JP7417210B2 - 網目状シートの製造方法及び該製造方法を使用して製造される網目状シート - Google Patents

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Description

本発明は、網目状シートの製造方法、及び、該製造方法を使用して製造される網目状シートに関するものである。
例えば、農業用の寒冷紗、防水塗膜用の補強布、目地テープ等、比較的粗い網目を有し、該網目から空気等の気体、塗料等の液体、湿気、光線等が通過するようにした網目状シートは、上記用途の他、種々の用途に用いられている。網目状シートは、また、軽量化も可能で、伸縮性にも富んでいて、デザイン(意匠)としても優れている。
このような網目状シートは、用途に応じて表面処理を施したり、網目を固定するために横糸と縦糸の交点を目止め処理をしたりする場合がある。
表面処理に関し、特許文献1には、防水層目地テープを用いる防水層の施工方法が記載されており、該防水層目地テープに浸透防止用フィルムをストライプ状にラミネート又はコーティングすることが記載されている。
しかし、この浸透防止用フィルムによる処理は、そもそも塗膜防水材の網目の通過(侵入)を防止するためであり(網目を塞ぐものであり)、網目の開口を維持しながらテープの表面を処理したものではなかった。
特許文献2には、寒冷紗の表面が撥水性を有するようにウレタン樹脂又は塩化ビニル系樹脂を散布したロールフィルタ用濾材が記載されている。
しかし、該処理は離型性を向上させるものではなく、良好な濾過性能を得るためであった。
特許文献3には、モノフィラメントで製造されたスクリーン印刷に用いられる紗が記載されており、エチレンオキサイド付加ジアルキルエーテルで処理をすることが記載されている。
しかし、該処理はモノフィラメントの表面を処理するものであり、紗の表面を処理するものではない上に、そもそもスクリーン印刷に用いられる紗は、その表面に画像形成させるために、上記した「網目状シート」とは言えない程に網目が密のものであった。
一方、目止め処理に関しては、特許文献4には、熱可塑性樹脂低融点成分で溶着して目止め加工した建築工事用メッシュシートが記載されており、該目止め処理をすることで、強力で柔軟性に優れ、通風性にも優れるメッシュシートが得られると記載されている。
しかし、該熱可塑性樹脂低融点成分は、材料となるマルチフィラメントの鞘層を構成しているものであり、処理液を用いて目止め処理をするものではなかった。
特許文献5には、樹脂からなるドット状の目止め部が形成された接着芯地が記載されている。
しかし、糸の膨らみを部分的に抑制し、格子点の配置の規則性を乱してモアレを抑制すると言うものであり、また表面処理と同時に目止めをするものでもなかった。
特許文献6には、特定の開口率を有する織物をカレンダー加工して薄葉化処理する織物の製造方法が記載され、交点を目止め加工することが記載されている。
しかし、該目止め加工に用いられる材料は通常のものであり、また表面処理と同時に目止めをするものでもなかった。
表面が離型処理された網目シートは、種々の広い用途が考えられるものの、該離型処理の方法や、該離型処理に用いる処理液としては好適なものは少なかった。
更に、網目シートは目止めをすることが好ましいが、該目止め処理に用いる処理液に関しても、汎用樹脂の液や一般的な樹脂のエマルジョンが用いられており、多くの検討が行われている訳ではなかった。
また、表面処理された網目状シートの製造方法については、製造工程の簡略化によるコストダウンも重要であるが、公知技術では不十分であった。
特開平04-176946号公報 特開2005-238134号公報 特開2009-293161号公報 特開2003-201639号公報 特開2015-121009号公報 国際公開第2016/166916号
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、好適な表面処理と好適な目止め処理に使用する材料と方法を見出して、製造のコストを抑制する網目状シートの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、意外にも、強力な接着性を必要とする網目の目止め部分の成分として、離型処理に使用される処理液の成分と同じものを用いても、十分強力な目止めが可能であることを見出した。それによって、離型処理と目止め処理を同時に行うことができ、工程の短縮化とコストダウンが図れることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも一方の表面が離型処理されており、横糸と縦糸とで構成されている網目状シートの製造方法であって、
未処理の網目状シートに対して、該横糸と該縦糸の交点の目止め処理と該離型処理とを、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する同一の処理液を用いて同時に行うことを特徴とする網目状シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記シリコーン系樹脂が、有機重合体変性シリコーンを含有する上記の網目状シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記処理液が、更に付着性ポリマーを含有する上記の網目状シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂の水系エマルジョンと、上記付着性ポリマーの水系エマルジョンとを混合して上記処理液を調製し、上記未処理の網目状シートの表面に、網目を塞がないように該処理液を塗布し、次いで乾燥させて、目止め処理と該離型処理とを同時に行う上記の網目状シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記離型処理を行った側とは反対側の表面に対して粘着処理を行って粘着層を形成する上記の網目状シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の「網目状シートの製造方法」を使用して製造されるものであることを特徴とする網目状シートを提供するものである。
また、本発明は、壁若しくは塗膜の補強用;ワイヤーハーネスの結束用;水道管、通気管若しくはガス管の補強用;聴診器のダイヤフラムのカバー用;ガラス繊維シートの代替用;テープ絆創膏の基材用;又は;通気シート用である上記の網目状シートを提供するものである。
また、本発明は、上記の網目状シートを、離型シートを介さずに回巻してなることを特徴とする網目状シートロールを提供するものである。
本発明の網目状シートの製造方法によれば、前記問題点と課題を解決し、少なくとも一方の表面が離型処理されており、横糸と縦糸の交点において目止めがされている網目状シートを少ない工程で製造可能である。そのため、短時間での製造とコストダウンが達成される。
すなわち、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を(好ましくは水系エマルジョンとして)含有する処理液を用いることによって、離型処理と目止め処理とが同時にできるので、製造時間の短縮とコストダウンを図ることができる。言い換えると、離型処理に用いる離型剤と目止め処理に用いる目止め剤とを共通にすることができるので、前記効果を得ることができる。
一方、目止め処理の後から離型処理によって形成させた離型層は、目止め処理によってできた層の上に存在するようになる(形成される)ので、摩擦・引掛り等の外部からの衝撃により損傷が発生する場合がある。
また、上記シリコーン系樹脂として、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の汎用のシリコーンを用いてもよいが、特に有機重合体変性シリコーンを用いることによって、表面の離型性と目止めの強度とを両立でき、更にシリコーン系樹脂粒子の分離(例えば白粉の表面生成)等が全く起こらない。
更に、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂と共に、目止めに好適な付着性ポリマー(の水系エマルジョン)を併用することで、網目状シート表面の離型性を維持したままで、目止めの強度を更に優れたものとすることができる。
このようにして得られた網目状シートは、少なくとも片方の表面が離型性を有しており、該網目から空気等の気体や塗料等の液体が通過し、湿気(水分)が通過し、光線等が通過し(透けて見え)、軽量であって伸縮性にも富んでいて、フレキシブルであり、デザイン(意匠)としても優れているので、そのような性質が要求される種々の用途に幅広く適用することができる。
更に、本発明の網目状シートは、少なくとも片方の表面が離型性を有しているので、離型シートを挟まずにロール状に回巻しても、巻回接触面で互いにくっつくことがない。また、離型シートを挟まずに複数枚を積み重ねておいても、上下の接触面で互いにくっつくことがない。
上記の「非くっつき性」に関しては、該網目状シートの離型処理をしていない側(回巻したとき又は積み重ねたときの接触面)を粘着処理して、たとえ強力な粘着層を形成させた場合(図2(c)(d)参照)であっても達成される。該粘着層が網目の上(糸の上)だけではなく、更に網目を塞ぐように一面に網目状シートに施されている場合であっても達成される。なお、該「非くっつき性」が、離型層とは反対側に粘着層がない場合に良好であることは言うまでもない。
そのため、不要な離型シートが発生せず(ゴミが出ず)、ロールからの巻き解きや、積み重ねからの抜き取り(取り出し)が容易となり、本発明の網目状シートを使用する作業・操作がやり易くなる。
本発明の網目状シートの概略平面図(上)と概略断面図(下)である。 本発明の網目状シートの概略拡大断面図である。 (a)(b)粘着層がない場合 (c)(d)粘着層がある場合 (a)(c)図1のX-X矢視断面図 (b)(d)図1のY-Y矢視断面図 本発明の網目状シートの写真である。 本発明の網目状シートロールの概略斜視図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の「網目状シートの製造方法」は、少なくとも一方の表面が離型処理されており、横糸と縦糸とで構成されている網目状シートの製造方法であって、
未処理の網目状シートに対して、該横糸と該縦糸の交点の目止め処理と該離型処理とを、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する同一の処理液を用いて同時に行うことを特徴とする。
<網目状シート>
図1に、本発明に係る網目状シート11の一例の概略平面図(図1の上)と、概略断面図(図1の下)を示す。図1の概略断面図の厚さ方向は、分かり易いように拡大して描いてある。また、図3に、網目状シート11を斜め上から見た写真の一例を示す。
本発明に係る網目状シート11の幅(横)、長さ(縦)、面積、形状等は、特に限定はなく、該網目状シート11の用途に応じて決められる。
本発明に係る網目状シートの網目12(未処理の網目状シート)は、織物又は編物が好ましく、平織又はからみ織の織物であることが、柔軟性があって伸び縮みするために多くの用途に好適に対応できる、製造コスト的に有利である、薄葉化(扁平に)することができる、強度的に有利である、等の点からより好ましく、中でも平織であることが、目止めが必要であり本発明の効果をより奏する、更に上記効果を奏し易い、等の点から特に好ましい。
網目12が織物の場合、それは縦糸12b及び横糸12aで形成されており、縦糸12b及び/又は横糸12aの密度は、4本/インチ以上40本/インチ以下であることが好ましく、5本/インチ以上20本/インチ以下であることがより好ましく、6本/インチ以上10本/インチ以下であることが特に好ましい。
ただし、上記「縦糸」、「横糸」とも、2本以上の単位糸が引き揃えられて構成されているものでもよい。その場合、上記「1本の縦糸又は横糸」とは、2本以上の単位糸が隙間なく引き揃えられた1本の縦糸列又は横糸列のことを言う。
縦糸列(すなわち縦糸)、横糸列(すなわち横糸)とも、1本又は「2本以上5本以下」の単位糸が引き揃えられていることが好ましく、2本以上4本以下が特に好ましい。上記本数に引き揃えられていると、後述する薄葉化(扁平に)する効果がより得られ易い。
また、網目状シート11の開口率(開口部の面積/網目状シートの面積)は、用途に応じて調整するが、20%以上90%以下であることが好ましく、25%以上70%以下であることがより好ましく、35%以上55%以下であることが更に好ましく、40%以上50%以下であることが特に好ましい。
「縦糸及び/又は横糸の密度」も開口率も、上記範囲であれば、液体や気体や光線の通過性、網目状シート11の機械的強度、柔軟性(伸び縮み性)、後述するヘナヘナ性、その他前記した本発明の特性を発揮し易い。
<<網目状シートの横糸と縦糸>>
網目状シート11(網目12)を構成する糸の材質は、本発明の前記効果を発揮するものであれば、特に限定はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル;ポリカーボネート;(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル(の部分ケン化物)、ビニロン、それらの共重合体等のビニル樹脂;ナイロン、アラミド等のポリアミド;ポリウレタン;レーヨン等の(再生)セルロース;ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(ザイロン(登録商標)等);等が挙げられる。
また、コットン(綿)、麻、ウール(毛)、絹等の天然繊維;上記したような合成繊維;上記したような再生繊維;ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;金属繊維(スチール繊維);等の繊維等が挙げられる。
限定はされないが、このうち、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ビニロン、レーヨン、(メタ)アクリル樹脂、ナイロン、アラミド、ポリアリレート、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、ガラス繊維等が特に好ましい。
縦糸12bや横糸12aは、短繊維から成る紡績糸(スパンヤーン)であってもよいし、長繊維から成るフィラメント糸(フィラメントヤーン)であってもよく、この場合、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸の何れでもよい。
単位糸の太さは、本発明の効果を奏するならば特に限定はないが、また用途に応じて選択することができるが、フィラメント糸の場合、50デニール以上が好ましく、150デニール以上が特に好ましい。また、700デニール以下が好ましく、500デニール以下が特に好ましい。また、紡績糸の場合、綿番手で7番手以上が好ましく、10番手以上が特に好ましい。また、100番手以下が好ましく、50番手以下が特に好ましい。
<<網目状シートの厚さ>>
後述する通り、離型処理と目止め処理によって付与される離型剤(目止め剤)の量(すなわち離型層13の厚さ)は、網目状シート全体の厚さに対しては大きくは影響しないので、網目状シート11の厚さ、及び、網目12(未処理の網目状シート)の厚さは、何れも、0.05mm以上1mm以下が好ましく、0.07mm以上0.8mm以下がより好ましく、0.10mm以上0.6mm以下が更に好ましく、0.13mm以上0.5mm以下が特に好ましい。また、後述する薄葉化処理をした場合でもしない場合でも、好ましい範囲等は上記範囲である。
厚過ぎると、柔軟性がなくなったり、用途によっては外部包埋樹脂の表面に段差ができてしまい美観を損ねたりする場合等がある。一方、薄過ぎると、網目状シート11の強度が確保できない場合等がある。
<離型処理と目止め処理>
本発明の「網目状シートの製造方法」は、網目12の少なくとも一方の側(表面)の離型処理と、糸の交点12cの目止め処理とを、同一の処理液を用いて同時に行うことを特徴とする。
離型処理によって、網目12を構成する糸の少なくとも上面には、図1及び図2に示したように、該網目12を塞がないように離型層13を形成する。
本発明で、「離型層」とは、網目状シート11の面積全体(平面)に形成されてはおらず、糸の上を含む糸の周辺のみに形成されている。図2に示したように、網目状シート11を構成する糸の上を含む糸の周辺のみに形成されているものも、本発明では「層」と定義する。
図2(a)は、網目状シート11を構成する横糸12aがない箇所での断面図(図1のX-X矢視断面図)であり、図2(b)は、横糸12aがある箇所での断面図(横糸12aの縦断面図、図1のY-Y矢視断面図)である。
離型層13と目止め部分12cを、網目(開口部)を塞がないように形成するには、十分粘度の低い溶液若しくは分散液を処理液として直接塗布することが好ましい。
かかる直接塗布の方法としては、特に限定はないが、ロールコーター、カーテンコーター、刷毛塗り、スプレーコーター、浸漬等を用いた塗布方法が好ましい。それぞれの塗布方法における常法に従って塗布することができる。
処理液を適当な粘度に調整することによって、網目(開口部)を塞がないようにしつつ、網目状シート12の片面に離型層13を形成することが可能である。網目12に付着しなかった処理液は、例えば網目を通過させて回収する。
離型層13と目止め部分の合計の付着量は、5g/m以上80g/m以下が好ましく、10g/m以上65g/m以下がより好ましく、15g/m以上50g/m以下が特に好ましい。
なお、上記における単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
上記下限以上であると、「ロールにしたときの巻回接触面への非くっつき性」や、「複数枚を積み重ねておいたときの上下の接触面での非くっつき性」が良好となる。すなわち、「離型シートなし」にし易い。また、離型処理と目止め処理を同時に行うので、目止めが強固になる。
一方、上記上限以下であると、不必要に厚い離型層ができず、外部樹脂に網目状シート11を包埋したときに、アンカー効果が出て、網目状シート11の外部樹脂への密着性・埋込性等が良好となる。また、目止め剤が交点12c以外にはみ出して開口率を低下させることがない。
ここで、回巻して網目状シートロールとしたときに、巻回接触面に「くっつかない」又は「非くっつき性が良好」とは、図4に示したような網目状シートロールを、12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)ときに、作業に支障がない程度に巻きが容易に解けることを言う。
また、複数枚を積み重ねておいたときに、上下の接触面に「くっつかない」又は「非くっつき性が良好」とは、網目状シートを10cmの高さに積み重ねて、12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)ときに、「一番下から2番目の網目状シート」が「一番下の網目状シート」から、作業に支障がない程度に抜き取り(剥ぎ取り)が容易にできることを言う。
または、数値での具体的な定義としては、複数枚を積み重ねておいたときに、上下の接触面に「くっつかない」又は「非くっつき性が良好」とは、2枚の網目状シートを重ね、45kg/m(4.5g/cm)の荷重下で12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)ときに、作業に支障がない程度に網目状シートの剥ぎ取りが容易にできることを言う。
なお、「非くっつき性」に関して、実施例で定義された「接触面からの剥離強度[cN/25mm]」で表すと、実施例に示したような相関がある。該剥離強度[cN/25mm]の数値を用いると、12箇月間保管(経時)させなくても「非くっつき性」の判定が可能である。
「網目でありそもそも接触面積が小さいこと」と、「網目上の離型層13の存在」との相乗効果によって、非くっつき性が良好になったと考えられる。
また、塗膜形成材(塗料)等の外部包埋樹脂の密着性・包埋性・アンカー効果等を悪化させない程度に(弱い)離型性を有する離型層13でも、網目シート11の場合には「非くっつき性」が良好となった。
網目状シートロールや「網目状シート11の積み重ね」は、意外にも、離型シートがなくても離型層13があれば、「外部包埋樹脂の密着性・包埋性・アンカー効果等」と「非くっつき性」との両立が実現された。
また、離型処理に用いる離型剤が、強固の方が良い目止め剤としても共用できた。
<<シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂>>
離型処理と目止め処理とは、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する同一の処理液を用いて行う。
「シリコーン系樹脂」とは、離型効果を有する程に分子内にシロキサン構造(-Si-O-)を有する樹脂のことを言い、「フッ素系樹脂」とは、離型効果を有する程に分子内にフッ素原子を有する樹脂のことを言う。
シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂は、粒子状で離型層内に不均質に分散する態様が特に好ましいものとして挙げられる。なお、本発明で「粒子」とは、固体粒子に限定されず、高粘度液体粒子等の液体粒子又はエマルジョン粒子も含まれる。
中でも、上記処理液が、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する水系エマルジョンであることが好ましい。言い換えると、離型剤粒子を水系エマルジョン(分散媒体が水系)の形で、網目12(未処理の網目状シート)に、塗布・付着させ、次いで乾燥することが特に好ましい。
上記処理液には、後述するように、更に付着性ポリマーを含有させることが、網目12への付着性を上げ、目止めの機械的強度を上げ、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂の粒子の遊離を防ぐ等のために好ましい。
シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する処理液が水系エマルジョンであることが好ましいので、その場合には、該付着性ポリマーも水系エマルジョンの形であることが好ましい。
限定はされないが、本発明の「網目状シートの製造方法」は、上記シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂の水系エマルジョンと、上記付着性ポリマーの水系エマルジョンとを混合して上記処理液を調製し、上記未処理の網目状シート(網目12)の表面に、網目を塞がないように該処理液を塗布し、次いで乾燥させて、目止め処理と該離型処理とを同時に行うことが特に好ましい。
<<<有機重合体変性シリコーン>>>
好適な離型性と目止め性を得るために、更には、「外部包埋樹脂の密着性・包埋性・アンカー効果等」と「非くっつき性」とを好適に両立させるために、上記離型層13中に有機重合体変性シリコーンを含有させることが特に好ましい。すなわち、上記シリコーン系樹脂が有機重合体変性シリコーンであることが特に好ましい。
ここで、上記「含有」には、有機重合体変性シリコーンの単独含有も含まれるし、有機重合体変性シリコーンと付着性ポリマーとの併用含有も含まれる。
シリコーン部分(ポリシロキサン主鎖)に結合して変性をする上記「有機重合体」の重合度には限定がなく、すなわち繰り返し単位を有していればよく、高分子量ないし低分子量ポリマー、オリゴマー、数量体(2~5量体)等が含まれる。
有機重合体変性がされていないシリコーンを用いると、すなわち、有機重合体変性シリコーン粒子(エマルジョン)に代えて、無変性シリコーン粒子(エマルジョン)を用いると、シリコーン粒子が脱離して、巻回や積み重ねた際に、接触面に転写(裏移り)する場合等がある。
上記有機重合体変性シリコーンとしては、ポリシロキサンを主鎖として、側鎖及び/又は末端に有機重合体基を導入したものが挙げられるが、少なくとも側鎖に有機重合体基を導入したもの(以下、「特殊変性シリコーン」と略記する場合がある)が好ましいものとして挙げられる。
該有機重合体基としては、ポリ(メタ)アクリレート基((メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物からなる基)、ポリウレタン基、ポリエステル基、ポリカーボネート基、ポリ酢酸ビニル基、ポリエーテル基、ポリフルオロアルキル基等の非反応性基;「アミノ基、エポキシ基、アルコール性水酸基、メルカプト基、カルボキシ基等の反応性基」を含む有機重合体基;等が挙げられる。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、特殊変性シリコーン等の有機重合体変性シリコーンが特に好ましいものとして挙げられる。
該有機重合体変性シリコーン(水系エマルジョン)としては、市販品も好適に使用できる。該市販品としては、シャリーヌ(登録商標)R、シャリーヌ(登録商標)E(何れも日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
本発明における処理液には、有機重合体変性シリコーンを含有させることが特に好ましいが、その場合、限定はされないが、該有機重合体変性シリコーンのシリコーン部分が離型効果を発揮し、該有機重合体変性シリコーンの有機重合体部分や付着性ポリマーが目止め効果を発揮しているものと考えられる。
<<付着性ポリマー>>
前記付着性ポリマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、(メタ)アクリルスチレン系ポリマー等が挙げられる。また、これらの共重合ポリマー、部分ケン化ポリマー、これら2種以上の混合物等も挙げられる。
また、上記付着性ポリマーとしては、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール接着剤等の、一般に目止め剤に含有されているポリマーも挙げられる。
本発明の網目状シート11は、上記離型処理されて形成された離型層13の成分と、上記目止め処理されて形成された目止め部分12cの成分とが同一である。
有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンと、上記付着性ポリマーの水系エマルジョンとを混合して処理液を調製するときは、上記付着性ポリマーの水系エマルジョンとして、目止め剤として使用される水系エマルジョンを使用することも特に好ましい。該エマルジョンは、一般に「ディスパージョン」とも言われているものである。
この場合、両者のエマルジョンのイオン性は、同一である必要があり、限定はされないが、両者ともアニオン系エマルジョンであることが好ましい。
<<混合比>>
処理液中の、「付着性ポリマー」と「有機重合体変性シリコーン等のシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂」(離型剤)との含有比は、接触面における非くっつき性と、「外部包埋樹脂の密着性・包埋性・アンカー効果」等との両立が図れ、また、網目状シート11の(単位)糸解れ(ほつれ)や離脱が問題にならなければ、特に限定はないが、「離型層13と目止め部分の合計」全体に対する離型剤(粒子)の量として、固形分で、2質量%以上40質量%以下が好ましく、4質量%以上25質量%以下がより好ましく、7質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
上記両者を何れも(水系)エマルジョンの形で使用する場合は、該エマルジョン中の粒子濃度を勘案して、2種の(水系)エマルジョンを上記固形分範囲になるように混合して用いられる。
また、前記シリコーン系樹脂が有機重合体変性シリコーンである場合には、「離型層13と目止め部分の合計」に含有される該有機重合体変性シリコーンの量は、付着量として、2g/m以上が好ましく、4g/m以上がより好ましく、6g/m以上が特に好ましい。なお、上記単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
また、「離型層13と目止め部分の合計」に対する有機重合体変性シリコーンの含有率の下限は、4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また含有率の上限は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
離型効果だけをみれば、有機重合体変性シリコーンの含有比や付着量は、高ければ高いほど効果を発揮するが、その一方、目止め効果(網目状シートの交点12cを接着させる効果)が薄れ、スリット加工時に端部の糸解れ(ほつれ)が生じる場合等がある。
離型処理と目止め処理は、限定はされないが、具体的には、例えば、生地の仕上げ加工に使用されるテンター加工機を用い、未処理の網目状シートの表面(網目12)に、処理液を含浸(ディッピング)させ、ゴムロールによる絞り(ニップ)を行い、乾熱乾燥により不要な水分を蒸発させることにより有効成分のみを固着させることが好ましい。
<薄葉化>
本発明における網目状シートは、限定はされないが、加圧によって薄葉化することが、ヘナヘナにして取り扱い易くし、糸の繊維束を偏平状にし、網目状シート11に接着性が要求される用途に使用されるとき等は、接着面積を大きくして接着性をよくするために好ましい。また、ヘナヘナ感が要求される用途に使用されるときも薄葉化することが好ましい。
更に、「縦糸と横糸の交点12c」と「非重なり部(交点以外)」の厚み差が小さくなることにより、樹脂等で該網目状シート11を包埋して使用する用途に使用される場合等に、該樹脂の表面から網目状シート11の網目(凹凸)が消え易くなり(目立たなくなり)、また、引き揃えた糸を偏平状にすることにより、微細な隙間が埋まり、気泡が絡み難くなり(気泡の滞留が発生し難くなり)、塗膜等の外部包埋樹脂に、ピンホールや欠陥が低減される。
上記薄葉化は、「目止め処理と離型処理」の後に行われることが好ましい。
上記薄葉化の方法は、特に限定はないが、網目状シートを回転するカレンダーロールの間を通過させて加熱及び加圧するカレンダー加工が好ましい。カレンダー加工を施すことによって、網目状シートに圧力がかかり、厚さが低減されてヘナヘナになると共に交点12cの厚さ(膨らみ)が小さくなり厚さが均等になる。
カレンダー加工に使用されるカレンダー機については、特に限定はなく、一対のカレンダーロールのみを使用してその間に通過させてもよいし、多連式若しくは多段式のカレンダーロールを使用してもよい。カレンダーロールの材質は、特に限定はないが、幅方向のプレス圧力を均一にし易い、入手や取扱いが容易である等の点から金属製又は硬質ゴム製が好ましい。
<粘着処理>
本発明の網目状シートの製造方法においては、上記離型処理を行った側とは反対側の表面(以下、「裏面」と略記することがある)に対して粘着処理を行って粘着層14を形成することが好ましい(図2(c)(d))。図1の下図(概略断面)では、必須ではない粘着層は省略されているが、裏面に粘着層があることが好ましい。
本発明の網目状シートに該粘着層14があると、網目状シートの用途が格段に広がる。また、該粘着層14があっても離型層13があれば、「非くっつき性」が良好に保て、本発明の特に離型層・離型処理の効果がより発揮される。
該粘着層14は、網目状シート11の裏面であって、網目12を構成する糸の下のみに該網目12を塞がないように形成してもよいし、網目12を塞ぐように網目状シート11の裏面全体に「ベタ」で形成してもよい。後者の場合、網目12と粘着層14の間にフィルムがあってもよい。すなわち、粘着層14を施したフィルムを、網目(状シート)の裏面に積層してもよい(図示せず)。また、該粘着層14は、網目状シートの裏面全体に形成してもよいし、部分的に形成してもよい。
粘着層14の付着量は、10g/m以上30g/m以下が好ましく、15g/m以上25g/m以下がより好ましく、17g/m以上23g/m以下が特に好ましい。なお、上記単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
上記下限以上であると、粘着性が十分高くなり、粘着性を要求する用途に好適に利用できる。一方、上記上限以下であると、貼着層が厚過ぎて無駄になることがない。
粘着層14の粘着性は、実施例で後述する「ボールタック」評価として、2~20が好ましく、3~16がより好ましく、4~12が特に好ましい。
該粘着性が小さ過ぎると粘着層14を形成した意味がなくなる場合がある。一方、大き過ぎると用途によっては無駄になる場合があるが、粘着層14が網目を塞いで一面にベタに設けられていてたとえ大き過ぎても、離型層13によって「非くっつき性」が達成される場合も多い。
粘着層14の材質としては、(メタ)アクリル酸エステル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ビニルブチラール系、ポリイソブチレン系、スチレンブタジエン系、イソプレン系、クロロプレン系、塩化ゴム系、(メタ)アクリル酢酸ビニル系、又は、これらの共重合系等が挙げられる。水系エマルジョンとして優れている点等から、上記粘着剤の材質として、(メタ)アクリル酸エステル系、(メタ)アクリル酢酸ビニル系等が特に好ましい。
粘着層14の形成方法については特に限定はなく、粘着層14の材料(粘着剤)を有機溶媒に溶解させ、粘着剤溶液の形で付与(塗布)してもよいし、粘着剤がエマルジョン等の形で分散された分散液の形で付与(塗布)してもよい。中でも、水系のエマルジョンとして塗布することがより好ましい。
本発明においては、接触面が網目であること、離型層13が存在すること等によって、たとえ裏面に強力な粘着層がある場合(図(c)(d)参照)であっても、「非くっつき性」が良好である。すなわち、離型シートを挟まずにロール状に回巻しても、巻回接触面で互いにくっつくことがなく、離型シートを挟まずに複数枚を積み重ねておいても、上下の接触面で互いにくっつくことがない。
<その他の処理>
上記した網目状シート11には、全体又は部分的に、本発明の効果を損なわない範囲で、前記したものとは別の層・別の処理・別の印刷・着色等を更に付与してもよい。
<網目状シート及びその用途>
本発明は、上記した「網目状シートの製造方法」を使用して製造されるものであることを特徴とする網目状シート11でもある。
また、上記離型処理されて形成された離型層13の成分と、上記目止め処理されて形成された目止め部分の成分とが同一である上記網目状シート11でもある。
上記した網目状シート11の上又は下の表面には、全体又は部分的に、前記したものとは別の層・別の処理・別の印刷・着色等がなされていてもよい。
本発明の製造方法で製造された網目状シート11や網目状シートロールは、横糸(表面)と縦糸(表面)における離型層13や目止め部分の形態や付着状態が複雑で、拡大観察をしてもその形状を文言では表現できない。また、離型層13や目止め部分の、それぞれ「表面(外気側)、内部(バルク)、糸との接触面」で成分組成が異なる可能性がある。例えば、水系エマルジョンの乾燥工程で、成分の微細分離も考えられる。
従って、網目状シート11における上記のような態様を、構造、パラメーター等で直接特定することは、不可能であるか又はおよそ実際的でない。
本発明の網目状シート11は、特に限定はないが、壁若しくは塗膜の補強用;ワイヤーハーネスの結束用;水道管、通気管、ガス管等の管の補強用;聴診器のダイヤフラムのカバー用;ガラス繊維シートの代替用;テープ絆創膏の基材用;又は;通気シート用に特に好適に使用できる。
本発明の網目シート11の「例えば上記したような用途品」は、網目状シート11をそのまま使用してもよいが、離型処理をした側とは反対側に、粘着層等の機能層を設けたり、本発明の網目シート11を本体材質である外部包埋樹脂に包埋させたり積層させたりして用いることが好ましい。
これらの用途品において、後述する網目状シートロールとして使用したり、網目状シート11を積み重ねて販売、保管、使用したりする場合等に、前記した、離型層13の存在と、目止めと、好ましくは薄葉化とが、それぞれ前記した効果を相乗的に発揮して有効に機能する。
上記「壁若しくは塗膜の補強用」は、本発明の網目シート11を、壁若しくは塗膜の本体材質(モルタル、漆喰、樹脂、紙等)に包埋又は積層させて本体の強度を向上できる。該塗膜としては、例えば、防水塗膜、補修塗膜等が挙げられる。また、壁のひび割れ防止・補強用にも使用可能である。
上記「ワイヤーハーネスの結束用」は、本発明の網目シート11をそのまま結束バンドとして使用してもよいし、樹脂に包埋又は積層させて結束バンドとして使用してもよい。軽量であり、また網目であり透けているので結束部でもワイヤーが目視確認できる。自動車用のワイヤーハーネスが特に好ましい用途として挙げられる。
上記「水道管、通気管、ガス管等の管の補強用」は、本発明の網目シート11を樹脂に包埋又は積層させて補強テープ等として管(周辺)に巻き付けて使用することが好ましい。
上記「聴診器のダイヤフラムのカバー用」は、患者の不快感と不衛生を回避するため等に使用され、本発明の網目シート11の好ましくは離型層13のない側をダイヤフラム面に仮止め(軽く接着)して使用される。
上記「ガラス繊維シートの代替用」は、ガラス繊維のフィラメントが「本発明における糸」として使用されている種々の用途において、本発明の網目シート11でそれを置き換えることができる。
上記「テープ絆創膏の基材用」は、本発明の網目シート11の好ましくは離型層13のない側に、粘着層や薬剤層等を塗布等で付着させて使用される。
上記「通気シート用」は、本発明の網目シート11が極めて通気性が良いことを利用して、あらゆる分野の通気シートに使用され得る。
<網目状シートロール>
また、本発明は、上記網目状シート11を、離型シートを介さずに回巻してなることを特徴とする網目状シートロールでもある。
本発明の網目状シートロールの概略斜視図を図4に示す。網目状シートロールは、離型層13がある側、すなわち離型処理を施した側が外側になるように回巻されていても、内側になるように回巻されていてもよい。
上記工程で得られた網目状シート11を、離型シートを介さずに巻く方法(回巻方法)としては、公知の方法が用いられ得るが、スリッター機を用い、軸巻で例えば内径1~3インチの紙管等に巻き取る方法等が好ましい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1
<網目(未処理の網目状シート)の作製>
縦糸としてポリエステルフィラメント糸(200デニール)、横糸としてポリエステルフィラメント糸(200デニール)を使用して網目状シートを作製した。3本の単位糸を引き揃えて1本の縦糸とし、1インチ当たり8本の縦糸とし、2本の単位糸を引き揃えて1本の横糸とし、1インチ当たり8本の横糸とした。
縦糸は3mm間隔、横糸は3mm間隔で設置し、最終的な開口率を44%とした。
<離型処理(離型層の形成)と目止め処理>
付着性ポリマーとして、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」と、シリコーン系樹脂として、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790(固形分42~45質量%の特殊変性シリコーンの水系エマルジョン)、日信化学工業(株)製」とを、水系エマルジョン状態での質量比で9:1となるように混合して水系エマルジョンを調製した。
該水系エマルジョンを処理液とし、上記で作製した網目(未処理の網目状シート)に付着量(乾燥質量)15g/mとなるように付与して、離型処理と目止め処理とを同時に行った。
<<薄葉化>>
次いで、回転するカレンダーロールの間を通過させて加熱及び加圧を行い(カレンダー加工を行い)、網目状シート部分の厚さを0.16mmとした。
<<粘着層の形成>>
(メタ)アクリル酸エステル系の水系エマルジョンである「オリバイン(登録商標)BPW6111A、東洋インキ製造(株)製」を、離型処理した側とは反対側の網目状シートに付着量(乾燥質量)20g/mとなるように付与して粘着層を形成させた。
<<網目状シート(ロール)の作製>>
上記のようにして、図1に示したような幅100mmの網目状シート(1)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(1)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(1)を作製し、以下の評価に供した。
調製例2
<網目状シート(2)の作製>
調製例1において、糸種に関し、縦糸としてポリエステルステープルの紡績糸(Ne30S)、横糸としてポリエステルステープルの紡績糸(Ne20S)を使用して網目状シートを作製した以外は、調製例1と同様にして、図1に示したような幅100mmの網目状シート(2)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(2)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(2)を作製し、以下の評価に供した。
調製例3
<網目状シート(3)の作製>
調製例2において、「ポリゾール(登録商標)EF265」と、「シャリーヌ(登録商標)E-790、日信化学工業(株)製」とを、質量比で9:1に混合したことに代えて、水系エマルジョン状態での質量比で8:2に混合した以外は、調製例2と同様にして、図1に示したような幅100mmの網目状シート(3)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(3)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(3)を作製し、以下の評価に供した。
調製例4
<網目状シート(4)の作製>
調製例2において、同様の付着性ポリマーとシリコーン系樹脂を用い、7:3で混合した以外は、調製例2と同様にして、図1に示したような幅100mmの網目状シート(4)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(4)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(4)を作製し、以下の評価に供した。
比較調製例11
<網目状シート(11)の作製>
調製例1において、付着性ポリマーとして、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)」を用いて全量とし、シリコーン系樹脂を用いなかった。すなわち、付着性ポリマーとシリコーン系樹脂の混合比を「10:0」とした。
上記で作製した同じ網目(未処理の網目状シート)に、調製例1と同様に、付着量(乾燥質量)15g/mとなるように付与して、離型処理と目止め処理とを同時に行い、その他は調製例1と同様にして網目状シート(11)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(11)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(11)を作製し、以下の評価に供した。
比較調製例12
<網目状シート(12)の作製>
調製例2において、同様の付着性ポリマーのみを用いて全量とし、すなわち、付着性ポリマーとシリコーン系樹脂の混合比を「10:0」とした以外は、調製例2と同様にして、図1に示したような幅100mmの網目状シート(12)を製作し、以下の評価に供した。
また、網目状シート(12)を、離型処理した側が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、網目状シートロール(12)を作製し、以下の評価に供した。
評価例1
<接触面からの剥離強度[cN/25mm]>
試験板として、JIS Z 0237:2009で規定のSUS304鋼板に代えて、実際の網目状シートの接触面(離型処理をしてない方の面)とした以外は、JIS Z 0237:2009に準拠して行った。単位は、JIS Z 0237:2009では、[N/10mm]であるが、[cN/25mm]に換算した。
評価例2
<「非くっつき性」の評価方法>
網目状シートを、図4に示したように網目状シートロールとし、12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)。その後、巻き解きの容易さを評価して以下の基準で判定した。
網目状シートを4cm×4cmに切り出し、10cmの高さに積み重ねて、12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)。その後、一番下から2番目の網目状シートが、一番下の網目状シートから、抜き取り(剥ぎ取り)が容易にできるか否かを評価して以下の基準で判定した。
また、2枚の網目状シートを重ね、45kg/m(4.5g/cm)の荷重下で12箇月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)ときに、該2枚の網目状シートの剥ぎ取りが容易にできるか否かを評価して以下の基準で判定した。
<「非くっつき性」の判定基準>
○:作業に殆ど支障がない程度に、抜き取り(剥ぎ取り)が容易である。
△:作業にほぼ支障がない程度に、抜き取り(剥ぎ取り)ができる。
×:作業に支障がでる程度に、抜き取り(剥ぎ取り)ができない。
実際の「非くっつき性」に関して、「接触面からの剥離強度[cN/25mm]」とは以下の相関があるので、時間がかかる「非くっつき性」の評価は、接触面からの剥離強度で代用することができる。
<接触面からの剥離強度(判定結果は「非くっつき性」の判定結果と相関あり>
○:20[cN/25mm]以下
△:20[cN/25mm]より大きく、29[cN/25mm]より小さい
×:29[cN/25mm]以上
評価例3
<目止め強度(糸解れ(ほつれ))>
網目状シートの縦糸と横糸との交点付近において、糸の解れを目視で観察評価し、以下の基準で判定した。「△」以上を合格とした。
◎:スリット時に端部の糸解れが見られない。
○:スリット時に端部の糸解れが僅かに見られる。
△:スリット時に端部の糸解れが見られる。
×:スリット時に端部の糸解れが著しく見られる。
評価例4
<粘着層が形成されている場合のボールタック>
傾斜角30°で、助走面10cm、粘着層の面10cmの試料(測定層)に、スチールボール32種類(1/32インチ~32/32インチ)を転がし、粘着層の面の中央付近に停止するボールの径の番号(1~32)を「ボールタック」とする。測定温度は23℃、測定湿度は50%RHとする。
なお、本発明の調製例において粘着層が形成された網目状シートは、粘着層の「ボールタック」は全て「5」であった。
Figure 0007417210000001
<網目状シート(1)~(4)、(11)、(12)の評価結果>
表1に示したように、本発明の網目状シート(1)~(4)は、何れも、それを積み重ねておいても、ロールにしておいても、剥離強度(すなわち「非くっつき性」)が良好(「○」判定)であった。また、スリット時の糸解れがなく、目止め強度が合格(「△」以上判定)であった。処理液中にシリコーン系樹脂が含有されていても、目止め強度が合格であり、優れた離型性と強固な目止めが両立できていた。
一方、シリコーン系樹脂を含有していない処理液で同様に処理した網目状シート(11)(12)は、何れも、「非くっつき性」が不良(「×」判定)であった。
調製例5
<網目状シート(5)の作製>
調製例1の網目状シート1の作製において、シリコーン系樹脂として、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790」に代えて、無変性シリコーン(ジメチルシロキサンポリマー)の水系エマルジョンである「KM-9736A、信越化学工業(株)製」を用いた以外は調製例1と同様にして離型処理と目止め処理とを同時に行った。付着性ポリマーとシリコーン系樹脂の混合比率(質量)も調製例1と同様に9:1とした。
次いで、調製例1と同様にして網目状シート(5)を作製した。
<網目状シート(5)の評価結果>
網目状シート(5)は、何れも、それを積み重ねておいても、ロールにしておいても、剥離強度(すなわち「非くっつき性」)が良好(「○」判定)であった。また、スリット時の糸解れがなく、目止め強度が合格(「△」以上判定)であった。ただ、網目状シートロールに回巻しておくと、離型層中のシリコーン粒子が若干回巻接触面に転写したが、使用上は問題なかった。
調製例6
<網目状シート(6)の作製>
調製例5の網目状シート(5)の作製において、網目の糸種を調製例1で使用したものから調製例2で使用したものに代えた以外は、調製例5と同様にして網目状シート(6)を作製した。
<網目状シート(6)の評価結果>
網目状シート(6)は、糸種を変えても、上記網目状シート(5)と同様の評価結果が得られた。
調製例7
<網目状シート(7)の作製>
調製例1の網目状シート(1)の作製において、粘着層を形成させなかった以外は、調製例1と同様にして網目状シート(7)を作製した。
<網目状シート(7)の評価結果>
網目状シート(7)は、上記網目状シート(1)と同様の優れた評価結果が得られた。更に、裏面に粘着層がないので、「非くっつき性」に関しては上記網目状シート(1)より更に優れた評価結果が得られた。
調製例8
<網目状シート(8)の作製>
調製例1の網目状シート(1)の作製において、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790」に代えて、「シャリーヌ(登録商標)LC-190(固形分42~45質量%の、ポリアルキルシロキサンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物のグラフト共重合物で変性したシリコーンの水系エマルジョン)、日信化学工業(株)製」を用いた以外は、調製例1と同様にして網目状シート(8)を作製した。
<網目状シート(8)の評価結果>
網目状シート(8)は、上記網目状シート(1)と同様の優れた評価結果が得られた。有機重合体変性シリコーンであれば、何れのものであっても本発明の効果を好適に示すことが分かった。
比較調製例13
<網目状シート(13)の作製>
(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」で、乾燥を含めて目止め処理を行った。
次いで、調製例1の網目状シート(1)の作製において、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾールEF265」を除いて、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790(固形分42~45質量%の水系エマルジョン)、日信化学工業(株)製」を用いて離型層を形成させ、他は調製例1と同様にして網目状シート(13)を作製した。
なお、調製例1の網目状シート(1)に合わせるべく、目止め部分と離型層の合計の付着量(乾燥質量)を15g/mとなるようにした。
<網目状シート(13)の評価結果>
網目状シート(13)は、「非くっつき性」も「目止め強度」も合格であった。
しかしながら、目止め処理と離型処理の2工程になったため、調製例1~4の1工程の処理に比べて、2倍の時間に加え1.5倍のコストが掛かった。また、離型層が目止め処理層の上層に膜として存在することから、摩擦、引掛り等の外部からの衝撃により膜の損傷が発生することが確認できた。
利用例1
調製例1の網目状シート(1)を用い、幅50mm、長さ20mの細幅テープロールを製造した。これを石膏ボードのひび割れ部の補修に用いた。ロールからテープを引き出して、ひび割れ部に貼付する際に、ロールからスムーズに網目状シート(1)のテープを取り出す(巻き解く)ことができた。
離型シートがないので、製造現場での作業性に優れ、不要となった離型シートの散乱・飛散や、離型シート剥離時の静電気によるトラブル等が起こり得なかった。
利用例2
調製例2の網目状シート(2)を用い、幅30mm、長さ50mの細幅テープロールを製造した。これを直径25mmの水道管の補強用としてロールからテープを引き出して、水道管に巻き回した。巻き回す際にロールからスムーズに網目状シート(2)のテープを取り出す(巻き解く)ことができ、作業が容易であった。
本発明の網目状シートの製造方法は、製造工程が極めて簡略化でき、製造コストの低減ができ、また、本発明の網目状シートは、離型シートを介して巻かれていないか、離型シートを介して積み重ねられていないので、言い換えれば、離型シートが存在しないので、用途先での作業が容易になるため、前記した種々の用途の製造・使用の分野に広く利用されるものである。
11 網目状シート
12 網目
12a 横糸
12b 縦糸
12c 交点(目止め部分)
13 離型層
14 粘着層

Claims (8)

  1. 方の表面が離型処理されており、該離型処理を行った側とは反対側の表面に対して粘着処理を行って粘着層を形成する、横糸と縦糸とで構成されている網目状シートの製造方法であって、
    未処理の網目状シートに対して、該横糸と該縦糸の交点の目止め処理と該離型処理とを、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する同一の処理液を用いて同時に行うことを特徴とする網目状シートの製造方法。
  2. 上記処理液が、少なくともシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する水系エマルジョンである請求項1に記載の網目状シートの製造方法。
  3. 上記シリコーン系樹脂が、有機重合体変性シリコーンを含有する請求項1又は請求項2に記載の網目状シートの製造方法。
  4. 上記処理液が、更に付着性ポリマーを含有する請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の網目状シートの製造方法。
  5. 上記シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂の水系エマルジョンと、上記付着性ポリマーの水系エマルジョンとを混合して上記処理液を調製し、上記未処理の網目状シートの表面に、網目を塞がないように該処理液を塗布し、次いで乾燥させて、目止め処理と該離型処理とを同時に行う請求項4に記載の網目状シートの製造方法。
  6. 上記離型処理されて形成された離型層の成分と、上記目止め処理されて形成された目止め部分の成分と同一にする請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の網目状シートの製造方法
  7. 前記網目状シートが、壁若しくは塗膜の補強用;ワイヤーハーネスの結束用;水道管、通気管若しくはガス管の補強用;聴診器のダイヤフラムのカバー用;ガラス繊維シートの代替用;テープ絆創膏の基材用;又は;通気シート用である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の網目状シートの製造方法
  8. 請求項ないし請求項の何れかの請求項に記載の網目状シートの製造方法で、前記網目状シートを製造し、離型シートを介さずに回巻してなることを特徴とする網目状シートロールの製造方法
JP2019050874A 2019-03-19 2019-03-19 網目状シートの製造方法及び該製造方法を使用して製造される網目状シート Active JP7417210B2 (ja)

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