JP7361631B2 - 鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法及びこれを用いた鉄道車両の横圧測定方法 - Google Patents
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Description
従来、脱線に対する指標として、鉄道車両の車輪とレールとの間に作用する水平荷重である横圧Qを、鉄道車両の車輪とレールとの間に作用する鉛直荷重である輪重Pで除した値である脱線係数Q/Pが広く用いられている。特に、鉄道車両が軌道の曲線区間を走行する際、鉄道車両の台車が具備する前側輪軸が有する外軌側車輪の脱線係数(外軌脱線係数)Q/Pが広く用いられている。
(1)車上測定:車輪に作用する力を検出することで輪重P及び横圧Qを測定可能なセンサが取り付けられたPQ輪軸を具備する台車やPQモニタリング台車によって、これらの台車が走行する曲線区間での輪重P及び横圧Qを測定する方法(例えば、特許文献1参照)。
(2)地上測定:レールに作用する力をひずみゲージ等で検出することで輪重P及び横圧Qを測定可能な測定装置を曲線区間に設置し、この測定装置によって、前記曲線区間を走行する台車の輪重P及び横圧Qを測定する方法(例えば、特許文献2参照)。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、鉄道車両の車輪と前記鉄道車両が走行する軌道のレールとの接触位置を測定する方法であって、前記軌道側で輪重及び横圧を測定する輪重・横圧測定ステップと、前記軌道側で前記レールの小返り量を測定する小返り量測定ステップと、前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記輪重及び前記横圧と、前記小返り量測定ステップで測定した前記レールの小返り量とに基づき、前記接触位置を算出する接触位置算出ステップと、を含むことを特徴とする鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法を提供する。
なお、本発明において、「小返り量」とは、小返り(所定以上の横圧がレールに作用することでレールが軌間の外方に傾く現象)によって生じる、レールの頭部側面の水平方向の変位とレールの底部側面の水平方向の変位との差の変動量(レールに荷重が付加されていないときの変位の差を基準とする変動量)を意味する。
すなわち、好ましくは、前記小返り量測定ステップにおいて、非接触式変位計を用いて、前記レールの頭部側面の水平方向の変位である第1変位と前記レールの底部側面の水平方向の変位である第2変位とを測定し、前記第1変位及び前記第2変位に基づき、前記小返り量を算出する。
具体的には、第1変位と第2変位との差の変動量を小返り量として算出することが可能である。
なお、非接触式変位計としては、レーザ変位計を好適に用いることができる。レーザ変位計としては、いわゆる三角測量方式のレーザ変位計を用いてもよいし、TOF(Time Of Flight)方式のレーザ変位計を用いてもよい。
X=(a-Q1・β)/{P1(α-b・β)} ・・・(1)
上記式(1)において、βは、前記小返り量aを前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記接触位置Xとの積と、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重との線形和で表した場合に、前記水平荷重に掛かる係数を意味する。また、αは、前記小返り量aを前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記接触位置Xとの積と、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重と前記接触位置Xとの積に掛かる係数を意味する。さらに、bは、前記横圧Q1を前記垂直荷重と前記水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重に掛かる係数を前記接触位置Xで除算した値を意味する。
a=P2・α・X+Q2・β ・・・(A)
上記式(A)において、βは、水平荷重Q2に掛かる係数である。
上記式(A)において、αは、垂直荷重P2と接触位置Xとの積に掛かる係数である。
また、本発明者らの知見によれば、以下の式(B)に示すように、横圧Q1は、垂直荷重P2と水平荷重Q2との線形和で表すことできる。
Q1=b・X・P2+Q2 ・・・(B)
上記式(B)において、bは、垂直荷重P2に掛かる係数b・Xを接触位置Xで除算した値である。
したがい、上記式(1)で用いられているパラメータβ、α、bは、前述の定義の通りとなる。
したがい、本発明によれば、車輪とレールとの間に作用する水平荷重を真の横圧として軌道側で精度良く算出可能である。
Q2=Q1-b・X・P1 ・・・(2)
上記式(2)において、bは、前記横圧Q1を前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重に掛かる係数を前記接触位置Xで除算した値を意味する。
最初に、従来の横圧測定方法の問題点について説明する。
図3は、従来の地上測定による輪重・横圧測定方法を模式的に説明する説明図である。図3(a)は、測定方法の概要を示す図である。図3(b)は、測定結果の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、従来の輪重・横圧測定方法では、レールRの腹部R2の内軌側側面及び外軌側側面にそれぞれ2枚(図3(a)では1枚のみ図示)ずつ計4枚のひずみゲージ(直交型ひずみゲージ)1を貼り付け、このひずみゲージ1の出力に基づき輪重を測定している。また、レールRの底部R3の内軌側上面及び外軌側上面にそれぞれ2枚(図3(a)では1枚のみ図示)ずつ計4枚のひずみゲージ(直交型ひずみゲージ)2を貼り付け、このひずみゲージ2の出力に基づき横圧を測定している。なお、この従来の輪重・横圧測定方法は、例えば、「在来鉄道運転速度向上試験マニュアル・解説」(鉄道総合技術研究所編、平成5年5月10日発行)等に記載のように公知であるため、ここでは、これ以上の詳細な説明は省略する。
図3(a)に示すA点~E点では、鉛直方向下方に荷重を付加した。F点では、鉛直方向に対して20°の角度を成す方向から荷重を付加した。G点では、鉛直方向に対して30°の角度を成す方向から荷重を付加した。H点では、鉛直方向に対して45°の角度を成す方向から荷重を付加した。I点では、鉛直方向に対して70°の角度を成す方向から荷重を付加した。J点では、鉛直方向に対して90°の角度を成す方向、すなわち水平方向から荷重を付加した。
なお、C点は、レールRの中心軸CLを通る点であり、本明細書では、接触位置の水平方向(X方向)の座標(接触位置X)は、C点を基準(=0)として、この基準よりも内軌側の接触位置を正の値とし、この基準よりも外軌側の接触位置を負の値とする。
一方、横圧Q1については、C点において、正しい値である0kNの荷重が測定されているものの、接触位置が基準からずれたA点、B点、D点及びE点においては、横圧は本来0kNであるにも関わらず、見かけ上横圧が発生しており、正しい値が測定されていない。
このように、本発明者らは、地上測定において横圧Q1の測定精度が悪化する原因が鉄道車両の車輪とレールRとの接触位置の変動にあることを見出した。
そこで、本発明者らは、軌道側(地上側)で車輪とレールRとの接触位置を測定する方法を鋭意検討し、適切な測定方法を見出した。そして、この接触位置測定方法を用いた横圧測定方法を見出した。
図1は、本実施形態に係る接触位置測定方法及び横圧測定方法を実行するための測定装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る測定装置100は、従来と同様のひずみゲージ1、2と、非接触式変位計としてのレーザ変位計3、4と、演算手段5と、を備えている。
図2は、本実施形態に係る接触位置測定方法及び横圧測定方法の概略手順を示すフロー図である。
図2に示すように、本実施形態に係る接触位置測定方法は、輪重・横圧測定ステップS1、小返り量測定ステップS2及び接触位置算出ステップS3を含んでいる。また、本実施形態に係る接触位置測定方法は、接触位置算出ステップS3を実行する際に用いるパラメータを予め算出するパラメータ算出ステップS4も含んでいる。
本実施形態に係る横圧測定方法は、本実施形態に係る接触位置測定方法の各ステップ(輪重・横圧測定ステップS1、小返り量測定ステップS2、接触位置算出ステップS3及びパラメータ算出ステップS4)に加えて、水平荷重算出ステップS5を更に含んでいる。
以下、各ステップS1~S5について、順に説明する。
輪重・横圧測定ステップS1では、鉄道車両の車輪がレールR上を走行している際に、測定装置100を用いて、軌道側で輪重P1及び横圧Q1を測定する。具体的には、演算手段5が、ひずみゲージ1の出力を用いて輪重P1を演算し、ひずみゲージ2の出力を用いて横圧Q1を演算する。輪重P1及び横圧Q1の具体的な演算方法については公知であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
小返り量測定ステップS2では、鉄道車両の車輪がレールR上を走行している際に、測定装置100を用いて、軌道側でレールRの小返り量aを測定する。具体的には、演算手段5が、レーザ変位計3で測定した第1変位Xuと、レーザ変位計4で測定した第2変位Xlとに基づき、小返り量aを演算する。より具体的には、例えば、演算手段5には、レールRに荷重が付加されていないときに測定された第1変位Xu及び第2変位Xlが入力される。このレールRに荷重が付加されていないときに測定された第1変位Xuと第2変位Xlとの差Xu-XlをΔXとすると、このΔXが演算手段5に記憶されている。そして、レールRに荷重が付加されたとき(車輪がレールR上を走行したとき)に測定された第1変位Xuと第2変位Xlとを用いて、演算手段5は、以下の式(C)に基づき、小返り量aを演算する。
a=Xu-Xl-ΔX ・・・(C)
すなわち、演算手段5は、第1変位Xuと第2変位Xlとの差の変動量(レールRに荷重が付加されていないときの変位の差を基準とする変動量)を小返り量aとして演算する。
例えば、レールRの頭部R1が図1に示す状態から外軌側に傾いたとすれば、第1変位Xuの値は図1に示す状態よりも小さくなり、第2変位Xlの値は図1に示す状態と同等になる。したがい、第1変位Xuと第2変位Xlとの差Xu-Xlは、レールRに荷重が付加されていないときのΔXよりも小さくなるため、式(C)で算出される小返り量は、負の値となる。
後述の接触位置算出ステップS3では、前述の輪重・横圧測定ステップS1で測定した輪重P1及び横圧Q1と、前述の小返り量測定ステップS2で測定したレールRの小返り量aとに基づき、演算手段5が鉄道車両の車輪とレールRとの接触位置Xを算出するが、この際、予め算出して演算手段5に記憶されたパラメータβ、α、bを用いる。
このため、説明の便宜上、接触位置算出ステップS3よりも先に、これらパラメータβ、α、bを算出するパラメータ算出ステップS4について説明する。
a=P2・α・X+Q2・β ・・・(A)
上記式(A)において、βは、水平荷重Q2に掛かる係数である。
上記式(A)において、αは、垂直荷重P2と接触位置Xとの積に掛かる係数である。
Q1=b・X・P2+Q2 ・・・(B)
上記式(B)において、bは、垂直荷重P2に掛かる係数b・Xを接触位置Xで除算した値である。
接触位置算出ステップS3では、測定装置100を用いて、輪重・横圧測定ステップS1で測定した輪重P1及び横圧Q1と、小返り量測定ステップS2で測定したレールRの小返り量aとに基づき、鉄道車両の車輪とレールRとの接触位置Xを算出する。具体的には、演算手段5が、輪重P1、横圧Q1及び小返り量aと、パラメータ算出ステップS4で予め求めて記憶されているパラメータβ、α、bとを用いて、以下の式(1)に基づき、接触位置Xを演算する。
X=(a-Q1・β)/{P1(α-b・β)} ・・・(1)
なお、上記式(1)は、前述の式(A)及び式(B)と、P1=P2とから導き出すことができる。
水平荷重算出ステップS5では、測定装置100を用いて、輪重・横圧測定ステップS1で測定した輪重P1及び横圧Q1と、接触位置算出ステップS3で算出した接触位置Xとに基づき、車輪とレールRとの間に作用する水平荷重Q2を真の横圧として算出する。具体的には、演算手段5が、輪重P1、横圧Q1及び接触位置Xと、パラメータ算出ステップS4で予め求めて記憶されているパラメータbとを用いて、以下の式(2)に基づき、水平荷重Q2を演算する。
Q2=Q1-b・X・P1 ・・・(2)
なお、上記式(2)は、前述の式(B)と、P1=P2とから導き出すことができる。
なお、本発明者らが本実施形態に係る横圧測定方法で測定した水平荷重Q2と、比較的精度良く横圧を測定可能なPQモニタリング台車を用いて車上測定した横圧とを比較したところ、両者の値が比較的良く合致することを確認できた。
3、4・・・レーザ変位計
5・・・演算手段
100・・・測定装置
a・・・小返り量
P1・・・輪重
P2・・・垂直荷重
Q1・・・横圧
Q2・・・水平荷重
R・・・レール
R1・・・頭部
R2・・・腹部
R3・・・底部
X・・・接触位置
Xu・・・第1変位
Xl・・・第2変位
Claims (5)
- 鉄道車両の車輪と前記鉄道車両が走行する軌道のレールとの接触位置を測定する方法であって、
前記軌道側で輪重及び横圧を測定する輪重・横圧測定ステップと、
前記軌道側で前記レールの小返り量を測定する小返り量測定ステップと、
前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記輪重及び前記横圧と、前記小返り量測定ステップで測定した前記レールの小返り量とに基づき、前記接触位置を算出する接触位置算出ステップと、
を含むことを特徴とする鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法。 - 前記小返り量測定ステップにおいて、非接触式変位計を用いて、前記レールの頭部側面の水平方向の変位である第1変位と前記レールの底部側面の水平方向の変位である第2変位とを測定し、前記第1変位及び前記第2変位に基づき、前記小返り量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法。 - 前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記輪重をP1とし、前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記横圧をQ1とし、前記小返り量測定ステップで測定した前記レールの小返り量をaとし、前記接触位置算出ステップで算出される前記接触位置をXとした場合、前記接触位置算出ステップにおいて、以下の式(1)に基づき、前記接触位置Xを算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法。
X=(a-Q1・β)/{P1(α-b・β)} ・・・(1)
上記式(1)において、βは、前記小返り量aを前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記接触位置Xとの積と、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重との線形和で表した場合に、前記水平荷重に掛かる係数を意味する。また、αは、前記小返り量aを前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記接触位置Xとの積と、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重と前記接触位置Xとの積に掛かる係数を意味する。さらに、bは、前記横圧Q1を前記垂直荷重と前記水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重に掛かる係数を前記接触位置Xで除算した値を意味する。 - 請求項1から3の何れかに記載の鉄道車両の車輪とレールとの接触位置測定方法を用いて、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重を真の横圧として算出する方法であって、
前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記輪重及び前記横圧と、前記接触位置算出ステップで算出した前記接触位置とに基づき、前記車輪と前記レールとの間に作用する水平荷重を算出する水平荷重算出ステップを含む、
ことを特徴とする鉄道車両の横圧測定方法。 - 前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記輪重をP1とし、前記輪重・横圧測定ステップで測定した前記横圧をQ1とし、前記接触位置算出ステップで算出された前記接触位置をXとし、前記水平荷重算出ステップで算出される水平荷重をQ2とした場合、前記水平荷重算出ステップにおいて、以下の式(2)に基づき、前記水平荷重Q2を算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の横圧測定方法。
Q2=Q1-b・X・P1 ・・・(2)
上記式(2)において、bは、前記横圧Q1を前記車輪と前記レールとの間に作用する垂直荷重と前記水平荷重との線形和で表した場合に、前記垂直荷重に掛かる係数を前記接触位置Xで除算した値を意味する。
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