JP7372585B1 - 摺動部材および摺動部材を製造する方法 - Google Patents

摺動部材および摺動部材を製造する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特願2023-026107号で提案された摺動部材よりも高速回転領域での温度上昇が抑制される摺動部材を提供する。【解決手段】摺動部材は、円筒状の金属基材と、金属基材の内周面に形成される多孔質層と、多孔質層を被覆する摺動層を備える。多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成される。摺動層は、樹脂組成物で形成される。摺動部材は、内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材および摺動部材を製造する方法に関する。
現在、エネルギー効率やCO2排出量の観点から、従来のエンジンを動力とする自動車から、バッテリーとモータを動力とする電気自動車(Electric Vehicle;EV)などへの置き換えが進められている。モータの出力は回転数とトルクに依存し、回転数を高めることでトルクを抑えて体積を小さくできるため、部品の小型軽量化や省動力化に対してモータの高回転化は欠かせない。また、自動車の快適性を支えるカーエアコンに対しても、駆動モータ内蔵の電動コンプレッサへの小型軽量化のニーズはますます強くなっている。
国内自動車メーカーなどが集まる自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI)は、内燃機関から電気自動車(EV)用モータやその関連技術に研究の軸足を移すと公表している。現在のEV用モータの回転数は13,000rpm前後が主流であるが、近い将来に20,000rpm以上になるとの予測があり、30,000~50,000rpmの超高回転を見据えた研究が推進されている。なかでもEVの駆動用モータや電動コンプレッサには、小型軽量化と高出力化を両立するために高速回転化への対応が求められている。
モータやコンプレッサなどの主軸を支持する回転機械には、その回転体を支える軸受やシールなどの要素部が重要な役割を果たしている。これら機械要素は、稼働時間の経過とともにその摺動面が劣化し、摩擦係数の増大や摩耗が発生する。すると、発熱によって温度上昇が生じ、回転機械のいろいろな部分で劣化が始まり、最後には機械としての機能を満足できなくなり寿命に至る。また、モータの高回転化に伴って生じる摩擦や発熱により、回転軸を支えている軸受の隙間にあるはずの油が流出したり、隙間に異物が混入したりすると、摺動面の温度や振動が異常に高くなり、摺動材料の表面が溶けだして焼付に至る。このように、機械部品の性能低下や故障は摩擦や摩耗が主要原因である場合が多い。特に、コンプレッサで使用されるすべり軸受への潤滑には、封入されている冷媒と冷凍機油を用いるが、潤滑状態はコンプレッサの使用条件によって大きく変化し、液化した冷媒のみの場合やドライに近い場合など厳しい潤滑状態が想定される。
したがって、駆動系の高回転化や軸の偏芯などによって油膜の形成し難い境界潤滑の使用環境においては、耐摩耗性や耐焼付性に優れたすべり軸受が必要とされる。さらに、軸と軸受の隙間、軸と接触する軸受内径面の形状や合わせ目による突起の有無など、軸受の寸法精度が機械寿命に対して大きく依存するため、すべり軸受には高精度な組付け精度も要求される。
また、コンプレッサで使用されるすべり軸受に対しては、フロン規制や地球温暖化対策に伴う新冷媒への切り替えにより、軸受周辺の使用環境が厳しくなるため、さらなる高性能な軸受が要求される。
特許文献1では、自動車部品等の高速回転を要求される箇所において、転がり軸受を使用することが提案されている。しかしながら、転がり軸受は、すべり軸受に比べて寿命が短いため、高速回転下でも使用できる、より長寿命のすべり軸受が望まれる。
本願出願人は、高速回転領域での耐摩耗性および耐焼付性に優れた摺動部材として、摺動面に継目のない摺動部材およびその製造方法を既に提案している(特願2023-026107号)。
特開2018-179049号公報
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、特願2023-026107号で提案された摺動部材よりも高速回転領域での温度上昇が抑制される摺動部材および摺動部材を製造する方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に係る摺動部材は、
円筒状の金属基材と、
前記金属基材の内周面に形成される多孔質層と、
前記多孔質層を被覆する摺動層を備え、
前記多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成され、
前記摺動層は、樹脂組成物で形成され、
内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域を有する。
このような態様によれば、摺動部材の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域が設けられているところ、この領域は、周囲には存在する樹脂組成物が存在せず、かつ非多孔質な層には多孔質層のような多数の空隙が含まれていないことから、周囲に比べて凹んだ形状であり、溝のような役割を担うようになっている。摺動部材の使用時には、当該溝の内面が被摺動物であるシャフトに接触しないため、摩擦による発熱の低減に貢献できる。これにより、高速回転領域での温度上昇が抑制され、軸受としての性能自体も向上する。特に潤滑油やグリース等が存在する場合は、摺動面への油膜形成が当該溝で保持されるため、ドライ環境下での使用よりも更なる発熱低減が予想される。
また、摺動部材の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域が設けられており、摺動面に合わせ目による突起が現れないため、継目での摩擦時に発生するトルクが低減する。これにより、消費電力の低減に貢献し、エネルギーロスを削減する。したがって、カーボンニュートラルに貢献できる。
また、EVモータや電動コンプレッサ等の高回転環境下で使用される軸受について、従来の転がり軸受から本実施形態に係る摺動部材に置き換えることが可能となり、これにより、小型軽量化につながる。
さらに、摺動面に合わせ目のある従来の摺動部材をモータやコンプレッサに適用する際には、内径切削工程(すなわち、継目部分での内面の面合わせ)が必要であったが、本実施形態に係る摺動部材であれば、摺動部材の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域が設けられており、摺動面には合わせ目による突起が現れないため、内径切削工程を削減できる。
本発明の第2の態様に係る摺動部材は、第1の態様に係る摺動部材であって、
前記領域は前記摺動部材の軸方向の一端から他端まで延びるように設けられている。
このような態様によれば、軸方向の一端から他端まで連続して摩擦による発熱低減の効果が得られるため、高速回転領域での温度上昇のさらなる抑制を実現できる。
本発明の第3の態様に係る摺動部材は、第1または2の態様に係る摺動部材であって、
前記摺動層中には、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末が分散されている。
本発明の第4の態様に係る摺動部材は、第3の態様に係る摺動部材であって、
前記摺動層中には、MoS2粉末と、ラーベス相を含まない青銅粉末のうちの少なくとも1つ以上がさらに分散されている。
本発明の第5の態様に係る摺動部材は、第1または2の態様に係る摺動部材であって、
前記樹脂組成物は、硫化銅、熱可塑性樹脂、二硫化モリブデン、黒鉛、アラミド繊維、残部がフッ素樹脂からなり、前記硫化銅を3質量%超40質量%未満、前記熱可塑性樹脂を0質量%以上4質量%未満、前記二硫化モリブデンを0質量%以上36質量%以下、前記黒鉛を0質量%以上10質量%以下、前記アラミド繊維を0質量%以上10質量%以下で含み、残部が前記フッ素樹脂である。
本発明の第6の態様に係る摺動部材は、第1~5のいずれかの態様に係る摺動部材であって、
前記多孔質層は、
CuおよびSnを含むマトリックス相と、
前記マトリックス相中に分散している硬質粒子であって、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子と、を有する。
本発明の第7の態様に係る摺動部材は、第6の態様に係る摺動部材であって、
前記多孔質層は、
前記マトリックス相中に分散している化合物相であって、Co、Fe、Ni、SiおよびCrを含む化合物相をさらに有する。
本発明の第8の態様に係る摺動部材は、第1~7のいずれかの態様に係る摺動部材であって、
前記多孔質層の厚みと前記摺動層の厚みの比率は、6:4~8:2である。
本発明の第9の態様に係る軸受は、
円筒状の金属基材と、
前記金属基材の内周面に形成される多孔質層と、
前記多孔質層を被覆する摺動層を備え、
前記多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成され、
前記摺動層は、樹脂組成物で形成され、
内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域を有する。
本発明の第10の態様に係る摺動部材を製造する方法は、
金属基材の一の面に金属単体または合金組成物からなる多孔質層を形成するステップと、
前記多孔質層を内側として前記金属基材を巻いて円筒状に整形するステップと、
前記金属基材の外径側から継目部分を溶接するステップであって、前記継目部分の上の前記多孔質層が溶融して前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が形成されるステップと、
前記多孔質層の表面に摺動層の原料樹脂を含浸させ、前記原料樹脂を焼成させることで、前記多孔質層を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層を形成するステップであって、前記非多孔質な層の表面は前記原料樹脂が含浸された状態にならないため、前記摺動部材の内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記非多孔質な層が露出した領域が形成されるステップと、
を含む。
本発明の第11の態様に係る摺動部材を製造する方法は、
金属基材の一の面に金属単体または合金組成物からなる多孔質層を形成するステップと、
前記多孔質層の表面に摺動層の原料樹脂を含浸させ、前記原料樹脂を焼成させることで、前記多孔質層を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層を形成するステップと、
前記摺動層を内側として前記金属基材を巻いて円筒状に整形するステップと、
前記金属基材の外径側から継目部分を溶接するステップであって、前記継目部分の上の前記多孔質層が溶融して前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が形成されるとともに、前記継目部分の上の前記摺動層が剥離することで、前記摺動部材の内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記非多孔質な層が露出した領域が形成されるステップと、
を含む。
本発明の第12の態様に係る方法は、第10または11の態様に係る方法であって、
前記金属基材の外周面をダイスにより拘束しつつ前記摺動層の内側に円柱状の芯金を押し込むことにより、前記摺動層の内周面をバニシ仕上げ(burnishing)するステップ、
をさらに含む。
本発明によれば、特願2023-026107号で提案された摺動部材よりも高速回転領域での温度上昇が抑制される摺動部材および摺動部材を製造する方法を提供できる。
図1は、一実施の形態に係る摺動部材の概略構成を示す斜視図である。 図2は、一実施の形態に係る摺動部材の溶接部を外周側から撮影した写真画像である。 図3は、一実施の形態に係る摺動部材の溶接部に対応する領域を内周側から撮影した写真画像である。 図4は、摺動層形成(樹脂の含浸および焼成)前の溶接部に対応する領域の断面組織の光学顕微鏡写真である。 図5は、一実施の形態に係る摺動部材の溶接部以外の領域の断面組織の反射電子組成像である。 図6は、一実施の形態に係る摺動部材を製造する方法の一例を示すフロー図である。 図7は、一実施の形態に係る摺動部材を製造する方法の別例を示すフロー図である。 図8は、原料粉末散布工程および多孔質層焼結工程を説明するための図である。 図9は、原料樹脂含浸工程を説明するための図である。 図10は、バニシ仕上げ工程を説明するための図である。 図11は、高速回転摩耗試験機の概略構成を示す図である。 図12は、実施例に係る摺動部材について、高速回転摩耗試験での計測時における荷重点の位置(負荷区分A)を説明するための図である。 図13は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材の組成等をまとめて示すテーブルである。 図14は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数N=15,000rpmの場合に計測された軸受温度の時間変化を示すグラフである。 図15は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数N=20,000rpmの場合に計測された軸受温度の時間変化を示すグラフである。 図16は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数N=25,000rpmの場合に計測された軸受温度の時間変化を示すグラフである。 図17は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数N=30,000rpmの場合に計測された軸受温度の時間変化を示すグラフである。 図18は、実施例および比較例1に係る摺動部材について、軸回転数N=35,000rpmの場合に計測された軸受温度の時間変化を示すグラフである。 図19は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数10,000~50,000rpmの範囲での軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフである。 図20は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数10,000~50,000rpmの範囲での軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。 図21は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、温度上昇率および消費電力の急上昇が起こる軸回転数の近傍範囲での軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフである。 図22は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、温度上昇率の急上昇が起こる軸回転数の近傍範囲での軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。 図23は、実施例に係る摺動部材について、高速回転摩耗試験での計測時における荷重点の位置(負荷区分B)を説明するための図である。 図24は、実施例に係る摺動部材について、負荷区分AおよびBでそれぞれ測定された軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフである。 図25は、実施例に係る摺動部材について、負荷区分AおよびBでそれぞれ測定された軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。 図26は、実施例に係る摺動部材の内径精度を示すグラフである。 図27は、比較例1に係る摺動部材の内径精度を示すグラフである。
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、組成に関する「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。また、本明細書において、「○○~△△」(○○、△△はいずれも数字)は、特に指定しない限り「○○以上△△以下」を意味する。また、本明細書において、「主成分」とは、組成物全体に対して50質量%以上含まれている成分をいう。また、本明細書において、「硬質粒子粉末」とは、焼結前の混合粉末中の粉末または摺動層の樹脂組成物中に分散している粉末をいい、「硬質粒子」とは、焼結後の多孔質層中の粒子をいう。後述するように、焼結時に硬質粒子粉末に含まれるCuとSnがマトリックス相中にある程度移動するため、多孔質層中の硬質粒子の含有量は、混合粉末中の硬質粒子粉末の配合量から変動し、硬質粒子中の各構成元素の含有量は、硬質粒子粉末中の各構成元素の含有量とは異なるものとなる(硬質粒子は、化学成分のうちSnとCuの含有率が硬質粒子粉末に比べてある程度下がった組成の粒子である)。また、本明細書において、「継目」とは、2つの物(または1つの物の2つの端)を連続するようにつないでいる部分をいい、溶接されている場合と、溶接されていない場合の両方を含む表現である。溶接されていない場合には、「継目」は、2つの物(または1つの物の2つの端)が接しているものと、わずかな隙間を空けて離れているものの両方を意味する。ここで、「わずかな隙間」とは、全体で見たときに連続するようにつないでいるものと同視できる程度であれば、具体的な幅は特に限定されないが、たとえば、全体の長さの10分の1以下であってもよいし、50分の1以下であってもよいし、100分の1以下であってもよい。また、本明細書では、溶接されていない場合の「継目」を「合わせ目」ということもある。
<摺動部材の構成>
図1は、一実施の形態に係る摺動部材10の概略構成を示す斜視図である。図2は、摺動部材10の溶接部を外周側から撮影した写真画像であり、図3は、摺動部材10の溶接部に対応する領域を内周側から撮影した写真画像であり、図4は、摺動層形成(樹脂の含浸および焼成)前の溶接部に対応する領域の断面組織の光学顕微鏡写真である。図5は、一実施の形態に係る摺動部材の溶接部以外の領域の断面組織の反射電子組成像である。図4および図5では、紙面上側が摺動部材10の内周側、紙面下側が摺動部材10の外周側に対応している。
図1~図5に示すように、摺動部材10は、たとえばすべり軸受であり、円筒状の金属基材11と、金属基材11の内周面に形成される多孔質層12と、多孔質層12を被覆する摺動層13と、を備えている。このうち多孔質層12は、金属単体または合金組成物で形成されており、摺動層13は、樹脂組成物で形成されている。
図1に示すように、すべり軸受としての摺動部材10は、円筒状の内周面を形成する摺動層13にて被摺動物である軸20を支持するようになっている。摺動層13の内径真円度は50μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。この場合、摺動層13の内周面での摩擦が低減するため、さらなる摩耗および発熱の低減を実現できる。
摺動部材10は、軸20が回転運動する形態、あるいは直線運動する形態のいずれであっても適用可能である。摺動部材10は、たとえば、自動車等のショックアブソーバ等、直線運動する形態で油が用いられる摺動部に使用されてもよい。また、摺動部材10は、歯車状の部材が回転することで、油を送出するギアポンプ等、回転運動する形態で油が用いられる摺動部に使用されてもよい。以下、摺動部材10の各構成要素について詳細に説明する。
図1~図3に示すように、金属基材11は、円筒形状を有している。金属基材11は、たとえば金属板材を巻いて円筒状に整形したのち、継目部11a(図2参照)を溶接することで製造され得る。金属基材11の材質は、軸受の裏金母材として利用できる程度の強度および形状安定性を有するものであれば、特に限定されないが、たとえば、低炭素鋼(SPCC、SS400など)であってもよいし、Fe系の板材にCuがめっきされた銅メッキ鋼板であってもよい。
多孔質層12は、円筒形状を有しており、金属基材11の表面に、金属粉末(後述する混合粉末、または噴霧時に混合粉末を合金化させた合金粉末)が焼結されて形成されている。多孔質層12の厚さは、金属粉末が少なくとも2個以上重なって焼結され得る厚さであってもよく、たとえば0.5mm以下であってもよい。
摺動層13は、多孔質層12に樹脂組成物が所定の厚さで含浸され、多孔質層12に含浸された樹脂組成物が焼成されて形成される。摺動層13の厚さ(金属基材11の表面からの厚さ)は、多孔質層12が露出しないように、多孔質層12の厚さより平均して厚く設定されてもよい。多孔質層12の厚みと摺動層13の厚みの比率は、6:4~8:2であってもよく、たとえば7:3であってもよい。
摺動層13の樹脂組成物は、主成分としてフッ素樹脂を含む。樹脂組成物のベース樹脂となるフッ素樹脂としては、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプリペンコポリマー)、EFFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)などが用いられてもよい。
樹脂組成物は、フッ素樹脂としてPTFEを主成分として含み、PTFE以外のPFA等の他のフッ素樹脂を任意の添加物として含んでもよい。任意の成分として含まれる他のフッ素樹脂の含有量は、樹脂組成物中0vol%以上20vol%以下であってもよい。
PTFE樹脂の市販品としては、ポリフロン(登録商標) D-210C、F-201(ダイキン工業社製)、Fluon(登録商標) AD911D(旭硝子社製)、テフロン(登録商標) 31JR、6C-J(三井・デュポンフロロケミカル社製)などを挙げることができる。
図5に示すように、摺動層13の樹脂組成物中には、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末13aが分散されていてもよい。ここで、ラーベス相とは、原子半径比が1.2:1付近となるA元素とB元素からなるAB2型を基本とした金属間化合物であり、MgZn2(C14)型、MgCu2(C15)型、MgNi2(C36)型の3種の構造がある。Co、MoおよびSiの組成(より詳しくは、Co3Mo2Si)で構成されるラーベス相は、A元素をMo、B元素をCoとし、Coの25at%をSiに置換したラーベス相であり、六方晶構造を有するMgZn2型である。Co3Mo2Siで構成されるラーベス相のビッカース硬さは、Hv1000~1200である。摺動層13中に分散している硬質粒子粉末13aは、摺動層13を形成する樹脂組成物よりも高い荷重を受けると考えられるが、Co、MoおよびSiの組成で構成される硬いラーベス相が摩擦面に析出して負荷を支えることで、摺動層13の摩耗低減に有利に作用し得る。
また、ラーベス相中のMoと潤滑油中のSによって摩擦面にMoS2の硫化被膜が形成され得る。MoS2は、鉛の固体潤滑性を代替させ摩擦特性の向上に寄与する硫化物として知られている材料であり、モリブデン間、モリブデンと硫黄間の結合に比べて、硫黄間の結合が弱いため、摩擦が起こると選択的に硫黄間の結合が切れることによって潤滑が起こり、摩耗の抑制に有効に作用し得る。また、ラーベス相中のMoの摺動中の酸化によって摩擦面に生じるMo酸化物も潤滑効果を発揮して摩耗の抑制に有効に作用し得る。
摺動層13の樹脂組成物中には、二硫化モリブデン(MoS2)粉末と、ラーベス相を含まない青銅粉末のうちの少なくとも1つ以上がさらに分散されていてもよい。上述したように、MoS2は、鉛の固体潤滑性を代替させ摩擦特性の向上に寄与する硫化物として知られている材料であり、モリブデン間、モリブデンと硫黄間の結合に比べて、硫黄間の結合が弱いため、摩擦が起こると選択的に硫黄間の結合が切れることによって潤滑が起こり、摩耗の抑制に有効に作用し得る。
一変形例として、摺動層13の樹脂組成物は、硫化銅(CuS)、熱可塑性樹脂、二硫化モリブデン(MoS2)、黒鉛、アラミド繊維、残部がフッ素樹脂から構成されていてもよい(但し、樹脂組成物はリン酸リチウムを含まない)。この場合、樹脂組成物は、硫化銅を3質量%超40質量%未満、熱可塑性樹脂を0質量%以上4質量%未満、二硫化モリブデンを0質量%以上36質量%以下、黒鉛を0質量%以上10質量%以下、アラミド繊維を0質量%以上10質量%以下で含み、残部がフッ素樹脂であってもよい。
摺動層13を形成する樹脂組成物に、金属硫化物として硫化銅を含むことで、摺動層13の放熱特性が向上する。これにより、被摺動物の摺動による摺動層13の温度上昇が抑制され、温度上昇に伴う摺動層13の変形が抑制される。
また、摺動層13を形成する樹脂組成物に硫化銅を含むことで、摺動層13の強度が向上する。摺動層を形成する樹脂組成部に炭素繊維のフィラーを含むことで、樹脂層の強度が向上することが知られている。これに対し、樹脂組成物に硫化銅を含むことで、炭素繊維のフィラーを含まなくとも、炭素繊維のフィラーを含む場合と同様に強度が向上する。摺動層13の強度が向上することでも、被摺動物の摺動による摺動層5の変形が抑制される。
摺動層13の変形量が大きくなると、変形量が少ない場合と比較して摩耗量が増加する。このため、摺動層13の変形が抑制されることで、摺動層13の摩耗が抑制され、耐摩耗特性が向上する。また、摺動層13の強度が向上することでも、摩耗が抑制される。そして、摺動層13の摩耗が抑制されることで、多孔質層12の露出が抑制され、多孔質層12と被摺動物が直接接して焼き付き等の要因となるドライタッチを抑制することができ、耐焼付性が向上する。
硫化銅は、硫化第一銅(Cu2S)と硫化第二銅(CuS)が知られている。硫化第一銅(Cu2S)は、1000℃以上でも安定している。これに対し、硫化第二銅(CuS)は、200℃近傍で硫化第一銅(Cu2S)に変化する。樹脂としてポリテトラフルオロエチレンが使用される場合、摺動層13を焼成する工程では、樹脂組成物4が327℃を超える温度で加熱される。このため、樹脂組成物に硫化第二銅(CuS)が含まれる場合、摺動層13を焼成する工程で、硫化第二銅(CuS)が硫化第一銅(Cu2S)に変化する。
これにより、製造された結果物である摺動部材10の摺動層13には、硫化第一銅(Cu2S)が含まれる。但し、硫化銅の原料としては、硫化第一銅(Cu2S)を使用しても良いし、硫化第二銅(CuS)を使用しても良いが、加工性から硫化第二銅(CuS)を使用することが好ましい。
摺動層13を形成する樹脂組成物に、金属硫化物として更に二硫化モリブデンを含むことで、摺動層13と接して摺動する被摺動物に対する摺動特性が向上する。また、摺動層13を形成する樹脂組成物に黒鉛を含むことでも摺動特性が向上する。これにより、鉛(Pb)を含まない構成で、Pbを含む摺動部材と同程度の摺動特性が得られる。以下、一変形例に係る摺動層13の樹脂組成物について詳細に説明する。
[硫化銅:3質量%超40質量%未満]
摺動層13を形成する樹脂組成物は、放熱特性及び強度を向上させるため、硫化銅を8質量%超40質量%未満で含むことが好ましい。硫化銅の添加量は、3質量%以下及び40質量%以上であれば放熱特性が悪化し、耐摩耗特性を阻害するようになる。なお、市販品としては、寺田薬泉工業社製の硫化第二銅(CuS)、関東化学社製の硫化第二銅(CuS)、高純度化学研究所社製の硫化第一銅(Cu2S)等を挙げることができる。
[可塑性樹脂:0質量%以上4質量%以下]
一変形例に係る摺動層13の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂は必須の添加剤ではないが、添加する場合は、フッ素樹脂の欠点である耐摩耗性、耐クリープ特性が改善できるので添加することが好ましい。
熱可塑性樹脂を添加する場合、4質量%を超えるとフッ素樹脂の低摩擦特性を阻害するようになる。なお、熱可塑性樹脂としてのPPS樹脂の市販品としては、DIC社製のPQ-208、クレハ社製のフォートロン(登録商標) KPS等を挙げることができる。
[黒鉛:0質量%以上10質量%以下]
一変形例に係る摺動層13の樹脂組成物において、黒鉛は必須の添加剤ではないが、自己潤滑性及び、耐熱性の向上、低摩擦特性と耐摩耗特性に寄与することが期待できる。黒鉛を添加する場合、10質量%を超えると低摩擦特性を阻害するようになる。なお、市販品としては、日本黒鉛工業社製のUCP、CPB、オリエンタル産業社製のATシリーズ等を挙げることができる。
[硫化モリブデン:0質量%以上36質量%以下]
一変形例に係る摺動層13の樹脂組成物において、二硫化モリブデン(MoS2)は必須の添加剤ではないが、添加することにより摩擦抵抗を低下させることが出来る。
二硫化モリブデンの添加量は、36質量%を超えると多孔質層への含浸工程で含浸性が悪くなる。なお、市販品としては、太陽鉱工社製のH/GMoS2、ダイゾー社製の二硫化モリブデンパウダーシリーズ等を挙げることができる。
[アラミド繊維:0質量%以上10質量%以下]
一変形例に係る摺動層13の樹脂組成物において、アラミド繊維は必須の添加剤ではないが、機械的強度を得るために添加する。アラミド繊維を添加する場合、10質量%以上添加すると、均一な分散を阻害するようになるので、その結果、耐摩耗特性が低下する。なお、市販品としては、東レ・デュポン社製のケブラー(登録商標)、帝人のトワロン(登録商標)等を挙げることができる。
別の一変形例として、摺動層13の樹脂組成物は、亜鉛化合物(ZnS(硫化亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、ZnSO4(硫酸亜鉛など)、炭素繊維、酸化鉄、硫酸バリウム、アラミド繊維、黒鉛、カルシウム化合物(CaCO3(炭酸カルシウム)、CaSO4(硫酸カルシウム)、Ca(OH)2(水酸化カルシウム)など)、亜鉛、亜鉛合金のいずれか、または複数種を、任意の添加物として含んでいてもよい。樹脂組成物が亜鉛化合物を含むことで、弾性率の向上により摺動層13の変形が抑制され、外力により摺動層13が変形して接触面積が増減することが抑制され得る。また、樹脂組成物が炭素繊維を含むことで、動摩擦力の値、および静摩擦力と動摩擦力の変化を改善し、摺動特性を改善することができる。樹脂組成物が酸化鉄を含むことで、耐摩耗性の向上に加え、弾性率を向上させることができる。樹脂組成物が硫酸バリウムまたはアラミド繊維を含むことで、亜鉛化合物の添加により弾性率を改善することを阻害することなく、耐摩耗性を高くすることができる。樹脂組成物が黒鉛を含むことで、亜鉛化合物の添加により弾性率を改善することを阻害することなく、摩擦抵抗を低下させることができる。樹脂組成物がカルシウム化合物、亜鉛または亜鉛合金を含むことで、亜鉛化合物の添加により弾性率を改善することを阻害することなく、耐摩耗性を改善させることができる。
一変形例として、多孔質層12は、CuおよびSnを含むマトリックス相と、マトリックス相中に分散している硬質粒子とを有していてもよい。多孔質層12は、混合粉末を噴霧時に合金化させた合金粉末が焼結されて形成されたものであってもよい。合金粉末にされることで、粉末の焼結が促進してネックが形成され、粉末同士が十分に接合され得る。また、合金粉末にされることで、硬質粒子が微細化され、マトリックス相中に一様に分散される。なお、上述した摺動層13中に硬質粒子粉末13aが分散されている場合には、多孔質層13は硬質粒子を含んでいなくてもよい。
マトリックス相は、主成分としてCuを含み、さらにSnを含む青銅系合金である。マトリックス相は、Cu、SnおよびNiの固溶体で構成されていてもよい。
マトリックス相の結晶粒界にはBi粒子が分布していてもよい。この場合、摺動層4が摩耗して多孔質層3の一部が露出される摩擦面においてBiが従来の鉛青銅のPbと同様の自己潤滑作用を発現し、摩擦する二面間の間で潤滑剤として働くことで、摩擦低減を図ることができる。
硬質粒子は、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含んでいてもよい。摺動層13が摩耗して多孔質層12の一部が露出される際に、マトリックス相の中に分散している硬質粒子は、マトリックス相となる軟質な青銅よりも高い荷重を受けると考えられるが、Co、MoおよびSiの組成で構成される硬いラーベス相が摩擦面に析出して負荷を支えることで、多孔質層12の摩耗低減に有利に作用し得る。また、ラーベス相中のMoと潤滑油中のSによって摩擦面にMoS2の硫化被膜が形成され得る。MoS2は、鉛の固体潤滑性を代替させ摩擦特性の向上に寄与する硫化物として知られている材料であり、モリブデン間、モリブデンと硫黄間の結合に比べて、硫黄間の結合が弱いため、摩擦が起こると選択的に硫黄間の結合が切れることによって潤滑が起こり、摩耗の抑制に有効に作用し得る。また、ラーベス相中のMoの摺動中の酸化によって摩擦面に生じるMo酸化物も潤滑効果を発揮して摩耗の抑制に有効に作用し得る。
多孔質層12が硬質粒子を含んでいる場合には、多孔質層12全体を100質量%とした時に、硬質粒子の含有率は、たとえば40質量%以下であってもよい。多孔質層12全体を100質量%とした時に、硬質粒子の含有量は、たとえば0.1質量%以上であってもよい。硬質粒子の含有量が0.1質量%以上であれば、上述したような多孔質層12の摩耗低減の効果が得られる。また、多孔質層12全体を100質量%とした時に、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相の含有率は、たとえば0.1~20質量%であってもよい。上述した摺動層13中に硬質粒子粉末13aが分散されており、多孔質層12が硬質粒子を含んでいない場合には、多孔質層12全体を100質量%とした時に、CuおよびSnの含有率の合計は、99.9%以上であってもよい。
多孔質層3は、マトリックス相中に分散している化合物相をさらに有していてもよい。化合物相は、Co、Fe、Ni、SiおよびCrを含んでいてもよい。マトリックス相の中に化合物相が形成されることで、マトリックス相の硬度を高めることができ、耐焼付性の向上に有利に作用し得る。
本実施の形態に係る摺動部材10として、(1)多孔質層12に硬質粒子が含まれるが、摺動層13には硬質粒子粉末13aが含まれない態様、(2)多孔質層12には硬質粒子が含まれないが、摺動層13に硬質粒子粉末13aが含まれる態様、(3)多孔質層12に硬質粒子が含まれ、かつ、摺動層13に硬質粒子粉末13aが含まれる態様、(4)多孔質層12に硬質粒子が含まれず、かつ、摺動層13にも硬質粒子粉末13aが含まれない態様の4つがあるが、そのうちの(1)~(3)のいずれの態様おいても、多孔質層12と摺動層13とを合わせた全体(すなわち、摺動部材10全体から金属基材11を除いたもの)を100質量%とした時に、硬質粒子の含有率と硬質粒子粉末13aの含有率との合計は1~20質量%であってもよく、たとえば、15質量%であってもよい。
図3および図4に示すように、摺動部材10は、内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14(図4参照)が露出した領域15を有している。図3に示す例では、樹脂組成物が存在しない領域15は、摺動部材10の内周面に一つだけ設けられていたが、複数設けられていてもよい。図3に示すように、樹脂組成物が存在しない領域15は、摺動部材10の軸方向の一端から他端まで延びるように設けられていてもよい。樹脂組成物が存在しない領域15は、金属基材11の継目部11a(図2参照)の上に設けられていてもよい。非多孔質な層14は、多孔質層12と同じ金属単体または合金組成物で形成されていてもよい。
図4に示すように、非多孔質な層14は、多孔質層12を構成する金属単体または合金組成物が溶融したため、周囲に比べて内径面が凹んだ形状となっている。非多孔質な層14の凹んだ空間の深さDは、たとえば0.2~0.3mmであってもよい。非多孔質な層14の幅(周方向の長さ)Wは、摺動部材10の内周長の0.1~10%であってもよく、たとえば摺動部材10の内周長が60~70mmの場合には、非多孔質な層14の幅Wは1.0mm~3.0mmであってもよい。
<摺動部材の製造方法>
次に、このような構成を有する摺動部材10を製造する方法の一例について、図6、図8~図10を参照して説明する。図6は、摺動部材10を製造する方法の一例を示すフロー図である。図8は原料粉末散布工程および多孔質層焼結工程を説明するための図である。図9は、原料樹脂含浸工程を説明するための図であり、図10は、バニシ仕上げ工程を説明するための図である。
図6および図8に示すように、まず、板状の金属基材の一の面上に多孔質層12の原料粉末を散布する(ステップS10)。
原料粉末は、CuおよびSnを含む第1粉末であってもよいし、第1粉末と、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末とを混合した混合粉末であってもよいし、第1粉末および硬質粒子粉末に加えて、さらにCu、Co、Fe、Ni、SiおよびCrを含む第2粉末を混合した混合粉末であってもよい。
ここで、第1粉末は、主成分としてCuを含み、さらにSnを含む青銅系合金粉末である。第1粉末は、BiまたはPをさらに含んでいてもよい。第1粉末がBiを含む場合には、後述する原料粉末の焼結時(すなわちステップS20)に、マトリックス相10の中にBi粒子が析出し、Biが従来の鉛青銅のPbと同様の自己潤滑作用を発現するため、低摩擦化を図ることができる。また、第1粉末がPを含む場合には、銅に混入した酸素を除去(脱酸)して水素脆化を抑制することができる。第1粉末の各構成元素の含有量は、Sn:10~11質量%、Cu:残部であってもよい。更にBiを含有する場合は、Bi:7~9質量%、Pを含有する場合は、P:0.02質量%以下が好ましい。原料粉末における第1粉末の配合量は、原料粉末全体の配合量より第1粉末以外の粉末の合計配合量を差し引いた残部の量である。
硬質粒子粉末は、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相とCuを含む合金粉末であって、Cu、Si、Fe、Mo、CoおよびCrを含む硬質粒子粉末である。硬質粒子粉末は、Snをさらに含んでいてもよく、たとえば、Snを1質量%以上含んでいてもよい。Snを含まない硬質粒子粉末の固相温度は1450℃近くに達するが、Snを含有させることで、硬質粒子粉末の固相温度を低減させることができ、800℃近くで硬質粒子粉末を裏金母材へ固相焼結させることが可能となる。また、硬質粒子粉末に内包されたSnは、焼結時に第1粉末によるCu-Snマトリックス相側へ固溶し、拡散接合される。Snを介しての粉末収縮により焼結が進行することで、マトリックス相中のSnと硬質粒子粉末に内包されたSnによる固溶強化が発現し得る。硬質粒子粉末中の各構成元素の含有量は、硬質粒子粉末全体を100質量%とした時にCo:14~20質量%、Mo:24~28質量%、Si:3~7質量%、Fe:2~16質量%、Cr:1~10質量%、Cu:残部であってもよい。Snを含む場合には、硬質粒子粉末中の各構成元素の含有量は、硬質粒子粉末全体 を100質量%とした時にCo:14~20質量%、Mo:24~28質量%、Si:3~7質量%、Fe:2~16質量%、Cr:1~10質量%、Sn:1~15質量%、Cu:残部であってもよい。原料粉末全体を100質量%とした時(すなわち摺動層12全体を100質量%とした時)に硬質粒子粉末の配合量は1~40質量%であってもよく、1~3質量%が好ましい。焼結時に硬質粒子粉末よりCuとSnが溶け出すため、摺動層12中の硬質粒子の含有量は、原料粉末中の硬質粒子粉末の配合量から変動する。
第2粉末は、主成分としてCuを含み、さらにCo、Fe、Ni、SiおよびCrを含む合金粉末である。第2粉末は、Snをさらに含んでいてもよく、たとえば、Snを1質量%以上含んでいてもよい。Snを含まない第2粉末の固相温度は1240℃近くに達するが、Snを含有させることで、第2粉末の固相温度を低減させることができ、800℃近くで第2粉末を裏金母材へ固相焼結させることが可能となる。Snを含む場合には、第2粉末中の各構成元素の含有量は、第2粉末全体を100質量%とした時にCo:0.6~4.6質量%、Fe:1.6~5.6質量%、Ni:10~14質量%、Si:0.5~4.5質量%、Cr:0.5~1.5質量%、Sn:1~15質量%、Cu:残部であってもよい。原料粉末中に第2粉末を含む場合は、原料粉末全体を100質量%とした時に第2粉末の配合量は2~38質量%であってもよく、10~38質量%が好ましく、17~19質量%がより好ましい。
原料粉末全体を100質量%とした時に硬質粒子粉末の配合量は1~40質量%であり、第2粉末の配合量は15~18質量%であってもよい。この場合、優れた剪断加工性を実現できる。
第1粉末、硬質粒子粉末および第2粉末はそれぞれ、たとえばガスアトマイズ法による噴霧により製造することできる。ガスアトマイズ法において、溶解の熱源は高周波であってもよく、ルツボ(底部にノズル付)にはジルコニア質を使用してもよい。
第1粉末の粒径は、たとえば45μm~180μmであってもよい。硬質粒子粉末の粒径は、53μm以下の微粉であってもよい。第2粉末の粒径は、53μm~150μmであってもよい。ここで「粒径」とは、マイクロトラック・ベル社製 粒子径分布測定装置MT3300EXIIを用いたレーザー回折・散乱法により測定される粒子径分布をいう。この測定方法は、JIS Z3284-2の「4.2.3のレーザー回折式粒度分布測定試験」のうちペーストから粉末を抽出する工程以降の試験手順に準じた測定方法である。
次に、金属基材11上に散布された原料粉末を800~900℃で焼結して多孔質層12を形成する(ステップS20)。上述したように、Snを含まない硬質粒子粉末、第2粉末の固相温度はそれぞれ1450℃、1240℃近くに達するが、Snを含有させることで、硬質粒子粉末、第2粉末の固相温度を低減させることができ、800℃近くで硬質粒子粉末、第2粉末を金属基材(裏金母材)へ固相焼結させることが可能となる。また、硬質粒子粉末に内包されたSnは、焼結時に第1粉末によるCu-Snマトリックス相10側へ固溶し、拡散接合される。Snを介しての粉末収縮により焼結が進行することで、マトリックス相10中のSnと硬質粒子粉末に内包されたSnによる固溶強化が発現し、最終的には高強度の合金が形成され得る。
次に、多孔質層12を内側として金属基材11を巻いて円筒状に整形したのち(ステップS30)、金属基材11の外径側から継目部分11aを溶接する(ステップS40)。溶接方法は、TIG溶接(アルゴンガス溶接)であってもよいし、レーザー溶接(パルス溶接)であってもよい。このとき、溶接時の熱により継目部分11aの上の多孔質層12が溶融することで、多孔質層12に含まれる多数の空隙が潰れ、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14が形成される。内径面には合わせ目が現れない。非多孔質な層14では、多孔質層12が含んでいた空隙の分だけ見かけの体積が減少するため、周囲の多孔質層12に比べて内径面が凹んだ形状となる。
必ずしも必須ではないが、継目部分11aを溶接する工程(ステップS40)の後、金属基材11の外周面をダイス41(図10参照)により拘束しつつ多孔質層12の内側に円柱状の芯金42を押し込むことにより、多孔質層12の内周面をバニシ仕上げ(burnishing)してもよい。
次に、多孔質層12の表面に摺動層13の原料樹脂を含浸させる(ステップS50)。具体的には、たとえば、図9に示すように、金属基材11の内周面に形成された多孔質層12上に、所定の量の樹脂組成物を供給し、含浸ロールの回転圧力によって樹脂組成物を多孔質層12に押圧することで、樹脂組成物を多孔質層12に含浸させてもよい。多孔質層12上に供給される樹脂組成物には、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末13aと、二硫化モリブデン(MoS2)粉末のうちの少なくとも1つ以上が分散されていてもよい。一変形例として、樹脂組成物は、添加剤として硫化銅を含み、二硫化モリブデンをさらに含んでいてもよいし、他の添加剤として、黒鉛、アラミド繊維を含んでいてもよい。多孔質層12上に供給される樹脂組成物の量は、後述する樹脂組成物の焼成後に、多孔質層12が摺動層13の表面から露出しない厚さで多孔質層12を被覆する量である。
このとき、非多孔質な層14の表面は、多孔質層12を構成する金属単体または合金組成物が溶融したため、原料樹脂が多孔質間に含浸された状態にはならず、原料樹脂が非多孔質な層14上にのっているだけの状態になる。
次に、樹脂組成物に含まれる樹脂の融点を超える温度で樹脂組成物を加熱することで、樹脂を溶融させるとともに有機溶剤を揮発させたのち、樹脂を硬化させることで、多孔質層12を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層13を形成する(ステップS60)。樹脂組成物を所定の温度で加熱して摺動層13を形成することを焼成と称する。なお、樹脂として使用されるポリテトラフルオロエチレンの融点は、327℃である。焼成炉を使用して、ポリテトラフルオロエチレンの融点を超える温度(たとえば400~500℃)で樹脂組成物を加熱することで、摺動層13を焼成してもよい。
このとき、非多孔質な層14の表面は溶接によって溶けた状態になっているため、非多孔質な層14の上から樹脂組成物が容易に剥離する。樹脂組成物は摺動層13形成後に非多孔質な層14の上から重力や風力により非接触で剥離されてもよいし、ブラシ等で掃いて剥離されてもよい。非多孔質な層14の上から樹脂組成物が剥離することで、内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、非多孔質な層14が露出した領域15が形成される。
次に、図10を参照し、金属基材11の外周面をダイス41により拘束しつつ摺動層13の内側に円柱状の芯金42を押し込むことにより、摺動層13の内周面をバニシ仕上げ(burnishing)して内径真円度を50μm以下にする(ステップS70)。これにより、上述した構成を有する摺動部材10(図1~図5参照)が製造される。
次に、図7を参照し、摺動部材10を製造する方法の別例について説明する。図7は、摺動部材10を製造する方法の別例を示すフロー図である。
上述した製造方法の一例と同様に、まず、金属基材の一の面上に多孔質層12の原料粉末を散布し(ステップS10)、次いで、金属基材11上に散布された原料粉末を焼結して多孔質層12を形成する(ステップS20)。
次に、図7に示すように、多孔質層12上に、所定の量の樹脂組成物を供給し、樹脂組成物を多孔質層12に押圧することで、樹脂組成物を多孔質層3に含浸させる(ステップS150)。多孔質層12上に供給される樹脂組成物の量は、後述する樹脂組成物の焼成後に、多孔質層12が摺動層13の表面から露出しない厚さで多孔質層12を被覆する量である。
次に、樹脂組成物に含まれる樹脂の融点を超える温度で樹脂組成物を加熱することで、樹脂を溶融させるとともに有機溶剤を揮発させたのち、樹脂を硬化させることで、多孔質層12を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層13を形成する(ステップS160)。
次に、摺動層13を内側として金属基材11を巻いて円筒状に整形したのち(ステップS130)、金属基材11の外径側から継目部分11aを溶接する(ステップS140)。溶接方法は、TIG溶接(アルゴンガス溶接)であってもよいし、レーザー溶接(パルス溶接)であってもよい。このとき、溶接時の熱により継目部分11aの上の多孔質層12が溶融することで、多孔質層12に含まれる多数の空隙が潰れ、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14が形成されるとともに、継目部分11aの上の樹脂組成物が剥離することで、内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、非多孔質な層14が露出した領域15が形成される。
次に、図10を参照し、金属基材11の外周面をダイス41により拘束しつつ摺動層13の内側に円柱状の芯金42を押し込むことにより、摺動層13の内周面をバニシ仕上げ(burnishing)して内径真円度を50μm以下にする(ステップS70)。これにより、上述した構成を有する摺動部材10(図1~図5参照)が製造される。
以上のような本実施の形態によれば、摺動部材10の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14が露出した領域15が設けられているところ、当該領域は、周囲には存在する樹脂組成物が存在せず、かつ非多孔質な層には多孔質層のような多数の空隙が含まれていないことから、周囲に比べて凹んだ形状であり、溝のような役割を担うようになっている。摺動部材10の使用時には、当該溝の内面が被摺動物であるシャフトに接触しないため、摩擦による発熱の低減に貢献できる。これにより、高速回転領域での温度上昇が抑制され、軸受としての性能自体も向上する。特に潤滑油やグリース等が存在する場合は、摺動面への油膜形成が当該溝で保持されるため、ドライ環境下での使用よりも更なる発熱低減が予想される。
また、摺動部材10の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14が露出した領域15が設けられており、摺動面には合わせ目による突起が現れないため、継目での摩擦時に発生するトルクが低減する。これにより、消費電力の低減に貢献し、エネルギーロスを削減する。したがって、カーボンニュートラルに貢献できる。
また、EVモータや電動コンプレッサ等の高回転環境下で使用される軸受について、従来の転がり軸受から本実施形態に係る摺動部材10に置き換えることが可能となり、これにより、小型軽量化につながる。
さらに、摺動面に継目のある従来の摺動部材をモータやコンプレッサに適用する際には、内径切削工程(すなわち、継目部分での内面の面合わせ)が必要であったが、本実施形態に係る摺動部材10であれば、摺動部材10の内周面の一部に樹脂組成物が存在せず、金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層14が露出した領域15が設けられており、摺動面には合わせ目による突起が現れないため、内径切削工程を削減できる。
また、本実施の形態によれば、樹脂組成物が存在しない領域15が摺動部材10の軸方向の一端から他端まで延びるように設けられているため、軸方向の一端から他端まで連続して摩擦による発熱低減の効果が得られる。これにより、高速回転領域での温度上昇のさらなる抑制を実現できる。
また、本実施の形態によれば、樹脂組成物が存在しない領域15は、周囲に比べて凹んだ形状であり、溝のような役割を担うようになっているところ、当該領域15は、金属基材11の継目部分11aを溶接する際に溶接時の熱により同時に形成されるため、摺動層を形成した後に摺動層を凹凸形状に加工する場合に比べて、工程数を削減することができる。
<実施例>
次に、本実施の形態に係る具体的な実施例について説明する。
(摺動部材の作製)
まず、多孔質層12の原料粉末として、福田金属箔粉工業(株)製青銅粉末(不定形、銘柄;CP-301)において、粒度150μm以上の粗粉をカットした粉末を準備した。青銅粉末の化学成分はCu-10Snである。
次に、実施例として、銅メッキ鋼板上に多孔質層12の原料粉末を散布したのち880℃で焼結し、多孔質層12を形成した。次いで、Φ20mmの内径寸法を得るために、多孔質層12が形成された鋼板を67.6mmのスリット幅にスリット処理した。次に、スリット処理した鋼板にサイドロールを介して圧力を加えながら幅方向から円筒状に整形し、鋼板の継目部分を外径側からアルゴンガス溶接した。溶接後、水冷、バリ取り、サイジングによる成形を行い、全長10mmに切断して、内周面に多孔質層12が形成された円筒状の金属基材11を得た。その後、図10を参照し、アムスラー試験機を用いて、金属基材11の外周面をダイス41により拘束しつつ、多孔質層12の内側に芯金42を押し込むことにより、多孔質層12の内周面に負荷を掛けて矯正した(バニシ仕上げした)。
次に、多孔質層12の内周面に樹脂を含浸した。含浸した樹脂の組成は、黒鉛粉末:1.1質量%、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末:15質量%、残部PTFE樹脂で構成され、自己潤滑性向上を図る目的でMoS2粉末:15質量%を添加した。硬質粒子粉末の化学成分はCu-4.5Sn-5Si-15Fe-16Co-4Cr-26Mo、粒度は53μmアンダー微粉、黒鉛粉末は日本黒鉛製(銘柄;CPBW-5)である。
樹脂含浸方法としては、図9を参照し、多孔質層12の内周面にヘラで樹脂を塗布し、Φ11.7のローリング芯金で押圧させながら、ローリングの回転圧力によって多孔質層12に樹脂を含浸させた。その後、焼成炉を使用して焼成温度480℃、コンベア速度1000mm/minの条件で焼成した。
次に、図10を参照し、アムスラー試験機を用いて、金属基材11の外周面をダイス41により拘束しつつ、摺動層13の内側に芯金42を押し込むことにより、摺動層13の内周面に負荷を掛けて矯正した(バニシ仕上げした)。
以上の製造工程により、実施例に係る摺動部材を得た。実施例に係る摺動部材は金属基材11の外周面に摺動部材10の軸方向の一端から他端まで延びるように溶接痕があり、溶接痕の裏側の内周面には樹脂組成物が存在しない非多孔質な層14が露出した領域15が摺動部材10の軸方向の一端から他端まで延びるように設けられている。図26は、実施例に係る摺動部材について、円周方向の90°、180°、270°、360°のそれぞれの角度で測定した内径を示すグラフである。図26に示すように、実施例に係る摺動部材の内径精度は、0.018mm以下であった。
また、比較例1、2に係る摺動部材を、特願2023-026107号に記載の製造工程により作製した。すなわち、比較例1として、炭素鋼丸棒を旋盤にて外径Φ22mm、内径Φ20.62mm、全長10.35mmに加工し、継目のない薄肉円筒状の金属基材を得た。また、比較例2として、縦67mm、横11mm、厚さ0.75mmの炭素鋼板材を巻ブッシュ状に加工し、幅2mm以下の継目を有する(合わせ目タイプの)円筒状の金属基材を得た。
次に、比較例1について、特願2023-026107号の図5及び図6Aを参照し、内径Φ20.62の金属基材の中に外径Φ19.96mmの炭素鋼治具を挿入し、金属基材の内周面と治具の外周面との間の隙間0.3mmに、実施例と同じ青銅粉末を投入した。粉末充填体積は、金属基材の内径Φ20.6mm、治具の外径Φ19.96mm、全長10.35mmなので0.21cm3である。比較例2については、特願2023-026107号の図6Bを参照し、金属基材をハウジングの内側に圧入して継目(合わせ目)を密着させたのち、ハウジングに圧入された状態の金属基材の内側に炭素鋼治具を同軸状に配置し、金属基材の内周面と治具の外周面との間の環状の隙間0.3mmに、実施例と同じ青銅粉末を投入した。実施例1、2のいずれにおいても、隙間に投入した粉末の流動性を良くするため、治具に回転軸を連結させてモータにより治具を回転させながら粉末を充填させた。この状態で焼結炉にて焼結温度880℃、コンベア速度230mm/minの条件で焼結した。
次に、比較例1、2について、青銅粉末が焼結された円筒形状の金属基材の内側に樹脂を含浸した。含浸した樹脂の組成は、黒鉛粉末:1.1質量%、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末:15質量%、残部PTFE樹脂で構成され、自己潤滑性向上を図る目的でMoS2粉末:15質量%を添加した。硬質粒子粉末の化学成分はCu-4.5Sn-5Si-15Fe-16Co-4Cr-26Mo、粒度は53μmアンダー微粉、黒鉛粉末は日本黒鉛製(銘柄;CPBW-5)である。樹脂含浸方法は、上述した実施例と同様であり、説明を省略する。
次に、上述した実施例と同様に、アムスラー試験機を用いて、金属基材の外周面をダイス41により拘束しつつ、摺動層の内側に芯金42を押し込むことにより、摺動層13の内周面に負荷を掛けて矯正した(バニシ仕上げした)。
以上の製造工程により、比較例1、2に係る摺動部材を得た。図27は、比較例1に係る摺動部材について、円周方向の90°、180°、270°、360°のそれぞれの角度で測定した内径を示すグラフである。図27に示すように、実施例に係る摺動部材の内径精度は、0.037mm以下であった。比較例1、2のように、青銅粉末を1個ずつ充填して焼結する粉末充填法では、実施例のような、青銅粉末を焼結したのち円筒状に整形する方法に比べて、内径のばらつきが大きくなることが推察される。
また、比較例3として、実施例および比較例1、2と同じ青銅粉末を炭素鋼板材(金属基材)上に散布した焼結して多孔質層を形成した。次に、黒鉛粉末:4質量%、MoS2粉末:7.25質量%、残部PTFE樹脂で構成された樹脂を多孔質層に含浸させたのち、樹脂を焼成することで、多孔質層を被覆する摺動層を形成し、その後、圧延を施工した。次いで、圧延された金属基材を、摺動層を内側として巻ブッシュ状に加工することで、金属基材と多孔質層と摺動層のいずれも継目(合わせ目)を有する摺動部材を作製した。
図13は、上述の手順で作製された実施例及び比較例1~3に係る摺動部材の組成等をまとめて示すテーブルである。
(高速回転摩耗試験)
次に、実施例および比較例1~3の摺動部材の性能を高速回転摩耗試験により比較した。図11に高速回転摩耗試験機を示す。本試験機は、供試材に相手軸を介して荷重と速度を与えたときの軸受背面温度を計測し、主に高速領域における摩耗量や発熱評価に適する。試験部にオイルバスを設け、油中と無潤滑双方の環境での評価を可能に設計してある。また高回転評価を実現するため、相手軸Φ6h7にコレクトチャックを介して進桜電機(株)製スピンドルモータ(型式S262B-SJ03、定格出力1.2kW、定格電圧200V、定格電流4.8A)を先端部に直結させた。これにより、軸振れ0.002mm以下の精度で最大60,000rpmまでの評価が可能な装置に設計した。スピンドルモータにはチラーを介して流量0.7L/minで水冷している。
相手軸の外径はΦ11.957mm~11.975mm、ハウジング内径はΦ14.000mm~14.018mmである。いずれも材質はSKD-11、全焼入れ後の硬度はHRC58である。軸受背面温度はΦ6mmの孔に熱電対を挿入し、軸受背面から1.5mmの位置をデータロガーにて1秒毎に計測した。
次に試験環境に関して軸受部への潤滑有無が性能に大きく関与する。例えば、カーエアコン用コンプレッサのような空調圧縮機構において、旋回スクロールを固定スクロールに強く押し付けた状態で旋回運動させるような環境では、潤滑油が軸受内に流入し難い。さらに、EVの駆動用モータでは小型・軽量化と高出力化を両立するために高速回転化が不可欠になっている。モータを支持する軸受には、油潤滑軸受、グリース潤滑軸受が採用されるが、周辺構造の簡略化により、軸受部への油潤滑はあまり期待できない。これら実用上の制約などを鑑みて、本試験は無潤滑環境での評価とし、軸の回転数に対する摩擦発熱と摩耗量を測定した。摩擦発熱は軸受温度上昇率を評価指標とし、軸受背面温度が80℃に達するまでの時間に対する温度の傾きを回帰分析により解析した。摩耗量は試験前後の摺動部材の肉厚を管用マイクロメータで計測し、荷重点の肉厚変化量から求めた。
軸の回転数はコンプレッサの主軸で最大10,000rpm、EVモータで最大30,000rpm程度に達するとされている。これを考慮して、10,000~50,000rpmの範囲とした。軸受へのラジアル荷重は、高速回転時におけるスピンドルモータの使用限界や安全性などを考慮して、一方向に10Nを負荷した。軸受と軸とのクリアランスの狙い値は0.1mmとし、軸の表面粗度はRa0.17μmに研磨仕上げを施工し試験に供した。
実施例に係る摺動部材については、内周面の一部に樹脂組成物が存在しない領域15が設けられているところ、図12に示すように、当該領域15に対して周方向に90°離れた位置を荷重点とした(以下、この荷重点の位置を負荷区分Aという)。
なお、回転運動による摩擦トルクに関し、仕事率は電力に変換できるので、下式(1)のように表すことができる。
E=P=2π・N・T/60=2π・N・F・R/60・・・式(1)
ここに、Rは回転半径(m)、Fは摩擦力(N)、Nは軸回転速度(rpm)、Tはトルク(N・m)、Eは電力(W)、Pは仕事率(W)である。
(結果と考察)
図14は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数N=15,000rpmの場合に計測された軸受背面温度の時間変化を示すグラフであり、図15は、軸回転数N=20,000rpmの場合に計測された軸受背面温度の時間変化を示すグラフであり、図16は、軸回転数N=25,000rpmの場合に計測された軸受背面温度の時間変化を示すグラフであり、図17は、軸回転数N=30,000rpmの場合に計測された軸受背面温度の時間変化を示すグラフであり、図18は、軸回転数N=35,000rpmの場合に計測された軸受背面温度の時間変化を示すグラフである。
図14~図16に示すように、軸回転数N=15,000~30,000rpmの高速回転領域では、実施例に係る摺動部材の温度の時間変化は、比較例1、2に係る摺動部材の温度の時間変化と同様な挙動である。したがって、軸回転数N=15,000~30,000rpmの高速回転領域では、実施例に係る摺動部材は、比較例1、2に係る摺動部材(すなわち特願2023-026107号で提案された摺動部材)と同等の機能を保持していることが確認された。
さらに、図17および図18に示すように、軸回転数N=30,000rpm以上の高速回転領域では、実施例に係る摺動部材の温度変化は、比較例1、2に係る摺動部材の温度変化より緩やかである。したがって、特に軸回転数N=30,000rpm以上の高速回転領域では、実施例に係る摺動部材は、比較例1、2に係る摺動部(すなわち特願2023-026107号で提案された摺動部材)よりも温度上昇が抑制されることが確認された。
図19は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、軸回転数10,000~50,000rpmの範囲での軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフであり、図20は、同範囲での軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。
図19および図20に示すように、温度上昇率および消費電力の急上昇が起こる軸回転数は、比較例3に係る摺動部材では、15,000rpmであり、比較例2に係る摺動部材では、25,000rpmであり、比較例1に係る摺動部材では、30,000rpmであるのに対し、実施例に係る摺動部材では、35,000rpmである。したがって、実施例に係る摺動部材は、比較例1~3に係る摺動部材に比べて許容限界回転数が高いことが確認された。
さらに、温度上昇率および消費電力の急上昇が起こる軸回転数の近傍範囲にて、回転数を細かく変えた追加評価試験を行った。図21は、実施例および比較例1~3に係る摺動部材について、温度上昇率および消費電力の急上昇が起こる軸回転数の近傍範囲での軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフであり、図22は、同範囲での軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。
図21および図22に示すように、比較例3に係る摺動部材は、軸回転数7,000~8,000rpmの範囲では、温度上昇率および消費電力がほぼ一定であり、8,000rpmを超えると急上昇することから、許容限界回転数は、8,000±1,000rpmであると判断できる。また、比較例2に係る摺動部材は、軸回転数22,000~25,000rpmの範囲では、温度上昇率および消費電力がほぼ一定であり、25,000rpmを超えると急上昇することから、許容限界回転数は、23,500±1,500rpmであると判断できる。また、比較例1に係る摺動部材は、軸回転数27,000~30,000rpmの範囲では、温度上昇率および消費電力がほぼ一定であり、30,000rpmを超えると急上昇することから、許容限界回転数は、28,500±1,500rpmであると判断できる。これに対し、実施例に係る摺動部材は、軸回転数30,000~33,000rpmの範囲では、温度上昇率および消費電力がほぼ一定であり、33,000rpmを超えると急上昇することから、許容限界回転数は、31,500±1,500rpmであると判断できる。
次に、温度上昇の抑制効果に関して、内周面の一部に樹脂組成物が存在しない領域15の影響影響を調査するために、実施例に係る摺動部材について、図23に示すように、当該領域15に対して周方向で一致する位置を荷重点とした追加評価試験を行った(以下、この荷重点の位置を負荷区分Bという)。
図25は、実施例に係る摺動部材について、負荷区分AおよびBでそれぞれ測定された軸回転数に対する温度上昇率の変化を示すグラフであり、図26は、軸回転数に対する消費電力の変化を示すグラフである。
図25および図26に示すように、軸回転数30,000~33,000rpmの範囲では、負荷区分AおよびBは、温度上昇率および消費電力の変化がほぼ同じであるが、軸回転数33,000rpm以上の範囲では、負荷区分Aは、負荷区分Bに比べて、温度上昇率および消費電力がいずれも上昇する。負荷区分Aでは、接触部の摩擦熱が蓄積されることで温度が上昇するのに対し、負荷区分Bでは、接触部の摩擦熱が、樹脂組成物が存在しない領域15での溝によって緩和され、放熱され易くなることで、温度上昇が抑制されると推察される。
以上、本発明の実施の形態および変形例を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。また、各実施の形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
10 摺動部材
11 金属基材
12 多孔質層
13 摺動層
14 非多孔質な層
15 樹脂組成物が存在しない領域
13a 硬質粒子粉末
20 軸
31 治具
32 回転軸
33 ワーク
41 ダイス
42 芯金

Claims (12)

  1. 円筒状の金属基材と、
    前記金属基材の内周面に形成される多孔質層と、
    前記多孔質層を被覆する摺動層を備え、
    前記多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成され、
    前記摺動層は、樹脂組成物で形成され、
    内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域を有する
    ことを特徴とする摺動部材。
  2. 前記領域は前記摺動部材の軸方向の一端から他端まで延びるように設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記摺動層中には、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子粉末が分散されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. 前記摺動層中には、MoS2粉末と、ラーベス相を含まない青銅粉末のうちの少なくとも1つ以上がさらに分散されている
    ことを特徴とする請求項3に記載の摺動部材。
  5. 前記樹脂組成物は、硫化銅、熱可塑性樹脂、二硫化モリブデン、黒鉛、アラミド繊維、残部がフッ素樹脂からなり、前記硫化銅を3質量%超40質量%未満、前記熱可塑性樹脂を0質量%以上4質量%未満、前記二硫化モリブデンを0質量%以上36質量%以下、前記黒鉛を0質量%以上10質量%以下、前記アラミド繊維を0質量%以上10質量%以下で含み、残部が前記フッ素樹脂である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
  6. 前記多孔質層は、
    CuおよびSnを含むマトリックス相と、
    前記マトリックス相中に分散している硬質粒子であって、Co、MoおよびSiの組成で構成されるラーベス相を含む硬質粒子と、を有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
  7. 前記多孔質層は、
    前記マトリックス相中に分散している化合物相であって、Co、Fe、Ni、SiおよびCrを含む化合物相をさらに有する
    ことを特徴とする請求項6に記載の摺動部材。
  8. 前記多孔質層の厚みと前記摺動層の厚みの比率は、6:4~8:2である、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
  9. 円筒状の金属基材と、
    前記金属基材の内周面に形成される多孔質層と、
    前記多孔質層を被覆する摺動層を備え、
    前記多孔質層は、金属単体または合金組成物で形成され、
    前記摺動層は、樹脂組成物で形成され、
    内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が露出した領域を有する
    ことを特徴とする軸受。
  10. 摺動部材を製造する方法であって、
    金属基材の一の面に金属単体または合金組成物からなる多孔質層を形成するステップと、
    前記多孔質層を内側として前記金属基材を巻いて円筒状に整形するステップと、
    前記金属基材の外径側から継目部分を溶接するステップであって、前記継目部分の上の前記多孔質層が溶融して前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が形成されるステップと、
    前記多孔質層の表面に摺動層の原料樹脂を含浸させ、前記原料樹脂を焼成させることで、前記多孔質層を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層を形成するステップであって、前記非多孔質な層の表面は前記原料樹脂が含浸された状態にならないため、前記摺動部材の内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記非多孔質な層が露出した領域が形成されるステップと、
    を含むことを特徴とする方法。
  11. 摺動部材を製造する方法であって、
    金属基材の一の面に金属単体または合金組成物からなる多孔質層を形成するステップと、
    前記多孔質層の表面に摺動層の原料樹脂を含浸させ、前記原料樹脂を焼成させることで、前記多孔質層を被覆する、樹脂組成物からなる摺動層を形成するステップと、
    前記摺動層を内側として前記金属基材を巻いて円筒状に整形するステップと、
    前記金属基材の外径側から継目部分を溶接するステップであって、前記継目部分の上の前記多孔質層が溶融して前記金属単体または合金組成物で形成された非多孔質な層が形成されるとともに、前記継目部分の上の前記摺動層が剥離することで、前記摺動部材の内周面の一部に前記樹脂組成物が存在せず、前記非多孔質な層が露出した領域が形成されるステップと、
    を含むことを特徴とする方法。
  12. 前記金属基材の外周面をダイスにより拘束しつつ前記摺動層の内側に円柱状の芯金を押し込むことにより、前記摺動層の内周面をバニシ仕上げするステップ、
    をさらに含むことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
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