JP7436202B2 - 光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム、及び記録媒体 - Google Patents

光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム、及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム、及び記録媒体に関するものである。
特許文献1には、光伝送媒体内の光物性定数の分布を推定する方法に関する技術が開示されている。この方法は、互いに強度が異なる複数の入力光信号のパワースペクトルおよび位相スペクトルを取得する取得ステップと、入力光信号の強度ごとに、光伝送媒体内を当該入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを測定する測定ステップと、各入力光信号が光伝送媒体を伝播するモデルによる伝播シミュレーションの結果に基づいて、光伝送媒体の各々の光物性定数を推定する推定ステップとを含む。推定ステップでは、測定された出力光信号のパワースペクトルと、伝播シミュレーションの結果として得られる出力光信号のパワースペクトルとの差異を評価する評価関数を用いて、各々の光物性定数の探索を行うことにより、光伝送媒体の各々の光物性定数を推定する。
非特許文献1には、光ファイバにおいて生じる非線形のスペクトル変化を利用して光ファイバの非線形光学定数を測定する方法が記載されている。また、非特許文献2には、光ファイバにおいて生じる非線形のスペクトル変化を利用して光ファイバの波長分散値を測定する方法が記載されている。
国際公開第2014/112020号
R. H. Stolen and Chinlon Lin, "Self-phase-modulation in silicaoptical fibers", Physical Review A, The American Physical Society, Volume 17,Number 4, April 1978 Julius Vengelis, Vygandas Jarutis, and Valdas Sirutkaitis,"Estimation of photonic crystal fiber dispersion by means of supercontinuumgeneration", Optics Letters, Vol. 42, No. 9, pp. 1844-1847, May 2017
光伝送媒体を使用して光学系を構成する際に、光伝送媒体のパラメータである非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することが望まれる場合がある。例えば、数ピコ秒といった極めて短い時間幅を有する光パルス(以下、超短光パルスという)の時間波形を制御して出力する際、光パルス発生装置から出力された光パルスの時間波形の制御誤差及び歪み、並びに光パルス発生装置の後段に配置された光学系に起因する光パルスの時間波形の歪み等により、時間波形の所望の精度が得られない場合がある。そのような場合、光パルスの時間波形を精度良く測定し、所望の時間波形に近づくように光パルス発生装置に対してフィードバックを行うことが考えられる。光パルスの時間波形を精度良く測定するためには、時間波形の測定に用いる光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することが重要となる。
そこで、本開示は、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することが可能な光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム、及び記録媒体を提供することを目的とする。
本開示の一形態による光伝送媒体測定方法は、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定する方法であって、互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を光伝送媒体に対して行い、複数回の光入力にそれぞれ対応する光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルの実測値を取得する実測値取得ステップと、複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値と、複数回の光出力それぞれの強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と実測値との誤差を、非線形係数及び波長分散値を変化させつつ算出する誤差算出ステップと、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係の、特性の相異に起因する複数回の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定するパラメータ決定ステップとを含む。
本開示の一形態による光伝送媒体測定装置は、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定する装置であって、互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を光伝送媒体に対して行う光源部と、複数回の光入力にそれぞれ対応する光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルの実測値を取得するスペクトル取得部と、複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値と、複数回の光出力それぞれの強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と実測値との誤差を、非線形係数及び波長分散値を変化させつつ算出し、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係の、特性の相異に起因する複数回の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定する演算部とを備える。
本開示の一形態による光伝送媒体測定プログラムは、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定するプログラムであって、コンピュータを、互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値と、複数回の光入力にそれぞれ対応する光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と、複数回の光出力の強度スペクトルの実測値との誤差を、非線形係数及び波長分散値を変化させつつ算出する算出部、及び、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係の、特性の相異に起因する複数回の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定する決定部として機能させる。
光伝送媒体に対して光を入力することにより得られる光出力の強度スペクトルを測定するとともに、該入力光の特性、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値との理論的な関係から出力光の強度スペクトルを推定し、測定値に対する推定値の誤差が最小となる非線形係数及び波長分散値を探索することにより、理論上は、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を求めることができる。しかしながら、本発明者の知見によれば、測定誤差や計算機の丸め誤差などに起因して、実際には、この方法では非線形係数及び波長分散値を一意に定めることは難しい。但し、測定値に対する推定値の誤差が最小値付近にあるとき、非線形係数と波長分散値との間には有意な相関が存在する。そして、その相関は、光入力の特性(強度スペクトル、位相スペクトルなど)に応じて変化する。そこで、上記の測定方法、測定装置および測定プログラムでは、互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を光伝送媒体に対して行い、得られた複数回の光出力の強度スペクトルの実測値に対する推定値の誤差を、非線形係数及び波長分散値を変化させつつ算出する。そして、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係の、複数回の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定する。このような測定方法、測定装置および測定プログラムによれば、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することができる。
上記の光伝送媒体測定方法のパラメータ決定ステップにおいて、誤差を最小値に近づける非線形係数と波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、複数回の光入力にそれぞれ対応する複数の線形関係に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定してもよい。同様に、上記の光伝送媒体測定装置において、誤差を最小値に近づける非線形係数と波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、演算部は、複数回の光入力にそれぞれ対応する複数の線形関係に基づいて、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を決定してもよい。この場合、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を容易に求めることができる。
上記の光伝送媒体測定方法は、誤差算出ステップの前に、各光入力の位相スペクトルの実測値を得るステップを更に含んでもよい。この場合、正確な位相スペクトルに基づいて上記の計算を行うことができ、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を更に精度良く取得することができる。
上記の光伝送媒体測定方法の誤差算出ステップにおいて、理論的な関係に入力する位相スペクトルの仮想スペクトルを変化させて誤差と仮想スペクトルとの関係を求め、誤差が極小となる仮想スペクトルを各光入力の位相スペクトルとして推定値を算出してもよい。同様に、上記の光伝送媒体測定装置において、演算部は、理論的な関係に入力する位相スペクトルの仮想スペクトルを変化させて誤差と仮想スペクトルとの関係を求め、誤差が極小となる仮想スペクトルを各光入力の位相スペクトルとして推定値を算出してもよい。この場合、位相スペクトルが未知である光を用いて上記の測定を行うことができ、また位相スペクトルの測定を省くことができるので、非線形係数及び波長分散値の測定に要する手間を軽減することができる。
上記の光伝送媒体測定方法および光伝送媒体測定装置において、複数回の光入力の強度スペクトルが互いに異なってもよい。本発明者の研究によれば、この場合、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係が、複数回の光入力間において大きく相異する。従って、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を更に精度良く決定することができる。また、この場合、強度スペクトルの波長範囲内において複数回の光入力の位相スペクトルが平坦であってもよい。本発明者の研究によれば、これにより非線形係数及び波長分散値と誤差との関係性が更に明瞭となるので、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値をより一層精度良く決定することができる。
上記の光伝送媒体測定方法および光伝送媒体測定装置において、複数回の光入力の位相スペクトルが互いに異なってもよい。このような場合であっても、非線形係数及び波長分散値と誤差との関係が、複数回の光入力間において相異する。従って、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を精度良く決定することができる。
上記の光伝送媒体測定方法の実測値取得ステップにおいて、共通の光源から出力された光の特性を変化させながら複数回の光入力を行ってもよい。また、上記の光伝送媒体測定装置において、光源部は、一定の特性を有する光を出力する光源と、光源から出力された光の特性を変化させながら複数回の光入力を行う光特性制御部とを有してもよい。これらの場合、単一の光源を用いて複数回の光入力を行うことができるので、測定に必要な構成を簡素にすることができる。
本開示の一形態による記録媒体は、上記の光伝送媒体測定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なものである。
本開示によれば、光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することが可能な光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム、及び記録媒体を提供できる。
一実施形態に係る光伝送媒体測定装置1Aの構成を概略的に示すブロック図である。 パラメータ算出部6がコンピュータにより構成される場合のハードウェア構成例を概略的に示す図である。 一実施形態の測定方法を示すフローチャートである。 (a)部は、テストパルスの一例を示すグラフである。グラフG11はテストパルスの強度スペクトルを示し、グラフG12はテストパルスの位相スペクトルを示す。(b)部は、(a)部に示した特性を有するテストパルスの光入力に対応する光出力の強度スペクトルの実測値を示すグラフである。 (a)部は、テストパルスの一例を示すグラフである。グラフG21はテストパルスの強度スペクトルを示し、グラフG22はテストパルスの位相スペクトルを示す。(b)部は、(a)部に示した特性を有するテストパルスの光入力に対応する光出力の強度スペクトルの実測値を示すグラフである。 2つのテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係の一例を示すグラフである。(a)部は、初回に生成したテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を示す。(b)部は、2回目に生成したテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を示す。 各波長分散値において強度スペクトル推定誤差が最小となる非線形係数の値を抽出し、横軸を波長分散値、縦軸を非線形係数としてプロットしたグラフである。 或る光伝送媒体4における(a)非線形係数の波長依存性及び(b)波長分散値の波長依存性を示すグラフである。 一変形例に係る測定方法を示すフローチャートである。
本開示の光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム及び記録媒体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る光伝送媒体測定装置(以下、単に測定装置という)1Aの構成を概略的に示すブロック図である。この測定装置1Aは、非線形誘起媒質である光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を測定する装置である。光が非線形誘起媒質を伝搬すると、非線形なスペクトル変化が誘起される。このスペクトル変化は、非線形誘起媒質のパラメータ、特に非線形係数及び波長分散値に依存した変化である。そこで、測定装置1Aは、非線形係数及び波長分散値の仮想値を設定し、理論に基づく演算によって変化後の強度スペクトルを推定し、変化後の強度スペクトルの推定値と実測値との誤差を計算する。測定装置1Aは、この計算を、非線形係数及び波長分散値の仮想値を変化させつつ繰り返し行う。そして、光の特性(強度スペクトル、位相スペクトルなど)を変えて、上記の計算を再び行う。測定装置1Aは、こうして得られる強度スペクトルの推定値と実測値との誤差と、非線形係数及び波長分散値との関係に基づいて、非線形係数及び波長分散値を決定する。
測定対象である光伝送媒体4は、非線形のスペクトル変化を誘起する媒質からなり、例えば光導波路を構成する。一実施例では、光伝送媒体4は高非線形光ファイバ、またはシリコン基板等の基板上に形成された細線導波路である。細線導波路は、例えばチャネル導波路、スラブ導波路、またはリブ型導波路である。光伝送媒体4の構成材料は、例えばSiO、Si、Si等である。
光伝送媒体4は、例えば時間幅が数フェムト秒ないし数百フェムト秒である超短光パルスの時間波形の測定に用いられる。具体的には、非線形係数及び波長分散値等のパラメータが既知である光伝送媒体4の一端に、光強度調整器を介して測定対象であるパルス光源を結合し、光伝送媒体4の他端に分光器を結合する。そして、光強度を変化させつつ光パルスを光伝送媒体4に入力し、光伝送媒体4から出力される光パルスの強度スペクトルを測定する。強度スペクトルの形状は時間波形に依存して変化するので、光ファイバ伝搬シミュレーションを用いた解析により、光パルスの時間波形を知ることができる。本実施形態の測定装置1Aは、例えばこのような測定の準備として、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を精度良く求めるものである。
図1に示すように、本実施形態の測定装置1Aは、光源部2、スペクトル取得部5、及びパラメータ算出部6を備える。光源部2の出力端2aは、光伝送媒体4の一端4aと光学的に結合されている。光源部2は、光伝送媒体4に対して複数回の光入力を行う。光入力に用いられる光は、例えば時間幅が10フェムト秒以上100ピコ秒以下の光パルスである。光源部2は、複数回の光入力の中心波長を互いに等しくし、また、複数回の光入力の特性を互いに異ならせる。ここで、光入力の特性とは、例えば強度スペクトル、位相スペクトル、及び光パルスエネルギーから選択される少なくとも1つである。光パルスエネルギーとは、1つの光パルスの強度(パワー)を当該光パルスの立ち上がりから立ち下がりにわたって時間積分した値である。
本実施形態の光源部2は、光源21および光特性制御部22を含んで構成されている。光源21は、中心波長が互いに等しく且つ一定の特性を有する光(例えば光パルス)を複数回出力する。光源21は、例えばフェムト秒レーザ光源といった超短パルスレーザ光源である。光特性制御部22の入力端22aは、光源21の出力端21aと光学的に結合され、光特性制御部22の出力端22bは、光伝送媒体4の一端4aと光学的に結合されている。光特性制御部22は、光源21から出力された光の特性を毎回変化させながら、変化後の光を出力端22bから光伝送媒体4の一端4aに入力する。光特性制御部22は、例えば光源21から出力された光の強度スペクトル、位相スペクトル、及びパルスエネルギーから選択される少なくとも1つを任意の値(または形状)に変化させる。光特性制御部22は、例えば、パルスシェーパ、波長フィルタ、光ファイバ、ND(Neutral Density)フィルタ、波長板及び偏光子を含む光学系、音響光学素子(AOモジュレータ)、AOチューナブルフィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter:AOTF)、アイリス(絞り)、またはカッターにより構成され得る。或いは、光特性制御部22は、これらのうち少なくとも2つを組み合わせて構成されてもよい。
スペクトル取得部5の入力端5aは、光伝送媒体4の他端4bと光学的に結合されている。スペクトル取得部5は、光伝送媒体4への複数回の光入力に応じて光伝送媒体4の他端4bから出力される光を入力端5aに受ける。そして、スペクトル取得部5は、複数回の光入力にそれぞれ対応する光伝送媒体4からの複数回の光出力の強度スペクトルの実測値を取得する。スペクトル取得部5は、例えば、光伝送媒体4からの出力光を分光する分光器と、分光後の出力光の強度を波長毎に検出する光検出器とを含む。或いは、スペクトル取得部5は、光スペクトラムアナライザ、またはフーリエ変換型の分光光度計であってもよい。スペクトル取得部5の信号出力端5bは、パラメータ算出部6の信号入力端6aと電気的に接続されている。スペクトル取得部5は、得られた強度スペクトルの実測値に関するデータを、信号出力端5bからパラメータ算出部6へ出力する。
パラメータ算出部6は、複数回の光出力の強度スペクトルの実測値に関するデータをスペクトル取得部5から受ける。パラメータ算出部6は、本実施形態における演算部の例である。パラメータ算出部6は、複数回の光出力の強度スペクトルの実測値に基づいて、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を決定する。一例では、パラメータ算出部6は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含むコンピュータ、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)といったプログラム可能な集積回路によって構成される。これらのコンピュータまたはFPGAには、後述するパラメータ算出部6の処理を実現するための光伝送媒体測定プログラム(以下、単に測定プログラムという)が書き込まれ、保存される。測定プログラムは、測定装置1Aの出荷時にコンピュータまたはFPGAに保存されていてもよいし、出荷後に通信回線を経由して取得されたものがコンピュータまたはFPGAに保存されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていたものがコンピュータまたはFPGAに保存されてもよい。記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、USBメモリなど任意である。
図2は、パラメータ算出部6がコンピュータにより構成される場合のハードウェア構成例を概略的に示す図である。図2に示されるように、パラメータ算出部6は、物理的には、プロセッサ(CPU)61、ROM62及びRAM63等の主記憶装置、キーボード、マウス及びタッチスクリーン等の入力デバイス64、ディスプレイ(タッチスクリーン含む)等の出力デバイス65、他の装置との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュール66、ハードディスク等の補助記憶装置67などを含む、通常のコンピュータとして構成され得る。
コンピュータのプロセッサ61は、測定プログラムによって、パラメータ算出部6の機能を実現することができる。言い換えると、測定プログラムは、コンピュータのプロセッサ61を、パラメータ算出部6として動作させる。測定プログラムは、例えば補助記憶装置67といった、コンピュータの内部または外部の記憶装置(記憶媒体)に記憶される。記憶装置は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ、クラウドサーバ等が例示される。
ここで、本実施形態に係る光伝送媒体測定方法(以下、単に測定方法という)を説明し、その中で、パラメータ算出部6(測定プログラム)の処理内容、すなわち非線形係数及び波長分散値の決定について詳細に説明する。図3は、本実施形態の測定方法を示すフローチャートである。なお、この測定方法は、光源部2から出力される光の位相スペクトルが未知のまま計算する場合の方法である。また、この測定方法では、光伝送媒体4に対して2回の光入力を行うことにより、非線形係数及び波長分散値を求める。
図3に示すように、まず、ステップS11として、光源部2において光(テストパルス)を生成する。具体的には、光源21から光パルスを出力させ、その光パルスの特性(例えば位相スペクトル及び強度スペクトルの一方又は双方)を光特性制御部22が制御することにより、光特性制御部22においてテストパルスを生成する。図4の(a)部は、テストパルスの一例を示すグラフであって、図中のグラフG11はテストパルスの強度スペクトルを示し、グラフG12はテストパルスの位相スペクトルを示す。図4の(a)部に示すように、このテストパルスの強度スペクトルは、中心波長(この例では900nm)に関して対称な形状を有し、且つ、中心波長を強度のピークとする単峰性の形状を有する。また、このテストパルスの位相スペクトルは、強度スペクトルの波長範囲Λ1内において、位相が略一定の平坦(フラット)な形状を有する。このような光パルスは、一般的にフーリエ変換限界(Transform Limited:TL)パルスと呼ばれる。なお、ここでいう平坦な形状とは、位相の変動量が例えば±0.02radの範囲内であることを意味する。また、強度スペクトルの波長範囲とは、例えば強度の値がピーク強度に対して1%以上である範囲をいう。この例では、強度スペクトルの波長範囲Λ1の幅は例えば25nmである。強度スペクトルの波長範囲Λ1の外では、位相値は計算上の架空の値であってテストパルスの性状に対してほぼ寄与しないので、任意の値を有してよい。
次に、ステップS12として、生成したテストパルスの強度スペクトルを測定する。具体的には、光源部2から出力されたテストパルスを、光伝送媒体4を介在させずにスペクトル取得部5に入力し、スペクトル取得部5においてテストパルスの強度スペクトルの実測値を取得する。この強度スペクトルの実測値に関するデータは、光入力に関する強度スペクトルデータとして、パラメータ算出部6に提供される。
続いて、ステップS13として、テストパルスによる光入力を光伝送媒体4に対して行い、該光入力に対応する光伝送媒体4からの光出力の強度スペクトルの実測値を取得する(実測値取得ステップ)。図4の(b)部は、図4の(a)部に示した特性を有するテストパルスの光入力に対応する光出力の強度スペクトルの実測値を示すグラフである。具体的には、光源部2から出力されたテストパルスを光伝送媒体4の一端4aに入力し、光伝送媒体4内を伝搬して光伝送媒体4の他端4bから出力されたテストパルスの強度スペクトルの実測値をスペクトル取得部5において取得する。この実測値は、光出力に関する強度スペクトルの実測値データとして、パラメータ算出部6に提供される。なお、このステップS13では、テストパルスの光強度を変化させながらテストパルスを光伝送媒体4に複数回入力し、それぞれについて強度スペクトルの実測値を取得してもよい。
続いて、パラメータ算出部6(測定プログラム)は、光入力の強度スペクトル及び位相スペクトルと、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値と、光出力の強度スペクトルとの間の理論的な関係に基づいて、強度スペクトルの推定値を算出する。このとき、非線形係数及び波長分散値をそれぞれ個別に変化させながら、複数の推定値を算出する。そして、該複数の推定値と実測値との誤差(以下、強度スペクトル推定誤差という)を算出する(誤差算出ステップ、測定プログラムにおける算出部)。
具体的には、ステップS14として、パラメータ算出部6は、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を設定する。更に、ステップS15として、パラメータ算出部6は、光源部2から出力される(光伝送媒体4に入力される前の)テストパルスの位相スペクトルに関する仮想スペクトルを設定する。そして、ステップS16として、パラメータ算出部6は、非線形係数及び波長分散値の仮想値、並びに位相スペクトルに関する仮想スペクトルに基づいて、理論的な関係から、光出力に関する強度スペクトルを推定する。理論的な関係とは、例えば下記の数式に示される関係である。
Figure 0007436202000001

但し、Aは電界の振幅、zは伝搬距離、βnはn次分散、αは損失係数、γは非線形係数、ω0は各周波数、tは時間を表す。Aをフーリエ変換したものが位相スペクトル及び強度スペクトルに対応する。上記の数式からAを推定できるので、そのフーリエ変換によって求められる強度スペクトルも推定することができる。
その後、ステップS17として、パラメータ算出部6は、光出力に関する強度スペクトルの推定値と、光出力に関する強度スペクトルの実測値とを比較する。パラメータ算出部6は、以上のステップS15~S17を、仮想スペクトルを変化させながら強度スペクトル推定誤差が変化しなくなる(収束する)まで行い(ステップS18:NO)、強度スペクトル推定誤差が変化しなくなった(極小となった)ときの仮想スペクトルを、光入力の位相スペクトルとする(ステップS18:YES)。また、パラメータ算出部6は、このときの強度スペクトルの推定値を、ステップS14において設定した非線形係数及び波長分散値に対応する強度スペクトルの推定値とし、このときの強度スペクトル推定誤差を、ステップS14において設定した非線形係数及び波長分散値に対応する強度スペクトル推定誤差として記録する(ステップS19)。その後、パラメータ算出部6は、再びステップS14に戻り、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を変更したのち、上記のステップS15~S19を繰り返す。こうしてパラメータ算出部6は、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を変化させつつ、各仮想値に対応する強度スペクトルの推定値及び強度スペクトル推定誤差を算出する。
その後、再びステップS11に戻り、光源部2においてテストパルスを再び生成する。このテストパルスは、前に生成したテストパルスと中心波長が等しく、強度スペクトルが異なる光パルスである。図5の(a)部は、テストパルスの一例を示すグラフであって、図中のグラフG21はテストパルスの強度スペクトルを示し、グラフG22はテストパルスの位相スペクトルを示す。図5の(a)部に示すように、このテストパルスの強度スペクトルは、先のテストパルス(図4の(a)部を参照)と同様に、中心波長(この例では900nm)に関して対称な形状を有し、且つ、中心波長を強度のピークとする単峰性の形状を有する。但し、強度スペクトルの波長範囲Λ2の幅すなわち強度スペクトル幅は、先のテストパルス(図4の(a)部)よりも小さくなっている。この例では、波長範囲Λ2の幅は例えば7nmである。また、このテストパルスの位相スペクトルは、強度スペクトルの波長範囲内において、位相が略一定の平坦な形状を有する。このようなテストパルスを生成したのち、上述したステップS12~S19を再び繰り返す。図5の(b)部は、図5の(a)部に示した特性を有するテストパルスの光入力に対応する光出力の強度スペクトルの実測値を示すグラフである。以上の処理を経て、互いに中心波長が等しく特性が異なる2つのテストパルスに関する、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を取得することができる。
図6は、2つのテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係の一例を示すグラフである。図6の(a)は、初回に生成したテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を示す。図6の(b)は、2回目に生成したテストパルスに関する非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を示す。これらのグラフでは、縦軸に波長分散値(単位:ps2/km)をとり、横軸に非線形係数(単位:/W/km)をとり、強度スペクトル推定誤差の大きさを色の濃淡で表している。色が濃い領域ほど強度スペクトル推定誤差が小さい。図中の破線で囲まれた領域B1,B2は、誤差が最小値に近い領域(言い換えると、強度スペクトル推定誤差が或る閾値よりも小さい領域)を表す。領域B1,B2の存在範囲に鑑みると、強度スペクトル推定誤差を最小値に近づける非線形係数と波長分散値との組み合わせは、線形関係を有することがわかる。そして、これらの図を比較すると、2つのテストパルスの特性(この例では強度スペクトル幅)が互いに異なる場合、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係(具体的には、線形関係における比例係数など)に差異が生じる。言い換えると、このような非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係の相異は、初回及び2回目の光入力の特性の相異に起因する。
図7は、各波長分散値において強度スペクトル推定誤差が最小となる非線形係数の値を抽出し、横軸を波長分散値、縦軸を非線形係数としてプロットしたグラフである。図7において、菱形の複数のプロットP1は図6の(a)部に対応し、円形の複数のプロットP2は図6の(b)部に対応する。また、直線G1は複数のプロットP1に基づく近似直線であり、直線G2は複数のプロットP2に基づく近似直線である。すなわち、直線G1は、初回の光入力に対応する、強度スペクトル推定誤差を最小値に近づける非線形係数及び波長分散値の線形関係を表す。また、直線G2は、2回目の光入力に対応する、誤差を最小値に近づける非線形係数及び波長分散値の線形関係を表す。パラメータ算出部6(測定プログラム)は、図3のステップS20において、このような非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係の、初回及び2回目の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を決定する(パラメータ決定ステップ、測定プログラムにおける決定部)。具体的には、2つの近似直線G1,G2の交点Qから、光伝送媒体4の非線形係数と波長分散値を決定する。この例において、非線形係数をx、波長分散値をyとすると、近似直線G1はy=5.7072x+106.04と表され、近似直線G2はy=0.3751x+104.54と表される。従って、それらの交点は(x,y)=(101.2,-0.84)と算出され、非線形係数及び波長分散値はそれぞれ101.2[/W/km]、-0.84[ps2/km]と決定される。
なお、上記の例では光伝送媒体4への2回の光入力により非線形係数及び波長分散値を決定しているが、3回以上の光入力により非線形係数及び波長分散値を決定してもよい。その場合、図7に示される場合とは異なり直線同士の交点を一意に求めることができない場合が生じるが、例えば複数の交点の平均を非線形係数及び波長分散値とする等、複数の交点に基づいて最適な非線形係数及び波長分散値を決定することも可能である。
また、上記の例では強度スペクトルを実測(ステップS12)した後に強度スペクトルを推定しているが(ステップS16)、これらの順序は逆であってもよい。すなわち、強度スペクトルを推定した後に強度スペクトルを実測してもよい。
また、図6の(b)部及び図7の近似直線G2を参照すると、強度スペクトル推定誤差を最小値に近づける非線形係数と波長分散値との組み合わせにおいて、非線形係数がほぼ一定となっている。このように、光入力の強度スペクトル幅によっては、強度スペクトル推定誤差が波長分散値の変化に対して鈍感となる。このことから、光入力の強度スペクトル幅を変化させつつ非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係を求めることにより、波長分散値が一定となる強度スペクトル幅を知ることができる。なお、上記の例では強度スペクトル幅が7nmであるときに非線形係数がほぼ一定となっているが、非線形係数がほぼ一定となる強度スペクトル幅の大きさは、光伝送媒体4の各種のパラメータに応じて変化すると考えられる。
以上に示した測定方法により、所定波長(上記の例では900nm)における光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を測定することができる。そして、この所定波長を変化させつつ(すなわち、図4及び図5の各(a)部に示された強度スペクトルの中心波長を変化させつつ)測定を繰り返すことにより、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値の波長依存性をも測定することができる。図8は、或る光伝送媒体4における(a)非線形係数の波長依存性及び(b)波長分散値の波長依存性を示すグラフである。図8において、(a)部及び(b)部の横軸は波長(単位:nm)を表し、(a)部の縦軸は非線形係数(単位:/W/km)を表し、(b)部の縦軸は波長分散値(単位:ps2/km)を表す。これらのグラフでは、所定波長を800nm、850nm、900nm、950nm、及び1000nmと変化させつつ、非線形係数及び波長分散値を測定している。このように、本実施形態によれば、非線形係数及び波長分散値の波長特性をも精度よく測定することができる。
以上に説明した、本実施形態に係る測定装置1A、測定方法及び測定プログラムによって得られる効果について説明する。例えば特許文献1に記載された従来の技術において、光伝送媒体4に対して光を入力することにより得られる光出力の強度スペクトルを測定するとともに、該入力光の特性、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値との理論的な関係から出力光の強度スペクトルを推定し、測定値に対する推定値の誤差が最小となる非線形係数及び波長分散値を探索することにより、理論上は、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を一意に定めることができる。しかしながら、本発明者の知見によれば、測定誤差や計算機の丸め誤差などに起因して、実際には、この方法では非線形係数及び波長分散値を一意に定めることは難しい。但し、図6に示したように、強度スペクトル推定誤差が最小値付近にあるとき、非線形係数と波長分散値との間には有意な相関が存在する。そして、その相関は、図6の(a)及び(b)の比較から明らかなように、光入力の特性(強度スペクトル、位相スペクトル、光パルスエネルギーなど)に応じて変化する。そこで、本実施形態では、互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を光伝送媒体4に対して行い、得られた複数回の光出力の強度スペクトル推定誤差を、非線形係数及び波長分散値を変化させつつ算出する。そして、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係の、特性の相異に起因する複数回の光入力間の相異に基づいて、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を決定する。これにより、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することができる。
本実施形態のように、ステップS20において、強度スペクトル推定誤差を最小値に近づける非線形係数と波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、パラメータ算出部6は、複数回の光入力にそれぞれ対応する2つの線形関係に基づいて、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を決定してもよい。この場合、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を容易に求めることができる。
本実施形態のステップS15~S19のように、理論的な関係に入力する位相スペクトルの仮想スペクトルを変化させて強度スペクトル推定誤差と仮想スペクトルとの関係を求め、強度スペクトル推定誤差が極小となる仮想スペクトルを各光入力の位相スペクトルとして推定値を算出してもよい。この場合、位相スペクトルが未知である光を用いて本実施形態の測定を行うことができ、また位相スペクトルの測定を省くことができるので、非線形係数及び波長分散値の測定に要する手間を軽減することができる。
図4及び図5の各(a)部に示したように、複数回の光入力の強度スペクトルは互いに異なってもよい。本発明者の研究によれば、この場合、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係が、複数回の光入力間において大きく異なる。従って、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を更に精度良く決定することができる。特に、複数回の光入力の強度スペクトルの波長範囲(スペクトル幅)が互いに異なる場合、この傾向はより顕著となる。また、この場合、図4及び図5の各(a)部に示したように、強度スペクトルの波長範囲内において各光入力の位相スペクトルは平坦であってもよい。本発明者の研究によれば、位相スペクトルが平坦である場合には、そうでない場合と比較して、非線形係数及び波長分散値の単位変化に対する強度スペクトル推定誤差の変化量が大きくなる。従って、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係性がより明瞭となるので、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値をより一層精度良く決定することができる。
本実施形態のように、ステップS13において、共通の光源21から出力された光の特性を光特性制御部22により変化させながら複数回の光入力を行ってもよい。言い換えると、光源部2は、一定の特性を有する光を出力する光源21と、光源21から出力された光の特性を変化させながら複数回の光入力を行う光特性制御部22とを有してもよい。この場合、単一の光源21を用いて複数回の光入力を行うことができるので、測定に必要な構成を簡素にすることができる。但し、この構成に代えて、例えば互いに中心波長が等しく特性が異なる複数の光源を用意し、これらの光源から光伝送媒体4に対して光入力を順次行ってもよい。その場合であっても、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を精度良く取得することができる。
(第1変形例)
図9は、上記実施形態の一変形例に係る測定方法を示すフローチャートである。本変形例と上記実施形態との相違点は、光入力の位相スペクトルの取得方法である。上記実施形態ではステップS15において光入力の仮想スペクトルを設定し、強度スペクトル推定誤差が極小となる仮想スペクトルを光入力の位相スペクトルとして用いたが、本変形例では光入力の位相スペクトルを実測により求める。すなわち、図9に示すように、ステップS12ののち(またはステップS12の前でもよい)、ステップS21として、ステップS11において生成したテストパルスの位相スペクトルを測定する。具体的には、光源部2から出力されたテストパルスを、光伝送媒体4を介在させずに位相スペクトル測定装置に入力し、位相スペクトル測定装置においてテストパルスの位相スペクトルの実測値を取得する。この位相スペクトルの実測値に関するデータは、光入力に関する位相スペクトルデータとして、パラメータ算出部6に提供される。なお、ここで用いられる位相スペクトル測定装置は、例えば周波数分解光ゲート法(Frequency Resolved Optical Gating:FROG)、OPR(Optical Pulse Ruler)等の計測法に基づく装置である。OPR装置の構成は、図1の構成から光源21及び光特性制御部22を除いたものである。
続いて、ステップS13として、テストパルスによる光入力を光伝送媒体4に対して行い、該光入力に対応する光伝送媒体4からの光出力の強度スペクトルの実測値を取得する(実測値取得ステップ)。ステップS13の詳細は、上記実施形態と同様である。
続いて、パラメータ算出部6は、光入力の強度スペクトル及び位相スペクトルと、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値と、光出力の強度スペクトルとの間の理論的な関係に基づいて、強度スペクトルの推定値を算出する。このとき、非線形係数及び波長分散値をそれぞれ個別に変化させながら、複数の推定値を算出する。そして、該複数の推定値と実測値との誤差(強度スペクトル推定誤差)を算出する(誤差算出ステップ、測定プログラムにおける算出部)。
具体的には、ステップS14として、パラメータ算出部6は、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を設定する。そして、ステップS16として、パラメータ算出部6は、非線形係数及び波長分散値の仮想値、並びに位相スペクトルの実測値に基づいて、理論的な関係から、光出力に関する強度スペクトルを推定する。その後、ステップS17として、パラメータ算出部6は、光出力に関する強度スペクトルの推定値と、光出力に関する強度スペクトルの実測値とを比較する。パラメータ算出部6は、強度スペクトルの実測値に対する推定値の誤差(強度スペクトル推定誤差)を、ステップS14において設定した非線形係数及び波長分散値に対応する強度スペクトル推定誤差として記録する(ステップS19)。その後、パラメータ算出部6は、再びステップS14に戻り、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を変更したのち、上記のステップS16、S17及びS19を繰り返す。こうしてパラメータ算出部6は、光伝送媒体4のパラメータ(非線形係数及び波長分散値)の仮想値を変化させつつ、各仮想値に対応する強度スペクトルの推定値及び強度スペクトル推定誤差を算出する。
その後、再びステップS11に戻り、光源部2においてテストパルスを再び生成する。このテストパルスは、前に生成したテストパルスと中心波長が等しく、特性(例えば強度スペクトル、位相スペクトル、及び光パルスエネルギーのうち少なくとも1つ)が異なる光パルスである。このようなテストパルスを生成したのち、上述したステップS12、S21、S13、S14、S16、S17、及びS19を再び繰り返す。以上の処理を経て、互いに中心波長が等しく特性が異なる2つのテストパルスに関する、強度スペクトルの推定値と実測値との強度スペクトル推定誤差と、非線形係数及び波長分散値との関係を取得することができる。なお、次のステップS20の詳細については、上記実施形態と同様なので説明を省略する。
本変形例のように、ステップS14~S19の前に、光入力の位相スペクトルの実測値を得るステップS21を行ってもよい。この場合、正確な位相スペクトルに基づいてステップS20の計算を行うことができ、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を更に精度良く取得することができる。
(第2変形例)
上記実施形態では、複数回の光入力の特性を互いに異ならせる例として、図4及び図5の各(a)部に示したように複数回の光入力の強度スペクトルを互いに異ならせているが、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係が複数回の光入力間で相異する限りにおいて、異ならせる光入力の特性は強度スペクトルに限られない。例えば、複数回の光入力の位相スペクトルを互いに異ならせてもよいし、複数回の光入力のピーク強度を互いに異ならせてもよいし、複数回の光入力の光パルスエネルギーを互いに異ならせてもよい。また、強度スペクトル、位相スペクトル、ピーク強度、及び光パルスエネルギーといった種々の特性のうち2以上の特性を複数回の光入力間で異ならせてもよい。複数回の光入力の位相スペクトルを互いに異ならせる場合、一方の光入力の位相スペクトルを、強度スペクトルの波長範囲において平坦な形状としてもよい。これらの場合であっても、非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係が、複数回の光入力間において互いに異なる。従って、上記実施形態と同様に、光伝送媒体4の非線形係数及び波長分散値を精度良く決定することができる。
本開示による光伝送媒体測定方法、光伝送媒体測定装置、光伝送媒体測定プログラム及び記録媒体は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では光入力として光パルスを用いたが、光入力として連続光を用いてもよい。また、上記実施形態では非線形係数及び波長分散値と強度スペクトル推定誤差との関係が線形である場合を例示したが、この関係が非線形であっても、本開示による効果を好適に得ることができる。
1A…光伝送媒体測定装置、2…光源部、2a…出力端、4…光伝送媒体、4a…一端、4b…他端、5…スペクトル取得部、5a…入力端、5b…信号出力端、6…パラメータ算出部、6a…信号入力端、21…光源、21a…出力端、22…光特性制御部、22a…入力端、22b…出力端、B1,B2…領域、G1,G2…近似直線、Λ1,Λ2…波長範囲。

Claims (15)

  1. 光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定する方法であって、
    互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を前記光伝送媒体に対して行い、前記複数回の光入力にそれぞれ対応する前記光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルの実測値を取得する実測値取得ステップと、
    前記複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値と、前記複数回の光出力それぞれの強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と前記実測値との誤差を、前記非線形係数及び前記波長分散値を変化させつつ算出する誤差算出ステップと、
    前記非線形係数及び前記波長分散値と前記誤差との関係の、前記特性の相異に起因する前記複数回の光入力間の相異に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定するパラメータ決定ステップと、
    を含み、
    前記パラメータ決定ステップにおいて、前記誤差を最小値に近づける前記非線形係数と前記波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、前記複数回の光入力にそれぞれ対応する複数の前記線形関係に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定する、光伝送媒体測定方法。
  2. 前記誤差算出ステップの前に、各光入力の位相スペクトルの実測値を得るステップを更に含む、請求項に記載の光伝送媒体測定方法。
  3. 前記誤差算出ステップにおいて、前記理論的な関係に入力する位相スペクトルの仮想スペクトルを変化させて前記誤差と前記仮想スペクトルとの関係を求め、前記誤差が極小となる前記仮想スペクトルを各光入力の位相スペクトルとして前記推定値を算出する、請求項に記載の光伝送媒体測定方法。
  4. 前記複数回の光入力の強度スペクトルが互いに異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の光伝送媒体測定方法。
  5. 強度スペクトルの波長範囲内において前記複数回の光入力の位相スペクトルが平坦である、請求項に記載の光伝送媒体測定方法。
  6. 前記複数回の光入力の位相スペクトルが互いに異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の光伝送媒体測定方法。
  7. 前記実測値取得ステップにおいて、共通の光源から出力された光の特性を変化させながら前記複数回の光入力を行う、請求項1~のいずれか1項に記載の光伝送媒体測定方法。
  8. 光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定する装置であって、
    互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力を前記光伝送媒体に対して行う光源部と、
    前記複数回の光入力にそれぞれ対応する前記光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルの実測値を取得するスペクトル取得部と、
    前記複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値と、前記複数回の光出力それぞれの強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と前記実測値との誤差を、前記非線形係数及び前記波長分散値を変化させつつ算出し、前記非線形係数及び前記波長分散値と前記誤差との関係の、前記特性の相異に起因する前記複数回の光入力間の相異に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定する演算部と、
    を備え、
    前記誤差を最小値に近づける前記非線形係数と前記波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、前記演算部は、前記複数回の光入力にそれぞれ対応する複数の前記線形関係に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定する、光伝送媒体測定装置。
  9. 前記演算部は、前記理論的な関係に入力する位相スペクトルの仮想スペクトルを変化させて前記誤差と前記仮想スペクトルとの関係を求め、前記誤差が極小となる前記仮想スペクトルを各光入力の位相スペクトルとして前記推定値を算出する、請求項に記載の光伝送媒体測定装置。
  10. 前記複数回の光入力の強度スペクトルが互いに異なる、請求項8または9に記載の光伝送媒体測定装置。
  11. 強度スペクトルの波長範囲内において前記複数回の光入力の位相スペクトルが平坦である、請求項10に記載の光伝送媒体測定装置。
  12. 前記複数回の光入力の位相スペクトルが互いに異なる、請求項10のいずれか1項に記載の光伝送媒体測定装置。
  13. 前記光源部は、
    一定の特性を有する光を出力する光源と、
    前記光源から出力された前記光の特性を変化させながら前記複数回の光入力を行う光特性制御部と、
    を有する、請求項12のいずれか1項に記載の光伝送媒体測定装置。
  14. 光伝送媒体の非線形係数及び波長分散値を測定するプログラムであって、
    コンピュータを、
    互いに中心波長が等しく特性が異なる複数回の光入力それぞれの強度スペクトル及び位相スペクトルと、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値と、前記複数回の光入力にそれぞれ対応する前記光伝送媒体からの複数回の光出力の強度スペクトルとの理論的な関係に基づいて算出される強度スペクトルの推定値と、前記複数回の光出力の強度スペクトルの実測値との誤差を、前記非線形係数及び前記波長分散値を変化させつつ算出する算出部、及び、
    前記非線形係数及び前記波長分散値と前記誤差との関係の、前記特性の相異に起因する前記複数回の光入力間の相異に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定する決定部、
    として機能させ、
    前記誤差を最小値に近づける前記非線形係数と前記波長分散値との組み合わせが線形関係を有し、前記決定部は、前記複数回の光入力にそれぞれ対応する複数の前記線形関係に基づいて、前記光伝送媒体の前記非線形係数及び前記波長分散値を決定する、光伝送媒体測定プログラム。
  15. 請求項14に記載の光伝送媒体測定プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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