以下に、実施の形態にかかる遠心送風機を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる遠心送風機1の斜視図である。図2は、実施の形態1にかかる遠心送風機1の断面図である。遠心送風機1は、羽根車2と、羽根車2を回転駆動するモータ3と、羽根車2を収容するスクロールケーシング4とを有する。遠心送風機1は、羽根車2を回転させることによって空気流を発生させる。
羽根車2は、多翼羽根車である。羽根車2は、モータ3のシャフト5に取り付けられている。羽根車2は、シャフト5を中心に回転する。羽根車2は、シャフト5に固定されたボス部2aと、ボス部2aの周縁部に並べられている複数の羽根2bとを有する。図2に示す断面は、図1に示すII-II線における断面であって、回転軸AXを含む断面である。回転軸AXは、羽根車2の回転中心である。以下の説明において、軸方向とは、回転軸AXの方向とする。回転方向とは、羽根車2が回転する方向とする。径方向とは、回転軸AXに垂直な方向とする。
スクロールケーシング4は、空気の吸込口6と空気の吹出口7とを有する。スクロールケーシング4の内部には、吸込口6から吹出口7へ向かう空気流が発生する。スクロールケーシング4は、羽根車2の回転によって発生する空気流の流路を構成する。羽根車2を回転させることによって、スクロールケーシング4の外の空気は、吸込口6を通ってスクロールケーシング4の内部へ吸い込まれる。羽根車2を回転させることによって、スクロールケーシング4の内部の空気は、吹出口7を通ってスクロールケーシング4の外へ吹き出される。図1に示すように、スクロールケーシング4の外には、スクロールケーシング4の外から吸込口6へ向かう空気流Y1と、吹出口7からスクロールケーシング4の外へ向かう空気流Y2とが発生する。図2に示すように、スクロールケーシング4の内部には、吸込口6から羽根車2を通り、羽根車2とスクロールケーシング4の内壁面11との間へ流れる主流Y3が発生する。
第1の側壁8および第2の側壁9は、それぞれ、スクロールケーシング4のうち、軸方向において互いに向き合う部分である。外周壁10は、スクロールケーシング4のうち第1の側壁8と第2の側壁9との間の部分である。吸込口6は、第1の側壁8に形成されている。第1の側壁8には、吸込口6からスクロールケーシング4の外の方へ向かうに従って内径が拡大されたベルマウス12が形成されている。内壁面11は、外周壁10のうちスクロールケーシング4の内部側の面であって、径方向において羽根車2とは離隔されている面である。
スクロールケーシング4の材料は、例えば樹脂である。スクロールケーシング4は、スクロール部13とディフューズ部14とを有する。スクロール部13は、空気流の下流側へ向かうに従い径方向における幅が拡大している螺旋状の流路を構成する部分である。ディフューズ部14は、スクロール部13よりも下流側の部分であって、スクロール部13と吹出口7との間の流路を構成する部分である。
ここで、内壁面11のうちスクロール部13に含まれる部分を、内壁面11aとする。内壁面11のうちディフューズ部14に含まれる部分を、内壁面11bとする。スクロール部13では、回転方向へ向かうに従って、羽根車2の外縁2cと内壁面11aとの距離が長くなるように、内壁面11aが湾曲している。回転軸AXに垂直な断面において、内壁面11aは、回転方向へ向かうに従い回転軸AXから遠ざかる螺旋状の曲線である。螺旋は、例えば、アルキメデス対数螺旋である。アルキメデス対数螺旋の詳細については後述する。
内壁面11aのうち下流側の端の位置は、内壁面11bのうち上流側の端の位置でもある。内壁面11bは、平面である。ディフューズ部14は、羽根車2から吹き出された主流Y3の動圧を効率良く静圧へ変換させるとともに、吹出口7へ主流Y3を導く。
スクロールケーシング4には、スクロールケーシング4の内部の方へ張り出た形状の舌部15が形成されている。舌部15は、スクロールケーシング4の内部を旋回する空気流を吹出口7へ導く。
内壁面11には、内壁面11から羽根車2の方へ突出し、かつ空気流の方向において延ばされた板状の突起部16が設けられている。実施の形態1にかかる遠心送風機1には、軸方向における位置が互いに異なる3つの突起部16a,16b,16cが設けられている。なお、実施の形態1において、突起部16とは、3つの突起部16a,16b,16cの各々を区別せずに称したものとする。
各突起部16は、スクロールケーシング4のうち、スクロール部13とディフューズ部14とに跨って形成されている。すなわち、各突起部16は、内壁面11aと内壁面11bとに跨って形成されている。
次に、各突起部16の位置と各突起部16の形状とについて説明する。第2の側壁9のうちスクロールケーシング4の内部側の面と、第1の側壁8のうちスクロールケーシング4の内部側の面との距離を「A」とする。「A」は、軸方向における吹出口7の長さであって、軸方向における吹出口7の端7aからの吹出口7の端7bの高さでもある。端7aは、吹出口7のうち第2の側壁9の側の端である。端7bは、吹出口7のうち第1の側壁8の側の端である。
軸方向における吹出口7の端7aからの突起部16の高さを「B」とする。各突起部16の高さ「B」を区別する場合には、突起部16aの高さを「Ba」、突起部16bの高さを「Bb」、突起部16cの高さを「Bc」とする。突起部16のうち、内壁面11と接する縁と羽根車2の側の縁との距離である突出長さを「C」とする。各突起部16の突出長さ「C」を区別する場合には、突起部16aの突出長さを「Ca」、突起部16bの突出長さを「Cb」、突起部16cの突出長さを「Cc」とする。軸方向における突起部16の厚さを「E」とする。各突起部16の厚さ「E」を区別する場合には、突起部16aの厚さを「Ea」、突起部16bの厚さを「Eb」、突起部16cの厚さを「Ec」とする。また、羽根車2の外径を「D」とする。羽根車2の外縁2cと内壁面11との距離を「WR」とする。スクロールケーシング4の板厚を「F」とする。
実施の形態1において、各突起部16は、内壁面11aと内壁面11bとに沿って連続して設けられている。各突起部16は、回転軸AXに垂直な向きに立てられている。突起部16aは、内壁面11aと内壁面11bとにおいて一定の高さ「Ba」の位置に設けられている。突起部16bは、内壁面11aと内壁面11bとにおいて一定の高さ「Bb」の位置に設けられている。突起部16cは、内壁面11aと内壁面11bとにおいて一定の高さ「Bc」の位置に設けられている。突起部16aは、一定の突出長さ「Ca」で形成されている。突起部16bは、一定の突出長さ「Cb」で形成されている。突起部16cは、一定の突出長さ「Cc」で形成されている。
実施の形態1において、「Ba」は、Ba=0.10×Aを満足する。「Bb」は、Bb=0.30×Aを満足する。「Bc」は、Bc=0.50×Aを満足する。実施の形態1において、「Ba」、「Bb」および「Bc」の各々は、「A」により無次元化して表される。
実施の形態1において、各厚さ「Ea」、「Eb」および「Ec」は、互いに等しい。また、金型の使用によってスクロールケーシング4を成形することを考慮すると、厚さ「E」は、スクロールケーシング4の板厚「F」と同じ程度であることが望ましい。実施の形態1では、厚さ「E」は、板厚「F」と同じとする。これにより、各突起部16は、スクロールケーシング4と一体に成形することができる。また、実施の形態1において、各突出長さ「Ca」、「Cb」および「Cc」は、互いに等しい。
図2に示す断面において、突起部16のうち羽根車2の側の縁は、丸みを帯びた形状とされる。遠心送風機1は、図2に示す断面において、突起部16のうち羽根車2の側の縁が尖った形状である場合よりも、突起部16のうち羽根車2の側の縁の付近における空気流の乱れを少なくすることができる。
羽根車2が回転することによって、スクロールケーシング4の外の空気がベルマウス12および吸込口6を通過して、スクロールケーシング4の内部へ取り込まれる。ディフューズ部14において主流Y3の動圧は静圧へ変換されて、主流Y3は吹出口7へ向かう。吹出口7へ主流Y3が向かう際の、内壁面11a,11bの付近における主流Y3の乱れが、遠心送風機1の圧力損失の増加、および、遠心送風機1のファン効率の低下を招くことが明らかとなった。スクロールケーシング4の内部のうち吹出口7に近い領域において、主流Y3は乱れ易い。さらに、主流Y3が乱れることによって、主流Y3の流速変動が顕著となり、かつ内壁面11a,11b上に圧力変動が生じることから、内壁面11a,11bの付近における主流Y3の乱れが騒音源になり得ることが、流体解析により明らかとなった。
図3は、実施の形態1にかかる遠心送風機1の平面図である。「θ」は、回転軸AX周りの角度であって、羽根車2の回転方向を正の方向とする角度とする。スクロールケーシング4のうち回転軸AXに垂直な断面において、舌部15のうちスクロールケーシング4の内部における頂点と回転軸AXの位置とを結ぶ仮想線Nを、「θ」の基準とする。すなわち、仮想線Nは、θ=0°を表す線である。また、図3には、θ=110°を表す線と、θ=290°を表す線と、θ=330°を表す線とを示している。「WRθ」は、角度「θ」における「WR」を表す。
θ=290°の線は、スクロール部13とディフューズ部14との境界を表す。すなわち、θ=290°の線上の位置は、スクロール部13のうち下流側の端であって、かつディフューズ部14のうち上流側の端でもある。θ=290°における「WRθ」である「WR290°」は、WR290°=0.465×Dをおおよそ満足する。
羽根車2から吹き出る主流Y3は、θ=290°において多くなる。このことから、実施の形態1では、突起部16の突出長さである「C」は、「WR290°」により無次元化して表されるものとする。「C」は、C=0.095×WR290°程度であるものとする。
なお、スクロール部13とディフューズ部14との境界は、θ=290°の線上の位置に限られず、θ=290°の線上以外の位置であっても良い。スクロール部13とディフューズ部14との境界の位置は、羽根車2の位置、またはスクロールケーシング4の形状などによって異なる。
外周壁10のうちθ=330°の線上の位置は、吹出口7の位置である。すなわち、θ=330°の線上の位置は、ディフューズ部14のうち下流側の端である。なお、吹出口7の位置は、θ=330°の線上の位置に限られず、θ=330°の線上以外の位置であっても良い。吹出口7の位置は、羽根車2の位置、舌部15の頂点の位置、またはディフューズ部14の形状などによって異なる。
回転軸AXに垂直な断面における内壁面11aの形状を表すアルキメデス対数螺旋は、r=r0×exp(I×π×α÷180°)を満足する。「r0」は、螺旋の基準位置における螺旋の半径である。「r」は、基準位置から回転方向へ角度「α」だけ進んだ位置における螺旋の半径である。「I」は、螺旋の拡大率である。なお、スクロールケーシング4の形状は、図3に示す形状に限られず、適宜変更可能である。
次に、図4から図7を参照して、遠心送風機1のファン効率と、羽根車2の回転方向における突起部16の位置との関係について説明する。図4は、実施の形態1にかかる遠心送風機1のファン効率と突起部16の位置との関係について説明するための第1の図である。図4には、遠心送風機1の平面図と、スクロールケーシング4の内部に配置される突起部16の例とを示している。図4において、突起部16は破線により示している。
突起部16のうち空気流の上流側の端17aの位置は、回転方向における突起部16の始点ともいえる。突起部16のうち空気流の下流側の端17bの位置は、回転方向における突起部16の終点ともいえる。以下の説明において、端17aの位置を始点、端17bの位置を終点と称する。
「θ1」は、スクロールケーシング4のうち回転軸AXに垂直な断面において、始点と回転軸AXとを結ぶ線と仮想線Nとがなす角度である。「θ2」は、スクロールケーシング4のうち回転軸AXに垂直な断面において、終点と回転軸AXとを結ぶ線と仮想線Nとがなす角度である。「θ1」および「θ2」の各々は、羽根車2の回転方向を正の方向とする角度とする。
ここでは、ファン効率と、突起部16の始点との関係について説明する。また、図4に示すように、θ2=330°とする。すなわち、突起部16の終点は、吹出口7の位置である。なお、突起部16の始点と突起部16の終点との各々は、図4に示す位置に限定されるものではない。
図5は、実施の形態1にかかる遠心送風機1のファン効率と突起部16の始点との関係の例を示す図である。図5には、ファン効率と「θ1」との関係を表す実線のグラフを示している。図5に示すグラフにおいて、縦軸はファン効率、横軸は「θ1」を表す。図5に示すグラフから、「θ1」を0°から330°の範囲において変化させた場合におけるファン効率の変化の態様が分かる。
θ1=0°におけるファン効率は、θ=0°からθ=330°まで延ばされた突起部16が設けられている場合におけるファン効率である。この場合、回転軸AXに垂直な断面において、内壁面11aと内壁面11bとの全体に突起部16が設けられている。なお、突起部16の数と高さ位置、突起部16の突出長さ、および突起部16の厚さといった、突起部16の仕様は、図1から図3を参照して説明したとおりとする。
図5において破線により示されている「R1」は、比較例1の場合におけるファン効率を表す。比較例1は、スクロールケーシング4に突起部16が設けられない場合とした。比較例1におけるスクロールケーシング4は、突起部16が設けられていない点を除いて、実施の形態1の場合と同様に形成されているものとする。
図5において破線により示されている「R2」は、比較例2の場合におけるファン効率を表している。比較例2は、上記の特許文献1に開示されている段差と同様の段差をスクロールケーシング4に設けた場合とした。比較例2において、段差は、内壁面11aと内壁面11bとの全体に設けられている。段差は、スクロールケーシング4のうち吹出口7の端7aから0.50×Aまでの高さ範囲の部分を、羽根車2の方へせり出させることにより形成されている。スクロールケーシング4のうち吹出口7の端7aから0.50×Aの位置までの高さ範囲の部分は、比較例1の場合と比べて、0.095×WR290°だけ羽根車2へ近づけられている。比較例2におけるスクロールケーシング4は、突起部16の代わりに段差が設けられている点を除いて、実施の形態1の場合と同様に形成されているものとする。
図5には、実施の形態1と比較例1,2とについて、風量を同一とし、かつ回転数を同一とした場合におけるファン効率の例を示している。回転数は、単位時間当たりに羽根車2が回転する回数である。比較例1の場合におけるファン効率は、43.4%である。比較例2の場合におけるファン効率は、42.5%である。図5に示すグラフが「R1」および「R2」の双方を上回る「θ1」の範囲において、遠心送風機1のファン効率が比較例1および2の場合よりも高くなる。
図5によると、実施の形態1において「θ1」が120°≦θ1≦300°を満足する場合に、比較例1,2の場合よりもファン効率が高くなる。また、θ1=180°付近においてファン効率は最も高くなることが判明した。θ1=180°におけるファン効率は46.3%である。すなわち、θ1=180°の場合、比較例1よりもファン効率が2.9pt向上する。
羽根車2から流出した空気は、θ=120°の付近から内壁面11aに沿って流れる。120°≦θ1≦300°とした場合、内壁面11aに沿って空気が流れる部分に突起部16が設けられることで、整流効果が促進され、空気流の変動が低減される。これにより、遠心送風機1は、ファン効率を向上させることができる。
0°≦θ<120°の部分では、θ≧120°の部分に比べて羽根車2の外縁2cと内壁面11aとの距離が短い。θ=120°よりも上流側に突起部16が設けられると、羽根車2から流出した空気が内壁面11aに沿って流れるよりも前に突起部16に衝突することによって、圧力損失が増大し得る。圧力損失の増大によるファン効率の低下を考慮すると、θ=120°よりも上流側には突起部16を設けないこと、すなわちθ1≧120°であることが望ましい。
また、θ1>300°である場合、比較例1に対するファン効率の低下は顕著とはいえない。ただし、θ1>300°としても整流効果の促進によるファン効率向上は見込めないことが分かる。よって、θ1≦300°であることが望ましい。なお、比較例2の場合、比較例1と比べてファン効率が0.9pt低下することが分かった。遠心送風機1は、120°≦θ1≦300°を満足する突起部16が設けられることによって、高いファン効率を得ることができる。
図6は、実施の形態1にかかる遠心送風機1のファン効率と突起部16の位置との関係について説明するための第2の図である。図6には、遠心送風機1の平面図と、スクロールケーシング4の内部に配置される突起部16の一例とを示している。図6において、突起部16は破線により示している。
ここでは、ファン効率と、突起部16の終点との関係について説明する。また、図5に示す関係を踏まえて、「θ1」は180°とする。なお、突起部16の始点と突起部16の終点との各々は、図6に示す位置に限定されるものではない。
図7は、実施の形態1にかかる遠心送風機1のファン効率と突起部16の終点との関係の例を示す図である。図7には、ファン効率と「θ2」との関係を表す実線のグラフを示している。図7に示すグラフにおいて、縦軸はファン効率、横軸は「θ2」を表している。図7に示すグラフから、「θ2」を290°から330°の範囲において変化させた場合におけるファン効率の変化が分かる。
θ2=330°におけるファン効率は、θ=180°からθ=330°まで延ばされた突起部16が設けられている場合におけるファン効率を表す。なお、突起部16の数と高さ位置、突起部16の突出長さ、および突起部16の厚さといった、突起部16の仕様は、図1から図3を参照して説明したとおりとする。図7に示す「R1」、「R2」は、図5と同様に、それぞれ比較例1,2の場合におけるファン効率を表している。
図7には、実施の形態1と比較例1,2とについて、風量を同一とし、かつ羽根車2の回転数を同一とした場合におけるファン効率の例を示している。比較例1の場合におけるファン効率は、43.4%である。比較例2の場合におけるファン効率は、42.5%である。図7に示すグラフが「R1」および「R2」の双方を上回る「θ2」の範囲において、遠心送風機1のファン効率が比較例1および2の場合よりも高くなる。
図7によると、実施の形態1において「θ2」が320°≦θ2≦330°を満足する場合に、比較例1および2の場合よりもファン効率が高くなる。また、θ2=330°付近においてファン効率は最も高くなることが判明した。
一般に、吹出口7の周りでは、空気流の非定常性が高くなり、空気流の乱れによる圧力損失が生じ易い。実施の形態1では、突起部16のうち下流側の端は、基準からの角度が320°以上かつ330°以下の位置にある。すなわち、吹出口7の付近まで突起部16が延ばされている。遠心送風機1は、内壁面11bに沿って流れる空気流を突起部16によって吹出口7まで効果的に誘導させ、圧力損失を低減させることができる。これにより、遠心送風機1は、ファン効率を向上させることができる。遠心送風機1は、320°≦θ2≦330°を満足する突起部16が設けられることによって、高いファン効率を得ることができる。さらに、遠心送風機1は、θ2=330°とすることで、すなわち突起部16のうち下流側の端を吹出口7の位置とすることで、高いファン効率を得ることができる。
以上により、遠心送風機1は、突起部16の始点が120°≦θ1≦300°を満足し、かつ、突起部16の終点が320°≦θ2≦330°の位置であることによって、高いファン効率を得ることができる。さらに、突起部16の終点が吹出口7の位置である場合には、スクロールケーシング4の成形時における外周壁10の撓みまたは変形を低減できる。一例として、スライド機構を有する金型の使用によってスクロールケーシング4が生産される場合において、外周壁10の撓みまたは変形を効果的に低減できる。
次に、図8から図22を参照して、突起部16を設けることによる騒音の低減について説明する。圧力変動と騒音とには密接な関係があり、圧力変動が顕著である箇所が騒音の発生源となる。ここでは、圧力変動の低減を可能とする突起部16の配置について説明する。
図8から図22では、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布と、空気流を表す流線の様子とを示している。図8から図22において、圧力変動の分布は、流体解析によって求められた圧力の時系列データを基に、14Hzから10000Hzにおける圧力変動の実効値を算出し、圧力変動の実効値の分布を表したものである。
図8から図22では、内壁面11a,11bのうち吹出口7から近い領域における圧力変動の分布を、黒塗り、斜線のハッチング、ドット模様および白抜きによって表している。黒塗りの領域は、内壁面11a,11bのうち吹出口7から近い領域の中で圧力変動が最も大きい領域である。黒塗りの領域、斜線のハッチングの領域、ドット模様の領域、および白抜きの領域の順に、圧力変動の大きさは小さくなる。黒塗りの領域における圧力変動の実効値は、50Pa以上とする。白抜きの領域における圧力変動の実効値は、30Pa以下とする。
なお、空気流の非定常性は、吹出口7の付近のみならず、舌部15の付近においても高くなる。舌部15においても、顕著な圧力変動が生じる。ただし、舌部15における圧力変動には、突起部16を設けることによる影響は及ばないと考えられる。舌部15における圧力変動の分布については、図示を省略する。
ここでは、実施の形態1における圧力変動の分布および流線の様子を解析した結果と、上記比較例1,2における圧力変動の分布および流線の様子を解析した結果とについて説明する。実施の形態1および比較例1,2において、流体解析の条件はいずれも同一であるものとする。流体解析の条件とは、風量、回転数、および空気の物性値などの条件である。比較例1,2および実施の形態1において羽根車2の外径「D」は同一であることから、比較例1,2および実施の形態1の比較は、同一のレイノルズ数「Re」による比較である。流体解析におけるレイノルズ数「Re」は、Re=(羽根2bの周速×D)÷(動粘度)の関係に基づいて算出される。ここで、羽根2bの周速=(羽根車2の1分間当たりの回転数×π×D)÷60である。レイノルズ数「Re」の値は、1.52×105である。また、計算格子数を完全に同一とすることは困難であるため、突起部16を設けることによる効果を確認する際に影響を無視し得る程度の格子数の差は許容して、非定常流体解析を行うこととする。
実施の形態1の解析結果について説明する前に、比較例1,2の解析結果について説明する。図8は、実施の形態1の比較例1にかかる遠心送風機における圧力変動の分布を示す図である。図9は、実施の形態1の比較例1にかかる遠心送風機における流線の様子を示す第1の図である。図10は、実施の形態1の比較例1にかかる遠心送風機における流線の様子を示す第2の図である。図8には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布を示している。図9には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。図10には、吹出口7の前方からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。
比較例1の場合、図8に示すように、内壁面11aと内壁面11bとに跨る領域において、圧力変動が大きくなる。当該領域における圧力変動の実効値は、約72Paであった。また、顕著な圧力変動は、おおよそ0.30×Aから0.50×Aの高さ範囲において生じることが分かった。
スクロールケーシング4の内部空間において、第1の側壁8がある方を上方、第2の側壁9がある方を下方とする。図9によると、羽根車2から出ている流線は、軸方向における中心付近から上方と下方とへ広がる。すなわち、羽根車2からの空気流は、0.30×Aから0.50×Aの高さ範囲において、上方へ向かう空気流Y4と下方へ向かう空気流Y5とに分かれている。このため、おおよそ0.30×Aから0.50×Aの高さ範囲において圧力変動が大きくなると考えられる。図10には、内壁面11aまたは内壁面11bへ向かってから上方と下方とへ流線が分かれる様子が示されている。図10によると、おおよそ0.38×Aの高さ位置において、上方と下方とへ流線が分かれる。
図11は、実施の形態1の比較例2にかかる遠心送風機における圧力変動の分布を示す図である。図12は、実施の形態1の比較例2にかかる遠心送風機における流線の様子を示す第1の図である。図13は、実施の形態1の比較例2にかかる遠心送風機における流線の様子を示す第2の図である。図11には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布を示している。図12には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。図13には、吹出口7の前方からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。
上述するように、比較例2では、内壁面11aと内壁面11bとの全体に段差18が設けられている。すなわち、スクロールケーシング4において、0≦θ≦330°の範囲に段差18が設けられている。比較例2では、段差18が設けられることによって、0から0.50×Aの高さ範囲の部分が、比較例1の場合と比べて0.095×WR290°だけ羽根車2へ近づけられている。
比較例1と同様に比較例2でも、図11に示すように、内壁面11aと内壁面11bとに跨る領域において、圧力変動が大きくなる。当該領域における圧力変動の実効値は、約62Paであった。比較例2において、圧力変動は、比較例1の場合と比べて14%程度低下している。ただし、比較例2では、圧力変動が生じる領域が比較例1の場合よりも大きくなることが、解析によって判明した。比較例2では、圧力変動が生じる領域が大きくなることで、騒音の低減が困難となる。
比較例2では、0から0.50×Aの高さ範囲の部分が、比較例1の場合と比べて0.095×WR290°だけ羽根車2へ近づけられていることから、羽根車2からの空気流が比較例1の場合よりも内壁面11a,11bに干渉し易い。このため、比較例2では、圧力変動が生じる領域が比較例1の場合よりも大きくなると考えられる。
図12および図13に示すように、羽根車2からの空気流は、上方へ向かう空気流Y4と下方へ向かう空気流Y5とに分かれている。図12および図13によると、羽根車2からの空気流が上方と下方とへ分かれる様子は、図9および図10に示される比較例1の場合と変わりないことが分かる。よって、羽根車2からの空気流が上方と下方とへ分かれることによる騒音は比較例1と比べて改善されていないことが、解析によって判明した。
次に、実施の形態1の解析結果について説明する。ここでは、3つの実施例についての、圧力変動の分布および流線の様子を解析した結果を説明する。3つの実施例は、遠心送風機1における突起部16の態様が互いに異なる。
図14は、実施の形態1の実施例1にかかる遠心送風機1における圧力変動の分布を示す図である。図15は、実施の形態1の実施例1にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第1の図である。図16は、実施の形態1の実施例1にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第2の図である。図14には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布を示している。図15には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。図16には、吹出口7の前方からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。
実施例1にかかる遠心送風機1には、図1および図2に示す3つの突起部16a,16b,16cが設けられている。図5に示す関係から、各突起部16a,16b,16cの「θ1」は180°とした。また、図7に示す関係から、各突起部16a,16b,16cの「θ2」は330°とした。さらに、各突起部16a,16b,16cは、Ba=0.10×A、Bb=0.30×A、Bc=0.50×A、Ea=Eb=Ec=F、Ca=Cb=Cc=0.095×WR290°を満足する。
実施例1では、図14において、内壁面11aと内壁面11bとに跨る領域における圧力変動の実効値は、43Paから56Pa程度であった。実施例1において、圧力変動は、比較例1の場合と比べて30%以上低下している。
実施例1では、比較例1において圧力変動の変化が認められている0.30×Aから0.50×Aを含む高さ範囲に突起部16が設けられている。突起部16が設けられていることによって、スクロール部13およびディフューズ部14を通る空気流は、内壁面11aまたは内壁面11bに沿って流れ易くなる。実施例1では、空気流Y4,Y5を内壁面11aまたは内壁面11bに沿わせる整流効果によって、上方と下方とへの流線の分かれが比較例1,2の場合よりも緩和されたと考えられる。
図15によると、実施例1における上方と下方とへの流線の分かれは、図9および図12に示される比較例1,2の場合ほど顕著ではないことが分かる。実施例1によると、遠心送風機1は、羽根車2からの空気流が上方と下方とへ分かれることによる圧力変動を、比較例1,2と比べて小さくすることができる。これにより、遠心送風機1は、騒音の低減が可能となる。
また、図16に示す流線の様子から、3つの突起部16a,16b,16cのうち最も下方に位置する突起部16aの付近において空気流Y5の乱れが生じている可能性があることが確認された。次に説明する実施例2では、突起部16aのうち吹出口7の付近における部分が除去された構成について、非定常流体解析を行った。突起部16aのうち吹出口7の付近における部分が除去されることによって、突起部16aへの空気流Y5の干渉を低減できると考えられる。
図17は、実施の形態1の実施例2にかかる遠心送風機1における圧力変動の分布を示す図である。図18は、実施の形態1の実施例2にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第1の図である。図19は、実施の形態1の実施例2にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第2の図である。図17には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布を示している。図18には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。図19には、吹出口7の前方からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。
実施例2における2つの突起部16b,16cは、実施例1の場合と同様に形成されている。実施例2では、1つの突起部16aについては、「θ2」を290°とした。実施例2における突起部16aは、「θ2」を290°とした点を除いて、実施例1の場合と同様に形成されているものとする。このように、実施例2では、突起部16aにおける下流側の端の位置は、各突起部16b,16cにおける下流側の端の位置とは異なる。すなわち、実施例2における複数の突起部16は、突起部16のうち下流側の端の位置が互いに異なる突起部16同士を含む。
図17によると、実施例2では、圧力変動が発生している領域は、実施例1の場合よりも大幅に小さくなっている。突起部16bと突起部16cとの間では、30Pa以上の圧力変動は生じていない。図18によると、突起部16aへの空気流Y5の干渉が低減されている。圧力変動の実効値は、実施例1における56Paから、42Paへ低下している。すなわち、圧力変動の実効値は、実施例1の場合と比べて約25%低下した。また、圧力変動の実効値は、比較例1の場合と比べて約45%低下した。
実施例1の解析において最良のファン効率は46.3%であったのに対し、実施例2におけるファン効率は46.0%であった。このように、実施例2では、実施例1と比べてファン効率の大幅な低下は見られなかった。
実施例3では、実施例2の場合よりも各突起部16a,16b,16cの突出長さが長くされた構成について、非定常流体解析を行った。図20は、実施の形態1の実施例3にかかる遠心送風機1における圧力変動の分布を示す図である。図21は、実施の形態1の実施例3にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第1の図である。図22は、実施の形態1の実施例3にかかる遠心送風機1における流線の様子を示す第2の図である。図20には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、内壁面11a,11b上における圧力変動の分布を示している。図21には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。図22には、吹出口7の前方からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の内部における流線とを示している。
実施例3では、各突起部16a,16b,16cの突出長さ「Ca」、「Cb」、「Cc」を、実施例2における突出長さ「Ca」、「Cb」、「Cc」の2倍とした。すなわち、実施例3において、突出長さ「Ca」、「Cb」、「Cc」は、Ca=Cb=Cc=0.190×WR290°を満足する。実施例3における各突起部16a,16b,16cは、突出長さ「Ca」、「Cb」、「Cc」を実施例2の場合に対し2倍とした点を除いて、実施例2の場合と同様に形成されているものとする。
図20によると、実施例3では、実施例2と同様に、圧力変動が発生している領域は、実施例1の場合よりも小さい。突起部16bと突起部16cとの間では、30Pa以上の圧力変動は生じていない。図21によると、突起部16aへの空気流Y5の干渉が低減されている。圧力変動の実効値は、実施例1における56Paから、43Paへ低下している。すなわち、圧力変動の実効値は、実施例1の場合と比べて約25%低下した。また、圧力変動の実効値は、比較例1の場合と比べて約45%低下した。このように、実施例3では、実施例2の場合よりも各突起部16a,16b,16cの突出長さ「Ca」、「Cb」、「Cc」が長い場合であっても、圧力変動の大きさについて実施例2からの変化は見られなかった。
ただし、内壁面11a,11bからの各突起部16a,16b,16cの突出が大きすぎると、羽根車2からの空気流が各突起部16a,16b,16cに衝突し易くなると考えられる。図21によると、空気流Y4と空気流Y5とは、実施例2の場合と比べて内壁面11aまたは内壁面11bから離れた位置において上下に分かれていることが分かる。内壁面11aまたは内壁面11bから離れた位置において空気流Y4,Y5が上下に分かれることで、内壁面11aまたは内壁面11bに沿わせる整流効果が低減されることが考えられる。実施例3におけるファン効率は41.7%であった。このように、実施例3では、実施例1,2の場合よりもファン効率が低下することが分かった。
図23は、実施の形態1の実施例1,2,3と比較例1,2とにおける圧力変動の実効値の解析結果について説明するための図である。図23では、比較例1,2、および実施例1,2,3の各々における、圧力変動の実効値の最大値を表している。実施例1,2,3では、比較例1,2よりも圧力変動が低減されている。実施例1,2,3によると、遠心送風機1は、比較例1,2よりも圧力変動を小さくできることによって、騒音の低減が可能となる。
図24は、実施の形態1の実施例1,2,3と比較例1,2とについて、構成と解析結果とをまとめた図である。図24では、実施例1,2,3について、突起部16の数、突起部16の始点を表す「θ1」、突起部16の終点を表す「θ2」と、突起部16の突出長さ「C」とを示している。比較例2については、段差18について、始点を表す「θ1」と、終点を表す「θ2」と、突出長さ「C」とを示している。また、図24では、比較例1,2、および実施例1,2,3の各々について、圧力変動の実効値の最大値と、ファン効率とを示している。なお、実施例2,3では、突起部16b,16cの「θ2」は330°であって、突起部16aの「θ2」は290°である。
図24に示すように、遠心送風機1は、実施例1,2において、比較例1,2よりも高いファン効率を得ることができる。すなわち、遠心送風機1は、実施例1,2において、騒音を低減でき、さらにファン効率の向上が可能となる。
図25は、実施の形態1にかかる遠心送風機1における流速変動の分布を示す図である。図25には、吹出口7の前方斜め方向の位置からスクロールケーシング4を見た様子と、スクロールケーシング4の断面における流速変動の実効値の分布とを示している。図25に示す断面は、図2に示す断面と同じである。図25に示す断面は、回転軸AXの位置とθ=290°の位置とを結ぶ直線における断面である。図25では、内壁面11a,11bを含む流路における流速変動の分布を示しており、その他の部分における流速変動の分布については省略している。流体解析の条件は、図8から図22を参照して説明した流体解析の場合と同様とする。
図25では、流速変動の分布を、黒塗り、斜線のハッチング、ドット模様および白抜きによって表している。黒塗りの領域は、図25に示す断面の中で流速変動が最も大きい領域である。黒塗りの領域、斜線のハッチングの領域、ドット模様の領域、および白抜きの領域の順に、流速変動の大きさは小さくなる。黒塗りの領域における流速変動の実効値は、3m/s以上とする。白抜きの領域における流速変動の実効値は、0m/sとする。黒塗りの領域は、他の領域と比べて非定常性が高く、空気流の乱れが生じ易い領域といえる。
図25に示す分布によると、流速変動は、主に0.10×Aから0.80×Aの高さ範囲において生じており、0.30×Aから0.70×Aの高さ範囲において顕著であることが判明した。上述するように、0.38×Aの高さ位置において上方と下方とへ流線が分かれており、上方と下方との各々へ空気が流れることによって、0.10×Aから0.80×Aの高さ範囲では流速変動が常時生じると考えられる。遠心送風機1は、0.10×Aから0.80×Aの高さ範囲に突起部16が設けられることによって、整流効果を高め、騒音の抑制が可能となる。流速変動が顕著である領域と比較すると小さい変動であるが、0.10×Aの付近でも流速変動は生じている。遠心送風機1では、0.10×Aの付近に突起部16を設けることも、整流効果を高めるには有効といえる。よって、遠心送風機1は、0.10×A、0.30×Aおよび0.50×Aの各高さ位置に突起部16が設けられることによって、騒音の低減が可能となる。
突起部16が設けられる高さ位置は、適宜変更しても良い。遠心送風機1は、0.10×Aから0.80×Aの高さ範囲に少なくとも1つの突起部16が設けられていれば良い。すなわち、遠心送風機1には、吹出口7のうち第2の側壁9の側の端7aから軸方向において、吹出口7の長さ「A」の10%以上かつ80%以下の範囲に、少なくとも1つの突起部16が設けられている。これにより、遠心送風機1は、高い整流効果を得ることができる。
遠心送風機1には、流速変動が顕著である0.30×Aから0.70×Aの高さ範囲に少なくとも1つの突起部16が設けられても良い。すなわち、遠心送風機1には、吹出口7のうち第2の側壁9の側の端7aから軸方向において、吹出口7の長さ「A」の30%以上かつ70%以下の範囲に、少なくとも1つの突起部16が設けられている。これにより、遠心送風機1は、高い整流効果を得ることができる。
実施の形態1によると、遠心送風機1は、内壁面11から羽根車2の方へ突出し、かつ空気流の方向において延ばされた板状の突起部16を有する。遠心送風機1は、突起部16が設けられることによって、高い整流効果を得ることができる。これにより、遠心送風機1は、騒音を低減することができるという効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態1では、遠心送風機1に設けられる複数の突起部16の各々は、回転方向において互いに同じ範囲に設けられている。すなわち、複数の突起部16の各々における始点は、いずれも回転方向において同じ位置であって、かつ、複数の突起部16の各々における始点は、いずれも回転方向において同じ位置である。複数の突起部16には、回転方向において互いに異なる範囲に設けられている突起部同士が含まれていても良い。すなわち、複数の突起部16は、回転方向において始点の位置が互いに異なる突起部16同士、または、回転方向において終点の位置が互いに異なる突起部16同士を含んでいても良い。
図26は、実施の形態2にかかる遠心送風機30の斜視図である。図27は、実施の形態2にかかる遠心送風機30の側面図である。図27には、吹出口7の前方から遠心送風機30を見た様子を示している。実施の形態2にかかる遠心送風機30には、軸方向における位置が互いに異なる2つの突起部16d,16eが設けられている。なお、実施の形態2において、突起部16とは、2つの突起部16d,16eの各々を区別せずに称したものとする。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
2つの突起部16d,16eのうち上方に設けられている突起部16eは、回転方向においてθ=180°からθ=330°までの範囲に設けられている。すなわち、突起部16eにおいて、「θ1」は180°、「θ2」は330°である。
一方、2つの突起部16d,16eのうち下方に設けられている突起部16dは、θ=180°からθ=330°までの範囲のうちの一部に設けられている。図26において、突起部16dの始点は、θ=180°の位置よりも上流側の位置である。突起部16dの終点は、θ=330°の位置である。回転方向における突起部16dの長さは、回転方向における突起部16eの長さよりも短い。このように、軸方向における位置が互いに異なる複数の突起部16には、回転方向において互いに異なる範囲に設けられている突起部16同士が含まれていても良い。
吹出口7の端7aからの突起部16eの高さを「Be」とする。突起部16eは、軸方向において一定の高さ「Be」の位置に設けられている。吹出口7の端7aからの、突起部16dの終点の高さを「Bd1」とする。吹出口7の端7aからの、突起部16dの始点の高さを「Bd2」とする。突起部16dの始点は、突起部16dの終点よりも高い位置にある。突起部16dのうち軸方向における始点の位置と、突起部16dのうち軸方向における終点の位置とは、互いに異なる。すなわち、Bd1≠Bd2である。突起部16dは、「Bd1」の位置から「Bd2」の位置までの高さ範囲に設けられている。このように、遠心送風機30に設けられる突起部16のうちの少なくとも1つでは、軸方向において、始点の位置と終点の位置とが互いに異なっていても良い。
突起部16dの突出長さを「Cd」、突起部16eの突出長さを「Ce」とする。「Cd」と「Ce」とは、互いに異なる。このように、軸方向における位置が互いに異なる複数の突起部16には、突出長さが互いに異なる突起部16同士が含まれていても良い。
軸方向における突起部16dの厚さを「Ed」、軸方向における突起部16eの厚さを「Ee」とする。「Ed」と「Ee」とは、互いに異なる。このように、軸方向における位置が互いに異なる複数の突起部16には、軸方向における厚さが互いに異なる突起部16同士が含まれていても良い。さらに、複数の突起部16には、スクロールケーシング4の板厚「F」とは異なる厚さの突起部16が含まれていても良い。
各突起部16の突出長さは、始点から終点までにおいて一定でなくても良く、回転方向における位置ごとに異なっていても良い。例えば、ある突起部16において、θ=180°の位置における突出長さ「C」は0.075×WR290°であって、θ=290°の位置における突出長さ「C」は0.095×WR290°であっても良い。さらに、θ=180°の位置からθ=290°の位置まで回転方向へ進むに従って突出長さ「C」が漸次長くなるようにしても良い。すなわち、少なくとも1つの突起部16では、突起部16のうち上流側の端から突起部16のうち下流側の端へ向かうに従って突出長さ「C」が漸次変化していても良い。
このように、複数の突起部16の各々において、回転方向において突起部16が設けられる範囲と、突起部16が設けられる高さ範囲と、突出長さと、厚さとは、任意に変更しても良い。複数の突起部16の各々の形状は、遠心送風機30の風量等に応じて適宜変更可能である。遠心送風機30は、風量等に応じて突起部16の形状が適宜決定されることによって、高い整流効果を得ることができる。
実施の形態3.
図28は、実施の形態3にかかる遠心送風機40の断面図である。実施の形態1にかかる遠心送風機1は、吸込口6が1つである片吸込型の遠心送風機である。実施の形態3にかかる遠心送風機40は、吸込口6が2つである両吸込型の遠心送風機である。実施の形態3では、上記の実施の形態1または2と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1または2とは異なる構成について主に説明する。
2つの吸込口6のうちの一方は、第1の側壁8に形成されている。第1の側壁8には、吸込口6からスクロールケーシング4の外の方へ向かうに従って内径が拡大されたベルマウス12が形成されている。2つの吸込口6のうちの他方は、第2の側壁9に形成されている。第2の側壁9には、吸込口6からスクロールケーシング4の外の方へ向かうに従って内径が拡大されたベルマウス12が形成されている。遠心送風機40には、実施の形態1の場合と同様に、3つの突起部16が設けられている。
遠心送風機40において、内壁面11a,11b上には、実施の形態1にかかる遠心送風機1と同様に、圧力変動が生じると考えられる。実施の形態3においても、遠心送風機40は、突起部16が設けられることによって、騒音を低減でき、かつ高いファン効率を得ることができる。
実施の形態1から3において、遠心送風機1,30,40に設けられる突起部16の数は、適宜変更しても良い。遠心送風機1には、1つまたは複数の突起部16が設けられていれば良く、突起部16の数は任意であるものとする。
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられても良い。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。