〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係る異常状態通知システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る異常状態通知システム100について説明するための概念図であり、図2は、異常状態通知システム100の動作について一例を説明するための概念図である。本実施形態に係る異常状態通知システム100では、図1に示すように、種々の送信先(送信先1,2,3,4,…)に通知可能となっているが、ここでは、説明を簡単にするため、図2に例示するように、送信先の1つである鉄道システムに対して異常状態の通知をする、すなわち緊急事態が生じたことを通知する場合について説明する。
まず、図1に示すように、本実施形態に係る異常状態通知システム100は、異常の有無等(異常状態)を検知する対象となる歩行者(人)HU等の移動体MOが携帯する携帯端末(通信端末)10を備える。さらに、異常状態通知システム100は、携帯端末10からの送信を受ける受信設備等(例えば図3等に示す受信用の無線部30等)を、異常情報管理センター50に設けておくことで構成される。
また、図2に示すように、異常状態通知システム100に関して、携帯端末10と異常情報管理センター50とは、無線回線を介して通信可能となっている。図示の例では、インターネット回線等の汎用無線回線網で構成されるネットワーク回線CLを利用して、携帯端末10と異常情報管理センター50との間での無線通信が可能になっている。
携帯端末10としては、例えば携帯電話やスマートフォン(スマホ)やタブレット機器その他の通信機能を有する携帯可能な種々の端末が適用可能である。例えば、汎用機としてのスマホ等に予めアプリをダウンロードしておくことで、異常状態通知システム100を構成する携帯端末10として利用することができる。
また、携帯端末10は、移動体MOに生じ得る異常状態の検知と、自身の位置すなわち携帯端末10を携帯する移動体MOの位置を把握するための位置検知とが可能となっている。なお、検知等に関する携帯端末10の構成についての具体例等については、図3のブロック図を参照して、一例を後述する。
図1に戻って、携帯端末10にとっての送信先である異常情報管理センター50については、種々の態様が考えられるが、ここでは、例示として、複数の送信先として、警察署、消防署、鉄道システム及び交通管制センターが含まれるものとなっている。具体的には、異常情報管理センター50として、送信先1(警察署)を第1異常情報管理センター50Aとし、送信先2(消防署)を第2異常情報管理センター50Bとし、送信先3(鉄道システム)を第3異常情報管理センター50Cとし、送信先4(交通管制センター)を第4異常情報管理センター50Dとしている。無論、これらは例示であり、異常情報管理センター50について、上記以外のさらに別の送信先が含まれている場合もある。逆に、これらのうち一部のみを送信先の対象とする態様もあり得る。
携帯端末10は、移動体MO(図示の例では、歩行者HU)について異常状態を検知した時に、位置情報と合せて異常情報管理センター50のいずれかに移動体情報を送信する。すなわち、複数の送信先である異常情報管理センター50A,50B,50C,50D…のうちから、移動体MOの異常状態や位置情報の内容に基づき、通知すべき一の送信先を選択した上で、移動体情報及び位置情報を送信する。
以下では、一例として、携帯端末10での選択により、送信先3すなわち第3異常情報管理センター50Cである鉄道システムに対して異常状態の発生が通知される場合について説明する。
以下、図2等を参照して、異常情報管理センター50Cである鉄道システムに対して異常状態を通知する場合のより具体的な一態様について説明する。なお、以下では、送信先すなわち異常情報管理センターの1つである鉄道システムを、鉄道システム50Cとも記載する。
ここでは、一例として、図2に示すように、移動体MOとしての歩行者HU及び歩行者HUが乗る(運転する)自転車BCが、線路の踏切CR内で転倒した場合を異常状態として取り扱い、このような異常状態の発生に対応して、携帯端末10が鉄道システム50Cに対して送信することを想定して、説明する。
以下、図3のブロック図等を参照して、異常状態通知システム100の一構成例を説明するために、携帯端末10の一構成例と、鉄道システム50Cの一構成例とについて説明する。
まず、携帯端末10は、例えば、鉄道システム50Cを含む異常情報管理センター50との無線通信を行うための無線部20のほか、各種検知を行うための検知装置DTと、各種情報を格納する記憶部MEと、送信先を選択(決定)する送信先選択部TSとを備える。
検知装置DTについては、移動体MOの異常状態を検知するための種々のハード的あるいはソフト的構成をとることが考えられるが、ここでは、一例として、上記のような移動体MOの転倒を検知する転倒検知部11を備えるものとする。転倒検知部11については、例えばスマホ等に内蔵される加速度センサーを利用して、当該加速度センサーでの検出結果に応じて移動体MOが転倒したか否かを検知することで構成できる。
また、検知装置DTとして、上記のほか、移動体MOの位置を検知する位置検知部12を備える。位置検知部12についても種々の手法を利用することが可能であるが、一例として、例えばスマホ等に内蔵されるGPS機能を利用することが考えられる。
記憶部MEには、上記のように検知装置DTによって検知された移動体MOの異常状態に関する情報等の移動体情報や、移動体MOの位置情報に基づいて、通知内容や送信先を決定するために必要となる各種情報が格納されている。ここでは、一例として、地図データが格納されているものとし、中でも、鉄道に関するものとして、鉄道路線図データ15が含まれているものとする。鉄道路線図データ15には、例えば、鉄道施設についての位置情報等、鉄道を構成するための各施設に関する位置情報が含まれており、鉄道路線図データ15を利用することで、例えば位置検知部12で検知された位置が、これらの施設内であるか否か等の判定が可能になる。
送信先選択部TSは、検知装置DTでの検知結果と記憶部MEに格納された各種データとに基づいて、通知すべき送信先の選択を行う。また、例えば図示において一部拡大して示すように、状態送信先テーブルDAを備える。状態送信先テーブルDAには、送信先として、警察署、消防署、鉄道システム及び交通管制センターが含まれており、これらへの連絡方法等がデータとして格納されている。ここでは、送信すべきか否かを含めた必要となる各種判定についても、送信先選択部TSにおいて行うものとする。なお、送信先選択部TSは、例えば携帯端末10に組み込まれた回路基板において、各種プログラムやデータを読み込むことで構成される。言い換えると、携帯端末10が、適宜プログラム等を読み出すことで、送信先選択部TSとして機能する。
以上の構成により、携帯端末10は、例えば、転倒検知部11により移動体MOの転倒が検知されると、位置検知部12により取得された位置情報を、鉄道路線図データ15と照合して、鉄道路線内であるか否かを送信先選択部TSにおいて判定する。この場合において、鉄道路線内であると判定されると、送信先選択部TSは、選択された一の送信先(ここでは鉄道システム50C)に対して、状態送信先テーブルDAから読み出し、読み出した連絡方法により通信部である無線部20により鉄道システム50Cに対する無線通信を行わせる。
以下、図3等を参照して、鉄道システム50Cの一構成例について説明する。鉄道システム50Cは、携帯端末10からの無線通信による送信を受け取るための受信用の無線部30のほか、受け付けた情報に基づいて移動体MOやその周辺に関する危険状態を判定する危険状態判定部40と、各指令所に設置されて列車制御信号を管轄下にある列車TRや信号機SG等(図2参照)の鉄道施設に送信して列車の制御を司る列車制御部60と、鉄道システム50Cに対するユーザ(指令所の管理者等)からの各種指令を受け付けるためのユーザーインターフェースIFとを備える。すなわち、鉄道システム50Cについては、典型的には、鉄道運行の総合的制御を管轄する列車制御部60を備える各指令所に、無線部30や危険状態判定部40を設けて構成することが考えられる。なお、鉄道施設については、踏切や線路、駅ホーム及び一般人の進入禁止領域が含まれ、列車制御部60は、これらの鉄道施設内のものを管轄する。また、見方を変えると、これらの鉄道施設内が、移動体MOの存在位置と重なる場合、危険状態が高いものと判定されることになる。
以上の構成により、鉄道システム50Cは、例えば無線部30において受け付けた携帯端末10からの移動体情報及び位置情報について、危険状態判定部40で危険状態の判定をする。さらに、危険状態判定部40において、危険である、すなわち危険回避のために列車の制御について変更を行う必要があると判定された場合に、危険状態判定部40は、列車制御部60に対して判定結果を送信する。
以上のようにして、対応が必要と判断された場合、鉄道運行の総合的制御を管轄する列車制御部60に対して、移動体情報及び位置情報が送信されることになるため、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて、例えば総合的視点から的確な対応をとることが可能になる。より具体的には、例えば上記のように転倒した人あるいは物がある踏切が特定されることで、転倒した人の安全のみならず、その人がいる踏切や、さらにそれに連なる線路上を走行する列車等の安全を図るべく、列車の運行について、必要に応じて全体に亘った変更が可能になる。
以上のような異常状態発生時の通知について、携帯端末10側すなわち移動体MO側の一例を自転車BCとし、送信先側の一例を、鉄道システム50Cとして概要を纏めると、図4に例示するシーケンス図のようになる。すなわち、自転車BC側において転倒検知(ステップS1)がなされると、転倒や転倒位置等に関する情報が、鉄道システム50C側に通知(ステップS2)がなされ、鉄道システム50Cは、必要に応じて、列車制御を行う(ステップS3)。
以下、図5を参照して、図4に概要を示した異常状態通知システム100における一連の処理についてより詳細な一例を説明する。なお、図5(A)は、通常時における一連の処理について一例を示すシーケンス図であり、図5(B)は、異常状態発生時における一連の処理について一例を示すシーケンス図である。
まず、異常が発生していない通常時においては、図5(A)に示すように、異常状態通知システム100のうち、携帯端末10は、位置検知部12による位置検知(ステップS101)を継続する。例えば、GPS機能等により検知した位置を携帯端末10に内蔵するあるいは外部との通信による地図データと参照する。なお、ステップS101に例示する位置検知について、ここでの一例では、経度、緯度に加え、高さ(高度)についても検知を行うものとする。高さ(高度)を検知することで、例えば高架がある場合も考慮可能となる。この場合、平面地図上では線路内であっても、高架下に要る移動体MOについては、鉄道システム50Cへの通報対象外とする、あるいは、鉄道システム50Cへの通報後、危険状態判定部40における判定対象から事前に除外する、といった態様とすることが可能になる。
以下、図5(B)を参照して、異常が発生した場合、すなわち異常状態発生時における一連の処理について、一例を説明する。携帯端末10のうち、転倒検知部11において転倒検知(ステップS201)が行われ、転倒が検知される(ステップS201:Yes)と、転倒検知部11から位置検知部12に転倒通知とともに位置情報取得通知がなされる(ステップS202)。位置検知部12は、ステップS202の通知を受けると、ステップS101として常時行っていた位置検知の結果を、送信先選択部TSに通知する(ステップS203)。なお、ステップS203の場合、図5(A)における位置検知の通知と異なり、転倒検知部11における転倒通知も併せて通知されることになる。
ステップS203の通知を受けた送信先選択部TSは、通知された異常状態すなわち転倒発生の検知と、転倒発生の位置検知とに基づいて、異常に関する判定(異常判定)を行う(ステップS204)。すなわち、送信先選択部TSは、異常発生に関する通知を要するか否かの判定を行う。この際、異常判定に併せて選択すべき送信先が決定される。なお、ここでの一例では、転倒発生が踏切内であることから、鉄道システム50Cが送信先として選択される。異常判定の結果に応じて、無線部20を介して、移動体MOたる自転車BCの異常状態に関する移動体情報(具体的には、例えば、「××踏切内にて転倒発生」等。)が位置検知の結果と合せて送信される(ステップS205)。
鉄道システム50Cでは、無線部30を介して、携帯端末10からの移動体情報を位置情報とともに受け付けると(ステップS301)、危険状態判定部40において、危険状態判定がなされる。すなわち、無線部30で受け付けた移動体情報の内容と位置情報とに基づいて、どの程度の対応が必要であるかが判定される(ステップS302)。危険状態判定部40は、危険状態判定の結果(具体的には、例えば、「××踏切内へ向かって走行する列車は減速」等。)を、列車制御部60に対して送信する(ステップS303)。なお、列車制御部60は、列車の制御に際して、上記危険状態判定部40からの危険状態判定結果を加味して列車制御信号を、管轄下にある列車TRや信号機SG等(図2参照)に対して送信する。
以下、図6を参照して、上記のような検知がなされる対象となり得る移動体MOについて、一例を示す。上記の例では、異常発生の一態様として、転倒(踏切内での転倒)を想定している。このような異常(転倒発生)を検知すべきものとしては、上記一例あるいは図6(A)に例示するような自転車BCが、検知対象たる移動体MOとなり得る。もちろん、転倒等を検知すべき移動体MOとして、携帯端末10を携帯する人すなわち歩行者HU(図2等参照)自体も含まれ得る。また、例えば図6(A)に例示するように、移動体MOとしての自転車BCに携帯端末10を取り付け、自転車BCが検知対象となっている場合においても、本実施形態における検知対象とすることができる。同様に、図6(B)に示す二輪車(オートバイ)MBや、図6(C)に示すベビーカー(バギー、乳母車)SR、あるいは、図6(D)に示す車イスWH等や、これらを運転する人やこれらに乗る人までも含めて、検知対象たる移動体MOとなり得る。なお、図示のように、二輪車MB、ベビーカーSR、車イスWH等についても、自転車BCの場合と同様に、携帯端末10を取り付けてもよい。
以上のように、本実施形態に係る異常状態通知システム100では、移動体MOの異常状態を検知した時に位置情報と合せて無線回線を介して異常情報管理センター50に移動体情報を送信する携帯端末10を備える。この場合、携帯端末10によって、移動体MOの異常状態を検知した時に、移動体情報を移動体の位置情報と合せて異常情報管理センター50としての鉄道システム50C等に送信できるので、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて、異常情報管理センター50において例えば総合的視点から的確な対応をとることが可能になる。また、この際、携帯端末10によって、無線回線を介して異常情報管理センター50に情報送信がなされるので、移動体MOの周辺において、移動体MOの異常状態の検知や携帯端末10との通信ができるような施設を必ずしも要しない。より具体的には、踏切CR側に携帯端末10との通信設備が存しないような場合であっても、上記のような異常状態の通知が可能になる。
なお、上記では、異常状態を通知する送信先である異常情報管理センター50についての一例として、鉄道システム50Cについて説明したが、送信先は、既述のように、鉄道システム50Cに限らず、検知された異常状態の内容(移動体情報)に応じて、種々の態様が考えられる。
また、検知装置DTにおいて検知する内容についても、上記のような加速度センサーを利用した転倒に限らず、例えば温度や湿度等の外部環境、あるいは心拍数や体温、発汗量等の人体に関する情報、あるいは、移動体の移動速度、といった種々の内容を検知すべき事項(測定対象)とすることができる。
また、記憶部MEに格納する各種情報についても、例えば地図データとして、鉄道路線図データ15以外にも、交通道路に関する地図データ等が含まれていてもよい。例えば、位置検知の結果から、鉄道路線図データと交通道路に関する地図データとを参照することで、送信先を鉄道系とするか交通(道路)系とするかを決定してもよい。
さらに、携帯端末10の送信先選択部TSによって複数ある送信先のうちから一を選択するものとして説明したが、異常状態によっては、複数の送信先へ並行して通知を行うものとしてもよい。例えば、上記のような鉄道に関する異常が、道路交通にも影響するといった場合には、第1異常情報管理センター50Aである送信先1(警察署)や、第4異常情報管理センター50Dである送信先4(交通管制センター)に対しても送信を要する可能性がある。また、移動体MOの転倒に伴い、救急車を呼ぶことが必要と判断されるような場合には、第2異常情報管理センター50Bである送信先2(消防署)に対しても送信を要する可能性がある。この場合、移動体MOが保有する携帯端末10により判断がなされるとともに、異常発生現場の位置情報を異常の内容(移動体情報)とともに発信できるので、より的確な対応を迅速に行うことが可能になる。
〔第2実施形態〕
以下、図7等を参照して、第2実施形態に係る異常状態通知システムについて説明する。図7は、本実施形態に係る異常状態通知システム200の動作について一例を説明するための概念図であり、図2に対応する図である。また、図8は、駅の管轄に関して示す図である。このうち、図8(A)は、駅の管轄に関する区分を示す地図データの一例を示す図であり、図8(B)は、管轄エリアと指令所との対応関係を示すデータの一例を示す図であり、図8(C)は、指令所における管轄エリアにある管轄対象とその位置との対応関係を示すデータの一例を示す図である。
なお、本実施形態に係る異常状態通知システム200は、第1実施形態の異常状態通知システム100の変形例であり、異常状態通知システム100と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、送信先について、さらに細かな区分けがなされている点において、第1実施形態と異なっているが、見方を変えると、本実施形態は、第1実施形態の場合において、さらに詳しい一態様について示す実施形態である、とも言える。
本実施形態においても、複数の送信先すなわち異常情報管理センターから、鉄道システム50Cを選択する場合について説明するが、本実施形態では、さらに、鉄道システム50Cに関しても、複数の送信先に分かれている。具体的には、図7及び図8に示すように、鉄道システム50Cは、駅を管轄する各指令所の各管轄エリア(管轄路線区間)A,B,C…に応じて、複数の送信先として、鉄道システム50C-α,50C-β,50C-γ…に分かれている。言い換えると、携帯端末10は、位置検知の結果に応じて、上記複数の送信先のうちから一の送信先を選択する。
以下、携帯端末10における送信先の選択に関して説明する。まず、前提として、ここでは、図8(A)及び図8(B)に例示するように、各路線上の駅及び駅間を繋ぐ区間に応じて、各指令所α,β,γ…が管轄する管轄エリアA,B,C…がそれぞれ定められているものとする。携帯端末10は、位置検知の結果を、図8(A)及び図8(B)に示すデータと参照することで、鉄道システム50Cとして存する複数の送信先である鉄道システム50C-α,50C-β,50C-γ…のうち、いずれに対して送信すべきかを決定できる。
以上のように、図8(A)及び図8(B)との参照により、送信先の選択(決定)は可能であるが、さらに、図8(C)において鉄道システム50C-αにおける管轄エリアAについて例示するように、管轄エリアごとにおける管轄対象について特定可能とする。すなわち、携帯端末10は、位置検知の結果を、図8(C)に示すデータと参照することで、異常発生の位置が管轄エリアAの管轄対象すなわち踏切、駅あるいは橋梁等のうちどこであるかまで特定する。
一方、別の前提として、図9(A)に示すように、異常状態通知システム200を構成するに際して、携帯端末10について異常状態通知システム200を構成するものとなるための事前登録として、例えば携帯端末10たるスマホ等のID登録がなされるものとする。この場合において、さらに携帯端末10の所有者を特定する各種登録情報に加え、移動体の種別について登録しておいてもよい。移動体の種別に関しては、図示にもあるように、例えば自転車等に乗ることが無い人は、歩行者として登録することが考えられる。一方、二輪車(バイク)に乗る場合も乗らずに歩く場合もある人は、バイク又は歩行者として登録することが考えられる。あるいは、図6において一例を示したように、自転車や車イス等に携帯端末10を取り付ける場合には、専ら自転車や車イスが対象となり、この場合には、自転車や車イスとして登録することが考えられる。このような種別に関する事前登録をしておくことで、例えば携帯端末10から転倒した旨の通知があった場合に、事前登録された内容を参照して、転倒した移動体が何であるのかを特定する、あるいは推定することができる。具体的には、異常発生時において、図9(B)に示すような情報が、移動体情報として、指令所α等の各管轄指令所に通知される、あるいは各管轄指令所において生成されることになり、転倒した移動体が何であるのかをスマホ等のID登録番号とともに移動体MOを特定するための事項として示すことができる。なお、図示のように、移動体MOの特定事項や、異常発生状況、異常発生位置の情報とともに、発生時刻の情報が通知されてもよい。
本実施形態においても、携帯端末10によって、移動体MOの異常状態を検知した時に、移動体情報を移動体の位置情報と合せて送信できるので、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて的確な対応をとることが可能になる。特に、本実施形態では、鉄道システムにおける管轄エリアごとの指令所に対して送信できるので、より的確な送信先へ迅速に通知できる。
〔第3実施形態〕
以下、図10を参照して、第3実施形態に係る異常状態通知システムについて説明する。図10は、本実施形態に係る異常状態通知システム300における一連の処理について一例を示すシーケンス図であり、図5(B)に対応する図である。
なお、本実施形態に係る異常状態通知システム300は、第1実施形態の異常状態通知システム100等の変形例であり、異常状態通知システム100等と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、移動体MOが転倒した場合ではなく、踏切等の特定の場所において留まっている場合等についての対応である点において、第1実施形態等の場合と異なっているが、見方を変えると、本実施形態は、第1実施形態の場合と並列的に処理がなされ得る異常状態の通知についての実施形態である、とも言える。
ここでは、上述のように、踏切等の特定の場所において、移動体MOが留まっているか否かを判定する。踏切等のように、本来その場に留まることなく迅速に通過すべき場所において、移動体MOが一定時間以上滞在し続けているのは、何らかの異常が発生している可能性が高い。そこで、本実施形態では、一例として、予め定めた一定時間以上踏切内に移動体MOが留まっている場合に対する対応について考察する。
以下、図10を参照して、異常状態通知システム300における一連の処理について一例について詳細を説明する。
まず、異常状態通知システム300のうち、携帯端末10は、異常の発生を問わず、位置検知部12による位置検知(ステップS401)を続け、ステップS401での位置検知から一定時間経過するまでの間、同じ位置が検知されると(ステップS402)、その旨を位置検知結果とともに送信先選択部TSに通知する(ステップS403)。
ステップS403の通知を受けた送信先選択部TSは、位置検知に基づいて、異常に関する判定(異常判定)を行う(ステップS404)。すなわち、送信先選択部TSは、異常発生に関する通知を要するか否かの判定を行う。この際、異常判定に併せて選択すべき送信先が決定される。なお、ここでの一例では、検知された位置が踏切内であるものとしており、この場合、鉄道システム50Cが送信先たる異常情報管理センター50として選択される。すなわち、異常判定の結果に応じて、無線部20を介して、移動体MOたる自転車BCの異常状態に関する移動体情報(具体的には、例えば、「××踏切内にて移動体あり」等。)が位置検知の結果と合せて送信される(ステップS405)。
なお、鉄道システム50Cでは、図5(B)を参照して説明した場合と同様に、無線部30を介して、携帯端末10からの移動体情報を位置情報とともに受け付け、危険状態判定部40において、危険状態判定がなされ、危険状態判定の結果(具体的には、例えば、「××踏切内へ向かって走行する列車は減速」等。)を、列車制御部60に対して送信する。
なお、上記において、予め定める一定時間については、携帯端末10を携帯する移動体MOの種別や、個人情報に応じて個別に設定してもよい。例えば歩行者である場合と自転車や二輪車である場合とでは、踏切に進入してから通過完了するまでの時間が異なる。さらに、同じ歩行者であっても、年齢や身体的特性等によって、通過を完了するまでの時間が異なる。このような場合に対応すべく、例えば事前登録の内容によって上記一定時間を個別に定めてもよい。また、検知された位置の特性に応じて記一定時間を定めてもよい。
上記の一変形例として、例えば、一定時間をゼロとする、すなわち位置検知とともに常に送信先選択部TSによる異常判定を行うものとしてもよい。この場合、例えば進入禁止区間に入ってしまった移動体MOを即座に検知できる。
本実施形態においても、携帯端末10によって、移動体MOの異常状態を検知した時に、移動体情報を移動体の位置情報と合せて送信できるので、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて的確な対応をとることが可能になる。特に、本実施形態では、異常状態の検知として一定時間以上同じ特定の場所に留まっている移動体MOを検知することで、安全性を高めることができる。
〔第4実施形態〕
以下、図11等を参照して、第4実施形態に係る異常状態通知システムについて説明する。図11は、本実施形態に係る異常状態通知システム400における一連の処理について一例を示すシーケンス図であり、図5(B)等に対応する図である。
なお、本実施形態に係る異常状態通知システム400は、第1実施形態の異常状態通知システム100等の変形例であり、異常状態通知システム100等と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施形態では、第1実施形態に例示した移動体MOが転倒した場合において、転倒の判定処理についてより詳細な一例を示す実施形態である。
例えば、移動体MOが転倒しても、その後すぐに立ち上がって、その場(踏切等)から立ち去る場合もあり、このような場合には、わざわざ異常と捉えて通知をする必要が無い。そこで、本実施形態では、第1実施形態における転倒に際して、上記した通報を要しない場合には、これを通知対象から除外するための手法について一例を説明する。
以下、図11を参照して、異常状態通知システム400における一連の処理について一例について詳細を説明する。
まず、携帯端末10のうち、転倒検知部11において転倒検知(ステップS501)が行われ、転倒が検知される(ステップS501:Yes)と、転倒検知部11から位置検知部12に転倒通知とともに位置情報取得通知がなされる(ステップS502)。位置検知部12は、ステップS502の通知を受けると、位置検知の結果を、送信先選択部TSに通知する(ステップS503)。
ステップS503の通知を受けた送信先選択部TSは、直ちには異常判定を行わず、まず、位置検知の結果を確認し、踏切等の特定の場所、すなわち一定時間以上滞在すべきではない箇所であるか否かの判定(第1判定)をし(ステップS504)、ステップS504において特定の場所であれば(ステップS504:Yes)、ステップS503での位置検知の結果通知から一定時間経過後に、当該箇所から移動したか否かを確認すべく、送信先選択部TSは、位置検知部12に問い合わせ(ステップS505)、再度位置検知部12による位置検知を行わせる(ステップS506)。
送信先選択部TSは、ステップS506における位置検知の結果に基づき、異常に関する判定(異常判定;第2判定)を行う(ステップS507)。ステップS506において、同じ位置にいる旨の通知を受けた場合、送信先選択部TSは、ステップS507において異常状態すなわち転倒発生が検知されたものと判定する。
なお、以下の処理については、図5(B)に示したステップS205以降の処理と同様であるので、詳しい説明を省略する。
以下、図12に示すフローチャートを参照して、携帯端末10の一連の処理について一例を説明する。すなわち、図11を参照して説明した一連の処理(図5(B)での説明等を含む)を含めた携帯端末10における各種処理のさらなる詳細について一例を説明する。ここでは、転倒を含めた各種異常状態の検知を携帯端末10において行っているものとした上で、そのうち転倒に関するものの処理を行う態様であるものとして説明する。
まず、携帯端末10は、検知装置DTにおいて、転倒検知部11として機能する加速度センサーを含む各種センサー等により取得した検知情報に基づく異常発生についての有無の確認を継続する(ステップS601)。
ステップS601において、何らかの異常が検知されると(ステップS601:Yes)、携帯端末10は、当該異常が転倒に関するものであるか否かを確認する(ステップS602)。なお、ステップS602において、転倒以外の異常が検知された場合には(ステップS602:No)、当該異常は、他の処理において取り扱われるものとし、ここでは、触れない。また、この場合、携帯端末10は、転倒に関するものの処理としては、これ以上の処理を行わず、ステップS601からの処理に戻る。
ステップS602において、転倒に関する異常があったことが確認されると(ステップS602:Yes)、携帯端末10は、検知装置DTのうち位置検知部12による移動体MOの位置検知すなわち携帯端末10自身の位置検知を行う(ステップS603)。
次に、携帯端末10は、ステップS603における位置検知の結果、現在位置が対象範囲内であるか否かを確認する(ステップS604)。すなわち、携帯端末10は、送信先選択部TSとして、現在位置が踏切等のような一定時間以上滞在すべきではない特定の場所であるか否かを判定する。
ステップS604において、対象範囲内でないすなわち踏切等の特定の場所でないと判例された場合には(ステップS604:No)、これ以上の処理を行わず、ステップS601からの処理に戻る。
一方、ステップS604において、対象範囲内であると判定された場合(ステップS604:Yes)、携帯端末10は、送信先選択部TSとして、通知を行う送信先を設定する(ステップS605)。例えば、対象範囲内とされた場所が踏切であれば、当該踏切を管轄する指令所を、送信先として設定する。
また、ステップS605での設定とともに、携帯端末10は、送信先選択部TSとして、移動体MOがステップS603における位置検知の箇所に一定時間以上留まっているか否かを確認すべく、一定時間の経過を確認し(ステップS606)、一定時間の経過後(ステップS606:Yes)、再度の位置検知を位置検知部12に行わせて、当該位置検知から対象範囲内に一定時間以上留まったままか否かを確認する(ステップS607)。
ステップS607において、留まっていない、すなわち特定の場所から移動したと判定された場合には(ステップS607:No)、これ以上の処理を行わず、ステップS601からの処理に戻る。
一方、ステップS607において、留まったままである、すなわち特定の場所から移動していないと判定された場合には(ステップS607:Yes)、転倒に関する異常が特定の場所(例えば踏切等)で発生したものと判断し、ステップS605で設定した送信先へ移動体情報及び位置情報の通知を行う(ステップS608)。
なお、携帯端末10は、転倒に関する異常状態の通知に関して、上記のような動作を繰り返す。
また、上記内容は、移動体MOの転倒に関しての説明であるが、携帯端末10は、転倒に限らず、転倒以外の異常状態についても、検知動作を並行して行う、すなわち並列的に処理を行うものとしてもよい。
以下、図13に示すフローチャートを参照して、送信先としての鉄道システム50Cの一連の処理について一例を説明する。すなわち、図11を参照して説明した一連の処理(図5(B)での説明等を含む)を含めた鉄道システム50Cにおける各種処理のさらなる詳細について一例を説明する。ここでは、転倒を含めた各種異常状態の検知を携帯端末10において行っているものとした上で、携帯端末10からの各種情報の処理を行う態様について説明する。
まず、鉄道システム50Cのうち、無線部30は、携帯端末10からの各種情報の受信確認を継続する(ステップS701)。
ステップS701において、受信が確認されると、危険状態判定部40は、除外処理を行う(ステップS702)。除外処理とは、明らかに危険状態から外れる事案を除外事項とし、危険か否かを判定する前に、処理対象から取り除くことを意味する。除外事項としては、例えば、通知された移動体が、電車内の乗客であることが判明した場合や、既述のように、緯度経度では一致するものの高さ(高度)を比較することで、移動体が鉄道の高架下に存在することが判明した場合等が考えられる。以上のように、ステップS702において、鉄道システム50C側が有する情報との照合により、内容について危険か否かを判定するまでもない事案を予め除外できる。
ステップS702での処理後、危険状態判定部40は、予め定められた処理に基づいて、受信した携帯端末10からの各種情報すなわち移動体情報及び位置情報に基づいて、危険状態の判定等一連の処理をする(ステップS703)。すなわち、危険状態の判定をし、必要に応じて、列車制御部60に対して判定結果を送信する。
列車制御部60は、危険状態判定部40からの危険状態判定結果を加味して列車制御信号を作成し(ステップS704)、管轄下にある列車や信号機等に対して送信する(ステップS705)。
なお、鉄道システム50Cは、上記のような携帯端末10からの通知に対する処理動作を繰り返す。
本実施形態においても、携帯端末10によって、移動体MOの異常状態を検知した時に、移動体情報を移動体の位置情報と合せて送信できるので、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて的確な対応をとることが可能になる。特に、本実施形態では、移動体MOの転倒に関する検知をより正確に行うことができる。
〔第5実施形態〕
以下、図14を参照して、第5実施形態に係る異常状態通知システムについて説明する。図14は、本実施形態に係る異常状態通知システム500の動作について一例を説明するための概念図であり、図2等に対応する図である。
なお、本実施形態に係る異常状態通知システム500は、第1実施形態の異常状態通知システム100等の変形例であり、異常状態通知システム100等と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。第1実施形態等では、踏切CR側に携帯端末10との通信設備が存しないような場合であっても、携帯端末10と送信先との間での通信が可能である旨を説明したが、踏切CR等のインフラ側において、無線回線としての近距離受信システムSSDを設けていてもよい。すなわち、当該近距離受信システムSSDを利用して、携帯端末10と送信先との間での通信を行うものとしてもよい。
以下、本実施形態に係る異常状態通知システム500について説明する。図14に示すように、本実施形態に係る異常状態通知システム500は、一例として、鉄道システムに関するインフラ側である踏切CRにおいて、携帯端末10と無線による近距離の送受信を可能にする受信部RXが設けられている。受信部RXは、自己を管轄する鉄道システム50Cと接続されている。以上により、近距離受信システムSSDが構成される。なお、近距離通信としては、既知の種々の方法を採用することができる。
この場合、例えば、携帯端末10において、携帯端末10を携帯する移動体MOが踏切CRにおいて転倒を検知すると、携帯端末10は、踏切CRに設けた受信部RXとの近距離通信を行う。受信部RXは、受信結果としての移動体情報及び位置情報を、鉄道システム50Cに対して出力(送信)する。
本実施形態においても、携帯端末10によって、移動体MOの異常状態を検知した時に、移動体情報を移動体の位置情報と合せて送信できるので、移動体MOや移動体MOの周辺に関する危険回避、あるいは安全確保のために、検知された異常状態の具体的状況等に応じて的確な対応をとることが可能になる。特に、本実施形態では、近距離受信システムSSDを利用して直接的に異常情報管理センターたる鉄道システム50Cへの移動体情報及び位置情報の送信が可能となる。
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
まず、上記実施形態では、説明を分かりやすくするため、各種情報処理を、携帯端末10で行う処理すなわち発生現場の側で行うものと、鉄道システム50C等の異常情報管理センター側で行うものとに区別して説明したが、上記は例示であり、各種処理について、その一部又は全部を異なる場所で行ってもよい。例えば、図15に示す異常状態通知システム600のように、一部の処理をクラウド化して、処理結果のみを通信するようにしてもよい。すなわち、携帯端末10に関しては、図3における記憶部MEに格納される各種データや、送信先選択部TSとして機能するための各種プログラムをクラウドCD上で取り扱うものとしてもよい。さらに、鉄道システム50Cに関しては、危険状態判定部40として機能するための各種プログラムをクラウドCD上で取り扱うものとしてもよい。
具体的には、例えば携帯端末10の側であれば、転倒等の発生した異常の検知と、GPS等による位置の検知及び通信機能を有していれば、残りの処理をクラウドCD上で行うものとしてもよい。また、鉄道システム50Cの側であれば、危険状態に関する判定結果を受け付け、受け付けた危険状態判定結果を加味して列車制御部60において、列車制御信号の作成及び送信を行ってもよい。すなわち、以下のように処理をしてもよい。
まず、携帯端末10は、現場で生じた転倒等の異常発生の内容と、スマホID等の携帯端末10あるいはそれを携帯する移動体MOを特定する情報と、携帯端末10あるいは移動体MOの位置情報とを、クラウドCD上に送信する。
クラウドCDでは、鉄道に関する地図データや、送信先に関する情報、またこれらに基づく判定処理や送信先の選択を可能にするための各種プログラム等を使って、異常状況についての判定や送信先の選択等の必要な判断が可能になっている。さらに、クラウドCDにおいて送信先における危険度判定等を行った上で、判定結果を鉄道システム50Cに送信する。
なお、以上において、送信先が例えば鉄道システム50Cであれば、危険度判定に基づく列車制御内容判定を、クラウドCDの側において行うことが可能になるが、送信先が交通管制センターである場合には、例えば信号制御内容判定を行い、送信先が警察署や消防署である場合には、例えば出動要否判定を行う、といった態様にもできる。
また、各種検知において、学習機能を有するものとしてもよい。例えば、加速度センサーの検知結果に基づく転倒検知について、学習を重ねることで、転倒でない場合を点灯と誤検知してしまう可能性を低減できる。
また、上記では、携帯端末10をスマホ等の汎用機にアプリをダウンロードすることで構成しているが、これに限らず、携帯端末10として機能する専用機を利用するものとしてもよい。
また、上記各実施形態について、可能な範囲で組み合わせて適用することも可能である。