JP7362060B2 - 計測装置及び計測装置用の演算処理装置 - Google Patents

計測装置及び計測装置用の演算処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、質量や弾性等をカンチレバー等の振動体の振動挙動から測定するための計測装置及び計測装置用の演算処理装置に関する。
従来、質量や弾性を計測する技術として、同一支持部材に同一形状の二つのカンチレバーを連成振動が可能なように設け、二つのカンチレバーの固有振動モードの形状から、カンチレバーに付加された測定対象物の微小質量を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。二本のカンチレバーを連成させることで、一本のカンチレバーを用いた場合と比べて、微小な質量や弾性の変化を高感度に検出できるとされている。ここでいう連成とは、二本のカンチレバーの一部を非常に弱いばねで連結し、片方の変位が、もう一方の変位に影響を与えるようにされていることをいう。
特開2014-190771号公報
M Manav、A Srikantha Phani、Edmond Cretu著、「Mode Localization and Sensitivity in Weakly Coupled Resonators」、IEEE Sensors Journal、VOL.19、NO.8、2019年4月15日、p.2999-3007 Chun Zhao、Graham S Wood、Jianbing Xie、Honglong Chang、Suan Hui Pu、Michael Kraft著、「A three degree-of-freedom Weakly coupled Resonator Sensor With Enhanced Stiffness Sensitivity」、Journal of Microelectromechanical Systems、VOL.25、NO.1、2016年2月、p.38-51
上記従来技術においては、二つのカンチレバーの連成効果が低い方が感度が向上し、また、二つのカンチレバーの物理特性を近づけるほど感度が向上することが知られている。しかしながら、これら二つの条件を十分に満たすカンチレバーを作製することは、機械設計上、また、製作上、限界がある。そのため、より高感度を実現することは困難であった。
また、連成可能な二本のカンチレバーを製作することは、一本のカンチレバーを製作することと比べれば技術的難易度が高く、製作歩留まりの悪化、煩雑性の悪化、コスト上昇等のデメリットが生じていた。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、感度がより高い計測装置及び計測装置用の演算処理装置を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するため、本発明では、連成する二本のカンチレバーの内、一方を取り去る。そして、取り去ったカンチレバーの代わりに、カンチレバーが二本連成していた時に他方のカンチレバーに与えられるはずの力をリアルタイムに理論的に計算して、他方のカンチレバーに取り付けられたアクチュエータに与える。これによって、あたかも二本のカンチレバーが連成して振動しているかのように、他方のカンチレバーのみを振動させる。こうすることで、製作すべきカンチレバーは一本だけですみ、また、カンチレバーの物理特性を理想的に近づけることも可能になり、さらには連成効果を理想的に小さくすることも可能になるため、上記の課題を解決することが可能になる。
すなわち、本発明の一態様によれば、二つの振動体の振幅を用いて、測定対象の物理量に相当する値を検出する計測装置であって、二つの振動体のうちの一つとしての実在する実振動体と、実振動体に予め設定した変位方向の力を付与するアクチュエータと、実振動体の振動変位を検出する振動変位検出部と、実振動体と仮想的に連成可能に結合される仮想振動体を二つの振動体のうちの他の一つとして模擬すると共に、仮想振動体と振動変位検出部で検出した実振動体の振動変位とに基づきアクチュエータを駆動制御する連成制御処理を実行する演算処理装置と、を備える計測装置が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、上記態様の計測装置用の演算処理装置であって、実振動体の振動変位を用いて、実振動体と仮想的に連成可能に結合される仮想振動体を模擬すると共にアクチュエータを駆動制御する信号を生成する計測装置用の演算処理装置が提供される。
本発明の一態様によれば、感度がより高い計測装置を容易に実現することができる。
本発明を適用した計測装置における質量測定方法を説明するための説明図である。 振動部の力学系の等価モデルの一例を示す図である。 計測装置の一例を示す概略構成図である。 実振動体部の一例を示す上面図である。 実振動体部の一例を示す正面図である。 計測装置全体のダイナミクスの一例を示すブロック線図である。 検証結果を説明するための図である。 検証結果を説明するための図である。 本発明を適用した計測装置の変形例を説明するための説明図である。 変形例における振動部の力学系の等価モデルの一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本実施形態では、計測装置により測定対象物の質量を測定する場合について説明する。
<従来技術の質量測定方法>
初めに、同等なバネ剛性と質量とをもち、同一支持部材に連成振動が可能なように設けられた二つの振動体(例えば、カンチレバー等)を有する振動部を用いた、質量測定方法を説明する。
まず、二つの振動体のうち、一方の振動体の振動速度(変位速度)に比例したフィードバック値を正帰還して二つの振動体に対して等しい加振入力を与える。これにより、二つの振動体に自励振動を発生させる。ここで、自励振動を発生させるために、フィードバックゲインを、予め設定した値から徐々に上げていく(または下げていく。)。そうすると、まず低次の固有振動モードのみで自励振動が発生する。このときの二つの振動体の振幅比が、厳密に低次の固有振動モードに対応する。
一方、測定対象物を二つの振動体のうちの一方に付加して、自励振動が発生したときの振幅比を測定する。そして、例えば、測定対象物を付加していないときの振幅比に対する、測定対象物を付加したときの振幅比の変化から、測定対象物の質量を計測する。
図1(a)は、このような質量測定方法を用いて測定対象物の質量を計測する際の、振動部1の構成例を示す図である。
図1(a)に示すように、振動部1は、カンチレバー1Aと、カンチレバー1Bと、支持部材1Cと、オーバーハング部1Dとを含んで構成される。
カンチレバー1A及び1Bは、共に同じ材料及び形状で構成されており、支持部材1Cに一端が固定され他端が自由端となる片持ち梁の状態で支持部材1Cに並設(連成)されている。つまり、カンチレバー1A及び1Bは、同等なバネ剛性と質量とを有している。
さらに、カンチレバー1A及び1Bの固定端側の根元部分は、支持部材1Cに突設形成されたオーバーハング部1Dによって接続されている。このオーバーハング部1Dは、カンチレバー1A及び1B間で相互に振動を伝える振動伝達部の役割を果たしており、このオーバーハング部1Dによって、カンチレバー1A及び1Bが連成振動する構造となっている。
図1(a)では、カンチレバー1Bに測定対象物を取り付け、カンチレバー1A及び1Bに外部から速度フィードバックとして変位を与えることで、カンチレバー1A及び1Bに自励振動を発生させる。
<本実施形態における質量測定方法>
本実施形態に係る計測装置は、このような質量測定方法を用いて測定対象物の質量を計測する際に、図1(b)に示すように、カンチレバー1A及びオーバーハング部1D(支持部材1Cを含む。)をデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等で構成される演算処理装置上で仮想モデルとして実現する。
〔等価モデル〕
図2は、本実施形態に係る計測装置に含まれる振動部1の力学系の等価モデルの一例を示す図である。
図2に示すように、振動部1を、連成された二つのカンチレバー1A及び1Bを考慮にいれた、「バネ-質量(マス)-ダンパ」系の等価モデル(以下、連成モデルともいう。)として考える。
図2に示す連成モデルでは、カンチレバー1Aは、支持部材1Cに一端が支持されたバネ定数kの第1バネa1と、支持部材1Cに一端が支持された減衰定数cの第1ダンパa2と、第1バネa1及び第1ダンパa2の他端に支持された質量mの第1物体a3とを備えたモデルとなる。
同様に、カンチレバー1Bは、図2に示すように、支持部材1Cに一端が支持されたバネ定数kの第2バネb1と、支持部材1Cに一端が支持された減衰定数cの第2ダンパb2と、第2バネ及び第2ダンパの他端に支持された質量mの第2物体b3とを備え、さらに、質量mの第2物体b3には、質量Δmの測定対象物が付加されたモデルとなる。つまり、カンチレバー1Aと1Bとはそれぞれ、同一のバネ定数kを有する第1バネa1又は第2バネb1と、同一の減衰定数cを有する第1ダンパa2又は第2ダンパb2と、同一の質量を有する第1物体a3及び第2物体b3とをそれぞれ備えたモデルとなる。
さらに、図2に示す連成モデルでは、図2に示すように、第1物体a3と第2物体b3とは、バネ定数kcの第3バネc1によって接続されている。このバネ定数kcの第3バネc1が、図1のオーバーハング部1Dに相当し、二つのカンチレバー1A及び1Bの連成効果を表している。
そして、本実施形態に係る計測装置は、図2中、破線で囲む部分が、仮想モデルとして模擬される。
ここで、図2に示す等価モデルにおいて、さらに外部からカンチレバー(仮想振動体)1A及びカンチレバー(実振動体)1Bの支持点に加振力Fを与える。このとき、システム(図2の連成モデル)の運動方程式は次式(1)及び(2)のようになる。なお、式(1)は、カンチレバー1Aを含む仮想モデルの運動方程式を示し、式(2)は実在のカンチレバー1Bの運動方程式を示す。
m・(dx1/dt)+c・(dx1/dt)
+(k+kc)・x1-kc・x2=F
…(1)
(m+Δm)・(dx2/dt)+c・(dx2/dt)
-kc・x1+(k+kc)・x2=F
…(2)
なお、(1)及び(2)式中の、x1はカンチレバー1Aの変位、dx1/dtはカンチレバー1Aの変位の一階微分値、dx1/dtはカンチレバー1Aの変位の二階微分値、x2はカンチレバー1Bの変位、dx2/dtはカンチレバー1Bの一階微分値、dx2/dtはカンチレバー1Bの二階微分値である。
ここで、自励発振が発生するようにカンチレバー1A及び1Bに与える外部からの加振力Fを、カンチレバー1Bの変位x2を用いて次式(3)のように与える。なお、(3)式中のbは、自励発振を発生させるために設定されるフィードバックゲインである。フィードバックゲインbは、実際の測定環境下において、自励発振が発生したときのフィードバックゲインの値に設定される。このフィードバックゲインbは、測定環境が変化しなければ更新する必要はなく、異なる測定環境下で測定を行うときに更新すればよい。
F=b・dx2/dt …(3)
(1)式及び(2)式は、(3)式を用いて次式(4)及び(5)に書き換えることができる。
m・(dx1/dt)+c・(dx1/dt)
+(k+kc)・x1-kc・x2=b・(dx2/dt)
…(4)
(m+Δm)・(dx2/dt)+c・(dx2/dt)
-kc・x1+(k+kc)・x2=b・(dx2/dt)
…(5)
(4)式及び(5)式は、次式(6)及び(7)に置き換えることができる。
m・(dx1/dt)+c・(dx1/dt)
+(k+kc)・x1-kc・x2-b・(dx2/dt)=0
…(6)
(m+Δm)・(dx2/dt)+c・(dx2/dt)
+k・x2=kc・(x1-x2)+b・(dx2/dt)
…(7)
本実施形態では、(6)式の運動方程式を、演算処理装置において四次のRunge-Kutta法を用いて仮想的に模擬する。また、(7)式中の右辺を、加振力Fとして実在のカンチレバー1Bに加える。
ここで、(6)式を、演算処理装置で仮想的に模擬するためには、状態変数Xを次式(8)として、式(6)を状態方程式に変換したのち、四次のRunge-Kutta法を用いてそれを解き、時刻tでの状態量(式(9))から単位ステップ時間後すなわち時刻t+hで状態量(式(10))を導出する。この時の仮想的なカンチレバー1Aの変位がx1(t+h)、速度がdx1(t+h)として求まる。
Figure 0007362060000001
なお、(9)式中のx1(t)及びdx1(t)/dtは、数値演算結果を利用する。また、x2(t)及びdx2(t)/dtは、実在のカンチレバー1Bの変位計測結果を利用する。
次に、(7)式の運動方程式、つまり、実在のカンチレバー1Bの運動方程式において、右辺の項を、加振力Fで表す。
つまり、運動方程式(7)は、加振力をFとすると、次式(11)で表される。
(m+Δm)・(dx2/dt)+c・(dx2/dt)
+k・x2=F
…(11)
そのため、(7)式を再現するために必要な加振力Fは、次式(12)で表される。
F=kc・(x1-x2)+b・(dx2/dt)
…(12)
つまり、(7)式を実現するために必要な加振力Fは、自励発振させるための速度フィードバック成分(線形速度フィードバック成分)と、連成効果を模擬するための変位フィードバック(線形変位フィードバック成分)との和となる。
以上から、連成カンチレバーの模擬に必要な演算とフィードバックすべき情報とがわかる。
〔等価モデルの検証例〕
次に、図2に示す仮想的な連成モデルの模擬方法が正しいかどうかを検証するために、マクロカンチレバーを用いて計測を行った。この計測は、図2に示す仮想的な連成モデルを模擬する図3~図5に示す計測装置100で行った。計測装置100では、実在のカンチレバー1Bの固定端がピエゾアクチュエータと接合されたマクロカンチレバーの先端から10mmの位置に、測定対象物としての付加質量を取り付け、計測を行った。
〔計測装置の構成〕
図3は、計測装置100の一例を示す概略構成図である。
計測装置100は、実在のカンチレバー1B、カンチレバー1Bの振幅を検出する変位計23及びカンチレバー1Bを振動させるアクチュエータを含む実振動体部11と、変位計23からの検出信号を用いて、仮想的なカンチレバー1Aの運動を模擬すると共にアクチュエータを制御するための連成制御処理を行う、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等で構成される演算処理装置12と、演算処理装置12からの指令信号にしたがってアクチュエータ22を駆動する駆動回路13と、表示装置14とを含む。
実振動体部11は、図4の上面図及び図5の正面図に示すように、実在のカンチレバー1Bと、カンチレバー1Bの一端を支持する支持部材21と、支持部材21を振動させるアクチュエータ22と、カンチレバー1Bの先端の変位を検出するレーザ変位センサ等を含む変位計(振動変位検出部)23と、を備える。なお、図4及び図5に記載の部分が計測装置用の部品に対応する。
支持部材21は、図5に示すように、細長い板状のカンチレバー1Bの一端を、カンチレバー1Bの幅方向が上下方向に垂直となるように支持する。
また、支持部材21は、カンチレバー1Bを保持する保持部21aと、保持部21aを、カンチレバー1Bの長手方向と直交する方向に摺動自在に支持する案内部21bを備える。保持部21aと案内部21bとは、直線ベアリング等を介して摺動自在に支持される。
アクチュエータ22は、例えば、1軸ピエゾアクチュエータ等を含んで構成され、伸縮する軸部22aと、軸部22aの一端を支持する支持部22bと、を備え、軸部22aの他端に保持部21aが固定される。軸部22aの伸縮方向と案内部21bにおける保持部21aの案内方向とは一致して配置され、アクチュエータ22が、駆動回路13からの駆動信号に応じて軸部22aを伸縮させることにより、保持部21aが案内部21bを案内として移動し、保持部21aによって保持されるカンチレバー1Bが移動する。その結果、アクチュエータ22が軸部22aの伸縮を交互に繰り返すように移動させることによって、保持部21aが振動し、その結果、カンチレバー1Bが振動するようになっている。
変位計23は、カンチレバー1Bの先端との間の距離を計測可能な位置に配置され、カンチレバー1Bの先端までの距離を計測する。変位計23で検出されたカンチレバー1Bの先端までの距離の変位を演算することによって、カンチレバー1Bの振幅を検出することができる。
〔計測装置のダイナミクスを示すブロック線図〕
図6は、計測装置100全体のダイナミクスの一例を示すブロック線図である。
ここで、DSP等で構成される演算処理装置12での計算上、有次元で説明されていた式(1)~式(12)は無次元量に換算する必要がある。式(6)及び式(7)を無次元化すると、次式(13)及び(14)で表すことができる。
(dx1/dt*2)+γ・(dx1/dt)
+(1+kc)・x1-kc・x2
-β・(dx2/dt)=0
…(13)
(1+δ)・(dx2/dt*2)
+γ・(dx2/dt)+x2
=kc・(x1-x2)+β・(dx2/dt)
…(14)
なお、式(14)中の、記号「*」は無次元量であることを表し、x1、x2は、それぞれx1、x2に対応する。また、t=(k/m)1/2・t、γ=c/(m・k)1/2、kc=kc/k、β=b/(m・k)1/2、δ=Δm/mである。
図6は、式(13)及び(14)をブロック線図で表したものである。
図6に示すように、カンチレバー1Bの変位x2は変位計23で検出され演算器31で変位計23のゲインG1が乗算された後、AD変換器(ADC)32でデジタル信号に変換され、演算処理装置12で処理される。すなわち、AD変換器32の出力は、演算器33でゲインG2が乗算された後、LPF(ローパスフィルタ)部34、微分器(振動速度検出部)35を経て、変位x2の一階微分値dx2/dtに変換されて乗算器36に入力され、乗算器36からβ・(dx2/dt)が出力される。変位x2の一階微分値dx2/dtに速度フィードバックゲインβを乗算することで自励発振させるためのフィードバック成分を作り出す。このフィードバック成分は加算器37に入力される。
演算器33の出力x2はさらに演算器38に入力されると共に、演算器39に直接又は微分器40を介して入力される。
演算器39は、演算器33の出力x2及び微分器40の出力dx2/dtをもとに、Runge-Kutta法を用いて仮想のカンチレバー1Aの変位x1を求める。変位x1は、演算器39に入力され、演算器39から変位x1と変位x2との差分が出力される。この差分に、仮想のカンチレバー1Aと実在のカンチレバー1Bとを連成させるための変位フィードバックゲインkcを、乗算器41で乗算することで、連成剛性を模擬するためのフィードバック成分を作り出す。このフィードバック成分は、加算器37に入力される。速度フィードバック成分としての乗算器36の出力β・(dx2/dt)と変位フィードバック成分としての乗算器41の出力kc・(x1-x2)は、加算器37で加算され、加振入力変位Δxとして出力される。加振入力変位Δxは、演算器42に入力されゲインG3が乗算された後、DA変換器(DAC)43を介してアクチュエータ22に出力される。つまり、DA変換器43の出力は、乗算器(フィードバック制御部)44でアクチュエータ22(ピエゾアクチュエータ)の圧電定数d33が乗算されて、カンチレバー1Bに加振入力変位Δxとして入力される。これにより、仮想的な振動体の連成効果を模擬したフィードバックループが構成される。
なお、ゲインG2、G3は、例えば、無次元量から有次元量に換算するための代表長さ及び代表時間に基づき設定される。
〔検証実験に用いたカンチレバー1Bの特性〕
次に、計測装置100で用いた実在のカンチレバー1Bの特性を説明する。
カンチレバー1Bの材質は、C5191P(リン青銅板)である。カンチレバー1Bの形状は固定端からの長さが210[mm]、幅が15[mm]、厚さが0.3[mm]である。また、カンチレバー1Bの固有周波数f1は3.964Hz、無次元減衰係数γは1.770×10-3である。
〔検証結果〕
以上の構成を有する計測装置100において、変位フィードバックゲインkcを任意の値に設定することによって、仮想のカンチレバー1Aと実在のカンチレバー1Bとの連成剛性を、所望の値に設定することができているかの確認を行った。具体的には、仮想の連成剛性を模擬するための変位フィードバックゲインkcを変化させたときの、実在のカンチレバー1Bの二次モード固有周波数f2の変化状況を利用して確認を行った。
図7(a)は、変位フィードバックゲインkcとして設定した値と、そのときの実在のカンチレバー1Bの二次モード固有周波数f2の測定値とを示す。なお、カンチレバー1Bの二次モード固有周波数f2は、例えば変位計23の検出値から検出されるカンチレバー1Bの自由振動の周波数分析から得ることができる。
また、図7(b)に変位フィードバックゲインkcとして設定した設定値と、二次モード固有周波数f2から演算した連成剛性の実験値kceとの対応を示す。図7(b)において、横軸が変位フィードバックゲインkcとして設定した設定値、縦軸が連成剛性の実験値kceである。連成剛性の実験値kceは、次式(15)から算出した。なお、(15)式は、速度フィードバックゲインをβ=0として、(13)式及び(14)式から導いたものであり、速度フィードバックゲインをβ=0としたときの、連成剛性の実験値kceは理論的には、(15)式で表すことができる。なお、(13)式及び(14)式中のδ及びγは、実在のカンチレバー1Bの特性を表す係数であって、ここでは、δ及びγは共に零としている。
kce=(1/2)×{(f2/f1)-1}
…(15)
図7(b)に示すように、変位フィードバックゲインkcと、連成剛性の実験値kce、つまり、変位フィードバックゲインkcを与えた時の自由振動実験から得たカンチレバー1Bの固有周波数f1及びカンチレバー1Bの二次モード固有周波数f2を使い式(15)から求めた連成剛性の実験値kceとの関係は、傾き「1」の直線上にほぼ位置することが確認できた。つまり、変位フィードバックゲインkcを調整することによって、所望の連成剛性の実験値kceでカンチレバー1Bと接続された仮想のカンチレバー1Aを模擬できることが確認された。
図8は、計測装置100において、変位フィードバックゲインkcがkc=0.01であるとき(図8(a))及びkc=0.005であるとき(図8(b))の、カンチレバー1Aと1Bとの振幅比及び質量比との関係を示したものである。
図8(a)及び(b)において、横軸は質量比、縦軸は振幅比(x1/x2)である。
図8(a)及び(b)から、振幅比は質量比の増加に伴い単調に減少していることがわかる。つまり、振幅比から質量計測を行うことができることが確認された。
また、図8(a)及び(b)から、変位フィードバックゲインkcが小さい方が、質量比の変化に対する振幅比の変化量が大きいことがわかる。つまり、変位フィードバックゲインkcを変化させることで、測定対象物の質量の計測感度を調整することができ、変位フィードバックゲインkcが小さいほど、計測感度がより向上することが確認できた。
以上から、計測装置100の演算処理装置12により、図2に示す等価モデルを模擬することによって、連成結合された仮想のカンチレバー1Aと実在のカンチレバー1Bとを用いた、カンチレバー1Bに付加した測定対象物の質量計測を行うことができることがわかる。
また、計測装置100では、実在のカンチレバー1Bと仮想のカンチレバー1Aとの変位の差分に比例した変位フィードバックをカンチレバー1Bに与えるようにしたため、連成剛性を模擬することができる。また、変位フィードバックゲインkcを調整することで、任意の連成剛性を模擬することができる。
そして、Runge-Kutta法を用いることで、連成結合されたカンチレバー1A及び1Bをリアルタイムで模擬することができる。そのため、測定対象物が取り付けられたカンチレバー1Bの振幅と、仮想のカンチレバー1Aの振幅との比から測定対象物の質量を測定することができる。
さらに連成剛性を任意に変化させることによって、測定対象物の質量の計測感度を調整することができる。また、連成剛性は任意に変化させることができ、すなわち、機械工作を行って実在の二つのカンチレバーを接続して連成接続する場合に比較して、連成剛性をより小さくすることができる。すなわち、より精度の高い計測装置100を実現することができる。
また、上述のように、カンチレバー1A及びオーバーハング部1Dを、演算処理装置12で仮想的に模擬しているため、既存の一つのカンチレバーを用いて、測定対象物の質量測定を行う計測装置において、図3に示す演算処理装置12、駆動回路13及び表示装置14を含む模擬装置100aを搭載するだけで、実現することができる。そのため、既存の計測装置において模擬装置100aを追加することによって、計測装置の精度を容易に向上させることができる。
<変形例>
〔1〕上記実施形態において、計測装置100を、自励発振の振幅をより小さく抑えることができるように構成してもよい。
すなわち、加振力をFとして、次式(16)で表される値を用いる。
F=kc・(x1-x2)+b・(dx2/dt)
+f(x,(dx/dt)) …(16)
なお、(16)式中のf(x,(dx/dt))は、非線形速度フィードバック成分であり、その位相が、dx2/dtと反相または同相である必要がある。例えば、f(x,(dx/dt))を次式(17)に示すように設定し、(17)式中のbnを調整すれば、仮想のカンチレバー1A及び実在のカンチレバー1Bの振幅を小さく抑えることができる。その結果、カンチレバー1A、1Bの振動が発散することを抑制することができると共に、発散を抑制することができるため、線形モードを精度よく測定することができる。
この場合、(1)式及び(2)式に示す運動方程式は、次式(18)及び(19)で表すことができる。
f(x,(dx/dt))=bn・(dx2/dt)
…(17)
m・(dx1/dt)+c・(dx1/dt)
+(k+kc)・x1-kc・x2
=b・(dx2/dt)+bn・(dx2/dt)
…(18)
(m+Δm)・(dx2/dt)+c・(dx2/dt)
-kc・x1+(k+kc)・x2
=b・(dx2/dt)+bn・(dx2/dt)
…(19)
〔2〕上記実施形態では、仮想のカンチレバー1Aとして、実在のカンチレバー1Bと同一形状及び同一特性を有するカンチレバーを想定した場合について説明したが、これに限るものではない。仮想のカンチレバー1Aと実在のカンチレバー1Bとで固有周波数が同一であればよく、固有周波数が同一であれば、同一形状でなくともよい。カンチレバー1Aと1Bの固有周波数が一致する精度が高いほど、計測装置100における測定精度が高くなる。ここでいう同一とは、厳密に一致する場合のみならず、実質的に同一とみなせる程度の差(例えば、1%~2%のずれ)がある場合も含む。測定可能な範囲で実際に測定することができたカンチレバー1Bの固有周波数を用いて、カンチレバー1Aと1Bの固有周波数とが同一となるように調整した場合に、両者の固有周波数の差が最小となる場合を含む。
〔3〕上記実施形態において、さらに、演算処理装置12で初期処理を実行するようにしてもよい。例えば、アクチュエータ22を駆動して実在のカンチレバー1Bのみを駆動し、自励発振するときの周波数を取得する。具体的には、カンチレバー1Bの振動状況を観察しつつ、フィードバックゲインを変化させ、振動し始めた時点の周波数、つまり共振周波数を取得する。これを固有周波数とし、この取得した固有周波数に基づく情報を、仮想のカンチレバー1Aの模擬に必要な情報として設定する。以後、設定した情報を用いて、カンチレバー1Aの模擬を行う。この初期処理は、例えば、一連の測定対象物に対する計測開始時、或いは、定期的等、予め設定したタイミングで行えばよい。なお、固有周波数とは、理論的な値であり、実際に共振した周波数が共振周波数である。粘性の影響が強く生じない限り、固有周波数とほぼ等しい共振周波数となる。
なお、初期処理として、フィードバックゲインbの設定を行う処理も含めて行うようにしてもよい。
〔4〕上記実施形態では、演算処理装置12において上記演算処理を行うようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、上記演算処理を行うアナログ回路を構成し、このアナログ回路によって演算処理を行うようにしてもよい。つまり、カンチレバー1Bの長さが短くなると、カンチレバー1Bの振動周波数が高くなり、より高速演算が要求されるため、演算処理装置12として、より高性能なデジタルシグナルプロセッサ等を用いる必要があり、これはコストの増加につながる。この場合には、図3に示す演算処理装置12を、アナログ回路で構成することにより、高性能なデジタルシグナルプロセッサ等を用いることなく実現することができ、すなわちコストの増加を抑制することができる。
演算処理装置12の機能をアナログ回路で実現する場合、(1)式と同等の電気信号を出力するアナログ共振回路を組むことが好ましい。例えば、LCR回路でバネマスモデルを組むことで、あたかも、仮想のカンチレバー1Aの固定端に実在のカンチレバー1Bの変位信号が入力されたかのようにモデルを組むことができ、実在のカンチレバー1Bと連成結合された仮想のカンチレバー1Aをより高精度に実現することができる。
〔5〕上記実施形態においては、アクチュエータ22として一軸のピエゾアクチュエータを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば、磁石等、カンチレバー1Bの固定端を、往復動させることができるアクチュエータであれば適用することができる。
また、上記実施形態において、カンチレバー1Bの先端側を振動させるようにしてもよい。例えば、磁石或いはピエゾアクチュエータ等、カンチレバー1Bの先端を振動させることができるアクチュエータであれば適用することができる。
〔6〕上記実施形態においては、測定対象物の質量を計測するカンチレバー1Bに適用した場合について説明したが、これに限るものではない。
例えば、AFM(原子間力顕微鏡)等で用いられるプローブに適用し、実在のプローブと仮想のプローブとを連成結合した仮想モデルを模擬してもよい。
また、測定対象の物理量としては、質量に限るものではなく、表面形状、弾性率、粘弾性率、力の場のいずれかであってもよい。ここでいう、力の場とは、空間の電場、空間の磁場、万有引力の空間分布等を含む。
例えば、測定対象の電場を測定する場合、実在の二つのカンチレバーを用いて測定する方法にあっては、二つのカンチレバーが共に電場の影響を受ける可能性がある。
本実施形態における計測装置100では、一方のカンチレバー1Aは仮想のカンチレバーであるため、二つのカンチレバーを、一方のカンチレバーが電場の影響を受けない位置まで離して配置した場合と同等の状況を、仮想的に実現することができる。そのため、二つのカンチレバーが共に電場の影響を受けることを回避することができ、その分、計測精度を向上させることができる。
また、万有引力の空間分布を測定することにより、例えば、移動体の質量を検出することができる。つまり、地上では質量体の移動に伴い、万有引力の変化が生じるため、この万有引力の変化を検出することで、移動体の質量を検出することができる。
〔7〕上記実施形態においては、変位計23として、レーザ変位計を用いた場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、静電容量変位センサ、エンコーダ、光学式変位計(例えば光てこ法を用いた変位センサ等)、ひずみゲージ等を用いることができる。また、渦電流を計測し、その変位量からカンチレバー1Bの変位を検出するようにしてもよく、要は、カンチレバー1Bの変位を検出することができればどのような手法で計測してもよい。
〔8〕上記実施形態においては、振動体としてカンチレバーを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。振動体としてコイルバネを適用することも可能である。
〔9〕上記実施形態において、カンチレバー1Aと、オーバーハング部1Dとを演算処理装置12によって、仮想的に模擬する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、カンチレバー1Aとカンチレバー1Bとを実際に設け、これら実在のカンチレバー1Aとカンチレバー1Bとを、演算処理装置12によって仮想的に連成結合させるように構成してもよい。この場合には、例えば、カンチレバー1Aの振幅と、カンチレバー1Bの振幅とを検出し、これらをもとに、カンチレバー1Aとカンチレバー1Bとを仮想的に連成結合する等価モデルを利用して、カンチレバー1A及び1Bを駆動するアクチュエータを制御すればよい。
〔10〕上記実施形態において、さらに、カンチレバー1Aとカンチレバー1Bの間に、感度向上用のカンチレバーを複数設けてもよい。
図9は、仮想のカンチレバー1Aに相当する仮想のカンチレバーCL1と、実在のカンチレバー1Bに相当する実在のカンチレバーCLn(nはn≧3の整数)と、カンチレバーCL1とCLnとの間に存在する、感度向上用の1又は複数のカンチレバーCLi(iは2≦i≦n-1)とを有する振動部1を用いた、原子間力の測定方法を説明するための説明図である。実在のカンチレバーCLnに、測定対象の原子間力を作用させ、この原子間力を測定する。
図9において、仮想のカンチレバーCL1と実在のカンチレバーCLnとは、同一の固有周波数を有する。固有周波数を一致させる方法としては、仮想のカンチレバーCL1と感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1と実在のカンチレバーCLnとを同一の材料及び形状で構成し、同等のバネ剛性と質量とを有するように形成する方法や、バネ剛性と質量との比を一致させる方法等がある。
感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1は、カンチレバーCL1及びカンチレバーCLnと同等に形成される。すなわち、支持部材1Cに一端が固定され他端が自由端となる片持ち梁の状態で、支持部材1Cに並設され、隣り合うカンチレバーの固定端側の根元部分は、支持部材1Cに形成されたオーバーハング部1Dによって接続され、仮想のカンチレバーCL1と感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1と実在のカンチレバーCLnとは連成振動する構造となっている。
感度向上用の仮想のカンチレバーCL2~CLn-1は、仮想のカンチレバーCL1と同様に、演算処理装置上で仮想モデルとして実現される。仮想のカンチレバーCL1と実在のカンチレバーCLnとが同一の固有周波数を有していれば、感度向上用の仮想のカンチレバーCL2~CLn-1の固有周波数は、仮想のカンチレバーCL1及び実在のカンチレバーCLnの固有周波数と同一でなくてもよい。
図10は、振動部1の力学系の等価モデル(連成モデル)の一例を示す図である。図10に示す連成モデルでは、仮想のカンチレバーCL1は、支持部材1Cに一端が支持されたバネ定数k1の第1バネK1と、第1バネK1の他端に支持された質量m1の第1物体M1とを備えたモデルとなる。
同様に、実在のカンチレバーCLnは、図10の右端の一点鎖線の枠内のカンチレバーとして示すように、支持部材1Cに一端が支持されたバネ定数knの第nバネKnと、第nバネKnの他端に支持された質量mnの第n物体Mnと、を備え、さらに、第nバネKnは、バネ定数knに、測定対象の原子間力に応じたバネ剛性Δkが付加されたモデルとなる。
感度向上用の仮想のカンチレバーCLi(2≦i≦n-1)は、支持部材1Cに一端が支持されたバネ定数kiの第iバネKiと、第iバネKiの他端に支持された質量miの第i物体Miとを備えたモデルとなる。
さらに、図10に示す連成モデルでは、第1物体M1と第2物体M2とはバネ定数kcのバネKc1によって接続され、同様に、隣り合う物体同士がバネ定数kcのバネによって接続され、実在のカンチレバーCLnに対応する第n物体Mnと感度向上用のカンチレバーCLn-1に対応する第(n-1)物体Mn-1とがバネ定数kcのバネKcn-1によって接続される。このバネ定数kcのバネKc1~Kcn-1が、図9のオーバーハング部1Dに相当し、カンチレバーCL1~CLnの連成効果を生じさせる。図10において、破線で囲む部分が仮想モデルとして模擬される。
このような振動部1を有する計測装置において、測定を行う場合には、支持部材1Cに支持されたカンチレバーのうち、実在のカンチレバーCLnに測定対象の例えば原子間力を作用させ、支持部材1Cに支持されたカンチレバーのうち端部に位置するカンチレバーであり且つ仮想のカンチレバーである、カンチレバーCL1に加振入力を与える。
ここで、非特許文献1及び非特許文献2には、レゾネータ(カンチレバー)を用いた計測装置において、多数のレゾネータを弱連成すると、レゾネータの数を増加させるほど、計測装置を高感度化することができることが記載されている。
非特許文献2に記載されているように、剛性が低下するとき(Δk<0)には、二次モードの振幅比を測定する。逆に、剛性が増加するとき(Δk>0)には、一次モードの振幅比を測定する。ここでは、図9に示す連成モデルについて剛性が低下するときを非特許文献1にしたがって説明する。
非特許文献1の式(13)から、n番目のカンチレバーCLnの無次元の剛性変化δ=Δk/k1に対する、二次モードにおける1番目のカンチレバーCL1とn番目のカンチレバーCLnとの振幅比an2(振幅比1からのずれ)の変化割合S2は、次式(20)(非特許文献1の式(13)に対応)で与えられる。なお、(20)式中の、αiは、αi=mi/m1(i=2、…、n)、δ=Δk/k1、κ=kc/k1、λpはn個のカンチレバーCL1~CLnを有する振動部を備えた計測装置におけるp次の固有値である。
Figure 0007362060000002
弱連成カンチレバーが2つの場合、(20)式は、次式(21)で表すことができる。
Figure 0007362060000003
したがって、(20)式から、以下の条件を満足するときに、変化割合すなわち感度S2が大幅に向上することがわかる。
条件1 カンチレバーの数nをできるだけ多くする。つまり、感度向上用のカンチレバーを多数設ける。
条件2 αn=mn/m1をできるたけ小さくする。
条件3 感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1の各質量m2~mn-1を、カンチレバーCL1の質量m1よりも大きくする。
条件4 カンチレバーCL2~CLn-1の各バネ剛性すなわちバネ定数k2~kn-1をカンチレバーCL1のバネ剛性すなわちバネ定数k1よりも大きくする。
以上から、図9及び図10に示すように、仮想のカンチレバーCL1と実在のカンチレバーCLnとの間に、感度向上用の仮想のカンチレバーCL2~CLn-1を設け、連成振動させるカンチレバーCL1~CLnの数を増やすことで、感度が向上することがわかる。
そして、図9及び図10に示すように、本実施形態に係る振動部1では、仮想のカンチレバーCL1と感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1とを実在のカンチレバーではなく、仮想のカンチレバーとして実現している。そのため、複数のカンチレバーを実際に製造することは困難であったとしても、本実施形態に係る計測装置100では、実在のカンチレバーCLnを除く他のカンチレバーである仮想のカンチレバーCL1と感度向上用のカンチレバーCL2~CLn―1とを、仮想的に模擬しているため、実存のカンチレバーCLnのみを製造することで、容易に多数の感度向上用のカンチレバーと連成した高感度なカンチレバーを製作することができる。このことは、非特許文献1及び非特許文献2と本実施形態の最も異なる点である。すなわち、非特許文献1及び非特許文献2では多数の実存のカンチレバーを連成させることを想定しているため、技術的に製造が困難であるのに対して、本実施形態は、実存のカンチレバーは一本だけでよいため、技術的に製造が容易である。本実施形態では、仮想のカンチレバーCL1及び感度向上用の多数のカンチレバーCL2~CLn-1を“模擬的に”作成しているものの、本発明では実存のカンチレバーが存在しており、さらに、連成を実行できる演算処理装置を実存のカンチレバーと組み合わせることで、既知の技術より優れた性能を実現するものであるから、抽象的概念には該当しない。
そして、本実施形態に係る振動部1では、感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1を実在のカンチレバーではなく、仮想のカンチレバーとして実現している。そのため、感度向上用のカンチレバーとして模擬する数を増加させることが容易であり、連成振動させるカンチレバーの数が多いときほど、より一層感度を向上させることができる。非特許文献1や非特許文献2に記載の技術では、感度向上のためのカンチレバーの数は、物理的なサイズや、強度、コストなどに制限されるため、際限なく増やすことはできない。
このように容易に感度を向上させることができるため、感度が低いため計測することのできなかった物理量であっても、上述のように感度を向上させることで計測することが可能となり、使い勝手を向上させることができ、汎用性を高めることができる。
また、このように容易に感度を向上させることができるため、今まで計測することのできなかった軽量の物質等であっても容易に計測することができる。
また、条件2にあるように、αn=mn/m1をできるだけ小さくすることで、感度があがる。ここで、m1は、仮想のカンチレバーCL1が有する第1物体M1の質量であるため、本実施形態では、質量m1を仮想的に増加させるほど感度を向上させることができ、感度を容易に向上させることができる。非特許文献1や非特許文献2に記載の技術では、質量m1を増加させることは物理的なサイズや、強度、コストなどに制限されるため、限界がある。
なお、上記実施形態において、少なくとも、仮想のカンチレバーCL1と、実在のカンチレバーCLnとの固有周波数が一致していればよいが、好ましくは、感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1のバネ剛性が、カンチレバーCL1及びCLnのバネ剛性よりも高いことが好ましい。また、感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1は、感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1のバネ剛性が、カンチレバーCL1及びCLnのバネ剛性よりも高ければ、必ずしも、感度向上用のカンチレバーCL2~CLn-1どうしは、同じ材料及び形状である必要はなく、バネ剛性及び質量が異なっていてもよい。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
1 振動部
1A カンチレバー(仮想振動体)
1B カンチレバー(実振動体)
1C 支持部材
1D オーバーハング部
11 実振動体部
12 演算処理装置
13 駆動回路
14 表示装置
21 支持部材
21a 保持部
21b 案内部
22 アクチュエータ
22a 軸部
22b 支持部
23 変位計
100 計測装置
100a 模擬装置
CL1 仮想のカンチレバー
CL2~CLn-1 感度向上用のカンチレバー
CLn 実在のカンチレバー

Claims (9)

  1. 二つの振動体の振幅を用いて、測定対象の物理量に相当する値を検出する計測装置であって、
    前記二つの振動体のうちの一つとしての実在する実振動体と、
    当該実振動体に予め設定した変位方向の力を付与するアクチュエータと、
    前記実振動体の振動変位を検出する振動変位検出部と、
    前記実振動体と仮想的に連成可能に結合される仮想振動体を前記二つの振動体のうちの他の一つとして模擬すると共に、当該仮想振動体と前記振動変位検出部で検出した前記実振動体の振動変位とに基づき前記アクチュエータを駆動制御する連成制御処理を実行する演算処理装置と、
    を備えることを特徴とする計測装置。
  2. 前記仮想振動体は、前記実振動体と連成する振動体の物理モデルを理論数式で模擬する数値情報で表現されていることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
  3. 前記演算処理装置は、前記仮想振動体の固有周波数が、前記実振動体の固有周波数と一致するように前記仮想振動体を模擬することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計測装置。
  4. 前記演算処理装置は、
    前記実振動体の振動速度を検出する振動速度検出部と、
    フィードバック制御信号により前記アクチュエータを駆動するフィードバック制御部と、
    を備え、
    前記フィードバック制御信号は、
    前記振動変位検出部で検出した前記実振動体の振動変位と前記演算処理装置で模擬される前記仮想振動体の振動変位との差に基づく線形変位フィードバック成分と、前記振動速度検出部で検出した前記振動速度に基づく線形速度フィードバック成分とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の計測装置。
  5. 前記フィードバック制御信号は、前記実振動体の振幅を抑制するために、前記振動速度に対して同相または反相の非線形速度フィードバック成分を含むことを特徴とする請求項4に記載の計測装置。
  6. 前記演算処理装置は、前記アクチュエータを駆動制御し、前記実振動体を振動させて共振点における共振周波数を取得し、当該取得した共振周波数に基づく前記仮想振動体の模擬に必要な情報を設定する初期処理を実行するようになっている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の計測装置。
  7. 前記物理量は、質量、表面形状、弾性率、粘弾性率、及び力の場の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の計測装置。
  8. 前記演算処理装置は、前記仮想振動体とは別に、当該仮想振動体と前記実振動体との間に仮想的に連成可能に結合される感度向上用の他の仮想振動体を模擬し、前記仮想振動体と、前記感度向上用の他の仮想振動体と、前記振動変位とに基づき前記アクチュエータを駆動制御する連成制御処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の計測装置。
  9. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の計測装置用の演算処理装置であって、
    前記実振動体の振動変位を用いて、前記実振動体と仮想的に連成可能に結合される仮想振動体を模擬すると共に前記アクチュエータを駆動制御する信号を生成することを特徴とする計測装置用の演算処理装置。
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