JP7436318B2 - 波状摩耗検出方法 - Google Patents
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Description
従来、レール頭頂面の波状摩耗の検出方法に関する発明としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
また、特許文献1と2のレール波状摩耗検出方法は、いずれも波状摩耗によって発生する車体の振動を検出して波状摩耗を推定するという間接的な検出方法であるため、正確性に欠けるとともに、波状摩耗によって発生する車体の振動は車体構造にも依存するため、振動センサを搭載する車体の構造が異なると検出結果に差異が生じるおそれがあるので搭載する車両が変わるたびにパラメータ等を変更する必要があるという課題がある。
本発明の他の目的は、レール表面を撮影するカメラを搭載する車両が異なったとしても検出結果に差異が生じるおそれのないレール頭頂面の波状摩耗を検出することができる波状摩耗検出方法を提供することにある。
検出対象物の表面の所定の損傷を、輝度画像を撮影可能なカメラを用いて取得した濃淡画像データに基づいて検出する表面状態検出方法において、
前記濃淡画像データに基づいて、所定の方向に第1のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第1ステップと、
前記濃淡画像データに基づいて、前記所定の方向と同一方向に前記第1のピクセル数よりも大きい第2のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第2ステップと、
前記第1ステップで得られた移動平均と前記第2ステップで得られた移動平均との差分を算出する第3ステップと、
前記第3ステップで算出された前記差分の標準偏差を算出する第4ステップと、
を含むようにしたものである。
前記濃淡画像データから、レールの頭頂部の照面の領域を抽出する第1ステップと、
前記照面の領域の濃淡画像データに基づいて、レールの長手方向に第1のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第2ステップと、
前記濃淡画像データに基づいて、レールの長手方向に前記第1のピクセル数よりも大きい第2のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第3ステップと、
前記第2ステップで得られた移動平均と前記第3ステップで得られた移動平均との差分を算出する第4ステップと、
前記第4ステップで算出された前記差分の標準偏差を算出する第5ステップと、
を含むようにする。
かかる方法によれば、他の要因と区別して正確に波状摩耗を検出することができる。
前記第2のピクセル数は、レール表面の継目部または溶接部の輝度波形の周期に対応するように設定されているようにする。
さらに、前記カメラの画素数は256万ピクセルであり、前記第1のピクセル数は20ピクセルであり、前記第2のピクセル数は100ピクセルであるようにすることで、確実に波状摩耗を検出することができる。
なお、本発明を適用する際に用いられるカメラは、対象物の輝度値を含む画像を撮影できるものであれば、どのような種類のものでも良いが、本実施形態では、対象物の表面の明るさを輝度値で表わした濃淡画像データとして出力するラインセンサカメラを使用するものとして説明する。
既存の営業列車には、濃淡が分かるラインセンサカメラや距離を測定できるプロファイルカメラを備えた軌道材料モニタリング装置を搭載し、走行中に軌道の状態を取得し記憶装置に記憶するものがあるので、そのような軌道材料モニタリング装置のプロファイルカメラで撮影した濃淡画像データを使用して波状摩耗を検出するようにしても良い。
一般に、波状摩耗のない正常なレールの表面は明るさにムラがないのに対し、波状摩耗のあるレールの表面は、レールの長手方向に沿って数cmごとに明るい部分と暗い部分を繰り返す明るさのムラが現われている。従って、撮影画像内の輝度を数値化した場合、波状摩耗箇所では、数値のばらつきの指標である標準偏差が正常な箇所よりも高くなると予想される。そこで、本発明者らは、輝度標準偏差を求めることで波状摩耗を検出できると考え、さまざまな表面状態のレールの画像データについて輝度の標準偏差を求める検証を行なった。
図2に、「正常なレール」と「波状摩耗のあるレール」、「細かい傷のあるレール」、「継目部や溶接部のあるレール」、「踏切、EJ、街灯が存在する箇所のレール」について、検証した結果得られたそれぞれの平均的な標準偏差の値を、表形式で表わしたものを示す。
なお、図2に示す各標準偏差の値は本発明者らが適当であると判断し選んだサンプルに関して得られた値であり、サンプルが異なればそれぞれの標準偏差の値も異なると予想される。従って、標準偏差の値が図2に示されている値に対して例えば±20%のようなばらつきがあるとすると、「波状摩耗」を他の要因と区別して抽出するためのしきい値を設定することができないことが分かる。
図3の波状摩耗検出方法においては、先ずラインセンサカメラにより取得された濃淡画像データを記憶装置のデータベースから読み出す(ステップS1)。次に、読み出された濃淡画像データからレール頭頂部の照り面の領域を抽出し(ステップS2)、照り面の中心線に沿って画像の上端から下端に向かって、例えば1ピクセルずつずらしながら前後20ピクセルの移動平均(以下、これを移動平均1と称する)を算出する(ステップS3)。
ここで、前後100ピクセルの移動平均をとるのは、レール表面にある継目部や溶接部に起因する数mm~1cm以下の輝度の変化の影響をなくすためである。従って、移動平均をとるピクセルの数の「100」は、前述したように、使用するカメラの画素数が異なれば異なることとなる。要は、レール表面の継目部や溶接部に起因する輝度波形の半周期に対応するようにピクセル数を決定すればよい。また、移動平均をとるピクセル数は、ピンポイントである必要はなく、例えば50~200の範囲にあれば良い。
図4に、「正常なレール」と「波状摩耗のあるレール」、「細かい傷のあるレール」、「継目部や溶接部のあるレール」、「踏切、EJ、街灯が存在する箇所のレール」について、図3のフローチャートのステップS1~S6に従って算出されたそれぞれの標準偏差の値を、表形式で表わしたものを示す。
従って、図4より、例えば2~6の範囲のどこかにしきい値を設定することで、標準偏差の値から波状摩耗のあるレールを識別することができることが分かる。なお、このしきい値の具体的な設定値は、使用する濃淡画像カメラの画素数等によって異なるので、実証実験等を行なって決定すればよい。
また、「踏切、EJ、街灯が存在する箇所のレール」に関しては、輝度のムラのサイズが大きいので、前後20ピクセルの移動平均と前後100ピクセルの移動平均のいずれをとってもピーク値が残ってしまうが、ステップS6で移動平均1と移動平均2の差分をとることでキャンセルすることができるため、その差分の標準偏差を算出すると、標準偏差の値を大きく減少させることができると考えられる。
図6(A)の手順は、ラインセンサカメラにより取得された濃淡画像データを記憶装置のデータベースから読み出し(ステップS11)、レール頭頂部の照り面の領域を抽出し(ステップS12)、照り面の中心線に沿って画像の上端から下端に向かって、例えば1ピクセルずつずらしながら20ピクセルの移動平均を算出する(ステップS13)。ここまでは、図3のフローチャートの手順と同じである。
上記のような手順により算出された標準偏差の値を示す図5(A)の表から、表面に波状摩耗のあるレールに関する標準偏差の値はあまり減少させずに、表面に細かな傷のあるレールに関する標準偏差の値をかなり減少させることができているが、「継目部や溶接部のあるレール」、「踏切、EJ、街灯が存在する箇所のレール」に関しては、標準偏差の値があまり減少していないことが分かる。そのため、算出された標準偏差の値からは波状摩耗のあるレールのみを識別することは困難である。
図6(B)では、次のステップS24において、照り面の画像データ(輝度データ)からステップS23で算出した前後20ピクセルの移動平均を引いた値を算出し、次のステップS25でその差の値に対して標準偏差を算出するようにしている。
さらに、本発明は、レール表面の波状摩耗の検出に限定されず、車輪踏面の摩耗等の検出に利用することが可能である。
C11~C13,C21~C23 ラインセンサカメラ
RC レール締結装置
Claims (4)
- 鉄道軌道に敷設されているレールの頭頂面の波状摩耗を、輝度画像を撮影可能なカメラを備えた車両が走行しながら取得したレールの頭頂面の濃淡画像データに基づいて検出する波状摩耗検出方法であって、
前記濃淡画像データから、レールの頭頂部の照面の領域を抽出する第1ステップと、
前記照面の領域の濃淡画像データに基づいて、レールの長手方向に第1のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第2ステップと、
前記濃淡画像データに基づいて、レールの長手方向に前記第1のピクセル数よりも大きい第2のピクセル数で輝度値の移動平均をとる第3ステップと、
前記第2ステップで得られた移動平均と前記第3ステップで得られた移動平均との差分を算出する第4ステップと、
前記第4ステップで算出された前記差分の標準偏差を算出する第5ステップと、
を含むことを特徴とする波状摩耗検出方法。 - 前記第5ステップで算出された前記標準偏差の値が予め設定されたしきい値よりも大きい場合に、レールの頭頂面に波状摩耗があると判断することを特徴とする請求項1に記載の波状摩耗検出方法。
- 前記第1のピクセル数は、レール表面の細かな傷の輝度波形の周期に対応するように設定され、
前記第2のピクセル数は、レール表面の継目部または溶接部の輝度波形の周期に対応するように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の波状摩耗検出方法。 - 前記カメラの画素数は256万ピクセルであり、前記第1のピクセル数は前後20ピクセルであり、前記第2のピクセル数は前後100ピクセルであることを特徴とする請求項3に記載の波状摩耗検出方法。
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