JP7370030B2 - 模擬皮膚装置、模擬皮膚装置の使用方法、縫合評価方法および制御装置 - Google Patents

模擬皮膚装置、模擬皮膚装置の使用方法、縫合評価方法および制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、皮膚の縫合を訓練することができる模擬皮膚装置、模擬皮膚装置の使用方法、縫合評価方法および制御装置に関する。
人体の皮膚の縫合を含む手術を訓練するための手技シミュレータの手技モデルが提案されている(特許文献1参照)。
特開2018―136384号公報
外表の創からの出血は、主に圧迫によって止血可能な毛細血管の破綻によるにじみでるような出血(oozing) と、出血している血管に対する結紫や焼灼を必要とする活動性の出血に分けられる。
前者の場合、適切な皮陪縫合が行われれば、止血が得られる。一方、後者の場合、出血の原因となっている血管への止血処置を行った後に皮膚縫合を行わなければ止血が得られず、創部からの持続的な出血により皮下血腫の形成、それによる感染等から創傷治癒の遅延を引き起こす。臨床において創の縫合を行う上で、上記のように創からの出血の程度を考慮することは重要である。別の視点として、身体は外表から皮膚、皮下組織、筋、骨の順で構成されている。創処置の視点から考えると、皮下組織までの創(前述の2つのタイプの処置)は止血さえ得られれば皮階縫合のみでよいが、筋まで達した創は筋膜の縫合が追加で必要となる。
以上の背景を踏まえた上で、縫合結禁手技を練習するための既存の医療用シミュレータをみると、上記のような縫合処置に関する判断を必要とし、かつ切創からの出血を再現しているシミュレータはなく、その練習は臨床での経験に委ねられている。
本発明の目的は、実践的な皮膚縫合シミュレータを実現し得る模擬皮膚装置、模擬皮膚装置の使用方法および制御装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、模擬皮膚装置を用いた皮膚縫合における縫合評価方法を提供することにある。
本発明の第1の模擬皮膚装置は、
模擬皮と、前記模擬皮の一方の側に設けられた液体収容部とを含み、
前記液体収容部に液体を収容した状態で、前記液体収容部がある側とは反対側から前記模擬皮を切開したときに、前記液体が漏出され得るものである。
本発明の第2の模擬皮膚装置は、
模擬皮と、前記模擬皮の一方の側に設けられた液体収容部とを含み、
前記模擬皮は、開口部を含み、
前記液体収容部に液体を収容した際に、前記模擬皮の開口部から前記液体が漏出され得るものである。
第1および第2の模擬皮膚装置は、次の態様をとることができる。
(1)前記液体収容部内に模擬皮下組織が設けられ、前記模擬皮下組織は、前記模擬皮の側方に設けられていることができる。
(2)前記液体収容部内に模擬筋膜が設けられ、前記模擬筋膜は、前記模擬皮が設けられている側と反対側の模擬皮下組織の側方に設けられていることができる。
(3)前記液体収容部内に模擬筋層が設けられ、前記模擬筋層は、前記模擬皮下組織が設けられている側と反対側の前記筋膜の側方に設けられていることができる。
(4)前記液体収容部内の前記模擬皮下組織に液体を注入するための注入部を含むことができる。
(5)前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、前記管路内の液体の圧力を測定するための液圧センサが設けられていることができる。
(6)前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、前記管路において、前記液体収容部に対して液を供給する量を調整するためのポンプが設けられていることができる。
(7)前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、前記管路において、ポンプに接続され得るコネクタ部が設けられていることができる。
(8)前記模擬皮下組織内に模擬血管が設けられていることができる。
(9)前記模擬皮膚装置は、縫合処置訓練用ものものであることができる。
本発明の模擬皮膚装置の模擬皮膚装置の使用方法は、本発明の模擬皮膚装置の模擬皮を切る工程と、切られた模擬皮を縫合する工程とを含む。
本発明の縫合評価方法は、本発明の模擬皮膚装置を用いた処置訓練の評価方法であり、前記模擬皮が切り込まれて液体が漏出してから、前記模擬皮が縫合されるまでの間に漏れだした液体量に基づき、縫合のレベルを評価するものである。
本発明の縫合評価方法において、本発明の模擬皮膚装置が前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、前記管路内の液体の圧力を測定するための液圧センサが設けられている場合は、前記液圧センサの液圧に基づき皮膚の縫合のレベルを評価することができる。前記模擬皮膚装置は、前記模擬皮下組織内に設けられた模擬血管を含む場合には、前記液圧センサの液圧に基づき模擬血管が縛られているかどうかを評価することができる。
本発明の制御装置は、
請求項7に記載の模擬皮膚装置の前記液圧センサから液圧を取得し、前記液圧センサの液圧に基づき皮膚の縫合のレベルを評価する評価部と、
前記評価部の評価結果を報知する報知部とを含む。
本発明の一態様によれば、出血がなされているという緊張感をもった状態で実践的な皮膚縫合シミュレータを実現し得る。
また、本発明の別の態様によれば、縫合の評価を行うことができる。
実施の形態に係る皮膚模擬装置を模式的に示す図である。 切創部分を有する皮膚模擬装置を模式的に示す図である。図2(B)は、図2(A)のA1-A1線に沿った断面を模式的に示す断面図である。 血管を結紮した状態を模式的に示す図である。図2(B)は、図2(A)のA1-A1線に沿った断面を模式的に示す断面図である。 模擬皮膚の縫合および血管の結紮を行った状態を模式的に示す図である。図2(B)は、図2(A)のA1-A1線に沿った断面を模式的に示す断面図である。 縫合のみの状態を模式的に示す図である。図2(B)は、図2(A)のA1-A1線に沿った断面を模式的に示す断面図である。 模擬皮膚装置の変形例を説明するための図である。 模擬皮膚装置の出血システムの機能図である。 ポンプの一例を模式的に示す図である。 縫合および血管の結紮の評価のための液圧の推移グラフを示す。 縫合および血管の結紮の評価のための液圧の推移グラフを示す。 制御システムを説明するための機能図である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 実施例を説明するための写真である。 模擬皮膚装置の変形例を模式的に示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
1.模擬皮膚装置の構成
模擬皮膚装置10は、図1に示すように、模擬皮12と、模擬皮12の一方の側に設けられた液体収容部30とを含む。
模擬皮膚装置10は、液体収容部30に液体を収容した状態で、液体収容部30とは反対側(表皮側)から模擬皮12を切開したとき液体が漏出され得るものとすることができる。また、模擬皮12が開口されている場合にはその開口部から液体が漏出し得るようにしてもよい。具体的には、図2に示すように、模擬皮12に開口部(切創部または切開部)12aが設けてもよい。模擬皮膚装置10は、縫合処置訓練用ものものである。
模擬皮12の厚さは、たとえば、1.5~2mmとすることができる。模擬皮12は、皮膚に似た厚さと柔らかさを考慮して、厚みや柔らかを決定することができる。また、次の条件に合致する素材であることが好ましい。
1)正しく縫合閉鎖された場合には出血が止まる、もしくは出血量が減少する
2)縫合がゆるい場合きつい場合のいずれも切創部分に隙間が生じ、血液がもれる
3)カッター、はさみ等で適当な形に切れる
このような素材としては、たとえば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、水溶性ゲルなどからなることができる。
液体収容部30内であって、模擬皮12の下に模擬皮下組織14が設けられている。模擬皮下組織14の素材は、たとえば、多孔性で収縮可能な海綿状体からなることができ、より具体的には、比較的に目が細かいスポンジ素材からなることができる。模擬皮下組織14の色は、特に限定されないが、たとえば白色からうすい黄色かなることができる。
液体収容部30内であって、模擬皮下組織14の下に模擬筋膜16を設けることができる。液体収容部30内であって、模擬筋膜16の下に模擬筋層18を設けることができる。模擬筋膜16は、白色で薄く比較的強度のある膜様素材や、繊維状物質とすることができる。
模擬皮12の下に模擬皮下組織14を設けた例を説明したが、模擬皮下組織14の下に模擬筋膜16を設けたものや(図6(A)参照)、または、模擬筋膜16の下にさらに模擬筋層18を設けたものであってもよい(図6(B)参照)。模擬筋層18は、たとえば、シリコン素材や、マンノースを主な構成要素とする多糖類からなることができ、より具体的には、赤色のシリコン素材、こんにゃく、まんなんなどを挙げることができる。
模擬皮下組織14内に模擬血管20が設けられていることができる。模擬血管20は、たとえば、直径が0.5mm程度のシリコンチューブからなることができる。
模擬皮膚装置10は、2つの循環系が設けられている。第1の循環系C1は、液体収容部30と、液体が注入される注入部30aと液体が排出される排出部30bとを結ぶ第1の管路22とからなる循環系である。第2の循環系C2は、模擬血管20と、模擬血管20の両端とを結ぶ第2の管路24とからなる循環系である。
第1の循環系C1において、第1の管路22に第1のポンプP1および第1の液圧センサS1を設けることができる。第1の液圧センサS1は、公知の液圧センサを適用することができる。第1の管路22に第1のコネクタ42aを設けることができる。第1のコネクタ42aは、液体貯留タンク60から液体を第1の管路22に供給するための管路を接続するためのものである。
第2の循環系C2において、第2の管路24に第2のポンプP2および第2の液圧センサS2を設けることができる。第2の液圧センサS2は、公知の液圧センサを適用することができる。第2の管路24に第2のコネクタ42bを設けることができる。第2のコネクタ42bは、液体貯留タンク60から液体を第2の管路24に供給するための管路を接続するためのものである。
第1のコネクタ42a及び第2のコネクタ42bは、たとえば、三方栓とすることができる。第1~第4のポンプP1,P2,P3,P4は、公知のものを適用することができ、特に限定されないが、輸液ポンプ、加圧ポンプやインフュージョンポンプなどからなることができる。ポンプの機能を蓄圧タンクにより実現してもよい。
第1の管路22および第2の管路24に必要に応じて逆止弁を設けておいてもよい。
図7に示すようにシリンダーなどの液体注入およびポンプを併せたものであってもよい。たとえば、図8で示すものを適用することができる。液体貯留部54に液を供給するための液供給装置52が接続されている。液体貯留部54に貯められた液を押し出すためのコンプレッサ50が設けられている。液を排出する際には、液体貯留部54とコンプレッサ50との間のバルブを閉じ、液体貯留部54と大気に開放するバルブを開く。
液体は、模擬血液とすることができる。模擬血液は、血液と近い粘性と色味を有するものである。
2.模擬皮膚装置の使用方法
模擬皮膚装置10の使用方法は、模擬皮膚装置10の模擬皮12を切る工程と、切られた模擬皮12を縫合する工程とを含む。切開するのは、模擬皮膚装置10の態様にも異なるが、模擬皮下組織14がある場合には模擬皮下組織14まで、模擬皮下組織14および模擬血管20がある場合には模擬皮下組織14および模擬血管20まで切開することができる。筋膜や筋層がさらにある場合には、筋膜まで、または筋層まで切開することができる。模擬皮12は、表皮側(液体収容部30または模擬皮下組織14の反対側)から切る。
出血例として、上腕などの体表を想定し、長さ3~5cm程度の切創からの以下のいずれかの出血状況を再現することを考える。
(1)出血態様1
皮膚などからのにじみ出でるような出血(圧迫で止血→適切な縫合処置が必し要)。
(2)出血態様2
図2に示すような、出血している模擬血管20に対する結紫による止血が必要な状況
(3)出血態様3
筋膜の縫合が必要な状況
模擬皮12としては、創がなく、健常な皮膚を再現し、使用者がトレーニング内容に応じて処置する創の形を自作することがでできる。具体的には、ハサミやメスなどで切創を作ることができる。
たとえば、上記の出血態様1を実現する場合には、模擬皮下組織14のみ切る。上記の出血態様2を実現する場合には模擬皮下組織14に加えて模擬血管20も切る。上記の出血態様3を実現する場合には筋層まで深く切る。
切開した後に、出血態様1の場合には、模擬皮12を縫合する。出血態様2の場合には、模擬血管20を図3に示すように結紮し、その後模擬皮12を縫合する。出血態様3の場合には、模擬血管20を結紮するとともに筋膜を縫合し、その後、模擬皮12を縫合する。
3.処置訓練の評価方法
実施の形態に係る評価方法は、模擬皮膚装置10を用いた処置訓練の評価方法であり、模擬皮12が切り込まれて液体が漏出してから、模擬皮12が縫合されるまでの間に漏れだした液体量に基づき、縫合のレベルを評価するものである。第1の管路22に第1の液圧センサS1を設けた場合には、第1の液圧センサS1の液圧に基づき皮膚の縫合のレベルを評価することができる。
模擬皮膚装置10は、模擬皮下組織14内に設けられた模擬血管20を含む場合には、液圧センサの液圧に基づき模擬血管20が縛られているかどうかを評価することができる。
液体の注入を開始すると、模擬皮下組織14に液体が浸透していく。この浸透に伴って、液圧が上昇していく。模擬皮下組織14に液体が浸透し、所定の液圧になるまで液体を注入する。第1のポンプP1も稼働させ、液体の還流を開始する。
皮膚を切開させると、第1の循環系C1の液圧は低下する。縫合を開始すると、液圧が上昇していく。液圧は、縫合状態により異なるプロファイルをとる。
液圧の違いにより、縫合状態を把握することができる。この液圧のプロファイルに基づき、縫合状態を評価することができる。
縫合状態に応じて、異なる液圧のプロファイルをとる。具体的には、縫合を開始すると、液圧は上昇していく。
図9に示すように、模擬皮12に開口があると開放状態になるため、液圧は低い。縫合を開始すると、液圧が上がっていく。Case1は、図4に示すように、模擬血管20が縫合され、模擬皮12も縫合がされている場合の液圧であり、Case2は、図5に示すように、模擬血管20が切れており、模擬皮12が縫合されている場合の液圧である。Case2の方がCase1より液圧が高い。
図10では、模擬皮膚装置10の一連の動作における液圧の推移を説明するための図である。第1バルブV1を開くと、液圧がPr1まで上昇していく。時刻t2と時刻t1との間の期間において、模擬皮下組織14に液体が浸透していく。液圧が一定の状態で模擬皮12の切創を開始した時刻t3と時刻t2との間の期間において液体が還流する。皮膚を切創すると、液圧がPr0まで下がり、縫合を開始した時点である時刻t5から液圧が上昇していく。具体的には、(1)縫合が不良、(2)縫合が良好、(3)模擬血管20を結紮しなかった場合または模擬血管20の結紮が不適切だった場合の順で液圧が高くなる態様をとる。
評価は、制御装置40の評価部40aにより実現してもよい。この評価部40aによる評価結果に基づき、制御装置40が報知装置42に対してその評価結果を報知する制御をしてもよい。たとえば、赤、青、黄色などで、評価結果を表示してもよい。制御装置40は、公知の電子計算機により構成することができる。報知装置42は、液晶表示装置やLEDによる表示装置などの公知の表示装置や、スピーカーなどであってもよい。
4.作用効果
(a)本実施の形態によれば、出血を伴う機能(出血モデル)を有する皮膚縫合シミュレータを実現することができる。皮膚を切開すると、ゆっくりと出血がはじまり(血が滲み出し)、その心理的ストレスのなかで的確に止血が必要であれば止血し、的確に皮膚を縫合閉鎖するための訓練を行うことができる。このように従来型シミュレータにない実践に近い手技の練習が可能である。
(b)模擬血管20や模擬筋膜16を設けた場合には、皮膚縫合、模擬血管の止血処理、筋膜縫合の訓練も行うことができる。また、より深く高度な判断を伴う手技訓練を行うことができる。つまり、縫合処置の際の判断を含む練習が可能であり、より具体的には、皮膚縫合のみで良いか、模擬血管20の結紮が必要か、筋膜の縫合が必要かなどの判断を行い、縫合や結紮の訓練を行うことができる。つまり、(1)圧迫で止血可能な出血(すなわち適切な皮膚縫合にて止血が得られる)状況、(2)出血している模擬血管20に対する止血処理が必要な状況、(3)筋膜の縫合が必要な状況を再現した疑似切創の状況を実現することができる。
(c)模擬血液の液体の循環をポンプにより行った場合には、出血量の調節が容易となる。一般的な輸液ポンプ、加圧ポンプやインフュージョンポンプに接続しでき、切創からの出血量を自在に、容易に調整できる。
(d)正しく縫合閉鎖された場合には出血が止まる、もしくは出血量が減少するため、縫合を評価することができる。正しく縫合閉鎖された場合、出血が止まる/出血量が減少し、縫合に失敗した場合には、出血が止まらない/出血量が減らないことになるため、縫合の成否の評価も可能である。液圧により、縫合閉鎖が不十分な場合、閉鎖部位に過度に力がかかっている場合などの特定の把握も容易である。
(e)創処置の視点から考えると、皮下組織までの創(前述の2つのタイプの処置)は止血さえ得られれば皮階縫合のみでよいが、筋まで達した創は筋膜の縫合が追加で必要となるところ、縫合処置の際にこのような判断を必要とする出血再現型縫合シミュレータを実現することができる。これは、利用者が学習目的に応じて表面の皮膚をメスやはさみによって切開することにより、(1)圧迫で止血可能な出血(すなわち適切な皮膚縫合にて止血が得られる)状況、(2)出血している血管に対する止血処理が必要な状況、(3)筋膜の縫合が必要な状況を再現することができる。
その特徴として、コネクタ部に国内のほぼ全ての病院が保有している一般的な輸液ポンプや加圧ポンプを接続して、模擬血液を加圧し、切創からの出血状態を再現することが可能である点が挙げられる。これにより、ポンプの設定によって切創からの出血量を簡単かつ自在に変えることができる。
また、縫合が完了し、切創が正しく縫合閉鎖された場合には、当該部位から出血しない/出血量が減少するように設計した。これにより、使用者が縫合手技の成否を直感的に理解することができる(正しく縫合閉鎖されなかった部位からの出血は持続する仕組みである)。
実際の患者に縫合する場合は出血していることが多く、本シミュレータでは患者の出血パターンをリアルに体験することで、縫合処置の際の前述の判断を含めた実践的縫合手技をトレーニングできる。出血を伴う機能は従来の縫合手技シミュレータでは備えられていない、全く新しい機能である。
正しく縫合閉鎖された場合には出血が止まる、もしくは出血量が減少する。縫合閉鎖が不十分な場合や、閉鎖部位に過度に力がかかっている場合、該当箇所に生じた隙間から出血する。そのため、使用者は自身の手技の成否を直感的に判断することができるこれは、実際の患者への手技においても同じことであるため、より実践的な手技の評価が可能となる。本シミュレータの需要は非常に大きく、大学の医学部などの医学教育機関などの教育において大変意義があるものである。
5.縫合トレーニングの重要性
本出願時点で最新版の「医学教育モデル・コア・カリキュラム」にて、「G 臨床実習/G-3・3)外科手技」として基本的な縫合と抜糸ができることが医学生の卒業時に求められている。
また、これについて「学生には事前にシミュレータ等で練習させ、当該技能について一定の水準が満たされていることを確認しておく」ことが求められているため、全国の医学部でシミュレータを用いた縫合トレーニングが必須である。
臨床実習後のPCC-OSCEが2020年度から日本国の医学部で必修化する。その手技課題の一つに縫合が含まれており、医学生は在学中に複数回、縫合手技について練習することが必須となる。
これまでの医学生は、出血を伴う機能の無い縫合手技シミュレータで練習を行わざるを得なかった。すなわち、近年の初期研修医は、切創からの出血を伴う縫合の練習は臨床での経験に委ねられている。本シミュレータにより、初期研修医が実際の患者に縫合を行う前に、その実践的な練習を行うことが可能となるため、全国の卒後臨床研修病院においても役立つことと思われ、医療発展に貢献し得るものである。
6.模擬皮膚装置の変形例
模擬皮膚装置10は、図24に示すように、液体収容部30において、液体を注入する注入部30aを設け、排出部を設けない態様であってもよい。
7.ポンプの変形例
エア圧で液体収容部30内の液体に常時圧をかけておき、液体収容部30内の圧が抜けて(切創ができた時に)来たらコンプレッサで液体を液体収容部30に供給し、液体収容部30内の液体圧を戻してもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
図12に示す、皮膚模擬装置1を用意した。皮膚模擬装置1には、模擬血液の水面調整用シリンジ2と、模擬血液を出血させるためのポンプ3とが接続されている。具体的には、皮膚模擬装置1、ポンプ3および、皮膚模擬装置1とポンプ3とを結ぶ2つのチューブにより循環系を構築している。模擬血液の水面調整用シリンジ2が一方のチューブに接続されている。
図13は、皮膚模擬装置1およびシリンジ2を拡大した写真である。
図14は、皮膚模擬装置1を示す写真である。皮膚模擬装置1は、疑似切創皮膚を抑え込むフタ1aと、疑似切創皮膚1bと、疑似切創皮膚1bを支持する架台1cと、上記部品全体を支持する受け皿1dと、模擬血液を補充するためのタンク1eと、から構成される。なお、ポンプから補充するための三方活栓付きとした。
図15は、タンク1eに受け皿1dを乗せた状態である。
図16は、疑似切創皮膚1bの写真である。疑似切創皮膚1bは、模擬皮膚の裏面に模擬血液を吸わせておくスポンジ(模擬皮下組織)が付いている。
図17は、タンク1eに受け皿1dを乗せ組み込んだ状態であり、かつ、受け皿1dに架台1cを乗せ、架台1cの上に疑似切創皮膚1bを乗せた状態のものである。
図18は、受け皿1dにのせた架台1cに疑似切創皮膚1bを乗せ,疑似血液を吸わせた状態の写真である。
図19は、タンク1eとフタ1aで疑似切創皮膚1bを挟みOリングとシールテープで模擬血液が漏れない様にフタ1aをした状態を示す。疑似切創皮膚1bは、既に切開され、皮膚を軽く押すと、模擬血液がにじみ出る。
図20は、縫合針を刺す際の状態である。圧迫で止血可能な状態の例である。
縫合針を刺す際、皮膚を抑える為、模擬血液を拭いながら切創部分の確認をしている例である。
図21は、縫い合わせの例である。切創部分針を縫いい合わせる際にも皮膚と皮膚を寄せ合わせるため、止血が必要になる。
図22は、縫合の最後の状態である。糸で裂傷部分を寄せ合わせていく状態が示されている。
図23は、模擬血液の寄せ集まりを示す写真である。裂傷部分を縫い合わせていくと 模擬皮膚の下にある模擬血液が寄せ集り、また止血が必要になることが示されている。
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
10 模擬皮膚装置
12 模擬皮
14 模擬皮下組織
16 模擬筋膜
18 模擬筋層
20 模擬血管
22 第1の管路
24 第2の管路
30 液体収容部
30a 注入部
30b 排出部
40 制御装置
40a 評価部
42 報知装置
S1 第1の液圧センサ
S2 第2の液圧センサ
P1 第1のポンプ
P2 第2のポンプ
P3 第3のポンプ
P4 第4のポンプ
42a 第1のコネクタ
42b 第2のコネクタ
50 コンプレッサ
52 液供給装置
54 液体貯留部
60 液体貯留タンク

Claims (16)

  1. 模擬皮と、前記模擬皮の一方の側に設けられた液体収容部とを含む模擬皮膚装置であり、
    前記模擬皮膚装置は、前記液体収容部に液体を収容した状態で、前記液体収容部がある側とは反対側から前記模擬皮を切開したときに、前記液体が漏出され得るものであり、
    前記液体収容部内に模擬皮下組織が設けられ、
    前記模擬皮下組織は、前記模擬皮の側方に設けられ、かつ、液体が浸透可能なものである模擬皮膚装置。
  2. 模擬皮と、前記模擬皮の一方の側に設けられた液体収容部とを含み、
    前記模擬皮は、開口部を含み、
    前記液体収容部に液体を収容した際に、前記模擬皮の開口部から前記液体が漏出され得る模擬皮膚装置。
  3. 請求項2において、
    前記液体収容部内に模擬皮下組織が設けられ、
    前記模擬皮下組織は、前記模擬皮の側方に設けられ、かつ、液体が浸透可能なものである模擬皮膚装置。
  4. 請求項1または3において、
    前記液体収容部内に模擬筋膜が設けられ、
    前記模擬筋膜は、前記模擬皮が設けられている側と反対側の模擬皮下組織の側方に設けられている模擬皮膚装置。
  5. 請求項4において、
    前記液体収容部内に模擬筋層が設けられ、
    前記模擬筋層は、前記模擬皮下組織が設けられている側と反対側の前記模擬筋膜の側方に設けられている模擬皮膚装置。
  6. 請求項1、3、4または5において、
    前記液体収容部内の前記模擬皮下組織に液体を注入するための注入部を含む模擬皮膚装置。
  7. 請求項6において、
    前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、
    前記管路内の液体の圧力を測定するための液圧センサが設けられている模擬皮膚装置。
  8. 請求項6または7において、
    前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、
    前記管路において、前記液体収容部に対して液を供給する量を調整するためのポンプが設けられている模擬皮膚装置。
  9. 請求項6~8のいずれかにおいて、
    前記注入部に接続される、液体を供給するための管路が設けられ、
    前記管路において、ポンプに接続され得るコネクタ部が設けられている模擬皮膚装置。
  10. 請求項1、3、4、5、6、7、8または9において、
    前記模擬皮下組織内に模擬血管が設けられている模擬皮膚装置。
  11. 請求項1~10のいずれかにおいて、
    前記模擬皮膚装置は、縫合処置訓練用ものものである模擬皮膚装置。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載の模擬皮膚装置の模擬皮を切る工程と、
    切られた模擬皮を縫合する工程とを含む模擬皮膚装置の使用方法。
  13. 請求項1に記載の模擬皮膚装置を用いた処置訓練の評価方法であり、
    前記模擬皮が切り込まれて液体が漏出してから、前記模擬皮が縫合されるまでの間に漏れだした液体量に基づき、縫合のレベルを評価する縫合評価方法。
  14. 請求項7に記載の模擬皮膚装置を用いた処置訓練の評価方法であり、
    前記液圧センサの液圧に基づき皮膚の縫合のレベルを評価する縫合評価方法。
  15. 請求項14において、
    前記模擬皮膚装置は、前記模擬皮下組織内に設けられた模擬血管を含み、
    前記液圧センサの液圧に基づき模擬血管が縛られているかどうかを評価する縫合評価方法。
  16. 請求項7に記載の模擬皮膚装置の前記液圧センサから液圧を取得し、前記液圧センサの液圧に基づき皮膚の縫合のレベルを評価する評価部と、
    前記評価部の評価結果を報知する報知部とを含む制御装置。
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