JP7432202B2 - ポリエステル繊維布帛及びポリエステル繊維製品 - Google Patents

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Description

本開示は、ポリエステル繊維布帛及びポリエステル繊維製品に関する。
ポリエステル繊維は、天然繊維及び再生繊維に比較して、強度が高く、疎水性、耐水性が高い。このため、ポリエステル繊維を用いた繊維製品は、シワ、型崩れ等に強く、耐洗濯性が良好であり、洗濯後の乾きが早いなど、取り扱いが容易であり、衣料用途に広く使用されている。
従来、特に春夏物衣料用途の繊維布帛として、汗などの水分の吸水速乾性及び紫外線に対するケアを有する布帛が求められている。一般に、衣料は肌に接触して着用されることが多い。運動あるいは環境雰囲気により発汗を伴う場合は、衣料が汗を吸収し、且つ、汗の水分を速やかに外気中に放出し、乾燥性に優れる機能を有していれば、衣服内環境を適切に保つことができ、着用快適性に優れる。また、布帛の紫外線反射率を抑制することができれば、紫外線に起因する目への刺激、肌への刺激等の軽減も期待できる。
ポリエステル繊維は前述の如く疎水性が高く、且つ、速乾性に優れる性質を有するが、疎水性であるため、汗などの水分の吸収能はほぼ有しておらず、発汗がそのまま衣服内にとどまり続け不快感の原因となるという問題があった。
そこで、表裏の組織を異ならせ、毛細管現象を利用することによって肌面に接触した水分を外気面に素早く移動させる緯二重組織織物が提案され、ポリエステル繊維も使用可能であることが開示されている(特許文献1参照)。また、裏面層が撥水加工した糸から構成され、表面層が吸水加工した糸から構成される多層構造編地が開示されている(特許文献2参照)。
近年、消費者の自然志向の高まりとともに、生体及び環境への負荷の低減、自然な色合いを付与できる等の利点があることから、天然物由来の染料にて染色した布帛を要望されることが多くなってきている。
しかし、ポリエステル繊維布帛は、天然染料を高濃度に用いて染色処理した場合においても、ほとんど着色することができない。
そこで、5-スルホイソフタル酸塩共重合ポリエステル系繊維を、塩基性酢酸アルミニウム等の水溶液で処理して天然染料によるポリエステル系繊維を染色する方法が提案されている(特許文献3参照)。
特開2015-96662号公報 特開2005-105441号公報 特開平9-170180号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、特殊な糸を用いる、特殊な組織の多層構造の編地を編成することなどが必要であり、複雑な製造工程、特殊な製造装置等に起因して製造コストが高いなどの問題があった。
また、特許文献3に記載の方法では、原料ポリエステル繊維として特殊な共重合組成を有する樹脂からなる繊維を必要としていた。
このため、一般的なテレフタル酸とエチレングリコールから得られるレギュラーポリエステル繊維等に対しても、天然染料による染色を可能とし、且つ、平織、天竺編み等の多重構造の組織を有しない一般的なポリエステル繊維布帛であっても、吸水速乾性を有し、且つ、自然な色合いの繊維布帛に加工できる技術の開発が望まれていた。
本発明の一実施形態の課題は、ポリエステル繊維本来の速乾性を維持しながら、吸水性に優れ、かつ、紫外線の反射を低減することができるポリエステル繊維布帛を提供することである。
本発明の別の実施形態の課題は、ポリエステル繊維本来の速乾性を維持しながら、吸水性に優れ、かつ、紫外線の反射を低減することができるポリエステル繊維布帛を含むポリエステル繊維製品を提供することである。
上記課題の解決手段は、以下の実施形態を含む。
(1) 分散染料および生物由来天然染料が吸着したポリエステル繊維を含むポリエステル繊維布帛であり、前記生物由来天然染料は、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含む、ポリエステル繊維布帛。
(2) 前記ポリエステル繊維布帛は、前記生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上であり、且つ、前記生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、320nm~400nmの紫外線反射率がより低い、(1)に記載のポリエステル繊維布帛。
(3) 前記ポリエステル繊維布帛は、生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、吸水速乾性試験における30分後の残留水分率が5質量%以上低い、(1)又は(2)に記載のポリエステル繊維布帛。
(4) 前記生物由来粒子が、植物粒子である、(1)~(3)のいずれか1つに記載のポリエステル繊維布帛。
(5) カチオン性化合物、アンモニウム塩化合物、及びアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の天然染料吸着助剤を吸着してなる、(1)~(4)のいずれか1つに記載のポリエステル繊維布帛。
(6) (1)~(5)のいずれか1つに記載のポリエステル繊維布帛を含む、ポリエステル繊維製品。
本発明の一実施形態によれば、ポリエステル繊維本来の速乾性を維持しながら、吸水性に優れ、かつ、紫外線の反射を低減することができるポリエステル繊維布帛を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、ポリエステル繊維本来の速乾性を維持しながら、吸水性に優れ、かつ、紫外線の反射を低減することができるポリエステル繊維布帛を含むポリエステル繊維製品を提供することができる。
本開示において「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下、本開示のポリエステル繊維布帛及びポリエステル繊維製品を詳細に説明する。
<ポリエステル繊維布帛>
本開示のポリエステル繊維布帛は、分散染料および生物由来天然染料が吸着したポリエステル繊維を含むポリエステル布帛であり、前記生物由来天然染料は、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含む、ポリエステル繊維布帛である。
ポリエステル繊維布帛は、生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上であり、且つ、生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、320nm~400nmの紫外線反射率がより低いポリエステル繊維布帛であることが好ましい。
(ポリエステル繊維)
本開示のポリエステル繊維布帛に適用されるポリエステル繊維は、2価以上のカルボン酸と2価以上のポリオールを縮合重合させて得られた重縮合体又は、同一分子内にヒドロキシル基とカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有する化合物(ヒドロキシカルボン酸)を縮合重合させて得られた重縮合体であれば特に限定されない。
2価以上のカルボン酸としては、芳香族化合物、脂肪族化合物、及び脂環式化合物から選ばれる多価カルボン酸が挙げられ、より具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
ポリエステル繊維の製造に用いられる2価以上のカルボン酸は、1種のみであってもよく、複数種を併用してもよい。
2価以上のポリオールとしては、脂肪族化合物、脂環式化合物、及び芳香族化合物から選ばれるポリオールが挙げられ、より具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
ポリエステル繊維の製造に用いられる2価以上のポリオールは、1種のみであってもよく、複数種を併用してもよい。
ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族化合物、脂環式化合物、及び芳香族化合物から選ばれるヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より具体的には、グリコール酸、乳酸、リシノール酸、シキミ酸、マンデル酸、フロレト酸などが挙げられる。
ポリエステルの製造に用いられるヒドロキシカルボン酸は、1種のみであってもよく、複数種を併用してもよい。また、ヒドロキシカルボン酸は、前記2価以上のカルボン酸と2価以上のポリオールと、を併用して用いてもよい。
本開示のポリエステル繊維布帛を構成するポリエステル繊維は、長繊維であってもよく、短繊維であってもよい。
ポリエステル繊維の断面形状は、特に限定されるものではない。繊維の断面形状としては、丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどが挙げられる。繊維の断面形状は、ポリエステル繊維布帛の使用目的に応じて適宜選択することができる。
また、ポリエステル繊維を用いて作製される糸は、生糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸も、特に限定されるものではなく、仮撚加工糸(改良仮撚加工糸を含む)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。
なお、仮撚加工糸は、ポリエステルの長繊維に撚りを掛け、熱セットしてよりを戻す加工をした糸であり、捲縮して嵩高くなる。別名をDraw Textured Yarn(DTY)とも言い、得られた糸は捲縮によりウールの如き感触を有することから、ウーリー加工糸とも称される。
本開示のポリエステル繊維布帛の構成にも特に制限はなく、布帛を形成できれば、織物、編物、不織布といった、いかなる形態であってもよい。
ポリエステル繊維布帛の構成としては、例えば、平織、綾織、朱子織などの組織の織物、経編、緯編(横編または丸編)などの組織の編物、不織布等が挙げられる。
本開示のポリエステル繊維布帛は、分散染料と、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含む生物由来天然染料(以下、特定天然染料と称することがある)が吸着されている。分散染料と特定天然染料を併用することにより、良好な色彩表現、高い染色堅牢性、吸水性の付与、紫外線反射の抑制という機能の全てを高い水準で満たすことができる。
本開示のポリエステル繊維布帛は、分散染料と特定天然染料とが吸着してなるポリエステル繊維以外の繊維(他の繊維)を含んでいてもよい。他の繊維としては、分散染料と特定天然染料とが吸着していないポリエステル繊維、ポリエステル繊維以外の合成繊維、例えば、アクリル繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。効果の観点からは、ポリエステル繊維布帛に含まれる他の繊維は、ポリエステル繊維布帛に含まれる繊維の全量に対して25質量%以下であることが好ましい。
(分散染料)
本開示のポリエステル繊維布帛に用いられる分散染料には特に限定はない。分散染料としては、繊維の染色に一般に使用される分散染料であれば、制限なく使用することができる。分散染料としては、モノアゾ型、ジスアゾ型などのアゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料、フタルイミド系分散染料、キノン系分散染料などが挙げられる。
本開示のポリエステル繊維布帛に吸着する分散染料は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
分散染料のポリエステル繊維に対する吸着量は、所望の色相を達成する範囲にて適宜選択すればよい。
分散染料のポリエステル繊維に対する吸着は、分散染料をpHが酸性領域の水系溶剤に溶解又は分散させ調製した分散染料液にポリエステル繊維を浸漬する、ポリエステル繊維に分散染料液を噴霧すること等によりで行うことができる。
吸着量は、分散染料液に含まれる分散染料の含有量、分散染料液のpH、繊維の浸漬時間、噴霧量などにより制御することができる。
(特定天然染料)
本開示のポリエステル繊維布帛に使用される生物由来天然染料(特定天然染料)は、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含む。
生物由来天然染料としては、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含むこと以外は、特に限定されない。
本開示のポリエステル繊維布帛に吸着する生物由来粒子の平均粒子径は0.01μm~30μmであり、好ましくは0.1μm~15μmである。
微細化した生物由来粒子の平均粒子径を0.01μm以上とすることで、製造コストが適正な範囲に維持され、粒子をより微細化した場合に懸念される粒子同士の凝集が抑制され、微細化した粒子の効果が十分に得られる。また、生物由来粒子の平均粒子径を30μm以下とすることで、特定天然染料の吸着堅牢性、水分の吸収性、及び紫外線反射率の低下抑制効果が十分に発現される。
生物由来天然染料としては、植物の葉、茎、樹皮、根、花、実などを粉体化した色素、植物の粉末化物から抽出した液状物、植物の粉末化物の分散液などの植物由来天然染料、昆虫及びその分泌物から得られる昆虫由来天然染料等が挙げられる。
特定天然染料に含まれる平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を得る方法の例としては、植物由来天然染料の場合の例は、染料として用いる植物を、水分率が4%以内となるように乾燥させ、得られた植物の乾燥物を粉砕して得る方法、植物を分解しうる酵素、例えば、セルラーゼ、ペクチナーゼ、パンチターゼ、パパイヤ酵素等を使用して、染料として用いる植物を分解して植物粒子を含む分散液を得る方法、染料として用いる植物をアルカリ又は酸で処理して微粉末化し、洗浄してアルカリ又は酸を除去して植物粒子を得て、得られた植物粒子を水などの水性溶媒に分散させて得る方法、植物の粉末化物から抽出した液状物に植物粒子を含有させる方法等が挙げられる。
昆虫由来天然染料の場合の例としては、ラックカイガラムシの樹脂状の分泌物であるラックからシェラックと呼ばれる樹脂を分離し、精製して生物由来粒子を含む染料を得る方法、コチニールカイガラムシから温水などで抽出した色素をアルミニウム塩で不溶化して赤色顔料を得る方法などが挙げられる。
平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子は、生物由来天然染料に別途添加して特定天然染料としてもよく、生物由来天然染料を調製する際に、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子が生成される条件を考慮して調製された、平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子を含む特定天然染料を用いてもよい。
特定天然染料のなかでも、良好な吸水性を得やすいという観点から、平均粒子径0.01μm~30μmの植物由来粒子を含む植物由来天然染料が好ましい。
植物由来天然染料としては、テルペノイドやカロテノイドといったイソプレノイド、またはフラボノイドやオーロンといったフラボノイド類およびその配糖体を含む染料が、ポリエステル繊維布帛に対する吸水性の向上効果、紫外線反射の抑制機能がより良好であるため好ましい。
具体的には、植物粒子の効果を十分に得られるという観点からは、植物粒子は、バラ、ラベンダー、レモン、オレンジ、ブドウ、ウコン、タマネギ、ニンジン、トマト、チャノキ、スオウ、カキ、クチナシ、エンジュ、ヤマモモ、ザクロ、ゴバイシ、ヌルデ、チョウジ、エビヅル、ヤエヤマヒルギ、オニグルミ、カシワ、カツラ、シャリンバイ、テイカカズラ、ナツメ、ナンテン、センダン、サフラン、キハダ、シブキ、及びログウッドなどからなる群より選択される少なくとも1種の植物粒子が好ましい。
また、昆虫由来天然染料としては、ラックカイガラムシの分泌物から得られるラックダイ、コチニールカイガラムシから得られるコチニールなどが挙げられる。
特定天然染料としては、上記植物群から得られる平均粒子径0.01μm~30μmの植物粒子の少なくとも1種を含む植物由来天然染料が好ましい。
「ゴバイシ(五倍子)」は、ウルシ科の植物であるヌルデの芽又は葉にアブラムシが自生して、植物上に生成した嚢状虫嬰を指し、本開示では、五倍子は植物由来天然染料に包含されるものとする。
本開示のポリエステル繊維布帛に平均粒子径0.01μm~30μmの生物由来粒子が吸着していることは、ポリエステル繊維布帛の表面を走査型電子顕微鏡で観察することで確認できる。即ち、分散染料と特定天然染料とが吸着したポリエステル繊維布帛の表面を撮影した電子顕微鏡写真により、繊維の表面に微細な生物由来粒子が吸着していることが確認できる。
本開示における植物粒子の平均粒子径は、写真の視野角中における生物由来粒子を無作為に10個選択し、その円相当粒子径を測定して算術平均することで得た値を用いている。
本開示のポリエステル繊維布帛に吸着する特定天然染料は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
特定天然染料のポリエステル繊維に対する吸着量は、所望の色相を達成する範囲にて適宜選択すればよい。
特定天然染料をポリエステル繊維に吸着させる方法としては、特定天然染料を溶剤に溶解又は分散させて調製した特定天然染料液にポリエステル繊維を浸漬する方法、ポリエステル繊維に分散染料液を噴霧する方法等が挙げられる。
特定天然染料液に含まれる特定天然染料の含有量は、固形分換算で1質量%~40質量%の範囲とすることができる。
本開示のポリエステル繊維布帛は、特定天然染料吸着していることで、特定天然染料が有する自然な色合いの布帛となり、衣料品、家庭品などの種々の繊維製品に自然な色合いを付与することができる。
ポリエステル繊維布帛に吸着する染料の比率は、繊維に吸着した染料固形分の質量比率で分散染料を3%~70%とし、特定天然染料を30%~97%とすることが好ましい。分散染料の比率を3%以上とすることで、繊維布帛の染色堅牢性を高めることができ、分散染料の比率を70%以下とすることで、優れた吸水性の付与、紫外線反射率の低減がより良好となり、自然な色合いを表現しやすくなる。比率は、分散染料が5%~30%であり、特定天然染料が70%~95%であることがより好ましい。
本開示のポリエステル繊維布帛の作用機構は明確ではないが、以下のように推測している。
本開示のポリエステル繊維布帛は、繊維に対する吸着性が良好な分散染料と、平均粒子径0.01μm~30μmという微細な生物由来粒子を含む特定天然染料と、が吸着しているため、特定天然染料が単独で吸着している場合に比較して吸着堅牢性が良好である。さらに、特定天然染料に含まれる、水分の吸収性が良好であり、表面積の大きな生物由来粒子に起因して、生物由来粒子の内部及び生物由来粒子間の微細な空隙により、汗などの水分が布帛に速やかに吸収され、拡散するものと考えられる。また、表面積の大きな生物由来粒子に起因して、布帛を構成する繊維における紫外線反射率がより低くなると考えられる。
このため、本開示のポリエステル繊維布帛は、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが、特定天然染料を吸着しない布帛に比較して1.1倍以上となり、紫外線反射率がより低くなることで目に優しい布帛となると推定している。
なお、上記は推定機構の一つであり、本開示を何ら限定するものではない。
本開示のポリエステル繊維布帛を構成するポリエステル繊維は、本開示の効果を損なわない範囲で、酸化チタンなどの艶消し剤、酸化防止剤、触媒、安定剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤、抗菌剤、防汚剤、無機粒子、天然染料吸着助剤などの添加剤を含んでいてもよい。
なかでも、好ましい添加剤の一つとして天然染料吸着助剤が挙げられる。
本開示のポリエステル繊維布帛は、カチオン性化合物、アンモニウム塩化合物、及びアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の天然染料吸着助剤を吸着してなるポリエステル繊維布帛であることが好ましい。
ポリエステル繊維布帛に天然染料吸着助剤が吸着されていると、特定天然染料の繊維に対する吸着性、及び吸着強度が向上するため、ポリエステル繊維布帛の製造に使用する特定天然染料の染色加工時の濃度(使用量)を低減する、特定天然染料の堅牢性がより向上する、などの利点を有するため好ましい。
上記添加剤は、いずれも、あらかじめ布帛を構成するポリエステル樹脂に含まれていてもよく、糸、布帛、繊維製品となった後に付与してもよい。
天然染料吸着助剤として好適に用いられる、カチオン性化合物、アンモニウム塩化合物、及びアルカリ金属塩として、より具体的には、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどの塩基性アミン化合物、第四級アンモニウム塩、第三級アミン塩などのアンモニウム塩化合物、リシン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸、イソシアヌル酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。
ポリエステル繊維布帛の製造に際して、天然染料吸着助剤を用いることにより、天然染料吸着助剤が、ポリエステル繊維と特定天然染料との間及び分散染料と特定天然染料との間の少なくともいずれかに介在し、特定天然染料をポリエステル繊維により強固に吸着させる役割を果たすと考えられる。
天然染料吸着助剤をポリエステル繊維布帛に吸着させる方法一つの方法として、特定天然染料含有液に天然染料吸着助剤を含有させて、特定天然染料と同時にポリエステル繊維と接触させる方法を挙げることができる。
特定天然染料液における天然染料吸着助剤は、特定天然染料液に含まれる特定天然染料100質量部に対して、3質量部~5質量部の割合で含まれることが好ましい。
(JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さ)
本開示のポリエステル繊維布帛は、生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上である。(以下、JIS L1907の発行年を省略して記載することがある。)
本開示において、水上昇高さとは、JIS L1907(2010年):維製品の吸水性試験方法に規定される7.1.2 バイレック法にて測定した試験片への毛管現象等による水の上昇高さを意味する。試験片の固定法、試験片の水への浸漬深さ等は上記JISの規定に従い、20±2℃の水を用いて上昇高さを測定する。
なお、以下、精練されたポリエステル平織物に分散染料を吸着し、天然染料吸着助剤及び特定天然染料を吸着していない、所謂基準となるポリエステル繊維布帛を基準布帛と称することがある。
バイレック法による水上昇高さについて、特定天然染料を吸着した布帛と特定天然染料を吸着していない布帛とを相対比較する場合には、同一の組成及び編成の布帛を用いて比較を行う。
以下、具体的な測定方法として、後述の実施例1を例に挙げて説明する。
実施例1の工程1に記載の方法で精練されたポリエステル平織物に、実施例1の工程3に記載の方法で分散染料のみを吸着させたポリエステル繊維布帛を基準布帛として準備する。
さらに基準布帛を、後述の実施例1に記載する方法で、天然染料吸着助剤、分散染料及び特定天然染料を順次吸着加工したものを準備し、これを本開示のポリエステル繊維布帛の測定試料とする。
上記の方法にて準備した基準布帛と、本開示のポリエステル繊維布帛から、それぞれ、200mm×25mmの試験片を切り取り、測定試料とする。
測定は、標準条件(20℃×65%RH)にて行い、布帛の経方向、及び緯方向にそれぞれ5点ずつ行い、基準布帛の水上昇高さに対する特定天然染料を吸着させた測定試料の水上昇高さを得て、両者を対比し、結果を算術平均して倍率を求める。
上記方法では、基準布帛と、特定天然染料を吸着した布帛とは、用いられる布帛、吸着している分散染料が同一であるために、布帛に用いられる糸の太さ、繊維の編成、分散染料の吸着量等の条件に関わらず、特定天然染料の吸着の有無によるバイレック法にて測定した水上昇高さを一対比較により正確に相対評価できる。
なお、他の組成及び編製のポリエステル布帛を、基準布帛として用いる場合も、上記と同様にして行うことができる。
本開示のポリエステル繊維布帛は、特定天然染料が吸着していることにより、基準布帛に対しJIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上であることが好ましい。水上昇高さが1.1倍以上であることにより、本開示のポリエステル繊維布帛は、汗等の水分が接触した場合、水分が速やかに拡散され、拡散されることで水分がより気化し易くなり、気化熱による生地冷却が起きる。このため、本開示のポリエステル繊維布帛によれば、広い範囲で放湿冷却が発生し、上昇した体温を顕著に冷却する機能が発現される。
特定天然染料が吸着した布帛のJIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上であることが好ましく、1.15倍以上であることがより好ましい。
(30分後の残留水分率)
本開示のポリエステル繊維布帛は、天然染料吸着助剤及び生物由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維製の基準布帛に対し、吸水速乾性試験における30分後の残留水分率が5質量%以上低いことが好ましい。
本開示のポリエステル繊維布帛は、基準布帛に対して、吸水速乾性試験における30分後の残留水分率が5%以上低いことが好ましく、10%以上低いことがより好ましい。
吸水速乾性試験における30分後の残留水分率とは、ISO 17617:2014のA1法に準じた試験操作を行い、試験開始から30分後に布帛に含まれる水分質量の測定値を、測定開始時の布帛に含まれる水分質量で除し、100を掛けた値(%)を指す。
本開示のポリエステル繊維布帛は、既述のように、JIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが、基準布帛に対して1.1倍以上であるため、布帛に接触した水分がより速やかに拡散され、水分の気化がより起こりやすくなり、基準布帛に対して、30分後の残留水分率をより低くすることができると考えられる。
吸水速乾性試験における30分後の残留水分率が、基準布帛に対して5%以上低いことで、布帛に吸収された汗等の水分が速やかに放出され、公知のポリエステル繊維布帛に対して、ムレ感がより抑制され、放湿冷却による体温冷却効果がより顕著に発現されると考えている。
本開示のポリエステル繊維布帛は、未処理のポリエステル繊維布帛、即ち、分散染料をも吸着していないポリエステル繊維布帛に対しても、相対的に高い吸水性を示す。
例えば、後述の実施例1で用いたポリエステル平織物(経糸、緯糸ともレギュラーポリエステル)を、工程1の方法で、苛性ソーダ8.5質量%およびアニオン性界面活性剤(ダイサーフ MOL-726、第一工業製薬(株))1.5質量%の水溶液を用いて、95℃で精練した試料を、JIS L 1907 バイレック法にて測定した水上昇高さを評価すると、8.1cmである。
他方、後述の実施例1に従い、精練後のポリエステル平織物に、天然染料吸着助剤、分散染料、及びタマネギ外皮由来の特定天然染料を吸着させ、本開示のポリエステル繊維布帛を得て、同様に水上昇高さを評価すると、15.7cmであることから、本開示のポリエステル繊維布帛は、同一の織組織であって、何らの吸着処理を行っていないレギュラーポリエステル繊維からなる布帛よりも吸水性が大きいことが確認される。
(320nm~400nmの紫外線反射率)
本開示のポリエステル繊維布帛は、特定天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛に対し、波長320nm~400nmの紫外線反射率がより低い。紫外線反射率は、波長320nm~400nmの波長域全域にわたって、特定天然染料を吸着することで、紫外線反射率が基準布帛よりも低くなる。
紫外線反射率が「より低い」とは、波長320nm~400nmの範囲内のある波長に着目した場合、基準布帛の紫外線反射率をA%、特定天然染料が吸着した布帛の紫外線反射率をA%としたとき、A%>A%であることを指す。例えば、基準布帛のある波長での紫外線反射率が20%である場合、特定天然染料が吸着した布帛の同一波長での紫外線反射率は20%未満であることを指す。
本開示における「320nm~400nmの波長域全域にわたる紫外線反射率」とは、分光光度計を用いて、320nmから5nm間隔で400nmまで17点の波長のごとに測定した紫外線反射率の全てを指す。即ち、本開示のポリエステル繊維布帛は、基準布帛に対し、320nm~400nmの紫外線反射率がより低いとは、17点の測定データの全てにおいて、基準布帛よりも紫外線反射率が低いことを意味する。
従って、本開示のポリエステル繊維布帛は、上記17点の波長のポリエステル繊維布帛の光線反射率を測定し、その17点いずれの波長においても、基準布帛の反射率よりも、特定天然染料を吸着した本開示のポリエステル繊維布帛の反射率が小さい値を示す。
紫外線反射率の低減効果としては、A%-A%が0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。
紫外線反射率に着目すれば、本開示のポリエステル繊維布帛の紫外線反射率(A%)は、30%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましい。
布帛の紫外線反射率が低いことは、当該波長域の紫外線吸収率が高いことを意味する。従って、本開示のポリエステル繊維布帛は、目への刺激となる紫外線が布帛に反射されて目に到達する量がより減少し、目に優しく、且つ、紫外線の吸収率がより高いことで皮膚に対する紫外線の影響もより軽減されることが期待できる。
(ポリエステル繊維布帛の製造方法)
本開示のポリエステル繊維布帛の製造方法には特に制限はない。
以下、本開示のポリエステル繊維布帛の好適な製造方法の一例について説明する。しかし、製造方法は以下の記載に制限されない。
まず、ポリエステル繊維布帛を準備する。ポリエステル繊維布帛は、既述のポリエステル繊維布帛の説明において述べたものを用いればよい。
ポリエステル繊維布帛に分散染料及び特定天然染料を吸着させるに先立ち、ポリエステル繊維は、必要に応じ、湯洗い、精練、リラックス、減量、熱セット等の前処理を行ってもよい。
例えば、アルカリ類、界面活性剤などを利用してポリエステル繊維に付着している油剤、不純物等を除去する精練加工、アルカリ類、酵素などを使用してポリエステル繊維の表面を加水分解などにより分解し、繊維の剛直性を低減させ柔軟性を付与する減量加工等の公知の前処理加工を行うことができる。
各加工は公知の方法で行えばよい。また、本開示における効果を損なわない限りにおいては、ポリエステル繊維布帛に対し、さらなる他の性能を付与するため、特殊な条件にて前記加工を行うことができる。
所望により前処理加工を施したポリエステル繊維布帛を、分散染料および特定天然染料を用いて染色加工し、繊維に分散染料及び特定天然染料を吸着させる。
加工手順としては、
(I)まずポリエステル繊維布帛を分散染料で染色した後に、特定天然染料で染色する二段染色、
(II)分散染料と特定天然染料とを含有する染色液を用いてポリエステル繊維布帛を染色する一段染色、
等の加工手順が挙げられ、いずれの手順で行ってもよい。
なかでも、色相の調整がし易く、染色堅牢性がより良好となるという観点からは、(I)で示す二段染色を行うことが好ましい。
所望により、既述の天然染料吸着助剤を用いる場合には、特定天然染料の吸着を行う前に、ポリエステル繊維布帛に対し天然染料吸着助剤を吸着させる処理を施すことが好ましい。
天然染料吸着助剤を予めポリエステル繊維布帛に吸着させる処理を施すことで、特定天然染料の染色加工時の濃度(使用量)を低減させる、特定天然染料の吸着の堅牢性をより向上させるなどの利点があるため、好ましい。
具体的な吸着方法としては、天然染料吸着助剤を水に溶解または分散させた処理液を調製し、得られた処理液にポリエステル繊維布帛を浸漬する、ポリエステル繊維布帛に処理液を塗布又は噴霧することなどの手段により、特定天然染料で染色する前のポリエステル繊維布帛へ処理液を付与し、乾燥して、天然染料吸着助剤をポリエステル繊維布帛に吸着させればよい。
本開示のポリエステル繊維布帛の製造に際しては、必要に応じて柄の印刷加工、制電加工、防汚加工、抗菌防臭加工、制菌加工、消臭加工、防炎加工、カレンダー加工、仕上げセットなどの任意の加工を公知の方法でさらに行ってもよい。
<ポリエステル繊維製品>
本開示のポリエステル繊維製品は、既述の本開示のポリエステル繊維布帛を含む繊維製品である。
繊維製品としては、本開示のポリエステル繊維布帛を含んでいれば特に制限はない。本開示の繊維製品として、具体的には、例えば、本開示のポリエステル繊維布帛を縫製して得られるシャツ、ジャケット、パンツなどの縫製品である衣料品、無縫製ニットから得られる衣服等の衣料品、スカーフ、帽子、手袋等、シーツ、枕カバー、ベッドカバー、布団カバー等の家庭品等が挙げられる。本開示の繊維製品は上記例示に限定されない。
本開示のポリエステル繊維製品は、一般的なポリエステルの糸で織編された一般的な組織のポリエステル繊維を原料とした場合でも、本開示のポリエステル繊維布帛を用いることで、ポリエステル繊維の速乾性を維持しながら、吸水性に優れ、紫外線反射率が低減されることから、目に優しく自然な色合いを有する繊維製品を提供することができ、様々な分野に応用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本開示のポリエステル繊維布帛及びその応用を詳細に説明するが、本開示は以下に示す具体例に限定されるものではなく、目的を逸脱しない範囲で種々の変型例にて実施できることはいうまでもない。
〔実施例1〕
1.ポリエステル繊維布帛の準備
ポリエステル平織物(経糸、緯糸ともレギュラーポリエステル)を、苛性ソーダ8.5質量%およびアニオン性界面活性剤(ダイサーフ(登録商標) MOL-726、第一工業製薬(株))1.5質量%の水溶液を用いて、95℃で精練し、ポリエステル繊維布帛の加工原料として用いた。〔工程1〕
2.天然染料吸着助剤の吸着
加工原料としての上記ポリエステル繊維布帛を、第四級アンモニウム塩(PEシオールCT:商品名、(株)シオンテック)5%omf(% on mass of fiber)、水酸化ナトリウム0.1g/Lを含む処理液中(浴比1:50)で、80℃で30分間処理し、天然染料吸着助剤を吸着させた。〔工程2〕
3.分散染料の吸着
次に、分散染料(Dianix(登録商標、以下同様) Yellow ACE 0.2%omf、Dianix Red 0.2%omf、Dianix Blue 0.1%omf、いずれもダイスタージャパン(株))、分散剤(デモール(登録商標) N、花王(株))0.1g/L、酢酸0.5g/Lを含む処理液中(浴比1:15)で、130℃で30分間処理し、分散染料をポリエステル繊維布帛に吸着させベージュ色に染色した。〔工程3〕
4.特定天然染料の吸着
次に、タマネギ外皮から抽出した天然染料5%omf、酢酸ナトリウム2g/Lを含む処理液中(浴比1:15)で、80℃で30分間処理し、天然染料を吸着させて、実施例1のポリエステル繊維布帛を得た。〔工程4〕
得られたポリエステル繊維布帛を走査型電子顕微鏡〔装置名:SEMEDX TypeH型、(株)日立ハイテクノロジーズ、倍率:5000倍)で観察したところ、円相当の平均粒子径が0.8μmのタマネギ外皮由来の植物粒子が複数吸着されていることが確認された。
〔比較例1〕
実施例1において、分散染料の吸着〔工程3〕を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1のポリエステル繊維布帛を得た。比較例1のポリエステル繊維布帛は、ポリエステル繊維に天然染料吸着助剤と特定天然染料とが吸着した布帛である。
〔比較例2〕
実施例1において、天然染料吸着助剤の吸着〔工程2〕及び特定天然染料の吸着〔工程4〕を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例2のポリエステル繊維布帛を得た。比較例2のポリエステル繊維布帛は、ポリエステル繊維に分散染料が吸着し、特定天然染料が吸着していない布帛であり、基準布帛に相当する。
(ポリエステル繊維布帛の評価)
得られた実施例1、比較例1及び比較例2〔基準布帛〕の各ポリエステル繊維布帛の性能を以下に記載の方法で評価した。
(1.JIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さ)
実施例及び比較例の各ポリエステル繊維布帛のそれぞれに対し、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法に準じて、水上昇高さの測定を行った。結果を表1に示した。なお、表1には、「水上昇高さ」と記載している。
各評価において、ポリエステル繊維布帛のうち、比較例2で得た特定天然染料を吸着していない布帛を基準布帛〔対照例〕とした。
実施例1及び比較例1の布帛については、基準布帛である比較例2の水上昇高さに対する比率を倍率で併記した。
(2.吸水速乾性試験における30分後の残留水分率)
得られた各ポリエステル繊維布帛のそれぞれに対し、ISO 17617:2014のA1法に準じた試験操作を行い、試験開始から30分後の水分質量の測定値を、測定開始時の水分質量の測定値で除し、100を掛けた値(%)を残留水分率とした。
結果を表1に示した。実施例1及び比較例1の布帛については、基準布帛である比較例2の残留水分率からの残留水分率の減少量を併記した。
(3.摩擦堅牢度)
得られた各ポリエステル繊維布帛のそれぞれに対し、JIS L0849(2013年)に規定の摩擦試験機II形(学振形)法に準じた摩擦堅牢度にて、乾燥試験及び湿潤試験を行い、堅牢度の等級を判定した。結果を表1に示した。
(4.320nm~400nmの波長域における紫外線反射率)
得られた各ポリエステル繊維布帛のそれぞれに対し、日本分光(株)製紫外可視分光光度計V-650に150φの積分球ユニットを取り付けた装置を用い、320nmから5nm間隔で400nmまで17点の波長ごとの反射率を視野角4°で測定した。結果を表2に示した。実施例1及び比較例1の布帛については、基準布帛である比較例2の紫外線反射率からの反射率の減少量(表2には「反射率の減少量」と記載)を併記した。
表1によれば、分散染料および特定天然染料が吸着されている実施例1のポリエステル繊維布帛は、JIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが比較例2の基準布帛に対して、2.09倍となり、残留水分率は、13.1%減少しており、吸水性に加え、水分の発散性が良好であることが分かる。
実施例1のポリエステル繊維布帛は、特定天然染料により淡いベージュに染色され、外観が良好であった。また、染色の摩擦堅牢度が良好であり、実用に適する堅牢度を示した。
表2によれば、実施例1のポリエステル繊維布帛は、紫外線反射率が基準布帛に対し、320nm~400nmのいずれの波長においても2%以上減少していた。これにより、実施例1のポリエステル繊維布帛は、目に優しい布帛であることが期待できる。
他方、特定天然染料のみが吸着されている比較例1のポリエステル繊維布帛は、JIS L1907に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが基準布帛に比較して大きくなっており、紫外線反射率も減少する傾向が見られたが、摩擦堅牢度が低く、実用上問題となるレベルであった。

Claims (5)

  1. 分散染料およびタマネギ外皮由来天然染料が吸着したポリエステル繊維を含むポリエステル繊維布帛であり、
    前記タマネギ外皮由来天然染料は、平均粒子径0.01μm~15μmのタマネギ外皮由来粒子を含む、ポリエステル繊維布帛。
  2. 前記ポリエステル繊維布帛は、前記タマネギ外皮由来天然染料を吸着していない下記ポリエステル繊維基準布帛に対し、JIS L1907(2010年)に規定されるバイレック法にて測定した水上昇高さが1.1倍以上であり、且つ、前記タマネギ外皮由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維基準布帛に対し、320nm~400nmの紫外線反射率がより低い、請求項1に記載のポリエステル繊維布帛。
    (ポリエステル繊維基準布帛)
    精練されたポリエステル平織物に分散染料を吸着し、天然染料吸着助剤及びタマネギ外皮由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛
  3. 前記ポリエステル繊維布帛は、前記タマネギ外皮由来天然染料を吸着していない下記ポリエステル繊維基準布帛に対し、吸水速乾性試験における30分後の残留水分率が5質量%以上低い、請求項1又は請求項2に記載のポリエステル繊維布帛。
    (ポリエステル繊維基準布帛)
    精練されたポリエステル平織物に分散染料を吸着し、天然染料吸着助剤及びタマネギ外皮由来天然染料を吸着していないポリエステル繊維布帛
  4. カチオン性化合物、アンモニウム塩化合物、及びアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の天然染料吸着助剤を吸着してなる、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のポリエステル繊維布帛。
  5. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載のポリエステル繊維布帛を含む、ポリエステル繊維製品。
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