JP7419707B2 - 吸湿吸水シーラントフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、包装体内の内容物収容部が高加湿領域から低加湿領域までのどのような湿度環境であっても、収容された内容物が吸湿吸水によって品質劣化を生じることを抑制できるように、該内容物収容部の湿度をコントロールすることができる、シーラントフィルムに関する。
本発明によるシーラントフィルムは、様々な分野の製品に適用することができ、特に、食品や医薬品の品質劣化や、車載用のネジ、シャフト、金属板、等の金属製品、及び電気部品等の劣化や錆発生を抑制することができ、これらを収容する為の包装材料用のシーラントフィルムとして好適に用いることができる。
金属材料や金属を用いた部品等からなる金属製品の輸送や長期保管を目的とした包装袋が開発されつつあり、内容物である金属製品の機能や性質を維持できるように、より高く安定した防錆性やバリア性を有し、且つ簡素な層構成で簡略な製造工程によって製造し得る包装袋が求められている。
金属製品内容物への防錆を目的として、常温で揮発して防錆効果を発揮する気化性の高い防錆剤を樹脂に含有させた包装用積層体が、特許文献1~3で提案されているが、外装による密閉が必要であったり、気化した防錆剤が内容物に付着した場合に、内容物が劣化したり機能的障害を生じたり等、防錆効果以外の影響が懸念され、除去するにも手間が煩雑であるために用途が限定されており、揮発性の防錆剤を用いない防錆積層体が望まれている。
特開2010-254350号公報 特開2007-308726号公報 特開2010-052751号公報
本発明は、上述の問題を解決し、製造適正に優れ、簡易な層構成でありながら、内容物収容部の水分を吸着して、湿度を下げて、結露が発生し難くし、包装された内容物の水分による劣化を抑制し、且つヒートシール性に優れた吸湿吸水シーラントフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、特定の吸湿吸水剤とヒートシール性樹脂を含有する吸湿吸水シーラントフィルムが、上記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.吸湿吸水剤とヒートシール性樹脂を含有する吸湿吸水シーラントフィルムであって、
吸湿吸水剤は、無機系吸湿吸水剤と有機系吸湿吸水剤とを含有し、
該吸湿吸水剤を含有する層中の、該吸湿吸水剤の含有量が、0.1質量%以上、50質量%以下であり、
該吸湿吸水シーラントフィルムの、片面または両面の表面が、ヒートシール性を有する層である、
吸湿吸水シーラントフィルム。
2.前記吸湿吸水シーラントフィルムが、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を含
有する無機有機系吸湿吸水層を有する、
上記1に記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
3.前記吸湿吸水シーラントフィルムが、無機系吸湿吸水剤を含有する無機系吸湿吸水層と、有機系吸湿吸水剤を含有する有機系吸湿吸水層とを有する、
上記1または2に記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
4.前記無機系吸湿吸水剤が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、無機酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、
上記1~3の何れかに記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
5.前記有機系吸湿吸水剤が、(メタ)アクリル系樹脂、および/またはPVA系樹脂を含有する、
上記1~4の何れかに記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
本発明の吸湿吸水シーラントフィルムは、製造適正に優れ、簡易な層構成でありながら、内容物収容部の水分を吸着して、湿度を下げて、結露が発生し難くし、包装された内容物の水分による劣化を抑制し、ヒートシール性に優れた吸湿吸水シーラントフィルムを提供することができる。
本発明の吸湿吸水シーラントフィルムの層構成の一例を示す概略的断面図である。 本発明の吸湿吸水シーラントフィルムの層構成の別態様の一例を示す概略的断面図である。 本発明の吸湿吸水シーラントフィルムの層構成のまた別態様の一例を示す概略的断面図である。 本発明の吸湿吸水シーラントフィルムの層構成のさらにまた別態様の一例を示す概略的断面図である。
各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
また、各図においては省略されているが、各層の間に接着剤層を設けることもできる。
さらに、必要に応じて、各層間の接着強度(密着強度)を強固にするために、各層の積層面に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理、サンドブラスト処理等のなどの物理的な表面処理や、化学薬品を用いた酸化処理などの化学的な表面処理を予め施しておくこともできる。
本発明の吸湿吸水シーラントフィルムについて、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明においては、フィルムとシートとは、同義として扱う。
≪吸湿吸水シーラントフィルム≫
本発明の吸湿吸水シーラントフィルムは、少なくとも、吸湿吸水剤とヒートシール性樹脂とを含有する。
吸湿吸水剤は、無機系吸湿吸水剤と有機系吸湿吸水剤とを含有することが好ましい。
無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤は、ともに、低加湿環境から高加湿環境での吸湿効果を示すが、相対的な特徴をそれぞれ有する。
例えば、有機系吸湿吸水剤は、低加湿環境よりも高加湿環境での方が吸湿効果が高く、
且つ、吸湿量が高い場合があり、一方、無機系吸湿吸水剤は、吸湿量は有機系吸湿吸水剤よりも少ないが、低加湿環境での効果的な吸湿効果を示す場合があり、このような場合には空間内を相対湿度が10%以下のような絶対乾燥状態に調湿し易い。
上記の異なる相対的特徴を有する有機系吸湿吸水剤と無機系吸湿吸水剤とを併用することで、相乗効果によって、低加湿環境から高加湿環境の幅広い加湿環境下においても、吸湿吸水シーラントフィルムは、包装された収容物空間内の湿度を容易にコントロールし得る。
吸湿吸水シーラントフィルムは、吸湿吸水剤を含有することによって、水分を吸収し、ヒートシール性樹脂を含有していることによってヒートシール性を示すことができる。
吸湿吸水シーラントフィルムは、吸湿吸水剤とヒートシール性樹脂とを含有する1層で構成されていてもよく、吸湿吸水剤を含有する吸湿吸水層と、ヒートシール性樹脂を含有するヒートシール層等の多層で構成されていてもよい。
さらに、吸湿吸水層は、無機系吸湿吸水剤と有機系吸湿吸水剤とを含有する無機有機系吸湿吸水層であってもよく、無機系吸湿吸水剤を含有する無機系吸湿吸水層と有機系吸湿吸水剤を含有する有機系吸湿吸水層との組み合わせであってもよい。
また、吸湿吸水シーラントフィルム中には、無機有機系吸湿吸水層、無機有機系吸湿吸水層、有機系吸湿吸水層の3種の層があってもよく、各々の層は2層以上あってもよい。
吸湿吸水シーラントフィルムは、ヒートシール性を有する為に、吸湿吸水シーラントフィルムの片面または両面の表面の層は、ヒートシール性樹脂を含有して、ヒートシール性を有する層であることが好ましい。
そして、吸湿吸水シーラントフィルムを構成する各層は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
上記の作用によって、吸湿吸水シーラントフィルムまたは吸湿吸水シーラントフィルムを用いた包装材料は、内容物収容部の水分量を低減し、結露を抑制することができる。
吸湿吸水シーラントフィルムは、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。その含有量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を含有することができる。
吸湿吸水シーラントフィルムの厚みに特に制限は無いが、25μm以上、200μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと剛性が低すぎたり、破れやすかったり、充分な支持性や吸湿吸水性やヒートシール性のバランスを発揮し難くなり易く、上記範囲よりも厚いと剛性が強すぎて、包装材料や包装資材としての使い勝手が悪くなり易い。
<吸湿吸水層>
吸湿吸水層は、吸湿吸水剤を含有する層であり、吸湿吸水剤と、吸湿吸水剤を分散させるための熱可塑性樹脂とを含有する。また、吸湿吸水層は、ヒートシール性樹脂を含有していてもよく、十分なヒートシール性を有していれば、同時にヒートシール層にもなり得る。
吸湿吸水層は、含有する吸湿吸水剤の種類によって、無機系吸湿吸水剤を含有する無機系吸湿吸水層と、有機系吸湿吸水剤を含有する有機系吸湿吸水層と無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を含有する無機有機系吸湿吸水層とに分類される。
吸湿吸水層は、無機有機系吸湿吸水層のみであってもよく、無機系吸湿吸水層および有機系吸湿吸水層の組み合わせであってもよく、無機有機系吸湿吸水層と無機系吸湿吸水層と有機系吸湿吸水層の3種の組み合わせであってもよい。また、これらの各層は、2層以
上含まれていてもよい。
吸湿吸水シーラントフィルム中のこれらの無機系吸湿吸水層および有機系吸湿吸水層の積層順に特に制限は無い。
[無機系吸湿吸水層]
無機系吸湿吸水層は、無機系吸湿吸水剤を含有する層であり、無機系吸湿吸水剤と、無機系吸湿吸水剤を分散させるための熱可塑性樹脂とを含有する。また、無機系吸湿吸水層は、ヒートシール性樹脂を含有していてもよく、十分なヒートシール性を有していれば、同時にヒートシール層にもなり得る。
無機系吸湿吸水剤を含有する層(無機系吸湿吸水層)中の、無機系吸湿吸水剤の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、2質量%以上、50質量%以下がより好ましい。
無機系吸湿吸水層の厚みに特に制限は無いが、10μm以上、100μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと吸湿吸水効果を充分に発揮し難く、上記範囲よりも厚くても吸湿吸水効果はそれほど向上せず、吸湿吸水シーラントフィルムの剛性が強くなりすぎて、使い勝手が悪くなり易い。
[有機系吸湿吸水層]
有機系吸湿吸水層は、有機系吸湿吸水剤を含有する層であり、有機系吸湿吸水剤と、有機系吸湿吸水剤を分散させるための熱可塑性樹脂とを含有する。また、有機系吸湿吸水層は、ヒートシール性樹脂を含有していてもよく、十分なヒートシール性を有していれば、同時にヒートシール層にもなり得る。
有機系吸湿吸水剤を含有する層(有機系吸湿吸水層)中の、有機系吸湿吸水剤の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、2質量%以上、50質量%以下がより好ましい。
有機系吸湿吸水層の厚みに特に制限は無いが、10μm以上、100μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと吸湿吸水効果を充分に発揮し難く、上記範囲よりも厚くても吸湿吸水効果はそれほど向上せず、吸湿吸水シーラントフィルムの剛性が強くなりすぎて、使い勝手が悪くなり易い。
[無機有機系吸湿吸水層]
無機有機系吸湿吸水層は、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を含有する層であり、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤と、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を分散させるための熱可塑性樹脂とを含有する。また、無機有機系吸湿吸水層は、ヒートシール性樹脂を含有していてもよく、十分なヒートシール性を有していれば、同時にヒートシール層にもなり得る。
無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を含有する層(無機有機系吸湿吸水層)中の、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤の合計の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、2質量%以上、50質量%以下がより好ましい。
無機有機系吸湿吸水層の厚みに特に制限は無いが、10μm以上、100μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと吸湿吸水効果を充分に発揮し難く、上記範囲よりも厚くても吸湿吸水効果はそれほど向上せず、吸湿吸水シーラントフィルムの剛性が強くなりすぎて、使い勝手が悪くなり易い。
(無機系吸湿吸水剤)
無機系吸湿吸水剤は、気体の水分または液体の水分を吸収する化合物であり、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、無機酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。また、他の吸湿吸水剤を併用することもできる。
また、無機系吸湿吸水剤は、無機物であることから、耐熱性が比較的高く、高温に晒されても、吸湿吸水効果を維持することができ、エクストルージョンによる230℃以上の
高温積層に用いることもできる。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属水酸化物、等が挙げられ、具体的なアルカリ金属化合物としては、Li2O、Na2O、K2O、LiCl、LiOH等が挙げられる。これらの中でも、Na2O、K2Oが好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属塩化物、アルカリ土類金属水酸化物、等が挙げられ、具体的なアルカリ土類金属化合物としては、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、RaO、MgCl2、CaCl2、Mg(OH)2、Ca(OH)2等が挙げられる。これらの中でも、MgO、CaOが好ましい。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物の中には、潮解性化合物が多く存在し、これらは無機系吸湿吸水剤として好適である。
潮解性化合物は、水分子を取り込んで、自身の水溶液を生成する化合物である。具体的な潮解性化合物としては、NaOH、LiOH、K2CO3、MgCl2、CaCl2、NaCl、KCl、等が挙げられる。これらの中でも、衛生面からは、MgCl2、CaCl2が使い易く、好ましい。
無機酸化物は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の無機元素の酸化物であり、水分の吸着性に優れる。具体的な該無機酸化物としては、Al23、SiO2、P25、親水性ゼオライト等が挙げられる。これらの中でもAl23、親水性ゼオライトが好ましい。
親水性ゼオライトは、水分の吸着性に優れたゼオライトであり、多孔体である。一般的にゼオライトは、構成成分であるSiO2/Al23のモル比が低い程、親水性が高くなる。そして、親水性が高くなることによって、極性の高い水分子を吸着し易くなり、逆に極性の低い臭気物質、疎水性ガス、親油性ガス(溶剤系ガスも含む)との親和性が低くなり、これらを吸着し難くなる。
親水性ゼオライトのSiO2/Al23モル比は、1/1~20/1が好ましく、1.5/1~10/1がより好ましく、2/1~5/1がさらに好ましい。
本発明においては、吸湿性能と入手し易さのバランスから、上記範囲のモル比の親水性ゼオライトが好ましく用いられる。
無機系吸湿吸水剤は粉体で用いられるが、粉体の個数基準の平均粒子径は、0.1μm以上、20μm以下が好ましい。該平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、無機系吸湿吸水剤が凝集し易くなり、上記範囲よりも大きいと、表面積が小さくなることから吸湿吸水性が劣る虞がある。
吸湿吸水層に含有される無機系吸湿吸水剤は、粉体の無機系吸湿吸水剤を熱可塑性樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。
具体的には、粉体の無機系吸湿吸水剤を熱可塑性樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、所望の吸湿吸水層中の濃度になるように、マスターバッチと他の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。
メルトブレンドされる熱可塑性樹脂としては、1種であっても2種以上であってもよい。
無機系吸湿吸水剤のマスターバッチ中の含有量は、20質量%以上、90質量%以下が好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましい。上記の範囲であれば、吸湿吸水層中に必要かつ十分な量の無機系吸湿吸水剤を分散した状態で含有させることが容易である。
(有機系吸湿吸水剤)
有機系吸湿吸水剤は、気体の水分または液体の水分を吸収する化合物であり、(メタ)アクリル系樹脂、および/またはポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を含有することが好ましい。また、他の吸湿吸水剤を併用することもできる。
本発明において、(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩等の(メタ)アクリル基を有するモノマーが(共)重合して生成した(共)重合体である。
具体的な(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(メタ)アクリル酸とアルカリ金属との塩、ポリ(メタ)アクリル酸とアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、上記モノマーと他の不飽和化合物との共重合体や、上記(メタ)アクリル系樹脂が他の反応性化合物によって変性された変性品であってもよい。
PVA系樹脂は、一般的には酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化(けんか)して得ることができるものであり、鹸化率は50~100%が好ましい。
有機系吸湿吸水剤は微粒子からなる粉体で用いられることが好ましく、粉体の個数基準の平均粒子径は、0.1μm以上、30μm以下が好ましい。該平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、有機系吸湿吸水剤が凝集し易くなり、上記範囲よりも大きいと、表面積が小さくなることから吸湿吸水性が劣る虞がある。
吸湿吸水層に含有される有機系吸湿吸水剤は、粉体の有機系吸湿吸水剤を熱可塑性樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。
具体的には、粉体の有機系吸湿吸水剤を熱可塑性樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、所望の吸湿吸水層中の濃度になるように、マスターバッチと他の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。
メルトブレンドされる熱可塑性樹脂としては、1種であっても2種以上であってもよい。
有機系吸湿吸水剤のマスターバッチ中の含有量は、20質量%以上、90質量%以下が好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましい。上記の範囲であれば、吸湿吸水層中に必要かつ十分な量の有機系吸湿吸水剤を分散した状態で含有させることが容易である。
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を含有し、十分なヒートシール性を有する層であり、無機系吸湿吸水剤および/または有機系吸湿吸水剤を含有していてもよく、含有していなくてもよいが、無機系吸湿吸水剤および/または有機系吸湿吸水剤を含有しない場合の方がヒートシール性が高く、好ましい。
(熱可塑性樹脂)
シーラント層中に含有される熱可塑性樹脂は、無機系吸湿吸水剤および/または有機系吸湿吸水剤の分散性に優れ、包装材料の用途に耐え得るものであれば特に制限は無い。
また、熱可塑性樹脂は、ヒートシール性樹脂であってもよく、或いは、ヒートシール性樹脂を含有することもできる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリ
エチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等及びこれらの樹脂の混合物が挙げられる。
上記の中でも、ポリエチレン系の樹脂が好ましく、ポリエチレン系の樹脂の中でも、LDPE、LLDPE、汎用PE、PE系共重合体等がより好ましく、LLDPEが更に好ましい。
(ヒートシール性樹脂)
ヒートシール性樹脂は、熱によって溶融して融着し得るものであれば、特に制限無く、公知のヒートシール性樹脂を用いることができる。
ヒートシール性熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)がさらに好ましい。
<補強層>
補強層は補強フィルムからなる層であり、防錆積層体や基材フィルムに、支持性、剛性、柔軟性、耐ピンホール性等が不足している場合に、さらに含まれることが好ましい。
補強フィルムには、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する一般的な公知公用の補強用のフィルムを用いることができる。
補強フィルムとしては、各種の樹脂フィルムを用いることができ、さらには、各種の紙基材を使用する用いることができ、樹脂フィルムと紙基材との併用もできる。
補強フィルム用の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靱な熱可塑性樹脂を用いて作製された樹脂フィルムが挙げられる。
そして、補強フィルムには、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
上記の中でも、ポリエステル系樹脂および/またはポリアミド系樹脂を含む樹脂フィルムが好ましく、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ナイロンフィルムが、より好ましく用いられる。
補強フィルム用の紙基材は、賦型性、耐屈曲性、剛性等を付与できるものであり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の、紙層用の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の紙基材、その他等を使用することができる。
紙基材としては、坪量約30g/m2~600g/m2位のものが好ましく、坪量約50g/m2~450g/m2位のものがより好ましい。
<接着剤層>
接着剤層に用いられる接着剤に特に制限は無く、DL(ドライラミネート)用接着剤、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、任意のアンカーコート剤等を用いることができる。
また、接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のいずれであってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
このような接着剤層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、LDPE等のポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
<吸湿吸水シーラントフィルムの作製方法>
上記のような材料を使用して、吸湿吸水シーラントフィルムを製造する方法について説明する。下記に示した作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
吸湿吸水シーラントフィルムを構成する各層の積層は、通常の包装材料を製造するときに使用するラミネートする方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
そして、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理を各層の表面に施すことができる。また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。
例えば、ヒートシール層1/無機系吸湿吸水層/有機系吸湿吸水層/ヒートシール層2という層構成を有する吸湿吸水シーラントフィルムは、シーラント層1用の樹脂と、無機系吸湿吸水層用の樹脂組成物と、有機系吸湿吸水層用の樹脂組成物と、シーラント層2用の樹脂とを、インフレーション製膜によって製膜及び積層して作製することができる。そして、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
以下の実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
[無機系吸湿吸水剤]
・無機系吸湿吸水剤1:吉澤石灰工業(株)社製酸化カルシウム、HAL-J。平均粒子径1~2μm。
・無機系吸湿吸水剤2:神島化学工業(株)社製酸化マグネシウム、スターマグPSF-150。平均粒子径0.6μm。
・無機系吸湿吸水剤3:水澤化学工業(株)社製ゼオライト、ミズカシーブス5AP。SiO2/Al23モル比=2/1、平均粒子径5μm。
・無機系吸湿吸水剤4:日本軽金属(株)社製酸化アルミニウム、A33F(SA30シリーズ)。平均粒子径2μm。
[有機系吸湿吸水剤]
・有機系吸湿吸水剤1:(株)日本触媒社製変性アクリル系架橋重合体微粒子、アクアリックCS-6S。平均粒子径14μm。
・有機系吸湿吸水剤2:(株)日本触媒社製ポリアクリル酸ナトリウム微粒子、アクアリックFH。平均粒子径20μm。
・有機系吸湿吸水剤3:日本エクスラン工業(株)社製PMMA系微粒子、タフチックHU720SF。平均粒子径4μm。
[熱可塑性樹脂、ヒートシール性樹脂]
・LLDPE1:プライムポリマー(株)社製LLDPE、エボリューSP2020。密度0.916g/cm3、MFR2.0g/10分。
・LDPE1:日本ポリエチレン(株)社製LDPE、ノバテックLC520。密度0.923g/cm3、MFR3.6g/10分。
<マスターバッチの調製>
マスターバッチを下記のように調製した。
[マスターバッチ1の調製]
LDPE1と、吸湿吸水剤1とを下記割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
LDPE1 40質量部
無機系吸湿吸水剤1 60質量部
[マスターバッチ2~7の調整]
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、メルトブレンドし、マスターバッチ2~7(MB2~7)を得た。
Figure 0007419707000001
<実施例1>
MB1とLLDPE1とを下記割合でドライブレンドして、無機系吸湿吸水層用樹脂組成物を得た。
MB1 50質量部
LLDPE1 50質量部
次に、 MB5とLLDPE1とを下記割合でドライブレンドして、有機系吸湿吸水層用樹脂組成物を得た。
MB5 50質量部
LLDPE1 50質量部
LLDPE1と上記で得た無機系吸湿吸水層用樹脂組成物と有機系吸湿吸水層用樹脂組成物とを、160℃でインフレーション製膜によって製膜及び積層して、下記層構成の吸湿吸水シーラントフィルム(70μm厚)を得た。
層構成:LLDPE1層(10μm厚)/無機系吸湿吸水層(30μm厚)/有機系吸湿吸水層(30μm厚)
<実施例2~7、比較例1>
表2、3の記載に従ってマスターバッチを選択し、無機系吸湿吸水層用樹脂組成物と有機系吸湿吸水層用樹脂組成物とを得て、実施例1と同様に操作して、吸湿吸水シーラントフィルムを得て、同様に評価した。
<実施例8~12、比較例3>
表4、5の記載に従ってマスターバッチを選択し、無機有機系吸湿吸水層用樹脂組成物を得て、実施例1と同様に操作して、吸湿吸水シーラントフィルムを得て、同様に評価した。
<比較例2>
無機有機系吸湿吸水層は形成せず、160℃でインフレーション製膜によってLLDPE1からなるシーラントフィルムを得て、実施例1と同様に評価した。
Figure 0007419707000002
Figure 0007419707000003
Figure 0007419707000004
<結果まとめ>
本願発明の実施例の吸湿吸水シーラントフィルムは、良好な製膜性、ヒートシール性、吸湿吸水特性を示した。
一方、比較例の、本願発明に該当しない積層体は、製膜性、ヒートシール性、吸湿吸水特性の何れかが不十分な結果を示した。
<評価方法>
[製膜性]
シーラントフィルムの外観を肉眼で観察し、不良の有無を下記評価基準で評価した。
○:シーラントフィルムに皺、ぶつ、剥離が無かった。
×:シーラントフィルムに皺、ぶつ、剥離が有った。
[ヒートシール性]
シーラントフィルムを100mm×100mmに切り分け、ヒートシール層面を重ね合
せた後にヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、端部はヒートシールされずに二股に分かれている状態になるように1cm×10cmの領域をヒートシールし、さらに15mm幅で短冊状に切り分けて、ヒートシール強度測定用の試験片を作製した。
この試験片の二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して、ヒートシール部を剥離するように引っ張って、ヒートシール強度(N/15mm幅)を測定して、下記合否基準で合否判定した。
(ヒートシール条件)
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
(引張強度試験条件)
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
(合否判定基準)
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
[吸湿吸水特性]
シーラントフィルムを20×20cmにカットし、相対加湿度80%以上の空気で濃度調整した1000mlの空気を、温度・湿度データロガー((株)ティアンドデイ社、TR-72wf)と共にガスサンプリングバック(IB-PET-PIR12μm/接着層/ONy15μm/接着層/LLDPEフィルム60μm)に入れ、60℃、90%RHに調整した恒温槽で7日間保管後の相対湿度を温度・湿度データロガーで測定し、結露有無は目視により評価した。
1 吸湿吸水シーラントフィルム
2 吸湿吸水層
2a 無機系吸湿吸水層
2b 有機系吸湿吸水層
2c 無機有機系吸湿吸水層
3 ヒートシール層
4a 無機系吸湿吸水剤
4b 有機系吸湿吸水剤

Claims (3)

  1. 吸湿吸水剤とヒートシール性樹脂を含有する吸湿吸水シーラントフィルムであって、
    吸湿吸水剤は、無機系吸湿吸水剤と有機系吸湿吸水剤とを含有し、
    該無機系吸湿吸水剤が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、無機酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、
    該有機系吸湿吸水剤が、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、(メタ)アクリル酸塩の(共)重合体からなる群から選ばれる1種または2種であり、
    該吸湿吸水剤を含有する層中の、該吸湿吸水剤の含有量が、0.1質量%以上、50質量%以下であり、
    該吸湿吸水シーラントフィルムの、片面または両面の表面が、ヒートシール性を有する層である、
    吸湿吸水シーラントフィルム。
  2. 前記吸湿吸水シーラントフィルムが、無機系吸湿吸水剤および有機系吸湿吸水剤を含有する無機有機系吸湿吸水層を有する、
    請求項1に記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
  3. 前記吸湿吸水シーラントフィルムが、無機系吸湿吸水剤を含有する無機系吸湿吸水層と、有機系吸湿吸水剤を含有する有機系吸湿吸水層とを有する、
    請求項1または2に記載の、吸湿吸水シーラントフィルム。
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