JP7377503B1 - カーボンナノチューブ成形体、電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置 - Google Patents

カーボンナノチューブ成形体、電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電気化学的水分解用電極の担体として用いたとしても比表面積、機械的強度などの十分な物性を備える新規なカーボンナノチューブ成形体およびそれを用いた電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置を提供する。【解決手段】カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体であって、前記カーボンナノチューブ成形体の比表面積が700m2/g以上であり、前記カーボンナノチューブ成形体の細孔分布が3~15nmであり、前記カーボンナノチューブ成形体の引張強度が45MPa以上であり、前記カーボンナノチューブ成形体のヤング率が1600MPa以上である、カーボンナノチューブ成形体およびその製造方法。当該カーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解用電極およびその製造方法、当該電気化学的水分解用電極を備える電気化学的水分解装置。【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ成形体、電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置に関する。
水素を製造する方法として、水の電気分解(電気化学的水分解)が有望な方法として考えられている。水素製造における電気化学的水分解には、白金系触媒が最も効果的である。しかしながら、地球上の白金の埋蔵量は十分ではないため、高い効率を維持しながら担持量を減らす高度な方法が必要である。触媒の活性は触媒表面の活性サイトに依存するため、電極作製において担体材料が重要な役割を果たす。
近年、高い導電性、優れた熱伝導性、大きな比表面積等の優れた性質を有することから、カーボンナノチューブが注目を集めており、カーボンナノチューブを様々な形状に成形して、様々な製品に利用することが提案されている。たとえば、特開2022-121865号公報(特許文献1)には、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体であって、前記カーボンナノチューブ成形体の密度が、0.55g/cm以上であり、前記カーボンナノチューブ成形体の比表面積が、500m/g以上であるカーボンナノチューブ成形体が提案されている。このカーボンナノチューブ成形体をシート状にしたカーボンナノチューブシートを上述の電極の担体として用いるためには、これまでよりもさらに優れた比表面積、機械的強度などの物性を備える必要がある。
特開2022-121865号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、電気化学的水分解用電極の担体として用いたとしても比表面積、機械的強度などの十分な物性を備える新規なカーボンナノチューブ成形体およびそれを用いた電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置を提供することである。
本発明は、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体であって、前記カーボンナノチューブ成形体の比表面積が700m/g以上であり、前記カーボンナノチューブ成形体の細孔分布が3~15nmであり、前記カーボンナノチューブ成形体の引張強度が45MPa以上であり、前記カーボンナノチューブ成形体のヤング率が1600MPa以上であることを特徴とする。
本発明のカーボンナノチューブ成形体において、前記カーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量が98質量%以上であることが好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ成形体は、カーボンナノチューブシートであることが好ましい。
本発明はまた、比表面積が700m/g以上、細孔分布が3~15nm、引張強度が45MPa以上、ヤング率が1600MPa以上であるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解用電極についても提供する。
本発明の電気化学的水分解用電極において、白金の担持量は11~154μg/cmの範囲内であることが好ましい。
本発明の電気化学的水分解用電極において、前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されていることが好ましい。
本発明はまた、比表面積が700m/g以上、細孔分布が3~15nm、引張強度が45MPa以上、ヤング率が1600MPa以上であるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解電極を備える電気化学的水分解装置についても提供する。
本発明の電気化学的水分解装置において、電気化学的水分解用電極における白金の担持量が11~154μg/cmの範囲内であることが好ましい。
本発明の電気化学的水分解装置において、電気化学的水分解用電極における前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されていることが好ましい。
本発明はさらに、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、カーボンナノチューブ、分散剤および分散媒を含み、単糖類を含まない分散液と、セルロースナノファイバーを含み、単糖類を含まない溶液とを混合して、単糖類を含まない混合物を得る工程と、得られた混合物を型に供給し、乾燥させて、カーボンナノチューブを含む固化物を得る工程と、固化物を洗浄し、固化物から分散剤を除去する工程と、固化物を焼成して、前記セルロースナノファイバーを炭化する工程と、焼成後の固化物の表面に活性化処理を施す工程とを含む、カーボンナノチューブ成形体の製造方法についても提供する。
本発明は、マグネトロンスパッタリングにより、本発明のカーボンナノチューブ成形体の製造方法で得られたカーボンナノチューブ成形体に白金を蒸着させる工程を含む、電気化学的水分解用電極の製造方法についても提供する。
本発明によれば、電気化学的水分解用電極の担体として用いたとしても比表面積、機械的強度などの十分な物性を備える新規なカーボンナノチューブ成形体およびそれを用いた電気化学的水分解用電極およびそれらの製造方法、電気化学的水分解装置を提供することができる。
実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル1~4について、BET法で比表面積を測定した結果を示すグラフである。 実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル1~4について、細孔分布を測定した結果を示すグラフである。 後述する実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル3,4について、強度評価を行った結果を示すグラフである。 実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル4について、XPS法で成分分析した結果を示すグラフである。 実験例1でのサンプル1~6について、ラマン分光法でsp2/sp3割合を測定した結果を示すグラフである。 実験例1で実際に得られた本発明の電気化学的水分解用電極について示す写真である。 実際に得られた本発明の電気化学的水分解用電極において、1本のカーボンナノチューブに担持される白金を示す写真である。 原子分解能TEMで観察された結果を示し、図8(a)は炭素(C)、図8(b)は酸素(O)、図8(c)は白金(Pt)についての結果を示している。 本発明の電気化学的水分解用電極の高分解能スペクトルを示す図であり、図9(a)は電気化学的水分解前のC1sのスペクトル、図9(b)は電気化学的水分解後のC1sのスペクトル、図9(c)は電気化学的水分解前のPt4fのスペクトル、図9(d)は電気化学的水分解後のPt4fのスペクトルである。 実験例1での電流密度/過電位を指標にした電極触媒活性評価(3電極セル)の結果を示すグラフである。 実験例1でのサイクル特性(白金担持量:11.5g/cm)の評価結果を示すグラフである。 実験例1での触媒回転数(TOF:Turn Over Frequency)の評価結果を示すグラフである。 実験例1でのTafel Plotを示すグラフである。 実験例1での各過電位に対応した白金触媒の単位質量あたりの水素還元電流密度(Pt質量比活性)の評価結果を示すグラフである。 各段階のSWCNTシートの高倍率画像を示す写真である。
[カーボンナノチューブ成形体]
本発明のカーボンナノチューブ成形体は、従来のカーボンナノチューブ成形体と比較していずれも優れた比表面積、細孔分布、引張強度およびヤング率を兼ね備えたものであり、電気化学的水分解用電極の担体として使用するのに特に適したものである。
ここで、図1は、後述する実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル1~4(活性化処理を施したサンプル4が後述する本発明の「電気化学的水分解用電極」に相当し、サンプル4のカーボンナノチューブシートが本発明の「カーボンナノチューブ成形体」に相当)について、BET法で比表面積を測定した結果を示すグラフであり、縦軸は吸着容量(cm/g STP)、横軸は相対圧(p/p)である。本発明のカーボンナノチューブ成形体は、700m/g以上、好ましく800m/g以上、より好ましくは1000m/g以上の比表面積を有する。本発明のカーボンナノチューブ成形体の比表面積が700m/g未満である場合には、サイズの大きいバンドル(カーボンナノチューブの集合体)が多く含まれており、原子クラスター級の触媒の担持に阻害するというような不具合がある。本発明のカーボンナノチューブ成形体の比表面積は、700m/g以上であれば高ければ高いほどよいが、比表面積を増やすには、カーボンナノチューブを酸化処理しなければならないので、酸化処理に起因したカーボンナノチューブのダメージも発生する。カーボンナノチューブが持っている優れた電子伝導性を維持するという理由からは、本発明のカーボンナノチューブ成形体の比表面積は、1500m/g以下であることが好ましく、1300m/g以下であることがより好ましい。
ここで、図2は、後述する実験例1での白金を担持させたカーボンナノチューブシートのサンプル1~4について、細孔分布を測定した結果を示すグラフであり、縦軸はdv/dlog(D)(cm/g)、横軸は孔径(nm)である。本発明のカーボンナノチューブ成形体は、3~15nmの範囲内の細孔分布を有する。脱イオン水洗浄/アルコール洗浄処理した後のカーボンナノチューブシート「サンプル1」は、分散剤、安定剤、在留触媒等が含まれているため、細孔分布が3nm前後で、細孔率も0.05cm/g以下となっている。硝酸処理した後のカーボンナノチューブシート「サンプル2」は、原子クラスター級の触媒を担持する支持体としては適切な構造体ではない。カーボンナノチューブ成形体の細孔分布が3nm未満である場合には、細孔分布のトータル数が少ないため、カーボンナノチューブシートはフラット状のシートの性質を示すため、気孔が無いまたは気孔率が低く、水の浸透が低い若しくは無く、さらにポリマー界面活性剤の量が高いため、電気伝導性が比較的小さいというような不具合がある一方で、カーボンナノチューブ成形体の細孔分布が15nmを超える場合には、活性表面積が低いというような不具合がある。なお、水の浸透と活性表面積の改善という理由からは、本発明のカーボンナノチューブ成形体の細胞分布は、7~15nmの範囲内であることが好ましく、9~14nmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、図3は、後述する実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル3,4について、JIS法で、23℃、サンプル4についてはさらに-60℃および300℃で強度評価を行った結果を示すグラフであり、縦軸は引張応力(MPa)、横軸は引張ひずみ(%)である。本発明のカーボンナノチューブ成形体は、45MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは60MPa以上の引張強度を有する。カーボンナノチューブ成形体の引張強度が45MPa未満である場合には、折れ曲がりにより壊れやすいため、扱いにくくなるというような不具合がある。本発明のカーボンナノチューブ成形体の引張強度は、45MPa以上であれば高ければ高いほどよいが、炭化処理と酸化処理を減少しなければならず、その場合、ポリマー界面活性剤が残留するため、表面積と電気伝導性が減少するという理由からは、本発明のカーボンナノチューブ成形体の引張強度は、70MPa以下であることが好ましく、65MPa以下であることがより好ましい。また本発明のカーボンナノチューブ成形体は、1600MPa以上、好ましくは1800MPa以上、より好ましくは2000MPa以上のヤング率を有する。カーボンナノチューブ成形体のヤング率が1600MPa未満である場合には、弾性に乏しいため、引っ張るときに損傷し、変形するというような不具合がある。本発明のカーボンナノチューブ成形体のヤング率は、1600MPa以上であれば高ければ高いほどよいが、炭化処理と酸化処理を減少しなければならず、その場合、ポリマー界面活性剤が残留するため、表面積と電気伝導性が減少するという理由からは、本発明のカーボンナノチューブ成形体のヤング率は、2400MPa以下であることが好ましく、2000MPa以下であることがより好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ成形体は、100万回折り曲げる折り曲げ試験を行ったとき、カーボンナノチューブ成形体に割れが生じないことが好ましい。これにより、優れた柔軟性を得ることができる。なお、一般に金属の成形体においては、10万回程度で割れてしまう。上記折り曲げ試験は、温度23℃以上27℃以下、相対湿度30%以上70%以下の環境下で、折り曲げ試験機(デマチャ屈曲試験機(株式会社安田精機製作所製))を用いて、評価することができる。
図4は、後述する実験例1でのカーボンナノチューブシートのサンプル4について、XPS法で成分分析した結果を示すグラフであり、図4(a)は広い範囲でスキャニングを行った結果、図4(b)は狭い範囲でスキャニングを行った結果をそれぞれ示し、縦軸はC/S、横軸は結合エネルギー(eV)である。また図5は、後述する実験例1でのサンプル1~6について、ラマン分光法でsp2/sp3割合を測定した結果を示すグラフであり、縦軸は強度(数)、横軸はラマンシフト(cm-1)である。本発明のカーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量は、98質量%以上であることが好ましく、98.5質量%以上であることがより好ましく、99.0質量%以上であることが特に好ましい。カーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量が98質量%未満である場合には、カーボンナノチューブ成形体は金属不純物を含み、金属不純物が触媒の性能に悪影響を及ぼし、金属不純物はカーボンナノチューブ上の白金の添加に悪影響を及ぼすというような傾向にある。本発明のカーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量は、98質量%以上であれば高いほど好ましいが、カーボンナノチューブ成形体を強酸で処理しなければならず、これがカーボンナノチューブ成形体に損傷を与え、また、カーボンナノチューブ成形体の価格が純度により高価になるという理由からは、カーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量は99.5質量%以下であることが好ましく、99.0質量%以下であることがより好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、シート状、アーチ状、リングバンド状、帯状、糸状などであってもよい。これらの中でも、後述する電気化学的水分解用電極に好適に用いることができるという理由からは、カーボンナノチューブ成形体はカーボンナノチューブシートであることが好ましい。
[電気化学的水分解用電極]
本発明は、比表面積が700m/g以上、細孔分布が3~15nm、引張強度が45MPa以上、ヤング率が1600MPa以上であるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金(Pt)とを含む電気化学的水分解用電極についても提供する。ここで、図6は、後述する実験例1で実際に得られた本発明の電気化学的水分解用電極について示す写真である。また図7は、実際に得られた本発明の電気化学的水分解用電極において、1本のカーボンナノチューブに担持される白金を示す写真(10000000倍)であり、図8は、原子分解能TEMで観察された結果を示し、図8(a)は炭素(C)、図8(b)は酸素(O)、図8(c)は白金(Pt)についての結果を示している。
また図9は、PHI500 VersaProbe(アルバック・ファイ社製)を用いて測定された、本発明の電気化学的水分解用電極の高分解能スペクトルを示す図であり、図9(a)は電気化学的水分解前のC1sのスペクトル、図9(b)は電気化学的水分解後のC1sのスペクトル、図9(c)は電気化学的水分解前のPt4fのスペクトル、図9(d)は電気化学的水分解後のPt4fのスペクトルである。図9(c)には、71.4eVと74.8eVにそれぞれPt4f7/2と4f5/2に相当する顕著なピークがある。このピークをデコンボリューションすると、71.2eV、72.4eV、73.7eVにそれぞれPt(0)、Pt(II)、Pt(IV)に対応する3種類の化学同位体のピークが観測された。また図9(a)、(b)から、C1sスペクトルは、白金担持後、sp2混成に対応するピークが減少し、sp3混成が増加することが示された。詳細な分析により、金属白金が支配的であり、金属と基板との間に強い相互作用があることが証明された。このように、本発明の電気化学的水分解用電極では、数十~数百のPt原子から構成されるsub-nanoサイズの白金原子クラスターが、カーボンナノチューブ成形体に担持されたものである。これにより、白金触媒の活性面(111面)を最大限に活用することができ、また、白金原子クラスターとカーボンナノチューブ成形体間のHOMO-LOMO相互作用を利用し、白金触媒の超長寿命化を図ることができる。白金ナノ粒子を炭素ベースの複合材料に担持することは、電気化学的水分解に対する触媒活性を向上させる有望な方法であり、炭素材料を精密に制御することで、高い比表面積と豊富な活性部位を持つ望ましいナノ構造を得ることができる。金属種と炭素担体の強い相互作用、および相乗効果により、電気化学的プロセス中の金属ナノ粒子の蓄積や溶出を効果的に防ぐことができる。さらに、基材の電気伝導性が向上することで、高速な電子移動が可能になり、優れた触媒活性を得ることができる。ここで、触媒活性は基材と白金ナノ粒子の品質に依存するため、カーボンナノチューブ上の白金ナノ粒子のサイズ、形態、および位置は、触媒活性に重要な役割を果たす。しかしながら、ほとんどの複合材料では、表面原子のみが電気化学的水分解に関与するため、ナノ粒子は白金原子の利用を粒子コアに限定し、効果を発揮できないでいる。白金ナノ粒子のサイズを小さくすれば、貴金属の使用量を大幅に減らすことができ、触媒活性を高めることができるので、電極触媒のコストを下げることができるという効果がある。
本発明の電気化学的水分解用電極において、白金の担持量が11~154μg/cmの範囲内であることが好ましく、原子レベルでの白金を使用する際にカーボンナノチューブ上の白金の量を最適化する必要があり、ナノ粒子はできるだけ小さく、均一に並び、過剰でない必要があるという理由からは、11~117μg/cmの範囲内であることがより好ましい。白金の担持量が11μg/cm未満である場合には、白金の量が十分な電流を作るには極めて低く、高い電圧を使用せざるを得ないという傾向にあり、また、白金の担持量が154μg/cmを超える場合には、独立したカーボンナノチューブ上の白金が過剰となり、白金の量が過多になると電気化学反応の間に凝集が起きるため、性能が低下するという傾向にあるためである。本発明の電気化学的水分解用電極は、白金触媒の活性面(111面)を最大限に活用することができるため、従来と比較して各段に少ない量の白金の担持量で格段に優れた電気化学的水分解能を発揮することができる。
ここで、図10は、後述する実験例1での電流密度/過電位を指標にした電極触媒活性評価(3電極セル)の結果を示すグラフであり、縦軸は電流密度J(mA/cm)、横軸過電位(V vs RHE)である。図10に示す結果から、電流密度が100mA/cm、白金の担持量も同じの場合(117±5μg/cm)、本発明の電気化学的水分解用電極の過電位が23mV、市販品の電気化学的水分解用電極の過電位が115mV、白金触媒の担持量を11±5μg/cm、すなわち、市販品の触媒の担持量の1/10までに減らした場合でも、本発明の電気化学的水分解用電極の過電位が42mV、即ち、市販品の電気化学的水分解用電極の過電位より小さいこと確認された。
図11は、後述する実験例1でのサイクル特性(白金担持量:11.5μg/cm)の評価結果を示すグラフであり、縦軸は電流密度J(mA/cm)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図11から、本発明の電気化学的水分解用電極では300サイクルでも十分なリサイクル特性を示したことが分かる。
図12は、後述する実験例1での触媒回転数(TOF:Turn Over Frequency)の評価結果を示すグラフであり、縦軸はTOF(s-1/Pt-site)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図12から、触媒回転数(TOF)、即ち、触媒反応において、触媒が不活性化するまでに1モルあたり何モルの基質分子を生成物に変換したかを示す指標からも、白金の担持量を30μg/cm以下にしても、本発明の電気化学的水分解用電極は優れたTOF特性を有することが分かる。
図13は、後述する実験例1でのTafel Plotを示すグラフであり、縦軸は過電位(mV)、横軸はlog j(mAcm-2)である。Tafel式、即ち、電気化学反応の速度と過電圧との間の関係を示す実験プロット図からTafel勾配を求めた。このTafel勾配に基づき、触媒がVolmerステップ、Heyrovskyステップ、Tafelステップの三つのステップで発現することが分かった。
図14は、後述する実験例1での各過電位に対応した白金触媒の単位質量あたりの水素還元電流密度(Pt質量比活性)の評価結果を示すグラフであり、縦軸は質量比活性(A/mgcm)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図14から、各過電位に対応した白金触媒の単位質量あたりの水素還元電流密度、即ち、Pt質量比活性の結果からも、本発明の電気化学的水分解用電極でのPtの担持量が30μg以下の触媒活性は、比較対象の市販品を上回る、トータルな特性として性能が優れることが示唆される。
本発明の電気化学的水分解用電極は、カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されていることが好ましい。このような構成を備えることで、電気電導度が高まり、機械的強度が高まり、長期安定性を持ち、全体的な電気化学的水分解の効果を高めることができる。
金属構造物を構成する金属は、電流密度を高め、自由電子のロスが少ないという理由からは、チタン、白金、金、ニッケル、モリブデン、銀、コバルト、鉄が好ましく、中でもチタンが特に好ましい。カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面に担持されている場合には、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されている場合と比較して、水電解セルの内部抵抗が低くなる、機械的強度が高くなるという利点がある。
カーボンナノチューブシートが、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されている場合には、金属構造物の表面に担持されている場合と比較して、酸性環境で長期に安定であり、水電解セルの重量が軽くなる。また、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体は多孔質であり気孔率が高く、水と気体の通過率が高くなるという利点がある。
本発明の電気化学的水分解用電極に適用する場合、本発明のカーボンナノチューブ成形体の形状は上述のようにシート状(すなわち、カーボンナノチューブシート)とすることが好ましいが、これに限定されるものではなく、たとえば、その卓越した柔軟性と耐久性を生かし、アーチ状、リングバンド状、帯状、糸状などの形状にしても勿論よい。
なお、本発明の電気化学的水分解用電極は、電気化学的水分解用触媒として白金を担持させるが、白金以外に、酸化イリジウムなど従来用いられる電気化学的水分解用触媒を用いてもよい。
本発明の電気化学的水分解用電極は、後述する本発明の電気化学的水分解装置に特に好適に適用できるが、白金を触媒とする電極を用いた従来公知の各種用途、たとえば、電解整水器、水素水の製造装置、携帯型水素水製造装置、強酸性水生成装置、飲料水供給装置、イオン飲料飲用器、液体活性化・電解装置、電解水生成評価装置、各種電池(二次電池、鉛蓄電池、色素増感型太陽電池、燃料電池、生物燃料電池など)、各種センサ(水質センサ、水素センサ、ガスセンサ、バイオセンサ、アルコールセンサ、結露センサなど)などにも特に制限なく適用することができる。
[電気化学的水分解装置]
本発明はまた、比表面積が700m/g以上、細孔分布が3~15nm、引張強度が45MPa以上、ヤング率が1600MPa以上であるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解電極を備える、電気化学的水分解装置についても提供する。このような本発明の電気化学的水分解装置によれば、上述した本発明の電気化学的水分解電極を備えるものであることにより、従来と比較して格段に優れた電気化学的水分解能を発揮することができる。本発明の電気化学的水分解装置によれば、上述した本発明の電気化学的水分解電極を備えていればよく、それ以外の構成については特に制限されるものではなく、従来の電気化学的水分解装置に用いられるものを適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の電気化学的水分解装置においても、電気化学的水分解用電極における白金の担持量が11~154μg/cmの範囲内であることが好ましい。
また本発明の電気化学的水分解装置においても、電気化学的水分解用電極における前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されていることが、好ましい。
[カーボンナノチューブ成形体の製造方法]
本発明は、上述したも優れた比表面積、細孔分布、引張強度およびヤング率を兼ね備えたカーボンナノチューブ成形体を好適に製造することができる、カーボンナノチューブ成形体の製造方法についても提供する。本発明のカーボンナノチューブ成形体の製造方法は、カーボンナノチューブ、分散剤および分散媒を含み、単糖類を含まない分散液と、セルロースナノファイバーを含み、単糖類を含まない溶液とを混合して、単糖類を含まない混合物を得る工程と、得られた混合物を型に供給し、乾燥させて、カーボンナノチューブを含む固化物を得る工程と、固化物を洗浄し、固化物から分散剤を除去する工程と、固化物を焼成して、前記セルロースナノファイバーを炭化する工程と、焼成後の固化物の表面に活性化処理を施す工程とを含む。
本発明のカーボンナノチューブ成形体の製造方法では、まず、カーボンナノチューブ、分散剤および分散媒を含み、単糖類を含まない分散液と、セルロースナノファイバーを含み、単糖類を含まない溶液とを混合して、単糖類を含まない混合物を得る。
本発明に用いるカーボンナノチューブは、単層、多層のいずれであってもよいが、導電性や熱伝導性に優れていることから、単層カーボンナノチューブ(SWCNT:single-walled carbon nanotube)を用いることが好ましい。
カーボンナノチューブの直径は、物理的、電気的および構造的性質により小さな直径が推奨されるという理由から、0.5~2nmの範囲内であることが好ましく、1~1.5nmの範囲内であることがより好ましい。カーボンナノチューブの直径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)を用いて測定することができ、10本のカーボンナノチューブの直径を実測し、その算術平均値をカーボンナノチューブの直径とする。
カーボンナノチューブの長さは、長く、直径の小さなカーボンナノチューブが高い縦横率を示すためにカーボンナノチューブの性質が向上する、さらに、これらのネットワーク構造をも保つ、長過ぎると高い分散効果を得るのは困難であるため、0.5~3μmの範囲内であることが好ましく、1~2μmの範囲内であることがより好ましい。カーボンナノチューブの長さは、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて測定することができ、10本のカーボンナノチューブの長さを実測し、その算術平均値をカーボンナノチューブの長さとする。
分散媒としては、水、水溶性有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、環境負荷低減の観点から、水が好ましい。水としては、たとえば蒸留水、イオン交換水、超純水などが挙げられる。また、水溶性有機溶媒としては、たとえばアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリンなど)、エーテルなど(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドなどが挙げられる。
分散剤は、カーボンナノチューブを分散させるためのものである。分散剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および両イオン性界面活性剤等のイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖、シクロデキストリンなどのオリゴ糖、胆汁酸やコレステロール、コール酸などのステロイド誘導体、DNA、π共役ポリマー、フタシアニン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、次の理由からステロイド誘導体、特に胆汁酸が好ましい。カーボンナノチューブは疎水性であるので、分散剤としてステロイド誘導体を添加すると、カーボンナノチューブの表面にステロイド誘導体の疎水基が結合し、カーボンナノチューブが引っ張られて、カーボンナノチューブが孤立分散化しやすい。
分散剤の含有量は、カーボンナノチューブの電気伝導性に影響を与えないに分散剤の使用量を抑える(分散剤の増量により分散効率は向上するが、電気伝導性は下がる)ための最適化が必要であるという理由から、カーボンナノチューブの含有量に対して2~5質量%の範囲内であることが好ましく、3~4質量%の範囲内であることがより好ましい。
セルロースナノファイバーの直径は、機能的でかつ機械的性質及び化学的性質を保つという理由から、0.7~4nmの範囲内であることが好ましく、1~2nmの範囲内であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの直径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができ、10本のセルロースナノファイバーの直径を実測し、その算術平均値をセルロースナノファイバーの直径とする。
セルロースナノファイバーの長さは、溶媒中での分散効果を保つためにある程度の長さは必要であるが、一方で短すぎるとカーボンナノチューブを守るという性質は保てないという理由から、1~5μmの範囲内であることが好ましく、2~3μmの範囲内であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの長さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができ、10本のセルロースナノファイバーの長さを実測し、その算術平均値をセルロースナノファイバーの長さとする。
セルロースナノファイバーの直径に対する長さの比(長さ/直径、アスペクト比)は、機械的、構造的性質のため、また、カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーの最適な分散効果を保つ、さらに、これらのネットワーク構造をも保つという理由から、1000~5000の範囲内であることが好ましい。
セルロースナノファイバーを含み、単糖類を含まない溶液に用いられる溶媒としては、たとえばジメチルスルホキシド、n-メチル-2-ピロリドン、水などが挙げられ、これらの中でも、均一な分散効果が容易に得られるという理由と低価格またさらにエコフレンドリーであるという理由からは、水が好ましい。
カーボンナノチューブを含む分散液およびセルロースナノファイバーを含む溶液は、共に単糖類を含まない。ここで、単糖類としては、たとえばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソースなどが挙げられる。これらの分散液と溶液とを混合することで、単糖類を含まない混合物が得られる。
混合物におけるカーボンナノチューブの質量に対するセルロースナノファイバーの質量の比は、カーボンナノチューブの電気伝導性に影響を与えないにセルロースナノファイバーの使用量を抑える(セルロースナノファイバーの増量によりカーボンナノチューブネットワークの品質は向上するが、電気伝導性は下がる)ための最適化が必要である、また、炭化処理後に非結晶のカーボンの量が増えるという理由からは、0.05~1の範囲内であることが好ましく、0.2~0.5の範囲内であることがより好ましい。
次に、得られた混合物を型に供給し、乾燥させて、カーボンナノチューブを含む固化物を得る。型は、製造したいカーボンナノチューブ成形体の形状に応じて適宜選択すればよく、たとえばカーボンナノチューブシートを製造する場合には、トレーを型として用いることができる。乾燥は、たとえば25~80℃の温度環境下で行う。
次に、固化物を洗浄し、固化物から分散剤を除去する。具体的には、固化物をまず、アルコールなどの極性有機溶媒で洗浄する。これにより、カーボンナノチューブを分散処理する際に使用した分散剤を除去することができる。続けて、固化物を酸を用いて洗浄する。これにより、カーボンナノチューブの製造におけるプロセス由来の不純物(触媒など)を除去することができる。酸の濃度は45~60質量%の範囲内に調整することが好ましい。酸としては、たとえば、塩酸や硝酸が挙げられる。最後に、脱イオン水を使い、固化物を中性になるまで洗浄する。固化物を洗浄した後、固化物を乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥も、たとえば25~80℃の温度環境下で行う。
次に、固化物を焼成して、前記セルロースナノファイバーを炭化する。焼成は、たとえば、窒素雰囲気下で、600~800℃の範囲内の温度で行う。この工程で、セルロースナノファイバーが炭化して、非晶質の炭素微粒子となり、亜臨界水で洗浄することによって、カーボンナノチューブ固化物から脱離するので、高純度のカーボンナノチューブ成形体を得ることができる。焼成時間は、例えば、60~120分間とすることができる。
最後に、焼成後の固化物の表面に活性化処理を施す。活性化処理は、たとえば、カーボンナノチューブ成形体を二酸化炭素雰囲気下で800~900℃の範囲内の温度に加熱し、カーボンナノチューブ成形体を活性化させる。活性化処理の加熱時間は、たとえば、30~60分間とすることができる。
[電気化学的水分解用電極の製造方法]
本発明はさらに、マグネトロンスパッタリングにより、上述した本発明のカーボンナノチューブ成形体の製造方法で得られたカーボンナノチューブ成形体に白金を蒸着させる工程を含む、電気化学的水分解用電極の製造方法についても提供する。マグネトロンスパッタリングは、たとえばLL-type High-density General Purpose Sputtering System(CFS-4EP-LL i-Miller社製)を用いて好適に行うことができる。マグネトロンスパッタリングによりカーボンナノチューブ成形体に白金を蒸着させることで、他の方法(たとえば、原子層堆積(ALD)、有機金属気相成長法(MOCVD)、物理的蒸着法(PVD))と比較して、均一性を保ち薄膜の膜厚を正確に制御でき、直径15cm以上のサイズの白金蒸着エリアを得られ、安価であるという利点がある。
また、上述のように本発明の電気化学的水分解用電極におけるカーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されている場合、カーボンナノチューブシートを担持させる方法としては、金属構造物の表面の場合には、ナフィオン分散液を金属構造物の表面にスプレーしカーボンナノチューブシートを載せて、乾燥させるというようにして、また炭素繊維である場合には、ナフィオン分散液を金属構造物の表面にスプレーしカーボンナノチューブシートを載せて乾燥させる。炭素繊維構造体の表面である場合には、ナフィオン分散液を炭素繊維構造物の表面にスプレーしカーボンナノチューブシートを載せて乾燥させる、または、カーボンナノチューブシートの両側を炭素繊維で挟む、ホットプレスを掛けるというようにして行うことができる。
以下に実験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実験例1>
カーボンナノチューブとしてOCSiAl Ltdから購入した超長TUBALL(商標) SWCNTを用いた。試薬グレードの0.5M 硫酸、60% 硝酸は富士フィルム和光純薬株式会社から購入した。セルロースナノファイバーとしては、日本製紙株式会社から購入した、磯貝法で製造されたTEMPO-CNF(2.0wt%)を用いた。
TUBALL SWCNT粉末7.5gとコラートナトリウム(分散剤)15g、ポリビニルピロリドン(安定剤)10gを1000mL脱イオン水にボールミル(マスダユニバーサルボールミルModel UBM 2)を介して12時間予備分散させた。次に、この混合物を、0.6mmのジルコニウムビーズを含むビーズミル(Multi Lab DYNO Mill)において、良好な分散が得られるまで処理した。
SWCNT分散液を、適量のセルロースナノファイバー溶液(溶媒:水)と様々な比率で混合した。次に、得られた混合物をテトラフルオロエチレン製のトレーに流し込み、室温(25℃)で乾燥させた。乾燥したシートを80%エタノールで浸して剥離した。エタノールでの洗浄を繰り返し、濃硝酸で消化することで、シートから界面活性剤を除去した。次に、このSWCNTシートを窒素雰囲気下で炭化し、その後、管状炉を用いて900℃で炭酸ガス下で活性化させた。
活性化したSWCNTシートを1cm×1cmに切り、マグネトロンスパッタリング装置(LL-type High-density General Purpose Sputtering System(CFS-4EP-LL i-Miller社製))のチャンバーに設置した。前処理を行った後、アルゴンビームを用いて白金金属を成膜した。
(材料の特性評価)
日本電子の走査型電子顕微鏡(JSM6390、JSM-7500FA、JSM-7000F)により、試料の形態と元素分布を観察した。透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、高コントラスト電子顕微鏡(JEM-1400(日本電子株式会社(JEOL)製)を用いて実施した。X線光電子分光法(XPS)は、多機能型走査型XPS PHI5000 VersaProbe(ULVAC-PHI)を用いて行った。Beckman Coulter SA(商標) 3100アナライザーを用いて、窒素吸着・脱着等温線からBET(Brunauer, Emmett, and Teller)比表面積を求めた。SII EXSTAR 6000 TG/DTAアナライザーを用いて熱分解試験を実施した。ラマンスペクトルは、532nmレーザーを装備したレニショーinViaラマン顕微鏡で測定し、シリコンウェハーを基準として較正した。核反応分析(NRA)測定は、東京大学の微量分析室、タンデム加速器(MALT)で行われた。
また、以下のようにして強度評価を行った。
・Test Company:DJK
・試験方法:JIS K 7127準拠(JIS K 7161-1)
・測定項目:引張強さ、引張(呼び)ひずみ、引張弾性率
・試験片形状:試験片タイプ2、短冊10×200(mm)
試験片切り出しを実施し、脆い試料のためつかみ部分をテープで補強し、ゴムシートで挟んで試験した。
なお、評価は以下のサンプル
・サンプル1:エタノール洗浄後の時点のSWCNTシート
・サンプル2:硝酸洗浄後の時点のSWCNTシート
・サンプル3:炭化後の時点のSWCNTシート
・サンプル4:活性化処理のSWCNTシート(本発明の「電気化学的水分解用電極」に相当)
・サンプル5:洗浄前の時点のSWCNTシート
・サンプル6:CNT 75%
について行った。図1は、サンプル1~4について、BET法で比表面積を測定した結果を示すグラフであり、図2は、サンプル1~4について、細孔分布を測定した結果を示すグラフであり、図3は、サンプル3,4について、強度評価を行った結果を示すグラフであり、図4は、サンプル4について、XPS法で成分分析した結果を示すグラフであり、図5は、サンプル1~6について、ラマン分光法でsp2/sp3割合を測定した結果を示すグラフである。また、サンプル1~4の測定された各数値を表1に示す。
Figure 0007377503000002
また、原子分解能元素マッピング構造解析顕微鏡(JEM-ARM200F Thermal FE STEM、日本電子社製)を用いて、サンプル4の1本のカーボンナノチューブに担持される白金を示す写真(10000000倍)が図7である。また、サンプル4を、原子分解能元素マッピング構造解析顕微鏡(JEM-ARM200F Thermal FE STEM、日本電子社製)を用いて観察し、炭素(C)(10000000倍)については図8(a)、酸素(O)(10000000倍)については図8(b)、白金(Pt)(10000000倍)については図8(c)にそれぞれ結果を示す。
またPHI500 VersaProbe(アルバック・ファイ社製)を用いて、サンプル4について、電気化学的水分解前のC1sのスペクトルを図9(a)、電気化学的水分解後のC1sのスペクトルを図9(b)、電気化学的水分解前のPt4fのスペクトルを図9(c)、電気化学的水分解後のPt4fのスペクトルを図9(d)にそれぞれ示す。図9(c)には、71.4eVと74.8eVにそれぞれPt4f7/2と4f5/2に相当する顕著なピークがある。このピークをデコンボリューションすると、71.2eV、72.4eV、73.7eVにそれぞれPt0、PtII、PtIVに対応する3種類の化学同位体のピークが観測された。また図9(a)、(b)から、C1sスペクトルは、白金担持後、sp2混成に対応するピークが減少し、sp3混成が増加することが示された。詳細な分析により、金属白金が支配的であり、金属と基板との間に強い相互作用があることが証明された。
(電気化学的特性)
CHI Instruments社から入手したグラッシーカーボン電極(GCE、直径3mm)を用いて、白金担持量が11μg/cm、28μg/cm、57μg/cm、117μg/cm、125μg/cm、154μg/cmの活性化処理のSWCNTシートを担持して電気化学的分析を行った。GCEは、ダイヤモンド研磨パッド上で蒸留水に懸濁させた研磨ダイヤモンドと、アルミナ研磨パッド上で蒸留水に懸濁させたアルミナ粉末を用いて研磨された。第1研磨段階と第2研磨段階の後、電極を脱イオン水で十分に洗浄した。触媒を担持する前に、GCE電極をイソプロパノール溶液に浸し、約10秒間超音波処理して再び洗浄した。洗浄したGCEにエタノール中の0.5wt% Nafionを2μl滴下した。白金析出SWCNTシートを直径3mmの円形に注意深く切り、ナフィオン乾燥前のGCE上に配置した。電極は、さらに使用するために、周囲条件で一晩乾燥させた。通常、市販のPt/C(Pt担持率:5%)粉末50mgを1mLのNafion溶液(エタノール中0.5wt%)に分散させ、超音波浴で30分間超音波処理して均質なインクを調製した。このPt含有インクをGCE上に4μl堆積させ、Pt/C電極を作製した。電極触媒活性試験は、電気化学分析器モデルCHI 760E、CH Instrumentsを用いて、標準的な3電極システムで実施した。0.5M HSO、白金コイル、Ag/AgCl電極を電解質溶液(0.5M 硫酸を含む脱イオン水)、対極、参照電極として使用した。スキャン(掃引)速度は10mV/秒とした。このような電流密度/過電位を指標にした電極触媒活性評価(3電極セル)の結果を示すグラフが図10であり、縦軸は電流密度J(mA/cm)、横軸過電位(V vs RHE)である。図10に示す結果から、電流密度が100mA/cm、白金の担持量も同じの場合(117±5μg/cm)、本発明の電気化学的水分解用電極の過電位が23mV、市販品の電気化学的水分解用電極の過電位が115mV、白金触媒の担持量を11±5μg/cm、すなわち、市販品の触媒の担持量の1/10までに減らした場合でも、本発明の電気化学的水分解用電極の過電位が42mV、即ち、市販品の電気化学的水分解用電極の過電位より小さいこと確認された。
また、電極触媒活性試験は、電気化学分析器モデルCHI 760E、CH Instrumentsを用いて、標準的な3電極システムで実施した。0.5M HSO、白金コイル、Ag/AgCl電極を電解質溶液(0.5M 硫酸を含む脱イオン水)、対極、参照電極として使用した。スキャン(掃引)速度は10mV/秒とした。スキャン範囲は0V~-0.26Vの電位範囲、サイクル数は3000とした。このような電流密度/過電位を指標にした電極触媒活性評価(3電極セル)でサイクル特性(白金担持量:11.5μg/cm)の評価を行った結果を示すグラフが図11であり、縦軸は電流密度J(mA/cm)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図11から、本発明の電気化学的水分解用電極では3000サイクルでも十分なリサイクル特性を示したことが分かる。
また、白金金属の量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES)を用いて定量測定した。電気化学的水分解の触媒回転数(TOF)は、下の式で計算した。
Figure 0007377503000003
白金担持量が11μg/cm、28μg/cm、57μg/cm、117μg/cm、125μg/cm、154μg/cmの活性化処理のSWCNTシートについて、触媒回転数(TOF:Turn Over Frequency)の評価を行った結果を示すグラフが図12であり、縦軸はTOF(s-1/Pt-site)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図12から、触媒回転数(TOF)、即ち、触媒反応において、触媒が不活性化するまでに1モルあたり何モルの基質分子を生成物に変換したかを示す指標からも、白金の担持量を30μg/cm以下にしても、本発明の電気化学的水分解用電極は優れたTOF特性を有することが分かる。
また、電極触媒活性試験は、電気化学分析器モデルCHI 760E、CH Instrumentsを用いて、標準的な3電極システムで実施した。0.5M HSO、白金コイル、Ag/AgCl電極を電解質溶液(0.5M 硫酸を含む脱イオン水)、対極、参照電極として使用した。スキャン(掃引)速度は10mV/秒とした。このような電流密度/過電位を指標にした電極触媒活性評価(3電極セル)の結果を示すグラフが図13であり、縦軸は過電位(V vs RHE)、横軸は電流密度J(mA/cm)の常用対数である。Tafel式、即ち、電気化学反応の速度と過電圧との間の関係を示す実験プロット図からTafel勾配を求めた。このTafel勾配に基づき、触媒が以下の式で示す三つのステップで発現することが分かった。
Figure 0007377503000004
また、電極触媒活性試験は、電気化学分析器モデルCHI 760E、CH Instrumentsを用いて、標準的な3電極システムで実施した。0.5M HSO、白金コイル、Ag/AgCl電極を電解質溶液(0.5M 硫酸を含む脱イオン水)、対極、参照電極として使用した。スキャン(掃引)速度は10mV/秒とした。このような各過電位に対応した白金触媒の単位質量あたりの水素還元電流密度(Pt質量比活性)の評価を行った結果を示すグラフが図14であり、縦軸は質量比活性(A/mgcm)、横軸は過電位(V vs RHE)である。図14から、各過電位に対応した白金触媒の単位質量あたりの水素還元電流密度、即ち、Pt質量比活性の結果からも、本発明の電気化学的水分解用電極でのPtの担持量が30μg/cm 以下の触媒活性は、比較対象の市販品を上回る、トータルな特性として性能が優れることが示唆される。
(考察)
カーボンナノチューブを様々な用途に利用するためには、チューブ状の分散液が重要なステップとなる。分散剤と安定剤は、高品質のSWCNT分散液を作るために不可欠な要素である。また、カーボンナノチューブシートが自立するためには、高分子成分を効果的に除去する必要がある。実験例1で使用されたポリマー(たとえば、コール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン)は、エタノールに非常によく溶けるものである。そこで、まずカーボンナノチューブシートをエタノールで数回洗浄し、その後、濃硝酸で分解した。しかし、セルロースナノファイバーはエタノールにも硝酸にも溶けない。このため、カーボンナノチューブのネットワークはセルロースナノファイバーの支持体によって支えられていることがわかった。残留したセルロースナノファイバーは、水洗と炭化によって除去された。
各段階のSWCNTシートの詳細な構造観察は走査型電子顕微鏡(SEM)で行い、図15は、その高倍率画像である。図15の各写真は、それぞれ以下の段階である(A~Dについては厚さ40μm)。
A…洗浄前(20000倍)
B…洗浄後(20000倍)
C…セルロースナノファイバーを使用しなかった場合(50000倍)
D…セルロースナノファイバーを使用し、白金を担持させた場合(50000倍)
E…厚さ10nm低倍率(100000倍)
F…厚さ10nm高倍率(150000倍)
G…厚さ20nm低倍率(75000倍)
H…厚さ20nm高倍率(150000倍)
図15中、Aから、洗浄していないSWCNTシートは多孔質構造を持たず、すべての孔が界面活性剤とポリマーで満たされていることが分かる。しかし、分散剤とポリマーを除去すると、図15中、Bのように細孔構造が見えるようになった。カーボンナノチューブの素線が長くなると、個々のカーボンナノチューブの曲げ傾向が大きくなる。実験例1では、平均長1~2μmの超長尺単層カーボンナノチューブ(TUBALL(商標) SWCNT)を用いたので、カーボンナノチューブをまっすぐにするためには強固な充填材が必要である。セルロースナノファイバーは、シートキャスティング時の強力な充填材であり、超長尺のSWCNTをまっすぐにするのに役立つ。セルロースナノファイバーの重要性は、図15中のCとDを比較すると容易に説明できる。図15中のCでは、セルロースナノファイバーがないため個々のカーボンナノチューブが湾曲していたが、図15中のDに示すように、セルロースナノファイバーがあると個々のカーボンナノチューブはまっすぐになった。図15中のDから、ナノサイズの孔を持つ連続的な相互接続多孔質構造が得られていることが確認された。カーボンナノチューブはしっかりと連結されており、目に見えるように、SWCNTシートの内部に連続的に相互接続されたネットワークが発達していた(図15中のD)。
図15中のE~Hは、白金を担持させたSWCNTシートの高分解能SEM画像であり、白金が個々のSWCNTシートの繊維上で驚くほど均一に、滑らかに覆われていることを明確に示している。白金はSWCNTシート上にランダムに堆積したのではなく、個々のカーボンナノチューブストランド上に選択的に被覆された。10nm厚の白金コーティング試料の高倍率画像(図15中のF)では、孔が非常にきれいで、クラスターは見いだせなかった。20nm厚の白金を担持させたSWCNTシートの高倍率画像(図15中のH)から、白金層の厚みが増すと気孔率が低下し、電解質をブロックする可能性があることがわかる。
また図1には、サンプル1~4の窒素吸着・脱着等温線を示したが、この結果から、IV型等温線に従うことがわかった。IV型等温線は、メソ孔での毛細管凝縮に関連したヒステリシスループを持ち、P/Pが高くなると吸着が制限される。等温線の初期部分はメソ孔壁への単層-多層吸着に起因し、これはタイプII等温線の対応する部分と同じ経路であるが、その後に細孔凝縮が起こる。より詳細には、図1の等温線とタイプIV(a)等温線のフィットから、より大きなメソ孔(>4nm)では毛細管凝縮がヒステリシスにつながることが示された。
エタノール洗浄後のカーボンナノチューブシートのBET比表面積は59m/gであり、元の75% SWCNT粉末と比べると非常に小さい。硝酸で処理すると、ポリマーが消化されるため、比表面積は徐々に増加した(305m/g)。炭化後のカーボンナノチューブシートの表面積は545m/gで、平均孔径は約9.8nmであった。この段階では、除去されなかったポリマーとセルロースナノファイバーはすべて小さな非晶質クラスターとなり、カーボンナノチューブシートによりメソポーラスな構造を与えている。炭素は活性化中に二酸化炭素と反応して一酸化炭素を形成し(ガス化)、微小胞子を作る。そのため、炭化したカーボンナノチューブシートの最適な活性化により、1031m/gというかなりのBET比表面積が得られる。二酸化炭素はまた、カーボンナノチューブネットワーク内に閉じ込められた非晶質炭素クラスターを除去し、利用可能なすべての孔を開くのに役立ち、平均孔径は13.5nmに増加した。
ラマンスペクトル(図5)では、炭素系物質でおなじみの6員環の面内振動に由来する1590cm-1付近のGバンドピークが確認された。カーボンナノチューブでは、GバンドはG+とG-に分解され、分割される。G+(1593cm-1)はカーボンナノチューブ軸方向の縦波モードに対応し、G-(1572cm-1)は軸に垂直な横波モードに対応する。1339cm-1付近に観測されるバンドはDバンドと呼ばれ、アモルファスカーボン、空孔、ヘテロ原子などカーボンナノチューブの欠陥や障害に関係する。350から100cm-1の領域では、SWCNTは径方向に伸縮する半径方向呼吸モード(RBM)に対応する一連のバンドを生じる(図示せず)。GバンドとDバンドの強度比(G/D比)は、カーボンナノチューブの欠陥の評価に使用される。粉末状SWCNTのG/D比の計算値は51、活性化処理後のカーボンナノチューブシートのそれは49であった。この結果は、最適な活性化によって、カーボンナノチューブの欠陥が増加しないことを証明している。アモルファスカーボンはカーボンナノチューブよりも安定性が低いため、活性化時の二酸化炭素に対する反応性はカーボンナノチューブよりも高かった。しかし、カーボンナノチューブはガス流量が多いほど二酸化炭素との反応性が高くなり、その結果、欠陥が徐々に増加することがわかった。
実験例1で作成されたSWCNTシートは柔軟で折りたたみ可能であり、機械的強度が期待できる。様々な温度におけるSWCNTシートサンプルの典型的な応力ひずみ曲線を、図3に示す。ヤング率と引張強度は、応力ひずみ曲線から抽出することができる。このデータから、炭化および活性化が施されたSWCNTシート(サンプル3、4)は、いずれも高い引張特性を示すことが確認された。引張強度は厚みに大きく依存し、SWCNTシートの推奨厚みは50~60μmである。さらに、SWCNTシートは、300℃と-60℃に耐えることができる。
試料の元素組成および化学状態は、XPS分析により評価した(図4)。C1sのデコンボリューションピークはそれぞれ284.4eVと285.6eVにあり、sp2(C-C結合)とsp3(C-O)結合)の混成に対応する。O1sのデコンボリューションピークは530.9、531.5、532.3eVにあり、物理吸着したO、O-H、C-OHに対応する。CNTの純度は、sp2混成炭素原子の割合によって決定することができ、炭素の割合は洗浄処理によって増加する。ラマンスペクトルと関連して、XPSの結果は、sp2結合がSWCNTシートで支配的であることを実証している。
白金を担持させたSWCNTシートの高分解能Pt4fスペクトル(図9)には、71.4eVと74.8eVにそれぞれPt 4f7/2と4f5/2に相当する顕著なピークがある。このピークをデコンボリューションすると、71.2eV、72.4eV、73.7eVにそれぞれPt(0)、Pt(II)、Pt(IV)に対応する3種類の化学同位体のピークが観測された(図9(c)、図9(d))。SWCNTのC1sスペクトルは、白金でコーティングした後、sp2混成に対応するピークが減少し、sp3混成が増加することが示された。詳細な分析により、金属白金が支配的であり、金属と基板との間に強い相互作用があることが証明された(図9(a)、図9(b))。
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (8)

  1. 比表面積が700~1500g、細孔の孔径が3~15nm、引張強度が45~70MPa、ヤング率が1600~2400MPaであるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解用電極であって、
    白金の担持量が11~154μg/cm の範囲内である、電気化学的水分解用電極
  2. 前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、
    前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されている、請求項に記載の電気化学的水分解用電極。
  3. カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体であって、
    比表面積が700~1500m /g、細孔の孔径が3~15nm、引張強度が45~70MPa、ヤング率が1600~2400MPaであり、請求項1に記載の電気化学的水分解用電極に用いるためのものである、カーボンナノチューブ成形体。
  4. 前記カーボンナノチューブ成形体における炭素の含有量が98質量%以上である、請求項に記載のカーボンナノチューブ成形体。
  5. 前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートである、請求項に記載のカーボンナノチューブ成形体。
  6. 比表面積が700~1500g、細孔の孔径が3~15nm、引張強度が45~70MPa、ヤング率が1600~2400MPaであるカーボンナノチューブ成形体と、前記カーボンナノチューブ成形体に担持された白金とを含む電気化学的水分解電極を備える、電気化学的水分解装置であって、
    電気化学的水分解用電極における白金の担持量が11~154μg/cm の範囲内である、電気化学的水分解装置。
  7. 電気化学的水分解用電極における前記カーボンナノチューブ成形体が、カーボンナノチューブシートであり、
    前記カーボンナノチューブシートが、金属構造物の表面、または、炭素繊維もしくは炭素繊維からなる炭素繊維構造体の表面に担持されている、請求項に記載の電気化学的水分解装置。
  8. ーボンナノチューブ、分散剤および分散媒を含み、単糖類を含まない分散液と、セルロースナノファイバーを含み、単糖類を含まない溶液とを混合して、単糖類を含まない混合物を得る工程と、
    得られた混合物を型に供給し、25~80℃の温度環境下で乾燥させて、カーボンナノチューブを含む固化物を得る工程と、
    固化物を洗浄し、固化物から分散剤を除去する工程と、
    固化物を焼成して、前記セルロースナノファイバーを炭化する工程と、
    焼成後の固化物の表面に活性化処理を施し、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ成形体を得る工程と、
    マグネトロンスパッタリングにより、得られたカーボンナノチューブ成形体に白金を蒸着させる工程を含む、電気化学的水分解用電極の製造方法。
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