以下に、実施の形態にかかる付加製造装置および付加製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の例を示す図である。付加製造装置100は、DED方式の付加製造装置である。付加製造装置100は、被加工物19へ材料を供給し、ビームを用いて溶融させた材料により形成されるビード16を積み重ねることによって造形物17を製造する。ビームは、材料を溶融させる熱源であって、レーザビームLまたは電子ビーム等である。熱源は、ビームに限られず、アークであっても良い。実施の形態1では、熱源がレーザビームLである場合を例に挙げる。また、実施の形態1において、材料は金属のワイヤ14とする。材料は、ワイヤ14に限られず、粉末であっても良い。
付加製造装置100は、指令された位置へワイヤ14を供給しながらワイヤ14および被加工物19へレーザビームLを照射させることによって、ビード16を形成する。ビード16は、溶融池15に形成される。溶融池15は、レーザビームLの照射により被加工物19およびワイヤ14が溶融することによってできる溶融金属の溜まりである。
基材18の上には、複数のビード16が並べられることによってビード16の層が形成される。ビード16の層が積み重ねられることによって、ビード16の堆積物である造形物17が形成される。このように、付加製造装置100は、ビード16を積み重ねることによって、3次元造形物である造形物17を製造する。図1に示す基材18は、板材である。基材18は板材以外の物であっても良い。被加工物19は、溶融させた材料が付加される物体であって、基材18と、造形中における造形物17とを含む。造形物17は、基材18上に形成される。
X軸、Y軸およびZ軸は、互いに垂直な3軸である。X軸およびY軸は、水平方向の2軸である。Z軸は、鉛直方向の軸である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各々において、矢印で示す方向をプラス、矢印とは逆の方向をマイナスとする。プラスZ方向は、鉛直上方向であるものとする。ビード16は、プラスZ方向へ積層される。
付加製造装置100は、数値制御(Numerical Control:NC)装置1と、レーザ発振器2と、軸駆動装置3と、ガス供給装置4と、材料供給装置5と、解析装置6と、カメラ7と、加工ヘッド8と、PC(Personal Computer)10と、ステージ21とを備える。基材18は、ステージ21に固定される。レーザ発振器2、軸駆動装置3、ガス供給装置4、材料供給装置5、加工ヘッド8、およびステージ21は、レーザビームLを用いて溶融させた材料により形成されるビード16を積み重ねることによって造形物17を製造する造形部30を構成する。
ビーム源であるレーザ発振器2は、レーザビームLを出力する。レーザ発振器2は、熱源を出力する熱源出力部の一例である。レーザ発振器2により出力されたレーザビームLは、光伝送路であるファイバーケーブル20内を伝搬して、加工ヘッド8へ入射する。加工ヘッド8の内部には、コリメート光学系または集光光学系といった光学系が配置されている。光学系の図示は省略する。レーザ発振器2とファイバーケーブル20と加工ヘッド8とは、被加工物19へレーザビームLを照射させる照射部を構成する。
加工ヘッド8は、加工ヘッド8から加工点へ向けて出射するレーザビームLが通るビームノズルと、加工点へ向けてシールドガスGを噴射させるガスノズル9とが設けられている。ビームノズルの中心軸は、光学系の光軸と一致する。ビームノズルの中心軸は、Z軸とも一致する。被加工物19へ照射するレーザビームLの中心線は、Z軸と一致する。レーザビームLは、加工ヘッド8の内部の光学系を通り、ビームノズルを通って加工ヘッド8から出射する。加工点は、被加工物19上のレーザビームLの照射位置であり、ワイヤ14が付加される領域である。付加製造装置100は、溶融させた材料を付加する付加加工処理中において、移動経路に沿って加工点を移動させる。加工点の位置は、熱源および材料が供給される位置であって、ビームノズルの中心軸上の位置である。
ガス供給装置4は、ガス供給源からのシールドガスGを、ガスノズル9へ供給する。ガス供給源の一例は、ガスボンベである。ガス供給源は、配管を介してガスノズル9に接続される。ガス供給源および配管の図示は省略する。ガス供給装置4は、NC装置1からのガス供給指令に基づいて、シールドガスGの流量を変更することができる。シールドガスGの噴射により、材料および被加工物19の酸化を低減させ、かつ、造形物17を冷却させる。シールドガスGは、アルゴンガス等の不活性ガスであることが望ましい。
材料供給部である材料供給装置5は、加工点へ向けてワイヤ14を供給する。材料供給装置5は、材料供給源12と、材料供給ノズル13とを備える。材料供給装置5は、材料供給ノズル13によって、材料供給源12から繰り出されるワイヤ14を加工点へ供給する。図1には、加工点の斜め上方に配置される材料供給ノズル13からワイヤ14を供給するサイド供給方式の例を示す。材料供給装置5は、サイド供給方式ではなく、加工点の直上に配置される材料供給ノズル13からワイヤ14を供給するセンタ供給方式であっても良い。材料供給装置5は、サーボモータによって動作し、NC装置1からの材料供給指令に基づいてワイヤ14の供給速度を変更することができる。
軸駆動装置3は、NC装置1からの移動速度指令に基づいて、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に、加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11とを移動させる。加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11との位置関係は、固定されている。軸駆動装置3の一例は、加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11とをX軸方向へ移動させるサーボモータと、加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11とをY軸方向へ移動させるサーボモータと、加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11とをZ軸方向へ移動させるサーボモータとである。各サーボモータの図示は省略する。付加製造装置100は、各サーボモータを動作させることによって、加工ヘッド8と材料供給装置5と計測機器11とのストローク範囲内における任意の位置へ、レーザビームLの照射位置とワイヤ14の供給位置と計測機器11による計測位置とを動かすことができる。
カメラ7は、鉛直上方から、被加工物19のうち加工点を含む領域を撮像する撮像装置である。一例として、カメラ7は、加工点を含む領域の画像を取得し、取得した画像を解析装置6へ出力する。
計測機器11は、溶融池15に形成されるビード16のZ軸方向高さであるビード高さを計測する。一例として、計測機器11は、レーザ変位センサである。計測機器11は、軸駆動装置3によりX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向へ移動可能な位置に設置されている。計測機器11は、ビード高さの計測結果を解析装置6へ出力する。
解析装置6は、カメラ7から入力される画像を解析することによって、溶融池15に形成されるビード16の幅であるビード幅を計測する。また、解析装置6は、形成されたビード16の幅の誤差であるビード幅誤差を求める。解析装置6は、計測されたビード幅の値とビード幅の目標値との差分を算出することによって、ビード幅誤差を求める。解析装置6は、ビード幅誤差の値であるビード幅誤差量をNC装置1へ出力する。
解析装置6は、形成されたビード16の高さの誤差であるビード高さ誤差を求める。解析装置6は、計測機器11により計測されたビード高さとビード高さの目標値との差分を算出することによって、ビード高さ誤差を求める。解析装置6は、ビード高さ誤差の値であるビート高さ誤差量をNC装置1へ出力する。
NC装置1は、付加製造装置100の全体を制御する制御装置である。NC装置1は、加工プログラムおよび加工条件に従って付加製造装置100を制御する。加工プログラムには、あらかじめ設定されている経路において加工ヘッド8および材料供給装置5を移動させるための移動指令が記述されている。加工条件は、レーザ発振器2によるレーザビームLの出力であるレーザ出力、レーザビームLの照射位置とワイヤ14の供給位置とを移動させる速度である移動速度、材料供給装置5によりワイヤ14を供給する量である材料供給量、および、シールドガスGの流量であるガス流量といった、ビード16の形成に必要な情報が含まれる。なお、以下の説明では、レーザ出力を、熱源出力とも称する。以下の説明における材料供給量は、材料供給速度とも言い換えられる。
NC装置1は、加工プログラムに応じた位置指令を軸駆動装置3へ出力することによって、加工プログラムに従って軸駆動装置3を制御する。軸駆動装置3は、位置指令に従って、あらかじめ設定されている移動経路に沿って加工ヘッド8および材料供給装置5を移動させる。
NC装置1は、加工条件に従ってレーザ発振器2へレーザ出力指令を出力することにより、レーザ発振器2を制御する。レーザ発振器2は、レーザ出力指令に従ってレーザビームLを出力する。NC装置1は、加工条件に従って材料供給装置5へ材料供給指令を出力することにより、材料供給装置5を制御する。材料供給装置5は、材料供給指令に従った材料供給量のワイヤ14を供給する。NC装置1は、加工条件に従って軸駆動装置3へ移動速度指令を出力する。軸駆動装置3は、移動速度指令に従った移動速度で、レーザビームLの照射位置とワイヤ14の供給位置とを移動させる。NC装置1は、加工条件に従ってガス供給装置4へガス供給指令を出力することにより、ガス供給装置4を制御する。ガス供給装置4は、ガス供給指令に従ったガス流量でシールドガスGを供給する。
PC10には、付加製造装置100の制御についての各種パラメータの値が、付加製造装置100のユーザによって入力される。PC10は、入力された情報をNC装置1へ出力する。また、PC10は、付加製造装置100を操作するための操作画面を表示する。
なお、図1に示すNC装置1およびPC10は、付加製造装置100に内蔵されている。すなわち、NC装置1およびPC10は、付加製造装置100の構成要素である。NC装置1およびPC10の少なくとも一方は、付加製造装置100の外部の装置であっても良い。
次に、付加製造装置100の動作の概要について説明する。付加製造装置100は、ステージ21上に基材18が固定された後、NC装置1による制御に従って、レーザ発振器2、軸駆動装置3、ガス供給装置4、および材料供給装置5を動作させる。付加製造装置100は、レーザ発振器2を動作させることによって、加工点へレーザビームLを照射させる。付加製造装置100は、材料供給装置5を動作させることによって、加工点へワイヤ14を供給する。付加製造装置100は、ガス供給装置4を動作させることによって、加工点へシールドガスGを噴射させる。付加製造装置100は、軸駆動装置3を動作させることによって、移動経路上にて加工点を移動させる。
レーザビームLの照射によって、被加工物19上には溶融池15が形成される。溶融池15の形成とともに加工点が移動することによって、ビード16が形成される。ビード16が積み重ねられることによって、造形物17が形成される。
次に、ビード16の形状誤差を低減させる機能について説明する。付加製造装置100には、ビード16の形状誤差を低減させる機能が備えられている。図2は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の機能構成の例を示す図である。図2には、ビード16の形状誤差を低減させる機能についての機能構成の例を示す。
NC装置1は、ビード幅修正制御部31と、ビード高さ修正制御部32と、操作量再調整部33とを備える。ビード幅修正制御部31およびビード高さ修正制御部32は、材料供給装置5の材料供給量またはレーザ発振器2の熱源出力をビード16の形状誤差に基づいて調整する操作量調整部として機能する。実施の形態1において、ビード幅誤差およびビード高さ誤差の各々が、ビード16の形状誤差であるものとする。
解析装置6により算出されたビード幅誤差量は、ビード幅修正制御部31へ入力される。ビード幅修正制御部31は、ビード幅誤差量が入力されると、加工条件に基づいて生成されたレーザ出力指令に示されるレーザ出力をビード幅誤差量に基づいて調整する。ビード幅修正制御部31は、ビード幅誤差量に基づいてレーザ出力を調整することによってビード幅の修正を制御する。ビード幅修正制御部31は、調整されたレーザ出力の値を操作量再調整部33へ出力する。
解析装置6により算出されたビード高さ誤差量は、ビード高さ修正制御部32へ入力される。ビード高さ修正制御部32は、ビード高さ誤差量が入力されると、加工条件に基づいて生成された材料供給指令に示される材料供給量をビード高さ誤差量に基づいて調整する。ビード高さ修正制御部32は、ビード高さ誤差量に基づいて材料供給量を調整することによってビード高さの修正を制御する。ビード高さ修正制御部32は、調整された材料供給量の値を操作量再調整部33へ出力する。
PC10は、各種パラメータの値が入力されるパラメータ入力部34を備える。各種パラメータの値は、例えば、ユーザの操作により入力される。パラメータ入力部34には、パラメータの値の1つである許容誤差量が入力される。実施の形態1において、許容誤差量は、許容可能とするビード高さ誤差の値である。パラメータ入力部34へ許容誤差量が入力されることにより、付加製造装置100に許容誤差量が設定される。パラメータ入力部34は、許容誤差量を設定する許容誤差量設定部として機能する。パラメータ入力部34は、入力された許容誤差量をNC装置1へ出力する。
操作量再調整部33は、レーザ出力または材料供給量の再調整を行う。ここで、再調整とは、ビード幅修正制御部31によりレーザ出力が調整された場合、またはビード高さ修正制御部32により材料供給量が調整された場合において、操作量再調整部33がレーザ出力および材料供給量の少なくとも一方をさらに調整することを指すものとする。操作量再調整部33による再調整の詳細については後述する。
操作量再調整部33は、レーザ出力の再調整を行った場合、再調整後のレーザ出力の値を示すレーザ出力指令をレーザ発振器2へ出力する。操作量再調整部33は、レーザ出力の再調整を行わない場合、ビード幅修正制御部31から入力されたレーザ出力の値を示すレーザ出力指令をレーザ発振器2へ出力する。操作量再調整部33は、材料供給量の再調整を行った場合、再調整後の材料供給量の値を示す材料供給指令を材料供給装置5へ出力する。操作量再調整部33は、材料供給量の再調整を行わない場合、ビード高さ修正制御部32から入力された材料供給量の値を示す材料供給指令を材料供給装置5へ出力する。
次に、ビード幅の修正とビード高さの修正との関係について説明する。ビード幅の修正は、主に熱源出力の調整により実現される。ビード高さの修正は、主に材料供給量の調整により実現される。ビード幅またはビード高さを修正する場合において、熱源出力と材料供給量との関係から、熱源出力と材料供給量との一方が制約される場合がある。
図3は、実施の形態1にかかる付加製造装置100におけるレーザ出力と材料供給量との関係について説明するための第1の図である。図4は、実施の形態1にかかる付加製造装置100におけるレーザ出力と材料供給量との関係について説明するための第2の図である。図5は、実施の形態1にかかる付加製造装置100におけるレーザ出力と材料供給量との関係について説明するための第3の図である。
図3から図5には、レーザビームLにワイヤ14が進入している様子を示す。材料供給ノズル13から出ているワイヤ14の先端では、ワイヤ14の温度がワイヤ14の融点に到達している。図3には、ワイヤ14の先端がレーザビームLの中心線CNの付近である状態を示している。ワイヤ14の先端の位置は、レーザ出力と材料供給量とによって決定される。図3に示す両矢印は、レーザ出力と材料供給量とによってワイヤ14の先端の位置が変化することを表す。
レーザ出力に対して材料供給量が過小である場合、ワイヤ14の先端の位置が、材料供給ノズル13の方へ徐々に寄っていく。すなわち、ワイヤ14の先端が後退する。図4の左部には、レーザビームLのうちワイヤ14が進入する方における境界の付近にまでワイヤ14の先端が後退した様子を示す。この場合、溶融した材料が被加工物19へ付加されずワイヤ14の先端に留まることによって、溶融後の材料の塊であるドロップ41がワイヤ14に残るドロップ現象が生じることがある。ドロップ現象が生じた場合、付加製造装置100は、ビード16の適正な形成による加工の継続が困難となる。
図4の左部に示すようなドロップ現象を回避するには、図4の左部に示す状態のときよりも、材料供給量を大きくするかレーザ出力を下げる必要がある。例えば、ワイヤ14の先端の位置が、図4の右部に示す破線48よりもマイナスX方向側の位置となった場合に、ビード16を適正に形成することが困難になるとする。この場合、ワイヤ14の先端の位置が破線48よりもプラスX方向側の位置となるように、材料供給量またはレーザ出力に制約を設ける必要がある。
一方、レーザ出力に対して材料供給量が過大である場合、ワイヤ14の先端の位置は、材料供給ノズル13とは逆の方へ徐々に寄っていく。すなわち、ワイヤ14の先端が前進する。ワイヤ14の先端の前進が続くと、ワイヤ14は溶融せずにレーザビームLを突き抜けることとなる。図5の左部には、ワイヤ14がレーザビームLを突き抜けている様子を示す。この場合、溶融前のワイヤ14が被加工物19に衝突するスタブ現象が生じることがある。スタブ現象が生じた場合、付加製造装置100は、ビード16の適正な形成による加工の継続が困難となる。
図5の左部に示すようなスタブ現象を回避するには、図5の左部に示す状態のときよりも、材料供給量を小さくするかレーザ出力を上げる必要がある。例えば、ワイヤ14の先端の位置が、図5の右部に示す破線49よりもプラスX方向側の位置となった場合に、ビード16を適正に形成することが困難になるとする。この場合、ワイヤ14の先端の位置が破線49よりもマイナスX方向側の位置となるように、材料供給量またはレーザ出力に制約を設ける必要がある。
図6は、実施の形態1にかかる付加製造装置100においてワイヤ14の先端を適正な位置とさせ得る材料供給量およびレーザ出力の関係の例を示す図である。ワイヤ14の先端の適正な位置とは、加工を継続することが可能であるときのワイヤ14の先端の位置であって、例えば、図4に示す破線48と図5に示す破線49との間の位置である。
図6では、材料供給量およびレーザ出力の関係をグラフにより表す。図6において、縦軸は材料供給量、横軸はレーザ出力を表す。図6に示す直線42は、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、レーザ出力とワイヤ速度の最大値との関係を表す。図6に示す直線43は、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、レーザ出力とワイヤ速度の最小値との関係を表す。図6において、直線42と直線43との間の領域は、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、レーザ出力の値に対する材料供給量の値の範囲である適正範囲を表す。適正範囲は、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、材料供給量の値に対するレーザ出力の値の範囲ともいえる。
次に、実施の形態1における操作量再調整部33が実行する処理について説明する。操作量再調整部33には、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、レーザ出力の値に対する材料供給量の値の範囲である適正範囲が設定される。操作量再調整部33は、操作量調整部での調整後においてレーザ出力の値に対する材料供給量の値が適正範囲から外れる場合に、材料供給量とレーザ出力とのうちの一方を、調整を優先させる操作量として選定し、選定された操作量を優先して再調整する。すなわち、操作量再調整部33は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整後、または、ビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整後において、レーザ出力の値に対する材料供給量の値が適正範囲から外れる場合に、選定された操作量を優先して再調整する。さらに、操作量再調整部33は、パラメータ入力部34において許容誤差量が設定された場合に、設定された許容誤差量を加味してレーザ出力と材料供給量とを再調整する。
実施の形態1において、操作量再調整部33は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整によりレーザ出力に対して材料供給量が過大となるケースにおいて、調整を優先させる操作量の選定と、選定された操作量の再調整とを行う。
図7は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による、調整を優先させる操作量の選定について説明するための第1の図である。図7では、図6と同様に、材料供給量およびレーザ出力の関係をグラフにより表す。図7のグラフに示す点は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組を表す。
図7に示す点44は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整後、またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整後におけるレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。点44により示されるレーザ出力の値および材料供給量の値は、適正範囲の外にある。図7において、点44は直線42よりも上にある。このことは、材料供給量の値が、ビード16を適正に形成可能であるときにおける材料供給量の最大値を超えていることを表す。
レーザ出力の値および材料供給量の値を適正範囲に収めるためには、例えば、レーザ出力の値と材料供給量の値との組について、点44から点45へ遷移させる再調整を行うか、または、点44から点46へ遷移させる再調整を行うことが考えられる。点44から点45への遷移とは、材料供給量を変化させず、かつレーザ出力を上げることを表す。点44から点46への遷移とは、レーザ出力を変化させず、かつ材料供給量を小さくすることを表す。
図8は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による、調整を優先させる操作量の選定について説明するための第2の図である。ここでは、仮にレーザ出力を上げず材料供給量を小さくする再調整を行うこととした場合に起こり得る現象の第1の例について説明する。材料供給量を小さくすると、ビード高さの誤差が修正されないこととなり、加工が続けられるに従いビード高さの誤差を大きくさせることにつながる。
図8には、ビード高さの誤差により被加工物19の上面に凹凸が生じたときの様子を模式的に表す。凹凸が生じることによって、被加工物19の上面には、水平方向に対して傾斜した部分が生じる。かかる傾斜が、ワイヤ14の水平方向に対する傾斜よりも大きくなると、図8に示すように、被加工物19へのワイヤ14または材料供給ノズル13の干渉が生じ得る。被加工物19へのワイヤ14または材料供給ノズル13の干渉が生じると、加工が不安定になり易くなる。
図9は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による、調整を優先させる操作量の選定について説明するための第3の図である。ここでは、仮にレーザ出力を上げず材料供給量を小さくする再調整を行うこととした場合に起こり得る現象の第2の例について説明する。図9においても、図8に示す場合と同様に、被加工物19の上面に凹凸が生じているとする。図9では、水平方向に対する傾斜の大きさが互いに異なる部分の各々におけるレーザビームLの照射の様子を模式的に表している。
図9に示すように、傾斜の大きさが互いに異なる部分同士では、被加工物19における溶融部の面積が変わることとなる。傾斜が大きいほど、溶融部の面積が大きくなる。ビード16を形成している間において溶融部の面積が変わると、加工が不安定になり易くなる。溶融部の面積が一定となるようにレーザビームLの幅を調整することとした場合、レーザ出力の変動が大きくなることとなる。
このように、付加製造装置100は、レーザ出力に対して材料供給量が過大である場合、レーザ出力を上げず材料供給量を小さくする再調整を行うこととすると、加工が不安定となり易くなる。付加製造装置100は、加工が不安定となることによって、加工の継続が困難となる場合がある。
一方、材料供給量を小さくせずレーザ出力を上げる再調整を行うこととした場合、レーザ出力を上げることによってビード幅が大きくなることとなる。この場合、加工の継続を困難にさせる上述のような現象を回避することが可能となる。また、ビード幅が大きくなると、造形物の形状が目標形状よりも大きくなることがあり得る。この場合には、付加製造加工の後に実施される切削加工により、造形物の形状を修正することが可能である。
以上から、操作量再調整部33は、レーザ出力に対して材料供給量が過大となったケースにおいて、材料供給量を小さくする調整よりもレーザ出力を大きくする調整を優先させる。すなわち、操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きい場合に、調整を優先させる操作量としてレーザ出力を選定する。
例えば、操作量再調整部33は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組について、図7における点44から点46へ遷移させる再調整ではなく、図7における点44から点45へ遷移させる再調整を行う。これにより、付加製造装置100は、操作量の再調整により加工の継続が困難となることを防ぐことが可能となる。
図10は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による操作量の再調整について説明するための第1の図である。操作量再調整部33は、調整を優先させる操作量であるレーザ出力の再調整を行う。図10には、許容可能とするビード高さ誤差である許容誤差量を設定しない場合の例について説明する。すなわち、図10に示す例では、操作量再調整部33は、ビード高さ誤差をゼロにさせるようにレーザ出力の再調整を行う。
図10の(a)には、被加工物19においてビード16が形成される前の様子を示す。図10の(a)に示す被加工物19の上面には、ビード高さの誤差による凹凸が生じているとする。ビード高さ修正制御部32は、材料供給指令に示される材料供給量をビード高さ誤差量に基づいて調整し、調整された材料供給量の値を操作量再調整部33へ出力する。ビード幅修正制御部31は、レーザ出力指令に示されるレーザ出力の値を操作量再調整部33へ出力する。
ここで、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が、適正範囲の最大値よりも大きいとする。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きいと判断することにより、調整を優先させる操作量としてレーザ出力を選定する。操作量再調整部33は、選定された操作量であるレーザ出力を大きくする再調整を行う。具体的には、操作量再調整部33は、図10の(a)において楕円で囲われた部分である凹部において、溶融させた材料が多く供給されるように、当該部分におけるレーザ出力を大きくする再調整を行う。この場合において、操作量再調整部33が実施する調整は、レーザ幅を目標値に近づけるよりもビード高さを目標値に近づけることを優先させる調整である。
図10の(b)には、図10の(a)に示す状態から被加工物19にビード16が形成された後の様子を示す。図10の(b)には、被加工物19およびビード16のXZ断面と、ビード16のXY面とを示す。図10の(b)に示すXZ断面において、ビード16の上面の高さは、ビード高さの目標値であるHにて均されている。付加製造装置100は、操作量再調整部33でのレーザ出力の再調整によって、ビード高さ誤差をゼロにさせることができる。
また、図10の(b)において楕円で囲われた部分におけるレーザ出力が大きくなることによって、ビード16のXY面のうち当該部分におけるY方向幅が拡大することとなる。図10の(b)に示すビード16のXY面では、当該部分のY方向幅が、ビード幅の目標値であるWよりも大きくなっている。
図10の(c)には、図10の(b)に示す状態からビード16に切削加工が施された後の様子を示す。図10の(c)では、ビード16のうち幅がWを超える部分が切削加工により除去された例を示す。図10の(c)に示す破線は、図10の(b)に示す切削前のビード16の輪郭を表す。このように、後加工である切削加工によって、造形物17の形状を修正することができる。なお、図10の(c)には、ビード16の幅がWとなるようにビード16を切削する場合を例示したが、切削の態様は任意であるものとする。切削は、付加製造加工によって得られた造形物17の輪郭を修正するものであれば良い。以上により、付加製造装置100は、加工の継続が困難となることを防ぐことができ、かつ、形状誤差が低減された造形物17を製造することができる。
図11は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による操作量の再調整について説明するための第2の図である。図11には、許容可能とするビード高さ誤差である許容誤差量を設定する場合の例について説明する。図11に示す例では、操作量再調整部33は、ビード高さ誤差を許容誤差量に一致させるように材料供給量の再調整を行い、さらに再調整後の材料供給量を基にレーザ出力の再調整を行う。操作量再調整部33は、調整を優先させる操作量であるレーザ出力の再調整のみならず、調整を優先させる操作量以外の操作量である材料供給量の再調整も行う。
図11に示す例では、操作量再調整部33は、図10に示す場合よりもビード高さを調整する優先度を下げることにより、図10に示す場合よりもレーザ出力の増加分を少なくさせる。レーザ出力の増加分が少なくなることによって、図10に示す場合よりも、レーザ出力の再調整によるビード幅の拡大が緩和される。このような調整により、付加製造装置100は、ビード高さ誤差を許容誤差量に収めることが可能となる。また、ビード幅の拡大が緩和される分、切削加工における切削量を少なくすることができる。切削量を少なくできることによって、切削加工に要する時間を短縮させることが可能となる。
図11の(a)には、被加工物19においてビード16が形成される前の様子を示す。図11の(a)に示す被加工物19の上面には、ビード高さの誤差による凹凸が生じているとする。ビード高さ修正制御部32は、材料供給指令に示される材料供給量をビード高さ誤差量に基づいて調整し、調整された材料供給量の値を操作量再調整部33へ出力する。ビード幅修正制御部31は、レーザ出力指令に示されるレーザ出力の値を操作量再調整部33へ出力する。
ここで、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が、適正範囲の最大値よりも大きいとする。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きいと判断することにより、図10に示す場合と同様に、調整を優先させる操作量としてレーザ出力を選定する。
図11に示す例では、パラメータ入力部34において設定された許容誤差量が操作量再調整部33へ入力される。操作量再調整部33は、ビード高さ誤差を許容誤差量に一致させるように材料供給量の再調整を行う。また、操作量再調整部33は、再調整後の材料供給量の値が、レーザ出力との関係において適正範囲の最大値以下となるように、レーザ出力の値を大きくする再調整を行う。このようにして、操作量再調整部33は、設定された許容誤差量を加味してレーザ出力と材料供給量とを再調整する。
図11の(b)には、図11の(a)に示す状態から被加工物19にビード16が形成された後の様子を示す。図11の(b)には、被加工物19およびビード16のXZ断面と、ビード16の上面とを示す。図11の(b)に示すXZ断面において、ビード16の上面の高さ誤差であるビード高さ誤差は、許容誤差量であるEHに一致している。このように、操作量再調整部33での材料供給量の再調整によって、ビード16には、許容誤差量に相当するビード高さ誤差が残ることとなる。
また、図11の(b)において楕円で囲われた部分におけるレーザ出力が大きくなることによって、ビード16のXY面のうち当該部分におけるY方向幅が拡大することとなる。ただし、図10の(b)に示す場合よりもレーザ出力の増加分が少ないため、ビード幅の拡大の程度は、図10の(b)に示す場合よりも小さくなる。図11の(b)に示す破線は、図10の(b)に示す場合におけるビード16の輪郭を参考として示したものである。
図11の(c)には、図11の(b)に示す状態からビード16に切削加工が施された後の様子を示す。図11の(c)では、ビード16のうち幅がWを超える部分が切削加工により除去された例を示す。図11の(c)に示す破線は、図11の(b)に示す切削前のビード16の輪郭を表す。図11に示す例では、図10に示す例に比べてビード幅の拡大が緩和される分、切削加工における切削量が少なくなる。
図12は、実施の形態1において許容誤差量が設定された場合における操作量の再調整について説明するための図である。図12では、図6と同様に、材料供給量およびレーザ出力の関係をグラフにより表す。図12のグラフに示す点は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組を表す。
図12に示す点51は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整後、またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整後におけるレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。点51により表される組では、材料供給量の値が、ビード16を適正に形成可能であるときにおける材料供給量の最大値を超えている。
図12に示す点53は、ビーム高さ誤差の許容誤差量が設定されない場合における再調整後のレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。図12における点51から点53への遷移は、材料供給量を変化させず、かつ、レーザ出力を上げる再調整を表す。
図12に示す点52は、ビーム高さ誤差の許容誤差量が設定されている場合における再調整後のレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。図12における点51から点52への遷移は、材料供給量を小さくし、かつ、レーザ出力を上げる再調整を表す。点51から点52への遷移におけるレーザ出力の増加分は、点51から点53への遷移におけるレーザ出力の増加分に比べて小さい。このように、付加製造装置100は、ビード高さ誤差の許容誤差量が設定されることによって、レーザ出力の増加分を小さくさせる。付加製造装置100は、レーザ出力の増加分を小さくさせることによって、ビード幅の拡大を緩和させることができる。
付加製造装置100は、許容誤差量が設定される場合と許容誤差量が設定されない場合とのいずれにおいても、ビード高さ誤差を低減させることができる。付加製造装置100は、許容誤差量が設定されない場合において、ビード高さ誤差をゼロにさせることができる。付加製造装置100は、許容誤差量が設定される場合において、ビード高さ誤差を許容誤差量に収めることができ、かつ、ビード幅の拡大を緩和させることができる。
次に、操作量再調整部33による処理の手順について説明する。図13は、実施の形態1にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による処理の手順の例を示すフローチャートである。図13には、ビーム高さ誤差の許容誤差量が設定されている場合における処理手順の例を示す。
ビード幅修正制御部31は、ビード幅誤差に基づいてレーザ出力を調整する。ビード幅修正制御部31は、レーザ出力の値を出力する。ビード高さ修正制御部32は、ビード高さ誤差に基づいて材料供給量を調整する。ビード高さ修正制御部32は、材料供給量の値を出力する。操作量再調整部33には、レーザ出力の値と材料供給量の値とが入力される。
ステップS11において、操作量再調整部33は、レーザ出力に対して材料供給量が過大であるか否かを判断する。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きい場合に、レーザ出力に対して材料供給量が過大であると判断する。レーザ出力に対して材料供給量が過大であると判断した場合(ステップS11,Yes)、操作量再調整部33は、ステップS12へ手順を進める。一方、レーザ出力に対して材料供給量が過大ではないと判断した場合(ステップS11,No)、操作量再調整部33は、ステップS14へ手順を進める。
ステップS12において、操作量再調整部33は、ビード高さの目標値に対するビード高さ誤差の許容量に応じて材料供給量を調整する。操作量再調整部33は、ビード高さ誤差を許容誤差量に一致させるように材料供給量を下げる調整を行う。
ステップS13において、操作量再調整部33は、ステップS12において調整された材料供給量に応じてレーザ出力を調整する。操作量再調整部33は、レーザ出力と材料供給量との関係において材料供給量の値が適正範囲の最大値以下となるように、レーザ出力を大きくする調整を行う。
ステップS14において、操作量再調整部33は、操作量を出力する。すなわち、操作量再調整部33は、操作量であるレーザ出力の値および操作量である材料供給量の値を出力する。操作量再調整部33は、再調整後のレーザ出力の値を示すレーザ出力指令をレーザ発振器2へ出力する。操作量再調整部33は、再調整後の材料供給量の値を示す材料供給指令を材料供給装置5へ出力する。以上により、操作量再調整部33は、図13に示す手順による処理を終了する。
上記説明では、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きい場合において、操作量再調整部33が材料供給量よりもレーザ出力を優先して再調整することとした。すなわち、操作量再調整部33が実施する調整は、ビード幅を目標値に近づけるよりもビード高さを目標値に近づけることを優先させる調整である。実施の形態1において、操作量再調整部33は、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きい場合において、レーザ出力よりも材料供給量を優先して再調整を行うこととしても良い。すなわち、操作量再調整部33が実施する調整は、ビード高さを目標値に近づけるよりもビード幅を目標値に近づけることを優先させる調整であっても良い。例えば、許容可能とするビード高さ誤差である許容誤差量として過大な値が設定されることによって、操作量再調整部33は、レーザ出力の再調整を行わず材料供給量のみの再調整を行うこととしても良い。付加製造装置100は、許容誤差量が任意に設定されることにより、ビード高さの調整とビード幅の調整との割合を任意に調整することができる。
実施の形態1によると、操作量再調整部33は、操作量調整部での材料供給量またはレーザ出力の調整後においてレーザ出力の値に対する材料供給量の値が適正範囲から外れる場合に、材料供給量とレーザ出力とのうちの一方を、調整を優先させる操作量として選定する。操作量再調整部33は、選定された操作量を優先して再調整する。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最大値よりも大きい場合に、調整を優先させる操作量としてレーザ出力を選定する。付加製造装置100は、操作量調整部での材料供給量またはレーザ出力の調整によりビード16の形状誤差を低減させることができ、かつ、操作量再調整部33での操作量の再調整により、加工の継続が困難となることを防ぐことができる。以上により、付加製造装置100は、誤差が低減された造形物17を製造することができるという効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態1では、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整によりレーザ出力に対して材料供給量が過大となるケースについて説明した。実施の形態2では、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整によりレーザ出力に対して材料供給量が過小となるケースにおける操作量再調整部33の処理について説明する。
実施の形態2にかかる付加製造装置100は、図1に示す付加製造装置100と同様の構成を備える。また、実施の形態2にかかる付加製造装置100は、図2に示す機能構成と同様の機能構成を備える。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
実施の形態2において、操作量再調整部33は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整によりレーザ出力に対して材料供給量が過小となるケースにおいて、調整を優先させる操作量の選定と、選定された操作量の再調整とを行う。
さらに、操作量再調整部33は、パラメータ入力部34において許容誤差量が設定された場合に、設定された許容誤差量を加味してレーザ出力と材料供給量とを再調整する。実施の形態2において、許容誤差量は、許容可能とするビード幅誤差の値である。実施の形態2において、パラメータ入力部34には、許容可能とするビード幅誤差の値が入力される。パラメータ入力部34へ許容誤差量が入力されることにより、付加製造装置100に許容誤差量が設定される。
図14は、実施の形態2にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による、調整を優先させる操作量の選定について説明するための図である。図14では、図6と同様に、材料供給量およびレーザ出力の関係をグラフにより表す。図14のグラフに示す点は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組を表す。
図14に示す点54は、ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の調整後、またはビード高さ修正制御部32での材料供給量の調整後におけるレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。点54により示されるレーザ出力の値および材料供給量の値は、適正範囲の外にある。図14において、点54は直線43よりも下にある。このことは、材料供給量の値が、ビード16を適正に形成可能であるときにおける材料供給量の最小値よりも小さいことを表す。
レーザ出力の値および材料供給量の値を適正範囲に収めるためには、例えば、レーザ出力の値と材料供給量の値との組について、点54から点55へ遷移させる再調整を行うか、または、点54から点56へ遷移させる再調整を行うことが考えられる。点54から点55への遷移とは、レーザ出力を変化させず、かつ材料供給量を上げることを表す。点54から点56への遷移とは、材料供給量を変化させず、かつレーザ出力を小さくすることを表す。
レーザ出力に対して材料供給量が過小である場合において、レーザ出力を小さくすると、ビード幅が過小となることによって、造形物17に欠陥が生じる場合がある。付加製造加工においては、ビード高さの誤差が残ることよりも欠陥が生じるほうが、加工の継続が困難となる場合があり得る。実施の形態2では、操作量再調整部33は、レーザ出力に対して材料供給量が過小となったケースにおいて、レーザ出力を小さくする調整よりも材料供給量を大きくする調整を優先させるものとする。すなわち、操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最小値よりも小さい場合に、調整を優先させる操作量として材料供給量を選定する。
例えば、操作量再調整部33は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組について、図14における点54から点56へ遷移させる再調整ではなく、図14における点54から点55へ遷移させる再調整を行う。これにより、付加製造装置100は、造形物17に欠陥が生じることによる悪影響を防ぐことが可能となる。
図15は、実施の形態2にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による操作量の再調整について説明するための第1の図である。操作量再調整部33は、調整を優先させる操作量である材料供給量の再調整を行う。図15には、許容可能とするビード幅誤差である許容誤差量を設定しない場合の例について説明する。すなわち、図15に示す例では、操作量再調整部33は、ビード幅誤差をゼロにさせるようにレーザ出力の再調整を行う。
図15には、被加工物19にビード16が形成された後の様子を示す。図15には、ビード16のXY面と、ビード16のXZ断面とを示す。図15に示すビード16のXY面において、ビード16の幅は、ビード幅の目標値であるWにて均されている。付加製造装置100は、操作量再調整部33でのレーザ出力の再調整によって、ビード幅誤差をゼロにさせることができる。
また、材料供給量が大きくなることによって、図15において示すXZ断面において、ビード高さの目標値であるHよりもビード16が高くなる部分が生じることとなる。ビード高さ誤差が大きくなると、実施の形態1にて説明したように加工が不安定となり易くなる。操作量再調整部33、許容可能とするビード幅誤差である許容誤差量が設定されることにより、ビード高さ誤差が大きくなることを防ぐことが可能となる。
図16は、実施の形態2にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による操作量の再調整について説明するための第2の図である。図16には、許容可能とするビード幅誤差である許容誤差量を設定する場合の例について説明する。図16に示す例では、操作量再調整部33は、ビード幅誤差を許容誤差量に一致させるようにレーザ出力の再調整を行い、さらに再調整後のレーザ出力を基に材料供給量の再調整を行う。操作量再調整部33は、調整を優先させる操作量である材料供給量の再調整のみならず、調整を優先させる操作量以外の操作量であるレーザ出力の再調整も行う。
図16に示す例では、操作量再調整部33は、図15に示す場合よりもビード幅を調整する優先度を下げることにより、図15に示す場合よりも材料供給量の増加分を少なくさせる。材料供給量の増加分が少なくなることによって、図15に示す場合よりも、材料供給量の再調整によるビード高さの拡大が緩和される。このような調整により、付加製造装置100は、ビード幅誤差を許容誤差量に収めることが可能となる。また、付加製造装置100は、ビード高さの拡大が緩和されることによって、ビード高さ誤差を低減させることができる。
図16には、被加工物19にビード16が形成された後の様子を示す。図16には、ビード16のXY面と、ビード16のXZ断面とを示す。図16に示すビード16の上面において、ビード16の幅の誤差であるビード幅誤差は、許容誤差量であるEWに一致している。このように、操作量再調整部33でのレーザ出力の再調整によって、ビード16には、許容誤差量に相当するビード幅誤差が残ることとなる。
また、材料供給量の再調整が行われることによって、ビード高さの拡大の程度は、図15に示す場合よりも小さくなる。図16に示すXZ断面上の破線は、図15に示す場合におけるビード16の上面を表す。付加製造装置100は、ビード高さの拡大の程度を小さくさせることによって、ビード高さ誤差を低減させることができる。
図17は、実施の形態2において許容誤差量が設定された場合における操作量の再調整について説明するための図である。図17では、図6と同様に、材料供給量およびレーザ出力の関係をグラフにより表す。図17のグラフに示す点は、レーザ出力の値と材料供給量の値との組を表す。
図17に示す点54は、図14に示す点54と同様であるものとする。図17に示す点58は、ビード幅誤差の許容誤差量が設定されない場合における再調整後のレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。図17における点54から点58への遷移は、レーザ出力を変化させず、かつ、材料供給量を大きくする再調整を表す。
図17に示す点57は、ビード幅誤差の許容誤差量が設定されている場合における再調整後のレーザ出力の値と材料供給量の値との組の例を表す。図17における点54から点57への遷移は、材料供給量を大きくし、かつ、レーザ出力を下げる再調整を表す。点54から点57への遷移における材料供給量の増加分は、点54から点58への遷移における材料供給量の増加分に比べて小さい。付加製造装置100は、材料供給量の増加分を小さくさせることによって、ビード幅誤差の許容誤差量が設定されることによって、ビード高さの拡大を緩和させることができる。
付加製造装置100は、許容誤差量が設定される場合と許容誤差量が設定されない場合とのいずれにおいても、ビード幅誤差を低減させることができる。付加製造装置100は、許容誤差量が設定されない場合において、ビード幅誤差をゼロにさせることができる。付加製造装置100は、許容誤差量が設定される場合において、ビード幅誤差を許容誤差量に収めることができ、かつ、ビード高さ誤差を低減させることができる。
次に、操作量再調整部33による処理の手順について説明する。図18は、実施の形態2にかかる付加製造装置100の操作量再調整部33による処理の手順の例を示すフローチャートである。図18には、ビード幅誤差の許容誤差量が設定されている場合における処理手順の例を示す。
ビード幅修正制御部31は、ビード幅誤差に基づいてレーザ出力を調整する。ビード幅修正制御部31は、レーザ出力の値を出力する。ビード高さ修正制御部32は、ビード高さ誤差に基づいて材料供給量を調整する。ビード高さ修正制御部32は、材料供給量の値を出力する。操作量再調整部33には、レーザ出力の値と材料供給量の値とが入力される。
ステップS21において、操作量再調整部33は、レーザ出力に対して材料供給量が過小であるか否かを判断する。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最小値よりも小さい場合に、レーザ出力に対して材料供給量が過小であると判断する。レーザ出力に対して材料供給量が過小であると判断した場合(ステップS21,Yes)、操作量再調整部33は、ステップS22へ手順を進める。一方、レーザ出力に対して材料供給量が過小ではないと判断した場合(ステップS21,No)、操作量再調整部33は、ステップS24へ手順を進める。
ステップS22において、操作量再調整部33は、ビード幅の目標値に対するビード幅誤差の許容量に応じてレーザ出力を調整する。操作量再調整部33は、ビード幅誤差を許容誤差量に一致させるようにレーザ出力を下げる調整を行う。
ステップS23において、操作量再調整部33は、ステップS22において調整されたレーザ出力に応じて材料供給量を調整する。操作量再調整部33は、レーザ出力と材料供給量との関係において材料供給量の値が適正範囲の最小値以上となるように、材料供給量を大きくする調整を行う。
ステップS24において、操作量再調整部33は、操作量を出力する。すなわち、操作量再調整部33は、操作量であるレーザ出力の値および操作量である材料供給量の値を出力する。操作量再調整部33は、再調整後のレーザ出力の値を示すレーザ出力指令をレーザ発振器2へ出力する。操作量再調整部33は、再調整後の材料供給量の値を示す材料供給指令を材料供給装置5へ出力する。以上により、操作量再調整部33は、図18に示す手順による処理を終了する。
上記説明では、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が適正範囲の最小値よりも小さい場合において、操作量再調整部33がレーザ出力よりも材料供給量を優先して再調整することとした。すなわち、操作量再調整部33が実施する調整は、ビード高さを目標値に近づけるよりもビード幅を目標値に近づけることを優先させる調整である。実施の形態2において、操作量再調整部33は、操作量再調整部33へ入力された材料供給量の値が適正範囲の最小値よりも小さい場合において、材料供給量よりもレーザ出力を優先して再調整を行うこととしても良い。すなわち、操作量再調整部33が実施する調整は、ビード幅を目標値に近づけるよりもビード高さを目標値に近づけることを優先させる調整であっても良い。例えば、許容可能とするビード幅誤差である許容誤差量として過大な値が設定されることによって、操作量再調整部33は、材料供給量の再調整を行わずレーザ出力のみの再調整を行うこととしても良い。付加製造装置100は、許容誤差量が任意に設定されることにより、ビード幅の調整とビード高さの調整との割合を任意に調整することができる。
なお、実際の付加製造加工では、ビード幅が目標値よりも小さい場合であっても必ずしも造形物17に欠陥が生じるわけではない。ビード幅誤差の許容誤差量が適宜設定されることにより、ビード幅が目標値よりも小さい場合であっても欠陥が生じることを回避し得る。
図19は、実施の形態2にかかる付加製造装置100における許容誤差量と造形物17における欠陥の発生との関係について説明するための図である。以下の説明では、互いに隣接するビード16同士が重なり合う部分の幅を、オーバーラップ量と称する。ビード16同士が重なり合う部分の幅とは、ビード16同士が並べられている方向における幅とする。また、互いに隣接するビード16のうちの一方の中心位置と他方の中心位置との間の距離を、ビード中心間距離と称する。ビード中心間距離は、加工プログラム等によってあらかじめ指定される。
オーバーラップ量は、以下の式により計算することができる。
オーバーラップ量
=(実際のビード幅)-(ビード中心間距離)
=(ビード幅の目標値)-(ビード幅誤差の許容誤差量)-(ビード中心間距離)
図21の(a)、(b)、および(c)には、互いに隣り合う2個のビード16の配置例を示す。図21の(a)、(b)、および(c)に示すPは、ビード中心間距離を表す。オーバーラップ量であるOがゼロよりも大きい場合、2個のビード16が互いに重なり合い、欠陥は生じない。
図21の(a)に示すケースでは、各ビード16のビード幅は、目標値であるWと一致している。すなわち、各ビード16の実際のビード幅がWである。図21の(a)に示すケースでは、ビード幅誤差の許容誤差量であるEWがゼロであるものとする。図21の(a)に示すケースでは、オーバーラップ量であるOがゼロよりも大きいため、欠陥は生じない。
図21の(b)に示すケースでは、各ビード16のビード幅であるW’が目標値であるWよりも小さく、かつ、ビード幅誤差の許容誤差量であるEWが設定されている。図21の(b)に示すケースでは、0<EW<W-Pが成り立つ。この場合、オーバーラップ量であるOがゼロよりも大きいため、欠陥は生じない。
図21の(c)に示すケースでは、各ビード16のビード幅であるW’は、目標値であるWよりも小さく、かつ、ビード幅誤差の許容誤差量であるEWが設定されている。図21の(c)に示すケースでは、0<W-P<EWが成り立つ。この場合、オーバーラップ量であるOがゼロよりも小さい、すなわち、2個のビード16が互いに重なり合わないため、欠陥が生じることとなる。
以上から、付加製造装置100は、ビード幅誤差の許容誤差量が以下の条件を満足することによって、欠陥の発生を回避することができる。
(ビード幅誤差の許容誤差量)<(ビード幅の目標値)-(ビード中心間距離)
実施の形態2によると、操作量再調整部33は、操作量調整部での材料供給量またはレーザ出力の調整後においてレーザ出力の値に対する材料供給量の値が適正範囲から外れる場合に、材料供給量とレーザ出力とのうちの一方を、調整を優先させる操作量として選定する。操作量再調整部33は、選定された操作量を優先して再調整する。操作量再調整部33は、材料供給量の値が適正範囲の最小値よりも小さい場合に、調整を優先させる操作量として材料供給量を選定する。付加製造装置100は、操作量調整部での材料供給量またはレーザ出力の調整によりビード16の形状誤差を低減させることができ、かつ、操作量再調整部33での操作量の再調整により、加工の継続が困難となることを防ぐことができる。以上により、付加製造装置100は、誤差が低減された造形物17を製造することができるという効果を奏する。
付加製造装置100は、実施の形態1において説明する処理と実施の形態2において説明する処理との双方を実行することとしても良い。すなわち、付加製造装置100は、適正範囲に対して材料供給量が過大である場合には、実施の形態1において説明する処理を実施し、かつ、適正範囲に対して材料供給量が過小である場合には、実施の形態2において説明する処理を実施することとしても良い。
実施の形態3.
付加製造加工では、熱の偏りといった要因により、形成されるビード16の中心位置に目標位置からの誤差が生じることがある。かかる誤差の影響が造形物17の形状に及ぶことによって、造形物17の形状が目標形状とは異なるものとなる場合がある。このような現象に対し、ビード16の中心位置の誤差を計測した結果に基づいて加工点の位置を補正することとした場合、位置補正量が過大であることによって、基材18または基材18上の造形物17から離れた位置にビード16を形成しようすることが起こり得る。位置補正量が過大であることによって、基材18または造形物17にビード16を接触させることができないこととなると、加工を継続することが困難となる。また、単に、位置補正量に制約を設けることとすると、目標形状の造形物17を得ることが困難となる。
実施の形態3では、位置補正量が制約される場合において、ビード幅を大きくする調整、すなわちレーザ出力を大きくする調整により、造形物17の形状を目標形状に近づける補正を行う。
図20は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aの機能構成の例を示す図である。図20には、ビード16の中心位置の誤差であるビード位置誤差を低減させる機能についての機能構成の例を示す。また、図20に示す例では、図2に示す構成と同様の構成、すなわち、ビード16の形状誤差を低減させる機能についての機能構成を併せ持つものとする。実施の形態3では、上記の実施の形態1または2と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1または2とは異なる構成について主に説明する。
付加製造装置100Aは、NC装置1の代わりにNC装置1Aが設けられている点が、図1に示す付加製造装置100とは異なる。付加製造装置100AのうちNC装置1A以外の構成は、図1に示す付加製造装置100と同様であるものとする。
NC装置1Aは、付加製造装置100Aの全体を制御する制御装置である。NC装置1Aは、ビード幅修正制御部31と、ビード高さ修正制御部32と、操作量再調整部33と、位置補正部61と、位置補正量調整部62と、ビード幅補正量算出部63とを備える。
解析装置6は、図1に示すカメラ7から入力される画像を解析することによって、ビード位置誤差を求める。解析装置6は、ビード位置誤差の値であるビート位置誤差量をNC装置1Aへ出力する。
解析装置6により算出されたビード位置誤差量は、位置補正部61へ入力される。位置補正部61は、ビード位置誤差量が入力されると、ビード位置誤差量に基づいて加工点の補正量を求める。位置補正部61は、求めた補正量の値を位置補正量調整部62へ出力する。
パラメータ入力部34には、パラメータの値として、適正補正範囲を示す値が入力される。適正補正範囲は、ビード16を適正に形成可能であるときにおける、加工点の補正量の値の範囲である。適正補正範囲を示す値がパラメータ入力部34へ入力されることにより、付加製造装置100に適正補正範囲が設定される。パラメータ入力部34は、適正補正範囲を示す値をNC装置1Aへ出力する。
位置補正量調整部62は、位置補正部61により求めた補正量の値が、パラメータ入力部34から入力される値に示される適正補正範囲から外れる場合に、適正補正範囲に含まれる値に補正量の値を調整する。位置補正量調整部62は、調整された補正量に基づいて、位置指令に示される位置を補正する。位置補正量調整部62は、補正された位置指令を軸駆動装置3へ出力する。
位置補正量調整部62は、調整された補正量により造形物17の形状を目標形状とすることが可能か否かを判断する。位置補正量調整部62は、位置補正部61により求まる補正量の値が適正補正範囲から外れる場合に、造形物17の形状を目標形状とすることができないと判断する。位置補正量調整部62は、位置補正量調整部62により調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分を求める。位置補正量調整部62は、求めた差分を示す値をビード幅補正量算出部63へ出力する。
ビード幅補正量算出部63は、差分を示す値が入力されると、差分を示す値に基づいてビード幅の補正量を算出する。すなわち、ビード幅補正量算出部63は、位置補正量調整部62により調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分に基づいて、ビード幅の補正量であるビード幅補正量を算出する。ビード幅補正量算出部63は、算出された補正量の値をビード幅修正制御部31とビード高さ修正制御部32との各々へ出力する。
実施の形態1または2と同様に、ビード幅修正制御部31は、ビード幅誤差量が入力されると、レーザ出力指令に示されるレーザ出力をビード幅誤差量に基づいて調整する。また、ビード幅修正制御部31は、ビード幅補正量算出部63から入力される補正量の値に基づいてレーザ出力を補正する。ビード高さ修正制御部32は、ビード高さ誤差量が入力されると、材料供給指令に示される材料供給量をビード高さ誤差量に基づいて調整する。また、ビード高さ修正制御部32は、ビード幅補正量算出部63から入力される補正量の値に基づいて材料供給量を補正する。操作量調整部は、ビード幅補正量に基づいてレーザ出力および材料供給量の少なくとも一方を補正する。ビード幅修正制御部31でのレーザ出力の補正と、ビード高さ修正制御部32での材料供給量の補正とによって、形成されるビード16のビード幅が補正される。
次に、ビード位置誤差に応じた加工点の補正とビード16の形成との関係について説明する。図21は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aにおける加工点の補正とビード16の形成との関係について説明するための第1の図である。図21の(a)では、被加工物19においてビード16が形成されたときの様子を例示する。図21の(a)において、加工の進行方向はY軸方向であるものとする。加工点は、ビームノズルの中心軸上の位置である。CX1は、図21の(a)に示す状態におけるビームノズルの中心軸の位置とする。
図21の(a)に示すビード16は、被加工物19の外縁の領域65に形成される予定であったものとする。形成されたビード16の中心位置は、領域65の中心位置からずれている。形成されるビード16のビード位置誤差が過大となると、造形物17に欠陥が生じることとなる。造形物17に欠陥が生じると、加工を継続することが困難となる場合がある。
図21の(b)では、図21の(a)に示されるようなビード位置誤差の修正を、加工点の補正のみにより行うこととした場合の様子を例示する。CX2は、図21の(b)に示す状態におけるビームノズルの中心軸の位置とする。CX1とCX2との間の距離が、加工点の補正量であるΔCXに相当する。
図21の(b)には、被加工物19と補正後の加工点とのギャップが過大であって、被加工物19にビード16を形成することができない状態を表す。また、被加工物19のうちビード16が形成される予定である部分において、レーザビームLが照射されない領域66が生じる場合がある。このように、加工点の補正のみでは被加工物19にビード16を形成できないことにより、加工を継続することが困難となる場合がある。
図22は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aにおける加工点の補正とビード16の形成との関係について説明するための第2の図である。図22では、加工点の補正によるビード位置誤差の修正とビード幅の補正とを行う様子を示す。図22の(a)では、図21の(a)と同様に、被加工物19においてビード16が形成されたときの様子を例示する。
図22の(b)に示す状態において、ビード位置誤差が適正補正範囲の値を超えるものであるとする。位置補正部61ではビード位置誤差量に基づいて補正量が算出されるため、位置補正部61により求まる補正量の値が、適正補正範囲から外れることとなる。位置補正量調整部62は、位置補正量であるΔCXを、適正補正範囲に含まれる値に調整する。付加製造装置100Aは、位置補正量調整部62において位置補正量の値を調整することによって、加工の継続が困難となることを防ぐことができる。
図22の(b)に示す状態では、加工点の補正量が適正補正範囲に制約されることによって、造形物17の形状が目標形状を満たさないこととなる。図22の(c)に示すように、形成されるビード16のビード幅が、目標値であるWよりも大きいW’に補正される。付加製造装置100Aは、ビード幅補正量算出部63によりビード幅を補正することによって、造形物17の形状を目標形状に一致させることができる。
図23は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aにおけるビード幅の補正について説明するための図である。図23の(a)には、ビード幅補正量算出部63により算出されるビード幅補正量によりビード幅が補正される前のビード16の例を示す。図23の(a)に示すビード16のビード幅は、ビード幅の目標値であるWである。図23の(a)に示すビード16のビード高さは、ビード高さの目標値であるHである。
図23の(b)には、図23の(a)に示す状態からビード幅のみが補正された場合のビード16の例を示す。ビード幅補正量算出部63は、位置補正量調整部62により調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分に基づいて、ビード幅補正量であるΔWを算出する。ビード幅修正制御部31は、ビード幅補正量算出部63から入力されるビード幅補正量の値に基づいて、レーザ出力を大きくする。図23の(b)に示すビード16のビード幅は、W+ΔWである。ただし、レーザ出力が大きくされる一方で材料供給量が変えられないこととなると、形成されるビード16のビード高さが目標値であるHに満たないこととなる。
図23の(c)には、図23の(a)に示す状態からビード幅とビード高さとが補正された場合のビード16の例を示す。ビード高さ修正制御部32は、ビード幅補正量算出部63から入力されるビード幅補正量の値に基づいて、材料供給量を大きくする。これにより、付加製造装置100Aは、図23の(c)に示すように、ビード幅がW+ΔW、かつビード高さがHであるビード16を形成する。
図24は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aのビード幅補正量算出部63により算出される補正量について説明するための図である。図24では、ビード位置誤差を生じているビード16と、造形物17の目標形状である輪郭形状67とを例示する。ビード16のビード幅は、Wであるものとする。ビード幅補正量算出部63により算出される補正量であるΔWは、輪郭形状67と形成されたビード16の差分に相当する。ビード幅補正量算出部63は、算出されたビード幅補正量の値をビード幅修正制御部31とビード高さ修正制御部32との各々へ出力する。
次に、位置補正部61、位置補正量調整部62、およびビード幅補正量算出部63による処理の手順について説明する。図25は、実施の形態3にかかる付加製造装置100Aの位置補正部61、位置補正量調整部62、およびビード幅補正量算出部63による処理の手順の例を示すフローチャートである。
ステップS31において、位置補正部61は、ビード位置誤差に基づいて、加工点の補正量を求める。位置補正部61は、求めた補正量の値を位置補正量調整部62へ出力する。
ステップS32において、位置補正量調整部62は、ステップS31において位置補正部61が求めた補正量の値が適正補正範囲から外れているか否かを判断する。補正量の値が適正補正範囲から外れていると判断した場合(ステップS32,Yes)、位置補正量調整部62は、ステップS33へ手順を進める。
ステップS33において、位置補正量調整部62は、適正補正範囲に含まれる値に補正量の値を調整する。位置補正量調整部62は、調整された補正量に基づいて補正された位置指令を軸駆動装置3へ出力する。位置補正量調整部62は、ステップS33において調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分を求める。位置補正量調整部62は、求めた差分を示す値をビード幅補正量算出部63へ出力する。
ステップS34において、ビード幅補正量算出部63は、ステップS33において調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分に基づいてビード幅の補正量を算出する。ビード幅補正量算出部63は、算出された補正量の値をビード幅修正制御部31とビード高さ修正制御部32との各々へ出力する。
ステップS34を終えると、位置補正部61、位置補正量調整部62、およびビード幅補正量算出部63は、図25に示す手順による処理を終了する。または、補正量の値が適正補正範囲から外れていないと判断した場合(ステップS32,No)、位置補正部61、位置補正量調整部62、およびビード幅補正量算出部63は、図25に示す手順による処理を終了する。
なお、付加製造装置100Aは、実施の形態3において説明する処理と併せて、実施の形態1において説明する処理または実施の形態2において説明する処理を実行する。付加製造装置100Aは、実施の形態3において説明する処理と併せて、実施の形態1において説明する処理と実施の形態2において説明する処理との双方を実行することとしても良い。
実施の形態3によると、位置補正量調整部62は、ビード位置誤差の補正量の値が適正補正範囲から外れる場合に、適正補正範囲に含まれる値に補正量の値を調整する。ビード幅補正量算出部63は、位置補正量調整部62により調整された補正量で加工点が補正された場合における造形物17の形状と目標形状との差分に基づいてビード幅の補正量を算出する。付加製造装置100Aは、ビード位置誤差を修正するとともに、補正量が過大であることにより加工の継続が困難になることを防止することができる。付加製造装置100Aは、ビード幅の補正により、ビード16の形状誤差を低減させることができる。以上により、付加製造装置100Aは、誤差が低減された造形物17を製造することができるという効果を奏する。
次に、実施の形態1から3にかかるNC装置1,1Aを実現するハードウェア構成について説明する。NC装置1,1Aは、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサがソフトウェアを実行する回路であっても良いし、専用の回路であっても良い。
処理回路がソフトウェアにより実現される場合、処理回路は、例えば、図26に示す制御回路70である。図26は、実施の形態1から3にかかる制御回路70の構成例を示す図である。制御回路70は、入力部71、プロセッサ72、メモリ73、および出力部74を備える。
入力部71は、制御回路70の外部から入力されたデータを受信してプロセッサ72に与えるインターフェース回路である。出力部74は、プロセッサ72またはメモリ73からのデータを制御回路70の外部に送るインターフェース回路である。処理回路が図26に示す制御回路70である場合、プロセッサ72がメモリ73に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、NC装置1,1Aの機能が実現される。メモリ73は、プロセッサ72が実施する各処理における一時メモリとしても使用される。
処理回路が図26に示す制御回路70である場合、NC装置1,1Aは、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ73に格納される。処理回路は、メモリ73に記憶されたプログラムをプロセッサ72が読み出して実行することにより、NC装置1,1Aの各機能を実現する。すなわち、処理回路は、NC装置1,1Aの処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ73を備える。また、これらのプログラムは、NC装置1,1Aの手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
プロセッサ72は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)である。メモリ73は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
図26は、汎用のプロセッサ72およびメモリ73によりNC装置1,1Aを実現する場合のハードウェアの例であるが、NC装置1,1Aは、専用のハードウェア回路により実現されても良い。図27は、実施の形態1から3にかかる専用のハードウェア回路75の構成例を示す図である。
専用のハードウェア回路75は、入力部71、出力部74および処理回路76を備える。処理回路76は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。なお、NC装置1,1Aは、制御回路70とハードウェア回路75とが組み合わされて実現されても良い。
実施の形態1から3におけるPC10は、図26に示すハードウェアと同様のハードウェアにより実現される。パラメータ入力部34の機能は、入力部71により実現される。また、PC10は、ユーザにより操作される入力装置と、画面を表示する表示装置とを備える。入力装置は、例えば、キーボード、マウス、キーパッド、またはタッチパネルなどを含む。表示装置は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。
実施の形態1から3で説明するNC装置1,1Aの構成要素の分散または統合の具体的形態は、実施の形態1から3で説明するものに限られない。NC装置1,1Aの構成要素の全部または一部は、機能的または物理的に、任意の単位で分散あるいは統合して構成されても良い。
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられても良い。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。