JP7422692B2 - 基礎杭の損傷判定システム - Google Patents
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例えば特許文献1には、構造物(建物)を模擬した1質点系振動モデルにおける等価高さの位置に相当する第1の階層に設置した無線式加速度計または無線式ひずみ計により取得した地震情報を用いることで、第1の階層における地動に対する相対変位量である第1の層間変形角を算出し、地震情報を基に建物所在地の震度を算出し、地動に対する第1の層間変形角と所定の閾値とを比較して、地震後の構造物の被災度を推定する構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成は、構造物において、地盤中の基礎部に支持された上部構造(上部構造)の被災度を推定するものであり、基礎部を構成する基礎杭の損傷の有無を判定するためのものではない。
このような特許文献1の構成を基礎杭に適用しようとしても、無線式加速度計または無線式ひずみ計を既存の基礎杭に取り付けること自体が困難である。仮に取り付けられたとしても、地盤は地震時の挙動が複雑であり、地盤に接する基礎杭の挙動も上部構造の挙動に比べるとより複雑なものとなるため、これに対応したより複雑な実装が必要となる。また、無線式加速度計または無線式ひずみ計の交換等の、保守作業も容易ではない。これらのような要因により、本構成を用いて基礎杭の損傷の有無を判定することは困難である。
特許文献2に開示されたような構成では、光ファイバーを基礎杭の内部に埋設するのに手間が掛かる。また、光ファイバーの埋設は、基礎杭の新設時にしか行うことができず、既設の基礎杭の健全性の判定を行うのは困難である。
特許文献3に開示されたような構成では、基礎杭に孔を形成する必要があり、手間が掛かる。また、孔の形成は、基礎杭の新設時にしか行うことができず、既設の基礎杭の健全性の判定を行うのは困難である。
あるいは、杭頭をハンマー等で軽打して弾性波を発生させ、杭頭に設置した加速度計から得られた反射波形を測定することで、ひび割れ等の損傷の有無を確認することも行われている。しかし、このためには杭頭近傍を露出させる必要があるため、基礎杭の上に構造物が構築されている状態においては実施が困難である。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の基礎杭の損傷判定システムは、構造物の上部構造を支持するコンクリート製の基礎杭の損傷の有無を判定する、損傷判定システムであって、前記上部構造に設置されて、前記上部構造の水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とを取得する、複数のセンサと、前記水平方向の地震情報と前記鉛直方向の地震情報とから、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、前記水平加速度の振動数に対する前記鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出する振動数比算出部と、前記振動数比が、1.8以上2.2以下である場合に、前記基礎杭に損傷があると判定する、損傷判定部と、を備えていることを特徴とする。
地震が生じると、特に上部構造のアスペクト比(構造物幅に対する構造物高さの比、塔状比)が高い構造物では、地盤近くの部分を中心として、より上側が左右に揺動して傾斜、回転する、ロッキング振動が生じる。このロッキング振動に抵抗するため、上部構造が傾斜する側、すなわち揺れの進行方向に位置する、上部構造を支持する基礎杭には、圧縮軸力が作用する。また、その反対側に位置する基礎杭には、引張軸力が作用する。
ここで、基礎杭がコンクリート製であり、このコンクリート部がひび割れや断面欠損等により損傷すると、引張軸力に対し、コンクリート部で抵抗することができなくなる。すると、地震により上部構造が水平方向に揺れてロッキング振動が生じた場合、基礎杭に引張軸力が作用するときに、基礎杭に対して上部構造が一時的に浮き上がる。これにより、ロッキング振動に連動して、上部構造に上下方向の変位による加速度が発生することになる。上部構造が1周期(1往復)のロッキング振動を生じ、すなわち左右に一度ずつ傾斜し揺動して現位置に戻る間に、上部構造には、2回の浮き上がりが生じる。これにより、上部構造の鉛直加速度の変化の振動数は、上部構造の水平加速度の振動数よりも大きくなる。
上記のような考察を基に、上記構成の損傷判定システムでは、複数のセンサで、上部構造の水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とを取得し、振動数比算出部で、水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とから、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、水平加速度の振動数に対する鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出し、損傷判定部で、振動数比が、1.8以上2.2以下である場合に、基礎杭に損傷があると判定する。上記構成の損傷判定システムを構築するに際し、基礎杭自体には、光ファイバーをはじめとする基礎杭の損傷を検出するための検出手段を備える必要が無い。したがって、コンクリート製の基礎杭の損傷の有無を、容易かつ簡便に判定することが可能となる。
このような構成によれば、基礎杭の損傷判定システムを、適切に実現可能である。
以下、添付図面を参照して、本発明による基礎杭の損傷判定システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態における基礎杭の損傷判定システムの概略構成を図1に示す。図2は、図1の基礎杭の損傷判定システムが備えられた建物の概略構成を示す図である。
図1に示されるように、基礎杭の損傷判定システム1は、構造物10に設けられたセンサ16、17と、システム本体20と、を主に備えている。基礎杭の損傷判定システム1は、地震発生後の構造物10の基礎杭13の損傷の有無を判定する。本実施形態では、基礎杭の損傷判定システム1は、構造物の構造形式や階数、または形状について限定されるものではないが、特に本実施形態においては、地震情報から得られる鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数、及び水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数に着目して基礎杭の損傷の有無を判定するために、低い構造物に比べて、アスペクト比が比較的大きい(例えば4以上の)上部構造12では、ロッキング応答が比較的顕著に発生するために有効である。このような、アスペクト比が比較的大きい上部構造12としては、例えば、高層建物、道路橋、鉄塔、煙突、風車などが挙げられる。
図2に示されるように、構造物10は、地盤G中に構築された基礎部11と、基礎部11上に支持された上部構造12と、を備えている。基礎部11は、複数本の基礎杭13を備えている。各基礎杭13は、地盤G中で上下方向に延びている。基礎杭13は、コンクリート製、具体的には、例えば鉄筋コンクリート製で、コンクリート部13cと、コンクリート部13cに埋設された鉄筋13sと、を有している。
上部構造12は、例えば、上下方向に複数の階層を有している。上部構造12は、階層数や構造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等)を問うものではない。
図3は、図2に示した上部構造において鉛直加速度を検出するセンサの配置の一例を示す平面図である。図4は、図2に示した上部構造において鉛直加速度を検出するセンサの配置の他の一例を示す平面図である。
事前に、例えば小規模の地震の際に、基礎杭13が健全で損傷がない状態において、後に説明するようなロッキング振動の回転中心の位置を調査しておく。そのうえで、鉛直方向の地震情報を取得するセンサ17を、図3に示すように基礎杭13に損傷がない場合の回転中心の位置と同一の水平位置に1個のみ配置するのが経済的に望ましい。
あるいは、例えば基礎杭13に損傷がない場合の回転中心の位置と同一の水平位置にセンサ17を設けるのが困難である場合には、上部構造12の最下部にセンサ17を複数個配置してもよい。この場合には、例えば、図4に示すように、上部構造12の最下部の互いに離間した位置、例えば四隅に配置するようにしてもよい。後に説明する振動数比算出部22は、これら複数個のセンサ17で検出された鉛直方向の地震情報(鉛直加速度)の平均値、又は重み付き平均値を算出し、基礎杭13に損傷がない場合の回転中心近傍の位置の鉛直加速度フーリエスペクトルを算出する。重み付き平均値を算出する場合には、例えば基礎杭13に損傷がない場合の回転中心からの各センサ17の距離を基に、センサ17ごとに重みを設定してもよい。
いずれの場合においても、センサ17は、基礎杭13に損傷がない場合の回転中心の位置における鉛直加速度を検出する。
基礎杭の損傷判定システム1は、センサ16、17で検出した、水平加速度、鉛直加速度の検出データを、地震情報として出力する出力部18を、構造物10内に備えている。
振動数比算出部22は、入力部21で受信した地震情報(水平加速度、鉛直加速度)に基づいて、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、水平加速度の振動数に対する鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出する。特に本実施形態においては、水平加速度の振動数は、水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数であり、鉛直加速度の振動数は、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数である。すなわち、本実施形態においては、振動数比算出部22は、構造物10の、水平加速度フーリエスペクトルと、鉛直加速度フーリエスペクトルとを、それぞれ計算し、水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数に対する、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数の比として、振動数比を算出する。ここで、図4を用いて説明したようにセンサ17を複数個備える場合には、振動数比算出部22は、複数個のセンサ17で検出された鉛直方向の地震情報(鉛直加速度)の平均値、又は重み付き平均値を算出し、算出された平均値に基づいて、鉛直加速度フーリエスペクトルを算出する。
判定結果出力部24は、損傷判定部23における判定結果、すなわち基礎杭13に損傷があるか否かを示す情報を、外部に出力する。判定結果出力部24は、判定結果を示す情報を、例えば、システム本体20に備えられたモニター(図示無し)等に表示させるようにしてもよい。判定結果出力部24は、判定結果を示す情報を、外部の有線又は無線のネットワークを介して、利用者の端末に送信するようにしてもよい。
本実施形態においては、上部構造12のアスペクト比が大きい。このため、図5に示すように、上部構造12には、地震発生時に、地盤G近くの部分を回転中心Crとして、より上側が左右に揺動して傾斜、回転する、ロッキング振動が生じる。図5においては、上部構造12が回転中心Crを基点として時計回りに回転し、右側に向けて傾斜した状態が示されている。この状態においては、ロッキング振動Rの回転中心Cr周りの回転方向前方Rfに位置する紙面右側の基礎杭13には圧縮軸力Fpが作用し、回転中心Cr周りの回転方向後方Rbに位置する紙面左側の基礎杭には引張軸力Fqが作用する。
上部構造12は、例えば図5に示したように、回転中心Crを中心として時計回りに回転し、右側に向けて傾斜した後に、回転中心Crを中心として反時計回りに回転し、左側に向けて傾斜し、現位置に復帰する。上部構造12は、これを1周期(1往復)としたロッキング振動を繰り返す。以下においては、図5に示したような右側に向けて傾斜した状態に関して説明するが、左側に向けて傾斜した状態においては、右側に向けて傾斜した状態とは左右が逆となるのみであり、同様な説明が可能である。すなわち、この場合においては、紙面右側の基礎杭13には引張軸力Fqが作用し、紙面左側の基礎杭には圧縮軸力Fpが作用する。
図5に示したような、右側に向けて傾斜した状態において、基礎杭13に損傷が生じておらず、引張軸力Fqが、基礎杭13の外周面と地盤Gとの間に生じる摩擦力を上回らなければ、圧縮軸力Fpが作用する基礎杭13と引張軸力Fqが作用する基礎杭13とで発生する抵抗力の差は小さいと考えられる。これにより、基礎杭13に損傷が生じていない場合、上部構造12では、地震発生時に、例えば図5に示すように、上部構造12の底面の中央付近を回転中心Crとしてロッキング振動を生じる。
図6に示すように、地震発生時に基礎杭13に損傷が生じた場合、ロッキング振動Rの回転中心Cr周りの回転方向前方Rfにおいて、基礎杭13には圧縮軸力Fpが作用する。すると、基礎杭13に損傷が生じていても、図7に示すように、損傷部13kでは、圧縮軸力Fpに対し、コンクリート部13cと鉄筋13sとの双方で抵抗する。他方、図6に示すように、ロッキング振動の回転中心Cr周りの回転方向後方Rbにおいて、損傷が生じた基礎杭13には、引張軸力Fqが作用する。すると、図8に示すように、損傷部13kでは、引張軸力Fqに対し抵抗し得るのは、鉄筋13sのみとなる。このため、ロッキング振動Rの回転中心Cr周りの回転方向前方Rfにおいて圧縮軸力Fpが作用する基礎杭13と、ロッキング振動Rの回転中心Cr周りの回転方向後方Rbにおいて引張軸力Fqが作用する基礎杭13とでは、引張軸力Fqが作用する基礎杭13における軸剛性が小さくなる。これにより、引張軸力Fqが作用する基礎杭13では、伸長するように変形しやすくなる。
図9は、曲げ変形によって断面の一部のみが損傷した基礎杭を示す図である。上記のような現象は、図9に示すように、基礎杭13の曲げ変形によって基礎杭13の断面の一部のみが損傷し、引張軸力Fqが作用する基礎杭13の引張縁のひずみが大きくなった場合にも発生し得る。
ここで、引張軸力Fqが作用する基礎杭13は引張軸力Fqに十分に抵抗し得ず伸長するため、図6に示すように、ロッキング振動Rの回転中心Crは、上部構造12の底面の中央よりも、ロッキング振動Rの回転方向前方Rfで圧縮軸力Fpが作用する基礎杭13に近づいた位置となる。
このように、基礎杭13に損傷が生じている場合においては、ロッキング振動Rの回転中心Crの位置は、基礎杭13に損傷がない場合の回転中心Crの位置から、圧縮軸力Fpが作用する基礎杭13側にずれた位置となる。ロッキング振動Rにおいては、上部構造12が図6における紙面上の左右に揺動するため、ロッキング振動Rの回転中心Crの位置は、損傷がない場合の位置から、上部構造12が右側に傾く場合には右側にずれ、左側に傾く場合には左側にずれる。このため、上部構造12が左右に傾くたびに、基礎杭13に損傷がない場合の回転中心Crの位置は、上下方向に移動する。したがって、基礎杭13に損傷がない場合の回転中心Crの位置の鉛直加速度を検出するように設けられたセンサ17は、この上下方向の変位を、鉛直加速度として検出する。
特に本実施形態においては、損傷判定部23は、2を中心として、この値の1割、すなわち0.2程度の誤差を考慮し、振動数比が、1.8以上2.2以下である場合に、基礎杭13に損傷があると判定する。より好ましくは、損傷判定部23は、2を中心として、0.1程度の誤差を考慮し、振動数比が、1.9以上2.1以下である場合に、基礎杭13に損傷があると判定する。
この判定数値範囲は、様々な構造物に対して、シミュレーションや数値解析等でロッキング振動の数値データを収集し、その結果を集計して正規分布を取得して標準偏差σを導出した後に、2-σを判定数値範囲の下限値として設定し、かつ2+σを判定数値範囲の上限値として設定してもよい。
上記したような基礎杭の損傷判定システム1で、基礎杭13に損傷が生じているか否かを判定するには、まず、図12に示すように、地震発生時にセンサ16、17で、地震情報として、上部構造12に生じる水平加速度、及び鉛直加速度を検出する(ステップS1)。センサ16、17検出された水平加速度、鉛直加速度は、出力部18によりシステム本体20に出力される。
出力部18から出力された、センサ16,17で検出した地震情報(水平加速度、鉛直加速度)を、システム本体20の入力部21で受信する(ステップS2)。
振動数比算出部22は、入力部21で受信された水平加速度、鉛直加速度をフーリエ変換することで、構造物10の、水平加速度フーリエスペクトルと、鉛直加速度フーリエスペクトルとを、それぞれ算出する(ステップS3)。振動数比算出部22は、算出された水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数に対する、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数の比で表される振動数比を算出する(ステップS4)。
このようにして、振動数比算出部22は、ステップS3、ステップS4において、水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とから、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、水平加速度の振動数に対する鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出する。
損傷判定部23における判定結果、すなわち基礎杭に損傷があるか否かを示す情報は、判定結果出力部24により外部に出力され、システム本体20に備えられたモニター(図示無し)や、利用者の端末に表示される。
地震が生じると、特に上部構造12のアスペクト比(構造物幅に対する構造物高さの比、塔状比)が高い構造物では、地盤G近くの部分を中心として、より上側が左右に揺動して傾斜、回転する、ロッキング振動が生じる。このロッキング振動に抵抗するため、上部構造12が傾斜する側、すなわち揺れの進行方向に位置する、上部構造12を支持する基礎杭13には、圧縮軸力Fpが作用する。また、その反対側に位置する基礎杭13には、引張軸力Fqが作用する。
ここで、基礎杭13がコンクリート製であり、このコンクリート部13cがひび割れや断面欠損等により損傷すると、引張軸力Fqに対し、コンクリート部13cで抵抗することができなくなる。すると、地震により上部構造12が水平方向に揺れてロッキング振動が生じた場合、基礎杭13に引張軸力Fqが作用するときに、基礎杭13に対して上部構造12が一時的に浮き上がる。これにより、ロッキング振動に連動して、上部構造12に上下方向の変位による加速度が発生することになる。上部構造12が1周期(1往復)のロッキング振動を生じ、すなわち左右に一度ずつ傾斜し揺動して現位置に戻る間に、上部構造12には、2回の浮き上がりが生じる。これにより、上部構造12の鉛直加速度の変化の振動数は、上部構造の水平加速度の振動数よりも大きくなる。
上記のような考察を基に、上記構成の損傷判定システム1では、複数のセンサ16、17で、上部構造12の水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とを取得し、振動数比算出部22で、水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とから、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、水平加速度の振動数に対する鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出し、損傷判定部23で、振動数比が、1.8以上2.2以下である場合に、基礎杭13に損傷があると判定する。上記構成の損傷判定システム1を構築するに際し、基礎杭13自体には、光ファイバーをはじめとする基礎杭13の損傷を検出するための検出手段を備える必要が無い。したがって、コンクリート製の基礎杭13の損傷の有無を、容易かつ簡便に判定することが可能となる。
このような構成によれば、基礎杭の損傷判定システム1を、適切に実現可能である。
図13は、本実施形態の実験例1において、振動台に入力した地震波形を示す図である。
上記したような構成について、実験による検討を行ったのでその結果を以下に示す。
振動台上のせん断土槽内に砂を入れ、基礎杭13としての鉄筋コンクリート杭模型と、比較のための鋼管杭の模型とを設置した。振動台に、図13に示すような地震波形を入力し、鉄筋コンクリート杭模型、及び鋼管杭模型において、それぞれセンサ16,17で検出される水平加速度、鉛直加速度のフーリエスペクトルを算出した。
図14Aは、鉄筋コンクリート杭模型における水平加速度のフーリエスペクトルを示す図である。図14Bは、鉄筋コンクリート杭模型における鉛直加速度のフーリエスペクトルを示す図である。図15Aは、鋼管杭模型における水平加速度のフーリエスペクトルを示す図である。図15Bは、鋼管杭模型における鉛直加速度のフーリエスペクトルを示す図である。
図14A、図14Bに示すように、鉄筋コンクリート杭模型では、損傷が生じ、水平加速度では周波数3.44Hzでフーリエスペクトルのピークが生じているのに対し、鉛直加速度ではその2倍の周波数6.88Hzでフーリエスペクトルのピークが生じている。
これに対し、図15A、図15Bに示すように、比較例としての鋼管杭模型では、弾性域を保ち、健全なままである。水平加速度では周波数3.49Hzでフーリエスペクトルのピークが生じているのに対し、鋼管杭においては鉄筋コンクリート杭のようなひびが入らず上部構造の浮き上がりが抑制されるので、鉛直加速度では明瞭なピークは認められない。
なお、本発明の基礎杭の損傷判定システムは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、振動数比算出部22は、入力部21で受信した地震情報(水平加速度、鉛直加速度)に基づいて、構造物10の、水平加速度フーリエスペクトルと、鉛直加速度フーリエスペクトルとを、それぞれ計算するようにしたが、これに限らない。例えば、フーリエスペクトルのかわりに、応答スペクトル、ランニングスペクトル、ウェーブレット変換を用いてもよい。
また、上記したような損傷判定システム1における基礎杭13の損傷の有無の判定は、所定以上の震度の地震が生じた後、基礎杭13の健全性を確認するために、地震の余震時に行うようにしてもよい。
また、損傷判定システム1における基礎杭13の損傷の有無の判定は、地震が継続している間に、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数と、水平方向の地震情報から得られる水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数との比の変化を監視することで、行うようにしてもよい。この場合、損傷判定部23は、例えば、基礎杭13の損傷が生じないようなレベルの地震発生時における、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数と、水平方向の地震情報から得られる水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数との比を基準値として把握しておき、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数と、水平方向の地震情報から得られる水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数との比が、基準値の比よりも大きくなった場合に、基礎杭13に損傷が生じたと判定するようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
次に、本発明の関連技術について説明する。
上記実施形態において、図5、図6を用いて説明したように、基礎杭が損傷している場合には、損傷していない場合に対し、ロッキング振動の回転中心の位置が異なる。したがって、この回転中心の位置の変位を観測することで、基礎杭の損傷を判定することが考えられる。
あるいは、上記実施形態においては鉛直加速度と水平加速度の各々に対してフーリエスペクトルを計算したが、これらの各々を積分して変位に換算し、これを基に基礎杭の損傷を判定することが考えられる。
10 構造物 22 振動数比算出部
12 上部構造 23 損傷判定部
13 基礎杭
Claims (1)
- 構造物の上部構造を支持するコンクリート製の基礎杭の損傷の有無を判定する、損傷判定システムであって、
前記上部構造に設置されて、前記上部構造の水平方向の地震情報と鉛直方向の地震情報とを取得する、複数のセンサと、
前記水平方向の地震情報と前記鉛直方向の地震情報とから、水平加速度の振動数と鉛直加速度の振動数を計算し、前記水平加速度の振動数に対する前記鉛直加速度の振動数の比で表される振動数比を算出する振動数比算出部と、
前記振動数比が、1.8以上2.2以下である場合に、前記基礎杭に損傷があると判定する、損傷判定部と、を備えており、
前記水平加速度の振動数は、水平加速度フーリエスペクトルの卓越振動数であり、
前記鉛直加速度の振動数は、鉛直加速度フーリエスペクトルの卓越振動数である
ことを特徴とする基礎杭の損傷判定システム。
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