以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1~図7にしたがって説明する。
図1に示すように、電動圧縮機1は、ハウジング10と、圧縮部60と、を備えている。ハウジング10は、モータハウジング20と、カバー30と、フロントハウジング40と、吐出ハウジング50と、を有している。モータハウジング20、カバー30、フロントハウジング40、及び吐出ハウジング50は、金属製であり、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング20には、吸入口21が形成されている。吐出ハウジング50には、吐出口50aが形成されている。電動圧縮機1は、吸入口21から吸入された冷媒としての空気を圧縮部60により圧縮して吐出口50aから吐出する。
図2及び図3に示すように、モータハウジング20は、筒状をなす第1収容部22と、第1収容部22の軸線方向に直交する方向で第1収容部22と並ぶ第2収容部23と、を有している。第1収容部22の軸線方向において、第1収容部22及び第2収容部23は、第1収容部22の軸線方向におけるモータハウジング20の第1端部20aに開口している。第1収容部22及び第2収容部23は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向で互いに連通している。
図4に示すように、第1収容部22の軸線方向において、モータハウジング20の第1端部20aからの第1収容部22の深さは、モータハウジング20の第1端部20aからの第2収容部23の深さよりも深い。第2収容部23は、第1収容部22におけるモータハウジング20の第1端部20a寄りの部分に連通している。
図3及び図4に示すように、第1収容部22は、有底筒状をなしている。第1収容部22は、底壁22aと、底壁22aから第1収容部22の軸線方向に延びる筒状の周壁22bと、を有している。底壁22aには、円筒状のボス部22cが突設されている。ボス部22cの軸線は、第1収容部22の軸線に一致している。
周壁22bは、第1収容部22と第2収容部23とが連通している部分には形成されていない。周壁22bにおける底壁22aとは反対側に位置する所定範囲の部分は、第1収容部22の軸線方向から見ると、第2収容部23に向けて開口している。なお、所定範囲とは、第1収容部22の軸線方向における第2収容部23の深さを示している。
第2収容部23は、底壁23aと、周壁22bが延びる方向と同じ方向に向けて底壁23aから延びる周壁23bと、を有している。底壁23aは、第1収容部22の底壁22a及び周壁22bにおける第2収容部23寄りに位置する部分が第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向に延びることにより形成されている。第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向とは、第1収容部22から第2収容部23に向かう方向である。
周壁23bは、底壁23aの外縁から延びている。周壁23bは、第1収容部22と第2収容部23とが連通している部分には形成されていない。周壁23bは、第1収容部22の軸線方向から見ると、第1収容部22に向けて開口している。
図3に示すように、周壁22bの所定範囲の部分と、周壁23bとは互いに連続している。モータハウジング20の第1端部20aは、周壁22bの所定範囲の部分と、周壁23bとにより形成されている。第1収容部22の開口及び第2収容部23の開口は、モータハウジング20の第1端部20aの開口を形成している。モータハウジング20の第1端部20aには、第1収容部22を囲むように複数のボルト孔20cが形成されている。
図2に示すように、モータハウジング20は、第3収容部25と、第4収容部26と、を有している。第3収容部25は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向において、第1収容部22及び第2収容部23と並ぶように配置されている。第4収容部26は、第1収容部22の軸線方向において、第1収容部22及び第2収容部23と並ぶように配置されている。第3収容部25と第4収容部26とは、第1収容部22の軸線方向において、並ぶように配置されている。第3収容部25及び第4収容部26は、モータハウジング20の第1収容部22の軸線方向に直交する方向における第2端部20bに開口している。第3収容部25及び第4収容部26は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向における第1収容部22及び第2収容部23とは反対側に向けて開口している。第3収容部25と第4収容部26とは、第1収容部22の軸線方向で互いに連通している。
第1収容部22の軸線方向に直交する方向において、モータハウジング20の第2端部20bからの第4収容部26の深さは、モータハウジング20の第2端部20bからの第3収容部25の深さよりも深い。第3収容部25は、第4収容部26におけるモータハウジング20の第2端部20b寄りの部分に連通している。
第3収容部25は、底壁25aと、第1収容部22の軸線方向に直交する方向において、第1収容部22及び第2収容部23から離間するように底壁25aから延びる周壁25bと、を有している。底壁25aは、第1収容部22の軸線方向に延びる板状をなしている。
底壁25aは、第1収容部22の軸線方向に直交する方向において、第1収容部22と並ぶように形成される本体壁部25cを有している。底壁25aは、第1収容部22の軸線方向に直交する方向において、第2収容部23と並ぶように形成されるとともに本体壁部25cと一体形成される第1延設壁部25dを有している。底壁25aは、第1収容部22の軸線方向において、第1延設壁部25dから延びる第2延設壁部25eを有している。第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとは一体形成されている。第2延設壁部25eは、第1収容部22の軸線方向において、モータハウジング20の第1端部20aか
ら離間するように延びている。本体壁部25cと、第1延設壁部25dと、第2延設壁部25eとは、面一となるように形成されている。
底壁25aは、第1収容部22の軸線方向において、本体壁部25c及び第1延設壁部25dにおける第4収容部26側に位置する端部に一体形成される突出壁部25fを有している。突出壁部25fは、第1収容部22の軸線方向に直交する方向に延びている。突出壁部25fは、図4に示す底壁22a,23aと一体的に形成されている。突出壁部25fは、図4に示す底壁22a,23aから突出しており、本体壁部25c及び第1延設壁部25dよりも第3収容部25の開口端部寄りに位置している。突出壁部25fと、本体壁部25c及び第1延設壁部25dとは、段差をなすように配置されている。
本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fは、第1収容部22の底壁22a及び周壁22bと、第2収容部23の底壁23a及び周壁23bと一体形成されている。本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fは、第1収容部22と第3収容部25とを区画している。
第1延設壁部25dには、貫通孔251が形成されている。貫通孔251は、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界よりも第1延設壁部25d寄りに配置されている。図2及び図4に示すように、貫通孔251は、第1延設壁部25d及び周壁23bを厚み方向に貫通している。
図2に示すように、周壁25bは、本体壁部25c、第1延設壁部25d、第2延設壁部25e、及び突出壁部25fの外縁から第1収容部22及び第2収容部23から離間するように延びている。周壁25bは、第3収容部25と第4収容部26とが連通している部分には形成されていない。周壁25bは、突出壁部25fの第4収容部26側の端部には形成されていない。周壁25bは、底壁25aを平面視したとき、第4収容部26に向けて開口している。
第4収容部26は、底壁26aと、周壁25bが延びる方向と同じ方向に底壁26aから延びる周壁26bと、を有している。底壁26aは、第1底壁261と、第2底壁262と、第3底壁263と、を有している。第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263は、第1収容部22の軸線方向において、図4に示す第1収容部22の底壁22aと、図4に示す第2収容部23の底壁23aと、第3収容部25の突出壁部25fと一体形成されている。底壁22a,23a及び突出壁部25fは、第4収容部26の一部の壁部を形成している。底壁22a,23a及び突出壁部25fは、第1収容部22及び第2収容部23と、第4収容部26と、を区画している。
第1収容部22の軸線方向に直交する方向において第3収容部25の開口及び第4収容部26の開口を正面に見たとき、第1底壁261は、第1収容部22の軸線上に配置されている。第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向において、この順に配置されている。第2底壁262は、第1底壁261よりも第4収容部26の開口端部寄りに配置されている。第1底壁261と第2底壁262とは段差をなすように配置されている。第3底壁263は、第2底壁262よりも第4収容部26の開口端部寄りに配置されている。第2底壁262と第3底壁263とは、段差をなすように配置されている。第4収容部26において、モータハウジング20の第2端部20bから第1底壁261までの深さは、モータハウジング20の第2端部20bから第2底壁262までの深さよりも深い。第4収容部26において、モータハウジング20の第2端部20bから第2底壁262までの深さは、モータハウジング20の第2端部20bから第3底壁263までの深さよりも深い。第1底壁261、第2底壁262、第3底壁263は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向にお
いて、第4収容部26の開口端部からの深さが浅くなるように配置されている。なお、モータハウジング20の第2端部20bから第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263までの深さは、モータハウジング20の第2端部20bから第3収容部25の底壁25aまでの深さよりも深い。
周壁26bは、第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263の外縁から延びている。周壁26bは、第3収容部25と第4収容部26とが連通している部分には形成されていない。周壁26bは、底壁26aを平面視したとき、第3収容部25に向けて開口している。
第3収容部25の底壁25aと第4収容部26の底壁26aとを平面視したとき、第3収容部25の周壁25bと第4収容部26の周壁26bとは、互いに連続している。モータハウジング20の第2端部20bは、周壁25bと周壁26bとにより形成されている。第3収容部25の開口及び第4収容部26の開口は、モータハウジング20の第2端部20bの開口を形成している。
モータハウジング20の第2端部20bには、第1切欠溝27と、第2切欠溝28とが形成されている。第1切欠溝27は、第4収容部26を形成する周壁26bのうち突出壁部25fと第1収容部22の軸線方向で対向する壁部の一部を切り欠くことにより形成されている。第4収容部26の底壁26aを平面視したとき、第1切欠溝27は、第1収容部22の軸線方向で第3底壁263と並ぶように配置されている。第2切欠溝28は、第3収容部25を形成する周壁25bのうち第1収容部22の軸線方向で本体壁部25cに並ぶ壁部の一部を切り欠くことにより形成されている。図3に示すように、モータハウジング20の第1端部20aを第1収容部22の軸線方向から見ると、第2切欠溝28は、第1収容部22の軸線方向に直交する方向で第1収容部22に並ぶように配置されている。
図2に示すように、モータハウジング20の第2端部20bには、図1に示すカバー30をモータハウジング20の第2端部20bに固定するための複数のボルト孔20dが第3収容部25及び第4収容部26を囲むように形成されている。モータハウジング20の第2端部20bの内側面には、第3収容部25の底壁25a及び第4収容部26の底壁26aからモータハウジング20の第2端部20bに至らない程度に突出している複数の固定支持部20eが形成されている。複数の固定支持部20eの端部それぞれには、ボルト孔20fが形成されている。複数の固定支持部20eの端部は、突出壁部25fよりもモータハウジング20の第2端部20b寄りに位置しており、全て同じ高さに配置されている。
図4に示すように、フロントハウジング40は、板状をなしており、モータハウジング20の第1端部20aに連結されている。フロントハウジング40は、第1収容部22及び第2収容部23の開口を閉塞している。
フロントハウジング40は、モータハウジング20の第1端部20aにおける第1収容部22寄りに配置される円板状の底壁41と、底壁41からモータハウジング20とは反対側に向けて筒状に延びる周壁42と、を有している。フロントハウジング40は、周壁42と一体形成されるとともにモータハウジング20の第1端部20aにおける第2収容部23寄りに配置される蓋壁43を有している。
底壁41は、第1収容部22の軸線上に位置している。底壁41は、モータハウジング20の周壁22bの内部に嵌合されている。底壁41は、周壁22bの所定範囲の部分における一部の内周面に当接している。底壁41の中央部には、挿通孔41aが形成されて
いる。挿通孔41aは、底壁41を厚み方向に貫通している。挿通孔41aの軸線は、第1収容部22の軸線及びボス部22cの軸線に一致している。
周壁42は、底壁41の外周面と直交するように延びる段差面42aを形成するように底壁41から延びている。段差面42aは、底壁41の外周面よりも外側に延びている。周壁42の段差面42aは、周壁22bに対して第1収容部22の軸線方向において当接している。蓋壁43は、周壁42から第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向に向けて延びている。蓋壁43は、第2収容部23の開口を閉塞している。
ハウジング10には、モータ収容室80が形成されている。モータ収容室80は、モータハウジング20の底壁22a,23aと、モータハウジング20の周壁22b,23bと、フロントハウジング40の底壁41及び蓋壁43と、により区画形成されている。モータ収容室80は、モータ室81と、モータ配線収容室82と、を有している。モータ室81は、モータ収容室80における周壁22bと底壁23aとの境界を基準として第1収容部22寄りの空間である。モータ配線収容室82は、モータ収容室80における周壁22bと底壁23aとの境界を基準として第2収容部23寄りの空間である。モータ室81とモータ配線収容室82とは、第1収容部22の軸線方向におけるモータハウジング20の第1端部20a寄りの位置で連通している。
図1に示すように、カバー30は、平板状をなしており、モータハウジング20の第2端部20bに連結されている。カバー30は、第3収容部25及び第4収容部26の開口を閉塞している。カバー30は、複数のボルト86によりモータハウジング20の第2端部20bに固定されている。なお、複数のボルト86それぞれは、図2に示すボルト孔20dに螺合される。
図1及び図2に示すように、ハウジング10には、回路基板収容室90及び接続配線収容室93が形成されている。回路基板収容室90及び接続配線収容室93は、モータハウジング20の第2端部20bの開口をカバー30により閉塞することにより形成される。回路基板収容室90及び接続配線収容室93は、モータハウジング20の底壁25a,26aと、モータハウジング20の周壁25b,26bと、カバー30と、により区画形成されている。回路基板収容室90は、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界を基準として第1延設壁部25d寄りの空間である。接続配線収容室93は、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界を基準として第2延設壁部25e寄りの空間である。
回路基板収容室90は、インバータ収容室91と、フィルタ収容室92とを有している。インバータ収容室91は、回路基板収容室90における突出壁部25fを基準として本体壁部25c寄りの空間である。フィルタ収容室92は、回路基板収容室90における突出壁部25fを基準として底壁26a寄りの空間である。インバータ収容室91とフィルタ収容室92とは、突出壁部25fとカバー30との間に形成される空間を介して連通している。インバータ収容室91と接続配線収容室93とは、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界とカバー30との間に形成される空間を介して連通している。
ここで、本体壁部25c、第1延設壁部25d、突出壁部25fは、第1収容部22と第3収容部25とを区画している。そのため、本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fは、モータ収容室80とインバータ収容室91とを区画するインバータ収容室区画壁である。また、底壁22a,23a及び突出壁部25fは、第1収容部22及び第2収容部23と、第4収容部26とを区画している。そのため、底壁22a,23a及び突出壁部25fは、モータ収容室80とフィルタ収容室92とを区画するフィルタ収容室区画壁である。なお、突出壁部25fは、インバータ収容室91に向けて突出する
突出部である。
図4に示すように、電動圧縮機1は、回転軸11と、回転軸11を回転させる電動モータ12とを備えている。回転軸11の第1の端部11aは、フロントハウジング40の底壁41の挿通孔41aを介してフロントハウジング40の周壁42の内部に位置している。周壁42の内周面と、回転軸11の外周面との間には、転がり軸受11cが設けられている。回転軸11は、転がり軸受11cを介してフロントハウジング40に回転可能に支持されている。
回転軸11の第2の端部11bは、ボス部22cの内部に位置している。回転軸11の第2の端部11bの外周面とボス部22cの内周面との間には、滑り軸受11dが設けられている。回転軸11の第2の端部11bは、滑り軸受11dを介してモータハウジング20に回転可能に支持されている。なお、回転軸11の軸線方向Aは、第1収容部22の軸線方向と一致している。
モータ収容室80のモータ室81には、電動モータ12が収容されている。電動モータ12は、筒状のステータ13と、ステータ13の内側に配置されるロータ14とにより構成される。ロータ14は、回転軸11と一体的に回転する。ロータ14は、回転軸11に止着されたロータコア14aと、ロータコア14aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ13は、第1収容部22の周壁22bの内周面に固定された筒状のステータコア13aと、ステータコア13aに巻回されたコイル13bとを有している。
電動モータ12は、モータ収容室80のモータ室81を、電動モータ12の両端にあるコイル13bのコイルエンド13cをそれぞれ収容するコイルエンド収容部81aに区画している。コイルエンド収容部81aは、回転軸11の軸線方向Aにおいて、ステータコア13aを挟み込む位置に形成されている。
モータハウジング20は、吸入口21とモータ収容室80とを連通するとともに外部からモータ収容室80へと空気を導入する連通路24を有している。吸入口21は、モータ収容室80に空気を吸入するための円形孔である。連通路24は、突出壁部25fの内部に形成されている。連通路24は、回転軸11の第1の端部11aとは反対側に位置する第2の端部11b寄りに形成されたコイルエンド収容部81aと吸入口21とを連通している。すなわち、連通路24は、二つのコイルエンド収容部81aのうち圧縮部60から離れた側にあるコイルエンド収容部81aに冷媒を導入する。第2の端部11b寄りに形成されたコイルエンド収容部81aと、吸入口21とは、回転軸11の軸線方向Aにおいて同じ位置に配置されている。
圧縮部60は、スクロール型である。圧縮部60は、固定スクロール61と、固定スクロール61に対向配置される可動スクロール62とから構成される。固定スクロール61は、板状の固定基板61aと、固定基板61aから立設された固定渦巻壁61bと、を有している。また、固定スクロール61は、固定基板61aかの外周部から固定渦巻壁61bが延びる方向と同じ方向に筒状に延びる固定外周壁61cを有している。固定外周壁61cは、固定渦巻壁61bを囲んでいる。固定外周壁61cの開口端面は、固定渦巻壁61bの先端面よりも固定基板61aとは反対側に位置している。固定外周壁61cの先端は、フロントハウジング40の周壁42に連結されている。
可動スクロール62は、固定基板61aに対向する円板状をなす可動基板62aと、可動基板62aから固定基板61aに向けて立設する可動渦巻壁62bと、を有している。可動基板62aにおける固定基板61aとは反対側の端面には、円筒状のボス部62cが
突設されている。ボス部62cの軸線方向は、回転軸11の軸線方向Aに一致している。また、可動基板62aのボス部62cの周囲には、円孔状の凹部62dが複数形成されている。複数の凹部62dは、回転軸11の周方向に所定の間隔をあけて配置されている。各凹部62d内には、円環状のリング部材62eが嵌着されている。また、フロントハウジング40における周壁42には、リング部材62e内に挿入されるピン62fが突設されている。
固定渦巻壁61bと可動渦巻壁62bとは、互いに噛み合わされている。可動渦巻壁62bは、固定外周壁61cの内側に位置している。固定渦巻壁61bの先端面は、可動基板62aに接触している。そして、固定基板61a、固定渦巻壁61b、固定外周壁61c、可動基板62a、及び可動渦巻壁62bによって、冷媒としての空気を圧縮する圧縮室63が区画されている。連通路24を介してモータ収容室80のコイルエンド収容部81aに導入された空気は、ステータ13とロータ14との隙間を介して圧縮室63に吸入される。すなわち、空気は、電動モータ12を通過したのち圧縮部60へと吸入される。
固定基板61aの中央部には、吐出孔61dが形成されている。吐出孔61dは、固定基板61aを厚み方向に貫通している。固定基板61aの固定渦巻壁61bとは反対側に位置する端面には、弁機構61eが設けられている。吐出孔61dは、圧縮室63の圧力に応じて弁機構61eにより開閉される。
回転軸11の第1の端部11aには、回転軸11の軸線に対して偏心した位置から可動スクロール62に向けて突出する偏心軸64が一体形成されている。偏心軸64の軸線方向は、回転軸11の軸線方向Aに一致している。偏心軸64は、ボス部62c内に挿入されている。
偏心軸64の外周面には、バランスウェイト65が一体化されたブッシュ66が嵌合されている。バランスウェイト65は、フロントハウジング40の周壁42内に収容されている。可動スクロール62は、ブッシュ66及び滑り軸受67を介して偏心軸64と相対回転可能に偏心軸64に支持されている。したがって、回転軸11の第1の端部11aには、圧縮部60が設けられている。
回転軸11の回転は、偏心軸64、ブッシュ66、及び滑り軸受67を介して可動スクロール62に伝達され、可動スクロール62は自転する。そして、各ピン62fと各リング部材62eの内周面が接触することにより、可動スクロール62の自転が阻止されて、可動スクロール62の公転運動のみが許容される。これにより、可動スクロール62は、可動渦巻壁62bが固定渦巻壁61bに接触しながら公転運動し、圧縮室63の容積が減少することによりモータ収容室80から吸入される空気が圧縮される。すなわち、圧縮部60は、モータ収容室80に吸入された空気を圧縮する。圧縮室63で圧縮された空気が所定の圧力になったとき、弁機構61eが吐出孔61dを開放して、圧縮された空気が吐出孔61dから吐出される。なお、バランスウェイト65は、可動スクロール62が公転運動する際に可動スクロール62に作用する遠心力を相殺して、可動スクロール62のアンバランス量を低減する。
吐出ハウジング50は、板状の底壁51と、底壁51の外縁から筒状に延びる周壁52と、を有している。周壁52の軸線方向は、回転軸11の軸線方向Aに一致している。周壁52の開口端は、固定基板61aの固定渦巻壁61bとは反対側に位置する端面に連結されている。吐出ハウジング50の周壁52には、吐出口50aが形成されている。吐出口50aは、周壁52を厚み方向に貫通している。固定スクロール61の吐出孔61dから吐出された圧縮された空気は、吐出ハウジング50の内部から吐出口50aを介して電動圧縮機1の外部に吐出される。図1に示すように、回転軸11の軸線方向Aに積層され
たフロントハウジング40、固定スクロール61、及び吐出ハウジング50は、複数のボルト85によりモータハウジング20の第1端部20aに固定されている。なお、複数のボルト85それぞれは、図2に示す複数のボルト孔20cそれぞれに螺合される。
図2及び図3に示すように、モータ収容室80とインバータ収容室91とは、回転軸11の径方向において並ぶように配置されている。インバータ収容室91は、回転軸11の軸線方向Aに延びるように形成されている。フィルタ収容室92は、回転軸11の軸線方向Aにおいて、回転軸11の第2の端部11b寄りでインバータ収容室91と連通しつつモータ収容室80と並ぶように配置されている。
モータ収容室80とインバータ収容室91とが並ぶ方向を並設方向Bとし、回転軸11の軸線方向Aと直交するとともに並設方向Bとも直交する方向を延設方向Cとする。モータ配線収容室82は、モータ収容室80から延設方向Cの一方向に延びるとともにモータ収容室80に連通している。なお、延設方向Cの一方向とは、第1収容部22の軸線方向に直交する方向の一方向である。
図1及び図2に示すように、インバータ収容室91は、収容本体部91aと、延設部91bとを有している。収容本体部91aは、並設方向Bにおいてモータ収容室80と並ぶように配置されている。収容本体部91aは、本体壁部25cとカバー30とに挟まれた空間である。延設部91bは、収容本体部91aから延設方向Cの一方向に延びている。延設部91bは、第1延設壁部25dとカバー30とに挟まれた空間である。フィルタ収容室92は、延設部91bに連通するように延設方向Cの一方向に延びている。
ハウジング10には、導入口94及び入出力口95が形成されている。導入口94は、第1切欠溝27とカバー30とに囲まれることにより形成されている。導入口94は、フィルタ収容室92を形成する壁部である周壁26bのうち回転軸11の軸線方向Aにおいてインバータ収容室区画壁を形成する突出壁部25fと対向する壁部に形成されている。導入口94は、ハウジング10の外部とフィルタ収容室92の内部とを連通している。
入出力口95は、第2切欠溝28とカバー30とに囲まれることにより形成されている。入出力口95は、後述するインバータ100と、インバータ100の動作を制御するための図示しない制御装置との間で通信をするための通信線CLが導入される。入出力口95に導入された通信線CLは、インバータ収容室91の収容本体部91aに導入される。
図2及び図5に示すように、接続配線収容室93は、第2延設壁部25eとカバー30とに挟まれた空間である。接続配線収容室93は、回転軸11の軸線方向Aにおいてインバータ収容室91の延設部91bから突出している。接続配線収容室93は、回転軸11の軸線方向Aにおいて、延設部91bと連通している。接続配線収容室93は、並設方向Bにおいてインバータ収容室91を正面に見たとき、延設方向Cにおいて圧縮部60と並ぶように配置されている。回転軸11の軸線方向Aにおいて、接続配線収容室93のモータハウジング20からの突出量は、フロントハウジング40、圧縮部60、及び吐出ハウジング50のモータハウジング20からの突出量よりも少ない。
図5に示すように、電動圧縮機1は、導電ピン96と、コネクタ97と、を備えている。導電ピン96は、第1延設壁部25dに形成された貫通孔251に設けられている。導電ピン96は、3つの端子部96aを有している。3つの端子部96aは、柱状をなしている。図4及び図5に示すように、3つの端子部96aそれぞれの両端は、延設部91bとモータ配線収容室82とに延びている。導電ピン96は、インバータ収容室91の延設部91bと、モータ配線収容室82とをシールした状態で底壁25aに例えばボルトにより固定されている。導電ピン96は、区画壁を形成する第1延設壁部25dを貫通してい
る。
図3及び図4に示すように、電動圧縮機1は、モータ配線98を備えている。モータ配線98は、モータ配線収容室82において、導電ピン96の3つの端子部96aそれぞれの一端と、電動モータ12のコイルエンド13cとを電気的に接続している。すなわち、導電ピン96は、一端が電動モータ12と電気的に接続されている。
図5に示すように、コネクタ97は、インバータ収容室91に収容されている。コネクタ97は、導電ピン96の3つの端子部96aそれぞれの他端に接続されている。3つの端子部96aそれぞれの他端は、コネクタ97の入力端部に電気的に接続されている。コネクタ97の入力端部は、延設部91bの内部に位置しており、コネクタ97の出力端部は、接続配線収容室93の内部に位置している。コネクタ97は、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界を跨ぐように配置されている。コネクタ97の第1延設壁部25d及び第2延設壁部25eからの高さは、固定支持部20eの端部の高さよりも高い。
図5に示すように、電動圧縮機1は、配線としての3つの接続配線99と、電動モータ12を駆動させるインバータ100とを備えている。インバータ100は、複数のスイッチング素子101と、フィルタ素子102と、スイッチング素子101及びフィルタ素子102が実装される回路基板103とを有している。
インバータ100は、インバータ収容室91及びフィルタ収容室92に収容されている。回路基板103は、平板状をなしている。回路基板103は、区画壁を形成する本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fに沿うようにインバータ収容室91内に配置される。また、回路基板103は、区画壁を形成する本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fに対向するようにインバータ収容室91に収容されている。回路基板103は、回転軸11の軸線方向Aに延びるように収容本体部91a、延設部91b、及びフィルタ収容室92に配置されている。回路基板103は、接続配線収容室93には延びていない。回路基板103の外縁は、モータハウジング20の第2端部20bの内側面に沿った形状をなしている。回路基板103は、モータハウジング20の第2端部20bの内側面に設けられた複数の固定支持部20eに載置されている。回路基板103は、複数の固定支持部20eに載置された状態において、図示しない締結部材であるボルト等により固定支持部20eに固定される。締結部材は、固定支持部20eのボルト孔20fに螺合される。回路基板103の外縁において、第1延設壁部25dと第2延設壁部25eとの境界に対応する部分は、コネクタ97を避けるように形成されている。すなわち、回路基板103は、外縁の一部がコネクタ97との干渉を回避するように形成されている。
図5及び図6に示すように、複数のスイッチング素子101は、回路基板103のうち突出壁部25fと対向する下面103bに配置されている。複数のスイッチング素子101は、突出壁部25fにおける連通路24が延びる位置、及び突出壁部25fにおけるモータ収容室80のコイルエンド収容部81aに対応する位置に配置されている。複数のスイッチング素子101は、突出壁部25fに熱的に接触しながら並んで配置されている。
インバータ収容室区画壁を形成する本体壁部25c,第1延設壁部25d、及び突出壁部25fは、連通路24を通過した後であって電動モータ12を通過する前のモータ収容室80内の空気により冷却される。また、突出壁部25fは、連通路24内を流れる空気によっても冷却される。そのため、複数のスイッチング素子101は、連通路24内を流れる空気により冷却され、且つ連通路24を通過した後の冷媒により突出壁部25fが冷却されることによっても冷却される。
図5及び図7に示すように、フィルタ素子102は、フィルタ収容室92に収容されている。フィルタ素子102は、回路基板103の下面103bにおいて、フィルタ収容室92を形成する第1底壁261及び第2底壁262が対向する部分に配置されている。
並設方向Bにおいて回路基板103と対向するフィルタ収容室92の壁部である第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263は、延設方向Cの一方向に向かうにつれて回路基板103からの深さが浅くなるように形成されている。
フィルタ素子102は、第1部品としてのコンデンサ102aと、第2部品としてのコイル102bとにより構成されている。コンデンサ102a及びコイル102bは、インバータ100に実装される平滑回路をなす電子部品である。すなわち、フィルタ素子102は、入力される電流に含まれるノイズを低減する機能を有している。コンデンサ102a及びコイル102bは、回路基板103の下面103bから突出している。コンデンサ102aの回路基板103からの高さは、コイル102bの回路基板103からの高さよりも高い。すなわち、回路基板103から突出するコンデンサ102a及びコイル102bのうちコンデンサ102aは、回路基板103からの高さが最も高い電子部品である。また、回路基板103から突出するコンデンサ102a及びコイル102bのうちコイル102bは、回路基板103からの高さがコンデンサ102aよりも低い電子部品である。
コンデンサ102aは、回路基板103の下面103bにおける第1底壁261が対向する部分に配置されている。コンデンサ102aは、回転軸11の軸線上に配置されるようにフィルタ収容室92に収容されている。コイル102bは、回路基板103の下面103bにおける第2底壁262が対向する部分に配置されている。コイル102bは、コンデンサ102aよりも延設方向Cの一方向に位置し、且つコンデンサ102aと並ぶようにフィルタ収容室92に収容されている。すなわち、コンデンサ102a及びコイル102bは、延設方向Cの一方向に向かうほど回路基板103からの高さが低くなるようにフィルタ収容室92に収容されている。図4、図5、及び図7に示すように、フィルタ素子102は、底壁22a,23a及び突出壁部25fにより形成されるフィルタ収容室区画壁に熱的に接触している。フィルタ収容室区画壁を形成する底壁22a,23a及び突出壁部25fは、連通路24を通過した後であって電動モータ12を通過する前のモータ収容室80の空気により冷却される。すなわち、フィルタ素子102は、底壁22a,23a及び突出壁部25fにより冷却される。
図5に示すように、回路基板103は、高電圧領域S1と、低電圧領域S2とを有している。高電圧領域S1は、回路基板103における突出壁部25fと対向する部分からフィルタ収容室92側の領域である。高電圧領域S1には、複数のスイッチング素子101と、フィルタ素子102とが実装されている。また、高電圧領域S1には、導入口94から導入された入力配線として正極配線PL1及び負極配線PL2が電気的に接続されている。正極配線PL1及び負極配線PL2は、外部電源と回路基板103とを電気的に接続する配線である。正極配線PL1及び負極配線PL2は、回路基板103の縁部のうち導入口94に臨む位置に電気的に接続されている。高電圧領域S1は、外部電源からの電力が供給される領域である。
低電圧領域S2は、回路基板103における本体壁部25cと対向する領域である。低電圧領域S2は、高電圧領域S1に配置される複数のスイッチング素子101の動作を制御する回路が配置される領域である。低電圧領域S2には、入出力口95から導入される通信線CLが電気的に接続されている。
回路基板103における第1延設壁部25dと対向する部分には、3つの接続配線99の一端が接続される接続領域S3が形成されている。接続領域S3は、回転軸11の軸線方向Aにおいて高電圧領域S1と隣り合っている。接続領域S3は、延設方向Cにおいて低電圧領域S2と隣り合っている。接続領域S3において、回路基板103の下面103bとは反対側に位置する上面103aには、3つの接続配線99それぞれの一端が接続されている。3つの接続配線99それぞれの一端は、回路基板103に形成された図示しないパターン上に直接ねじ止めされている。回路基板103の上面103aとは、回路基板103のモータ収容室80とは反対側に位置する面である。
3つの接続配線99は、屈曲可能な配線である。3つの接続配線99は、接続領域S3から接続配線収容室93に向けて延びている。3つの接続配線99は、接続配線収容室93の内部で折り返され、コネクタ97に向けて延びている。3つの接続配線99それぞれの他端は、コネクタ97の出力端部に電気的に接続されている。導電ピン96には、コネクタ97を介して3つの接続配線99が電気的に接続されている。そのため、コネクタ97は、3つの接続配線99を介して回路基板103と電気的に接続されている。3つの接続配線99は、回路基板103と導電ピン96とを電気的に接続している。接続配線収容室93には、回路基板103から延びる3つの接続配線99が屈曲した状態で収容される。接続配線収容室93において、3つの接続配線99は、2つの固定クリップ93aによりまとめられた状態で第2延設壁部25eに固定されている。
ここで、インバータ収容室91を正面から見て、本体壁部25c及び突出壁部25fのうちモータ室81が投影される領域は、連通路24を介してモータ収容室80に導入された空気により冷却される。また、インバータ収容室91を正面から見て、本体壁部25c及び第1延設壁部25dのうちモータ配線収容室82が投影される領域は、連通路24を介してモータ収容室80に導入された空気により冷却される。そのため、区画壁を形成する本体壁部25c、第1延設壁部25d、及び突出壁部25fにおいて、モータ収容室80とは反対側の面が冷却領域S4と定義される。よって、回路基板103及びコネクタ97は、冷却領域S4に対向するように配置されている。そして、第2延設壁部25eは、冷却領域S4から外れている。3つの接続配線99は、接続配線収容室93に収容されていることから、3つの接続配線99は、冷却領域S4から外れるように配置されているといえる。
上記のように構成された電動圧縮機1は、図5に示すように、正極配線PL1及び負極配線PL2から回路基板103の高電圧領域S1に供給された電力を複数のスイッチング素子101のスイッチング動作により三相交流電力に変換し、3つの接続配線99を介して導電ピン96に供給する。複数のスイッチング素子101は、通信線CLから低電圧領域S2に入力される信号に基づき低電圧領域S2に設けられた回路が動作することでスイッチング動作が制御される。そして、図4に示すように、導電ピン96に供給された三相交流電力がモータ配線98を介して電動モータ12のコイルエンド13cに供給されることにより、電動モータ12が駆動する。電動モータ12の駆動に伴い、回転軸11が回転し、回転軸11の回転によって圧縮部60が駆動することでモータ収容室80に吸入された空気が圧縮部60によって圧縮される。圧縮部60により圧縮された空気は、吐出ハウジング50の吐出口50aから吐出される。
本実施形態の作用を説明する。
連通路24を介してモータ収容室80に空気が導入されることによりインバータ収容室区画壁及びフィルタ収容室区画壁を形成する本体壁部25c、第1延設壁部25d、突出壁部25f、及び底壁22a,23aが冷却される。そのため、スイッチング素子101およびフィルタ素子102が冷却される。
本実施形態の効果を説明する。
(1)連通路を介してモータ収容室に冷媒が導入されることによりインバータ収容室区画壁及びフィルタ収容室区画壁を形成する本体壁部25c、第1延設壁部25d、突出壁部25f、及び底壁22a,23aが冷却される。そのため、スイッチング素子101およびフィルタ素子102を多面的に熱交換することができる。したがって、フィルタ素子102およびスイッチング素子101の冷却に優れ、効率よく双方を冷却することができる。
(2)電動圧縮機1の出力を変えないまま電動圧縮機1を小型化する際に回路基板103が大きくなるため、インバータ収容室91の延設部91bを設け、延設部91bの内部にも回路基板103を延ばしている。そして、フィルタ収容室92は、延設部91bに連通するように延設方向Cの一方向に向けて延びている。しかし、フィルタ収容室92を延設方向Cの一方向に延ばすと、電動圧縮機1が必要以上に大きくなる虞がある。
その点、本実施形態では、並設方向Bにおいて回路基板103と対向するフィルタ収容室92の壁部である第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263は、延設方向Cの一方向に向かうにつれて回路基板103からの深さが浅くなるように形成されている。そのため、フィルタ収容室92の大きさを延設方向Cの一方向に向かうほど小さくし易くなる。よって、電動圧縮機1を小型化し易くなる。
(3)例えば、フィルタ収容室92を形成する周壁26bのうち回転軸11の軸線方向Aにおいて突出壁部25fと対向する壁部以外に導入口94が設けられる場合、正極配線PL1及び負極配線PL2が回転軸11の径方向外側に張り出すように配置されてしまう。また、例えば、正極配線PL1及び負極配線PL2が回路基板103に接続される位置が回路基板103の外縁ではない場合が考えられる。この場合、回路基板103の有効活用を目的として、回路基板103と正極配線PL1及び負極配線PL2との接続部分から回路基板103の面上をあらゆる方向に配線パターンが延びてしまうと、配線パターンが複雑になる。そして、必要以上に回路基板103の面積を使用することにより回路基板103が必要以上に大きくなってしまう虞がある。
その点、導入口94は、フィルタ収容室92を形成する周壁26bのうち回転軸11の軸線方向Aにおいて突出壁部25fと対向する壁部に形成されている。また、正極配線PL1及び負極配線PL2は、回路基板103の外縁における導入口94に臨む位置に接続されている。そのため、回路基板103に形成される回路パターンは、回路基板103の接続領域S3に向けて延ばす簡易的なパターンにできる。すなわち、導入口94から正極配線PL1及び負極配線PL2を導入するため、回路基板103の回路パターンの簡易化を実現でき、且つ必要以上に複雑な配線パターンを形成することがないため、回路基板103を必要以上に大きくする必要がない。よって、電動圧縮機1の体格の大型化を抑制できる。
(4)電動モータ12と圧縮部60に冷媒を供給するための連通路24は、モータ収容室80とインバータ収容室91とを区画する区画壁を形成する突出壁部25fの内部に形成されるため、連通路24の存在が回路基板103の収容空間の拡大の邪魔とならない。また、連通路24は突出壁部25f上に並ぶスイッチング素子101に沿って延在するので、電動モータ12から熱を得る前の空気によって、スイッチング素子101を優先して冷却することができ、信頼性の低下を抑制できる。
(5)モータ収容室80に吸入された空気を圧縮部60により圧縮するとき、空気は電動モータ12の全長に亘って移動するため、電動モータ12の全体を冷却することができる。よって、電動モータ12の冷却効率を向上させることができ、信頼性の低下を抑制で
きる。
(6)吸入口21とコイルエンド収容部81aとは回転軸11の軸線方向Aにおいて同じ位置に配置されている。そのため、複数のスイッチング素子101を冷却するためのインバータ収容室区画壁を形成する突出壁部25fの領域を回転軸11の軸線方向Aにおいて狭めることができる。複数のスイッチング素子101を冷却する領域を回転軸11の軸線方向Aにおいて必要以上に広くする必要がないため、回転軸11の軸線方向Aにおける電動圧縮機1の大型化を抑制できる。
(7)回路基板103がコネクタ97との干渉を避けるように形成されているため、回路基板103の外縁に凹部が設けられる。当該凹部内にコネクタ97が収容されるよう配置したので、コネクタ97の存在により電動圧縮機1が径方向に大型化することなく、またコネクタ97を避けるように回路基板103をモータ収容室80から大きくずらす必要もないのでインバータ100を効率良く冷却できる。また、コネクタ97と回路基板103とを3つの接続配線99で接続し、3つの接続配線99を冷却領域S4から離れた位置に配置することで、冷却の必要がない3つの接続配線99の配置にために冷却領域S4を割り当てる必要がなく、その分を回路基板103の冷却に割り当てることができる。したがって、インバータ100を効率よく冷却しつつも大型化を抑制できる。
(8)接続配線99は、回路基板103の上面103aに電気的に接続されている。そのため、回路基板103をインバータ収容室91に収容してから接続配線99を回路基板103に電気的に接続できるため、配線の取り回しの融通をより利かせることができる。
(9)導電ピン96と回路基板103とをコネクタ97内のバスバーでなくコネクタ97外の3つの接続配線99で電気的に接続したので、流れる電流が大きくても径方向に電動圧縮機1が大型化しにくい。バスバーに比べて3つの接続配線99は、特定の2ヵ所を電気的に接続するにあたり容積が限られたインバータ収容室91内では取り回しが困難であるが、接続配線収容室93を設けたため3つの接続配線99の取り回しが容易となる。3つの接続配線99は回路基板103に対してねじ止めや広範囲での半田付けによって接続が可能であり、3つの接続配線99自体の柔軟性も相まって、流れる電流が大きい状況で電動モータ12から振動が伝わっても接続箇所は破損しにくい。
(10)電動圧縮機1の適用先によっては、インバータ100が使用できる電圧に限りがある。そのため、電動圧縮機1の出力を変えないまま電動圧縮機1の小型化を実現する検討がなされている。電動圧縮機1の出力を変えないようにするためには、インバータ100で使用する電圧を下げ、インバータ100に流す電流を大きくする必要がある。このとき、回路基板103には大電流が流れるため、回路基板103のパターンが太くなり、パターンが太くなることに伴い、回路基板103が大きくなる。
本実施形態によれば、インバータ収容室91が回転軸11の軸線方向Aにおいて延びるように形成されているため、電動圧縮機1の出力を変えないまま電動圧縮機1を小型化する際に回路基板103が大きくなったとしても、回路基板103を回転軸11の軸線方向Aに延ばすことができるため、電動圧縮機1を回転軸11の径方向に小型化し易くなる。
電動モータ12と回路基板103とを電気的に接続する手段として、導電ピン96及び接続配線99を採用している。これにより、インバータ100の位置を変更するとき、接続配線99の屈曲具合を自在に変えることができるため、容易にインバータ100の位置を変更することができる。そのため、3つの接続配線99の融通が利く。
ここで、接続配線99が回路基板103の板厚方向に延びてしまうと、インバータ収容
室91が大型化してしまうため、接続配線収容室93を形成している。電動圧縮機1の出力を変えないまま電動圧縮機1を小型化する際に回路基板103が大きくなるため、インバータ収容室91の延設部91bを設け、延設部91bの内部にも回路基板103を延ばしている。そして、並設方向Bにおいてインバータ収容室91を正面に見たとき、延設方向Cで圧縮部60と並ぶ位置にはスペースが形成される。接続配線収容室93は、回転軸11の軸線方向Aにおいて延設部91bから突出するように形成されており、接続配線収容室93の内部には、接続配線99が屈曲した状態で収容されている。すなわち、接続配線収容室93は、インバータ収容室91の延設部91bにより形成された前述のスペースを接続配線99の収容スペースとして利用している。よって、インバータ収容室91内で接続配線99が回路基板103の板厚方向に延びることが抑制され、インバータ収容室91の必要以上な大型化が抑制されるとともにインバータ収容室91の延設部91bにより形成された前述のスペースに接続配線収容室93が形成されることにより電動圧縮機1が大型化することが抑制される。したがって、配線の取り回しの融通を利かせつつ小型化させ易くすることができる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 連通路24は、2つのコイルエンド収容部81aのうち圧縮部60寄りのコイルエンド収容部81aに連通していてもよい。
○ 吸入口21と、コイルエンド収容部81aとは、回転軸11の軸線方向Aにおいて異なる位置に配置されていてもよい。
○ フィルタ素子102は、コンデンサ102a及びコイル102bだけでなく、他の電子部品を更に追加してもよい。フィルタ素子102は、3つの以上の電子部品で構成されていてもよい。また、フィルタ素子102は、コンデンサ102a又はコイル102bのみで構成されてもよい。フィルタ素子102は、コンデンサ102a及びコイル102bとは別の1つの電子部品で構成されていてもよい。ただし、フィルタ素子102は、入力される電流のノイズを低減できる電子部品を採用する。
○ フィルタ収容室92を形成する第1底壁261、第2底壁262、及び第3底壁263のモータハウジング20の第2端部20bからの深さを全て同じにしてもよい。このように変更した場合、コンデンサ102a及びコイル102bは、延設方向Cの一方向に向かうほど回路基板103からの高さが高くなるようにフィルタ収容室92に収容されていてもよい。
○ 導入口94は、回転軸11の軸線方向Aにおいて第3底壁263に隣り合うように配置されていたが、例えば、回転軸11の軸線方向Aにおいて第1底壁261又は第2底壁262に隣り合うように配置されていてもよい。
○ 突出壁部25fと、本体壁部25c及び第1延設壁部25dとは、段差をなすように配置されていたが、突出壁部25fを割愛し、底壁25aを本体壁部25c及び第1延設壁部25dのみで形成してもよい。この場合、インバータ収容室区画壁は、本体壁部25c及び第1延設壁部25dにより形成されているとよい。
○ インバータ収容室91は、延設部91bを有していたが、収容本体部91aのみで形成されていてもよい。そのため、フィルタ収容室92は、延設方向Cの一方向に延ばす必要がなく、収容本体部91aのみと連通するように形成されていればよい。なお、上記のように変更する場合、導電ピン96を本体壁部25cに配置し、3つの端子部96aそれぞれの両端をインバータ収容室91の収容本体部91aとモータ配線収容室82とに延びるように変更する。また、接続配線収容室93を割愛し、3つの接続配線99は、イン
バータ収容室91内に屈曲させた状態で収容する。
○ 圧縮部60は、スクロール型に限らず、モータ収容室80に吸入された空気を圧縮できるように構成は適宜変更してもよい。
○ 電動圧縮機1の適用対象及び圧縮対象の気体は任意である。例えば、電動圧縮機1は車両や空調装置に用いられてもよく、圧縮対象の気体は冷媒ガスであってもよい。