本実施形態は、カメラと該カメラに対して着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)とアダプタ装置とを含むカメラシステムに関する。アダプタ装置は、カメラと交換レンズとの間に着脱可能であり、アダプタ装置を介してカメラと交換レンズで通信することも可能である。
本実施形態の説明に先立ち、本明細書で使用する用語の定義について説明する。
「通信フォーマット」は、アダプタ装置と交換レンズとの間の通信全体の取り決めを示す。「通信方式」はクロック同期式と調歩同期式を意味し、クロック同期式を通信方式A、調歩同期式を通信方式Bとする。「データフォーマット」は待機要求信号(BUSY信号)の付加の可否を示し、BUSY信号の付加を許可するデータフォーマットを「フォーマットF1」とし、BUSY信号の付加を禁止するデータフォーマットを「フォーマットF2」とする。
「通信モード」は、通信方式とデータフォーマットの組み合わせを意味し、本実施形態では以下の3つの通信モードについて説明する。「通信モードM1」は通信方式AかつフォーマットF1の通信モードであり、「通信モードM2」は通信方式BかつフォーマットF1の通信モードである。また、「通信モードM3」は通信方式BかつフォーマットF2の通信モードである。
本実施形態は、特に、通信モードM2におけるアダプタ装置と交換レンズの間の通信制御に関する。以下の実施形態においては、通信モードM2を含む複数の通信モードを切り替えて通信可能なアダプタ装置と交換レンズを有するアダプタ装置システムを示す。このように通信モードを適宜切り替えて通信を行うことで、アダプタ装置と交換レンズの組み合わせや撮影モードに応じて適切な通信モードを選択することができる。
例えば、アダプタ装置と交換レンズが通信モードM3に対応していて、大容量のデータを送受信する場合には、それぞれの通信モードを通信モードM3に切り替えた後に、BUSY信号の付加が禁止された高速なデータ通信が実行される。また、交換レンズにおけるデータ処理にある程度の時間を要する場合には、アダプタ装置と交換レンズの通信モードをそれぞれ通信モードM2に切り替えた後に、BUSY信号の付加が許可されたデータ通信が行われる。これにより、アダプタ装置と交換レンズの間で通信の破綻を招くことのないデータ通信を実行する。
次に、実施形態に係るアダプタ装置を有するカメラシステムについて添付の図面を用いて説明する。なお、以下の説明において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態であるアダプタ装置200を含むカメラシステム1の構成を示す図である。アダプタ装置200は、交換レンズ100とカメラ300との間に取り外し可能に装着されている。
交換レンズ100とアダプタ装置200は結合機構であるマウント150を介して機械的および電気的に接続されている。また、アダプタ装置200とカメラ300は結合機構であるマウント250を介して機械的および電気的に接続されている。
交換レンズ100は通信部112を、アダプタ装置は通信部208を、カメラ300は通信部308をそれぞれ有し、これらの通信部を介して制御命令や内部情報を通信する。
ただし、交換レンズ100とカメラ300は、本来直接接続されることが想定されていないものであり、交換レンズ100における通信プロトコルとカメラ300における通信プロトコルは異なっている。通信プロトコルとは、データのやり取りの手順を取り決めたものである。
すなわち、アダプタ装置200は、交換レンズ100およびカメラ300との間での信号のやりとりを適切に成立させる機能を有する。当該機能を実行するために、通信部208は、通信部308との間で行う第1の通信プロトコル(以下、カメラ側プロトコルと呼ぶ)での通信と、通信部112との間で行う通信プロトコル(以下、レンズ側プロトコルと呼ぶ)での通信が可能である。
本実施形態において、レンズ側プロトコルは複数の通信方式に対応するように構成されている。レンズ側プロトコルにおいて通信が開始されると、交換レンズ100が対応している通信方式に関する情報を交換レンズ100からアダプタ装置200に送信させる初期通信が行われる。なお、レンズ側プロトコルでの通信が開始されるタイミングは、交換レンズ100、アダプタ装置200、カメラ300の接続が完了したタイミングや、カメラ300の電源がONになったタイミング等である。その後、通信データの種類や通信目的やタイミングに応じて、アダプタ装置200と交換レンズ100はそれぞれが対応している通信方式の中から最適な通信方式を選択して通信を行う。
まず、交換レンズ100とアダプタ装置200の具体的な構成について説明する。交換レンズ100とアダプタ装置200は、結合機構であるマウント150を介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、マウント150に設けられた不図示の電源端子を介してアダプタ装置200から電力の供給を受け、後述する各種アクチュエータやレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)111を制御する。また、交換レンズ100とアダプタ装置200は、マウント150に設けられた通信端子(図2に示す)を介して相互に通信を行う。
交換レンズ100は、撮像光学系を有する。撮像光学系は、被写体OBJ側から順に、フィールドレンズ101と、変倍を行う変倍レンズ102と、光量を調節する絞りユニット114と、像振れ補正レンズ103と、焦点調節を行うフォーカスレンズ104とを含む。
変倍レンズ102とフォーカスレンズ104はそれぞれ、レンズ保持枠105、106により保持されている。レンズ保持枠105、106は、不図示のガイド軸により図中に破線で示した光軸方向に移動可能にガイドされており、それぞれステッピングモータ107、108によって光軸方向に駆動される。ステッピングモータ107、108はそれぞれ、駆動パルスに同期して変倍レンズ102およびフォーカスレンズ104を移動させる。
像振れ補正レンズ103は、撮像光学系の光軸に直交する方向に移動することで、手振れ等に起因する像振れを低減する。
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するレンズ制御部(第2制御部)である。レンズマイコン111は、インタフェース(I/F)回路112a(図2に示す)を介してデータを送受信するレンズデータ送受信部112bを備える通信部112を有する。レンズマイコン111は、アダプタ装置200から受信した制御コマンドに対応するレンズ制御を行ったり、アダプタ装置200からのデータ送信要求に対応するレンズデータをアダプタ装置200に送信したりする。レンズデータは、交換レンズ100の光学情報や、交換レンズ100に固有の特性情報(レンズID)などを含む。
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するレンズ制御部である。レンズマイコン111は、通信部112を介して、アダプタ装置200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。また、レンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、通信部112を介して送信要求に対応するレンズデータをアダプタ装置200に送信する。
また、レンズマイコン111は、制御コマンドのうち変倍やフォーカシングに関するコマンドに応答してズーム駆動回路119およびフォーカス駆動回路120に駆動信号を出力してステッピングモータ107、108を駆動させる。これにより、変倍レンズ102による変倍動作を制御するズーム処理やフォーカスレンズ104による焦点調節動作を制御するオートフォーカス処理を行う。
絞りユニット114は、絞り羽根114a、114bを有する。絞り羽根114a、114bの状態は、ホール素子115により検出され、増幅回路122およびA/D変換回路123を介してレンズマイコン111に入力される。レンズマイコン111は、A/D変換回路123からの入力信号に基づいて絞り駆動回路121に駆動信号を出力して絞りアクチュエータ113を駆動させる。これにより、絞りユニット114による光量調節動作を制御する。
さらに、レンズマイコン111は、交換レンズ100内に設けられた振動ジャイロ等の不図示の振れセンサにより検出された振れに応じて、防振駆動回路125を介して防振アクチュエータ126を駆動する。これにより、像振れ補正レンズ103のシフト動作を制御する防振処理が行われる。
アダプタ装置200はアダプタマイクロコンピュータ(以下、アダプタマイコンという)205を有する。アダプタマイコン205は、アダプタ装置200内の各部の動作を制御するアダプタ制御部(第1制御部)として機能する。
アダプタマイコン205は、通信インタフェース(I/F)回路208a(図2に示す)を介してデータを送受信するアダプタデータ送受信部208bを備える通信部208を有する。アダプタデータ送受信部208bとレンズデータ送受信部112bは接続されている。通信部208はレンズ側プロトコルで制御コマンドをレンズマイコン111に送信したり、レンズマイコン111から送信されたデータを受信したりする。
なお、アダプタデータ送受信部208bは後述する通信部308にも接続されている。通信部208はカメラ側プロトコルで通信部308から送信された制御コマンドを受信したり、通信部308にデータを送信したりする。
また、通信部208は、カメラ300から送信された第1の信号を、アダプタ装置200と交換レンズ100との間で行われるレンズ側プロトコルによる通信における第2の信号に変換して交換レンズ100に送信する機能を有する。また、通信部208は、交換レンズ100から送信された第3の信号を、アダプタ装置200とカメラ300との間で行われるカメラ側プロトコルによる通信における第4の信号に変換してカメラ300に送信する機能を有する。
次にカメラ300の構成について説明する。カメラ300は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子301と、A/D変換回路302と、信号処理回路303と、記録部304と、カメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコンという)305と、表示部306とを有する。
撮像素子301は、交換レンズ100内の撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して電気信号(アナログ信号)を出力する。A/D変換回路302は、撮像素子301からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号処理回路303は、A/D変換回路302からのデジタル信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。
また、信号処理回路303は、映像信号から被写体像のコントラスト状態、つまり撮像光学系の焦点状態を示すフォーカス情報や露出状態を表す輝度情報も生成する。信号処理回路303は、映像信号を表示部306に出力し、表示部306は映像信号を構図やピント状態等の確認に用いられるライブビュー画像として表示する。
カメラマイコン305は、不図示の撮像指示スイッチおよび各種設定スイッチ等のカメラ操作部材からの入力に応じてカメラ300を制御する。また、カメラマイコン305は、通信部208を介して、変倍レンズ102の変倍動作に関する制御コマンドをアダプタマイコン205に送信する。さらに、カメラマイコン305は、通信部308を介して、輝度情報に応じた絞りユニット114の光量調節動作やフォーカス情報に応じたフォーカスレンズ104の焦点調節動作に関する制御コマンドをアダプタマイコン205に送信する。
次に、図2を用いてアダプタ装置200と交換レンズ100との間で構成される通信回路とこれらの間で行われる通信制御について説明する。アダプタマイコン205は、レンズマイコン111との間での通信フォーマットを管理する機能と、レンズマイコン111に対して送信要求等の通知を行う機能とを有する。また、レンズマイコン111は、レンズデータを生成する機能と該レンズデータを送信する機能とを有する。
アダプタマイコン205とレンズマイコン111は、インタフェース回路208a、112aを介して通信を行う。ここで、インタフェース回路208aとアダプタデータ送受信部208bを合わせて通信部208と呼び、インタフェース回路112aとレンズデータ送受信部112bを合わせて通信部112と呼ぶ。
本実施形態では、アダプタマイコン205とレンズマイコン111は、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式A及び通信方式Bによるシリアル通信を行う。
上記3つのチャネルのうちの1つは、通信方式Aではクロックチャネルであり、通信方式Bではアダプタマイコン205からレンズマイコン111への通知に用いられる通知チャネルである。他の2つのチャネルのうち1つは、レンズマイコン111からアダプタマイコン205へのレンズデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネル(レンズデータ通信チャネル)である。もう1つのチャネルは、アダプタマイコン205からレンズマイコン111へのアダプタデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネル(アダプタデータ通信チャネル)である。
アダプタマイコン205から送信されるアダプタデータが示す内容は、カメラマイコン305から出力されたレンズマイコン111に対する指令であったり、レンズマイコン111との通信の取り決め上送信しなければならないダミーデータであったりする。
レンズマイコン111から送信されるレンズデータが示す内容は、カメラマイコン305からの要求に対する回答であったり、定期的にカメラマイコン305に送信すべき諸値であったりする。または、アダプタマイコン205との通信の取り決め上送信しなければならないダミーデータであったりする。アダプタマイコン205は、レンズマイコン111から受信したレンズデータが示す内容がカメラマイコン305に対して送信されるべき内容であると判断した場合は、カメラ側プロトコルに応じたデータに変換してカメラマイコン305にその内容を伝達する。このとき、アダプタマイコン205は、レンズマイコン111から受信したレンズデータを、カメラマイコン305に送信可能なデータフォーマットに適宜変換してからカメラマイコン305に送信する。
第1のデータ通信チャネルを介してレンズマイコン111からアダプタマイコン205に信号として送信されるレンズデータを、レンズデータ信号DLCという。また、第2のデータ通信チャネルを介してアダプタマイコン205からレンズマイコン111に信号として送信されるアダプタデータを、アダプタデータ信号DCLという。
まず、通信方式Aでの通信について説明する。通信方式Aでは、通信マスタとしてのアダプタマイコン205から通信スレーブとしてのレンズマイコン111にクロック信号LCLKがクロックチャネルを介して出力される。アダプタデータ信号DCLは、アダプタマイコン205からレンズマイコン111への制御コマンドや送信要求コマンド等を含む。一方、レンズデータ信号DLCは、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン111からアダプタマイコン205に送信される様々なデータを含む。アダプタマイコン205とレンズマイコン111は、共通のクロック信号LCLKに同期して相互かつ同時に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信可能である。
図3(A)~(C)には、アダプタマイコン205とレンズマイコン111との間でやり取りされる信号の波形を示している。
図3(A)は、最小通信単位である1フレームの信号波形を示している。まず、アダプタマイコン205は、8周期のクロックパルスを1組とするクロック信号LCLKを出力するとともに、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン111に対してアダプタデータ信号DCLを送信する。これと同時に、アダプタマイコン205は、クロック信号LCLKに同期してレンズマイコン111から出力されたレンズデータ信号DLCを受信する。
このようにして、レンズマイコン111とアダプタマイコン205との間で1組のクロック信号LCLKに同期して1バイト(8ビット)のデータが送受信される。この1バイトのデータ送受信の期間をデータフレームと呼ぶ。この1バイトのデータの送受信後に、レンズマイコン111がアダプタマイコン205に対して待機要求BUSYを通知する信号(以下、BUSY信号という)を送信し、これにより通信待機期間が挿入される。この通信待機期間をBUSYフレームと呼び、BUSYフレームを受信している間、アダプタマイコン205は通信待機状態となる。そして、データフレーム期間とBUSYフレーム期間とを1組とする通信単位が1フレームとなる。なお、通信状況により、BUSYフレームが付加されない場合もあるが、この場合はデータフレーム期間のみで1フレームが構成される。
図3(B)は、アダプタマイコン205がレンズマイコン111に要求コマンドCMD1を送信し、これに対応する2バイトのレンズデータDT1(DT1a、DT1b)をレンズマイコン111から受信するときの信号波形を示している。図3(B)では、「通信CMD1」に応じてデータ通信が実行される例を示している。
アダプタマイコン205とレンズマイコン111との間では、予め複数種類のコマンドCMDのそれぞれに対応するレンズデータDTの種類とバイト数が決められている。通信マスタであるアダプタマイコン205が、特定のコマンドCMDをレンズマイコン111に送信すると、レンズマイコン111は該コマンドCMDに対応するレンズデータバイト数の情報に基づいて必要なクロック数をアダプタマイコン205に送信する。また、コマンドCMD1に対するレンズマイコン111の処理には、各フレームのクロック信号LCLKにBUSY信号を重畳することが含まれており、データフレーム間には上述したBUSYフレームが挿入される。
通信CMD1では、アダプタマイコン205はクロック信号LCLKをレンズマイコン111に送信し、さらにレンズデータDT1の送信を要求する要求コマンドCMD1をアダプタデータ信号DCLとしてレンズマイコン111に送信する。このフレームでのレンズデータ信号DLCは無効データとして扱われる。
続いて、アダプタマイコン205は、クロックチャネルでクロック信号LCLKを8周期だけ出力した後にカメラマイコン側(カメラ側)のクロックチャネルを出力設定から入力設定に切り替える。レンズマイコン111は、カメラマイコン側のクロックチャネルの切り替えが完了すると、レンズマイコン111側(交換レンズ側)のクロックチャネルを入力設定から出力設定に切り替える。そして、レンズマイコン111は、待機要求BUSYをアダプタマイコン205に通知するために、クロックチャネルの電圧レベルをLowにする。これにより、クロックチャネルにBUSY信号を重畳する。アダプタマイコン205は、待機要求BUSYが通知されている期間はクロックチャネルの入力設定を維持し、レンズマイコン111への通信を停止する。
レンズマイコン111は、待機要求BUSYの通知期間中に送信要求コマンドCMD1に対応するレンズデータDT1を生成する。そして、レンズデータDT1を次のフレームのレンズデータ信号DLCとして送信する準備が完了すると、レンズマイコン側のクロックチャネルの信号レベルをHighに切り替え、待機要求BUSYを解除する。
アダプタマイコン205は、待機要求BUSYの解除を認識すると、1フレームのクロック信号LCLKをレンズマイコン111に送信することでレンズマイコン111からレンズデータDT1aを受信する。次のフレームでクロック信号LCLKを再び8周期だけ出力したアダプタマイコン205とレンズマイコン111が上記と同様の動作を繰り返す。これにより、アダプタマイコン205はレンズマイコン111からレンズデータDT1bを受信する。
図3(C)は、アダプタマイコン205がレンズマイコン111に要求コマンドCMD2を送信し、これに対応する3バイトのレンズデータDT2(DT2a~DT2c)をレンズマイコン111から受信するときの信号波形を示している。図3(C)では、通信CMD2に応じてデータ通信が実行される例を示している。この通信CMD2での要求コマンドCMD2に対するレンズマイコン111の処理には、1フレーム目にのみクロックチャネルにBUSY信号を重畳することが含まれる。すなわち、レンズマイコン111は、続く2フレーム目から4フレーム目にはBUSY信号を重畳しない。
これにより、2フレーム目から4フレーム目までのフレーム間にBUSYフレームが挿入されず、フレーム間の待機期間を短くすることが可能である。ただし、BUSYフレームを挿入しない期間は、レンズマイコン111がアダプタマイコン205に対して通信待機要求を送ることができない。このため、これによる通信の破綻が生じないように、送信するデータ数や送信間隔、レンズマイコン111内での通信処理の優先順位等を決定しておく必要がある。
次に、通信方式Bでの通信について説明する。ここでは通信方式Bを用いてフォーマットF1により通信を行う通信モードM2についても併せて説明する。図4には、通信モードM2においてアダプタマイコン205とレンズマイコン111との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。先に述べたように、フォーマットF1では、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームが選択的に付加される。
通信方式Bにおいて、通知チャネルは、通信マスタであるアダプタマイコン205から通信スレーブとしてのレンズマイコン111へのレンズデータの送信要求等の通知に用いられる。通知チャネルでの通知は該通知チャネルの信号のレベル(電圧レベル)をHigh(第1レベル)とLow(第2レベル)との間で切り替えることで行う。以下の説明では、通信方式Bにおいて通知チャネルに供給される信号を送信要求信号RTSという。
第1のデータ通信チャネルは、通信方式Aと同様に、レンズマイコン111からアダプタマイコン205への各種データを含むレンズデータ信号DLCの送信に用いられる。第2のデータ通信チャネルも、通信方式Aと同様に、アダプタマイコン205からレンズマイコン111への制御コマンドや送信要求コマンド等を含むアダプタデータ信号DCLの送信に用いられる。
通信方式Bでは、通信方式Aと異なり、アダプタマイコン205とレンズマイコン111は、共通のクロック信号に同期してデータの送受信を行うのではなく、予め通信速度を設定し、この設定に基づいた通信ビットレートで送受信を行う。通信ビットレートとは、1秒間に転送することができるデータ量を示し、単位はbps(bit per second)で表される。
なお、本実施形態では、この通信方式Bにおいても、通信方式Aと同様に、アダプタマイコン205とレンズマイコン111は相互に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信を行う。
図4は最小通信単位である1フレームの信号波形を示している。1フレームのデータフォーマットの内訳は、アダプタデータ信号DCLとレンズデータ信号DLCでは一部異なる部分がある。
まずレンズデータ信号DLCのデータフォーマットについて説明する。BUSYフレームありの場合、1フレームのレンズデータ信号DLCは、前半のデータフレームとこれに続くBUSYフレームとにより構成されている。レンズデータ信号DLCは、データ送信を行っている状態では信号レベルはLowに維持される。
レンズマイコン111は、レンズデータ信号DLCの1フレームの送信開始をアダプタマイコン205に通知するため、レンズデータ信号DLCの電圧レベルを1ビット期間の間Lowとする。この1ビット期間をスタートビットSTと呼び、スタートビットSTからデータフレームが開始される。続いて、レンズマイコン111は、スタートビットSTに続く2ビット目から9ビット目までの8ビット期間で1バイトのレンズデータを送信する。
データのビット配列はMSB(Most Significant Bit)ファーストフォーマットとして、最上位のデータD7から始まり、順にデータD6、データD5と続き、最下位のデータD0で終了する。そして、レンズマイコン111は、10ビット目に1ビットのパリティー情報(PA)を付加し、1フレームの最後を示すストップビットSPの期間、レンズデータ信号DLCの電圧レベルをHIGHとする。これにより、スタートビットSTから開始されたデータフレーム期間が終了する。なお、パリティー情報は1ビットである必要はなく、複数のビットのパリティー情報が付加されても良い。また、パリティー情報は必須ではなく、パリティー情報が付加されないフォーマットとしても良い。
続いて、図中の「DLC(BUSY有)」に示すように、レンズマイコン111は、ストップビットSPの後にBUSYフレームを付加する。BUSYフレームは、通信方式Aと同様に、レンズマイコン111からアダプタマイコン205に通知する待機要求BUSYの期間を表す。レンズマイコン111は、レンズデータ信号DLCの信号レベルをHigh(第1レベル)からLow(第2レベル)にすることで待機要求BUSYの開始を表し、待機要求BUSYを解除するまでレンズデータ信号DLCの信号レベルをLowに保持する。
一方、レンズマイコン111からアダプタマイコン205への待機要求BUSYの通知が不要な場合がある。この場合のために、図4中の「DLC(BUSY無)」に示すように、BUSYフレーム(以下、BUSY通知ともいう)を付加せずに1フレームを構成するデータフォーマットも設けられている。つまり、レンズマイコン111は、レンズデータ信号DLCのデータフォーマットとして、レンズマイコン側の処理状況に応じてBUSY通知を付加したものと付加しないものとを選択することができる。
アダプタマイコン205が行うBUSY通知の有無の識別方法について説明する。図4の「DLC(BUSY無)」に示す信号波形および図4の「DLC(BUSY有)」に示す信号波形には、B1とB2というビット位置が含まれている。アダプタマイコン205は、これらB1とB2のいずれかのビット位置をBUSY通知の有無を識別するBUSY識別位置Pとして選択する。このように本実施形態では、BUSY識別位置PをB1とB2のビット位置から選択するデータフォーマットを採用する。これにより、レンズマイコン111の処理性能によってレンズデータ信号DLCのデータフレーム送信後にBUSY通知(DLCのLow)が確定するまでの処理時間が異なる課題に対処することができる。
BUSY識別位置PをB1のビット位置とするかB2のビット位置とするかは、通信方式Bでの通信を行う前にアダプタマイコン205とレンズマイコン111との間で通信により決定する。なお、BUSY識別位置PをB1とB2のビット位置のいずれかに固定する必要はなく、アダプタマイコン205、レンズマイコン111の処理能力に応じて変更してもよい。なお、BUSY識別位置Pは、B1やB2に限らず、ストップビットSPよりも後の所定位置に設定してもよい。
ここで、通信方式Aにおいてクロック信号LCLKに付加されたBUSYフレームが、通信方式Bではレンズデータ信号DLCに付加されるデータフォーマットとした理由について説明する。
通信方式Aでは、通信マスタであるアダプタマイコン205が出力するクロック信号LCLKと、通信スレーブであるレンズマイコン111が出力するBUSY信号とを、同一のクロックチャネルでやり取りする必要がある。このため、アダプタマイコン205とレンズマイコン111の出力同士の衝突を時分割方式で防止している。つまり、クロックチャネルにおけるアダプタマイコン205とレンズマイコン111の出力可能期間を適宜割り当てることで出力同士の衝突を防いでいる。
ただし、この時分割方式では、アダプタマイコン205とレンズマイコン111の出力同士の衝突を確実に防ぐ必要がある。このため、アダプタマイコン205が8パルスのクロック信号LCLKの出力を完了した時点からレンズマイコン111がBUSY信号の出力を許容される時点までの間に、一定の出力禁止期間が挿入される。この出力禁止期間では、アダプタマイコン205、レンズマイコン111からの出力が禁止される。出力禁止期間はアダプタマイコン205とレンズマイコン111が通信できない通信無効期間となるため、実効的な通信速度を低下させる原因となる。
このような課題を解決するために、通信方式Bでは、レンズマイコン111の出力チャネルである第1のデータ通信チャネルでのレンズデータ信号DLCにレンズマイコン111からのBUSYフレームを付加するデータフォーマットを採用している。
次に、アダプタデータ信号DCLのデータフォーマットについて説明する。1フレームのデータフレームの仕様はレンズデータ信号DLCと共通である。ただし、アダプタデータ信号DCLは、レンズデータ信号DLCとは異なり、BUSYフレームの付加が禁止されている。
次に、アダプタマイコン205とレンズマイコン111との間での通信方式Bでの通信の手順について説明する。まず、アダプタマイコン205は、レンズマイコン111との通信を開始するイベントが発生すると、送信要求信号RTSの電圧レベルをLowにする(以下、送信要求信号RTSをアサートするともいう)。電圧レベルをLowにすることで、レンズマイコン111に対して通信要求を通知する。
レンズマイコン111は、送信要求信号RTSの電圧レベルがLowに変化したことにより通信要求を検出すると、アダプタマイコン205に送信するレンズデータ信号DLCの生成処理を行う。そして、該レンズデータ信号DLCの送信準備が整うと、第1のデータ通信チャネルを介して1フレームのレンズデータ信号DLCの送信を開始する。ここで、レンズマイコン111は、送信要求信号RTSの電圧レベルがLowとなった時点から、アダプタマイコン205とレンズマイコン111との間で相互に設定した設定時間内にレンズデータ信号DLCの送信を開始する。
すなわち、通信方式Bでは、送信要求信号RTSの電圧レベルがLowとなった時点からレンズデータ信号DLCの送信が開始されるまでの間に、送信するレンズデータを確定させればよい。通信方式Aのように、最初のクロックパルスが入力される時点までに送信するレンズデータを確定させておく必要があるといった厳しい制約がないため、レンズデータ信号DLCの送信を開始するタイミングに自由度を持たせることができる。
次にアダプタマイコン205は、レンズマイコン111から受信したレンズデータ信号DLCのデータフレームの先頭に付加されたスタートビットSTの検出に応じて、送信要求信号RTSの電圧レベルをHighに戻す。以下、送信要求信号RTSの電圧レベルをLowからHighにすることを、送信要求信号RTSをネゲートするともいう。さらに、スタートビットSTの検出に応じて、第2のデータ通信チャネルでのアダプタデータ信号DCLの送信を開始する。なお、送信要求信号RTSのネゲートとアダプタデータ信号DCLの送信開始はどちらが先であってもよい。レンズデータ信号DLCのデータフレームの受信期間と、アダプタデータ信号DCLの送信期間との少なくとも一部が重複することが好ましい。すなわち、レンズデータ信号DLCのデータフレームの受信が完了するまでに送信要求信号RTSのネゲートとアダプタデータ信号DCLの送信開始が行われることが好ましい。これにより、レンズデータ信号DLCとアダプタデータ信号DCLの1往復のやりとりを短時間で行うことができる。
レンズデータ信号DLCのデータフレームを送信したレンズマイコン111は、アダプタマイコン205に待機要求BUSYを通知する必要がある場合には、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームを付加する。アダプタマイコン205は、待機要求BUSYの通知の有無を監視しており、待機要求BUSYが通知されている間は次の送信要求のために送信要求信号RTSをアサートすることが禁止される。
レンズマイコン111は、待機要求BUSYによりアダプタマイコン205からの通信を待機させている期間に必要な処理を実行し、次の通信準備が整った後に待機要求BUSYを解除する。アダプタマイコン205は、待機要求BUSYが解除され、かつアダプタデータ信号DCLのデータフレームの送信が完了したことを条件に、次の送信要求のために送信要求信号RTSをアサートすることが許可される。
このように、本実施形態では、アダプタマイコン205は、通信開始イベントがトリガとして送信要求信号RTSがアサートする。この送信要求信号RTSのアサートは、例えば、アダプタマイコン205がカメラマイコン305から交換レンズ100用の制御コマンドを受信した場合に、アダプタマイコン205から交換レンズ100に対してデータを送信したい旨の合図となる。
レンズマイコン111がアダプタマイコン205にレンズデータ信号DLCのデータフレーム(第1データ)の送信を開始する。これは、アダプタマイコン205にとっては、レンズマイコン111がアダプタデータを受信可能な状態であることを示す合図となる。
そして、アダプタマイコン205は、レンズデータ信号DLCのスタートビットSTを検出することに応じて、アダプタデータ信号DCLのデータフレーム(第2データ)をレンズマイコン111へ送信する。ここで送信されるアダプタデータ信号DCLは、アダプタ装置200がカメラマイコン305から受信した制御コマンドを、レンズ側プロトコルに適したデータに変換した信号である。
このとき送信されたアダプタデータ信号DCLがレンズマイコン111に対して、カメラマイコン305に送信すべきデータを要求するものであった場合、レンズマイコン111は当該要求に対する回答となるレンズデータ信号DLCを生成する。そして、次に、送信要求信号RTSがアサートされたことに応じて、生成したレンズデータ信号DLCをアダプタマイコン205に送信する。アダプタマイコン205はレンズデータ信号DLCの受信開始に応じて、アダプタデータ信号DCLをレンズマイコン111に送信する。このとき、アダプタデータ信号DCLは、レンズデータDLCの受信開始を示す合図にすぎない。
このように、レンズデータ信号DLCは、あるときはデータ受信可能な状態であることを示す合図であったり、あるときはデータ要求に対する回答等の内容的に意味のあるデータであったりする。
レンズデータ信号DLCと同様に、アダプタデータ信号DCLも、あるときはデータ受信を示す単なる合図であったり、あるときは制御指令等の内容的に意味のあるデータであったりする。
ここでレンズマイコン111は、必要に応じて待機要求BUSYのためにレンズデータ信号DLCのデータフレームの後にBUSYフレームを付加し、その後、待機要求BUSYを解除することで1フレームの通信処理が完了する。この通信処理により、アダプタマイコン205とレンズマイコン111との間で相互に1バイトの通信データが送受信される。
次に、通信方式Bを用いてフォーマットF2により通信を行う通信モードM3について説明する。図5(A)には、通信モードM3においてアダプタマイコン205とレンズマイコン111との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。図5(A)では、連続的に3フレームのデータを送信するときにおける通信信号の波形を示している。先に述べたように、フォーマットF2では、レンズデータ信号DLCに待機要求BUSYを付加することは禁止される。
通信モードM3におけるレンズデータ信号DLCのデータフォーマットでは、データフレームのみで1フレームが構成され、BUSYフレームは存在しない。このため、通信モードM3では、レンズマイコン111からアダプタマイコン205へ待機要求BUSYを通知することができない。
このようなフォーマットF2は、比較的大きな容量のデータをアダプタマイコン205とレンズマイコン111との間で転送する際に用いられる。フォーマットF2では、待機要求BUSYを挟まないことにより、各フレーム間の間隔を短くした連続通信を行うことが可能となり、大容量データの高速通信が可能となる。
次に、本実施形態が特徴とするアダプタマイコン205とレンズマイコン111との間の通信制御処理について説明する。図5(B)は、アダプタマイコン205とレンズマイコン111がそれぞれ、nフレームのアダプタデータ信号DCLおよびレンズデータ信号DLCを連続的に送受信するときにおける通信信号の波形を示している。アダプタマイコン205は、レンズマイコン111との通信を開始するイベントが発生すると、送信要求信号RTSをアサートする。フォーマットF2では、フォーマットF1と異なり、アダプタマイコン205は送信要求信号RTSを1フレームごとにネゲートする必要はない。そのため、連続的にデータ送受信が可能な状態である間は、1フレーム目のレンズデータ信号DLCのデータ受信中および受信後は送信要求信号RTSのアサート状態を維持する。
レンズマイコン111は、送信要求信号RTSのアサートにより通信要求を検出すると、アダプタマイコン205に送信するレンズデータ信号DLCの生成処理を行う。そして、該レンズデータ信号DLCの送信準備が整うと、第1のデータ通信チャネルでの1フレーム目のレンズデータ信号DLC(DL1)(第1データ)の送信を開始する。
1フレーム目のレンズデータ信号DLCのデータフレームを送信したレンズマイコン111は、再び送信要求信号RTSを確認する。このとき、送信要求信号RTSがアサート状態であった場合には、レンズマイコン111は送信が完了した1フレーム目に続けて次の2フレーム目のレンズデータ信号DLC(DL2)(第3データ)をアダプタマイコン205に送信する。このようにして送信要求信号RTSのアサート状態が維持されている間はレンズマイコン111からのレンズデータ信号DLC(DL1~DLn)がアダプタマイコン205に連続的に送信される。そして、予め決められたフレーム数nの送信が完了すると、レンズデータ信号DLCの送信が停止される。
アダプタマイコン205からは、レンズマイコン111からのレンズデータ信号DCLのフレームごとのスタートビットSTを検出することに応じて、nフレームのアダプタデータ信号DCL(DC1~DCn)の第2のデータ通信チャネルでの送信が開始される。
図5(C)には、図5(B)で示した連続データ送受信の通信中にアダプタマイコン205から又はレンズマイコン111から一時的な通信待機が指示された場合の通信信号の波形を示している。ここでも、アダプタマイコン205から送信要求信号RTSがアサートされることでレンズマイコン111がレンズデータ信号DLCの送信を開始し、そのスタートビットSTの検出に応じてアダプタマイコン205がアダプタデータ信号DCLの送信を開始する。
通信待機期間T2w1は、アダプタマイコン205からレンズマイコン111に対して通信待機が指示された期間である。該指示は送信要求信号RTSを一時的にネゲートすることでレンズマイコン111に通知される。レンズマイコン111は、送信要求信号RTSがネゲートされたことを検出すると、その検出時点で送信途中のレンズデータ信号DLCのフレーム(図ではDL6:以下、休止フレームという)の送信を完了した後、送信を休止する。
このレンズデータ信号DLCの送信休止を受けて、アダプタマイコン205も、アダプタデータ信号DCLのうち上記休止フレームに対応するフレーム(DC6)を送信した後にアダプタデータ信号DCLの送信を休止する。このような通信制御により、連続データ送受信の通信中に通信待機指示が発生した場合でもレンズデータ信号DLCとアダプタデータ信号DCLの送信済みフレーム数を同数にするように管理することができる。
アダプタマイコン205は、通信待機の要求イベントがなくなると、送信要求信号RTSを再びアサートすることでレンズマイコン111に対して通信再開を指示することができる。通信再開指示に応じて、レンズマイコン111は休止フレームの次のフレーム(DL7:以下、再開フレームという)からレンズデータ信号DLCの送信を再開する。そして、再開フレームのスタートビットSTの検出に応じて、アダプタマイコン205はアダプタデータ信号DCLの上記再開フレームに対応するフレーム(DC7)からの送信を再開する。
一方、通信待機期間T2w2はレンズマイコン111からアダプタマイコン205に対して通信待機が指示された期間である。図5(c)では、通信待機期間T2w1の終了後はアダプタマイコン205およびレンズマイコン111とも通信待機を指示しておらず、フレームDL7、DC7およびそれに続くフレームDL8、DC8~DL9、DC9の順で連続データ送受信を行っている。
そして、レンズマイコン111内でフレームDL9の送信(アダプタマイコン205でのフレームDC9の受信)が完了したときに通信待機要求イベントが発生することで、レンズマイコン111はアダプタマイコン205に対して通信待機指示を通知する。
送信要求信号RTSがアサート状態であるときに、レンズマイコン111がレンズデータ信号DLCを送信しないことで、レンズマイコン111からアダプタマイコン205へ通信を休止することが通知される。
アダプタマイコン205は、レンズデータ信号DLCのフレームごとのスタートビットSTを常時監視しており、スタートビットSTを検出しない場合には、次のアダプタデータ信号DCLのフレームの送信を停止するよう取り決めている。アダプタマイコン205は、送信要求信号RTSをアサートしていてもレンズマイコン111からのレンズデータ信号DLC(図ではDL10)を受信しない場合は、アダプタデータ信号DCL(DC10)を送信することなく通信を休止する。なお、アダプタマイコン205は、通信待機期間T2w2中は送信要求信号RTSをアサート状態に維持する。
その後、レンズマイコン111内で通信待機要求イベントがなくなってレンズマイコン111がレンズデータ信号DLCの再開フレームDL10の送信を再開する。アダプタマイコン205は、該再開フレームDL10のスタートビットSTを検出することに応じてアダプタデータ信号DCLにおける対応フレームDC10の送信を再開する。
次に、図6を用いて、アダプタマイコン205とレンズマイコン111の間で行われる通信フォーマットの決定手順について説明する。アダプタマイコン205及びレンズマイコン111は、コンピュータプログラムであるプログラムに従って、図6、図7のフローチャートに示す通信制御を行う。なお図6、7において「S」はステップを意味する。
まず、カメラ300に対して、アダプタ装置200および交換レンズ100が装着されると、ステップS100、ステップS200を開始する。ステップS100、ステップS200において、アダプタマイコン205及びレンズマイコン111は、通信フォーマットを、通信の成立が保障された初期通信フォーマットに設定する。ここで、初期通信フォーマットは、本実施形態で開示した通信方式とデータフォーマットの組み合わせでもよいし、それ以外の通信フォーマットでもよい。なお、初期通信フォーマットとして調歩同期式の通信フォーマットが選択されるときには、どのようなカメラと交換レンズが組み合わされても通信が実行できるようにBUSY識別位置Pを設定することが好ましい。
続いて、ステップS101において、アダプタマイコン205は、カメラ識別情報をレンズマイコン111に送信する。カメラ識別情報は、本来であれば、交換レンズ100が直接装着可能なカメラから交換レンズ100に対して送信される情報であり、カメラにおいて対応可能な通信フォーマットを表す情報である。ここではアダプタ装置200がカメラの振りをしているため、アダプタマイコン205がカメラの代わりに交換レンズ100に対してカメラ識別情報を送信する。カメラ識別情報は、アダプタ装置200において対応可能な通信フォーマットを表す情報でもある。また、ステップS202において、レンズマイコン111は、交換レンズ100において対応可能な通信フォーマットを表すレンズ識別情報をアダプタマイコン205に送信する。
ここで、「識別情報」には、クロック同期式と調歩同期式のいずれの通信方式に対応しているのかを示す情報や、対応可能な通信ビットレートの範囲を示す情報が含まれる。BUSY識別位置Pを示す情報も識別情報に含まれる。
アダプタマイコン205は、ステップS102においてレンズ識別情報を受信する。レンズマイコン111は、ステップS201においてカメラ識別情報を受信する。ここで、図6のフローチャートでは、カメラ識別情報が送信された後にレンズ識別情報が送信されているが、カメラ識別情報の送信とレンズ識別情報の送信は同時であってもよい。また、レンズ識別情報が送信された後にカメラ識別情報が送信されてもよい。
ステップS103、ステップS203において、以降の通信における通信フォーマットの設定が行われる。具体的には、アダプタマイコン205とレンズマイコン111は、互いに対応可能な通信ビットレートのうち最速レートを通信ビットレートとして決定する。また、互いに対応可能なBUSY識別位置のうちストップビットSPから最も近い位置をBUSY識別位置Pに設定する。
次に、図7を用いて、調歩同期式の通信方式におけるデータ通信フローについて説明する。図7では、BUSY信号の付加が許可されたデータフォーマットにおける通信フローについて説明する。
アダプタマイコン205は、レンズマイコン111との通信を開始する通信イベントが発生したか否かを監視しており、ステップS110において通信イベントが発生したときにステップS111に進む。ステップS111では、これまでに説明したように、送信要求信号RTSをアサートすることで、レンズマイコン111に対して通信要求を行う。
レンズマイコン111は、送信要求信号RTSがアサートされたか否かを監視しており、ステップS210において送信要求信号RTSがアサートされたことを認識するとステップS211に進む。ステップS211において、レンズマイコン111は、第1のデータ通信チャネルを介してレンズデータ信号DLCをアダプタマイコン205に送信する。
アダプタマイコン205は、レンズマイコン111からレンズデータ信号DLCを受信すると(ステップS112のYES)、ステップS113に進み、送信要求信号RTSをネゲートする。そして、ステップS114に進み、第2のデータ通信チャネルを介してアダプタデータ信号DCLをレンズマイコン111に送信する。
レンズマイコン111は、ステップS212でアダプタデータ信号DCLの受信開始を検出すると、ステップS213に進み、アダプタデータ信号DCLの受信処理を行う。レンズマイコン111は、ステップS213の処理と並行してステップS214において、アダプタマイコン205に待機要求BUSYを通知する必要があるか否かの判定を行う。待機要求BUSYを通知する必要がない場合は、ステップS218に進み、アダプタデータ信号DCLの受信が完了するまで待機する。
一方、レンズマイコン111からアダプタマイコン205に対して待機要求BUSYを通知する必要があるときは、ステップS215に進み、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームを付加する。レンズマイコン111は、待機要求BUSYを通知している間に必要な処理を実行し、次の通信準備が整った後に(ステップS216のYes)、待機要求BUSYを解除する(ステップS217)。待機要求BUSYを解除した後は、ステップS218に進み、アダプタデータ信号DCLの受信が完了するまで待機する。アダプタデータ信号DCLの受信が完了すると(ステップS218のYes)、ステップS210に戻り、送信要求信号RTSがアサートされたか否かの監視を継続する。
アダプタマイコン205は、ステップS115において待機要求BUSYの通知を受けると、待機要求BUSYが解除されるまで待機する。待機要求BUSYが解除される(ステップS116のYES)と、ステップS117に進み、アダプタデータ信号DCLの送信が完了したか否かの判定を行う。また、ステップS115において待機要求BUSYの通知を受けていないときにもステップS117に進み、アダプタデータ信号DCLの送信が完了したか否かの判定を行う。ステップS117において、アダプタデータ信号DCLの送信が完了したと判定されると、ステップS110に戻り、通信イベントが発生したか否かの監視を継続する。
以上説明したように、本発明の一実施形態は、3つのチャネルから構成される調歩同期式(通信方式B)の通信における通信制御に関するものである。レンズマイコン111の出力チャネルである第1のデータ通信チャネルを介して、レンズマイコン111からアダプタマイコン205に待機要求BUSYが送信される。一方、アダプタマイコン205からの送信要求信号RTSは、アダプタマイコン205の出力チャネルとしての通知チャネルを介して、アダプタマイコン205からレンズマイコン111へ送信される。
このように、レンズマイコン111からの待機要求BUSYは、レンズマイコン111の出力チャネルを介して送受信し、アダプタマイコン205からの送信要求信号RTSは、アダプタマイコン205の出力チャネルを介して送受信される。これにより、アダプタマイコン205とレンズマイコン111の間の通信無効期間を短縮することができ、結果として実行的な通信速度を高速化させることができる。
また、通信の開始タイミングに関しては、まず、アダプタマイコン205が、レンズマイコン111からアダプタマイコン205へのデータ送信を要求する送信要求信号RTSを送信する。そして、送信要求信号RTSの受信に応じてレンズマイコン111からアダプタマイコン205へレンズデータ信号DLCのデータ送信が開始される。当該レンズデータ信号DLCの受信開始に応じてアダプタマイコン205はレンズマイコン111に対してアダプタデータ信号DCLの送信を開始する。具体的には、アダプタマイコン205は、レンズマイコン111から送信されるデータフレームのスタートビットSTを検出することに応じてアダプタデータ信号DCLのデータ送信を開始する。通信の開始タイミングをこのように設定することで、送信要求信号RTSを受けたレンズマイコン111がアダプタマイコン205に対してデータ送信を開始するタイミングに自由度を持たせることができる。
例えば、レンズマイコン111の情報処理能力に応じて、レンズデータ信号DLCのデータ送信の開始タイミングを変化させることができる。これにより、アダプタマイコン205からアダプタデータ信号DCLが送信されるタイミングを調整することができる。よって通信の破綻を招くことなく、アダプタ装置200と交換レンズ100の間の通信速度を向上させることができる。そして、アダプタ装置200を介することによって、互いに通信プロトコルの異なるカメラ300と交換レンズ100とを用いた場合であっても、ユーザは通信破綻なしに撮影を行うことができる。
なお、前述した送信要求信号RTSのアサートや待機要求BUSYの通知の方法は一例であって、これ以外でもよい。例えば、送信要求信号RTSのアサートや待機要求BUSYが、電圧レベルのLowからHighへの切り替えによって表されてもよい。
続いて、通信方式Aから通信方式Bへの切り替え手順について図8を用いて説明する。図8は、通信方式Aから通信方式Bへの切り替え前後にアダプタマイコン205とレンズマイコン111の間でやりとりされる通信信号の波形を示している。通信方式Aから通信方式Bへの切り替えにおいて、アダプタマイコン205は、通信部208の通信設定を通信方式Aに対応した設定から通信方式Bに対応した設定に変更する。同様に、レンズマイコン111は、レンズ通信部112の通信設定を通信方式Aに対応した第1の設定から通信方式Bに対応した第2の設定に変更する。
図8中に示した切り替えタイミングXにおいて、アダプタマイコン205とレンズマイコン111における通信設定の切り替えが完了し、以降は、通信方式Bでの通信が行われる。これまでに説明したように、通知チャネルは、通信方式Aではクロックチャネルとして機能し、通信方式Bではアダプタマイコン205からレンズマイコン111への通知に用いられる。
本実施形態では、通信方式Aにおいて通信スレーブであるレンズマイコン111が、通信マスタであるアダプタマイコン205よりも先に第2の設定への変更を行う。
図9は、通信方式の切り替えにおける処理の内容を示すフローチャートである。通信方式の切り替えは、アダプタマイコン205からの指示により行われる。
アダプタマイコン205は、S120において、通信方式の切替イベントが発生したか否かを監視する。発生していない(No)と判断した場合は、S120に戻る。アダプタマイコン205は、通信方式の切替イベントが発生した(Yes)と判断した場合は、S121に進む。そして、通信方式Aでの通信により、通信方式Aから通信方式Bへの切り替え通知をアダプタデータ通信チャネルを介してレンズマイコン111に送信する。この切り替え通知は、データフレームの中に含まれる。
レンズマイコン111は、S220において、切替通知を受けたか否かを監視する。受けていない(No)と判断した場合は、S220に戻る。レンズマイコン111は、切り替え通知を受けた(Yes)と判断した場合、S221において通知チャネルにBUSY信号を重畳する。これにより、通信待機要求BUSYをアダプタマイコン205に通知する。
そして、レンズマイコン111は、アダプタマイコン205に通信待機要求BUSYを通知している間に、S222において、通信部112の通信設定を第1の設定から、第2の設定に変更する。
レンズマイコン111における通信方式の切り替えが完了すると、S223において、レンズマイコン111は通信待機要求BUSYを解除する。BUSYを解除することで、通信方式の切り替えが完了したことをアダプタマイコン205に対して通知する。その後、レンズマイコン111は前述のS210の工程に進み、通信方式Bでの送信要求信号RTSの通知の有無を監視する。
アダプタマイコン205は、S122において通信待機要求BUSYが解除されると、通信部208の通信設定を通信方式Aに対応した第1の設定から、通信方式Bに対応した第2の設定に変更する。その後、アダプタマイコン205は、S110に進み、通信方式Bにおける通信イベントの発生の有無を監視する。アダプタマイコン205における通信方式Bへの切り替えが完了するタイミングは、図8に示した切り替えタイミングXとなる。切り替えタイミングX以降は、通信方式Bでのデータ通信が実行される。
以上説明したように、本実施形態では、通信スレーブとしてのレンズマイコン111が通信マスタとしてのアダプタマイコン205よりも先に第1の設定から第2の設定への変更を行う構成としている。レンズマイコン111がすぐに第2の設定への変更を実行できるか否かが不明であるため、アダプタマイコン205は、レンズマイコン111での第2の設定への変更を確認した上で、第1の設定から第2の設定への変更を実行する。
レンズマイコン111での第2の設定への変更が実行されたことを確認することなく、アダプタマイコン205での第2の設定への変更を実行すると、交換レンズ100とアダプタ装置200の通信方式が異なって両者間の通信が破綻するおそれがある。本実施形態では、レンズマイコン111での第2の設定への変更を確認した上で、アダプタマイコン205が第1の設定から第2の設定への変更を実行することで、上述した事態の発生を防ぐことができる。
また、レンズマイコン111は、アダプタマイコン205に通信待機要求BUSYを通知している間に、レンズマイコン111の通信設定を第1の設定から第2の設定に変更する。これにより、アダプタマイコン205からクロック信号CLKが出力されることのない状態で通信設定の変更を実行することができ、アダプタマイコン205とレンズマイコン111の間で通信の衝突が起きる事態を回避することができる。
なお、レンズマイコン111は、通信方式Aから通信方式Bへの切り替え通知に応じて必ずしも通信方式の切り替えを行う必要はなく、通信方式の切り替えを拒否することができるようにしても良い。例えば、アダプタマイコン205からの切り替え通知を受信した後に、レンズデータ通信チャネルを介して通信方式の切り替えを拒否することを示す通知を送信する。これを受信したアダプタマイコン205は、通信設定を変更することなく、通信方式Aにおけるレンズマイコン111との通信を継続することができる。これにより、レンズマイコン111が第2の設定への変更をすぐに実行できない場合に、アダプタマイコン205が、第1の設定から第2の設定への変更を実行した直後に再度第1の設定への変更を実行しなければならない事態を回避することができる。以上で通信方式の切り替えに関する説明を終了する。
前述の各実施形態では、3つのチャネルを1組としたチャネルが形成されており、第1の通信のプロトコルでアダプタ装置200と交換レンズ100が通信を行う場合について説明したが、さらに別の通信プロトコルにより通信可能であってもよい。例えば、アダプタ装置200と交換レンズ100との間でさらに2つのチャネルを1組とした別のチャネルが形成されており、第1の通信プロトコルとは異なる第2の通信プロトコルで通信可能でもよい。この2つのチャネルのうち、一方を通信タイミングの通知に用いられる通知チャネルとし、他方をアダプタ装置200と交換レンズ100との間でデータの送受信が可能なデータ通信チャネルとしてもよい。
以上説明した実施形態は代表的な例に過ぎず、本発明の実施に際しては、各実施形態に対して種々の変形や変更が可能である。