JP7439802B2 - プレス成形方法及びプレス成形金型 - Google Patents
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Description
図9に示すプレス成形品5は、平面視において二股に分岐する形状を有する天板部1と、天板部1に連続する縦壁部3を有している。以下、このようなプレス成形品5における二股に分岐した部分を分岐部23という。
まず、ブランク(金属板)をパッドで押さえたフォーム成形等により、図10に示すような、天板部1と、天板部1から第1屈曲部2を介して連続し縦壁部3の基端側となる中間縦壁部9と、中間縦壁部9から第2屈曲部11を介して連続する棚部13を有する中間成形品7を張り出し成形する(第1成形工程)。
このようなプレス成形方法として、張り出し成形とトリムを同一工程で実施する例が特許文献1に開示されている。
第1成形工程及びトリム工程によって形成された中間縦壁部9、第2屈曲部11及びフランジ部25(図12(a)参照)は、第2成形工程によって第2屈曲部11が曲げ戻されることで、図12(b)に示すように、縦壁部3となる。このとき、曲げ戻された第2屈曲部11に相当する部分には加工硬化が生じるため、図中矢印で示す部分の板厚が減少する。
さらに、伸びフランジ変形によって材料不足が生じやすいo部が近傍にあることで(図9参照)、a部からo部へ向かう材料流れが生じる。この板厚減少及び材料流れの両作用によってa部に割れが発生する。また、同様の理由でb部にも割れが生じる。
このように、従来の技術では、分岐部中央部に形成される縦壁部3の先端(o部)と、分岐部両側部における曲げ戻した部分(a部、b部)の割れを同時に防止することが難しいという課題があった。
以下、各工程を説明する。なお、図1において、目標形状及び中間成形品7を説明した図9~図11と同一部分及び対応する部分には同一の符号が付してある。
第1成形工程S1は、図1(a)に示すような中間成形品7を成形する工程であり、中間成形品7は、天板部1と、天板部1から第1屈曲部2を介して連続し縦壁部3の基端側となる中間縦壁部9と、中間縦壁部9から第2屈曲部11を介して連続する棚部13を有している。
図2(a)と図2(b)を比較すると分かるように、第2屈曲部11を成形する第1ダイ肩部19aに関し、第2屈曲部11の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RDC(以降、単に「ダイ肩RDC」という)が第2屈曲部11の分岐部両側部を成形する部分の曲率半径RDS(以降、単に「ダイ肩RDS」という)よりも小さく設定されている(RDC<RDS)。
また、第1屈曲部2を成形する第1パンチ肩部15aに関し、第1パンチ肩部15aの曲率半径RP1(以降、単に「パンチ肩RP1」という)が第2成形工程で用いる第2パンチ35の第2パンチ肩部35aの曲率半径RP2(図6参照)よりも小さく設定されている(RP1<RP2)。
なお、第1ダイ肩部19aにおける分岐部中央部を成形する部分と分岐部両側部を成形する部分の間は、R(アール)が徐々に変化する形状(徐変部)(図1(a)の拡大図)となっている。
図3(a)、図3(b)に示すように、中間成形品7における第1屈曲部2の曲げ半径R1´が目標形状における第1屈曲部2の曲げ半径R1(図7参照)より小さくなっており(R1´<R1)、第2屈曲部11における分岐部中央部の曲げ半径R2Cが分岐部両側部の曲げ半径R2Sよりも小さくなっている(R2C<R2S)。
また、第2屈曲部11における曲げ半径R2Cの部分(分岐部中央部)と曲げ半径R2Sの部分(分岐部両側部)の間は、曲げ稜線方向に曲げ半径が中央から両側に向かって徐々に拡大する徐変部となっている。
R2C<R2Sとする理由について、図4を用いて以下に説明する。なお、R1´<R1とする理由については第2成形工程の説明にて後述する。
図4に示すように、分岐部中央部の第2屈曲部11の曲げ半径(R2C)を小さくし、分岐部両側部の曲げ半径(R2S)を大きくすることで、O-O断面における線長(X点からX´点に至る実線の距離)が長く、P-P断面における線長(X点からX´点に至る破線の距離)が短くなる。したがって、第1成形工程S1では、分岐部中央部の変形量が、分岐部両側部よりも大きくなっている。
なお、X点、X´点は両断面を重ねたときに両断面で共通する点である。
よって、中間成形品7の成形時に分岐部中央部の変形量を大きくして、中間縦壁部9の面積が広くなるように成形しておくことで、第2成形工程S5における伸びフランジ変形量が小さくなり、図9に示したo部の割れが抑制される。
トリム工程S3は、第1成形工程S1で成形された中間成形品7の棚部13から不要部を除去してフランジ部25を形成する工程である。
トリム工程S3は、図5に示すように、上刃27と、下刃29と、板押さえ31を有するトリム金型33によって行われる。上刃27及び下刃29は、協働して中間成形品7の棚部13から不要部を除去するためのものであり、それぞれ、切断するライン(トリムライン)に対応した形状のトリム刃(図示せず)を備えている。
第2成形工程S5は、第1屈曲部2の曲げ半径を目標形状の曲げ半径に成形すると共に、トリム工程S3で不要部を除去した中間成形品7の第2屈曲部11を曲げ戻して縦壁部3を形成して、目標形状に成形する工程である。
第2成形工程S5は、図6に示すように、第1屈曲部2の曲げ半径を目標形状に成形する第2パンチ肩部35aを有する第2パンチ35と、第2パンチ35と対向して配置され金属板を第2パンチ35に押し付ける第2パッド37と、第2屈曲部11を曲げ戻す第2ダイ39を有する第2金型41によって行われる。
図7は図1(c)の拡大図におけるQ-Q断面を示すものである。
R1´<R1とする理由について、図8を用いて以下に説明する。
その結果、o部(図9参照)に材料が供給されるので、o部における伸びフランジ割れをさらに緩和することができる。
材料となる金属板は、板厚2.3mm、引張強度が780MPa級の熱延鋼板とした。
プレス成形工程は、実施の形態1で説明した、第1成形工程S1、トリム工程S3、第2成形工程S5の3工程とした。
CAE成形解析により得られた、第2成形工程S5の下死点における、a部、b部、o部(図9参照)の最大板厚減少率を表1に示す。
表1に示すように、従来例1の場合、o部の板厚減少率は成形限界の20%未満であるが、a部、b部の板厚減少率は成形限界の20%を超えている。よって、従来例1のプレス成形方法では、o部に割れは発生しないが、a部、b部に割れが発生すると判定された。
従来例2の場合、a部、b部の板厚減少率は成形限界の20%未満であるが、o部の板厚減少率は成形限界の20%を超えている。よって、従来例2のプレス成形方法では、a部、b部に割れは発生しないが、o部に割れが発生すると判定された。
以上、本実施例の結果から、ロアアームのような平面視において二股に分岐する形状を有するプレス成形品の分岐部中央部の縦壁部先端と、分岐部両側部の割れを同時に防止できることがわかった。
すなわち、第2屈曲部11の分岐部中央部と分岐部両側部の曲げ半径を同じとし、その値を種々変更して、第2成形工程(リストライク)下死点の板厚減少率を求めることで、分岐部中央部と分岐部両側部の曲げ半径が同じであって、分岐部中央部の板厚減少率が成形限界範囲内で分岐部両側部の板厚減少率が成形限界を超える例(A値)と、分岐部中央部の板厚減少率が成形限界範囲を超え、分岐部両側部の板厚減少率が成形限界内となる例(B値)とを予め求めておき、分岐部中央部の曲げ半径を成形限界範囲内となるA値以下とし、分岐部両側部の曲げ半径を成形限界範囲内となるB値以上とし、かつ分岐部中央部の曲げ半径を分岐部両側部の曲げ半径より小さく設定するとよい。
2 第1屈曲部
3 縦壁部
5 プレス成形品
7 中間成形品
9 中間縦壁部
11 第2屈曲部
13 棚部
15 第1パンチ
15a 第1パンチ肩部
17 第1パッド
19 第1ダイ
19a 第1ダイ肩部
21 第1金型
23 分岐部
25 フランジ部
27 上刃
29 下刃
31 板押さえ
33 トリム金型
35 第2パンチ
35a 第2パンチ肩部
37 第2パッド
39 第2ダイ
41 第2金型
Claims (2)
- 平面視において二股に分岐する形状を有する天板部と、該天板部に連続する縦壁部を備えたプレス成形品をプレス成形するプレス成形方法であって、
金属板をパッドでパンチに押し付けた状態で、前記天板部と、該天板部から第1屈曲部を介して連続し前記縦壁部の基端側となる中間縦壁部と、該中間縦壁部から第2屈曲部を介して連続する棚部を、前記パンチとダイが協働して張り出し成形する第1成形工程と、
前記棚部から不要部を除去してフランジ部を残すトリム工程と、
前記第1屈曲部の曲げ半径を目標形状の曲げ半径に成形すると共に、前記第2屈曲部を曲げ戻して前記中間縦壁部と前記フランジ部に相当する部位からなる前記縦壁部を形成して目標形状に成形する第2成形工程とを備え、
前記第1成形工程は、前記第1屈曲部の曲げ半径を前記目標形状における第1屈曲部の曲げ半径よりも小さく、かつ、前記第2屈曲部における分岐部中央部の曲げ半径が、該分岐部中央部の曲げ稜線方向両側の部分の曲げ半径よりも小さくなるように成形することを特徴とするプレス成形方法。 - 請求項1記載のプレス成形方法を実現するためのプレス成形金型であって、
前記天板部と、該天板部から第1屈曲部を介して連続し前記縦壁部の基端側となる中間縦壁部と、該中間縦壁部から第2屈曲部を介して連続する棚部を有する中間成形品を成形する第1金型と、
前記棚部から不要部を除去してフランジ部を残すトリム金型と、
前記第1屈曲部の曲げ半径を目標形状の曲げ半径に成形すると共に、前記第2屈曲部を曲げ戻して、前記中間縦壁部と前記フランジ部に相当する部位からなる前記縦壁部を形成して目標形状に成形する第2金型とを備え、
前記第1金型は、前記第1屈曲部を成形する第1パンチ肩部を有する第1パンチと、該第1パンチと対向して配置され金属板を前記第1パンチに押し付ける第1パッドと、前記第2屈曲部を成形する第1ダイ肩部を有する第1ダイとを有し、
前記第2金型は、前記第1屈曲部の曲げ半径を目標形状に成形する第2パンチ肩部を有する第2パンチと、該第2パンチと対向して配置され金属板を前記第2パンチに押し付ける第2パッドと、前記第2屈曲部を曲げ戻す第2ダイとを有し、
前記第1パンチ肩部の曲率半径RP1が前記第2パンチ肩部の曲率半径RP2よりも小さく、かつ、前記第1ダイ肩部における前記第2屈曲部の分岐部中央部を成形する部分の曲率半径RDCが前記第1ダイ肩部における前記第2屈曲部の分岐部中央部の曲げ稜線方向両側部分を成形する部分の曲率半径RDSよりも小さくなるように設定されていることを特徴とするプレス成形金型。
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