JP7394373B2 - 赤外線検出素子およびその製造方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 2018年第65回応用物理学会春季学術講演会(早稲田大学)予稿集 DVD 発行日 平成30年3月5日 2018年第65回応用物理学会春季学術講演会(早稲田大学)早稲田大学 西早稲田キャンパス(東京都新宿区大久保3丁目4-1)ポスター 展示会場 ベルサール高田馬場(東京都新宿区大久保3丁目8-2)平成30年3月17日(開催期間 平成30年3月17日~平成30年3月20日)
本発明は、赤外線検出素子およびその製造方法に関するものである。
赤外線を検出する赤外線検出素子は、可視光線では得られない情報をもたらすため、例えばイメージセンサへの応用が研究されている。赤外線検出素子を可視光に感度を持つイメージセンサと統合することができれば、幅広い波長域を同時にイメージングすることができるが、材質に制約があった。このため、シリコン(Si)ベースの赤外線検出素子の実現が期待されている。
赤外線検出素子として、基板の表面に金属膜を形成し、基板と金属膜との界面に形成されるショットキー障壁を利用して光を電流に変換する光検出器が知られている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1の光検出器は、Si基板の表面に、金属微細構造としてサブミクロンのピラーが複数設けられ、このピラーの表面を含む基板表面に金(Au)からなる金属膜が形成されている。ピラーの表面に形成された金属膜は、光の入射により、金属膜中の自由電子が光と相互作用し、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)を生じさせる。LSPRは、金属微細構造に発生する自由電子の振動と光との共鳴現象である。LSPRの発生により、金属膜表面近傍の電場が増強される。また、光が金属膜に吸収され、金属膜の内部の自由電子が励起され、励起された自由電子がショットキー障壁を乗り越えることで光電流が流れる。非特許文献1の光検出器は、サブミクロンのピラーを金属膜で被覆することで赤外線の吸収率を向上させ、高感度化を図っている。
T. Kan, et al., Proc MEMS2016, pp.624-627, 2016.
イメージセンサは、筺体内に様々な電子部品を配置させる関係上、筺体内でのスペース的な制約が極めて多くなっている。近年では、デジタルカメラやスマートフォンなどの小型化と相俟って、イメージセンサのさらなる小型化が要求されている。しかしながら、非特許文献1の光検出器は、高感度化に寄与するピラーが基板の表面に突出して設けられており、筺体内に配置する際にピラーを保護する保護部材を別途設ける必要性が高いので、イメージセンサの小型化の障壁となることが懸念される。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、小型であり、かつ、赤外線をより高感度で検出することができる赤外線検出素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の赤外線検出素子は、赤外線を透過し、表面に凹部が形成された基板と、前記凹部の内面を含む前記基板の表面に設けられ、前記基板との界面でショットキー障壁を形成する金属膜とを備える。
本発明の赤外線検出素子の製造方法は、赤外線を透過する基板の表面に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部の内面を含む前記基板の表面に金属膜を形成する金属膜形成工程とを有する。
本発明によれば、凹部の内面を含む基板の表面に、基板との界面でショットキー障壁を形成する金属膜が設けられているので、小型であり、かつ、赤外線を高感度で検出することができる。
本発明の第1実施形態に係る赤外線検出素子の模式図である。 本発明の第1実施形態に係る赤外線検出素子のエネルギーバンド図である。 電界強度分布のシミュレーション結果である。 凹部形成工程を説明する説明図である。 金属膜形成工程を説明する説明図である。 電極部形成工程を説明する説明図である。 赤外線検出素子のSEM画像である。図5(a)は赤外線検出素子の平面画像である。図5(b)は図5(a)の一部を拡大した平面画像である。図5(c)は赤外線検出素子の凹部を通る切断面を拡大した断面画像である。 電流電圧特性を示すグラフである。 FTIR分析結果を示す図である。 実施例1と比較例1,2の各赤外線検出素子に入射する赤外線の波長を示すグラフである。 光電流の測定結果を示すグラフである。 光電流の電流量の差分を示すグラフであり、図10(a)は実施例1の測定結果を示し、図10(b)は比較例1の測定結果を示し、図10(c)は比較例2の測定結果を示す。 実施例1と比較例1,2の各赤外線検出素子の応答性を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係る赤外線検出素子の模式図である。 本発明の第2実施形態に係る赤外線検出素子の凹部の断面図である。 電子ビームレジスト形成工程を説明する説明図である。 凹部形成工程を説明する説明図である。 金属膜形成工程を説明する説明図である。 電極部エッチング工程を説明する説明図である。 電極部形成工程を説明する説明図である。 実施例3~5の赤外線検出素子の構成を示す模式図であり、図15(a)は平面図を示し、図15(b)は凹部の断面図を示す。 実施例4の赤外線検出素子の凹部のSEM画像の模式図である。 実施例4の赤外線検出素子の出力の印加電圧依存性を示すグラフである。 実施例4の赤外線検出素子の裏面照射時及び表面照射時の応答性を示すグラフである。 実施例4の赤外線検出素子の反射率を示すグラフである。 実施例4の赤外線検出素子の応答性を示すグラフである。 実施例3~5の赤外線検出素子の応答性の増幅率を示すグラフである。
1.第1実施形態
図1に示すように、本実施形態に係る赤外線検出素子10は、基板12と、金属膜14と、電極部16とを備える。
基板12は、赤外線を透過する半導体基板である。ここでの赤外線は、波長範囲が概ね1.1μm以上20μm以下の領域の光をいう。基板12における赤外線IRの透過率は、例えば10%以上であることが好ましい。
基板12は、金属膜14が設けられる表面12aと、表面12aと対向する裏面12bとを有する。基板12の表面12aには後述する凹部18が形成されている。裏面12bは平坦である。基板12の裏面12bには赤外線IRが入射される。裏面12bに対する赤外線IRの入射角度は、特に限定されないが、この例では90°とされる。基板12の厚みは、特に限定されず、本実施形態では625μmとしてある。
基板12は、赤外線IRを透過し、かつ、後述する金属膜14との界面でショットキー障壁を形成する材料により形成される。基板12は、半導体、例えばシリコン(Si)により形成される。基板12の材料は、n型半導体であることが好ましく、本実施形態ではn型シリコンである。ドーパントとしては、例えば、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)等が用いられる。なお、基板12の材料は、n型シリコンに限られず、シリコンカーバイド(SiC)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)等を用いてもよい。
凹部18は、基板12の表面12aを開口する穴構造を有する。凹部18は、基板12の厚み方向に非貫通である。このため、凹部18の内面18aは、側面と底面とにより形成される。本実施形態では、凹部18は、開口の形状が円形とされており、開口径Dが凹部18の上部から底面まで略一定とされている。すなわち、凹部18の穴構造の形状は円柱状とされている。凹部18の開口径Dは、10μm以下であることが好ましい。開口径Dが10μm以下であることにより、赤外線IRが金属膜14に入射した際に凹部18の近傍において局在表面プラズモン共鳴(LSPR)がより確実に発生する。開口径Dは、10nm以上1000nm以下の範囲内であることがより好ましく、本実施形態では250nmである。
本実施形態では、基板12の表面12aに複数の凹部18が配列されている。基板12の表面12aにおける凹部18の占有割合は、LSPRを発生させることができ、かつ、裏面12bに入射した赤外線IRが凹部18の上部に十分届くことができれば特に限定されないが、例えば1%以上80%以下の範囲内とされる。本実施形態では4.9%である。凹部18の配列は、本図では正方配列としているが、これに限られず、例えば千鳥(ジグザグ)配列等でもよい。
凹部18の深さDEは、例えば50nm以上10μm以下の範囲内とされる。凹部18のピッチPは、例えば20nm以上10μm以下の範囲内とされる。本実施形態では、深さDEが500nm、ピッチPが2μmである。
金属膜14は、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに設けられている。本実施形態では、金属膜14は、凹部18の内面18aの全域に設けられている。すなわち、金属膜14の裏面は、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aと接している。なお、金属膜14の表面は、例えば空気と接している。金属膜14の厚みTは、1nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましい。本実施形態では、厚みTが95nmである。
図2に示すように、金属膜14は、基板12との界面でショットキー障壁を形成する。図2において、φはショットキー障壁の高さを示し、Eは伝導帯の下端のエネルギー準位を示し、Eは価電子帯の上端のエネルギー準位を示し、Eはフェルミ準位を示す。金属膜14の内部の自由電子eは、励起されていない状態ではショットキー障壁を越えることができず、金属膜14の内部に留まる。
金属膜14は、凹部18において、基板12の裏面12bから入射する赤外線IRによってLSPRを発生させる。図3に示すように、凹部18の近傍には電場が生じる。図3は、電界強度分布のシミュレーション結果である。シミュレーションには、COMSOL社製のシミュレーションソフトである「COMSOL Multiphysics」を用いた。シミュレーションは、赤外線IRの波長を1.26μmとし、金属膜14の表面が空気と接する場合を想定して行った。LSPRの発生により赤外線IRが金属膜14に吸収され、金属膜14の内部の自由電子eが励起される。励起された自由電子eは、ショットキー障壁を乗り越えて基板12の内部に拡散する(図2参照)。自由電子eの拡散に応じて基板12の内部の正孔(図示なし)が金属膜14の内部に拡散する。この結果、金属膜14に光電流iphが流れる(図1及び図2参照)。
金属膜14は、基板12との界面でショットキー障壁を形成する材料により形成される。例えば、基板12がn型シリコンにより形成される場合は、金属膜14は、銅(Cu)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)等により形成される。本実施形態では、金属膜14はCuにより形成される。
電極部16は、配線16aを介して金属膜14と電気的に接続する端子16bと、光電流iphの計測を行う電流計測部16cとを有する(図1参照)。端子16bは、アルミニウム(Al)により形成される。端子16bは、金属膜14とは物理的に分離して設けられている。端子16bは、本実施形態では、基板12の表面12aの端部に設けられる。電流計測部16cは配線16aと接続する。電流計測部16cは、本実施形態では、電流の計測を行う機能と電圧の印加を行う機能とを有するソースメータである。なお、端子16bは、Alに限られず、Siとの間に抵抗性の接触を形成する金属であればよい。Siの表面に不純物を拡散させることにより、AuやCuを電極として用いることもできる。
次に、図4A~図4Cを用いて赤外線検出素子10の製造方法を説明する。赤外線検出素子10の製造方法は、凹部形成工程と金属膜形成工程とを有し、本実施形態では更に電極部形成工程を有する。
図4Aに示すように、凹部形成工程は、基板12の表面12aに凹部18を形成する。以下、凹部形成工程の一例を説明する。まず、基板12の表面12aにレジスト膜20を形成し、EB(Electron Beam)リソグラフィー技術によりレジスト膜20をパターニングする。レジスト膜20には、凹部18に対応する部分が開口するレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンが形成されたレジスト膜20をマスクとして、基板12の表面12aをDRIE(Deep Reactive Ion Etching)法によりドライエッチングする。その後、所定のエッチング処理を行うことによりレジスト膜20を除去する。これにより、基板12に凹部18が形成される。なお、図4Aは、レジスト膜20を除去する前の状態を示している。
図4Bに示すように、金属膜形成工程は、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに金属膜14を形成する。以下、金属膜形成工程の一例を説明する。金属膜形成工程では、超臨界流体薄膜堆積法(SCFD:Supercritical fluid deposition)を行う。SCFDは、超臨界流体に有機金属錯体等の原料を溶解させ、超臨界流体中で有機金属錯体を還元させることにより金属膜を形成する手法である。超臨界流体は、温度が流体の臨界温度以上かつ圧力が流体の臨界圧力以上の状態にあり、液体の性質と気体の性質を併せ持つ流体であり、拡散能と溶解能とに優れる。このため、SCFDでは、高い原料濃度下で成膜することができるので、三次元微細構造、例えば高アスペクト比の穴構造や溝構造の内部にまで均一な膜厚で金属膜を形成することができ、かつ、成膜速度の高速化を実現できる。
金属膜形成工程では、図示しない反応容器に、基板12、金属膜14の原料である有機金属錯体、超臨界流体、および還元剤を封入し、反応容器内を昇温する。本実施形態では、T. Momose, et al., Appl. Phys. Express, Vol. 1, No. 097002, 2008.に記載されているように、有機金属錯体として有機銅錯体である銅ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)、超臨界流体として二酸化炭素(CO)、有機銅錯体を還元させる還元剤として水素(H)が用いられる。なお、二酸化炭素は、臨界温度が31.1℃であり、臨界圧力が7.38MPaであることから、容易に超臨界状態とすることができる。反応容器内の圧力は20MPaとした。反応容器内を200℃に昇温し、基板12を加熱する。昇温速度は、例えば10℃/minとされる。反応容器内の温度は、200℃に達した後、例えば1時間保持される。所定の加熱時間に達したら、基板12を50℃以下に冷却させる。これにより、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに金属膜14が形成される。この例では、金属膜形成工程においてSCFDを行うことにより、厚みTがほぼ均一の金属膜14、すなわちステップカバレッジに優れる金属膜14が形成される。ステップカバレッジは、SCFDでは例えば90%以上とされる。
図4Cに示すように、電極部形成工程は、基板12と金属膜14とを電気的に接続する電極部16を形成する。以下、電極部形成工程の一例を説明する。まず、金属膜14の一部をドライエッチングにより除去し、基板12の表面12aを部分的に露出させる。そして、露出された基板12の表面12aに電極部16の端子16bを形成する。例えば、真空蒸着法によって基板12の表面12aにAlからなる金属薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法によって選択的にエッチングする。これにより、電極部16の端子16bが、金属膜14とは物理的に分離して形成される。形成した端子16bと金属膜14とを配線16aで接続し、更に配線16aを電流計測部16cと接続することにより、電極部16が形成される。
以上のように、赤外線検出素子10は、基板12の表面12aに凹部18が形成され、この凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに、基板12との界面でショットキー障壁を形成する金属膜14が設けられている。このため、赤外線検出素子10自体の小型化が図れる。さらに、赤外線検出素子10を用いる種々のセンサ、例えばイメージセンサにおいて、電子部品の配置設計の最適化が図れる。この結果、赤外線検出素子10を用いる種々のセンサの小型化が実現できる。
赤外線検出素子10は、赤外線IRが基板12の裏面12bに入射し、基板12を透過して金属膜14の裏面に照射される。これにより、金属膜14の裏面付近の自由電子eが励起されるので、励起された自由電子eがエネルギーを失わずに基板12の内部へ拡散する。このため、赤外線検出素子10は、赤外線IRをより高感度で検出することができる。なお、金属膜14の表面に赤外線IRを入射させた場合は、金属膜14の表面付近の自由電子eが励起され、励起された自由電子eが金属膜14内を移動してショットキー障壁まで到達する間にエネルギーのロスが生じるので、結果として感度が低下する。
図5は、赤外線検出素子10を走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)により撮影したSEM画像である。図5より、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに金属膜14が形成されていることが確認できる。なお、図5(a)は、赤外線検出素子10の平面画像である。図5(b)は、図5(a)の一部を拡大した平面画像である。図5(c)は、赤外線検出素子10の凹部18を通る切断面を拡大した断面画像である。
図6は、赤外線検出素子10の電流電圧特性を示すグラフである。図6より、赤外線検出素子10の電流電圧特性は整流作用を示している。これより、基板12と金属膜14とはショットキー接合を形成することが確認できる。ショットキー障壁の高さφは0.65eVである。
2.第1実施例
上記実施形態と同様の条件で製造した赤外線検出素子を実施例1とした。凹部18の開口径Dを200nmとしたこと以外は実施例1と同様の条件で製造した赤外線検出素子を実施例2とした。凹部形成工程を実施せずに、金属膜形成工程と電極部形成工程を実施例1と同様の条件で実施して製造した赤外線検出素子を比較例1とした。金属膜形成工程において、金属膜の原料としてAuを用いて真空蒸着法を行ったこと以外は比較例1と同様の条件で製造した赤外線検出素子を比較例2とした。実施例1,2および比較例1,2の各基板12は、上記実施形態と同様に、n型シリコンにより形成された厚さ625μmの半導体基板を用いた。実施例1の赤外線検出素子は、基板12の表面12aにおける凹部18の占有割合は4.9%である。
実施例1,2と比較例1の各赤外線検出素子について、FTIR分析(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を行い、赤外線IRに対する吸光度を評価した。図7は、FTIR分析結果を示す図である。図7において、横軸は赤外線IRの波長を示し、縦軸は比較例1の反射率に対する実施例1,2の相対反射率を示す。R1は実施例1の反射スペクトルを示し、R2は実施例2の反射スペクトルを示す。FTIR分析は、株式会社島津製作所製のフーリエ分光光度計を用いた。図7より、基板12の表面12aに凹部18が形成された実施例1,2の場合の反射率は、凹部が形成されていない比較例1の場合の反射率よりも小さいことが確認できる。特に、実施例1の赤外線検出素子は、比較例1の赤外線検出素子よりも約20%低い反射率を示している。これより、実施例1,2の赤外線検出素子は、凹部18により赤外線IRを吸収することがわかる。
実施例1と比較例1,2の各赤外線検出素子について、赤外線IRの入射強度[W]あたりの光電流iphの電流量[A]で定義される応答性に基づき、赤外線IRの検出の性能を評価した。図8に示すように、赤外線IRの波長は1.1μm~1.75μmの範囲内で段階的に変更した。図8において、横軸は赤外線IRの波長を示し、縦軸は赤外線IRの入射強度を示す。赤外線IRの光源として、Fianium社製のIRレーザ装置を用いた。赤外線IRを基板12の裏面12bに入射し、-1.5Vの逆バイアス電圧を印加し、実施例1と比較例1,2の各赤外線検出素子に生じる光電流iphを測定した。図9は、光電流iphの測定結果をプロットしたグラフである。図9において、「Cu Hole」は実施例1、「Cu Plane」は比較例1、「Au Plane」は比較例2の測定結果を示す。光電流iphは、図10に示すように、IRレーザ装置のONとOFFとを切り替えることにより赤外線IRをパルス状に射出し、IRレーザ装置をONとしたときの電流量の差分ΔIとして測定した。図10は、赤外線IRの波長を1.6μmとした場合の電流量の差分ΔIを示すグラフである。図10において、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2の測定結果を示す。図11は、実施例1と比較例1,2の各赤外線検出素子の応答性を示すグラフである。図11において、横軸は赤外線IRの波長を示し、縦軸は赤外線検出素子の応答性を示す。図11において、「Cu Hole」は実施例1、「Cu Plane」は比較例1、「Au Plane」は比較例2の応答性を示す。この応答性は、赤外線IRの入射強度と、測定した光電流iphの電流量とに基づき計算により求めた。
図11より、赤外線IRの波長が1.6μm~1.7μmの範囲内では、基板12の表面12aに凹部18が形成された実施例1は、凹部が形成されていない比較例1,2と比べて応答性が高いことがわかる。これより、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに金属膜14を形成することにより、赤外線IRの検出の性能が向上することが確認できた。
金属膜の原料としてCuを用いた実施例1と比較例1とを比べると、実施例1の場合は、比較例1の2倍以上の応答性を示すことがわかる。これは、応答性は、凹部18によって基板12と金属膜14との接触面積が増えた効果に加え、赤外線IRの入射により金属膜14がLSPRを発生し、赤外線IRの吸収率が向上した効果が影響していると考えられる。
なお、金属膜がCuにより形成されている比較例1は、金属膜がAuにより形成されている比較例2と比べて、応答性が高いことがわかる。これは、Cuのショットキー障壁がAuのショットキー障壁よりも低いことが影響していると考えられる。
3.第2実施形態
図12は、本発明の第2実施形態に係る赤外線検出素子の模式図である。図12に示すように、本実施形態に係る赤外線検出素子10aは、基板12と、金属膜14と、電極部16とを備える。
基板12は、金属膜14が設けられる表面12aと、表面12aと対向する裏面12bとを有する。基板12の表面12aには凹部18が形成されており、裏面12bは平坦である。基板12は、上記を除いては第1実施形態と同様の構成である。
図13は、凹部18の断面図である。凹部18は、基板12の表面12aを開口する穴構造を有する。凹部18は所定のピッチpで設けられている。凹部18は、基板12の厚み方向に非貫通であり、凹部18の内面18aは、側面と底面とにより形成される。本実施形態では、凹部18は、開口の形状が矩形(略正方形)とされている。凹部18の開口幅w(略正方形の開口の形状の1辺の長さ)は、凹部18の上部から深さdの位置となる底面まで略一定とされている。すなわち、凹部18の穴構造の形状は角柱(直方体)状とされている。
金属膜14は、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに設けられている。凹部18の内部においては、金属膜14は凹部18の側面の一部18b及び底面に接して形成されている。金属膜14は、凹部18の側面の残部18cには形成されていない。このように、金属膜14は、基板12の表面12aに接する金属膜14a、凹部18の底面に接する金属膜14b、及び凹部18の側面の一部18bに接する金属膜14cを含んで形成されている。金属膜14a、金属膜14b、及び金属膜14cは、互いに電気的に接続されている。また、金属膜14の裏面は、凹部18の側面の一部18b、凹部18の底面、及び基板12の表面12aと接している。また、金属膜14の表面は、例えば空気と接している。金属膜14は、第1実施形態に記載の材料と同様の材料により形成されている。
電極部16は、第1実施形態と同様に、配線16aを介して金属膜14と電気的に接続する端子16bと、光電流iphの計測を行う電流計測部16cとを有する。電流計測部16cは、本実施形態では、電流の計測を行う機能と電圧の印加を行う機能とを有するソースメータである。端子16bは、第1実施形態に記載の材料と同様の材料により形成されている。
金属膜14と基板12との界面のエネルギーバンドは、第1実施形態の図2と同様であり、図2を参照して説明する。金属膜14の内部の自由電子eは、励起されていない状態では金属膜14と基板12との界面のショットキー障壁を越えることができないが、赤外線IRによってLSPRが発生すると励起されて、ショットキー障壁を乗り越えることが可能となる。この結果、自由電子eが基板12の内部に拡散し、図12及び図13に示すように、金属膜14に光電流iphが流れる。また、基板12と電極部16の端子16bとの接合はオーミック接触である。図12に示すように、接触抵抗に応じた光電流iphが端子16bから基板12へ流れる。
金属膜14のうちの凹部18の底面に接する金属膜14bは、特にLSPRが発生しやすい部分であり、LSPRの共鳴部(Resonator)に相当する。共鳴部である各金属膜14bは、凹部18の側面の一部18bに接する薄い金属膜14cを介して基板12の表面12aに接する金属膜14aに電気的に接続されている。赤外線照射時の電場が共振する様子を図13に示す。図13中、グレー濃度が濃い程、電場の共振が強く発生しやすいことを示し、金属膜14bが特にLSPRが発生しやすい部分であることを示す。
本実施形態では、凹部18の深さdは、例えば50nm以上10μm以下の範囲内とされる。好ましくは240nm以上700nm以下である。また、凹部18のピッチpは例えば20nm以上10μm以下の範囲内とされる。好ましくは250nm以上2000nm以下である。
また、凹部18の開口幅wは、10μm以下であることが好ましい。開口幅wが10μm以下であることにより、赤外線IRが金属膜14に入射した際に凹部18の近傍においてLSPRがより確実に発生する。開口幅wは、10nm以上1000nm以下の範囲内であることがより好ましい。検出する光の波長よりも十分に小さい金属膜14中で発生するLSPRを活用するために凹部18の底面に接する金属膜14bの幅は例えば200nm程度以下であることが好ましく、このために凹部18の開口幅wは200nm程度以下であることが好ましい。本実施形態においては、開口幅wは70nm以上240nm以下である。
金属膜14bの厚みtは、1nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましい。検出する光の波長よりも十分に小さい金属膜14中で発生するLSPRを活用するために凹部18の底面に接する金属膜14bの厚みtは例えば200nm程度以下であることが好ましい。本実施形態では、金属膜14bの厚みtは50nmである。金属膜14aの厚みは金属膜14bと同様である。金属膜14cの厚みは、金属膜14a、14bよりも薄く形成されている。
以上のように、赤外線検出素子10aは、基板12の表面12aにナノメートルオーダーの凹部18(ホール)がアレイ状に並べられてなるナノホールアレイが設けられ、各凹部18の底面に接して共鳴部である金属膜14bが設けられた構成である。各金属膜14bは凹部18の側面の一部18bに接する薄い金属膜14cを介して基板12の表面12aに接する金属膜14aに電気的に接続されている。金属膜14bを含む金属膜14と基板12との界面にはショットキー障壁が形成されている。基板12の裏面からの赤外線IRの照射によって金属膜14bでLSPRが発生すると、基板12から金属膜14bへ光電流iphが流れる。これを取り出して検出することで赤外線を検出することができる。
次に、図14A~図14Eを用いて赤外線検出素子10aの製造方法を説明する。赤外線検出素子10aの製造方法は、凹部形成工程と金属膜形成工程とを有し、本実施形態では更に電子ビームレジスト形成工程、電極部エッチング工程、及び電極部形成工程を有する。
図14Aに示すように、電子ビームレジスト形成工程は、基板12の表面12aにレジスト膜ERを形成する。以下、電子ビームレジスト形成工程の一例を説明する。まず、基板12の表面12aにレジスト膜ERを形成する。その後、EBリソグラフィー技術によりレジスト膜ERをパターニングする。これにより、レジスト膜ERには、凹部18に対応する部分が開口するレジストパターンが形成される。
図14Bに示すように、凹部形成工程は、基板12の表面12aに凹部18を形成する。以下、凹部形成工程の一例を説明する。まず、レジストパターンが形成されたレジスト膜ERをマスクとして、基板12の表面12aをDRIE法によりドライエッチングする。その後、所定のエッチング処理を行うことによりレジスト膜ERを除去する。これにより、基板12に凹部18が形成される。
図14Cに示すように、金属膜形成工程は、凹部18の内面18aを含む基板12の表面12aに金属膜14を形成する。以下、金属膜形成工程の一例を説明する。金属膜形成工程では、基板12の表面12aの法線方向に対して傾けられた方向から金属材料を蒸着することにより行う。基板12の表面12aの法線方向に対する金属材料の蒸着する方向の傾きは、例えば1°以上5°以下であり、好ましくは2°以上3°以下である。ここで、蒸着とは、例えば真空蒸着やイオンビーム蒸着等の蒸着、及びマグネトロンスパッタリングやECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング等のスパッタリングを含む物理蒸着を指す。上記の物理蒸着のステップカバレッジは、基板12への金属材料の入射方向を基板12の表面12aの法線方向に対して傾けたときに凹部18の側面の残部18cに金属材料の回りこみがほとんど発生しない程度である。このため、基板12の表面12aの法線方向に対して傾けられた方向から金属材料を蒸着すると、基板12の表面12a上の金属膜14a、凹部18の底面上の金属膜14b、及び凹部18の側面の一部18b上の金属膜14cを含む金属膜14が成膜されるが、凹部18の側面の残部18cには金属膜14は形成されない。また、凹部18の側面の一部18b上には、基板12の表面12a上及び凹部18の底面上よりも金属材料が薄く堆積する。
図14Dに示すように、電極部エッチング工程は、電極部16となる領域で金属膜14をエッチング除去する。以下、電極部エッチング工程の一例を説明する。基板12と金属膜14とを電気的に接続する電極部16を形成する領域において、金属膜14の一部をウェットエッチングにより除去し、基板12の表面12aを部分的に露出させる。引き続き、必要に応じて、電極部16となる領域で基板12(シリコン)の表面12aをウェットエッチングによりエッチングする。金属膜14のエッチングにおいて基板12の表面が確実に露出される場合は、基板12のエッチングは省略可能である。ウェットエッチングにより金属膜14を除去する領域は、電極部16となる領域よりも広範囲であることが好ましい。これにより、基板12(シリコン)の表面12aのうち、金属膜14のエッジよりも外側に電極部16となる領域が形成されるので、金属膜14と後述する電極部形成工程で形成される電極部16の端子16bとの物理的な接触が確実に防止される。
図14Eに示すように、電極部形成工程は、基板12と金属膜14とを電気的に接続する電極部16を形成する。以下、電極部形成工程の一例を説明する。まず、電極部エッチング工程において露出された基板12の表面12aに電極部16の端子16bを形成する。例えば、真空蒸着法によって基板12の表面12aにAlからなる金属薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法によって選択的にエッチングする。これにより、電極部16の端子16bが、金属膜14とは物理的に分離して形成される。形成した端子16bと金属膜14とを配線16aで接続し、更に配線16aを電流計測部16cと接続することにより、電極部16が形成される(図12参照)。端子16bの形成方法としては、上記のほか、Al箔を張り合わせ、ポリイミドテープをマスクとして用いてリフトオフを行うことにより所定の形状パターンとする方法等で形成してもよい。
以上のように製造される赤外線検出素子10aでは、ナノホールアレイの底面に共鳴部である金属膜14bが設けられていることでLSPRが発生しやすくなっており、赤外線に対する感度が高められ、赤外線検出素子10a自体の小型化が図れる。さらに、赤外線検出素子10aを用いる種々のセンサ、例えばイメージセンサにおいて、電子部品の配置設計の最適化が図れる。この結果、赤外線検出素子10aを用いる種々のセンサの小型化が実現できる。
4.第2実施例
図15(a)は実施例3(Device 1)に係る赤外線検出素子の平面図である。上記実施形態と同様の条件で、4つの区分された領域A(area A)、領域B(area B)、領域C(area C)、及び領域D(area D)を有する赤外線検出素子を製造し、実施例3(Device 1)とした。ここで、領域Aは基板12に凹部18が設けられていない領域であり、基板12の平坦な表面12a上に金属膜14が設けられた構成である。一方で、領域B、領域C、及び領域Dでは、凹部18がアレイ状に設けられている。図15(b)は、領域Cの凹部18の断面図を示す。領域B及び領域Dの凹部18の断面図は領域Cの凹部18の断面図と同様であり、図示を省略する。領域B、領域C、及び領域Dのそれぞれにおいて、図15(b)に示す、凹部18のサイズ(開口幅w、深さd)、ピッチp、及び金属膜14bの厚みtは、表1に示す値とした。領域B、領域C、及び領域Dにおいてはピッチpが異なるように設けられている。凹部18のサイズ(開口幅w、深さd)、及び金属膜14bの厚みtは、領域B、領域C、及び領域Dに対して共通である。
Figure 0007394373000001
実施例3(Device 1)と同様に、凹部が設けられていない領域Aを有し、さらに領域B、領域C、及び領域Dの凹部18のサイズ(開口幅w、深さd)、ピッチp、及び金属膜14の厚みtを表1に示す値とした赤外線検出素子を製造し、実施例4(Device 2)及び実施例5(Device 3)とした。
図16は、実施例4(Device 2)の領域Cにおける凹部18のSEM画像の模式図である。これは、SEM画像の各層の境界を描画して得た図である。基板12に凹部18が設けられており、基板12の表面12aに金属膜14aが形成されており、凹部18の底面に金属膜14bが形成されている。金属膜14bは、凹部18の側面の一部18bに設けられた金属膜14cにより金属膜14aに接続されている。
実施例4(Device 2)の赤外線検出素子の電流電圧特性は、図6と同様に整流特性を有することを示し、基板12と金属膜14との間のショットキー接合のショットキー障壁の高さφは0.65eVであった。実施例3(Device 1)及び実施例5(Device 3)についても同様であった。
上記の実施例3(Device 1)、実施例4(Device 2)、及び実施例5(Device 3)の各領域(領域A~D)に対して近赤外(NIR)レーザ光を入射したときに得られる出力(光電流iph)の波長依存性を測定した。入射するレーザ光の強度、レーザ光を入射したときの反射光の強度(反射強度)、及び光電流iphの変化を同時に測定した。
図17は、実施例4(Device 2)の領域Cの応答性を示すグラフである。実施例4(Device 2)の領域Cの出力の印加電圧依存性を、1300nm、1500nm、1700nmの各波長の光を入射して測定した。図17中、横軸は印加電圧(Bias voltage)(V)であり、縦軸は応答性の相対値(Relative Responsivity)である。応答性は、1300nm、1500nm、1700nmのいずれの波長の光でも、印加電圧が-0.5V以下となると飽和していることが確認された。図示していないが、実施例4(Device 2)の領域Aでも同様の結果であった。
図18は、実施例4(Device 2)の領域A及び領域Cの応答性を示すグラフである。実施例4(Device 2)の領域A及び領域Cに基板12の裏面12b側から各波長の光を照射したときの応答性を測定し、図18中でそれぞれグラフA(BA)及びグラフC(BA)として示す。また、実施例4(Device 2)の領域A及び領域Cに基板12の表面12a側から各波長の光を照射したときの応答性を測定し、図18中でそれぞれグラフA(FR)及びグラフC(FR)として示す。図18中、横軸は波長(nm)であり、縦軸は応答性(A/W)である。凹部18の有無にかかわらず、裏面照射時の出力は表面照射時の出力の数倍高いことが確認された。
図19は、実施例4(Device 2)の領域A~Dの反射率を示すグラフである。実施例4(Device 2)の領域A~Dに基板12の裏面12b側から各波長の光を照射したときの反射率を測定した。図19中、横軸は波長(nm)であり、縦軸は反射率である。図19中において領域A~Dの反射率をそれぞれグラフA~Dで示す。測定した波長領域の光に対しては、凹部18のピッチp以外が同一の条件では、ピッチpが小さいほど反射率が低くなることが確認された。実施例3(Device 1)及び実施例5(Device 3)でも同様の結果であった。
図20は、実施例4(Device 2)の領域A~Dの応答性を示すグラフである。実施例4(Device 2)の領域A~Dに基板12の裏面12b側から各波長の光を照射したときの応答性を測定した。図20中、横軸は波長(nm)であり、縦軸は応答性(A/W)である。図20中において領域A~Dの応答性をそれぞれグラフA~Dで示す。図19と比較すると、必ずしもピッチpが小さいほど応答性が高くなるものではないことが確認された。
図21は、実施例3(Device 1)、実施例4(Device 2)、及び実施例5(Device 3)の領域Aに対する各領域B~Dの応答性の増幅率を示すグラフである。領域Aに対する各領域B~Dの応答性の増幅率は、領域B~Dの応答性の数値の、領域Aの応答性の数値に対する比として求めた。図21は、横軸の波長(nm)に対する縦軸の増幅率(Amplification Factor)の関係を示すグラフであり、実施例3(Device 1)、実施例4(Device 2)、及び実施例5(Device 3)に対してまとめて示したものである。図20及び図21から、実施例4(Device 2)の領域Cでは、波長1760nmの光に対して、応答性が31.6mA/Wであり、このときの増幅率が15.4倍であり、高い増幅率であることが確認された。
5.変形例
上記第1実施形態では、凹部18内において、金属膜14が内面18aに沿って一定の厚みで形成されているが、これに限られず、凹部18内が金属膜14で充填されていてもよい。
上記第1実施形態では、凹部18の開口は、円形としたが、本発明はこれに限られず、例えば矩形、多角形、楕円形などでもよい。凹部18の穴構造の形状は、円柱状に限られず、例えば円錐状、角柱状、角錐状、半球状などでもよい。また、上記第2実施形態では、凹部18の開口は、矩形に限られず、例えば円形、多角形、楕円形などでもよい。凹部18の穴構造の形状は、角柱状に限られず、例えば円柱状、円錐状、角錐状、半球状などでもよい。
上記第1実施形態及び第2実施形態では、凹部18は、穴構造としたが、本発明はこれに限られず、溝構造でもよい。溝構造を有する凹部の開口幅、深さ、ピッチは、穴構造を有する凹部18の開口径D(開口幅w)、深さDE(d)、ピッチP(p)と同様の範囲内であることが好ましい。
上記第1実施形態では、金属膜形成工程は、SCFDとしたが、本発明はこれに限られず、アトミックレイヤーデポジション(ALD;Atomic Layer Deposition)を行ってもよい。成膜の高速化の観点では、ALDよりもSCFDの方が好ましい。なお、真空蒸着法やスパッタ法では、ステップカバレッジが不十分であり、凹部18の開口が塞がれてしまうので、内面18aの全域に金属膜14を形成することが難しい。
赤外線検出素子10、10aは、SPRセンサチップに利用することができる。赤外線検出素子10、10aをSPRセンサチップに利用する場合は、金属膜14の表面に試料を含む溶液を接触させる。金属膜14の表面に溶液が接触することにより屈折率が変化し、表面プラズモンの共鳴条件が変化する。共鳴条件が変化すると、金属膜14の内部の自由電子eは、受け取るエネルギーが変化することによって動きが変化する。この自由電子eの動きの変化が電流量の変化として検出される。このため、電流量の変化に基づき、試料の分析を行うことができる。なお、金属膜14の表面に、特定の分子に特異的に反応する反応膜を設けることにより、検出感度を向上させることができる。
10、10a 赤外線検出素子
12 基板
12a 表面
12b 裏面
14、14a、14b、14c 金属膜
16 電極部
18 凹部
18a 内面
D 開口径
w 開口幅
DE、d 深さ
IR 赤外線
P、p ピッチ
T、t 厚み

Claims (5)

  1. 赤外線を透過し、表面に複数の凹部が形成された基板と、
    前記凹部の内面を含む前記基板の表面に設けられ、前記基板との界面でショットキー障壁を形成する金属膜と
    を備え
    前記金属膜は、前記基板の表面に設けられた第1の金属膜、前記凹部の底面に設けられた第2の金属膜、及び前記凹部の側面の一部に設けられた第3の金属膜を含んで形成され、
    前記第3の金属膜の厚みは、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜よりも薄く形成されており、
    前記基板は、前記赤外線が入射する裏面を有し、
    前記第2の金属膜は、前記基板の裏面から入射して前記基板を透過した前記赤外線によって局在表面プラズモン共鳴を発生する共鳴部であり、前記第3の金属膜を介して、前記第1の金属膜に電気的に接続されており、
    各々の前記凹部の底面に設けられた前記第2の金属膜の高さ位置が互いに揃っている赤外線検出素子。
  2. 前記凹部は、穴構造を有し、開口径または開口幅が10μm以下である請求項に記載の赤外線検出素子。
  3. 前記基板と前記金属膜とを電気的に接続する電極部を備え
    前記電極部は、前記基板に設けられている端子と、光電流の計測を行う電流計測部とを有し、
    前記端子は、前記金属膜とは物理的に分離して設けられており、配線を介して前記金属膜と電気的に接続し、
    前記電流計測部は、前記配線と接続している請求項1または2に記載の赤外線検出素子。
  4. 前記基板は、シリコンにより形成されており、
    前記金属膜は、銅、金、パラジウムのいずれかにより形成されている請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線検出素子。
  5. 赤外線を透過する基板の表面に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
    前記凹部の内面を含む前記基板の表面に金属膜を形成する金属膜形成工程と
    を有し、
    前記金属膜形成工程は、前記基板の表面の法線方向に対して傾けられた方向から金属材料を蒸着することにより、前記基板の表面上の第1の金属膜、前記凹部の底面上の第2の金属膜、及び前記凹部の側面の一部上の第3の金属膜を含む前記金属膜を形成し、
    前記第3の金属膜の厚みは、前記第1の金属膜および前記第2の金属膜よりも薄く形成されており、
    前記基板は、前記赤外線が入射する裏面を有し、
    前記第2の金属膜は、前記基板の裏面から入射して前記基板を透過した前記赤外線によって局在表面プラズモン共鳴を発生する共鳴部であり、前記第3の金属膜を介して、前記基板の表面に設けられた前記第1の金属膜に電気的に接続されており、
    各々の前記凹部の底面に設けられた前記第2の金属膜の高さ位置が互いに揃っている赤外線検出素子の製造方法。
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