JP7370728B2 - 全固体電池およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質層を備える全固体電池に関する。
様々な二次電池が開発されている中、高いエネルギー密度が得られ易いリチウムイオン二次電池(LIB)が最も有望視されている。一方、電池の用途拡大に伴って、自動車用電池や据え置き型電池などの大型電池が注目されている。大型電池では、小型電池に比べて安全性の確保がさらに重要になる。無機系の固体電解質を用いる全固体電池は、電解液を用いるLIBに比べて、大型化しても安全性を確保し易く、活物質の容量を有効利用し易いと期待されている。
全固体電池のエネルギー密度を高める1つの方法として、負極を高容量化することが挙げられる。全固体電池においては、一般に、InやIn合金、Li合金、炭素材料などが負極活物質として利用されている。高容量の負極活物質としては、ケイ素含有材料を用いることも提案されている。例えば、負極集電体上にシリコン薄膜をスパッタリングなどにより形成した負極を、全固体電池に使用することが提案されている(特許文献1)。
特開2013-080669号公報
ケイ素やスズなどのリチウムと合金化する金属は、全固体電池の負極活物質として利用できる。しかし、このような金属は、充放電に伴う膨張収縮による体積変化が大きい。特に、スパッタリングなどで形成された負極活物質層は、結晶子の分布が均一で、厚みが小さい場合でも緻密である。そのため、このような緻密な負極活物質層では、充放電時の膨張収縮による体積変化に伴う応力を緩和し難く、負極の劣化が顕著になり易い。よって、十分なサイクル特性が得られないと考えられている。
本発明の一局面は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するリチウムイオン伝導性の固体電解質層とを含み、
前記負極は、リチウムと可逆的に合金化する金属を含む負極活物質層と、前記負極活物質層を保持する負極集電体とを含み、
前記金属は、前記負極集電体の表面に堆積し、または拡散結合により結合した状態で前記負極活物質層を形成しており、
前記負極活物質層の厚みは、1μm以上50μm以下である、全固体電池に関する。
本発明の他の一局面は、負極集電体の表面に、リチウムと可逆的に合金化する金属を溶射して、前記金属を含み、かつ1μm以上50μm以下の厚みを有する負極活物質層を形成することにより前記負極を得る工程と、
前記負極と、正極と、前記負極および前記正極の間に介在する固体電解質層とを備える電極群を得る工程と、
を備える、全固体電池の製造方法に関する。
本発明に係る全固体電池によれば、高いエネルギー密度を確保できるとともに、優れたサイクル特性が得られる。
本発明の一実施形態に係る全固体電池に含まれる電極群を概略的に示す縦断面図である。 実施例1で作製した負極1の負極活物質層、原料のケイ素粉末、および単結晶ケイ素のラマン散乱スペクトルである。
本発明の実施形態に係る全固体電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に介在するリチウムイオン伝導性の固体電解質層とを含む。負極は、リチウムと可逆的に合金化する金属を含む負極活物質層と、負極活物質層を保持する負極集電体とを含む。上記の金属は、負極集電体の表面に堆積し、または拡散結合により結合した状態で負極活物質層を形成している。そして、負極活物質層の厚みは、1μm以上50μm以下である。
このような全固体電池は、負極集電体の表面に、リチウムと可逆的に合金化する金属を溶射して、金属を含み、かつ1μm以上50μm以下の厚みを有する負極活物質層を形成することにより負極を得る工程と、負極と、正極と、負極および正極の間に介在する固体電解質層とを備える電極群を得る工程と、を備える、全固体電池の製造方法により得ることができる。
本実施形態に係る全固体電池において、負極活物質層は、負極集電体の表面に堆積した上記の金属を含む堆積膜であってもよい。また、負極集電体の表面に形成される負極活物質層(換言すれば、上記の金属を含む膜)において、上記の金属は、金属粒子が拡散結合により結合した状態であってもよい。上記金属を含む堆積膜(負極活物質層)において、金属粒子が拡散結合により結合していてもよい。また、負極活物質層に含まれる上記金属では、金属粒子が負極集電体の表面に拡散結合により結合していてもよい。このような負極活物質層は、上述のように、溶射法により形成される溶射膜である。これらのいずれの負極活物質層を含む全固体電池も、本実施形態に包含されるものとする。
なお、負極活物質の粉末や負極活物質の粉末と添加剤などを含む混合物(つまり、負極合材)を負極集電体の表面に配置し、圧縮して形成される負極活物質層は、負極活物質の堆積(deposit)により形成されるものではなく、上記の堆積膜には含まれない。また、このような負極活物質層において、負極活物質の粉末は物理的に圧縮されているに過ぎず、負極活物質に含まれる金属では金属粒子同士が拡散結合により結合しているわけではない。
一般に、ケイ素などのリチウムと可逆的に合金化する金属を負極活物質として用いる場合、高い容量が得られるものの、充放電を繰り返すにつれて負極が劣化すると考えられる。負極活物質層が劣化すると、容量が得られなくなり、これにより、サイクル特性が低下する。これは、負極内や、負極と固体電解質層との間の界面において、イオン伝導パスが切断され、負極活物質層の抵抗が増加し、リチウムイオンの吸蔵量も低下することによるものであると考えられる。このようなイオン伝導パスの切断やリチウムイオンの吸蔵量の低下は、電解液を用いるLIBには見られない、全固体電池に特有の課題と言える。
一方、本実施形態に係る全固体電池では、ケイ素などのリチウムと合金化する金属を負極活物質として含む負極活物質層を、溶射により形成する。より具体的には、溶融(または軟化)した金属の液滴が負極集電体に衝突して金属粒子が形成され、この金属粒子が負極集電体上に堆積することで負極活物質層が形成される。金属粒子が液滴から形成されるため、結晶子のサイズが小さくなる。これにより、金属粒子の線膨張率が小さくなる。また、金属粒子が負極集電体上に堆積する際には、液滴が高エネルギー状態で負極集電体に衝突するため、形成される金属粒子に対して圧縮応力が加わり、歪みが導入される。歪みが導入される際には、結晶性がわずかに低くなる。このように、微小サイズの結晶子が形成されるとともに、歪みが導入されることにより、負極活物質層の厚みが上記のように適度に大きくても、充放電時の体積変化に伴う応力を緩和し易くなる。その結果、充放電に伴う負極活物質層の割れが生じ難くなり、金属粒子の失活が抑止されるため、電池のサイクル特性を高めることができる。なお、本明細書中、微小サイズの結晶子を含む金属結晶体を、金属微結晶体と称することがある。
負極活物質層は、金属粒子の堆積により形成されるため、反応面積が大きくなる。また、負極活物質中の結晶子サイズが小さいため、リチウムイオンの拡散距離が短くなる。さらに、電解液を用いるLIBとは異なり、全固体電池では、金属粒子表面へのSEI形成が抑制される。これらの観点から、リチウムイオンが吸蔵および放出され易くなり、負極活物質の利用率が向上すると考えられる。よって、負極活物質層の厚みが大きくても、負極活物質の容量を有効利用でき、高いエネルギー密度を得ることができる。
また、溶射により負極活物質層を形成することで、負極活物質粒子同士が融着により連結し易くなり、導電性が高まるとともに、膨張収縮によるイオン伝導パスの切断を抑制できる。そのため、負極活物質粒子間の界面抵抗が小さくなると考えられる。また、負極活物質粒子同士の溶着により負極活物質層において負極活物質粒子の表面粗さを小さくできるとともに、溶射により負極活物質粒子と負極集電体との間の接触面積を大きくできるため、これらの間の接触抵抗も小さくなると考えられる。一般に、ケイ素などのリチウムと合金化する負極活物質は導電性がそれほど高くないことが多いため、負極活物質層の厚みが大きくなると集電性が低くなる。しかし、本実施形態では、負極活物質粒子間の界面抵抗や負極活物質粒子と負極集電体との間の接触抵抗が低減されることで、負極活物質層の厚みが大きくても、集電性を高めることができる。このような観点からも、高いエネルギー密度が得られ易くなる。
負極活物質層は、負極集電体の表面に形成されていればよく、一方の表面に形成されていてもよく、双方の表面に形成されていてもよい。負極活物質層は溶射により形成されるため、厚みが大きくても充放電に伴う負極の劣化を抑制できる。
負極活物質層の厚みは1μm以上50μm以下の範囲で決定される。正極との容量のバランスを取り易い観点からは、30μm以下であることが好ましい。より高いケイ素利用率を確保し易い観点からは、負極活物質層の厚みを20μm以下または15μm以下としてもよい。高エネルギー密度を確保し易い観点からは、負極活物質層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であってもよい。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。負極活物質層の厚みは、例えば、5μm以上50μm以下、10μm以上50μm以下、5μm以上30μm以下、10μm以上30μm以下、5μm以上20μm以下、10μm以上20μm以下、または5μm以上15μm以下であってもよい。負極活物質層が負極集電体の両方の表面に形成されている場合、片方の負極活物質層の厚みの合計が上記の範囲となるようにすればよい。なお、ケイ素利用率とは、初期放電容量をケイ素1g当たりに換算した容量の、ケイ素の理論容量に対する比率(%)である。ケイ素利用率は、具体的には、後述の手順で求められる。
負極活物質層の厚みは、次のようにして求められる。まず、負極活物質層を形成する前の負極集電体の厚みと、負極集電体表面に負極活物質層を形成した後の負極全体の厚みとのそれぞれについて、例えば、マイクロメーター(Mitutoyo Japan製、MDH-25MB)を用いて測定する。各厚みにつき、測定は、任意の3点以上で行い、平均値を求める。負極活物質層形成前の負極集電体の厚みの平均値と、負極活物質層形成後の負極全体の厚みの平均値との差から、負極活物質層の厚み(平均値)を算出する。そして、算出結果の平均値を上記の負極活物質層の厚みとする。
なお、ケイ素利用率は、例えば、30%以上であり、40%以上であってもよく、50%以上、または60%以上であってもよい。ケイ素利用率の上限は特に制限されないが、通常、80%以下であり、70%以下または70%未満であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。さらに高いサイクル特性を確保し易い観点からは、負極活物質層の厚みが20μm以下(好ましくは15μm以下)の場合に、ケイ素利用率を60%以上70%未満とすることが好ましい。
本実施形態では、溶射により負極活物質粒子の表面積が小さくなるため、負極活物質層における空隙率を低減することができる。負極活物質層の空隙率は、例えば、10体積%以下であり、5体積%以下にすることもできる。このように負極活物質層の空隙率が低い場合、電解液を用いるLIBでは電解液の浸透性が低くなりすぎるため使用できないが、全固体電池では高い集電性を確保し易くなるため、エネルギー密度を高める上でさらに有利である。なお、負極活物質層の空隙率は、例えば、0.5体積%以上である。空隙率は、例えば、溶射膜を500倍で観察した断面画像(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)-反射電子像(BEI)など)を二値化処理して、空隙と空隙以外の部分とに区別し、10μm×200μm(2×10μm)の四角形の領域について、この領域の面積に占めるこの領域に含まれる空隙の面積の比率(%)を求め、この比率を体積基準の空隙率(%)とする。
上述のように、負極活物質層の金属内(より具体的には、金属結晶内)には、歪みが含まれる。負極活物質層中の歪み含有率は、例えば、50%以上であり、60%以上が好ましく、63%以上であってもよい。歪み含有率がこのような範囲である場合、Liの吸蔵および放出の際の体積変化が緩和され易くなるため、充放電時の負極の劣化を抑制し易くなり、サイクル特性をさらに向上できる。また、歪み含有率は、例えば、90%以下であり、85%以下または80%以下であってもよく、75%以下または70%以下であってもよい。歪み含有率がこのような範囲である場合、結晶性の高い金属粒子と結晶性の低い金属粒子との存在バランスが良くなり、充放電時の体積変化を緩和することができ、サイクル特性の向上効果をさらに高め易い。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
負極活物質のラマン散乱スペクトルを測定すると、結晶性金属に基づくピークと、非晶質金属に基づくピークとが観測される。結晶性金属では、応力や歪みが生じると、格子振動に変化が生じるため、応力の無い金属(例えば、単結晶)と比べた場合、ピーク位置がシフトして現れる。一般に、結晶性金属では、引張り応力が加わるとピークが低波数側にシフトし、圧縮応力が加わると、高波数側へシフトする。そのため、シフトしたピークの面積の、全てのピークの合計面積に対する比率(%)を求め、負極活物質層中の歪み含有率(%)とすることができる。なお、全てのピークとは、ラマン散乱スペクトルにおいて観察される負極活物質に由来するピークの全てである。ただし、負極活物質に由来するピークは、概ね、中心波数が300~700cm-1の範囲(好ましくは400~550cm-1の範囲)に観察される。そのため、これらの範囲に存在する負極活物質に由来するピークの全てを、上記の歪み含有率の計算における全てのピークとして扱ってもよい。
例えば、負極活物質を構成する金属がケイ素単体である場合、ラマン散乱スペクトルでは、520cm-1付近(例えば、520cm-1~522cm-1(より具体的には、520cm-1~521cm-1(~521.9cm-1)))に結晶性金属のピークが観測される。また、516cm-1付近、526cm-1付近、および532cm-1付近などにも、ピークが観察される。この場合、これらの全てのピークの合計面積に対する、結晶性金属のピーク以外のピークの合計面積の比率(%)が歪み含有率となる。この場合、例えば、ラマン散乱スペクトルにおいて、中心波数が、400~550cm-1の範囲に検出される負極活物質に由来するピークの全てを、全てのピークとすることができる。
より具体的には、歪み含有率(%)は下記式から算出される。
歪み含有率(%)=(Spa/Spt)×100
(式中、Spaは、上記の520cm-1付近の波数にトップピークを有するピーク以外のピークの面積の合計であり、Sptは、全ピークのピーク面積の合計である。)
ラマンスペクトルは、日本分光社製のNRS-3300を用いて、光源には、半導体レーザーの532nm線を用いた。スペクトル測定は、中心波数2250cm-1、露光時間10秒、積算回数10回、およびスリット0.01×6mmの条件で測定される。ラマンスペクトルにおいて、歪み含有率を測定するピークが他のピークと重なっている場合、波形分離を行うことで、該当するピークの面積が求められる。波形分離は、日本分光社製NRS-3300の測定ソフト「スペクトルマネージャーversion2」に付属しているカーブフィッティングプログラムを用いることができる。より具体的には、測定したラマンスペクトルのベースラインを一次式で固定し、手動でピーク位置を設定した後、拘束条件として中心波数:300~750cm-1および半値幅:0~300を設定し、計算の反復回数:200回の条件で解析することにより波形分離を行うことができる。上記計算されたデータの残差二乗和が20以下のものをデータとして用いる。
負極活物質層は、上述のように、金属の結晶子を含んでいる。負極活物質層では、例えば、歪みを含む結晶領域(具体的には、結晶子および/またはその凝集粒子)が存在している。なお、隣接する結晶領域は、融着していてもよい。結晶子サイズは、例えば、900Å以下であってもよい。金属粒子の線膨張率がより小さくなる観点からは、結晶子サイズは、700Å以下であることが好ましく、600Å以下または500Å以下であってもよい。結晶子サイズがこのような範囲である場合、充放電時の体積変化に伴う応力を緩和し易くなり、高いサイクル特性を確保することができる。結晶子サイズは、100Å以上であることが好ましく、300Å以上であることがさらに好ましい。結晶子サイズがこのような範囲である場合、大きな電気化学容量を確保し易くなるとともに、集電体との密着性の低下を抑制して、電子伝導性の低下を抑制することができる。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
結晶子サイズは、例えば、負極活物質層のX線回折パターンから、Halderr-Wagner法により、以下の式を用いて求めることができる。
β/tanθ = (Kλ/L)×(β/tanθ)×sinθ+16e
(式中、βは、格子歪みと結晶子サイズによる回折線の広がりであり、Kは、Scherrer定数であり、Lは、結晶子サイズであり、λは、使用したX線管球の波長であり、θは回折角2θ/θであり、eは、格子歪みである。)
本実施形態では、負極活物質層を溶射により形成することで、負極活物質粒子同士が融着し、負極活物質粒子と負極集電体との密着性も高まる。よって、負極の導電性を高めることができる。負極の電気伝導度は、例えば、1×10-4S/cm以上であり、好ましくは2×10-4S/cm以上であり、1×10-3S/cm以上であってもよい。負極の電気伝導度は高い方が好ましいが、例えば、1×10-2S/cm以下である。このような電気伝導度を有する負極の負極活物質層では、大部分(例えば、60体積%以上)の負極活物質粒子が融着した状態であると言える。
負極活物質としての上記金属としては、ケイ素単体を用いることが好ましい。これにより、高エネルギー密度が得られる。ケイ素単体は充放電時の体積変化が極めて大きいが、本実施形態では、ケイ素単体を用いる場合でも、充放電時の負極の劣化を抑制できる。
固体電解質層は、LiS-P固溶体などの硫化物(硫化物系固体電解質)を含むことが好ましい。このような硫化物系固体電解質を用いる場合、固体電解質層と負極活物質層との間のなじみが良くなり、両者間の界面における高いイオン伝導性を確保し易くなる。
以下に、全固体電池の構成および製造方法についてより具体的に説明する。
(負極)
(負極活物質層)
負極に含まれる負極活物質層は、負極活物質として、リチウムと可逆的に合金化する金属(合金系負極活物質)を含む。このような金属は、リチウムイオンを可逆的に挿入および脱離(もしくは吸蔵および放出)可能である。このような金属としては、ケイ素、スズ、ゲルマニウム、またはアルミニウムなどの金属単体やこれらの金属元素から選択される少なくとも一種を含む合金などが挙げられる。これらの合金系負極活物質は、LIBにおいて一般的に用いられる黒鉛に比べて、理論容量が3~10倍の大きな電気化学容量を有する。
高容量化および実用性の観点からは、上記金属のうち、ケイ素やスズの単体または合金が好ましく、中でもケイ素単体またはケイ素合金が好ましい。高エネルギー密度を確保する観点からは、ケイ素は、ケイ素単体として負極活物質層に含まれていることが好ましい。電解液を用いるLIBでは、ケイ素単体を負極活物質として用いると、電解液との副反応が著しく、分厚いSEIが形成されるため、ケイ素の高容量を有効利用できない上、十分なサイクル寿命が得られ難い。全固体電池では、このような不具合を回避することができる。
なお、負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質に加え、全固体電池で負極に使用される公知の成分を含んでもよい。
(負極集電体)
負極活物質層を保持する負極集電体としては、全固体電池の負極集電体として使用されるものであれば特に制限なく使用することができる。このような負極集電体の形態としては、例えば、金属箔、板状体、粉体の集合体などが挙げられ、負極集電体の材質を成膜したものを用いてもよい。金属箔は、電解箔、エッチド箔などであってもよい。
負極集電体は、負極活物質層を形成する際に、波打ったり、破れたりしない強度を有するものが望ましい。
負極集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、これらの合金などが挙げられる。
負極集電体の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下の範囲から適宜選択できる。負極集電体の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
(正極)
正極は、正極活物質を含んでいればよく、正極活物質に加え、全固体電池で正極に使用される公知の成分を含んでもよい。正極におけるリチウムイオン伝導性を高める観点から、正極は、正極活物質とともに、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質を含むことが好ましい。
ここでは、全固体電池において、正極活物質として使用されるものを特に制限なく用いることができる。正極活物質としては、例えば、コバルト、ニッケル、および/またはマンガンなどを含むリチウム含有酸化物[例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn24など)など)、LiNi0.8Co0.15Al0.052など]、Li過剰の複合酸化物(Li2MnO3-LiMO2)などの酸化物の他、酸化物以外の化合物も挙げられる。酸化物以外の化合物としては、例えば、オリビン系化合物(LiMPO4)、イオウ含有化合物(Li2Sなど)などが挙げられる。なお、上記式中、Mは遷移金属を示す。正極活物質は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高容量が得られ易い観点からは、Co、NiおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種を含むリチウム含有酸化物が好ましい。リチウム含有酸化物は、さらにAlなどの典型金属元素を含んでもよい。
正極活物質の平均粒子径は、例えば、3μm以上15μm以下であり、4μm以上11μm以下であることが好ましい。
正極活物質の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を示す限り、特に制限されず、全固体電池で固体電解質層に使用されるような固体電解質が使用できる。固体電解質の結晶状態も特に制限されず、結晶性および非晶質のいずれであってもよい。固体電解質としては、硫化物(硫化物系固体電解質)、水素化物(水素化物系固体電解質)などの無機固体電解質が好ましい。硫化物としては、例えば、Li2Sと、周期表第13族元素、第14族元素、および第15族元素からなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む一種または二種以上の硫化物とを含むものが好ましい。周期表第13~15族元素としては、特に限定されるものではないが、例えば、P、Si、Ge、As、Sb、Al等を挙げることができ、中でもP、Si、Geが好ましく、特にPが好ましい。また、これらの元素(特に、P)とLiとを含む硫化物も好ましい。
硫化物の具体例としては、Li2S-SiS2、Li2S-P25、Li2S-GeS2、Li2S-B23、Li2S-Ga23、Li2S-Al23、Li2S-GeS2-P25、Li2S-Al23-P25、Li2S-P23、Li2S-P23-P25、LiX-Li2S-P25、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-B23(X:I、Br、またはCl)などが挙げられる。
また、水素化物としては、例えば、水素化ホウ素リチウムの錯体水素化物などが挙げられる。錯体水素化物の具体例としては、LiBH4-LiI系錯体水素化物およびLiBH4-LiNH2系錯体水素化物などが挙げられる。
これらの固体電解質は、一種を単独で用いてもよく、必要に応じて、二種以上を併用してもよい。
正極活物質と固体電解質との総量に占める固体電解質の割合は、特に制限されないが、正極の高いリチウムイオン伝導性を確保し易い観点からは、例えば、5~40質量%である。
正極は、正極集電体と、正極集電体に担持された正極活物質または正極合材とを含んでもよい。正極合材とは、正極活物質および固体電解質を含む混合物である。
正極集電体としては、全固体電池の正極集電体として使用されるものであれば特に制限なく使用することができる。このような正極集電体の形態としては、負極集電体について例示したものから適宜選択できる。
正極集電体の材質としては、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、亜鉛、スズ、またはこれらの合金などが例示される。
正極の厚みは、例えば、7μm以上700μm以下である。加工し易い観点から、正極の厚みを10μm以上700μm以下としてもよい。正極の厚みは、10μm以上350μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下としてもよい。
(固体電解質層)
正極と負極との間に介在する固体電解質層は、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質を含む。このような固体電解質としては、正極について例示した固体電解質が挙げられ、硫化物が好ましい。
固体電解質層は、必要に応じて、全固体電池の固体電解質層に用いられる公知の添加剤を含むことができる。高い導電性を確保し易い観点からは、固体電解質層は、樹脂などのバインダを含まないことが好ましい。
固体電解質層の厚みは、例えば、20μm以上600μm以下である。
図1は、本実施形態に係る全固体電池に含まれる電極群を概略的に示す縦断面図である。全固体電池に含まれる電極群は、正極2と、負極1と、これらの間に介在する固体電解質層3とを備える。正極2は、正極集電体2aとこれに担持された正極活物質層2bとを備える。負極1は、負極集電体1aとこれに担持された負極活物質層1bとを備える。正極2と負極1とは、正極活物質層2bと負極活物質層1bとが対向するように配置される。正極活物質層2bと負極活物質層1bとの間に、固体電解質層3が配置されている。固体電解質層3は、リチウムイオン伝導性の固体電解質を含む。図示例では、正極活物質層2bおよび負極活物質層1bはいずれも所定の厚みを有する円形である。
全固体電池は、電極群をセルケースに収容することにより作製できる。電極群の正極および負極には、それぞれリードの一端部が接続される。リードの他端部はセルケースの外部に露出した外部端子と電気的に接続される。
全固体電池の形状は、丸型、円筒型、角型、薄層フラット型などの様々なタイプであってもよい。電極群は、複数の正極および/または複数の負極を含んでもよい。図1には、正極活物質層や負極活物質層が円形の場合を示したが、この場合に限らず、全固体電池の構成部材の形状は適宜選択でき、例えば、正方形、長方形、ひし形、楕円形などであってもよい。
本実施形態に係る全固体電池は、負極と、正極と、これらの電極の間に介在する固体電解質層とを備える電極群を得る工程を備える製造方法により得ることができる。全固体電池の製造方法は、負極および正極のいずれか一方の電極の表面に固体電解質層を形成する工程を備えていてもよい。電極群を得る工程では、固体電解質層の表面に他方の電極を積層または形成してもよい。固体電解質層の形成工程に先立って、負極および正極のいずれか一方の電極を形成する工程を行ってもよい。
(負極を形成する工程)
本工程では、負極集電体の表面に、負極活物質層を形成することにより負極を形成する。より具体的には、負極集電体の表面に、リチウムと可逆的に合金化する金属を溶射することにより負極活物質層を形成する。金属を溶射することにより、負極集電体の表面に、金属を堆積または拡散結合させる。負極活物質層は、上述のように、上記の金属を含み、かつ1μm以上50μm以下の厚みを有する。
負極活物質の堆積や拡散結合は、減圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。また、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、大気などの酸素含有ガス雰囲気下で行ってもよい。
溶射法では、溶射膜の原料となる負極活物質粒子(原料粒子)を溶射する。原料粒子の平均粒子径は、例えば、5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上70μm以下であり、さらに好ましくは15μm以上50μm以下である。なお、原料粒子の平均粒子径は、正極活物質の場合と同じく、体積基準の粒度分布におけるメディアン径である。
(正極を形成する工程)
正極は、例えば、正極活物質や正極合材(正極活物質と添加剤などとを含む)を圧縮成形することにより得ることができる。正極集電体の表面に、正極活物質や正極合材の層を形成することにより正極を形成してもよい。圧縮成形する際の圧力は、例えば、1MPa以上5MPa以下である。
固体電解質層の表面で正極活物質や正極合剤を圧縮成形することにより正極を形成してもよい。
(固体電解質層を形成する工程)
本工程では、例えば、形成した負極(具体的には負極活物質層)および正極のいずれか一方の表面に固体電解質層を形成する。正極の表面に固体電解質層を形成する場合には、正極と固体電解質層との積層体における固体電解質層の表面に、別途作製した負極の負極活物質層が接触するように積層される。また、固体電解質層を先に形成し、別途形成した負極と積層してもよい。この場合、正極は、固体電解質層と負極を積層する前に固体電解質層と積層してもよく、負極を固体電解質層に積層した後に正極を固体電解質層の表面に積層してもよい。
固体電解質層は、負極または正極の表面において、固体電解質または固体電解質を含む混合物(例えば、固体電解質と添加剤などとを含む混合物)を載せ、圧縮成形することにより形成できる。圧縮成形する際の圧力は、例えば、1MPa以上5MPa以下である。固体電解質層を形成する工程において、上記の混合物は、樹脂などのバインダを含まないことが好ましい。
このようにして、負極と正極とこれらの間に介在する固体電解質層とを備える電極群を形成することができる。
各工程では、必要に応じて、所望の形状の開口部を有するマスクなどを利用して成膜してもよく、金型を用いてもよい。
(電極または電極群を加圧する工程)
固体電解質層と正極および/または負極との密着性を高めるため、形成された電極群(または、電極と固体電解質層と)を厚み方向に加圧する。電極群は、電池ケースに収容されるが、電極群への加圧は、電池ケースに収容する前に行なってもよく、電池ケースに収容した後に行なってもよい。例えば、電池ケースがラミネートフィルムなどである場合には、電極群を電池ケースに収容した後に電池ケース(つまり、電池)ごと電極群を加圧すればよい。
少なくとも負極を加圧すると、歪み含有率を好適な範囲に調節し易い。少なくとも負極および固体電解質層を加圧したり、電極群を加圧したりすることにより、負極に圧力を加えてもよい。負極の加圧は、第1工程から第3工程の少なくとも1つの工程で行ってもよく、電極群を加圧することにより行ってもよい。
電極群(または、少なくとも負極、もしくは電極と固体電解質層と)を加圧する際の圧力は、例えば、250MPa以上であり、300MPa以上であってもよい。より高い容量維持率およびケイ素利用率を確保し易い観点からは、加圧する際の圧力は、500MPa以上が好ましく、800MPa以上または1000MPa以上であってもよい。加圧する際の圧力は、例えば、1500MPa以下であり、1000MPa以下または700MPa以下としてもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。加圧する際の圧力は、例えば、250MPa以上1500MPa以下、300MPa以上1000MPa以下、300MPa以上700MPa以下、250MPa以上500MPa以下、500MPa以上1500MPa以下、500MPa以上1000MPa以下、800MPa以上1500MPa以下、800MPa以上1000MPa以下、または1000MPa以上1500MPa以下であってもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
下記の手順で、図1に示す構造の電極群を備える電池を、評価用の試験セルとして作製した。ただし、正極2の代わりに、負極1の対極を用いた。
試験セルの作製手順を以下に詳細に説明する。
(1)試験セルの作製
(a)負極1の作製
負極集電体1aとしてのCu箔(厚み:30μm)の片面に、大気プラズマ溶射法(APS)のアルゴン-水素混合プラズマガス条件にてSi粉末(粒子径:10μm~30μm)を溶射した。これにより、負極集電体1aの片面に厚みが約10μmの溶射膜である負極活物質層1bを有する負極1を作製した。
使用した負極活物質の質量を、形成した負極活物質層1bの厚み方向における投影面積(cm)で除することにより、活物質質量を求めた。また、負極活物質の質量を、負極活物質層1bの体積(cm)で除することにより、負極密度(負極活物質密度)を求めた。
(b)固体電解質層3の作製
負極活物質層1bの負極集電体1aとは反対側の面が露出した状態で、直径10mmの円筒形の金型をセットし、金型内の負極活物質の上面に、リチウムイオン伝導性の固体電解質であるLi2S(75mol%)-P25(25mol%)固溶体(組成:Li3PS4)粉末を載せた後、厚み方向に1000MPaの圧力で加圧することにより、負極活物質層と固体電解質層とから構成される2層成形体を形成した。つまり、負極活物質層は1000MPaの圧力で加圧されたことになる。固体電解質層の厚みは400μmであった。
(c)試験セルの組み立て
上記(b)で得られた2層成形体の固体電解質層側の表面に、対極の活物質層としてのInLi0.8合金箔を配置するとともに、合金箔上に対極の集電体としてステンレス鋼箔(厚み:10μm)を配置した。そして、合金箔および集電体と上記の2層成形体との積層体に、厚み方向に100MPaの圧力を加えた。これにより、合金箔の活物質層と集電体とからなる対極を形成するとともに、対極と固体電解質層3とを圧着させた。このようにして、試験セル(二電極式全固体電池)を作製した。そして、得られた試験セルは、拘束治具を用いて、各層の厚み方向に600kgf/cm(≒58.8MPa)の圧力が加わるように拘束した。
なお、試験セルにおいて、活物質層と、負極活物質層1bとの互いの対向面は、同じ面積である。同様に、対極の活物質層および負極活物質層1bと、固体電解質層3との互いの対向面は、同じ面積である。
(2)評価
上記(1)で得られた試験セルまたは負極1を用いて、下記の手順で、評価を行った。
(a)負極活物質層の歪み含有率
負極1の負極活物質層1b(Si溶射膜)についてラマン散乱スペクトルを測定した(圧力=0MPa)。また、負極1を、厚み方向に300MPa、500MPa、または1000MPaの圧力で加圧した後、負極活物質層1bについてラマン散乱スペクトルを測定した。参照用に負極活物質の原料として用いたSi粉末、およびSi単結晶のそれぞれを用いて負極活物質層を形成し、ラマン散乱スペクトルを測定した(圧力=0MPa)。Si粉末については、厚み方向に1000MPaの圧力で加圧した後の負極活物質層についてもラマン散乱スペクトルを測定した。圧力=0MPaの場合のSi溶射膜、Si粉末、およびSi単結晶の各ラマン散乱スペクトルを図2に示す。また、圧力=1000MPaの場合のSi溶射膜およびSi粉末の各ラマン散乱スペクトルを圧力=0MPaの場合のラマン散乱スペクトルとともに、図3に示す。図2および図3中、括弧内の数値は、負極活物質層を加圧した際の圧力である。また、各ラマン散乱スペクトルにおける各ピークの中心波数、半値幅、および面積割合を表1に示す。なお、ラマン散乱スペクトル測定には、日本分光社製のNRS-3300を用いた。光源には、半導体レーザーの532nm線を用いた。スペクトル測定は、中心波数2250cm-1、露光時間10秒、積算回数10回、およびスリット0.01×6mmの条件で行った。
Figure 0007370728000001
表1の面積割合から、既述の手順で、負極活物質層中の歪み含有率(%)を求めた。測定したラマンピークは複数のピークが多重した状態である。この多重ピークを波形分離し、各ピークの面積を求め、既述の手順で歪み含有率(%)を算出した。
結果を表2に示す。
Figure 0007370728000002
表2に示されるように、実施例の負極活物質層中には、圧縮応力に起因する歪みが63~82%含まれていた。
(b)負極活物質層の空隙率
負極1の断面のSEM-BEI画像から、既述の手順で、負極活物質層の空隙率を求めた。なお、空隙率は、作製した負極1に厚み方向に加圧することなく求めた(圧力=0MPa)。
(c)結晶子サイズ
負極1の負極活物質層1bから負極活物質を所定量取り出し、粉末X線回折パターンを測定した。原料として用いたSi粉末についても、同様にして、X線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンから、既述の手順で結晶子サイズを算出した。
なお、X線回折パターンの測定は、リガク社製UltimaIVにより、X線源としてCu-Kα線を用いるとともに、平行ビームを用いて、FT法で行った。測定の際には、回折角2θ=10°~90°の範囲で、スキャンステップ0.01°にて、積算時間5secの速度で走査した。
Si粉末の結晶子サイズが、1000Åであったのに対し、実施例1の負極1における負極活物質の結晶子サイズは、500Åであり、Si粉末の約半分であった。このように、溶射により形成される実施例1の負極活物質層における負極活物質の結晶子サイズは、非常に小さい。このことから、負極活物質層に含まれる金属粒子が、微結晶体であることが分かる。
(d)負極の電気伝導度
負極1の負極活物質層1b表面に、導電性ペーストを塗布し、乾燥させることにより電気伝導度測定用のサンプルを作製した。ただし、サンプルは、厚み方向に加圧することなく作製した(圧力=0MPa)。ステンレス鋼(SUS304)製のパンチを有する冶具を用いて、負極活物質層1bの厚み方向に、600kgf/cm(≒58.8MPa)の圧力が加わるようにサンプルを拘束した。拘束したサンプルに対して0.2V~1.0Vの範囲で直流電圧を印加し、電流値を測定した。電圧値と得られた電流値とから抵抗値R(Ω)を求め、この抵抗値を用いて下記式より電気伝導度を算出した。
電気伝導度(単位:S/cm)=(1/R)×(T/S
(式中、Tは、負極活物質層1bの厚み(cm)であり、Sは、負極活物質層1bの厚み方向への投影面積(cm)である。)
(e)充放電容量、充放電効率、ケイ素利用率、および容量維持率
上記(1)で得られた試験セルを25℃の恒温槽内に配置し、温度を維持しながら、0.1mA/cm2の定電流にて-0.6V~1.5Vの電圧範囲で、初期充放電容量を測定した。このときの放電容量を充電容量で除することにより、充放電効率を求めた。
上記の充放電を、50サイクル繰り返し、50サイクル目の放電容量を求めた。また、初期放電容量を100%としたときの50サイクル目の放電容量の比率(容量維持率)を求めた。
上記で求めた初期放電容量をケイ素1g当たりに換算した容量(mAh/g)の、ケイ素の理論容量(ケイ素中に吸蔵可能なLiイオンの理論値)4200mAh/gに対する比率(%)を算出した。得られた値を、ケイ素利用率とした。
実施例2
負極集電体として、Cu箔(厚み:30μm)を用いるとともに、負極活物質層の厚みが約20μmとなるように溶射を行なったこと以外は、実施例1と同様に、負極および試験セルを作製し、評価を行った。
実施例3
負極集電体として、Cu箔(厚み:30μm)を用いるとともに、負極活物質層の厚みが約30μmとなるように溶射を行なったこと以外は、実施例1と同様に、負極および試験セルを作製し、評価を行った。
実施例4
負極活物質層の厚みが約13μmとなるように溶射を行なったこと以外は、実施例1と同様に、負極および試験セルを作製し、評価を行った。評価(e)については、負極の容量が、ケイ素単体の理論容量(4200mAh/g)に対し、59.0%となるようにケイ素へのリチウムイオン挿入量を規制した。
実施例5
負極活物質層の厚みが約15μmとなるように溶射を行なったこと以外は、実施例1と同様に、負極および試験セルを作製し、評価を行った。評価(e)については、負極の容量が、ケイ素単体の理論容量(4200mAh/g)に対し、36.5%となるようにケイ素へのリチウムイオン挿入量を規制した。
実施例6および7
固体電解質層3を形成する際の厚み方向への加圧の圧力(つまり、負極活物質層に加わる圧力)を表4に示すように変更した。これ以外は、実施例1と同様に、試験セルを作製し、評価を行った。
実施例8および9
固体電解質層3を形成する際の厚み方向への加圧の圧力(つまり、負極活物質層に加わる圧力)を表4に示すように変更した。これ以外は、実施例2と同様に、試験セルを作製し、評価を行った。
実施例10および11
固体電解質層3を形成する際の厚み方向への加圧の圧力(つまり、負極活物質層に加わる圧力)を表4に示すように変更した。これ以外は、実施例3と同様に、試験セルを作製し、評価を行った。
比較例1
溶射により負極活物質層を形成する代わりに、次のようにして負極活物質層を形成した。
まず、ケイ素単体粉末(平均粒子径D50:5μm)とLi2S(75mol%)-P25(25mol%)固溶体(組成:Li3PS4)とを、6:4の質量比で混合することにより混合物を得た。この混合物を、負極集電体の片面に載せ、1000MPaの圧力で圧縮成形することにより負極活物質層を形成した。負極活物質層の厚みは約30μmとした。
このようにして作製した負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験セルを作製し、評価を行った。評価(e)のサイクル後の放電容量および容量維持率については、充放電を10サイクル繰り返した後に評価した。
比較例2
混合物に代えて、ケイ素単体粉末(平均粒子径D50:5μm)を用いたこと以外は、比較例1と同様に負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験セルを作製し、評価を行った。評価(e)のサイクル後の放電容量および容量維持率については、充放電を10サイクル繰り返した後に評価した。
実施例および比較例の負極の物性や評価結果を表3~表5に示す。実施例1~11はA1~A11であり、比較例1~2はB1~B2である。なお、表4中の歪み含有率は、負極1について求めた値である。
Figure 0007370728000003
Figure 0007370728000004
Figure 0007370728000005
表から明らかなように、比較例に比べて実施例では、初期放電容量も高く、サイクル後の容量維持率も高くなった。このように、実施例では、高いエネルギー密度と、高いサイクル特性が得られた。
本発明に係る全固体電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性に優れるため、高エネルギー密度および長いサイクル寿命が求められる様々な用途に有用である。
1:負極、2:正極、1a:負極集電体、1b:負極活物質層、2a:正極集電体、2b:正極活物質層、3:固体電解質層

Claims (9)

  1. 負極集電体の表面に、リチウムと可逆的に合金化する金属を溶射して、前記金属を含み、かつ10μmよりも大きく50μm以下の厚みを有する負極活物質層を形成することにより負極を得る工程と、
    前記負極と、正極と、前記負極および前記正極の間に介在する固体電解質層とを備える電極群を得る工程と、
    を備える全固体電池の製造方法であって、
    前記固体電解質層は、無機固体電解質を含み、
    前記金属は、ケイ素単体であり、
    少なくとも前記負極を500MPa以上の圧力で加圧する工程を含む、
    全固体電池の製造方法。
  2. さらに、前記負極および前記正極のいずれか一方の電極の表面に固体電解質層を形成する工程を備え、
    前記電極群を得る工程において、前記固体電解質層の表面に他方の電極を積層または形成する、請求項に記載の全固体電池の製造方法。
  3. 前記負極活物質層は、前記金属の結晶子を含み、
    前記結晶子のサイズは、700Å以下である、請求項1または2に記載の全固体電池の製造方法
  4. 前記負極活物質層の空隙率は、5体積%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法
  5. 前記負極の電気伝導度は、1×10-4S/cm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法
  6. 前記負極活物質層の厚みは、13μm以上15μm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法
  7. 前記全固体電池において、ケイ素利用率が、40%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法
  8. 前記無機固体電解質は、硫化物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の全固体電池の製造方法
  9. 前記硫化物は、LiS-P固溶体である、請求項8に記載の全固体電池の製造方法
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