JP7374932B2 - 金属粒子、それを用いた磁性体ペースト、圧粉磁心及びインダクタ、並びに金属粒子の製造方法 - Google Patents

金属粒子、それを用いた磁性体ペースト、圧粉磁心及びインダクタ、並びに金属粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属粒子、それを用いた磁性体ペースト、圧粉磁心及びインダクタ、並びに金属粒子の製造方法に関する。
小型携帯機器の高機能化及び多機能化に伴い、当該機器に使用されるインダクタとして、大電流に対応したもの、すなわちパワーインダクタが必要となってきている。インダクタに大電流を流すためには、インダクタを構成する材料である磁性材料として、飽和磁束密度の高いものを用いることが有利である。インダクタに従来用いられてきた磁性材料は主としてフェライトであるところ、近年ではそれよりも飽和磁束密度の高い材料である金属系材料が注目されている。金属系を使用する際には、インダクタにおける渦電流損失を低減させるために絶縁コートを施したコアシェル粒子が通常必要とされている。
金属系の磁性材料としては、例えば、鉄、シリコン、クロム、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを含む合金が知られている(特許文献1参照)。同文献においては、粒子径の異なる複数種類の金属系の磁性粒子を組み合わせて用いることで、インダクタにおける渦電流損失を低減させ、高効率及び高インダクタンスを確保している。具体的には、同文献においては、平均粒径が10~28μmである第1金属磁性粒子と、平均粒径が1~4.5μmである第2金属磁性粒子と、表面に配置された絶縁膜を含み、粒径が300nm以下である第3金属磁性粒子とを含む、磁性体組成物が提案されている。
US2018/061550A1
磁性材料の飽和磁束密度を高めるには、磁性粒子の充填性が重要な因子の一つである。この目的のためには、サブミクロンサイズの粒径を有する磁性粒子を用いることが有利である。しかしサブミクロンサイズの粒径を有する磁性粒子は、微粒であるがゆえに凝集しやすく、そのことに起因して混合が容易でない。その結果、粒子の充填性が低下しやすい。上述した特許文献1に記載の磁性粒子の混合物も充填性に課題を有するものである。したがって本発明の課題は、充填性の高い磁性粒子を提供することにある。
前記の課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した結果、サブミクロンサイズの粒径を有する磁性粒子の粒度分布をコントロールすることが、粒子の充填性を高める点から有利であることを知見した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。すなわち本発明は、磁性金属元素を含有してなる金属粒子であって、
前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であり、
SEM50が0.2μm以上1.5μm以下である金属粒子を提供することによって前記の課題を解決したものである。
また本発明は、前記の金属粒子の好適な製造方法として、
チャンバー内に発生させた層流状態のプラズマフレーム内に、磁性金属元素を含む母粉を供給して該プラズマフレーム内で該母粉をガス化し、ガス化した該母粉を冷却して金属粒子を生成させる工程を有し、
前記チャンバー外であって且つプラズマトーチの直下に、前記プラズマフレームを包囲する環状壁部を配置した状態下に前記プラズマフレームを発生させ、
前記プラズマフレームのフレーム長さに対する前記環状壁部の長さが0.05以上0.90以下となるように該プラズマフレームを発生させる金属粒子の製造方法を提供するものである。
図1は、本発明の金属粒子を製造するDCプラズマ装置の一例を示す模式図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の金属粒子は磁性金属元素を含有してなるものである。本発明の金属粒子は単一の磁性金属元素から構成されていてもよく、2種以上の磁性金属元素の合金から構成されていてもよく、あるいは1種以上の磁性金属元素と、1種以上の非磁性金属元素との合金から構成されていてもよい。本発明にいう磁性とは強磁性のことである。したがって本発明で用いられる磁性金属元素は強磁性を有する。本発明においては、強磁性を有する金属元素として、Fe、Co及びNiの少なくとも1種を用いることが、飽和磁束密度を高める観点及び経済性の観点から好ましい。これらの中でも、例えばFeを用いる場合、単一のFeだけでなく、Feを用いた合金としてFeSi合金(FeSi、FeSiCr、FeSiAl、FeSiBを含む)、FeNi合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiCu、FeNiNbを含む)、FeCo合金(FeCo、FeCoV、FeCoNiを含む)などが好ましく用いられる。
本発明の金属粒子は、特定の粒度分布を有することを特徴の一つとするものである。詳細には、本発明の金属粒子は、走査型電子顕微鏡観察によって測定された累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であることが好ましい。DSEM50は一次粒子の粒径を表し、D50は複数個の一次粒子の凝集体である二次粒子の粒径を表すところ、D50/DSEM50が上述した値以下であることによって、本発明の金属粒子は、粒子どうしの凝集の度合いが低く、一次粒子の割合が高いものとなる。このことに起因して、本発明の金属粒子は良好な充填性を有し、飽和磁束密度を高めることが容易となる。なお本発明において一次粒子とは、外見上の幾何学的形態から判断して、粒子としての最小単位と認められる物体のことである。
金属粒子の充填性を一層高める観点からD50/DSEM50の値は3.0以下であることが更に好ましく、2.5以下であることが一層好ましい。D50/DSEM50の下限値は理論的には1であるところ、1.5が現実的である。
50/DSEM50の値は上述のとおりであるところ、D50そのものの値は3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることが更に好ましく、1.5μm以下であることが一層好ましい。またその下限は、0.2μmであることが好ましい。D50をこの値以下に設定することで、金属粒子の取り扱い性を良好に維持しつつ、飽和磁束密度を高めることが容易となるので好ましい。
一方、DSEM50の値に関しては、0.20μm以上であることが好ましく、0.25μm以上であることが更に好ましく、0.30μm以上であることが一層好ましい。またその上限値は、1.5μmであることが好ましく、1.0μmであることが更に好ましく、0.8μmであることが一層好ましい。DSEM50の値をこの範囲に設定することで、金属粒子の取り扱い性を良好に維持しつつ、飽和磁束密度を高めることが容易となるので好ましい。
本発明の金属粒子は、D50/DSEM50の値が上述の範囲であることに加えて、走査型電子顕微鏡観察によって測定された累積体積90容量%における体積累積粒径DSEM90に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90の比D90/DSEM90が10以下であることが好ましい。D90/DSEM90を10以下とすることで、本発明の金属粒子を用いてインダクタを製造した場合に、該金属粒子の充填密度を高めることができ、特に磁性の高いインダクタとすることができる。D90/DSEM90は7以下であることがより好ましい。D90/DSEM90の下限値は理論的には1であるところ、2.5が現実的である。
90/DSEM90の値は上述のとおりであるところ、D90そのものの値は6.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることが更に好ましく、4.5μm以下であることが一層好ましい。またその下限は、0.3μmであることが好ましい。D90の値をこの範囲に設定することで、金属粒子の充填密度を高めることが容易となるので好ましい。
一方、DSEM90の値に関しては、上述したDSEM50の値よりも大きいことを条件として、0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることが更に好ましく、0.5μm以上であることが一層好ましい。またその上限値は、3.0μmであることが好ましく、2.5μmであることが更に好ましく、1.5μmであることが一層好ましい。DSEM90の値をこの範囲に設定することで、金属粒子の充填密度を高めることが容易となるので好ましい。
本発明においてDSEM50及びDSEM90は、金属粒子の走査型電子顕微鏡像から、粒子どうしが重なり合っていないものを無作為に1000個選んで粒径(ヘイウッド径)を測定し、次いで、得られた粒径から、粒子が球であると仮定したときの体積を算出し、該体積の累積体積50容量%及び90容積%における体積累積粒径と定義される。
一方、D50及びD90の測定は、例えば以下の方法で行うことができる。すなわち、0.1gの測定試料と水50mLとを混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製、US-300T)で1分間分散させる。その後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置として、例えばマイクロトラックベル製MT3300 EXIIを用いて粒度分布を測定する。
以上の構成を有する本発明の金属粒子は、金属粒子の組成に依存することなく、サブミクロンサイズの粒径を有しつつも、粒子どうしの凝集が少ないものである。また、本発明の金属粒子は、サブミクロンサイズの粒径を有し且つ粒子どうしの凝集が少ないので、充填性を高めることができ、ひいては飽和磁束密度を高めることができる。ところで、粒子の充填性を高めるために、粒径の異なる複数種類の粒子をブレンドする手法が知られている。しかしこの手法は、複数種類の粒子を用意する必要があるという点や、混合工程が必要であるという点で、工業的・経済的に有利とはいえない。これに対して本発明の金属粒子は、それのみを用いることで粒子の充填性を高め得るという点で、工業的・経済的に有利である。
本発明の金属粒子は、その結晶子サイズが50nm以上150nm以下であることが好ましく、60nm以上130nm以下であることが更に好ましく、70nm以上120nm以下であることが一層好ましい。このように結晶子サイズの大きい金属粒子とすることで粒界の少ない粒子となり純度が高くなるため、飽和磁束密度が向上するので好ましい。この範囲の結晶子サイズを有する金属粒子は、例えば後述する製造方法によって好適に製造することができる。
結晶子サイズは、用いる金属粒子の種類によってその測定方法が異なるが、概して測定範囲(20°~150°)内で最も強度の高い結晶面におけるX線回折ピークのピーク幅(半値幅)から下記のシェラーの式により算出する。例えば、金属粒子としてFeCo合金を用いる場合、CuKα線を使用して、測定範囲(2θ:20°~150°)、サンプリング幅0.01°、スキャンスピード 2°/minで金属粒子のX線回折強度を測定したときの結晶面<110>におけるX線回折ピークのピーク幅(半値幅)から算出される。
シェラーの式:D=Kλ/βcosθ
D:結晶子サイズ(単位:nm)
K:シェラー定数(0.9400)
λ:X線の波長(単位:Kα1 1.54056Å)
β:半値幅(単位:rad)
θ:回折角(単位:rad)
本発明の金属粒子の形状に特に制限はなく、例えば球状、フレーク状、多面体状など種々の形状を採用することができる。金属粒子の充填性を高め、飽和磁束密度を高める観点から、金属粒子の形状は、球状であることが好ましい。球状であるとは、以下の方法で測定した円形度係数が好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上であることをいう。円形度係数は、次の方法で算出される。金属粒子の走査型電子顕微鏡像を撮影し、粒子どうしが重なり合っていないものを無作為に1000個選び出す。粒子の二次元投影像の面積をSとし、周囲長をLとしたときに、粒子の円形度係数を4πS/Lの式から算出する。各粒子の円形度係数の算術平均値を上述した円形度係数とする。粒子の二次元投影像が真円である場合は、粒子の円形度係数は1となる。
本発明の金属粒子は、磁性金属材料を含むことに加えて、非磁性金属元素を更に含んでいてもよい。特に、非磁性金属元素は、磁性金属元素を含有するコア部の表面に配置されるシェル部に含有されていることが、渦電流損失の低減の観点から有利である。とりわけ、本発明の金属粒子は、磁性金属元素を含有するコア部と、該コア部の表面に配置され且つ非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部とを具備することが、渦電流損失の更に一層の低減の観点から好ましい。この非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部は、コア部の電気絶縁層として作用するので、そのことに起因して渦電流損失が一層低減する。シェル部は電気絶縁性を有する限りにおいて結晶質であってもよく、あるいは非晶質であってもよい。
前記の非磁性金属元素は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素(ただし磁性を有するものを除く。)、Ba及びSrの少なくとも1種であることが、シェル部の電気絶縁性を高める観点から好ましく、Al、Si及びZrのいずれかであることが一層好ましい。これらの非磁性金属元素は1種を単独で用いることもでき、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
特に、後述する方法で、コア部及びシェル部を有する金属粒子を製造する場合には、シェル部を構成する非磁性金属元素として、該元素の酸化物の沸点が、コア部を構成する金属の沸点よりも低いものを用いることが、製造の容易さの点から好ましい。
コア部は、磁性金属元素のみから構成されていてもよく、あるいは磁性金属元素及び非磁性金属元素の双方を含む合金から形成されていてもよい。一方、シェル部は非磁性金属元素の酸化物のみからなり、磁性金属元素を非含有であることが好ましい。
コア部及びシェル部を有する金属粒子におけるシェル部は、電気絶縁性の観点からは、コア部の全域を満遍なく被覆していることが好ましい。しかし一方で、シェル部の被覆量が多くなることは、金属粒子全体としての磁力の低下につながる。これらの事項を勘案すると、金属粒子全体におけるシェル部の占める割合は、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることが一層好ましい。かかる含有割合とすることで、本発明でいう所望の粒度分布にしやすくすることもできる。金属粒子におけるシェル部の占める割合は、例えばシェル部がSiOからなる場合には、ICP分析により得られるSi濃度からSiO濃度に換算することによって測定することができる。シェル部が他の物質からなる場合も同様に測定できる。
シェル部がコア部の表面全域を被覆しているか否かにかかわらず、シェル部の厚みは0.5nm以上40nm以下であることが好ましく0.5nm以上30nm以下であることが更に好ましく、0.5nm以上20nm以下であることが一層好ましい。シェル部の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察、及びエネルギー分散型X線分析(EDS)による測定でシェル部を特定し、その厚みを測定することで求められる。
次に本発明の磁性粒子の好適な製造方法について説明する。本製造方法では、磁性金属元素を含む母粉を直流熱プラズマ(以下、「DCプラズマ」ともいう。)法に付して、該母粉から磁性金属粒子を生成させる。詳細には、本製造方法は、チャンバー内に発生させた層流状態のプラズマフレームに母粉を供給して、該母粉をガス化させ、ガス化した母粉を冷却して磁性金属粒子を生成させる工程を有する。磁性金属粒子が単一の磁性金属元素から構成される場合には、母粉として、当該単一の磁性金属元素からなるものを用いればよい。磁性金属粒子が2種以上の磁性金属元素の合金から構成される場合には、母粉として、当該合金からなるものを用いればよい。例えば目的とする磁性金属粒子がFeCo合金からなる場合には、FeCo合金からなる母粉を用いればよい。母粉の製造方法に特に制限はなく、例えばアトマイズ粉、湿式還元粉、電解粉等を用いることができる。
本製造方法に好適に用いられるDCプラズマ装置を図1に示す。同図に示すように、DCプラズマ装置1は、粉末供給装置2、チャンバー3、DCプラズマトーチ4、回収ポット5、粉末供給ノズル6、ガス供給装置7及び圧力調整装置8を備えている。更にDCプラズマ装置1には、チャンバー3外であって且つプラズマトーチ4の直下に、プラズマフレームを包囲する環状壁部9が配置されている。この装置においては、母粉は、粉末供給装置2から粉末供給ノズル6を通じてDCプラズマトーチ4内部を通過する。プラズマトーチ4には、熱プラズマ発生用のガス(以下「プラズマガス」ともいう。)がガス供給装置7から供給されプラズマフレームが発生する。また、DCプラズマトーチ4で発生させたプラズマフレーム内で母粉がガス化され、チャンバー3に放出された後、ガス化された母粉が冷却され、磁性金属粒子の微粉末となって回収ポット5内に蓄積回収される。チャンバー3の内部は、圧力調整装置8によって粉末供給ノズル6よりも相対的に陰圧が保持されるように制御されており、母粉のDCプラズマトーチ4への供給を容易にするとともに、プラズマフレームを安定して発生する構造をとっている。なお図1に示す装置は、DCプラズマ装置の一例であって、本発明の金属粒子の製造はこの装置に限定されるものではない。
プラズマフレーム内で母粉に十分なエネルギーを供給して、サブミクロンオーダーの微粒子を首尾よく形成する観点から、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整することが好ましい。プラズマフレームが層流状態であるか否かは、プラズマフレームを、フレーム幅が最も太く観察される側面から観察したときに、フレーム幅に対するフレーム長さの縦横比(以下、フレームアスペクト比)が3以上であるか否かによって判断することができる。具体的には、フレームアスペクト比が3以上であれば層流状態と判断することができ、3未満であれば乱流状態と判断することができる。
プラズマフレームが層流状態で太く長くなるようにするためには、プラズマ出力とプラズマガス流量を調整することが有利である。詳細には、DCプラズマ装置のプラズマ出力は、2kW以上100kW以下、更に2kW以上40kW以下であることが好ましい。プラズマガスのガス流量に関しては、0.1L/min以上25L/min以下であることが好ましく、0.5L/min以上21L/min以下であることが更に好ましい。プラズマガスとしては、水素ガス等の還元ガスや、窒素ガス及びアルゴンガス等の不活性ガスが好ましい。
プラズマフレーム内で十分な熱エネルギーを母粉に供給し、サブミクロンオーダーの微粒子を首尾よく形成する観点に加えて、粗粒の母粉を残存しにくくする観点から、母粉の供給量に対するプラズマ出力の比は、好ましくは0.01kW・min/g以上20kW・min/g以下であり、更に好ましくは0.05kW・min/g以上15kW・min/g以下である。
また、プラズマフレームを層流状態に安定的に保ちつつ、母粉のガス化に必要な流速を確実に得る観点から、上述の範囲のプラズマ出力及びガス流量を保ちつつ、プラズマ出力に対するプラズマガス流量の比(単位:L/(min・kW))を、好ましくは0.50以上2.00以下、より好ましくは0.70以上1.70以下、更に好ましくは0.75以上1.50以下に設定する。
特に本製造方法においては、図1に示すとおり、プラズマトーチ4の直下に、プラズマフレームを包囲する環状壁部9を配置した状態下にプラズマフレームを発生させるようにしている。環状壁部9はプラズマを発生させるプラズマトーチ4とは異なる部位をいい、この環状壁部9によってプラズマフレームの温度低下を抑制し、それによって粒成長を促進させることで、所望の粒度分布を有する金属粒子を首尾よく得ることができるものである。また、所望の結晶子サイズを有する金属粒子を首尾よく得ることができる。
環状壁部9を用いることでプラズマフレームの温度低下を一層抑制する観点から、プラズマフレームのフレーム長さに対する環状壁部9の長さ(図1中、符号Lで示す長さ)の比が0.05以上0.90以下、特に0.10以上0.90以下、とりわけ0.30以上0.90以下となるようにプラズマフレームを発生させることが好ましい。
同様の観点から、環状壁部9が円環体である場合、環状壁部9の内径に対するプラズマフレームの直径の比が、0.03以上0.55以下、特に0.06以上0.55以下、とりわけ0.15以上0.55以下となるようにプラズマフレームを発生させることが好ましい。
環状壁部9は、環状体であればよく、その断面形状に特に制限はない。例えば断面が円形や矩形の環状体を環状壁部9として用いることができる。プラズマフレームの温度低下を効果的に抑制する観点からは、環状壁部9は円環体、つまり円筒であることが好ましい。この場合、円環体における横断面の中心の位置と、プラズマフレームの発生位置とが概ね一致していることが、プラズマフレームの温度低下を効果的に抑制する観点から好ましい。
図1に示すDCプラズマ装置1を用いて、コア部と電気絶縁性のシェル部とを有する金属粒子を製造する場合には、母粉として、磁性金属元素を含む第1母粉と、非磁性金属元素の酸化物からなる第2母粉とを混合したものを用いればよい。母粉のプラズマ噴射性とコストの観点から、母粉の粒径D50は、第1母粉及び第2母粉のいずれにおいても、好ましくは3.0μm以上50μm以下、更に好ましくは5.0μm以上30μm以下である。母粉のD50の測定は、上述した金属粒子のD50の測定と同様の方法で行うことができる。
得られる金属粒子の製造効率の観点から、母粉の供給量は、第1母粉及び第2母粉の合計量で表して5g/min以上200g/min以下であることが好ましく、5g/min以上100g/min以下であることが更に好ましい。また、第1母粉と第2母粉との割合に関しては、第1母粉と第2母粉との合計中に第2母粉が1~5質量%含まれることが好ましい。
母粉の形状は、第1母粉及び第2母粉のいずれにおいても特に制限はなく、例えば樹枝状、棒状、フレーク状、キュービック状、球状などが挙げられる。プラズマトーチへの供給効率を安定化させる観点から、球状の母粉を用いることが好ましい。
第1母粉と第2母粉とはそれらの沸点が特定の関係にあることが好ましい。詳細には、第1母粉としてその沸点が第2母粉の沸点よりも高いものを用いることが有利である。このような温度関係を有する第1母粉及び第2母粉からなる混合母粉を用いることで、粒子の生成過程において、先ず、蒸発気化した第1母粉が冷却されてコア部の核形成、凝集及び凝縮が起こり、コア部が形成される。次いで、蒸発気化した第2母粉(第2母粉は第1母粉よりも沸点が低い。)の冷却による核形成、凝集及び凝縮が、コア部の表面で起こりシェル部が形成される。
上述した方法以外にも、例えばアトマイズ法によって磁性金属元素を含むコア部を形成し、その表面に湿式で非磁性金属元素の酸化物層を形成することも可能である。しかし、その場合には、酸化物層の形成時にコア部の表面が酸化されやすく、そのことに起因して、粒子の磁力が低下するおそれがある。また、コア部の形成にDCプラズマ法ではなく、RFプラズマ法を用いることも可能であるが、RFプラズマ法で得られた粒子は粒径が小さ過ぎて凝集しやすく、粒子の充填性を高めることができない。また粒径が小さくなるほど磁力が低下するという不都合もある。これらの方法に対して、上述のDCプラズマ法を用いた製造方法では、磁力の低下や充填性の低下などの不都合は生じない。
このようにして得られた金属粒子は、その形状が球状となりやすい。この金属粒子はその集合体である金属粉として、焼結体の原料に好適に用いられる。この焼結体は例えばパワーインダクタのコア材として好適に用いられる。この場合、渦電流損失の低減の観点から、金属粒子は、コア部と電気絶縁性のシェル部とから構成されていることが有利である。一方、金属粒子の集合体としての金属粉にバインダやビヒクルを含有させて磁性体ペーストの状態にして用いることもできる。また、上述した金属粉や磁性体ペーストを圧縮成形して圧粉磁心にすることもできる。更に、このペーストを所定形状に成形して乾燥固化させた固化成形体を、パワーインダクタのコア材として用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1に示すDCプラズマ装置1を用いて、下記に従いFeCo合金からなるコア部と、SiOからなるシェル部とから構成される金属粒子を製造した。
第1母粉としてFeCo合金(Fe50%、Co50%)からなるアトマイズ粉(粒径10μm、球状)を用いた。第2母粉としてSiO粉(比表面積50m/g、球状)を用いた。(第2母粉の使用量)/(第1母粉の使用量+第2母粉の使用量)を2.0%とした。両母粉を混合して得られた混合母粉を装置1に供給した。供給量を12g/分に設定し、粉末供給ノズル6を通じてDCプラズマトーチ4に混合母粉を供給した。プラズマガスとしては、窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いた。窒素ガスの流量は6L/分に設定し、アルゴンガスの流量は11L/分に設定した。また、プラズマ出力は22kWに設定した。生成したプラズマフレームについて、フレーム幅が最も太く観察される側面から該プラズマフレームを写真撮影し、画像を二値化してフレーム幅に対するフレーム長さの比であるフレームアスペクト比を測定した。その結果、フレームアスペクト比は4であり、プラズマフレームは層流であることが確認された。また、環状壁部9としては円環体を用いた。そして、プラズマフレームのフレーム長さに対する環状壁部9の長さの比が0.80となるように、且つプラズマフレームの直径に対する環状壁部9の内径の比が、0.50となるようにプラズマフレームを発生させた。
〔実施例2〕
実施例1において、(第2母粉の使用量)/(第1母粉の使用量+第2母粉の使用量)を1.5%とした以外は実施例1と同様にして金属粒子を得た。
〔比較例1〕
実施例1において、(第2母粉の使用量)/(第1母粉の使用量+第2母粉の使用量)を7%とした。また、プラズマ装置1のチャンバー3内に環状壁部9を設置しなかった。これら以外は実施例1と同様にして金属粒子を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた金属粒子について、上述の方法でDSEM50、D50、DSEM90、D90、円形度係数、コア部の結晶子サイズ及びシェル部の厚みを測定した。更に以下の方法で飽和磁化及び圧粉密度を測定した。それらの結果を以下の表1に示す。
〔飽和磁化の測定方法〕
振動試料型磁力計(東英工業社製 VSM-5)を用いて飽和磁化を測定した。
〔圧粉密度の測定方法〕
圧粉抵抗測定システム(三菱化学アナリテック社製 PD-51)と抵抗率測定器(三菱化学アナリテック社製 MCP-T600)を用いて圧粉密度を測定した。金属粒子(サンプル)5gをプローブシリンダへ投入し、プローブユニットをPD-51へセットした。油圧ジャッキによって6.28kNの荷重をかけたときの試料厚みから、圧粉密度を算出した。
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた金属粒子は、比較例で得られた金属粒子に比べて圧粉密度が高く、充填性が高いものであることが判る。また、各実施例で得られた金属粒子は、比較例で得られた金属粒子に比べてシェル部の割合を低減することができたことに起因して、飽和磁化も改善できた。
〔実施例3〕
実施例1において、第1母粉をFeNi合金(Fe50%、Ni50%)からなるアトマイズ粉(粒径10μm、球状)に変更した。また、(第2母粉の使用量)/(第1母粉の使用量+第2母粉の使用量)を1.5%に変更した。これら以外は実施例1と同様にして、金属粒子を得た。
〔比較例2〕
実施例3において、プラズマ装置1のチャンバー3内に環状壁部9を設置しなかった。これ以外は実施例3と同様にして、金属粒子を得た。
〔評価〕
実施例3及び比較例2で得られた金属粒子について、上述の方法でDSEM50、D50、DSEM90、D90、円形度係数、コア部の結晶子サイズ、飽和磁化及び圧粉密度を測定した。それらの結果を以下の表2に示す。
表2に示す結果から明らかなとおり、実施例3で得られた金属粒子は、比較例2で得られた金属粒子に比べて圧粉密度が高く、充填性が高いものであることが判る。
本発明によれば、充填性の高い金属粒子が得られる。この金属粒子を用いることで、飽和磁束密度の高いインダクタを容易に得ることが可能となる。
1 DCプラズマ装置
2 粉末供給装置
3 チャンバー
4 DCプラズマトーチ
5 回収ポット
6 粉末供給ノズル
7 ガス供給装置
8 圧力調整装置
9 環状壁部

Claims (13)

  1. 磁性金属元素を含有してなる金属粒子であって、
    円形度係数が0.85以上である球状であり、
    前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積50容量%における体積累積粒径DSEM50に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50の比D50/DSEM50が4以下であり、
    SEM50が0.2μm以上1.5μm以下である金属粒子。
  2. 50が3.0μm以下である請求項1に記載の金属粒子。
  3. 前記金属粒子の走査型電子顕微鏡観察による累積体積90容量%における体積累積粒径DSEM90に対するレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D90の比D90/DSEM90が10以下である請求項1又は2に記載の金属粒子。
  4. 結晶子サイズが50nm以上150nm以下である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の金属粒子。
  5. 球状である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の金属粒子。
  6. 前記磁性金属元素は、Fe、Co及びNiの少なくとも1種を含む請求項1ないし5のいずれか一項に記載の金属粒子。
  7. 非磁性金属元素を更に含んでなり、
    前記非磁性金属元素は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素(ただし磁性を有するものを除く。)、Ba及びSrの少なくとも1種である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の金属粒子。
  8. 磁性金属元素を含有するコア部と、
    前記コア部の表面に配置され且つ非磁性金属元素の酸化物を含有するシェル部とを具備する請求項7に記載の金属粒子。
  9. 金属粒子におけるシェル部の占める割合が、1.0質量%以上5.0質量%以下である請求項8に記載の金属粒子。
  10. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなる磁性体ペースト。
  11. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなる圧粉磁心。
  12. 請求項1ないし9のいずれか一項に記載の金属粒子を含んでなるインダクタ。
  13. チャンバー内に発生させた層流状態のプラズマフレーム内に、磁性金属元素を含む母粉を供給して該プラズマフレーム内で該母粉をガス化し、ガス化した該母粉を冷却して金属粒子を生成させる工程を有し、
    前記チャンバー外であって且つプラズマトーチの直下に、該プラズマトーチと異なる部位であり且つ前記プラズマフレームを包囲する環状壁部を配置し
    前記環状壁部が円筒からなり、該円筒における横断面の中心の位置と、プラズマフレームの発生位置とが一致した状態下に前記プラズマフレームを発生させ、
    前記プラズマフレームのフレーム長さに対する前記環状壁部の長さの比が0.05以上0.90以下となるように該プラズマフレームを発生させる金属粒子の製造方法。
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