以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る枠体施工ロボットについて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る枠体施工ロボット100(以下、「施工ロボット100」という。)は、外部からの操作を必要としない自律型ロボットであり、図1に示すように、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6(既設バー)に対してサブバー8(クロスバー)を取り付ける作業を行うものである。図1には、施工ロボット100によって行われる作業を一対のメインバー6の長手方向に沿った方向から見た状態が示されている。なお、図1は、施工ロボット100と各バー部材6,8との関係性をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
図1に示される天井スラブ1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートであり、デッキプレートには、コンクリートが流し込まれる前に、予め複数のインサート3が所定の位置に取り付けられる。インサート3は、メインバー6やサブバー8といった枠体を構成する部材を、ハンガー5を介して吊り下げ支持する吊りボルト4を取り付けるために設けられる部材である。なお、天井スラブ1は、合板型枠に打設されて形成されたコンクリートスラブであってもよい。
メインバー6は、規格化された既製品であって、図1に示すように、ハンガー5が取り付けられる取付部6aと、図示しない天井ボードが載置されるフランジ部6bと、取付部6aとフランジ部6bとの間に設けられる平板部6cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。
サブバー8も、メインバー6と同様に規格化された既製品であって、ハンガー5を取り付け可能な取付部8aと、天井ボードが載置されるフランジ部8bと、取付部8aとフランジ部8bとの間に設けられる平板部8cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。また、サブバー8の両端には、サブバー8をメインバー6に取り付けるための差込部8eが設けられる。
差込部8eは、後述する図16に示すように、略直角に折り曲げられた板材を、その折り曲げ部分が平板部8cの端部から長手方向において外側に位置した状態で平板部8cに固定することにより形成される。つまり、差込部8eの先端部は、平板部8cに対して直交する方向に延びている。
これに対応してメインバー6の平板部6cには、後述する図16に示すように、サブバー8の差込部8eが差し込まれる差込口6dが設けられる。差込口6dは、サブバー8の差込部8eをメインバー6の平板部6cに沿って移動させた場合に、進入した差込部8eが係止される形状となっており、差込口6dに差込部8eが差し込まれることによって、サブバー8は、メインバー6に対して直交した状態で結合される。
なお、サブバー8の一方の端部に設けられた差込部8eの延出方向とサブバー8の他方の端部に設けられた差込部8eの延出方向とは、後述する図15に示すように、互いに反対の方向を向いている。つまり、サブバー8を一対のメインバー6に取り付ける場合、一方のメインバー6の差込口6dに差込部8eを差し込む方向と、他方のメインバー6の差込口6dに差込部8eを差し込む方向と、は互いに反対の方向となる。このようにメインバー6とサブバー8との結合部は、簡単には外れにくい構成となっている。
上記形状のメインバー6とサブバー8とを格子状に結合することによって、天井ボードが載置される枠体が形成され、このように形成された枠体と天井ボードとにより、いわゆるグリッドタイプのシステム天井が構成される。
本実施形態に係る施工ロボット100は、システム天井の枠体を設置するという比較的高所で行われる作業のうち、天井スラブ1により支持された一対の上記形状のメインバー6(既設バー)に対して上記形状のサブバー8(クロスバー)を取り付けるという高所作業を実行可能な構成を備える。
次に、図1~6を参照し、施工ロボット100の構成について説明する。図2は、施工ロボット100の正面を部分的に拡大して示した部分正面図であり、図3は、図2に対応する施工ロボット100の平面図である。また、図4は、図2のA-A線に沿う断面を示した断面図であり、主に後述の保持レール43の断面が示されている。また、図5は、図2のB-B線に沿う断面を示した断面図であり、主に後述の押込部60の構成を示している。また、図6は、施工ロボット100を含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
施工ロボット100は、図1に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、台車部10上に載置される昇降部20と、昇降部20上に載置される取付作業部30と、台車部10、昇降部20及び取付作業部30の作動を制御する図示しない制御部70と、を備える。
台車部10は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の車輪14と、一対の車輪14を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪14を別々に駆動することによって、台車部10は、その場で旋回することが可能である。なお、台車部10に設けられたバッテリは、昇降部20及び取付作業部30へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
台車部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪14に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、台車部10は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
また、台車部10には、台車部10周辺の情報を取得可能な情報取得器15が設けられる。情報取得器15は、台車部10の周囲や台車部10の上方を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器15によって撮像された画像は制御部70へと送られ、台車部10の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器15としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。
台車部10上に取り付けられる昇降部20は、多段型の電動ジャッキであり、上下方向に沿って伸縮可能な構成を有する。昇降部20の上端には、取付作業部30を設置するためのフランジ21が設けられる。
取付作業部30は、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6(既設バー)に対してサブバー8(クロスバー)を取り付ける作業を行うための各機構を備えた部分であり、サブバー8を保持するとともに、サブバー8の両端部にそれぞれ設けられた差込部8eが一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに近付くようにサブバー8の位置を調整可能な第1位置調整部40と、第1位置調整部40によって保持されたサブバー8に対する一対のメインバー6の水平方向位置を調整可能な第2位置調整部50と、を有する。
取付作業部30は、フランジ31を介して昇降部20のフランジ21に載置されており、フランジ31には第1位置調整部40及び第2位置調整部50が設けられるテーブル34が複数の支持柱33及び図示しない水平変位機構を介して設置されている。
水平変位機構は、例えば、伸縮方向が互いに直交した状態で水平面に沿ってそれぞれ配置された一対の電動シリンダにより構成される。このように配置された一対の電動シリンダの伸縮をそれぞれ制御することによって、フランジ31に対するテーブル34の位置、すなわち、テーブル34に設けられた第1位置調整部40及び第2位置調整部50の位置を水平面に沿って変位させることが可能となる。なお、水平変位機構は、昇降部20のフランジ21と取付作業部30のフランジ31との間に設けられていてもよい。
このように水平変位機構を設けておくことにより、台車部10を移動させることなく、第1位置調整部40及び第2位置調整部50の位置を水平方向に微調整することができる。なお、台車部10を移動させることによって、取付作業部30の位置を容易に微調整することが可能な場合は、水平変位機構を設けなくともよい。
第1位置調整部40は、サブバー8を保持する保持部41と、保持部41を回動可能な回動モータ42と、を有する。保持部41は、サブバー8が載置される保持レール43と、保持レール43に載置されたサブバー8の平板部8cを把持可能な把持部45と、により構成される。
保持レール43は、図4に示すように、サブバー8のフランジ部8bが載置されるレール本体43aと、レール本体43aの側面から上方に向かって延びる平板状のガイド部43bと、を有する。レール本体43aは、サブバー8の全長よりも短い長さの長尺部材であり、その幅の大きさは、サブバー8のフランジ部8bの幅よりも僅かに大きく設定されている。
ガイド部43bは、レール本体43aの両端部近傍にそれぞれ一対設けられる。対向するガイド部43bは、図4に示すように、それらの間の間隔がレール本体43aの幅とほぼ同じ大きさとなるように上方へと平行に延びた後、上方に向かうにつれてそれらの間の間隔が徐々に広がるように設けられている。
このようにレール本体43aにガイド部43bを設けておくことにより、サブバー8を上方から保持レール43に載置する際、サブバー8のフランジ部8bをガイド部43bによってレール本体43aへと円滑に案内することが可能になるとともに、回動モータ42によって保持レール43が回動される際に、レール本体43aに載置されたサブバー8がレール本体43aから落下することを防止することができる。
把持部45は、いわゆる平行開閉グリッパであり、レール本体43aを挟んで対向して配置される一対の可動部46と、一対の可動部46を、図3に示される矢印D1の方向に沿って、互いに近付けたり離したりすることが可能な把持シリンダ48と、により構成される。
一対の可動部46には、対向する面に当接部47がそれぞれ設けられており、一対の可動部46の位置は、当接部47を介してサブバー8の平板部8cを挟持可能な把持位置と、当接部47がサブバー8に接しない非把持位置と、の二つの位置に把持シリンダ48によって切り換えられる。なお、図3には、一対の可動部46が非把持位置にある状態が示されている。
また、一対の可動部46が非把持位置にあるとき、当接部47は、上方から見てレール本体43aと重なり合わないように、レール本体43aから離される。このため、一対の可動部46の位置を非把持位置とすることにより、レール本体43aへとサブバー8を載置することが可能であるとともに、レール本体43aに載置されたサブバー8を取り除くことが可能である。
回動モータ42は、回転角度を制御可能なサーボモータであり、テーブル34の下面に設置される。回動モータ42の回動軸42aは、テーブル34に形成された図示しない貫通孔を挿通し、その先端は、把持シリンダ48に結合されている。回動モータ42が回動することにより、把持部45と把持シリンダ48上に設けられた保持レール43とは、回動軸42aを回転中心C1として、図3に示される矢印R1の方向に沿って回動する。また、回転中心C1となる回動軸42aは、平面視において取付作業部30の中心に位置しており、後述のように取付作業部30の位置を調整する際の中心位置ともなる。
なお、回動モータ42は、回転角度を制御可能なモータであればどのような形式のモータであってもよく、例えば、ステッピングモータであってもよい。また、回動軸42aと回動モータ42との間には、減速機構が設けられていてもよい。
第2位置調整部50は、一対のメインバー6(既設バー)の一方を把持可能な第1把持部55Aと、水平方向に伸縮することにより第1把持部55Aの位置を変更可能な第1アーム部51Aと、一対のメインバー6(既設バー)の他方を把持可能な第2把持部55Bと、水平方向に伸縮することにより第2把持部55Bの位置を変更可能な第2アーム部51Bと、を有する。
第1アーム部51Aは、テーブル34の上面に固定されるシリンダ部52と、シリンダ部52から突出するロッド部53と、を有する電動シリンダであり、図2及び図3に示される矢印D2の方向に沿って伸縮作動する。
ロッド部53の先端には、第1把持部55Aが設置される支持ブラケット54が取り付けられる。支持ブラケット54は、ロッド部53の伸縮方向に対して直交する方向に延存しロッド部53に固定される第1平板54aと、第1平板54aの下端部からロッド部53の伸長方向に延びる第2平板54bと、第1平板54aの上端部からロッド部53の伸長方向に延びる第3平板54cと、により主に構成される。
第2アーム部51Bの構成は、第1アーム部51Aの構成と同じであり、第2把持部55Bが設置される支持ブラケット54の構成は、第1把持部55Aが設置される支持ブラケット54の構成と同じであるため、それらの説明を省略する。
第1アーム部51A及び第2アーム部51Bは、図3に示すように、ロッド部53の突出方向が互いに反対の方向となるようにして、テーブル34上に互いに平行に配置される。
第1把持部55Aは、第2平板54b上に設置される回動モータ56と、回動モータ56の回動軸56aに固定された回動プレート57と、第3平板54c上に設置される固定プレート58と、を有する。
回動モータ56は、回動軸56aの軸方向が第1アーム部51Aの伸縮方向に対して直交する方向となるように設置されたサーボモータまたはステッピングモータである。回動モータ56は、回動プレート57の位置を、回動プレート57と固定プレート58とによりメインバー6を挟持することが可能な把持位置と、メインバー6を挟持しない非把持位置と、の二つの位置に切り換えるように制御される。なお、図1には、回動プレート57が把持位置にある状態が示されており、図2及び図3には、回動プレート57が非把持位置にある状態が示されている。
回動プレート57は、把持位置にあるときにメインバー6の平板部6cに当接可能な回動側当接部57aと、回動軸56aに固定される固定部57bと、固定部57bと回動側当接部57aとの間に設けられ回動軸56aに対して直交する方向に延びる延出部57cと、を有する。
固定プレート58には、回動プレート57が把持位置にあるときに回動プレート57の回動側当接部57aと所定の隙間をあけて対向する固定側当接部58aが設けられる。回動側当接部57aと固定側当接部58aとの間に形成される隙間の大きさは、メインバー6の平板部6cの厚さと同じ大きさかこれよりも僅かに小さく設定される。
これにより、メインバー6のフランジ部6bが第2平板54b上に載置された状態において、回動プレート57が図2に示される位置(非把持位置)から、図2に示される矢印R2の方向に沿って、固定プレート58へと近付くように回動モータ56によって回動されて把持位置に至ると、図1に示すように、メインバー6は、その平板部6cが固定側当接部58aと回動側当接部57aとにより挟持された状態となる。
なお、回動プレート57の位置の切り換えは、回動モータ56に代えて、例えば、ロッド先端が回動プレート57の延出部57cに下方から当接するように上下方向に沿って配置された電動シリンダによって行われてもよい。この場合、回動プレート57の位置は、電動シリンダが伸長することにより把持位置となり、電動シリンダが収縮することにより非把持位置となる。
また、第1把持部55Aの構成は、上記構成に限定されず、上述の把持部45と同じような平行開閉グリッパであってもよい。
第2把持部55Bの構成は、第1把持部55Aの構成と同じであるため、その説明を省略する。
また、第1把持部55Aが設けられる支持ブラケット54には、第1位置調整部40により保持されたサブバー8の端部近傍を押圧することによって、サブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに押し込み可能な構成を有する押込部60が設けられる。
押込部60は、図5に示すように、第2平板54bの下面に固定された電動シリンダ61と、電動シリンダ61のロッド部61aの伸縮によって位置が切り換えられる伝達プレート62と、支持ピン65を介して第1平板54aに回動可能に取り付けられた押込プレート64と、を有する。
電動シリンダ61は、伸縮方向(図5に示される矢印D3の方向)が第1アーム部51Aの伸縮方向に対して直交する方向となるように第2平板54bに設置される。
伝達プレート62には、電動シリンダ61の伸縮方向に直交する方向に長い長孔62aが設けられており、伝達プレート62と押込プレート64とは、長孔62aを挿通するピン部材66を介して連結されている。
押込プレート64は、支持ピン65が設けられる回動中心部64aと、ピン部材66が設けられる一端部64bと、回動中心部64aを挟んで一端部64bとは反対側に設けられる他端部64cと、を有する。
押込プレート64の他端部64cは、フック状に形成されており、電動シリンダ61が伸長して押込プレート64が回動した際に、サブバー8の平板部8cに当接可能な形状となっている。
図5において実線で示されるように、電動シリンダ61が最も収縮している状態では、ピン部材66が伝達プレート62の長孔62aの上方側に位置することにより、押込プレート64の他端部64cが第3平板54cの上面よりも下方に位置した状態(待機状態)となる。なお、第1位置調整部40により保持されたサブバー8は、第3平板54cの上面に沿って回動するため、待機状態にある押込プレート64によってサブバー8の回動が妨げられることはない。
一方、図5において破線で示されるように、電動シリンダ61が最も伸長し、図5に示される矢印D3の方向に伝達プレート62が移動すると、ピン部材66は伝達プレート62の長孔62aの下方側へと移動する。このピン部材66の移動に対応して、押込プレート64は、支持ピン65を中心として、図5に示される矢印R3の方向に回動する。
このように押込プレート64が回動することによって、押込プレート64の他端部64cは、第3平板54cの上面を超えて、サブバー8の平板部8cを押圧可能な状態(押込状態)となる。なお、他端部64cがサブバー8の平板部8cに当接する方向は、平板部8cに対して垂直な方向であることが好ましいが、平板部8cを垂直に押圧する力の成分を生じさせることができれば、平板部8cに対して垂直な方向から傾いていてもよい。
上記構成の押込部60は、第2把持部55Bが設けられる支持ブラケット54にも設けられる。
施工ロボット100は、上記各機構に加えて、一対のメインバー6(既設バー)の状態を検知可能な既設バーセンサ72a,72b(既設バー検知部)と、一対のメインバー6(既設バー)に対して略直交するように設けられた既設サブバー7(基準バー)の状態を検知可能な基準バーセンサ74a,74b(基準バー検知部)と、をさらに備える。
既設バーセンサ72a,72bは、テーブル34に立設された第1支柱35の先端部に取り付けられた第1既設バーセンサ72aと、テーブル34に立設された第2支柱36の先端部に取り付けられた第2既設バーセンサ72bと、により構成される。なお、第1支柱35と第2支柱36とは、テーブル34の略対角線上に設置されており、アーム部51A,51Bの伸縮方向においても、アーム部51A,51Bの伸縮方向に直交する方向においても互いに重なり合わない位置に設置されている。
第1既設バーセンサ72a及び第2既設バーセンサ72bは、比較的測定精度が高いポイント式レーザ距離センサであり、第1既設バーセンサ72aは、第1アーム部51Aが伸長する方向にあるメインバー6(既設バー)までの距離を検出可能な方向に向けて設置され、第2既設バーセンサ72bは、第2アーム部51Bが伸長する方向にあるメインバー6(既設バー)までの距離を検出可能な方向に向けて設置される。つまり、第1既設バーセンサ72aと第2既設バーセンサ72bとは、発光面が互いに反対の方向を向くように設置される。
第1既設バーセンサ72a及び第2既設バーセンサ72bによって検出された距離は、制御部70へと送られ、後述のように主に取付作業部30の位置やアーム部51A,51Bの伸縮量を調整するために用いられる。
基準バーセンサ74a,74bは、第1既設バーセンサ72aとともに第1支柱35の先端部に取り付けられた第1基準バーセンサ74aと、第2既設バーセンサ72bとともに第2支柱36の先端部に取り付けられた第2基準バーセンサ74bと、により構成される。
第1基準バーセンサ74a及び第2基準バーセンサ74bは、比較的測定精度が高いポイント式レーザ距離センサであり、第1基準バーセンサ74aは、第1アーム部51Aの伸縮方向に対して直交する方向にある既設サブバー7(基準バー)までの距離を検出可能な方向に向けて設置され、第2基準バーセンサ74bは、第2アーム部51Bの伸縮方向に対して直交する方向にある既設サブバー7(基準バー)までの距離を検出可能な方向に向けて設置される。つまり、第1基準バーセンサ74aと第2基準バーセンサ74bとは、発光面が同じ方向に向けて設置されている。
第1基準バーセンサ74a及び第2基準バーセンサ74bによって検出された距離は、制御部70へと送られ、後述のように主に取付作業部30の位置やアーム部51A,51Bの伸縮方向を調整するために用いられる。
なお、既設バーセンサ72a,72b及び基準バーセンサ74a,74bとしては、ToF(Time of Flight)方式の三次元距離センサや計測対象物までの距離をスキャン計測可能な二次元測域センサ、いわゆる、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよいが、測定精度の観点からはポイント式レーザ距離センサを用いることが好ましい。
制御部70は、図6に示すように、第1既設バーセンサ72a、第2既設バーセンサ72b、第1基準バーセンサ74a、第2基準バーセンサ74b及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10、昇降部20、第1位置調整部40、第2位置調整部50及び押込部60の作動を制御する。制御部70が行う具体的な制御については、一対のメインバー6に対してサブバー8を取り付ける後述の方法の説明において詳述する。
制御部70は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部70に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部70は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよく、例えば、取付作業部30と台車部10とにそれぞれ設けられていてもよい。
また、制御部70には、図6に示すように、施工ロボット100及び施工ロボット100にサブバー8を供給する部材供給ロボットに対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバSとデータの送受信を行うための通信部70aが設けられる。通信部70aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部70aは、部材供給ロボットの制御部と通信を行う際にも用いられる。
続いて、図7~11のフローチャートと図12~16に示される作動状態図を主に参照し、上記構成の施工ロボット100によって、一対のメインバー6に対してサブバー8を取り付ける方法について説明する。図7は、施工ロボット100が行う作業の手順を示したフローチャートであり、図8~11は、図7のフローチャートの一部の作業の手順をそれぞれ示したフローチャートである。図12~16は、各作業手順における施工ロボット100の作動を説明するための概略図である。
まず、ステップS11では、施工ロボット100の制御部70において、作業エリアに関するデータが読み込まれ、記憶される。具体的には、制御部70の通信部70aを介してサーバSからBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、メインバー6(既設バー)及び既設サブバー7(基準バー)の位置やサブバー8(クロスバー)を取り付ける順序などが含まれる。
次に、ステップS12では、制御部70は、台車部10の情報取得器15によって、施工ロボット100の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、施工ロボット100の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。制御部70は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
続くステップS13では、制御部70は、最初にサブバー8が取り付けられる一対のメインバー6の座標をステップS11で読み込まれたデータから抽出し、台車部10を制御することによって施工ロボット100を抽出された座標に向けて移動させる。なお、最初にサブバー8が取り付けられる一対のメインバー6は、施工ロボット100が置かれた場所から最も近くにある一対のメインバー6であってもよい。
施工ロボット100の移動が完了すると、制御部70は、情報取得器15によって、作業対象となる一対のメインバー6の認識を行う(ステップS14)。具体的には、作業対象となる一対のメインバー6までの距離を情報取得器15によって測定し、一対のメインバー6に相当する略平行に延びる2つの直線状部材と、一対のメインバー6間の空間に相当する直線状部材間に形成される空間と、を検出する。
ここで、2つの直線状部材やそれらの間に形成される空間が検出できない場合、メインバー6と施工ロボット100との間や一対のメインバー6の間に何らかの障害物がある可能性がある。このため、一対の直線状部材及びそれらの間の空間を正常に認識することができない場合には、作業を行うことができないとしてステップS20に進み、一対の直線状部材及びそれらの間の空間が正常に認識された場合には、施工ロボット100の取付作業部30の位置を調整するためにステップS15に進む。
続いて、ステップS15で行われる取付作業部30の位置調整について、図8のフローチャートと図12及び図13を参照して説明する。図12は、一対のメインバー6の長手方向に沿った方向から見た施工ロボット100の作動状態を示した図であり、図13は、図12の矢印Cで示される方向から見た施工ロボット100と、一対のメインバー6と、一対のメインバー6に設けられた既設サブバー7と、を示した図である。
上記構成の施工ロボット100によって一対のメインバー6にサブバー8を正確に取り付けるには、一対のメインバー6に対する取付作業部30の位置が、取り付けに適した位置となっている必要がある。具体的には、各把持部55A,55Bによってメインバー6をそれぞれ正確に把持するには、取付作業部30が一対のメインバー6間の中央に位置し、アーム部51A,51Bの伸縮方向がメインバー6の長手方向に対して直交する方向となっていることが好ましい。また、サブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに正確に差し込むには、サブバー8を回動させる回動モータ42の回転中心C1の位置が、一対のメインバー6の各差込口6dの位置に対して予め設定された位置にある必要ある。
しかしながら、上述のように、サブバー8の取り付け作業が行われる座標の近傍へと施工ロボット100を移動させることは比較的容易に可能であるが、その過程で取付作業部30の位置をサブバー8の取り付けに適した位置とすることは難しい。
そこで、ステップS15では、一対のメインバー6の下方に移動した施工ロボット100の取付作業部30の位置を、サブバー8の取り付けに適した位置に調整する作業が行われる。
この工程では、図8に示されるように、まず、ステップS31において、制御部70は、昇降部20を伸長させることによって、取付作業部30を上昇させる。
具体的には、図12に示されるように、既設バーセンサ72a,72bが一対のメインバー6の平板部6cに対してほぼ対向し、既設バーセンサ72a,72bによって一対のメインバー6までの距離が計測可能となり、且つ、図13に示されるように、基準バーセンサ74a,74bが、一対のメインバー6に対して略直交するように設けられた既設サブバー7の平板部7cにほぼ対向し、基準バーセンサ74a,74bによって既設サブバー7までの距離が計測可能となるまで取付作業部30を上昇させる。なお、既設サブバー7は、サブバー8と同じ形状のバー部材であり、差込部7eを介して予め一対のメインバー6に取り付けられたものである。
各既設バーセンサ72a,72bによりメインバー6までの距離を計測可能となったか否かについては、各既設バーセンサ72a,72bの計測値が予測される範囲内の値になったか否かで判定され、各基準バーセンサ74a,74bにより既設サブバー7までの距離を計測可能となったか否かについては、各基準バーセンサ74a,74bの計測値が予測される範囲内の値になったか否かで判定される。なお、予測される範囲とは、一対のメインバー6間の設計上の間隔の大きさやサブバー8が設置される設計上の間隔の大きさに基づいて算出される設計上の長さに対してある程度の幅を持たせた数値範囲である。
なお、床面2からメインバー6の平板部6cまでの高さは予め設定されているため、昇降部20の伸長量は、床面2からの既設バーセンサ72a,72bの高さが平板部6cまでの高さと一致するように一旦制御され、その後、各既設バーセンサ72a,72b及び各基準バーセンサ74a,74bの検出状態に応じて適宜調整される。
このように既設バーセンサ72a,72b及び基準バーセンサ74a,74bによる距離計測が可能になると、ステップS32に進み、制御部70は、既設バーセンサ72a,72bにより一対のメインバー6までの距離の計測を開始し、基準バーセンサ74a,74bにより既設サブバー7までの距離の計測を開始する。
続くステップS33からステップS35では、計測された距離に基づいて、取付作業部30の位置の調整が行われる。これらの工程では、取付作業部30の中心位置である回転中心C1を、一対のメインバー6へサブバー8を取り付けるために理想とされる理想位置へと位置させる調整が行われる。
まず、ステップS33において、制御部70は、アーム部51A,51Bの伸縮方向の調整を行う。
アーム部51A,51Bの伸縮方向は、一対のメインバー6の長手方向に対して直交していることが求められることから、一対のメインバー6を基準としてアーム部51A,51Bの伸縮方向を調整することが考えられる。しかしながら、各メインバー6は、単に吊りボルト4に吊られた状態となっており、位置が安定していないことから基準として用いることはあまり適切ではない。
そこで、本実施形態では、一対のメインバー6に両端部が取り付けられることで比較的位置が安定した状態となっている既設サブバー7を基準として採用し、アーム部51A,51Bの伸縮方向が、既設サブバー7の長手方向に対して平行となるように、つまり、結果として、アーム部51A,51Bの伸縮方向が、メインバー6の長手方向に対して直交するように、アーム部51A,51Bの伸縮方向を調整している。
アーム部51A,51Bの伸縮方向が既設サブバー7の長手方向に対して平行となっているか否かは、第1基準バーセンサ74aにより計測された既設サブバー7までの距離と第2基準バーセンサ74bにより計測された既設サブバー7までの距離との差分が所定の範囲内にあるか否かで判定可能である。
このため、ステップS33において制御部70は、第1基準バーセンサ74aの計測値と第2基準バーセンサ74bの計測値との差分の大きさが所定の範囲内となるように、台車部10を旋回制御することによって、取付作業部30の位置を調整する。
続いて、ステップS34において、制御部70は、サブバー8が取り付けられる位置の直下へと取付作業部30を移動させる。具体的には、サブバー8を回動させる回動モータ42の回転中心C1が、サブバー8が取り付けられる位置の直下に位置するように取付作業部30の位置を調整する。
ここで、一対のメインバー6に対してサブバー8が取り付けられる間隔、すなわち、メインバー6の長手方向において差込口6dが設けられている間隔は予め決まっている。したがって、サブバー8が取り付けられる位置は、既設サブバー7から所定の距離だけ離れた位置となる。
そして、現時点での既設サブバー7から回転中心C1までの距離(図13に示される距離L3)は、第1基準バーセンサ74aの計測値、または、第2基準バーセンサ74bの計測値から算出可能である。
したがって、ステップS34において制御部70は、第1基準バーセンサ74aの計測値、または、第2基準バーセンサ74bの計測値に基づいて算出された既設サブバー7から回転中心C1までの距離L3が予め設定された距離となるように、上述の水平変位機構または台車部10を制御することによって、取付作業部30の位置を調整する。なお、ステップS34での取付作業部30の位置調整は、ステップS33で調整されたアーム部51A,51Bと既設サブバー7との平行状態を維持したまま、既設サブバー7の長手方向に対して直交する方向に沿って取付作業部30を移動させることにより行われる。
さらに、ステップS35において、制御部70は、一対のメインバー6間の略中央へと取付作業部30を移動させる。
具体的には、回転中心C1から一方のメインバー6までの距離(図13に示される第1距離L1)と、回転中心C1から他方のメインバー6までの距離(図13に示される第2距離L2)と、が一致するように取付作業部30の位置を調整する。
第1距離L1は、第1既設バーセンサ72aの計測値から算出可能であり、第2距離L2は、第2既設バーセンサ72bの計測値から算出可能である。
したがって、ステップS35において制御部70は、第1既設バーセンサ72aの計測値に基づいて算出された第1距離L1と、第2既設バーセンサ72bの計測値に基づいて算出された第2距離L2と、が同じ大きさとなるように、上述の水平変位機構または台車部10を制御することによって、取付作業部30の位置を調整する。なお、ステップS35での取付作業部30の位置調整は、ステップS33で調整されたアーム部51A,51Bと既設サブバー7との平行状態を維持したまま、既設サブバー7の長手方向と平行する方向に沿って取付作業部30を移動させることにより行われる。
このように一連の調整工程を経て、回転中心C1は、一対のメインバー6へサブバー8を取り付けるために理想とされる理想位置に位置することとなり、取付作業部30は、サブバー8の取り付けに適した位置に位置することとなる。なお、ステップS33からステップS35で行われる取付作業部30の位置の調整は、個々に行われてもよいし、同時並行で行われてもよい。
ステップS15で行われる取付作業部30の位置調整が完了すると、一対のメインバー6を把持する工程であるステップS16に進む。
次に、ステップS16で行われる作業について、図9のフローチャートと図14を参照して説明する。図14は、一対のメインバー6の長手方向に沿った方向から見た施工ロボット100の作動状態を示した図である。
この工程では、図9に示されるように、まず、ステップS41において、制御部70は、昇降部20をさらに伸長させることによって、取付作業部30をさらに上昇させる。
具体的には、図14に示されるように、床面2から第1位置調整部40により保持されたサブバー8までの高さが、床面2から一対のメインバー6までの高さと一致するまで取付作業部30を上昇させる。床面2からメインバー6までの高さは予め設定されているため、昇降部20の伸長量は、床面2からサブバー8までの高さがメインバー6までの高さと一致するように制御される。
なお、取付作業部30をさらに上昇させる途中で、各既設バーセンサ72a,72bは、メインバー6と対向しない状態、すなわち、メインバー6までの距離を計測できない状態となる。このため、昇降部20の伸長量は、例えば、各既設バーセンサ72a,72bによる距離の計測ができなくなってから、予め設定された量だけ伸ばすように制御されてもよい。
また、ステップS41において取付作業部30を上昇させる際、第1位置調整部40によって保持されたサブバー8が一対のメインバー6に当たってしまうことを避けるために、第1位置調整部40は、前述の図13に示すように、サブバー8をアーム部51A,51Bの伸縮方向に対して予め設定された角度だけ回動させた状態で保持する。
なお、このようにサブバー8を回動させておく方向は、サブバー8の差込部8eの先端の向き、すなわち差込部8eの差し込み方向に応じて設定される。具体的には、サブバー8は、図13に示すように、上方から見て各差込部8eの先端がメインバー6を向いた状態となるように予め回動される。
また、取付作業部30を上昇させる際、第2位置調整部50の把持部55A,55Bに設けられた固定プレート58が、一対のメインバー6に当たってしまうことを避けるために、第2位置調整部50の各アーム部51A,51Bは、最も収縮した状態とされる。
ステップS41での取付作業部30の上昇が完了すると、続くステップS42において、各アーム部51A,51Bがメインバー6に向けてそれぞれ伸長される。
具体的には、各アーム部51A,51Bは、各把持部55A,55Bに設けられた固定プレート58の固定側当接部58aがメインバー6の平板部6cに当接するまで、図14において矢印D2で示される方向に伸長される。各アーム部51A,51Bの伸長量は、先に求められた第1距離L1及び第2距離L2に基づいて予め算出される。なお、固定側当接部58aがメインバー6の平板部6cに当接したことを検出するために、固定プレート58やその周辺に、近接センサや圧力センサを設けておいてもよい。
そして、ステップS42での各アーム部51A,51Bの伸長が完了すると、続くステップS43において、各把持部55A,55Bの回動プレート57がメインバー6に向けて回動される。
具体的には、図14において矢印R2で示される方向に沿って、各回動プレート57は、回動モータ56によりメインバー6に向けて回動される。これにより、各メインバー6は、その平板部6cが固定プレート58の固定側当接部58aと回動プレート57の回動側当接部57aとにより挟持された状態、すなわち、各把持部55A,55Bによって把持された状態となる。
このようにステップS16おいて一対のメインバー6を把持する把持工程が完了すると、続くステップS17において、把持された一対のメインバー6にサブバー8を差し込む差込工程が行われる。
次に、ステップS17で行われる作業について、図10のフローチャートと図15及び図16を参照して説明する。図15は、図14の矢印Dで示される方向から見た施工ロボット100と、一対のメインバー6と、を示した図であり、図16は、図15の矢印Eで示される部分を拡大して示した拡大図であり、後述のサブバー8の位置調整が完了した状態を示している。なお、図15では、メインバー6の差込口6dとサブバー8の差込部8eとの位置関係を明確にするために、差込口6dの周辺の部分を、平板部6cに直交する平面による断面視で示している。また、図16では、メインバー6の差込口6dとサブバー8の差込部8eとの位置関係を明確にするために、各平板部6c,8cに直交する平面における各部の断面形状を示している。
この工程では、図10に示されるように、まず、ステップS51において、一対のメインバー6間の間隔が調整される。
ここで、ステップS16おいて一対のメインバー6を把持した際の各アーム部51A,51Bの伸長量は、各既設バーセンサ72a,72bの計測値から求められた第1距離L1及び第2距離L2に基づいて設定されたものである。つまり、各把持部55A,55Bによって把持された一対のメインバー6間の間隔の大きさは、サブバー8の取り付けに適切な大きさとなっているかは不明であり、サブバー8の全長に対して短すぎたり長すぎたりする可能性がある。
そこでステップS51では、サブバー8を取り付ける前に、サブバー8に対する一対のメインバー6の水平方向位置を調整することにより、一対のメインバー6間の間隔の大きさを、サブバー8の取り付けに最適な大きさとしている。
サブバー8の取り付けに最適な間隔とは、後述のように第1位置調整部40によって位置が調整されるサブバー8の差込部8eの移動経路(図15において破線で表示される経路)上に一対のメインバー6の差込口6dがそれぞれ位置した状態となる間隔であり、サブバー8の全長、すなわち、サブバー8の両端に設けられた差込部8e間の長さに応じて予め設定される。
また、サブバー8は、その中心が回転中心C1と一致するように第1位置調整部40により保持されており、回転中心C1からサブバー8の両端に設けられた各差込部8eまでのそれぞれの長さは同じ長さとなっている。
このため、ステップS51において、制御部70は、回転中心C1から一方のメインバー6までの第1距離L1と回転中心C1から他方のメインバー6までの第2距離L2とが同じ長さになるように、各アーム部51A,51Bの伸長量を同じ大きさにしつつ、サブバー8の差込部8eの移動経路上に一対のメインバー6の差込口6dがそれぞれ位置した状態となるように一対のメインバー6間の間隔の大きさ、すなわち、第1距離L1と第2距離L2とを足し合わせた長さを、各アーム部51A,51Bの伸長量を変化させることによって調整する。
なお、上述のように各メインバー6は、単に吊りボルト4に吊られた状態となっており、位置が安定していないことから、一対のメインバー6間の間隔の大きさは、各アーム部51A,51Bの伸長量を変化させることによって容易に変更することが可能である。
ステップS51において一対のメインバー6間の間隔の調整が完了すると、ステップS52に進み、サブバー8の両端部にそれぞれ設けられた差込部8eが一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに近付くように、第1位置調整部40によって保持されたサブバー8(クロスバー)の位置が調整される。
具体的には、サブバー8の両端に設けられた差込部8eが、図15において矢印R1で示される方向に沿って、一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに向けて移動するように、回動モータ42によりサブバー8は徐々に回動される。そして、図16に示すように、差込部8eの先端部の少なくとも一部がメインバー6の差込口6d内に入り込む位置となるようにサブバー8の位置が調整される。
なお、サブバー8は、上述のように、回転中心C1を中心に回動されるため、サブバー8の差込部8eを一対のメインバー6の差込口6dに近付ける際に、差込部8eの最も先端の部分がメインバー6の平板部6cに当接するおそれがある。このため、ステップS52において回動モータ42が制御されている間も、各アーム部51A,51Bを制御し、図15に示される矢印D2に沿って各アーム部51A,51Bを僅かに伸縮させることによって、メインバー6の平板部6cに差込部8eの先端が当接しないように、第1距離L1及び第2距離L2を適宜調整するようにしてもよい。
また、ステップS52に至るまでは、サブバー8は、落下防止のため、把持部45によって、その平板部8cが把持された状態となっている。しかしながら、サブバー8の状態が長手方向や上下方向への移動がまったくできない状態となっていると、僅かな位置のずれが生じただけでもサブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに差し込むことが難しくなる。したがって、長手方向や上下方向に、ある程度の遊びを持たせるために、サブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに近付ける際には、把持部45はサブバー8の平板部8cを把持しない状態とされる。
続くステップS53では、ステップS52で行われたサブバー8の位置調整が正常に完了したか否かが判定される。
図16に示すように、サブバー8の差込部8eの先端部の少なくとも一部がメインバー6の差込口6d内に入り込んでいれば、サブバー8の位置調整は正常に完了したと判定される。一方、サブバー8の回動が途中で止まるなどにより、サブバー8の差込部8eの先端部がメインバー6の差込口6d内に入り込んでいない場合には、サブバー8の位置調整が正常に完了していないと判定される。
このような判定は、例えば、各アーム部51A,51Bの伸縮方向に対して、サブバー8の長手方向が平行となる状態、すなわち、一対のメインバー6へのサブバー8の取り付けが正常に完了した状態を基準(0度)とした場合に、サブバー8がこの基準に至るまでの角度、すなわち、現時点でのサブバー8の長手方向と各アーム部51A,51Bの伸縮方向とが成す角度と、予め設定された閾値(判定基準角度)とを比較することにより行われる。
そして、サブバー8が基準に至るまでの角度が判定基準角度以下であれば、サブバー8の位置調整が正常に完了したと判定され、サブバー8が基準に至るまでの角度が判定基準角度よりも大きければ、何らかの理由によりサブバー8の回動が制限された可能性があるとして、サブバー8の位置調整が正常に完了していないと判定される。判定基準角度は、例えば5度、好ましくは2度に設定される。なお、判定方法は、このような方法に限定されず、差込口6dへの差込部8eの接近を検知する近接センサや差込口6dと差込部8eとの間の距離を画像等によって検知可能な画像センサの検出値に基づいて行われるものであってもよい。
ステップS53においてサブバー8の位置調整が正常に完了したと判定されると、差込部8eを差込口6dに押し込むためにステップS54へ進み、サブバー8の位置調整が正常に完了しなかったと判定されると、作業を正常に完了することができなかったとしてステップS20に進む。
続くステップS54では、差込部8eを差込口6dに押し込むために、押込部60が作動される。
上述のように、押込部60は、図5に示されるように、電動シリンダ61が伸長することによって、サブバー8の平板部8cに押込プレート64が当接可能な構成となっている。したがって、ステップS52において、図16に示すように、差込部8eの先端部の少なくとも一部がメインバー6の差込口6d内に入り込んだ状態となっているサブバー8の平板部8cに、押込部60の押込プレート64を当接させることによって、差込部8eを差込口6dに押し込むことができる。
また、押込部60は、サブバー8の両端部近傍にそれぞれ配置されることから、サブバー8は、両端部において押込プレート64によって押圧される。これにより、サブバー8の両端に設けられた差込部8eは、一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに確実に差し込まれ、サブバー8は、一対のメインバー6に取り付けられた状態となる。
なお、差込部8eを差込口6dに確実に差し込むには、回転中心C1から出来るだけ離れた部分において押込プレート64をサブバー8に当接させることが好ましいが、押込プレート64が押圧するサブバー8の端部は、サブバー8の最端である必要はなく、その近傍であればよく、例えば、ガイド部43bに支持される部分の周辺であってもよい。また、押込部60を作動させる際、回動モータ42は、ブレーキ力(保持トルク)を生じないように制御される。
このようにステップS17おいて、一対のメインバー6へサブバー8を差し込む差込工程が完了すると、続くステップS18において、一対のメインバー6の把持状態を解放する工程が行われる。
次に、ステップS18で行われる作業について、図11のフローチャートを参照して説明する。
この工程では、図11に示されるように、まず、ステップS61において、各把持部55A,55Bの回動プレート57がメインバー6から離れるように回動される。
具体的には、ステップS43において行われた回動プレート57の回動と反対の作動であり、各回動プレート57は、図14において矢印R2で示される方向とは反対の方向に沿って、回動モータ56によりメインバー6から離れるように回動される。これにより、回動プレート57の回動側当接部57aが各メインバー6から離れ、回動側当接部57aは各メインバー6に当接しない状態となる。
続くステップS62では、メインバー6から固定プレート58の固定側当接部58aを離すために、各アーム部51A,51Bが収縮される。
各アーム部51A,51Bが収縮することで固定プレート58の固定側当接部58aが各メインバー6から離れ、固定側当接部58aは各メインバー6に当接しない状態となる。
このようにステップS61及びステップS62を経て、回動側当接部57a及び固定側当接部58aが各メインバー6から離れることによって、各メインバー6は、各把持部55A,55Bによって把持されていない解放状態となる。
各メインバー6の解放が完了すると、続くステップS42において、制御部70は、昇降部20を収縮させることによって、取付作業部30を下降させる。
具体的には、取付作業部30は、ステップS31において上昇される前の高さまで下降され、初期位置へと戻される。
このようにステップS18おいて、一対のメインバー6の把持状態が解放され、取付作業部30が初期位置に戻されると、続くステップS19において、一対のメインバー6へのサブバー8の差し込みが正常に完了したか否かが判定される。
例えば、初期位置へと戻った取付作業部30にサブバー8がまだ残っている場合は、サブバー8の差し込みが完了していないことが明らかであり、また、情報取得器15によって検出されたサブバー8の長手方向が一対のメインバー6の長手方向に対して直交した状態となっていない場合には、サブバー8の差し込みが正常に完了していない可能性がある。このように作業が正常に完了していないと推定される場合、制御部70は、作業が正常に完了していないと判定してステップS20に進む。
一方、取付作業部30にサブバー8が残っておらず、情報取得器15によって検出されたサブバー8の長手方向も一対のメインバー6の長手方向に対して略直交した状態となっている場合には、制御部70は、サブバー8の差し込みが正常に完了したと判定して、作業の完了を記憶するとともにステップS21に進む。
ステップS20では、所定の箇所のメインバー6に対してサブバー8の取り付けが正常に完了していないとして、制御部70は、取付作業不可または取付作業未完了をその原因とともに記憶する。なお、ステップS19及びステップS20で制御部70に記憶された作業状況に関する情報は、制御部70の通信部70aを介してサーバSへと逐次送信される。
このため、サーバSを介して施工ロボット100の作業状況を監視するオペレータや現場の作業員は、何れの箇所のメインバー6に対してサブバー8の取付作業が正常に完了しているかを容易に確認することができるとともに、何れの位置においてサブバー8の取付作業をやり直す必要があるかやサブバー8の取付作業が行われなかった原因を容易に把握することができる。
このようにステップS19及びステップS20において作業状況の記憶が完了すると、ステップS21に進み、制御部70は、予定されている取付作業がすべて完了したか否かを確認する。
予定されていた取付作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバSから受信するまで施工ロボット100は待機状態となる。
一方、予定されていた取付作業がまだ完了していない場合、ステップS13へと戻り、次にサブバー8が取り付けられるメインバー6の場所へと移動する。このように次の作業場所へと移動する途中で、施工ロボット100には、図示しない部材供給ロボットからサブバー8が供給される。それ以降、上述のような工程を経てサブバー8の取付作業が実行される。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
上記構成の施工ロボット100の制御部70は、第1位置調整部40を制御して、一対のメインバー6の差込口6dへサブバー8の差込部8eを差し込むことが可能となるようにサブバー8の位置を調整し、第2位置調整部50を制御して、第1位置調整部40によって位置が調整されるサブバー8の差込部8eの移動経路上に差込口6dが位置するように一対のメインバー6の位置を調整することによって、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6にサブバー8を取り付けている。
このように、第1位置調整部40によって位置が調整されるサブバー8の差込部8eの移動経路上に差込口6dが位置するように一対のメインバー6の位置を第2位置調整部50によって調整することによって、サブバー8を一対のメインバー6に対して円滑に、且つ、自動的に取り付けることができる。また、高所作業であるサブバー8の取付作業を施工ロボット100によって行うことによって、作業員の作業負担を軽減するとともに安全性を確保することができる。
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
上記第1実施形態では、一対の既設バーが一対のメインバー6である場合について説明したが、一対の既設バーは、一対のメインバーに取り付けられた一対のサブバーであってもよい。この場合、一対のサブバーに対してさらに取り付けられるサブバーがクロスバーに相当し、一対のサブバーに対して略直交するように設けられたメインバーが基準バー相当する。
また、上記第1実施形態では、一対のメインバー6までの距離を計測するために既設バーセンサ72a,72bが設けられており、既設サブバー7までの距離を計測するために基準バーセンサ74a,74bが設けられている。これに代えて、一対のメインバー6までの距離の計測と既設サブバー7までの距離の計測とは、例えば、単一の二次元測域センサにより行われてもよい。このように1つのセンサを用いた場合であっても、一対のメインバー6までの距離及び既設サブバー7までの距離を計測することができれば、上記第1実施形態と同様に、取付作業部30の中心位置である回転中心C1を、一対のメインバー6へサブバー8を取り付けるために理想とされる理想位置に位置させる調整を行うことが可能である。
また、上記第1実施形態では、サブバー8が取り付けられる位置、すなわち、メインバー6に設けられた差込口6dの位置は、既設サブバー7の位置を基準として求められている。これに代えて、メインバー6に設けられた差込口6dの位置は、差込口6dの位置を含む一対のメインバー6の状態を検知可能な既設バーセンサ72a,72bの検出値に基づいて判定されてもよい。この場合、既設バーセンサ72a,72bとしては、三次元距離センサまたは二次元測域センサが用いられる。
また、上記第1実施形態では、ステップS33において、制御部70は、既設サブバー7を基準として、アーム部51A,51Bの伸縮方向が、既設サブバー7の長手方向に対して平行となるように取付作業部30の位置を調整している。これに代えて、一対のメインバー6の位置が比較的安定している場合や基準となる既設サブバー7が設けられていない場合には、一対のメインバー6の何れか一方を基準として、アーム部51A,51Bの伸縮方向が、メインバー6の長手方向に対して直交するように取付作業部30の位置を調整してもよい。
また、上記第1実施形態では、押込部60によって、サブバー8の差込部8eがメインバー6の差込口6dに押し込まれている。これに代えて、メインバー6の差込口6dへのサブバー8の差込部8eの押し込みは、回動モータ42の回転力によって行われてもよい。但し、回転力を確保するには回動モータ42を大型化する必要があり、施工ロボット100が大型化してしまうおそれがある。このため、上記構成のような押込部60を採用することが好ましい。
また、上記第1実施形態では、サブバー8は、その中央部が保持された状態で回動されるため、サブバー8の両端に設けられた差込部8eは、メインバー6の差込口6dに対して同時に差し込まれることになる。サブバー8を保持する位置やサブバー8の動かし方はこれに限定されず、例えば、両端部近傍において別々に保持し、両端部を別々に動かせるようにしてもよい。この場合、一方の保持部寄りにある差込部8eをメインバー6の差込口6dに先に差し込み、その後、他方の保持部寄りにある差込部8eをメインバー6の差込口6dに差し込むことが可能となる。
また、上記第1実施形態では、第2位置調整部50は、一対のメインバー6を把持部55A,55Bによって把持した状態で、一対のメインバー6間の間隔の大きさがサブバー8の取り付けに最適な大きさとなるように、サブバー8に対する一対のメインバー6の水平方向位置を調整している。ここで、一対のメインバー6に対するサブバー8の取り付けは、一対のメインバー6間の間隔の大きさがサブバー8の取り付けに最適な大きさに保持されていれば可能であることから、一対のメインバー6を把持することに代えて、一対のメインバー6が、一対のメインバー6間の間隔を拡大させる方向に移動することのみを制限可能な機構、すなわち、一対のメインバー6が、一対のメインバー6間の間隔を狭める方向に移動することについては許容する機構によって一対のメインバー6間の間隔を調整して保持するようにしてもよい。このような機構であっても、サブバー8に対する一対のメインバー6の水平方向位置を調整することが可能である。
また、上記第1実施形態では、施工ロボット100は、図示しない部材供給ロボットからサブバー8が補給される。これに代えて、施工ロボット100は、複数のサブバー8を一時的に保管可能な保管部と、保管部から保持部41へとサブバー8を移動させるアーム部と、を備えていてもよい。また、施工ロボット100へのサブバー8の補給は、作業員により行われてもよい。
また、上記第1実施形態では、施工ロボット100は、台車部10の情報取得器15によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。施工ロボット100は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器15に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
<第2実施形態>
次に、図17から図35を参照して、本発明の第2実施形態に係る枠体施工ロボット200(以下、「施工ロボット200」という。)について説明する。施工ロボット200は、上記第1実施形態に係る枠体施工ロボット100と同様に、外部からの操作を必要としない自律型ロボットであり、図17に示すように、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6(既設バー)に対してサブバー8(クロスバー)を取り付ける作業を行うものである。図17には、施工ロボット200によって行われる作業を一対のメインバー6の長手方向に沿った方向から見た状態が示されている。
以下では、図17に示される互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が略水平方向であってメインバー6(既設バー)の長手方向に沿った方向であり、Y軸が略水平方向であってメインバー6の長手方向に直交する方向、すなわち、サブバー8(クロスバー)が設置される方向であり、Z軸が略鉛直方向であるものとして、施工ロボット200の構成及び作動を説明する。なお、図17は、施工ロボット200と各バー部材6,8との関係性をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
図17に示される天井スラブ1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートであり、デッキプレートには、コンクリートが流し込まれる前に、予め複数のインサート3が所定の位置に取り付けられる。インサート3は、メインバー6やサブバー8といった枠体を構成する部材を、ハンガー5を介して吊り下げ支持する吊りボルト4を取り付けるために設けられる部材である。なお、天井スラブ1は、合板型枠に打設されて形成されたコンクリートスラブであってもよい。
メインバー6は、規格化された既製品であって、図17に示すように、ハンガー5が取り付けられる取付部6aと、図示しない天井ボードが載置されるフランジ部6bと、取付部6aとフランジ部6bとの間に設けられる平板部6cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。
サブバー8も、メインバー6と同様に規格化された既製品であって、ハンガー5を取り付け可能な取付部8aと、天井ボードが載置されるフランジ部8bと、取付部8aとフランジ部8bとの間に設けられる平板部8cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。
また、サブバー8の両端には、後述する図33に示すように、サブバー8をメインバー6に取り付けるための差込部8eが設けられる。差込部8eは、略直角に折り曲げられた板材を、その折り曲げ部分がサブバー8の長手方向において平板部8cの端部から外側に位置した状態で平板部8cに固定することにより形成される。つまり、差込部8eの先端部は、平板部8cに対して直交する方向に延びている。
これに対応してメインバー6の平板部6cには、後述する図33に示すように、サブバー8の差込部8eが差し込まれる差込口6dが設けられる。差込口6dは、サブバー8の差込部8eをメインバー6の平板部6cに沿って移動させた場合に、進入した差込部8eが係止される形状となっており、差込口6dに差込部8eが差し込まれることによって、サブバー8は、メインバー6に対して直交した状態で結合される。また、メインバー6の平板部6cには、差込口6dに差し込まれた差込部8eの先端部が当接することによって、差込部8eの差込長さを制限する規制部6eが設けられている。
なお、サブバー8の一方の端部に設けられた差込部8eの延出方向とサブバー8の他方の端部に設けられた差込部8eの延出方向とは、後述する図28に示すように、互いに反対の方向を向いている。つまり、サブバー8を一対のメインバー6に取り付ける場合、一方のメインバー6の差込口6dに差込部8eを差し込む方向と、他方のメインバー6の差込口6dに差込部8eを差し込む方向と、は互いに反対の方向となる。このようにメインバー6とサブバー8との結合部は、簡単には外れにくい構成となっている。
上記形状のメインバー6とサブバー8とを格子状に結合することによって、天井ボードが載置される枠体が形成され、このように形成された枠体と天井ボードとにより、いわゆるグリッドタイプのシステム天井が構成される。
本実施形態に係る施工ロボット200は、システム天井の枠体を設置するという比較的高所で行われる作業のうち、天井スラブ1により支持された一対の上記形状のメインバー6(既設バー)に対して上記形状のサブバー8(クロスバー)を取り付けるという高所作業を実行可能な構成を備える。
次に、図17~22を参照し、施工ロボット200の構成について説明する。図18は、施工ロボット200の正面を部分的に拡大して示した部分正面図であり、図19は、図18に対応する施工ロボット200の平面図である。また、図20は、図18の矢印Fで示される方向から見た図であり、主に後述の第1保持部141Aの外形形状が示されている。また、図21は、施工ロボット200の正面図であり、主に後述の補充機構210の構成を示している。また、図22は、施工ロボット200を含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
施工ロボット200は、図17に示すように、床面2を移動可能な台車部110と、台車部110上に載置される昇降部120と、昇降部120上に載置される取付作業部130と、取付作業部130にサブバー8(クロスバー)を供給する補充機構210と、台車部110、昇降部120、取付作業部130及び補充機構210の作動を制御する図示しない制御部190と、を備える。
台車部110は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部111と、本体部111に取り付けられた一対の車輪114と、一対の車輪114を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪114を別々に駆動することによって、台車部110は、その場で旋回することが可能である。なお、台車部110に設けられたバッテリは、昇降部120、取付作業部130及び補充機構210へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
台車部110を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪114に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、台車部110は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
また、台車部110には、台車部110周辺の情報を取得可能な情報取得器115が設けられる。情報取得器115は、台車部110の周囲を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器115によって撮像された画像は制御部190へと送られ、台車部110の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器115としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。また、情報取得器115は、複数設けられていてもよい。
台車部110上に取り付けられる昇降部120は、多段型の電動ジャッキであり、上下方向に沿って伸縮可能な構成を有する。昇降部120の上端には、取付作業部130を設置するためのフランジ121が設けられる。
取付作業部130は、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6(既設バー)に対してサブバー8(クロスバー)を取り付ける作業を行うための各機構を備えた部分であり、サブバー8を保持するとともに、サブバー8の両端部にそれぞれ設けられた差込部8eが一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに近付くようにサブバー8の位置を調整可能な第1位置調整部140と、一対のメインバー6間の間隔の大きさをサブバー8の取り付けに最適な所定の大きさとすることが可能な第2位置調整部150と、を有する。
取付作業部130は、取付作業部130の水平方向位置を微調整可能な水平変位機構131を介して昇降部120のフランジ121に載置される。
水平変位機構131は、いわゆるアライメントステージ機構であり、例えば、第1位置調整部140及び第2位置調整部150が設けられるテーブル134の位置を、X軸方向及びY軸方向へ変位させることが可能な図示しない電動アクチュエータ及びZ軸方向に沿う回動中心軸C2を中心にテーブル134を回動させることが可能な図示しない電動アクチュエータを有する。
このように取付作業部130と台車部110との間に水平変位機構131を設けておくことにより、台車部110を移動させることなく、第1位置調整部140及び第2位置調整部150の位置を水平面(XY平面)内において微調整することが可能となる。なお、台車部110を移動させることによって、取付作業部130の位置を容易に微調整することが可能な場合は、水平変位機構131を設けなくともよい。また、水平変位機構131に加えて、床面2に対するテーブル134の傾きを微調整可能なスイベルステージ機構が設けられていてもよい。
第1位置調整部140は、サブバー8の一端側を保持する第1保持部141Aと、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に第1保持部141Aを移動可能な第1移動部147Aと、サブバー8の他端側を保持する第2保持部141Bと、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に第2保持部141Bを移動可能な第2移動部147Bと、を有する。
第1保持部141Aは、図20に示されるように、互いに対向して配置される第1保持片143及び第2保持片144と、図20中に示される矢印方向に沿って第1保持片143及び第2保持片144を互いに近付けたり離したりすることが可能なシリンダ部145と、により構成された、いわゆる平行開閉グリッパである。なお、シリンダ部145は、例えば、Z軸方向に沿って伸縮するシリンダの作動を保持片143,144の開閉作動に変換するリンク機構を備えたものであってもよい。
互いに対向する第1保持片143及び第2保持片144の対向面は、サブバー8の側面形状に沿った形状となっており、第1保持片143及び第2保持片144の位置は、サブバー8を保持可能な保持位置と、サブバー8に接しない非保持位置と、の二つの位置にシリンダ部145によって切り換えられる。なお、保持位置では、第1保持片143と第2保持片144との間隔は予め設定された間隔となっており、サブバー8は、僅かな隙間を介して第1保持片143と第2保持片144とにより保持されている。つまり、保持位置において第1保持片143及び第2保持片144は、サブバー8に対して押し付けられた状態とはなっていない。図20には、第1保持片143及び第2保持片144が非保持位置にある状態、すなわち、サブバー8の保持が解除された状態、及び、サブバー8を受け入れることが可能な状態が示されている。
また、保持片143,144のうち、差込部8eが設けられる側に配置される第1保持片143には、差込部8eに向かってサブバー8の長手方向に沿って延びる棒状の延出部143aが設けられる。延出部143aは、第1保持部141Aがサブバー8を保持する位置を決めるための位置決め部として機能する。
第1移動部147Aは、後述のベースプレート154に固定され第1保持部141Aの位置をZ軸方向に沿って変位させるシリンダ部148aと、第1保持部141Aの位置をX軸方向に沿って変位させる第1スライダ部148bと、第1保持部141Aの位置をY軸方向に沿って変位させる第2スライダ部148cと、により構成される。このように、第1移動部147Aは、ベースプレート154に対する第1保持部141Aの位置をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に変更可能な構成となっており、第1保持部141Aは、ベースプレート154に設けられた後述の把持部155Aによって把持されるメインバー6(既設バー)に対して平行な方向及び直交する方向へと移動することが可能となっている。
このように構成された第1移動部147Aに対して、第1保持部141Aは、回動支持部148dを介して第2スライダ部148cの可動子に固定される。
回動支持部148dは、図20に示されるように、回動中心軸C3を中心に第1保持部141Aを回動自在に支持するものであり、第1保持部141Aは、回動支持部148dに設けられた図示しないスプリング等の弾性部材の復元力によって、一定の方向を向くように支持される。このため、第1保持部141Aに外力が作用すると、第1保持部141Aは、外力に応じて回動中心軸C3を中心に回動する一方、第1保持部141Aに作用する外力がなくなると、第1保持部141Aは、弾性部材の復元力によって、所定の位置、具体的には、図19に示されるように、シリンダ部145による保持片143,144の開閉方向がX軸方向に沿った方向となる位置へと戻される。
第2保持部141B及び第2移動部147Bの構成は、第1保持部141A及び第1移動部147Aと同様であるため、その説明を省略する。
第2位置調整部150は、一対のメインバー6(既設バー)の一方を把持可能な第1把持部155Aと、水平方向に伸縮することにより第1把持部155Aの位置を変更可能な第1アーム部151Aと、一対のメインバー6(既設バー)の他方を把持可能な第2把持部155Bと、水平方向に伸縮することにより第2把持部155Bの位置を変更可能な第2アーム部151Bと、を有する。
第1アーム部151Aは、テーブル134の上面に第1スライダ135Aを介して固定されるシリンダ部152と、シリンダ部152から突出するロッド部153と、を有する電動シリンダであり、Y軸方向に沿って伸縮作動する。第1アーム部151Aの伸長量は、メインバー6に取り付けられるサブバー8の長さに応じて切り替えられる。
ロッド部153の先端には、第1把持部155Aが設置されるベースプレート154が取り付けられる。ベースプレート154は、ロッド部153の伸縮方向に対して直交する方向に延存する板状部材である。なお、ベースプレート154には、上述のように、第1保持部141Aが第1移動部147Aを介して固定されている。
第1スライダ135A及び第2スライダ135Bは、シリンダ部152の位置を、Y軸方向に沿って2つの位置に切り替えることが可能なエア駆動式スライダであり、後述のように、取付作業部130にサブバー8を補充する際に、各把持部155A,155Bが補充工程の妨げとならないようにするために設けられる。
第2アーム部151Bの構成は、第1アーム部151Aの構成と同じであり、第2把持部155Bが設置されるベースプレート154は、第1把持部155Aが設置されるベースプレート154と同じものであるため、それらの説明を省略する。
上記構成の第1アーム部151A及び第2アーム部151Bは、図19に示すように、ロッド部153の突出方向が互いに反対の方向となるようにして、テーブル134上に互いに平行に配置される。
第1把持部155Aは、図18に示されるように、支持ピン156cを中心に回動可能に支持された第1把持片156a及び第2把持片156bと、第1把持片156a及び第2把持片156bを互いに近付けたり離したりすることが可能なシリンダ部157と、により構成される。シリンダ部157は、Z軸方向に沿って伸縮するシリンダの作動を把持片156a,156bの回動作動に変換する図示しないリンク機構を有する。
互いに対向する第1把持片156a及び第2把持片156bの対向面は、メインバー6の側面形状に沿った形状となっており、第1把持片156a及び第2把持片156bの位置は、メインバー6を把持する把持位置と、メインバー6に接しない非把持位置と、の二つの位置にシリンダ部157によって切り換えられる。図18及び図19には、第1把持片156a及び第2把持片156bが非把持位置にある状態、すなわち、メインバー6の把持が解除された状態、及び、メインバー6を受け入れることが可能な状態が示されている。
第1把持部155Aは、図19に示されるように、X軸方向においてベースプレート154の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ設置される。
また、各第1把持部155Aには、メインバー6が第1把持部155Aにより把持可能な位置に載置されたか否かを検知可能な既設バー載置部158が設けられる。
既設バー載置部158は、メインバー6が載置されることによって生じる荷重によって押圧される図示しない押圧式センサを有し、既設バー載置部158の検知結果は、制御部190へと送られ、後述のように主に第1把持部155Aの作動の可否を判定する際に用いられる。既設バー載置部158は、把持片156a,156bに隣接して配置されており、例えば、図19に示されるように、X軸方向において二組の第1把持片156a及び第2把持片156bにより挟まれた位置に配置される。
第2把持部155Bの構成は、第1把持部155Aの構成と同じであるため、その説明を省略する。
また、第1把持部155Aが設けられるベースプレート154と第2把持部155Bが設けられるベースプレート154とには、第1位置調整部140により保持されたサブバー8の端部近傍を押圧することによって、サブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに押し込み可能な第1押込部160A及び第2押込部160Bがそれぞれ設けられる。
第1押込部160Aは、図19に示すように、サブバー8の差込部8eを押圧する押圧シリンダ161と、メインバー6の平板部6cを挟持する挟持部166と、Y軸方向及びZ軸方向に押圧シリンダ161及び挟持部166を移動可能な移動部167と、を有する。
押圧シリンダ161は、シリンダ部161aと、シリンダ部161aから突出するロッド部161bと、を有するエア駆動式シリンダであり、伸縮方向がX軸方向と平行となるように、挟持部166を構成する後述のシリンダ部165の第1可動子165aに固定されている。
ロッド部161bの先端には、X軸方向に突出する突起162aが形成された押圧部材162が設けられる。突起162aは、メインバー6の取付部6aとフランジ部6bとの間に入り込み、サブバー8の差込部8eに当接可能な形状に形成される。
挟持部166は、第1挟持片164aが設けられる第1可動子165aと、第2挟持片164bが設けられる第2可動子165bと、Y軸方向に沿って第1挟持片164a及び挟持片164bを互いに近付けたり離したりすることが可能なシリンダ部165と、により構成される。第1挟持片164a及び第2挟持片164bは、メインバー6の取付部6aとフランジ部6bとの間に入り込むことが可能な形状に形成されており、第1挟持片164aは、押圧シリンダ161のシリンダ部161aを介して第1可動子165aに固定されている。
なお、挟持部166は、後述のように、サブバー8の差込部8eを押圧シリンダ161により押圧する際にX軸方向において生じる反力によって、押圧シリンダ161が動いてしまわない程度にメインバー6を挟持する力を発揮することができれば、どのような構造であってもよい。
第2押込部160Bの構成は、第1押込部160Aの構成と同じであるため、その説明を省略する。
また、各ベースプレート154には、メインバー6(既設バー)に設けられた差込口6dの位置を検知する第1差込口検知部170A及び第2差込口検知部170Bがそれぞれ設けられる。
第1差込口検知部170Aは、図19に示すように、メインバー6の平板部6cに対して接触子171a,172aを近付ける接触部174と、Y軸方向、Z軸方向及びX軸方向に接触部174を移動可能な移動部175と、X軸方向における第1保持部141Aの移動を制限する移動制限部177と、を有する。
接触部174は、第1接触子171aが設けられる第1可動子171と、第2接触子172aが設けられる第2可動子172と、Y軸方向に沿って第1接触子171a及び第2接触子172aを互いに近付けたり離したりすることが可能なシリンダ部173と、により構成される。
第1接触子171aと第2接触子172aとが互いに最も接近したときの接触子171a,172a間の間隔の大きさは、メインバー6の平板部6cの厚さよりも大きく設定される。このため、メインバー6の平板部6cを挟んで第1接触子171aと第2接触子172aとが最も接近した状態において、接触部174は、メインバー6の長手方向(X軸方向)に沿って移動可能である。
第1接触子171a及び第2接触子172aは、メインバー6の取付部6aとフランジ部6bとの間に入り込む形状に形成されており、特に、第1接触子171aは、接触部174がメインバー6の長手方向に沿って移動した際に、規制部6eに当接可能な形状となっている。
このようにメインバー6の長手方向(X軸方向)における接触部174の移動は、移動部175に設けられた図示しないステッピングモータにより行われ、その移動量はロータリーエンコーダ等により検出され、制御部190へと送られる。
また、第1可動子171には、接触部174がメインバー6の長手方向に沿って移動した際に、メインバー6に取り付けられたサブバー8に当接可能な第3接触子171bが、X軸方向に沿って形成されている。
移動制限部177は、Y軸方向に沿って進退可能な板状部材であり、移動部175を構成する部材に収容される。移動制限部177は、後述のように、第1接触子171aがメインバー6の規制部6eに当接し、接触部174の移動が停止した際に、図示しないシリンダによって、第1保持部141Aに向けて進出する構成となっている。
第2差込口検知部170Bの構成は、第1差込口検知部170Aの構成と同じであるため、その説明を省略する。
また、各保持部141A,141Bには、サブバー8の差込部8eをメインバー6に対して押し付け可能な第1押付部180A及び第2押付部180Bがそれぞれ設けられる。
第1押付部180Aは、第1保持部141Aの第1保持片143から延びるブラケット184に固定されるシリンダ部181aと、シリンダ部181aから突出するロッド部181bと、を有するシリンダ181と、ロッド部181bの先端に取り付けられた当接部182と、により構成される。
第1押付部180Aは、後述の図28に示されるように、シリンダ181の伸縮方向が第1保持部141Aに保持されたサブバー8の差込部8eを向くように第1保持片143に固定されている。
第2押付部180Bの構成は、第1押付部180Aの構成と同じであるため、その説明を省略する。
補充機構210は、図21に示されるように、サブバー8(クロスバー)を貯留する貯留部211と、貯留部211からサブバー8を取り出す取出部214と、取付作業部130へサブバー8を受け渡す受け渡し部222と、取出部214により取り出されたサブバー8を受け渡し部222へと引き渡す中継部218と、を有する。
貯留部211は、台車部110の本体部111に設置されたレール部材212上に、複数のサブバー8を貯留可能な構成となっている。
取出部214は、サブバー8の平板部8cを負圧により吸引保持可能な保持部215と、保持部215をX軸方向及びZ軸方向に移動可能であるとともに、Y軸方向に沿う回動中心軸C4を中心に保持部215を回動させることが可能な移動部216と、を有する。なお、保持部215によるサブバー8の保持は、負圧を利用したものに限定されず、電磁力を利用したものであってもよい。
中継部218は、フランジ121に取り付けられており、サブバー8を把持可能な一対の把持部219と、把持部219をZ軸方向に移動可能であるとともに、Y軸方向に沿う回動中心軸C5を中心に把持部219を回動させることが可能な移動部220と、を有する。
受け渡し部222は、テーブル134上に設けられており、サブバー8を吸引保持可能な保持部223と、保持部223をX軸方向及びZ軸方向に移動可能な移動部224と、を有する。
なお、補充機構210による取付作業部130へのサブバー8の具体的な供給工程については、後述する。
施工ロボット200は、上記各機構に加えて、一対のメインバー6(既設バー)の状態を検知可能な既設バーセンサ192(既設バー検知部)と、一対のメインバー6(既設バー)に対して略直交するように設けられた既設サブバー7(基準バー)の状態を検知可能な基準バーセンサ194a,194b(基準バー検知部)と、一対のメインバー6と既設サブバー7との位置を把握可能なバー位置センサ191と、をさらに備える。
既設バーセンサ192は、計測対象物までの距離をスキャン計測可能な二次元測域センサ、いわゆる、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサであり、第1アーム部151Aが伸長する方向にあるメインバー6(既設バー)までの距離と、第2アーム部151Bが伸長する方向にあるメインバー6(既設バー)までの距離と、を検出可能な位置に配置される。具体的には、既設バーセンサ192は、バー位置センサ191とともに、ブラケットを介してテーブル134に固定される。
既設バーセンサ192によって検出された距離は、制御部190へと送られ、後述のように主に取付作業部130の位置、すなわち、テーブル134の位置を調整するために用いられる。
第1基準バーセンサ194a及び第2基準バーセンサ194bは、既設バーセンサ192と同様に、計測対象物までの距離をスキャン計測可能な二次元測域センサ、いわゆる、2D-LiDARセンサであり、第1基準バーセンサ194aは、第1アーム部151Aの伸縮方向に対して直交する方向にある既設サブバー7(基準バー)までの距離を検出可能な位置に配置され、第2基準バーセンサ194bは、第2アーム部151Bの伸縮方向に対して直交する方向にある既設サブバー7(基準バー)までの距離を検出可能な位置に配置される。つまり、第1基準バーセンサ194aと第2基準バーセンサ194bとは、同一の既設サブバー7までの距離を検出するように設置されている。具体的には、第1基準バーセンサ194aは、ブラケットを介して第1把持部155Aが設けられるベースプレート154に固定され、第2基準バーセンサ194bは、ブラケットを介して第2把持部155Bが設けられるベースプレート154に固定される。
第1基準バーセンサ194a及び第2基準バーセンサ194bによって検出された距離は、制御部190へと送られ、後述のように主に取付作業部30の位置や把持部155A,155Bの位置を調整するために用いられる。
なお、既設バーセンサ192及び基準バーセンサ194a,194bとしては、2D-LiDARセンサに代えて、ToF(Time of Flight)方式の三次元距離センサやポイント式のレーザ距離センサが用いられてもよい。
バー位置センサ191は、計測対象物までの距離等の奥行き情報を立体的に取得可能なデプスカメラであり、一対のメインバー6と既設サブバー7との位置関係を把握することが可能である。
バー位置センサ191によって取得された情報は、制御部190へと送られ、後述のように、例えば、サブバー8が取り付けられる一対のメインバー6間の空間を認識するために用いられる。
制御部190は、図22に示すように、既設バーセンサ192、第1基準バーセンサ194a、第2基準バーセンサ194b、バー位置センサ191及び情報取得器115により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部110、昇降部120、第1位置調整部140、第2位置調整部150、押込部160、差込口検知部170、押付部180、水平変位機構131及び補充機構210の作動を制御する。制御部190が行う具体的な制御については、一対のメインバー6に対してサブバー8を取り付ける後述の方法の説明において詳述する。
制御部190は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部190に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部190は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよく、例えば、取付作業部130と台車部110とにそれぞれ設けられていてもよい。
また、制御部190には、図22に示すように、施工ロボット200に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバSとデータの送受信を行うための通信部190aが設けられる。通信部190aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部190aは、部材供給ロボットの制御部と通信を行う際にも用いられる。
続いて、図23~27のフローチャートと図28~35に示される作動状態図を主に参照し、上記構成の施工ロボット200によって、一対のメインバー6に対してサブバー8を取り付ける方法について説明する。図23は、施工ロボット200が行う作業の手順を示したフローチャートであり、図24~27は、図23のフローチャートの一部の作業の手順をそれぞれ示したフローチャートである。図28~35は、各作業手順における施工ロボット200の作動を説明するための概略図である。
まず、ステップS111では、施工ロボット200の制御部190において、作業エリアに関するデータが読み込まれ、記憶される。具体的には、制御部190の通信部190aを介してサーバSからBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、メインバー6(既設バー)及び既設サブバー7(基準バー)の位置やサブバー8(クロスバー)を取り付ける順序などが含まれる。
次に、ステップS112では、制御部190は、台車部110の情報取得器115によって、施工ロボット200の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、施工ロボット200の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。制御部190は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
続くステップS113では、制御部190は、最初にサブバー8が取り付けられる一対のメインバー6の座標をステップS111で読み込まれたデータから抽出し、台車部110を制御することによって施工ロボット200を抽出された座標に向けて移動させる。なお、最初にサブバー8が取り付けられる一対のメインバー6は、施工ロボット200が置かれた場所から最も近くにある一対のメインバー6であってもよい。
施工ロボット200の移動が完了すると、制御部190は、バー位置センサ191によって、作業対象となる一対のメインバー6の認識を行う(ステップS114)。具体的には、作業対象となる一対のメインバー6までの距離をバー位置センサ191によって測定し、一対のメインバー6に相当する略平行に延びる2つの直線状部材と、一対のメインバー6(2つの直線状部材)間に形成される空間と、を認識する。なお、一対のメインバー6に対して既設サブバー7が取り付けられている場合は、一対のメインバー6と既設サブバー7とにより囲まれた空間が認識されてもよい。
ここで、2つの直線状部材やそれらの間に形成される空間が認識できない場合、メインバー6と施工ロボット200との間や一対のメインバー6の間に何らかの障害物がある可能性がある。このため、一対の直線状部材及びそれらの間の空間を正常に認識することができない場合には、作業を行うことができないとしてステップS120に進み、一対の直線状部材及びそれらの間の空間が正常に認識された場合には、施工ロボット200の取付作業部130の位置を調整するためにステップS115に進む。
続いて、ステップS115で行われる取付作業部130の位置調整について、図24のフローチャートと図28を参照して説明する。図28は、上方から見た施工ロボット200と、一対のメインバー6と、一対のメインバー6に設けられた既設サブバー7と、を示した図である。
上記構成の施工ロボット200によって一対のメインバー6にサブバー8を正確に取り付けるには、一対のメインバー6に対する取付作業部130の位置が、取り付けに適した位置となっている必要がある。具体的には、各把持部155A,155Bによってメインバー6をそれぞれ正確に把持するには、取付作業部130が一対のメインバー6間の中央に位置し、アーム部151A,151Bの伸縮方向がメインバー6の長手方向に対して直交する方向となっていることが好ましい。また、サブバー8の差込部8eをメインバー6の差込口6dに正確に差し込むには、テーブル134の中心位置が、一対のメインバー6の各差込口6dの位置に対して予め設定された位置にある必要がある。
しかしながら、上述のように、サブバー8の取り付け作業が行われる座標の近傍へと施工ロボット200を台車部110によって移動させることは比較的容易であるものの、取付作業部130の位置や向きをサブバー8の取り付けに適した状態として、施工ロボット200を精度よく停止させることは難しい。
そこで、ステップS115では、一対のメインバー6の下方に移動した施工ロボット200の取付作業部130の位置を、サブバー8の取り付けに適した位置に調整する作業が行われる。
この工程では、図24に示されるように、まず、ステップS131において、制御部190は、既設バーセンサ192により一対のメインバー6までの距離L13,L14を計測させ、基準バーセンサ194a,194bにより既設サブバー7までの距離L11,L12を計測させる。既設サブバー7は、サブバー8と同じ形状のバー部材であり、差込部7eを介して予め一対のメインバー6に取り付けられたものである。
なお、各センサ192,194a,194bが各バー6,7までの距離を計測可能な高さにない場合は、予め昇降部120を伸長させることによって、各センサ192,194a,194bの高さを所定の高さまで上昇させる。
続くステップS132からステップS134では、計測された距離に基づいて、取付作業部130の位置の調整が行われる。これらの工程では、取付作業部130の中心位置であるテーブル134の中心位置を、一対のメインバー6へサブバー8を取り付けるために理想とされる理想位置へと位置させる調整が行われる。
まず、ステップS132において、制御部190は、アーム部151A,151Bの伸縮方向の調整、すなわち、把持部155A,155Bによる一対のメインバー6の把持方向の調整を行う。
把持部155A,155Bによって一対のメインバー6をそれぞれ把持させるには、アーム部151A,151Bの伸縮方向が、一対のメインバー6の長手方向に対して直交していればよいことから、一対のメインバー6を基準としてアーム部151A,151Bの伸縮方向を調整することが考えられる。しかしながら、各メインバー6は、単に吊りボルト4に吊られた状態となっており、位置が安定していないことから、これらを基準として用いることはあまり適切ではない。
そこで、本実施形態では、一対のメインバー6に両端部が取り付けられることで比較的位置が安定した状態となっている既設サブバー7を基準として採用し、既設サブバー7の長手方向に対して平行となるようにアーム部151A,151Bの伸縮方向を調整している。
アーム部151A,151Bの伸縮方向が既設サブバー7の長手方向に対して平行となっているか否かは、第1基準バーセンサ194aにより計測された既設サブバー7までの距離L11と第2基準バーセンサ194bにより計測された既設サブバー7までの距離L12とがほぼ同じ距離となっているか否か、つまり、これらの距離の差分が所定の範囲内にあるか否かにより判定可能である。
このため、ステップS132において制御部190は、第1基準バーセンサ194aの計測値と第2基準バーセンサ194bの計測値との差分の大きさが所定の範囲内となるように、水平変位機構131によって回動中心軸C2を中心にテーブル134を回動させることによって、アーム部151A,151Bの伸縮方向を調整する。
このようにアーム部151A,151Bの伸縮方向が既設サブバー7の長手方向と平行となるように水平変位機構131によって調整されることにより、結果として、把持部155A,155Bにより一対のメインバー6を把持する方向は、既設サブバー7の長手方向に対して直交した状態となる。
続いて、ステップS133において、制御部190は、サブバー8が取り付けられる位置の直下へと取付作業部130を移動させる。具体的には、取付作業部130の中心位置であるテーブル134の中心位置が、サブバー8が取り付けられる位置の直下に位置するように、水平変位機構131によってテーブル134の位置を調整する。
ここで、一対のメインバー6に対してサブバー8が取り付けられる間隔、すなわち、メインバー6の長手方向において差込口6dが設けられている間隔は予め決まっている。したがって、サブバー8が取り付けられる位置は、既設サブバー7から所定の距離だけ離れた位置となる。
既設サブバー7からサブバー8が取り付けられる差込口6dまでの距離と、既設サブバー7からテーブル134の中心位置までの距離とは、第1基準バーセンサ194aの計測値、または、第2基準バーセンサ194bの計測値から算出可能である。
したがって、ステップS133において制御部190は、算出された既設サブバー7からサブバー8が取り付けられる差込口6dまでの距離及び既設サブバー7からテーブル134の中心位置までの距離と、差込口6dに取り付けられるサブバー8と取付作業部130との位置関係と、に基づいて、水平変位機構131を制御することによって、取付作業部130の位置を調整する。
なお、ステップS133での取付作業部130の位置調整は、ステップS132で調整されたアーム部151A,151Bと既設サブバー7との平行状態を維持したまま、既設サブバー7の長手方向に対して直交する方向(X軸方向)に沿ってテーブル134を移動させることにより行われる。
さらに、ステップS134において、制御部190は、一対のメインバー6間の略中央へと取付作業部130を移動させる。
具体的には、テーブル134の中心位置から一方のメインバー6までの距離と、テーブル134の中心位置から他方のメインバー6までの距離と、が一致するように、水平変位機構131を制御することによって取付作業部130の位置を調整する。なお、これらの距離は、既設バーセンサ192の計測値L13,L14から算出される。
ステップS134での取付作業部130の位置調整は、ステップS132で調整されたアーム部151A,151Bと既設サブバー7との平行状態を維持したまま、既設サブバー7の長手方向と平行する方向(Y軸方向)に沿ってテーブル134を移動させることにより行われる。
このように一連の調整工程を経て、取付作業部130は、一対のメインバー6へサブバー8を取り付けるために理想とされる理想位置に位置することになる。なお、ステップS132からステップS134で行われる取付作業部130の位置の調整は、別々に行われてもよいし、同時並行で行われてもよい。
ステップS115で行われる取付作業部130の位置調整が完了すると、一対のメインバー6を把持する工程であるステップS116に進む。
次に、ステップS116で行われる作業について、図25のフローチャートと図18を参照して説明する。
この工程では、まず、ステップS141において、制御部190は、昇降部120を伸長させることによって、各把持部155A,155Bによりメインバー6を把持可能な位置まで取付作業部130を上昇させる。
なお、取付作業部130を上昇させる際、各アーム部151A,151Bは、サブバー8の長さに応じて予め設定された長さに伸長しており、Y軸方向における第1把持部155Aと第2把持部155Bとの間の間隔の大きさは、サブバー8の取り付けに適切な大きさとなっている。
また、ステップS141において取付作業部130を上昇させる際、第1位置調整部140によって予め保持されたサブバー8が一対のメインバー6に当たってしまうことを避けるために、第1位置調整部140は、前述の図28に示すように、アーム部151A,151Bの伸縮方向に対して、サブバー8を予め設定された角度だけ傾けた状態で保持する。なお、図28に示される状態において、各保持部141A,141Bは、延出部143aがサブバー8の差込部8eに当接した位置において、サブバー8をそれぞれ保持している。
続くステップS142において、制御部190は、各把持部155A,155Bに設けられたすべての既設バー載置部158において、メインバー6が載置されたことが検知されたか否かを判定する。
すべての既設バー載置部158において、メインバー6が載置されたことが検知されると、ステップS143へ進む一方、メインバー6が載置されたことが検知されない場合は、取付作業部130の上昇を継続させる。なお、メインバー6が設置されていると推定される高さから所定の高さ以上、取付作業部130を上昇させてもメインバー6が載置されたことが検知されない場合には、何らかの異常があるとして、作業を中止し、ステップS120に進むようにしてもよい。
ステップS143に進むと、制御部190は、各把持部155A,155Bを制御し、各把持部155A,155Bにより一対のメインバー6を把持させる。
このようにステップS116おいて一対のメインバー6を把持する把持工程が完了すると、続くステップS117において、把持された一対のメインバー6にサブバー8を差し込む差込工程が行われる。
次に、ステップS117で行われる作業について、図26のフローチャートと図29~33を参照して説明する。図29は、図28のG-G線に沿う断面を示した断面図であり、図30は、図29のH-H線に沿う断面を示した断面図であり、これらは第1差込口検知部170Aが作動している状態を示している。また、図31は、図29のH-H線に沿う断面を示した断面図であり、第1押付部180Aが作動している状態を示している。また、図32は、図28のJ-J線に沿う断面を示した断面図であり、図33は、図32のK-K線に沿う断面を示した断面図であり、これらは第1押込部160Aが作動している状態を示している。
この工程では、まず、ステップS151において、メインバー6の差込口6dの位置の検出が行われる。
上述のように、取付作業部130の位置は、基準バーセンサ194a,194bの計測値から算出されたメインバー6の差込口6dの位置に基づいて調整されているが、算出によって求められた差込口6dの位置は、実際の位置からずれている場合があり、数mm程度のずれであってもサブバー8の取り付け作業に支障をきたすおそれがある。
このため、ステップS151では、上述の差込口検知部170A,170Bによって、実際のメインバー6の差込口6dの位置をそれぞれ検出している。
具体的には、制御部190は、差込口検知部170A,170Bの移動部175を制御し、接触部174をY軸方向及びZ軸方向に移動させた後、シリンダ部173を駆動し、図29に示されるように、メインバー6の平板部6cを挟んで第1接触子171aと第2接触子172aとを互いに近付ける。
第1接触子171aと第2接触子172aとが互いに近付いた状態において、制御部190は、移動部175を制御し、接触部174をX軸方向に沿って差込口6dに向けて移動させる。
そして、制御部190は、図30に示されるように、メインバー6の規制部6eに第1接触子171aが当接した時点で移動部175を停止させるとともに、X軸方向における接触部174の移動距離、すなわち、規制部6eの位置に関連するデータを移動部175から取得し、取得されたデータに基づき差込口6dの位置座標を求める。
このように差込口6dの位置座標を求めると同時に、制御部190は、図31に示されるように、移動部175を制御して、接触部174をZ軸方向及びY軸方向に移動させてメインバー6から離れた位置へと移動させるとともに、X軸方向において停止した移動部175から移動制限部177をメインバー6側へと進出させる。なお、X軸方向における移動部175の作動は、メインバー6へのサブバー8の取り付けが行われるまで禁止される。
なお、ステップS151において、何れか一方の差込口検知部170A,170Bの第1接触子171aが規制部6eに当接しなかった場合や第1接触子171aが規制部6eに当接すると予測される範囲から外れた位置において第1接触子171aが規制部6eに当接した場合は、一対のメインバー6に対する取付作業部130の位置がX軸方向においてずれているおそれがある。このため、このような場合には、各把持部155A,155Bによる一対のメインバー6の把持を一旦解除し、各差込口検知部170A,170Bにより検知される差込口6dの位置がほぼ同じ位置となるように、X軸方向における取付作業部130の位置を、水平変位機構131または台車部110によって修正するようにしてもよい。
続くステップS152において、制御部190は、ステップS151で検出された差込口6dの位置に基づいて、サブバー8の位置を調整する。
具体的には、制御部190は、サブバー8の両端に設けられた差込部8eがメインバー6の差込口6dの近傍にそれぞれ向かうように、移動部147A,147Bを制御し、保持部141A,141Bを移動させる。なお、上述のように求められた差込口6dの位置座標と、保持部141A,141Bの位置座標とは、ベースプレート154を基準とした同じ座標系であることから、差込口6dに向けて保持部141A,141Bにより保持されたサブバー8の差込部8eを精度良く移動させることが可能である。
保持部141A,141Bの移動は、移動制限部177によってX軸方向における移動が制限されることにより、一旦、完了する。なお、移動部147A,147Bの第2スライダ部148cには、第1スライダ部148bによってX軸方向に動かされる際に移動制限部177に当接する図示しない当接部が設けられており、この当接部が移動制限部177に当接することによって保持部141A,141BのX軸方向における移動が制限される。
移動制限部177によって保持部141A,141Bの移動が制限されることでサブバー8の位置の調整が完了すると、ステップS153に進み、制御部190は、押付部180A,180Bを制御し、サブバー8の差込部8eをメインバー6の平板部6cに対して押し付ける。
具体的には、図31に示されるように、シリンダ181を伸長させてロッド部181bの先端に取り付けられた当接部182をサブバー8の差込部8eに当接させることによって、差込部8eをメインバー6の平板部6cに接触させる。このように差込部8eがメインバー6の平板部6cに接した状態とすることによって、差込部8eを差込口6dへと確実に差し込むことが可能となる。
一方、制御部190は、シリンダ181を伸長させるのとほぼ同時に、移動制限部177を移動部175内に引き戻すことによって、保持部141A,141BのX軸方向における移動を許容する。
このため、保持部141A,141BをX軸方向に沿ってさらに移動させることによって、平板部6cに接触した差込部8eは差込口6dへと差し込まれることになる。なお、差込口6dへの差込部8eの差し込みは、第1保持部141A及び第2保持部141Bを同時に移動させることによって、同時に行われてもよいし、時間差をもって第1保持部141A及び第2保持部141Bを移動させることによって、時間差をもって行われてもよい。
ここで保持部141A,141BをX軸方向に沿って移動させる第1スライダ部148bの駆動力は、差込部8eの先端を規制部6eに当接させるほどの大きさではないことから、差込部8eを差込口6dへと確実に押し込むためにステップS154へ進む。
ステップS154では、制御部190は、押込部160A,160Bを制御し、差込部8eを差込口6dへと押し込む。
具体的には、制御部190は、押込部160A,160Bの移動部167を制御し、押圧シリンダ161及び挟持部166をY軸方向及びZ軸方向に移動させた後、シリンダ部165を駆動し、図32に示されるように、第1挟持片164aと第2挟持片164bとによりメインバー6の平板部6cを挟持する。
そして、メインバー6の平板部6cを第1挟持片164aと第2挟持片164bとにより挟持した状態において、押圧シリンダ161を伸長させることによって、図33に示されるように、サブバー8の差込部8eに突起162aを当接させる。これによりサブバー8は、差込部8eの先端が規制部6eに当接するまで押し込まれる。
押込部160A,160Bは、サブバー8の両端部近傍にそれぞれ配置されることから、サブバー8は、両端部において押圧シリンダ161によって押圧される。これにより、サブバー8の両端に設けられた差込部8eは、一対のメインバー6にそれぞれ設けられた差込口6dに確実に差し込まれ、サブバー8は、一対のメインバー6に取り付けられた状態となる。なお、押込部160A,160Bによるサブバー8の押し込みが完了すると、保持部141A,141Bによるサブバー8の保持が解除される。
このようにステップS117おいて、一対のメインバー6へサブバー8を差し込む差込工程が完了すると、続くステップS118において、一対のメインバー6の把持状態を解放する工程が行われる。
次に、ステップS118で行われる作業について、図27のフローチャートを参照して説明する。
この工程では、まず、ステップS161において、差込口検知部170A,170Bにより一対のメインバー6へのサブバー8の取り付け状態が確認される。
具体的には、上述のステップS151と同様にして、制御部190は、移動部175を制御し、接触部174をメインバー6に沿って差込口6dに向けて移動させる。
一対のメインバー6に対してサブバー8が正常に取り付けられていれば、接触部174を所定量だけ移動させた時点で、第1可動子171に設けられた第3接触子171bはサブバー8に当接する一方、一対のメインバー6に対してサブバー8が正常に取り付けられていなければ、接触部174を所定量以上移動させても第3接触子171bはサブバー8に当接しない。
このため、制御部190は、サブバー8への第3接触子171bの当接の有無及び第3接触子171bがサブバー8へ当接した際の接触部174の移動量に基づいて、サブバー8の取り付け状態を確認し、記憶する。
サブバー8の取り付け状態の確認が完了すると、ステップS162に進み、各把持部155A,155Bによるメインバー6の把持が解除される。
ステップS162において、各把持部155A,155Bの第1把持片156a及び第2把持片156bは、互いに離れるように支持ピン156cを中心に回動される。これにより、各把持部155A,155Bによるメインバー6の把持が解除される。
各メインバー6の把持が解除されると、続くステップS163において、制御部190は、昇降部120を収縮させることによって、取付作業部130を下降させる。
具体的には、取付作業部130は、ステップS141において上昇される前の高さまで下降され、初期位置へと戻される。
このようにステップS118おいて、一対のメインバー6の把持が解除され、取付作業部130が初期位置に戻されると、続くステップS119において、一対のメインバー6へのサブバー8の差し込みが正常に完了したか否かが判定される。
上述のステップS161においてサブバー8が正常に取り付けられていないと判定された場合、制御部190は、作業が正常に完了していないと判定してステップS120に進む。また、例えば、初期位置へと戻った取付作業部130にサブバー8がまだ残っている場合は、サブバー8の差し込みが完了していないことが明らかであり、また、例えば、バー位置センサ191によって検出されたサブバー8の長手方向が一対のメインバー6の長手方向に対して直交した状態となっていない場合には、サブバー8の差し込みが正常に完了していない可能性がある。このように作業が正常に完了していないと推定される場合も、制御部190は、作業が正常に完了していないと判定してステップS120に進む。
一方、上述のステップS161においてサブバー8が正常に取り付けられたと判定され、さらに、取付作業部130にサブバー8が残っておらず、バー位置センサ191によって検出されたサブバー8の長手方向も一対のメインバー6の長手方向に対して略直交した状態となっている場合には、制御部190は、サブバー8の差し込みが正常に完了したと判定して、作業の完了を記憶するとともにステップS121に進む。
ステップS120では、所定の箇所のメインバー6に対してサブバー8の取り付けが正常に完了していないとして、制御部190は、取付作業不可または取付作業未完了をその原因とともに記憶する。なお、ステップS119及びステップS120で制御部190に記憶された作業状況に関する情報は、制御部190の通信部190aを介してサーバSへと逐次送信される。
このため、サーバSを介して施工ロボット200の作業状況を監視するオペレータや現場の作業員は、何れの箇所のメインバー6に対してサブバー8の取付作業が正常に完了しているかを容易に確認することができるとともに、何れの位置においてサブバー8の取付作業をやり直す必要があるかやサブバー8の取付作業が行われなかった原因を容易に把握することができる。
このようにステップS119及びステップS120において作業状況の記憶が完了すると、ステップS121に進み、制御部190は、予定されている取付作業がすべて完了したか否かを確認する。
予定されていた取付作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバSから受信するまで施工ロボット200は待機状態となる。
一方、予定されていた取付作業がまだ完了していない場合、ステップS113へと戻り、次にサブバー8が取り付けられるメインバー6の場所へと移動する。このように次の作業場所へと移動する途中で、上述のステップS115において水平変位機構131によって調整されたテーブル134の位置は初期位置へと戻され、取付作業部130には、補充機構210からサブバー8が供給される(ステップS122)。
次に、図21,図34及び図35を参照し、補充機構210によりサブバー8が取付作業部130へと供給される工程(ステップS122)について説明する。図34及び図35は、図21の矢印Lで示される方向から見た図である。
補充機構210によるサブバー8の補充は、図21に示されるように、各スライダ135A,135Bを作動させて、把持部155A,155Bを取付作業部130の中心から離れた位置に位置させた状態であり、また、昇降部120を伸長させた状態で行われる。これにより、把持部155A,155Bに阻害されることなく、また、昇降部120を収縮させることなく、次の作業場所へと移動する間にサブバー8の補充することが可能である。
図21に示された状態になると、図34の(a)に示されるように、移動部216のシリンダ216aが伸長し、取出部214の保持部215によって貯留部211に貯留されたサブバー8が吸引保持される。移動部216のスライダ216bによって、サブバー8を保持した保持部215が上方(Z軸方向)に移動した後、シリンダ216aは収縮する。
そして、図34の(b)に示されるように、保持部215は、移動部216の回動機構216cにより回動中心軸C4を中心に回動された後、中継部218の把持部219に向かって上昇する。
サブバー8を把持した把持部219は、図34の(c)に示されるように、移動部220のスライダ220aに沿って上方(Z軸方向)に移動する。
サブバー8を把持した把持部219は、図35の(a)に示されるように、移動部220の回動機構220bにより回動中心軸C5を中心に回動された後、再び、スライダ220aに沿って上方に移動する。
そして、把持部219により把持されたサブバー8は、図35の(b)に示されるように、移動部224の第1スライダ224bに沿ってX軸方向に移動した保持部223により吸引保持される。なお、保持部223の高さは、テーブル134に固定された移動部224のシリンダ224aが伸長することにより、予め設定された受け取り高さとなっている。
サブバー8を保持した保持部223は、図35の(c)に示されるように、サブバー8がテーブル134の略中央に位置するまで、移動部224の第2スライダ224cに沿ってX軸方向に移動する。
その後、シリンダ224aが収縮してサブバー8が下方へ移動するとともに、各シリンダ部148aが伸長して保持部141A,141Bが上方へ移動することによって、サブバー8は、保持部141A,141Bによって保持される。その後、図28に示されるように、保持部141A,141Bは、延出部143aがサブバー8の差込部8eに当接した位置においてサブバー8をそれぞれ保持した状態となるように、移動部147A,147Bによってそれぞれ動かされる。
このようにしてサブバー8が取付作業部130に供給されると、上述のような工程を経て、サブバー8の取付作業が再び実行される。
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
上記構成の施工ロボット200の制御部190は、第1位置調整部140を制御して、一対のメインバー6の差込口6dへサブバー8の差込部8eを差し込むことが可能となるようにサブバー8の位置を調整し、第2位置調整部150を制御して、一対のメインバー6間の間隔を所定の大きさとすることによって、天井スラブ1により支持された一対のメインバー6にサブバー8を取り付けている。
このように、第2位置調整部150によって間隔が所定の大きさとされた一対のメインバー6の差込口6dに対して、サブバー8の差込部8eを差し込むことが可能となるようにサブバー8の位置を第1位置調整部140によって調整することによって、サブバー8を一対のメインバー6に対して円滑に、且つ、自動的に取り付けることができる。また、高所作業であるサブバー8の取付作業を施工ロボット200によって行うことによって、作業員の作業負担を軽減するとともに安全性を確保することができる。
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
上記第2実施形態では、一対の既設バーが一対のメインバー6である場合について説明したが、一対の既設バーは、一対のメインバーに取り付けられた一対のサブバーであってもよい。この場合、一対のサブバーに対してさらに取り付けられるサブバーがクロスバーに相当し、一対のサブバーに対して略直交するように設けられたメインバーが基準バーに相当する。
また、上記第2実施形態では、ステップS132において、制御部190は、既設サブバー7を基準として、アーム部151A,151Bの伸縮方向が、既設サブバー7の長手方向に対して平行となるように取付作業部130の位置を調整している。これに代えて、一対のメインバー6の位置が比較的安定している場合や基準となる既設サブバー7が設けられていない場合には、一対のメインバー6の何れか一方を基準として、アーム部151A,151Bの伸縮方向が、メインバー6の長手方向に対して直交するように取付作業部130の位置を調整するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態では、押込部160A,160Bによって、サブバー8の差込部8eがメインバー6の差込口6dに押し込まれている。これに代えて、メインバー6の差込口6dへのサブバー8の差込部8eの押し込みは、保持部141A,141BをX軸方向に沿って移動させる第1スライダ部148bの駆動力によって行われてもよい。但し、十分な大きさの駆動力を確保するには第1スライダ部148bを大型化する必要があり、施工ロボット200が大型化してしまうおそれがある。このため、上述の押込部160A,160Bの構成を採用することが好ましい。
また、上記第2実施形態では、施工ロボット200に搭載されるシリンダやモータといったアクチュエータが電動式またはエア駆動式である場合について説明したが、アクチュエータの駆動方式は、電動式及びエア駆動式の何れであってもよく、また、油圧駆動式であってもよい。
また、上記第2実施形態では、施工ロボット200は、台車部110の情報取得器115によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。施工ロボット200は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器115に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。