(本発明の基礎となった知見)
生物が備える磁気センサに予てより着目していた本発明者らは、さらに磁場のヒトへの影響の研究を進める中で、地磁気の擾乱と鬱又は自殺者数との相関に関する研究報告が海外において多数なされていることを見出した。そのような先行研究のひとつである「背景技術」の欄で挙げた非特許文献1では、地球の磁気嵐の2週間後に男性の鬱が36.2%増加したことが報告されている。また、非特許文献2では、オーストラリアでの調査で見出された地磁気の乱れと自殺者数との関連性が報告されている。そして、これらの研究報告に鑑みた本発明者らは、日本においてもこのような地磁気の月別の強度の擾乱と男性の自殺者数とに有意な関連性があることを突き止めた(非特許文献3参照)。さらに本発明者らは、地磁気が強い場所の方が地磁気の変動の程度(K指数)も一般的により大きいことに着目し、各都道府県庁所在地の地磁気の強さと月毎の都道府県別の男性の自殺の標準化死亡比とに有意な関連性があることを見出した(非特許文献4参照)。
このような知見を得た本発明者らは、地磁気以外にも、地球上又は宇宙の気象として捉え得る各種の現象に、ヒトの心身に影響を与える環境要因となり得るものがあるとの仮説を立てた。そしてこの仮説を検証すべく行った調査で、地磁気の擾乱がヒトの心身の活動又は健康に与える可能性を示唆するものを見出した。また、これらの現象の中には、ある種の疾患を原因とするヒトの死亡数との有意な関連性が見出されたものもある。これらの調査の結果は、後述する。
なお、環境要因と疾患の発症・増悪との関連性については、地磁気の擾乱の短期的な影響として、心筋梗塞や脳卒中との関連性が報告されている(非特許文献5、6、7参照)。また、地磁気の擾乱の長期的な影響としては、地磁気の変動が大きい時期から2年後に多発性硬化症の発症が増える傾向が見られたとの報告(非特許文献8参照)がある。また、超低周波電磁場の職業曝露によって、アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病の発症率が高まる可能性を示唆する複数の報告がある(非特許文献9-14参照)。さらにドイツでは、生気象学(biometeorology)に基づいて医学気象予報が提供されている。医学気象予報とは、気象データを基に、心不全、リウマチ性疾患、出血傾向、低血圧、統合失調症、気管支炎、腹痛、睡眠、うつ病、頭痛、けいれん、塞栓症、偏頭痛、断端痛、炎症、神経症、てんかん、肺炎、血栓症、感冒、精神病、外傷性脳炎、緑内障、反応時間、事故遭遇、心筋梗塞等について注意予報を出すものである。
そして本発明者らは、上記の調査を進める一方で、従来はヒトの心身に影響する環境要因としては扱われていない現象をさらに取り込み、また、ヒトの心身の活動等のうち、従来は予報の対象から外れるもの、又はさらにヒトと関わりのある他の生体の活動への影響も予報の対象に含めることを可能にすることで人々の健康の改善又は生活の質の向上を図るための本発明に想到した。
このような本発明の一態様に係る情報提供装置は、所与の日時及び場所における対象生体の生体状態に影響し得る環境要因の状態を示す環境情報を取得する環境情報取得部と、過去に計測された前記環境要因の状態を示すデータと、当該環境要因の状態の計測が実行された場所及び時期に対応する場所及び時期に計測された生体の生体状態を示すデータとに基づく状態モデルを保持する記憶部と、前記環境情報に基づいて、前記状態モデルを用いて、前記環境情報に対応する前記対象生体の前記生体状態を特定し、特定した前記生体状態に基づく、前記所与の日時における前記対象生体の前記生体状態に関連する情報を取得して出力する制御部と、を備える。これにより、複合的であり得る環境要因による生体への影響をより高い精度で推定し、その推定結果を人々に提供することができる。より具体的には、例えば、前記環境要因は、気圧、降水量、気温、湿度、風速、日照時間、降雪量及び季節の少なくともひとつを指す気象と、太陽活動、地磁気活動、電離圏活動、宇宙線量及び月齢の少なくともひとつを指す宇宙天気とを含み、前記健康状態は、傷病又は傷病を原因とする死亡に関する状態であり、前記生体状態に関連する情報は、症状、感情、集中力、注意力、衝動性、活動性、躁行動、鬱行動の少なくともひとつを示す。また、前記環境要因は、シューマン共振、F10.7インデックス、太陽活動、地磁気活動、プロトン現象、放射線帯電子、電離圏嵐、デリンジャー現象およびスポラディックE層の強度を含んでもよい。
例えば、前記制御部は、前記環境情報に基づいて推定された環境要因を用いた感情推定モデルに基づいて、前記対象生体の感情を表す指標である感情指標であって、前記対象生体の感情を推定することが望まれる対象日時における感情指標を特定する感情推定部と、前記感情推定部が特定した前記感情指標に基づいて、前記対象日時における前記対象生体の行動を予測して出力する行動予測部とを備えてもよい。これにより、本発明の一態様に係る情報提供装置は、対象生体の感情を特定し、特定した感情に基づいて、対象生体の行動を予測することができる。
また、例えば、前記制御部は、前記環境情報に基づいて生成された環境要因を用いた健康影響モデルを用いて前記環境情報に対応する健康状態を判定し、判定した前記健康状態に基づく、前記所与の日時における前記対象生体の健康状態に関連する健康情報を取得して出力する健康判定部と、を備えてもよい。これにより、本発明の一態様に係る情報提供装置は、対象生体の健康状態を判定し、判定した健康状態を出力することができる。
また例えば、前記健康影響モデルは、前記過去に計測された環境要因の状態を示すデータを学習データとして用い、前記生体の健康状態のデータを教師データとして用いる機械学習によって得られた推論モデルであってもよい。
また例えば、前記健康影響モデルは、さらに前記生体の集団の心理状態を示すデータと前記生体の健康状態のデータとに基づき、前記健康判定部は、さらに前記対象生体を含む集団の心理状態を示す集団心理状態情報を取得し、前記健康判定部が前記健康影響モデルを用いて判定する前記健康状態は、前記集団心理状態情報が示す心理状態にさらに対応するものであってもよい。また例えば、前記健康影響モデルは、さらに前記生体を取り巻く環境で採取された環境遺伝子のデータと前記生体の健康状態のデータとに基づき、前記健康判定部は、さらに前記対象生体を取り巻く環境で採取された環境遺伝子から得られる情報である環境遺伝子情報を取得し、前記健康判定部が前記健康影響モデルを用いて判定する前記健康状態は、前記環境遺伝子状態情報が示す環境遺伝子情報にさらに対応するものであってもよい。これらにより、上記の推定の精度のさらなる向上を図ることができる。
また例えば、前記健康影響モデルは、さらに前記生体の個体情報のデータに基づき、前記健康判定取得部は、さらに前記対象生体の個体情報を取得し、前記健康判定部が前記健康影響モデルを用いて判定する前記健康状態は、前記対象生体の個体情報にさらに対応するものであってもよい。より具体的には、例えば、前記個体情報は、生体情報、遺伝情報、エピジェネティック情報及び誕生時期の少なくともひとつを含んでもよい。
また、例えば、前記感情推定モデルは、前記過去に計測された環境要因の状態を示すデータと前記生体の感情指標のデータとに基づいて、前記環境要因の状態と前記生体の感情指標との関連性を統計的に解析することによって得られたモデルであってもよい。また、例えば、前記感情推定モデルは、前記過去に計測された環境要因の状態を示すデータを学習データとして用い、前記生体の感情のデータを教師データとして用いる機械学習によって得られた推論モデルであってもよい。そして、例えば、前記機械学習は深層学習であってもよい。
また、例えば、前記感情推定部は、前記対象日時より以前の所定時間分の前記環境情報に基づいて、前記対象日時における前記対象生体の感情を表す前記感情指標を特定してもよい。また、例えば、前記行動予測部は、前記対象生体の感情指標のデータに基づいて、前記生体の感情指標のデータと前記生体が行った行動を示すデータとの関連性を統計的に解析することによって得られたモデルを用いて、前記対象日時における前記対象生体の行動を予測してもよい。これにより、上記のそれぞれの推定、判定および予測の精度のさらなる向上を図ることができる。
また例えば、さらに第一センサを備え、前記提供情報取得部は、前記第一センサを用いた計測の結果に基づいて取得された前記生体情報を前記個体情報として取得してもよい。これにより、ユーザは情報提供装置が備える第一センサを用いて計測される、自身の最新の生体情報に対応する健康情報を取得することができる。
また例えば、さらに第二センサを備え、前記環境情報取得部は、前記第二センサを用いた計測の結果に基づく前記環境情報を取得してもよい。これにより、例えば局地的な場所での最新の環境要因の状態に対応した健康情報の提供が可能である。また、第二センサが例えばウェアラブル端末又はモバイル機器に備えられるものであれば、そのユーザの居場所に応じて健康情報の提供が可能である。
また例えば、さらに通信部を備え、前記環境情報取得部は、前記通信部が外部から受信するデータに基づいて前記環境情報を取得してもよい。このような実施態様であれば、情報が入手可能な任意の場所における環境要因の、対象生体への影響の推定結果を健康情報として提供することができる。
また例えば、前記記憶部は、前記過去に計測された環境要因の状態を示すデータと、当該環境要因の状態の計測が実行された場所及び時期に対応する場所及び時期に観測された経済動向のデータとに基づく経済影響モデルとをさらに保持し、前記提供情報取得部はさらに、前記経済影響モデルを用いて、前記環境情報に対応する経済動向を判定し、判定した前記経済動向に基づく、現在又は将来における経済動向に関連する経済情報を取得して出力してもよい。経済活動は人間の心身の活動の現れという側面があり、間接的ではあるが気象及び天体活動等も含む複合的な環境要因による影響もある程度受け得る。したがって、このような情報を用いることで、経済動向をより高い精度で推定し、その推定結果を人々に提供することができる。
また、例えば、本発明の実施の形態における情報提供方法は、所与の日時及び場所における対象生体の生体状態に影響し得る環境要因の状態を示す環境情報を取得する環境情報取得ステップと、過去に計測された前記環境要因の状態を示すデータと、当該環境要因の状態の計測が実行された場所及び時期に対応する場所及び時期に計測された生体の生体状態を示すデータとに基づく状態モデルを保持する記憶ステップと、前記環境情報に基づいて、前記状態モデルを用いて、前記環境情報に対応する前記対象生体の前記状態を特定し、特定した前記状態に基づく、前記所与の日時における前記対象生体の前記状態に関連する情報を取得して出力する制御ステップと、を含む。これにより、本発明の実施の形態における情報提供方法は、上記情報提供装置と同様の効果を奏することができる。
また、例えば、本発明の実施の形態におけるプログラムは、プロセッサを備える情報処理装置において、前記プロセッサによって実行されることで前記プロセッサに、所与の日時及び場所における対象生体の健康状態に影響し得る環境要因の状態を示す環境情報を取得させ、過去に計測された前記環境要因の状態を示すデータと、当該環境要因の状態の計測が実行された場所及び時期に対応する場所及び時期に計測された生体の健康状態を示すデータとに基づく健康影響モデルを用いて前記環境情報に対応する健康状態を判定させ、判定した前記健康状態に基づく、前記所与の日時における前記対象生体の健康状態に関連する健康情報を取得させ、前記環境情報に基づいて生成された環境要因を用いた感情推定モデルに基づいて、前記対象生体の感情を表す指標である感情指標を、前記対象生体の感情を推定することが望まれる対象日時において特定させ、前記感情推定部が特定した前記感情指標に基づいて、前記対象日時における前記対象生体の行動を予測した結果を出力させてもよい。これにより、本発明の実施の形態におけるプログラムは、上記情報提供装置と同様の効果を奏することができる。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、方法、システム、集積回路又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置、配置及び接続形態、方法のステップ、ステップの順序等はこのような例の説明のために用意されるものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
(実施の形態)
[概要]
本実施の形態に係る情報提供装置は、心身の生体状態に関連する情報である生体状態に関連する情報をユーザに提供し、当該生体状態に関連する情報に基づいて、ユーザの行動を予測し、予測結果をユーザに提供する。
ここでの生体状態に関連する情報は、健康情報と呼ばれてもよい。健康情報とは、例えば、各種の傷病、疾患による症状(発作を含む)の有無、増悪又は寛解、感情(例:安心-不安、幸福感、緊張-リラックス、興奮、意欲、苛立ち等)、集中力、注意力、衝動性、活動性(多動又は寡動を含む)、躁行動、又は鬱行動に関する情報である。より具体的には、これらの生体状態、生体状態の変化の傾向若しくは変化の生じる可能性等、又はこの傾向若しくは可能性に応じた助言、手当方法若しくは注意喚起に関する情報が例として挙げられる。
このような健康情報の取得に用いることができる情報には、複数の種類がある。
ひとつは、ユーザが居る場所の気象に関する情報(以下、単に気象情報ともいう)である。本開示において気象の語が指すものの具体例としては、気圧、降水量、気温、湿度、風速、日照時間、降雪量及び季節が挙げられる。
また、ユーザが居る場所の宇宙天気に関する情報(以下、単に宇宙天気情報ともいう)も用いられる。本開示において宇宙天気の語が指すものの具体例としては、太陽活動、地磁気活動、電離圏活動及び月齢が挙げられる。太陽活動を表す指標としては、太陽風のバルク速度、プロトン流量(proton flux、フレアに伴う放射線被爆の指標)、太陽電波流量(F10.7 index)、黒点数が例に挙げられる。地磁気活動を表す指標としては、K指数(地磁気擾乱)が例に挙げられる。月齢は周期性の高い運動をする天体間の相対位置の変化で生じるものであり、時に突発的な変化を示すフレア又は地磁気擾乱のような現象ではない。しかしながら、例えば満月とヒトの活動等との相関を指摘する報告は多数ある(例えば、非特許文献15参照)。この点を考慮し、本開示においては月齢を宇宙天気のひとつに含める。
その他、宇宙天気とは別に、銀河宇宙線、および、地球の地表と電離層との間に常時存在する極極超長波であるシューマン共振も、健康情報の取得に用い得る情報として用い得るというのが本発明者らの考えである。シューマン共振は、雷の放電、又は太陽風による電離層の振動がそのエネルギー源と考えられており、その強弱の変化と健常者の血圧の変化との相関についての報告がある(非特許文献16参照)。
なお、これらの指標には地球規模のものがある。そして「ユーザが居る場所」は、地球上の限られた場所のみならず、地球全体を指す場合もあり、又はさらに地球外の場所、例えば、月その他の天体及び宇宙空間にある宇宙機を指す場合もある。本実施の形態に係る情報提供装置は、地球外に居るユーザにも適用可能であり、宇宙天気情報は、各場所に居るユーザの心身に影響するものは、取得可能な限り利用されてもよい。また、気象情報、宇宙天気情報又はシューマン共振の情報を取得するための観測がユーザの居場所とは離れた場所で行われている場合、観測された現象又は生体状態がユーザの居場所で発生する時間差又は可能性を必要に応じて考慮に入れて、取得される健康情報の内容が決定されてもよい。
上記に挙げた、気象、宇宙天気、及びシューマン共振は、いずれも生体であるユーザの生体状態に影響し得るものであり、本開示における環境要因の例である。
また、健康情報の取得には、さらにユーザの個体に固有の情報(以下、個体情報ともいう)が用いられてもよい。具体例としては、生体情報及び遺伝情報が挙げられる。本開示における生体情報の具体例としては、ユーザの性別、年齢、脈拍、心音、血圧、呼吸数、呼気その他の生体ガス成分、体温、発汗、脳波、活動量、睡眠時間、摂取カロリー、摂取栄養素、服用薬物(例:医薬品、たばこ等のし好品)、体組成、及び血液等の標本に対する検体検査又は各種の臨床検査によって得られる情報が挙げられる。また、身長、体重、腹囲、及び各種の体格指数等の、ユーザの体格を示す情報も本開示における生体情報に含まれ得る。健康情報の取得には、このような情報の直近のもののみが用いられてもよいし、又は履歴が用いられてもよい。遺伝情報は、唾液等の標本から取得される情報でもあるが、ここでは、遺伝子を解析して取得される、例えばユーザの体質、各種の疾病に関するリスク等のうち、先天的で、上記の生体情報より潜在的なものも含み得る。その他、本開示では、ユーザの労働情報(就業状態、労働時間、給与額)、及びユーザの誕生時期(日、月又は季節)も、健康情報の取得に用いることができる個体情報に含め得る。喘息、クローン病、精神疾患等の一部の疾患のリスクと誕生時期とには関連があることが報告されている(非特許文献17参照)。
これらのような個体情報が示す個体の状態もまた、ユーザの健康状態との関連性があると知られているものであり、ユーザの健康状態に影響し得るものを含む。
なお、ここまでは「ユーザ」の語を、本実施の形態に係る情報提供装置による健康状態の判定対象者を指して用いたが、本開示においてここまでの文脈における「ユーザ」は、狭義のユーザである。より広義のユーザには、健康情報によって健康状態に関連する情報が示される人物の健康管理に関わってこの健康情報を利用する人々、例えば家族、医療関係者及び介護関係者が含まれ得る。また、上記でも簡単に触れたように、本開示に係る技術は、ヒト以外の生体の健康状態に関連する健康情報の取得にも用い得る。ここでのヒト以外の生体とは、例えば産業動物、家庭動物、展示動物、又は実験動物であってもよい。さらには、捕獲若しくは養殖の対象である水産動物、又は忌避若しくは駆除対象の害獣及び害虫等について一部の個体を標本としてその個体の上記のような個体情報を収集し、その個体を含む集団の移動、繁殖等の活動、又は病気の流行等に焦点を当てての健康状態に関連する健康情報の取得にも適用の可能性がある。これらの場合における健康情報を利用する人々も広義のユーザに含まれる。以下での「ユーザ」の語については、文脈に応じて適切な意味で、また、可能な場合にはいずれの意味でも理解されたい。いずれの意味であるかを適宜明示又は例示する場合もある。
[構成]
次に、上述した環境要因の状態を示す情報(以下、環境情報ともいう)及び個体情報の入力を受け、これらを用いて健康情報を出力する本実施の形態に係る情報提供装置の構成について例を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る情報提供装置10の構成を説明するための図である。
この例において、情報提供装置10は、計測機器20及びサーバ50と共に情報提供システム1を構成する。
情報提供装置10は、計測機器20と接続される。計測機器20は、ユーザの生体情報を取得するためのセンサ21を備える。計測機器20は、例えば脈拍計、血圧計、心電計、体温計、発汗計、脳波計、又は体重計等であり、センサ21は、これらの機器で用いられる、圧力、温度、動き、電気、磁気、電磁波等を感知する各種のセンサである。センサ21を用いた計測結果に基づいて取得されたユーザの生体情報は、計測機器20から情報提供装置10へと入力される。図1に示される計測機器20は1個のみであるが、情報提供装置10に生体情報を提供する計測機器の個数及び種類数には制限はない。
なお、計測機器20は、ユーザが携帯又は装着可能であって、生体情報を常時、又はユーザの操作に従って随時取得可能であってもよいし、設定されたスケジュールに従って間欠的に生体情報を取得してもよい。または、計測機器20は、ユーザの自宅又はユーザが利用する施設等に設置される機器であってもよい。この場合、計測機器20による生体情報は、ユーザが能動的に計測機器20を使用することで取得されるものに限定されない。例えば居室においてリモートで計測されるユーザの皮膚温度、居室内の空気成分の分析に基づく生体ガス成分、ユーザが踏む、押す、握る、腰掛ける又は横たわる等するものに設置されたセンサで感知される圧力等の情報が情報提供装置10に提供される生体情報として取得されてもよい。
また、計測機器20によって取得された生体情報は、計測機器20から情報提供装置10へ常時、又はユーザの操作に従って随時送信されてもよいし、設定されたスケジュールに従って間欠的に送信されてもよい。そして情報提供装置10と計測機器20とは、通信のために無線又は有線で常時接続されていてもよいし、必要な時だけ接続されてもよい。また、生体情報は計測機器20から情報提供装置10に直接送信されるのではなく、双方が通信可能に接続される記憶装置、例えばホームサーバ又はクラウドサーバを介して授受されてもよい。
さらに情報提供装置10は、通信ネットワークを介してサーバ50と通信可能なように接続される。例えばサーバ50はウェブサーバ、通信ネットワークはインターネットである。このウェブサーバは、例えば観測機関又は研究機関が観測して取得した気象情報、宇宙天気情報及びシューマン共振の情報を含む環境情報を記憶装置に保持している。情報提供装置10は、この環境情報を、ユーザの操作に従って随時、又は設定されたスケジュールに従って通信ネットワークを介してサーバ50に接続して間欠的に取得してもよい。または、サーバ50から、情報が更新される度に、又は設定されたスケジュールに従って、通信ネットワークを介して情報提供装置10に送信されてもよい。
情報提供装置10は、ユーザインタフェース12、通信部14、記憶部16、及び制御部18を機能的な構成要素として備える。情報提供装置10は、例えばプロセッサ(演算処理装置)及びメモリ(記憶装置)等を含む情報処理装置によって実現され、これらの構成要素は、プロセッサがメモリに記憶される1個又は複数個のプログラムを実行し、各種のハードウェアと協働することで実現される。図2Aは、このような情報処理装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図2Aに示す矩形の各ブロックが情報処理装置のハードウェア構成要素を示す。入力装置は、例えばキーボード、タッチスクリーン、マウス又はタッチパッド等のポインティングデバイス、マイク、各種の物理ボタン等のスイッチ類である。また、演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)である。また、出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ、ランプ、バイブレータ等である。また、記憶装置は、例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性の記録媒体、及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記録媒体である。また、通信装置は、例えばネットワークカード等の、有線又は無線の通信を実現する通信モジュールである。これらのハードウェア構成要素は、相互の通信のためのバスに接続される。図2B、図2C及び図2Dは、このようなハードウェア構成を備えて情報提供装置10を実現する情報処理装置の例を示す模式図である。図2Bはスマートフォン、図2Cは、スマートウォッチ、図2Dは、デスクトップ型のパーソナルコンピュータをこのような情報処理装置の例として示す。ただし、情報提供装置10を実現し得る情報処理装置はこれらに限定されない。他の例として、タブレット型又はノート型のコンピュータ、及びスマートアイウェア又は活動量計等のウェアラブル端末も挙げられる。また、これらのような情報処理装置のうち、2つ以上の組み合わせによって情報提供装置10が実現されてもよい。
なお、情報処理装置の上記の構成は一例であり、情報提供装置10を実現し得る情報処理装置の構成はこの例に限定されない。例えば、電磁的記録媒体を用いたリムーバブルメディアからデータを取得するための読取装置、入力装置としてのカメラを備えてもよい。
図1を再び参照して情報提供装置10の構成要素の説明を続ける。
ユーザインタフェース12は、健康情報の取得に用いる情報のユーザによる入力を受け付け、また、取得された健康情報をユーザに提示する。図2Aのハードウェアでは入力装置及び出力装置を用いて実現される機能的な構成要素である。
ユーザインタフェース12から入力される情報には、ユーザの個体情報のうち、計測機器20で計測されないものが含まれる。例えば、健康状態についての判定対象者であるユーザの誕生時期(生年月日又は季節)、出生地又は生育地、現在の居住地、性別、自覚症状、本人又は家族の病歴、労働情報といった、健康状態の判定に利用可能な情報がユーザインタフェース12を介して入力されてもよい。また、摂取カロリー、摂取栄養素、及び服用薬物は、例えばユーザがユーザインタフェース12を用いて、摂取した物及び量を選択肢から選択するなどして入力してもよい。または、ユーザがカメラを用いて撮影した画像から食事内容が認識されてカロリー計算又は栄養素の推定がなされてもよい。服用薬物についても同様に画像を用いて認識がなされてもよい。なお、個体情報として利用される遺伝情報は、ユーザインタフェース12を用いて情報提供装置10に入力されてもよい。また、遺伝情報が記録されたリムーバブルメディアから読取装置を用いて読み取られるものでもよい。また、標本から遺伝情報を取得するサービスの提供者から、通信ネットワークを介して下記の通信部14によって取得されるものでもよい。その他、医療機関が保持する電子カルテに含まれる情報も上記の各経路で情報提供装置10に個体情報として入力され、利用されてもよい。
通信部14は、健康情報の取得に用いる環境情報を、通信ネットワークを介してサーバ50から受信する。図3は、情報提供装置10において健康情報の取得に用いられる環境情報のデータ構成の例を示す。なお、環境情報は、所与の日時におけるユーザの居場所に対応するものである。例えば現在のユーザの居場所は、情報提供装置10がGPS(Global Positioning System)等の測位システムに対応している場合には、測位システムを用いて取得された位置情報が通信部14からサーバ50に送信され、この位置情報が示す位置に対応する気象情報等がサーバ50から情報提供装置10に提供されてもよい。また、現在のユーザの居場所を示す他の情報として、情報提供装置10による通信ネットワークへの接続に用いられる情報のうち、ある程度の精度で位置がわかるもの、例えばIP(Internet Protocol)アドレスがサーバ50で利用されてもよい。また、ユーザがユーザインタフェース12を用いて明示的に入力する情報がユーザの居場所を示す位置情報として利用されてもよい。この場合は前の2つの例と違って、位置情報が示す所与の日時におけるユーザ(又はユーザが使用している情報提供装置10)の居場所は現在の位置に限定されず、過去又は将来における位置であってもよい。また、ユーザの位置情報については、情報提供装置10がアクセス可能なスケジュール情報から取得されてもよい。例えば、情報提供装置10を実現する情報処理端末上のスケジュール管理アプリケーション、又はこの情報処理端末から利用されるスケジュール管理サービスを提供する遠隔のサーバから取得されてもよい。そしてサーバ50からは、その位置における過去の記録又は将来の予報を気象情報等として情報提供装置10に提供される。なお、過去の気象情報については、測位システム等を用いて取得された位置情報又はIPアドレス等の情報の履歴に対応するものが提供されてもよい。
このような通信部14は、図2Aの通信装置を用いて実現される機能的な構成要素である。
環境情報取得部17は、所与の日時及び場所における対象生体の生体状態に影響し得る環境要因の状態を示す環境情報を取得する。環境情報取得部17は、サーバ50から環境情報を取得する。環境情報とは、例えば、降水量、気温、湿度、日照時間、F10.7 index、銀河宇宙線量等の環境要因を示すデータである。
制御部18は、計測機器20から取得した生体情報を含むユーザの個体情報と、サーバ50から取得した環境情報に対応するユーザの生体状態を判定またはユーザの行動を予測する。図4に計測機器20から取得される生体情報のデータ構成例を示す。この判定は、記憶部16に保持されている状態モデル、感情推定モデルおよび健康影響モデルをこれらの情報に適用して実行される。
状態モデルは、過去に計測された環境要因の状態を示すデータ及び過去に計測されたユーザの生体状態のデータに基づくモデルであり、例えば、過去に計測された環境要因の状態を示すデータと、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの生体状態のデータとに基づいて、環境要因の状態とユーザの生体状態との関連性を統計的に解析することによって得られる。具体例としては、個体情報に含まれる項目の値及び環境情報等に含まれる項目の値を説明変数、健康情報の項目に含まれるもの、例えばある疾患の症状の発生率を目的変数として実施された重回帰分析によって得られた重回帰式である。また、別の具体例としては、個体情報に含まれる項目の値及び環境情報等に含まれる項目の値を説明変数、健康情報の項目に含まれるもの、例えばユーザの感情状態の発生率を目的変数として実施された重回帰分析によって得られた重回帰式である。または、このような統計的な解析によって得られた結果に基づくテーブルであってもよい。また別の例としては、環境要因の状態を示すデータからユーザの生体状態の諸項目について推論するよう訓練された、ディープニューラルネットワークなどの機械学習の推論モデルであってもよい。ここで、機械学習は、深層学習を行う学習モデルでもよい。このような推論モデルは、例えば過去に計測によって得らえた気象、宇宙天気、及びシューマン共振の状態を示すデータを学習データとして用い、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの状態(疾患の状態、健康の状態または感情の状態)のデータを教師データとして用いる教師あり学習によって取得される。
また、状態モデルにおいて、用いられる環境情報は、例えば、気圧、降水量、気温、湿度、風速、日照時間、降雪量及び季節の少なくともひとつを指す気象と、太陽活動、地磁気活動、電離圏活動、宇宙線量及び水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星および月の満ち欠けの少なくともひとつと社会情勢と曜日と環境ホルモンとを含む。また、環境情報は、気圧、降水量、雲量、気温、湿度、風速、日照時間、雷数、降雪量及び季節の少なくともひとつを指す気象と、太陽活動、地磁気活動、電離圏活動、宇宙線量、銀河宇宙線量、F10.7インデックス、黒点数、プロトン現象、放射線帯電子、電離圏嵐、デリンジャー現象、スポラディックE層、月齢の少なくともひとつを指す宇宙天気の累積曝露量を含む。また、環境要因は、集団の心理状態を示す集団心理状態情報を含んでもよい。
感情推定モデルは、状態モデルのうち、ユーザの感情の推定に特化したモデルである。感情推定モデルは、過去に計測された環境要因の状態を示すデータ及び過去に計測されたユーザの感情状態のデータに基づくモデルであり、例えば、過去に計測された環境要因の状態を示すデータと、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの感情状態のデータとに基づいて、環境要因の感情状態とユーザの生体状態との関連性を統計的に解析することによって得られる。具体例としては、個体情報に含まれる項目の値及び環境情報等に含まれる項目の値を説明変数、健康情報の項目に含まれるもの、例えばユーザの感情状態の発生率を目的変数として実施された重回帰分析によって得られた重回帰式である。または、このような統計的な解析によって得られた結果に基づくテーブルであってもよい。また別の例としては、環境要因の状態を示すデータからユーザの感情状態の諸項目について推論するよう訓練された、ディープニューラルネットワークなどの機械学習の推論モデルであってもよい。ここで、機械学習は、深層学習を行う学習モデルでもよい。このような推論モデルは、例えば過去に計測によって得らえた気象、宇宙天気、及びシューマン共振の状態を示すデータを学習データとして用い、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの感情状態のデータを教師データとして用いる教師あり学習によって取得される。ここで、ユーザの感情状態とは、幸福度、喜怒哀楽、器質性精神疾患、作用物質による精神・行動障害、ならびに、統合失調症、気分障害および神経症性障害を含む内因性精神疾患を含む。
具体的には、ユーザの感情状態とは、易怒性、安らぎ、楽しさ、親しみ、尊敬・尊さ、感謝、気持ちが良い、誇らしい、感動、喜び、悲しさ、寂しさ、不満、切なさ、苦しさ、不安、憂鬱、辛さ、好き、嫌悪、恥ずかしい、焦り、驚き、怒り、幸福感、恨み、恐れ(恐縮等の意味で)、恐怖、悔しさ、祝う気持ち、困惑、きまずさ、興奮、悩み、願望、失望、あわれみ、見下し、謝罪、ためらい、不快、怠さ、あきれ、心配、緊張、妬み、憎い、残念、情けない、穏やか、抑鬱・不安、怠慢、非活動的快、集中、敵意、活動的快、親和および驚愕という感情、ならびに、幸福度等を含む。
健康影響モデルは、過去に計測された環境要因の状態を示すデータ及び過去に計測された人の健康状態のデータに基づくモデルであり、例えば、過去に計測された環境要因の状態を示すデータと、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの健康状態のデータとに基づいて、環境要因の状態とユーザの健康状態との関連性を統計的に解析することによって得られる。具体例としては、個体情報に含まれる項目の値及び環境情報等に含まれる項目の値を説明変数、健康情報の項目に含まれるもの、例えばある疾患の症状の発生率を目的変数として実施された重回帰分析によって得られた重回帰式である。または、このような統計的な解析によって得られた結果に基づくテーブルであってもよい。また別の例としては、環境要因の状態を示すデータからユーザの健康状態の諸項目について推論するよう訓練された、ディープニューラルネットワークなどの機械学習の推論モデルであってもよい。ここで、機械学習は、深層学習を行う学習モデルでもよい。このような推論モデルは、例えば過去に計測によって得らえた気象、宇宙天気、及びシューマン共振の状態を示すデータを学習データとして用い、その計測が行われた場所及び時期に計測されたユーザの健康状態のデータを教師データとして用いる教師あり学習によって取得される。
さらに制御部18は、上記の状態モデルの判定の結果である生体状態に基づいて、当該ユーザの生体状態に関連する状態情報を取得し、取得した状態情報に基づいて予測されたユーザの行動または生体状態を出力する。状態情報の内容は、判定の結果そのもの、例えばユーザにある疾患の症状が発生する可能性であってもよいし、症状の増悪又は寛解等の変化の可能性であってもよい。また、このような判定の結果に応じた助言、手当方法若しくは注意喚起を内容とする情報であってもよい。このような内容の健康情報は、例えば発症又は症状の変化及びその可能性に応じたメッセージのリストが記憶部16に保持され、制御部18は、上記の判定の結果に応じてこのメッセージを取得してもよい。または、制御部18は、上記の判定の結果を、通信部14を介して外部のAI(Artificial Intelligence)サーバに送信し、判定の結果に応じた適切な助言等の情報をAIサーバから健康情報として取得してもよい。このAIサーバは、このような情報の提供のためにあらかじめ用意されるものである。取得した健康情報を、制御部18は、ユーザインタフェース12を介してユーザに提供する。なお、健康情報を示すデータの形式は、文字、図形等を含む視覚情報若しくは音声、又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。また、これらのデータの提示と共に、又はこれらに代えて音声ではない音(ビープ音等)、ランプの点灯、バイブレータの振動が用いられてもよい。
このような制御部18は、図2Aの演算処理装置が、記憶装置に記憶されるプログラムを実行し、また必要に応じて記憶装置にアクセスしてデータを参照したり保存したりすることで実現される機能的な構成要素である。
記憶部16はここまでの他の構成要素の説明ですでに述べたとおりであり、情報提供装置10で、個体情報及び環境情報の入力に対してユーザに提供する健康情報を出力するために用いられる健康影響モデル、状態モデルまたは感情推定モデル等のデータを保持する。また、状態モデル、感情推定モデルまたは健康影響モデルを用いたユーザの生体状態、ユーザの感情状態またはユーザの健康状態の判定及び健康情報の取得、及び取得した健康情報のユーザへの提示のために制御部18によって実行されるプログラム(アプリケーション)も記憶部16に保持される。その他、例えばこの判定の結果、又はユーザに提示された健康情報の履歴も記憶部16に保持されてもよい。 感情推定部18aは、上記の感情推定モデルの判定の結果である状態に基づいて、当該ユーザの感情状態に関連する健康情報を取得する。つまり、感情推定部18aは、環境情報に基づいて生成された説明変数を用いた感情推定モデルに基づいて、ユーザ(対象生体)の感情を表す指標である感情指標を、ユーザの感情を推定することが望まれる対象日時において特定する。ここで、感情指標とは、喜怒哀楽および喜怒哀楽それぞれの度合いを示す数値または単語である。
また、感情推定部18aが出力する健康情報の内容は、感情指標である。また、このような特定された感情指標に応じた助言、手当方法若しくは注意喚起を内容とする情報であってもよい。このような内容の健康情報は、例えば心理状態の変化及びその可能性に応じたメッセージのリストが記憶部16に保持され、感情推定部18aは、上記の判定の結果に応じてこのメッセージを取得してもよい。または、感情推定部18aは、上記の判定の結果を、通信部14を介して外部のAIサーバに送信し、判定の結果に応じた適切な助言等の情報をAIサーバから健康情報として取得してもよい。このAIサーバは、このような情報の提供のためにあらかじめ用意されるものである。取得した健康情報を、感情推定部18aは、ユーザインタフェース12を介してユーザに提供する。なお、健康情報を示すデータの形式は、文字、図形等を含む視覚情報若しくは音声、又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。また、これらのデータの提示と共に、又はこれらに代えて音声ではない音(ビープ音等)、ランプの点灯、バイブレータの振動が用いられてもよい。
行動予測部18bは、感情推定部18aが特定した感情指標に基づいて、対象日時におけるユーザ(対象生体)の行動を予測して出力する。つまり、行動予測部18bは、ユーザの感情指標のデータに基づいて、生体の感情指標のデータと生体が行った行動を示すデータとの関連性を統計的に解析することによって得られたモデルを用いて、対象日時におけるユーザの行動を予測する。行動の内容は、例えば購買行動または危険行動等であってもよい。また、行動予測部18bは、このような予測の結果に応じた助言、手当方法若しくは注意喚起を内容とする情報を提示してもよい。行動予測部18bが出力する健康情報の内容は、予測された行動に関する情報である。予測された行動に関する情報は、例えば行動の変化及びその可能性に応じたメッセージのリストが記憶部16に保持され、行動予測部18bは、上記の予測の結果に応じてこのメッセージを取得してもよい。または、行動予測部18bは、上記の予測の結果を、通信部14を介して外部のAIサーバに送信し、判定の結果に応じた適切な助言等の情報をAIサーバから健康情報として取得してもよい。このAIサーバは、このような情報の提供のためにあらかじめ用意されるものである。
取得した健康情報を、行動予測部18bは、ユーザインタフェース12を介してユーザに提供する。なお、行動情報を示すデータの形式は、文字、図形等を含む視覚情報若しくは音声、又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。また、これらのデータの提示と共に、又はこれらに代えて音声ではない音(ビープ音等)、ランプの点灯、バイブレータの振動が用いられてもよい。
さらに健康判定部18cは、上記の状態モデルの判定の結果である生体状態に基づいて、当該ユーザの生体状態に関連する健康情報を取得し、取得した健康情報に基づいて判定されたユーザの生体状態を出力する。健康判定部18cが出力する健康情報の内容は、判定の結果そのもの、例えばユーザにある疾患の症状が発生する可能性であってもよいし、症状の増悪又は寛解等の変化の可能性であってもよい。また、健康情報の内容は、このような判定の結果に応じた助言、手当方法若しくは注意喚起を内容とする情報であってもよい。このような内容の健康情報は、例えば発症又は症状の変化及びその可能性に応じたメッセージのリストが記憶部16に保持され、健康判定部18cは、上記の判定の結果に応じてこのメッセージを取得してもよい。
または、健康判定部18cは、上記の判定の結果を、通信部14を介して外部のAIサーバに送信し、判定の結果に応じた適切な助言等の情報をAIサーバから健康情報として取得してもよい。このAIサーバは、このような情報の提供のためにあらかじめ用意されるものである。取得した健康情報を、健康判定部18cは、ユーザインタフェース12を介してユーザに提供する。なお、健康情報を示すデータの形式は、文字、図形等を含む視覚情報若しくは音声、又はこれらの組み合わせのいずれであってもよい。また、これらのデータの提示と共に、又はこれらに代えて音声ではない音(ビープ音等)、ランプの点灯、バイブレータの振動が用いられてもよい。
このような記憶部16は、図2Aの記憶装置を用いて実現される機能的な構成要素である。
[動作]
次に、上記の構成を有する情報提供装置10の動作について、手順例を用いて説明する。図5は、情報提供装置10の動作の手順例を示すフローチャートである。以下ではこのフローチャートに沿って、現在から近い将来についてのユーザの生体状態に関連する生体状態に関する情報を提供する情報提供装置10の動作の手順例を説明する。なお、図5を参照しての以下の説明では、上記の各構成要素の機能によって実行される各工程を情報提供装置10の動作の工程として説明する。
(S10)情報提供装置10は、生体状態についての判定対象者であるユーザの個体情報を取得する。この個体情報に含まれる情報の例としては、読取装置を用いてリムーバブルメディアから読み取られた遺伝情報が挙げられる。また、計測機器20でのセンサ21を用いた計測の結果に基づく生体情報もこの個体情報に含まれ得る。
(S20)情報提供装置10は、現在の時刻情報及びユーザの位置情報を取得する。時刻情報は、例えば情報処理装置である情報提供装置10が備えるシステムクロックの値である。位置情報は、例えば情報提供装置10が備える測位システムの受信機から出力される。
(S30)情報提供装置10は、ステップS20で取得した時刻情報及び位置情報をサーバ50に送信し、サーバ50から、この時刻情報及び位置情報に対応する環境情報の提供を受けて取得する。「時刻情報及び位置情報に対応する」とは、例えば、位置情報が示す位置をカバーするエリアについての環境情報であって、サーバ50で保持される最新のものである。また、情報提供装置10は、履歴又は予報である環境情報の提供を受けてもよい。そのような現在と異なる時期の環境情報は、過去の生体状態又は生体状態の今後の変調についての判定に有用である。
(S40)情報提供装置10は、個体情報及び環境情報に対応する生体状態を、状態モデルを用いて判定する。ステップS40で実行される生体状態の判定については、図6のフローチャートに、より詳細な例を示す。図6は、図5に例示する情報提供装置10の動作の手順における、生体状態の判定の手順例を示すフローチャートである。この例では、状態モデルとして重回帰式を用いて生体状態のある項目、例えばある症状の今後の変化(増悪、改善、寛解、又はほぼ変化なし等)について判定が行われる。
(S41)制御部18は、状態モデルとしての重回帰式を取得する。
(S42)制御部18は、ステップS10で取得した個体情報、並びにステップS30で取得した環境情報の各項目の値を、ステップS41で取得した重回帰式に説明変数の値として代入し、演算する。
(S43)ステップS42での演算の結果として得られた目的変数の値が、所定の閾値を超えるか否か判定する。目的変数の値が、所定の閾値以下の場合(S43でNo)、制御部18は手順をステップS44へ進める。目的変数の値が、所定の閾値を超える場合(S43でYes)、制御部18は手順をステップS45へ進める。
(S44)制御部18は、この例における症状は改善または寛解するとの判定結果を取得して生体状態の判定を終える。
(S45)制御部18は、この例における状態は増悪するとの判定結果を取得して生体状態の判定を終える。
なお、上記の生体状態の判定の手順例は、説明を簡単にするため単純化したものである。実際には、例えば健康情報の複数の項目について判定がなされてもよい。また、例えば気象情報としての気象予報に示される気象の将来的な変化に応じて判定を重ねて、症状の今後の時系列変化についての判定結果が取得されてもよい。
図5を再び参照して健康情報の提供の動作の説明に戻る。ここで、健康情報とは、生体状態に関する情報である。
(S50)情報提供装置10は、ステップS40で判定した生体状態に関連する生体状態に関する情報を取得して、ユーザにこの健康情報を提示する。図7は、情報提供装置10による、健康情報の提示例を示す模式図である。
図7では、情報提供装置10が、図2Bに示したスマートフォンで実現されている場合を例にこの提示例を示す。この提示例では、スマートフォンのロック画面において、天気予報のアプリケーションによる天気予報の下に健康情報が表示されている。この例における健康情報は、ユーザのこの先の鬱行動に関する生体状態に関連する情報であり、その一部である文字及び図形が表示されている。この健康情報が情報提供装置10で取得されてロック画面に表示可能になった時には、音、振動又はランプの点灯による通知がなされていてもよい。
図8もまた、情報提供装置10による、健康情報の提示例を示す模式図である。例えば図7で示されるロック画面で、健康情報のセクション内にある「詳細」の表示をユーザが選択した場合に、スマートフォンのディスプレイ(ユーザインタフェース12に相当)にこのように表示される。または、このスマートフォンにインストールされている、情報提供装置10を実現させるためのアプリケーションを起動した場合に、健康情報がこのようにディスプレイに表示されてもよい。図8に示す例では、図7で提示されている、鬱行動に関する生体状態に関連する健康情報の詳細が表示されている。この健康情報には、「生体状態」の項目下に、ユーザの生体状態である鬱行動の現在(6月25日18時過ぎ)から半日程度の変化が含まれている。制御部18が行った鬱行動の判定の結果は、気分を反映する人の表情を模した図形を用いて提示されている。また、その下には、健康情報としての、この生体状態の判定の結果に対応した解説文が提示されている。例えば、気分が沈んでいて、また、その気分がいつまで続くのかという思いでさらに暗鬱になっていたユーザに、この健康情報を見せて気分が今後好転すると知らせることで、当該ユーザの暗鬱さを軽減させられる可能性がある。
上記はユーザに提示される健康情報の概念の理解を促すために示す一例である。他の例として、ある発作の起こる可能性についての見通しが健康情報として示されてもよい。この先の発症の可能性が高いことを示す健康情報の提示を受けたユーザは、例えば発症時に用いる薬を用意しておいたり、発作の起きやすくなる状況を避ける準備をしたりすることができる。
図7又は図8に示される健康情報の提示は、例えば、情報提供装置10にインストールされている、生体状態を判定し、この生体状態に関連する健康情報を提示するためのアプリケーションと、情報処理装置を実現する情報提供装置10のOS(Operating System)との協働によって行われる。
次に、感情推定部18aの動作について説明する。図9は、図5に例示する情報提供装置10の動作の手順における、感情状態の推定の手順例を示すフローチャートである。
(S40)情報提供装置10は、個体情報及び環境情報に対応する感情を、状態モデルのうちの感情推定モデルを用いて判定する。
(S61)感情推定部18aは、感情推定モデルとしての重回帰式を取得する。
(S62)感情推定部18aは、ステップS10で取得した個体情報、並びにステップS30で取得した環境情報の各項目の値を、ステップS61で取得した重回帰式に説明変数の値として代入し、演算する。感情推定部18aは、対象日時より以前の所定時間分の環境情報に基づいて、対象日時におけるユーザ(対象生体)の感情を表す感情指標を特定する。ここで、対象日時とは、その日時におけるユーザの感情を、推定する日時である。
(S63)ステップS62での演算の結果として得られた目的変数の値が、所定の閾値を超えるか否か判定する。目的変数の値が、所定の閾値以下の場合(S63でNo)、感情推定部18aは手順をステップS64へ進める。目的変数の値が、所定の閾値を超える場合(S63でYes)、感情推定部18aは手順をステップS65へ進める。
(S64)感情推定部18aは、この例における感情状態は改善するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
(S65)感情推定部18aは、この例における感情状態は増悪するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
なお、上記の状態の判定の手順例は、説明を簡単にするため単純化したものである。実際には、例えば健康情報の複数の項目について判定がなされてもよい。また、例えば気象情報としての気象予報に示される気象の将来的な変化に応じて判定を重ねて、症状の今後の時系列変化についての判定結果が取得されてもよい。
次に、行動予測部18bの動作について説明する。図10は、図5に例示する情報提供装置10の動作の手順における、行動の予測の手順例を示すフローチャートである。
(S40)情報提供装置10は、感情推定部18aにより推定されたユーザの感情を表す感情指標に対応する行動を、状態モデルのうちの行動予測モデルを用いて判定する。
(S71)行動予測部18bは、行動予測モデルとしての重回帰式を取得する。
(S72)行動予測部18bは、ステップS10で取得した個体情報、並びにステップS30で取得した環境情報の各項目の値を、ステップS71で取得した重回帰式に説明変数の値として代入し、演算する。
(S73)ステップS72での演算の結果として得られた値が、所定の閾値を超えるか否か判定する。ステップS72での演算の結果として得られた値が、所定の閾値以下の場合(S73でNo)、行動予測部18bは手順をステップS74へ進める。目的変数の値が、所定の閾値を超える場合(S73でYes)、行動予測部18bは手順をステップS75へ進める。
(S74)行動予測部18bは、この例における行動は改善するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
(S75)行動予測部18bは、この例における行動は悪化するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
ここで、行動が改善する、または、行動が悪化する、とは、あらかじめ定められた行動毎の指数が改善する、または、悪化することを示してもよい。例えば、行動予測部18bは、購買を行うという行動に対して、購買の頻度が多い状態を、購買という行動を表す指数が高い状態とし、購買の頻度が低い状態を、購買という行動を表す指数が低い状態とすることにより、購買という行動が改善する、とは、購買の頻度が高い状態を示す。
なお、上記の状態の判定の手順例は、説明を簡単にするため単純化したものである。実際には、例えば健康情報の複数の項目について判定がなされてもよい。また、例えば気象情報としての気象予報に示される気象の将来的な変化に応じて判定を重ねて、症状の今後の時系列変化についての判定結果が取得されてもよい。
続いて、健康判定部18cの動作を説明する。図11は、図5に例示する情報提供装置10の動作の手順における、健康状態の判定の手順例を示すフローチャートである。
(S40)情報提供装置10は、環境情報に対応する健康状態を、状態モデルのうちの健康影響モデルを用いて判定する。
(S81)健康判定部18cは、健康影響モデルとしての重回帰式を取得する。
(S82)健康判定部18cは、ステップS10で取得した個体情報、並びにステップS30で取得した環境情報の各項目の値を、ステップS81で取得した重回帰式に説明変数の値として代入し、演算する。
(S83)ステップS82での演算の結果として得られた目的変数の値が、所定の閾値を超えるか否か判定する。目的変数の値が、所定の閾値以下の場合(S83でNo)、健康判定部18cは手順をステップS84へ進める。目的変数の値が、所定の閾値を超える場合(S83でYes)、健康判定部18cは手順をステップS85へ進める。
(S84)健康判定部18cは、この例における症状は改善または寛解するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
(S85)健康判定部18cは、この例における症状は増悪するとの判定結果を取得して状態の判定を終える。
なお、上記の状態の判定の手順例は、説明を簡単にするため単純化したものである。実際には、例えば健康情報の複数の項目について判定がなされてもよい。また、例えば気象情報としての気象予報に示される気象の将来的な変化に応じて判定を重ねて、症状の今後の時系列変化についての判定結果が取得されてもよい。
(環境要因と健康状態との関連性)
ここで、上記のように構成される情報提供装置10が提供する健康情報の実効性の根拠となる、環境要因と健康状態との関連性について実例を用いて説明する。図12は、各種の環境要因を説明変数、男性の自殺の件数を目的変数として本発明者らが行った重回帰分析の結果を示す表である。
回帰係数は、各説明変数の所定値(変数によって異なる)が増すごとに自殺件数に与えた影響の大きさを示す。負の値の場合は、変数の所定値が増すごとに自殺件数が減ることを示す。P値は各環境要因の回帰係数の有意確率であり、5%を下回るもの、つまり統計学的に有意な関連性が見られると判断し得るものには値に下線を付している。
この表によれば、環境要因のうち、気圧、気温、F10.7 index、銀河宇宙線量、Hedonometer、及び雲量は、男性の自殺件数と統計学的に有意な関連性が見られる。なお、失業率は上記で述べたような気象又は宇宙天気の環境要因ではないが、自殺と統計学的に有意な関連性が見られるとの推測に基づきこの分析において説明変数に加えた。このように、本発明に係る情報提供装置に入力される情報として、気象又は宇宙天気に係る環境要因以外のものであっても、生体状態の判定の精度向上、又は判定し得る健康状態の種類の拡大に貢献し得るものは除外されず、また、さらに環境要因として扱うものに含めてもよい。
このような分析の結果に基づけば、情報提供装置10による、男性の自殺が発生する可能性という健康情報の判定には、例えば気圧、気温、F10.7 index、銀河宇宙線量、Hedonometer、雲量及び失業率の回帰係数を含む重回帰式が健康影響モデルとして利用可能である。
もうひとつ例を挙げる。図13は、各種の環境要因を説明変数、男性の交通事故による死亡数を目的変数として本発明者らが行った重回帰分析の結果を示す表である。値の読み方は上記の自殺の例と同様である。
この表によれば、環境要因のうち、銀河宇宙線量及びHedonometerは、男性の交通事故発生件数と統計学的に有意な関連性が見られる。
このような分析の結果に基づけば、情報提供装置10による、男性の交通事故が発生する可能性という健康情報の判定には、例えば銀河宇宙線量及びHedonometerの回帰係数を含む重回帰式が健康影響モデルとして利用可能である。
(変形例及び補足)
以上、一つ又は複数の態様に係る情報提供装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。以下、そのような変形例を例示する。また、実施の形態の中では触れなかった事項についての補足も以下に挙げる。
(1)上記実施の形態では、センサ21は情報提供装置10と別体の計測機器20の構成要素として説明されているが、センサ21は、情報提供装置10の一構成要素であってもよい。例えば情報提供装置10が活動量計で実現される場合、この活動量計が備えるセンサが上記のセンサ21に相当する。
(2)個体情報及び環境情報の上記実施の形態における情報提供装置10への入力経路は例でありこれに限定されない。例えば環境情報は、通信ネットワーク経由ではなく、ユーザインタフェース12を用いて入力されてもよい。また、情報提供装置10は、情報提供装置10に接続されるセンサを用いての計測の結果に基づく環境情報を取得してもよい。
(3)個体情報に含まれるものとして上記実施の形態の説明で挙げたものすべてが情報提供装置10で常に必須というわけではなく、上記実施の形態の説明で挙げたものに限定もされない。所望の健康状態の項目についての判定に用いられる個体情報は、その項目との関連性が認められるか否か、又はコスト、法規等に照らして適切に利用が可能であるかに応じて取捨選択が適宜可能である。
また例えば、個体情報のうち、生体情報又は遺伝情報のいずれか一方と、環境情報とを用いて健康状態の判定が行われてもよいし、個体情報を用いずに環境情報に含まれる、環境要因を示す指標のみから健康状態の判定が行われてもよい。
また、上記実施の形態の説明で挙げたものを用いて導出される他の指標値が個体情報として情報提供装置10に入力されてもよい。また、そのような他の指標値の導出が情報提供装置10で行われてもよい。例えば、心電図波形から連続する心拍を分析することによって得られる心拍変動が挙げられる。
(4)環境情報に含まれるものとして上記実施の形態の説明で挙げたものすべてが情報提供装置10で常に必須というわけではなく、また、上記実施の形態の説明で挙げたものに限定もされない。所望の生体状態の項目についての判定に用いられる気象情報、宇宙天気情報又はシューマン共振の情報は、その項目と関連性が認められるか否か、又はコスト、法規等に照らして適切に利用が可能であるかに応じて取捨選択が適宜可能である。また、上記実施の形態の説明で挙げたものを用いて導出される他の指標値が環境情報として情報提供装置10に入力されてもよい。また、そのような他の指標値の導出が情報提供装置10で行われてもよい。上記実施の形態の説明で挙げたもの以外の例として、例えば大気中物質が環境要因として用いられてもよい。ここでいう大気中物質の例としては、二酸化硫黄(SO2)、一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)、粒子状物質(いわゆるPM(particulate matter)10、PM2.5等)、窒素酸化物(NOx)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、全炭化水素(THC:Total Hydrocarbons)、非メタン炭化水素(NMHC:Non-Methane Hydrocarbons)、メタン(CH4)が挙げられる。図15は、本発明者らが得たデータに基づく、時期と場所が互いに対応する大気中物質の濃度と女性の自殺企図の発生件数(月平均)との線形回帰分析の結果を示す表である。この結果によれば、大気中の一酸化炭素濃度と女性の自殺企図の発生との間で他の大気中物質よりも強い、有意な関連性が見られた。この関連性は、大気中の一酸化炭素の、自殺又は自殺企図の発生の可能性の判定材料としての利用可能性を示唆する。なお、宇宙天気情報には、F10.7インデックス、太陽活動、地磁気活動、プロトン現象、放射線帯電子、電離圏嵐、デリンジャー現象およびスポラディックE層等が含まれてもよい。また、環境要因には、ダイオキシン類、DDT、DDE、殺虫剤、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、ジエチルスチルベストロール(DES)、ビスフェノールA、ノニルフェノール、スズ、鉛、カドミウム、ベンツピレン、植物エストロゲン、フラン類、水銀等が含まれてもよい。
(5)上記実施の形態の説明では、情報提供装置10は時刻情報を取得してサーバ50に送信しているが、これに限定されない。例えば、情報提供システム1ではサーバ50から提供される環境情報の時期的範囲が固定されている場合(例:最新のもののみ)場合、時刻情報は必須ではない。
(6)図3に示す例では、環境情報は凡そ連続的な観測値であるが、これに限定されない。例えば観測値を所定の基準に照らして決定するレベルの情報であってもよい。具体例としては、非特許文献18で示されるような、レベルを示す離散値の情報であってもよい。
(7)上記実施の形態の説明で挙げた生体状態のデータは一部の例であり、その他の生体の健康状態又は生死に関わる事象についての利用可能な環境要因との関連性を示す統計データも用いることができる。例えば、上記でデータを示した自殺又は故意の自傷による死亡数、交通事故による死亡数、不慮の損傷その他の外因による死亡数、加害に基づく傷害又は死亡による死亡数、各種の疾患による死亡数のデータを用いることができる。図14は、そのような統計データの例であり、示す時期と場所とが対応する環境要因の実績データと死因の実績データとを用いて本発明者らが得た、両者間の統計学的に有意な関連性の有無を示す表である。各死因の左の列は男性、右の列は女性についての結果を示す。表中のプラス符号は正の有意な関連性、マイナス符号は負の有意な関連性があったことを示す。また、N.S.は有意な関連性がなかったことを示す。このように、何らかの環境要因と有意な関連性が見られる死因には、事故・事件のみならず、感染症、代謝異常、循環器疾患等の各種の疾患も含まれる。
このような統計データの利用例として、各死因、例えば自殺による死亡数を目的変数、環境情報の各項目を説明変数として取得した重回帰式を用いることで、環境情報に基づいて、近い将来に起こり得る自殺の発生件数を生体状態の判定結果として取得することができる。この判定結果が示す発生件数が大きい場合、例えば自殺しがちな状態にある人の家族又は関わりのある医療関係者に、注意を促す内容の健康情報が提供されてもよい。また、交通事故による死亡数が目的変数の場合には、その判定結果が示す数が大きいときに、生活で自動車を運転する人、諸交通機関の関係者、警察等の交通安全関係者等に注意を促す内容の健康情報が提供されてもよい。各種の疾患による死亡数を目的変数とする場合には、その患者又はその予備群の関係者に注意を促す内容の健康情報が提供されてもよい。
なお、上記には別例として死亡数ばかりを挙げたが、他の各種の疾患の発症、治癒、増悪、改善又は寛解の環境要因との関連性を示す統計データも、生体状態のデータとして利用して健康影響モデルを生成することができる。
(8)上記実施の形態の説明では、個体情報に含まれる情報として生体情報及び遺伝情報を挙げたがこれに限定されない。例えば個人のエピジェネティックな情報が利用されてもよい。
(9)上記実施の形態の説明でも簡単に触れたが、環境情報に示されるものには、観測場所でのと、その状態が生体状態の判定の対象である生体に影響を及ぼす場所に到達するまでに時間差がある場合がある。例えば太陽活動に起こった変化の影響が地球に到達するのは、人工衛星で計測された時点からさらに数分~数日間を要する。このようなものについては、状態モデルの生成、及び生体状態の判定に用いられるデータは、生体情報の取得のために行われた計測との時間差を考慮に入れた上での対応するデータが用いられる。
(10)上記実施の形態では、環境情報が示す環境要因の状態が生体の心身にもたらす影響を受けた生体の生体状態を判定するためのツールとして状態モデルが用いられている。一方で環境情報が生体である人間の心身にもたらす影響は、そのような影響を受けた人間の行動の表れとして経済活動にも影響があるといわれ、景気循環と太陽黒点の周期との関連を主張する説もある(非特許文献19参照)。そこで、状態モデルに替えて環境情報が示す環境要因の状態と経済影響モデルとを用いることで、現在又は将来の経済動向を判定し、この経済動向に関連する経済情報が取得されてもよい。経済影響モデルは、過去に計測された環境要因の状態を示すデータと、当該環境要因の状態の計測が実行された場所及び時期に対応する場所及び時期に観測された経済動向のデータとを用意して、上記の状態モデルと同様に、重回帰式等の統計モデル又は機械学習の推論モデルとして取得される。また、ここでの経済動向のデータとは、例えば株価、為替、物価等の市況に関する数値の他、雇用(失業率)、所得、倒産等に関する数値、特定の分野、地域若しくは規模の事業の業績、特定の商材の販売数又は売上である。このような経済影響モデルを用いて判定された経済動向に関連する経済情報は、例えば政策若しくは事業方針の決定、又は広告の投入など販売促進施策の実行タイミングの決定等に用いることができる。これにより、景気の向上若しくは悪化の抑制、利益若しくは投資の費用対効果の向上、又は損失の回避等の効果をもたらし得る。
また、上記実施の形態において、環境情報が示す環境要因の状態が生体の心身にもたらす影響を受けた生体状態を判定する生体は、ヒトに限らない。例えば、環境情報が示す環境要因の状態が生体の心身にもたらす影響を受けた生体状態を判定する生体は、カメムシであってもよい。図16は、カメムシ発生数と環境要因との関係を示した表である。図16に示されるように、カメムシ発生数は、銀河宇宙線量およびKp_10と統計学的に有意な相関関係を持つ。具体的には、カメムシ発生数は、銀河宇宙線量との相関係数は、0.64714であり、Kp_10との相関係数は、-0.66155である。なお、ここで、Kp_10はK指数であり、地磁気擾乱を表す指数である。実施の形態に係る情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、この相関関係を状態モデルに反映してもよい。そして、実施の形態に係る情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、カメムシ発生数と環境要因との相関関係等を反映させた状態モデルを用いて、カメムシ発生数を予測し、予測した結果を出力してもよい。これにより、実施の形態に係る情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、農業生産現場における農薬散布量を低減させることができる可能性がある。なお、ここでは、カメムシ発生数を予測するものとしたが、予測する対象の生体は、カメムシに限らない。環境要因との相関関係を用いた予測の対象となる生体は、他の害虫でもよい。ここで、予測に利用する環境要因は、例えば、銀河宇宙線量およびKp_10の他に、F10.7インデックス、太陽活動、地磁気活動、プロトン現象、放射線帯電子、電離圏嵐、デリンジャー現象、スポラディックE層、気圧、降水量、気温、湿度、風速、日照時間、雲量および月齢等を含んでもよい。また、実施の形態に係る情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、予測された害虫の発生数ではなく、害虫の発生数から推定される農薬散布量等を出力してもよい。また、実施の形態の状態モデルは、銀河宇宙線量またはK指数等の宇宙天気を含む環境要因から、害虫発生数を予測し、予測した結果をもとに、農作物の望ましい収穫時期等を推測して出力してもよい。
(11)ここまでに説明した本発明では、環境要因の状態と生体の健康又は経済動向の変化との関連性を過去の実績から見出し、この関連性を利用して現在又は将来における生体の健康又は経済動向の判定がなされているが、本発明の適用は環境要因との関連性が見出せるものであれば他の対象にも広げ得る。例えば流行歌の歌詞、ブログ又はSNS(Social Networking Service)の投稿等の、その時期の大衆の心情が表れ得る言語表現に含まれる。
Twitterに含まれる語彙の頻度と重み付けから幸福度(hedonometer)を測る手法が提案されている(非特許文献20参照)。この幸福度と環境要因との変化との関連性が過去の実績から見出されれば、本発明を適用することができる。Hedonometer値が、男性の「故意の自傷及び自殺」を予測する環境要因の一つである。図17は、本発明者らが得た、示す時期と場所とが対応するhedonometerの実績データと環境要因の実績データとを用いた重回帰分析の結果を示す表である。これらは互いに全く異種の現象に関するデータであり、両者間には統計学的に有意に強い関連性が見られないという結果が通常は予想される。しかしながら、環境要因のうち銀河宇宙線量、F10.7 index、シューマン共振強度、各月は、統計学的に有意な関連性が見られた。このような関連性は、銀銀河宇宙線量、F10.7 index、シューマン共振強度、各月の、hedonometerの推定材料としての利用可能性を示唆する。さらに、各月と幸福度は、一貫して統計学的に有意な相関が見られたことから、何らかの周期性が見られることが示唆された。また、これにより取得された現在又は将来の幸福度の判定の結果は、上述の健康状態の判定又は経済動向の判定の結果と組み合わせて用いられてもよい。これにより、より適切な健康情報又は経済動向情報の取得が可能になる。また、環境要因に、シューマン共振の代わりに雷数が含まれてもよい。
図18は、環境要因から関連性を用いて幸福度を算出する過程を示した概略図である。例えば、感情推定部18aは、図14に示された環境要因同士および環境要因と幸福度との重回帰分析の結果や相関係数を利用して、幸福度を算出する。具体的には、感情推定部18aは、K指数、シューマン共振強度およびF10.7 Indexの幸福度との重回帰分析の結果や相関係数を用いて、幸福度を算出する。K指数およびシューマン共振強度は、それぞれBulk Speedおよび銀河宇宙線量と相関関係を持つため、幸福度は、Bulk Speedおよび銀河宇宙線量から、間接的に求められてもよい。ここで、挙げられた環境要因は、幸福度の算出にすべて使用されなくてもよく、感情推定部18aは、Bulk SpeedからK指数を算出して、幸福度を算出するルート、銀河宇宙線量からシューマン共振を算出して、幸福度を算出するルート、または、F10.7 Indexから幸福度を算出するルートのいずれかを用いて幸福度を算出してもよい。
なお、感情推定部18aは、銀河宇宙線量から直接幸福度を算出してもよい。また、感情推定部18aは、Bulk Speedおよび銀河宇宙線量の間の相関係数、または、銀河宇宙線量およびF10.7 Indexの間の相関係数を、幸福度の算出に利用してもよい。
図19は、環境要因から重回帰分析の結果や相関を用いて算出された幸福度から、ユーザの行動を予測する過程を示した概略図である。環境要因から幸福度が算出される過程は、図14で説明された内容と同様であるため、説明を省略する。行動予測部18bは、幸福度との重回帰分析の結果や相関係数に基づいて、ユーザの行動を予測する。行動の予測結果は、例えば、男性の「故意の自傷及び自殺」による死亡数といった指標で表されてもよい。また、行動予測部18bは、Bulk Speed、銀河宇宙線量、および、F10.7 Indexといった、ユーザの行動と統計学的に有意な関連性を持つ環境要因から直接、ユーザの行動を予測してもよい。
ここで、予測の対象となるユーザの行動は、例えば、故意の自傷及び自殺による死亡数、交通事故による死亡数、不慮の損傷にその他の外因による死亡数、不慮または故意であると決定されない事件による死亡数、加害に基づく障害及び死亡による死亡数、および、各疾患による死亡数といった指標で合わされる行動を含む。また、予測の対象となるユーザの行動は、購買行動等を含んでもよいし、株式市場の値動きなど、1人のユーザに限定された行動ではないものでもよい。
なお、図18および図19で示された予測の過程は一例であり、必ずしも図18及び図19で示されたルートおよび数値がこのまま用いられなくてもよい。また、Hedonometerの値は、集団の心理状態と関係性があると考えられ、Hedonometerの値は、環境要因の一つである集団の心理状態の推定の根拠となりうる。
図20は、時間を考慮した自殺と環境要因との因果関係を示す表である。図20では、時間を考慮した縦断的研究において、コントロール群を置き、因果関係を主張できる、ケースクロスオーバーデザインを用いた解析の結果が示されている。台湾の医療保険データを用いて、自殺企図のタイプと性別を分けて行われた解析によると、女性の暴力的自殺および非暴力的自殺は、プロトンフラックスと統計学的に有意な関連性が見られる。このことから、宇宙天気の一つであるプロトンフラックスが女性の自殺企図に影響を与える因果関係が示唆される。さらに、女性の非暴力的な自殺と気温が統計学的に有意な関連性が見られることから、気象と宇宙天気との、組み合わせの有効性が示された。よって、本実施の形態にかかる情報提供装置等による状態の推定および予測は、実証的に裏付けられうる。
また、大規模な地震の発生前にはその震央地周辺で、気象又は宇宙天気に変化が現れたとする報告が数多く存在する。その中でも宇宙天気に関係する電離層や大気中における電磁気学的現象に関しては、地震との統計的関連性が示されている(例えば非特許文献21、22参照)。したがって、地震と環境要因の変化との関連性が過去の実績から見出されれば、本発明を適用することができる。さらに、地震と、地震発生前の精神疾患や行動との間にも関連性を見出した報告がされている。したがって、これにより取得された現在又は将来の地震発生の判定の結果は、上述の健康状態や、幸福度、経済動向の判定の結果と組み合わせて用いることで、より適切な健康情報や経済動向情報、地震発生予測情報の取得が可能になる。
また、生体の健康状態の判定に用い得る情報のさらなる例としては、環境DNA及び環境RNA(以下、少なくとも一方を指して環境遺伝子ともいう)から得られる情報が挙げ得る。生体を取り巻く環境で採取される環境遺伝子からは、例えば生体の個体数、地理的分布、及び集団としてのエピジェネティックな情報等が取得される。このような情報を示す環境遺伝子のデータと生体の健康状態のデータとにさらに基づくよう生成した健康影響モデルを用いて、判定の対象である生体を取り巻く環境遺伝子から得らえる情報(本願における環境遺伝子情報の例)に対応する健康状態を導出することで、当該対象の生体の健康状態の判定が行われてもよい。エピジェネティックな情報の例として、生体の疾患の発生、凶暴性等の気質的変化の傾向に関するものが挙げられる。疾患の発生については、例えばワクチン等又は特効薬の準備計画、人の疾患であれば、医療保険制度での対応への利用可能性がある。また、やや極端な例ではあるが、人の凶暴性の昂進が捉えられた場合には、凶悪な犯罪の抑止策の立案実施等への利用可能性がある。なお、このような情報は、生体の健康のみならず、上述のような経済動向の判定にも用い得る可能性がある。例えば購買行動の発現と関連性の高い変化がエピジェネティックな情報として取得されるケースが考えられる。
また、上述したhedonometerのような、生体の集団の心理状態の情報も生体の状態の判定に用い得る情報の例に含まれる。このような生体の集団の心理状態の情報のデータと生体の健康状態のデータとにさらに基づくよう生成した状態モデルを用いて、判定の対象である生体を含む集団の心理状態の情報(本願における集団心理状態情報の例)に対応する健康状態を導出することで、当該対象の生体の健康状態の判定が行われてもよい。
(12)上述の状態モデルは、単一のモデルであることに限定されない。例えば、環境要因の状態を示すデータ及び生体の状態を示すデータに基づく状態モデルと、環境遺伝子のデータ及び生体の状態を示すデータに基づく状態モデルとは個別の状態モデルであってもよい。ユーザには、それぞれの状態モデルを用いて行われた判定の結果の個々に基づく情報が提示されてもよいし、両方の結果にさらに基づいて導出される情報が提示されてもよい。また、実施の形態における情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、ユーザから、状態モデルが予測した日時である対象日時におけるユーザの状態に関するフィードバックを取得してもよい。具体的には、状態モデルは、ユーザから、対象日時における感情(喜怒哀楽、抑鬱、不安、怠慢、非活動的快、集中、敵意、活動的快、親和または驚愕等を含む)、または、疾患の憎悪若しくは発症に関する情報を取得する。実施の形態における情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、上記の状態に関する情報を、ユーザから専用のアプリケーションを通じて取得したり、ユーザのSNSを分析することで取得したりしてもよい。ユーザのSNSは、統計解析またはディープラーニング等の機械学習等で分析されてもよい。そして、実施の形態における情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、取得したユーザからのフィードバックに基づいて、状態モデルを学習によって、最適化してもよい。最適化は、逐次的に行われてもよく、フィードバックが取得される毎に、その都度行われてもよい。これにより、実施の形態における情報提供装置、情報提供方法およびプログラムは、ユーザの状態を個人レベルで、精度良く予測することができる。
また、本開示の実施の形態における情報提供装置は、状態モデルを用いて、個人(または集団)の感情指標を用いて、周期性を同定した上で個人(または集団)の心理状態または行動を予測してもよい。例えば、本開示の実施の形態における情報提供装置は、過去のデータまたは予測された心理状態または行動に基づいて、個人(または集団)の周期性を同定する。そして、本開示の実施の形態における情報提供装置は、同定された周期性に基づいて、個人(または集団)の心理状態または行動を予測する。
(13)上述の情報提示装置の構成要素は、例えば、それぞれがプロセッサ及びメモリを備え、互いに通信可能な複数台のコンピュータが協調して動作し、上述の各情報処理装置と同様の機能を提供する情報提供システムの構成要素として実現されてもよい。この場合、これらの構成要素は、例えば、これらのコンピュータが備えるプロセッサの一部又は全部が、これらのコンピュータが備えるメモリの一部又は全部に記憶される1個又は複数個のプログラムを実行することで実現される。
(14)本発明の一態様は、上述の情報提示装置又は情報提示システムだけではなく、情報提示装置に含まれる特徴的な構成要素の機能による処理をステップとする情報提示方法であってもよい。この情報提示方法は、例えば、図5のフローチャートを用いて上述した情報提示方法である。また、本発明の一態様は、このような情報提示方法に含まれる特徴的な各ステップを情報処理装置が備えるプロセッサに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
(15)上記実施の形態の説明において、健康状態の判定対象であるユーザが形態又は装着する情報提供装置10が備える機能的構成要素として実現される例を挙げた制御部18及び記憶部16の一方又は両方は、情報提供装置10と通信可能な外部の装置に備えられてもよい。例えば情報提供装置10と通信ネットワークを介して通信可能な、クラウドサービスを提供するサーバにおいて実現されてもよい。例えばクラウドサービスを提供するサーバに制御部18及び記憶部16があるとする。この場合、センサ21を用いた計測結果に基づく生体情報は、随時、又は健康状態の判定対象であるユーザの操作によって当該サーバに送信され、個体情報として記憶部16で保持される。そして、当該サーバでは、制御部18によってこの生体情報を含む個体情報とその他の必要な情報とを用いて健康状態の判定が実行され、さらに判定結果に対応する健康情報が取得される。この健康情報は、当該ユーザのみならず、広義のユーザ、つまり当該ユーザの家族又は主治医等の情報提供装置10である情報処理装置に送信されて提供されてもよい。または、これらのユーザは健康情報のデータの場所の通知を受け、情報提供装置10を通じてその場所にアクセスして健康情報の提供を受けてもよい。つまりは、ユーザは健康情報のインターネット上のURL(Uniform Resource Locator)の通知を受け、情報提供装置10にインストールされている専用のアプリケーション又は汎用のウェブブラウザを用いて当該URLにアクセスし、健康情報の提供を受けてもよい。これもまた、本発明者らが考える情報提供システムの実現形態のひとつである。
(16)本発明に係る情報提示装置等が市場においてとり得る形は、図7及び図8に例示するような健康情報の提供手段に限定されない。例えば、占いサービスの提供手段のように、よりカジュアルな形をとってもよい。ただし、占いを名乗るものではあっても、統計学に裏打ちされる因果関係や相関関係等を利用するものであるため、従来のものに比べてより信ぴょう性の高いものとなり得る。具体例としては、自分若しくは周囲の人々の気分及び体調、又はさらにこれらに基づく人間関係、好ましくない状況を好転させるような持ち物(ラッキーアイテム)又は行動に関するアドバイスを提示する占いサービスの提供手段としての展開が考え得る。また一方では、治験を重ね、薬事承認を得た上での医療機器としての形もとり得る。例えば、患者に見られた症状の波と環境要因等との関連性に基づく疾病の診断ツール、又は発症のコントロール等のための機器としての展開が考え得る。また、医療機関又は研究機関においては、治験又は臨床試験の被験者登録の効率化のために、環境要因の予測等に基づいて推定する各種疾病の患者発生の時期及び場所の情報を得るツールとして本発明に係る情報提示装置が利用され得る。