JP7421765B2 - 吹矢用の矢及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、吹矢に使用される矢、及びその製造方法に関するものである。
吹矢に使用される矢に関しては、例えば、特許文献1に示されるように、球状又は長手方向断面が楕円形の先端部と該先端部から後方に延びる円柱部で構成されるピンと、円錐形に形成され且つその先端部に上記ピンの円柱部すべてが差し込まれて固着された羽根(フィルム)とを備えたものが知られている。
特許第4910074号公報
ところで、上記矢において、上記ピンの先端部は錘として機能し、また上記羽根は矢を射出筒から発射する際に吹き付けられる呼気を受けて矢に推力を与えると同時に、該矢が射出されて的に向かって飛行する際にはその飛行姿勢を安定させるように機能するものである。そして、この矢の飛行姿勢を安定させるためには、上記ピンの中心軸と上記羽根の中心軸が可及的に重複していることが必要とされる。
ところが、特許文献1に示される吹矢用の矢においては、ピンの先端部の後部と上記羽根の前端部が接着剤にて固着されているのみであるため、これら両者を固着する製造工程においてこれら両者の中心軸を重複させることが難しく、その結果、製造された矢の多くが、ピンの中心軸と羽根の中心軸が径方向に偏移したものとなる傾向がある。
このようなピンの中心軸と羽根の中心軸が偏移した矢を射出筒から発射した場合、上記羽根による矢の飛行姿勢の安定化が損なわれ、矢の飛行中の上下、左右方向のブレが大きくなり矢飛軌跡を直線に近づけることが難しく、その結果、矢の的への命中率が低下することになり、特に得点を僅差で争う吹矢競技の競技者にとっては看過できない問題となる。
そこで本願発明は、上記問題に鑑み、高い命中率が得られるような吹矢用の矢、及びその製造方法を提案することを目的としてなされたものである。
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
本願の第1の発明では、先端部と該先端部の後部に延設してある円柱部とからなる棒状のピンと、フィルムを截頭円錐形に巻いてなる羽根と、上記羽根の前部内に配置してある管状部材とからなり、上記ピンの上記円柱部が上記羽根の前部の截頭部内及び上記管状部材内に差し込まれた状態で、該円柱部の前部が上記羽根の前部の截頭部の内周面に固着され、該円柱部の後部が上記管状部材の内周面に固着されてあり、上記管状部材の前部の外周面が上記羽根の前部の内周面と接触した状態で、上記ピンと上記羽根と上記管状部材が、各々の中心軸が略重複するように一体化されていることを特徴としている。
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る吹矢用の矢において、上記ピンの上記先端部を、前部がドーム形で後部が略円錐形の涙滴形としたことを特徴としている。
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る吹矢用の矢において、上記ピンの上記先端部を、前部がドーム形で後部が円柱形の砲弾形としたことを特徴としている。
本願の第4の発明に係る吹矢用の矢の製造方法では、上記第1、第2又は第3の発明に係る吹矢用の矢の製造方法であって、前部が円柱部とされ、後部が截頭円錐部とされた冶具の該円柱部に管状部材を差し入れてこれを該截頭円錐部の前端近傍に配置する第1ステップと、該冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成した後、上記冶具を上記管状部材及び上記羽根から引き抜いて該管状部材を上記羽根内に配置する第2ステップと、上記羽根の截頭部内に接着剤を吸い込ませた後、該截頭部側から上記ピンの円柱部を差し込み、該円柱部の前部を上記羽根の截頭部の内周面に固着するとともに、該円柱部の後部を上記管状部材の内周面に固着する第3ステップとを備えたことを特徴としている。
本願の第5の発明では、上記第3の発明に係る吹矢用の矢の製造方法において、上記第2ステップで、上記冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成する際に、上記管状部材の外周面と上記羽根の前部の内周面を固着することを特徴としている。
(a)本願の第1の発明に係る吹矢用の矢では、ピンの円柱部を、截頭円錐形に形成された羽根の前部の截頭部内、及び該羽根の前部内に配置した管状部材内に差し込み、該ピンの円柱部の前部を上記羽根の前部の截頭部の内周面に固着するとともに、該円柱部の後部を上記管状部材の内周面に固着してあり、さらに上記管状部材の前部の外周面が上記羽根の前部の内周面と接触した状態としてあることから、上記ピンと羽根と管状部材が、各々の中心軸が略重複するように一体化される。この結果、矢の重心が矢の中心軸上に存在することとなり、矢の飛行中の上下、左右方向へのブレが抑えられ、矢飛軌跡を直線に近付けることができ、矢の的への命中率が高められることになる。
なお、上記ピンの先端部には、様々な形状のものを適用することができるが、先端部の重心が円柱部の中心軸の延長線上に存在することが望ましく、また、矢が競技用であれば、人体等に衝突した際の安全性が重要である。したがって、上記先端部の形状は、涙滴形、球形、俵形又は長手方向断面が楕円形であることが望ましい。
(b)本願の第2の発明では、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。
(b-1) 上記ピンの先端部を涙滴形としているので、例えば、球形や長手方向断面が楕円形の先端部を有する従来の矢よりも、矢の飛行中の空気抵抗を減少させることができ、そのため、矢の上下、左右方向のブレが抑えられ、矢飛軌跡が直線に近付くことで、矢の的への命中率が向上する。
(b-2) 上記ピンの先端部を涙滴形としているので、例えば、球形や長手方向断面が楕円形の先端部を有する従来の矢よりも、矢の重心位置が矢の前寄りとなり、そのため、矢の飛行中の上下、左右方向のブレが抑えられ、矢飛軌跡が直線に近付くことで、的への命中率が向上する。
なお、上記「涙滴形」は、前部が「ドーム形」で後部が「略円錐形」とされる。この「涙滴形」は、球形や楕円形と比べて空気や水の抵抗が小さいとされており、飛行船や潜水艦の形状として多く採用されている。また、本願発明においては、上記「略円錐形」には、曲線状の母線を有するものと、直線状の母線を有する所謂「円錐形」とを含むものとする。
(c)本願の第3の発明では、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。
上記ピンの先端部を砲弾形としているので、その先端部の後端がピンの幅方向に拡がった円形の平面となっている。そのため、矢を製造する際の、ピンの円柱部を羽根の截頭部側から差し込んで、ピンの先端部の後端と羽根の截頭部(羽根の前端)とが当接する位置で固着させる作業工程において、ピンの先端部の後端の円形平面に羽根の截頭部を確実に当接させることができる。したがって、ピンの先端部の後端が羽根の截頭部の内部にまで入り込んだ状態や、ピンの円柱部の前端が羽根の截頭部より前方に出ている状態でピンと羽根とが固着されてしまうという問題が生じ難いため、矢の不良品の発生を防ぐことができる。
(d)本願の第4の発明に係る吹矢用の矢の製造方法によれば、上記第1ステップと第2ステップ及び第3ステップを備えることで、上記ピンと羽根と管状部材とが、各々の中心軸が略重複するように一体化され、矢の重心が矢の中心軸上に存在し、矢の飛行中の上下、左右方向へのブレが抑えられるような矢を、高い精度で効率良く製造することができる。
(e)本願の第5の発明に係る吹矢用の矢の製造方法によれば、上記(d)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明によれば、上記管状部材の外周面と上記羽根の前部の内周面が固着されることで、矢の製造作業中に、上記羽根内に配置した上記管状部材の位置がずれたり、外れたりすることが防止され、矢をより高精度で効率良く製造することができる。
ここで、上記管状部材の外周面と上記羽根の前部の内周面を固着するには、上記管状部材の外周面、又は上記フィルムにおける羽根を形成した際に羽根の前部の内周面に該当する箇所のいずれかに、接着剤又は粘着剤を塗布しておけばよい。
本願発明の第1の実施形態に係る吹矢用の矢の分解斜視図である。 図1に示した矢のピン部分の拡大側面図である。 図2の要部拡大図である。 本願発明の第2の実施形態に係る矢のピン部分の側面図である。 本願発明の吹矢用の矢の製造工程の説明図である。 吹矢の的の正面図である。 吹矢射出筒と矢の斜視図である。 本願発明の第3の実施形態に係る矢に用いるピンの側面図である。 本願発明の第4の実施形態に係る矢に用いるピンの側面図である。 本願発明の第5の実施形態に係る矢に用いるピンの側面図である。
「第1の実施形態」
図1~図3には、本願発明の第1の実施形態に係る吹矢用の矢Zを示している。この矢Zは、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成される。
「ピン1の構造等」
ピン1は、図1及び図2に示すように、前部2aがドーム形で,後部2bが略円錐形とされた涙滴形の先端部2と、先端部2の後部2bから後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.45mm)は先端部2の横断面の直径の最大値(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。
なお、ピン1の円柱部3は、その前部3aが先端部2の後部2bを形成する略円錐形の側面に繋がっている。したがって、先端部2を形成する涙滴形の尖端2cは、円柱部3の前部3aに埋もれる(隠れる)位置にあり、実際には存在しないため、図2に想像線で図示するように、その涙滴形の尖端2cを仮想的に認識して位置を特定するものとしている。
この実施形態のピン1では、先端部2の後部2bを形成する略円錐形の母線の曲率半径を11.78mm、先端部2の前部2aの端面から後部2bまでの寸法(先端部長)を5mm、先端部2の後部2bの直径を1.6mmとしている。また、先端部2の前部2aの端面から涙滴形の尖端2c(上述の仮想点)までの寸法(涙滴長)を6.752mmとしているため、涙滴長の最太部直径(3mm)に対する割合(6.752/3)は225.1%となる。さらに、上記涙滴形の前部2aの端面から上記涙滴形の横断面の直径が最大である位置(最太部位置)までの長さを1mmとしており、したがって、上記涙滴形の前部2aの端面から最太部位置までの長さの涙滴長に対する割合(1/6.752)は14.81%となり、最太部位置が涙滴形の前方寄りに位置している状態である。
ピン1は、錘として必要な質量と硬度を確保するため、金属、石、ガラス等であることが望ましい。金属であれば、鉄、真ちゅう、銅、ステンレス等や、必要に応じてこれらの表面にメッキを施したものを用いることができる。また、ピン1は、その全体を円柱形の材料から旋盤等で削り出すなどして一体的に製造できるが、先端部2と円柱部3とを個別に作成した後に繋ぎ合わせるようにして製造しても良い。
また、ピン1の先端部2の形状は、本実施形態の涙滴形の他に、球形、俵形又は長手方向断面が楕円形等の様々な形状を適用することができる。
「管状部材5の構造等」
管状部材5は、後述するように、ピン1の円柱部3の後部3b側に嵌挿した状態で羽根4の前部4c内に配置されるものであって、この実施形態においては、ポリプロピレン製の管状体で一体構成され、その軸方向の長さを6.0mm、外径を1.95mm、内径を1.55mmとしている。そして、本実施形態において管状部材5は、図2及び図3に示すように、ピン1の円柱部3の後部3bに、その後部5b側の端面と円柱部3の後部3b側の端面とが軸方向の略同一位置に位置するようにして嵌挿配置される。この管状部材5の配置状態においては、ピン1の円柱部3の外周面と管状部材5の内周面との間の環状隙間には接着剤7が設けられ、この接着剤7によって円柱部3の後部3bの外周面と管状部材5の内周面が固着一体化されている。
なお、管状部材5を羽根4の前部4c内に配置する方法としては、フィルムを截頭円錐形に巻いて羽根4を形成する際に同時に配置するようにしてもよく、また、羽根4の形成後に、羽根4の後端4bの開口から前部4c内まで管状部材5を挿入して配置してもよい。さらに、羽根4の截頭部4aの開口にピン1の円柱部3を差し込んだ後に、羽根4の後端4bの開口から前部4c内まで管状部材5を挿入すると同時に、ピン1の円柱部3に嵌挿するようにして配置してもよい。
「羽根4の構造等」
羽根4は、矢Zを射出筒11(図7参照)から発射する際には吹き付けられる呼気を受けて矢Zに推力を与えるとともに、矢Zが射出されて的に向かって飛行する際にはその飛行姿勢を安定させるように機能するものであって、所定形状のフィルムを後述する冶具10(図5参照)に巻き付けて、頂部が開口された截頭円錐形に形成して構成される。
羽根4は、図3に示すように、その前部4cの截頭部4aが円柱部3の前部3aに対して接着剤8によって固着されるとともに、羽根4の前部4cにおける管状部材5に対応する部分(即ち、円柱部3の後部3bに対応する部分)においては、その前部4cの内周面が接着剤6によって管状部材5の外周面に固着され、これによって、ピン1と管状部材5と羽根4は一体化され、矢Zを構成する。
この実施形態では、截頭円錐形の羽根4の前後方向の長さを200mmとし、かつ、羽根4の後端4bの外径を13.0mmに設定している。なお、この羽根4の後端4bの外径を13.0mmとしたのは、吹矢競技において、矢Zを発射する射出筒11の内径が通常13.0mmに設定されているのに対応させたものである。また、羽根4の全長を200mmに設定したのは、矢Zの飛行姿勢を安定させるに最適な寸法として設定したものである。
このような大きさの羽根4を備える矢Z製造・販売する場合、競技者は、羽根4の後端の外径を、自ら調整することなく、そのまま競技に使用することができる。また、他の実施形態においては、羽根4の前後方向の長さを205mm±5mmとし、かつ、羽根4の後端4bの外径を13.3mm±0.2mmにしてもよい。この場合、競技者が自らの好みに合わせて、羽根4の後部4bの所定位置を横方向に切断することで、後端の外径を調節することができる。
羽根4は、それを形成するフィルムの材質として、各種の樹脂、紙、不織布等を採用することができるが、軽量で、ある程度の剛性と柔軟性を備えるものであることが望ましい。また、競技者の呼気によって矢を発射するため、羽根4に唾液が付着しても変形・破損しない程度の耐水性を有することが望ましい。このような観点から、この実施形態においては、羽根4を、厚さ40μmの延伸ポリプロピレン(Oriented Polypropylene)を用いて形成している。
「矢Zの作用効果」
上述の如く構成された上記吹矢用の矢Zにおいては、以下のような作用効果が得られる。
(イ)この実施形態の矢Zにおいては、ピン1の円柱部3を、截頭円錐形の羽根4の截頭部4a内、および羽根4の前部4c内に配置した管状部材5内に差し込み、ピン1の円柱部3の前部3aを羽根4の截頭部4aの内周面に固着するとともに、円柱部3の後部3bを管状部材5の内周面に固着してあることから、ピン1と羽根4と管状部材5が、各々の中心軸が略重複するように一体化されている。この結果、矢Zの重心が矢Zの中心軸上に存在することとなり、矢Zの飛行中の上下、左右方向へのブレが抑えられ、矢飛軌跡を直線に近付けることができ、矢Zの的12(図6参照)への命中率が高められることになる。
(ロ) ピン1の先端部2を涙滴形としているので、例えば、球形や長手方向断面が楕円形の先端部を有する従来の矢よりも、矢Zの飛行中の空気抵抗を減少させることができ、そのため、矢Zの上下、左右方向のブレが抑えられ、矢飛軌跡が直線に近付くことで、的12への命中率が向上する。
(ハ) ピン1の先端部2を涙滴形としているので、例えば、球形や長手方向断面が楕円形の先端部を有する従来の矢よりも、矢Zの重心位置が矢の前寄りとなり、そのため、矢Zの飛行中の上下、左右方向のブレが抑えられ、矢飛軌跡が直線に近付くことで、的12への命中率が向上する。
「第2の実施形態」
図4には、本願発明の第2の実施形態に係る吹矢用の矢Zを示している。この矢Zは、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
「ピン1の構造等」
ピン1は、図4に示すように、前部2aがドーム形で,後部2bが略円錐形とされた涙滴形の先端部2と、先端部2の後部2bから後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.45mm)は先端部2の横断面の直径の最大値(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部2の後部2bを形成する略円錐形の母線の曲率半径を16.8mm、先端部2の前部2aの端面から後部2bまでの寸法(先端部長)を6mm、先端部2の後部2bの直径を1.6mmとしている。
また、先端部2の前部2aの端面から涙滴形の尖端2cまでの寸法(涙滴長)を8.141mmとしているため、涙滴長の最太部直径(3mm)に対する割合(8.141/3)は271.4%となる。かかる割合は、上記第1の実施形態の場合(225.1%)よりも大きいことから、より前後方向に長くスリムな形状の涙滴形となっている。
さらに、この実施形態のピン1では、上記涙滴形の前部2aの端面から上記涙滴形の横断面の直径が最大である位置(最太部位置)までの長さを1.2mmとしており、したがって、上記涙滴形の前部2aの端面から最太部位置までの長さの涙滴長に対する割合(1.2/8.141)は14.74%となり、最太部位置は上記第1の実施形態の場合よりも涙滴形の前方寄りに位置している。
なお、この第2の実施形態に係る矢Zにおいても、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様の作用効果が得られるものであり、ここでは該第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明は省略する。
「第3の実施形態」
図8は、本願発明の第3の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第3の実施形態に係る矢Zは、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
「ピン1の構造等」
ピン1は、図8に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を3mmとしている。
「矢の作用効果」
この第3の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1は、上記のとおり、ピン1の先端部2を砲弾形としているので、その先端部2の後端がピン1の幅方向に拡がった円形の平面となっている。そのため、矢Zを製造する際の、ピン1の円柱部3を羽根4の截頭部4a側から差し込んで、ピンの先端部2の後端と羽根の截頭部4aとが当接する位置で固着させる作業工程において、ピンの先端部2の後端の円形平面に羽根4の截頭部4aを確実に当接させることができる。したがって、ピン1の先端部2の後端が羽根4の截頭部4aの内部にまで入り込んだ状態や、ピンの円柱部3の前端が羽根4の截頭部4aより前方に出ている状態でピン1と羽根4とが固着されてしまうという問題が生じ難いため、矢Zの不良品の発生を防ぐことができる。
「第4の実施形態」
図9は、本願発明の第4の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第4の実施形態に係る矢は、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
「ピン1の構造等」
ピン1は、図9に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を4mmとしている。
なお、この第4の実施形態に係る矢Zは、上記第3の実施形態に係る矢Zと同様の作用効果が得られるものであり、ここでは該第3の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明は省略する。
「第5の実施形態」
図10は、本願発明の第5の実施形態に係る吹矢用の矢Zに用いるピン1を示している。この第5の実施形態に係る矢は、上記第1の実施形態に係る矢Zと同様に、ピン1と管状部材5と羽根4を備えて構成されるが、管状部材5及び羽根4は上記第1の実施形態における管状部材5及び羽根4と同様であるため、ここでの説明を省略し、以下においてはピン1についてのみ、その構造等を説明する。
「ピン1の構造等」
ピン1は、図10に示すように、前部が半球のドーム形で、後部が円柱形とされた砲弾形の先端部2と、先端部2の後端から後方に延びる円柱部3とから構成される所定長さ(この実施形態では、20mm)の棒状体であって、円柱部3の横断面の直径(この実施形態では1.4mm)は先端部2の円柱形部分の横断面の直径(この実施形態では3mm)よりも小さく設定されている。この実施形態のピン1では、先端部の前部のドーム形を形成する半球の曲率半径を1.5mmとし、先端部2の前端から後端までの寸法(先端部長)を5mmとしている。
なお、この第5の実施形態に係る矢Zは、上記第3の実施形態に係る矢Zと同様の作用効果が得られるものであり、ここでは該第3の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明は省略する。
「矢Zの製造方法」
ここで、上記各実施形態における矢Zの製造方法を、図5を参照して説明する。
この製造方法においては、フィルムを截頭円錐形に巻き付けて羽根4を形成する作業と、羽根4の前部の内面側に管状部材5を配置する作業に冶具10を用いるようにしている。この冶具10は、図5(イ)に示すように、その前部が円柱状の円柱部10aとされ、後部が截頭円錐形の截頭円錐部10bとされた棒状体で構成され、上記円柱部10aは、その長さをピン1の円柱部3の長さよりも所定量だけ長く設定するとともに、その外径をピン1の円柱部3の外径(1.45mm)と略同一に設定している。また、上記截頭円錐部10bの前端はピン1の円柱部3の後部3bに対応し、且つそのテーパ角は、該截頭円錐部10bにフィルムを巻き付けて截頭円錐形の羽根4を形成したとき、その前端の截頭部4aがピン1の円柱部3の前部3aに対応し、且つその内径がピン1の円柱部3の外径(1.45mm)よりも僅かに大きな寸法となるように設定されている。
なお、冶具10は、この実施形態では真ちゅう製としているが、これに限定されるものではなく、例えば、他の金属材とか樹脂材も広く適用できるものである。
この矢Zの製造方法は、以下に述べる第1ステップと第2ステップ及び第3ステップの三つのステップで構成される。
「第1ステップ」
第1ステップでは、図5(イ)に示すように、冶具10の円柱部10aにその前端側から管状部材5を差し入れて、これを円柱部10aの後端、即ち、ピン1の円柱部3の後端に対応する位置に配置する。
「第2ステップ」
第2ステップでは、図5(ロ)に示すように、冶具10の截頭円錐部10bにフィルムを巻き付けて、その内周面内に管状部材5を内包した状態で且つその前端がピン1の円柱部3の前部3aに対応するようにして、截頭円錐形の羽根4を形成する。しかる後、図5(ハ)に示すように、冶具10を羽根4の後端4b側へ後退させて、冶具10を羽根4及び管状部材5から後方へ引き抜き、管状部材5を羽根4の前部4c内に配置する。
この場合、冶具10の上記截頭円錐部10bへのフィルムの巻き付けに先立って、管状部材5の外周面、又は上記フィルムにおける羽根4を形成した際に羽根4の前部4cの内周面に該当する箇所の少なくとも何れか一方に、少量の接着剤6を塗布しておくことで、図5(ハ)に示すように、上記フィルムを巻き付けて略円錐形の羽根4を形成する際に、この接着剤6によって管状部材5の外周面と羽根4の前部4cの内周面とが固着される。
このように羽根4の前部4cの内周面と管状部材5の外周面を固着することで、その後の製造作業中において、羽根4の前部4c内に配置した管状部材5の位置がずれたり、外れたりすることを防ぐことができ、精度の高い矢Zを効率良く製造するという点において好ましいものである。
「第3ステップ」
第3ステップでは、図5(ハ)の状態において、羽根4の截頭部4a内に毛細管現象を利用して接着剤を吸い込ませた後、図5(ニ)に示すように、截頭部4a側からピン1の円柱部3を差し込み、円柱部3の前部3aを羽根4の截頭部4aの内周面に固着するとともに、円柱部3の後部3bを管状部材5の内周面に固着する。
なお、上記第1の実施形態に係るピン1の場合には、管状部材5はピン1の円柱部3の前端、即ち、羽根4の截頭部4aから9~15mmの範囲に配置され、上記第2の実施形態に係るピン1の場合には、管状部材5はピン1の円柱部3の前端、即ち、羽根4の截頭部4aから8~14mmの範囲に配置される。
また、例えば、吹矢競技の際に、先に的12に刺さった矢Zの後方から、後に発射された矢Zが重ねて命中する所謂「ダブル」の状態となったとき、後の矢Zの先端部2が先の矢Zの円柱部3の後方に食い込んで抜けなくなるのを防ぐためには、図5(ニ)に鎖線図示するように、例えばポリウレタンフォームで円柱形に形成されたストッパー9を、截頭円錐形の羽根4内に押し込んで、羽根4内の前部4c寄りの位置に配置すれば好適である。
「矢の発射試験、試験結果及び考察」
(1)発射試験
(1-1)サンプル
上記第1の実施形態における矢Zを「サンプル1」、上記第2の実施形態における矢Zを「サンプル2」、上記第1の実施形態における矢Zから管状部材5を取り除いた状態の矢Zを「サンプル3」、上記第2の実施形態における矢Zから管状部材5を取り除いた状態の矢Zを「サンプル4」とするとともに、併せてピン1の先端部2を球状とした従来構造の矢Z(ピンの先端部の形状以外は、全てサンプル3の矢Zと同様)を「サンプル5」とし、これら全5つのサンプルのそれぞれについて発射試験を行った。
(1-2) 試験用機材
矢Zを発射する射出筒11(図7参照)は、長さ120cm、内径13.0mmの筒状のグラスファイバー製である。射出筒11の内部に矢Zを挿入して配置し、矢2の後方から息を強く吹き込むことで、矢Zを発射するものである。
また、図6に示すように、試験に使用する的12には、4重の同心円状の得点領域が表示されており、得点領域は、内側から順次、7点領域(直径6cm)、5点領域(直径12cm)、3点領域(直径18cm)、1点領域(直径24cm)となっている。なお、上記的12は、得点領域が表示された表紙61と、その表紙61が貼着された発泡ポリエチレン製の台座62からなり、的12に当たった矢Zは的12に突き刺さって、その状態を維持できるようになっている。
(1-3) 試験方法
試験は、試験実行者が、的12から10m離れた位置に立ち、的12に向かって矢を発射することにより行った。なお、試験実行者は、吹矢競技について十分に習熟した1名の男性である。
試験実行者は、上記サンプル毎に、矢Zの発射数30本、210点満点を1セットとして5セット行い、合計で矢Zの発射数150本、1050点満点とした。
(2)試験結果
試験結果を下の「表1」に示す。
Figure 0007421765000001
表1における用語の意義は以下のとおりである。
「涙滴長(mm)」・・ピン1の先端部2を形成する涙滴形の前部2aの端面から仮想上の尖端2cまでの長さである(設計値)。
「涙滴長/最太部の直径(%)」・・涙滴長の最太部直径(設計値)に対する割合である。
「最太部の位置(%)」・・ピン1の前後方向における先端部2を形成する涙滴形の横断面の直径が最大になる位置について、その位置の先端部2の前部2aの端面からの距離(設計値)を、涙滴長に対する割合で表したものである。
「ピン全長(mm)」・・ピン1の前後方向の全長である(設計値)。
「先端部長(mm)」・・ピン1の先端部2の前後方向の長さである(設計値)。
「ピン質量(g)」・・任意に選択した50個のピン1の質量(実測値)の平均値である。
「矢質量(g)」・・サンプル1及びサンプル2においては、
ピン1、管状部材5および羽根4と、ピン1と管状部材5および羽根4を接着する接着剤6~8からなる矢の全体の質量である。サンプル3、サンプル4及びサンプル5においては、ピン1および羽根4と、ピン1と羽根4を接着する接着剤からなる矢の全体の質量である。試験に使用した各矢のサンプルから、任意に選択した5本のサンプルの質量(実測値)の平均値である。
「平均点」・・1セット(210点満点)を5セット行った場合の、1セット当たりの平均点である。
「評価」・・平均点が、従来構造のサンプル5を用いた競技の平均点よりも、6点以上8点未満増加したサンプルの評価を「良」とし、8点以上増加したサンプルの評価を「最良」とした。
(3)試験結果についての考察
(3-1)サンプル1とサンプル3、及びサンプル2とサンプル4とは、それぞれ管状部材5の有無のみが異なっている。
サンプル1とサンプル3、及びサンプル2とサンプル4とを比較すると、管状部材5を用いた場合(サンプル1とサンプル2)には、管状部材5を用いない場合(サンプル3とサンプル4)よりも、平均点が1.6~2.8点向上することがわかる。
(3-2)サンプル1の矢の質量(0.845g)は、サンプル3の矢の質量(0.854g)より小さく、平均点はサンプル1の方が高い。サンプル2の矢の質量(0.899g)は、サンプル4の矢の質量(0.873g)よりも大きく、平均点はサンプル2の方が高い。したがって、本試験おいて、矢の質量は平均点に影響していないことが分かる。
(3-3)ピン1の先端部2の形状を涙滴形にした場合(サンプル1~4)には、ピン1の先端部2の形状が球形の場合(サンプル5)よりも大幅に平均点が向上することが分かる。
本願発明に係る吹矢用の矢は、吹矢競技等の娯楽、スポーツ分野において利用されるものである。
1 ・・ピン
2 ・・先端部
3 ・・円柱部
3a ・・円柱部の前部
3b ・・円柱部の後部
4 ・・羽根
4c ・・羽根の前部
4a ・・羽根の前部の截頭部
5 ・・管状部材
5a ・・管状部材の前部
5b ・・管状部材の後部
6~8 ・・接着剤
9 ・・ストッパー
10 ・・冶具
11 ・・射出筒
12 ・・的
Z ・・矢

Claims (5)

  1. 先端部と該先端部の後部に延設してある円柱部とからなる棒状のピンと、
    フィルムを截頭円錐形に巻いてなる羽根と、
    上記羽根の前部内に配置してある管状部材とからなり、
    上記ピンの上記円柱部が上記羽根の前部の截頭部内及び上記管状部材内に差し込まれた状態で、該円柱部の前部が上記羽根の前部の截頭部の内周面に固着され、該円柱部の後部が上記管状部材の内周面に固着されてあり、上記管状部材の前部の外周面が上記羽根の前部の内周面と接触した状態で、上記ピンと上記羽根と上記管状部材が、各々の中心軸が略重複するように一体化されていることを特徴とする吹矢用の矢。
  2. 請求項1において、
    上記ピンの上記先端部が、前部がドーム形で後部が略円錐形の涙滴形であることを特徴とする吹矢用の矢。
  3. 請求項1において、
    上記ピンの上記先端部が、前部がドーム形で後部が円柱形の砲弾形であることを特徴とする吹矢用の矢。
  4. 請求項1、2又は3に記載の吹矢用の矢の製造方法であって、
    前部が円柱部とされ、後部が截頭円錐部とされた冶具の該円柱部に管状部材を差し入れてこれを該截頭円錐部の前端近傍に配置する第1ステップと、
    該冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成した後、上記冶具を上記管状部材及び上記羽根から引き抜いて該管状部材を上記羽根内に配置する第2ステップと、
    上記羽根の截頭部内に接着剤を吸い込ませた後、該截頭部側から上記ピンの円柱部を差し込み、該円柱部の前部を上記羽根の截頭部の内周面に固着するとともに、該円柱部の後部を上記管状部材の内周面に固着する第3ステップと、
    を備えたことを特徴とする吹矢用の矢の製造方法。
  5. 請求項4において、
    上記第2ステップで、上記冶具の上記截頭円錐部にフィルムを巻き付けて、その内周面内に上記管状部材を内包した状態で截頭円錐形の羽根を形成する際に、上記管状部材の外周面と上記羽根の前部の内周面を固着することを特徴とする吹矢用の矢の製造方法。
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