JP7421765B2 - 吹矢用の矢及びその製造方法 - Google Patents
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(b-1) 上記ピンの先端部を涙滴形としているので、例えば、球形や長手方向断面が楕円形の先端部を有する従来の矢よりも、矢の飛行中の空気抵抗を減少させることができ、そのため、矢の上下、左右方向のブレが抑えられ、矢飛軌跡が直線に近付くことで、矢の的への命中率が向上する。
上記ピンの先端部を砲弾形としているので、その先端部の後端がピンの幅方向に拡がった円形の平面となっている。そのため、矢を製造する際の、ピンの円柱部を羽根の截頭部側から差し込んで、ピンの先端部の後端と羽根の截頭部(羽根の前端)とが当接する位置で固着させる作業工程において、ピンの先端部の後端の円形平面に羽根の截頭部を確実に当接させることができる。したがって、ピンの先端部の後端が羽根の截頭部の内部にまで入り込んだ状態や、ピンの円柱部の前端が羽根の截頭部より前方に出ている状態でピンと羽根とが固着されてしまうという問題が生じ難いため、矢の不良品の発生を防ぐことができる。
図1~図3には、本願発明の第1の実施形態に係る吹矢用の矢Zを示している。この矢Zは、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成される。
ピン1は、図1及び図2に示すように、前部2aがドーム形で,後部2bが略円錐形とされた涙滴形の先端部2と、先端部2の後部2bから後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.45mm)は先端部2の横断面の直径の最大値(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。
また、ピン1の先端部2の形状は、本実施形態の涙滴形の他に、球形、俵形又は長手方向断面が楕円形等の様々な形状を適用することができる。
管状部材5は、後述するように、ピン1の円柱部3の後部3b側に嵌挿した状態で羽根4の前部4c内に配置されるものであって、この実施形態においては、ポリプロピレン製の管状体で一体構成され、その軸方向の長さを6.0mm、外径を1.95mm、内径を1.55mmとしている。そして、本実施形態において管状部材5は、図2及び図3に示すように、ピン1の円柱部3の後部3bに、その後部5b側の端面と円柱部3の後部3b側の端面とが軸方向の略同一位置に位置するようにして嵌挿配置される。この管状部材5の配置状態においては、ピン1の円柱部3の外周面と管状部材5の内周面との間の環状隙間には接着剤7が設けられ、この接着剤7によって円柱部3の後部3bの外周面と管状部材5の内周面が固着一体化されている。
羽根4は、矢Zを射出筒11(図7参照)から発射する際には吹き付けられる呼気を受けて矢Zに推力を与えるとともに、矢Zが射出されて的に向かって飛行する際にはその飛行姿勢を安定させるように機能するものであって、所定形状のフィルムを後述する冶具10(図5参照)に巻き付けて、頂部が開口された截頭円錐形に形成して構成される。
上述の如く構成された上記吹矢用の矢Zにおいては、以下のような作用効果が得られる。
(イ)この実施形態の矢Zにおいては、ピン1の円柱部3を、截頭円錐形の羽根4の截頭部4a内、および羽根4の前部4c内に配置した管状部材5内に差し込み、ピン1の円柱部3の前部3aを羽根4の截頭部4aの内周面に固着するとともに、円柱部3の後部3bを管状部材5の内周面に固着してあることから、ピン1と羽根4と管状部材5が、各々の中心軸が略重複するように一体化されている。この結果、矢Zの重心が矢Zの中心軸上に存在することとなり、矢Zの飛行中の上下、左右方向へのブレが抑えられ、矢飛軌跡を直線に近付けることができ、矢Zの的12(図6参照)への命中率が高められることになる。
図4には、本願発明の第2の実施形態に係る吹矢用の矢Zを示している。この矢Zは、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
ピン1は、図4に示すように、前部2aがドーム形で,後部2bが略円錐形とされた涙滴形の先端部2と、先端部2の後部2bから後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.45mm)は先端部2の横断面の直径の最大値(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部2の後部2bを形成する略円錐形の母線の曲率半径を16.8mm、先端部2の前部2aの端面から後部2bまでの寸法(先端部長)を6mm、先端部2の後部2bの直径を1.6mmとしている。
さらに、この実施形態のピン1では、上記涙滴形の前部2aの端面から上記涙滴形の横断面の直径が最大である位置(最太部位置)までの長さを1.2mmとしており、したがって、上記涙滴形の前部2aの端面から最太部位置までの長さの涙滴長に対する割合(1.2/8.141)は14.74%となり、最太部位置は上記第1の実施形態の場合よりも涙滴形の前方寄りに位置している。
図8は、本願発明の第3の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第3の実施形態に係る矢Zは、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
ピン1は、図8に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を3mmとしている。
この第3の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1は、上記のとおり、ピン1の先端部2を砲弾形としているので、その先端部2の後端がピン1の幅方向に拡がった円形の平面となっている。そのため、矢Zを製造する際の、ピン1の円柱部3を羽根4の截頭部4a側から差し込んで、ピンの先端部2の後端と羽根の截頭部4aとが当接する位置で固着させる作業工程において、ピンの先端部2の後端の円形平面に羽根4の截頭部4aを確実に当接させることができる。したがって、ピン1の先端部2の後端が羽根4の截頭部4aの内部にまで入り込んだ状態や、ピンの円柱部3の前端が羽根4の截頭部4aより前方に出ている状態でピン1と羽根4とが固着されてしまうという問題が生じ難いため、矢Zの不良品の発生を防ぐことができる。
図9は、本願発明の第4の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第4の実施形態に係る矢は、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
ピン1は、図9に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を4mmとしている。
図10は、本願発明の第5の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第5の実施形態に係る矢は、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
ピン1は、図10に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を5mmとしている。
ここで、上記各実施形態における矢Zの製造方法を、図5を参照して説明する。
なお、冶具10は、この実施形態では真ちゅう製としているが、これに限定されるものではなく、例えば、他の金属材とか樹脂材も広く適用できるものである。
第1ステップでは、図5(イ)に示すように、冶具10の円柱部10aにその前端側から管状部材5を差し入れて、これを円柱部10aの後端、即ち、ピン1の円柱部3の後端に対応する位置に配置する。
第2ステップでは、図5(ロ)に示すように、冶具10の截頭円錐部10bにフィルムを巻き付けて、その内周面内に管状部材5を内包した状態で且つその前端がピン1の円柱部3の前部3aに対応するようにして、截頭円錐形の羽根4を形成する。しかる後、図5(ハ)に示すように、冶具10を羽根4の後端4b側へ後退させて、冶具10を羽根4及び管状部材5から後方へ引き抜き、管状部材5を羽根4の前部4c内に配置する。
第3ステップでは、図5(ハ)の状態において、羽根4の截頭部4a内に毛細管現象を利用して接着剤を吸い込ませた後、図5(ニ)に示すように、截頭部4a側からピン1の円柱部3を差し込み、円柱部3の前部3aを羽根4の截頭部4aの内周面に固着するとともに、円柱部3の後部3bを管状部材5の内周面に固着する。
(1)発射試験
(1-1)サンプル
上記第1の実施形態における矢Zを「サンプル1」、上記第2の実施形態における矢Zを「サンプル2」、上記第1の実施形態における矢Zから管状部材5を取り除いた状態の矢Zを「サンプル3」、上記第2の実施形態における矢Zから管状部材5を取り除いた状態の矢Zを「サンプル4」とするとともに、併せてピン1の先端部2を球状とした従来構造の矢Z(ピンの先端部の形状以外は、全てサンプル3の矢Zと同様)を「サンプル5」とし、これら全5つのサンプルのそれぞれについて発射試験を行った。
矢Zを発射する射出筒11(図7参照)は、長さ120cm、内径13.0mmの筒状のグラスファイバー製である。射出筒11の内部に矢Zを挿入して配置し、矢2の後方から息を強く吹き込むことで、矢Zを発射するものである。
試験は、試験実行者が、的12から10m離れた位置に立ち、的12に向かって矢を発射することにより行った。なお、試験実行者は、吹矢競技について十分に習熟した1名の男性である。
試験実行者は、上記サンプル毎に、矢Zの発射数30本、210点満点を1セットとして5セット行い、合計で矢Zの発射数150本、1050点満点とした。
試験結果を下の「表1」に示す。
「涙滴長(mm)」・・ピン1の先端部2を形成する涙滴形の前部2aの端面から仮想上の尖端2cまでの長さである(設計値)。
「涙滴長/最太部の直径(%)」・・涙滴長の最太部直径(設計値)に対する割合である。
「最太部の位置(%)」・・ピン1の前後方向における先端部2を形成する涙滴形の横断面の直径が最大になる位置について、その位置の先端部2の前部2aの端面からの距離(設計値)を、涙滴長に対する割合で表したものである。
「ピン全長(mm)」・・ピン1の前後方向の全長である(設計値)。
「先端部長(mm)」・・ピン1の先端部2の前後方向の長さである(設計値)。
「ピン質量(g)」・・任意に選択した50個のピン1の質量(実測値)の平均値である。
「矢質量(g)」・・サンプル1及びサンプル2においては、
ピン1、管状部材5および羽根4と、ピン1と管状部材5および羽根4を接着する接着剤6~8からなる矢の全体の質量である。サンプル3、サンプル4及びサンプル5においては、ピン1および羽根4と、ピン1と羽根4を接着する接着剤からなる矢の全体の質量である。試験に使用した各矢のサンプルから、任意に選択した5本のサンプルの質量(実測値)の平均値である。
「平均点」・・1セット(210点満点)を5セット行った場合の、1セット当たりの平均点である。
「評価」・・平均点が、従来構造のサンプル5を用いた競技の平均点よりも、6点以上8点未満増加したサンプルの評価を「良」とし、8点以上増加したサンプルの評価を「最良」とした。
(3-1)サンプル1とサンプル3、及びサンプル2とサンプル4とは、それぞれ管状部材5の有無のみが異なっている。
サンプル1とサンプル3、及びサンプル2とサンプル4とを比較すると、管状部材5を用いた場合(サンプル1とサンプル2)には、管状部材5を用いない場合(サンプル3とサンプル4)よりも、平均点が1.6~2.8点向上することがわかる。
(3-2)サンプル1の矢の質量(0.845g)は、サンプル3の矢の質量(0.854g)より小さく、平均点はサンプル1の方が高い。サンプル2の矢の質量(0.899g)は、サンプル4の矢の質量(0.873g)よりも大きく、平均点はサンプル2の方が高い。したがって、本試験おいて、矢の質量は平均点に影響していないことが分かる。
(3-3)ピン1の先端部2の形状を涙滴形にした場合(サンプル1~4)には、ピン1の先端部2の形状が球形の場合(サンプル5)よりも大幅に平均点が向上することが分かる。
2 ・・先端部
3 ・・円柱部
3a ・・円柱部の前部
3b ・・円柱部の後部
4 ・・羽根
4c ・・羽根の前部
4a ・・羽根の前部の截頭部
5 ・・管状部材
5a ・・管状部材の前部
5b ・・管状部材の後部
6~8 ・・接着剤
9 ・・ストッパー
10 ・・冶具
11 ・・射出筒
12 ・・的
Z ・・矢
Claims (5)
- 先端部と該先端部の後部に延設してある円柱部とからなる棒状のピンと、
フィルムを截頭円錐形に巻いてなる羽根と、
上記羽根の前部内に配置してある管状部材とからなり、
上記ピンの上記円柱部が上記羽根の前部の截頭部内及び上記管状部材内に差し込まれた状態で、該円柱部の前部が上記羽根の前部の截頭部の内周面に固着され、該円柱部の後部が上記管状部材の内周面に固着されてあり、上記管状部材の前部の外周面が上記羽根の前部の内周面と接触した状態で、上記ピンと上記羽根と上記管状部材が、各々の中心軸が略重複するように一体化されていることを特徴とする吹矢用の矢。 - 請求項1において、
上記ピンの上記先端部が、前部がドーム形で後部が略円錐形の涙滴形であることを特徴とする吹矢用の矢。 - 請求項1において、
上記ピンの上記先端部が、前部がドーム形で後部が円柱形の砲弾形であることを特徴とする吹矢用の矢。 - 請求項1、2又は3に記載の吹矢用の矢の製造方法であって、
前部が円柱部とされ、後部が截頭円錐部とされた冶具の該円柱部に管状部材を差し入れてこれを該截頭円錐部の前端近傍に配置する第1ステップと、
該冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成した後、上記冶具を上記管状部材及び上記羽根から引き抜いて該管状部材を上記羽根内に配置する第2ステップと、
上記羽根の截頭部内に接着剤を吸い込ませた後、該截頭部側から上記ピンの円柱部を差し込み、該円柱部の前部を上記羽根の截頭部の内周面に固着するとともに、該円柱部の後部を上記管状部材の内周面に固着する第3ステップと、
を備えたことを特徴とする吹矢用の矢の製造方法。 - 請求項4において、
上記第2ステップで、上記冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成する際に、上記管状部材の外周面と上記羽根の前部の内周面を固着することを特徴とする吹矢用の矢の製造方法。
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