JP7386508B2 - 表面改質金属とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面改質金属とその製造方法に関する。
近年、自動車や航空機などの輸送機器分野において、環境問題や省エネルギの観点から、機械部品の小型化と軽量化が強く求められている。そのため、従来から使用されている鉄鋼材料から、アルミニム合金やマグネシウム合金などの軽金属材料さらには繊維強化プラスチック材料などへの移行が急速に進んでいる。特にマグネシウム合金は、実用金属の中では最も軽量であることから利用範囲が広がっている。しかしながら、搬送機器の構造用部材としてこれらの合金を利用する場合、合金中の添加元素などの影響によって、鉄鋼材料に比べて耐腐食性が低く、また耐摩耗性も低いことが実用化の大きな障害となっている。とくに、マグネシウム合金の耐腐食性改善は喫緊の課題である。合金の耐腐食性の改善方法の一つとして、合金表面を改質することが有効である。
マグネシウム合金の表面改質として、めっき、蒸着、溶射などのコーティング技術が古くから行われている。耐腐食性の向上に関する研究では、例えば、真空蒸着によってAZ31Mg合金に高純度Mgを被覆した後、ふっ化処理皮膜で被覆することにより、耐腐食性を改善することが報告されている。また、高周波スパッタリングによってAZ31Mg合金基板にMg-Si成膜を行い、優れた耐腐食性を示すことが報告されている。ところが、これらのコーティング技術であっても、高温、低温、多湿など過酷な環境におけるコーティング材の剥離問題があり、密着性を向上させて耐腐食性を確保するための研究が盛んに行われている。
コーティング技術とは別に、金属表面改質の技術として、ショットと呼ばれる多数の小さな金属粒子(例えば鋼球)を改質対象の金属表面に衝突させ、その衝撃による加工硬化やひずみ硬化によって金属表面の硬度を向上させるショットピーニングという技術がある。また、このショットピーニングを応用する技術として、軟鋼板の表面にアルミニウム箔を接合させる技術、すなわち金属母材表面に異種金属箔を強固に接合させる技術、が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このショットピーニングによる異種金属同士の接合は、ショットによる繰り返し衝撃によって金属母材表面とその上の金属箔の広い領域の各点において局所的に大きな塑性変形を発生させることに基づいている。その塑性変形は、微細な凹凸の発生による表面積の拡大と新生面の発生およびショットの衝突による高圧縮力の発生などの現象が複合的に作用した結果であり、これらの現象によって、異種金属間の強固な接合が実現されると考えられる。この技術を用いることにより、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽金属合金における表面改質のため、異種金属間の接合を行うことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
特許第2895996号
原田泰典、他著「マスキングによる部分ショットライニング加工」、日本塑性加工学会誌、塑性と加工、Vol.42,No.480,pp48-52,2001
しかしながら、上述した特許文献1や非特許文献1に示されるような金属母材と異種金属箔の接合においては、表面改質の機能的な範囲が金属母材と異種金属箔の組合せによって限定されるので、種々の環境における金属母材の利用が限定されることになる。
本発明は、上記課題を解消するものであって、金属母材の表面に耐腐食性や耐摩耗性などの機能を備えて種々の環境に対応できる表面改質金属とその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明の表面改質金属は、金属母材の表面に機能性金属箔を有する表面改質金属において、機能性金属箔は、硬質粉末を含む樹脂層と金属箔の積層体であって、金属箔が金属母材の表面に接合されており、機能性金属箔は、ショットピーニングの処理によって金属母材の表面に接合され、硬質粉末の一部が樹脂層から金属箔へと移動して、金属箔と金属母材の表面に局所的な塑性変形が発生していることを特徴とする。
この表面改質金属において、機能性金属箔は、複数の金属箔または複数の樹脂層を含んでいてもよい。
この表面改質金属において、機能性金属箔の樹脂層は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
この表面改質金属において、硬質粉末は、セラミックスまたは超硬合金の粉末であってもよい。
この表面改質金属において、金属母材は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金であってもよい。
また、本発明の表面改質金属の製造方法は、上記の表面改質金属を製造する製造方法であって、硬質粉末を含む樹脂層と金属箔との積層体として形成された機能性金属箔準備し、金属母材の表面に金属箔を対面させて機能性金属箔を配置し、金属母材の表面に配置された機能性金属箔の上方から、ショットピーニングを行うことにより、樹脂層に含まれている硬質粉末の一部を樹脂層から金属箔へと移動させ、金属箔と金属母材の表面における局所的な塑性変形を発生させることによって金属母材の表面に機能性金属箔を接合することを特徴とする。
この表面改質金属の製造方法において、ショットピーニングを行う際に、金属母材と機能性金属箔とを加熱してもよい。
この表面改質金属の製造方法において、ショットピーニングは、不活性ガス雰囲気中で行うか、または真空中で行ってもよい。
本発明の表面改質金属とその製造方法によれば、金属母材の表面に接合される機能性金属箔には選択の自由度があるので、金属母材の表面に耐腐食性や耐摩耗性などの所望の機能を備える表面改質金属が得られ、種々の環境に対応して用いることができる。
本発明の一実施形態に係る表面改質金属とその製造方法を示す斜視図。 (a)は表面改質金属の断面図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は機能性金属箔の断面分解図。 機能性金属箔に含められる超硬合金の粉末の画像を示す図。 表面改質金属の断面の顕微鏡画像を示す図。 表面改質金属の改質表面の画像を示す図。 一実施形態に係る表面改質金属の製造方法のフローチャート。
以下、本発明の一実施形態に係る表面改質金属とその製造方法について、図面を参照して説明する。図1に示すように、表面改質金属1は、金属母材2の表面に接合された機能性金属箔3を有し、その機能性金属箔3が外部環境に対する耐腐食性や耐摩耗性の機能を金属母材2の表面に付与している。機能性金属箔3は、金属箔3aと樹脂層3bの積層体であり、その金属箔3aが金属母材2の表面に接合されている。つまり、金属箔3aを介して金属母材2の表面に樹脂層3bが接合されている。機能性金属箔3は、ショットピーニングの処理によって金属母材2の表面に接合されている。
ショットピーニングの処理は、例えば、金属母材2の表面に配置された機能性金属箔3の上方から、多数の小さな鋼球4を繰り返し衝突させることにより、その衝撃によって機能性金属箔3と金属母材2の表面とに圧力を加えて変形を生じさせる処理である。この処理によって金属母材2の表面と、機能性金属箔3が有する金属箔3aとが、互いの界面において接合され、金属母材2と機能性金属箔3とが接合される。ショットピーニングのショットは散弾銃のバラ弾のイメージである。
上記のショットを構成する粒子は、例えば、直径がφ0.6mm~φ1.2mmの鋼球であり、その衝突速度は例えば、40~80m/sである。機能性金属箔3の表面には、ショットピーニングによって、くぼみなどの多数の衝突痕10が形成され、同様の衝突痕10が金属母材2の表面にも発生する。このことから、ある表面改質金属がショットピーニングの処理によって形成されたものであるか否かについては、例えばその断面を観察することにより容易に判断することができる。
表面改質される金属母材2の表面形状は、平面に限られず曲面であってもよい。また金属母材2そのものの形状は、任意の形状であってよい。例えば、金属母材2が切削加工後の3次元曲面を有する構造体である場合、その加工面である3次元曲面に機能性金属箔3をショットピーニングによって接合して、そのままの表面改質金属1を製品として用いてもよい。また、金属母材2がプレス加工用の金属板材である場合、その板材の表面に機能性金属箔3をショットピーニングによって接合して表面改質された金属板材である表面改質金属1とし、その表面改質金属1にプレス絞り加工などの形状加工を行って製品として用いてもよい。金属母材2としては、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金が軽量化のために好適に用いられるが、これに限られず、任意の金属母材を用いることができる。金属母材はクラッド材であってもよい。
機能性金属箔3は、例えば、金属箔3aが例えば単層のアルミニウム箔であり、樹脂層3bが単層の樹脂層、例えば耐熱性を有する熱可塑性樹脂層であり、金属箔3aに樹脂層3bが積層された積層体である。例えば、表面改質金属1は、アルミニウム合金(金属母材2)の表面に、片面が樹脂(樹脂層3b)で被覆された純アルミニウム箔(金属箔3a)を載せた状態で、粒子衝突(ショットピーニングの処理)を行って得られる。この実施例の表面改質金属1は、アルミニウム合金の表面に純アルミニウム箔を介して樹脂層を備えることにより、アルミニウム合金の表面に防湿性を与えられたものとなる。
機能性金属箔3は、図2(a)(b)(c)に示すように、金属箔と樹脂層とが積層された複数枚(本例では3枚、一般には任意枚数)の積層体31,32,33で構成されてもよい。この例において、金属母材2に接合される積層体31は、金属母材2に接合される金属箔31a、その上の樹脂層31b、および上層の金属箔31cの3層構造を有する。中間の積層体32は、積層体31と同様の3層構造を有する。また、最上の積層体33は、下層の金属箔33a、その上の樹脂層33bの2層構造を有する。この最上の積層体33は、下層の積層体31,32と同様の3層構造であってもよい。各金属箔31a,32a,33a,31c,32cは、互いに同じ金属でも、異なる金属でもよい。同様に、樹脂層31b,32b,33bは、互いに同じ樹脂でも、異なる樹脂でもよい。
この図に対応する実施例として、両面がアルミニウム箔で被覆された樹脂シートを2枚重ねた上に、片面がアルミニウム箔で被覆された樹脂シートを1枚重ねた状態の機能性金属箔3を、アルミニウム合金の表面に有する表面改質金属1が得られている。同様の実施例が、アルミニウム合金の代わりにマグネシウム合金を用いた場合にも得られる。
機能性金属箔3は、その樹脂層(3b,31bなど)に、セラミックスや超硬合金などの粉末である硬質粉末を含んでいてもよい(図3参照)。樹脂層に含まれている硬質粉末の一部は、機能性金属箔3を金属母材の表面に接合させる際に、ショットピーニングによって、樹脂層から金属箔へと移動する。その移動は、下層への移動に限らず、上層への移動も有り得る。硬質粉末の存在と移動は、金属箔や金属母材2の表面における局所的な塑性変形を効果的に発生させることができ、金属母材2の表面改質に寄与する。
硬質粉末の移動と配置換えは、各粉末粒子が層間を橋渡しする状況を発生させ、局所的な塑性変形の発生の効果とともに、樹脂層と金属箔との接合を強めることになる。また、金属母材2の表面に接する金属箔から突出して金属母材2に至るまで移動した硬質粉末は、金属母材2と機能性金属箔3との接合を強めることになる。
機能性金属箔3の表面すなわち表面改質金属1の表面近くに存在する硬質粉末は、表面改質金属1に耐摩耗性を与えることができ、また、機能性金属箔3に接する他の表面との焼き付き等を防止することができる。表面改質金属1は、硬質粉末を含む機能性金属箔3が接合された板材の場合、例えば、プレス加工用の金属板材として好適に用いられる。
図4、図5は、表面改質金属1の一例を示す。この表面改質金属1は、金属母材2の表面に、金属箔3a、樹脂層3b、金属箔3cの3層からなる積層体である機能性金属箔3が接合されたものである。具体的には、機能性金属箔3は、樹脂層3bを純アルミニウム箔からなる金属箔3a,3cで挟み込んだ樹脂サンドイッチ積層体であり、その総厚は0.085mmである(これは接合前の材料の状態、下側の金属箔3aが0.040mm、樹脂層3bが0.025mm、上側の金属箔3cが0.020mm)。
図4に示すように、表面改質金属1は、金属母材2の表面および機能性金属箔3の全体が、ショットピーニングの処理によって接合が行われたことを反映して、褶曲変形している。また、図5に示すように、表面改質金属1の外表面は、ショットピーニングの処理で接合が行われたことを反映して、梨地状の凹凸模様を呈している。
(表面改質金属の製造方法)
次に、表面改質金属1の製造方法を説明する。図6に示すように、金属母材2と機能性金属箔3とを準備し(ステップS1)、金属母材2の表面に機能性金属箔3を配置し(ステップS2)、配置された機能性金属箔3の上方から、ショットピーニングを行い(ステップS3)、金属母材2の表面に機能性金属箔3を接合する。
機能性金属箔3が金属箔と樹脂層とが積層された積層体を複数(例えば、N)有する場合、一連の処理(ステップS1,S2,S3)をN回繰り返して、表面改質処理すなわち接合処理を行うことができる。これらの一連の処理(ステップS1,S2,S3)において、少なくともショットピーニング処理(ステップS3)の間、金属母材2と機能性金属箔3とを加熱してもよい。また、大気中で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気中または真空中で行ってもよい。
(機能性金属箔の作成方法)
上述の表面改質金属1の製造方法における、機能性金属箔3の作成方法を説明する。本実施形態の機能性金属箔3は、複数の金属箔または複数の樹脂層を含む複合材料であり、金属母材2の表面に配置(ステップS2)される単体の材料として、ショットピーニングを行う処理(ステップS3)の前に、事前に作成される。
ここでは、樹脂シートをアルミホイル(箔、シート)で挟んだ(サンドイッチした)3層構造の機能性金属箔3の作成方法を説明する。このような機能性金属箔3は、樹脂含有アルミシートや樹脂含有アルミ箔などと呼ぶことができる。機能性金属箔3は、それぞれ所定の広さと厚さを有するアルミホイルと樹脂シートを3層に重ね、熱圧着用の治具の間に配置し、高温高圧下で互いに接合(熱圧着)して作成される。
加熱と加圧の条件は、例えば樹脂シートが厚さ50μmの融着性を有する熱可塑性タイプのポリイミド樹脂であり、2枚のアルミホイルがいずれも厚さ30μmの場合、加熱温度350~400℃、加圧荷重0.8N/cm(一定荷重)である。加圧は、接合の品質を向上させることができ、樹脂の収縮変形防止、樹脂とアルミホイルとの接合面での気泡や孔の発生防止などに寄与する。なお、樹脂シートの厚さがあまり薄くなければ、加圧なしの加熱だけでも樹脂とアルミホイルとは十分な強さで接合される。加熱温度は、サンドイッチされる樹脂シートの熱特性等に基づいて決まる最低必要温度があり、温度が低すぎるとアルミホイルに対する十分な接合強度がえられない。
上述のアルミホイルやポリイミド樹脂は事例を示すものであり、他の種類材料や厚さを有する、金属箔や熱可塑性の樹脂シートを用いてもよく、その場合においても、加熱加圧下で同様に機能性金属箔3を作成することができる。
(熱可塑性樹脂について)
熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度または融点に達すると軟化する樹脂であり、射出成形や真空成形等が適用される。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂よりも靭性に優れ、成形温度は高いが短時間で成形できる。熱可塑性樹脂は、電気製品の筐体等に多用される汎用のものの他に、歯車や軸受等のように強度や耐久性を要求されるエンジニアリング用樹脂、さらに高い熱変形温度と長期使用に耐えるスーパーエンジニアリング用樹脂がある。機能性金属箔3は、これらの熱可塑性樹脂から適宜選択した樹脂を用いて作成される。
(硬質粉末を含む機能性金属箔の作成方法)
樹脂シートをアルミホイルで挟んだ3層構造の内部に、樹脂シ-トと硬質粉末層とを追加して、硬質粉末を含む機能性金属箔3(樹脂および硬質粉末含有アルミシート)を熱圧着によって作成することができる。より詳細には、硬質粉末層を樹脂シートで挟んだものを、さらにアルミホイルで挟んで、アルミ/樹脂/硬質粉末層/樹脂/アルミという5層構造とし、これを加熱加圧することにより機能性金属箔3が作成される。ここで、アルミホイルは金属箔の一例であり、他の任意の金属箔を用いることができる。
硬質粉末は、硬質とされる物質の粉末であればよく、セラミック粉末、超硬合金粉末や他の合金粉末(例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、ハイス、チタン合金などの粉末)、さらに酸化物、窒化物、炭化物などの粉末、を用いることができる。樹脂シートの上に硬質粉末が一様に分布した粉末層を形成するために種々の方法が用いられる。例えば、熱可塑性樹脂シート上に、硬質粉末を多量に配置して加熱し、樹脂シートに補足されていない硬質粉末を払い落とすか吹き飛ばして除去すればよい。また、硬質粉末を液体に混ぜて樹脂シートに塗布してもよい。この塗布の場合、液体を蒸発等によって除去してもよく、そのまま残留させてもよい。
本発明の表面改質金属の製造方法によれば、機能性金属箔3を、めっき処理などの成膜処理と同様の、表面に対する外部からの作用による処理であるショットピーニングによって金属母材2の表面に接合するので、本方法を適用する金属母材2の表面形状についての制限が少ない。従って、本方法は、加工済みの金属母材の、種々形状の曲面に表面改質を施すことができる。また、本方法によって得られる表面改質金属は、耐摩耗性などの加工性に優れた特性を有することができるので、プレス加工用の板材に表面改質を行ったものである場合、表面改質後に加工することができる。従って、アルミニウム合金やマグネシウム合金のような軽金属についても、プレス加工用の表面改質金属板材を得て、プレス加工を行うことができる。
(実施例)
実施例として、軽金属における表面特性向上のため、ショットピーニングの粒子衝突を用いて、軽金属母材への樹脂含有金属積層体(機能性金属箔3)の接合を試みた。機能性金属箔3の構成は、図1に示す構造のものとした。主に、軽金属であるマグネシウム合金を金属母材2として、金属箔3aと樹脂層3bとを積層した機能性金属箔3の良好な接合性が得られる加工条件を調べた。
まず、樹脂材料の選定のため、金属箔に対する接合性の評価を行った結果、熱可塑性樹脂の利用が最適であることを見いだした。具体的には、加工温度400℃程度でも金属箔との接合性にほとんど影響のない安定した熱可塑性樹脂を選定できた。
次に、マグネシウム合金からなる金属母材2(マグネシウム合金母材)に対し、耐熱性樹脂を有する機能性金属箔3の接合性について調べた。その結果、良好な接合が可能であることが確認できた。具体的には、金属箔3aの厚さを15μmから30μmとし、耐熱性樹脂である樹脂層3bの厚さを25μmから100μmとして、マグネシウム合金母材を切り出した試験片への接合性について調べた。試験片への加熱温度が200℃以上でマグネシウム合金母材への接合が可能であり、マグネシウム合金母材への接合性も良好であることが分かった。また、機能性金属箔3の厚さが増加した場合、加熱温度300℃程度の条件で十分な接合性が得られることを確認できた。
次に、接合する機能性金属箔3における樹脂層と金属箔の接合性の評価も含めて接合性の評価を行うため、曲げ加工や絞り加工による塑性変形を与えてみたところ、樹脂層、金属箔、母材表面の各接合面における破断、割れ、剥離は見られなかった。
さらに、耐摩耗性を改善するため、セラミックや超硬合金のような硬質粉末を含む機能性金属箔3の作製も行った。その結果、硬質粉末と樹脂の両方を含んだ機能性金属箔3が、マグネシウム合金母材に対して接合可能であることが分かった。また、得られた表面改質金属1の機能性を評価するため、試験片に対して耐腐食性試験と耐摩耗性試験とをそれぞれ行った。その結果、良好な耐腐食性と耐摩耗性が示された。以上より、本発明の表面改質金属とその製造方法は、マグネシウム合金の表面改質に対して有効であることが明らかとなった。このことから、他の軽金属の表面改質に対しても有効であると考えられる。
以上のように、本発明は、粒子衝突を利用するショットピーニングを接合技術に適用して、マグネシウム合金などの金属表面への樹脂および硬質材料を含有する金属皮膜、すなわち機能性金属箔の接合を行い、耐腐食性およびまたは耐摩耗性を付与した表面改質金属とその製造方法とを提供するものである。本願発明は、従来から行われている化成処理後の塗装やめっき処理などの電気的化学的な表面処理技術とは異なり、機械的力学的なショットピーニング技術を用いて、金属表面に機能性金属箔を接合するものである。
本願発明の表面改質金属の製造方法によれば、機能性金属箔に耐腐食性および耐摩耗性を含む種々の機能を持たせることができ、そのような機能を有する機能性金属箔を金属母材の表面に接合するので、優れた機能を有する表面改質金属が得られる。また、機能性金属箔が有する金属箔を介して、その機能性金属箔を金属母材の表面に接合するので、金属母材と機能性金属箔とが互いに強固に接合され、金属母材の表面に付与された機能が安定維持できる。このように、本発明は金属表面処理の技術的範囲を拡げるものである。
機能性金属箔3の材料として、例えば、セラミックや超硬合金の粉末のような硬質粉末を含んだ樹脂と金属箔との積層体を用いることができる。また、素材としての機能性金属箔を、各々が金属箔と樹脂層とを含む複数の積層体で構成し、それらの複数の積層体からなる素材を、まず一つ目の積層体を金属母材の表面に接合した後、残りの積層体の各々を表面改質金属の表面に接合する処理を順次繰り返してもよい。これにより、複合的な機能を有する多層の機能性金属箔を積層させ、改質された表面を有する表面改質金属を得ることができる。これは、古来から信頼されて実施されている土木工事における版築(はんちく)の技術を、金属の表面処理に適用するものと言える。
この繰り返し接合技術によって、例えば、数百μm程度の厚膜皮膜を金属母材の表面に形成可能である。なお、構造体等の軽量化のためアルミニウムやマグネシウムなどの軽量合金を用いて、これらを金属母材とする場合、接合する機能性金属箔が軽量であり、表面改質用の機能性金属箔の厚膜化が軽量化に影響することは殆どないと考えられる。
今後、マグネシウム合金やアルミニウム合金は、省エネを背景として、自動車や航空機などの搬送機器関連分野において、ますます利用範囲が広がる材料であり、本願発明は、特に、これらの軽量合金を利用する分野における用途に適用できる。本発明によって、金属表面の耐腐食性と耐摩耗性とが改善されることにより、搬送機器関連分野だけでなく化学分野や医療福祉分野などにおいても、軽金属の利用範囲が広がるものと考えられる。
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態や実施例の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、本発明において、金属母材に接合される前の素材としての機能性金属箔は、自重を保持できないような薄いものから、自重を保持可能な板状の厚いものまで、種々の厚さの積層体を包含するものである。
また、表面改質金属1の製造方法として、複数の金属箔または複数の樹脂層を含む複合材料である単体の機能性金属箔3を、ショットピーニング技術によって、金属母材2に接合する実施形態を説明したが、表面改質金属1は、このような単体の機能性金属箔3を用いて製造された物に限られない。すなわち、本発明の表面改質金属1には、製造された物として、結果的に機能性金属箔3の構造を有するものである。従って、表面改質金属1の概念には、単体の金属箔の材料や、単体の樹脂シートの材料を、金属母材2の表面に直接または既に接合された他の接合層の表面に、ショットピーニング技術によって接合してなる、表面改質金属が含まれる。また、機能性金属箔3を構成する樹脂層を熱可塑性樹脂として説明したが、この樹脂層は熱可塑性樹脂以外の樹脂であってもよい。
1 表面改質金属
2 金属母材
3 機能性金属箔
3a 金属箔
3b 樹脂層
3c 金属箔
31,32,33 積層体
31a,32a,33a 金属箔
31b,32b,33b 樹脂層
31c,32c, 金属箔

Claims (8)

  1. 金属母材の表面に機能性金属箔を有する表面改質金属において、
    前記機能性金属箔は、硬質粉末を含む樹脂層と金属箔の積層体であって、前記金属箔が前記金属母材の表面に接合されており、
    前記機能性金属箔は、ショットピーニングの処理によって前記金属母材の表面に接合され、前記硬質粉末の一部が前記樹脂層から前記金属箔へと移動して、前記金属箔と前記金属母材の表面に局所的な塑性変形が発生していることを特徴とする表面改質金属。
  2. 前記機能性金属箔は、複数の金属箔または複数の樹脂層を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の表面改質金属。
  3. 前記機能性金属箔の樹脂層は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面改質金属。
  4. 前記硬質粉末は、セラミックスまたは超硬合金の粉末であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の表面改質金属。
  5. 前記金属母材は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の表面改質金属。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の表面改質金属を製造する製造方法であって、
    硬質粉末を含む樹脂層と金属箔との積層体として形成された前記機能性金属箔準備し、
    前記金属母材の表面に前記金属箔を対面させて前記機能性金属箔を配置し、
    前記金属母材の表面に配置された前記機能性金属箔の上方から、ショットピーニングを行うことにより、前記樹脂層に含まれている前記硬質粉末の一部を前記樹脂層から前記金属箔へと移動させ、前記金属箔と前記金属母材の表面における局所的な塑性変形を発生させることによって前記金属母材の表面に前記機能性金属箔を接合することを特徴とする表面改質金属の製造方法。
  7. 前記ショットピーニングを行う際に、前記金属母材と前記機能性金属箔とを加熱することを特徴とする請求項6に記載の表面改質金属の製造方法。
  8. 前記ショットピーニングは、不活性ガス雰囲気中で行うか、または真空中で行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の表面改質金属の製造方法。
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JP2895996B2 (ja) 1991-08-29 1999-05-31 雅勇 中村 金属母材表面への異種金属箔の接合方法
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原田泰典,粒子衝突によるマグネシウム合金への樹脂-金属交互積層厚膜形成とその接合性評価,科学研究費助成事業 研究成果報告書,日本,2019年04月14日

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