<実施例1> 以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態である車両用速度制御装置を説明する。
本実施例の車両用速度制御装置は、車両(以下、自車や自車両ということがある)に搭載され、図1のようなブロック図に従って車両を構築する。
図示実施例の車両用速度制御装置100は、車両周囲を撮像するステレオカメラ200と接続され、ステレオカメラ200で計測した交通標識(以下、道路標識、または、単に標識ということがある)の内容、および位置は、車両用速度制御装置100へ通信によって送信される。また、車両用速度制御装置100は、車輪に取り付けられた車輪速センサ300と接続され、車輪速センサ300でタイヤ900の回転数を計測し、計測した回転数から換算した自車両の速度は、車両用速度制御装置100へ送信される。また、車両用速度制御装置100は、スピードリミッタコントロールスイッチ(以下、単にスイッチということがある)700と接続され、ドライバのスイッチ操作情報が車両用速度制御装置100へ送信されることで、車両用速度制御装置100は、ドライバのスピードリミッタ制御開始、制御解除、ドライバの指示する設定速度を判断する(図9を併せて参照)。この構成により、車両用速度制御装置100は、現在走行している道路に適用されている交通標識の状況、自車速度、ドライバの速度制御意図を得ることで、制御量の計算を行う。
車両用速度制御装置100は、算出した制御量に基づいて、エンジン510での制御量を算出するとともに、ドライバへの報知方法を決定する。
エンジン510での制御量は、車両用速度制御装置100に接続したエンジンコントロールユニット500に通信で送信され、エンジンコントロールユニット500は、アクセルペダル開度センサ550から得た情報と車両用速度制御装置100から得たエンジン510の制御量を基に、エンジン510を動作させる。エンジン510で発生した加速力は、トルクコンバータ520、トランスミッション530、ファイナルギア540を通して倍力され、タイヤ900に伝えられることで、車両の加速度を制御する。
更に、車両用速度制御装置100で決定したドライバへの報知方法は、車両用速度制御装置100に接続されたメータコントロールユニット600に通信で送信されることで、メータコントロールユニット600によるブザー620を用いた音声による警告や、表示装置610を用いた表示によるドライバへの制御状態通知などを行う。
そして、上述する接続は、例えばCAN(Car Area Network)を用いて行われる。
次に、図1に記載した各ブロックがどのような機能を持つのかを、詳細を説明する。
ステレオカメラ200の構成を図2に示す。ステレオカメラ200は、CCDカメラ(右)210とCCDカメラ(左)220を持ち、CCDカメラ(右)210とCCDカメラ(左)220で得た画像のいずれか、またはすべては画像処理部230に入力される。画像処理部230は、入力された画像の中から交通標識を検出する。画像処理部230は、検出した交通標識が、画像の中のどの位置にあるか、また、その大きさがどうなっているかを判断することで、自車両と交通標識の相対的な位置を推定する。また、画像処理部230は、検出した交通標識が、どの種類の交通標識であるかを判断する。その後、自車両と交通標識の相対的な位置と交通標識の種類(換言すれば、交通標識の内容)の情報は、交通標識情報として、通信処理部250を通して車両のCANバスを介して車両用速度制御装置100へ送信される。
自車両と交通標識の相対的な位置を計測する原理を、図3および図4を用いて説明する。図3は、近傍と遠方にそれぞれ2つの交通標識がある状況下を走行している自車両V1の俯瞰図である。図3で示した状況と同じ状況下でCCDカメラ(右)210を用いて撮像した画像、および、そのまま走行を継続して撮像した画像を図4に示している。
画像の中には近傍の交通標識1110と遠方の交通標識1120が写っているが、走行を続けるにつれて、交通標識が近づくと、画像内のサイズが大きくなり、位置が画面の外側に近づいていく。この仕組みを利用して、走行している時に交通標識の画像が大きくなった比率と、画像内の交通標識の位置の変化から、自車両と交通標識の相対的な位置を推定することができる。また、CCDカメラ(右)210とCCDカメラ(左)220を用いて撮像した2枚の画像から、交通標識に対しての視差を得ることで、該交通標識に対しての距離を求めることができる。
エンジンコントロールユニット500は、車両用速度制御装置100から送信された制御量、具体的には許容加速度(後で説明)と、アクセルペダル開度センサ550より得たドライバによるアクセルペダル開度から計算したドライバ要求車両加速度を比較し、小さい方の加速度をエンジン制御用加速度として選択してエンジン510の出力を制御することで、自車両の加速度を制御する。エンジン510の制御により、トルクコンバータ520、トランスミッション530、ファイナルギア540を通してタイヤ900に対して駆動力を発生させることで、車両の加速度を所望に制御する。この時、エンジンコントロールユニット500は、自車両の重量やタイヤ動半径、トルクコンバータ520、トランスミッション530の状態を考慮してエンジン制御用加速度に対して発生させるエンジントルクを調整する機能を持ち、エンジン510のエンジンスロットル開度や噴射量を制御する。更に、エンジンコントロールユニット500は、必要に応じてトランスミッション530の変速比も制御することで、目的の加速度を得られるようにする。
[車両用速度制御装置100の機能ブロック構成] 次に、車両用速度制御装置100を構成する機能ブロックについて、図5を用いて説明する。車両用速度制御装置100は、内部にCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータ(マイコンともいう)として構成されており、CPUは、ROMに格納された各種プログラムを実行し、CPUが実行されることで生成される情報はRAMに一時的に格納される。車両用速度制御装置100は、ここでは、車両の走行する道路に規定されている制限速度を自動的に取得し、車両の速度が制限速度を超過しないように制御するスピードリミッタ制御を実現するものであり、車両の走行制御に関連する各演算を行う。
図5に示すように、本実施例の車両用速度制御装置100は、制限速度取得部101、ドライバ操作取得部102、上限速度設定部103、車線変更推定部104、速度制御部105、上限速度通知部106により構成される。
制限速度取得部101は、ここでは、後述する標識情報取得処理P110によって実現され、ステレオカメラ200より得た交通標識情報を基に、自車両が走行する道路に規定され、自車両に適用する制限速度を取得する機能を有する。
ドライバ操作取得部102は、ここでは、後述するスイッチ操作情報取得処理P115によって実現され、スピードリミッタコントロールスイッチ700からスイッチ操作情報を取得するとともに、スピードリミッタコントロールスイッチ700から得たスイッチ操作情報を基に、ドライバのスイッチ操作(ドライバ操作)によって、スピードリミッタ機能を有効化、または無効化する要求、及び、自車両に適用する制限速度を変更する要求を取得する機能を有する。
上限速度設定部103は、後述する制御状態決定処理P120、及び、設定車速更新処理P130によって実現され、制限速度取得部101から得た制限速度と、ドライバ操作取得部102から得たドライバの要求を用いて、自車両に適用する制限速度を上限速度(以下、設定車速ということがある)として決定する機能を有する。
車線変更推定部104は、後述する運転状態推定処理P140によって実現され、自車両の車線変更操作の開始と終了を車線変更状態として推定・判断する機能を有する。
速度制御部105は、後述する許容加速度計算処理P150と許容加速度送信処理P160によって実現され、上限速度設定部103で得た上限速度と、車線変更推定部104から得た車線変更状態を基に、許容加速度を設定して、自車両の速度を制御(詳しくは、上限速度設定部103から得た上限速度以下となるように制御)する機能を有する。その速度制御部105の機能の中には、制限速度の変更が許容加速度に即座に反映されないようにする機能とエンジンコントロールユニット500へ許容加速度を送信することで自車両の速度を制御する機能を含む(後で詳述)。
上限速度通知部106は、後述する設定車速送信処理P170によって実現され、上限速度設定部103で得た上限速度(設定車速)をドライバへ通知する機能を有し、上限速度をメータコントロールユニット600へ送信する。更に、上限速度通知部106は、速度制御部105の制御状況によらず上限速度設定部103で得た上限速度を即座に(すなわち、制限速度取得部101で制限速度を取得するタイミング、もしくは、上限速度設定部103で上限速度を設定するタイミングで)通知することで、速度制御部105によって車両の速度が変動するタイミングより以前にドライバに上限速度を通知する。
[車両用速度制御装置100の制御処理] 次に、車両用速度制御装置100によって、ステレオカメラ200やスピードリミッタコントロールスイッチ700から得た情報を基に、エンジンコントロールユニット500、及び、メータコントロールユニット600を制御する処理の流れを、図6のフローチャートを用いて説明する。車両用速度制御装置100では、図6に記載の処理を定期的、例えば、10[ms]周期毎に繰り返し実行することで、エンジンコントロールユニット500、及び、メータコントロールユニット600を制御する。
エンジンコントロールユニット500、及び、メータコントロールユニット600を制御するにあたり、車両用速度制御装置100は、まず、処理P110によって、交通標識情報の取得を行う。この処理(標識情報取得処理)P110では、ステレオカメラ200で識別した交通標識情報の中から、制限速度に関する情報を抽出する。交通標識情報の中には制限速度に関する交通標識以外に一時停止や追い越し禁止などの交通標識が存在するが、処理P110にて制限速度に関する情報以外をマスクし、以降の処理で参照する交通標識情報の種類を減らすことで、処理負荷を軽減し、誤判断のリスクを低減することができる。この処理(標識情報取得処理)P110は、図5の制限速度取得部101によって実施される。
次に、処理P115によって、スイッチ操作情報の取得を行う。この処理(スイッチ操作情報取得処理)P115では、スピードリミッタコントロールスイッチ700から得たスイッチ操作情報から、スピードリミッタ制御に対するドライバの要求に関する情報を取得する。この処理(スイッチ操作情報取得処理)P115は、図5のドライバ操作取得部102によって実施される。
次に、処理P120で、ドライバのスイッチ操作や故障発生等の情報に応じて制御状態の決定を行い、速度制限機能による車両加速度の許容加速度計算値を無効値とするかを判断するための状態を決定する。この処理(制御状態決定処理)P120は、図5の上限速度設定部103によって実施される。
次に、処理P130で、設定車速の更新を行う。この処理(設定車速更新処理)P130では、処理P110で検出した制限速度に関する交通標識情報と、自車の速度、位置情報、及び処理P115で取得したドライバのスイッチ操作情報を基に、設定車速を更新する。この処理(設定車速更新処理)P130は、図5の上限速度設定部103によって実施される。
次に、処理P140で、ドライバの運転状態推定を行う。この処理(運転状態推定処理)P140では、ドライバの運転操作、及び、ステレオカメラ200等の外界認識センサによる、車道外側線と自車の向きや位置関係、周辺車両との位置や相対速度の検出結果に応じて、ドライバがどういった運転を行っているかを推定する。この処理(運転状態推定処理)P140は、図5の車線変更推定部104によって実施される。
次に、処理P150で、許容加速度計算を行う。この処理(許容加速度計算処理)P150では、処理P120で決定した制御状態、処理P130で更新した制限速度、処理P140で判断した運転状態推定結果、車輪速センサ300から得た自車速に応じて、自車両の、発生させて良い最大の加速度である、許容加速度を計算する。この処理(許容加速度計算処理)P150は、図5の速度制御部105によって実現される。
最後に、処理P160及び処理P170で、処理P150で得た許容加速度と処理P130で得た設定車速を、通信を用いて送信する。
処理P150で得た許容加速度を処理P160で通信できる情報に加工し、通信路であるCANバスを通して、エンジンコントロールユニット500へ送信する。処理P130で得た設定車速を処理P170によって通信できる情報に加工し、メータコントロールユニット600へ送信することで、車両の制御を行う。処理(許容加速度送信処理)P160は、図5の速度制御部105によって実現され、処理(設定車速送信処理)P170は、図5の上限速度通知部106によって実現される。
以降、上記の各処理を更に詳細にわたって説明する。
[標識情報取得処理P110(制限速度取得部101)] 前述した処理(標識情報取得処理)P110に関して、具体的な処理を図7を用いて説明する。
処理P110では、ステレオカメラ200で識別した交通標識情報を処理P111で受信する。交通標識情報は、標識検出数と、配列化された複数の単独標識情報で構成される。さらに、単独標識情報は、検出した標識の種類、自車に対しての位置関係、標識の検出精度の情報で構成される。
次に、処理P112で、以降で配列を制御するための配列番号Mを0で、標識制限速度を無効値で、選択標識有効性スコアを無効値で初期化する。
次に、処理P113で、交通標識情報として得た標識の検出数分だけ処理したかを、配列番号Mを用いて判断し、配列番号Mが標識検出数未満でなければ(P113:false)、処理P110を終了する。もし標識検出数が0の場合は、処理P113の判定は1回目の実行でfalseと判断し、処理P110が終了する。処理P113の判定で配列番号Mが標識検出数未満であれば(P113:true)、処理P114に進み、配列番号M番目の交通標識情報である、標識情報[M]が、制限速度の標識であるかを判断する。この時、処理P114では「標識情報[M]の種類が自車両に対して有効な制限速度に関する標識である。」且つ、「標識情報[M]の位置関係が自車両に対して有効であるか、例えば、自車両が道路標識の50m手前を通り過ぎている。」且つ、「標識情報[M]の検出精度が制限速度の標識として使用するために十分であるか、例えば、検出精度80%以上である場合である。」且つ、「標識情報[M]から標識有効性スコアを計算する関数fscoreを用いて計算した値が、選択標識有効性スコアより高い」場合に制限速度判定として(P114:true)、処理P115に進む。いずれかの条件が非成立である場合は、制限速度判定とせず(P114:false)、処理P115、処理P116をスキップして処理P117へ進む。
処理P115では、標識情報[M]から、制限速度標識の種類を取得する関数ftypeを用いて、制限速度標識の種類を取得し、標識制限速度へ格納する。この時、制限速度情報に格納する情報は標識の種類のみに限定することで、以降の処理で位置関係や検出精度を考慮する必要がなくなり、システムを単純化することが可能となる。
次に、処理P116へと進み、処理P115で格納された標識情報[M]に対しての標識有効性スコアを計算する関数fscoreを用いて標識有効性スコアを取得し、選択標識有効性スコアに格納する。
次に、処理P117へと進み、確認する標識情報の配列番号を切り替えるため、配列番号Mをインクリメントし、処理P113へ戻って前述の処理を繰り返し行い、標識情報に格納されている全ての単独標識情報の中から、必要な制限速度情報を取得する。こうすることで、制限速度に関する情報以外をマスクし、以降の処理で参照する標識情報の種類を減らすことで、処理負荷を軽減し、誤判断のリスクを低減することができる。
また、処理P116及び処理P114で使用する関数fscoreは、標識の種類から計算する。あらかじめ、標識の種類毎にスコアを決めておき、一致した標識のスコアを設定する。例えば、高い速度標識スコアに高い値を設定し、100km/hと80km/hの標識が同時に取得された場合に、100km/hを採用する。100km/hと80km/hの標識が同時に取得できるような場合、100km/hは大型車や牽引車を除く車種として適用され、80km/hは大型車や牽引車に適用されるケースがある。本スコア設定を適用する車両が乗用車のように、大型車や牽引車と異なる場合は、高い速度標識を優先して採用することで自車に適切な制限速度を選ぶことが出来る。自車が大型車の場合であれば、80km/hを採用したいため、低い速度の方が高いスコアを設定することで、自車に適切な制限速度を選ぶことが出来る。また、大型車や牽引車向けであることを示すような補助標識が検知可能であれば、補助標識の情報と自車両の種類を鑑みて、スコアを変更すると良い。自車の走行レーンを検知し、速度標識の種類や並び順を鑑みてスコアに加算、減算を行う方式を採用しても良い。
[スイッチ操作情報取得処理P115(ドライバ操作取得部102)] 次に、処理(スイッチ操作情報取得処理)P115に関して説明する。
この処理P115では、前述したように、スピードリミッタコントロールスイッチ700からスイッチ操作情報を取得するとともに、取得したスイッチ操作情報を基に、スピードリミッタ機能を有効化、または無効化する要求、及び、自車両に適用する制限速度を変更する要求を含むスピードリミッタ制御に対するドライバの要求に関する情報を取得する。
[制御状態決定処理P120(上限速度設定部103)] 次に、処理(制御状態決定処理)P120について、図8を用いて詳細を説明する。
車両用速度制御装置100で扱う制御状態として、“故障”、“禁止”、“許可”の3状態を持つ。まず処理P121で、機器の故障を判定する。この条件は全ての条件に優先され、故障検出時は(P121:true)、処理P122へと進み、制御状態を故障とする。処理P121で故障が検出されない場合は(P121:false)、処理P123へ進む。
処理P123では、故障が復帰したかを判断し、故障の復帰を検出した場合は(P123:true)、処理P124に進み、制御状態を禁止とする。故障復帰で無い時は(P123:false)、処理P125に進み、ドライバによる速度制限機能(本例では、スピードリミッタコントロールスイッチ700)のスイッチ操作を検出する。スイッチ操作に関しては、オルタネートスイッチの方式と、トグルスイッチの方式がある。図8の例で記載している方式は、オルタネートスイッチの方式を例としており、ドライバが、図9に記載のように、ステアリングホイールに取り付けられたスピードリミッタコントロールスイッチ700のスイッチSW1を押下してから離した瞬間を速度制限機能スイッチ操作検出とし(P125:true)、処理P126へ進む。スイッチ操作については、スイッチSW1を押下したタイミングを速度制限機能スイッチ操作検出とする場合や、トグルスイッチの方式を使用する等、この方式に限るものではない。また、スイッチ操作検出が行われなかった場合は(P125:false)、制御状態を維持したまま処理P120を終了する。
処理P126では、更新前の制御状態が禁止であったかを判定し、制御状態が禁止であった場合は(P126:true)、処理P127へ進み、制御状態を許可へと切り替え、制御状態が禁止でない場合、つまり制御状態が許可状態であった場合は(P126:false)、処理P128へ進み、制御状態を禁止に切り替える。
[設定車速更新処理P130(上限速度設定部103)] 次に、処理(設定車速更新処理)P130で行う処理について、図10を用いて詳細を説明する。
処理P130では、最初に処理P131で、処理P120で判定した制御状態の確認を行う。制御状態が許可であれば(P131:true)、成立として処理P132へ進む。制御状態が許可でなければ(P131:false)、設定車速の更新を行わず、処理P139aへ進む。
次に、処理P132で通知時間の判定を行う。通知時間とは、設定車速が変化したことをドライバに伝えるための時間である。例えば、ドライバがスイッチ操作で設定車速を40km/hから50km/hに更新しようと操作する寸前に標識から制限速度を読み込んで設定車速が50km/hに変化すると、50km/hに対して+10km/hの操作を行ってしまう。このように、ドライバの意図しない設定車速の更新が発生してしまわないように一度設定車速が更新された後、ドライバが現在の設定車速を確認するための時間、設定車速の更新を行わないようにする。そのため、例えば通知時間が0.5s未満であれば(P132:false)、条件非成立、つまり通知時間が不足しているとして、設定車速の更新を行わず、処理P139aに進む。通知時間が0.5s以上であれば(P132:true)、十分に通知できたとして、処理P133に進む。また、この時の通知時間の閾値である0.5sについては、処理P134によって、スイッチ操作によって車速を変更した場合は0.1sとし、処理P136で標識制限速度を用いて設定車速を更新した場合は1sとするなど、条件によって待ち時間を切り替えることで、ドライバのスイッチ操作のレスポンスに素早く反応できるが、自動的に設定車速が更新された時は誤操作を防ぐようにすることもできる。
次に、処理P133では、処理P115によって得られた情報から、ドライバがスイッチ操作で設定車速を更新しようとしているかを判定する。設定車速の更新は、例えば図9のようにステアリングホイールに取り付けられたスピードリミッタコントロールスイッチ700のスイッチSW2、スイッチSW3、スイッチSW4を操作することで行う。スイッチSW2を押してから離した時、または、スイッチSW3を押してから離した時、または、スイッチSW4を押してから離した時、または、スイッチSW2を1s以上押下し続けている時、または、スイッチSW3を1s以上押下し続けている時に、ドライバのスイッチ操作有りと判定し(P133:true)、処理P134へ進む。ドライバのスイッチ操作有りと判定しなかった場合は(P133:false)、条件不成立として処理P135へ進む。
処理P134では、処理P133で判定した条件で用いたスイッチの操作内容に応じて設定車速の更新を行う。具体的には、スイッチSW2、つまり設定車速の加算要求スイッチを押して離した場合は、設定車速を120km/hを上限とし、前回設定車速から+10km/hした値に更新する。スイッチSW3、つまり設定車速の減算要求スイッチを押して離した場合は、設定車速を30km/hを下限とし、前回設定車速から-10km/hした値に更新する。スイッチSW4、つまり設定車速を元に戻す(変化前の設定車速に戻す)スイッチを押下して離した場合は、設定車速を前回設定車速に更新する。設定車速の加算要求スイッチを1s以上押下し続けている場合は、設定車速を120km/hを上限とし、1s経過毎に前回設定車速から+1km/hした値に更新する。設定車速の減算要求スイッチを1s以上押下し続けている場合は、30km/hを下限とし、1s経過毎に設定車速を前回設定車速から-1km/hした値に更新する。この時に上限として設定している120km/hや、下限として設定している30km/hは、自車両の使用される国の交通法規やマナーに応じて上限を180km/hにする、下限を10km/hとするように設定しなおす。また、km/hの単位系ではなく、mile/hの単位系を車両速度の単位系として用いている国であれば、1km/hを1mile/h、10km/hを10mile/h、上限の速度120km/hを80mile/hとして扱うこともできる。こうすることで、単位系や交通ルールの異なる複数の国で本機能を活用することができるようになる。
一方、処理P135では、処理P110によって得られた標識制限速度を設定車速として用いるかを判定する。処理P135では、処理P110で標識制限速度を無効値としたまま更新されなかった場合(P135:false)、設定車速の更新を行わないとして、処理P139aに進む。標識制限速度が無効値でなかった場合は(P135:true)、処理P136へ進む。
処理P136では、設定車速に標識制限速度を設定し、処理P139aへ進む。
前述の処理P134により、上限速度設定部103は、ドライバ操作取得部102より得たドライバのスイッチ操作(上限速度を上げるスイッチSW2のドライバ操作、上限速度を下げるスイッチSW3のドライバ操作、上限速度を変化前の上限速度に戻すスイッチSW4のドライバ操作を含む)の結果に応じて、設定車速(上限速度)の設定を更新することができる。
また、前述の処理P133~P136により、上限速度設定部103は、ドライバ操作取得部102から取得したドライバ操作による上限速度の変更要求と、制限速度取得部101から取得した制限速度(標識制限速度)の変化による上限速度の変更要求の発生タイミングが重複した際、ドライバ操作取得部102から取得したドライバ操作による更新を優先し、ドライバ操作取得部102から取得したドライバ操作による上限速度の変更を行った後に一定時間もしくは一定距離は制限速度取得部101から取得した制限速度(標識制限速度)の変化による上限速度の変更を行わないようにできる。
処理P139aでは、設定車速と変化検出前設定車速との比較を行い、設定車速が更新されたことを判定する。この時、処理P136で設定車速が標識制限速度と同じ値であった場合は、設定車速の更新が行われていても、設定車速と変化検出前設定車速の値が一致し(P139a:false)、設定車速の更新無しとして扱うことで、通知時間がリセットされず、次の瞬間にドライバのスイッチ操作があれば、処理P134でドライバのスイッチ操作に応じた設定車速の更新が可能になる。
処理P139aで設定車速の更新有りと判定された場合は(P139a:true)、処理P139bへ進み、処理P132で判定に用いる通知時間を0でリセットする。続いて処理P139dに進んで、処理P134で用いる前回設定車速に変化検出前設定車速をセットし、その次に、処理P139aで用いる変化検出前設定車速に設定車速をセットする。変化検出前設定車速と、前回設定車速を分けて保持することで、設定車速の変化検出と、前回の設定車速へ戻る機能を実現することができる。処理P139aで設定車速の更新が無いと判断された場合は(P139a:false)、処理P139cへ進み、通知時間を動作周期分、例えば+10msすることで、通知時間の計測を行う。
[運転状態推定処理P140(車線変更推定部104)] 次に、処理(運転状態推定処理)P140で行う処理について、図11を用いて詳細を説明する。この運転状態推定処理P140では、運転状態を3つの状態に分割して判断する。
1つ目は車線変更無し、2つ目は車線変更中、3つ目は車線移動後とする。運転状態は処理P141で定義され、初期値として車線変更無しを指定する。次に、処理P142で、前述した制御状態決定処理P120で得た制御状態が許可であるかを判定し、許可でなければ(P142:false)、処理P149bに進み、運転状態を車線変更無しに更新して、処理P140を終了する。処理P142の判定で、制御状態が許可であれば(P142:true)、処理P143に進む。
処理P143では、運転状態が、車線変更中、または、車線移動後の状態の継続時間が規定時間以内(車線変更時間範囲内)であれば(P143:true)、成立として、処理P144に進み、規定時間を超えて経過していれば(P143:false)、処理P149aへ進む。処理P143は、車線変更を行っている時間が長すぎる場合、ウィンカーを誤って操作してウィンカーを操作しながら走ってしまっているケースや、車道外側線が汚れや積雪等の影響で検出不可能になってしまう場合等、強制的に車線変更を終了することで、速度制御機能が動作しなくなってしまうことを防ぐ目的で行われる。そのため、処理P149aに進んだ場合、運転状態を車線変更無しに更新して、処理P140を終了する。
次に、処理P144に進んだ場合、現在の運転状態に合わせて、判定処理の切り替えを行う。処理P144で運転状態が車線変更無しと判断された場合(P144:true)、処理P145に進んで、車線変更開始判断を行った結果を運転状態にする。処理P144で運転状態が車線変更無しでなかった場合(P144:false)、処理P146に進む。処理P146で運転状態が車線変更中と判断された場合(P146:true)、処理P147へ進み、車線変更終了判断を行った結果を運転状態にする。処理P146で運転状態が車線変更中でなかった場合(P146:false)、つまり、運転状態が車線移動後であった場合、処理P148へ進み、車線内安定判断を行った結果を運転状態にする。
(車線変更開始判断処理P145) また、処理P145の詳細を、図12を用いて説明する。処理P145の車線変更開始判断処理では、ドライバが車線変更を開始したことを推定する。
処理P145aでは、自車の右方向に車線変更を開始したかを判断し、車線変更を開始したと判断した場合は(P145a:true)、処理P145bに進み、車線変更方向を右として設定する。次に、処理P145cで、運転状態戻り値として、車線変更中を設定する。処理P145aで、右車線変更開始でないと判断された場合(P145a:false)、処理P145dに進み、自車の左方向に車線変更を開始したかを判断し、車線変更を開始したと判断した場合は(P145d:true)、処理P145eに進み、車線変更方向を左として設定する。次に、処理P145fへ進み、運転状態戻り値として、車線変更中を設定する。処理P145dで、左車線変更開始でないと判断された場合(P145d:false)、処理P145gへ進み、車線変更方向を無効として設定する。次に、処理P145hへと進み、運転状態戻り値として、車線変更無しを設定する。こうして設定された運転状態戻り値を処理P145の戻り値として返し、運転状態へと設定する。
また、処理P145aの条件判定について、ステレオカメラ200を用いて外界認識を行い、自車両の右側に隣接車線が存在するか否かを判定する。更に、ドライバが右方向にウィンカーレバーを操作したことを判定する。自車両の右側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを右方向に操作した時に自車の右方向に車線変更を開始したと判断する。車線の有無を条件に用いることにより、右方向への車線変更ではなく、右折を行うシーンであることを分離し、右方向への車線変更のみを抽出することができるようになる。また、ステアリング操作角やヨーレートセンサ値、横加速度センサを条件に用いる場合、車両の挙動が変化してからの判定となるため、ドライバのウィンカーレバー操作より車線変更の操作に対して判定が遅くなる。そのため、ドライバのウィンカーレバー操作を条件に用いることにより、最もドライバの車線変更意図に沿う判断を行うことができるようになる。また、処理P145dの条件判定は、処理P145aの条件判定と同様に、ステレオカメラ200を用いて外界認識を行い、自車両の左側に隣接車線が存在するか否かを判定する。更に、ドライバが左方向にウィンカーレバーを操作したことを判定し、自車両の左側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを左方向に操作した時に自車の左方向に車線変更を開始したと判断する。
(車線変更終了判断処理P147) また、処理P147の詳細を、図13を用いて説明する。処理P147では、車線の変更が行われたのかを判断する。
処理P147aでは、処理P145で判定した車線変更方向を判定し、車線変更方向が右であったか、それ以外、つまり左であったかを判別して処理を切り替える。この時、処理P145で車線変更方向が無効となるケースは、処理P145gが動作しており、必然的に処理P145hが実行されてしまうため、車線変更方向が無効である場合の判定は、処理P147で考慮する必要はない。
処理P147aで車線変更方向が右と判断された場合は(P147a:true)、処理P147bへ進み、車線変更を行う際に跨ぐ車両区画線を監視し、対象となる右区画線(対象右区画線)が切り替わったことを判定する。右区画線の変更があったと判定された場合は(P147b:true)、処理P147cへ進み、運転状態戻り値に車線移動後を設定する。右区画線の変更があったと判定されなかった場合は(P147b:false)、処理P147dへ進み、運転状態戻り値に車線変更中を設定する。
処理P147aで車線変更方向が右でないと判断された場合(P147a:false)、処理P147eへ進み、車線変更を行う際に跨ぐ車両区画線を監視し、対象となる左区画線(対象左区画線)が切り替わったことを判定する。左区画線の変更があったと判定された場合は(P147e:true)、処理147fへ進み、運転状態戻り値に車線移動後を設定する。左区画線の変更があったと判定されなかった場合は(P147e:false)、処理P147gへ進み、運転状態戻り値に車線変更中を設定する。こうして決定された運転状態戻り値を処理P147の戻り値として返し、運転状態へ設定する。
この時、処理P147b、及び、処理P147eで判定に用いる対象としている自車両の左右区画線について、図15の自車両及び道路の俯瞰図を用いて説明する。自車両V1に対して右区画線とは、車両先端中央、図中Pcで示す位置より右方向にあって、最も近い距離にある区画線を指す。逆に、自車両V1に対して左区画線とは、図中Pcで示す位置より左方向にあって、最も近い距離にある区画線を指す。そのため、車線変更を行う際は、車線境界線Rcの左側から図中Pcが移動し、車線境界線Rcの右側に移動した際に、自車両V1に対する右区画線は車線境界線Rcから車道外側線Rrへと変更される。また、この時、自車両V1に対する左区画線は車道外側線Rlから車線境界線Rcへと変更される。
(車線内安定判断処理P148) また、処理P148の詳細を、図14を用いて説明する。処理P148では、車線内安定判断を行い、車線変更後に、車両姿勢が安定し、車道外側線に対して、略水平に走行できているかを判断する。
処理P148aでは、処理P145で設定した車線変更方向が左右いずれかであることを確認し、車線変更方向が右であれば(P148a:true)、処理P148bへ進む。処理P148bでは、左車線との横位置(左車線横位置)が0.2mより離れているかを判断し、離れていない場合は(P148b:false)、処理P148fへ進んで、安定待ち時間をゼロでリセットする。左車線との横位置(左車線横位置)が0.2mより離れている場合は(P148b:true)、処理P148cへ進み、対車線ヨー角絶対値が5[deg]未満であるかを判断し、5[deg]以上であれば(P148c:false)、処理P148eへ進み、安定待ち時間をゼロでリセットする。対車線ヨー角絶対値が5[deg]未満であれば(P148c:true)、処理P148dへ進み、安定待ち時間に安定待ち時間+動作周期(例えば10ms)を設定し、安定待ち時間の更新を行う。
また、処理P148aで車線変更方向が右でない、つまり、左だった場合(P148a:false)、処理148gへ進む。処理P148gでは、右車線との横位置(右車線横位置)が0.2mより離れているかを判断し、離れていない場合は(P148g:false)、処理P148kへ進んで、安定待ち時間をゼロでリセットする。右車線との横位置(右車線横位置)が0.2mより離れている場合は(P148g:true)、処理P148hへ進み、対車線ヨー角絶対値が5[deg]未満であるかを判断し、5[deg]以上であれば(P148h:false)、処理P148jへ進み、安定待ち時間をゼロでリセットする。対車線ヨー角絶対値が5[deg]未満であれば(P148h:true)、処理P148iへ進み、安定待ち時間に安定待ち時間+動作周期(例えば10ms)を設定し、安定待ち時間の更新を行う。
以上の処理で、安定待ち時間をゼロにするか、動作周期分進めるかして更新した後、処理P148nへ進む。
処理P148nでは、安定待ち時間が1[s]以上経過したかを判断する。安定待ち時間が1[s]以上経過した場合は(P148n:true)、処理P148mへ進み、運転状態戻り値として車線変更無しを設定し、車線変更が終了したと判断する。安定待ち時間が1[s]以上経過していない場合は(P148n:false)、処理P148pへ進み、運転状態戻り値に車線移動後(または、車線変更中)を設定し、車線内安定判断を継続して行う。こうして決定された運転状態戻り値を処理P148の戻り値として返し、運転状態へ設定する。
処理P148b、及び、処理P148gで用いた左右車線横位置について、図15を用いて説明する。右車線横位置とは、自車両V1の先端右端の位置から、右車線に向かう位置を示しており、図中Xrで示される。同様に、左車線横位置とは、自車両V1の先端左端の位置から、左車線に向かう位置を示しており、図中Xlで示される。
また、処理P148c、及び、処理P148hで用いる対車線ヨー角絶対値について、図15を用いて説明する。対車線ヨー角は、自車両V1の前後方向に延ばした線Lcと車線(車線境界線)Rcのヨー角である。図15では、自車両V1の前後方向に延ばした線Lcを水平に移動させた左右の線Ll、Lrのうち右側の線Lrと右車線Rcの交差する角θの値が対車線ヨー角となり、右方向をプラス、左方向をマイナスとして表す。対車線ヨー角がゼロに近づくとそれだけ自車両V1が車線に対して水平に走行していることを示す。また、対車線ヨー角絶対値は、対車線ヨー角の絶対値をとっただけの値であり、処理P148c、及び、処理P148hで車線に対して水平に走行しているかを判断したかったため、右方向、左方向を意識せず絶対値をとって、自車両V1が水平に走行できているのかを判断する。
こうした処理により、ドライバが車線変更を開始して、車線変更後、車道に対して水平に走行し続ける状態に戻るまでの間を、運転状態の車線変更中、または、車線移動後として示すことができる。
[許容加速度計算処理P150(速度制御部105)] 次に、処理(許容加速度計算処理)P150について、図16を用いて説明する。
処理P151aでは、処理P120から得た制御状態の確認を行う。制御状態が許可でないと判定した場合(P151a:false)、処理P151bへ進み、過去設定車速として車輪速センサ300で得た自車速度を設定する。その後、処理P151cへ進み、許容加速度へ無効値(換言すれば最大値)を設定して許容加速度計算処理P150を終了することで、制御状態が許可でない場合は許容加速度が制御へ反映されないようにする。この時、処理P151bで過去設定車速に自車速度を設定することで、制御状態が許可になってすぐに車線変更を行った場合、処理P155で過去設定車速をその際の自車速度とすることができ、車速変動を抑えることができる。
処理P151aで制御状態が許可であると判断した場合(P151a:true)、処理P152aへ進む。
処理P152aでは、処理P130から得た設定車速の変化を判定する。設定車速の変化を検出した場合は(P152a:true)、処理P152bへ進み、待ち時間(後述する遅延時間に対応)を1[s]でリセットする。設定車速の変化が無かった場合は(P152a:false)、処理P152cへ進み、待ち時間に待ち時間-動作周期(例えば10ms)の値を設定することで、待ち時間を動作周期分減らしていく。この時、下限をゼロとするため、処理P152cでは、0と待ち時間-動作周期の値のうち、大きい方の値を待ち時間として設定する。処理P152b、または、処理P152cの次に、処理P152dを行う。
処理P152dでは、処理P152aの判定で設定車速が変化したことを検出するための変化検出用設定車速に設定車速を設定する。次に、処理P154へ進み、処理P140で得た運転状態が「車線変更無し」と不一致であること、つまり、車線変更中であることを判定する。運転状態が車線変更中であると判断した場合は(P154:true)、処理P155へ進み、制御用設定車速に過去設定車速を設定する。これにより、速度制御部105は、車線変更操作中と判定している場合(期間)は、自車両の走行速度を、車線変更操作開始と判断される前の設定車速(上限速度)以下となるように制御することで、車線変更操作中にドライバの意図しない車速変動(走行速度の変化)を抑止する。一方、運転状態が車線変更無しであると判断した場合は(P154:false)、処理P156へ進む。
処理P156では、処理P152b、処理P152cで更新した待ち時間を判定し、待ち時間がゼロであること、つまり、待ち時間が無いことを判定する。待ち時間が無ければ(P156:true)、処理P157へ進んで、過去設定車速に設定車速を設定して処理P158aへ進み、制御用設定車速として設定車速を設定する。待ち時間が残っている場合は(P156:false)、処理P157および処理P158aを行わずに処理P158bへ進み、制御用設定車速を更新せず、設定車速の変化を適用しない。
つまり、前述の処理P156、P158bにより、運転状態が車線変更無しである(車線変更操作中でない)場合で、待ち時間(本例では、最大で1[s])が残っている場合は、制御用設定車速を更新しないため、この場合は、設定車速更新による車速変動のタイミング(設定車速更新の適用タイミング)が後述するドライバへの設定車速(上限速度)の通知のタイミング(換言すれば、制限車速の取得タイミングもしくは上限速度(設定車速)の設定タイミング)よりも、待ち時間として設定される1[s]以上遅れる可能性がある。
また、前述の処理P152a~P158bにより、速度制御部105は、設定車速(上限速度)が変更された後、自車両が(待ち時間に相当する)一定の距離または一定の時間を走行するタイミング、あるいはその両方に応じて設定されるタイミングまで、自車両の走行速度を、設定車速(上限速度)が変更される前の設定車速(上限速度)以下となるように制御することになる。
処理P155、処理P158a、処理P158bにおいて制御用設定車速を設定したら、処理P159へ進み、設定された制御用設定車速と車輪速センサ300から得た自車速度をマップ関数へ入力することで、許容加速度を得る。この時にマップ関数で用いるマップ値は、制御用設定車速と自車速度の組み合わせにより、どれくらいの許容加速度とするかを机上、及び実験等で算出し、定数マップとしてあらかじめ設定しておく。
このような構成とすることで、車線変更を行っている最中は過去設定車速が更新されず、車線変更を行う1[s]前の設定車速に基づいて許容加速度の計算を行うことができるようになるため、車線変更操作中に許容加速度の計算の基となる設定車速が変化してしまうことによる車速変動が起こらず、ドライバはスムーズな車線変更を行うことが可能となる。
また、車線変更の1[s]以上前のタイミングで設定車速を変更していた場合、過去設定車速が既に設定車速として更新されており、ドライバに設定車速の変更を十分に通知してからの車速変動となるため、ドライバに対して違和感を生むことない。また、設定車速の変化を認知していても車線変更中の車速変動が煩わしいと感じるドライバであれば、車線変更を行う前にスイッチ操作等で速度制限の解除を行うための時間的な余裕をとることができる。
また、設定車速が変化してから、許容加速度の反映までに、必ず1[s]以上の待ち時間(換言すれば、遅延時間)が発生する。そのため、ドライバは待ち時間の経過中に設定車速をスイッチ操作で更新することができる。設定車速の変化が許容加速度に適用されるまでに時間的余裕ができるので、ドライバの意図していない設定車速に基づいた加減速の発生を抑止できる。
[許容加速度送信処理P160(速度制御部105)、設定車速送信処理P170(上限速度通知部106)] 最後に、処理(許容加速度送信処理)P160で、処理P150の許容加速度計算処理で得た許容加速度をエンジンコントロールユニット500へ送信する。
エンジンコントロールユニット500は、前述したように、許容加速度と、アクセルペダル開度センサ550より得たドライバによるアクセルペダル開度から計算したドライバ要求車両加速度を比較してエンジン510の出力を制御することで、自車両の加速度(つまり、走行速度)を制御する。
また、処理(設定車速送信処理)P170で、処理P130で得た設定車速(上限速度)をメータコントロールユニット600へ送信する。
メータコントロールユニット600は、設定車速が送信されると(換言すれば、設定車速が送信されたタイミングで)、ブザー620を用いた音声によるドライバへの警告や、表示装置610を用いた表示によるドライバへの通知などを行い、その設定車速をドライバへ即座に通知する。
この場合、前述したように、設定車速更新による車速変動のタイミング(設定車速更新の適用タイミング)がドライバへの設定車速(上限速度)の通知のタイミングよりも、待ち時間として設定される1[s]以上遅れる可能性があり、上限速度通知部106は、速度制御部105が、上限速度設定部103から得た上限速度(設定車速)と異なる上限速度(設定車速)を基にして、自車両の走行速度を制御している状況下においても、上限速度設定部103で設定している上限速度(設定車速)を通知し、自車両の走行速度の制御に用いる上限速度(設定車速)と通知に用いる上限速度(設定車速)とが不一致となる場合がある。
処理P160及び処理P170では、許容加速度、設定車速は、送信に向けて通信可能なように巡回冗長検査(CRC)の付与や分解能変換を行い、CANバスに対してデータ送信リクエストを行う。この時、メータコントロールユニット600へ送信するデータは処理P130で得た設定車速とし、処理P150で許容加速度計算に直接的に用いた制御用設定車速とは異なるようにしている。こうすることで、ステレオカメラ200での認識状況や、ドライバのスイッチ操作に対する応答の結果を処理P130で処理した設定車速としてドライバに素早く情報通知する。一方、エンジンコントロールユニット500の制御用に用いた制御用設定車速は、ドライバに通知しないながら、設定車速と変化のタイミングをずらすことで、ドライバに対する車線変更時の違和感を抑止することが可能となる。同様に、ステレオカメラ200で検出した制限速度の認識に誤検出が発生していた場合、設定車速をドライバに素早く通知した時点で、ドライバに対して誤検出の結果を通知し、ドライバはスイッチSW4(図9)を操作して、誤検出前の設定速度に戻すことや、スイッチSW1、SW2(図9)を操作して目的の設定速度に変更する。その後、制御用設定車速はドライバの更新した設定車速となり、正しい制限速度に基づいた車速の制御が可能となるため、誤検出した結果の制限速度に基づいた加減速の発生を抑止することができる。
<実施例1の具体例> 次に、本実施例1の車両用速度制御装置100を適用した場合の具体例について説明する。
車両が車線変更を行う走行シーンの例を俯瞰図として図17に示す。図17は、S1のタイミングから、S2、S3のタイミングへとシーンが移り変わっている。S1のシーンは、自車両V1がPos1に到達してから、自車両V1のドライバは右ウィンカーレバーを操作し、右のターンランプを作動させている。同時に、Pos1に到達したタイミングで、自車両V1は速度標識TS1を認識する。その次に、S2のシーンでは、Pos2の位置で操舵を行い、区画線を跨いでいる。次に、S3のシーンでは、Pos3の位置で自車両V1の向きを区画線に対して平行にしている。更に、自車両V1の周辺には、自車両V1より速度の遅い先行車両V25と、自車両V1と同程度の速度である後側方車両V20と、自車両V1と同程度の速度である前側方車両V21が存在している。また、Pos2の位置に速度標識TS1が存在する。速度標識TS1では80[km/h]が示されており、Pos2に到達するまでは、制限速度として100km/hが適用されており、Pos2以降の道路では80[km/h]が指定されている。
この時、本実施例を適用していない場合の1の例として、制限速度を通知するタイミングをPos1通過時とし、Pos3通過時に制限速度の変化を自車両V1の制御に適用するケースでは、Pos1のタイミングで制限速度変更を通知されるが、自車両V1の速度変化がPos3に到達するタイミングとなる。また、普段は速度標識TS1を認識した直後に速度変化が起こるため、自車両V1のドライバは、Pos1のタイミングで自車両V1の速度変化がおこらないことに違和を感じることがある。
また、本実施例を適用していない場合の2の例として、制限速度を通知するタイミングと速度変化のタイミングを合わせるために、制限速度を通知するタイミングと速度変化のタイミングを共にPos3通過時とする場合がある。この場合、Pos3でドライバに制限速度の変化を通知したタイミングでは自車両V1はPos2を通り越しており、速度標識TS1をドライバが改めて認知するタイミングが無い。更に、車線変更を行うPos1からPos3の区間では、先行車両V25や前側方車両V21と、自車両V1の車間間隔が接近しすぎたりしないようにドライバは注意を先行車両V25や前側方車両V21に向けており、速度標識TS1の認知が疎かになる。そのため、自車両V1のドライバは、Pos3のタイミングでは制限速度の変化をシステムの異常や外界認識センサの誤認識と誤って制限速度を100km/hに戻してしまうような懸念がある。
一方、本実施例を適用した場合、Pos1を通過したタイミングでドライバに設定車速の通知が行われ、ドライバは速度標識TS1と照らし合わせることで自車両V1の制限速度変化の正しさを認知することができる。更に、普段から制限速度の変化が発生して、一定期間の走行、または、一定距離の走行によって自車両V1の速度変化が起こる挙動に慣れているため、Pos1のタイミングで通知が行われた後、Pos3のタイミング(車線変更操作終了と判断されるタイミング)で速度変化が発生しても、ドライバに与える違和感は軽減、及び、抑止されることになる。
以上で説明したように、本実施例の車両用速度制御装置100は、上限速度通知部106が、制限速度取得部101で自車両が走行する道路に規定された制限速度を取得するタイミングもしくは上限速度設定部103で制限速度に応じて自車両に適用する上限速度を設定するタイミングで(即座に)、上限速度設定部103で設定している上限速度(設定車速)をドライバに対して通知するとともに、速度制御部105が、上限速度通知部106で上限速度(設定車速)をドライバに対して通知するタイミングから遅れたタイミングで、上限速度(の更新)を自車両の走行速度の制御に適用する。
この場合、上限速度通知部106は、速度制御部105が、上限速度設定部103から得た上限速度(設定車速)と異なる上限速度(設定車速)を基にして、自車両の走行速度を制御している状況下においても、上限速度設定部103で設定している上限速度(設定車速)を通知し、自車両の走行速度の制御に用いる上限速度(設定車速)と通知に用いる上限速度(設定車速)を不一致とする。
また、この場合、速度制御部105は、上限速度設定部103から得た上限速度(設定車速)が変更された後、自車両が一定の距離または一定の時間の少なくとも一方を走行するタイミング(待ち時間に相当するタイミング)まで、自車両の走行速度を、上限速度(設定車速)が変更される前の上限速度(設定車速)以下となるように制御する。
すなわち、本実施例の車両用速度制御装置100は、自車両の走行する道路に規定されている制限速度をステレオカメラ200により取得し、制限速度(または、その制限速度に応じてドライバのスイッチ操作等を介して設定される上限速度)を自車両の上限速度として自動的に設定することで、ドライバが制限速度を超えるようなアクセルペダルの踏み込みを行ったとしても車両の駆動力を制限する機能(スピードリミッタ機能)を持ち、道路の制限速度が変化するタイミング(つまり、制限速度を取得したタイミング)とドライバに対して現在の制限速度(詳しくは、上限速度)を通知するタイミングを合わせつつ、車線変更操作時等に限らず制限速度(詳しくは、上限速度)の通知から遅れたタイミングで上限速度の変更を速度制御に適用する。また、例えば、車線変更操作中の上限速度変更を抑止し、車線変更操作終了後に上限速度変更を速度制御に適用する。
これにより、本実施例によれば、自動的に制限速度が自車両の上限速度として設定されることによって、見落としや誤解で制限速度を超過した走行の発生をドライバの煩わしい操作を行わずに抑止しつつ、例えば車線変更時にドライバの意図しない速度変動を抑止できる。この時、車線変更の有無等にかかわらず上限速度の変更から自車速度の変化につながるまでの時間(遅延時間)があることで、車線変更時等に上限速度の変更から自車速度の変化までに時間的差があったとしても、ドライバに対する違和感が軽減される。
以下、上記実施例1の変形例について説明する。
<変形例1> 上記実施例1では、ステレオカメラ200で道路標識を読み取って制限速度を得る構成としたが、GPSと地図情報を連携させる、または、路車間通信を用いて自車両が走行する道路の制限速度を得る等して、道路に規定された制限速度を取得する制限速度取得部101を置き換えることも可能である。
<変形例2> また、図9で示したステアリングに設定されたスイッチ(スピードリミッタコントロールスイッチ700)を操作する代わりに、音声認識による操作を行う場合や、ステアリング以外の場所にスイッチを配置する場合、ACCやLKSなど車両制御アプリケーション向けにステアリングに設定されたスイッチと車速制御機能に用いるためのスイッチを共有する場合、ステアリングにスイッチを付けず、タッチパネル、圧力センサ、振動センサなどのセンサを用いてドライバの操作を受け付ける場合もあり、このようなドライバ操作によって自車両に適用する制限速度を変更する要求等を取得する場合もある。
<変形例3> 上記実施例1においては、処理P114(図7)の条件の例として、「標識情報[M]の位置関係が自車に対して有効であるか、例えば、自車が道路標識の50m手前を通り過ぎている。」としたが、この条件を、現在設定している制限速度より、標識情報[M]の制限速度が低い場合は、その速度の差に応じて遠い距離から自車に対して有効とし、現在設定している制限速度より、標識情報[M]の制限速度が高い場合は、自車が標識の横を通り過ぎていた場合に有効とすることもできる。
現在設定している制限速度が標識で示した制限速度より低いか高いかに依らず、標識の横を通り過ぎている場合にのみ有効とする場合は、自車が標識の位置に到達する前に右左折を行ってしまい、制限速度の変更が不要となるケースが無いというメリットがある。一方、現在設定している制限速度が標識で示した制限速度より低いか高いかに依って有効となるタイミングを切り替える場合、低い制限速度の道路に進入する前に、自車両の速度を制限速度まで下げることができるというメリットがある。また、ナビに入力した自車両の走行計画情報や、右左折を行うような可能性のある道路であるかをカメラやGPSと地図情報をマッチングした結果により検知し、市街地路のように右左折を行う可能性が高い道路では標識の横を通り過ぎた時に標識情報を有効とし、高速道路のように右左折の可能性が低い道路では標識の横を通り過ぎる前から標識情報を有効とすることも可能である。
更に、標識の横を通り過ぎる前から標識情報を有効とする場合、標識との距離に応じて処理P159(図16)で算出する許容加速度を大きな値とすることにより、標識の手前からの減速力を弱め、乗り心地を良くすることもできる。
<変形例4> 上記実施例1に示した構成に対して、処理(運転状態推定処理)P140は以下のように変更を行うことができる。
<変形例4-1> 処理P145a(図12)では、判定条件を「自車両の右側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを右方向に操作した時に自車両の右方向に車線変更を開始したと判断する。」としているが、この判定条件を、「自車両の右側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを右方向に操作した、且つ、自車両の右側の隣接車線上に車両が検出されている時に自車両の右方向に車線変更を開始したと判断する。」と変更することができる。この時、自車両の右側の隣接車線上の走行車両は、自車両の前方、側方、後側方を監視するカメラ、レーダー、ソナー等から取得する。また、処理P145d(図12)も同様に、判定条件を「自車両の左側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを左方向に操作した時に自車両の左方向に車線変更を開始したと判断する。」としているが、この判定条件を、「自車両の左側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを左方向に操作した、且つ、自車両の左側の隣接車線上に車両が検出されている時に自車両の左方向に車線変更を開始したと判断する。」と変更し、自車両の左側の隣接車線上の車両は、自車両の前方、側方、後側方を監視するカメラ、レーダー、ソナー等から取得する。
この変更を行うことで、道路に適用されている制限速度の変化を自車両に速やかに適用し、加速または減速を行うことができるようになる。一方、この状況下では、ドライバが車線変更を行う際、周辺車両が存在しないため、速度標識を見落とすリスクが低下し、ドライバが自車両に対しての制限速度変化を認識し、車線変更を行う際に速度変化を起こしても違和感の発生は少ない。よって、ドライバが速度標識を見落とすリスクが高い周辺車両との間隔を保ちながらの車線変更シーンでのみ、制限速度の適用を遅延させることができる。更に、本変形例の判定条件をドライバが運転時に有効にするか無効にするかを選択できる機構を設けることで、周辺車両が存在するか否かにかかわらず車線変更操作中の速度変化を行わない条件と切り替えできるようになり、ドライバの違和感の感度に合わせた速度制御が可能となる。
<変形例4-2> 処理P145a(図12)では、判定条件を「自車両の右側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを右方向に操作した時に自車両の右方向に車線変更を開始したと判断する。」としているが、この判定条件を、「自車両の右側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを右方向に操作した、且つ、ドライバが右方向を注視している時に自車両の右方向に車線変更を開始したと判断する。」と変更することができる。この時、ドライバが右方向を注視しているか否かは、ドライバの目線を監視するカメラを用いて検知する。このカメラは、ドライバの顔の向き、または、眼球の向き、もしくはドライバの顔の向きと眼球の向きの両方を監視し、ドライバが右サイドミラー等を見ており、車両前方、及び速度制御状態を通知するための表示装置を見ていないことを検知する。同様に、処理P145d
(図12)では、判定条件を「自車両の左側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを左方向に操作した時に自車両の左方向に車線変更を開始したと判断する。」としているが、この条件を、「自車両の左側に隣接車線が存在し、且つ、ウィンカーレバーを左方向に操作した、且つ、ドライバが左方向を注視している時に自車両の左方向に車線変更を開始したと判断する。」と変更し、ドライバが左方向を注視しているか否かは、ドライバの目線を監視するカメラを用いて検知する。
この変更を行うことで、ドライバが車両前方に設置された速度標識、及び、速度制御状態を通知するための表示装置を見て、自車両に対する制限速度の変化を認識していれば、不意の速度変動が生じず、違和感が少ない。また、道路に適用されている制限速度の変化を自車両に速やかに適用し、加速または減速を行うことができるようになる。
更に、前述した変形例4-1と変形例4-2を組み合わせて、自車両周辺の車両の状況に応じた条件とドライバの注視位置に関する条件を同時に判定し、速度変動のタイミングを変更する構成へ変更することも可能である。
<変形例5> 上記実施例1においては、処理P156(図16)の条件として、待ち時間のみを用いたが、この条件を自車両の走行した距離に応じて判断する方法もある。例えば、道路標識の50[m]前で設定車速を更新し、その地点から40[m]走行したことを検知して、制御用設定車速に設定車速を設定する。この構成とすると、右左折を伴うような経路を走行する際、進入予定の無い道路について適用される制限速度を無視することができるようになる。また、この距離については、自車両の速度に応じて変化させることもある。更に、待ち時間が0となった、または、40[m]走行したことを検知したことを検出して処理P157へ進むようにするなど、条件を組み合わせて適用することもできる。
<変形例6> 上記実施例1においては、処理P152b(図16)で設定する待ち時間を1[s]としたが、本パラメータはドライバのスイッチ操作猶予と自車両の減速開始猶予によって設定する。
ドライバのスイッチ操作猶予とは、速度標識による制限速度の変更を表示装置610によってドライバに提示してから、誤りの訂正までに必要な時間であり、待ち時間が長ければ長いほど余裕ができる。一方、自車両の減速開始猶予とは、速度標識によって制限速度が変化した道路に自車両が到達するまでに減速制御できる時間であり、待ち時間が短ければ短いほど制限速度が変化する前に減速できるため、速度超過を起こすリスクは低下する。
このドライバのスイッチ操作猶予と自車両の減速開始猶予は、トレードオフの関係にあり、ドライバがスイッチ操作で速度標識による制限速度を変更するためには少なくとも1[s]必要として、自車両の減速開始猶予期間をなるべく長く設定したため、上記実施例1では1[s]を設定している。
このパラメータは、例えば高齢者のように情報の提示による認知からスイッチ操作による応答までに時間のかかるようなドライバが使用する場合、ドライバのスイッチ操作猶予期間を長めに確保するため、待ち時間を1.5[s]と長めにするような変形を行う場合がある。すなわち、待ち時間(前述した遅延時間に対応)は、ドライバのスイッチ操作等の操作能力に応じて変更することができる。
また、走行時の自車両速度に応じて、低速走行時は待ち時間を1.5[s]と長めに設定し、高速走行時は待ち時間を1.0[s]と短めに設定する等、自車両の走行速度に応じて待ち時間を変化させることもできる。このような構成とすることで、制限速度が変化する位置に到達するまでに時間的猶予がある低速時と、制限速度が変化する位置に到達するまでに時間的猶予が少ない高速時で、ドライバに対してスイッチ操作猶予期間を長めに確保しつつ、自車両の減速開始猶予期間をなるべく長く設定するような変形を行うこともできる。ただし、この時、高速走行時と低速走行時で設定する待ち時間の差が大きくなりすぎると、ドライバが車両挙動の発生までのタイミングに違和を感じるようになるため、長くとも差が1[s]以内に設定するのが望ましい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、エンジンコントロールユニット500は、電気自動車やエンジンとモータを持つハイブリッド自動車のパワートレインの構成に置き換えても、車両の速度、加速度の制御には同様の手法が適用可能となる。
また、許容加速度を用いて通信せず、エンジントルクや駆動力、スロットル開度を車両用速度制御装置100で計算し、パワーユニットへ通信しても良い。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。