JP7413627B2 - 新規化合物、組成物、フォトクロミック材料、及び、界面物性光制御剤 - Google Patents

新規化合物、組成物、フォトクロミック材料、及び、界面物性光制御剤 Download PDF

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Description

本発明は、新規化合物、組成物、フォトクロミック材料、及び、界面物性光制御剤に関する。
可視光線や紫外線等の光を照射することで光物性(色(可視光の透過率)、蛍光等)を変化させる機能を持つフォトクロミック材料は、まぶしさを防ぐためのメガネや、光スイッチ、または表示・非表示の切り替え機能を有するインクなどの表示材料として利用される。また、光ディスクなどの記録材料やホログラムとしての応用も研究されている。
フォトクロミック材料による色の変化は、光照射によるフォトクロミック化合物の可逆的な化学変化によって発現される。ここでは、この光照射による色の変化を調光機能と呼ぶ。代表的なフォトクロミック化合物としては、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、ナフトピラン系化合物、フルギド系化合物及びジアリールエテン系化合物などが挙げられ、さまざまな用途に用いられてきた。しかしながら調光機能にはその用途に適した色や発色濃度や発色速度などの特性が求められるため、様々な誘導体や新しい分子骨格を有する化合物が開発され続けている。
また、界面物性を制御するため、界面活性剤が用いることが知られている。界面活性剤は、水溶液中等でミセル、紐状ミセル、ベシクル、エマルションなど種々の分子集合体を形成する。分子がどのような形態の集合体を形成するかは、その幾何学的形状、及び、親水性/疎水性のバランスなどに依存する。これらの分子集合体の形成は,言うまでもなく界面活性剤が有する洗浄、可溶化及び分散などの機能の発現と大きく関わっている。界面活性剤を用いた界面物性制御の例としては、化粧品等における薬剤又は香料の放出制御や、インクの乾燥速度の制御などが挙げられる。
従来のヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、特許文献1又は2に記載のものが知られている。
特許文献1には、フォトクロミック化合物として、下記一般式(1)で表される化合物が記載されている。

(上記一般式(1)中、R、Rは、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基及び炭素数2~20の直鎖状または分枝状のアルコキシ基を示し、k、l、m、nは互いに独立した1~5の整数を示す)
また、特許文献2には、光重合開始剤として、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する化合物が記載されている。
特開2011-132265号公報 国際公開第2007/097168号
本発明が解決しようとする課題は、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する新規な化合物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記新規な化合物を含む組成物、フォトクロミック材料又は界面物性制御剤を提供することである。
上記課題は、以下の<1>、<2>又は<10>乃至<12>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>~<9>とともに以下に記載する。
<1> ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有し、
前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造のイミダゾール環に結合する少なくとも1つの芳香環に親水性基をもつ官能基を少なくとも1つ有する化合物。
<2> ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有し、
前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造のイミダゾール環の2位に結合する少なくとも一つの芳香環に親水性基をもつ官能基を少なくとも1つ有する化合物。
<3> 前記親水性基をもつ官能基を、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造における各イミダゾール環の2位に結合する芳香環にそれぞれ有する前記<2>に記載の化合物。
<4> 前記親水性基が、イオン性基、又は、ノニオン性基である前記<1>ないし前記<3>のいずれかに記載の化合物。
<5> 前記イオン性基が、カチオン性基、又は、アニオン性基である前記<4>に記載の化合物。
<6> 下記式(1)で表される化合物である前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の化合物。
式(1)中、Rionはそれぞれ独立に、イオン性基を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合、又は二価の連結基を表し、Xionはそれぞれ独立に対イオンを表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、pはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのpの合計は1以上であり、qはそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、ただし、1つのベンゼン環に結合する基の数を表すp及びqにおけるp+qは1~5の整数であり、rはそれぞれ独立に、0~5の整数を表す。
<7> 前記Rionの少なくとも一つが、カチオン性基である前記<6>に記載の化合物。
<8> 前記カチオン性基が、第四級アンモニウム基である前記<7>に記載の化合物。
<9> 前記Rionの少なくとも一つが、アニオン性基である前記<6>に記載の化合物。
<10> 前記アニオン性基が、カルボキシレート基である前記<9>に記載の化合物。
<11> 前記pがいずれも、1である前記<6>~<10>のいずれか1つに記載の化合物。
<12> 下記式(5)で表される化合物である前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の化合物。
式(5)中、Rnoはそれぞれ独立に、ノニオン性の親水性基を有する基を表し、Rn1及びRn2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、npはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのnpの合計は1以上であり、nqはそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、ただし、1つのベンゼン環に結合する基の数を表すnp及びnqにおけるnp+nqは1~5の整数であり、nrはそれぞれ独立に、0~5の整数を表す。
<13> 前記Rnoが、ポリアルキレンオキシ構造を有する基である前記<12>に記載の化合物。
<14> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の化合物、及び、水系媒体を含む組成物。
<15> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の化合物を含むフォトクロミック材料。
<16> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の化合物を含む界面物性光制御剤。
本発明によれば、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する新規な化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記新規な化合物を含む組成物、フォトクロミック材料又は界面物性制御剤を提供することができる。
本発明の一実施形態であるN-C6-LPDのフォトクロミック反応に伴う、紫外・可視光領域における光吸収特性の変化を示す図である。なお、縦軸は、吸光度(Absorbance)を表し、横軸は、波長(Wavelength)(単位:nm)を表す。 本発明の一実施形態であるN-C6-LPDの5mM水溶液の620nmの波長における吸光度の経時変化を表す図である。Darkは、紫外線を照射していない状態、UVは、紫外線を照射した状態を表す。なお、縦軸は、波長620nmの光の吸光度(Abs@620nm)を表し、横軸は、時間(Time)(単位:s(秒))を表す。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本実施形態において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本実施形態において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
(化合物)
本実施形態に係る化合物は、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有し、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造のイミダゾール環に結合する少なくとも1つの芳香環に親水性基をもつ官能基を少なくとも1つ有する。
また、本実施形態に係る化合物は、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有し、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造のイミダゾール環の2位に結合する少なくとも一つの芳香環に親水性基をもつ官能基を少なくとも1つ有することが好ましい。
更に、本実施形態に係る化合物は、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、前記親水性基をもつ官能基を、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造における各イミダゾール環の2位に結合する芳香環にそれぞれ有することがより好ましい。
本実施形態に係る化合物は、ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有する新規な化合物であり、界面活性制御を可能とする精密で規則性の高い構造(例えば、ミセル等の分子集合体)をなし得る化合物である。
また、本実施形態に係る化合物は、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造(ロフィンダイマー構造とも称す)における各イミダゾール環の2位に結合する芳香環上に、親水性基又は親水性基が結合した基をそれぞれ有することにより、水溶性又は油溶性(特に、通常のロフィンダイマーと異なる水溶性)を示し、紫外光(UVとも称す)照射に伴う可逆的な構造変化、すなわち、フォトクロミズムを示す。なお、視覚的には、色変化として確認される。更に、ミセルの構造変化に伴う粘度、熱安定性等界面物性の制御が可能となる。
更に、本実施形態に係る化合物は、前記構成により、両親媒性の性質を有することから、化合物における各部の構造等にも依存するが、水等の水系媒体中においては自己組織化してミセルなどの分子集合体を形成し、また、非極性溶媒中においては自己組織化して逆ミセル等の分子集合体を形成する。当該分子が紫外光照射に伴い、2つのイミダゾール環を連結する結合の開裂により生じるラジカル(ロフィルラジカルとも称す)は、分子が自己組織化しているために、熱運動による拡散が抑制されることから、高速での再結合反応を示し、視覚的には紫外光の照射停止とほぼ同時に消色させることができる。
ここで、溶媒として水を用いて、本実施形態に係る化合物の紫外/可視吸収スペクトルを用いて計測したところ、通常のロフィンダイマーの有機溶媒中での値と比較して、再結合速度が速い。一般に、再結合反応は熱反応により生じるが、本実施形態に係る化合物は、室温(25℃)であっても生成したロフィルラジカルが再結合する。
本実施形態に係る化合物に関する前記性質について、下記化合物を一例として更に説明する。
前記化合物は、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造における各イミダゾール環の2位に結合する芳香環上に、親水性基としてアンモニウム基が結合した基をそれぞれ有する。
前記化合物は、下記式に示すように、紫外光照射(hν)に伴い、2つのイミダゾール環を連結する結合が開裂し、2つのロフィンラジカルが生成する。紫外線照射からロフィンラジカルが生成するまでの時間は短く、視覚的には紫外光の照射後、すぐにロフィンラジカルに由来する色変化が生じる。
また、前記化合物は、下記に示すように、室温(25℃)において、紫外線照射を停止すると、再結合反応が生じ、2つのロフィンラジカルは、元の前記化合物へ再結合する。視覚的には紫外光の照射停止とほぼ同時に消色させることができる(消色反応)。
前記化合物は、各イミダゾール環の2位に結合する芳香環上に、親水性基としてアンモニウム基が結合した基をそれぞれ有しているため、アンモニウム基の近傍部分が親水性基、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造及び連結基部分が疎水性基として機能し、界面活性能を有し、下記に示すように、水系媒体中において、界面物性を示し、ミセルやベシクル等の分子集合体(下記では、ミセルを示す)を形成する。このような分子集合体を形成することにより、水系媒体中であっても、紫外線照射による開裂反応により生じるラジカルは、分子が自己組織化してミセルを形成しているために、熱運動による拡散が抑制され、高速での再結合反応が可能となる。なお、分子構造(例えば、親水性基と芳香環とを結合する連結基の長さなどの構造)を適宜選択することにより非極性溶媒中においても界面物性を発揮させることも可能となり、この場合、逆ミセル等の分子集合体を形成する。
また、本実施形態に係る化合物は、紫外光照射によるロフィルラジカル生成時に分子構造が大きく変化するため、置換基の位置や構造、水溶液の組成等に応じて、色の変化とともに、分子集合体(ミセル)の形態変化も誘起され、界面物性が光により制御され得る。例えば、ロフィンラジカル生成時において、下記の上段に模式的に示すように、ミセルの形態の変化が小さい態様や、下記の下段に模式的に示すように、ミセルの形態の変化が大きい態様を適宜設計することが可能となる。このようなミセルの形態変化に起因した界面物性の制御を光(紫外線)でスイッチさせることができる。
以下、本実施形態に係る化合物の詳細について説明する。
本実施形態に係る化合物は、親水性基を少なくとも1つ有し、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2つ以上有することが好ましい。
親水性基としては、イオン性基、又は、ノニオン性基であることが好ましい。
イオン性基としては、カチオン性基、アニオン性基、及び、両性イオン性基が挙げられる。これらの中でも、優れた界面活性の付与の観点からは、カチオン性基、又は、両性イオン性基が好ましく、カチオン性基がより好ましい。また、油溶性の香粧品の可溶化、乳化などの観点からは、アニオン性基、又は、両性イオン性基が好ましく、アニオン性基がより好ましい。
カチオン性基としては、窒素原子等を含む基が挙げられ、第一級~第四級アンモニウム基、ピリジニウム基、及び、イミダゾリウム基が好ましく挙げられ、第四級アンモニウム基が特に好ましく挙げられる。
アニオン性基としては、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスホネート基、及び、硫酸アニオン基(スルフェート基)が挙げられ、カルボキシレート基、及び、スルホネート基がより好ましく挙げられ、スルホネート基が特に好ましく挙げられる。
両性イオン性基としては、ベタイン構造が好ましく挙げられる。
ベタイン構造におけるカチオン構造とアニオン構造との組み合わせとしては、前記カチオン性基と前記アニオン性基との組み合わせが好ましく挙げられる。中でも、第四級アンモニウム基とカルボキシレート基又はスルホネート基とを組み合わせたベタイン構造が特に好ましい。
ベタイン構造としては、例えば、-N(R-L-CO が挙げられる。Rはそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基を表し、Lは炭素数1~8のアルキレン基を表す。
親水性基がノニオン性基である場合、すなわち、ノニオン性の親水性基としては、ノニオン性界面活性剤における親水性基が好ましく挙げられ、ポリアルキレンオキシ構造を有する基、2以上のヒドロキシ基及びエステル構造を有する基、及び、アルカノールアミド構造を有する基がより好ましく挙げられる。
ポリアルキレンオキシ構造を有する基におけるポリアルキレンオキシ構造は、ポリエチレンオキシ構造、ポリプロピレンオキシ構造、及び、これらが混在するポリ(エチレンオキシ/プロピレンオキシ)構造が好ましく挙げられ、ポリエチレンオキシ構造がより好ましく挙げられる。
ポリアルキレンオキシ構造におけるアルキレンオキシ構造の繰り返し数は、2以上であればよいが、2~10であることがより好ましく、3~8であることが特に好ましい。
また、ポリアルキレンオキシ構造を有する基における一方の末端は、アルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。
2以上のヒドロキシ基及びエステル構造を有する基としては、グリセリンモノエステル構造を有する基、ソルビタンエステル構造を有する基、及び、ショ糖エステル構造を有する基が好ましく挙げられる。
アルカノールアミド構造を有する基としては、ジエタノールアミド構造を有する基が好ましく挙げられる。
本実施形態に係る化合物は、前記親水性基がカチオン性基又はアニオン性基である場合、前記親水性基を電気的に中和する対イオンを有することが好ましい。なお、例えば、前記親水性基がベタイン構造等の両性イオン性基である場合、対イオンを有しない場合もある。
対イオンとしては、化合物全体として電気的に中和されるものであれば特に制限はなく、アニオンであっても、カチオンであっても、一価のイオンであっても、二価以上の多価イオンであっても、対イオンの数が1つであっても、2つ以上であってもよいが、水系媒体への溶解性の観点から、一価のイオンであることが好ましい。
前記親水性基がカチオン性基である場合、前記対イオンは、水系媒体への溶解性の観点から、Cl、Br、BF 、又は、PF であることが好ましく、Cl、又は、Brであることがより好ましい。
前記親水性基がアニオン性基である場合、前記対イオンは、水系媒体への溶解性の観点から、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は第四級アンモニウムイオンであることが好ましく、アルカリ金属イオンであることがより好ましい。
本実施形態に係る化合物が有する親水性基の数は、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、1~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、2又は4が更に好ましく、2が特に好ましい。
また、本実施形態に係る化合物が有する親水性基は、ミセル等の分子集合体の安定性及び界面物性制御の容易性の観点から、同じ構造の基であることが好ましい。
前記親水性基をもつ官能基は、親水性基自体であっても、親水性基と、前記芳香環及び前記親水性基を連結する連結基とが結合した基であってもよい。
また、本実施形態に係る化合物は、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、前記親水性基をもつ官能基が、親水性基と、前記芳香環と前記親水性基とを連結する連結基と、が結合した基であることが好ましい。すなわち、前記親水性基は、前記芳香環と直接結合していないことが界面活性の発現及び界面物性制御の面から好ましい。
本実施形態に係る化合物において、前記芳香環と前記親水性基とを連結する連結基としては特に制限はなく、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子からなる基が好ましく、炭素原子及び水素原子からなる基であるか、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基がより好ましい。
また、前記連結基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。また、前記連結基は、分岐して2以上の親水性基を有していてもよい。また、前記連結基は、芳香環上の2以上の炭素原子と結合する連結基であってもよい。
前記連結基の炭素数は、特に制限はないが、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24であることが好ましく、2~18がより好ましく、2~8が更に好ましく、4~8が特に好ましい。また、前記連結基の炭素数は、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24が好ましく、4~18がより好ましく、8~18が更に好ましい。
また、前記連結基は、アルキレン基、又は、1以上のアルキレン基と1以上のエーテル結合を含む基が好ましく、アルキレンオキシ基が更に好ましい。
更に、前記連結基の長さ(前記芳香環と前記親水性基との間を最短でつなぐ原子数)が、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24が好ましく、2~18がより好ましく、2~8が更に好ましく、4~8が特に好ましい。また、前記連結基の長さは、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24が好ましく、4~18がより好ましく、8~18が更に好ましい。
本実施形態に係る化合物は、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造における各イミダゾール環の2,4,5位に結合する芳香環は、前記イオン性基を有する官能基以外に、他の置換基を有していてもよい。
他の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、及び、メルカプト基が挙げられる。また、これら置換基が更に前記置換基により置換されていてもよい。
本実施形態に係る化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
式(1)中、Rionはそれぞれ独立に、イオン性基を表し、Lはそれぞれ独立に、単結合、又は、二価の連結基を表し、Xionはそれぞれ独立に、対イオンを表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、pはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのpの合計は1以上であり、qはそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、ただし、1つのベンゼン環に結合する基の数を表す一対のp及びqにおけるp+qは1~5の整数であり、rはそれぞれ独立に、0~5の整数を表す。
式(1)におけるRionのイオン性基は、カチオン性基、アニオン性基又は両性イオン性基であることが好ましく、カチオン性基又はアニオン性基であることがより好ましい。カチオン性基、アニオン性基及び両性イオン性基としては、前述したカチオン性基、アニオン性基及び両性イオン性基と同義であり、好ましい態様も同様である。
中でも、Rionはそれぞれ独立に、第四級アンモニウム基であることが好ましく、トリアルキルアンモニウム基がより好ましく、トリメチルアンモニウム基、又は、トリエチルアンモニウム基が更に好ましく、トリメチルアンモニウム基が特に好ましい。
式(1)におけるXionの対イオンは、前述した対イオンと同義であり、好ましい態様も同様である。
中でも、Xionはそれぞれ独立に、一価のアニオンであることが好ましく、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)又はアルカリ金属イオンであることがより好ましい。
また、前記対イオンの説明で前述したように、前記イオン性基がベタイン構造等の両性イオン性基である場合、Xionが存在しない場合もある。また、二価以上の多価の対イオンである場合は、Xionの数は、適宜化合物全体として電気的に中和するために対応した数となる。
式(1)におけるLは、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、疎水性を付与する二価の連結基であることが好ましい。
前記疎水性を付与する二価の連結基としては、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び、硫黄原子よりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子からなる基であることが好ましく、炭素原子及び水素原子からなる基で、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる基であることがより好ましく、アルキレン基、又は、1以上のアルキレン基と1以上のエーテル結合を含むとを含む基が更に好ましく、アルキレンオキシ基が特に好ましい。
また、前記二価の連結基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
式(1)におけるLの炭素数は、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~18であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、4~8であることが特に好ましい。また、式(1)におけるLの炭素数は、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、4~18であることが好ましく、8~18であることがより好ましい。
更に、式(1)におけるLは、いずれも同じ基であることが好ましい。
また、前記Lの長さ(前記芳香環と前記イオン性基との間を最短で結ぶ原子数)が、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24が好ましく、2~18がより好ましく、2~8が更に好ましく、4~8が特に好ましい。また、前記Lの長さは、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、2~24が好ましく、4~18がより好ましく、8~18が更に好ましい。
式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基が好ましく、ハロゲン原子、又は、アルキル基がより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。
式(1)におけるpはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのpの合計は1以上である。すなわち、2つの前記pのうちいずれか1つは、1以上の整数である。
また、式(1)におけるpはそれぞれ独立に、界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、各々1つ(合計2)であることが特に好ましい。
式(1)におけるqはそれぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
式(1)におけるrはそれぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
また、式(1)において、2以上のRを有する場合、Rは、いずれも同じ基であることが好ましく、2以上のRを有する場合、Rは、いずれも同じ基であることが好ましい。
更に、式(1)における2以上のpは、いずれも同じ値であることが好ましく、また、q及びrについても同様である。
本実施形態に係る化合物は、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
式(2)中、Ralはそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Lはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、Zはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、NR、又は、硫黄原子を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Xはそれぞれ独立に、対アニオンを表す。
式(2)におけるR、R及びrは、式(1)におけるR、R及びrと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(2)におけるRalはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4の直鎖アルキル基が更に好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
また、式(2)におけるRalは、いずれも同じ基であることが好ましい。
式(2)におけるLはそれぞれ独立に、炭素数2~18のアルキレン基が好ましく、炭素数2~8のアルキレン基がより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基が更に好ましい。
前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐アルキレン基であってもよい。
また、式(2)におけるLは、いずれも同じ基であることが好ましい。
更に、前記Lの長さ(前記芳香環と前記イオン性基との間を最短で結ぶ原子数)が、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から2~18が好ましく、2~8が好ましく、4~8が特に好ましい。また、前記Lの長さは、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、4~18が好ましく、8~18がより好ましい。
式(2)におけるZはそれぞれ独立に、単結合、又は、酸素原子が好ましい。
また、式(2)におけるZは、いずれも同じ基であることが好ましい。
前記NRにおけるRは、水素原子、又は、アルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。
式(2)におけるXはそれぞれ独立に、一価のアニオンが好ましく、塩化物イオン(Cl)又は臭化物イオン(Br)がより好ましい。
また、式(2)におけるXは、いずれも同じアニオンであることが好ましい。
式(2)におけるqは、それぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
また、式(2)におけるqは、いずれも同じ値であることが好ましい。
本実施形態に係る化合物は、下記式(3)で表される化合物であることがより好ましい。
式(3)中、Lはそれぞれ独立に、炭素数2~18のアルキレン基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、又は、アルキル基を表す。
式(3)におけるRal、X、q及びrは、式(2)におけるRal、X、q及びrと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(3)におけるLはそれぞれ独立に、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、炭素数2~8のアルキレン基が好ましく、炭素数2~8の直鎖アルキレン基がより好ましく、炭素数4~8の直鎖アルキレン基が更に好ましい。また、式(3)におけるLはそれぞれ独立に、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、炭素数4~18のアルキレン基が好ましく、炭素数8~18のアルキレン基がより好ましく、炭素数8~18の直鎖アルキレン基が更に好ましい。
また、式(3)におけるLは、いずれも同じ基であることが好ましい。
式(3)におけるR及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
また、式(3)において、2以上のRを有する場合、Rは、いずれも同じ基であることが好ましく、2以上のRを有する場合、Rは、いずれも同じ基であることが好ましい。
本実施形態に係る化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
式(4)中、Ranはそれぞれ独立に、アニオン性基を表し、Lanはそれぞれ独立に、アルキレン基、又は、アルキレン基、エステル結合及びエーテル結合よりなる群から選ばれた2以上の基を組み合わせた基を表し、Zanはそれぞれ独立に、単結合、酸素原子、NR、又は、硫黄原子を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、Xan+はそれぞれ独立に、対カチオンを表す。
式(4)におけるR、R及びrは、式(1)におけるR、R及びrと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(4)におけるRanはそれぞれ独立に、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスホネート基、又は、硫酸アニオン基(スルフェート基)であることが好ましく、カルボキシレート基、又は、スルホネート基がより好ましい。
また、式(4)におけるRanは、いずれも同じ基であることが好ましい。
式(4)におけるLanはそれぞれ独立に、アルキレン基、エステル結合及びエーテル結合よりなる群から選ばれた2以上の基を組み合わせた基が好ましく、3以上のアルキレン基、1以上のエステル結合及び1以上のエーテル結合とを組み合わせた基がより好ましい。
また、式(4)のLanにおける炭素数はそれぞれ独立に、2~20であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、5~12であることが特に好ましい。
前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても、分岐アルキレン基であってもよい。
また、式(4)におけるLanは、いずれも同じ基であることが好ましい。
更に、前記Lanの長さ(前記芳香環と前記イオン性基との間を最短で結ぶ原子数)が、水系媒体中における界面活性能、及び、ミセル等の分子集合体の形成性の観点から2~18が好ましく、2~12がより好ましく、4~10が特に好ましい。また、前記Lの長さは、非極性溶媒中における界面活性能、及び、逆ミセル等の分子集合体の形成性の観点から、4~18が好ましく、8~18がより好ましい。
式(4)におけるZanはそれぞれ独立に、単結合、又は、酸素原子が好ましい。
また、式(4)におけるZanは、いずれも同じ基であることが好ましい。
前記NRにおけるRは、水素原子、又は、アルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。
式(4)におけるXan+はそれぞれ独立に、一価のカチオンが好ましく、アルカリ金属カチオン又は第四級アンモニウムカチオンがより好ましく、アルカリ金属カチオンが更に好ましい。
また、式(4)におけるXan+は、いずれも同じカチオンであることが好ましい。
式(4)におけるqはそれぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
また、式(4)におけるqは、いずれも同じ値であることが好ましい。
本実施形態に係る化合物は、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
式(5)中、Rnoはそれぞれ独立に、ノニオン性の親水性基を有する基を表し、Rn1及びRn2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは無置換の芳香族複素環基を表し、npはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのnpの合計は1以上であり、nqはそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、ただし、1つのベンゼン環に結合する基の数を表すnp及びnqにおけるnp+nqは1~5の整数であり、nrはそれぞれ独立に、0~5の整数を表す。
式(5)のRnoのノニオン性の親水性基を有する基は、ポリアルキレンオキシ構造を有する基、2以上のヒドロキシ基及びエステル構造を有する基、又は、アルカノールアミド構造を有する基が好ましい。
式(5)のRnoのポリアルキレンオキシ構造を有する基におけるポリアルキレンオキシ構造及びその繰り返し数は、前述したアルキレンオキシ構造及びその繰り返し数と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(5)のRnoのポリアルキレンオキシ構造を有する基における一方の末端は、アルコキシ基又はヒドロキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。
式(5)におけるRnoはそれぞれ独立に、アルコキシポリアルキレンオキシ基又はヒドロキシポリアルキレンオキシ基であることが好ましく、アルコキシポリエチレンオキシ基又はヒドロキシポリエチレンオキシ基であることがより好ましく、アルコキシポリエチレンオキシ基であることが特に好ましい。
また、式(5)におけるRnoの炭素数は、5以上20以下であることが好ましく、5以上18以下であることがより好ましく、6以上12以下であることが特に好ましい。
式(5)におけるRn1、Rn2及びnpは、式(1)におけるR、R及びpと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(5)におけるnqはそれぞれ独立に、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
式(5)におけるnrはそれぞれ独立に、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
また、式(5)において、2以上のRn1を有する場合、Rn1は、いずれも同じ基であることが好ましく、2以上のRn2を有する場合、Rn2は、いずれも同じ基であることが好ましい。
更に、式(5)における2以上のnpは、いずれも同じ値であることが好ましく、また、nq及びnrについても同様である。
本実施形態に係る化合物は、フォトクロミズムや界面物性の光制御性を示すため、光メモリ、センサ材料(UVセンサ)、調光材料(窓ガラス、サングラス)、化粧品素材、印刷インク(水性インク、UVインク等)、薬剤(薬品、香料、着色剤等)放出剤、除放性材料、紫外線検出剤、ハイドロゲル、塗料、芳香剤、マニキュアやサンスクリーン剤などの香粧品、筆記具、文房具、配管抵抗制御剤等の種々の用途に好適に用いられる。
本実施形態に係る化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を組み合わせて製造することができる。
一例としては、イオン性基の公知の導入法、及び、ロフィンダイマー化合物の公知の合成方法を組み合わせて製造することができる。
(組成物)
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る化合物を含む組成物であり、本実施形態に係る化合物、及び、水系媒体を含む組成物であることが好ましい。
水系媒体としては、水、及び、水溶性有機溶媒が挙げられる。
水としては、特に制限されず、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外ろ過水、水道水、硬水、軟水等を用いられるが、特に不純物の混入、又は、微生物の発生を防止するという観点から、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外ろ過水が好適に挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、アルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、炭酸エステル類等が挙げられる。これらの中でも、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
水、及び、水溶性有機溶媒は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
また、前述した逆ミセル等の分子集合体を形成する場合、本実施形態に係る組成物は、非極性有機溶媒を含むことが好ましい。
非極性有機溶媒としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
また、非極性有機溶媒は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る化合物を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本実施形態に係る組成物における本実施形態に係る化合物の含有量は、特に制限はなく、組成物を使用する形態に応じ適宜選択すればよい。
例えば、本実施形態に係る化合物、及び、水系媒体を含む組成物である場合、本実施形態に係る化合物の濃度は、特に制限はないが、0.01mM以上0.5M以下が好ましい。なお、濃度の単位Mは、mol/Lを表す。
本実施形態に係る組成物は、前述した以外の他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、特に制限はなく、公知の各種添加剤を用いることができる。
添加剤としては、例えば、本実施形態に係る化合物以外の界面活性剤、着色剤、及び、前記以外の有機溶媒等が挙げられる。
(フォトクロミック材料、及び、界面物性光制御剤)
本実施形態に係るフォトクロミック材料は、本実施形態に係る化合物を含む。
また、本実施形態に係る界面物性光制御剤は、本実施形態に係る化合物を含む。
本実施形態に係るフォトクロミック材料、及び、本実施形態に係る界面物性光制御剤は、本実施形態に係る化合物において、前述したような種々の用途に用いることができる。
本実施形態に係るフォトクロミック材料、及び、本実施形態に係る界面物性光制御剤は、本実施形態に係る化合物を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本実施形態に係るフォトクロミック材料、及び、本実施形態に係る界面物性光制御剤における本実施形態に係る化合物の含有量及び化合物の状態(溶液や固体等)は、特に制限はなく、使用する形態に応じ適宜選択すればよい。
本実施形態に係るフォトクロミック材料、及び、本実施形態に係る界面物性光制御剤は、必要に応じ、公知の化合物を更に含むことができる。
本実施形態に係るフォトクロミック材料として、具体的には例えば、レンズに本実施形態に係る化合物を含むサングラスが挙げられる。紫外線が照射されるとレンズの光学濃度が高くなり、一方、紫外線の照射がない場所では、レンズの光透過性が高いサングラスが考えられる。
また、本実施形態に係る界面物性光制御剤としては、具体的には例えば、本実施形態に係る化合物を含むインクが挙げられる。紫外線照射の有無に応じて、吐出時には粘度を低下させ、記録媒体上では粘度や乾燥速度等を上昇させるインクが考えられる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(実施例1)
<フォトクロミック化合物(N-C6-LPD)の合成>
N-C6-LPDは、以下に示す合成経路により合成した。
イオン性基として第四級アンモニウム塩構造を導入した新規化合物(N-C6-LPD)は、前記スキームに従い合成した。
ステップ1では、ウィリアムソンエーテル合成を用いて、炭酸カリウム(KCO)存在下アセトン(Acetone)溶媒中、4-ヒドロキシベンズアルデヒドに1,6-ジブロモヘキサンを導入し、ステップ2では、ステップ1で得られた化合物に対し、酢酸アンモニウム(NHOAc)存在下酢酸(Acetic acid)溶媒中、ベンジル(Benzil)を反応させ、ブロモ基を導入したロフィン化合物を合成した。更に、ステップ3ではステップ2で得られたロフィン化合物を、フェリシアン化鉄カリウム(K[Fe(CN)])及び水酸化ナトリウム存在下水(Water)/ジクロロメタン(DCM)溶媒中でダイマー化し、ステップ4で、ステップ3で得られたダイマーに対し、アセトン溶媒中、トリメチルアミン(N(CH)を反応させ、イオン性基として第四級アンモニウム塩構造を導入することで目的物質(N-C6-LPD)を得た。
なお、H-NMR及び質量分析により、各ステップにおける目的物質が得られていることを確認した。
より具体的には、以下のように合成を行った。
<化合物2(4-(6-ブロモヘキシルオキシ)ベンズアルデヒド)の合成>
ナスフラスコに、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(3.66g、30.0mmol)、1,6-ジブロモヘキサン(14.7g、60.0mmol)、炭酸カリウム(8.31g、60.1mmol)、アセトン(150mL)を加え、60℃で24時間還流した。その後、熱時ろ過することで炭酸カリウムを取り除き、得られた濾液から溶媒を留去した。さらに、これにクロロホルムを加えて、分液ロートを用いて超純水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層中に含まれる水分を硫酸ナトリウムで脱水処理した。硫酸ナトリウムを濾別した後、溶媒留去した。これを、ジクロロメタンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。カラム精製後、溶媒留去、減圧乾燥を行うことで、淡黄色固体である化合物2(収率58%)を得た。
生成物をプロトン核磁気共鳴(H-NMR)及びエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 1.50-1.80 (m, 4H), 1.82-1.95 (m, 4H), 3.43 (t, 2H, J = 6.8 Hz), 4.05 (t, 2H, J = 6.4 Hz), 6.98 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.83 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 9.88 (s, 1H) ppm.
MS (ESI, +ve): 307 [M+Na]+.
<化合物3(1-{2-(4,5-ジフェニルイミダゾリル)}-4-(6-ブロモヘキシルオキシ)ベンゼン)の合成>
ナスフラスコに、化合物2(0.636g、2.23mmol)、ベンジル(0.406g、1.93mmol)、酢酸アンモニウム(1.49g、19.3mmol)、酢酸(15mL)を加え、125℃で1時間還流した。その後、冷水を加えた後、水酸化ナトリウム水溶液を加え中和した。更に、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。これに硫酸ナトリウムを加え脱水処理し、硫酸ナトリウムを濾別した後、溶媒留去した。これを、酢酸エチル:クロロホルム=1:15の混合溶媒(体積比)を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。カラム精製後、溶媒留去、減圧乾燥を行うことで、白色粉末である化合物3(収率70%)を得た。生成物をH-NMR及びESI-MSによって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 1.45-1.48 (m, 4H), 1.73-1.85 (m, 4H), 3.55 (t, 2H, J = 6.7 Hz), 4.02 (t, 2H, J = 6.3 Hz), 7.03 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.21-7.53 (m, 10H), 8.00 (d, 2H, J = 8.8 Hz).
MS (ESI, +ve): 497 [M+Na]+.
<化合物4の合成>
ナスフラスコに、化合物3(1.001g、2.10mmol)、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム(2.767g、8.40mmol)、ジクロロメタン(100mL)を加え、そこに、3M(=mol/L)水酸化ナトリウム水溶液(21mL)を撹拌しながらゆっくりと加えた後、密閉状態にして暗所で24時間撹拌した。その後、ジクロロメタンを加え、分液ロートを用いて超純水、炭酸水素ナトリウム水溶液、超純水の順で洗浄し、有機層中の水分を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、減圧乾燥することで、黄緑色固体を得た。粗生成物に対してクロロホルムを展開溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、日本分析工業(株)製LC-9210NEXT)により精製を行った。溶媒留去、減圧乾燥を行うことで、黄緑色固体である化合物4(収率50%)を得た。生成物をH-NMR及びESI-MSによって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 1.40-1.51 (m, 8H), 1.61-1.88 (m, 8H), 3.34-3.59 (m, 4H), 3.82-3.92 (m, 2H), 4.15 (t, 2H, J = 5.6 Hz), 6.51-6.58 (m, 2H), 6.73-7.52 (m, 22H), 7.75 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 8.32 (d, 2H, J = 8.6 Hz).
MS (ESI, +ve): 971 [M+Na]+.
<N-C6-LPDの合成>
バイアル管に、化合物4(0.063g、0.067mmol)、アセトン(2.8mL)、4.3Mトリメチルアミン水溶液(0.160g、0.69mmol)を加え、密閉状態にして暗所で24時間撹拌した。その後、溶媒留去及び減圧乾燥により、アセトンとトリメチルアミンとを取り除き、黄色固体であるN-C6-LPDを得た。H-NMR及びESI-MSによって同定した。結果を以下に示す。結果として、H-NMRの積分比より、得られたN-C6-LPDには約20%程度のモノマー体が混合していること、つまり80%純度であることが示唆された。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 8.35-8.26 (m, 2H), 7.81-6.49 (m, 26H), 4.19-4.06 (m, 2H), 4.01-3.79 (m, 2H), 3.11-2.99 (m, 18H), 1.88-1.62 (m, 8H), 1.60-1.26 (m, 8H) ppm.
MS (ESI, +ve): 987 [M-Br]+, 453 [M-2Br]2+.
(界面物性の確認)
得られたN-C6-LPDは、水に溶解し、また、容器を振とうすると泡立ちを観察したことから、水中での界面物性の発現を確認した。
(フォトクロミック反応の確認)
合成したN-C6-LPDを、アルゴン(Ar)雰囲気下において5mMの濃度になるよう水に溶解し、これに水銀/キセノンランプを用いて紫外光照射したところ、溶液の色が薄い黄色から青色に瞬時に変色した。また紫外光を遮断すると、溶液の色は瞬時に元の薄黄色に戻った。
(紫外・吸収スペクトルによるフォトクロミック反応の確認)
図1は、N-C6-LPDの5mM水溶液の紫外光照射前後における紫外・可視吸収スペクトルを示す。その結果、紫外光照射によりロフィルラジカルに特有の470nm付近のピーク及び620nm付近の吸光度の増大が確認された。これらの結果より、紫外光照射に伴いN-C6-LPDのロフィンダイマー構造が開裂しロフィルラジカルが生成して、着色が生じることが分かった。
(紫外・吸収スペクトルによるフォトクロミック反応速度の評価)
620nmにおける吸光度の紫外光照射に伴う時間変化を図2に示す。紫外光を照射すると吸光度が増大し、紫外光照射を停止すると直ちに吸光度が減少したことから、高速で解離/再結合反応が進行することが示唆された。
そこで、次にロフィルラジカルの再結合反応における反応速度定数を求めた。なお、本研究では濃度の代わりに吸光度を用いた見かけの二次反応速度定数を算出した。結果を表1にまとめて示す。
その結果、N-C6-LPD水溶液の再結合反応速度は、オクタン溶媒中の通常のロフィンダイマー(Octane)では、0.11Abs-1・min-1であったのに対して、N-C6-LPDの5mM水溶液(N-C6-LPD aq.)では、7.4×10Abs-1・min-1程度と10倍程度高速化することが分かった。また、通常の界面活性剤が形成するミセル中にN-C6-LPDを溶解させた場合(CTAB micellar aq.)と比べても10倍以上速度が向上していた。これはN-C6-LPD自身が分子集合体を形成したことにより、ラジカル種の拡散が抑制されたためである。また、紫外光照射によるロフィルラジカル生成時は、分子構造が大きく変化するため、色の変化とともに、界面活性剤が形成する分子集合体(ミセル)の形態変化も高速で誘起されることから、界面物性の高速光制御が達成できていると考察される。
(実施例2)
<フォトクロミック化合物(TED-LPD)の合成>
TED-LPDは、以下に示す合成経路により合成した。
<化合物6(トリエチレングリコールモノメチルエーテルトシレート)の合成>
テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(3.693g、22.49mmol)をテトラヒドロフラン(THF、30mL)に溶解し、そこに1M水酸化ナトリウム水溶液(30mL)を加えた。この混合物を氷浴中で撹拌し、THF(30mL)に溶解させた塩化パラトルエンスルホニル(Ts-Cl、4.319g、22.65mmol)を5℃以下で冷却しながら1時間かけて滴下した。この混合溶液を室温(10℃~30℃、以下同様)で更に4時間撹拌した。続いて、この混合溶液を氷水に注だ。この混合溶液に対してジクロロメタンを用いた抽出を2回行った。抽出されたジクロロメタン溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル/ヘキサン:1/4(v/v))により精製し透明油状の生成物(化合物6、収率59%)を得た。生成物をプロトン核磁気共鳴(H-NMR)及びエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 2.44 (s, 3H), 3.37 (s, 3H), 3.55-3.50 (m, 2H), 3.63-3.57 (m, 6H), 3.71-3.66 (m, 2H), 4.16 (t, 2H, J = 3.0 Hz), 7.34 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 7.80 (d, 2H, J = 9.0 Hz) ppm.
MS (ESI, +ve): 341 [M+Na]+.
<化合物3(4-(メトキシトリエチレンオキシ)ベンズアルデヒド)の合成>
化合物2(3.407g、10.70mmol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(1.950g、15.97mmol)、炭酸カリウム(4.428g、32.04mmol)、アセトニトリル(85mL)をフラスコ内で混合し、そこに触媒量のヨウ化カリウムを加えた。この混合物を87℃で28時間加熱還流した。反応物を室温まで冷却し、残渣をクロロホルムに溶解し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。このクロロホルム溶液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル/ヘキサン:1/4(v/v))により精製し透明油状の生成物(収率90%)を得た。生成物をH-NMR及びESI-MSによって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 3.37 (s, 3H), 3.59-3.51 (m, 2H), 3.78-3.63 (m, 6H), 3.93-3.86 (m, 2H), 4.21 (t, 2H, J = 3.0 Hz), 7.02 (m, 2H, J = 9.0 Hz), 7.83 (m, 2H, J = 9.0 Hz), 9.88 (s, 1H) ppm.
MS (ESI, +ve): 291 [M+Na]+.
<化合物4の合成>
化合物3(2.446g、9.114mmol)、ベンジル(1.820g、8.657mmol)、酢酸アンモニウム(5.642g、73.19mmol)、酢酸(52mL)をフラスコ内で混合した。この混合物を128℃で6時間撹拌した。反応物を室温まで冷却し、残渣をクロロホルムに溶解し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。このクロロホルム溶液を、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル/ヘキサン:2/1(v/v))により精製し白色固体の生成物(収率86%)を得た。生成物をH-NMR及びESI-MSによって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 3.24 (s, 3H), 3.46-3.40 (m, 2H), 3.63-3.49 (m, 6H), 3.76 (t, 2H, J = 3.0 Hz), 4.15 (t, 2H, J = 6.0 Hz), 7.05 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 7.61-7.13 (m, 10H), 8.01 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 12.5 (s, 1H) ppm.
MS (ESI, +ve): 459 [M+H]+.
<TEG-LPDの合成>
化合物4(0.229g、0.500mmol)、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム(0.592g、1.80mmol)をジクロロメタン(16mL)に溶解し、そこに3M水酸化ナトリウム水溶液(5mL)を加えた。この混合物を室温暗所下で48時間撹拌した。続いて、この反応溶液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、そして飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル)により精製し緑色油状の生成物(収率13%)を得た。生成物をH-NMR、ESI-MS、及び赤外分光法(IR)によって同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 3.42-3.31 (m, 6H), 4.31-3.48 (m, 24H), 7.26-6.18 (m, 18H), 8.58-7.26 (m, 10H) ppm.
MS (ESI, +ve): 937 (100, [M+Na]+).
IR (KBr): 1310 cm-1(C-N伸縮振動).
(界面物性の確認)
得られたTEG-LPDは、水に溶解し、また、容器を振とうすると泡立ちを観察したことから、水中での界面物性の発現を確認した。
(フォトクロミック反応の確認)
合成したTEG-LPDを、アルゴン(Ar)雰囲気下において5mMの濃度になるよう水に溶解し、これに水銀/キセノンランプを用いて紫外光照射したところ、溶液の色が薄い黄色から青色に瞬時に変色した。また紫外光を遮断すると、溶液の色は瞬時に元の薄黄色に戻った。
(紫外・吸収スペクトルによるフォトクロミック反応の確認)
上記フォトクロミック反応の確認における紫外光照射によりロフィルラジカルに特有の470nm付近のピーク及び620nm付近の吸光度の増大が確認された。これらの結果より、紫外光照射に伴いTEG-LPDのロフィンダイマー構造が開裂しロフィルラジカルが生成して、着色が生じることが分かった。
(実施例3)
<フォトクロミック化合物(Anionic-LPD)の合成>
Anionic-LPDは、以下に示す合成経路により合成した。
イオン性基としてカルボン酸塩構造を導入した新規化合物(Anionic-LPD)は、前記スキームに従い合成した。
ステップ1では、4-ヒドロキシベンズアルデヒドのヒドロキシ基を、2-ブロモエタノールによりエーテル化し、ステップ2では、ステップ1で得られた化合物に対し、酢酸アンモニウム(NHOAc)存在下酢酸(Acetic acid)溶媒中、ベンジル(Benzil)を反応させ、ロフィン化合物を合成した。更に、ステップ3ではステップ2で得られたロフィン化合物を、フェリシアン化鉄カリウム(K[Fe(CN)])及び水酸化ナトリウム存在下水(Water)/ジクロロメタン(CHCl)溶媒中でダイマー化し、ステップ4で、ステップ3で得られたダイマーに対し、ジグリコール酸無水物(1,4-ジオキサン-2,6-ジオン)を反応させ、イオン性基としてカルボン酸塩構造を導入することで目的物質(Anionic-LPD)を得た。
なお、H-NMR及び質量分析により、各ステップにおける目的物質が得られていることを確認した。
(界面物性の確認)
得られたAnionic-LPDは、水に溶解し、また、容器を振とうすると泡立ちを観察したことから、水中での界面物性の発現を確認した。
(フォトクロミック反応の確認)
合成したAnionic-LPDを、アルゴン(Ar)雰囲気下において5mMの濃度になるよう水に溶解し、これに水銀/キセノンランプを用いて紫外光照射したところ、溶液の色が薄い黄色から青色に瞬時に変色した。また紫外光を遮断すると、溶液の色は瞬時に元の薄黄色に戻った。
(紫外・吸収スペクトルによるフォトクロミック反応の確認)
上記フォトクロミック反応の確認における紫外光照射によりロフィルラジカルに特有の470nm付近のピーク及び620nm付近の吸光度の増大が確認された。これらの結果より、紫外光照射に伴いAnionic-LPDのロフィンダイマー構造が開裂しロフィルラジカルが生成して、着色が生じることが分かった。

Claims (4)

  1. ヘキサアリールビスイミダゾール構造を有し、
    前記ヘキサアリールビスイミダゾール構造のイミダゾール環に結合する少なくとも1つの芳香環に親水性基をもつ官能基を少なくとも1つ有し、
    下記式(5)で表される化合物。

    式(5)中、Rnoはそれぞれ独立に、ノニオン性の親水性基であり、かつポリアルキレンオキシ構造を有する基を表し、Rn1及びRn2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、アリールオキシ基、又は、芳香族複素環基を表し、npはそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、2つのnpの合計は1以上であり、nqはそれぞれ独立に、0~4の整数を表し、ただし、1つのベンゼン環に結合する基の数を表すnp及びnqにおけるnp+nqは1~5の整数であり、nrはそれぞれ独立に、0~5の整数を表す。
  2. 請求項1に記載の化合物、及び、水系媒体を含む組成物。
  3. 請求項1に記載の化合物を含むフォトクロミック材料。
  4. 下記N-C6-LPDを含む界面物性光制御剤。

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