN62及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM60及びNM61のそれぞれのゲートは、ノードN61に接続される。
P型トランジスタPM62及びPM63は、ノードN62に入力された電流を増幅するP型のカレントミラー回路として機能する。P型トランジスタPM62のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN62に接続される。P型トランジスタPM63のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN63に接続される。P型トランジスタPM62及びPM63のそれぞれのゲートは、ノードN62に接続される。ノードN63は、出力チャネルOUT_CHに接続される。電流源66bのその他の構成は、電流源66aと同様である。
これにより、電流源66bは、2つのP型のカレントミラー回路と1つのN型のカレントミラー回路とを含む3つのカレントミラー回路(つまり、3段のカレントミラー回路)によって増幅及び反転させた電流を、出力チャネルOUT_CHに出力する。電流源61bが使用される場合、計測部40の信号処理回路41(TIA)は、PonN構造向けに設計される。第2構成例の電流源66bは、3段のカレントミラー回路により、第1構成例の電流源66aよりも増幅能力を高めることが可能である。
(第3構成例の電流源66c)
図44は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCeに含まれた第3構成例の電流源66cの回路構成を示す回路図である。図44は、PonN構造のアバランシェフォトダイオードAPDとNonP構造向けの計測部40(TIA41)の組合わせに対応して利用される電流源66の一例を示している。図44に示すように、第3の構成例の電流源66cは、N型トランジスタNM70及びNM71と、ノードN70及びN71とを含む。
N型トランジスタNM70及びNM71は、出力ノードVDOUTに入力された電流を増幅するN型のカレントミラー回路として機能する。N型トランジスタNM70のドレイン及びソースは、それぞれノードN70及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM71のドレイン及びソースは、それぞれノードN71及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM70及びNM71のそれぞれのゲートは、ノードN70に接続される。ノードN70は、出力ノードVDOUTに接続される。ノードN71は、出力チャネルOUT_CHに接続される。
これにより、電流源61cは、1つのN型のカレントミラー回路(つまり、1段のカレントミラー回路)によって増幅及び反転させた電流を、出力チャネルOUT_CHに出力する。電流源61cが使用される場合、計測部40の信号処理回路41(TIA)は、NonP構造向けに設計される。
(第4構成例の電流源66d)
図45は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCeに含まれた第4構成例の電流源66dの回路構成を示す回路図である。図45は、PonN構造のアバランシェフォトダイオードAPDとNonP構造向けの計測部40(TIA41)の組合わせに対応して利用される電流源66の一例を示している。図45に示すように、第4の構成例の電流源66dは、第3の構成例の電流源66cに対して、ノードN71と出力ノードOUT-CHとが離れ、P型トランジスタPM70及びPM71と、N型トランジスタNM72及びNM73と、ノードN72及びN73とが追加された構成を有する。
P型トランジスタPM70及びPM71は、ノードN71に入力された電流を増幅するP型のカレントミラー回路として機能する。P型トランジスタPM70のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN71に接続される。P型トランジスタPM71のソース及びドレインは、それぞれ電源ノードVDD及びノードN72に接続される。P型トランジスタPM70及びPM71のそれぞれのゲートは、ノードN71に接続される。
N型トランジスタNM72及びNM73は、ノードN72に入力された電流を増幅するN型のカレントミラー回路として機能する。N型トランジスタNM72のドレイン及びソースは、それぞれノードN72及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM73のドレイン及びソースは、それぞれノードN73及び電源ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM72及びNM73のそれぞれのゲートは、ノードN72に接続される。ノードN73は、出力チャネルOUT_CHに接続される。電流源66dのその他の構成は、電流源66cと同様である。
これにより、電流源66dは、2つのN型のカレントミラー回路と1つのP型のカレントミラー回路とを含む3つのカレントミラー回路(つまり、3段のカレントミラー回路)によって増幅及び反転させた電流を、出力チャネルOUT_CHに出力する。電流源61dが使用される場合、計測部40の信号処理回路41(TIA)は、NonP構造向けに設計される。第4構成例の電流源66dは、3段のカレントミラー回路により、第3構成例の電流源66cよりも、増幅能力を高めることが可能である。
(第5構成例の電流源66e)
図46は、第6実施形態に係る距離計測装置1における出力回路OCeに含まれた第5構成例の電流源66eの回路構成を示す回路図である。図46は、NonP構造向けの計測部40(TIA41)とPonN構造向けの計測部40(TIA41)との両方に対応可能な電流源66の一例を示している。図46に示すように、第5の構成例の電流源66eは、第1実施形態の第1変形例で説明された電流源61aに対して、P型トランジスタPM33が追加された構成を有する。
P型トランジスタPM33は、ノードN31及びN32の間に接続される。P型トランジスタPM33がオン状態になると、ノードN31及びN32の間に電流経路が形成される。P型トランジスタPM33のゲートは、N型トランジスタNM32及びNM33のそれぞれのゲートに接続される。P型トランジスタPM33のゲートには、制御信号CSが入力される。制御信号CSは、例えば制御部34によって生成される。
制御信号CSが“H”レベルに設定された場合、N型トランジスタNM32及びNM33がオン状態になり、P型トランジスタPM33がオフ状態になる。このとき、ノードN31及びN32の間で電流経路が形成され、ノードN31及び電源ノードVSSの間の電流経路が遮断される。従って、制御信号CSが“H”レベルに設定された場合に、出力チャネルOUT_CHに出力される電流の向きは、NonP構造向けの計測部40(TIA41)に適合する。
制御信号CSが“L”レベルに設定された場合、N型トランジスタNM32及びNM33がオフ状態になり、P型トランジスタPM33がオン状態になる。このとき、ノードN32には、N型トランジスタNM30及びNM32を流れる電流に基づいて生成された、N型トランジスタNM33及びNM31を流れる電流が流れる。従って、制御信号CSが“L”レベルに設定された場合に、出力チャネルOUT_CHに出力される電流の向きは、PonN構造向けの計測部40(TIA41)に適合する。
以上で説明されたように、第5構成例の電流源66eは、制御部34の制御に応じて、NonP構造向けのTIA41とPonN構造向けのTIA41との何れかに対して選択的に適合させることが出来る。
[6-2]第6実施形態の効果
以上で説明されたように、第6実施形態における出力回路OCは、アバランシェフォトダイオードAPDの極性に応じて設計され得る。その結果、ユーザは、アバランシェフォトダイオードAPDの極性と、信号処理回路41の設計とに応じて、適切な電流源66を選択することが出来、計測ICや、顧客の要望に応じた使用範囲や、極性(電流の向き)に合わせて、出力回路OCを設計することが出来る。尚、第6実施形態では、電流源66が備えるカレントミラー回路の段数が1段又は3段である場合について例示したが、電流源66は、少なくとも奇数段のカレントミラー回路を備えていれば良い。また、第4構成例の電流源66eが利用される場合に、光検出器PDは、制御信号CSにより、NonP構造とPonN構造とのどちらの極性向けに設計された計測IC(計測部40)にも対応することが可能である。その結果、光検出器PDと計測ICとの組合せの選択肢が広がるため、光検出器PDの性能が最適化されると共に、諸々の設計工数が低減され得る。
[7]第7実施形態
第7実施形態に係る距離計測装置1は、第4実施形態で説明された出力回路OCcに含まれた電圧調整回路63の制御方法に関する。以下に、第7実施形態に係る距離計測装置1について、第4実施形態と異なる点を説明する。
[7-1]距離計測装置1の構成
図47は、第7実施形態に係る距離計測装置1の構成の一例を示す模式図である。図47に示すように、第7実施形態において、受光部30aは、光検出器PDaを備えている。光検出器PDaは、第4実施形態の光検出器PDに対して、電圧調整回路35と、記憶部36とが追加された構成を有する。第7実施形態において、計測部40a(計測IC)は、第4実施形態の計測部40に対して、補償回路44と、電圧調整回路45と、記憶部46とが追加された構成を有する。
電圧調整回路35は、出力回路OCcに出力値を補償させる機能と、オーバードライブ電圧Vovを変更させる機能とを有する。電圧調整回路35は、出力回路OCcの出力値を補償するための補償係数CV1と、オーバードライブ電圧Vovを調整するための制御値DAC2とを、出力回路OCcに供給し得る。電圧調整回路35は、光検出器PDaの制御部34の一部としてみなされても良い。
記憶部36は、調整値テーブル100を記憶する。調整値テーブル100は、距離計測装置1の動作環境(例えば環境光の大きさ)と、電圧降下回路60の選択信号SELと、レギュレーションアンプREG2に入力される制御値DAC2との関係性を示している。記憶部36は、例えば電圧調整回路35によって使用され、記憶部36に記憶されたデータが、電圧調整回路35によって参照される。
例えば、電圧調整回路35は、ノードN12の電圧をセンシングする。そして、電圧調整回路35は、センシング結果に基づいて、出力回路OCc内の電圧調整回路63を制御する。具体的には、電圧調整回路35は、センシング結果に基づいて、電圧降下回路の選択信号と制御値DAC2の電圧を決定し、オーバードライブ電圧Vovを調整する。電圧調整回路35がオーバードライブ電圧Vovを調整するタイミングは、例えば制御部10から出力されるトリガ信号TS1のタイミングに応じている。尚、電圧調整回路35は、第4実施形態の変形例のように電圧調整回路63aが複数のレギュレーションアンプREG2及びREG3を備える場合に、関連付けられた制御値DAC2及びDAC3のそれぞれを、予め設定された適切な値に調整しても良い。
計測部40aの信号処理回路41は、基本的に、第1実施形態で説明された図11に示された構成と同様である。信号処理回路41は、出力段33に含まれた出力回路OCcから出力された信号を、ノードN12で受ける。そして、信号処理回路41は、ノードN12に入力された信号を処理して、ADC42に入力する。また、第7実施形態において、レギュレーションアンプREG1は、電圧調整回路45の制御に基づいて、ノードN12の電圧を所望の電圧に変更し得る。上述されたように、レギュレーションアンプREG1によって変更されたノードN12の電圧は、光検出器PDaの電圧調整回路35によって検知され得る。
電圧調整回路45は、補償回路44にACD42の出力値を補償させる機能と、信号処理回路41のレギュレーションアンプREG1に対する制御値DAC1を変更する機能とを有する。具体的には、電圧調整回路45は、補償回路44の出力値を補償するための補償係数CV2を補償回路44に供給し、N型トランジスタNM10のゲート電圧を調整するための制御値DAC1を信号処理回路41に供給する。電圧調整回路45は、計測部40a(計測IC)の制御部としてみなされても良い。
記憶部46は、調整値テーブル100及び200を記憶する。調整値テーブル200は、距離計測装置1の動作環境(例えば環境光の大きさ)と、レギュレーションアンプREG1に入力される制御値DAC1と、補償回路44に入力される補償係数CV2との関係性を示している。記憶部46は、例えば電圧調整回路45によって使用され、記憶部46に記憶されたデータが、電圧調整回路45によって参照される。
例えば、電圧調整回路45は、ADC42から受け取ったAD変換結果、すなわちADC42の出力結果に基づいて環境光の強さを測定する。環境光の強さは、また、上述の様に、平均化回路(SAT)にて底部(フロア)値として利用される。そして、電圧調整回路45は、環境光の測定結果と、調整値テーブル100とに基づいて、レギュレーションアンプREG1の制御値DAC1を決定し、ノードN12の電圧を決定する。また、電圧調整回路45は、環境光の測定結果と、調整値テーブル200とに基づいて、補償回路44に供給する補償係数CV2を決定する。電圧調整回路45がノードN12の電圧を調整するタイミングは、例えば制御部10から出力されるトリガ信号TS2のタイミングに応じている。
以上で説明されたように、光検出器PDaの電圧調整回路35により、出力回路OCcにてオーバードライブ電圧Vovが調整されると、光検出器PDaからの出力電流が変化する。その出力電流は、第1実施形態の第1変形例で説明された様に、光検出器PDaの出力回路により補償され、さらに計測部40aにおいても追加で補償される。これらの動作の詳細については後述する。
(電圧調整回路35の構成)
図48は、第7実施形態に係る距離計測装置1が備える受光部30に含まれた電圧調整回路35の回路構成の一例を示す回路図である。図48に示すように、電圧調整回路35は、抵抗器R10~R14と、比較器110~113と、AND回路120~122と、インバータ回路130~132と、ノードN80~N86とを含む。
抵抗器R10の一端には、参照電圧VREFが印加される。参照電圧VREFは、例えば制御部10によって設定される。抵抗器R10の他端は、ノードN80に接続される。抵抗器R11の一端及び他端は、それぞれノードN80及びN81に接続される。抵抗器R12の一端及び他端は、それぞれノードN81及びN82に接続される。抵抗器R13の一端及び他端は、それぞれノードN82及びN83に接続される。抵抗器R14の一端は、ノードN83に接続される。抵抗器R14の他端は、接地される(GND)。ノードN80の電圧は、ノードN81の電圧よりも高い。ノードN81の電圧は、ノードN82の電圧よりも高い。ノードN82の電圧は、ノードN83の電圧よりも高い。
比較器110、111、112、及び113のそれぞれの第1入力端(-)には、入力電圧VINが印加される。入力電圧VINは、図47に示されたノードN12の電圧に対応している。比較器110、111、112、及び113のそれぞれの第2入力端(+)には、それぞれノードN80~N83が接続される。比較器110は、ノードN80の電圧が入力電圧VINがよりも大きい場合に“H”レベルの信号を出力し、ノードN80の電圧が入力電圧VINがよりも小さい場合に“L”レベルの信号を出力する。比較器111は、ノードN81の電圧が入力電圧VINがよりも大きい場合に“H”レベルの信号を出力し、ノードN81の電圧が入力電圧VINがよりも小さい場合に“L”レベルの信号を出力する。比較器112は、ノードN82の電圧が入力電圧VINがよりも大きい場合に“H”レベルの信号を出力し、ノードN82の電圧が入力電圧VINがよりも小さい場合に“L”レベルの信号を出力する。比較器113は、ノードN83の電圧が入力電圧VINがよりも大きい場合に“H”レベルの信号を出力し、ノードN83の電圧が入力電圧VINがよりも小さい場合に“L”レベルの信号を出力する。
比較器110の出力端は、AND回路120の第1入力端に接続される。比較器111の出力は、ノードN84を介して、AND回路121の第1入力端に接続される。ノードN84には、インバータ回路130の入力端が接続される。インバータ回路130の出力端は、AND回路120の第2入力端に接続される。比較器112の出力端は、ノードN85を介して、AND回路122の第1入力端に接続される。ノードN85には、インバータ回路131の入力端が接続される。インバータ回路130の出力端は、AND回路120の第2入力端に接続される。比較器113の出力端は、インバータ回路132の入力端に接続される。インバータ回路132の出力端は、ノードN86を介して、AND回路122の第2入力端に接続される。AND回路120、121、及び122は、それぞれ信号S0、S1、及びS2を出力する。インバータ回路132は、信号S3を出力する。
以上で説明された電圧調整回路35では、電圧調整回路35から出力される信号S0~S3の論理レベルの組み合わせが、入力電圧VINの大きさに応じて変化する。これにより、電圧調整回路35は、信号S0~S3の論理レベルの組み合わせに応じた制御信号を、出力回路OCc内の電圧降下回路60のSEL1からSEL4、あるいはレギュレーションアンプREGに入力することが出来る。このような電圧調整回路35は、2ビットのフラッシュ型ADコンバータからエンコーダ部分を除去したものに相当する。尚、電圧調整回路35の回路構成は、要求される性能に応じて適宜変更され得る。
ここで、光検出器PDaの出力値の補正についての、全体的な方法について説明する。S/N比を向上させるという観点からは、計測部40aに含まれたアナログ回路が最も性能を発揮する様に、光検出器PDaの出力電流が調整することが好ましい。そこで、電圧調整回路35は、光検出器PDaの出力回路OCcに対して、以下の数式(1)及び(2)を満たすように、増幅率を定め、出力値を補償する。
最大出力電流(直流)≦入力最大電流(仕様) …(1)
最大出力電流(直流) = Vov / クエンチ抵抗 * SPAD数 * 増幅率 …(2)
過渡的には、最大出力電流(直流)以上の電流が流れるため、電圧調整回路35は、増幅率を低めに設定しても良い。この様に増幅率が設定されることにより、光検出器PDaの出力信号が最大化され、S/N比が改善する。ここで、補償の程度については、環境光に対応する補償の係数として、オーバードライブ電圧Vovに比例する様に大まかに定められる。例えば、図50の様に、補償の係数は、記憶部46の調整値テーブル100に格納しておくことが出来、電圧調整回路35により参照される。尚、記憶部46の内容は、温度などの環境パラメタなどに基づき、制御部10により適宜書き換えられる。
一方で、SPAD単体の電流は、図49に示すように概ねオーバードライブ電圧Vovに比例して変化する。図49は、SIPMにおける入射フォトン数と出力フォトン数(検出されるフォトン数)との関係を示している。画素PX(SiPM)の出力電流は、大まかには、図17に示されたAPDの出力電流に、図16に示された検出効率(PDE)を掛け合わせたものになる。しかしながら、図49に示すように、出力フォトン数と入射フォトン数との関係性は、pile-upの効果により、数式(1)及び(2)に概ね基づいて、非線形の特性になる。言い換えると、アバランシェフォトダイオードAPDの電流特性は、非線形になる。
出力電流 ∝ 出力フォトン数 x 単位SPAD当りの電流
出力フォトン数 = SPAD数 x {1 - exp( - 入射フォトン数 x PDE / SPAD数)}
出力回路OCcにおける出力値の補償は、オーバードライブ電圧Vovに比例する単位SPAD当りの電流の変化に対応することが出来る。一方で、出力回路OCcにおける出力値の補償では、出力フォトン数における非線形的な変化(光検出効率PDEの非線形特性を含む)には対応されていない。そこで、第7実施形態では、計測部40aの補償回路44及び電圧調整回路45が、非線形な補償処理を行い、入射フォトンに概ね比例した出力を実現させる。そして、SAT43が、この出力に基づいて平均化処理SATとピーク検出を行い、対象物TGまでの距離を算出する。尚、以上で説明された補償処理によって、画素PX間の出力レベルも均一化される。
以上の説明は、計測部40aにてADC41が使用されることが想定された方法であるが、ADCの代わりにTDCが使用されても良い。TDCが使用される場合においても、同様に距離が算出され得る。また、TDCが使用される場合は、反射信号(反射光L2に基づく信号)のピークではなく、その立上りの時刻に基づいて距離が計測される。このため、光検出器PDaの出力回路OCcにおける増幅率は、上述の式ではなく、環境光がTDCの閾値を超えないように設定されることが好ましい。
(調整値テーブル100の構成)
図50は、第7実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器PDに含まれた記憶部36に記憶された調整値テーブル100の一例を示す模式図である。図50に示すように、調整値テーブル100は、例えば、環境光の強さと、端子電圧と、電圧降下量との関係性を示している。本例では、環境光の強さが、“0”から“64”までの64段階で表現されている。端子電圧は、ノードN12の電圧に対応している。図11に示された信号処理回路41の場合、ノードN12の電圧は、レギュレーションアンプREG1によって、例えば0.6V±200mVで調整され得る。本例では、ノードN12の電圧が、環境光の強さに応じて、400mV、500mV、600mV、及び700mVの何れかに調整される。
環境光の強さが“0”~“14”である場合、端子電圧は、400mVに設定され、電圧降下は0段に設定される。電圧降下が“0段”であることは、例えば“電圧降下無し”に対応している。これは、電圧降下回路60に入力される選択信号SEL1が“L”レベルである場合に相当する。
環境光の強さが“15”~“24”である場合、端子電圧は、500mVに設定され、電圧降下は1段に設定される。電圧降下が“1段”であることは、例えば“2.5V降下”に対応している。これは、電圧降下回路60に入力される選択信号SEL2が“L”レベルである場合に相当する。
環境光の強さが“25”~“46”である場合、端子電圧は、600mVに設定され、電圧降下は2段に設定される。電圧降下が“2段”であることは、例えば“5V降下”に対応している。これは、電圧降下回路60に入力される選択信号SEL3が“L”レベルである場合に相当する。
環境光の強さが“47”~“63”である場合、端子電圧は、700mVに設定され、電圧降下は3段に設定される。本例において、環境光の強さ“63”は、計測可能な環境光の最大の強さを示している。電圧降下が“3段”であることは、例えば“7.5V降下”に対応している。これは、電圧降下回路60に入力される選択信号SEL4が“L”レベルである場合に相当する。
尚、以上の説明では、調整値テーブル100が、光検出器PDの記憶部36と計測部40(計測IC)の記憶部46に含まれる場合について例示したが、これに限定されない。調整値テーブル100は、制御部10に記憶されていても良い。調整値テーブル100の内容が、制御部10、少なくとも、光検出器PD、及び計測部40の何れかに記憶されていれば良い。
(調整値テーブル200の構成)
図51は、第7実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40に含まれた記憶部46に記憶された調整値テーブル200の一例を示す模式図である。図51は、ADC42の出力の補償前の値と、ADC42の出力の補償後の値との対応関係を示している。補償前の値が調整値テーブル200に無い中間値である場合に、電圧調整回路45は、例えば、線形補完と丸めによって算出された関数に基づいて、当該中間値に対応するデジタル値を、補償係数CV2として用いる。尚、本例では、補償前の値が、“0”から“63”の値を取ることが想定されている。これに対して補正後の値は、“0”から“63”の範囲に収まる必要は無く、その桁数にも制約はない。
[7-2]距離計測装置1の動作
図52は、第7実施形態に係る距離計測装置1の測距時における1サイクルの処理の一例を示すフローチャートである。図52に示すように、距離計測装置1は、測距時における1サイクルの処理で、ステップS10~S16の処理を実行し得る。
ステップS10の処理において、光検出器PDaは、サンプリング期間内で反射光L2を検出する。サンプリング期間は、距離計測装置1が測距に用いる出射光L1毎に設定される計測期間である。計測部40は、サンプリング期間において検出された反射光L2に基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。
ステップS11の処理において、計測部40aは、ブランキング期間内で環境光を測定する。ブランキング期間は、連続したサンプリング期間の間に設定される期間であり、測距に使用されない。ブランキング期間では、非選択の画素PXがアクティブ状態に設定されても良い。環境光の測定結果としては、例えば、ブランキング期間に検知された光信号の積算値、あるいは平均値が使用される。環境光の測定結果としては、通常、pile-upが問題となり得る日中は、環境光のパワーの方が反射光L2よりもはるかに大きいため、反射光L2の影響が無視され得る。従って、サンプリング期間において検出された光信号の測定結果が使用されても良いし、サンプリング期間とブランキング期間との両方の測定結果が使用されても良い。
ステップS12の処理において、計測部40aは、環境光の測定結果に基づいて、光変化を検出する。具体的には、計測部40aの制御部(例えば電圧調整回路45)が、1つ前のブランキング期間により算出された環境光の測定結果が、直近で算出された環境光の測定結果から変化しているか否かを検出する。光変化が検出されなかった場合、後述されるステップS13~S15の処理が省略されても良い。光変化の判定基準としては、例えば環境光の変化量が所定の値を超えたか否かが使用され得る。例えば、環境光の強さは、“0”から“63”までの64段階で表されると仮定した場合に、図50に示された調整値テーブル100に従って、4段階に分類される。計測部40aの電圧調整回路45は、環境光の強さの分類結果が変わったことを検知すると、補償回路44に入力する補償係数CV2を変化させる。
ステップS13の処理において、計測部40aの電圧調整回路45は、調整値テーブル100を参照して、表記が省略されているDACの入力を変更し、レギュレーションアンプREG1の制御値DAC1を決定する。すなわち、電圧調整回路45が、調整値テーブル100から、ステップS11において算出された環境光の測定結果に対応するDACを用いて、レギュレーションアンプREG1に供給する制御値DAC1を変更する。すると、信号処理回路41の入力ノード(すなわちノードN12)の電圧が、調整値テーブル100の端子電圧に応じた電圧に変化する。図50の端子電圧の列では、説明の判り易さのために、400mVの様な電圧値を記したが、実際には、この列にDAC1の値を保存してもよく、また、この列を省略しても構わない。
ステップS14の処理において、光検出器PDaの電圧調整回路35が、信号処理回路41の入力ノード(すなわちノードN12)の電圧をセンスする。電圧調整回路35による電圧のセンスは、図48を用いて説明されたフラッシュ型ADコンバータの処理に対応している。尚、ステップS14以降の処理は、後述するトリガ信号に基づいて開始され、次の計測の期間中は、設定された電圧値などは保持される。
ステップS15の処理において、光検出器PDaの電圧調整回路35は、センス結果に基づいて、電圧降下回路60の選択信号SELとレギュレーションアンプREG2の制御値DAC2とを決定する。すなわち、電圧調整回路35は、制御値DAC2の電圧を、ノードN12の電圧値(アナログ値)から変換されたデジタル値に関連付けられた電圧に変更する。ノードN12の電圧値に対する、選択信号および制御値DAC2の決定は、調整値テーブル100に基づいて判定される。そして、光検出器PDaの出力回路OCcの出力電流は、調整値テーブル100に基づいて補償される。すなわち、出力電流の補償係数CV1が決定される。
ステップS16の処理において、計測部40aの電圧調整回路45は、調整値テーブル200を参照して、線形補間を行って、ADC42の出力値を補償する。具体的には、電圧調整回路45が補償回路44の出力値の補償係数CV2を決定し、補償回路44が、ADC42の出力値を補償する。これにより、ADC42の出力レベルが、画素PX間にて均一化され、出力レベルの非線形性が補正される。
図53は、第7実施形態に係る距離計測装置1が備える計測部40aに含まれた信号処理回路41の出力信号の一例を模式的に示す波形図である。図53には、連続した2つのサンプリング期間ST1及びST2における反射光L2に基づくピークが示されている。サンプリング期間ST1及びST2の間に、ブランキング期間BTが設定されている。
図53に示すように、まず、サンプリング期間ST1において、ピークP1が検出され、ピークP1に基づいた距離値が算出される。ブランキング期間BTにおいて、環境光が測定される(ステップS11)。そして、光変化が検出される(ステップS12)。それから、制御部10は、トリガ信号を生成し、電圧調整回路35が、トリガ信号のタイミングに基づいて端子電圧のセンシングを行い、出力回路OCcを制御し、オーバードライブ電圧Vovを調整(変更)する(ステップS13~S15)。すると、サンプリング期間ST2では、環境光のノイズレベルが低下し、反射光L2のピークを検出可能な出力の範囲が拡大する。それから、サンプリング期間ST2において、ピークP2が検出され、ピークP2に基づいた距離値が算出される。このように、第7実施形態に係る距離計測装置1は、サンプリング期間ST2におけるピークP2のS/N比を改善させることが出来る。
[7-3]第7実施形態の効果
以上で説明されたように、第7実施形態に係る距離計測装置1は、計測部40aが光検出器PDの出力の大きさを検知する手段(環境光の測定)と、計測部40aが出力の大きさに基づいてバイアス電圧を決定する手段と、計測部40aがバイアス電圧の設定を光検出器PDに伝達する手段と、受光部30が光検出器PDの出力端子の電位を小さく変化させる手段とを備えている。光検出器PDの出力信号線(出力チャネルOUT_CH)は、計測部40aがバイアス電圧の設定を光検出器PDに伝える信号線を兼ねている。
図54は、第7実施形態に係る距離計測装置1におけるオーバードライブ電圧Vovの変更方法の一例を示す概略図である。図54の(1)及び(2)は、連続した2つの出射光L1にそれぞれ対応して設定されるアクティブ領域を示している。図54に示すように、第7実施形態に係る距離計測装置1において、電圧調整回路35は、スキャン部SPのチャネルCH毎に、オーバードライブ電圧Vovを変更及び最適化し得る。また、第7実施形態に係る距離計測装置1では、ブランキング期間毎に環境光の状態を計測し、信号処理回路41が、ノードN12を所望の電圧に変更することによって、電圧調整回路35に最適なオーバードライブ電圧Vovの調整値を伝達させることが出来る。
つまり、第7実施形態に係る距離計測装置1は、反射光L2毎、すなわち時間的に、オーバードライブ電圧Vovを変更及び最適化することが出来る。光検出器PDに入射される、レーザーの反射光及び環境光の強さは、対象物TGの反射率、角度、環境光の強さや向きなどに依存し、画素PX毎に大きく変わる。一律なオーバードライブ電圧Vovの設定では、計測部40のアナログ回路の仕様を活かせず、光検出器PDの出力信号のレベルが低下してS/N比が劣化する場合がある。その一方で、pile upする画素PX(感度が過多である画素PX)も生じ得る。第7実施形態に係る距離計測装置1によって、画素PX毎に最適に(例えば、反射光を検出可能なレンジが最も大きくなる様に)オーバードライブ電圧Vovが設定され、出力電流が計測部40のアナログ回路に最適化されることによって、S/N比が改善され得る。言い換えると、第7実施形態に係る距離計測装置1は、画素PX単位のHDR機能を実現することが出来る。
以上で説明されたように、第7実施形態に係る距離計測装置1は、環境光の大きさに応じて、チャネル毎に適切なオーバードライブ電圧Vovを設定することができ、光検出器PDの特性を改善させることが出来る。
さらに、第7実施形態に係る距離計測装置1では、オーバードライブ電圧Vovが画素PX毎に調整されることにより、同じ光検出に対する出力電流が画素PX間で異なる場合がある。これに対して、計測部40aが出力値(出力電流の大きさ)を補償することにより、出力値が適正に補正され、画素PX間の違いが解消される。これにより、画素PX間の出力レベルが均一に保持されるため、第7実施形態に係る距離計測装置1は、正しい計測をすることが可能になる。同時に、第7実施形態に係る距離計測装置1は、pile-upに基づく非線形性も補正することが出来る。例えば、SAT43による平均化の技術が使用される場合、出力レベルの均一化が必要条件であり、線形性の高いことが好ましい。第7実施形態に係る距離計測装置1は、SAT43を使用するための条件を満たすことが出来、誤った測距を防止することが出来る。
また、光検出器PDaの出力信号線(出力チャネルOUT_CH)は、高解像化に伴い、通常数十本となるため、ボードに実装する難易度が高くなる。これ以上に大幅に信号線を増やすことは、現実的に難しい。しかしながら、第7実施形態に係る距離計測装置1では、光検出器PDaの出力信号線(出力チャネルOUT_CH)と、計測部40aがバイアス電圧の設定を光検出器PDに伝える信号線とが兼用される。従って、第7実施形態に係る距離計測装置1は、出力回路OCcの制御値DAC2を制御に必要な配線数を削減することが出来、信号線の数が増えることによりボード実装の難易度が高くなることを抑制することが出来る。
尚、第7実施形態の構成及び動作は、第4実施形態の変形例と組み合わされても良い。これにより、距離計測装置1は、より細かくオーバードライブ電圧Vovを制御することが可能となる。また、第7実施形態の構成及び動作は、第1~第3実施形態と第5~第8実施形態とのそれぞれと組み合わされても良い。第7実施形態と第1実施形態とが組み合わされる場合、電圧調整回路35は、電圧降下回路60の選択信号SELを選択可能に構成される。第7実施形態と第5実施形態とが組み合わされる場合、電圧調整回路35は、放電回路65に含まれたN型トランジスタNMのゲート電圧VN9を制御可能に構成される。
[7-4]第7実施形態の変形例
第7実施形態では、距離計測装置1が図3に示され非同軸光学系と、図5~図8に示された2次元センサとを使用する場合について例示した。また、2次元センサは、有効な画素PXを選択して、出力回路OCに接続される構成を有している。一方で、第7実施形態の変形例では、同軸光学系が使用される。
図55は、第7実施形態の変形例に係る距離計測装置1aが備える出射部20a及び受光部30bの構成の一例を示す概略図である。図55に示すように、出射部20aの光学系24aは、例えば、ビームスプリッタBSを含む。受光部30bは、光学系31a、及び光検出器PDbを含む。光検出器PDbは、画素アレイ32b、出力段33b、及び制御部34aとを含む。
ビームスプリッタBSは、光源23とミラー25との間に配置される。光源23から出射された出射光L1は、ビームスプリッタBSを通過して、ミラー25に照射される。スキャン領域SAから反射された反射光L2は、ミラー25を介してビームスプリッタBSに照射され、ビームスプリッタBSは、反射光L2を受光部30bに入射させる。
光学系31aは、複数のレンズや光学素子を含み得る。光学系31aは、ビームスプリッタBSから入射された反射光L2を、画素アレイ32bに導光する。画素アレイ32bは、1次元アレイ上に画素PXが集積された、リニアセンサ(1Dセンサ)である。出力段33bは、画素アレイ32bから転送された電気信号をデジタル信号に変換して、受光結果に対応するデジタル信号を計測部40に出力する。制御部34は、制御部10の制御に基づいて、光検出器PDbの全体の動作を制御する。図55では、ビームスプリッタBSが使用されている場合が例示されているが、出射部20は、ビームスプリッタBSを使用せずに、出射光L1と反射光L2が、ミラー25のミラー面の違う部分に当たる様に設計されても良い(分離光学系)。或いは、距離計測装置1は、出射部と受光部を同じ方向に向けて回転させる、回転方式でも良い。
図56は、第7実施形態の変形例に係る距離計測装置1aが備える光検出器PDbの構成の一例を示す平面図である。図56に示すように、画素アレイ32bは、例えば1次元に並んだ画素PX1~PX4を備える。各画素PXは、複数のアバランシェフォトダイオードAPD(SPAD)により構成されている。各画素PXの出力は、複数のアバランシェフォトダイオードAPDの出力が結線され、複数のアバランシェフォトダイオードAPDの出力電流が加算されるような構成を有する。画素PX1~PX4のそれぞれの出力(ノードN_CH1~N_CH4)は、それぞれ出力段33bの出力回路OC1~OC4に接続される。
同軸光学系が使用された距離計測装置1aは、レーザ光の走査によりレーザ光の方向が変わった場合においても、リニアセンサ(画素アレイ32b)のセンサ面に反射光L2が照射されるように設計され得る。このため、距離計測装置1aでは、受光する画素PXが選択される必要が無いため、リニアセンサの各画素PXが、出力段33bに接続される。第7実施形態の変形例に係る距離計測装置1aのその他の構成は、第7実施形態と同様である。
以上で説明された第7実施形態の変形例に係る距離計測装置1aは、基本的に、第7実施形態と同様の効果を得ることが出来る。尚、リニアセンサは、2次元センサと比べて、一般に、画素PX当たりのSPAD数が大きく設計され得る。このように、リニアセンサの出力電流が大きくなる場合、図37から図39に示されたような放電回路65が使用されることが好ましい。
[8]第8実施形態
第8実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と異なる構成で、ロウ方向に並んだ画素PXを選択する。以下に、第8実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
[8-1]受光部30の構成
図57は、第8実施形態に係る距離計測装置1が備える受光部30の画素アレイ32と出力段33cとの間の接続関係の一例を示す回路図である。図57に示すように、第8実施形態では、チャネル結合部CBbが、画素アレイ32と出力段33cとの間から省略され、出力段33cの後に設けられている。第8実施形態の出力段33cは、複数の出力回路セットOCS1~OCS4と、ノードN_CH1a~N_CH4aとを含む。チャネル結合部CBbは、ノードN_CH1a~N_CH4aを含む。
出力段33cの出力回路セットOCS1~OCS4は、それぞれ画素アレイ32のスキャン部SP1~SP4に対応して設けられている。出力回路セットOCS1~OCS4の各々は、出力回路OC1~OC4を含む。
各出力回路セットOCSの各出力回路OCは、関連付けられたスキャン部SPの画素グループPGの出力ノードOUTに接続される。具体的には、スキャン部SP1の出力ノードSP1_OUT1~SP1_OUT4は、出力回路セットOCS1の出力回路OC1~OC4にそれぞれ接続される。スキャン部SP2の出力ノードSP2_OUT1~SP2_OUT4は、出力回路セットOCS2の出力回路OC1~OC4にそれぞれ接続される。スキャン部SP3の出力ノードSP3_OUT1~SP3_OUT4は、出力回路セットOCS3の出力回路OC1~OC4にそれぞれ接続される。スキャン部SP4の出力ノードSP4_OUT1~SP4_OUT4は、出力回路セットOCS4の出力回路OC1~OC4にそれぞれ接続される。
出力回路セットOCS1~OCS4のそれぞれの出力回路OC1は、関連付けられた画素グループPGから出力された信号の信号レベルを調整して、ノードN_CH1aに出力する。出力回路セットOCS1~OCS4のそれぞれの出力回路OC2は、関連付けられた画素グループPGから出力された信号の信号レベルを調整して、ノードN_CH2aに出力する。出力回路セットOCS1~OCS4のそれぞれの出力回路OC3は、関連付けられた画素グループPGから出力された信号の信号レベルを調整して、ノードN_CH3aに出力する。出力回路セットOCS1~OCS4のそれぞれの出力回路OC4は、関連付けられた画素グループPGから出力された信号の信号レベルを調整して、ノードN_CH4aに出力する。ノードN_CH1a~N_CH4aは、それぞれ出力チャネルOUT_CH1~OUT_CH4に接続される。
以上で説明されたように、第8実施形態では、画素アレイ32が含む複数の画素グループPGにそれぞれ対応して、出力段33cが複数の出力回路OCを備えている。そして、出力段33cの後に設けられたチャネル結合部CBbが、複数のスキャン部SPから出力された信号を、チャネル毎に結合している。言い換えると、第8実施形態では、チャネル毎の信号の結合が、出力回路OCによる信号の処理の後に実行される。これにより、第8実施形態における受光部30は、出力端子の個数を、第1実施形態と同様にすることが出来る。
(APDユニット51A及び51B並びに選択回路52aの構成)
図58は、第8実施形態に係る距離計測装置1における画素アレイ32が備える画素PXに含まれたAPDユニット51A及び51B及び選択回路52aの回路構成の一例を示す回路図である。図58に示すように、第8実施形態の画素PXは、第1実施形態の画素PXと異なる選択回路52aを備えている。
選択回路52aは、第1実施形態の選択回路52に対して、P型トランジスタPM1が省略された構成を有する。選択回路52aにおいて、P型トランジスタPM0のドレインは、出力ノードOUTに接続されている。このため、選択回路52aは、カラム選択信号に基づいて、アバランシェフォトダイオードAPDと出力ノードOUTとの間を電気的に接続及び非接続にすることが可能な構成(P型トランジスタPM0)のみを有している。
(出力回路OCの構成)
図59は、第8実施形態に係る距離計測装置1における出力段33cに含まれた出力回路OCfの構成の一例を示すブロック図である。出力回路OCf(m)は、ロウ選択線RSL(m)に関連付けられている(mは0以上の整数)。図59に示すように、第8実施形態の出力回路OCf(m)は、電圧降下回路60a、及び電流源61を含む。そして、出力回路OC(m)の電圧降下回路60aには、ロウ選択線RSL(m)が接続される。
電圧降下回路60aは、ロウ選択線RSLに入力された信号に基づいて、当該出力回路OCをアクティブ状態又は非アクティブ状態にする。アクティブ状態の出力回路OCは、画素アレイ32から入力された信号を処理して、出力チャネルOUT_CHに出力する。非アクティブ状態の出力回路OCは、電圧降下回路60aを用いて信号を遮断し、出力チャネルOUT_CHへの信号の出力を抑制する。具体的には、制御部34が、非選択である出力回路OCfの電圧降下回路60を、最低の電位に落とすように動作させる。
あるいは、電圧降下回路60aが、出力ノードVDOUTと、ノードN27との間に接続されたP型トランジスタをさらに備え、当該P型トランジスタのゲートにロウ選択線RSL(m)が接続されても良い。このような場合においても、制御部34は、当該P型トランジスタをオフ状態に制御することによって、ノードN_CHと出力ノードVDOUTとの間を電気的に遮断し、出力回路OCの信号を遮断することが出来る。この場合、ロウ選択線RSL(m)は、負論理による利用が想定される。第8実施形態に係る距離計測装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
[8-2]第8実施形態の効果
以上で説明されたように、第8実施形態に係る距離計測装置1は、マトリクス状に配置された画素PXの行の数と等しい数の出力回路OCfを備える。そして、ロウ選択線RSLが、出力回路OCf毎に接続され、制御部10が、画素グループPG毎に設けられた出力回路OCを用いて行(ロウ)を選択する。
その結果、計測部40は、第1実施形態と同様に、スキャン部SP毎に、各チャネルの出力を受けることが出来る。第8実施形態に係る光検出器PDは、第1実施形態と異なり、画素アレイ32と出力段33の間にチャネル結合部CBが設けられないため、寄生容量が第1実施形態よりも減少し、その寄生容量による信号のなまり、及び帯域の劣化を緩和させることができる。
また、第8実施形態における画素PXは、第1実施形態よりもトランジスタの数が少なくなる。このため、第8実施形態に係る光検出器PDは、画素PXのサイズを、第1実施形態の画素PXよりも小さくすることが出来、画素アレイ32内において光の感度を有さない領域(不感領域)を減らすことが出来る。このため、第8実施形態に係る光検出器PDでは、感度が改善する場合がある。第8実施形態で説明された構成は、第1実施形態~第8実施形態の何れと組み合わされても良い。
[9]その他
制御部10は、レーザ光(出射光L1)の出射時にオーバードライブ電圧Vovをゼロに設定し、その直後にオーバードライブ電圧Vovを適正値(測距に最適化された数値)に変更しても良い。この場合、レーザ光の出射時に発生する迷光(レーザー光の一部であり、距離計測装置1内の何らかの経路を通り、光検出器にて検出されるもの)が、光検出器PDの出力から除去され得る。すなわち、距離計測装置1は、迷光による反射光L2の誤検出を抑制することが出来、光検出結果の信頼性を向上させることが出来る。
距離計測装置1は、複数回の計測を、オーバードライブ電圧Vovを変えて行っても良い。距離計測装置1は、複数回の計測結果を積算(平均化)することによって、ダイナミックレンジを拡大させることが出来る。距離計測装置1は、特に、第1実施形態で説明されたSAT43による平均化を実行することによって、解像度を落とすことなく、ダイナミックレンジを拡大できる。このようにダイナミックレンジを拡大させる計測方法は、レーザ光(出射光L1)の光量を変えることにより実現されても良い。一方で、出力回路OCによりオーバードライブ電圧Vovを変更させる場合には、さらに、画素PX毎に最適なオーバードライブ電圧Vovを設定することが可能になる。
距離計測装置1で使用される電源ノードVDD、VSS、及びVSS2のそれぞれは、必ずしも同じ電位でなくても良い。光検出器PDで使用されるVDDと、計測部40で使用されるVDDとが異なっていても良いし、光検出器PDで使用されるVSSと、計測部40で使用されるVSSとが異なっていても良い。また、電源ノードVDD、VSS及びVSS2のそれぞれは、使用される回路毎に電圧が変更されても良い。例えば、適切なVSSが回路毎に設定されることによって、距離計測装置1で使用される回路の動作安定性が向上し得る。
上記実施形態では、制御部10が、出射光L1の出射時刻T1を計測部40に通知する場合について例示したが、これに限定されない。出射時刻T1は、出射光L1が出射部20内で分光され、分光された出射光L1が受光部30に設けられたセンサによって検出された時刻に基づいて設定されても良い。この場合、出射時刻T1は、受光部30から計測部40に通知される。
上記実施形態では、2D_SiPMのオーバードライブ電圧Vovを調整する場合について例示したが、これに限定されない。上記実施形態で説明されたオーバードライブ電圧Vovを調整する構成は、1D_SiPMに対して利用されても良い。このような場合においても、実効的なダイナミックレンジを拡大することが出来、光検出器の特性を改善させることが出来る。
第1実施形態の第1変形例及び第2変形例で説明された、光検出器PDの出力電流を可変にすることが可能な電流源61a及び61bのそれぞれは、必ずしもオーバードライブ電圧Vovを調整する構成と組み合わされなくても良い。つまり、出力回路OCから電圧降下回路60が省略され、電流源61a及び61bのそれぞれのみが利用されても良い。また、電流源61a及び61bのそれぞれの構成は、第2~第8実施形態の何れとも組み合わされても良い。
距離計測装置1の各構成の分類は、その他の分類であっても良い。計測部40は、上記実施形態で説明された動作を実現することが可能であれば、その他の分類であっても良い。制御部10に含まれたCPUは、その他の回路であっても良い。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されても良い。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されても良い。ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していても良いし、どちらか一方のみであっても良い。制御部10及び34や、電圧調整回路35及び45は、制御回路と呼ばれても良い。計測部40は、計測回路と呼ばれても良い。各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートでは、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられても良いし、その他の処理が追加されても良い。
本明細書において“アクティブ領域”は、受光領域と呼ばれても良い。制御部10の制御に基づきパルス信号が入力された光源23が出射する出射光L1が、パルス信号と呼ばれても良い。“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型トランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型トランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型トランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型トランジスタがオン状態になる電圧である。“L”レベル及び“H”レベルのそれぞれは、論理レベルと表現されても良い。“2次元に配置されたアバランシェフォトダイオードAPD”は、少なくとも、カラム方向に並んだ複数のアバランシェフォトダイオードと、ロウ方向に並んだ複数のアバランシェフォトダイオードとを含んでいれば良い。“選択された画素PX”は、アクティブ状態の画素PXに対応している。
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。“上面”は、半導体基板SUBでは回路素子が形成される側の面に対応し、その他の構成では半導体基板SUBから遠い側の面に対応する。“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。“トランジスタの電流経路”は、トランジスタのチャネルに対応している。“トランジスタの電流経路の一端及び他端”、及び“トランジスタの一端及び他端”のそれぞれは、トランジスタのドレイン又はソースに対応している。“画素PX”は、センサ回路と呼ばれても良い。“アバランシェフォトダイオードAPD”は、センサと呼ばれても良い。“ダイオードDI”は、整流ダイオードと呼ばれても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。