JP7441811B2 - 診断装置 - Google Patents
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Description
本発明は、回転機を診断する診断装置に関する。
生産設備では、モータやポンプなどの回転機が突発的に故障すると、計画外での回転機の修理作業や交換作業が必要となり、生産設備の稼働率が低下して生産計画を立て直す必要がある。回転機の突発的な故障を未然に防ぐための方法として、回転機の電流波形をフーリエ変換して劣化の特徴周波数成分を抽出し、抽出した特徴周波数成分での振幅を用いて異常を診断する方法が知られている。劣化の特徴周波数成分は、異常に応じて異なる。このため、回転機の異常(例えば、軸受の劣化とギアやカップリングの損傷などの機械的な劣化による異常や、負荷装置の異常など)は、それぞれの異常に応じた特徴周波数を用いて診断することができる。
生産設備の保守計画や運転計画の立案では、このような異常の予兆診断技術により算出した異常度を活用することが求められている。このため、回転機の異常度の時系列変化を精度良く予測する技術が必要である。
従来の異常診断装置の例として、特許文献1には、センサデータの他に、環境データ(イベントデータ、稼働データ、負荷データ、保守履歴データ)を用い、異常測度を算出して将来の異常測度を推定する装置が記載されている。
特許文献1に記載された異常診断装置など、異常度(異常測度)を算出するための特徴量の1つとして環境データを用いる従来の診断装置では、負荷や温度などの環境が変化すると、この変化の後では将来の異常度を精度良く予測できない可能性がある。また、このような従来の診断装置では、環境などの回転機の駆動条件が変化すると、この変化を反映させるために計算モデルの再学習が必要となり、駆動条件が多岐にわたる設備を診断する場合には、再学習用のデータを蓄積するのに長期間を要することもある。
本発明の目的は、回転機の駆動条件の変化に影響されずに、回転機の将来の異常度を精度良く予測することができる診断装置を提供することである。
本発明による診断装置は、回転機に流れる電流のデータから、前記回転機の異常を示す指標である異常度の算出に用いる劣化特徴量を求める劣化特徴量抽出部と、前記回転機の駆動条件と、前記駆動条件により前記劣化特徴量が受ける影響を表す式であるバイアス算出式とを用いて、前記駆動条件が前記劣化特徴量に与える影響を除去するための値であるバイアス値を算出するバイアス算出部と、前記劣化特徴量抽出部が求めた前記劣化特徴量と、前記回転機の正常時の前記劣化特徴量とを用いて前記異常度を算出し、算出した前記異常度を前記バイアス値により補正することで、前記駆動条件の変化の影響を除去した前記異常度である実異常度を求める実異常度算出部と、実異常度算出部が求めた、複数の時刻についての前記実異常度に対して時系列解析を行うことで、将来の前記実異常度の予測値を算出する異常度予測部とを備える。
本発明によると、回転機の駆動条件の変化に影響されずに、回転機の将来の異常度を精度良く予測することができる診断装置を提供することができる。
本発明による診断装置は、回転機の異常を示す指標である異常度を、回転機の駆動条件の変化に影響されずに、精度良く予測することができる。本発明による診断装置は、特に、回転機の劣化による異常についての将来の異常度を、精度良く予測することができる。
以下、本発明の実施例による診断装置を説明する。本発明の実施例による診断装置では、バイアス算出部が、回転機の駆動条件とバイアス算出式を用いてバイアス値を算出する。バイアス値は、回転機の駆動条件が劣化特徴量に与える影響を除去するための値である。劣化特徴量は、異常度の算出に用いられる値である。さらに、本発明の実施例による診断装置では、実異常度算出部が、劣化特徴量から算出した異常度をバイアス値により補正して実異常度とすることで、駆動条件の変化の影響を除去した異常度である実異常度を求めて、異常度予測部が、将来の実異常度の予測値を算出する。
なお、以下の実施例では、本発明による診断装置が、回転機であるモータの将来の異常度(実異常度)を予測する例について説明する。本発明による診断装置は、モータ以外の回転機、例えばポンプ、ファン、及び切削機などの機械についても、将来の異常度(実異常度)を予測することができる。
本発明の実施例1による診断装置を、図1から図9を用いて説明する。
図1は、回転機の例であるモータ50に接続された、本発明の実施例1による診断装置10を示す図である。
診断装置10は、ネットワーク20を介して、コンピュータ30と電流センサ40に接続可能である。診断装置10は、入出力部11と、演算部12と、記憶部13を備える。入出力部11は、電流センサ40からデータを入力するとともに、コンピュータ30に対してデータの入出力を行う。演算部12は、診断装置10が備える機能を実行する。記憶部13は、診断装置10の使用者が入力したデータ、診断装置10が求めたデータ、及び診断装置10が診断に用いる式やパラメータなどを記憶する。
コンピュータ30は、診断装置10に接続され、診断装置10の使用者がデータを入力するのに使用する入力装置であるとともに、診断装置10が使用するデータや求めたデータを表示する表示装置である。電流センサ40は、モータ50に設置され、モータ50に流れる電流(モータ電流)のデータをモータ50から取得する。モータ50は、診断装置10が将来の異常度を予測する回転機である。
図2は、本実施例による診断装置10の構成を示す図である。本実施例では診断装置10が、図1に示したコンピュータ30を構成要素として備えていない例を説明するが、診断装置10は、コンピュータ30を構成要素として備えてもよい。
診断装置10の演算部12は、劣化特徴量抽出部120、駆動条件推定部121、バイアス算出部122、実異常度算出部123、異常度予測部124、予測誤差算出部125、予測パラメータ修正要否判定部126、及び予測パラメータ修正部127を備える。
劣化特徴量抽出部120は、入出力部11が電流センサ40から入力したモータ電流の時系列データを周波数領域のデータに変換し、周波数領域の電流データから異常度の算出に用いる劣化特徴量(単に「特徴量」とも呼ぶ)を求める。劣化特徴量とは、特定の周波数帯における振幅またはピーク幅のことであり、これらの両方を含んでいてもよいし、いずれか一方だけでもよい。劣化特徴量抽出部120は、予め定められた周波数帯における劣化特徴量の値を、異常度の算出に用いる劣化特徴量として求める。劣化特徴量抽出部120は、時系列データを周波数領域のデータに変換するのに、フーリエ変換などの周波数分析法を用いることができる。
なお、劣化特徴量は、特定の周波数帯における振幅またはピーク幅とせずに、例えばモータ電流の最大値、最小値、または平均値などとしてもよい。劣化特徴量をモータ電流の最大値、最小値、または平均値などとする場合には、劣化特徴量抽出部120は、モータ電流の時系列データを周波数領域のデータに変換しなくてもよい。
駆動条件推定部121は、入出力部11が入力したモータ電流の時系列データから、モータ50の駆動条件を推定し、複数の時刻について推定した駆動条件を駆動条件履歴134として記憶部13に格納する。駆動条件とは、モータ50が運転しているときのモータ50に関する物理量の値であり、例えば、運転温度、負荷トルク、及び回転速度などの値のことである。また、推定する値は、必ずしも駆動条件に関する絶対的な値である必要はなく、ある時刻の値に対する相対的な値でもよい。また、駆動条件は、モータ電流を用いて推定せずに、センサやインバータのログデータなどから直接的に求めてもよい。
駆動条件推定部121は、既存の任意の方法で、モータ50の駆動条件を推定することができる。例えば、駆動条件推定部121は、モータ50の時系列の相電流波形をクラーク変換し、この波形を周波数領域の波形に変換して電流ノルムの振幅スペクトルを導出し、この振幅スペクトル中のある特定の周波数帯における振幅またはピーク幅を求め、この振幅またはピーク幅を既存の回帰式(例えば、実験式や物理式)に代入することで、モータ50の駆動条件(例えば、駆動時の運転温度)を推定することができる。
なお、駆動条件推定部121は、モータ50の駆動条件を推定するのに、特定の周波数帯における振幅またはピーク幅を用いずに、例えば、電流ノルム波形やクラーク変換前の相電流波形の最大値、最小値、または平均値などを用いてもよい。駆動条件推定部121は、モータ50の駆動条件を推定するのに電流ノルム波形やクラーク変換前の相電流波形の最大値、最小値、または平均値などを用いる場合には、クラーク変換したモータ50の時系列の相電流波形を周波数領域の波形に変換しなくてもよい。
バイアス算出部122は、モータ50の駆動条件が劣化特徴量に与える影響を除去するための値であるバイアス値を算出する。劣化特徴量は、異常度の算出に用いられる値である。モータ50は、劣化すると劣化特徴量が変化するが、劣化していなくても駆動条件に応じて劣化特徴量が変化する。このため、劣化特徴量によって算出された異常度は、モータ50の純粋な劣化(駆動条件の変化によらない劣化)だけでなく、駆動条件の変化も反映されている。バイアス算出部122が算出するバイアス値は、駆動条件の変化が劣化特徴量に与える影響を除去するための値であり、劣化特徴量によって算出された異常度を、駆動条件の変化の影響を除去した異常度である実異常度に補正するための値である。実異常度は、モータ50の、駆動条件の変化によらない劣化から得られる異常度であり、モータ50の純粋な劣化をより反映した指標である。
バイアス算出部122は、駆動条件推定部121が推定したモータ50の駆動条件を用いて、異常度の補正に用いるバイアス値を算出する。例えば、バイアス算出部122は、駆動条件推定部121が推定したモータ50の駆動条件をバイアス算出式に代入することによって、バイアス値を算出することができる。バイアス算出式は、駆動条件により劣化特徴量が受ける影響を表す式であり、正常稼働しているモータ50のモータ電流から得られた正常時の劣化特徴量(正常モデル)の、駆動条件の変化による変化量を表す式である。バイアス算出式は、例えば、既存の回帰式(例えば、実験式や物理式)で表すことができ、駆動条件による正常モデルの変化量(例えば、変化量の平均や分散)を表す式である。バイアス算出部122は、バイアス算出式に駆動条件を入力すると、バイアス値を算出することができる。
実異常度算出部123は、劣化特徴量抽出部120が求めた劣化特徴量とモータ50の正常時の劣化特徴量(正常モデル)とを用いて異常度を算出し、算出した異常度をバイアス算出部122が算出したバイアス値により補正することで実異常度を求める。
実異常度算出部123は、正常稼働しているモータ50のモータ電流から得られた正常時の劣化特徴量(正常モデル130)を記憶部13から入力し、劣化特徴量抽出部120が求めた劣化特徴量と正常時の劣化特徴量との差を、異常度として算出する。記憶部13は、後述するように、正常モデル130を格納している。実異常度算出部123は、既存の方法を用いて異常度を算出することができる。例えば、実異常度算出部123は、劣化特徴量の分布空間において、マハラノビス距離を用いて、劣化特徴量抽出部120が求めた劣化特徴量と正常時の劣化特徴量との差(分布空間内の距離)を求め、この差を異常度とすることができる。
実異常度算出部123は、例えば、駆動条件が変化したら、バイアス算出部122が算出したバイアス値を用いて、算出した異常度を補正し、実異常度を求める。異常度の具体的な補正方法は、バイアス値や、異常度や、変化した駆動条件などに応じて任意に定めることができ、駆動条件の変化による影響をバイアス値を用いて異常度から取り除くことで、実異常度を求める方法であればよい。例えば、カルマンフィルタによる状態推定方法を用いることにより、バイアス値を用いた演算によって、異常度から実異常度を逐次推定することができる。
実異常度算出部123は、複数の時刻について求めた実異常度を実異常度履歴133として記憶部13に格納する。
異常度予測部124は、実異常度算出部123が求めた、現在と過去の複数の時刻についての実異常度に対して時系列解析を行うことで、将来のある時刻またはある時間帯における実異常度の予測値を算出する。実異常度算出部123が求めた、現在と過去の複数の時刻についての実異常度は、記憶部13に格納された実異常度履歴133から得ることができる。異常度予測部124は、既存の任意の計算式やアルゴリズムを用いて、将来の実異常度の予測値を算出することができる。例えば、異常度予測部124は、カルマンフィルタのような状態空間モデル、多項式による回帰分析、及びLSTM(Long short-term memory)のような再起型ニューラルネットワークなどを用いて、将来の実異常度の予測値を算出することができる。
異常度予測部124は、求めた将来の実異常度の予測値を実異常度予測値として記憶部13に格納する。記憶部13は、予測値の時刻が実際の時刻と合致したら、実際の時刻と合致した時刻における実異常度予測値を消去してもよい。
予測誤差算出部125は、実異常度算出部123が算出した実異常度と、異常度予測部124が算出した将来の実異常度の予測値とを、同じ時刻または同じ時間帯について比較し、これらの差を異常度の予測誤差として算出する。
予測パラメータ修正要否判定部126は、予測誤差算出部125が算出した異常度の予測誤差を用いて、予測パラメータを修正する必要があるか否かを判定する。予測パラメータは、異常度予測部124が将来の実異常度の予測値を算出するときに用いる計算式に含まれているパラメータである。予測パラメータ修正要否判定部126は、異常度の予測誤差が予め定めた所定値より大きければ、予測パラメータを修正する必要がある、すなわち、異常度予測部124が将来の実異常度の予測値を算出するときに用いる計算式を修正する必要があると判定する。
予測パラメータ修正部127は、予測パラメータ修正要否判定部126が予測パラメータを修正する必要があると判定した場合に、異常度の予測誤差が減少して上記の所定値以下になるように、予測パラメータを修正する。予測パラメータの修正方法は、異常度予測部124が将来の実異常度の予測値の算出に用いる計算式やアルゴリズムに応じて、任意に定めることができる。例えば、異常度予測部124がカルマンフィルタを用いて将来の実異常度の予測値を算出する場合には、実異常度を用いたモデルの確率変数を逐次更新することにより、予測パラメータを修正することができる。
診断装置10の記憶部13は、正常モデル130、駆動条件推定式131、バイアス算出式132、実異常度履歴133、駆動条件履歴134、予測パラメータ135、及び実異常度予測値138を格納する。
正常モデル130は、正常稼働しているモータ50のモータ電流から得られた正常時の劣化特徴量の値である。正常モデル130は、製造直後や修理直後のモータ50から得られたデータから導出してもよいし、モータ50についての数値シミュレーションなどから導出してもよい。
駆動条件推定式131は、駆動条件推定部121がモータ50の駆動条件を推定するときに使用する式である。駆動条件推定式131には、例えば、モータ電流の時間領域の波形や周波数領域の波形からモータ50の駆動条件を推定できる既存の式(例えば、実験式や物理式)を用いることができる。
バイアス算出式132は、バイアス算出部122がバイアス値を算出するときに使用する式であり、駆動条件が入力されると、異常度の補正に用いられるバイアス値を算出することができる。既に述べたように、バイアス算出式132は、駆動条件により劣化特徴量が受ける影響を表す式であり、正常稼働しているモータ50のモータ電流から得られた正常時の劣化特徴量(正常モデル130)の、駆動条件の変化による変化量を表す式である。バイアス算出式132は、既存の回帰式(例えば、実験式や物理式)で表すことができ、例えば、運転温度、回転速度、負荷、及び荷重などのモータ50の駆動条件に関する物理量を変数とする式である。
実異常度履歴133は、実異常度算出部123が複数の時刻について求めた実異常度である。
駆動条件履歴134は、駆動条件推定部121が複数の時刻について推定したモータ50の駆動条件である。
予測パラメータ135は、異常度予測部124が将来の実異常度の予測値を算出するときに用いる式に含まれているパラメータである。予測パラメータ135は、例えば、統計解析的または数値的に実異常度の推移をモデル化することで導出することができる。
実異常度予測値138は、異常度予測部124が算出した、将来のある時刻またはある時間帯における実異常度の予測値(将来の実異常度の予測値)である。
図3は、本実施例による診断装置10が行う処理のフローチャートである。診断装置10の使用者は、コンピュータ30を操作することにより、診断装置10に処理を開始させることができる。
ステップS101で、診断装置10の入出力部11は、コンピュータ30からの指示により、電流センサ40からモータ電流(相電流)を入力する。
ステップS102で、劣化特徴量抽出部120は、フーリエ変換などの周波数分析法を用いて、入出力部11が入力したモータ電流の時系列データを周波数領域のデータに変換する。
ステップS103で、劣化特徴量抽出部120は、ステップS102で得られたモータ電流の周波数領域のデータから、異常度の算出に用いる劣化特徴量を求める。
ステップS104とステップS105は、ステップS102とステップS103と並行して実行される。ステップS104とステップS105は、ステップS102とステップS103の前または後に実行されてもよい。
ステップS104で、駆動条件推定部121は、入出力部11がステップS101で入力したモータ電流の時系列データから、モータ50の駆動条件を推定する。
ステップS105で、バイアス算出部122は、駆動条件推定部121がステップS104で推定したモータ50の駆動条件の変化が劣化特徴量に与える影響を除去するための値であるバイアス値を算出する。バイアス値は、劣化特徴量によって算出された異常度を、駆動条件の変化の影響を除去した異常度である実異常度に補正するのに用いられる。
ステップS106で、実異常度算出部123は、ステップS103で劣化特徴量抽出部120が求めた劣化特徴量と、記憶部13が格納している正常モデル130(正常稼働しているモータ50のモータ電流から得られた正常時の劣化特徴量の値)とを用いて、異常度を算出する。さらに、実異常度算出部123は、算出した異常度を、ステップS105でバイアス算出部122が算出したバイアス値で補正することで、実異常度を求める。
ステップS107で、異常度予測部124は、ステップS106で実異常度算出部123が求めた実異常度と、記憶部13に格納されている実異常度履歴133とを用いて、将来の実異常度の予測値(実異常度予測値138)を算出する。
ステップS108で、予測誤差算出部125は、ステップS106で実異常度算出部123が算出した実異常度と、ステップS107で異常度予測部124が算出した将来の実異常度の予測値との、同じ時刻または同じ時間帯についての値の差を、異常度の予測誤差として算出する。
ステップS109で、予測パラメータ修正要否判定部126は、ステップS108で予測誤差算出部125が算出した異常度の予測誤差を用いて、予測パラメータを修正する必要があるか否かを判定する。
ステップS110は、ステップS109で予測パラメータを修正する必要があると判定された場合の処理である。ステップS110で、予測パラメータ修正部127は、予測パラメータを修正する。修正された予測パラメータは、ステップS107での異常度予測部124の処理に使用される。
ステップS111は、ステップS109で予測パラメータを修正する必要がないと判定された場合の処理である。ステップS111で、入出力部11は、演算部12が演算して求めたデータ(例えば、モータ50の将来の実異常度の予測値、モータ50の実異常度の時間変化、モータ50の駆動条件、及び駆動条件に対応するバイアス値など)をコンピュータ30に出力する。コンピュータ30は、入出力部11から入力したデータを表示する。
図4は、入出力部11が電流センサ40から入力するモータ電流の時系列データの例を示す図である。
図5は、劣化特徴量抽出部120がモータ電流の時系列データを変換することで得られた、モータ電流の周波数領域のデータの例を示す図である。
劣化特徴量抽出部120は、周波数分析法を用いて、図4に示すようなモータ電流の時系列データを、図5に示すようなモータ電流の周波数領域のデータに変換する。
図6は、駆動条件推定部121がモータ50の相電流の時系列データをクラーク変換することで算出した、α-β軸上の電流ノルムの振幅スペクトルの例を示す図である。駆動条件推定部121は、算出した振幅スペクトルを用いて、モータ50の駆動条件を推定することができる。
図7は、駆動条件推定部121が推定した、モータ50の駆動条件の例を示す図である。図7には、一例として、モータ電流の値から推定されるモータ50の運転温度の例を示している。図7に示すようなモータ50の運転温度の推定値は、電流ノルムの振幅スペクトルにおける0Hzの振幅から、回帰モデルによって得ることができる。
図8は、従来の診断装置が求めた、モータ50の異常度の時間変化の例を示す図である。図8において、モータ50の駆動条件は、時刻t1において駆動条件1から駆動条件2へ変化し、時刻t2において駆動条件2から駆動条件1へ変化する。
時刻t1において駆動条件が変化すると、駆動条件の変化に起因して劣化特徴量の大きさが変化する。モータ50の異常度は、劣化特徴量を用いて算出される。このため、駆動条件が変化した時刻t1では、劣化特徴量の大きさが変化したため、モータ50の劣化が急激に進んでいなくても異常度が急激に増加している。
このように、従来の診断装置では、モータ50の駆動条件が変化すると、この影響を受けて、モータ50の将来(例えば、図8の時刻t)の異常度を精度良く予測することが困難である。
図9は、本実施例による診断装置10が求めた、モータ50の実異常度の時間変化の例を示す図である。実異常度は、バイアス値により補正された異常度である。図9には、実異常度の時間変化を示すグラフの下に、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値を示すグラフを描いてある。図9において、図8と同様に、モータ50の駆動条件は、時刻t1において駆動条件1から駆動条件2へ変化し、時刻t2において駆動条件2から駆動条件1へ変化する。駆動条件1でのバイアス値は、B1であり、駆動条件2でのバイアス値は、B2である。
本実施例による診断装置10が求めた実異常度の時間変化は、従来の診断装置が求めた異常度の時間変化(図8)と比べると、駆動条件の変化による影響を受けていない。この理由は、本実施例による診断装置10では、モータ50の駆動条件を用いてバイアス値を算出し、バイアス値を用いて図8に示すような異常度を補正して実異常度を求めているからである。このため、本実施例による診断装置10では、モータ50の駆動条件が変化しても、駆動条件の変化に影響されずに、モータ50の将来(例えば、図9の時刻t)の異常度を精度良く予測することができる。
コンピュータ30は、演算部12が演算して求めたデータを入出力部11から入力し、入力したデータを表示する。例えば、コンピュータ30は、実異常度の時間変化と、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値とのうち少なくとも1つを示すグラフ(例えば、図9に示すようなグラフ)を表示する。
本発明の実施例2による診断装置10を、図10から図13を用いて説明する。本実施例による診断装置10は、モータ50の駆動条件の計画を入力することで、モータ50の将来の異常度をより精度良く予測することができる。以下では、本実施例による診断装置10について、実施例1による診断装置10と異なる点を主に説明する。
図10は、本実施例による診断装置10の構成を示す図である。本実施例による診断装置10は、実施例1による診断装置10(図2)において、演算部12が異常度進展算出部128を備え、記憶部13が異常度進展136を格納する。
異常度進展算出部128は、モータ50の駆動条件と、実異常度の時間変化の傾きである進展速度との相関関係を算出する。実異常度の進展速度は、モータ50の駆動条件により異なる。異常度進展算出部128は、実異常度の進展速度が駆動条件によってどのように異なるかを、両者の相関関係として求める。異常度進展算出部128は、モータ50の駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係を、既存の式(例えば、グリスの寿命や基本定格寿命を表す実験式や物理式)を用いて算出することができる。異常度進展算出部128は、実異常度算出部123が実異常度を算出したときに、モータ50の駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係を算出することができる。
異常度進展算出部128は、算出した、モータ50の駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係を、異常度進展136として記憶部13に格納する。
図11は、本実施例による診断装置10が行う処理のフローチャートである。図11に示すフローチャートは、実施例1による診断装置10が行う処理のフローチャート(図3)において、ステップS112とステップS113の処理が加わっている。
ステップS112で、入出力部11は、コンピュータ30から、モータ50の将来の計画の駆動条件を入力する。モータ50の将来の計画の駆動条件は、例えば、診断装置10の使用者がコンピュータ30を操作することにより、診断装置10に入力することができる。
ステップS113で、異常度進展算出部128は、記憶部13に格納されている異常度進展136(モータ50の駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係)を参照することで、ステップS112で入力された将来の計画の駆動条件から、将来の異常度を予測する。異常度進展算出部128は、入力された駆動条件に対応する実異常度の進展速度を、異常度進展136を用いて求め、求めた実異常度の進展速度から将来の実異常度の予測値を算出する。
図12は、本実施例による診断装置10が求めた、モータ50の実異常度の時間変化の例を示す図である。図12には、実異常度の時間変化を示すグラフの下に、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値を示すグラフを描いてある。図12において、モータ50の駆動条件は、時刻t1において駆動条件1から駆動条件2へ変化し、時刻t2において駆動条件2から駆動条件1へ変化する。さらに、将来の計画として、時刻tにおいて、駆動条件が駆動条件1から駆動条件2へ変化する。駆動条件1でのバイアス値は、B1であり、駆動条件2でのバイアス値は、B2である。
本実施例による診断装置10は、駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係を参照することで、入力された将来の計画の駆動条件の下での実異常度の進展(将来の実異常度の予測値、例えば図12の時刻t以降の時刻における実異常度の予測値)を、精度良く求めることができる。
図13は、記憶部13が格納する異常度進展136(駆動条件と実異常度の進展速度との相関関係)の一例を示す図である。記憶部13には、異常度進展136として、駆動条件に対する実異常度の進展速度の確率分布を示すデータが格納されている。例えば、駆動条件1に対しては、進展速度μ1を中心とする分布を持つ実異常度の進展速度が関連付けられている。駆動条件が駆動条件1から駆動条件2へ変化すると、実異常度の進展速度は、進展速度μ1を中心とする分布から進展速度μ2を中心とする分布へ変化する。
異常度進展算出部128は、図11のステップS113で、異常度進展136を参照して、入力された将来の計画の駆動条件に対する実異常度の進展速度(進展速度の確率分布)を求めることで、将来の実異常度の予測値を求めることができる。
コンピュータ30は、演算部12が演算して求めたデータを入出力部11から入力し、入力したデータを表示する。例えば、コンピュータ30は、実異常度の時間変化と、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値とのうち少なくとも1つを示すグラフ(例えば、図12に示すようなグラフ)と、駆動条件に対する実異常度の進展速度(例えば、図13に示すような図)を表示する。
本発明の実施例3による診断装置10を、図14から図17を用いて説明する。本実施例による診断装置10は、モータ50の異常度(実異常度)に対する閾値が設定されており、予測した異常度(実異常度)が閾値に達する時刻を予測し、保守や運転計画を提示することができる。以下では、本実施例による診断装置10について、実施例1による診断装置10と異なる点を主に説明する。
図14は、本実施例による診断装置10の構成を示す図である。本実施例による診断装置10は、実施例1による診断装置10(図2)において、演算部12が保守・運転計画出力部129を備え、記憶部13が異常度閾値137を格納する。
保守・運転計画出力部129は、異常度予測部124が算出した将来の実異常度の予測値が、記憶部13に格納された異常度閾値137に達する時刻を算出する。保守・運転計画出力部129は、例えば、モータ50の実異常度の時間変化(例えば、図9)を基に、現在のモータ50の駆動条件の下で将来の実異常度の予測値が異常度閾値137に達する時刻を算出することで、将来の実異常度の予測値が異常度閾値137に達する時刻を算出することができる。
保守・運転計画出力部129は、算出した、将来の実異常度の予測値が異常度閾値137に達する時刻(または、算出した時刻に達するまでの時間)に応じて、モータ50についての保守・運転計画を出力する。保守・運転計画には、例えば、モータ50の保守が必要な時期を示す保守計画や、モータ50の推奨される運転を示す運転計画が含まれる。保守・運転計画は、将来の実異常度の予測値が異常度閾値137に達するまでの時間に応じて予め任意に作成され、保守・運転計画出力部129に設定されている。
異常度閾値137は、モータ50の実異常度に対する閾値であり、予め任意に定められて記憶部13に格納されている。例えば、モータ50の部品交換や修理が必要となるときの異常度を、異常度閾値137と定めることができる。
保守・運転計画と異常度閾値137は、例えば、診断装置10の使用者がコンピュータ30を操作することにより、診断装置10に入力することができる。
図15は、本実施例による診断装置10が行う処理のフローチャートである。図15に示すフローチャートは、実施例1による診断装置10が行う処理のフローチャート(図3)において、ステップS114の処理が加わっている。
ステップS114で、保守・運転計画出力部129は、将来の実異常度の予測値が異常度閾値137に達する時刻を算出し、算出した時刻(または、算出した時刻に達するまでの時間)に応じてモータ50についての保守・運転計画を出力し、出力した保守・運転計画を入出力部11を介してコンピュータ30に表示する。
図16は、本実施例による診断装置10が求めた、モータ50の実異常度の時間変化の例を示す図である。図16には、実異常度の時間変化を示すグラフの下に、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値を示すグラフを描いてある。図16の実異常度の時間変化を示すグラフにおいて、異常度閾値137は、縦軸の値Xで示されており、将来の実異常度の予測値は、時刻txで異常度閾値137(X)に達する。
保守・運転計画出力部129は、時刻txを求め、現在の時刻t0から時刻txに達するまでの時間(例えば、現在の駆動条件の下で、実異常度の予測値が異常度閾値137(X)に達するまでの時間)と、保守・運転計画(例えば、保守が必要な時期)を出力する。
コンピュータ30は、演算部12が演算して求めたデータを入出力部11から入力し、入力したデータを表示する。例えば、コンピュータ30は、実異常度の時間変化と、駆動条件と、駆動条件に対応するバイアス値とのうち少なくとも1つを示すグラフ(例えば、図16に示すようなグラフ)と、保守・運転計画を表示する。
図17は、コンピュータ30が表示する保守・運転計画の例を示す図である。図17に示す保守・運転計画には、現在の駆動条件(駆動条件1)と、実異常度の予測値が異常度閾値137に達するまでの時間Tt(図16において、現在の時刻t0から時刻txに達するまでの時間)と、保守を推奨する時期(保守が必要な時期の範囲Tm1からTm2)が含まれている。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
10…診断装置、11…入出力部、12…演算部、13…記憶部、20…ネットワーク、30…コンピュータ、40…電流センサ、50…モータ、120…劣化特徴量抽出部、121…駆動条件推定部、122…バイアス算出部、123…実異常度算出部、124…異常度予測部、125…予測誤差算出部、126…予測パラメータ修正要否判定部、127…予測パラメータ修正部、128…異常度進展算出部、129…保守・運転計画出力部、130…正常モデル、131…駆動条件推定式、132…バイアス算出式、133…実異常度履歴、134…駆動条件履歴、135…予測パラメータ、136…異常度進展、137…異常度閾値、138…実異常度予測値。
Claims (7)
- 回転機に流れる電流のデータから、前記回転機の異常を示す指標である異常度の算出に用いる劣化特徴量を求める劣化特徴量抽出部と、
前記回転機の駆動条件と、前記駆動条件により前記劣化特徴量が受ける影響を表す式であるバイアス算出式とを用いて、前記駆動条件が前記劣化特徴量に与える影響を除去するための値であるバイアス値を算出するバイアス算出部と、
前記劣化特徴量抽出部が求めた前記劣化特徴量と、前記回転機の正常時の前記劣化特徴量とを用いて前記異常度を算出し、算出した前記異常度を前記バイアス値により補正することで、前記駆動条件の変化の影響を除去した前記異常度である実異常度を求める実異常度算出部と、
実異常度算出部が求めた、複数の時刻についての前記実異常度に対して時系列解析を行うことで、将来の前記実異常度の予測値を算出する異常度予測部と、
を備えることを特徴とする診断装置。 - 同じ時刻または同じ時間帯についての、前記実異常度算出部が求めた前記実異常度と、前記異常度予測部が算出した前記実異常度の予測値との差を、前記異常度の予測誤差として算出する予測誤差算出部と、
前記予測誤差を用いて、前記異常度予測部が前記実異常度の予測値を算出するときに用いるパラメータを修正する必要があるか否かを判定する予測パラメータ修正要否判定部と、
前記予測パラメータ修正要否判定部が前記パラメータを修正する必要があると判定した場合に、前記予測誤差が減少するように前記パラメータを修正する予測パラメータ修正部と、
を備える請求項1に記載の診断装置。 - 前記電流のデータから前記駆動条件を推定する駆動条件推定部を備え、
前記駆動条件は、前記回転機が運転しているときの前記回転機に関する物理量の値であり、
前記バイアス算出部は、前記駆動条件推定部が推定した前記駆動条件と前記バイアス算出式とを用いて、前記バイアス値を算出する、
請求項1に記載の診断装置。 - 前記バイアス算出式は、前記回転機の正常時の前記劣化特徴量の、前記駆動条件の変化による変化量を表す式である、
請求項1に記載の診断装置。 - 前記回転機の将来の前記駆動条件を入力する入出力部と、
前記駆動条件と前記実異常度の時間変化の傾きである進展速度との相関関係を算出する異常度進展算出部と、
を備え、
前記異常度進展算出部は、前記入出力部が入力した前記駆動条件に対応する前記進展速度を前記相関関係を用いて求め、求めた前記進展速度から将来の前記実異常度の予測値を算出する、
請求項1に記載の診断装置。 - 表示装置が接続されており、または表示装置を備え、
前記異常度予測部が算出した前記実異常度の予測値が、予め定められた異常度閾値に達する時刻を算出する保守・運転計画出力部を備え、
前記保守・運転計画出力部には、前記回転機についての保守・運転計画が設定されており、
前記保守・運転計画出力部は、算出した前記時刻に応じて前記保守・運転計画を出力して前記表示装置に表示する、
請求項1に記載の診断装置。 - 表示装置が接続されており、または表示装置を備え、
前記実異常度と前記駆動条件と前記バイアス値とのうち少なくとも1つを前記表示装置に表示する、
請求項1に記載の診断装置。
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