JP7389443B2 - 赤外線反射薄膜及びこれを形成するためのインク、並びに赤外線反射薄膜を備える赤外線反射シール及び赤外線反射体、並びに該赤外線反射体を備えた建築物又は乗り物 - Google Patents

赤外線反射薄膜及びこれを形成するためのインク、並びに赤外線反射薄膜を備える赤外線反射シール及び赤外線反射体、並びに該赤外線反射体を備えた建築物又は乗り物 Download PDF

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Description

本発明は、赤外線反射薄膜及びこれを形成するためのインク、並びに赤外線反射薄膜を備える赤外線反射シール及び赤外線反射体、並びに該赤外線反射体を備えた建築物又は乗り物に関する。
近年、建物や乗り物の内部空間の保温を目的として、内外装に使用する赤外線反射薄膜、ないしはこれを形成するための塗料が開発されている。赤外線反射薄膜は、熱線である赤外線を反射して放射による熱伝達を抑制することで、建物や乗り物の内部空間を保温する。
赤外線反射薄膜は、伝導による熱移動を抑制することで保温を行う断熱(遮熱)材とは異なり、熱移動方向の部材厚みを大きくする必要がないため、設置スペースが小さくて済む。また、既存の建物や乗り物に設置する場合でも、壁、天井又は床の取外し及び取付けといった大がかりな工事が不要である利点を有する。
これまで、赤外線反射薄膜としては、アルミ箔(特許文献1)、基材の表面にスパッタリングにより堆積されたアルミニウム膜(特許文献2)、及び遠赤外線反射性顔料としてアルミニウム粒子を含む塗料で形成された層(特許文献3,4)等のアルミニウムを用いたものや、ポリエチレンジオキシチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特許文献5)が報告されている。また、赤外線を反射する顔料として、ルチル型二酸化チタン顔料粒子も報告されている(特許文献6)。さらに、熱線反射型の熱線遮蔽材として、平板状の銀ナノ粒子を含有する膜も報告されている(特許文献7)。
特開2009-268377号公報 特開2017-119377号公報 特開2015-124360号公報 特表2007-526930号公報 特開2015-147345号公報 特表2015-533758号公報 特開2013-228698号公報
赤外線は、その波長により、近赤外線(0.78μm~1.5μm)、中赤外線(1.5μm~3.0μm)及び遠赤外線(3.0μm~1mm)に分類される。このうち、波長の長い遠赤外線は、ガラスや樹脂等の多くの媒質によって吸収されてしまうため、赤外線反射材料が樹脂中に均一に分散した赤外線反射薄膜では、遠赤外線の反射率が著しく小さくなり、断熱性が十分でないという問題がある。
また、ルチル型二酸化チタンは、遠赤外線反射能を有さないため、断熱性が不十分であった。
アルミ箔及びアルミニウムのスパッタリング膜からなる赤外線反射薄膜、並びに平板状の銀ナノ粒子が表面に配置された赤外線反射薄膜はいずれも、遠赤外線の反射率が高く断熱性には優れるものの、表面に金属が露出しているため、可視光の反射も強い。このため、外観に劣り、また眩しさにより周囲の者にストレスないし疲れを感じさせることが問題であった。
そこで、本発明は、前述の問題点を解決し、遠赤外線を含む赤外線の反射率が高く、可視光の反射率が小さい赤外線反射薄膜を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために種々の検討を行ったところ、銀の微小構造体を敷き詰めて特定の厚み及び表面粗さを有する薄膜を形成することで、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1実施形態は、「銀微細構造体から実質的になる赤外線反射薄膜であって、平均厚みが150nm以上であり、算術平均表面粗さ(Ra)が18nm~100nmであることを特徴とする赤外線反射薄膜」である。
本発明の第2実施形態は、「銀微細構造体が水系溶媒又は有機系溶媒に分散されてなる赤外線反射薄膜形成用のインクであって、前記銀微細構造体が、平均粒径が1nm~300nmの微粒子、及び/又は平均長さが100nm~2000nmの微小薄片であることを特徴とする赤外線反射薄膜形成用のインク」である。
本発明の第3実施形態は、基材上に前述した赤外線反射薄膜を備えた赤外線反射体であり、本発明の第4実施形態は、該赤外線反射体を備えた建築物又は乗り物である。なお、前記第1実施形態ないし第4実施形態をまとめて述べる際には、「本実施形態」と総称する。
本発明によれば、高い遠赤外線反射率と低い可視光反射率とを兼ね備えた赤外線反射薄膜を提供できる。
微小薄片の定義を説明する模式図 微小薄片の平均長さを説明する模式図 微小薄片のアスペクト比を説明する模式図 赤外線反射薄膜が第1薄膜と第2薄膜とを備える赤外線反射体の構造を示す模式図 実施例14に係る赤外線反射薄膜の膜面(上面)を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真 実施例14に係る赤外線反射薄膜の断面を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真
以下、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。また、本明細書において、数値範囲を「~」を用いて表す場合は、特記した場合を除き、の両端の数値を含む。
[赤外線反射薄膜]
本発明の第1実施形態に係る赤外線反射薄膜は、銀微細構造体から実質的になり、平均厚みが150nm以上であり、算術平均表面粗さ(Ra)が18nm~100nmであることを特徴とする。ここで、銀微細構造体から「実質的になる」とは、銀微細構造体、並びに不可避不純物及び膜の赤外線反射能を毀損しない範囲で添加される着色剤等の成分以外を含有しない意味である。
赤外線反射薄膜を実質的に構成する銀微細構造体には、球状や多面体状といった微粒子状の銀、及び縦横の寸法に比して厚さ寸法が極端に小さい板状体である銀の微小薄片等が含まれる。銀微細構造体が球状粒子である場合には、可視光線を散乱することで眩しさを低減する効果が高まる点で好ましい。また、銀微細構造体が微小薄片である場合には、赤外線の反射率に優れる点で好ましい。
ここで、「球状粒子」とは、アスペクト比が0.9~1.1で表面に頂点等の突起を有さない形状の粒子をいい、「微小薄片」とは、図1に示すように、互いに向かい合う面積が最も広い面(S,S)(以下、「主面」という。)の距離(d)に対する、該主面を含む面内に位置し、該主面を挟む2本の平行な直線間の距離のうち最小のもの(W)の比(W/d)が5以上の微細構造体をいう。
銀微細構造体の大きさは限定されないが、赤外線反射薄膜を、後述する平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)とする点からは、銀微細構造体が微粒子状である場合には、平均粒径が1nm~300nmであることが好ましく、銀微細構造体が微小薄片である場合には、平均長さが100nm~2000nm、アスペクト比が10~200であることが好ましい。
前記微粒子状の銀の平均粒径は、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下であることが最も好ましい。
前記銀の微小薄片の平均長さは、100nm~1500nmであることがより好ましく、200nm~1200nmであることが更に好ましく、200nm~1000nmであることが最も好ましい。
前記銀の微小薄片のアスペクト比は、20~150であることがより好ましく、30~150であることが更に好ましく、50~100であることが最も好ましい。
ここで、前記微粒子状の銀の平均粒径とは、赤外線反射薄膜から採取した銀粒子、又は赤外線反射薄膜形成用の組成物(インク等)から採取した銀粒子について、動的光散乱法(光子相関法)で粒度分布を測定し、該測定結果に基づいて算出されたメジアン径をいう。
また、前記銀の微小薄片の平均長さ(Lavg)とは、図2に示すように、各薄片の主面(S,S,S,・・・,S)を含む面内に位置し、該主面を挟む2本の平行な直線間の距離のうち最大のもの(L,L,L,・・・,L)を測定し、該距離の総和を測定に供した薄片の個数(n)で除した値をいう。
さらに、前記銀の微小薄片のアスペクト比とは、図3に示すように、微小薄片の平均長さ(Lavg)を平均厚み(Davg)、すなわち複数の薄片について測定した主面(S,S,S,・・・S)間の距離(D,D,D,・・・,D)の総和を測定に供した薄片の個数(n)で除した値、で除した値を意味する。
赤外線反射薄膜の平均厚みは、銀微細構造体の形状を特定しない場合には、150nm以上とする。平均厚みを150nm以上とすることで、銀微細構造体の形状によらず、優れた赤外線反射性能が得られる。平均厚みの下限値は、200nm以上とすることが好ましく、250nm以上とすることがより好ましい。また、平均厚みの上限値は特に限定されないが、銀の使用量を少なくして材料コストを抑える点からは500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましい。
赤外線反射薄膜の平均厚みの下限値は、銀微細構造体が微小薄片である場合には、80nmとすることができる。これは、微小薄片の主面が平行に並んで赤外線反射薄膜を形成することで、赤外線を効率的に反射することができるためと考えられる。
第1の実施形態に係る赤外線反射薄膜の算術平均表面粗さ(Ra)は、18nm~100nmとする。Raを18nm以上とすることで、膜に入射する可視光線を散乱して眩しさを低減することができる。Raは、25nm以上とすることが好ましい。他方、Raを100nm以下とすることで、低放射率を実現し、多くの赤外線を反射することができる。Raは、80nm以下とすることが好ましく、60nm以下とすることがより好ましい。
ここで、赤外線反射薄膜の平均厚みは、原子力顕微鏡(Atomic Force Microscopy, Keyence nanoscale hybrid microscope VN-8010)を用いて膜表面の高さを一定の距離に亘って計測し、その積分値を、測定を行った距離で除することで算出する。
また、赤外線反射薄膜の算術平均表面粗さ(Ra)は、同じ原子間力顕微鏡で測定された膜表面の高さを基に、JIS B 0601-2001「製品の幾何特性(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―用語、定義及び表面性状パラメータ」に準拠した方法で算出する。
なお、赤外線反射薄膜が接着層や保護層等の他の層との積層体となっている場合には、遠赤外線反射薄膜が実質的に銀微細構造体からなり、高い導電性を有することを利用して、膜の断面の電子顕微鏡像を画像処理することで、赤外線反射薄膜のみの平均厚み及び算術表面粗さ(Ra)を算出する。
[赤外線反射薄膜形成用のインク]
本発明の第2実施形態に係る赤外線反射薄膜形成用のインクは、銀微細構造体が水系溶媒又は有機系溶媒に分散されてなり、前記銀微細構造体が、平均粒径が10nm~300nmの微粒子、及び/又は平均長さが100nm~2000nmの微小薄片であることを特徴とする。
インクの調製のために用いられる水系溶媒又は有機系溶媒としては、特に限定されず、水、メタノール、エタノール、トルエン、ベンゼン、アセトン等が使用できる。中でも、環境や人体への悪影響が小さく安価な点で、水が好ましい。
銀微細構造体の大きさは、これが微粒子の場合には、平均粒径を1nm~300nmとする。平均粒径を300nm以下とすることで、緻密な薄膜を得ることができる。微粒子の平均粒径は、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。他方、平均粒径を1nm以上とすることで、可視光線の散乱効率が高く、かつ赤外線反射性能に優れる薄膜が得られやすくなる。微粒子の平均粒径は、10nm以上が好ましい。
銀微細構造体の大きさは、これが微小薄片の場合には、平均長さを100nm~2000nmとする。平均長さを100nm以上とすることで、赤外線反射性能の高い薄膜を得ることができる。微小薄片の平均長さは、200nm以上が好ましい。他方、平均長さを2000nm以下とすることで、可視光線の散乱効率が高い薄膜を得ることができる。微小薄片の平均長さは、1500nm以下が好ましく、1200nm以下がより好ましく、1000nm以下が更に好ましい。
銀微細構造体が微粒子である場合、該微粒子は球状粒子であってもよい。球状粒子を用いると、いわゆるボールベアリング効果により製膜性が向上すると共に、得られる赤外線反射薄膜中で可視光線を散乱し、眩しさを低減する効果が高まる点で好ましい。
インク中に含まれる銀微細構造体の量は、赤外線反射薄膜の製膜方法に応じて適宜調整すればよい。一例として、スプレー法により製膜する場合には、0.1~15質量%とすることが好ましい。
インク中には、前述した必須成分の他、インクを着色するための、着色料を含有させてもよい。着色料としては特に限定されないが、天然鉱物着色料、合成無機着色料、有機着色料(多環顔料(polycyclic pigment)、アゾ顔料)等が挙げられる。
また、色別に着色料を例示すると、白色系としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム及びバライト粉等が挙げられる。赤色系としては、鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ペリレン、ペリノン及びインジゴイド等が挙げられる。黄色系としては、黄鉛、亜鉛黄、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン及びキサンテン等が挙げられる。青色系としては、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、フタロシアニン、アントラキノン及びインジゴイド等が挙げられる。橙色系としては、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン及びインジゴイド等が挙げられる。緑色系としては、フタロシアニン、アゾメチン及びペリレン等が挙げられる。紫色系としては、ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン(アントロン)及びキサンテン等が挙げられる。黒色系としては、カーボンブラック等が挙げられる。
インク中には、特定の機能を付与する観点から、得られる赤外線反射薄膜の性能を低下させない範囲で、接着剤、抗菌剤、消泡剤、芳香剤、消臭剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、フィルム形成剤、防虫剤、分散剤及び粘度調整剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
[球状銀微粒子の製造方法]
赤外線反射薄膜形成用のインクに含有させる球状銀微粒子の製造方法は特に限定されないが、一例として、化学還元法、溶液法等が挙げられる(例えば、”Shape-Controlled Synthesis of Gold and Silver Nanoparticles”, Yugang Sun, Younan Xia. (2002), Science vol. 298, Issue 5601, pp. 2176-2179、及び”Size-controlled preparation of silver nanoparticles by a modified polyol method”, Tao Zhao, et. al., Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 2010, 366, pp. 197-202等を参照)。
これらのうち、銀イオンをエチレングリコールで還元する方法を以下に説明する。
この方法では、エチレングリコールが下記式(1)のように反応してアセトアルデヒド(CHCHO)を生じ、これと銀イオンとが下記式(2)のように反応し、銀粒子が析出する。

2HOCHCHOH→2CHCHO+2HO (1)
2Ag+2CHCHO→CHCO-OCCH+2Ag+2H (2)
本製造例においては、均一な形状の金属微粒子を効率よく生成させる観点から、反応溶液中に保護層を存在させることが好ましい。また、保護層は、微粒子同士が吸着するのを防ぎ、反応を安定化する作用も有する。
保護層を構成する化合物としては、各種高分子化合物や、分子中にアミノ基、チオール基、スルフィド基、アミノ酸またはその誘導体、ペプチド結合、複素環構造及びビニル構造から選択される1以上の構造を有する化合物等が挙げられる。
高分子化合物の好適例としては、窒素原子を含有するポリマー又はビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。窒素原子を含有するポリマーとしては、側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーが挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN-ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。例えば、N-ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン(PVP))および共重合体等を採用し得る。ビニルアルコール系ポリマーは、典型的には、主たる繰返し単位としてビニルアルコール単位を含むポリマーであるポリビニルアルコール(PVA)である。PVAにおいて、ビニルアルコール単位以外の繰返し単位の種類は特に限定されず、例えば酢酸ビニル単位、プロピオン酸ビニル単位、ヘキサン酸ビニル単位等から選択される1種または2種以上であり得る。全繰返し単位が実質的にビニルアルコール単位から構成されていてもよい。
高分子化合物の他の例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体や、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル等が挙げられる。
[銀の微小薄片の製造方法]
赤外線反射薄膜形成用のインクに含有させる銀の微小薄片の製造方法についても特に限定されないが、一例として、化学還元法、溶液法等が挙げられる(例えば、”Efficient preparation of silver nanoplates assisted by non-polar solvents”, Lijian Huang, Yueming Zhai, Shajun Dong, Jin Wang (2009), Journal of Colloid and Interface Science vol. 331, Issue 2, pp. 384-388、及び”Synthesis of Silver Nanoprisms in DMF”, Isabel Pastoriza-Santos and Luis M. Liz-Marzan (2002), Nano Letters vol 2, pp. 903-905等を参照)。
これらのうち、銀イオンをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒で還元する方法を以下に説明する。
この方法では、式(3)に示すように、N,N-ジメチルホルムアミド溶液中で銀イオンは還元され、銀粒子となって析出する。

HCONMe+2Ag+HO→2Ag+MeNCOOH+2H (3)
本製造例においても、球状銀微粒子の製造例と同様に、均一な形状の微小薄片を効率よく生成させる観点から、反応溶液中に保護層を存在させることが好ましい。また、保護層は平板状銀微粒子同士が吸着するのを防ぎ、反応を安定化する作用を持つ。
保護層を構成する化合物としては、球状銀微粒子の製造例に記載したものを使用することができる。
[赤外線反射体]
本発明の第3実施形態に係る赤外線反射体は、基材上に、上述した第1実施形態に係る赤外線反射薄膜、又は第3実施形態に係る赤外線反射シールを備えることを特徴とする。
基材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ガラス、石、金属、セラミック又はプラスチック等が使用できる。これらのうち、プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂等が例示される。また、プラスチック基材として、セロハンテープ等を用いてもよい。
基材の形状も特に限定されず、例えば、板状、シート状、筒状、球状及び多面体状等の各種形状のものが使用でき、表面に凹凸を有するものであってもよい。
赤外線反射体は、図4に示すように、表面に形成された赤外線反射薄膜1が、基材2上に形成され、含有する銀微細構造体が微小薄片である第1薄膜11と、該第1薄膜11上に形成され、含有する銀微細構造体が球状粒子である第2薄膜12とを含むものであってもよい。
このような構造の赤外線反射薄膜を備えることで、銀微細構造体が微小薄片であることによる赤外線反射性能と、銀微小構造体が球状粒子であることによる可視光散乱性能とが同時に発揮されるため、断熱性と外観とに特に優れた赤外線反射体となる。
赤外線反射薄膜が前述した第1薄膜と第2薄膜とを備える場合、各薄膜の厚みは、要求される特性により適宜設定すればよい。一例としては、第1薄膜の厚みを80nm~450nmとすることができ、好ましくは120nm~400nmであり、より好ましくは150nm~300nmである。他方、第2薄膜の厚みは、50nm~300nmとすることができ、好ましくは60nm~250nmであり、より好ましくは120nm~200nmである。
赤外線反射体は、基材の上に、第2実施形態に係るインクを供給し、遠赤外線反射薄膜を製膜することで得られる。
基材へのインクの供給方法は特に限定されず、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ドロップコート法、オフセット印刷法、グラビア印刷法及びフレキソ印刷法等が使用できる。
赤外線反射薄膜の算術平均表面粗さ(Ra)をコントロールするため、銀微粒子赤外線反射インクを基材に供給する際に、インクを迅速に飛ばして、表面に不規則凸凹構造を形成させてもよい。
第1薄膜と第2薄膜とを備える赤外線反射薄膜を製造する場合には、基材上に、銀微細構造体として微小薄片を含む第1のインクを供給して第1薄膜又はその前駆体膜を形成した後、その上に銀微細構造体として球状粒子を含む第2のインクを供給して第2薄膜又はその前駆体膜を形成する。
赤外線反射体は、予め形成された赤外線反射薄膜を接着剤等で基材上に貼り付けて製造してもよい。この場合には、赤外線反射薄膜の基材に接する側の面に接着剤層と剥離紙ないし剥離フィルムとを積層したシール構造としておき、剥離紙ないし剥離フィルムを剥がして基材に貼り付けるように構成してもよい。なお、この場合には、接着剤層も基材の一部とする。
第3実施形態に係る赤外線反射体、及び第1実施形態に係る赤外線反射薄膜によれば、0.6以下の放射率と30%以下の可視光正反射率とが達成可能である。前記放射率は、膜厚や表面粗さ(Ra)等の条件を適切に設定することで、0.5以下とすることができ、0.4以下とすることもでき、0.3以下とすることも可能であり、0.2以下を達成することも可能である。また、前記可視光正反射率は、膜厚や表面粗さ(Ra)等の条件を適切に設定することで、20%以下とすることもでき、15%以下とすることも可能であり、10%以下を達成することも可能である。
[放射率の計算方法]
本実施形態における放射率(ε)は、赤外線を照射した場合の、波長5μm~25μmの赤外線反射率(ρ)を測定し、JIS R 3106(1998)(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて、

ε=1-ρ

の関係から算出する。
本実施形態では、赤外線反射率の測定に、FT-IRフーリエ変換近赤外/中赤外/遠赤外分光分析装置(パーキンエルマージャパン社製、Frontier)を用いた。
[可視光正反射率の測定方法]
一般に、可視光正反射率とは、波長400nm~800nmの可視光を試料に照射した際の、入射光に対する正反射光(鏡面反射光)の比率をいい、以下の式で算出される。

可視光正反射率(%)=(試料で正反射した光の量)/(入射光の量)×100

なお、反射光には正反射光(鏡面反射光)と拡散反射光とがあり、それらをあわせたものが全反射光となる。正反射光(鏡面反射光)は、入射光と同じ角度で反射する光であり、ミラーのような光沢のある面で多く観測される。拡散反射光は、入射光とは異なる角度で四方八方に拡散する光であり、紙や粉のような粗い面で多く観測される。
本実施形態では、人の目における感度が最も高いといわれる波長550nmの光についての正反射率を可視光正反射率とした。
可視光正反射率の測定には、紫外可視近赤外分光光度計U4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
本発明の第4実施形態に係る建築物又は乗り物は、前述した第4実施形態に係る赤外線反射体を備えることを特徴とする。
建築物の例としては、戸建てないし集合住宅、オフィスビル、倉庫、プレハブ小屋及びビニルハウス等が挙げられる。
乗り物の例としては、自動車、飛行機、列車、船舶、内部空間を有するバイク、観覧車のかご及びゴンドラ等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
<調製例1:球状の銀微細構造体の合成-1>
硝酸銀(AgNO)200mgと、ポリビニルピロリドン(PVP)3.0gと、110℃にしたエチレングリコール溶液40mLとを撹拌しながら混合した後、160℃で3時間反応させ、球状の銀微細構造体(球状銀微粒子)の分散液を得た。このとき、反応前の液は、オレンジ色を呈していたが、球状銀微粒子が生成すると、液は濃いブラウンに変化した。
このようにして得られた分散液を500mLのエタノールに入れて攪拌し、回転数8000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を捨てた。得られた沈殿物に再度エタノールを加えて遠心分離し、上澄み液を捨てる作業を3回繰り返した後、沈殿物を減圧下で乾燥し、球状銀微粒子を得た。
この球状銀微粒子を蒸留水に分散させ、5.0wt%の球状銀微粒子を含む赤外線反射薄膜形成用のインクを得た。粒径分布分析装置(Photal ELSZ-1000、大塚電子社製)を用いて、銀微粒子の平均粒径を測定したところ、24.4nmであり、粒径分布が非常に狭く、粒径がほぼ均一であることがわかった。
<調製例2:球状の銀微細構造体の合成-2>
ポリビニルピロリドン(PVP)の量を2.0gに変更した以外は調製例1と同様にして、赤外線反射薄膜形成用のインクを調製した。粒径分布分析装置を用いて、球状銀微粒子の平均粒径を測定したところ、63.3nmであり、粒径分布が非常に狭く、粒径がほぼ均一であることがわかった。
<調製例3:球状の銀微細構造体の合成-3>
硝酸銀(AgNO)の量を250mgに変更した以外は調製例2と同様にして、赤外線反射薄膜形成用のインクを調製した。粒径分布分析装置を用いて、球銀微粒子の平均粒径を測定したところ、95.2nmであり、粒径分布が非常に狭く、粒径がほぼ均一であることがわかった。
<調製例4:微小薄片状の銀微細構造体の合成>
硝酸銀(AgNO)200mgと、ポリビニルピロリドン(PVP)10.0gと、100℃にしたN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)200mLとを撹拌しながら混合した後、110℃で24時間反応させ、微小薄片状の銀微細構造体の分散液を得た。このとき、反応前の液は、薄黄色を呈していたが、微小薄片状の銀微細構造体が生成すると、液は濃い青グレーに変化した。
このようにして得られた分散液を60℃で減圧蒸留してDMFを除去した後、200mLの蒸留水と共に容器に入れ、回転数8000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を捨てた。得られた沈殿物に再度蒸留水を加えて遠心分離し、上澄み液を捨てる作業を3回繰り返した後、沈殿物を減圧下で乾燥し、微小薄片状の銀微細構造体を得た。
この微小薄片状の銀微細構造体を蒸留水に分散させ、5.0wt%の微小薄片を含む赤外線反射薄膜形成用のインク分散液を得た。微小薄片の平均長さを測定したところ、823.5nmであり、アスペクト比は40~80の範囲であることがわかった。
<球状銀微粒子から実質的になる赤外線反射薄膜の作製>
(実施例1)
ガラス基板(縦3.0cm、横3.0cm、厚さ1.1mm)を温度150℃のホットプレート上に載置し、調製例1で調製したインク2.0mLをエアブラシ(アネスト岩田HP-TR1、ノズル口径0.3mm、出口圧力0.1MPa)によってガラス基板上15cmから垂直方向にスプレーし、球状銀微粒子から実質的になる、実施例1に係る赤外線反射薄膜を作製した。なお、ホットプレートは、インクがガラス基板に接した直後にインク中の溶媒を蒸発させるために使用した。
AFMを用いて、上述した方法により赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが150nm、Raが25nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。
(実施例2~3)
インクの使用量を変更(実施例2:3.0mL、実施例3:4.0mL)した以外は実施例1と同様にして、球状銀微粒子から実質的になる、実施例2,3に係る赤外線反射薄膜をそれぞれ作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、実施例2では平均厚みが250nm、Raが27nmであり、実施例3では平均厚みが300nm、Raが25nmであり、いずれも所期の範囲内にあることが確認された。
(実施例4~5)
調製例2のインクを用いた以外は実施例1,3と同様にして、球状銀微粒子から実質的になる、実施例4,5に係る赤外線反射薄膜をそれぞれ作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、実施例4では平均厚みが150nm、Raが28nmであり、実施例5では平均厚みが300nm、Raが29nmであり、いずれも所期の範囲内にあることが確認された。
(実施例6~7)
調製例3のインクを用いた以外は実施例1,3と同様にして、球状銀微粒子から実質的になる実施例6,7に係る赤外線反射薄膜をそれぞれ作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、実施例6では平均厚みが200nm、Raが30nmであり、実施例7では平均厚みが300nm、Raが32nmであり、いずれも所期の範囲内にあることが確認された。
<微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる赤外線反射薄膜の作製>
(実施例8~10)
調製例4で調製したインクを用いた以外は実施例1~3と同様にして、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる、実施例8~10に係る赤外線反射薄膜をそれぞれ作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、実施例8では平均厚みが150nm、Raが20nmであり、実施例9では平均厚みが200nm、Raが21nmであり、実施例10では平均厚みが300nm、Raが22nmであり、いずれも所期の範囲内にあることが確認された。
<銀微細構造体の複合体から実質的になる赤外線反射薄膜の作製>
(実施例11)
1mLの調製例1インクと9mLの調製例4インクを混合し、この混合インクを使用した以外は実施例3と同様にして、銀微細構造体の複合体から実質的になる、実施例11に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが300nm、Raが21nmであり、いずれも所期の範囲内にあることが確認された。
(実施例12)
2mLの調製例1インクと8mLの調製例4インクを混合し、この混合インクを使用した以外は実施例3と同様にして、銀微細構造体の複合体から実質的になる、実施例12に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが300nm、Raが22nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。
(実施例13)
3mLの調製例1インクと7mLの調製例4インクを混合し、この混合インクを使用した以外は実施例1と同様にして、銀微細構造体の複合体から実質的になる、実施例13に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが300nm、Raが24nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。
<平均厚みの小さい赤外線反射薄膜の作製>
(比較例1)
インクの使用量を1.0mLとした以外は実施例1と同様にして、球状銀微粒子から実質的になる、比較例1に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、Raは24nmと所期の範囲内にあるものの、平均厚みは80nmと小さいことが確認された。
(比較例2)
インクの使用量を1.0mLとした以外は実施例8と同様にして、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる、比較例2に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、Raは19nmと所期の範囲内にあるものの、平均厚みは60nmと小さいことが確認された。
(比較例3)
インクの使用量を1.0mLとした以外は実施例11と同様にして、銀微細構造体の複合体から実質的になる、比較例3に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、Raは23nmと所期の範囲内にあるものの、平均厚みは80nmと小さいことが確認された。
<算術平均表面粗さ(Ra)が小さい赤外線反射薄膜の作製>
(比較例4)
ホットプレートを使用せずに、スプレー後のインクの乾燥を室温(25℃)にて行った以外は実施例3と同様にして、球状銀微粒子から実質的になる、比較例4に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みは340nmと所期の範囲内にあるものの、Raは17nmと小さいことが確認された。
(比較例5)
ホットプレートを使用せずに、スプレー後のインクの乾燥を室温(25℃)にて行った以外は実施例10と同様にして、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる、比較例5に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みは320nmと所期の範囲内にあるものの、Raは10nmと小さいことが確認された。
<赤外線反射薄膜の特性確認>
実施例1~13及び比較例1~5に係る赤外線反射薄膜について、上述した方法により放射率及び可視光正反射率の測定を行った。測定結果を膜厚及び算術平均表面粗さ(Ra)と合わせて表1に示す。
実施例1~13から、所期の平均厚み(150nm以上)及び算術平均表面粗さ(Ra)(18nm~100nm)を有する赤外線反射薄膜は、良好な放射率(0.6以下)及び可視光正反射率(30%以下)を有することが判る。
これに対し、平均厚みが小さい比較例1~3では放射率が高くなり、算術平均表面粗さ(Ra)が小さい比較例4,5では可視光正反射率が高くなることが判る。
実施例1~3及び比較例1、並びに実施例8~10及び比較例2をそれぞれ対比すると、赤外線反射薄膜の厚みが大きくなるにつれて放射率が低くなる傾向が見られた。
また、実施例1,4及び実施例8、実施例6及び実施例9、並びに実施例3,5,7及び実施例10をそれぞれ対比すると、銀微細構造体の形状が球状粒子であるよりも微小薄片である方が、同じ厚みでの放射率が小さくなることが判る。この結果は、銀微細構造体の形状を微小薄片とした場合、同じ放射率を得るための赤外線反射薄膜の平均厚みを小さくできることを示唆するものといえる。
さらに、実施例3,5及び7、並びに実施例11~13をそれぞれ対比すると、算術平均表面粗さ(Ra)が大きくなるにつれて可視光正反射率が低くなり、放射率が高くなる傾向が見られた。
実施例3,5及び7に係る赤外線反射薄膜はいずれも、球状銀微粒子から実質的になるものであり、その差異は、球状銀微粒子の粒度(平均粒径)のみである。また、実施例11~13に係る赤外線反射薄膜はいずれも、球状銀微粒子と微小薄片状の銀微細構造体との複合体から実質的になるものであり、その差異は、球状銀微粒子と微小薄片状の銀微細構造体との比率のみである。このことから、赤外線反射薄膜の算術平均表面粗さ(Ra)の調整には、銀微細構造体の粒度調整、及び/又は異なる形状の銀微細構造体の混合が有効であると考えられる。
<銀微細構造体の層を複数有する赤外線反射薄膜の作製>
(実施例14)
実施例9と同様の方法で作成した、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる赤外線反射薄膜(第1薄膜)の上に、1.0mLの調製例1インクを使用した以外は実施例1と同様にして球状銀微粒子から実質的になる層(第2薄膜)を形成することで、銀微細構造体の層を複数有する、実施例14に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが250nm、Raが25nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。また、実施例9による赤外線反射薄膜(第1薄膜)の平均厚みが200nmであったことから、第2薄膜の平均厚みは50nmであることが判る。
得られた赤外線反射薄膜の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図5,6に示す。図5は薄膜の膜面(上面)を示しており、図6は薄膜の断面を示している。これらの図から、本実施例に係る赤外線反射薄膜は、基材上に微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる層(第1薄膜)が形成され、さらに該第1薄膜上に球状銀微粒子から実質的になる層(第2薄膜)が形成されたものであることが判る。
(実施例15)
インクの使用量を2.0mLとした以外は実施例14と同様にして、銀微細構造体の層を複数有する、実施例15に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが280nm、Raが27nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。また、実施例9による赤外線反射薄膜(第1薄膜)の平均厚みが200nmであったことから、第2薄膜の平均厚みは80nmであることが判る。
(実施例16)
インクの使用量を3.0mLとした以外は実施例14と同様にして、銀微細構造体の層を複数有する、実施例16に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが350nm、Raが29nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。また、実施例9による赤外線反射薄膜(第1薄膜)の平均厚みが200nmであったことから、第2薄膜の平均厚みは150nmであることが判る。
(実施例17)
まず、インクの使用量を3.5mLとした以外は実施例8と同様にして、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる赤外線反射薄膜(第1薄膜)を作製した。実施例1と同様に第1薄膜の平均厚みを測定したところ、250nmであった。
次に、この第1薄膜の上に、0.5mLの調製例1インクを使用した以外は実施例1と同様にして球状銀微粒子から実質的になる層(第2薄膜)を形成することで、銀微細構造体の層を複数有する、実施例17に係る赤外線反射薄膜を作製した。
実施例1と同様に赤外線反射薄膜の平均厚み及び算術平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、平均厚みが275nm、Raが18nmであり、所期の範囲内にあることが確認された。また、第1薄膜の平均厚みが250nmであったことから、第2薄膜の平均厚みは25nmであることが判る。
<赤外線反射薄膜の特性確認>
実施例14~17に係る赤外線反射薄膜、及び比較例6として準備した市販のアルミホイル(縦3.0cm、横3.0cm)について、上述した方法により放射率及び可視光正反射率の測定を行った。測定結果を膜厚及び算術平均表面粗さ(Ra)と合わせて表2に示す。
実施例14~16及び表1の実施例9を対比すると、微小薄片状の銀微細構造体から実質的になる第1薄膜の上に、球状銀微粒子から実質的になる第2薄膜を形成することで、算術平均表面粗さ(Ra)が大きくなり、可視光正反射率を低くできることが判る。また、第2薄膜の平均厚みが大きくなるにつれて算術平均表面粗さ(Ra)が大きくなり、可視光正反射率が低くなる傾向が見られた。
また、実施例14~16及び表1の実施例1~7を対比すると、第1薄膜及び第2薄膜を備える実施例14~16の可視光正反射率は、銀微細構造体として球状銀微粒子のみを含む実施例1~7よりも低くなっていることが判る。この理由は現時点では明らかでないが、この結果からは、第1薄膜と第2薄膜とを組み合わせた赤外線反射薄膜が、極めて低い可視光正反射率を実現できる点で有利なものといえる。
なお、実施例17の算術平均表面粗さ(Ra)が、第2薄膜を備えていない表1の実施例8~10に比べて小さくなっているのは、球状銀微粒子が第1薄膜を構成する微小薄片の隙間に入り込んでしまい、Raの向上に寄与しなかったためと推察される。
比較例6は、放射率こそ低いものの、可視光正反射率が非常に高いため、使用時に眩しさを感じさせる虞があるものといえる。比較例6との対比から、本発明の実施形態である実施例1~17は、低い可視光正反射率と低い放射率とを両立できるものといえる。
本発明の赤外線反射薄膜は、簡便なプロセスで作製することができ、構造も簡単である。薄い膜厚で十分な効果が得られるため、高価な銀の使用量が抑えられ、低コストで作製することが可能である。
本発明は、建築物又は乗り物の内部を低放射化することで保温を可能とし、快適な環境を形成することができる点で有用である。簡易的なQ値(熱損失係数)を見積もる計算によれば、内装面を低放射化することで、既存住宅を仮定した部屋ではQ値が30%減少、すなわち断熱性が30%向上するという結果も得られており、低放射化による保温効果は高いといえる。
加えて、本発明は、前述した低放射化を、可視光正反射率を低減しつつ実現でき、周囲に居る者が感じる眩しさによるストレスや疲れを軽減できるため、建築物や乗り物の内部に好適に使用できる。
1 赤外線反射薄膜
11 第1薄膜
12 第2薄膜
2 基材

Claims (7)

  1. 銀微細構造体から実質的になる赤外線反射薄膜であって、
    前記銀微細構造体が、球状粒子、或いは球状粒子及び微小薄片の複合体であり、
    平均厚みが150nm以上であり、
    算術平均表面粗さ(Ra)が18nm~100nmである
    ことを特徴とする赤外線反射薄膜。
  2. 前記球状粒子の平均粒径が1nm~300nmである、請求項に記載の赤外線反射薄膜。
  3. 0.6以下の放射率と30%以下の可視光正反射率とを有する、請求項1又は2に記載の赤外線反射薄膜。
  4. 銀微細構造体が水系溶媒又は有機系溶媒に分散されてなる、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線反射薄膜形成用のインクであって、
    前記銀微細構造体が、平均粒径が1nm~300nmの球状微粒子、又は平均長さが100nm~2000nmの微小薄片と前記球状微粒子との混合物であることを特徴とする赤外線反射薄膜形成用のインク。
  5. 基材上に、請求項1~のいずれか1項に記載の赤外線反射薄膜を備える、赤外線反射体。
  6. 前記赤外線反射薄膜が、
    基材上に形成され、含有する銀微細構造体が微小薄片である第1薄膜と、
    該第1薄膜上に形成され、含有する銀微細構造体が球状粒子である第2薄膜とを含む、請求項に記載の赤外線反射体。
  7. 請求項5又は6に記載の赤外線反射体を備える建築物又は乗り物。
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