JP7399452B2 - 洗浄装置 - Google Patents

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Description

本発明は、洗浄装置に関する。
半導体ウェハ、フォトマスクなどの電子基板を洗浄する際には、超音波洗浄などの物理的な洗浄と、薬液を用いた化学的な洗浄とが行われている。化学的な洗浄は、物理的な洗浄と比較して電子基板への負荷が少なく、微細な塵を適切に処理し易い。それ故、電子基板を洗浄する際には、主に化学的な洗浄が行われている。
薬液を用いた洗浄には、例えば枚葉式洗浄装置が使用される。特許文献1には、ウェハを静止させるか又は低速回転させた状態で薬液をウェハ表面に滴下し、この初回の薬液滴下によるウェハ表面上での薬液の広がり方が不均一であることを確認してから、薬液が広がっていない位置に薬液を再滴下することにより、薬液を均一に塗布する方法が記載されている。
枚葉式洗浄装置においてウェハ上に滴下された薬液は、ウェハの回転により生じる遠心力でウェハ上に広がる。余剰の薬液はウェハの縁から飛ばされる。飛ばされた薬液は、装置が備えているカップの内壁面に当たった後、排液される。このとき、カップの内壁に当たった薬液が、ウェハ上に跳ね返ることにより、ウェハ上に不純物が残留してしまうことがある。不純物が残留したウェハは、要求される性能を満たさないため、不良品になる可能性がある。
特開2003-45768号公報 特開昭62-108520号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ウェハへの薬液の跳ね返りを抑制することにより、ウェハの歩留まりを向上することの可能な洗浄装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、回転軸に沿って伸びた支持部、及び、被洗浄物を固定することが可能であり且つ前記支持部と共に回転可能な固定面を備えた治具と、前記治具から離間した位置で、前記治具を取り囲む円環状の壁面を有したカップとを具備し、前記壁面の内壁は、前記固定面に平行な方向と交差する方向に設けられた複数の溝と前記複数の溝を隔てる複数の突起を有し、前記複数の溝と前記複数の突起とは交互に且つ前記被洗浄物を囲むように設けられており、前記複数の突起は、前記突起が有する複数の面のうち、前記溝に面した最も広い面が、前記治具に面するように傾斜しており、前記溝を挟んで隣接した2つの前記突起は、互いに向き合った2つの面を有しており、前記2つの面がなす角度は、5°~30°の範囲内にある洗浄装置が提供される。
本発明によると、ウェハへの薬液の跳ね返りを抑制することにより、ウェハの歩留まりを向上することの可能な洗浄装置を提供することが可能となる。
実施形態に係る洗浄装置の一例を概略的に示す断面図。 図1に示す洗浄装置に被洗浄物を固定した状態を概略的に示す断面図。 実施形態に係る洗浄装置の他の例を概略的に示す断面図。 図3のA部の拡大断面図。 薬液が飛散する様子を模式的に示す断面図。 実施形態に係る洗浄装置が備えるカップの寸法を模式的に描いた図。 図6の変形例を示す図。 参考例に係る洗浄装置の一例を概略的に示す断面図。 参考例に係る洗浄装置の他の例を概略的に示す断面図。
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
ウェハなどの電子基板を洗浄するための枚葉式洗浄装置として、例えば、洗浄装置が備えたカップの内壁をブラスト処理することにより表面粗さを高めたカップ、又は、カップの内壁に角度勾配を付けたカップなどが使用されている。
図8は、カップの内壁にブラスト処理が施された参考例に係る洗浄装置の一例を示す断面図である。図9は、カップの内壁に角度勾配が付けられた参考例に係る洗浄装置の一例を示す断面図である。
図8及び図9に示す洗浄装置100は、治具10と、カップ2とを備える。洗浄装置100は、洗浄液供給ノズル(図示していない)を更に備えていてもよい。洗浄液供給ノズルは、被洗浄物を洗浄するための薬液を供給することができる。
治具10は、回転軸13に沿って伸びた支持部11、及び、被洗浄物3を固定することが可能であり且つ上記支持部11と共に回転可能な固定面12を備える。支持部11は、回転軸13を軸として回転することができる。支持部11は、例えば3000rpm以下の回転数で回転する。支持部11の形状は、例えば、回転軸13を軸とした軸対称形状である。軸対称形状とは、軸を中心に、円周方向には形状が変化せず、中心軸からの距離のみに依存して形状が変化する形状を意味する。支持部11の形状の例として、円柱又は角柱などの柱体形状、及び、錐台形状などを挙げることができる。
図8及び図9に示す治具10は、回転台14を備える。回転台14は、被洗浄物3を固定することが可能な固定面12を備える。治具10は、回転台14を備えていなくてもよい。この場合、支持部11が固定面12を備える。
治具10が回転台14を備えている場合、回転台14は、支持部11の回転軸方向の端部と連結している。それ故、回転台14は、支持部11と共に回転することができる。回転台14の形状も、支持部11の形状と同様に、回転軸13を軸とした軸対称形状である。
図8及び図9では一例として、支持部11及び回転台14が何れも円柱形状である場合を描いている。回転台14は、2つの円形の底面を有している。これら2つの底面のうち、一方の底面は支持部11と連結されている。他方の底面は固定面12である。
固定面12は、例えば真空吸着などで被洗浄物3を固定することができる。固定面12は、例えば、回転軸13と垂直に交わっている。固定面12には、例えば、複数の穴が開いている。これらの穴は、回転台14及び支持部11を通じて、図示しない吸引装置に接続されている。固定面12に被洗浄物3が載せられた状態で、固定面12に設けられた複数の穴内の流体(例えば空気)を吸引することにより、被洗浄物3は、固定面12に真空吸着され得る。
被洗浄物3は、例えば、主面が円形の半導体ウェハである。被洗浄物3は、固定面12に固定することができるものであれば特に限定されない。カップ2は、治具10から離間した位置に配置されている。カップ2は、治具10を取り囲む円環状の壁面21を有したカップである。壁面21は、例えば、重力方向に伸びる側壁面である。壁面21は、内壁210を含む。
カップ2は、壁面21の一方の開口端に設けられた円形状の上部壁面22を更に備えていてもよい。図8及び図9では、一例として、上部壁面22を備えている場合を描いている。
カップ2が上部壁面22を備えている場合、上部壁面22は、その一方の面から他方の面まで貫通した穴24を備える。穴24は、例えば、被洗浄物3上に薬液を供給するために使用される。
図8に示すカップ2において、壁面21が含む内壁210の少なくとも一部がブラスト処理されている。壁面21の内壁210は、ブラスト処理が施されていない場合と比較して表面粗さが高い。表面粗さが比較的高い内壁210に、被洗浄物3上から飛散した薬液が当たると、この薬液は、薬液の入射角に対応した反射角で跳ね返る可能性が低い。例えば、内壁210に当たった薬液は、複数の小さな液滴に分裂し、それぞれの液滴が様々な角度で跳ね返る。その結果、内壁210がブラスト処理されていない場合と比較して、被洗浄物3上に跳ね返る薬液の量を低減することができる。
図9に示すカップ2は傾斜した壁面23を備える。図9に示すカップ2において、壁面21の端部と上部壁面22の端部とは、傾斜した壁面23を介して接合している。傾斜した壁面23の傾斜は、被洗浄物3上から飛散した薬液が、傾斜した壁面23の内壁に当たって重力方向に跳ね返るように設けられている。その結果、カップ2が傾斜した壁面23を備えていない場合と比較して、被洗浄物3上に跳ね返る薬液の量を低減することができる。
これら図8及び図9に示すカップ2によると、治具10の回転による遠心力で被洗浄物3上から飛散した薬液が、被洗浄物3上に跳ね返るのを抑制することができる。しかしながら、その効果は十分ではない。
以下に説明する実施形態に係る洗浄装置によると、飛散した薬液の跳ね返りを十分に抑制することができる。その結果、被洗浄物としてのウェハなどの歩留まりを向上することが可能である。
図1は、実施形態に係る洗浄装置の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に係る洗浄装置に被洗浄物を固定した状態を概略的に示す断面図である。
図1及び図2に示す洗浄装置1は、治具10と、カップ20とを備える。洗浄装置1は、洗浄液供給ノズル(図示していない)を更に備えていてもよい。洗浄液供給ノズルは、被洗浄物を洗浄するための薬液を供給することができる。カップ20の詳細は、図3~図7を参照しながら後述する。
治具10は、回転軸13に沿って伸びた支持部11、及び、被洗浄物3を固定することが可能であり且つ上記支持部11と共に回転可能な固定面12を備える。支持部11は、回転軸13を軸として回転することができる。支持部11は、例えば3000rpm以下の回転数で回転する。支持部11の形状は、例えば、回転軸13を軸とした軸対称形状である。軸対称形状とは、軸を中心に、円周方向には形状が変化せず、中心軸からの距離のみに依存して形状が変化する形状を意味する。支持部11の形状の例として、円柱又は角柱などの柱体形状、及び、錐台形状などを挙げることができる。
図1及び図2に示す治具10は、回転台14を備える。回転台14は、被洗浄物3を固定することが可能な固定面12を備える。治具10は、回転台14を備えていなくてもよい。この場合、支持部11が固定面12を備える。
治具10が回転台14を備えている場合、回転台14は、支持部11の回転軸方向の端部と連結している。それ故、回転台14は、支持部11と共に回転することができる。回転台14の形状も、支持部11の形状と同様に、回転軸13を軸とした軸対称形状である。
図1及び図2では一例として、支持部11及び回転台14が何れも円柱形状である場合を描いている。回転台14は、2つの円形の底面を有している。これら2つの底面のうち、一方の底面は支持部11と連結されている。他方の底面は固定面12である。
固定面12は、例えば真空吸着などで被洗浄物3を固定することができる。固定面12は、回転軸13と垂直に交わっていることが好ましい。この場合、回転軸13を軸として治具10を回転させながら被洗浄物3を洗浄する際に、被洗浄物3に滴下する薬液が、被洗浄物3の主面上に均一に広がり易くなる。その結果、被洗浄物3を均一に洗浄することができる。
被洗浄物3は、例えば、主面が円形の半導体ウェハである。被洗浄物3は、固定面12に固定することができるものであれば特に限定されない。
カップ20は、治具10から離間した位置に配置されている。カップ20は、治具10を取り囲む円環状の壁面21を有したカップである。壁面21は、例えば、重力方向に伸びる側壁面である。壁面21は、内壁210及び外壁211を含む。カップ20は、壁面21の一方の開口端に設けられた円形状の上部壁面22を更に備えていてもよい。図1及び図2では、一例として、上部壁面22を備えている場合を描いている。
カップ20が上部壁面22を備えている場合、上部壁面22は、その一方の面から他方の面まで貫通した穴24を備える。穴24は、例えば、被洗浄物3上に薬液を供給するために使用される。
内壁210は、固定面12に平行な方向と交差する方向に設けられた複数の溝を有している。複数の溝の向きは、例えば、固定面12に平行な方向と直交する方向であってもよく、固定面12に平行な方向と45°の角度で交差する方向であってもよい。内壁210に設けられた複数の溝は、被洗浄物3を囲むように設けられている。即ち、被洗浄物3上の薬液が滴下される面の高さと、内壁210に設けられた複数の溝の高さとは、ほぼ一致している。
カップ20の内壁210が上述した複数の溝を有していると、当該洗浄装置1を用いて被洗浄物3を洗浄する際に、被洗浄物3から遠心力により飛散した薬液の多くは、複数の溝に入り込む。これら溝に入り込んだ薬液は、例えば、溝内で複数回跳ね返ることにより、その運動エネルギーが小さくなり、重力方向に落ちる。つまり、被洗浄物3から遠心力により飛散した薬液のうち、カップ20の内壁210に当たって被洗浄物3に跳ね返る薬液の量は少ない。それ故、実施形態に係る洗浄装置によると、被洗浄物3への薬液の跳ね返りを抑制することができ、結果としてウェハの歩留まりを向上することができる。
カップ20の一例について、図3及び図4を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係るカップの一例を概略的に示す断面図である。図4は、図3に示すカップのA部の拡大図である。図3は、実施形態に係る洗浄装置を、治具の回転軸方向から観察した場合を示している。
カップ20は、内壁210及び外壁211を含んだ壁面21を備える。カップ20は、例えば、複数の溝4と、複数の溝4を隔てる複数の突起5を有している。カップ20の壁面21は、治具10の回転軸(図示しない)と同心円状に設けられている。複数の溝4及び複数の突起5は、図3及び図4に示すように、カップ20の円周方向に沿って交互に設けられている。
複数の突起5の少なくとも1つは、例えば、突起5が有する複数の面のうち、溝4に面した最も広い面が、治具10に面するように傾斜している。図3及び図4では、複数の突起5の全てが、突起5が有する複数の面のうち、溝4に面した最も広い面が、治具10に面するように傾斜している場合を描いている。複数の突起5の傾斜方向は、回転軸と直交する方向であることが好ましい。
治具10は、複数の突起5が傾斜している方向と逆方向に回転することが好ましい。例えば、図3に示す複数の突起5は、右回り(時計回り)に傾斜している。この場合、治具10は、左回り(反時計回り)に回転するように構成されていることが好ましい。
治具10が、複数の突起5が傾斜している方向と逆方向に回転する場合、薬液を用いて被洗浄物を洗浄する際に、治具10の回転で生じた遠心力により飛散した薬液は、複数の突起5の間の溝4に入り込んだ後、この溝4の外に跳ね返りにくい。これについて、図5を参照して説明する。
図5は、被洗浄物から飛散した薬液が、カップの溝に入り込む様子の一例を模式的に示す図である。図5に示す洗浄装置は、治具10の固定面12上に被洗浄物3が固定されていることを除いて、図3及び図4を参照しながら説明した洗浄装置と同一の構造を有している。
左周りに回転している被洗浄物3上に洗浄のための薬液が滴下されると、余剰の薬液6は、例えば、図5に示すように飛散する。余剰の薬液6は、例えば、被洗浄物3の外周の接線方向7に沿って飛散する。飛散した薬液6は、カップ20の内壁210に設けられた複数の溝4の何れかに入り込む。溝4に入り込んだ薬液6は、突起5に当たって跳ね返り、この突起5と隣り合った突起5に当たる。こうして、飛散した薬液6の運動エネルギーは小さくなり、溝4内への飛散した薬液6の閉じ込めが生じる。それ故、飛散した薬液6同士が接触する頻度も低くすることができる。結果として、薬液6は重力方向に落ちて排液されるため、被洗浄物3上へ向かって跳ね返る薬液の量を少なくすることができる。
被洗浄物3から飛散した全ての薬液6の挙動が、上述した挙動を示すとは限らない。しかしながら、飛散した薬液6の少なくとも一部が上記挙動を示すことにより、被洗浄物3から飛散して内壁210に当たった薬液6が被洗浄物3上に跳ね返らないため、被洗浄物3上の不純物量を低減させることができる。それ故、実施形態に係る洗浄装置によると、被洗浄物、例えばウェハの歩留まりを向上することが可能である。
実施形態に係る洗浄装置が備えるカップについて、図6及び図7を参照しながらより詳細に説明する。図6は、実施形態に係る洗浄装置が備えるカップの一部を拡大して示す拡大断面図である。
図6に示すカップ20は、図4を参照しながら説明したのと同様の構造を有している。
カップ20の壁面21は、図3及び図4において説明したように、図示しない治具の回転軸と同心円状に設けられている。
複数の溝4間の距離Lは、上記回転軸を中心とした同心円上において、1°~30°の範囲内の円周角に相当する。言い換えると、溝4間の距離Lは、或る溝の最も深い位置から、この溝と隣り合った溝の最も深い位置までを結んだ円周の長さを意味する。溝4間の距離Lが大きすぎると、飛散した薬液が溝に入り込んだ場合に、被洗浄物上に跳ね返る薬液が多くなる傾向がある。
複数の突起5は、それぞれが複数の面を有している。突起5は、例えば、溝4に面した表面積の大きな第1面51と、他の溝4に面した表面積の小さな第2面52とを有している。複数の突起5が有する表面積の大きな第1面51は、治具10と向き合っている。表面積の小さな第2面52は、治具10と向き合っていない。
第1面51は、湾曲していてもよく、湾曲していなくてもよい。第1面51は、好ましくは、当該面51が窪むように湾曲している。こうすると、飛散した薬液が溝4に入り込んで第1面51に当たった際に、被洗浄物の方向に跳ね返る薬液の量を低減することができる。また、第2面52は、湾曲していてもよく、湾曲していなくてもよい。図6では、第2面52は、当該面52が出っ張るように湾曲している場合を示している。
図7は、図6の変形例を示す拡大断面図である。図7に示すカップ20は、以下に説明する事項を除いて、図6と同様の構成を有している。
即ち、図7に示すカップ20では、第2面52が窪むように湾曲している。こうすると、第1面51に当たって跳ね返った薬液が第2面52に当たる際に、溝4の外部に飛散する薬液を低減することができるため好ましい。
図6に示すように、第2面52が出っ張るように湾曲していると、カップ20を製造し易いという利点がある。しかしながら、歩留まりの向上という観点では、図7に示すように、第2面52は窪むように湾曲していることが好ましい。
溝4を挟んで隣接した2つの突起5は、互いに向き合った2つの面を有しており、これら2つの面がなす角度は、例えば1°~90°の範囲内にあり、好ましくは5°~30°の範囲内にある。互いに向き合った2つの面は、例えば、或る突起5の第1面51と、この突起5と隣り合った突起5の第2面52とで構成される。これら2つの面は、溝4を構成する2つの面と呼ぶこともできる。
図6に示す突起5の二次元的な寸法を説明する。
複数の突起5は、それぞれが長辺510と短辺520とを含む。カップ20において、複数の溝4の最も深い位置を互いに結んだ外接円を外接円Xとする。
長辺510は、突起5の頂点から溝4の最も深い位置までを直線距離で結んだ線分である。長辺510の長さMは、例えば、3mm~100mmの範囲内にある。
図6に示すように、突起5の第2面52の断面形状が円弧形状である場合、この円弧の両端を結んだ線分を、短辺520とする。即ち、この円弧と短辺520とは、突起5の頂点上及び外接円X上の2点で交わる。短辺520の長さNは、例えば、3mm~60mmの範囲内にある。
長辺510の長さMに対する短辺520の長さNの比N/Mは、例えば0.33~0.85の範囲内にあり、好ましくは0.42~0.7の範囲内にある。この比が1に近いと、飛散した薬液の跳ね返りを抑制する効果が十分に発揮されない可能性がある。この比が小さすぎると、突起5に当たった薬液が溝4内に閉じ込められず、溝4の外部に向かって跳ね返る可能性が高い。
長辺510の角度Pは、溝4の最も深い位置における外接円Xの接線と、長辺510とが成す角度である。長辺510の角度Pは、例えば10°~90°の範囲内にある。
短辺520の角度Qは、短辺520が外接円Xと交わる点における外接円Xの接線と、短辺520とが成す角度である。短辺520の角度Qは、例えば10°~90°の範囲内にある。
突起5の高さHは、突起5の頂点から外接円Xに下ろした垂線の距離である。カップ20の内径に占める、少なくとも1つの突起5の高さHの割合は、例えば0.6%~25%の範囲内にあり、好ましくは1%~15%の範囲内にある。なお、カップ20の内径は、外接円Xの直径である。突起5の高さHが過度に低いと、飛散した薬液が溝4に入り込みにくくなり、被洗浄物への薬液の跳ね返りが十分に抑制されない可能性がある。突起5の高さHが過度に高いと、突起5に当たって跳ね返った薬液が被洗浄物上に付着し易い傾向にある。
複数の突起5は、図3~図7に示すように、尖端が尖っていることが好ましい。即ち、複数の突起5の少なくとも1つは、錐台形状ではなく錐体形状であることが好ましい。言い換えると、複数の突起5の少なくとも1つは、突起5の基部の面積と比較して先端部の面積が小さいことが好ましい。この場合、突起5の先端部に当たる薬液が減り、溝4に入り込む薬液が増えるため、被洗浄物に向かって跳ね返る薬液の量を減らすことができる。
複数の突起5は、それら全てが錐体形状を有していることが好ましい。
カップ20は、例えばフッ素樹脂からなる。カップ20を構成するフッ素樹脂の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びポリふっ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1つである。カップ20がフッ素樹脂からなる場合、薬液によるカップ20の腐食を抑制することができる。カップ20の壁面21と複数の突起5とは、同一の材料からなることが好ましい。カップ20はPTFEからなることが好ましい。
ウェハなどの被洗浄物の洗浄に使用する薬液は、例えば、フッ酸、硫酸及び塩酸などである。
実施形態に係る洗浄装置用カップは、フッ素樹脂の塊を用意し、これを切削加工して製造することが好ましい。切削加工によると、精度の高い形状のカップを製造することができるため、余剰の薬液が被洗浄物に跳ね返るのを抑制する効果を高めることができる。その結果、ウェハなどの被洗浄物の歩留まりをより高めることができる。
フッ素樹脂を溶接加工することによりカップを製造することも可能である。例えば、カップの内壁に対し、突起を溶接で接合する事ができる。しかしながら、この場合、溶接熱などによりカップが変形するため、カップの寸法の精度が悪くなり、薬液の跳ね返りを抑制する効果が劣る傾向がある。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例)
枚葉式洗浄装置用のカップを、PTFEからなる樹脂塊から切削加工により製造した。製造されたカップは、図1~図7を参照しながら説明したカップ20と略同一の形状を有していた。
製造されたカップの寸法は、以下の通りであった。以下の寸法は、各寸法をそれぞれ10箇所測定し、それらを平均した平均値を記載している。
(1)複数の突起間の距離(ピッチ):15°
(2)溝を構成する2つの面のなす角度:17°
(3)突起の長辺の長さ:50mm
(4)突起の短辺の長さ:35mm
(5)突起の長辺の角度:50°
(6)突起の短辺の角度:70°
(7)突起の高さ:30mm
(8)カップの直径:220mm
(比較例)
図8を参照しながら説明した、カップの内壁がブラスト処理されたカップを用意した。即ち、このカップの内壁には実施形態で説明した複数の突起は存在していない。
実施例に係るカップを洗浄装置のカップとして使用した場合、比較例に係るカップを使用した場合と比較して、被洗浄物上への薬液の跳ね返りが抑制され、優れた歩留まりを達成することができた。
以上説明したように、実施形態に係るカップを備えた洗浄装置は、薬液を用いてウェハを洗浄する際に、ウェハへの薬液の跳ね返りを抑制することができるため、優れた歩留まりを達成することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] 回転軸に沿って伸びた支持部、及び、被洗浄物を固定することが可能であり且つ前記支持部と共に回転可能な固定面を備えた治具と、
前記治具から離間した位置で、前記治具を取り囲む円環状の壁面を有したカップとを具備し、
前記壁面の内壁は、前記固定面に平行な方向と交差する方向に設けられた複数の溝を有しており、前記複数の溝は前記被洗浄物を囲むように設けられている洗浄装置。
[2] 前記内壁は、前記複数の溝を隔てる複数の突起を更に有し、前記複数の溝と前記複数の突起とは交互に設けられており、
前記複数の突起の少なくとも1つは、前記突起が有する複数の面のうち、前記溝に面した最も広い面が、前記治具に面するように傾斜している[1]に記載の洗浄装置。
[3] 前記溝を挟んで隣接した2つの前記突起は、互いに向き合った2つの面を有しており、前記2つの面がなす角度は、1°~90°の範囲内にある[2]に記載の洗浄装置。
[4] 前記壁面は、前記回転軸と同心円状に設けられており、
前記突起を挟んで隣接した2つの前記溝間の距離は、前記回転軸の同心円上において、1°~30°の範囲内の円周角に相当する[2]又は[3]に記載の洗浄装置。
[5] 前記カップの内径に占める前記複数の突起の高さの割合は、0.6%~25%の範囲内にある[2]~[4]の何れか1項に記載の洗浄装置。
[6] 前記複数の突起の少なくとも1つは錐体形状である[2]~[5]の何れか1項に記載の洗浄装置。
1…洗浄装置、2…カップ、3…被洗浄物、4…溝、5…突起、6…薬液、7…接線方向、10…治具、11…支持部、12…固定面、13…回転軸、14…回転台、20…カップ、21…壁面、22…上部壁面、23…傾斜した壁面、24…穴、51…第1面、52…第2面、100…洗浄装置、210…内壁、211…外壁、510…長辺、520…短辺、H…突起の高さ、L…溝間の距離(ピッチ)、M…長辺の長さ、N…短辺の長さ、P…長辺の角度、Q…短辺の角度、X…外接円。

Claims (3)

  1. 回転軸に沿って伸びた支持部、及び、被洗浄物を固定することが可能であり且つ前記支持部と共に回転可能な固定面を備えた治具と、
    前記治具から離間した位置で、前記治具を取り囲む円環状の壁面を有したカップとを具備し、
    前記壁面の内壁は、前記固定面に平行な方向と交差する方向に設けられた複数の溝と前記複数の溝を隔てる複数の突起を有し、前記複数の溝と前記複数の突起とは交互に且つ前記被洗浄物を囲むように設けられており、
    前記複数の突起は、前記突起が有する複数の面のうち、前記溝に面した最も広い面が、前記治具に面するように傾斜しており、
    前記溝を挟んで隣接した2つの前記突起は、互いに向き合った2つの面を有しており、前記2つの面がなす角度は、5°~30°の範囲内にある洗浄装置。
  2. 前記壁面は、前記回転軸と同心円状に設けられており、
    前記突起を挟んで隣接した2つの前記溝間の距離は、前記回転軸の同心円上において、1°~30°の範囲内の円周角に相当する請求項1に記載の洗浄装置。
  3. 前記カップの内径に占める前記複数の突起の高さの割合は、0.6%~25%の範囲内にある請求項1又は2に記載の洗浄装置。
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