JP7379828B2 - 温水の製造および廃温水の再利用方法 - Google Patents

温水の製造および廃温水の再利用方法 Download PDF

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Description

本発明は、温水の製造および廃温水の再利用方法に関するものである。
従来、温水製造システムが知られている。例えば特許文献1には、食品等のワークを温水洗浄または温水殺菌するために、ヒートポンプを用いて温水を製造するシステムが示されている。
特開2009-133522号公報
現在、工場・事業場の多くでは、代表的な温室効果ガスであるCOの排出量削減を目的として、化石燃料から脱却する「脱炭素」への取り組みが進められている。そこで、特許文献1に示されるように、温水を製造するシステムとして、ヒートポンプを用いたシステムを採用することが増えてきている。しかしながら、ヒートポンプは、出湯温度が低ければCOP(エネルギー消費効率)は高く、CO排出量の削減効果も高いが、出湯温度を高めて使用する場合は、COPは低くなり、CO排出量の削減効果も低下するという問題がある。また、出湯温度を高めて使用する場合は、COPが低いため、ランニングコストも高くなる。
さらに、このような温水を製造システムにおいては、環境への影響を考慮すると、廃温水の処理についても問題となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、CO排出量の削減効果が高く、環境への影響も少ない温水の製造および廃温水の再利用方法を提供することにある。
本発明は、用水を電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器(例えば、ヒートポンプ式給湯システム10の給湯器11、12、13)により加温して目標給湯温度の温水を製造する第1温水製造工程と、前記第1温水製造工程で得た前記目標給湯温度の温水をガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラ(例えば、蒸気ボイラ装置30)で発生させた蒸気であって、目標蒸気圧力に調整された蒸気で昇温して、前記目標給湯温度よりも高く設定された目標出湯温度の温水を製造する第2温水製造工程と、前記第2温水製造工程で得た前記目標出湯温度の温水を温水需要箇所に供給する温水供給工程と、前記温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用工程と、を含み、前記第1温水製造工程および前記第2温水製造工程の実行時に、前記設定された目標出湯温度に応じて、前記給湯器と前記蒸気ボイラの出力分担を調整する温水の製造および廃温水の再利用方法に関する。
また、本発明は、前記温水需要箇所から排出された廃温水を浄化する水浄化工程を含み、前記再利用工程は、前記水浄化工程を経た廃温水を再利用することが好ましい。
また、本発明は、前記第1温水製造工程で加温される前の用水を所要の水質に調整する水処理工程を含むことが好ましい。
また、本発明の前記第1温水製造工程で用いられる用水は、前記再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、前記再利用工程において、前記水処理工程で処理される前の用水に廃温水を混合することが好ましい。
また、本発明の前記第1温水製造工程で用いられる用水は、前記再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、前記再利用工程において、前記水処理工程で処理された後かつ前記第1温水製造工程で加温される前の用水に廃温水を混合することが好ましい。
また、本発明は、用水を電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器(例えば、ヒートポンプ式給湯システム10の給湯器11、12、13)により加温して目標給湯温度の温水を製造する第1温水製造手段(例えば、第1温水製造手段2)と、前記第1温水製造手段により製造された前記目標給湯温度の温水をガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラ(例えば、蒸気ボイラ装置30)で発生させた蒸気であって、目標蒸気圧力に調整された蒸気で昇温して、前記目標給湯温度よりも高く設定された目標出湯温度の温水を製造する第2温水製造手段(例えば、第2温水製造手段3)と、前記第2温水製造手段により製造された前記目標出湯温度の温水を温水需要箇所に供給する温水供給手段(例えば、温水供給手段301)と、前記温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用手段(例えば、再利用手段303)と、前記第1温水製造手段および前記第2温水製造手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記設定された目標出湯温度に応じて、前記給湯器と前記蒸気ボイラの出力分担を調整する温水の製造および廃温水の再利用システムに関する。
本発明によれば、CO排出量の削減効果が高く、環境への影響も少ない温水の製造および廃温水の再利用方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態の温水の製造および廃温水の再利用システムを示す概略図である。 上記実施形態の給湯器のヒートポンプ回路を示す図である。 上記実施形態の制御部の構成を示す機能ブロック図である。 上記実施形態の貯湯制御の内容を説明するための概略図である。 上記実施形態の貯湯制御における、給湯器の運転台数および補給水総量を模式的に示した図である。 図5示される貯湯制御の変形例を示す図である。 温水製造手段として蒸気ボイラ装置からの蒸気のみを用いてシステムを構築した第1の比較例を示す模式的な図である。 温水製造手段としてヒートポンプ式給湯システムのみを用いてシステムを構築した第2の比較例を示す模式的な図である。 上記実施形態のシステムを示す模式的な図である。 上記実施形態の効果を示すグラフである。 上記実施形態の変形例であり、水処理手段を別の位置に設けた例を示す図である。 本発明の第2実施形態の温水の製造および廃温水の再利用システムを示す概略図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る温水の製造および廃温水の再利用システム1について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
図1は、本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用システム1を示す概略図である。
本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用システム1は、用水をヒートポンプ式給湯システム10により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2により製造された温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気で昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造手段3を備える。さらに、この第2温水製造手段3により製造された温水を温水需要箇所に供給する温水供給手段301と、温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用手段303と、を備える。
第1温水製造手段2は、ヒートポンプ式給湯システム10により構成されており、複数のヒートポンプ式給湯器、本実施形態においては、第1ヒートポンプ式給湯器11、第2ヒートポンプ式給湯器12、第3ヒートポンプ式給湯器13(以下、第1給湯器11、第2給湯器12、第3給湯器13ともいう)を備えている。ヒートポンプ式給湯器11、12、13(以下、給湯器11、12、13ともいう)はそれぞれ、好適には電気駆動の冷媒圧縮機を有し、後述の給水タンク60から供給された用水W1をヒートポンプ式給湯システム10の凝縮器に流通させて第1温度、例えば50~70℃に加温する。
ここで、複数の給湯器11、12、13はいずれも同じ構成であり、いずれの給湯器もヒートポンプ回路90を有する。そこで、これらを代表して、第1給湯器11のヒートポンプ回路90について説明する。
図2に示されるように、第1給湯器11のヒートポンプ回路90は、冷媒圧縮機91と、凝縮器92と、膨張弁93と、蒸発器94を備える。これらの冷媒圧縮機91と、凝縮器92と、膨張弁93と、蒸発器94は、冷媒循環ラインL7によって順次環状に接続されており、これによりヒートポンプ回路90が形成されている。
電気駆動の冷媒圧縮機91は、駆動源としてのモータ95を有しており、フロンガス等のガス状の冷媒Rを圧縮して高温高圧の冷媒にする。凝縮器92は、冷媒圧縮機91からの冷媒Rを凝縮液化する。膨張弁93は、凝縮器92から送られた冷媒Rを通過させることで、冷媒Rの圧力と温度とを低下させる。蒸発器94は、熱源水供給ラインL8を通じて送られてくる熱源水W8を熱源として、膨張弁93から送られる冷媒Rを蒸発させる。なお、図1においては、熱源水供給ラインL8は図示を省略している。
ヒートポンプ回路90の熱源としては、廃温水等の熱源水に限らず、工場設備からの排気ガス(燃焼ガスや排蒸気等)、廃熱を含んだ冷却用空気、廃熱を含まない外気等の各種熱源ガスを用いることが可能である。
なお、蒸発器の構造として、伝熱面が外部に露出されている場合、熱源ガスはファンにより伝熱面に供給(例えば、大気の通風)される。また、蒸発器の構造として、伝熱面が閉鎖空間(例えば、シェル)内に存在している場合、熱源ガスはブロワにより伝熱面に供給される。
このように、第1給湯器11のヒートポンプ回路90は、蒸発器94において、冷媒Rが外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器92において、冷媒Rが外部へ放熱して凝縮している。このような原理を利用して、第1給湯器11のヒートポンプ回路90は、蒸発器94において、熱源水W8から熱をくみ上げ、凝縮器92において、ヒートポンプ給水ラインL3からの用水W1を加温する。そして、凝縮器92を通過することにより加温されて温水となった用水W1は、給湯ラインL1を通じて、後述の温水タンク40に供給される。
なお、この第1給湯器11のヒートポンプ回路90は、冷媒Rの過熱度(冷媒圧縮機91の入口冷媒温度)が一定になるように、あるいは冷媒Rの過冷却度(膨張弁93の入口冷媒温度)が一定になるように、膨張弁93の開度が調整される。
また、この第1給湯器11のヒートポンプ回路90は、その出力が変更可能となっていてもよい。例えば、インバータ制御により、冷媒圧縮機91のモータ95の回転数を変更できるように構成してもよい。
図1に示されるように、各給湯器11、12、13には、各給湯器11、12、13からの給湯温度を検出する給湯温度センサ14、15、16が設けられている。なお、給湯温度センサ14、15、16は、実質的に給湯器11、12、13に設けられていればよく、給湯器11、12、13内に設けてもよいし、給湯器11、12、13の下流側における、合流前の給湯ラインL1に設けてもよい。
複数の給湯器11、12、13により加温されて温水となった用水W1(以下、温水W1ともいう)は、給湯ラインL1によって合流した後、後述の温水タンク40に供給される。
次に、第2温水製造手段3について説明する。第2温水製造手段3は、蒸気ボイラ装置30と、温水タンク40と、蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを温水タンク40に供給する昇温用給蒸ラインL2と、を備える。
蒸気ボイラ装置30は、好適にはガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラであり、例えば、蒸気Sを発生させる複数台の貫流ボイラ31により構成される。
第2温水製造手段3は、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを利用して第1温度よりも高い第2温度まで昇温する。
昇温用給蒸ラインL2は、複数の貫流ボイラ31で発生した蒸気Sが集合する蒸気ヘッダ51と、複数の貫流ボイラ31と蒸気ヘッダ51とを連結する連結ライン52と、蒸気ヘッダ51に集合した蒸気Sを温水タンク40に供給する蒸気供給ライン53と、を備える。そして、蒸気供給ライン53には、昇温用給蒸弁54が設けられている。また、蒸気ヘッダ51には、ヘッダ圧を検出するための圧力計55が設けられている。
温水タンク40は、第1温水製造手段2から供給される温水W1を貯留する。また、この温水タンク40内には、昇温用給蒸ラインL2を介して、蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sが供給される。これにより、温水タンク40内に貯留されている温水TW(以下、貯留水TWともいう)は、第1温度よりも高い第2温度、例えば75~95℃に昇温される。すなわち、温水タンク40内に蒸気Sが吹き込まれることにより、温水タンク40内に貯留されている温水TWと、蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sとの間で直接熱交換が行われ、その結果、温水タンク40内に貯留されている温水TWが昇温する。このとき、直接熱交換によって蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sの全熱、すなわち顕熱および潜熱が利用されて、温水タンク40内に貯留されている温水TWは迅速に昇温する。
この温水タンク40は、貯留されている温水TWの温度を検知する貯湯温度センサ41と、貯留されている温水TWの水位WLを検知する第1水位センサ42を備える。
この温水タンク40内の温水TWは、温水出湯ラインL6を通じて温水需要箇所に供給される。すなわち、この温水出湯ラインL6は、第2温水製造手段2で得た温水を温水需要箇所に供給する温水供給手段301を構成する。なお、温水出湯ラインL6に、不図示のポンプやバルブを設けてもよい。但し、システム1側にはポンプやバルブを設けず、温水需要箇所側にポンプを設けてもよい。なお、温水需要箇所においては、例えば食品や薬品用のびんの洗浄や、パストライザー殺菌(瓶詰の殺菌)などが行われる。
本実施形態のシステム1は、用水を貯留する給水タンク60を備える。給水タンク60に貯留されている用水は、後述する水処理手段320で所要の水処理が行われた後、ヒートポンプ給水ラインL3を介して、給湯器11、12、13に供給される。
各給湯器11、12、13には、各給湯器11、12、13に用水W1を供給するための給水ポンプ17、18、19が設けられている。なお、給水ポンプ17、18、19は、実質的に給湯器11、12、13に設けられていればよく、給湯器11、12、13内の用水ラインに設けてもよいし、各給湯器11、12、13に対応して分岐した後のヒートポンプ給水ラインL3に設けてもよい。
給水ポンプ17、18、19はそれぞれ、例えばインバータ制御により回転数が調整されて駆動し、これにより、給湯器11、12、13への給水量が調整される。なお、各給湯器11、12、13に対応させて流量調整弁を設けて、流量調整弁の開度を制御することにより、給湯器11、12、13への給水量を調整する構成を採用してもよい。流量調整弁を設ける場合、給水ポンプ17、18、19は所定の回転数(駆動周波数一定)で駆動される。
給水タンク60に貯留されている用水は、後述する水処理手段320で水処理が行われた後、ボイラ給水ラインL4を介して、ボイラ給水として蒸気ボイラ装置30に供給される。ボイラ給水ラインL4には、ボイラ給水ポンプ32が設けられている。ボイラ給水ポンプ32は、例えばインバータ制御により、蒸気ボイラ装置30への用水の給水量が調整されるように駆動する。なお、ボイラ給水ポンプ32は、複数台の貫流ボイラ31ごとに設けられていてもよく、蒸気ボイラ装置30内に設けられていてもよい。また、給水量の調整は、流量調整弁によるものとしてもよい。
さらに、本実施形態のシステム1は、給水タンク60に貯留されている用水を、後述する水処理手段320で水処理が行われた後に、加温せずに直接温水タンク40に供給するためのバイパス給水ラインL5を備える。バイパス給水ラインL5には、バイパス給水ポンプ61と、バイパス給水弁62が設けられている。このバイパス給水弁62を開くと、温水タンク40に給水タンク60に貯留されている用水が補給水として補給される。
給水タンク60には、用水供給ラインL30が接続されており、用水供給ラインL30を通じて、給水タンク60に新たな用水(工業用水、水道用水等)が供給される。
また、給水タンク60には廃温水再利用ラインL31が接続されており、廃温水再利用ラインL31を通じて、水浄化処理等が施された廃温水W31が給水タンク60に供給される。これにより、給水タンク60内において、新たな用水と、再利用することになった廃温水W31とが混合する。
なお、本実施形態においては、給水タンク60に供給される廃温水W31として、温水需要箇所から排出された廃温水を再利用している。この廃温水は、第2温水製造手段3から温水需要箇所に供給され、その後回収されたものである。ただし、蒸気ドレン等、他の廃温水が混ぜられていても構わない。
この廃温水W31は、廃温水再利用ラインL31を通じて給水タンク60に供給される。
なお、本実施形態においては、廃温水W31が流通する廃温水再利用ラインL31、給水タンク60、ヒートポンプ給水ラインL3、ボイラ給水ラインL4、バイパス給水ラインL5は、廃温水W31を用水として再利用するための再利用手段303として機能する。なお、再利用手段303を構成する各ラインには、追加のポンプやバルブ等を設けてもよい。
廃温水再利用ラインL31には、水浄化手段310が設けられている。温水需要箇所から排出された廃温水W31は、水浄化手段310により浄化されることにより、再利用に適した状態まで回復する。本実施形態においては、図1に示されるように、水浄化手段310として、第1水浄化手段311および第2水浄化手段312を備える。
[第1水浄化手段311の具体例]
第1水浄化手段311は、第2水浄化手段312に供給される廃温水W31に対して前処理を行う。すなわち、第2水浄化手段312として用いられる膜分離装置の給水として適した水質になるように、廃温水W31を所要の浄化処理を施す。
廃温水W31が塩素系の酸化剤を含む場合、第1水浄化手段311として、還元剤添加装置や活性炭濾過装置を用いることが望ましい。塩素系の酸化剤として汎用されている次亜塩素酸ナトリウムは、膜分離装置に組み込まれている分離膜を酸化劣化させることがある。そこで、膜分離装置に廃温水W31を供給する前に酸化剤を除去しておくことで、分離膜の酸化劣化を防止する。
還元剤添加装置は、廃温水W31に還元剤を添加することにより、廃温水W31に含まれる酸化剤を分解する。利用可能な還元剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムや亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
活性炭濾過装置は、活性炭により廃温水W31に含まれる酸化剤を分解するほか、有機成分を吸着して除去する。活性炭濾過装置としては、例えば粒状活性炭の充填層を有する塔状のものや、繊維状活性炭が充填されたカートリッジを内蔵したものなどを用いることができる。
廃温水W31が懸濁物質を含む場合、第1水浄化手段311として、スクリーン濾過装置や砂濾過装置を用いることが望ましい。温水需要箇所では、温水利用の方法によっては廃温水W31に有機系や無機系の懸濁物質が混入しやすい。これらの懸濁物質は、膜分離装置に組み込まれている分離膜の表面に堆積したり、流路を閉塞させたりすることがある。そこで、膜分離装置に廃温水W31を供給する前に懸濁物質を除去しておくことで、物質分離や流通の阻害を防止する。
スクリーン濾過装置は、金属スクリーンを濾過媒体として用い、廃温水W31に含まれる懸濁物質を捕捉する。金属スクリーンは、定期的に逆洗浄されるようになっており、懸濁物質の排出により濾過性能が回復される。
砂濾過装置は、粒状の濾材を濾過媒体として用い、廃温水W31に含まれる懸濁物質を捕捉する。砂濾過装置としては、例えば硅石等の粗粒濾材と、アンスラサイト、濾過砂等の細粒濾材とから形成された濾床が収容された塔式のものが挙げられる。濾過媒体層は、定期的に逆洗浄されるようになっており、懸濁物質の排出により濾過性能が回復される。なお、廃温水W31がコロイド状の懸濁物質を多く含む場合には、濾過前の廃温水W31に凝集剤(例えば、ポリ塩化ナトリウム)を添加するのが好ましい。
廃温水W31が過度に酸性またはアルカリ性である場合、第1水浄化手段311として、pH調整剤添加装置を用いることが望ましい。シリカを多く含んだ酸性の廃温水W31が膜分離装置で濃縮されると、分離膜の表面にシリカ系スケールが析出しやすくなる。また、カルシウムイオンや炭酸イオンを多く含んだ酸性の廃温水W31が膜分離装置で濃縮されると、分離膜の表面に炭酸カルシウム系スケールが析出しやすくなる。そこで、膜分離装置に廃温水W31を供給する前にアルカリ性物質を中和しておくことで、スケールの析出を防止する。
廃温水W31が油分を含む場合、第1水浄化手段311として、浮上分離装置を用いることが望ましい。温水需要箇所では、温水利用の方法によっては廃温水W31に油分が混入しやすい。油分は、分離膜の表面を汚染し、分離性能を低下させることがある。そこで、膜分離装置に廃温水W31を供給する前に油分を除去しておくことで、物質分離の阻害を防止する。
廃温水W31が微生物の栄養物質を含む場合、第1水浄化手段311として、スライム防止剤添加装置を用いることが望ましい。温水需要箇所では、温水利用の方法によっては廃温水W31にタンパク質などの栄養物質が混入しやすい。栄養物質は、水中で微生物を繁殖させるので、分離膜の表面にバイオフィルム(スライム)が形成されることがある。そこで、膜分離装置に供給する前の廃温水W31にスライム防止剤(例えば、イソチアゾリン系殺菌剤)を添加することで、バイオフィルムの形成を防止する。
第1水浄化手段311として例示した各種の装置は、単独でまたは複数種を組み合わせて使用することができる。複数種を組み合わせる場合は、それぞれの浄化性能が阻害されないように、適切な処理順序を選択する。
[第2水浄化手段312の具体例]
第2水浄化手段312は、廃温水W31を再利用に適した水質(例えば、工業用水レベル)に調整するものである。第2水浄化手段312としては、廃温水W31に対して高度浄化処理が可能な膜分離装置が好ましい。
膜分離装置に利用可能な分離膜としては、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)が挙げられる。これらの分離膜は、一般的に40℃までの耐熱性を有する素材で製造されている。膜分離装置の濾過方式は、分離膜の特性に応じてクロスフロー濾過または全量濾過(デッドエンド濾過)のいずれかが選択される。
MF膜装置は、0.05~10μmの粒子を除去するのに適している。UF膜装置は、0.001~0.1μmの物質を分離するのに適している。RO膜装置およびNF膜装置は、イオンや分子状物質を分離するのに適している。
第2水浄化手段312として例示した各種の装置は、単独でまたは複数種を組み合わせて使用することができる。複数種を組み合わせる場合は、それぞれの浄化性能を考慮して、適切な処理順序を選択する。例えば、温水需要箇所から排出される廃温水W31が比較的汚染されておらず、第1水浄化手段311が不要である場合には、第2水浄化手段312として前段にMF膜装置を配置し、後段にRO膜装置を配置する構成が示される。
このように、水浄化手段310として、廃温水W31の性状(汚染物質の種類・含有量)や再利用時の要求水質を考慮して、種々の浄化装置を採用することができる。そして、水浄化手段310が廃温水W31を浄化することにより、廃温水W31中に含まれる汚染物質は除去される。
なお、水浄化手段310は、第1水浄化手段311と、第2水浄化手段312の、いずれか一方のみであってもよい。水浄化手段310は、一つの水浄化装置により構成してもよいし、複数の水浄化装置により構成してもよい。
水浄化手段310により処理された廃温水W31は、再利用手段303を構成する廃温水再利用ラインL31を通じて給水タンク60に供給され、給水タンク60内において、新たな用水と混合する。
そして、本実施形態のシステム1には、水浄化手段310により浄化された廃温水W31が混合された用水W1を所要の水質に調整するための水処理手段320が設けられている。ここで、水処理手段320は、給水タンク60の下流側であって、ヒートポンプ式給湯システム10の上流側に設けられている。
廃温水W31が混合された用水W1は、ヒートポンプ式給湯システム10により加温された貯留水TWとなり、最終的に温水W6として温水需要箇所に供給されるものである。そのため、水浄化手段310は、用水W1を温水需要箇所での要求水質に調整できるように構成される。さらに、用水W1をボイラ給水としても利用する場合には、水浄化手段310は、温水需要箇所とボイラの両方の要求水質を満足するように構成される。
[水処理手段320の具体例]
用水W1をボイラ給水として利用する場合、水処理手段320として、少なくとも硬水軟化装置を用いることが望ましい。用水供給ラインL30から供給される用水が硬水(カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを硬度成分として含む水)である場合、廃温水W31が混合された用水W1も硬水となっている。そのため、この用水W1をボイラ給水として使用すると、ボイラの伝熱面にスケールが付着して伝熱性能を低下させるおそれがある。そこで、用水W1から硬度成分を除去しておくことで、伝熱の阻害を防止する。
硬水軟化装置は、イオン交換により用水W1に含まれる硬度成分を除去する。硬水軟化装置としては、陽イオン交換樹脂床が収容された塔式のものが挙げられる。樹脂床は、定期的に再生されるようになっており、硬度成分の脱着によりイオン交換能力が回復される。
硬水軟化装置で得られた軟化水は、さらに脱酸素装置により溶存酸素が除去されてもよい。脱酸素装置は、気体分離膜により水中の溶存酸素を低減する装置であり、ボイラの伝熱面に発生する腐食を抑制する。
硬水軟化装置および脱酸素装置で処理された用水W1は脱気軟水となっているため、ヒートポンプ式給湯器の凝縮器92の内部でスケール・腐食によるトラブルを発生させないほか、温水需要箇所においてもスケール・腐食によるトラブルを発生させない。また、加温された軟水は、油脂などに対して高い洗浄能力を有するため、温水洗浄の用途に特に適している。
温水需要箇所に供給される温水W6として、純水の水質レベルが要求される場合、硬水軟化装置で得られた軟水をさらにRO膜装置で処理する。より高い水質レベルの純水が要求される場合、RO装置で得られた一次純水をさらに電気脱イオン装置で処理する。
なお、RO膜装置に替えて、混床式イオン交換装置や2床2塔式イオン交換装置を用いることもできる。
また、水浄化手段310が設けられていない場合には、硬水軟化装置の前段に適当な前処理装置を設けるように構成してもよい。前処理装置としては、例えば砂濾過装置や活性炭濾過装置を設けることができる。
水処理手段320として例示した各種の装置は、単独でまたは複数種を組み合わせて使用することができる。複数種を組み合わせる場合は、それぞれの処理特性を考慮して、適切な処理順序を選択する。例えば、RO膜装置の前段に硬水軟化装置を配置することで、RO膜の表面で炭酸カルシウム系のスケールが生成するのを防止できる。
本実施形態においては、水処理手段320によって処理された用水は、ヒートポンプ給水ラインL3に加えて、ボイラ給水ラインL4、バイパス給水ラインL5にも供給される。
なお、ヒートポンプ給水ラインL3、ボイラ給水ラインL4、バイパス給水ラインL5のそれぞれに、別個の水処理手段320を設けてもよい。この場合は、それぞれの用途に応じた適切な水処理が行われるよう、各ラインに、適切な種類の水処理装置が配置される。
本実施形態のシステム1は、各種の制御を行うための制御部100を備える。図3は、制御部100の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、制御部100は、給湯制御部110と、ボイラ制御部120と、給蒸制御部130と、貯湯制御部140と、を備える。
なお、制御部100は、上述のように複数の機能ブロックにより構成されているが、各ブロックは必ずしも物理的に分かれている必要は無く、複数のブロックの機能を1つのCPUで実現できるように構成してもよい。また、制御部100は、制御対象機器の配置や配線を考慮するなどして、2つ以上に分かれていてもよい。例えば、給湯器やボイラの自立制御の観点からは、給湯制御部110の機能は、各給湯器のローカル制御部に組み込むのが好ましく、ボイラ制御部120の機能は、ボイラ群を制御対象とする台数制御盤に組み込むのが好ましい。
給湯制御部110は、ヒートポンプ式給湯システム10の制御を行う。より詳細には、給湯器11、12、13それぞれの運転の実行および停止等の動作に関する制御を行う。また、給湯制御部110は、給湯温度センサ14、15、16によって検出された検出温度に基づき、給水ポンプ17、18、19を制御して、給湯器11、12、13からの温水W1の給湯量を調整する。この給湯量の調整には、PIDアルゴリズムによるフィードバック制御を用いるのが好適である。
例えば、第1給湯器11について着目すると、給湯制御部110は、給湯温度センサ14によって検出された検出温度が、予め定められた目標給湯温度となるように、給水ポンプ17の回転数を制御して給湯量を調整する。第2給湯器12、第3給湯器13の制御についても同様である。
なお、各給湯器11、12、13に対応させて流量調整弁を設けて、流量調整弁の開度を制御することにより、給湯量の調整を行ってもよい。
これにより、給湯器11、12、13から供給される温水W1は、常に目標給湯温度となるように、目標給湯温度に対応する第1温度まで加温される。
なお、ヒートポンプ回路に投入される熱源の量が少ない場合は、給湯量を絞ることにより、給湯温度が目標給湯温度に維持されるように制御される。
ここで、目標給湯温度は、例えば50~85℃に設定される。より好ましくは、50~70℃である。この好ましい目標給湯温度については、図7~10を用いて後述する。
ボイラ制御部120は、蒸気ヘッダ51に設けられた圧力計55によって検出されたヘッダ圧力値に基づいて、蒸気ボイラ装置30の台数増減制御を行う。より具体的には、ヘッダ圧力値が目標蒸気圧力値となるように、ヘッダ圧力値と目標蒸気圧力値との偏差量を算出し、増減制御するボイラの台数を算出する。この台数増減制御としては、例えば特開2015-140975号公報にも開示されているように公知であるため、ここでは説明を省略する。
給蒸制御部130は、貯湯温度センサ41によって検出された検出温度に基づき、昇温用給蒸弁54の開度を制御する。より詳細には、給蒸制御部130は、貯湯温度センサ41によって検出された検出温度が、予め定められた目標貯湯温度となるように、昇温用給蒸弁54の開度を制御して蒸気Sの供給量を調整する。この供給量の調整にはフィードバック制御を用いるのが好適である。例えば、貯湯温度センサ41の検出温度が目標貯湯温度に収束するように、PIDアルゴリズムにより昇温用給蒸弁54に対する操作量が演算され、給蒸制御部130から昇温用給蒸弁54のアクチュエータ回路へ開度指定信号が出力される。
このような給蒸制御を行うことにより、温水タンク40内の温水TWの温度は、常に目標貯湯温度となるように、目標貯湯温度に対応する第2温度まで加温される。
ここで、目標貯湯温度は、目標給湯温度(第1温度)よりも高い温度であって、75~95℃に設定されることが好ましい。この好ましい目標貯湯温度については、図7~10を用いて後述する。
貯湯制御部140は、第1水位センサ42の検出結果に基づき、バイパス給水弁62、昇温用給蒸弁54、給湯器11、12、13の制御を行う。
図4に示されるように、第1水位センサ42は、複数の電極棒を備える電極式水位検出器により構成されており、第1電極棒421と、第2電極棒422と、第3電極棒423と、第4電極棒424と、第5電極棒425と、を備えている。また、図示はしていないが、共通電極を構成する電極棒や、異常水位を検知するための電極棒をさらに備えていてもよい。
各電極棒421~425は、その下端部が水に浸るか否かにより、温水タンク40内の貯留水TWの水位WLが各電極棒の下端部まで来ているか否かを検出する。
ここで、第1電極棒421が検出する水位を水位LL、第2電極棒422が検出する水位を水位L、第3電極棒423が検出する水位を水位M、第4電極棒424が検出する水位を水位H、第5電極棒425が検出する水位を水位HHとする。そして、図4に示されるように、各電極棒は、下端部の高さ位置が低い方から順に、第1電極棒421、第2電極棒422、第3電極棒423、第4電極棒424、第5電極棒425となるように、温水タンク40内に挿入されている。これらの電極棒が検出する水位は、給湯器11、12、13の運転台数等の変更制御を行うための複数段階の水位閾値となる。
本実施形態においては、第1水位センサ42の検出結果に基づき、貯湯制御部140が、バイパス給水弁62、昇温用給蒸弁54、給湯器11、12、13の制御を行う。より詳細には、貯湯制御部140は、第1水位センサ42が水位LLを下回ったことを検出したときは、バイパス給水弁62を開放する。また、貯湯制御部140は、温水タンク40内の水位下降時は、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階下回るたびに給湯器の運転台数を1台ずつ増加させる台数制御を実行し、温水タンク40内の水位上昇時は、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階上回るたびに給湯器の運転台数を1台ずつ減少させる台数制御を実行する。この台数制御は、水位下降時においては、例えば水位H、水位M、水位Lにおいて、水位上昇時においては、例えば水位M、水位H、水位HHにおいて行われる。
なお、貯湯制御部140は、給蒸制御部130を介して昇温用給蒸弁54を制御してもよい。また、貯湯制御部140は、給湯制御部110を介して給湯器11、12、13を制御してもよい。
ここで、温水タンク40内の水位WLが、例えば図4に示される水位LL~水位Lの範囲内に位置している状況から変動する場合について具体的に説明する。
ここでは、給水タンク60内の用水が冷水である場合について記載する。
温水タンク40に貯留されている貯留水TWは、温水出湯ラインL6を通じて、不図示の温水需要箇所に供給される。そして、温水タンク40から温水需要箇所に供給される温水W6の量が、第1温水製造手段2としての複数の給湯器11、12、13から温水タンク40に供給される温水W1および蒸気ボイラ装置30から温水タンク40に供給される蒸気Sの水分の量を上回ると、温水タンク40内の水位WLは下降していく(図4の矢印Aを参照。)。そしてあるタイミングにおいて、第1電極棒421の下端部が水面から露出すると、第1水位センサ42は、水位WLが水位LLを下回ったことを検出する。
貯湯制御部140は、水位WLが水位LLを下回ったことを検出すると、温水タンク40が渇水直前の状態になったと判断し、給湯器11、12、13を3台全て運転状態として温水タンク40に可能な限りの温水W1を供給すると共に、バイパス給水弁62を開放し、給水タンク60に貯留されている冷水W5を直接温水タンク40に補給する。さらに、冷水W5が供給されることにより温水タンク40内の貯留水TWの温度が低下することを考慮し、昇温用給蒸弁54を全開にして、温水タンク40に可能な限りの蒸気Sを供給する。なお、給蒸制御部130は、このときにおいては、貯湯温度センサ41が検出した温度によらずに、昇温用給蒸弁54の開度を全開とする制御を行う。
このように、水位WLが水位LLを下回ったとき、すなわち、温水タンク40が渇水直前の状態になった場合は、第1温水製造手段2により加温された温水W1を供給すると共に、第1温水製造手段2を介していない冷水W5も供給することにより、迅速に水位WLの回復を図る。また、昇温用給蒸弁54を全開として蒸気Sを供給することにより、冷水W5の供給により温度の低下した温水タンク40内の貯留水TWを、極力早期に昇温する。
このような制御を行うことにより、水位WLは回復していく(図4の矢印Bを参照。)。そして、水面が第2電極棒422と接触し、第2電極棒422の先端が水面の中に浸ると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Lを上回ったことを検出する。
貯湯制御部140は、水位WLが水位Lを上回ったこと(水位L~水位Mの範囲内に入ったこと)を検出すると、温水タンク40が渇水直前の状態からは脱したと判断し、バイパス給水弁62を閉じる。また、昇温用給蒸弁54の制御を、貯湯温度センサ41の検出温度に基づく通常の温度制御に戻す。なお、この時点では、依然として水位WLは高いとはいえない状況であるため、給湯器11、12、13については、3台全ての運転を継続する。
次に、さらに水位WLが上昇し、第3電極棒423の先端が水面の中に浸ると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Mを上回ったこと(水位M~水位Hの範囲内に入ったこと)を検出する。
このとき、貯水量に少し余裕がでてきたと判断し、3台中1台の給湯器の運転を停止し、2台の給湯器のみ、運転を継続する。例えば、給湯器11、12、13のうち、第3給湯器13の運転を停止し、第1、第2給湯器11、12のみ運転を継続する。なお、バイパス給水弁62は閉じたままの状態を維持する。また、昇温用給蒸弁54の制御も、給蒸制御部130による通常の温度制御状態を維持する。
次に、さらに水位WLが上昇し、第4電極棒424の先端が水面の中に浸ると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Hを上回ったこと(水位H~水位HHの範囲内に入ったこと)を検出する。
このとき、貯水量にさらに余裕がでてきたと判断し、3台中2台の給湯器の運転を停止し、1台の給湯器のみ、運転を継続する。例えば、給湯器11、12、13のうち、第2、第3給湯器12、13の運転を停止し、第1給湯器11のみ運転を継続する。なお、バイパス給水弁62は閉じたままの状態を維持する。また、昇温用給蒸弁54の制御は給蒸制御部130による通常の温度制御状態を維持する。
次に、さらに水位WLが上昇し、第5電極棒425の先端が水面の中に浸ると、第1水位センサ42は、水位WLが水位HHを上回ったことを検出する。
このとき、貯水量は十分な量になったと判断し、さらにもう1台の給湯器の運転を停止する。すなわち、給湯器11、12、13全ての運転を停止する。なお、バイパス給水弁62は閉じたままの状態を維持する。また、昇温用給蒸弁54の制御は、給蒸制御部130による通常の温度制御状態を維持する。
次に、この状態から、水位WLが下降していく場合について説明する。
水位WLが下降し(図4の矢印Cを参照。)、第4電極棒424の下端部が水面から露出すると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Hを下回ったこと(水位M~水位Hの範囲内に入ったこと)を検出する。
貯湯制御部140は、水位WLが水位Hを下回ったことを検出すると、3台の給湯器のうち、1台の給湯器のみ運転を再開する。例えば、給湯器11、12、13のうち、第1給湯器11の運転を再開する。
ここで、水位WLが水位Hを下回った後、仮に水位WLが上昇し、第5電極棒425の先端が水面の中に浸ると、すなわち水位WLが水位HHを上回ったことを検出すると、貯水量は再び十分な量になったと判断し、前述と同様、給湯器11、12、13全ての運転を停止する。
一方、水位WLが水位Hを下回った後、水位WLがさらに下降し(図4の矢印Dを参照。)、第3電極棒423の下端部が水面から露出すると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Mを下回ったこと(水位L~水位Mの範囲内に入ったこと)を検出する。
貯湯制御部140は、水位WLが水位Mを下回ったことを検出すると、3台の給湯器のうち、2台の給湯器のみ運転を実行する。例えば、給湯器11、12、13のうち、第1、第2給湯器11、12の運転を実行する。
この状態から、水位WLがさらに下降し、第2電極棒422の下端部が水面から露出すると、第1水位センサ42は、水位WLが水位Lを下回ったこと(水位LL~水位Lの範囲内に入ったこと)を検出する。
貯湯制御部140は、水位WLが水位Lを下回ったことを検出すると、3台全ての給湯器11、12、13の運転を実行する。
この状態から、水位WLがさらに下降し、第1電極棒421の下端部が水面から露出した場合、すなわち水位WLが水位LLを下回ったことを検出した場合は、貯湯制御部140は、温水タンク40が渇水直前の状態になったと判断し、前述と同様、給湯器11、12、13を3台全て運転状態とすると共に、バイパス給水弁62を開放する。さらに、昇温用給蒸弁54を全開にする。
このように、温水タンク40内の水位WLに応じて給湯器の運転台数を増減させるため、適切に温水タンク40内の水位WLの管理を行うことができる。また、消費電力を抑えることができる。
なお、貯湯制御部140は、図4に示されるように、所定の水位帯における給湯器の運転台数を、水位上昇時と水位下降時とでずらしている。例えば、水位L~水位Mの間の水位帯においては、水位上昇時の運転台数が3台である一方、水位下降時の運転台数が2台となっている。これは、水位WLが水位閾値付近で変動する場合において、給湯器の運転開始と運転停止が頻繁に実行されてしまう状況を防ぐためである。これにより、給湯器および温水供給の給水制御機器(給水ポンプや給水弁等)の故障リスクが低減する。
なお、所定の水位帯における給湯器の運転台数を、水位上昇時と水位下降時とでずらすことに換えて、状態確認時間を設けてもよい。すなわち、水位WLが所定の水位閾値を下回っている状態が第1所定時間継続したと判定された場合に、給湯器の運転台数を切り替える等の制御を実行する構成としてもよい。
例えば、図4の矢印Cに示されるような水位WLの下降過程において、水位WLが水位HHを下回っている状態が所定時間継続したと判定された場合に、給湯器の運転台数を0台から1台に切り替える。このように状態確認時間を設けることにより、例えば所定の水位帯としての水位H~水位HHの水位帯における給湯器の運転台数を、水位上昇時と水位下降時とで同じにしても、給湯器の運転開始と運転停止が頻繁に実行されてしまう状況を防ぐことができる。なお、他の水位閾値においても同様に状態確認時間を設ける。
なお、水位WLが所定の水位閾値を上回っている状態が第2所定時間継続したと判定された場合に、給湯器の運転台数の切り替える等の制御を実行する構成を採用してもよい。例えば、図4の矢印Bに示されるような水位WLの上昇過程において、水位WLが水位LLを上回っている状態が所定時間継続したと判定された場合に、バイパス給水弁62を閉じ、昇温用給蒸弁54の制御を温度制御に戻してもよい。さらに水位WLが上昇し、水位Lを上回っている状態が所定時間継続したと判定された場合に、給湯器の運転台数を3台から2台に切り替えてもよい。なお、他の水位閾値においても同様に状態確認時間を設ける。
このような制御により、水位WLの下降継続の状態確認時間、または上昇継続の状態確認時間に基づいて、給湯器の運転台数の変更等の制御を行うことができる。
そして、状態確認時間の設定値は、調整可能となっていることが好ましい。状態確認時間の設定値を調整可能とすることにより、水位閾値を下回ったときに、温水タンク40の断面積による水位の下降速度の違いを考慮して、水位の下降継続の確認に必要な水位幅に対応する遅延時間としての第1所定時間を設定することができる。または、水位閾値を上回ったときに、温水タンク40の断面積による水位の上昇速度の違いを考慮して、水位の上昇継続の確認に必要な水位幅に対応する遅延時間としての第2所定時間を設定することができる。
この状態確認時間の設定値は、手動または自動で調整可能であり、0よりも大きい値を設定することができる。なお、状態確認時間の計測は、制御部100の内部タイマ等を用いて実施する。
なお、第1水位センサ42は、電極式水位検出器に限らず、各種の水位検出器を採用することが可能である。例えばフロート式の水位検出器を5つ設けて、各水位閾値を検出できるようにしてもよい。また、電極式水位検出器とフロート式の水位検出器を組み合わせて使用してもよい。さらに、連続的な水位を測定可能な圧力式水位センサ等の水位検出部を用いて、複数の水位閾値を検出してもよい。なお、検出する水位閾値の数は、5つに限らない。
図5は、水位上昇時における、給湯器11、12、13の運転台数および補給水総量を模式的に示した図である。横軸が温水タンク40内の水位WL、縦軸が補給水総量となっている。図5においては、第1ヒートポンプ式給湯器11から供給される温水量を「HP1」、第2ヒートポンプ式給湯器12から供給される温水量を「HP2」、第3ヒートポンプ式給湯器13から供給される温水量を「HP3」と表記している。
水位LLを下回った後、水位WLが上昇している場合においては、図5に示されるように、水位WLが水位Lを上回るまでは、3台の給湯器11、12、13から温水W1が供給され、かつ給水タンク60から冷水W5が直接供給され、さらに昇温用給蒸弁54が全開の状態で、蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sが供給される。このときの補給水総量は、図5の縦軸に示されるとおりである。
その後、水位WLが水位Lを上回ると、バイパス給水弁62を閉じ、昇温用給蒸弁54の制御を温度制御に戻す。よって、補給水総量は、図5に示されるように減少する。
さらにその後、水位WLが水位Mを上回ると、第3給湯器13の運転を停止し、第1、第2給湯器11、12の運転のみを継続する。よって、補給水総量は、図5に示されるようにさらに減少する。また、給水タンク60から直接供給された冷水W5の影響も減ってくるため、温水タンク内の貯湯温度に基づいて調整される蒸気Sの供給量も徐々に減少する。
さらにその後、水位WLが水位Hを上回ると、さらに第2給湯器12の運転を停止し、第1給湯器11の運転のみを継続する。よって、補給水総量は、図5に示されるようにさらに減少する。
そして、水位WLが水位HHを上回ると、第1給湯器11の運転も停止し、3台全ての給湯器の運転を停止する。ただし、このときも昇温用給蒸弁54の温度制御は継続しているため、蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sの供給は継続している。
なお、本実施形態においては、給湯器11、12、13からの給湯温度は一定となるように制御されている。例えば、目標給湯温度が70℃に設定されている。給湯器11、12、13は、この目標給湯温度に対応する第1温度の温水W1を給湯する。
なお、上述の給湯器の運転の停止には、給水ポンプ17、18、19の駆動を停止することや、各給湯器11、12、13に対応する流量調整弁を閉じることなど、給湯器からの給湯を停止する動作も含まれる。また、冷媒圧縮機91の駆動を停止して、ヒートポンプ回路の冷媒循環を停止することも含まれる。
なお、給湯器11、12、13のうち、どの給湯器の運転停止/再開を優先して実行するかについては、各給湯器の状態や動作履歴等を踏まえて、適宜決定する構成を採用してもよい。また、予め定めておいても良い。
このように、温水タンク40内の水位WLに応じて給湯器の運転台数を増減する等の制御を行うため、適切に温水タンク40内の水位WLの管理を行うことができる。また、消費電力を抑えることができる。
図6は、図5に示される貯湯制御の変形例である。この変形例においては、図6に示されるように、より細かく水位閾値を検出する構成が採用されていてもよい。ここでは、低い水位から順に、水位LL、水位L、水位M1、水位M2、水位M3、水位M4、水位H、水位HHが水位閾値として検出可能に設定されている。
そして、この変形例においては、給湯器の運転台数の変更に加えて、給湯器の目標給湯温度を変更する制御を行う。具体的には、給湯器は、第1温度よりも高く第2温度よりも低い温度範囲で複数段階の目標給湯温度を切り替え可能とされている。
より詳細には、この変形例においては、給湯器の目標給湯温度を第1温度に設定した状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階上回ると、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御を実行し、給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させた状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が前記水位閾値を1段階上回ると、給湯器の運転台数を1台減少させると同時に、目標給湯温度を第1温度に戻す制御を実行する。また、給湯器の目標給湯温度を第1温度に設定した状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階下回ると、給湯器の運転台数を1台増加させると同時に、給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御を実行し、給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させた状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階下回ると、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階下降させる制御を実行する。
図6は、水位上昇時における、給湯器11、12、13の運転台数、給湯温度および補給水総量を模式的に示した図である。
例えば、水位WLが水位LLを下回った後、水位WLが上昇し、水位Lから水位M1の間に位置している場合について検討する。このとき、3台の給湯器11、12、13の目標給湯温度は70℃(第1温度)に設定されている。
この状態から水位WLがさらに上昇し、水位M1を上回ると、給湯器11、12、13の運転台数を維持したまま給湯器11、12、13の目標給湯温度を1段階上昇させて80℃とする制御を実行する。ここで、1段階上昇させたときの温度は、温水タンク40の目標貯湯温度(第2温度)よりも低い温度とする。
次に、給湯器11、12、13の目標給湯温度を1段階上昇させて80℃とした状態で運転中、水位WLがさらに上昇し、水位M2を上回ると、給湯器の運転台数を1台減少させると同時に、目標給湯温度を70℃(第1温度)に戻す制御を実行する。
さらに水位WLが上昇していく場合においても、同様に、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御と、給湯器の運転台数を1台減少させると同時に目標給湯温度を戻す制御を、交互に実行する。
次に、水位WLが水位HHを上回った後、水位WLが下降し、例えば水位WLが水位M4から水位Hの間に位置する状況において、給湯器の目標給湯温度は70℃(第1温度)に設定されている場合について検討する。
なお、ここでは、前述の状態確認時間の手法を利用し、所定の水位帯における給湯器の運転台数を、水位上昇時と水位下降時とで同じにした場合について説明する。よって、水位下降時についても図6を用いて説明する。
水位WLが水位M4から水位Hの間に位置する状況からさらに水位WLが下降し、水位M4を下回ると、給湯器の運転台数を1台増加させて2台運転すると同時に、給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させて80℃とする制御を実行する。
次に、給湯器の目標給湯温度を80℃とした状態で運転中、水位WLが水位M3を下回ると、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階下降させて70℃に戻す制御を実行する。
さらに水位WLが下降していく場合においても、同様に、給湯器の運転台数を1台増加させて、給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御と、給湯器の運転台数を維持したまま目標給湯温度を戻す制御を、交互に実行する。
なお、本変形例では、状態確認時間の手法を用いているが、これに限らず、図4において説明した場合と同様に、所定の水位帯における給湯器の運転台数を、水位上昇時と水位下降時とでずらす手法を用いてもよい。
また、水位上昇時において、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御をした後、さらに水位が上昇した場合において、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度をさらに1段階上昇させる制御を行ってもよい。
例えば、水位M1を上回ると、給湯器11、12、13の運転台数を維持したまま給湯器11、12、13の目標給湯温度を1段階上昇させて75℃とする制御を実行する。そしてこの状態で運転中、水位WLがさらに上昇し、水位M2を上回ると、給湯器11、12、13の運転台数を維持したまま給湯器11、12、13の目標給湯温度をさらに1段階上昇させて80℃とする制御を実行する。さらにこの状態で運転中、水位WLがさらに上昇し、水位M3を上回ると、給湯器の運転台数を1台減少させると同時に、目標給湯温度を70℃(第1温度)に戻す制御を実行する。
そして、水位下降時においては、この逆の動作を行うように制御を実行する。
すなわち、給湯器の目標給湯温度を第1温度に設定した状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階上回ると、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階上昇させる制御を実行し、給湯器の目標給湯温度を1段階以上上昇させた状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が前記水位閾値を1段階上回ると、給湯器の運転台数を1台減少させると同時に、目標給湯温度を第1温度に戻す制御、または前記給湯器の運転台数を維持したまま、前記給湯器の目標給湯温度をさらに1段階上昇させる制御を実行する。また、給湯器の目標給湯温度を第1温度に設定した状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階下回ると、給湯器の運転台数を1台増加させると同時に、給湯器の目標給湯温度を1段階以上(例えば2段階)上昇させる制御を実行し、給湯器の目標給湯温度を1段階以上(例えば2段階)上昇させた状態で運転中、第1水位センサ42の検出水位が水位閾値を1段階下回ると、給湯器の運転台数を維持したまま給湯器の目標給湯温度を1段階下降させる制御を実行してもよい。
一般に、給湯器の目標給湯温度を上げると給湯可能な量が減り、給湯器の目標温度を下げると給湯可能な量が増える。このことも考慮し、本変形例に示されるような制御を採用することにより、ヒートポンプの運転台数を極力同じ台数に維持した上で、細かく補給水総量を調整することが可能となる。よって、適切に温水タンク内の水位の管理を行うことができる。また、ヒートポンプの運転を極力継続することが可能であることから、ヒートポンプの運転再開初期の低温水供給の問題を解消することができる。
以上の制御が貯湯制御の説明となる。ここまで、給水タンク60内の用水が冷水である場合について説明した。この場合は、上述のとおり、温水タンク40内の水位WLが水位LLを下回ったことを検出すると、給水タンク60に貯留されている用水が、用水W5(冷水W5)として、バイパス給水ラインL5を通じて温水タンク40内に直接供給される。よって、温水タンク40内の貯留水TWの温度が低下しやすい。
ただし、本実施形態においては、廃温水W31が給水タンク60に供給されている。したがって、廃温水W31の温度と、その混合割合に応じて、給水タンク60内の用水の温度は、通常よりも高めの温度となる。よって、給水タンク60に貯留されている用水がバイパス給水ラインL5を通じて温水タンク40内に供給されることによる、温水タンク40内の貯留水TWの温度の低下量も緩和する。
また、給水タンク60内の用水をヒートポンプ式給湯器11、12、13の用水として使う場合、あるいは蒸気ボイラ装置30のボイラ給水として使う場合においても、給水タンク60内の用水の温度が通常よりも高めの温度となっているため、加温等が容易となる。これらの場合においては、廃温水W31の持つ熱を、温水の製造および廃温水の再利用システム1として有効活用していることになる。
よって、本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用方法は、以上のような観点からも、CO排出量の削減効果、ランニングコストの削減効果が高い方法であるといえる。
制御部100は、水浄化手段310、水処理手段320等のその他の構成要素が制御を必要とする場合は、これらを制御する。
次に、本発明の第1実施形態に係るシステム1を用いて行われる温水の製造および廃温水の再利用方法の工程について、図1を用いて説明する。
本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用方法においては、用水W1をヒートポンプ式給湯器11、12、13により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造工程と、第1温水製造工程で得た温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sで昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造工程と、第2温水製造工程で得た温水W6を温水需要箇所に供給する温水供給工程と、温水需要箇所から排出された廃温水W31を用水W1として再利用する再利用工程と、が行われる。
より詳細には、第1温水製造手段2を構成するヒートポンプ式給湯器11、12、13が、上述の第1温水製造工程を実行し、蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを利用する第2温水製造手段3が、上述の第2温水製造工程を実行する。
さらに、本実施形態においては、廃温水W31を用水W1として再利用する再利用工程においては、水浄化手段310による水処浄工程を経た廃温水W31を再利用する。
そして、第1温水製造手段2による第1温水製造工程で加温される前の用水W1に対して、水処理手段320による水処理工程が行われる。
なお、第1温水製造手段2による第1温水製造工程で用いられる用水W1に、再利用工程で再利用することになった廃温水W31を含める場合、再利用工程において、水処理手段320による水処理工程で処理される前の用水W1に廃温水W31を混合してもよい。
なお、第1温水製造手段2による第1温水製造工程で用いられる用水W1に、再利用工程で再利用することになった廃温水W31を含める場合、再利用工程において、水処理手段320による水処理工程で処理された後かつ第1温水製造工程で加温される前の用水W1に廃温水W31を混合してもよい。
これらの工程により、出湯温度を高めた場合であっても、CO排出量の削減効果が高く、環境への影響も少ない温水の製造および廃温水の再利用方法を提供することができる。
以上のように、本実施形態のシステム1は、用水W1をヒートポンプ式給湯システム10の凝縮器に流通させながら、第1温度まで加温する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを利用して第1温度よりも高い第2温度まで昇温する第2温水製造手段3と、を備える。
図7~10を用いて、この構成を採用する効果を詳細に説明する。
図7は、温水製造手段として蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sのみを用いてシステムを構築した第1の比較例である。
温水需要箇所側が求める温水の温度は、その用途によって異なるが、例えば食品や薬品用のびんの洗浄、パストライザー殺菌(瓶詰の殺菌)等を行う場合は、75℃~95℃程度の高温域の温水が求められることがある。そこで、システムが、高温域の温水、例えば90℃の温水を温水需要箇所側に供給するケースについて説明する。
図7の温水製造システム5は、加温手段として蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sのみを利用している。ここで、蒸気ボイラは、ガス燃焼または油燃焼のバーナを有し、化石燃料を使用して蒸気を発生するものである。そのため、この温水製造システム5のCO排出量およびランニングコストは比較的高い値となっており、大幅な削減が求められている。
そこで加温手段として、化石燃料を使用せず、COP(エネルギー消費効率)が高い電気駆動のヒートポンプ式給湯システム10を用いた温水製造システムを採用することが考えられる。
図8は、加温手段として、ヒートポンプ式給湯システム10のみを用いて温水製造システム6を構築した第2の比較例である。電力のCO排出係数(0.51kgCO/kWh)は、都市ガス13AのCO排出係数(0.18kgCO/kWh)よりも大きいが、出力当たりのCO排出量で比較すると、COPの高いヒートポンプの方が蒸気ボイラよりも少なくなる。また、電力単価(15円/kWh程度)は、都市ガス13Aの燃料単価(6.2円/kWh程度)よりも高いが、出力当たりのランニングコストで比較すると、COPの高いヒートポンプの方が蒸気ボイラよりも安くなる。そのため、温水製造システム6は、図7の温水製造システム5よりは、CO排出量およびランニングコストが低下する。
ただし、ヒートポンプは、給湯温度が低ければCOPは相対的に高く、CO排出量の削減効果が高いものの、給湯温度を高めて使用する場合は、COPは相対的に低くなり、CO排出量の削減効果が低下する。
例えば、90℃の温水を給湯する場合におけるヒートポンプのCOPは、一例として2.8相当である。よって、加温手段として蒸気ボイラからの蒸気のみを利用する温水製造システム5と比較したときのCO排出量の削減効果(CO排出削減比)は10%程度に留まる。また、ランニングコストの削減効果(ランニングコスト削減比)も20%程度に留まる。
次に、本実施形態のシステム1、すなわち、用水W1をヒートポンプ式給湯システム10の凝縮器に流通させながら第1温度まで加温する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを利用して第1温度よりも高い第2温度まで昇温する第2温水製造手段3と、を備えるハイブリッド温水製造システムについて検討する。
このようなシステム1であれば、第1温水製造手段2としてのヒートポンプ式給湯システム10が、高効率で運転できる温度帯まで、例えば70℃まで用水W1を加温し、この加温された温水W1を、蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sを利用して高温域まで、例えば90℃まで昇温することが可能であり、高温域の温水を高効率で製造することができる。
ここで、給湯温度が70℃の場合におけるヒートポンプのCOPは、一例として4.2相当であり、非常に高い。本実施形態のシステム1においては、ヒートポンプは、このような高いCOPを維持できる温度帯までの加温を受け持つ。
例えば、システム1として90℃の温水を製造したい場合において、ヒートポンプは70℃までの加温を受け持つ。このとき、ヒートポンプは、90℃の温水を製造するのに必要な総熱出力の60%~80%(負荷率60%~80%)程度を受け持つこととなる。
そして、70℃から90℃までの昇温は、蒸気ボイラが受け持つ。このとき、蒸気ボイラは、90℃の温水を製造するのに必要な総熱出力の20%~40%(負荷率20%~40%)程度を受け持つこととなる。
そして、ヒートポンプと蒸気ボイラをこのような組合せで用いたときのシステム1は、温水製造手段として蒸気ボイラからの蒸気のみを利用するシステム5と比較して、CO2排出量の削減効果が30%程度となり、その削減効果は非常に高い。また、ランニングコストの削減効果についても35%程度となり、その削減効果は非常に高い。
このように、本実施形態のシステム1を使用することにより、出湯温度を高めた場合であっても、CO排出量、ランニングコストを極めて効果的に削減することができる。
また、本実施形態のシステム1であれば、目標とする出湯温度に応じて、ヒートポンプと蒸気ボイラの出力割合、すなわちそれぞれの受け持ち分(出力分担)を適切に調整することにより、極めて効果的にCO排出量の削減、ランニングコストの削減を実現することができる。
システム1の目標出湯温度に応じたヒートポンプと蒸気ボイラの負荷率の関係は、テーブルや計算式により記憶されていることが好ましい。例えば、目標出湯温度を設定可能な構成とし、設定された目標出湯温度に応じて、適切なヒートポンプと蒸気ボイラの負荷率が設定される。
図10は、本実施形態のシステム1を用いて、例えば90℃の温水を製造して出湯する場合における、CO排出削減比およびランニングコスト削減比を示すグラフである。
図10のグラフの横軸は、ヒートポンプの給湯温度である。そして、図10の折れ線グラフの縦軸は、CO排出削減比およびランニングコスト削減比である。
ここで、CO排出削減比は、加温手段として蒸気ボイラからの蒸気のみを利用する温水製造システム5のCO排出量を100%とした場合に、本実施形態の温水製造システム1で削減できたCO排出量の割合を示している。すなわち、CO排出削減比が25%であれば、温水製造システム1への転換を図ることで、100%のCO排出量を75%まで削減できることを意味している。
一方、ランニングコスト削減比は、加温手段として蒸気ボイラからの蒸気のみを利用する温水製造システム5のランニングコストを100%とした場合に、本実施形態の温水製造システム1で削減できたランニングコストの割合を示している。すなわち、ランニングコスト削減比が30%であれば、温水製造システム1への転換を図ることで、100%のランニングコストを70%まで削減できることを意味している。
そして、図10の棒グラフの縦軸は、ヒートポンプと蒸気ボイラの出力割合、すなわち、それぞれの熱出力の受け持ち分(出力分担)を示す。
ヒートポンプの出力割合を示す棒グラフには、そのヒートポンプの給湯温度におけるCOPが付記されている。給湯温度が高くなるほど、COPは低下する。
図10の折れ線グラフにおいて、ヒートポンプ給湯温度=90℃のデータと、ヒートポンプ給湯温度=50℃~80℃のデータを比較すると、ヒートポンプのみを用いて90℃の温水を製造する場合(ヒートポンプ給湯温度=90℃のデータ)に比べて、ヒートポンプで50~80℃まで加温し、その後蒸気を利用して90℃まで昇温した方が、明らかにCO削減効果が高く、またランニングコスト削減効果が高いことが理解できる。例えば、ヒートポンプで50~70℃まで加温し、その後蒸気を利用して90℃まで昇温すれば、CO削減効果、ランニングコスト削減効果は高い。
さらに、折れ線グラフの傾向からして、例えばヒートポンプで85℃まで加温し、その後蒸気を利用して90℃まで加温した場合であっても、本発明の効果が得られることを理解することができる。
このように、本実施形態のシステム1、すなわち、用水W1をヒートポンプ式給湯システム10の凝縮器に流通させながら、第1温度まで加温する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを利用して第1温度よりも高い第2温度まで昇温する第2温水製造手段と、を備えたハイブリッド温水製造システムを使用することにより、システムとしての出湯温度を高める場合であっても、CO排出量、ランニングコストを極めて効果的に削減することができる。
そして、本実施形態のシステム1の第1温水製造手段2は、用水W1をヒートポンプ式給湯器の凝縮器に貫流させながら、第1温度まで加温している。
第2温水製造手段3で加温された温水が凝縮器に再び戻ることなく、貫流させる構成、すなわち一過流通させる構成を採用することにより、第1温水製造手段2により加温された第1温度の温水W1が常に追加的に供給され、これを第2温水製造手段3で昇温する構成となる。よって、温水需要箇所が要求する出湯量が多い場合においても、常に安定した温度の温水を出湯することが容易となる。
また、温水タンク40を備える場合においては、温水タンク40内の水位WLが低下してきても、その低下のレベルに応じて、第1温水製造手段2により加温された第1温度の温水W1が常に追加的に温水タンク40内に供給される。よって、この構成であれば、温水タンク40内に冷水W5を供給せざるを得ない状況が発生する頻度が少なくなる。したがって、冷水W5の供給により、温水タンク40内の貯留水TWの温度が極端に低下することも少ない。
ただし、用水W1をヒートポンプ式給湯器の凝縮器に循環させながら、第1温度まで加温する構成を採用してもよい。このような構成であっても、CO排出量の削減効果が高く、環境への影響も少ない温水の製造および廃温水の再利用方法を提供するという効果を得ることができる。なお、この場合は、水浄化処理等が施された廃温水W31は、ボイラ給水やバイパス給水といった用途などで再利用される。また、給湯器の凝縮器を循環する用水を貯留する循環水貯留タンクを有する場合は、この循環水貯留タンクに水浄化処理等が施された廃温水W31を供給してもよい。
そして、本実施形態のシステム1の第2温水製造手段3は、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sと直接熱交換させて第1温度よりも高い第2温度まで昇温している。
このように、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sと直接熱交換させることにより、第1温水製造手段2で加温された用水W1は迅速に昇温する。すなわち、蒸気Sの全熱(顕熱および潜熱)が利用されることにより、第1温水製造手段2で加温された用水W1は迅速に昇温する。よって、出湯温度の制御応答性も向上する。
なお、このような効果を得る上で、給湯器として、電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器を用い、蒸気ボイラとして、ガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラを用いることが特に好ましい。
そして、第1温度を50~85℃とし、第2の温度を、第1温度よりも高い温度であって、75℃~95℃とすることで、本発明の効果を適切に得ることができる。好ましくは、第1温度を50~80℃とし、前記第2温度を、第1温度よりも高い温度であって、75~95℃とする。さらに好ましくは、第1温度を50~70℃とし、前記第2温度を75~95℃とする。
このように、電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器と、化石燃料を燃焼させるバーナを有する蒸気ボイラを組み合わせ、それぞれで加温する温度範囲を適切に設定することで、ヒートポンプ式給湯器単独で、あるいは蒸気ボイラ単独で高温水を製造する場合に比べて、高いCO排出量の削減効果と高いランニングコストの削減効果を得ることができる。
なお、本実施形態においては、水処理手段320は、給水タンク60の下流側に配置されていたが、水処理手段を配置する位置はこれに限らない。例えば、廃温水W31が水浄化手段310のRO膜装置等で高度浄化されている場合には、用水供給ラインL30に水処理手段320を設けてもよい。
図11は、図1の変形例であり、水処理手段320を、用水供給ラインL30に設けた場合の例を示している。この場合、給水タンク60において、水処理手段320で水処理された後かつ第1温水製造手段2で加温される前の用水に、廃温水W31を混合することができる。
このような構成であっても、廃温水W31を用水の一部として再利用することにより、省水を図ることができる。
なお、本実施形態のシステム1は、第2温水製造手段3として、温水タンク40を備えていることが好ましいが、温水タンク40を設けず、給湯ラインL1を流れる温水W1に直接給蒸を行う構成を採用してもよい。
なお、適切な貯湯制御を行う上で、ヒートポンプ式給湯システム10を構成する給湯器は、複数台有することが好ましいが、1台であってもよい。1台の場合は、本実施形態において説明した複数台の給湯器による制御は行わず、温水タンク40の水位WLに基づく給湯量の制御や、給湯のオンオフ制御等が行われる。
なお、給湯器を複数台とする場合は、2台以上の任意の台数とすることができる。
なお、蒸気ボイラ装置30を構成するボイラは、複数台有することが好ましいが、1台であってもよい。1台の場合は、測定された蒸気圧力値と、目標蒸気圧力値に基づき、燃焼率の制御等が行われてもよい。
なお、複数台のボイラを用いる場合は、2台以上の任意の台数とすることができる。
また、蒸気ボイラ装置30を構成するボイラは、貫流ボイラ以外のボイラであってもよい。
なお、製造した温水は、食品や薬品用のびんの洗浄用、パストライザー殺菌用に限らず、各種の用途に使用することができる。すなわち、製造した温水は、種々の温水需要箇所に適用することできる。
例えば、食品・飲料分野における温水利用であれば、原材料・加工品の加温、洗びん、製造機器の定置洗浄(CIP)などの用途に利用することができる。
また、食品・飲料分野における蒸気利用であれば、蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを高温調理(揚げ物、蒸し物、炒め物)、レトルト釜殺菌(パウチや缶詰の殺菌)、製造設備の定置殺菌(SIP)、温水製造のバックアップなどに利用することができる。
そして、機械分野における温水利用であれば、湯洗・脱脂などの用途に利用することができる。
これらの用途においても、75℃~95℃程度の高温域の温水が求められることがあり、このような高温域の温水を必要とする場合において、本実施形態のシステム1は特に好適に利用可能である。
なお、本実施形態においては、ヒートポンプ式給湯システム用、ボイラ給水用、バイパス給水用の給水タンクとして、一つの給水タンク60を共通で用いているが、それぞれの用途に対応させて、それぞれ別個の給水タンクを設けてもよい。この場合は、廃温水再利用ラインL31をどの給水タンクに接続するかに応じて、廃温水W31を、どの用途の用水として再利用するか、選択することができる。
なお、用水は、事業所内の生産活動に用いる水を指し、廃温水W31は、システム1において用いられる、ヒートポンプ式給湯システム10で加温される用水、ボイラ給水、バイパス給水に限らす、種々の用途で再利用することができる。例えば、洗浄水、冷却水等の他の用途で再利用することも可能である。
以上説明した本実施形態のシステム1によれば、以下のような効果が奏される。
(1)本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用方法は、用水W1をヒートポンプ式給湯器11、12、13により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造工程と、第1温水製造工程で得た温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気で昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造工程と、第2温水製造工程で得た温水を温水需要箇所に供給する温水供給工程と、温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用工程と、を含む。
このように用水W1を加温する上で、ヒートポンプ式給湯器11、12、13により高効率に加温できる温度まではヒートポンプ式給湯器で加温し、さらなる昇温は、蒸気を利用して行うため、出湯温度を高めた場合であっても、CO排出量の削減効果、ランニングコストの削減効果が高い方法で温水を製造することができる。さらに、廃温水を用水として再利用するため、温水の製造から廃温水の再利用まで、工程全体として、環境への影響が少ない。
(2)本実施形態の方法は、温水需要箇所から排出された廃温水を浄化する水浄化工程を含み、再利用工程は、水浄化工程を経た廃温水を再利用する。
このように、水浄化工程では廃温水を浄化することにより、廃温水を再利用に適した状態まで回復させることができる。
(3)本実施形態の方法は、第1温水製造工程で加温される前の用水を所要の水質に調整する水処理工程を含む。
このように、水処理工程では用水に各種の水処理を施すことにより、用水を温水需要箇所で要求される水質に調整することができる。
(4)本実施形態の方法における、第1温水製造工程で用いられる用水は、再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、再利用工程において、水処理工程で処理される前の用水に廃温水を混合する。
このように、廃温水を用水の一部として再利用することにより、省水を図ることができる。
(5)本実施形態の方法における第1温水製造工程で用いられる用水は、再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、再利用工程において、水処理工程で処理された後かつ第1温水製造工程で加温される前の用水に廃温水を混合する。
このように、廃温水を用水の一部として再利用することにより、省水を図ることができる。
(6)本実施形態の温水の製造および廃温水の再利用システムは、用水W1をヒートポンプ式給湯器11、12、13により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2により製造された温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sで昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造手段3と、第2温水製造手段3により製造された温水を温水需要箇所に供給する温水供給手段301と、温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用手段303と、を含む。
このように、用水を加温する上で、ヒートポンプ式給湯器11、12、13により高効率に加温できる温度まではヒートポンプ式給湯器11、12、13で加温し、さらなる昇温は、蒸気を利用して行うため、出湯温度を高めた場合であっても、CO排出量の削減効果、ランニングコストの削減効果が高い方法で温水を製造することができる。さらに、廃温水を用水として再利用するため、温水の製造から廃温水の再利用まで、システム全体として、環境への影響が少ない。
(7)本実施形態の温水の製造方法は、用水W1をヒートポンプ式給湯器11、12、13により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造工程と、第1温水製造工程で得た温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気で昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造工程と、を含む。また、本実施形態の温水製造システムは、用水W1をヒートポンプ式給湯器11、12、13により加温して第1温度の温水を製造する第1温水製造手段2と、第1温水製造手段2により製造された温水を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sで昇温して第1温度よりも高い第2温度の温水を製造する第2温水製造手段3と、を含む。
このように、用水を加温する上で、ヒートポンプ式給湯器11、12、13により高効率に加温できる温度まではヒートポンプ式給湯器11、12、13で加温し、さらなる昇温は、蒸気を利用して行うため、出湯温度を高めた場合であっても、CO排出量の削減効果、ランニングコストの削減効果が高い方法で温水を製造することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について、図12を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
第1実施形態においては、第2温水製造手段3は、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sと直接熱交換させて第1温度よりも高い第2温度まで昇温していた。
本実施形態においては、第2温水製造手段3は、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sと間接熱交換させて第1温度よりも高い第2温度まで昇温する。
なお、間接熱交換を行う第2温水製造手段3により製造された温水W6を、温水需要箇所に供給する温水供給手段301と、温水需要箇所から排出された廃温水W31を用水として再利用する再利用手段303を有する点については、第1実施形態と同様である。
本実施形態においては、複数の給湯器11、12、13により加温されて温水となった用水W1は、給湯ラインL1によって合流した後、間接熱交換を行う第2温水製造手段3によってさらに加温されて、後述の温水タンク40に供給される。
間接熱交換を行う第2温水製造手段3は、蒸気ボイラ装置30と、昇温用熱交換器210と、蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sを昇温用熱交換器210に供給する昇温用給蒸ラインL2と、を備えている。昇温用給蒸ラインL2は、蒸気ヘッダ51に集合した蒸気Sを昇温用熱交換器210に供給する。
給湯ラインL1には、上述の昇温用熱交換器210が設けられている。昇温用熱交換器210は間接熱交換器であり、給湯ラインL1を流通する第1温水製造手段2からの温水W1と、昇温用給蒸ラインL2を流通する蒸気ボイラ装置30からの蒸気Sとの間で間接熱交換を行う。これにより、第1温水製造手段2で第1温度まで加温された温水W1は、昇温用熱交換器210によって第1温度よりも高い第2温度、例えば75~95℃まで昇温する。この間接熱交換においては、蒸気Sの主に顕熱が利用される。
昇温用熱交換器210により加温された温水W1は、給湯ラインL1を通じて、温水タンク40に供給される。この温水タンク40は、貯留されている温水TWの温度を検知する貯湯温度センサ41を備える。
給蒸制御部130は、貯湯温度センサ41によって検出された検出温度に基づき、昇温用給蒸弁54の開度を制御する。より詳細には、給蒸制御部130は、貯湯温度センサ41によって検出された検出温度が、予め定められた目標貯湯温度となるように、昇温用給蒸弁54の開度を制御して蒸気Sの供給量を調整する。この供給量の調整にはフィードバック制御を用いるのが好適である。例えば、貯湯温度センサ41の検出温度が目標貯湯温度に収束するように、PIDアルゴリズムにより昇温用給蒸弁54に対する操作量が演算され、給蒸制御部130から昇温用給蒸弁54のアクチュエータ回路へ開度指定信号が出力される。
このような給蒸制御を行うことにより、温水タンク40内の貯留水TWの温度が常に目標貯湯温度となるように、昇温用熱交換器210において、温水W1と蒸気Sとの間で間接熱交換が行われる。これにより、温水W1は目標貯湯温度に対応する第2温度まで加温される。
このように、熱交換の方法として間接熱交換を採用することで、用水W1に蒸気Sを直接供給することなく用水W1を昇温することができる。すなわち、用水W1に蒸気Sを混ぜることがないため、温水タンク40内に清缶剤等のボイラ薬品が混入するのを避けることが可能となる。よって、用水W1の品質を維持することができる。また、温水タンク40の貯湯制御について、蒸気Sを直接供給するときに起こり得るような外乱の影響を受けにくい。
そして、このような構成であっても、第1実施形態と同様、CO排出量の削減効果が高く、環境への影響も少ない温水の製造および廃温水の再利用方法を提供することができる。
以上説明した本実施形態のシステム1によれば、(1)~(7)に加えて、以下のような効果が奏される。
(8)本実施形態における第2温水製造手段3は、第1温水製造手段2で加温された用水W1を蒸気ボイラ装置30で発生させた蒸気Sと間接熱交換させて第1温度よりも高い第2温度まで昇温する。
これにより、用水W1に蒸気Sを直接供給することなく用水W1を昇温することができる。よって、用水W1に蒸気Sを混ざることがないため、温水タンク40内に清缶剤等のボイラ薬品が混入するのを避けることが可能となる。
以上、本発明の温水の製造および廃温水の再利用方法の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
1…温水の製造および廃温水の再利用システム
2…第1温水製造手段
3…第2温水製造手段
10…ヒートポンプ式給湯システム
11…第1ヒートポンプ式給湯器
12…第2ヒートポンプ式給湯器
13…第3ヒートポンプ式給湯器
14、15、16…給湯温度センサ
17、18、19…給水ポンプ
30…蒸気ボイラ装置
31…貫流ボイラ
40…温水タンク
41…貯湯温度センサ
42…第1水位センサ
421…第1電極棒
422…第2電極棒
423…第3電極棒
424…第4電極棒
425…第5電極棒
51…蒸気ヘッダ
52…連結ライン
53…蒸気供給ライン
54…昇温用給蒸弁
55…圧力計
60…給水タンク
62…バイパス給水弁
70…温調用熱交換器
71…出湯温度センサ
72…温調用給蒸弁
75…予熱用熱交換器
76…予熱用給蒸弁
80…切替手段
81、82、83…切替弁
90…ヒートポンプ回路
91…冷媒圧縮機
92…凝縮器
93…膨張弁
94…蒸発器
100…制御部
110…給湯制御部
120…ボイラ制御部
130…給蒸制御部
140…貯湯制御部
210…昇温用熱交換器
301…温水供給手段
303…再利用手段
310…水浄化手段
311…第1水浄化手段
312…第2水浄化手段
320…水処理手段
L1…給湯ライン
L2…昇温用給蒸ライン
L3…ヒートポンプ給水ライン
L4…ボイラ給水ライン
L5…バイパス給水ライン
L6…温水出湯ライン
L7…冷媒循環ライン
L8…熱源水供給ライン
L9…温調用給蒸ライン
L10…予熱用給蒸ライン
L30…用水供給ライン
L31…廃温水再利用ライン
W1…用水(温水)
W5…用水(冷水)
W6…温水
W8…熱源水
W31…廃温水
S…蒸気
R…冷媒
TW…温水、貯留水
WL…水位

Claims (6)

  1. 用水を電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器により加温して目標給湯温度の温水を製造する第1温水製造工程と、
    前記第1温水製造工程で得た前記目標給湯温度の温水をガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラで発生させた蒸気であって、目標蒸気圧力に調整された蒸気で昇温して、前記目標給湯温度よりも高く設定された目標出湯温度の温水を製造する第2温水製造工程と、
    前記第2温水製造工程で得た前記目標出湯温度の温水を温水需要箇所に供給する温水供給工程と、
    前記温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用工程と、を含み、
    前記第1温水製造工程および前記第2温水製造工程の実行時に、前記設定された目標出湯温度に応じて、前記給湯器と前記蒸気ボイラの出力分担を調整する温水の製造および廃温水の再利用方法。
  2. 前記温水需要箇所から排出された廃温水を浄化する水浄化工程を含み、
    前記再利用工程は、前記水浄化工程を経た廃温水を再利用する、請求項1に記載の温水の製造および廃温水の再利用方法。
  3. 前記第1温水製造工程で加温される前の用水を所要の水質に調整する水処理工程を含む、請求項1または2に記載の温水の製造および廃温水の再利用方法。
  4. 前記第1温水製造工程で用いられる用水は、前記再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、
    前記再利用工程において、前記水処理工程で処理される前の用水に廃温水を混合する、請求項3に記載の温水の製造および廃温水の再利用方法。
  5. 前記第1温水製造工程で用いられる用水は、前記再利用工程で再利用することになった廃温水を含み、
    前記再利用工程において、前記水処理工程で処理された後かつ前記第1温水製造工程で加温される前の用水に廃温水を混合する、請求項3に記載の温水の製造および廃温水の再利用方法。
  6. 用水を電気駆動の冷媒圧縮機を有するヒートポンプ式給湯器により加温して目標給湯温度の温水を製造する第1温水製造手段と、
    前記第1温水製造手段により製造された前記目標給湯温度の温水をガス燃焼または油燃焼のバーナを有する蒸気ボイラで発生させた蒸気であって、目標蒸気圧力に調整された蒸気で昇温して、前記目標給湯温度よりも高く設定された目標出湯温度の温水を製造する第2温水製造手段と、
    前記第2温水製造手段により製造された前記目標出湯温度の温水を温水需要箇所に供給する温水供給手段と、
    前記温水需要箇所から排出された廃温水を用水として再利用する再利用手段と、
    前記第1温水製造手段および前記第2温水製造手段を制御する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記設定された目標出湯温度に応じて、前記給湯器と前記蒸気ボイラの出力分担を調整する温水の製造および廃温水の再利用システム。
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