JP7439297B2 - 肥大型心筋症治療用薬学組成物およびその組成物を用いた治療方法 - Google Patents

肥大型心筋症治療用薬学組成物およびその組成物を用いた治療方法 Download PDF

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Description

本開示は、S(-)-シベンゾリン(S(-)-Cibenzoline)を有効成分として含む肥大型心筋症治療用薬学組成物およびこれを用いた肥大型心筋症の治療方法に関する。
肥大型心筋症(HCM、hypertrophic cardiomyopathy)は、20世紀中半、急死患者および大動脈弁狭窄手術後の死亡患者を部検している間に中隔肥大が観察されて知られた疾患であり、初期には非常に珍しい疾患とされていたが、現在は出生500人に1人で頻度が高く、特に若い年に急死を起こす最もありふれた疾患で常染色体優性遺伝をすることが明らかになった。現在、肥大型心筋症に使用可能な治療方法として承認された薬物は存在しないが、処置ガイドラインでは、ベータ抑制剤(Beta blocker)、カルシウムチャネル抑制剤(Calcium channel blocker)およびジソピラミド(disopyramide)の使用が知られている。しかし、既存のオフ-ラベル治療方法(off-label SOC(standard of care))の場合、肥大型心筋症の症状のみ緩和するだけで、疾病進行の抑制など根本的な治療には効果がないことが知られている。
濱田(Hamada)博士の論文(J Cardiol.2016Mar;67(3):279-86)によれば、ジソピラミドと同じ系のClass Ia抗不整脈剤であるシベンゾリン(cibenzoline)の場合、ジソピラミドに比べて副作用が少なく効果を奏し得ることを示唆する臨床根拠が提示された。しかし、対照群が存在せず実際の治療ケースに関連する臨床研究がなかった。したがって、前記研究だけでは、シベンゾリンの肥大型心筋症の用途および用法を定めることはできず、臨床により有効性および安全性が立証されなければならない。
シベンゾリンは、2つの鏡像異性体であるS(-)-シベンゾリンとR(+)-シベンゾリンとして存在する薬物であるにもかかわらず、それぞれの鏡像異性体に対する実体的な薬理学的研究はなかった。
本出願人は、S(-)-シベンゾリンの肥大型心筋症患者への投与時、既存のオフ-ラベル治療方法に比べて優れた有効性および安全性を立証した。
本発明は、肥大型心筋症治療のために、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む薬学組成物を提供する。
本発明は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む薬学組成物を対象に投与する肥大型心筋症の治療方法を提供する。
本発明は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む肥大型心筋症治療用薬学組成物を提供する。
本発明の一実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硫酸(sulfuric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、ヘプタン酸(heptanoic acid)、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、乳酸(lactic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、安息香酸(benzoic acid)、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸(o-(4-hydroxy-benzoyl)-benzoic acid)、桂皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic acid)、1,2-エタンジスルホン酸(1,2-ethanedisulfonic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(2-hydroxyethane-sulfonic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、p-クロロベンゼンスルホン酸(p-chlorobenzenesulfonic acid)、2-ナフタレンスルホン酸(2-naphthalenesulfonic acid)、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン1-カルボン酸(4-methyl-bicyclo[2.2.2]oct-2-ene1-carboxylic acid)、グルコ-ヘプトン酸(gluco-heptonic acid)、4,4-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)(4,4-methylenebis(3-hydroxy-2-naphthoic)acid)、3-フェニルプロピオン酸(3-phenylpropionic acid)、トリメチル-酢酸(trimethyl-acetic acid)、3級ブチル酢酸(tertiary butylacetic acid)、ラウリル硫酸(lauryl sulfuric acid)、グルコン酸(gluconic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ヒドロキシ-ナフトエ酸(hydroxy-naphthoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ジベンゾイル酒石酸(Dibenzoyl-tartaric acid)、2,3-ジベンゾイル-酒石酸(2,3-Dibenzoyl-tartaric acid)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一水和物(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一(ジメチルアミド)(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジ-p-トルオイル-酒石酸(O,O-Di-p-toluoyl-tartaric acid)、メンチルオキシ酢酸(Menthyloxyacetic acid)、α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸(α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸(5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸(N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、2-フェニルプロピオン酸(2-Phenylpropionic acid)、ピログルタミン酸(Pyroglutamic acid)、キナ酸(Quinic acid)、アスパラギン酸(Aspartic acid)、1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸(1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[1-phenylethyl]phthalamic acid)、3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物(3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、カンファン酸(Camphanic acid)、ムコン酸(muconic acid)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄および亜鉛イオンとの塩から選択されるものであってもよい。本発明の一実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、コハク酸塩である。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を、立体化学的に純粋な化合物であってその純度85%ee以上含むものであってもよい。本発明の一実施形態において、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩は、純度85%ee以上、90%ee以上、98%ee以上、99%ee以上含むものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を1日総投与量200mg、300mg、400mgまたは600mg含むことができる。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物を1日1回、2回または3回投与するものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、1日1回または1日2回投与するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物を300mg1日1回、200mg1日1回、300mg1日2回または200mg1日2回投与するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記肥大型心筋症は、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、下記の特性の1つ以上を有するものであってもよい
i)前記組成物のCmaxが約200ng/mL~約700ng/mL;
ii)前記組成物のAUCが約2,000ng・hr/mL~約15,700ng・hr/mL;または
iii)前記組成物のS(-)-シベンゾリンの最小有効血漿濃度は160ng/mL以上。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、最小有効血漿濃度が160ng/mL、162ng/mL、170ng/mL、180ng/mL、190ng/mL、または200ng/mL以上であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記肥大型心筋症は、下記の特性の1つ以上を有する閉塞性肥大型心筋症(HOCM)であってもよい
a)最大左心室壁厚が15mm以上(家族歴がある場合に13mm以上);
b)休息期左心室流出路(LVOT、Left Ventricular Outflow Tract)圧力勾配が30mmHg以上であるか、挑発(バルサルバ法(Valsalva)、直立(Standing)または運動後などの刺激を含む)後にLVOT勾配が50mmHg以上;または
c)左心室駆出率(LVEF、left ventricular ejection fraction)55%以上。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、下記の特性の1つ以上を有する肥大型心筋症患者には投与されないものであってもよい
1)ファブリー病、アミロイド症、またはLV肥大を伴ったヌーナン症侯群のように、HCMのように見える心臓肥大を誘発する周知の浸潤性、遺伝性または蓄積性障害の1つ以上を含む心臓疾患の病歴がある患者;
2)スクリーニングまたはベースライン前に持続的な心房細動の病歴がある患者;
3)スクリーニング前の2ヶ月以内に植込み型除細動器(ICD)植込みまたは臨床試験期間中のICD植込みが計画されている患者;
4)駆出率<55%である収縮期心不全またはニューヨーク心臓学会(NYHA)等級IV心不全症状がある患者;
5)スクリーニングまたはベースライン時、QTcF>480msecである患者;
6)スクリーニングまたはベースライン時、収縮期BP<90mmHgまたは>160mmHgおよび/または拡張期BP>100mmHgまたは<60mmHgである患者;
7)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にバルデナフィル塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、トレミフェンクエン酸塩、フィンゴリモド塩酸塩またはエリグルスタット酒石酸塩、またはQT/QTcFを延長することが知られた他の製剤を併用した患者;
8)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にジソピラミドまたはラノラジンを併用した患者;
9)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にベータ遮断剤以外に他の抗不整脈剤を併用した患者(ただし、医師の所見上、ベータ遮断剤を使用中の患者がスクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に用量/薬物に変化がない場合は例外とする。);
10)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に収縮促進剤、アンジオテンシン転換酵素I、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、硝酸塩薬物、PDE抑制剤、抗コリン剤、キサンチン誘導体などを併用した患者;または
11)前にcardiotoxic agentsとしてdoxorubicinが投与された患者。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、左心室流出路圧力差(LVOT gradient)の数値を改善させるものであってもよい。本発明の一実施形態では、前記改善は、初期測定値対比、少なくとも1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、最大酸素消費量(PVO)の数値を改善させるものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記改善は、初期測定値対比、少なくとも1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、ニューヨーク心臓学会分類(NYHA class)段階で区分される症状を改善させるものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記改善は、分類第4群から分類第3群に、分類第4群から分類第2群に、分類第4群から分類第1群に、分類第3群から分類第2群に、分類第3群から分類第1群に、または分類第2群から分類第1群に低下させるものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記薬学組成物は、他の心臓疾患治療剤と併用投与されるものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記他の心臓疾患治療剤は、ベータ抑制剤(Beta blocker)、カルシウムチャネル抑制剤(Calcium channel blocker)および抗不整脈剤(antiarrhythmic drugs)からなる群より選択されるものであってもよい。
また、本発明は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物を対象に投与することを含む肥大型心筋症の治療方法を提供する。
本発明の一実施形態において、前記対象は、ヒト患者であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法の前記薬学的に許容される塩は、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硫酸(sulfuric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、ヘプタン酸(heptanoic acid)、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、乳酸(lactic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、安息香酸(benzoic acid)、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸(o-(4-hydroxy-benzoyl)-benzoic acid)、桂皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic acid)、1,2-エタンジスルホン酸(1,2-ethanedisulfonic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(2-hydroxyethane-sulfonic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、p-クロロベンゼンスルホン酸(p-chlorobenzenesulfonic acid)、2-ナフタレンスルホン酸(2-naphthalenesulfonic acid)、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン1-カルボン酸(4-methyl-bicyclo[2.2.2]oct-2-ene1-carboxylic acid)、グルコ-ヘプトン酸(gluco-heptonic acid)、4,4-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)(4,4-methylenebis(3-hydroxy-2-naphthoic)acid)、3-フェニルプロピオン酸(3-phenylpropionic acid)、トリメチル-酢酸(trimethyl-acetic acid)、3級ブチル酢酸(tertiary butylacetic acid)、ラウリル硫酸(lauryl sulfuric acid)、グルコン酸(gluconic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ヒドロキシ-ナフトエ酸(hydroxy-naphthoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ジベンゾイル酒石酸(Dibenzoyl-tartaric acid)、2,3-ジベンゾイル-酒石酸(2,3-Dibenzoyl-tartaric acid)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一水和物(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一(ジメチルアミド)(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジ-p-トルオイル-酒石酸(O,O-Di-p-toluoyl-tartaric acid)、メンチルオキシ酢酸(Menthyloxyacetic acid)、α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸(α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸(5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸(N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、2-フェニルプロピオン酸(2-Phenylpropionic acid)、ピログルタミン酸(Pyroglutamic acid)、キナ酸(Quinic acid)、アスパラギン酸(Aspartic acid)、1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸(1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[1-phenylethyl]phthalamic acid)、3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物(3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、カンファン酸(Camphanic acid)、ムコン酸(muconic acid)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄および亜鉛イオンとの塩から選択されるものであってもよい。
本発明の一実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、コハク酸塩である。
本発明の一実施形態において、前記薬学治療方法のS(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩は、立体化学的に純粋な化合物であってその純度85%ee以上含むものであってもよい。本発明の一実施形態において、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩は、純度85%ee以上、90%ee以上、98%ee以上、99%ee以上含むものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物を1日総投与量200mg、300mg、400mgまたは600mg 投与することができる。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物を1日1回、2回または3回投与するものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記治療方法は、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を1日1回または1日2回投与するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物を300mg1日1回、200mg1日1回、300mg1日2回または200mg1日2回投与するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法の対象は、閉塞性肥大型心筋症患者(HOCM)であってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、左心室流出路圧力差(LVOT gradient)の数値を改善させるものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記改善は、初期測定値対比、少なくとも1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、最大酸素消費量(PVO)の数値を初期改善させるものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記改善は、初期測定値対比、少なくとも1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、ニューヨーク心臓学会分類(NYHA class)段階で区分される症状を改善するものであってもよい。本発明の一実施形態において、前記改善は、分類第4群から分類第3群に、分類第4群から分類第2群に、分類第4群から分類第1群に、分類第3群から分類第2群に、分類第3群から分類第1群に、または分類第2群から分類第1群に低下させるものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記治療方法は、対象に他の心臓疾患治療剤と併用投与することができる。
本発明の一実施形態において、前記治療方法の他の心臓疾患治療剤は、ベータ抑制剤(Beta blocker)、カルシウムチャネル抑制剤(Calcium channel blocker)および抗不整脈剤(antiarrhythmic drugs)からなる群より選択されるものであってもよい。
また、本発明は、シベンゾリンまたはその薬学的に許容される塩を含む薬学組成物;および対象に投与することを指示する指針を含むキットを提供する。
本発明による治療用組成物および方法は、肥大型心筋症患者を治療する。また、本発明による組成物および方法は、既存のオフ-ラベル治療方法に比べて優れた有効性および安全性を有する。
実施例3の臨床デザインを示すチャートである。 実施例3のコホート1に対する投与前後における安静時の左心室流出路圧力差の測定結果を示すチャートである。 実施例3のコホート1に対する投与前後におけるバルサルバ操作時の左心室流出路圧力差の測定結果を示すチャートである。
定義
本明細書において使う用語を次のように定義する。
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」は、薬学組成物への使用に適合し、そのような使用のために国または州政府機関によって公式的に承認されるか、または動物(特に、ヒト)に使用するために米国薬局方またはその他一般的に認められる薬局方に登載されていることを意味する。
「薬学的に許容される担体」は、希釈剤、補助剤、賦形剤または担体、または薬学的に許容され本開示内容による化合物とともに投与される他の成分を意味する。
「薬学的に許容される塩」は、薬理学的活性を向上させることができる塩を指す。薬学的に許容される塩の例示は、無機または有機酸で形成された酸付加塩、金属塩およびアミン塩を含む。無機酸で形成された酸付加塩の例は、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硫酸(sulfuric acid)、硝酸(nitric acid)およびリン酸(phosphoric acid)との塩を含む。有機酸で形成された酸付加塩の例示は、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、ヘプタン酸(heptanoic acid)、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、乳酸(lactic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、安息香酸(benzoic acid)、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸(o-(4-hydroxy-benzoyl)-benzoic acid)、桂皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic acid)、1,2-エタンジスルホン酸(1,2-ethanedisulfonic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(2-hydroxyethane-sulfonic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、p-クロロベンゼンスルホン酸(p-chlorobenzenesulfonic acid)、2-ナフタレンスルホン酸(2-naphthalenesulfonic acid)、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン1-カルボン酸(4-methyl-bicyclo[2.2.2]oct-2-ene1-carboxylic acid)、グルコ-ヘプトン酸(gluco-heptonic acid)、4,4-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)(4,4-methylenebis(3-hydroxy-2-naphthoic)acid)、3-フェニルプロピオン酸(3-phenylpropionic acid)、トリメチル-酢酸(trimethyl-acetic acid)、3級ブチル酢酸(tertiary butylacetic acid)、ラウリル硫酸(lauryl sulfuric acid)、グルコン酸(gluconic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ヒドロキシ-ナフトエ酸(hydroxy-naphthoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ジベンゾイル酒石酸(Dibenzoyl-tartaric acid)、2,3-ジベンゾイル-酒石酸(2,3-Dibenzoyl-tartaric acid)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一水和物(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一(ジメチルアミド)(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジ-p-トルオイル-酒石酸(O,O-Di-p-toluoyl-tartaric acid)、メンチルオキシ酢酸(Menthyloxyacetic acid)、α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸(α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸(5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸(N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、2-フェニルプロピオン酸(2-Phenylpropionic acid)、ピログルタミン酸(Pyroglutamic acid)、キナ酸(Quinic acid)、アスパラギン酸(Aspartic acid)、1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸(1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[1-phenylethyl]phthalamic acid)、3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物(3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、カンファン酸(Camphanic acid)およびムコン酸(muconic acid)がある。金属塩の例示は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄および亜鉛イオンとの塩を含む。アミン塩の例示は、カルボン酸との塩を形成するのに十分に強いアンモニアおよび有機窒素塩基を有する塩を含む。
「溶媒和物」は、非共有分子間力によって結合した化学量論的または非化学量論的量の溶媒を追加的に含む本開示内容による化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、無毒性、および/または微量でヒトに投与することが許容される。
「水和物」は、非共有分子間力によって結合した化学量論的または非化学量論的量の水を追加的に含む本開示内容による化合物またはその塩を意味する。
「治療的有効量」は、本化合物が投与される時、疾病状態または疾病の症状の進行を改善、緩和、安定化、逆転、鈍化または遅延させるのに十分な化合物の量を意味する。
「治療(treatment or treating)」は、疾患の進行または重症度を改善または逆転させたり、このような疾患の1つ以上の症状または副作用を改善または逆転させることを意味する。本明細書では、「治療」は、有益であるか好ましい臨床結果を得るための接近法を追加的に意味し、ここで、「有益であるか好ましい臨床結果」は、部分的であれ、または全体的であれ、症状の緩和、障害または疾患の程度の減少、安定化された疾患状態、疾患状態の遅延または鈍化、疾患状態の改善または緩和、および疾患の快方を含むが、これに限定されない。
「対象」は、すべてのヒトまたは非-ヒト動物を含む。用語「非-ヒト動物」は、脊椎動物、例えば、非-ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギおよびイイズナ、齧歯類、鳥類、両生類、および爬虫類を含むが、これに限定されない。一実施形態において、前記対象は、哺乳類として、ヒト(人)、非-ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、イイズナまたは齧歯類である。本明細書において、用語「対象」、「患者」および「個体」は、相互交換的に使われる。
「組成物」は、明示された量の本願に記載の化合物または薬学的に許容される塩、本願に定義されたような賦形剤および他の任意的な成分を含む生成物、それだけでなく、明示された量の明示された成分の組み合わせから直接または間接的に生成された任意の生成物を指す。
「賦形剤」は、対象体に活性剤を投与することを補助する物質を指す。製薬賦形剤は、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味剤、香味剤および着色剤を含むが、これに限定されない。
「キット」は、疾患の治療のための組成物を投与するための成分を含む製品を意味する。一具体例では、キットの成分を保持する容器またはボックスを含み、食品医薬局が承認したプロトコルまたは標識が添付される。
「Cmax」、「Cmin」、「Tmax」、「Tmin」、「T1/2」および「AUC」は、時間に対する薬物濃度の薬動学的分析に使われる用語である。「Cmax」は、薬物が投与された後に、そして第2用量の投与前に薬物が身体の特定の区画または試験領域で達成する最大(またはピーク)血漿濃度を示す用語である。Cmaxは、投薬後に薬物が達成する最小(または低点(trough))濃度であるCminの反対である。「Tmax」は、Cmaxが観察される時間を記述するために薬動学で使われる用語であり、「Tmin」は、薬物が投与された後に、そして第2用量の投与前にCminが観察される時間を記述するために薬動学で使われる用語である。「T1/2」は、体内で薬物血漿濃度が1/2に減少するのにかかる時間を意味する。「AUC」は、時間に対する薬物濃度の薬動学的プロットにおける曲線下面積(数学的には定積分として公知である)である。
「最小有効血漿濃度」は、治療効果を発揮できる最低の血漿内薬物の濃度を意味する。
「a」または「an」は、1つ以上を意味する。
「含む」の用語およびその派生語は、包括的な開放型用語で、本願で相互交換可能に使われる。例えば、「含む」の使用は、いかなる要素であるかを問わず、前記動詞を含む節(clause)の主語によって所有される唯一の要素ではないことを意味する。
「約」は、特定された値を含む範囲値を意味し、当業者はこれを、特定された値と非常に類似に見なすであろう。一実施形態において、用語「約」は、一般的に許容される測定を利用した標準偏差以内を意味する。一実施形態において、約は、前記特定された値の+/-10%まで延長される範囲を意味する。一実施形態において、約は、前記特定された値を意味する。
S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩
Figure 0007439297000001
S(-)-シベンゾリン(S(-)-Cibenzoline;escibenzoline;S-Cibenzoline;S-Cifenline;(-)-Cibenzoline;(-)-Cifenline;S-2-(2,2-diphenylcyclopropyl)-4,5-dihydro-1H-imidazole)は、前記化学式1の構造を有する化合物である。
本発明のS(-)-シベンゾリンは、S(-)-シベンゾリン遊離塩だけでなく、その塩化物を含むことができ、S(-)-シベンゾリンは、薬学的に許容される塩だけでなく、すべての水和物、そして溶媒和物であってもよい。一実施形態において、前記水和物または溶媒和物は、前記S(-)-シベンゾリンをメタノール、エタノール、アセトン、1,4-ジオキサンのような水と混合できる溶媒に溶かした後、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化されるか、または再結晶化された溶媒和物(特に、水和物)であってもよい。また、凍結乾燥のような方法で製造可能な多様な量の水含有化合物以外に水和物をはじめとする化学量論的溶媒和物も含むことができる。本発明の一実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、コハク酸塩である。
一実施形態において、本化合物は、立体化学的に純粋な化合物、例えば、他の立体異性体から実質的に自由な(free)もの(例えば、85%ee以上、90%ee以上、95%ee以上、97%ee以上または99%ee以上)を含む。
前記S(-)-シベンゾリンは、患者に投与するために製剤化され、1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。担体は、製剤の他の成分と両立可能であり、受容者に有害でないとの意味であり、薬剤は、経口、静脈内または直腸投与などで製剤化されてもよい。製剤化の例としては、錠剤、カプセル、シロップのような通常の形態に製剤化されてもよい。
肥大型心筋症(HCM、Hypertrophic CardioMyopathy)
肥大型心筋症は、心臓筋肉の異常な肥大に特徴づけられ、高度発現性、単一遺伝子、常染色体優性心筋疾患群を含み、心筋の機能的単位である根絶に寄与する構造タンパク質遺伝子のいずれか1つにおける1,000種を超える公知の点突然変異の1つ以上によって誘発される。初期には非常に珍しい疾患とされていたが、現在は出生500人に1人で頻度が高く、特に若い年に急死を起こす最もありふれた疾患で常染色体優性遺伝をすることが明らかになった。主に若い成人で健康検診のために心電図および心臓超音波を行いながら偶然に発見された後、追跡観察をする場合が多い。
血力学的または症状学的に肥大型心筋症は、左心室(酸素化された血を全身に噴き出す心臓の4つの部屋の1つ)から出る血液の流れによって閉塞型(obstructive)と非-閉塞型(non-obstructive)に分けられる。特に、心室中隔(心臓の左と右を分ける壁)は肥大になり、左心室側に膨れ上がって左心室から出る血流を妨げ、これによって、心室は血液を噴き出すために負担をもつようになる。これを肥大型閉塞性心筋病症という。閉塞型は、弁膜下部閉塞と心室中部閉塞に分けられ、遅延性閉塞型は、安静時は圧力差がないが、挑発時、30mmHg以上に発生する場合をいう。
肥大型心筋症を患う患者に対する臨床症状は運動性呼吸困難であり、卒中をはじめとする全身動脈血栓塞栓性疾患、急性肺浮腫、心房細動、血量症または高血量症の不耐性、および失神を含む。最近は、心臓突然死(Sudden cardiac Death、SCD)も肥大型心筋症の主な症状として確認されている。
現在、肥大型閉塞性心筋病症患者の症状に対する処置は、生活習慣の改善から手術まで多様である。肥大型閉塞性心筋病症に適用可能な現行治療療法は、大部分の肥大型閉塞性心筋病症患者の症状発生の原因になる機序を適切に標的化できなかったために最適化されていない。しかも、現行治療療法は、限られた有効性または副作用によって長期間使用できず、肥大型閉塞性心筋病症が心不全に進行するのを防止することができない。
治療対象
本発明の一実施形態において、治療対象は、下記の特性の1つ以上を含むことができる
a)最大左心室壁厚が15mm以上(家族歴がある場合に13mm以上);
b)休息期左心室流出路(LVOT、Left Ventricular Outflow Tract)圧力勾配が30mmHg以上であるか、挑発(バルサルバ法(Valsalva)、直立(Standing)または運動後などの刺激を含む)後にLVOT勾配が50mmHg以上;または
c)左心室駆出率(LVEF、left ventricular ejection fraction)55%以上。
本発明の一実施形態において、前記治療対象は、下記の特性の1つ以上を含まなくてもよい
1)ファブリー病、アミロイド症、またはLV肥大を伴ったヌーナン症侯群のように、HCMのように見える心臓肥大を誘発する周知の浸潤性、遺伝性または蓄積性障害の1つ以上を含む心臓疾患の病歴がある患者;
2)スクリーニングまたはベースライン前に持続的な心房細動の病歴がある患者;
3)スクリーニング前の2ヶ月以内に植込み型除細動器(ICD)植込みまたは臨床試験期間中のICD植込みが計画されている患者;
4)駆出率<55%である収縮期心不全またはニューヨーク心臓学会(NYHA)等級IV心不全症状がある患者;
5)スクリーニングまたはベースライン時、QTcF>480msecである患者;
6)スクリーニングまたはベースライン時、収縮期BP<90mmHgまたは>160mmHgおよび/または拡張期BP>100mmHgまたは<60mmHgである患者;
7)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にバルデナフィル塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、トレミフェンクエン酸塩、フィンゴリモド塩酸塩またはエリグルスタット酒石酸塩、またはQT/QTcFを延長することが知られた他の製剤を併用した患者;
8)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にジソピラミドまたはラノラジンを併用した患者;
9)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にベータ遮断剤以外に他の抗不整脈剤を併用した患者(ただし、医師の所見上、ベータ遮断剤を使用中の患者がスクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に用量/薬物に変化がない場合は例外とする。);
10)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に収縮促進剤、アンジオテンシン転換酵素I、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、硝酸塩薬物、PDE抑制剤、抗コリン剤、キサンチン誘導体などを併用した患者;または
11)前にcardiotoxic agentsとしてdoxorubicinが投与された患者。
投与
治療学的目的(例:肥大型心筋症治療)を達成するための物質(例:シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩)の投与をいう。前記投与は、経口または非経口で投与することができ、非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与などで投与することができる。前記投与は、対象に治療学的目的を達成するために薬物を伝達するすべての方法を含む。
投与用量
本発明の薬学組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に選択可能である。
本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物の1日1回投与量は、約100mg~約1,000mg、約100mg~800mg、約100mg~600mg、約150mg~約1,000mg、約150mg~約800mg、約150mg~約600mg、約150mg~約400mg、約200mg~約1,000mg、約200mg~約800mg、約200mg~約600mg、または約200mg~約400mgであってもよい。
本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物の1日総投与量は、200mg、300mg、400mgまたは600mgであってもよい。さらなる一実施形態において、前記1日投与量は、1回投与ですべて投与される。
また、本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物の1日総投与量は、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、590mg、600mgであってもよい。
投与回数
本発明の薬学組成物の適した投与回数は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に選択可能である。
本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物の1日投与回数は、1日1~5回、1日3回、1日2回または1日1回であってもよいが、本発明の一実施形態において、1日1回または1日2回投与することができる。
投与用量および回数の組み合わせ
本発明の薬学組成物の適した投与用量および回数の組み合わせは、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に選択可能である。
本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物は、300mg1日1回、200mg1日1回、300mg1日2回または200mg1日2回投与するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、本発明の薬学組成物は、200mg1日1回、210mg1日1回、220mg1日1回、230mg1日1回、240mg1日1回、250mg1日1回、260mg1日1回、270mg1日1回、280mg1日1回、290mg1日1回、300mg1日1回、310mg1日1回、320mg1日1回、330mg1日1回、340mg1日1回、350mg1日1回、360mg1日1回、370mg1日1回、380mg1日1回、390mg1日1回、400mg1日1回、410mg1日1回、420mg1日1回、430mg1日1回、440mg1日1回、450mg1日1回、460mg1日1回、470mg1日1回、480mg1日1回、490mg1日1回、500mg1日1回、510mg1日1回、520mg1日1回、530mg1日1回、540mg1日1回、550mg1日1回、560mg1日1回、570mg1日1回、580mg1日1回、590mg1日1回、600mg1日1回、100mg1日2回、105mg1日2回、110mg1日2回、115mg1日2回、120mg1日2回、125mg1日2回、130mg1日2回、135mg1日2回、140mg1日2回、145mg1日2回、150mg1日2回、155mg1日2回、165mg1日2回、165mg1日2回、170mg1日2回、175mg1日2回、180mg1日2回、185mg1日2回、190mg1日2回、195mg1日2回、200mg1日2回、205mg1日2回、210mg1日2回、215mg1日2回、220mg1日2回、225mg1日2回、230mg1日2回、245mg1日2回、250mg1日2回、255mg1日2回、260mg1日2回、265mg1日2回、270mg1日2回、275mg1日2回、280mg1日2回、285mg1日2回、295mg1日2回または300mg1日2回投与するものであってもよい。
キット
本明細書の組成物は、キット形態で提供される。一具体例において、キット内に含まれたボックスまたは容器は、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよびプロピレン容器の1つから選択され、本発明の成分を保持するように用意される。当該容器は、蓋のあるチューブまたは瓶であってもよい。
剤形
本発明の薬学剤形は、速放層(IR layer、Immediate Release layer)と徐放層(ER layer、Extended Release layer)とからなるる二層錠、または徐放層からなる単一錠であってもよい。
前記二層錠の速放層は、徐放層に比べた時、相対的に生体に先にS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩が放出される剤形を意味し、その構成に限定されない。
本発明の一実施形態において、前記剤形は、多重微粒子(multiparticulate)剤形、マトリックス(matrix)剤形、球体(sphere)剤形であってもよいが、これに限定されない。
発明の一実施形態において、前記薬学剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含むペレット(pellet)、シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む薬物-コーティングされた球体、またはシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む層を少なくとも1つの集団として含むことができる。
発明の一実施形態において、前記二層錠剤形は、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩:徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が約1:4~約1:1、約1:3~約1:1、約3:7~約1:1、約1:2~約1:1、約7:13~約1:1、約2:3~約1:1、約9:11~約1:1、約1:4~9:11、約1:3~約9:11、約3:7~約9:11、約7:13~約9:11、約2:3~約9:11、約1:4~2:3、約1:3~約2:3、約3:7~約2:3、約7:13~約2:3、約1:4~7:13、約1:3~約7:13、約3:7~約7:13、約1:4~3:7、約1:3~約3:7または約1:4~約1:3であってもよい。
速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩:徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が約1:4未満の場合、薬物投与後直ちに有効な効果を得にくく、速放層に含まれたS(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩:徐放層に含まれたシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の重量比が約1:1超過の場合、徐放層の量が少なくなって適切な徐放効果を得にくい。
発明の一実施形態において、前記単一錠の剤形は、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の徐放効果を有するために徐放化基剤を含む。
本発明の一実施形態において、徐放化基剤は、一般剤形の薬物より長期間にわたって徐々に放出されながら薬物が治療血漿濃度に到達後一定時間持続するために使用される。
本発明の一実施形態において、徐放化基剤は、約1,500~約200,000センチポアズ(cps)、約1,550~約200,000、約1,600~約200,000センチポアズ(cps)、約1,500~約180,000センチポアズ(cps)、約1,550~約180,000、約1,600~約180,000センチポアズ(cps)、約1,500~約10,000センチポアズ(cps)、約1,550~約150,000または約1,600~約150,000センチポアズ(cps)の粘度を有することができる。粘度が約1,500センチポアズより低いか、約200,000センチポイズより高ければ、S(-)-シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の薬物動力学的挙動による時、好ましい溶出パターンが達成されにくいことがある。
本発明の一実施形態において、徐放化基剤は、イオン性基剤、膨潤性基剤および疎水性基剤から単独または選択された2つ以上の混合徐放化基剤を組み合わせて使用する。
本発明の一実施形態において、イオン性基剤は、薬物とイオン結合により薬物の放出を制御する薬学的に許容可能な基剤をいい、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマーおよびアルギン酸ナトリウムから選択された1つ以上を含む。
本発明の一実施形態において、膨潤性基剤は、水溶液で瞬間的に膨潤して空隙の減少により薬物の放出を制御する薬学的に許容可能な基剤をいい、ヒドロキシエチルセルロースおよびその塩または誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体およびカラギーナンから選択された1つ以上を含む。
本発明の一実施形態において、疎水性基剤は、水溶液に溶解せず、空隙の遮断により薬物の放出を制御する薬学的に許容可能な基剤をいい、ポリビニルアセテート、グリセリルベヘネート、硬化ヒマシ油、硬化植物油およびステアリン酸から選択された1つ以上を含む。
本発明の一実施形態において、徐放化基剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびその塩または誘導体、ポリエチレンオキシドおよびその塩または誘導体、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ポリビニルアセテートから選択された1つ以上を含む。
本発明の一実施形態において、徐放化基剤は、剤形の100重量部対比、約5~約30重量部、約6~約30重量部または約7~約30重量部である。前記徐放化基剤が約5~約30重量部の場合、優れた薬物放出調節および適切なシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の放出速度で最適な血漿濃度に到達する効果を有することができる。前記徐放化基剤が約30重量部超過の場合、初期の薬物放出が遅く、約12時間内に薬物が100%溶出しない問題および薬物の大きさが大きくなる問題があり、前記徐放化基剤が約5重量部未満の場合、初期の薬物放出が速く、約12時間以前に薬物がすでに全部放出される問題が発生する。
左心室流出路圧力差(Left ventricular outflow track gradient、LVOT gradient)
左心室流出路圧力差(LVOT gradient)は、心臓の左心室と大動脈との間の流出路の圧力を測定した時、左心室収縮期血圧と左心室弛緩期血圧との差を意味する。
前記左心室流出路圧力差(LVOT gradient)が減少する場合、肥大型心筋症による心不全などの危険が減少することが知られており、左心室流出路圧力差(LVOT gradient)は、心臓疾患に関連して運動、薬物または装置のような治療方法を評価する要素として活用できる。
最大酸素消費量(PVO、Peak volume O
最大酸素消費量は、臨床的に酸素摂取量(Vo、oxygen uptake)、二酸化炭素生産量(Vco、carbon dioxide production)および分間換気(minute ventilation:1分間肺から排出されるガスの全体量)を測定して定量化することができる。最大酸素消費量は、運動中に吸気および呼気された空気から測定されたそれぞれのOおよびCO濃度をガス分析器で測定して決定される。
前記最大酸素消費量は、心血管の健康を評価する標準指標でかつ、慢性心不全の強力な予後指標である。最大酸素消費量は、体質量に比例するというが、薬物、装置、運動および体重変化を含む多様な要因によって変化する。最大酸素消費量は、心臓疾患に関連して運動、薬物または装置のような治療方法を評価する要素として活用できる。
ニューヨーク心臓学会分類(New York Heart Association(NYHA)classification)
ニューヨーク心臓学会による心不全(心臓機能喪失、heart failure)の重症度分類で、心不全の重症度を自覚症状によって4段階に分類したものである。1902年、心臓寄贈に対する測定可能な要素がなかった時、医師の間での患者区分のために定められたものであるが、現在も心不全において重要な決定要素として使用されている。
[NYHA4段階の分類]
第1群(A):活動の制限がない患者。日常活動では症状がない。
第2群(B):活動の軽い制限を伴う患者。安静および中等程度の動作には症状がない。
第3群(C):活動の著しい制限を伴う患者。安静時にのみ無症状である。
第4群(D):完全な安静を必要とし、ベッドまたは椅子生活しなければならない患者。少しだけ動いても不快な症状が現れる。
一実施形態では、心不全重症度第2群、第3群、または第4群に相当する患者を治療する方法を提供する。また、他の実施形態では、心不全重症度第3群、または第4群に相当する患者を治療する方法を提供する。
一実施形態において、S(-)-シベンゾリンの治療的有効量の投与は、前記対象体のニューヨーク心臓協会(NYHA)の機能別分類を低下させる。本発明の一実施形態において、前記改善は、分類第4群から分類第3群に、分類第4群から分類第2群に、分類第4群から分類第1群に、分類第3群から分類第2群に、分類第3群から分類第1群に、または分類第2群から分類第1群に低下させるものであってもよい。
心電図検査(ECG、ElectroCardioGram)
心臓の拍動によって心筋から発生する活動電流を体表面の適当な2箇所に誘導し、電流計で記録して心筋活動電流の記録を図で示したものを意味する。一般的に、12箇所の誘導心電図計を活用し、これにより、心拍動数、心臓電気軸と回転程度を評価することができ、心室内伝導の異常の有無も分かる。
心電図信号の波形は、心臓の収縮によって発生する電流と電位差を曲線で表示する。心電図信号の1周期内には、一般的に、P波(P wave)、Q波(Q wave)、R波(R wave)、S波(S wave)、T波(T wave)が連続して発生する。P波(P wave)は心房の収縮、一連のQ波(Q wave)およびR波(R wave)およびS波(S wave)は心室の収縮を示し、T波(T wave)は心室の弛緩時に現れる特徴である。
QRS(QRS-complex)は、心室収縮に関連するQ、R、S波の組み合わせで示され、心室に興奮が伝達されて心臓が収縮することを示す。
QTcは、Q波とT波との間隔であるQT間隔を心拍数で補正したものと定義する。QTcを計算する方法のうち、Fridericia法(QTcF=QT/RR0.33)の補正式を用いたものをQTcFと定義する。
改善
本発明の改善の意味は、患者の臨床的または病理学的状態を薬物投与前より好転させるもので、直間接的に肥大型心筋症症状を治療することを意味する。
本発明の一実施形態において、前記心電図検査のQTcFおよびQRSを改善させるとの意味は、薬物投与前の初期測定値対比、少なくとも薬物投与後に数値が増加(または延長)したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記左心室流出路圧力差(LVOT gradient)の数値を改善させるとの意味は、薬物投与前の初期測定値対比、少なくとも薬物投与後の数値が1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものであってもよい。また、左心室流出路圧力差(LVOT gradient)の数値の場合、その値が0に収斂するものであってもよい。本発明の一実施形態において、投与前後の左心室流出路圧力差(LVOT gradient)が約10mmHg 減少するものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記最大酸素消費量(PVO)の数値を改善させるとの意味は、投与前の初期測定値対比、少なくとも薬物投与後の数値が1%、2%、5%または10%以上増加したものであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記ニューヨーク心臓学会分類(NYHA class)段階で区分される症状を改善させるとの意味は、内部(intra)または間(inter)の変化で区分される症状の等級(class)を減少させるものであってもよい。
併用投与
本発明のシベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩と他の心臓疾患治療剤が併用投与されてもよい。併用投与の時点は限定されず、追加の治療剤は、シベンゾリンまたはその薬剤学的に許容される塩の投与と同時、前または後に投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、併用投与される前記他の心臓疾患治療剤は、ベータ抑制剤(Beta blocker)、カルシウムチャネル抑制剤(Calcium channel blocker)および抗不整脈剤(antiarrhythmic drugs)などであってもよい。
本発明の一実施形態において、併用投与される前記他の心臓疾患治療剤薬物としては、アテノロール(atenolol)、メトプロロール(metoprolol)、ビソプロロール(bisoprolol)、プロプラノロール(propranolol)、ジルチアゼム(diltiazem)、ベラパミル(verapamil)、アムロジピン(amlodipine)、ジソピラミド(disopyramide)などであってもよい。
血漿最高薬物濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、最小有効血漿濃度(Minimum Effective Blood Concentration)
本発明の一実施形態において、前記組成物のCmaxは、約200ng/mL~約700ng/mLである。また、本発明の一実施形態において、前記組成物のCmaxは、約250ng/mL~約700ng/mL、約300ng/mL~約700ng/mLであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物のCmaxは、前記薬剤学的組成物の投与後約2~約4時間目に到達できる(Tmax2~4時間)。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、約2,000ng・hr/mL~約15,700ng・hr/mLのAUC(標的曲線下面積、area under the curve)を満足する。約3,000ng・hr/mL~約10,000ng・hr/mL、約3,500ng・hr/mL~約9,500ng・hr/mL、約4,000ng・hr/mL~約9,000ng・hr/mL、約4,500ng・hr/mL~約8,500ng・hr/mL、約5,000ng・hr/mL~約8,000ng・hr/mL、約5,500ng・hr/mL~約7,500ng・hr/mL、約6,000ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mLであってもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、S(-)-シベンゾリンの最小有効血漿濃度は、約160ng/mL以上である。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、最小有効血漿濃度が160ng/mL、162ng/mL、170ng/mL、180ng/mL、190ng/mL、または200ng/mL以上であってもよい。
行うべき評価と手順
血中酸素値検査:血中酸素濃度は、脈拍酸素測定装置を用いて検査する。
生命兆候:血圧、患者の生命兆候には脈拍数、体温および呼吸数評価が含まれ、血圧および脈拍数測定は、最低5分以上仰臥位(上側を向く姿勢)または静かな環境で座った姿勢(例.集中を妨げる要素なく)で安静させた後に実施する。患者の生命兆候は、血液検査と心電図(ECG)/心超音波(ECHO)前に測定し、1回の脈拍数測定と3回の連続血圧測定とからなる。
心電図(ECG):心電図検査は、心臓の電気的活動を評価するための痛みのない評価である。心電図は、最低5分以上静かな環境(例:集中を妨げる要素なく)で仰臥位で安静させた後に確認する。体に粘るパッドが付着し、このパッドには、心臓の測定値を記録し報告書を印刷する機械と連結された薄いワイヤがある。心電図検査が行われる度に、臨床試験担当者は3回の心電図記録を行う。心電図記録間の時間は2分を超えてはならず、全体時間が10分を超えない。
心超音波(心臓スキャン):患者が平らに横になった状態で患者の胸の上に探触子が置かれ、高周波音波(ヒトが聞くことのできるものよりも高い音波)が心臓に向けて体の中に伝達される。音波が身体の他の部分を通過することにより、波動の一部が再度探触子に飛び出しながら超音波機械によって心臓と血流の映像が解析される。これは、心房、弁膜および主要血管を含む心臓異常と心臓の血液駆出能力を検査するのである。
心臓の電気的活動24時間連続モニタリング(心電図):心臓の持続的な電気活動はテレメトリによって確認される。評価中、患者は水に入れないので、シャワーを浴びたり、お風呂に入ってはならない。2日以上連続で評価が行われる場合、30分のお風呂時間が与えられた後、装置を再度付着する。すべての試験記録は教育を受けた臨床試験担当者が常に観察する。この装置は12時間後にバッテリが損失しうるので、12時間ごとにバッテリ交換する。
24時間活動中の心電図モニタリング:患者には持続的な心電図モニタリングのために装置が提供される。この装置は、間欠的のみならず、持続的に患者の心臓活動をモニタリングし記録する。評価が行われる間に自由に移動することができ、臨床試験担当者が装置の使用方法に関するマニュアルを提供する。評価中には水に入れないので、シャワーを浴びたり、お風呂に入ってはならず、2日以上連続で評価が行われる場合、30分のお風呂時間が与えられた後、装置を再度付着する。
血液検査:血液サンプルは、患者の腕にある静脈に挿入された針を用いて、本試験中の特定訪問の際に採取する。このような血液検査は、患者の一般的な健康を確認するために実施されるはずであり、次の事項に対する確認のために実施される:
-妊娠の有無、血液凝固状態、肝と腎臓の状態、ウイルスの有無、禁止薬物使用の有無の確認
-血中タンパク質(トロポニンと脳性ナトリウム利尿ペプチド)の確認およびこのタンパク質が試験用薬物によってどのような影響があるかの確認。
小便検査:患者は、一般的な健康を確認するのに使用される小便サンプルを提供するように要請されるはずであり、小便から発見された他の物質は疾病と腎臓損傷を示すことがある。
血液内試験用薬物の量を測定するための血液検査(薬動学):この血液検査は、薬物が身体にどのように分布し除去されるかを示す。訪問する度に、患者から約4mLの血液を静脈穿刺または下腕静脈に挿入した留置カニューレを通して採取する。各試験群に対して、試験への参加中、約220mLの血液が採取される。臨床試験担当医師が患者の健康状態の正確な評価のために要求したり、副作用を管理するために、またはサンプルに関連する技術的な問題によって繰り返し血液サンプルを採取することもある。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲は下記の実施例によって限定されない。
実施例1.S(-)-シベンゾリンの健康な対象に対する臨床学的安全性評価(単回、単一投与)
この研究は、健康な対象者で3週間、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mgまたは300mg(純度99%ee)を1日に1回経口投与、あるいはラセミ混合物(Racemic mixture)シベンゾリンコハク酸塩150mgを1日に3回経口投与して、安全性および耐薬性を評価する臨床である。次のように投与して臨床試験を進行させた
-コホート1:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mg1日1回経口単回投与
-コホート2:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩300mg1日1回経口単回投与
-コホート3(対照群):ラセミ混合物(Racemic mixture)シベンゾリンコハク酸塩150mg1日3回経口投与。
S(-)-シベンゾリンの安全性(safety)、耐薬性(tolerability)、薬動学(pharmacokinetics)および薬力学(pharmacodynamics)を評価するための、ランダム(randomized)、二重盲検(double-blind)、偽薬制御(Placebo-Controlled)、順次(sequential)、用量増加(ascending)、単回投与(single dose)研究を行った。
この研究は、計24人の試験対象者を3つのコホートに1:1:1ランダムに割り当てて、スクリーニング、治療期間1、休薬期間、治療期間2の計4つの段階で進行させる。投薬群と無投薬群(プラシーボ、Placebo)の比率は6:2で割り当てる。
主な評価変数は、安全性と耐薬性および副作用であり、臨床検査項目は、補正されたQT間隔(corrected QT interval(Fridericia公式で計算)[QTc(F)])、QT間隔(QT interval)、QRS間隔(QRS interval)、PR間隔(PR interval)、および心室収縮速度(ventricular rate)を含む12電極心電図、生命兆候(血圧、脈拍、体温、呼吸率)、過敏反応(心電図記録および生命兆候と判断)、臨床検査評価(血液学、血液化学、小便検査など)、異常反応(重大な異常反応を含む)である。
そして、健康な対象者において、シベンゾリンの用量増加に対する血液薬動学分析のために、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、血漿最高薬物濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、最高血漿濃度半減期(T1/2)を測定した。
コホート1と2に参加する場合、薬動学採血は48時間(試験薬服用前60分以内、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、30時間、36時間、48時間の時点ごとに)行われ、翌日72時間後に薬動学採血を行い、5日に1回服用した時点から96時間後に最後の薬動学採血を完了した。
コホート3に参加する場合の薬動学採血は、午前8時の投薬を基準として、服用前と服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間(2番目の服用時点である午後4時の投薬前に実施される)の時点ごとに、2番目の試験薬投与後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間(3番目の試験薬投薬前に実施される)の時点ごとに、3番目の試験薬投与後には30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間後にそれぞれ採血が進行し、2日~3日目の薬動学採血は、初投薬期間の午前8時を基準として、24時間、36時間、そして48時間後に行われた。
また、健康な対象者において、シベンゾリンの薬力学分析のために、左心室駆出率(Left ventricular ejection fraction)、収縮期および弛緩期の左心室壁厚(Left ventricular systolic and diastolic dimensions)、速度時間積分(Velocity time integral)を測定した。
コホート1~3の参加者とも、心電図、薬力学評価(心臓超音波検査)などは、投与前1日、投与当日(1日目)、投与後2日間(48時間、2日目および3日目)に検査を行った。
前記臨床試験を通して、コホート1および2は、既存の薬物療法で使用されているコホート3と比較した時、重大な副作用が発生しないことを確認した。これにより、S(-)-シベンゾリン200mgおよび300mg1日1回投与療法の安全性および耐薬性を確認した。
下記表1のように、コホート1および2のCmax、Tmax値がコホート3と類似の水準であることを確認した。
Figure 0007439297000002
下記表2のように、コホート1および2の健康な対象者の心電図検査の結果、投与前より1.5時間後には増加し、投与後8時間でも増加して効果を示したことから、本発明の対象のQcTFおよびQRS延長効果を確認した。このようなシベンゾリンの心電図数値に対する影響は、肥大型心筋症患者における薬力学的治療効果をもたらすことが予想された。
Figure 0007439297000003
実施例2.S(-)-シベンゾリンの健康な対象に対する臨床学的安全性評価(単回反復投与)
この研究は、健康な対象者において下記のコホート(Cohort)4~6の參加者に臨床試験を進行させて、安全性および耐薬性を評価した
-コホート4:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mg1日1回/計5日経口投与
-コホート5:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩300mg1日1回/計14日経口投与
-コホート6(対照群):ラセミ混合物(Racemic mixture)シベンゾリンコハク酸塩150mg1日3回/計14日経口投与。
シベンゾリンの安全性(safety)、耐薬性(tolerability)、薬動学(pharmacokinetics)および薬力学(pharmacodynamics)を評価するための、ランダム(randomized)、二重盲検(double-blind)、偽薬制御(Placebo-Controlled)、順次(sequential)、用量増加(ascending)、単回投与(single dose)、反復投与研究を行った。
この研究は、計24人の試験対象者を3つのコホートに1:1:1ランダムに割り当てて、スクリーニング、治療期間1、休薬期間、治療期間2の計4段階で進行させた。投薬群と無投薬群(プラシーボ、Placebo)の比率は6:2で割り当てた。
主な評価変数は、安全性と耐薬性および副作用であり、臨床検査項目は、補正されたQT間隔(corrected QT interval(Fridericia公式で計算)[QTc(F)])、QT間隔(QT interval)、QRS間隔(QRS interval)、PR間隔(PR interval)、および心室収縮速度(ventricular rate)を含む12電極心電図、生命兆候(血圧、脈拍、体温、呼吸率)、過敏反応(心電図記録および生命兆候と判断)、臨床検査評価(血液学、血液化学、小便検査など)、異常反応(重大な異常反応を含む)である。
そして、健康な対象者において、シベンゾリンの用量増加に対する血液薬動学分析のために、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、血漿最高薬物濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、最高血漿濃度半減期(T1/2)を測定した。
コホート4に参加する場合、薬動学採血は、投薬後3日と4日目には試験薬服用前に行われ、5日目には試験薬服用前、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間の時点で行われ、6日目に最後の試験薬服用から24時間後の時点の薬動学採血を行った。薬動学分析は、5日目から6日目の採血に基づいて分析した。
コホート5に参加する場合、薬動学採血は、投薬後3日、4日および5日目には臨床試験薬服用前に採血が行われ、14日目には試験薬服用前、服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間の時点でそれぞれ採血が行われ、15日目に最後の試験薬服用から24時間後の時点の薬動学採血を行った。薬動学分析は、14日目から15日目の採血に基づいて分析した。
コホート6に参加する場合、薬動学採血は、投薬後午前8時の投薬を基準として、3日、4日および5日目には試験薬服用前に実施され、14日目には服用前および服用後30分、1時間、1時間30分、2時間、2時間30分、3時間、4時間、8時間の時点で薬動学採血を行った。薬動学分析は、14日目の採血に基づいて分析した。
また、健康な対象者において、シベンゾリンの薬力学分析のために、左心室駆出率(Left ventricular ejection fraction)、収縮期および弛緩期の左心室壁厚(Left ventricular systolic and diastolic dimensions)、速度時間積分(Velocity time integral)を測定した。
コホート4に参加する場合、心電図および薬力学評価(心臓超音波検査)などは、投与前1日、投与当日(1日目)、投与後1日(2日目)、5日目および6日目に検査を行った。
コホート5に参加する場合、心電図および薬力学評価(心臓超音波検査)などは、投与前1日、投与当日(1日目)、5日目、14日目および15日目に検査を行った。
コホート6に参加する場合、心電図および薬力学評価(心臓超音波検査)などは、投与前1日、投与当日(1日目)、5日目および14日目に検査を行った。
前記臨床試験を通して、コホート4および5は、既存の薬物療法で使用されているコホート6と比較した時、多回投与でも重大な副作用が発生しないことを確認した。これにより、S(-)-シベンゾリン200mgおよび300mg1日1回投与療法の安全性および耐薬性を確認した。
また、前記実施例1において、単回投与で効果を確認したコホート1および2を多回投与したものがコホート4および5であり、コホート4および5のCmax、Tmax、AUC値は下記の通りである。
Figure 0007439297000004
*コホート4、5は、24時間を基準としてPKを測定した。コホート6は、steady stateされたことから、14日目の8時間を基準としてPKを測定したデータ(2958.8ng・hr/mL)に対して3倍したシミュレーション結果である。
下記表4のように、コホート4および5の健康な対象者の心電図検査の結果、投与前より1.5時間後には増加し、投与後8時間でも増加して効果を示したことから、本発明の対象のQcTFおよびQRS延長効果を確認した。このようなシベンゾリンの心電図数値に対する影響は、肥大型心筋症患者における薬力学的治療効果をもたらすことが予想された。特に、コホート5の場合、14日間投薬したにも耐性なくQcTFおよびQRS延長効果が維持されることを確認した。
Figure 0007439297000005
実施例3.S(-)-シベンゾリンの閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者対象に対する臨床学的安全性および効果評価
この研究は、HOCMを有する患者において、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩の安全性、耐薬性、PKおよびPDを評価するための、ランダム、二重盲検、偽薬制御、順次的、上昇する多重用量研究である
-コホート1:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mgまたは偽薬を1日1回/計5日経口投与
-コホート2:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩300mgまたは偽薬を1日1回/計5日経口投与
-コホート3:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mgまたは偽薬を1日2回/計5日経口投与。
包含基準(Inclusion criteria)を満たし、除外基準(Exclusion criteri)を満たさないHOCMを有する男性または女性被験者が研究に登録された。
計最大24人の被験者が3つのコホートに登録される(コホートあたり8人)。被験者は、最低限1セットのスクリーニング、入院滞在および臨床試験終了(EOS)を経験した。1コホートでEOSを完了した被験者は、(1)安全検討委員会(Safety Review Committee、SRC)によって検討された安全性データ、および(2)参加同意に根拠して前のコホート5日目に最後の臨床試験用医薬品(IMP)投与後7日以上の洗浄期間後に、他の後続のコホートに参加することができる。
被験者がコホート1または2の他のコホートに参加する場合、洗浄期間後にスクリーニングおよび包含/除外基準が再評価された。被験者は各コホートで5日間6:2の比率で最大3つの異なる用量のS(-)-シベンゾリントまたは偽薬を受けた。各コホートのすべての被験者は、EOS終了後、次の用量のコホートに登録される前、安全検討委員会(SRC)によって安全性データが検討された。臨床試験の最大期間は9週のスクリーニングおよび約3週の入院滞在および3週のEOSを含めて15週にわたって進行した。
1日1回投与の場合、各投与日の朝に投与された。1日2回投与の場合、第1日から第4日までは朝および夕方の12時間間隔で服用し、第5日には朝にのみ投与された。
包含基準
次の基準を満たす被験者は、臨床試験に参加する資格があると見なされる
-最大左心室壁厚が15mm以上である患者(家族歴がある場合に13mm以上である患者)
-休息期左心室流出路(LVOT、Left Ventricular Outflow Tract)圧力勾配が30mmHg以上であるか、挑発(バルサルバ法(Valsalva)、直立(Standing)または運動後などの刺激を含む)後にLVOT勾配が50mmHg以上である患者
-左心室駆出率(LVEF、left ventricular ejection fraction)55%以上である患者。
除外基準
次の基準の1つ以上を満たす被験者(患者)は、臨床試験に参加する資格がないと見なされる
1)ファブリー病、アミロイド症、またはLV肥大を伴ったヌーナン症侯群のように、HCMのように見える心臓肥大を誘発する周知の浸潤性、遺伝性または蓄積性障害の1つ以上を含む心臓疾患の病歴がある患者;
2)スクリーニングまたはベースライン前に持続的な心房細動の病歴がある患者;
3)スクリーニング前の2ヶ月以内に植込み型除細動器(ICD)植込みまたは臨床試験期間中のICD植込みが計画されている患者;
4)駆出率<55%である収縮期心不全またはニューヨーク心臓学会(NYHA)等級IV心不全症状がある患者;
5)スクリーニングまたはベースライン時、QTcF>480msecである患者;
6)スクリーニングまたはベースライン時、収縮期BP<90mmHgまたは>160mmHgおよび/または拡張期BP>100mmHgまたは<60mmHgである患者;
7)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にバルデナフィル塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、トレミフェンクエン酸塩、フィンゴリモド塩酸塩またはエリグルスタット酒石酸塩、またはQT/QTcFを延長することが知られた他の製剤を併用した患者;
8)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にジソピラミドまたはラノラジンを併用した患者;
9)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にベータ遮断剤以外に他の抗不整脈剤を併用した患者(ただし、医師の所見上、ベータ遮断剤を使用中の患者がスクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に用量/薬物に変化がない場合は例外とする。);
10)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に収縮促進剤、アンジオテンシン転換酵素I、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、硝酸塩薬物、PDE抑制剤、抗コリン剤、キサンチン誘導体などを併用した患者;または
11)前にcardiotoxic agentsとしてdoxorubicinが投与された患者。
評価変数
主な評価変数は、安全性と耐薬性および副作用であり、臨床検査項目は、補正されたQT間隔(corrected QT interval(Fridericia公式で計算)[QTc(F)])、QT間隔(QT interval)、QRS間隔(QRS interval)、PR間隔(PR interval)、および心室収縮速度(ventricular rate)を含む12電極心電図、生命兆候(血圧、脈拍、体温、呼吸率)、過敏反応(心電図記録および生命兆候と判断)、臨床検査評価(血液学、血液化学、小便検査など)、異常反応(重大な異常反応を含む)である。
シベンゾリンの用量増加に対する血液薬動学分析のために、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC、Area under the concentration-time curve)、血漿最高薬物濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、最高血漿濃度半減期(T1/2)が測定された。
また、患者において、シベンゾリンの薬力学分析のために、左心室駆出率(Left ventricular ejection fraction)、収縮期および弛緩期の左心室壁厚(Left ventricular systolic and diastolic dimensions)、速度時間積分(Velocity time integral)が測定された。
2次的な評価変数は、Cmaxなどを含む薬動学(pharmacokinetics)、経胸部超音波(Transthoracic Echocardiography、TTE)検査による左心室流出路圧力差(Left ventricular outflow track gradient、LVOT gradient)および左心室駆出率(LVEF、left ventricular ejection fraction)などであり、追加的に、血中BNP(B-natriuretic peptide)およびTroponinの数値である。
2次的な評価変数である左心室流出路圧力差(LVOT gradient)が投与前後約10mmHg減少するもので、S(-)-シベンゾリン患者への投与効果を確認した。
実施例4.S(-)-シベンゾリンの閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者対象の臨床結果(実施例3.コホート1)
前記実施例3のコホート1の臨床試験を通して、患者を対象に薬物に関連づけられた異常反応が発生しないことを確認した。これにより、S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mg1日1回投与療法の安全性および耐薬性を確認した。
前記実施例3において、効果指標である左心室流出路圧力差(Left ventricular outflow track gradient、LVOT gradient)を投与5日目に測定した。測定の結果、下記表5の通りである。安静時(図2)には、投与後約2.5時間後約13mmHg(減少率15%)、投与後約6時間後約2mmHg(減少率2%)減少することを確認した。バルサルバ操作時(図3)には、投与後約2.5時間後約30mmHg(減少率24%)、投与後約6時間後約2mmHg(減少率2%)減少することを確認した。
前記実施例3のコホート1の臨床試験の結果を通して、これより高用量である300mg1日1回、200mg1日2回(1日投与量400mg)、300mg1日2回(1日投与量600mg)投与群では、より高い治療効果および長い持続時間を示すことが予測される。
Figure 0007439297000006
*本資料は、目隠し解除前の資料であるので、真薬(6人)と偽薬(2人)資料をすべて含む結果である。
実施例5.S(-)-シベンゾリンの閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者対象の臨床薬動学-薬力学(PK-PD)比較による効能評価
下記の各用量に対するS(-)-シベンゾリンの集団薬動学-薬力学(Population PK-PD)比較は、将来の投与用量および用法のPKを予測するだけでなく、効能を予測するために行われた。集団薬動学-薬力学比較は、健康な対象者(Healthy volunteer:HV)およびHOCM患者(実施例3のコホート1:S(-)-シベンゾリンコハク酸塩200mgまたは偽薬を1日1回/計5日経口投与)対象の薬物投与データに基づいた。
前記のようなデータに基づいて構築されたPK-PD比較は、S(-)-シベンゾリンのHOCM 患者に対する投与結果を予測するのに使用された。PK-PD比較は、区画モデリング接近法を用いたPKシミュレーションおよび実施例3のコホート1の治療効果の結果に基づいて行われた。シミュレーションは、健康な対象者および実施例3のコホート1のPKデータを用いて1次経口吸収遅延時間2-区画モデルで行われた。シミュレーションの結果は下記表6の通りであった。
Figure 0007439297000007
*シミュレーションを通して、健康な対象者と患者との間の有意なPK差がないことを確認して、実施例2のコホート5の結果をそのまま採用した。
最小有効血漿濃度は、実施例4(実施例3のコホート1の臨床結果)で効果を示していた投薬後6時間後の薬動学的濃度で決定されることが予想される。下記表7のように、投薬後6時間後の濃度は216ng/mLであるが、実施例3のコホート1の患者の個人偏差を考慮して、投薬6時間後の濃度の-25%である162ng/mL(約160ng/mL)を最小有効血漿濃度として確認した。
Figure 0007439297000008
この時、前記表6のシミュレーションを通して、実施例3のコホート2および3のCmaxはすべて最小予想有効血漿濃度である162ng/mLを十分に上回り、臨床学的に各コホートにおける患者対象への投与時に効果を示すことが予想される。

Claims (15)

  1. S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を含む肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  2. 前記薬学的に許容される塩は、塩酸(hydrochloric acid)、臭化水素酸(hydrobromic acid)、硫酸(sulfuric acid)、硝酸(nitric acid)、リン酸(phosphoric acid)、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、ヘプタン酸(heptanoic acid)、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic acid)、グリコール酸(glycolic acid)、ピルビン酸(pyruvic acid)、乳酸(lactic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、リンゴ酸(malic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、酒石酸(tartaric acid)、クエン酸(citric acid)、安息香酸(benzoic acid)、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸(o-(4-hydroxy-benzoyl)-benzoic acid)、桂皮酸(cinnamic acid)、マンデル酸(mandelic acid)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、エタンスルホン酸(ethanesulfonic acid)、1,2-エタンジスルホン酸(1,2-ethanedisulfonic acid)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(2-hydroxyethane-sulfonic acid)、ベンゼンスルホン酸(benzenesulfonic acid)、p-クロロベンゼンスルホン酸(p-chlorobenzenesulfonic acid)、2-ナフタレンスルホン酸(2-naphthalenesulfonic acid)、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)、カンファースルホン酸(camphorsulfonic acid)、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン1-カルボン酸(4-methyl-bicyclo[2.2.2]oct-2-ene1-carboxylic
    acid)、グルコ-ヘプトン酸(gluco-heptonic acid)、4,4-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)(4,4-methylenebis(3-hydroxy-2-naphthoic)acid)、3-フェニルプロピオン酸(3-phenylpropionic acid)、トリメチル-酢酸(trimethyl-acetic acid)、3級ブチル酢酸(tertiary butylacetic acid)、ラウリル硫酸(lauryl sulfuric acid)、グルコン酸(gluconic acid)、グルタミン酸(glutamic
    acid)、ヒドロキシ-ナフトエ酸(hydroxy-naphthoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、ジベンゾイル酒石酸(Dibenzoyl-tartaric acid)、2,3-ジベンゾイル-酒石酸(2,3-Dibenzoyl-tartaric acid)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一水和物(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジベンゾイル-酒石酸一(ジメチルアミド)(O,O-Dibenzoyl-tartaric acid mono(dimethylamide))、ジ-p-トルオイル-酒石酸一水和物(Di-p-toluoyl-tartaric acid monohydrate)、O,O-ジ-p-トルオイル-酒石酸(O,O-Di-p-toluoyl-tartaric
    acid)、メンチルオキシ酢酸(Menthyloxyacetic acid)、α-メトキシ-α-トリフルオロメチルフェニル酢酸(α-Methoxy-α-trifluoromethylphenylacetic acid)、5-オキソ-2-テトラヒドロフランカルボン酸(5-Oxo-2-tetrahydrofurancarboxylic acid)、N-(1-フェニルエチル)フタルアミド酸(N-(1-Phenylethyl)phthalamic acid)、2-フェニルプロピオン酸(2-Phenylpropionic acid)、ピログルタミン酸(Pyroglutamic acid)、キナ酸(Quinic acid)、アスパラギン酸(Aspartic acid)、1,4-ベンゾジオキサン-2-カルボン酸(1,4-Benzodioxane-2-carboxylic acid)、N,N-ビス[1-フェニルエチル]フタルアミド酸(N,N-Bis[1-phenylethyl]phthalamic acid)、3-ブロモカンファー-10-スルホン酸水和物(3-Bromocamphor-10-sulfonic acid hydrate)、カンファン酸(Camphanic acid)、ムコン酸(muconic acid)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄および亜鉛イオンとの塩から選択されるものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  3. 前記薬学組成物は、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を、立体化学的に純粋な化合物であってその純度85%ee以上含む、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  4. 前記薬学組成物は、S(-)-シベンゾリンまたはS(-)-シベンゾリンの薬剤学的に許容される塩を1日総投与量200mg、300mg、400mgまたは600mg含むものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  5. 前記薬学組成物を1日1回または2回投与するものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  6. 前記薬学組成物を300mg1日1回、200mg1日1回、300mg1日2回または200mg1日2回投与するものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  7. 前記肥大型心筋症は、閉塞性肥大型心筋症(HOCM、Hypertrophic obstructive cardiomyopathy)である、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  8. 前記薬学組成物は、下記の特性の1つ以上を有するものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
    i)前記組成物のCmaxが約200ng/mL~約700ng/mL;
    ii)前記組成物のAUCが約2,000ng・hr/mL~約15,700ng・hr/mL;または
    iii)前記組成物のS(-)-シベンゾリンの最小有効血漿濃度は160ng/mL以上
  9. 前記薬学組成物は、最小血漿濃度が160ng/mL以上である、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  10. 前記肥大型心筋症は、下記の特性の1つ以上を有する閉塞性肥大型心筋症(HOCM、Hypertrophic obstructive cardiomyopathy)である、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
    a)最大左心室壁厚が15mm以上(家族歴がある場合に13mm以上);
    b)休息期左心室流出路(LVOT、Left Ventricular Outflow Tract)圧力勾配が30mmHg以上であるか、挑発(バルサルバ法(Valsalva)、直立(Standing)または運動後などの刺激を含む)後にLVOT勾配が50mmHg以上;または
    c)左心室駆出率(LVEF、left ventricular ejection
    fraction)55%以上
  11. 前記薬学組成物は、下記の特性の1つ以上を有する肥大型心筋症患者には投与されないものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
    1)ファブリー病、アミロイド症、またはLV肥大を伴ったヌーナン症侯群のように、HCMのように見える心臓肥大を誘発する周知の浸潤性、遺伝性または蓄積性障害の1つ以上を含む心臓疾患の病歴がある患者;
    2)スクリーニングまたはベースライン前に持続的な心房細動の病歴がある患者;
    3)スクリーニング前の2ヶ月以内に植込み型除細動器(ICD)植込みまたは臨床試験期間中のICD植込みが計画されている患者;
    4)駆出率<55%である収縮期心不全またはニューヨーク心臓学会(NYHA)等級IV心不全症状がある患者;
    5)スクリーニングまたはベースライン時、QTcF>480msecである患者;
    6)スクリーニングまたはベースライン時、収縮期BP<90mmHgまたは>160mmHgおよび/または拡張期BP>100mmHgまたは<60mmHgである患者;
    7)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にバルデナフィル塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、トレミフェンクエン酸塩、フィンゴリモド塩酸塩またはエリグルスタット酒石酸塩、またはQT/QTcFを延長することが知られた他の製剤を併用した患者;
    8)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にジソピラミドまたはラノラジンを併用した患者;
    9)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内にベータ遮断剤以外に他の抗不整脈剤を併用した患者(ただし、医師の所見上、ベータ遮断剤を使用中の患者がスクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に用量/薬物に変化がない場合は例外とする。);
    10)スクリーニング前の最低7日または半減期の5倍の期間(両者のうちより長い期間)以内に収縮促進剤、アンジオテンシン転換酵素I、アンジオテンシンII受容体遮断剤(ARB)、硝酸塩薬物、PDE抑制剤、抗コリン剤、キサンチン誘導体などを併用した患者;または
    11)前にcardiotoxic agentsとしてdoxorubicinが投与された患者
  12. 前記薬学組成物は、左心室圧力差(Left ventricular outflow track gradient、LVOT gradient)の数値を改善させるものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  13. 前記改善は、初期測定値対比、少なくとも1%、2%、5%または10%以上変化(または減少)したものである、請求項12に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  14. 前記薬学組成物は、他の心臓疾患治療剤と併用投与されるものである、請求項1に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
  15. 前記他の心臓疾患治療剤は、ベータ抑制剤(Beta blocker)、カルシウムチャネル抑制剤(Calcium channel blocker)および抗不整脈剤(antiarrhythmic drugs)からなる群より選択されるものである、請求項14に記載の肥大型心筋症治療用薬学組成物。
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