JP7420004B2 - 車両の電動制動装置 - Google Patents

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本開示は、車両の電動制動装置に関する。
出願人は、「車両の電動制動装置の回転・直動変換機構(ねじ機構)であって、長期間に亘って、良好な潤滑状態が維持され得るものを提供すること」を目的に、特許文献1に記載されるような車両の電動制動装置を開発している。特許文献1の装置では、「電気モータの回転運動が、ねじ機構によって、摩擦部材を押圧する押圧ピストンの直線運動に変換される。ねじ機構の隙間には潤滑剤が蓄えられている。制御手段は、押圧力を増加する場合には電気モータを正転方向に回転させ、押圧力を減少する場合には電気モータを逆転方向に回転させる。押圧力が減少される場合、電気モータの回転角の変化量に対する押圧力の変化量である剛性値Gcpが演算され、回転角が逆転方向に所定回転角mkyだけ変化する間に亘って、剛性値Gcpが所定値gcpx未満の状態が継続する時点t5まで、電気モータを逆転方向に回転させる。」
特許文献2には、「ばね部材を受ける凹部の加工に高い寸法加工精度が要求されず安価なボールねじ装置を提供することを目的に、「ボールねじ装置22が、雌ねじ溝33とストッパとしての凹部60,70とを含むボールナット30と、雄ねじ溝34を含むねじ軸28とを備える。雌ねじ溝33及び雄ねじ溝34間に形成される軌道路Kに、ボール列Lが介在する。ボール列Lの端部La,Lbのボール29とストッパとしての凹部60,70との間に、ばね部材としてのコイルスプリング51,52が介在する。コイルスプリング51,52は、軌道路Kの少なくとも1周分の長さを有している」ことが記載されている。更に、特許文献1には、該ボールねじ装置が、電気モータを駆動源とするブレーキ装置(「電動制動装置」ともいう)に適用されることが記載されている。
特許文献2に記載されるような非循環型ボールねじ機構が、特許文献1に記載されるような電動制動装置に適用される状況を想定する。ねじ機構NJでは、ボールBLは、シャフト部材SFの雄ねじ溝(「シャフトねじ溝」ともいう)Msと、ナット部材NTの雌ねじ溝(「ナットねじ溝」ともいう)Mnとによって形成される螺旋状のねじ溝の中に列をなすように配置されている。ボール溝内に形成される一列に並んだボールBLの集合体(「ボール列」という)BLsは、ナットねじ溝Mnの内部において、その両端部Ea、Ebにて、2つのばね部材SA、SBによって保持されている。
電動制動装置DSにおいて制動作動が行われると、2つのばね部材SA、SBのうちで、一方側が縮められ、他方側が伸ばされる。ばね部材SA、SBの変形量は、制動作動に起因するシャフト部材SFとナット部材NTとの相対変位に依存する。通常の制動作動では、シャフト部材SFとナット部材NTとの相対変位が然程大きくないため、変形量は比較的小さい。しかしながら、摩擦部材MSの急激な摩耗等が発生するような場合には、相対変位が極めて大きくなり、ばね部材SA、SBの変形量が大きくなる。ボールBLとねじ溝Ms、Mnとの間には摩擦が存在するため、変形量が増大するとボールBLがねじ溝内を円滑に移動され難くなる。その結果、非制動時において、2つのばね部材SA、SBの負荷状態が均等ではなくなる状況が生じ得る。該状況は、電動制動装置の耐久性に関しては好ましくない。
特開2014-142044号 特開2016-037981号
本発明の目的は、非循環型のボールねじ機構が採用される車両の電動制動装置において、非制動時にボールを保持する2つのばね部材の負荷状態が均等にされ得るものを提供することである。
である。
本発明に係る車両の電動制動装置は、車両の車輪(WH)に固定された回転部材(KT)に対する摩擦部材(MS)の押圧力(Fa)を、電気モータ(MT)によって制御して、前記車輪(WH)の制動力(Fx)を調整するものであって、前記電気モータ(MT)の回転動力を前記摩擦部材(MS)の直線動力に変換するボールねじ機構(NJ)と、前記電気モータ(MT)を正転方向(Da)に駆動することで前記押圧力(Fa)を増加し、前記電気モータ(MT)を前記正転方向(Da)とは反対の逆転方向(Db)に駆動することで前記押圧力(Fa)を減少するコントローラ(ECU)と、を備える。
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記ボールねじ機構(NJ)は、その両端部(Ea、Eb)が2つのばね部材(SA、SB)で保持されるボール列(BLs)を含んで構成される。そして、前記コントローラ(ECU)は、前記電気モータ(MT)への通電を開始してから終了するまでの期間において前記電気モータ(MT)の回転角(Ka)が所定角(kx)以上になる場合には、前記電気モータ(MT)を前記逆転方向(Db)に駆動する際に前記押圧力(Fa)が発生している状態から発生しなくなる状態に遷移する基準角(km)よりも更に前記逆転方向(Db)に、前記回転角(Ka)を変化させる。また、前記コントローラ(ECU)は、前記回転角(Ka)を前記基準角(ko)よりも前記逆転方向(Db)に変化させた後に、前記回転角(Ka)を前記基準角(km)に戻す。
上記構成によれば、ボール列BLsが、ねじ溝内で強制的に移動されるため、非制動時(即ち、制動作動の終了後)において、ボール列BLsを保持する第1、第2ばね部材SA、SBの負荷(即ち、変形量)が均一にされる。これにより、電動制動装置DSの耐久性が向上され得る。
電動制動装置DSの第1の実施形態を説明するための概略図である。 非循環型のボールねじ機構NJを説明するための概略図である。 基準角演算の処理を説明するためのフロー図である。 均等化制御の処理を説明するためのフロー図である。 均等化制御の動作を説明するための時系列線図である。 電動制動装置DSの第2の実施形態を説明するための概略図である。
以下、本発明に係る車両の電動制動装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字>
以下の説明において、「MT」等の如く、同一記号を付された構成部材、要素、信号等は同一機能のものである。2つの制動系統に係る記号の末尾に付された添字「1」、「2」(特に、図6)は、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号であり、「1」は一方の制動系統(「第1制動系統BK1」ともいう)、「2」は他方の制動系統(「第2制動系統BK2」ともいう)を示す。添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、その記号は総称を表す。例えば、「CW1」は、第1制動系統BK1に係るホイールシリンダであり、「CW2」は、第2制動系統BK2に係るホイールシリンダである。そして、「CW」は、ホイールシリンダの総称である。
<運動・移動の方向>
次に、シャフト部材SF、ナット部材NT、回転部材KT、摩擦部材MS、及び、電気モータMTの運動・移動の方向について説明する。摩擦部材MSが回転部材KTに近づく方向(「前進方向」という)Haに移動されると、摩擦部材MSが回転部材KTに押圧される力である押圧力Faが増加され、制動力Fxが増加される。逆に、摩擦部材MSが回転部材KTから離れる方向(前進方向Haとは反対の方向であり、「後退方向」という)Hbに移動されると、押圧力Faが減少され、制動力Fxが減少される。摩擦部材MSの移動は、ねじ機構NJにおいて、シャフト部材SFとナット部材NTとの相対的な変位によって実現される。例えば、シャフト部材SFが固定されている場合には、ナット部材NTが前進方向Haに移動されることによって摩擦部材MSが前進方向Haに移動され、ナット部材NTが後退方向Hbに移動されることによって摩擦部材MSが後退方向Hbに移動される。ここで、前進方向Haの移動は電気モータMTの正転方向Daに対応し、後退方向Hbの移動は電気モータMTの正転方向Daとは反対の逆転方向Dbに対応している。つまり、電気モータMTが正転方向Daに回転駆動されると、ナット部材NTが前進方向Haに移動され、摩擦部材MSが前進方向Haに移動される。これにより、押圧力Faが増加され、制動力Fxが増加される。逆に、電気モータMTが逆転方向Dbに回転駆動されると、ナット部材NTが後退方向Hbに移動され、摩擦部材MSが後退方向Hbに移動される。これにより、押圧力Faが減少され、制動力Fxが減少される。
<本発明に係る車両の電動制動装置の全体構成>
図1の全体構成図を参照して、車両の電動制動装置DSの実施形態について説明する。電動制動装置DSを備える車両には、制動操作部材BP、回転部材KT、ブレーキキャリパCP、及び、摩擦部材MSが備えられている。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力Fxが発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材KT(例えば、ブレーキディスク)が設けられる。回転部材KTは、車輪WHと一体となって回転するよう固定されている。回転部材KTを挟み込むように、ブレーキキャリパCPが設けられる。ブレーキキャリパ(単に、「キャリパ」ともいう)CPでは、2つの(一対の)摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MSが、電気モータMTの動力によって回転部材KTに押し付けられる。このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(結果、制動力Fx)が発生される。例えば、キャリパCPとして、浮動型キャリパが採用される。
電動制動装置DSは、制動操作量センサBA、制動アクチュエータAC、及び、コントローラECUにて構成される。
制動操作部材(ブレーキペダル)BPには、制動操作量センサBAが設けられる。制動操作量センサBAによって、運転者による制動操作部材BPの操作量(制動操作量)Baが取得(検出)される。制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCMの圧力(マスタシリンダ液圧)Pmを検出するセンサ(圧力センサPM)、制動操作部材BPの操作力Fpを検出するセンサ(踏力センサFP)、及び、制動操作部材BPの操作変位Spを検出するセンサ(ストロークセンサSP)のうちで、少なくとも1つが採用される。つまり、制動操作量Baは、マスタシリンダ液圧Pm、制動操作部材BPの操作力Fp、及び、制動操作部材BPの操作変位Spのうちの少なくとも何れか1つに基づいて演算される。制動操作量Baは、コントローラECUに入力される。
≪制動アクチュエータAC≫
制動アクチュエータ(単に、「アクチュエータ」ともいう)ACによって、車輪WHと一体となって回転する回転部材KT(ブレーキディスク)に、摩擦部材MS(ブレーキパッド)が押し付けられる。このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに、制動トルクが付与され、制動力Fxが発生され、走行中の車両が減速される。
アクチュエータACは、ブレーキキャリパCPに固定される。アクチュエータACは、押圧ピストンPN、電気モータMT、減速機GS、ねじ機構NJ、回転角センサKA、及び、押圧力センサFAにて構成される。
押圧ピストン(単に、「ピストン」ともいう)PNが、キャリパCPの内部にて、回転部材KT(ブレーキディスク)に対して移動可能なように設けられる。押圧ピストンPNは、電気モータMTの動力(トルク出力)によって直線移動される。つまり、電気モータMTは、押圧ピストンPNを駆動(移動)するための動力源である。例えば、電気モータMTとして、ブラシ付モータ、或いは、ブレシレスモータが採用される。
押圧ピストンPNの移動によって、摩擦部材MSが押圧され、回転部材KTに対する摩擦部材MSの押圧状態(即ち、押圧力Fa)が調整される。つまり、押圧ピストンPNは、摩擦部材MSを回転部材KTに押圧して、車両の車輪WHに制動力Fxを発生させる移動部材である。具体的には、電気モータMTが正転方向Daに回転されることで、押圧ピストンPNが前進方向Haに移動され、摩擦部材MSが前進方向Haに移動され、押圧力Faが増加される。また、電気モータMTが逆転方向Dbに回転されることで、押圧ピストンPNが後退方向Hbに移動され、摩擦部材MSが後退方向Hbに移動され、押圧力Faが減少される。
電気モータMTの出力(軸回りの回転動力)は、減速機GS、及び、ねじ機構NJを介して、押圧ピストンPNに伝達される。具体的には、電気モータMTの動力は、減速機GSによって減速される。そして、電気モータMTの回転動力は、ねじ機構NJによって、ピストンPNの直線動力(ピストンPNの中心軸線方向の推力)に変換される。
ねじ機構NJでは、シャフト部材SFとナット部材NTとが、複数のボールBL(例えば、鋼球)を介してかみ合わされる。即ち、ねじ機構NJは、ボールねじ機構である。例えば、電気モータMTの回転動力が、シャフト部材SFの回転動力として伝達される。このとき、ナット部材NTには、キー機構、スプライン機構等によって回り止めがなされている。ナット部材NTは、その中心軸線の回りには回転されず、中心軸線に沿った方向にのみ移動可能である。これにより、シャフト部材SFの回転動力が、ナット部材NTの直線動力に変換される。ナット部材NTは、押圧ピストンPNを押圧するように配置されているため、電気モータMTの回転動力が、ねじ機構NJを介して、摩擦部材MSの直線動力に変換される。
ねじ機構NJの動力伝達においては、上記構成が逆であってもよい。即ち、電気モータMTの回転動力が、ナット部材NTの回転動力として伝達される。また、シャフト部材SFが、回り止めされていて、中心軸線に沿った方向にのみ移動される。これにより、ナット部材NTの回転動力が、シャフト部材SFの直線動力に変換される。シャフト部材SFは、押圧ピストンPNを押圧するように配置され、電気モータMTの回転動力が、ねじ機構NJを介して、摩擦部材MSの直線動力に変換される。
何れにしても、ねじ機構NJを介して、電気モータMTの回転動力は、押圧ピストンPNの直線動力として伝達される。その結果、摩擦部材MSが、回転部材KTに対して移動され、回転部材KTに対する押圧力Faが、発生され、調整される。即ち、ボールねじ機構NJによって、電気モータMTの回転動力が、摩擦部材MSの直線動力に変換され、押圧力Faが調整される。そして、押圧力Faによって発生される摩擦部材MSと回転部材KTとの間の摩擦力に応じて、車輪WHの制動力Fxが、発生され、調整される。
電気モータMTの回転方向において、正転方向Daが、回転部材KTに対する押圧ピストンPN(結果、摩擦部材MS)の接近方向(前進方向Haであり、押圧力Faが増加し、制動力Fxが増加する方向)に対応する。正転方向Daとは逆の逆転方向Dbが、回転部材KTに対する押圧ピストンPN等の離反方向(前進方向Haとは反対の後退方向Hbであり、押圧力Faが減少し、制動力Fxが減少する方向)に対応する。
電気モータMTには、回転角センサKAが設けられる。回転角センサKAによって、電気モータMTのロータ(回転子)の位置(例えば、回転角)Kaが検出される。検出された実際の回転角Kaは、コントローラECUに入力される。例えば、回転角センサKAは、電気モータMTに内蔵されている。回転角センサKAとして、ホールIC型、レゾルバ型のものが採用される。
アクチュエータACには、押圧力センサFAが設けられる。押圧力センサFAによって、押圧ピストンPNが摩擦部材MSを押す力(押圧力)Faが検出される。検出された実際の押圧力Faは、コントローラECUに入力される。例えば、押圧力センサFAは、減速機GSとねじ機構NJと間の動力伝達経路に設けられる。
≪コントローラECU≫
電動制動装置DS(特に、制動アクチュエータAC)は、コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUによって制御される。具体的には、コントローラECUによって、電気モータMTが駆動される。コントローラECUには、マイクロプロセッサ等が実装された電気回路基板、及び、電気モータMTに通電を行う駆動回路DRを含んでいる。電気モータMTを駆動するための制御アルゴリズムは、マイクロプロセッサにプログラムされている。コントローラECUは、通信バスBSを介して、信号(検出値、演算値等)が送受信可能なように、他のコントローラと接続されている。
コントローラECUは、目標押圧力演算ブロックFT、指示通電量演算ブロックIS、押圧力フィードバック制御ブロックIF、目標通電量演算ブロックIT、及び、駆動回路DRにて構成される。
目標押圧力演算ブロックFTでは、制動操作量Baに基づいて、目標押圧力Ftが演算される。目標押圧力Ftは、摩擦部材MSが回転部材KTを押す力(押圧力)Faの目標値である。目標押圧力Ftは、制動操作量Ba、及び、予め設定された演算マップZftに基づいて演算される。具体的には、演算マップZftに従って、操作量Baが「0」から値boまでの範囲では、目標押圧力Ftは「0」に演算される。そして、操作量Baが値boを越えると、操作量Baの増加に従って、目標押圧力Ftが単調増加するように演算される。値boは、制動操作部材BPの「遊び(構成部品間で自由に動ける)」に相当する、予め設定された所定値(定数)である。
指示通電量演算ブロックISでは、目標押圧力Ft、及び、予め設定された演算マップZisに基づいて、指示通電量Isが演算される。指示通電量Isは、目標押圧力Ftが達成されるための、電気モータMTへの通電量の目標値である。「通電量」は、電気モータMTの出力トルクを制御するための状態量(変数)である。電気モータMTは電流に概ね比例するトルクを出力するため、通電量として、電気モータMTの電流値が用いられる。また、電気モータMTへの供給電圧を増加すれば、結果として電流値が増加されるため、通電量として供給電圧値が用いられ得る。更に、パルス幅変調におけるデューティ比によって供給電圧値が調整されてもよいため、このデューティ比が通電量として用いられてもよい。指示通電量演算ブロックISでは、演算マップZisに従って、目標押圧力Ftの増加に応じて、指示通電量Isが増加するように演算される。なお、指示通電量Isの演算マップZisでは、制動アクチュエータACのヒステリシスが考慮されている。
押圧力フィードバック制御ブロックIFでは、目標押圧力(目標値)Ft、及び、実際の押圧力(検出値)Faに基づいて、補償通電量Ifが演算される。指示通電量Isは目標押圧力Ftに相当する値として演算されるが、制動アクチュエータACの効率変動により目標押圧力Ftと実際の押圧力(押圧力センサFAの検出値)Faとの間に誤差が生じる場合がある。補償通電量Ifは、この誤差を減少(補償)するためのものである。具体的には、押圧力フィードバック制御ブロックIFでは、先ず、目標押圧力Ftと実際の押圧力Faとの偏差(押圧力偏差)hFが演算される。そして、押圧力偏差hFが大きいほど、補償通電量Ifが大きくなるように演算される。補償通電量Ifによって、押圧力の実際値Fa(押圧力センサFAの検出値)が、押圧力の目標値Ftに一致するように制御される。
目標通電量演算ブロックITでは、電気モータMTに対する通電量(例えば、供給電流)の最終的な目標値である目標通電量Itが演算される。目標通電量演算ブロックITでは、指示通電量Isが補償通電量Ifによって調整され、目標通電量Itが演算される。具体的には、指示通電量Isに対して、補償通電量Ifが加えられて、目標通電量Itが演算される(即ち、「It=Is+If」)。
駆動回路DRでは、目標通電量Itに基づいて、電気モータMTへの通電が行われる。駆動回路DRでは、スイッチング素子(MOS-FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成されている。ブリッジ回路を介して、電気モータMTへの通電量が制御されることによって、電気モータMTが駆動される。駆動回路DRには、電気モータMTの実際の通電量Iaを検出する通電量センサIAが備えられる。例えば、通電量センサIAとして、電流センサが採用され、電気モータMTへの供給電流Iaが検出される。
電気モータMTの回転方向(正転方向Da、又は、逆転方向Db)は、通電量(即ち、目標通電量It)の符号(値の正負)に基づいてが決定される。電気モータMTの出力(回転動力)の大きさは、通電量の大きさに基づいてが制御される。例えば、目標通電量Itの符号が正符号(+)である場合(It>0)には、電気モータMTが正転方向Da(押圧力Faの増加方向)に駆動され、目標通電量Itの符号が負符号(-)である場合(It<0)には、電気モータMTが逆転方向Db(押圧力Faの減少方向)に駆動される。目標通電量Itの絶対値が大きいほど、電気モータMTの出力トルクが大きくされ、目標通電量Itの絶対値が小さいほど、出力トルクが小さくされる。
駆動回路DRでは、目標通電量Itに基づいて、パルス幅変調を行うための指示値(目標値)が演算される。例えば、目標通電量It、及び、予め設定された演算マップに基づいて、パルス幅のデューティ比(周期的なパルス波において、その周期に対するオン状態のパルス幅の割合)が決定される。デューティ比(目標値)に基づいて、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子が駆動され、電気モータMTへの通電が行われる。さらに、駆動回路DRでは、所謂、電流フィードバック制御が実行される。通電量センサIAの検出値(例えば、実際の電流値)Iaと、目標通電量Itとの偏差hI(通電量偏差)が演算され、該偏差hIが「0」に近づくように、デューティ比が修正(微調整)される。
コントローラECUには、非循環型のボールねじ機構NJにおいて、非制動作動時に、複数のボールBLを保持する2つのばね部材SA、SBの負荷状態が均等にされるよう、基準角演算ブロックKO、及び、均等化制御ブロックIEが含まれる。
基準角演算ブロックKOにて、実際の押圧力Fa、実際の回転角Ka、及び、公知の方法に基づいて、基準角ko(後述する急速摩耗後の基準角kmを含む)が演算される。「基準角」は、電気モータMTが逆転方向Dbに駆動される際(電気モータMTの逆転作動時)に、押圧力Faが発生している状態(即ち、「Fa>0」の状態)から、押圧力Faが発生しなくなる状態(即ち、押圧力Faが略「0(ゼロ)」の状態)に遷移されるときの回転角Kaである。制動作動において、回転角Kaが基準角よりも大きい状態で電気モータMTが逆転方向Dbに駆動されると、摩擦部材MSが回転部材KTから離れる方向(後退方向)Hbに移動され、発生していた押圧力Faが徐々に減少される。そして、回転角Kaが基準角に達すると、摩擦部材MSは回転部材KTを押圧しなくなり、「Fa≒0(摩擦部材MSと回転部材KTとが無負荷で擦れ合う状態)」となる。更に、電気モータMTが逆転方向Dbに駆動されると、摩擦部材MSと押圧ピストンPNとは分離され、「Fa≒0」の状態が維持される。換言すれば、基準角は、摩擦部材MSと押圧ピストンPNとが接触している状態から、接触しなくなる状態に遷移する際の回転角Kaである。
後述するように、基準角は、摩擦部材MSの摩耗に応じて、その位置が変化する(即ち、変位する)。特に、急速摩耗が発生する状況では、制動作動の開始前と、急速摩耗が生じた後では、基準角の変位は大きい。以下の説明で、基準角についての区別が必要な場合には、「摩耗前の基準角ko」、及び、「摩耗後の基準角km」のように、夫々を区別して称呼する。また、区別が不要である場合には、基準角koは、基準角kmを含む総称である。
均等化制御ブロックIEにて、回転角Kaに基づいて、引き戻し通電量Ieが演算される。引き戻し通電量Ieは、ボール列BLs(ナットねじ溝Mn内で、隙間なく並べられた複数のボールBLの列)を強制的に移動させ、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷状態を等しくするための通電量の目標値である。具体的には、「電気モータMTへの通電が開始されてから終了されるまでの期間(即ち、一連の制動作動中)において、回転角Kaが第1所定角kx以上になったこと」を条件に、急速摩耗の発生が判定される。ここで、第1所定角kxは、摩耗前の基準角koを基準にして設定される所定値(定数)である。例えば、所定角kxは、基準角koに所定値hx(予め設定された正符号の定数)が加算されて決定される(即ち、「kx=ko+hx」)。そして、急速摩耗が発生した場合には、電気モータMTが逆転方向Dbに駆動される際(特に、回転角Kaが急速摩耗後の基準角kmに戻された際)に、負符号(-)の引き戻し通電量Ieが演算される。この引き戻し通電量Ieによって、電気モータMTの回転角Kaが基準角kmよりも更に逆転方向Dbに変化される。該作動が、「引き戻し作動」と称呼される。
一連の制動作動中(「一制動中」ともいう)において、回転角Kaが所定角kx以上となる状態(即ち、急速摩耗の発生)が記憶される。そして、該状況が発生した場合には、押圧ピストンPNが、基準角kmに対応する位置[km]から、更に後退方向Hbに引き戻される。ここで、押圧ピストンPN、該ピストンPNを押圧するねじ機構NJの構成部材(シャフト部材SF、又は、ナット部材NT)等において、基準角ko(km)に対応する位置[ko]([km])が、「初期位置」とも称呼される。なお、減速機GS、及び、ねじ機構NJに諸元(減速比、リード等)は既知であるため、基準角と初期位置との位置的な関係は一義的に定まる。
引き戻し作動が行われた後、回転角Kaが第2所定角kz未満になる場合には、引き戻し通電量Ieが増加され、電気モータMTは、正転方向Daに駆動される。そして、基準角kmに対して逆転方向Dbに変化されていた回転角Kaは、基準角kmにまで戻される。ここで、第2所定角kzは、摩耗後の基準角kmを基準にして設定される所定値(定数)である。例えば、所定角kzは、基準角kmから所定値hz(予め設定された正符号の定数)が減算されて決定される(即ち、「kz=km-hz」)。回転角Kaの増加により、押圧ピストンPNは、摩耗後の初期位置[km]にまで戻される。
以上で説明したような電気モータMTの駆動制御が、「均等化制御」と称呼される。均等化制御によって、ナットねじ溝Mn内のボール列BLsが強制的に移動されるため、急速摩耗等の異常摩耗が発生した後の非制動時(即ち、制動作動の終了後)において、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷(即ち、変形量)が均一にされる。結果、電動制動装置DSの耐久性が向上される。
<非循環型のボールねじ機構NJ>
図2の概略図を参照して、ボールねじ機構NJについて説明する。ボールねじ機構NJは、非循環型のものである。非循環型のボールねじ機構NJは、シャフト部材SF、ナット部材NT、及び、ボール列BLs(ねじ溝内に一列に並んだ多数のボールBL)にて構成される。具体的には、ねじ機構NJでは、シャフト部材SFの外周部に、雄ねじ溝(「シャフトねじ溝」ともいう)Msが螺旋状に設けられる。また、ナット部材NTの内周部には、雌ねじ溝(「ナットねじ溝」ともいう)Mnが螺旋状に設けられる。シャフトねじ溝Msとナットねじ溝Mnとは、ボールBL(例えば、鋼球)を介してかみ合うよう形成(加工)されている。ボールBLは、シャフトねじ溝Msとナットねじ溝Mnとによって構成されるねじ溝内に列をなすように、隙間なく配置される。即ち、ボール溝内にボール列BLsが配置される。一列に並んだボール列BLsの2つの端部(第1端部、第2端部)Ea、Ebは、ナットねじ溝Mnの内部にて、2つのばね部材(第1、第2ばね部材)SA、SBによって保持されている。
例えば、ねじ機構NJでは、電気モータMTの回転動力がシャフト部材SFに入力され、直線動力が、回り止めされたナット部材NTから出力される。逆に、電気モータMTの回転動力がナット部材NTに入力され、直線動力が、回り止めされたシャフト部材SFから出力されてもよい。何れにしても、回転部材KT、及び、ブレーキキャリパCPは車輪WHに固定されているため、シャフト部材SFとナット部材NTとの相対変位が、摩擦部材MSと回転部材KTとの相対変位に対応する。従って、押圧力Faは、シャフト部材SF、及び、ナット部材NTの中心軸線Js(回転軸線でもある)の方向において、シャフト部材SFとナット部材NTとの相対変位(相対的な位置関係)に応じて調整される。以下、直線動力がナット部材NTから出力され、ナット部材NTによって押圧ピストンPN(最終的には、摩擦部材MS)が押される構成を例に説明する。
図2(a)は、制動作動時におけるシャフト部材SFとナット部材NTとの相対的な位置関係を示している。図2(a)において、シャフト部材SF、及び、ナット部材NTの中心軸線Jsの上側(記号(A)にて示す)は、制動状態が適正である場合(「通常制動時」ともいう)を表し、中心軸線Jsの下側(記号(B)にて示す)は、摩擦部材MSが急速に摩耗するような状態(「異常制動時」ともいう)を表している。図2(a)において、状態(1)は摩擦部材MSが略新品であり、経年摩耗していない状態を、状態(2)は、経年摩耗によって摩擦部材MSの摩耗量が大きくなった状態を、夫々表す。また、図2(a)の状態(3)は、経年摩耗していない摩擦部材MSにおいて、1回の制動作動で急激な摩耗が発生した状態を表す。
図2(b)は、ナット部材NTの内周部にて中心軸線Jsを中心として螺旋状に形成されたナットねじ溝Mnを、便宜的に、直線に伸ばしたものを示している。ナットねじ溝Mnの内部では、ボール列BLsの両端部Ea、Ebは、第1、第2ばね部材SA、SBによって保持されている。図2(b)において、第1段は非制動時を、第2段は通常制動時を、第3、第4段は異常制動時を、夫々表す。以下、各状態における第1、第2ばね部材SA、SBの変形状態について説明する。
[α]非制動時
電動制動装置DSが制動作動をしていない場合(即ち、電気モータMTに通電が行われていない状態)では、電気モータMTの回転角Ka(ロータ位置)は基準角度koであり、ナット部材NTは、基準角度koに対応する位置(初期位置)[ko]にある。このとき、第1、第2ばね部材SA、SBの第1、第2端部Ea、Eb(ボール列BLsの両端部でもある)は位置pa、pbにあり、第1、第2ばね部材SA、SBは同じ変形量を有して圧縮されている(図2(b)第1段を参照)。ここで、基準角koは、電気モータMTの逆転作動のときに、発生している押圧力Faが、発生しなくなる状態に遷移される際の回転角Kaであり、摩擦部材MSに接触していた押圧ピストンPNが、摩擦部材MSから離れる際の回転角Kaでもある。
[β]通常制動時(異常摩耗現象の1つである急速摩耗が生じていない制動時)
通常制動時には、電気モータMTが回転駆動され、回転角Kaは、基準角度koから角度kpに変位される。これにより、ナット部材NTは、基準角koに対応する初期位置[ko]から、角度kpに対応する位置[kp](初期位置[ko]から距離Lpだけ離れた位置)に移動される(状態(1)を参照)。ここで、距離Lpは、制動時に生じるブレーキキャリパCP、及び、摩擦部材MSの剛性(ばね定数)に起因する変形量に依存する。ナット部材NTの移動によって、ボール列BLsは移動される。詳細には、第1ばね部材SAの第1端部Ea(ボール列BLsの一方端部)は位置paから位置qaに移動され、第1ばね部材SAは、非制動時に比較して縮められる。一方、第2ばね部材SBの第2端部Eb(ボール列BLsの他方端部)は位置pbから位置qbに移動され、第2ばね部材SBは、非制動時に比較して伸ばされる。従って、第1ばね部材SAの変形量(圧縮量)は、第2ばね部材SBの変形量よりも増加される(図2(b)第2段を参照)。
摩擦部材MSが経年摩耗していくと、初期位置(基準角koに対応する位置)[ko]が、徐々に、前進方向Haに移動される。具体的には、初期位置[ko]は、摩擦部材MSの摩耗量(摩擦部材MSの厚さ方向の寸法減少量)Lmに応じて、前進方向Haに変位される。この状態で通常制動操作が行われる場合には、回転角Kaは、基準角koから角度kqに変位される。これにより、ナット部材NTは、初期位置[ko]から、角度kqに対応する位置[kq](初期位置[ko]から距離Lqだけ離れた位置)に移動される(状態(2)を参照)。ここで、距離Lqは、制動時に生じるブレーキキャリパCP、及び、摩擦部材MSの変形量に依存する。なお、摩擦部材MSが経年摩耗した状態では、摩擦部材MSの厚み寸法が小さくなるため、摩擦部材MSの剛性(ばね定数)が増加される。従って、制動操作の程度が同じであっても、経年摩耗が少ない状態と比較して、ナット部材NTの変位は小さくなる(即ち、「Lq<Lp」)。
摩耗量が小である場合と同様に、ナット部材NTの移動によって、第1ばね部材SAの第1端部Eaは位置paから位置qaに移動され、第1ばね部材SAは、非制動時に比較して縮められる。一方、第2ばね部材SBの第2端部Ebは位置pbから位置qbに移動され、第2ばね部材SBは、非制動時に比較して伸ばされる。従って、第1ばね部材SAの変形量(圧縮量)は、第2ばね部材SBの変形量よりも増加される(図2(b)第2段を参照)。
[γ]異常制動時(一制動において急速摩耗が生じている制動時)
摩擦部材MSが経年摩耗していない状態で、急速摩耗が発生する場合を例に説明する。例えば、「急速摩耗」は、ブレーキフェード現象に起因して発生する場合がある。具体的には、下り坂等で制動が連続されると、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)の素材であるゴム、樹脂等が、それらの耐熱温度を越え、熱分解され、ガス化される。そして、ガスが、摩擦部材と回転部材(例えば、回転部材)との間に入り込み、ガス膜が形成される。このガス膜が、潤滑剤のように作用し、摩擦係数が低下する。該現象が、「ブレーキフェード現象(単に、「フェード」ともいう)」である。フェードが生じると、摩擦部材の素材(特に、母材であり、例えば、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂)が分解されて、脆くなる。このときに、摩擦係数の低下に加え、急激な摩耗(例えば、1回の制動作動において、数mm程度の摩耗)が生じ得る。該摩耗が、「フェード摩耗」と称呼される。
制動作動時に急速摩耗(フェード摩耗)が発生する場合には、電気モータMTは、ブレーキキャリパCP等の剛性に起因する変形量に加え、摩擦部材MSの摩耗量に応じた分を含めて、回転駆動される必要がある。従って、異常制動時には、回転角Kaは、基準角度koから角度krに変位される。これにより、ナット部材NTは、初期位置[ko]から、角度krに対応する位置[kr]に移動される(状態(3)を参照)。上述したように、初期位置[ko]から位置[kr]までの距離は、制動時に生じるブレーキキャリパCP等の変形量に、摩擦部材MSの摩耗量を加えた量である。ナット部材NTの移動によって、ボール列BLsは移動される。詳細には、第1ばね部材SAの第1端部Eaは位置paから位置raに移動され、第2ばね部材SBの第2端部Ebは位置pbから位置rbに移動される。第1、第2ばね部材SA、SBの変形量(圧縮量)は、通常制動時に比較して、極めて大きくなる(図2(b)第3段を参照)。
異常制動時を含む制動作動の終了後には、電気モータMTの回転角Kaは基準角koに向けて戻される。しかしながら、摩擦部材MSは摩耗して、その厚み寸法が減少しているため、摩耗前の基準角koは、摩耗後の基準角kmに変更される。そして、ナット部材NTが、摩耗後の基準角kmに相当する、摩耗後の初期位置[km]にまで戻される。なお、摩耗前の初期位置[ko]と、摩耗後の初期位置[km]との間の距離Lnが、異常制動時に発生した摩擦部材MSの摩耗量(厚み寸法の減少量)である。
ナット部材NTが、摩耗後の初期位置[km]に戻されると、第1ばね部材SAの第1端部Eaは位置raから位置taに移動され、第2ばね部材SBの第2端部Ebは位置rbから位置tbに移動される。このとき、ナット部材NTが初期位置[km]にあっても、第1ばね部材SAの変形量(圧縮量)は、第2ばね部材SBの変形量よりも増加される。つまり、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷状態は、急速摩耗に起因して、初期位置[km]に戻されても均等化されない(図2(b)第4段を参照)。
ボールBLとねじ溝Ms、Mnとの間には摩擦が存在するため、ボール列BLsが容易には転がり難く、第1、第2ばね部材SA、SBが、ねじ溝内にて引っ掛かってしまうことが懸念される。特に、第1、第2ばね部材SA、SBの変形量が増大すると、第1、第2ばね部材SA、SBの引っ掛かりの蓋然性が高まる。第1、第2ばね部材SA、SBの引っ掛かりが生じると、ボール列BLsがねじ溝内を円滑に移動されず、第1、第2ばね部材SA、SBの弾性力によって、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷状態が均等となる位置pa、pbには戻され難くなる。加えて、急速摩耗が発生すると、基準角が変更(角度koから角度kmへの変更)されるため、基準角kmにおいて、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷が不均一である。換言すれば、ねじ溝内で、ボール列BLsの片寄が発生している。
電動制動装置DSでは、耐久性の観点から、該状況が回避され、非制動時に、2つのばね部材SA、SBの負荷状態が均一となることが望ましい。なお、このような課題は、非循環型ボールねじに特有のものであり、循環型ボールねじ(例えば、特開2006-242237号を参照)では生じ得ない。
<基準角演算ブロックKOの処理>
図3のフロー図を参照して、基準角演算ブロックKOの処理について説明する。基準角演算ブロックKOでは、電気モータMTが逆転方向Dbに作動(駆動)される場合において、摩耗後の基準角kmを含む基準角koが、演算されて記憶される。ここで、基準角ko、kmは、押圧力Faが発生している状態から、押圧力Faが発生しなくなる状態(即ち、「Fa≒0」となり、摩擦部材MSと回転部材KTとが無負荷で擦れ合う状態)に変化する状態遷移における回転角Kaである。押圧ピストンPNは、摩擦部材MSを押すようには構成されているが、摩擦部材MSには固定はされていない。従って、基準角ko、kmは、摩擦部材MSと接触していた押圧ピストンPNは、摩擦部材MSから離れる時点の回転角Kaということもできる。
ステップS110にて、押圧力Fa(押圧力センサFAの検出値)、及び、電気モータ(MT)の回転角Ka(回転角センサKAの検出値)を含む各種信号が読み込まれる。
ステップS120にて、回転角Kaの変化に基づいて、「電気モータMTが逆転方向Dbに作動しているか、否か」が判定される。例えば、回転角Kaの時間変化量dK(例えば、演算周期において、前回値に対する今回値の変化量)が演算される。回転角Kaが増加し、変化量dKが正符号(+)である場合には、電気モータMTは正転方向Daに作動していると判定される。この場合、ステップS120は否定され、処理は、ステップS110に戻される。一方、回転角Kaが減少し、変化量dKが負符号(-)である場合には、電気モータMTは逆転方向Dbに作動していると判定される。この場合、ステップS120は肯定され、処理は、ステップS130に進められる。
ステップS130にて、押圧力Fa、回転角Ka、及び、公知の演算方法に基づいて、回転角Kaが逆転方向Dbに変化する場合において、基準角ko(基準角kmを含む)が決定される。例えば、基準角koを決定するための公知の演算方法として、特開2000-018294号、特開2001-225741号、特開2004-124950号、特開2014-177206号、及び、特開2014-177207号のうちの少なくとも1つに記載される方法が採用される。
例えば、ステップS130では、回転角Kaの減少量に対する押圧力Faの減少量が、変化量(傾き)Cpとして演算される。即ち、傾きCpは、押圧力Faの減少量が、回転角Kaの減少量にて除算された値である。そして、傾きCpが所定量cp未満となる際の回転角Kaに基づいて、基準角koが決定される。また、押圧力Faが所定力fz未満となる際の回転角Ka(値kz)に基づいて、基準角koが演算されてもよい。ここで、所定力fzは、予め設定された所定値(定数)である。
ステップS140にて、ステップS130で決定された基準角koが記憶される。記憶された基準角koは、均等化制御に利用される。
<均等化制御の処理>
図4のフロー図を参照して、均等化制御の処理について説明する。均等化制御は、一制動中に急速摩耗が発生した場合において、電気モータMTの回転角Ka(ロータの位置)が基準角度ko、kmに戻される際に、ボール列BLsを強制的に移動させ、非循環型ボールねじ機構NJの第1、第2ばね部材SA、SBの負荷を等しくするためのものである。
ステップS210にて、回転角Ka、押圧力Fa、操作量Ba、目標押圧力Ft、指示通電量Is、目標通電量It、実際の通電量Ia等を含む各種信号が読み込まれる。
ステップS220にて、「電気モータMTの作動が正転作動であるか、否か(「正転判定」という)」が判定される。ここで、「電気モータMTの作動」とは、電気モータMTに通電が行われ、駆動されている状態である。電気モータMTの作動には、押圧力Faが増加されるよう、電気モータMTが前進方向Haに駆動される「正転作動」、押圧力Faが減少されるよう、電気モータMTが後退方向Hbに駆動される「逆転作動」、及び、押圧力Faが一定に維持されるよう、電気モータMTが回転停止される「保持作動」が存在する。これら電気モータMTの作動状態の判定は、回転角Ka、実通電量Ia等の検出値に基づいて行われる。また、回転角Ka、実通電量Ia等は、操作量Baに応じた目標値(操作量Baを含む)に基づく制御結果であるため、操作量Baから回転角Kaに至るまでの状態量(制御変数)に基づいて、電気モータMTの作動状態が判定されてもよい。例えば、該状態量としては、制動操作量Ba、目標押圧力Ft、指示通電量Is、目標通電量It、実通電量Ia、実回転角Ka等が該当する(図1を参照)。
電気モータMTが正転作動している場合には、ステップS220は肯定され、処理は、ステップS230に進められる。一方、電気モータMTが保持作動、又は、逆転作動している場合には、ステップS220は否定され、処理は、ステップS250に進められる。
ステップS230にて、回転角Kaに基づいて、「回転角Kaが、所定角kx以上であるか、否か」が判定される。ここで、所定角kx(第1所定角)は、均等化制御を実行判定を行うためのしきい値であり、予め設定された所定値(定数)である。「Ka≧kx」であり、ステップS230が肯定される場合には、処理は、ステップS240に進められる。一方、「Ka<kx」であり、ステップS230が否定される場合には、処理は、ステップS210に戻される。
ステップS240にて、制御フラグFLが「1」に設定される。ここで、制御フラグFLは、均等化制御の要否を指示するためのものである。制御フラグFLでは、「0」によって「均等化制御が不要であること」が指示され、「1」によって「均等化制御が必要であること」が指示される。つまり、「FL=0」である場合には、電気モータMTが逆転作動される際の均等化制御(後述する引き戻し処理)は実行されない。一方、「FL=1」である場合には、電気モータMTが逆転作動される際に均等化制御が実行される。換言すれば、制御フラグFLによって、一制動中(電気モータMTへの通電が開始されてから終了されるまでの期間)において、「Ka≧kx」の発生(即ち、急速摩耗の発生)が記憶される。そして、該状態が発生した場合には、均等化制御が実行される。なお、制御フラグFLは、初期値として「0」に設定されている。
ステップS250にて、「電気モータMTの作動が逆転作動であるか、否か」が判定される。ステップS220と同様に、電気モータMTの逆転作動は、操作量Baから回転角Kaに至るまでの状態量(制御変数)に基づいて判定される。電気モータMTが保持作動されている場合には、ステップS250は否定され、処理は、ステップS210に戻される。一方、電気モータMTが逆転作動されている場合には、ステップS250は肯定され、処理は、ステップS260に進められる。
ステップS260にて、制御フラグFLに基づいて、「制御フラグFLは「1」であるか、否か」が判定される。電気モータMTが逆転作動される前に回転角Kaが所定角kx未満である状態が継続され、「FL=0」である場合には、ステップS260は否定され、処理は、ステップS210に戻される。一方、電気モータMTが逆転作動される前に一度でも回転角Kaが所定角kx以上になり、「FL=1」である場合には、ステップS260は肯定され、処理は、ステップS260に進められる。
ステップS270にて、回転角Kaに基づき、「回転角Kaが基準角km以下であるか、否か」が判定される。「Ka>km」であり、未だ、回転角Kaが基準角kmにまで戻されていない場合には、ステップS270は否定され、処理は、ステップS210に戻される。一方、「Ka≦km」であり、ステップS270が肯定される場合には、処理は、ステップS280に進められる。
ステップS280にて、均等化制御の一部である、引き戻し作動が実行される。引き戻し作動では、回転角Kaが、基準角kmよりも更に逆転方向Dbに変位され、その後に、基準角kmに戻されるよう、引き戻し通電量Ieが演算される。ここで、引き戻し通電量Ieは、均等化制御(特に、引き戻し作動)における通電量の目標値である。「Ka≦km」の領域では、目標押圧力Ftは「0」であるため、引き戻し通電量Ieが、目標通電量Itとして演算される(即ち、「It=Ie」)。引き戻し作動では、実際の通電量Iaが、引き戻し通電量Ieに一致するように制御が行われる。均等化制御の引き戻し作動によって、ナットねじ溝Mn内のボール列BLsが、強制的に移動され、万一、第1、第2ばね部材SA、SBに引っ掛かりが発生していたとしても、これが解消される。結果、制動作動が終了された後の非制動時において、第1、第2ばね部材SA、SBの負荷状態が均等にされるため、電動制動装置DSの耐久性が向上され得る。
例えば、引き戻し作動において、回転角Kaの正転方向Da、逆転方向Dbの回転方向変化(電気モータMTの駆動方向の変化)が複数回繰り返されてもよい。つまり、回転角Kaが、「基準角kmよりも逆転方向Dbに変位」→「その後、基準角kmに復帰」→「基準角kmよりも逆転方向Dbに再移動」→「その後、基準角kmに再復帰」という順で、電気モータMTの正転作動と逆転作動とが繰り返される。これにより、より効果的に第1、第2ばね部材SA、SBの引っ掛かりが解消され得る。
<均等化制御の動作>
図5の時系列線図を参照して、均等化制御の動作について説明する。図5(a)は、通常制動時であり、均等化制御が実行されない場合を示し、図5(b)は、異常制動時であり、均等化制御が実行される場合を示している。
先ず、図5(a)を参照して、均等化制御が実行されない場合について説明する。時点t0にて、制動操作部材BPの操作が開始される。時点t0以前は、制御フラグFLは、初期値として「0」に設定されている。
時点t0にて、制動操作部材BPの操作が開始され、操作量Baが増加される。これに応じて、目標通電量Itが増加され、電気モータMTへの通電が開始され、その量が増加される。時点t0が、一連の制動作動(一制動)の開始時点である。通電量It(目標値)、Ia(実際値)の増加に伴って、回転角Kaが正転方向Daに増加される。このとき、「Ka<kx」の状態が維持されているため、制御フラグFLは、「0(均等化制御が不要である状態)」のままである。なお、図5(a)の上から2段目の「It、Ia」に係る線図においては、実際の通電量Iaが、通電量フィードバック制御によって、目標通電量Itに一致するように制御されるため、目標値Itと検出値Iaとは重なっている。
時点t1からは、制動操作部材BPが保持され、操作量Baが値saにて一定にされる。これに応じて、目標通電量It(結果、実際の通電量Ia)は、アクチュエータACのヒステリシスが考慮され、値iaから、値ibに減少される。操作量Baの維持に応じて、時点t1以降は、回転角Kaは値kaに維持される。
時点t2にて、制動操作部材BPが戻され、操作量Baが減少される。目標通電量Itにおいては、アクチュエータACのヒステリシスが補償されるよう、目標通電量It(結果、実際の通電量Ia)が、値ibから値icまで急減されてから、減少される。これに応じて、回転角Kaが、逆転方向Dbに変化(減少)される。時点t3以降は、負符号(-)の目標通電量Itが指示される。これは、減速機GS、ねじ機構NJ等の動力伝達機能の摩擦損失を補償するためである。
時点t4にて、制動操作部材BPの操作が停止され、操作量Baが「0」にされる。時点t4にて、回転角Kaが、基準角koに達する。これにより、目標通電量Itが「0」にされ、電気モータMTへの通電が停止され、電気モータMTの作動が停止される。時点t4が、一連の制動作動(1回の制動作動)の終了時点である。
次に、図5(b)を参照して、均等化制御の動作について説明する。時点u0から、制動操作部材BPの操作が開始され、操作量Baが増加される。これに応じて、目標通電量Itが増加され、電気モータMTへの通電が開始され、通電量It、Iaが増加される。線図において、通電量It、Iaは一致している。時点u0が、一連の制動作動(1つの制動作動)の開始時点である。通電量It、Iaの増加に従って、回転角Kaが正転方向Daに増加される。
時点u1にて、制動操作部材BPが保持され、操作量Baが値saにて一定にされる。これに応じて、通電量It、Iaは、アクチュエータACのヒステリシスを補償するよう、値iaから、値ibに減少されて維持される。操作量Baが一定に維持されるため、時点u1以降は、回転角Kaは値kaに維持される。
時点u2にて、フェード摩耗が発生する。摩擦部材MSが急激に摩耗するため、時点u2からは、「Ba=sa」に応じた押圧力Faが発生するよう、押圧力フィードバック制御によって通電量It、Iaが増加され、回転角Kaが増加される。このため、時点u2からは、制動操作部材BPが保持され、操作量Baが一定に保たれているにもかかわらず、電気モータMTが正転方向Daに作動され、回転角Kaが増加される。
時点u3にて、回転角Kaが所定角(第1所定角)kx以上となり、ステップS230の条件が満足される。これにより、初期値として「0」に維持されていた制御フラグFLが、「1」に遷移される。即ち、上記の一制動中(電気モータMTへの通電開始から終了までの期間)において急速摩耗が発生し、「Ka≧kx」の状態が生じたことが、制御フラグFLによって記憶される。なお、第1所定角kzは、摩耗前の基準角koを基準として、予め設定される所定値(定数)である。
時点u4にて、制動操作部材BPが戻され、操作量Baが減少される。アクチュエータACのヒステリシスが補償され、通電量It、Iaが、値idから値ieに急減され、減少される。これに応じて、電気モータMTが逆転方向Dbに駆動され、回転角Kaが、角度kdから減少される。なお、角度kaと角度kdとの差hm(変位)が、摩擦部材MSの摩耗量に対応している。
時点u5にて、制動操作部材BPの操作が終了され、操作量Baが「0」にまで戻される。時点u5にて、回転角Kaが、摩耗後の基準角kmに達し、ステップS270の条件が肯定される。ここで、摩耗後の基準角kmは、摩耗前の基準角koよりも変位hm分だけ、正転方向Daに変化している。ステップS270の条件(即ち、電気モータMTへの通電の開始から終了までの期間中に、実際の回転角Kaが第1所定角kx以上になったこと)は既に満足されているため、時点u5にて、均等化制御(特に、引き戻し作動)が開始される。引き戻し作動では、目標通電量It(即ち、引き戻し通電量Ie)が、電気モータMTの逆転方向Dbの駆動に対応する負符号(-)の値imに維持される。「It=im」の維持によって、電気モータMTの逆転駆動は継続され、回転角Kaは、基準角kmよりも更に逆転方向Dbに変位される。
時点u6にて、実際の回転角Kaが第2所定角kzに到達すると、これ以降は、電気モータMTが正転方向Daに駆動され、回転角Kaが増加される。ここで、第2所定角kzは、摩耗後の基準角kmを基準として、設定される所定値(定数)である。時点u6からは、通電量It、Iaが増加され、電気モータMTが正転方向Daに駆動され、回転角Kaが基準角kmに向けて戻される。そして、回転角Kaが基準角kmになった時点u7にて、均等化制御は終了され、電気モータMTへの通電は停止される。均等化制御の終了時点である時点u7にて、制御フラグFLは、「1」から「0」にリセットされる。従って、次回の一連の制動作動の開始時においては、制御フラグFLは初期値として「FL=0」に設定されている。
時点u5~u7までの動作が、ステップS280の引き戻し作動に該当する。この引き戻し作動によって、ボール列BLsが強制的に移動され、ボール列BLsの片寄が解消されるため、2つのばね部材SA、SBの負荷状態が略等しくされる。
均等化制御の引き戻し作動において、電気モータMTの正転/逆転が繰り返されてもよい。この場合には、時点u5~u7に対応する処理が複数回に亘って繰り返される。繰り返し作動によって、ばね部材SA、SBの負荷状態の均等化が、より効率的に達成され得る。
<電動制動装置DSの第2実施形態>
図6の概略図を参照して、電動制動装置DSの第2の実施形態について説明する。図1を参照して説明した電動制動装置DSでは、電気モータMTの動力が、制動液BF等の動力伝達媒体を介さず、機械的に、直接、摩擦部材MSに伝達され、摩擦部材MSが回転部材KTに押圧された。これに代えて、第2の実施形態に係る電動制動装置DSでは、電気モータMTの動力が、制動液BFを介して、摩擦部材MSに伝達されることによって、摩擦部材MSが回転部材KTに押圧される。つまり、第2の実施形態では、制動液BFが動力伝達媒体として使用されて、制動力Fxが発生される。
上述したように、同一記号を付された構成部材、要素、信号等は同一機能のものである。2つの制動系統に係る記号の末尾に付された添字「1」、「2」は包括記号であって、「1」が第1制動系統BK1を、「2」が第2制動系統BK2を表す。ここで、添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、その記号は総称を表す。また、部材の運動・移動の方向において、前進方向Haは正転方向Daに対応し、これらは、押圧力Faが増加する方向に一致している。また、前進方向Haとは反対の後退方向Hbは、正転方向Daとは反対の逆転方向Dbに対応し、これらは、押圧力Faが減少する方向に一致している。
電動制動装置DSを備える車両には、制動操作部材BP、回転部材KT、ブレーキキャリパCPの他に、ホイールシリンダCW、マスタリザーバRV、及び、マスタシリンダCMが設けられる。
第1の実施形態と同様に、電動制動装置DSでは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)が操作されることに基づいて、電気モータMTを動力源にして、車輪WHに制動力Fxが発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(ブレーキディスク)KTが固定され、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパCPが配置される。
ブレーキキャリパCPには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内にはピストンが設けられる。このピストンの移動によって、ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加される。そして、制動液圧Pwによって、摩擦部材(ブレーキパッド)MSが、回転部材KTに押圧力Faにて押圧される。即ち、制動液BFが動力伝達媒体として利用されることによって、電気モータMTの回転動力によって制動液圧Pwが発生され、制動液圧Pwが押圧力Faとして伝達される。
マスタシリンダCMに制動液BFを補給するよう、マスタリザーバ(「大気圧リザーバ」ともいう)RVが設けられる。マスタリザーバRVの内部には、制動液BFが貯蔵されている。
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッドRD等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCMとして、タンデム型のものが採用されている。マスタシリンダCMの内部は、2つのマスタピストンPH、PGによって、2つの液圧室(第1、第2液圧室)Rm1、Rm2に区画されている。
タンデム型マスタシリンダCMの第1液圧室Rm1と第1ホイールシリンダCW1とは、第1接続路HS1によって接続されている。また、第2液圧室Rm2と第2ホイールシリンダCW2とは、第2接続路HS2によって接続されている。第1、第2接続路HS1、HS2の一方端部は、マスタシリンダCMの第1、第2液圧室Rm1、Rm2に接続される。第1、第2接続路HS1、HS2の他方端部は2つに分岐され、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に接続される。
≪電動制御装置DS≫
電動制動装置DSは、制動操作量センサBA、ストロークシミュレータSS、シミュレータ弁VS、流体ユニットHU、及び、コントローラECUにて構成される。
制動操作量センサBAによって、運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baが検出される。具体的には、制動操作量センサBAとして、マスタシリンダCMの液圧室Rm内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm(=Pm1、Pm2)を検出するマスタシリンダ液圧センサPM(=PM1、PM2)、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサFPのうちの少なくとも1つが採用される。
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SSが、制動操作部材BPに操作力Fpを発生させるために設けられる。マスタシリンダCM(特に、第2液圧室Rm2)とシミュレータSSとの間には、シミュレータ弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、開位置と閉位置とを有する、常閉型の電磁弁(オン・オフ弁)である。電動制動装置DSが起動されると、シミュレータ弁VSが開弁され、マスタシリンダCMとシミュレータSSとは連通状態にされる。
流体ユニットHUは、第1、第2分離弁VM1、VM2、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2、調圧ユニットYC、第1、第2連絡弁VR1、VR2、第1、第2制動液圧センサPW1、PW2を含んで構成される。流体ユニットHUが、上述した制動アクチュエータACに相当する。
第1、第2分離弁VM1、VM2(=VM)が第1、第2接続路HS1、HS2(=HS)に設けられる。第1、第2分離弁VM1、VM2は、開位置と閉位置とを有する、常開型の電磁弁(オン・オフ弁)である。電動制動装置DSの起動時に、分離弁VMは閉弁され、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは遮断状態(非連通状態)にされる。
分離弁VM1、VM2のマスタシリンダCMの側には、第1、第2液圧室Rm1、Rm2の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm1、Pm2を検出するよう、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。第1、第2マスタシリンダ液圧Pm1、Pm2は、実質的には同一であるため、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2のうちの何れか1つは省略することができる。
調圧ユニットYCは、電気モータMT、減速機GS、非循環型ボールねじ機構NJ、調圧ピストンPC、調圧シリンダCC、及び、制動液圧センサPW(=PW1、PW2)にて構成される。
電気モータMTの回転動力が、減速機GSによって、減速されて、非循環型ボールねじ機構NJに伝達される。例えば、小径歯車が、電気モータMTの出力軸に固定される。小径歯車が、大径歯車にかみ合わされ、その回転軸がねじ機構NJのシャフト部材SFに固定される。非循環型ねじ機構(回転・直動変換機構)NJは、シャフト部材SF、ナット部材NT、及び、ボール列BLsにて構成される。非循環型ボールねじ機構NJにて、減速機GSの回転動力が、調圧ピストンPCの直線動力に変換される。
例えば、ねじ機構NJでは、電気モータMTの回転動力がシャフト部材SFに入力され、直線動力が、回り止めされたナット部材NTから出力される。逆に、電気モータMTの回転動力がナット部材NTに入力され、直線動力が、回り止めされたシャフト部材SFから出力されてもよい。何れにしても、ねじ機構NJによって、電気モータMTの回転動力が、調圧ピストンPCの直線動力に変換されて出力される。
調圧ピストンPCが、調圧シリンダCCの内孔に挿入され、調圧室Rcが形成されている。調圧室Rcは、第1、第2連絡路HR1、HR2を介して、第1、第2接続路HS1、HS2に接続される。調圧ピストンPCが移動されることによって、調圧室Rcの体積が変化する。このとき、第1、第2連絡弁VR1、VR2が開弁され、第1、第2分離弁VM1、VM2が閉弁されているため、制動液BFは、第1、第2液圧室Rm1、Rm2には戻されず、第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2に対して移動される。
調圧シリンダCCは、リザーバ路HVを介して、マスタリザーバRVに接続される。電気モータMTに通電が行われず、調圧ピストンPCが、その初期位置(基準角度koに対応する位置)[ko]にある場合には、調圧シリンダCCとマスタリザーバRVとは連通状態にされ、調圧室Rcは大気圧にされている。
電気モータMTが正転方向Daに回転駆動されると、調圧室RcとマスタリザーバRVとの連通状態が遮断される。そして、調圧シリンダCCの調圧室Rcの体積が減少され、制動液圧Pwが増加される。一方、電気モータMTが逆転方向Dbに回転駆動されると、調圧室Rcの体積が増加され、制動液BFが第1、第2ホイールシリンダCW1、CW2から調圧シリンダCCに戻される。これによって、制動液圧Pwが減少される。なお、調圧室Rc内には、戻しばね(弾性体)が設けられ、電気モータMTへの通電が停止された場合には、調圧ピストンPCは、その初期位置に戻される。
第1、第2接続路HS1、HS2には、第1、第2制動液圧Pw1、Pw2を検出するよう、第1、第2制動液圧センサPW1、PW2が設けられる。第1、第2制動液圧Pw1、Pw2は実質的には同じであるため、第1、第2制動液圧センサPW1、PW2のうちの一方は省略されてもよい。
流体ユニットHUとホイールシリンダCWとの間には、アンチロックブレーキ制御等の各ホイールシリンダCWで、独立に制動液圧Pwが調整可能なように、液圧モジュレータMJが設けられる。液圧モジュレータMJでは、各ホイールシリンダCW用に常開型のインレット弁と常閉型のアウトレット弁との組で構成されている。
コントローラ(電子制御ユニット)ECUによって、電気モータMT、電磁弁VM、VR、VS、及び、液圧モジュレータMJ(特に、インレット弁、アウトレット弁)が制御される。コントローラECUには、マイクロプロセッサ等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサにプログラムされた制御アルゴリズムとが含まれている。コントローラECUには、第1の実施形態と同様の均等化制御ブロックIE等を含む処理がプログラムされている。
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、電気モータMTが、基準角koに向けて、逆転方向Dbに駆動される際に均等化制御が実行される。均等化制御では、電気モータMTへの通電が開始されてから終了されるまでの期間において、電気モータMTの回転角Kaが第1所定角kx(予め設定された定数)以上になる場合には、このことが、制御フラグFLにて記憶される。そして、電気モータMTが逆転方向Db(正転方向Daとは反対の方向)に駆動される際に、回転角Kaが、基準角ko(制動液圧Pw(即ち、押圧力Fa)が発生している状態から発生しなくなる状態に対応する回転角Ka)よりも更に逆転方向Dbに変化される。その後、回転角Kaが第2所定角kz未満になると、電気モータMTが正転方向Daに駆動され、回転角Kaは再び基準角koに戻される。
第2の実施形態でも、「Ka≧kx」の状態が発生するような急速摩耗時は、上記の均等化制御が実行される。均等化制御によって、第1の実施形態と同様の効果を奏する。具体的には、急速摩耗時には、第1、第2ばね部材SA、SBの変形量が大となるため、第1、第2ばね部材SA、SBが、ナットねじ溝Mn等に引っ掛かり易いが、均等化制御により、ボール列BLsが強制的に移動されるため、第1、第2ばね部材SA、SBの引っ掛かりが解消され得る。
以下、第1の実施形態に係る電動制動装置DSとの相違点について説明する。
[1]摩耗における調圧ピストンPCの初期位置[ko]
第2の実施形態に係る電動制動装置DSでは、制動作動の非実行時であって調圧ピストンPCが初期位置[ko]に位置する場合に、制動液BFがマスタリザーバRVから供給される。このため、図2を参照して説明したような、摩擦部材MSの摩耗(経年摩耗、急速摩耗を含む)に起因する初期位置[ko]の前進方向Haへの移動(変化)は生じない。つまり、第2の実施形態に係る電動制動装置DSでは、調圧ピストンPCの初期位置[ko]は常に同じ位置である。
[2]基準角koの演算
上述したように、第2の実施形態に係る電動制動装置DSでは、調圧ピストンPCの初期位置[ko]は常に同じ位置であるため、図3を参照して説明したような、基準角決定の演算は不要である。例えば、調圧シリンダCC内に、調圧ピストンPC用のストッパが設けられ、調圧ピストンPCが該ストッパに当接する位置が初期位置[ko]として設定される。なお、引き戻し作動が行われる場合には、調圧ピストンPCのストッパよりも後退方向Hbの移動は、ストッパに阻まれる。従って、第2の実施形態の引き戻し作動では、調圧ピストンPCとねじ機構NJ(ナット部材NT、又は、シャフト部材SF)とが離間される。
[3]制動液BFの外部漏れ
第2の実施形態に係る電動制動装置DSでは、電気モータMTの動力伝達に制動液BFが利用されるが、制動液BFが電動制動装置DSの外部に漏れ出す状況(「外部漏れ」という)が発生した場合にも急速摩耗と同様の現象が生じる。制動液BFの外部漏れが発生すると、一制動中において、調圧ピストンPCは前進方向Haに移動され続ける。このような状況は、図2を参照して説明した異常摩耗が発生した状況と同様に、第1、第2ばね部材SA、SBの変形量が過大となり得る。電動制動装置DSでは、一制動中(電気モータMTへの通電開始から終了までの期間)において、回転角Kaが所定角kx以上となる場合には均等化制御が実行されるため、制動液BFの外部漏れが発生している状況においても、急速摩耗発生時と同様の効果を奏する。
<他の実施形態>
上記の実施形態では、摩擦部材MSとしてブレーキパッド、回転部材KTとしてブレーキディスクが採用される構成(所謂、ディスク型ブレーキの構成)が例示された。これに代えて、摩擦部材MSとしてブレーキライニング、回転部材KTとしてブレーキドラムが採用される構成(所謂、ドラム型ブレーキの構成)に、上記の均等化制御が適用されてもよい。ドラム型ブレーキであっても、ディスク型ブレーキと同様の効果を奏する。
DS…電動制動装置、WH…車輪、BP…制動操作部材、CW…ホイールシリンダ、ECU…コントローラ(電子制御ユニット)、MS…摩擦部材、KT…回転部材、NJ…非循環型ボールねじ機構、SF…シャフト部材、NT…ナット部材、BL…ボール、BLs…ボール列、SA…第1ばね部材、SB…第2ばね部材、Ms…シャフトねじ溝(雄ねじ溝)、Mn…ナットねじ溝(雌ねじ溝)、MT…電気モータ、KA…回転角センサ、Ka…回転角(検出値)、ko…摩耗前の基準角、[ko]…摩耗前の初期位置(基準角koに対応する各部材位置)、km…摩耗後の基準角、[km]…摩耗後の初期位置(基準角kmに対応する各部材位置)、FA…押圧力センサ、Fa…実際の押圧力(検出値)、PW…制動液圧センサ、Pw…調整液圧(検出値)、PN…押圧ピストン、PC…調圧ピストン、BF…制動液。


Claims (2)

  1. 車両の車輪に固定された回転部材に対する摩擦部材の押圧力を、電気モータによって制御して、前記車輪の制動力を調整する車両の電動制動装置であって、
    前記電気モータの回転動力を前記摩擦部材の直線動力に変換するボールねじ機構と、
    前記電気モータを正転方向に駆動して前記押圧力を増加し、前記電気モータを前記正転方向とは反対の逆転方向に駆動して前記押圧力を減少するコントローラと、
    を備え、
    前記ボールねじ機構は、その両端部が2つのばね部材で保持されるボール列を含み、
    前記コントローラは、
    前記電気モータへの通電を開始してから終了するまでの期間において、前記電気モータの回転角が所定角以上になる場合には、前記電気モータを前記逆転方向に駆動する際に、前記押圧力が発生している状態から発生しなくなる状態に遷移する基準角よりも更に前記逆転方向に前記回転角を変化させる、車両の電動制動装置。
  2. 請求項1に記載の車両の電動制動装置において、
    前記コントローラは、
    前記回転角を前記基準角よりも前記逆転方向に変化させた後に、前記回転角を前記基準角に戻す、車両の電動制動装置。
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