JP7367902B1 - 反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法 - Google Patents

反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

反射型マスクブランクは、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。前記保護膜は、Rhを50at%以上含有する。前記保護膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像することで前記保護膜と前記多層反射膜の界面に平行な帯状のグレースケール画像を取得し、前記グレースケール画像の長手方向における前記グレースケール画像の輝度プロファイルを作成すると、前記グレースケール画像の長手方向100nm当たりの前記輝度プロファイルのピーク数が50以上である。

Description

本開示は、反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法に関する。
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、極端紫外線(Extreme Ultra-Violet:EUV)を用いた露光技術であるEUVリソグラフィー(EUVL)が開発されている。EUVとは、軟X線および真空紫外線を含み、具体的には波長が0.2nm~100nm程度の光のことである。現時点では、13.5nm程度の波長のEUVが主に検討されている。
EUVLでは、反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、ガラス基板などの基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護する保護膜と、EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。吸収膜には、開口パターンが形成される。EUVLでは、吸収膜の開口パターンを半導体基板などの対象基板に転写する。転写することは、縮小して転写することを含む。
特許文献1の保護膜は、Ruを含有し、さらにAl、Y、Zr、RhおよびHfから選択される少なくとも1つの添加材料を含有する。添加材料の含有量は5at%以上50at%未満である。つまり、特許文献1の保護膜の主成分はRuである。特許文献2にも同様の保護膜が開示されている。
日本国特開2021-056502号公報 日本国特開2014-170931号公報
保護膜は、エッチングガスを用いて吸収膜に開口パターンを形成する際に、エッチングガスから多層反射膜を保護する。エッチングガスとしては、ハロゲン系ガス、酸素系ガスまたはこれらの混合ガスが検討されている。
保護膜の主成分がRuである場合、保護膜のエッチング耐性が十分ではなかった。特にエッチングガスとして酸素系ガスが用いられる場合(混合ガスが用いられる場合を含む。)に、保護膜のエッチング耐性が十分ではなかった。
本開示の一態様は、保護膜のエッチング耐性を向上する、技術を提供する。
本開示の一態様に係る反射型マスクブランクは、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する。前記保護膜は、Rhを50at%以上含有する。前記保護膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像することで前記保護膜と前記多層反射膜の界面に平行な帯状のグレースケール画像を取得し、前記グレースケール画像の長手方向における前記グレースケール画像の輝度プロファイルを作成すると、前記グレースケール画像の長手方向100nm当たりの前記輝度プロファイルのピーク数が50以上である。
本開示の一態様によれば、保護膜の主成分としてRhを用いると共に保護膜の緻密性を向上することで、保護膜のエッチング耐性を向上できる。
図1は、一実施形態に係る反射型マスクブランクを示す断面図である。 図2は、一実施形態に係る反射型マスクを示す断面図である。 図3は、図2の反射型マスクで反射されるEUV光の一例を示す断面図である。 図4は、変形例に係る反射型マスクブランクを示す断面図である。 図5は、表1の例1の多層反射膜と保護膜のTEM画像を示す図である。 図6は、図5において破線VIで囲んだ領域の拡大図である。 図7は、図6の輝度プロファイルを示す図である。 図8は、一実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。 図9は、一実施形態に係る反射型マスクの製造方法を示すフローチャートである。
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一のまたは対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
図1~図6において、X軸方向とY軸方向とZ軸方向は互いに直交する方向である。Z軸方向は、基板10の第1主面10aに対して垂直な方向である。X軸方向は、EUV光の入射面(入射光線と反射光線を含む面)に直交する方向である。図3に示すように、X軸方向から見たときに、入射光線はZ軸負方向に向かうほどY軸正方向に傾斜し、反射光線はZ軸正方向に向かうほどY軸正方向に傾斜する。
図1を参照して、一実施形態に係る反射型マスクブランク1について説明する。反射型マスクブランク1は、例えば、基板10と、多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、エッチングマスク膜14と、をこの順番で有する。多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、エッチングマスク膜14とは、この順番で、基板10の第1主面10aに形成される。なお、反射型マスクブランク1は、少なくとも、基板10と、多層反射膜11と、保護膜12と、吸収膜13と、を有していればよい。
反射型マスクブランク1は、図1に図示しない機能膜を更に有してもよい。例えば、反射型マスクブランク1は、基板10を基準として、多層反射膜11とは反対側に、導電膜を有してもよい。導電膜は、基板10の第2主面10bに形成される。第2主面10bは、第1主面10aとは反対向きの面である。導電膜は、例えば反射型マスク2を露光装置の静電チャックに吸着するのに用いられる。
反射型マスクブランク1は、図示しないが、保護膜12と吸収膜13の間にバッファ膜を有してもよい。バッファ膜は、吸収膜13に開口パターン13aを形成するエッチングガスから、保護膜12を保護する。バッファ膜は、吸収膜13よりも緩やかにエッチングされる。バッファ膜は、保護膜12とは異なり、最終的に吸収膜13の開口パターン13aと同一の開口パターンを有することになる。
次に、図2および図3を参照して、一実施形態に係る反射型マスク2について説明する。反射型マスク2は、例えば、図1に示す反射型マスクブランク1を用いて作製され、吸収膜13に開口パターン13aを含む。なお、図1に示すエッチングマスク膜14は、吸収膜13に開口パターン13aを形成した後に除去される。
EUVLでは、吸収膜13の開口パターン13aを半導体基板などの対象基板に転写する。転写することは、縮小して転写することを含む。以下、基板10、多層反射膜11、保護膜12、吸収膜13、およびエッチングマスク膜14について、この順番で説明する。
基板10は、例えばガラス基板である。基板10の材質は、TiOを含有する石英ガラスが好ましい。石英ガラスは、一般的なソーダライムガラスに比べて、線膨張係数が小さく、温度変化による寸法変化が小さい。石英ガラスは、SiOを80質量%~95質量%、TiOを4質量%~17質量%含んでよい。TiO含有量が4質量%~17質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。石英ガラスは、SiOおよびTiO以外の第三成分または不純物を含んでもよい。なお、基板10の材質は、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、シリコン、または金属等であってもよい。
基板10は、第1主面10aと、第1主面10aとは反対向きの第2主面10bと、を有する。第1主面10aには、多層反射膜11などが形成される。平面視(Z軸方向視)にて基板10のサイズは、例えば縦152mm、横152mmである。縦寸法および横寸法は、152mm以上であってもよい。第1主面10aと第2主面10bは、各々の中央に、例えば正方形の品質保証領域を有する。品質保証領域のサイズは、例えば縦142mm、横142mmである。第1主面10aの品質保証領域は、0.150nm以下の二乗平均粗さ(RMS)と、100nm以下の平坦度と、を有することが好ましい。また、第1主面10aの品質保証領域は、位相欠陥を生じさせる欠点を有しないことが好ましい。
多層反射膜11は、EUV光を反射する。多層反射膜11は、例えば高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものである。高屈折率層の材質は例えばシリコン(Si)であり、低屈折率層の材質は例えばモリブデン(Mo)であり、Mo/Si多層反射膜が用いられる。なお、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜なども、多層反射膜11として使用可能である。
多層反射膜11を構成する各層の膜厚および層の繰り返し単位の数は、各層の材質、およびEUV光に対する反射率に応じて適宜選択できる。多層反射膜11は、Mo/Si多層反射膜である場合、入射角θ(図3参照)が6°であるEUV光に対して60%以上の反射率を達成するには、膜厚2.3±0.1nmのMo膜と、膜厚4.5±0.1nmのSi膜とを繰り返し単位数が30以上60以下になるように積層すればよい。多層反射膜11は、入射角θが6°であるEUV光に対して60%以上の反射率を有することが好ましい。反射率は、より好ましくは65%以上である。
多層反射膜11を構成する各層の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、またはイオンビームスパッタリング法などである。イオンビームスパッタリング法を用いてMo/Si多層反射膜を形成する場合、Mo膜とSi膜の各々の成膜条件の一例は下記の通りである。
<Si膜の成膜条件>
ターゲット:Siターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.013Pa~0.027Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.030nm/sec~0.300nm/sec、
Si膜の膜厚:4.5±0.1nm。
<Mo膜の成膜条件>
ターゲット:Moターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.013Pa~0.027Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.030nm/sec~0.300nm/sec、
Mo膜の膜厚:2.3±0.1nm。
<Si膜とMo膜の繰り返し単位>
繰り返し単位数:30~60(好ましくは40~50)。
保護膜12は、多層反射膜11と吸収膜13の間に形成され、多層反射膜11を保護する。保護膜12は、吸収膜13に開口パターン13a(図2参照)を形成するエッチングガスから多層反射膜11を保護する。保護膜12は、反射型マスク2の製造の際に除去されずに、多層反射膜11の上に残る。
エッチングガスは、例えばハロゲン系ガス、酸素系ガス、またはこれらの混合ガスである。ハロゲン系ガスとしては、塩素系ガスと、フッ素系ガスと、が挙げられる。塩素系ガスは、例えばClガス、SiClガス、CHClガス、CClガス、BClガスまたはこれらの混合ガスである。フッ素系ガスは、例えばCFガス、CHFガス、SFガス、BFガス、XeFガスまたはこれらの混合ガスである。酸素系ガスは、Oガス、Oガスまたはこれらの混合ガスである。酸素系ガスは、吸収膜13の主成分がルテニウム(Ru)である場合に好適に用いられる。
エッチングガスによる保護膜12のエッチング速度ER2に対する、エッチングガスによる吸収膜13のエッチング速度ER1の比(ER1/ER2)を、選択比とも呼ぶ。選択比が大きいほど、吸収膜13の加工性が良い。選択比は、好ましくは10以上であり、より好ましくは30以上である。選択比は、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。
保護膜12は、Rhを50at%以上100at%以下含有する。保護膜12は、生産性の観点から好ましくは図1などに示すように単層からなるが、多機能化の観点から図4に示すように複数層からなってもよい。例えば、保護膜12は下層12Lと上層12Uとを有してもよい。下層12Lと上層12Uとは、この順番で多層反射膜11の上に形成される。いずれにしろ、保護膜12が全体としてRhを50at%以上含有すればよい。
保護膜12は、Rhを主成分として含有する。保護膜12の主成分としてRuの代わりにRhを用いることで、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。特にエッチングガスとして酸素系ガスが用いられる場合(混合ガスが用いられる場合を含む。)に、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。
また、保護膜12の主成分としてRuの代わりにRhを用いることで、硫酸過水に対する耐性も向上できる。硫酸過水は、後述するレジスト膜の除去、または反射型マスク2の洗浄などに用いられる。さらに、保護膜12の主成分としてRuの代わりにRhを用いることで、EUV光に対する反射率低下を抑制できる。
保護膜12は、後述するグレースケール画像の長手方向100nm当たりの輝度プロファイルのピーク数Npが50以上である。以下、グレースケール画像の長手方向100nm当たりの輝度プロファイルのピーク数Npを、単にピーク数Npとも記載する。
グレースケール画像は、保護膜12の断面を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で撮像することで得られる。TEMの電子の加速電圧は、例えば200kVである。グレースケール画像は、例えば、諧調が256段階であり、倍率が250万倍であり、解像度が0.16nm/pixelである。
TEMで撮像するグレースケール画像は、図5に示すように保護膜12の断面の他に、多層反射膜11の断面を含んでもよい。輝度プロファイルを作成するグレースケール画像(図5において破線VIで囲む領域の画像)は、保護膜12と多層反射膜11の界面に平行な帯状であって、保護膜12の厚さ方向中心線上で切り出される。
輝度プロファイルを作成するグレースケール画像は、縦方向寸法が1nmであって、横方向寸法が74nmである。縦方向とは、保護膜12と多層反射膜11の界面に垂直な方向(Z軸方向)である。横方向とは、保護膜12と多層反射膜11の界面に平行な方向(Y軸方向またはX軸方向)である。なお、横方向寸法は、60nm以上であればよい。
輝度プロファイルは、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)が配布するImageJ(バージョン1.53e)のPlot profileという機能を用いて作成する。ImageJは、オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェアである。
輝度プロファイルの輝度は、縦方向の1nmの平均値として出力される。輝度プロファイルは、最小二乗法による多項式近似により平滑化する。平滑化には、Python 3を使用し、Savitzky-Golay フィルタを使用する。前記フィルタは、Pythonコード中では以下のように表記される。
savgol_filter(x,y,z)
x: 輝度
y: window_length(平滑化の際のフィルタの粗さ)
z: polynominal_order(平滑化の際に使用する多項式近似の次数)
xは、TEM像より前記横方向に向けて取得した輝度プロファイル中の全ての輝度である。yは11である。zは5である。
図7に、平滑化後の輝度プロファイルの一例を示す。図7において、横軸はグレースケール画像の長手方向位置を表し、縦軸は輝度の大きさを表し、黒丸はピークの位置を表す。平滑化後の輝度プロファイルのピークは、scipy.signal.argrelmaxにより検出する。signal.argrelmaxのorder値は2である。
上記ピーク数Npは、下記式(1)
Np=Np×(100/LX0)・・・(1)
を用いて算出する。上記式(1)中、Npは輝度プロファイルのピーク数、LX0は輝度プロファイルの横方向寸法(単位:nm)である。LX0は、例えば74nmである。なお、LX0は、60nm以上であればよい。
TEMで撮像するグレースケール画像では、結晶内部と結晶粒界とで画像の明るさが異なる。画像において結晶粒界は結晶内部よりも明るい。保護膜12が緻密であるほど、結晶粒径が小さく、結晶粒界が多く、ピーク数Npが多い。そして、保護膜12が緻密であるほど、エッチング耐性が良い。従って、ピーク数Npが多いほど、エッチング耐性が良い。ピーク数Npは、好ましくは50以上であり、より好ましくは55以上である。また、ピーク数Npは、好ましくは120以下であり、より好ましくは100以下である。
本願発明者の知見によれば、保護膜12の主成分がRhである場合、マグネトロンスパッタリング法で多層反射膜11を形成した後に、イオンビームスパッタリング法で保護膜12を形成すると、保護膜12の緻密性が低く、ピーク数Npが50未満になってしまう。なお、保護膜12の主成分がRuである場合、マグネトロンスパッタリング法で多層反射膜11を形成した後に、イオンビームスパッタリング法で保護膜12を形成しても、保護膜12の緻密性が高く、ピーク数Npが50以上になる。
多層反射膜11と保護膜12とを異なる方法で成膜する場合、多層反射膜11の成膜に用いる真空チャンバーと、保護膜12の成膜に用いる真空チャンバーとが別々に設けられる。そのため、多層反射膜11の成膜後、保護膜12の成膜前に、多層反射膜11が大気に曝露され、多層反射膜11の最上層が酸化されてしまう。多層反射膜11の最上層とは、多層反射膜11を構成する複数層のうち、保護膜12に接する層のことである。保護膜12の主成分がRhである場合、保護膜12の主成分がRuである場合とは異なり、多層反射膜11の最上層が酸化されると、保護膜12の緻密性が低くなると考えられる。
本願発明者は、詳しくは実施例の欄で説明するが、保護膜12の主成分がRhである場合であっても、多層反射膜11と保護膜12をこの順番で同じ真空チャンバー内で成膜することで、保護膜12の緻密性を向上できることを突き止めた。つまり、本願発明者は、保護膜12の主成分がRhである場合であっても、多層反射膜11の大気暴露を抑制し、多層反射膜11の最上層の酸化を抑制することで、保護膜12の緻密性を向上できることを突き止めた。
多層反射膜11は、保護膜12に接する最上層として、好ましくは酸素原子の含有量が15at%以下であるSi膜を有する。多層反射膜11の最上層であるSi膜の酸素原子の含有量は、例えばTEM-EDX(Energy Dispersive X-ray)により測定する。
多層反射膜11と保護膜12をこの順番で同じ真空チャンバー内で成膜することで、多層反射膜11の最上層であるSi膜の酸化を抑制でき、最上層であるSi膜のO含有量を15at%以下に低減できる。最上層であるSi膜のO含有量は、より好ましくは10at%以下であり、さらに好ましくは5at%以下である。
保護膜12の成膜時に真空チャンバーの圧力を0.035Pa以下に制御することが好ましい。真空チャンバーの圧力が0.035Pa以下であれば、真空度が高く、酸化が抑制される。真空チャンバーの圧力は、より好ましくは0.030Pa以下である。また、真空チャンバーの圧力は、0.001Pa以上であってよい。
多層反射膜11と保護膜12は、同じ真空チャンバー内で成膜されるので、同じ成膜方法で成膜される。成膜方法としては、真空度の観点から、イオンビームスパッタリング法が好適である。イオンビームスパッタリング法によれば、真空チャンバーとプラズマ源とを分離でき、真空チャンバーの真空度を高めることができる。
本願発明者の知見によれば、例えば保護膜をイオンビームスパッタリング法で形成する際、イオン加速電圧を調整することで、保護膜12のピーク数Npを調整することができる。イオン加速電圧小さくすることでスパッタ粒子のエネルギーが下がり、保護膜12の緻密性が高くなり、保護膜12のガスバリア性が向上する。具体的にはイオン加速電圧を400V以上、800V以下とすることでピーク数Npが50以上とすることができる。
本願発明者の知見によれば、例えば保護膜をイオンビームスパッタリング法で形成する際、スパッタガス(例えばAr)のガス圧を調整することで、保護膜12のピーク数Npを調整することができる。スパッタガスのガス圧を調整することで、スパッタ粒子のエネルギーが下がり、保護膜12の緻密性が高くなる。そのため、ピーク数Npが50以上とすることができる。具体的にはスパッタガスのガス圧を0.0050Pa以上、0.050Pa以下とすることでピーク数Npが50以上とすることができる。
保護膜12は、金属元素として、Rhのみを含有してもよいし、Rhに加えてRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiから選択される少なくとも1つの元素Xを含有してもよい。保護膜12は、Rh単体又はRh化合物で形成される。Rh化合物は、RhとXを含有する。Ru、Zr、Nb及びTiは、EUV光に対する反射率を向上できる。Pd、IrおよびPtは、エッチング耐性を向上できる。Taは、水素に対する耐性を向上できる。
保護膜12が金属元素としてRhに加えてRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiから選択される少なくとも1つの元素Xを含む場合、RhとXの元素比(Rh:X)は好ましくは50:50~99:1である。本明細書において、元素比とはモル比のことである。元素比(Rh:X)は、より好ましくは70:30~95:5である。
保護膜12は、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有してもよい。保護膜12を構成するRh化合物は、少なくともRhと非金属元素を含有してもよく、さらにXを含有してもよい。金属元素に非金属元素を添加することで、保護膜12の結晶化を抑制でき、保護膜12の表面を平滑に形成できる。よって、保護膜12の上に形成される吸収膜13などを平滑に形成できる。また、EUV光に対する反射率を向上できる。
保護膜12の厚みは、好ましくは1.5nm以上4.0nm以下であり、より好ましくは2.0nm以上3.5nm以下である。保護膜12の厚みが1.5nm以上であれば、エッチング耐性が良い。また、保護膜12の厚みが4.0nm以下であれば、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。
保護膜12の膜密度は、好ましくは10.0g/cm以上14.0g/cm以下である。保護膜12の膜密度が10.0g/cm以上であれば、エッチング耐性が良い。また、保護膜12の膜密度が14.0g/cm以下であれば、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。
保護膜12の上面、すなわち保護膜12の吸収膜13が形成される表面は、二乗平均粗さRMSが好ましくは0.300nm以下であり、より好ましくは0.150nm以下である。二乗平均粗さRMSが0.300nm以下であれば、保護膜12の上に吸収膜13などを平滑に形成できる。また、EUV光の散乱を抑制でき、EUV光に対する反射率を向上できる。二乗平均粗さRMSは、好ましくは0.050nm以上である。
保護膜12は、図4に示すように、複数層からなってもよく、例えば下層12Lと上層12Uを含んでもよい。下層12Lと上層12Uとは、この順番で多層反射膜11の上に形成される。つまり、下層12Lは、上層12Uと多層反射膜11の間に設けられる。
上層12Uは、Rhを50at%以上100at%以下含有する。上層12Uの主成分がRhであることで、下記(A)~(C)の効果が得られる。(A)吸収膜13のエッチング耐性を向上できる。特にエッチングガスとして酸素系ガスが用いられる場合に、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。(B)硫酸過水に対する耐性を向上できる。(C)EUV光に対する反射率を向上できる。
上層12Uは、金属元素として、Rhのみを含有してもよいし、Rhに加えてRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiから選択される少なくとも1つの元素Xを含有してもよい。上層12Uは、Rh単体又はRh化合物で形成される。Rh化合物はRhとXを含有する。上層12UにおけるRhとXの元素比(Rh:X)は、好ましくは99:1~1:1であり、より好ましくは70:30~95:5である。
上層12Uは、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有してもよい。上層12Uを構成するRh化合物は、少なくともRhと非金属元素を含有してもよく、さらにXを含有してもよい。金属元素に非金属元素を添加することで、保護膜12の結晶化を抑制でき、保護膜12の表面を平滑に形成できる。よって、保護膜12の上に吸収膜13などを平滑に形成できる。また、EUV光の散乱を抑制でき、EUV光に対する反射率を向上できる。
上層12Uの厚みは、好ましくは0.1nm以上4.0nm以下であり、より好ましくは0.2nm以上3.5nm以下であり、更に好ましくは0.5nm以上3.0nm以下であり、特に好ましくは1.0nm以上2.5nm以下である。上層12Uの厚みが0.1nm以上であれば、エッチング耐性が良い。また、上層12Uの厚みが4.0nm以下であれば、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。
下層12Lは、好ましくはRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaまたはTiを50at%以上100at%以下含有する。つまり、下層12Lの主成分は、Rh以外の金属元素であって、好ましくはRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaまたはTiである。つまり、下層12Lは、上記の金属元素の単体又は化合物で形成される。Ru、Zr、Nb及びTiは、EUV光に対する反射率を向上できる。Pd、IrおよびPtは、保護膜12のエッチング耐性を向上できる。Taは、水素に対する耐性を向上できる。下層12Lの主成分は、より好ましくはRuである。
下層12Lは、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有してもよい。下層12Lを構成する金属化合物は、少なくとも上記の金属元素と非金属元素を含有してもよい。
下層12Lの厚みは、好ましくは0.5nm以上2.0nm以下であり、より好ましくは0.5nm以上1.5nm以下である。下層12Lの厚みが0.5nm以上であれば、上層12Uの材料が多層反射膜11内に拡散することを抑制できる。また、下層12Lの厚みが2.0nm以下であれば、EUV光に対する反射率の低下を抑制できる。Rh以外の金属元素を主成分として含む下層12Lの厚みは、Rhを主成分として含む上層12Uの厚みよりも薄いことが好ましい。但し、保護膜12が全体としてRhを50at%以上含有すればよく、下層12Lの厚みが上層12Uの厚みよりも厚くてもよい。
イオンビームスパッタリング法を用いて下層12LとしてRu膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<Ru膜(下層)の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.010Pa~0.020Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.010nm/sec~0.100nm/sec、
Ru膜の膜厚:0.5nm~2.0nm。
イオンビームスパッタリング法を用いて上層12UとしてRh膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<Rh膜(上層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.010Pa~0.035Pa、
イオン加速電圧:300V~1500V、
成膜速度:0.010nm/sec~0.100nm/sec、
Rh膜の膜厚:0.5nm~4.0nm。
吸収膜13は、開口パターン13aが形成される膜である。開口パターン13aは、反射型マスクブランク1の製造工程では形成されずに、反射型マスク2の製造工程で形成される。吸収膜13は、EUV光を吸収するだけではなく、EUV光の位相をシフトさせてもよい。つまり、吸収膜13は、位相シフト膜であってもよい。位相シフト膜は、図3に示す第1EUV光L1に対して、第2EUV光L2の位相をシフトさせる。
第1EUV光L1は、吸収膜13を透過することなく開口パターン13aを通過し、多層反射膜11で反射され、再び吸収膜13を透過することなく開口パターン13aを通過した光である。第2EUV光L2は、吸収膜13に吸収されながら吸収膜13を透過し、多層反射膜11で反射され、再び吸収膜13に吸収されながら吸収膜13を透過した光である。
第1EUV光L1と第2EUV光L2の位相差(≧0)は、例えば170°~250°である。第1EUV光L1の位相が、第2EUV光L2の位相よりも、進んでいてもよいし、遅れていてもよい。吸収膜13は、第1EUV光L1と第2EUV光L2の干渉を利用して、転写像のコントラストを向上する。転写像は、吸収膜13の開口パターン13aを対象基板に転写した像である。
EUVLでは、いわゆる射影効果(シャドーイング効果)が生じる。シャドーイング効果とは、EUV光の入射角θが0°ではない(例えば6°である)ことに起因して、開口パターン13aの側壁付近に、側壁によってEUV光を遮る領域が生じ、転写像の位置ずれまたは寸法ずれが生じることをいう。シャドーイング効果を低減するには、開口パターン13aの側壁の高さを低くすることが有効であり、吸収膜13の薄化が有効である。
吸収膜13の膜厚は、シャドーイング効果を低減すべく、例えば60nm以下であり、好ましくは50nm以下である。吸収膜13の膜厚は、第1EUV光L1と第2EUV光L2の位相差を確保すべく、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは30nm以上である。
吸収膜13は、好ましくはRu、Ta、Cr、Nb、Pt、Ir、Re、W、Mn、Au、SiおよびAlから選択される少なくとも1つの金属元素を含有する。これらの金属元素は、比較的小さな屈折率を有するので、位相差を確保しつつ、位相シフト膜の膜厚を小さくできる。吸収膜13は、上記の金属元素の中でもRuを含有することが好ましい。吸収膜13は、上記の金属元素の単体又は化合物で形成される。
吸収膜13は、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有する。吸収膜13を構成する化合物は、上記の金属元素と非金属元素を含有してもよい。金属元素に非金属元素を添加することで、吸収膜13の結晶化を抑制でき、開口パターン13aの側壁のラフネスを小さくできる。吸収膜13は、非金属元素として、酸素を含有することが好ましく、酸素と窒素を含有することがより好ましい。
吸収膜13の屈折率nは、好ましくは0.930以下であり、より好ましくは0.920以下であり、さらに好ましくは0.910以下であり、特に好ましくは0.90以下である。また、屈折率nは、好ましくは0.885以上である。本明細書において、屈折率は、波長13.5nmの光に対する屈折率である。
吸収膜13の消衰係数kは、好ましくは0.015以上であり、より好ましくは0.020以上である。また、消衰係数kは、好ましくは0.065以下である。本明細書において、消衰係数は、波長13.5nmの光に対する消衰係数である。
吸収膜13は、好ましくは硫酸過水によるエッチング速度が0nm/min~0.05nm/minである。吸収膜13の硫酸過水によるエッチング速度が0.05nm/min以下であれば、洗浄時に吸収膜13の損傷を抑制できる。
吸収膜13の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法または反応性スパッタリングなどである。スパッタガス中のOガスの含有量で、吸収膜13の酸素含有量を制御可能である。また、スパッタガス中のNガスの含有量で、吸収膜13の窒素含有量を制御可能である。
反応性スパッタリング法を用いて吸収膜13として、RuN膜を形成する場合、成膜条件の一例は下記の通りである。
<RuN膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:ArガスとNガスの混合ガス、
スパッタガス中のNガスの体積比(N/(Ar+N)):0.3~0.7、
ガス圧:0.05Pa~0.40Pa、
投入電力:100W~300W、
成膜速度:0.010nm/sec~0.030nm/sec、
膜厚:20nm~60nm。
エッチングマスク膜14は、吸収膜13を基準として保護膜12とは反対側に形成され、吸収膜13に開口パターン13aを形成するのに用いられる。エッチングマスク膜14の上には、不図示のレジスト膜が設けられる。反射型マスク2の製造工程では、先ずレジスト膜に第1開口パターンを形成し、次に第1開口パターンを用いてエッチングマスク膜14に第2開口パターンを形成し、次に第2開口パターンを用いて吸収膜13に第3開口パターン13aを形成する。第1開口パターンと第2開口パターンと第3開口パターン13aは、平面視(Z軸方向視)で同一の寸法および同一の形状を有する。エッチングマスク膜14は、レジスト膜の薄膜化を可能にする。
エッチングマスク膜14は、好ましくはCr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiから選択される少なくとも1つの金属元素を含有する。エッチングマスク膜14は、上記の金属元素の単体又は化合物で形成される。エッチングマスク膜14は、上記の金属元素に加えて、O、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有してもよい。エッチングマスク膜14を構成する化合物は、上記の金属元素と非金属元素を含有してもよい。
エッチングマスク膜14の膜厚は、好ましくは2nm以上30nm以下であり、より好ましくは2nm以上25nm以下であり、更に好ましくは2nm以上10nm以下である。
エッチングマスク膜14の成膜方法は、例えば、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、またはイオンビームスパッタリング法などである。
次に、図8を参照して、一実施形態に係る反射型マスクブランク1の製造方法について説明する。反射型マスクブランク1の製造方法は、例えば、図8に示すステップS101~S105を有する。ステップS101では、基板10を準備する。ステップS102では、基板10の第1主面10aに多層反射膜11を形成する。ステップS103では、多層反射膜11の上に保護膜12を形成する。ステップS104では、保護膜12の上に吸収膜13を形成する。ステップS105では、吸収膜13の上にエッチングマスク膜14を形成する。
なお、反射型マスクブランク1の製造方法は、少なくとも、ステップS101~S104を有していればよい。反射型マスクブランク1の製造方法は、図8に図示しない機能膜を形成するステップを更に有してもよい。
次に、図9を参照して、一実施形態に係る反射型マスク2の製造方法について説明する。反射型マスク2の製造方法は、図9に示すステップS201~S204を有する。ステップS201では、反射型マスクブランク1を準備する。ステップS202では、エッチングマスク膜14を加工する。エッチングマスク膜14の上には、不図示のレジスト膜が設けられる。先ずレジスト膜に第1開口パターンを形成し、次に第1開口パターンを用いてエッチングマスク膜14に第2開口パターンを形成する。ステップS203では、第2開口パターンを用いて吸収膜13に第3開口パターン13aを形成する。ステップS203では、エッチングガスを用いて吸収膜13をエッチングする。ステップS204では、レジスト膜およびエッチングマスク膜14を除去する。レジスト膜の除去には、例えば硫酸過水が用いられる。エッチングマスク膜14の除去には、例えばエッチングガスが用いられる。ステップS204(エッチングマスク膜14の除去)で用いられるエッチングガスは、ステップS203(吸収膜13のエッチング)で用いられるエッチングガスと同種であってもよい。なお、反射型マスク2の製造方法は、少なくとも、ステップS201およびS203を有していればよい。
以下、実験データについて説明する。下記の例1~例2及び例4が実施例であり、例3及び例5が比較例である。
[例1]
例1では、基板と多層反射膜と保護膜と吸収膜をこの順番で含む反射型マスクブランクを作製した。基板としては、SiO-TiO系のガラス基板(外形6インチ(152mm)角、厚さが6.3mm)を準備した。このガラス基板は、20℃における熱膨張係数が0.02×10-7/℃であり、ヤング率が67GPaであり、ポアソン比が0.17であり、比剛性は3.07×10/sであった。基板の第1主面の品質保証領域は、研磨によって0.150nm以下の二乗平均粗さ(RMS)と、100nm以下の平坦度と、を有していた。基板の第2主面には、マグネトロンスパッタリング法を用いて厚さ100nmのCr膜を成膜した。Cr膜のシート抵抗は100Ω/□であった。
多層反射膜としては、Mo/Si多層反射膜を形成した。Mo/Si多層反射膜は、イオンビームスパッタリング法を用いてSi膜(膜厚4.5nm)とMo膜(膜厚2.3nm)を成膜することを40回繰り返すことにより形成した。Mo/Si多層反射膜の合計膜厚は272nm((4.5nm+2.3nm)×40)であった。最上層には、Mo膜の酸化防止のため、Si膜を用いた。一般的に、Mo膜はSi膜に比べて酸化しやすい。
Si膜とMo膜の成膜条件は、下記の通りであった。
<Si膜の成膜条件>
ターゲット:Siターゲット(ホウ素ドープ)、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.020Pa、
イオン加速電圧:700V、
成膜速度:0.077nm/sec、
膜厚:4.5nm。
<Mo膜の成膜条件>
ターゲット:Moターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.020Pa、
イオン加速電圧:700V、
成膜速度:0.064nm/sec、
膜厚:2.3nm。
保護膜としては、Rh膜(単層)を形成した。Rh膜は、イオンビームスパッタリング法を用いて形成した。多層反射膜と保護膜は、この順番で同じ真空チャンバーで成膜した。多層反射膜の成膜後、保護膜の成膜前に、多層反射膜は大気暴露されず、多層反射膜の最上層は酸化されなかった。Rh膜の成膜条件は、下記の通りであった。
<Rh膜(単層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.077nm/sec、
膜厚:3.0nm。
吸収膜としては、RuN膜(膜厚39nm)を形成した。RuN膜は、反応性スパッタリング法を用いて形成した。RuN膜の成膜条件は、下記の通りであった。
<RuN膜の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:ArガスとNガスの混合ガス、
スパッタガス中のNガスの体積比(N/(Ar+N)):0.5、
ガス圧:0.20Pa、
投入電力:200W、
成膜速度:0.017nm/sec、
膜厚:39nm。
上記の手順で反射型マスクブランクを得た。多層反射膜の最上層であるSi膜のO含有量と、保護膜のピーク数Npと、保護膜のエッチング耐性は、吸収膜を成膜する前の状態で測定した。
多層反射膜の最上層であるSi膜のO含有量は、下記のエッチング試験を行う前に、TEM-EDX(日本電子社製、商品名ARM200F)を用いて測定した。測定下限は、4at%であった。
保護膜のピーク数Npは、下記のエッチング試験を行う前に、TEM(日本電子社製、商品名ARM200F)を用いて測定した。測定の手順は、既述の通りであった。ピーク数Npが多いほど、保護膜が緻密であると考えられる。
エッチング試験は、ICP(誘導結合方式)プラズマエッチング装置を用いて行った。具体的なエッチング条件は、下記の通りであった。
<エッチング条件>
ICPアンテナバイアス:200W、
基板バイアス:550W、
エッチング時間:15sec、
トリガー圧力:3.5×10Pa、
エッチング圧力:3.0×10-1Pa、
エッチングガス:ClガスとOガスとの混合ガス、
ガス流量(Clガス/Oガス):10sccm/10sccm。
保護膜のエッチング耐性は、エッチングガスの透過量、つまり多層反射膜における塩素原子または酸素原子の増加量で評価した。
エッチング試験の前に、多層反射膜は塩素原子を含まない。そこで、エッチング試験の後に、深さ方向(図5においてZ軸負方向)における塩素原子の含有量(単位:at%)のラインプロファイルをTEM-EDXを用いて取得し、そのラインプロファイルの最大値TClmaxを求めた。TClmaxが小さいほど、塩素原子が保護膜を透過しにくく、保護膜のエッチング耐性が良い。
エッチング試験の前に、多層反射膜は酸素原子を含みうる。多層反射膜は、成膜時に、酸化されうる。そこで、エッチング試験の前後で、深さ方向(図5においてZ軸負方向)における酸素原子の含有量(単位:at%)のラインプロファイルをTEM-EDXを用いて取得し、2つのラインプロファイルの差(>0)の最大値TOmaxを求めた。TOmaxが小さいほど、酸素原子が保護膜を透過しにくく、保護膜のエッチング耐性が良い。
[例2]
例2では、保護膜としてRu膜(下層)とRh膜(上層)を下記条件で成膜した以外、例1と同じ条件でEUVマスクブランクを作製した。多層反射膜と保護膜は、この順番で同じ真空チャンバーで成膜した。多層反射膜の成膜後、保護膜の成膜前に、多層反射膜は大気暴露されず、多層反射膜の最上層は酸化されなかった。また、例2では、例1と同じ手順で、保護膜のピーク数Npと、保護膜のエッチング耐性を測定した。
<Ru膜(下層)の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.056nm/sec、
膜厚:1.0nm。
<Rh膜(上層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.077nm/sec、
膜厚:1.5nm。
[例3]
例3では、保護膜としてRh膜(単層)を下記条件で成膜した以外、例1と同じ条件でEUVマスクブランクを作製した。Rh膜は、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。従って、多層反射膜と保護膜は、異なる真空チャンバーで成膜した。多層反射膜の成膜後、保護膜の成膜前に、多層反射膜が大気暴露され、多層反射膜の最上層が酸化された。また、例3では、例1と同じ手順で、保護膜のピーク数Npと、保護膜のエッチング耐性を測定した。
<Rh膜(単層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.130Pa、
投入電力:300W、
成膜速度:0.090nm/sec、
膜厚:2.5nm。
[例4]
例4では、保護膜としてRh膜(単層)を形成した。Rh膜(単層)の膜厚以外、例1と同じ条件でEUVマスクブランクを作製した。多層反射膜と保護膜は、この順番で同じ真空チャンバーで成膜した。多層反射膜の成膜後、保護膜の成膜前に、多層反射膜は大気暴露されず、多層反射膜の最上層は酸化されなかった。また、例4では、例1と同じ手順で、保護膜のピーク数Npと、保護膜のエッチング耐性を測定した。
<Rh膜(単層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.077nm/sec、
膜厚:2.5nm。
[例5]
例5では、保護膜としてRu膜(下層)とRh膜(上層)を下記条件で成膜した以外、例1と同じ条件でEUVマスクブランクを作製した。多層反射膜と保護膜は、この順番で真空チャンバーで成膜した。多層反射膜の成膜後、保護膜であるRu膜(下層)の成膜前に、多層反射膜は大気暴露されなかった。Ru膜(下層)の成膜後、Ru膜(下層)は大気暴露され、多層反射膜の最上層が酸化された。大気暴露後にRu膜(下層)の上にRh膜(上層)を成膜した。また、例5では、例1と同じ手順で、保護膜のピーク数Npと、保護膜のエッチング耐性を測定した。
<Ru膜(下層)の成膜条件>
ターゲット:Ruターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.056nm/sec、
膜厚:1.0nm。
<Rh膜(上層)の成膜条件>
ターゲット:Rhターゲット、
スパッタガス:Arガス、
ガス圧:0.027Pa、
イオン加速電圧:600V、
成膜速度:0.077nm/sec、
膜厚:2.0nm。
[結果]
表1に例1~例5の結果を示す。
Figure 0007367902000001
表1に示すように、例1~例2及び例4では、例3及び例5とは異なり、多層反射膜と保護膜を大気暴露することなく続けて形成したので、多層反射膜の最上層であるSi膜が酸化されておらず、Si膜のO含有量が15at%以下であった。また、例1~例2及び例4では、例3及び例5とは異なり保護膜のピーク数Npが50以上であり、例3に比べてTClmaxとTOmaxが小さかった。さらに、例1~例2では、例3に比べて保護膜の表面の二乗平均粗さRMSが小さかった。
以上、本開示に係る反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクブランクの製造方法、および反射型マスクの製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
本出願は、2022年4月1日に日本国特許庁に出願した特願2022-061684号に基づく優先権を主張するものであり、特願2022-061684号の全内容を本出願に援用する。
1 反射型マスクブランク
2 反射型マスク
10 基板
11 多層反射膜
12 保護膜
13 吸収膜

Claims (18)

  1. 基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜を保護する保護膜と、前記EUV光を吸収する吸収膜と、をこの順で有する、反射型マスクブランクであって、
    前記保護膜は、Rhを50at%以上含有し、
    前記保護膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮像することで前記保護膜と前記多層反射膜の界面に平行な帯状のグレースケール画像を取得し、前記グレースケール画像の長手方向における前記グレースケール画像の輝度プロファイルを作成すると、前記グレースケール画像の長手方向100nm当たりの前記輝度プロファイルのピーク数が50以上である、反射型マスクブランク。
  2. 前記多層反射膜は、前記保護膜に接する最上層として、酸素原子の含有量が15at%以下であるSi膜を有する、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  3. 前記保護膜は、金属元素として、Rhのみを含有するか、Rhに加えてRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiから選択される少なくとも1つの元素を含有する、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  4. 前記保護膜は、金属元素として、Rhに加えてRu、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaおよびTiから選択される少なくとも1つの元素Xを含有し、
    前記保護膜は、RhとXの元素比(Rh:X)が50:50~99:1である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  5. 前記保護膜は、Rhを50at%以上含有する上層と、Ru、Pd、Ir、Pt、Zr、Nb、TaまたはTiを50at%以上含有する下層と、を有し、
    前記下層は、前記上層と前記多層反射膜の間に設けられる、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  6. 前記保護膜は、前記下層の厚さが0.5nm以上2.0nm以下であって、前記上層の厚さが0.5nm以上4.0nm以下である、請求項5に記載の反射型マスクブランク。
  7. 前記保護膜は、Rhを50at%以上含有する単層からなる、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  8. 前記保護膜の厚みは、1.5nm以上4.0nm以下である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  9. 前記保護膜の膜密度は、10.0g/cm以上14.0g/cm以下である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  10. 前記保護膜の前記吸収膜が形成される表面は、二乗平均粗さRMSが0.300nm以下である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  11. 前記吸収膜は、Ru、Ta、Cr、Nb、Pt、Ir、Re、W、Mn、Au、SiおよびAlから選択される少なくとも1つの金属元素を含有する、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  12. 前記吸収膜は、さらにO、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有する、請求項11に記載の反射型マスクブランク。
  13. 前記吸収膜を基準として前記保護膜とは反対側に、エッチングマスク膜を有し、
    前記エッチングマスク膜は、Cr、Nb、Ti、Mo、TaおよびSiから選択される少なくとも1つの金属元素を含有する、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
  14. 前記エッチングマスク膜は、さらにO、N、CおよびBから選択される少なくとも1つの非金属元素を含有する、請求項13に記載の反射型マスクブランク。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクを備え、
    前記吸収膜に開口パターンを含む、反射型マスク。
  16. 請求項1~14のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクを製造する、反射型マスクブランクの製造方法であって、
    前記多層反射膜と前記保護膜をこの順番で同じ真空チャンバーで成膜することを有する、反射型マスクブランクの製造方法。
  17. 前記保護膜の成膜時に前記真空チャンバーの圧力を0.035Pa以下に制御することを有する、請求項16に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
  18. 請求項1~14のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクを準備することと、
    前記吸収膜に開口パターンを形成することと、
    を有する、反射型マスクの製造方法。
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